Shibuya 03-3477-1776
Umeda 06-6131-3078

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NEWS
2018/12/14

ROCK ON PRO 年末年始休業期間のご案内

平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。 大変恐縮ではございますが、下記期間を年末年始の休業期間とさせていただきます。 お客様にはご不便をおかけしますが、何卒ご了解のほどお願い申し上げます。 ◎ROCK ON PRO 渋谷・梅田事業所 年末年始休業期間 2018年12月29(土)〜2019年1月3日(木) なお、新年は1月4日(金)からの営業となります。 より一層のお引き立てのほど、宜しくお願い申し上げます。
NEWS
2018/12/14

Pro Tools 2018.12 リリース Mac OS High Sierraに正式対応 ~ROCK ON PRO Pro Tools Information

Pro ToolsがMac OS 10.13.6 High Sierraを正式サポート!
NEWS
2018/11/30

UVI バーチャル・インストゥルメンツがPro Toolsファミリーにバンドル!~Pro Tools Information

本日11/30日より、Pro Tools ファミリーへのUVIバーチャル・インストゥルメンツのバンドルが開始されます。これは期間限定のものではなく、有効な年間プランをお持ちのユーザー様へ下記対象製品が提供される形となります。詳細は下記Avidからのお知らせをご覧ください。 >> UVI Falconでサウンドを制作する(Avidブログ日本語版) >>UVI Falcon インストール方法・トラブルシューティング等(Avid Knowledge Base 日本語版) Avidはこの度、バーチャルインストゥルメントやサウンドライブラリ界で名をはせるUVI社とパートナーシップを開始します。 概要は下記の通りです。 • UVI Workstation 3が、Pro Tools | Firstにバンドルされます。 • UVI Falcon (AAXのみ対応) が、Pro Tools と Pro Tools | Ultimateにバンドルされます。 • Plugsound Avid Edition (2.6 GB サウンドライブラリ)が、すべてのPro Toolsシリーズにバンドルされます。 • Falcon Factory content (800 MB以上のサウンドライブラリ) が、Pro Tools と Pro Tools | Ultimateにバンドルされます。 • ハイブリッド・インストゥルメント「UVI Falcon」 UVI Falconはそのハイブリッドなバーチャルインストゥルメントにより無限の創造性を可能にします。ドラッグ&ドロップで素早く求めているサウンドを実現することができます。また豊富なツールにより広範囲にわたる細部の調整を可能にし、より正確に、より感覚的に作業を行うことができます。これらを搭載したUVI FalconをAvidからすべてのPro Toolsアクティブユーザーの皆様へご提供いたします。  • プリセット音源やサンプルライブラリをドラッグ&ドロップにより、スピーディーにレイヤーやサウンドが構築できます。  • 15個の最新式のオシレイターと80種類以上のエフェクトにより、唯一無二のサウンドを実現します。  • 複数のレイヤーを駆使して複雑かつ重厚なサウンドを可能にします。  • 自由自在な操作性に加え、シンセモジュール機能、エフェクト機能により、繊細で正確なサウンドを構築することができます。  • カスタムスクリプト機能により、機能の拡張が自在に行え、自由な操作性が可能になります。 • Plugsound Avid Editionを始めよう UVI Falconに付属するPlugsoundは世界有数のサウンドデザイナー達により、高品質なサウンドを手に入れるためにデザインされた2.6 GBのサンプルライブラリです。キーボード、ドラム、シンセサイザーなどのサウンドに加えて弦楽器、ループ音源、アンビエントサウンド等も高水準のクオリティで搭載されており、広範囲にわたる分野でその性能を発揮することができます。 • 豊富なプリセットを活用しよう UVI Falconは操作機能の有用性だけでなく1000種類の高品質なパッチによるファクトリープリセット音源も搭載されています。これらのプリセット音源は世界有数のサウンドデザイナー達により開発され、名機と言われるアナログシンセサイザーやパーカッション、フィジカルモデリング、サンプルベースのマルチグラニュラーサウンド、マルチオシレーターを駆使したハイブリッドサウンドを実現しました。これらのプリセット音源は日々の作業を簡単にし、あらゆる分野の音楽、サウンドデザインに対応することが可能です。 これらの製品はPro Toolsの年間サブスクリプションと年間アップデート&サポートプラン期限内のユーザー様にのみ無料で提供しております。 有効なUpgradeプランをお持ちのお客様のiLok IDへ順次サブスクリプション・ライセンスがデポジットされますが、完了までに数日〜2週間ほどお時間をいただく場合がございます。 こちらのインフォメーションはすべてのPro Toolsシリーズを対象としております。
Review
2018/11/29

いよいよ日本上陸!! VENUE | S6L-24C

世界中で大成功を収めたVENUE | Profileコンソールの後継機種となるS6L-24C。InterBEE2018でStage32と併せて国内初のお披露目となりましたが、それに先立ってAvid Japanにて内覧会が開催されました。今回の新ラインナップは、シリーズ最大規模となる48フェーダーのS6L-48D、ディスプレイも取り除きもっともコンパクトな仕様となるS6L-16C、そして従来のS6L-24Dからチャンネル・タッチ・モジュールが2台抜き取った形となったS6L-24「C」の3つのコントロールサーフェスを中心に、エンジン・I/Oも新機種が加わって、より一層ユーザーの選択に柔軟性が高められた格好です。 ◎ VENUE | S6Lシリーズのメリットとは!? 今回のリリースで、サーフェス5種・エンジン3種・I/O4種のラインナップとなりましたが、各I/Oやエンジンはどのモデルでも用途に合わせた組み合わせが可能というのがこのシステムの美点。思いつくままの組み合わせを自由にシステムアップできることになり、エンジン・I/Oに余裕をもたせた構成を行なっておいて会場規模によって持ち込むサーフェスをセレクトするといった運用ももちろんのこと。この従来の製品も含めた100%クロスコンパチで自由にシステム構築できる事がS6Lシステム最大のメリットと言えるのではないでしょうか。 そして、同時に発表されたStage32はラック1基で計32入力/出力チャンネルが可能なモデル。これまでの16もしくは64というI/Oの選択肢にも落としどころが設定されています。Stage16はシャーシと各I/Oモジュールが一体となっているため標準搭載されているI/O数をカスタムできませんが、このStage32はフラッグシップであるStage64と同じモジュールを搭載、用途に合わせたI/Oの変更が可能な上にフラッグシップの音質クオリティをきちんと確保している、ということになります。 ◎オプションの組み込みでWAVESとの親和性がさらにUP !! 言わずもがな、、ではありますが、VENUEシステムはソフトウェアプラグインがインサートできます。通常WAVESプラグインをインサートする場合、SoundGrid Extremeを使用して操作用PCにてプラグインの操作を行いますが、S6LではSoundGrid Rack for VENUEとWSG-HD Waves SoundGrid Option Cardをインストールする事により、プラグイン用PCも必要なくS6Lのサーフェス上でWAVESプラグインの操作が可能、スマートにシステムの構築が行えます。S6LシステムはWAVESプラグインをDSPリアルタイム処理する事が可能となるため、他社製品と比べてもシステムに組み込みやすくWAVESプラグインに一番近しいデジタルミキサーコンソールと言えるかもしれません。 気になっていたミキサー本体のサイズ感は!? ツアーやPA現場などで必ず出てくる課題、となればまず仮設現場でのセッティングです。ミキサーを持ち上げる際に何人くらい人手が必要なのか、どのように立ち上げるかなどで、実際現場に立ち会う人数を決める事もあるのではないでしょうか。選択肢が豊富だからこそ、今一度サイズ確認してみます。 (W x H x D) S6L-48D / 1934mm x 前面91mm 背面388mm x 787mm S6L-32D / 1304mm x 前面91mm 背面388mm x 787mm S6L-24D / 989mm x 前面91mm 背面388mm x 787mm   S6L-24C / 989mm x 前面91mm 背面205mm x 787m S6L-16C / 671mm x 前面91mm 背面205mm x 787mm チャンネル・タッチ・モジュールの有無とフェーダー数のほかは共通の仕様で、重量も24Dは54kg、24Cは38kgと16kgの差異。ディスプレイモジュールだけではないかもですが、意外と重量差ありますね。実際に会場で確認してみると、24Cは通常であれば2名で両サイドから卓本体を持ち上げてセッティングする事ができるイメージ、24Dなら3名、32Dになると4名の手が必要となるくらいのサイズ感でしょうか。 各ラインナップでコストと照らし合わせて適正なスペックを選択するだけでなく、各現場に合ったサイズ感を重視する意味でも、サーフェスやI/Oが組み合わせ自由となる点はやはりメリットです。 今回国内初お披露目となったS6L-24Cは、当時も人気を博したVENUE | Profileの後継に位置付けられているだけあり、そのサイズや規模感もまさにベストマッチ。リプレイスにあたって非常に具体的な提案がAvidからなされている状況です。もちろんコスト面でも48D/24Dより優位であることは間違いなく、サウンド面は向上、スペースファクターもクリアできているとすれば、、、これはお試しいただくほかありません。お問い合わせは06-6131-3078 / ROCK ON PRO Umeda 森本・中川まで、お待ちしております!!
NEWS
2018/11/12

Proceed Magazine 2018 – 2019 販売開始 ~特集:未来は何を創るのか

未来は何を創るのか!? 今号のProceedMagzineではIT業界でも大規模な導入が起こり得る「最後の大物」、SMPTE ST-2110を特集詳細解説します。そのほか、teenage engineering代表 Jesper kouthoofd氏のインタビュー、最新の導入事例の数々、デジタルマイクやVR音響のノウハウから注目プロダクトのレビューまで充実の内容でお届けします! ◎Proceed Magazine最新号 販売開始!! ◎特集:未来は何を創るのか。 MR × AI = REAL? 未来は何を創るのか。 本来人間の未来を創るのは、ビジョンと情熱だと考えて生きてきた。仮想現実を提供するインテリジェンスを持った思考回路が 導入され未来を築くベースを構築しつつある。 現実の世界では、歴史の中で生み出せれたレガシーなテクノロジーが多くの香りを醸しだし愛されている。それ自体を取り込む REAL? が、日常を作り始めているのでは?とふと思ってしまう。この Proceed Magazine は、インテリジェンスを完成させるナレッ ジレゴブロックだ! SMPTE ST2110、Dolby Atmos、MPEG-H、AMS Neve Genesys、Public Cloud、Binaual、AES67、Ambisonics、Dante、 MAM、Ravenna、HRTF、PAM、Auro 3D、NMOS、AES-42、Wave Field Synthesis、ST2059、PaaS、PTP、SaaS、VoIP…さ!あ!未来は何を創るのか。私達のために。 This is Proceed Magazine2018-2019. Proceed Magazine 2018-2019 全152ページ 定価:500円(本体価格463円) 発行:株式会社メディア・インテグレーション ◎SAMPLE   ◎Contents   ★ People of Sound teenage engineering Jesper Kouthoofd   ★ ROCK ON PRO 導入事例 Artware hub / 株式会社松竹映像センター   ★ 特集 SMPTE ST-2110 未来は何を創るのか ? Audio Network の現在地 / SMPTE ST-2110 とは何か !? AES67 / Dante / Ravenna / Focusrite / RIEDEL   ★ ROCK ON PRO 導入事例 京都造形芸術大学 / 専門学校 ESP エンタテインメント福岡 株式会社毎日放送   ★ ROCK ON PRO Technology avexR studio / Avid Media Central / Le Sound SpaceMotors Blackmagic Design Fairlight / VideoSlave 4   ★ REAL SOUND Project デジタル・マイクロフォン PART-3 / 解説 VR!! 深く知る Ambisonics の世界   ★ Build Up Your Studio パーソナル・スタジオ設計の音響学 その 18 中高域の世界へ:後編(臨界距離に振り回される)   ★ Rock oN Sound Trip 2018 ELEKTRON MUSIC MACHINES   ★ Power of Music Klevgrand   ★ Product Inside iZotope RX7 Jonathan Wyner   ★ BrandNew Native Instruments / Universal Audio / WAVES / Antelope / JBL / Thermos / ADAM / Upton Game Changer Audio / MOOG / Nord   ★ FUN FUN FUN CEDEC 2018 / アメリカンミュージックの神髄   ◎↓Proceed Magazineバックナンバーも販売中↓ Proceed Magazine 2018 Spring Proceed Magazine 2016-2017 Proceed Magazine 2016 Summer
Event
2018/11/07

Inter BEE 2018 出展情報 ~ Pro Tools、Dolby、Dante、Share Strage、AoIP、次代を担うテクノロジーを体験!~

歴史と実績に裏づけされた、日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展として、コンテンツビジネスにかかわる最新のイノベーションが国内外から一堂に会する国際展示会であるInter BEE。ROCK ON PROはこの国内最大級の放送機器展示会Inter BEE 2018に今年も出展いたします。ホール6 #6213 Avid パートナーブースではDolby Atmos+Danteという最新ソリューションとPro Toolsの連携を体験いただけるシステムや、Avid Nexisがポストプロダクションにもららす恩恵を実際にPro Toolsと接続した形でご体験いただける展示など、最新ソリューションをハンズオンで展示するほか、関連するセミナーを実施いたします。また、ホール2 #2115ではオーディオ/ビデオ IP 伝送の最新規格であるSMPTE ST-2110について、詳しくお伝えするセミナーを実施いたします。 AVIDブース:HALL 6 #6213 ROCK ON PROは、ホール6 #6213 Avid パートナーブースへ出展いたします。ブース内では最新のソリューションとPro Toolsの連携を、実際にPro Toolsシステムと接続した状態でハンズオンでお試しいただける形で展示を行います。「AUDIO POST」コーナーではAvid Nexis + Pro Tools | Ultimateというシステムでポストプロダクションにおけるシェア・サーバーの活用を、「Pro Mixing」コーナーではDolby Atmosの最新Version.3によるミキシング環境をAoIPであるDanteを使いPro Tools | Ultimate + Pro Tools | MTRXというシステムでの動作を、それぞれ実際に触れていただける展示を展開します。さらに、展示内容をより深く理解いただくためのROCK ON PRO Product Specialistらによるセミナーを毎日実施。最新のワークフローを実現するAvidソリューションを体験いただけます。 セミナー情報 ◎Pro Tools とFlux:: Spat Revolution によるイマーシブ・3Dオーディオ制作の最新ソリューション 〜 創業開発者 ゲイル・マルティネ スペシャル・デモンストレーション〜 Dolby Atmos、Ambisonics、22.2ch など主要フォーマットに全て対応し、イマーシブ・オーディオ・ツールの決定版として導入が進むSpat Revolution。ProTools 環境でのフロー、今後の進化をFlux:: 創業者である ゲイル・マルティネ氏にご紹介いただきます。 場所:ホール6 #6213 Avidブース内 メインステージ 時間:各日 15:20 〜 15:40 講師:Flux:: Founder, CEO, Head Software Engineering ゲイル・マルティネ 氏    株式会社メディア・インテグレーション 山口 哲 ◎イマーシブ・3Dオーディオ制作のためのFlux:: Spat Revolutionの活用 〜 効率的で自由度の高い立体音響制作〜 ルーティング、トランスコードなど自由度も高く、効率的かつ創造性に優れたフロー。Dolby Atmos、Ambisonics、22.2ch などに対応したイマーシブ・オーディオ・ツールの決定版となるSpat Revolution を今後の開発予定とともにご紹介します。 場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ 時間:各日 12:00 〜 12:20 講師:株式会社メディア・インテグレーション MI事業部 山口 哲 ◎Pro Toolsに最適化されたAvid NEXISの活用 〜ネットワークストレージを活用したAudio Productionワークフロー〜 オーディオポストプロダクションでの作業に大きな共有ストレージ容量は必要がないと思われがちですが、効果音の作成やナレーション、BGMなど、気づいてみればミキシング作業においては何人もの人との協調作業が必須となります。データコピー等の雑務を減らし、そのフローをスムーズに効率良くすることができるツールの1つが共有ストレージです。Avid NEXISストレージを中心とした、オーディオワークフローの効率化についてご紹介いたします。 場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ 時間:各日 13:40 〜 14:00 講師:ROCK ON PRO 桜井宏樹 / 丹治信子 ◎Pro Toolsで制作するDolby Atmosプロダクション 〜毎日放送での「音舞台」を題材とした事例を中心にワークフローご紹介〜 国内でも制作が盛り上がりはじめたDolby Atmos、株式会社毎日放送の制作する「音舞台」でもDolby Atmosフォーマットへ制作が行われた。今年の「音舞台」は東大寺での開催、その際に収録された音声をImmersiveに展開。将来の配信などに備えたテストケースとして、制作が行われている。その素材を題材にDolby Atmosのワークフローの最新バージョンとなるV3、RMUのMac対応など最新情報を盛り込んでお届けします。 場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ 時間:各日 14:40 〜 15:00 講師:ROCK ON PRO Product Specialist 前田洋介 ハンズオン展示情報 ◎オーディオ・ポスト "AVID NEXISによる働き方改革、作業の効率を徹底重視するシステムの現在" まだまだ一般的とは言えないAudio Productionにおけるデータサーバーの活用。Avid NEXIS シリーズが実現するデータ共有による効率的なワークフローを体感いただけるシステムアップ。Pro Tools、Media Composerとのオーケストレーションにより、具体的にどれくらいの作業効率の向上が実現できるのか?実稼働するシステムをハンズオンで、そのレスポンス、具体的なワークフローをご確認いただけます。 ◎プロミキシング "AoIPを活用した最新のAudio Mixing環境でDolby Atmosを実現" Immersive Audioとして確固たる地位を築くDolby Atmosの最新Version.3によるMixing環境をAoIPであるDanteを使い構築。AVIDの最新ハードウェアMTRXによる柔軟かつ大規模なシステムの実例を展開します。併せてミキシングに欠かせないPlugin各種、そして初登場となるVideo Slave4をハンズオンで展示します。最新のシステムアップをご確認ください。 ◎イマーシブ・オーディオ "イマーシブ・オーディオ・ツールの最先端を体験" イマーシブ・オーディオ・ツールの最先端、FLUX:: Spat Revolution、Nugen Audio Halo Upmixを中心にポスト・プロダクションの効率性と音質の向上を提供するソリューション、ツールをハンズオン、よりリアルにワークフローの向上を体感いただけます。   Media Integrationブース:HALL 2 #2115 HALL 2 #2115 Media Integrationブースでは、これからのオーディオ/ビデオ伝送を担うであろう重要なテクノロジーであるSMPTE ST-2110を基礎から深く知ることが出来るセミナーを行います。昨年のIBCのタイミングで策定され、ビデオ/オーディオ、同期信号、コントロール信号を1本のEthernetケーブルによってパケット伝送することが可能なこの規格。従来のオーディオ伝送との違い、既存システムとの置き換え/相互運用の可能性など、ナレッジを一気にブラッシュアップする機会を提供します。 >>(株)メディア・インテグレーション MI事業部のWebサイトはこちら セミナー情報 ◎ProceedMagazine連動セミナー!! 次世代の伝送規格SMPTE ST-2110徹底解説!! 〜AES67を内包するVoIP規格ST-2110。音声映像の統合されたNetworkの全貌〜 IBC2017でついにその姿を表したSMPTE ST-2110。汎用のTCP/IPを利用し、すでに十分に発達したITインフラとの一体化を見せ始めている。IT業界では「最大かつ最後の大物」として大きな注目を集めている分野の真打ちとも言えるこの規格。すでに十分な広がりを見せるAES67がこの規格内でどの様な広がりを見せるのか、その概要を解説する。 場所:HALL 2 #2115 Media Integrationブース内 セミナー・ステージ 時間:11/14(水) 16:00     11/15(木) 16:00     11/16(金) 12:00 講師:ROCK ON PRO Product Specialist 前田洋介
Brand
2018/10/26

LE SOUND / SpaceMotors

SpaceMotors¥19,440(本体価格 ¥18,000) Description Sci-Fiビークルのサウンドを自由自在にクリエイト!   主な仕様 ・Mac OS / Windows ・64bit (AAX, VST, AU, VST3 対応) ・Pace iLok認証 SpaceMotorsは、ポッドレーサー、トランスフォーマー、トロン、ブレードランナーといったSFカーの、複雑でダイナミックなエンジン・サウンドを簡単に制作できるプラグイン・シンセサイザーです。 主な特徴 - 複雑なSFカーのサウンドをたったひとつのノブでコントロール - 自動的にリンクするモジュレーターがダイナミックな加速/減速のニュアンスを生成 - ピュアなオシレーター・サウンドからアグレッシブなマシン・サウンドまで幅広い表現力 - 豊富なファクトリー・プリセットによって制作をスピードアップ   プラグイン画面 1 - Speed:加速/減速による効果を生成するメイン・コントローラーです。ほかのモジュールに対するグローバル・コントローラーとしても機能します。 2 - Oscillator モジュール:3ボイスのオシレーターが複雑なハーモニクスを持つサウンドを生成します。 3 - Reactor モジュール:オシレーターで生成されたサウンドにディレイベースのエフェクトを掛けることで、ピッチシフトのような効果を与えます。 4 - Noise モジュール:生成されたサウンドにノイズ・レイヤーを付加します。様々なバリエーションのスペーシーなヒス・サウンドを加味することが出来ます。 5 - Granulator モジュール:SpaceMotorsの"コア・サウンド"を生成します。幅広いSFカーのサウンドをクリエイトします。 6 - Tremolo & Vibrato エフェクト:サウンドに複雑な"揺れ"を加味します。 *本製品を使用するためにはiLokが必要です。
Support
2018/10/26

Pro Toolsのアクティベーションに失敗する場合の対処法 ~Pro Tools Information~

Avidより、Pro Toolsのアクティベーションが完了しない場合の対処法について下記の通りお知らせがございました。情報を転載いたしますので、同様の事例でお困りのユーザー様は下記をご参照ください。 ■ アクティベーションに失敗する場合の対処 ■ 現在、Pro Tools製品のSystem IDを更新しようとした際、あるいは、新規/再加入版のアクティベーションを行おうとした際に 「message “Sorry, there was an error redeeming your support code.”」 というエラーが表示され、アクティベーションが完了しない例が報告されています。 エラーメッセージに詳細な情報が表示されず申し訳ありません。 このエラーは、多くの場合、Avidアカウント内の「請求先および配送先」情報が正しく設定されていない場合に発生します。 Avidアカウント内の 「My Profile and Billing > Avidストアの配送と支払い」 にて、正しい住所・お名前などを「すべてアルファベット」で記入し、情報を更新してください。 その後で、再度アクティベーションをお試しください。 住所変更の際に 「有効なサブスクリプションがあるために変更できない」と言ったエラーが出た場合には、 ・ お客様のAvidアカウントメールアドレス ・ アクティベーションコード ・(更新の場合)対象のSystem ID を記載の上、サポートポータルよりAvidサポートへご連絡ください。
NEWS
2018/10/22

Pro Tools 2018.10 リリース情報 ~Pro Tools Information

Pro Tools 最新版となる2018.10のリリース情報がAvidより届きました。今回は新機能の追加はなく、バグフィックスのためのアップデートということで、互換性とバグフィックスに関する情報がメインとなっています。 ◎macOS High Sierra 10.13.4以降のバージョンは依然として推奨外となります。現在macOS環境でPro Toolsをご使用の方はアップデートをお控えください。 ■ Pro Tools 2018.10 リリース情報 ■ 先日、Pro Tools 2018.10がリリースされました。互換性については、以下の点をご確認ください。 ・macOS High Sierra (10.13.3), macOS Sierra (10.12.6) および Mac OS X 10.11.6 (El Capitan) がサポートされます。 ・macOS High Sierra 10.13.4以降のバージョンは、低バッファーサイズにおけるパフォーマンス問題が報告されているため、推奨されません。 ・重要:OS 10.10 (Yosemite) は、互換検証においてグラフィック表示上の問題が多数確認されたため、Pro Tools 2018.1以降ではサポートされません。Pro Tools 2018.10のインストール前に必ずOSのアップグレードを行ってください。 ・Windows 10 64-bit, Windows 8.1 64-bit がサポートされます。Windows 7はサポートされません。 macOS 10.14 MojaveとPro Toolsの互換性の最新情報については、以下のページをご参照ください。 macOS Mojave (10.14) の対応状況(現時点ではサポートされません) http://avid.force.com/pkb/KB_Render_Compatibility?id=kA15A000000G1GP&lang=ja Pro Tools システム要件 http://avid.force.com/pkb/KB_Render_Compatibility?id=kA15A0000003UsL&lang=ja Pro Tools 2018.10 リリース情報 http://avid.force.com/pkb/KB_Render_Download?id=kA25A000000FUMx&lang=ja AES 2018 Avid関連情報について 先週、NYCにて開催されたAES 2018からのROCK ON PROレポーターによる速報も合わせてご覧ください。 AES 2018 Day1 : AVID (Pro Tools Contorol, Pro Tools 2018.10) https://www.miroc.co.jp/report/aes2018-day1-avid/ AES 2018 Day3 : AVID (MTRX 新オプションカード -SPQ, DANTE-) https://www.miroc.co.jp/report/aes-2018-day3-avid/
Sales
2018/10/09

【期間限定】Nuendo8クロスグレードキャンペーン開始

TV/シネマポストプロダクション、ADR、映画音楽やゲーム音楽制作まで、業務効率を上げるための数々の機能を搭載したプロフェッショナルDAWであるSteinberg Nuendo。そのNuendo導入のチャンスとなる期間限定クロスグレード・キャンペーンが公開されました。現在お持ちのDAWを手放すことなく、イマーシブオーディオ/Ambisonicsといった最新メディアへの対応、Audiokinetic Wwiseとの連携をさらに緊密にするGame Audio Connect 2の実装など、プロフェッショナルな現場で即戦力となり得る機能を搭載したNuendo 8を導入する絶好の機会をお見逃しなく。 Nuendo 8 の詳細についてはこちら>> Nuendo 8 の新機能についてはこちら>> キャンペーン詳細 ■キャンペーン名称 Nuendo 8 クロスグレードキャンペーン from Cubase Pro, Pro Tools ■内容 対象製品をお持ちのお客様は、下記ご購入方法に基づいて 「Nuendo 8/R」をキャンペーン特別価格にてご購入いただけます。 ■価格 通常希望小売価格:¥205,200(税込) → キャンペーン価格¥151,200(税込) ■対象のお客様 下記対象製品をお持ちのお客様 ・Cubase Pro ( 8 / 8.5 / 9 / 9.5) ・Pro Tools HD/HDX(7 / 8 / 9 / 10 / 11 / 12) ・Pro Tools Native(9 / 10 / 11 / 12) ・Pro Tools Ultimate 2018 ※First / Artist / Elements/ Essentials / AI / LE、 その他Free Bundle版は対象外とさせていただきます。 ■ご購入方法 ・ご購入申込書に必要事項を記入 ・対象商品ユーザーである証明書(※)のご提出 上記書類がメーカーで確認された後、商品のお届けとなります。 ※キャンペーン対象ソフトウェアのフルリテール版正規登録ユーザーであることの証明書 (例:ソフトウェアライセンスカード、ダウンロードコード記載書類のコピー、  USB-eLicenser番号、ダウンロード購入が証明可能な領収書メールなど) ■期間 2018年10月9日(火)~2018年11月26日(月)
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Solution

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制作環境を飛躍させる

Focusrite Red/RedNetシリーズ ~Danteネットワークによる最新レコーディング環境

Ethernetケーブルによるビデオ/オーディオの伝送に関する規格統一を図ったSMPTE ST2110の制定により、にわかに注目度の上がるAoIP(Audio over IP、ネットワークオーディオ)。そうした動きに応えるように、新製品にDanteコネクションが搭載されている例や、Dante拡張カードのリリースなどのニュースを多く目にするようになりました。   Focusrite Redシリーズ / RedNetシリーズはDanteに標準対応するインターフェイスをラインナップ、必要な規模に応じた柔軟なセットアップと高い拡張性を提供します。Pro Tools HDXやMADIにも対応し、既存システムとの統合にも対応。イーサーネットケーブルで完結するシンプルなセットアップ、信頼度の高いオーディオ伝送、ネットワーク形成による自由なルーティングなど、Danteの持つ利点を最大限に享受することが可能です。 ◎主な特徴   ・柔軟で拡張性の高いシステム設計 ・ネットワーク内であれば完全に自由なルーティング ・Pro Tools | UltimateやMADIなどの既存システムとの統合性の高さ ◎システム構成例1 RedNetシリーズによるレコーディング用途のスタジオセットアップ例。豊富なI/Fにより音声信号の入り口から出口までをDanteによって完結することが可能。Pro Tools | HDXシステムとの統合により、既存のワークフローを最大限維持したまま、Danteによる利点を導入します。システムの中心にコンソールがない環境でも、マイクプリ、キュー/トークバック、モニターコントロールといった業務に欠かせない機能を手元からコントロールすることが出来ます。 ◎システム構成例2 コンパクトなDanteシステムに、WAVESプロセッシングを追加した例です。1Uの筐体に8IN/10OUTアナログ(マイクプリ4機を含む)、16x16デジタル、32x32Danteという豊富なI/Oを備えたRed4PreはDigiLinkポートも標準搭載。WGS Bridge for DanteがDanteネットワークとSoundGridネットワークをシームレスに統合。システムにニアゼロ・レイテンシーのWAVESプロセッシングを追加します。

Music

Pro Tools | S6 + Pro Tools | MTRX ~ミキシングを再定義する革新的コンソール・ソリューション~

DAWの進化とともに、今ではほとんどすべての作業はPro Toolsの内部ミックスで完結するようになりました。Pro Tools | S6は豊富なビジュアル・フィードバックと高いカスタマイズ性・拡張性により、Pro Toolsが持つ多くの機能へより素早く確実にアクセスすることを可能にします。Avid最新のI/OでもあるPro Tools | MTRXに備わるモニターコントロールセクションはPro Tools | S6からコントロールすることが可能。高品位なサウンドをPro Toolsシステムに提供するだけでなく、Pro Tools | S6システムを最新のミキシング・ソリューションへと昇華します。 ◎主な特徴   ・圧倒的に豊富なビジュアルフィードバックにより、必要な情報を素早く確実に把握。   ・モジュール方式のハードウェアは必要十分な規模での導入と、導入後の拡張に柔軟に対応。   ・タッチスリーンを採用したセンターセクションで、多くの機能を素早くコントロール。   ・Pro Tools | MTRXとの連携により、モノ、ステレオからマルチチャンネル・モニタリングまでを完璧にコントロール。   ・最大8までのEucon対応アプリケーションを同時にコントロール。大規模セッションでも効率的にオペレートが可能。 ◎システム構成例1 Pro Tools | S6 + Pro Tools | MTRXのもっともシンプルな構成。Pro Tools | MTRXは筐体にMADIポートを備えるほか、必要に応じてオプションカードを追加すれば様々な信号のハブとしてまさにコンソールとしての役割を担うことが可能です。 ◎システム構成例2 最大8つまでのEUCON対応DAW/アプリケーションと同時に接続可能なPro Tools | S6のポテンシャルを活用すれば、複数のPro Toolsシステムを1枚のサーフェースでコントロールすることが可能です。フェーダーひとつから、どのシステムのどのチャンネルをアサインするかを選択出来るため、各DAWでS6のエリアを分担して作業することも可能です。

Post

Pro Tools | S3+Pro Tools | Dock ~Mixをフィジカルにコントロールするプロフェッショナルシステム~

Avid製ライブコンソールS3Lのために開発された堅牢性とスムースな操作性を兼ね備えた16フェーダーのコントロールサーフェスPro Tools | S3。Pro Tools | S6で培われたノウハウを詰め込んだPro Tools | Dock。コンパクトでありながらミックスをパワフルにコントロールするこの組み合わせがあれば、大型コンソールに匹敵するほど効率よくミックス作業を行うことが可能になります。 主な特徴   ・上位モデルならではの堅牢でスムースな16フェーダー、豊富なノブ/スイッチ、タッチストリップなどにより、プロジェクトを素早く俯瞰、コントロールを容易にします。(Pro Tools | S3)   ・4in/6outのCore Audioインターフェースとして動作(Macのみ)。2つのXLR(Mic/Line)、2つのTRS(Line)インプットも兼ね備え、ボーカルやギターを急遽追加しなければならないような時にも素早く対応が可能。(Pro Tools | S3)   ・Pro Tools | Control appをインストールしたiPadとともに使用することで、Pro Tools | S6のセンターセクションに匹敵するコントロールを実現。(Pro Tools | Dock)   ・iPadによるタッチスクリーンと高品位なハードウェアにより、スピードと操作性を両立。(Pro Tools | Dock) システム構成 iPadはWiFi圏内にあればPro Tools | Control appからPro Toolsをコントロールすることが出来ます。iPadを持ってブースへ入り、ブースからレコーディングを開始/停止するなどの操作が可能。LANポートを備えたWiFiルーターを導入することで、S3、Dock、コンピューターのネットワークとiPadの安定運用を同時に実現する組み合わせがお勧めです。ご要望に合わせたiPad、WiFiルーターのモデルをお見積もりいたします。

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Pro Tools | Ultimate + HD MADI ~多チャンネル伝送を実現したコンパクトシステム~

多数のチャンネルを扱うことの多いポストプロダクション業務。5.1chサラウンドが標準となり、Dolby Atmosや22.2chなどのイマーシブサラウンドが浸透していくことで、MA作業で必要とされるチャンネル数はさらに増加していくと考えられます。Pro ToolsシステムのI/OにPro Tools | HD MADIを選べば、わずか1Uの筐体でHDXカード1枚の上限である64ch分の信号を外部とやりとりすることが可能になります。96kHz時も48kHz時と同様、64chを伝送することが出来ることも大きな利点です。 ◎主な特徴   ・わずか1ラック・スペースのインターフェースと2本のケーブルを介して、最大64のオーディオ・ストリームをPro Tools | HDシステムと他のMADIデバイス間で送受信できます。   ・すべての入出力を超高品質でサンプルレート変換できます。セッションを変換したり、外部MADIデバイスをダウンサンプリングしたりする面倒な作業は不要です。   ・別のフォーマット・コンバーターを用意することなく、オプティカル接続と同軸接続の両方で、さらに多様なMADIデバイスをレコーディングのセットアップに追加できます。   ・出力に対してサンプル・レート変換を使用する際、専用のBNCワード・クロックおよびXLR AES/EBU接続を介して外部クロックと同期することで、ジッターを最小限に抑えます。 ◎システム構成 Pro Tools | HD MADIの構成は、HDXカード1枚に対してI/O 1台という極めてシンプルなもの。MADI対応の音声卓となら直接接続が可能なほか、音声卓との間にMADIコンバーターを導入すれば、Pro Toolsと様々なデバイスを多チャンネルで接続することが可能となります。

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システムの実例を知る

株式会社カプコン様 / Dynamic Mixing Room-[B] / [W]

日本を代表するゲーム会社カプコン。前号でもリニューアルしたDynamic Mixing Stageをご紹介したが、それに続いて新たにDynamic Mixing Room-[B]とDynamic Mixing Room-[W]が作られた。VR、イマーシブといった言葉が先行しているゲーム業界におけるオーディオのミキシングだが、それらのコンテンツを制作する現場はアプローチの手法からして大きな変革の中にある。ゲームではカットシーン(ユーザーが操作をせずに動画が再生され、ストーリを展開する部分)と呼ばれるMovieとして作られたパートが次々と減少し、昨年リリースの同社『バイオハザード7 レジデント イービル』では遂にカットシーンが全くないというところにまでたどり着いている。こういった背景もあり、しっかりとした音環境でDynamic Mixingを行える環境というものが切望されていた。その回答が前回ご紹介したDynamic Mixing Stageであり、今回のDynamic Mixing Roomとなる。 ◎求められていたDynamic Mixing「Room」 昨年のDynamic Mixing Stageは各素材の最終確認、そして最後の仕上げという部分を重点的に担っているが、その途中の生成物であるオーディオデータが全てファイナルのミックス時点でオブジェクトに埋め込まれ、プログラムされていくわけではない。しかし、オーディオデータをプログラムに埋め込み、他のサウンドとの兼ね合いを確認しながら作業を行う必要が日に日に大きくなっているのが現状だ。カプコンでは各スタッフに専用のパーテーションで区切られたブースが与えられ、5.1chでの視聴環境が用意されている。ただし、あくまでも仮設の環境であり、スタジオと比べてしまえば音環境としてお世辞にも良いと言えるものではない。ほかにもPro Toolsが常設された防音室が用意され、そこへシステムを持ち込み確認作業が行えるようになっていたが、常設のシステムに対して持ち込みのシステムを繋ぎ込む必要があるため、それなりのエンジニアリング・スキルが要求される環境であった。この環境改善を図ったのが今回の目的の第一点となる。   もちろん、ここにはサウンドクオリティーへの要求も多分に含まれる。海外のゲーム会社を視察した際に、クリエイター各自が作業スペースとしてスタジオクラスの視聴環境で作業しているのを目の当たりにした。これが、世界中のユーザーに対してゲーム開発をおこなうカプコンとして、同じクオリティーを確保するための重要な要素と感じた。各クリエイターが、どれだけしっかりとした環境でサウンドクオリティーを確認することが出来るのか。これこそが、各サウンドパーツレベルのクオリティーの差となり、最終的な仕上がりに影響をしているのではないか、ということだ。これを改善するため、自席のシステムそのままにサウンドの確認を行うことのできるDynamic Mixing Roomへとつながっている。   さらにもう一つ、VRなど技術の発展により、3Dサラウンド環境での確認が必要なタイトルが増えてきたというのも新設の大きな要因。昨年、Xbox OneがDolby Atmosに対応したことなどもその一因となったそうだ。今回はスピーカーの増設だけでその対応を行うということではなく、やるのであればしっかりとした環境自体を構築する、という判断を後押しするポイントになったという。   そして、Dynamic Mixingにおいてサウンドを確認するためには、DAWからの出力を聴くのではなくゲーム開発機からの出力を聴く必要がある。ゲームエンジンが実際に動き、そこにオーディオデータがプログラムとして実装された状況下でどの様に聴こえるのか、プログラムのパラメーターは正しかったか?他のサウンドとのかぶりは?多方面から確認を行う必要があるからだ。そうなると、自分の作っているゲームの開発機を設置して、繋ぎ込んで音を聴くというかなりの労力を要する作業を強いられてしまう。 すでに開発中のデータ自体はネットワーク化されておりサーバー上から動くが、端末はそのスペックにあった環境でなければ正確に再現されない。今回のDynamic Mixing Roomはそういった労力を極力減らすために設計された部屋ということになる。そのコンセプトは利便性とスピード感。この二つに集約されるということだ。 ◎部屋と一体になった音響設計 実はこの部屋にはDAWが存在しない、2つの鏡写しに作られた黒い部屋と白い部屋。その間の通路に置かれたラックに開発PCを設置して作業が行えるようになっている。接続された開発PCはHDMIマトリクススイッチャーを経由してそれぞれの部屋へと接続される。開発PCの音声出力はHDMIのため、部屋ではまずAV ampに接続されデコード、モニターコントローラーの役割として導入されたRME UFX+を経由してスピーカーを鳴らす。なぜRME UFX+がモニターコントローラーとして採用されているかは後ほど詳しく説明するとして、まずはサウンドに対してのこだわりから話を始めたい。   この環境を作るにあたりリファレンスとしたのはDynamic Mixing Stage。こちらと今回のDynamic Mixing Roomでサウンドの共通性を持たせ、迷いのない一貫した作業を実現したいというのが一つの大きなコンセプト。全てのスピーカーは音響設計を行なったSONAのカスタムメイドでバッフルマウントとなっている。サラウンド側、そして天井に至るまで全てのスピーカーがバッフルマウントという部屋と一体になった音響設計が行われている。このスピーカーは全てバイアンプ駆動され、そのマネージメントを行うプロセッサーはminiDSPが採用されている。miniDSPはFIRフィルターを搭載し、位相問題のないクリアなコントロールを実現している。しっかりとした音響設計がなされたこのDynamic Mixing RoomはDynamic Mixing Stageと高いサウンドの互換性を確保できたということだ。今後はDynamic Mixing Stageで行われているダイヤログの整音と並行してDynamic Mixing Roomで実装された状態での視聴を行う、といった作業も実現できる環境になっているということ。もちろん、同じクオリティーでサウンドを確認できているので、齟齬も少なく済む。まさに「スピード感」というコンセプトが実現されていると言える。 ◎RME Total Mixで実現した柔軟なモニターセクション それでは、次にRME UFX+の部分に移っていきたい。UFX+の持つTotal Mixを使ったモニター機能は非常に強力。複数のマルチチャンネルソースを自由にルーティングすることが出来る。これまで自席で仕込んだサウンドをしっかりした環境で聴こうと思うと、前述のように自席のPC自体を移動させて仮設する必要があった。この作業をなくすために、DiGiGridのネットワークが構築されている。それぞれのPCからの音声出力はDiGiGridのネットワークに流れ、それがDynamic Mixing RoomのUFX+へと接続。もちろんDiGiGridのままでは接続できないため、DiGiGrid MGO(DiGiGrid - Optical MADI Convertor)を介しMADIとして接続されている。   開発PCからのHDMIはAV ampでデコードしてアナログで接続され、各スタッフの自席PCからはDiGiGirdネットワークを介して接続、ということになる。これらの入力ソースはRME Total Mix上でモニターソースとしてアサインされ、ARC USBによりフィジカルにコントロールされる。このフィジカルコントローラーの存在も大きな決め手だったということだ。そもそも複数の7.1.4サラウンドを切り替えようと思うと具体的な製品がなかなか存在しない。フィジカルコントロールも必要となるとAVID S6 + MTRX、TAC System VMC-102 + MTRXといった大規模なシステムになってしまうのが実情。リリース予定の製品にまで目をやったとしてもGrace Design m908がかろうじて実現出来るかどうかというレベルとなる。その様な中でUFX+とARC USBの組合せは過不足のない機能をしっかりと提供することが出来ており、フィジカルなコントローラーを手に入れたことで使い勝手の高いシステムへと変貌している。実は、Total MixのモニターコントロールはRock oN渋谷店頭でスピーカー試聴の切替にも使用されている。こちらも試聴中に数多くの機器をスムーズに切り替える必要があるのだが、その柔軟性が遺憾なく発揮されている実例でもある。 ◎利便性とスピード感を具現化 このDynamic Mixing Roomは3Fに位置しており、先行してDiGiGridのネットワークが構築されたコンポーザーの作業場は14Fとかなり距離が離れていたが、その距離も既存のネットワーク回線を活用することで簡単に連携が実現ができた。ここはネットワークが会社中に張り巡らされているゲーム会社ならではの導入障壁の低さかもしれないが、追加で回線を入れるとしてもネットワーク線の増設工事であれば、と考えてしまうところでもある。ちなみに自席PCはDynamic Mixing Roomから画面共有でリモートしている。画面共有サービスもブラッシュアップされておりレスポンスの良い作業が実現したこともこのシステム導入の後押しになったということだ。   今後は、コンポーザーだけではなくSEスタッフの自席も活用しようと検討しているということだ。全社で70名近いというサウンドスタッフすべてのPCがDiGiGrid Networkを介してつながる、まさに未来的な制作環境が実現していると言えるのではないだろうか。自席PCでサウンドを仕込みながら、持ち込んだ開発PCに実装し、その場で確認を行う。理想としていた制作環境に近づいたということだ。また、開発PCを複数置けるだけのスペースも確保したので、タイトルの開発終了まで設置したままにできる、ということも大きい。HDMI出力と操作画面用のDVI、そして操作用のUSB、これらの繋ぎ変えだけで済むということは、これまで行なっていたPCごと移動するスタイルからの大きな進化。利便性とスピード感。このコンセプトに特化した環境が構築されたと言えるのではないだろうか。   また、Dynamic Mixing Roomには常設のMouseもKeyboardも無い。自席と同じ様な作業環境を簡単に構築できるという考え方のもと、機材の持ち込みは自由にされているということだ。共有の設備にも関わらず、PCもなければMouseもKeyboradもない。少し前では考えられなかったような設備が完成した。言わば「何も置かない」というミニマルさが、ゲームの開発という環境に特化して利便性とスピード感を追求した結果。これは、ゲーム制作だけではなくシェア・ワークフローそのものを考える上で大きな転換点に来ているということを実感する。 すでにITでは数年前からSaaS(Software as a Service)という形態が進化を続けている。手元にあるPCはあくまでも端末として、実際の処理はクラウドサービスとして動作をしているシステム。映像の業界はすでにSaaS、クラウドといったイントラネットから飛び出したインターネット上でのサービスの活用が始まっている。今後は、サウンドの業界もこの様な進化を遂げていくのではないか、そのきっかけとなるのが今回のカプコン Dynamic Mixing Roomの実例なのではないかと感じている。 (手前)株式会社カプコン サウンドプロダクション室 室長 岸 智也 氏 / (奥左)同室 コンポーザー 堀 諭史 氏 / (奥右)同室 オーディオ・ディレクター 鉢迫 渉 氏     *ProceedMagazine2018Spring号より転載

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株式会社タノシナル様 / 多様なスペースが連携するタノシナルな空間

2012年創業のタノシナル。その社名「タノシナル」は関西弁で「楽しくなる」という意味。TV局など制作の第一線で働いていたスタッフが起業した会社だ。「世界にタノシナルことを発信し続ける」という企業理念を掲げ、近年大きな飛躍を遂げている。そのタノシナルが「生きた時間と空間を可視化する」というコンセプトのもとに昨年オープンしたのが、新オフィスとカフェやショップなどが併設された複合施設「CASICA」。ROCK ON PROではこちらに新設されたMAスタジオのお手伝いをさせてもらったのだが、ここからどんな「タノシナルこと」を生み出そうとしているのか?興味深い新たな業態について様々な角度から伺った。 ◎多様なスペースを持つCASICA 現在、タノシナルはコンテンツ制作とイベント制作を主に手掛けるかたわら、同じ建物内でCASICAの運営も行っている。映像やWebなどの制作は、受け手との距離感を縮めることが難しい。そこで、「実際に行かないと体験出来ない空間」を作りたかったというのだ。新木場という立地に材木倉庫をリノベートした空間として誕生した「CASICA」、その存在は何を可視化しているのだろうか?まずは1階部分を見ていきたい。   「生きた時間と空間を可視化する」そのコンセプトに基づいたショップには、古いものと新しいものが区別なく並んでいる。古いものの良さを押しつけるわけでもなく、新しいものの魅力を伝えるだけでもない。それを見た人の感性に委ねる、そんな空気が感じられる。材木倉庫を改造したショップには天井高のある空間を活かして商品が並べられている。やはり高さのある空間というのは、平面では語りきれない広がりをもたらしていると感じる。   「CIRCUS」の鈴木善雄氏のディレクションによるこの空間に入ると、難しく考えるのではなく「何でも良いんだな」とホッとする感情が湧いてくる。カフェのメニューは、身体からの声に耳を傾け、薬膳やアーユルヴェーダの考えをベースに、食や飲み物を通して身体の求めることを可視化。心身の調和を日常から整え、朗らかで心地よい毎日が送れる「食」、をテーマにしている。   そしてショップに設けられたギャラリースペースだが、元々材木倉庫だった建物ということもあり、吹き抜けの空間(木材の昇降用クレーンがあった場所)を利用し、間口は狭いけれど中に入ると天井高13メートルという異空間を演出。取材で伺った際は多治見の焼き物が飾られていたのだが、オープン当初は古いトランクケースの塔(!)がそびえていたとのこと。現在はCASICAで企画をしていろいろと展示を行っているが、今後は個展などの開催も視野に入れているとのことだ。   さらにCASICAの1Fには木工所までもがある。空間デザインを行なった鈴木善雄氏が代表を務める「焚火工藝集団」の職人たちを中心に、シェアオフィス的に活用をしているということだ。古道具・古家具のリペアであったり、新しいものづくりであったり、ここでも新しい、古いにとらわれない制作が行われている。 ◎タノシナルな情報発信 2階には、タノシナルのオフィスがある。冒頭にも記したようにタノシナルは、TV番組の制作に関わっていたスタッフが起業した会社。番組制作も行いつつ、さらにそのノウハウを生かした企業向け映像制作、イベントの制作も行ってきた。その中でも、大成功を納めたのが「品川やきいもテラス」と銘打ったイベント。品川シーズンテラスに全国各地の焼き芋を集め、焼き方、芋の種類それぞれにこだわった数々の焼き芋を楽しめるイベントとして開催された。都心で焼き芋のイベントをやってもそれほど人は集まらないと考えていたが、なんと1週間で3万人が来場!!「真冬に屋外で焼き芋食べたら美味しいよね〜」そんなアイデアに共感して集まったのが3万人と考えると、焼き芋のパワーを感じずにはいられない。写真を見ても来場者の笑顔がはじけているのが分かる。寒空の下で熱々のこだわりの焼き芋を食べる、いつの時代になっても変わらない普遍的な暖かい幸せがそこにはある。ちなみに2018年の第2回は4万3千人が集まったそうだ。   この様に「タノシナル」はやきいもテラスのように楽しさを持ったカルチャーを発信するのが非常に得意。情報の発信力というか、やはりTVに関わるスタッフの見せ方のうまさ、展開力、行動力、そういったバックグラウンドが非常に生きていると感じる。イベント制作を行い、それをWebなどで自己発信を行う。そういった一連の活動が、高いクオリティーとスピード感を持って行われているということだろう。 ◎MA/撮影スタジオ新設、ワンストップ制作を実現 もちろん現在もTVの番組制作を請け負っていて、企画、制作、編集を行っている。これまで、MAだけは外部のポストプロダクションを利用していたのだが、「CASICA」への移転にともない完全に社内ワンストップでの制作を行いたい、ということになり、MAスタジオ、そして撮影スタジオがCASICA内に新設されることになる。MAスタジオを作るという意見は社内ではすぐにOKが出て具体的にスタートを切った。しかし、編集のノウハウは十分にあったが、MAは外注作業であったため、そのノウハウは社内にはない。そこでROCK ON PROとの共同作業の中から過不足の無いシステムアップを行なったというのが当初の経緯。なお、MA新設となったきっかけの一つとしては、近年MA作業を行うための機器の価格が安くなったことが大きいという。年間で外注として支払うMA作業費は、自社でスタジオを持てば2年程度でリクープできるのではないか、というチャレンジも込められているとのことだ。   また、MA室を作る上で音の環境にはこだわった。港、そして倉庫が多いこの地域、近くの幹線道路では24時間ひっきりなしに大型トラックが行き交う。リノベート前の建物の壁はコンクリートパネル一枚、天井も同様にコンクリートパネル一枚。倉庫という最低限の雨露がしのげることを目的とした建物であり、お世辞にも、壁が厚く、躯体構造がしっかりしている、というわけではなかった。今回の新設では、そこに浮床・浮天井構造でしっかりと遮音を行い、またMA室自体の位置も建物の中央に近い場所に設定して外部からの音の飛び込みを遮断している。   もう一つ音に関する大切なポイントは、他のMA室と遜色のないモニタリング環境を整えるということ。やはり、他のMA室での作業に慣れているスタッフから、サウンドのクオリティーにがっかりしないように音質を保ちたい、との声が上がった。そこで、モニターコントローラーにはGrace Designのm905、モニタースピーカーにはADAM S3V とFocal Solo6 Be という組合せ。DAW はPro Tools HDXを中心としたシステムであるが、その出力段はこだわりを持ったシステムとしてサウンドクオリティーを高めている。限られた予算を要所へ重点的に投入することで、最も大切なクオリティーを手に入れたお手本のような環境ではないだろうか。   社内制作のMA作業はもちろんだが、外部のお客様からのMA作業受注や、スタジオ貸出も行っている。外部エンジニアの方にも違和感なく作業を行なっていただけているということだ。やはり音への対処をしっかりと行ったことで、サウンド面でも使いやすいスタジオになっている、ということだろう。サウンド以外でも評価されているポイントが、併設されたCASICAカフェで美味しい食事を冷めることなく楽しむことができる、ということ。やはり、カフェ併設となっている点は、このスタジオにとって非常に大きなアピールポイントであり、長時間の作業が当たり前だからこそ、そのホスピタリティーは心に沁み入る。同じフロアの撮影スタジオは、キッチンスタジオを備えた白壁の空間。撮影がない時間には会議室としても活用するなど、多用途なスペースである。こちらも外部に貸出をしているということなので、興味のある方は問い合わせてみてはいかがだろうか?   今回は機材のみではなく、そのスペースや業態をどう活かして音響制作と連携しているのかという事例を追ったが、そこには垣根のないクリエイティブが存在していたと言えるのかもしれない。日々「タノシナル」なことを生み出しているという同社では、毎月全体での会議が行われ社員からのアイデアを集めているそうだ。そのアイデアも会議で賛同を得られると、早い場合では1ヶ月程度で形になるという。このスピード感が次々と業務を加速させ、2012年に6人で立ち上げたタノシナルはすでに40名以上のスタッフ規模になっている。TV番組・イベントなどの制作をしているスタッフ、そしてスタジオのエンジニア、ショップスタッフ、カフェスタッフ、そういった様々なスタッフが一緒になって「タノシナル」ことを考える。企画とその成長が非常に良い循環となり、シナジーを生み成長している、そんな空気が感じられる取材となった。

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株式会社Zaxx 様 / GZ-TOKYO ROPPONGI

「いまスタジオを新規で作るのであればDolby ATMOS対応は必ず行うべきだ」という強い意志で設計された株式会社Zaxx / GZ-TOKYO ROPPONGI AS 207をレポートする。同社を率いる舘 英広 氏は中京テレビ放送株式会社の音声技術出身。その現場で培った音に対するこだわり、そしてその鋭い感覚によってこのスタジオは計画された。 ◎「これからのオーディオはこれしかない!!」 きっかけは、名古屋にDolby ATMOS対応の映画館が出来た際に、そこで作品を見た瞬間にまで遡るという。テレビ業界を歩んできた舘氏は国内でのサラウンド黎明期より、その技術に対しての造詣が深く、またいち早く自身でもその環境でのミキシングを行っていたというバックグラウンドを持つ。名古屋地区で一番最初にサラウンド環境のあるMAスタジオを持ったのが株式会社Zaxxであり、それをプランニングしたのが舘氏である。地場の放送局がまだ何処もサラウンドの環境を持っていない中でサラウンド対応のMAスタジオを作る。そのような先進性に富んだ感覚が今回のスタジオにも感じられる。   舘氏がDolby ATMOSの作品を映画館で見た際に感じたのは「これからのオーディオはこれしかない!!」というほどの強いインパクトであったという。これまでの平面サラウンドの枠を飛び出した上空からのサウンド、そしてオブジェクトにより劇場中を自由に飛び回るサウンド。次にスタジオを作るのであれば、Dolby ATMOS対応しかないと感じたということ。そしてその思いを実際に形にしたのが、今回のGZ-TOKYO ROPPONGI AS 207だ。仕事があるのか?無いのか?という消極的な選択ではなく、良いものであるのならばそれを作れる環境を用意しよう。そうすればそこから生まれる仕事は絶対にある。仕事が無いのであれば、仕事を作ればいい。それも経営者としての自身の仕事だという。   とはいえ、突然映画のダビングステージを作るという飛躍はなく、従来の作業も快適に行なえ、その上でDolby ATMOSの作業も行うことができる環境を整備するという、今回のGZ-TOKYO ROPPONGIのコンセプトへとその思いは昇華している。   スタジオのシステムをご紹介する前にスタジオに入ってすぐのロビーに少し触れたい。受付があって、打合せ用のスペースがあって、というのが一般的だがGZ-TOKYO ROPPONGIはソファーとバーカウンターがあり、4Kの大型TVでは最新の作品が流れている。新しいアイデアを出すためのスペースとしてその空間が作られているという印象を受けた。また、編集室、MA室の扉はひとつづつが別々のカラーで塗られ、全7室が揃うと一つの虹となるようにレインボーカラーの7色が配置されている。床にもその色が入っており非常にスタイリッシュな仕上りだ。編集室はあえて既存のビルの窓を潰さずに、必要であれば自然光が入るようになっているのも特徴的。もちろん通常は遮光されており色味が分からなくといったことはないが、必要とあれば開放感あふれる空間へと変えることもできる。スペースの居住性にも配慮した意志が感じられる部分だ。 ◎9.1.4chのATMOSシステム 前述のようにMAスタジオを作るのであればDOLBY ATMOSは外せない、というコンセプトを持って完成した今回のGZ-TOKYO ROPPONGI AS 207。こちらに導入されたシステムは、Dolby ATMOS Homeに準拠した9.1.4chのシステムとなっている。部屋に対して最大限のスピーカーを設置しDolby ATMOSの良さを引き出そうというシステムだ。一般的な7.1chのサラウンドシステムに、サイドL,Rが追加され、一番間隔の空くフロントスピーカーとサラウンドスピーカーの間を埋める。実際に音を聴くと、フロントとリアのつながりが非常に良くなっていることに気づく。そして、トップには4chのスピーカー。Dolby ATMOS Homeの最大数が確保されている。スケルトンで4mという極端に高さがある物件ではないが、それでもトップスピーカーをしっかりと設置出来るという良いお手本のような仕上がり。天井平面からしっかりとオフセットされ、真下に入って頭をぶつける心配もない。防音、遮音のために床も上がり、天井も下がる環境の中でこの位置関係を成立させることが出来るというのは、今後Dolby ATMOS対応のスタジオを作りたいという方には朗報ではないだろうか。こちらは、音響施工を担当された日本音響エンジニアリング株式会社のノウハウが光る部分だ。   スピーカーの選定に関しては舘氏のこだわりがある。中京テレビの音声時代から愛用しているというGenelecが今回のスタジオでも候補から外れることはなかった。今回Stereo用のラージに導入された1037B等の1000番台を長く使用してきた中、舘氏にとって初めての8000番台となる8040(平面9ch)、8030(Top 4ch)をDolby ATMOS用に導入したということ。従来のラインナップに比べてサウンドのキャラクターは大きく変わっていないが、高域が少しシャープになったという印象を持っているということだ。   Dolby ATMOS導入スタジオには必ずと言っていいほど設置されているDolby RMUがこのスタジオにはない。これはDolbyの提供するSoftware Rendererの性能が上がり、マスタリング以外の作業のうちほぼ9割方の作業が行えるようになったという背景がある。Home向けであれば仕込みからミキシングまでSoftware Rendererで作業を行うことが出来る。Cinema環境向けであったとしても、この環境でオブジェクトの移動感などを確認することももちろん可能だ。仕上がった作品をRMUを持つスタジオでマスタリングすれば、Dolby ATMOSのマスターデータが完成するということになる。RMUの導入コストと、その作業が行われる頻度などを考え、また本スタジオへMAエンジニアの派遣も行うBeBlue Tokyo Studio 0にRMUがある、というのも大きな理由になったのではないだろうか。なお、本スタジオのシステム導入時点でリリースされていなかったということもあり、Pro ToolsはVer.12.8ではなく12.7.1がインストールされている。Avidが次のステップを見せている段階ではあったが、堅実に従来のワークフローを導入している。 ◎DAD + ANDIAMO + VMC、充実のI/F AS 207のPro ToolsシステムはPro Tools HDX1、Audio InterfaceはDAD DX32が直接Digilinkで接続されている。そして、そのフロントエンドにAD/DAコンバーターとしてDirectout ANDIAMOが加わる。SYNC HDと合わせてもたった3Uというコンパクトなサイズに、32chのAD/DA、3系統のMADI、16chのAESと充実のインターフェースを備えたシステムだ。ただし、充実といっても9.1.4chのスピーカーアウトだけで14chを使ってしまう。またVUも10連ということで、こちらも10ch。さすがはDolby ATMOSといった多チャンネルサラウンドとなっており、その接続も頭を悩ましてやりくりをした部分でもある。ちなみに、MacProはSoftware Rendererを利用する際の負荷に1台で耐えられるようにカスタムオーダーでスペックアップを行っている。   Dolby ATMOSの9.1.4chのモニターコントロールはTACsystem VMC-102で行っている。柔軟なモニターセクションと、国内の事情を熟知したコミュニケーションシステムとの連携はやはり一日の長がある。コミュニケーションにはIconicのカスタムI/Fを通じてTB BoxとCuf Boxが接続されている。この部分も事前に接続試験を入念に行い、コストを押さえたカスタムI/Fで必要機能を実現できるのか、株式会社アイコニック 河村氏と検証を行なった部分でもある。なお、今回の導入工事は河村氏の取りまとめで進行した。河村氏は冒頭でも述べた名古屋地区で初めての5.1chサラウンドを備えたMA studioや中京テレビのMA室からと舘氏とも長い付き合い。その要望の実現もアイデアに富んだシステムアップとなった。 ◎前後する机で出現する快適な作業空間 Dolby ATMOSのシステムを備えたAS 207だが、やはり普段はステレオ作業も多いことが予想される。サラウンドサークルを最大に確保したセンターのリスニングポジションでは、後方のお客様スペースが圧迫されてしまう。そのためStereoの作業時には、机がコンソールごと前に30cmほど移動する仕掛けが作られた。左右にレールを設け、キャスターで移動するのだが、それほど大きな力をかけずに、簡単に移動することが出来る。机にはMac Proを始めとした機器類のほとんどが実装されているにもかかわらず、これだけ簡単に動く工夫には非常に驚かされる。これにより、Stereo時にはミキサー席後方に十分なスペースが確保され、快適な作業環境が出現する。そしてDolby ATMOSでの作業時には部屋の広さを最大限に活かした、音響空間が確保されるということになる。 ◎S6と独立したサラウンドパンナー コンソールについて、今回のスタジオ設計における初期段階で検討されていたのはAvid S6ではなかったのだが、中京テレビに新設されたMA室のお披露目の際に、導入されたAvid S6を見て新しい部屋ならこのシステムが必要だと直感的に感じたということ。DAWのオペレートは舘氏自身では行わないということだが、音声技術出身ということから現場でのミキシングなど音に触れる作業はいまでも行っている。その機材に対する感性からAvid S6がセレクトされたということは、販売する我々にとっても嬉しい出来事であった。その後検討を重ね、最終的にはフェーダー数16ch、5ノブのS6-M10が導入されている。ディスプレイ・モジュールに関しては、いろいろと検討があったがVUの設置位置との兼ね合い、リスニング環境を優先しての判断となっている。写真からもVU、そしてPC Dispalyの位置関係がよく練られているのが感じられるのではないだろうか。   そして、S6の導入のメリットの一つであるのが高性能なサラウンドパンナーオプションの存在。フレームに組み込むのではなく、個別にした箱に仕込んで好きな位置で操作出来るようにしている。やはりサラウンドパンニングはスイートスポットで行いたい。しかし、ステレオ作業を考えるとフレームの中央に埋め込んでしまっては作業性が損なわれる。その回答がこちらの独立させたサラウンドパンナーということになる。机と合わせ、部屋としての使い勝手にこだわった部分と言えるのではないだろうか。 ◎動画再生エンジンにはVideo Slaveを採用 動画の再生エンジンには、ROCK ON PROで2017年1月よりデリバリーを開始したNon-Leathal Application社のVideo Slaveを導入していただいた。Pro ToolsのVideo Track以上に幅広いVideo Fileに対応し、Timecodeキャラのオーバーレイ機能、ADR向けのVisual Cue機能などMA作業に必要とされる様々な機能を持つ同期再生のソリューションだ。4K Fileへの対応など将来的な拡張性もこのアプリケーションの魅力の一つとなっている。VTRから起こしたキャラ付きのMovieデータであればPro ToolsのVideo Trackで、今後増えることが予想されるノンリニアからの直接のデータであればVideo Slaveで、と多様なケースにも対応できるスタンバイがなされている。 ◎ニーズに合わせた大小2つのブース ナレーションブースは大小2つの部屋が用意されている。MA室自体もはっきりとサイズに差を付けて、顧客の幅広いニーズに対応できるようにしている。これはシステムを構築する機材の価格は下がってきているので、ニーズに合わせた広さを持った部屋を準備することが大切という考え方から。大きい方のブースには、壁面にTVがかけられ、アフレコ作業にも対応できるようにセットアップが行われている。逆に小さい方の部屋は、ナレーション専用。隣合わせに2名が最大人数というはっきりとした差別化が図られている。ただし、運用の柔軟性を確保するために2部屋あるMA室からは両方のブースが使用できるようなしくみが作られており、メリハリを付けつつ運用の柔軟性を最大化するという発想が実現されている部分だ。   音声の収録にもこだわりが詰まっている。マイクプリはAD Gear製のKZ-912がブース内に用意され、MA室からのリモートでゲインの調整が行われる。マイクの直近でゲインを稼ぐことで音質を確保する、というこの理にかなった方法は、高価なリモートマイクプリでしか利便性との両立が図れないが、ここが音質にとっていちばん大切な部分ということで妥協なくこのシステムが導入されている。Pro Toolsへの入力前にはSSL X-Deskが置かれ、ここで入力のゲイン調整が行えるようになっている。そしてアナログコンソールで全てを賄うのではなく、ミキシングの部分は機能性に富んだAvid S6で、となる。収録などの音質に直結する部分はこだわりのアナログ機器で固める、というまさに適材適所のハイブリッドなシステムアップが行われている。このX-Deskという選択は、これまでもコンソールは歴代SSLが使われてきたというバックグラウンドからも自然なセレクトと言える。 ◎AS 207と共通した機材構成のAS 208 そしてもう一部屋となるAS 208は部屋自体がコンパクトに設計されStereo作業専用となっているが、そのシステム自体はAS 207と全く同じシステムが導入されている。もちろん、コンソールはスペースに合わせてAvid S3が導入されているが、システムのコアはPro Tools HDXにDAD DX32が接続され、Directout AndiamoがAD/DAとしてあり、モニターコントローラーはTAC system VMC-102とAS 207と共通の構成となる。しかも両スタジオとも内部のMatrixなどは全く同一のプリセットが書き込まれている。片方の部屋でトラブルが発生した場合には、単純に交換を行うことで復旧ができるようにシステムの二重化が図られている。放送の現場感覚がよく現れた堅実性の高いシステム構成である。 Dolby ATMOS対応のスタジオをオフィスビルに、というだけでも国内では大きなトピックであると感じるが、様々な工夫と長年の経験に裏付けられた造詣が随所に光るスタジオである。システム設計を行われた株式会社アイコニック河村氏、音響施工を行われた日本音響エンジニアリング株式会社、そして、快く取材をお受けいただきそのスタジオに対する熱い思いをお話いただいた株式会社Zaxx 代表取締役の舘 英広氏に改めて御礼を申し上げてレポートのくくりとさせていただきたい。 写真手前右側が「Zaxx」代表取締役の舘英広氏、左側が同スタジオで音響オペレーターを務める「ビー・ブルー」の中村和教氏、奥右側からROCK ON PRO前田洋介、「アイコニック」の河村聡氏、ビー・ブルー」の川崎玲文氏

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株式会社カプコン様 / Dynamic Mixing Stage

日本を代表するゲーム会社である株式会社カプコン。もともと7.1ch対応のAVID S6が設置されたDubbing Stage、そして7.1ch対応のAVID D-Control(ICON)が設置されたDynamic Mixing Stageの2部屋を擁していたが、今後起こりうるImmersive Audioの制作へ対応するためDynamic Mixing Stageのシステム更新を行った。今回の更新でDOLBY ATMOS HOME対応のシステムが組まれ、今後AURO 3Dなどにも対応できるよう準備が行われている。 ◎Dynamic Mixingというコンセプト 今回、スタジオを改修するにあたりそのコンセプトについても根本的に見直しが行われた。これまで、カプコン社内スタジオ「bitMASTERstudio」は、レコーディングと大型セッションのミキシングを可能とする「Dubbing Stage」と、そのサテライトとして同等の能力を持ちつつ、レコーディングを除いたプリミックスや仕上げの手前までを想定した「Dynamic Mixing Stage」という構成であったが、これを従来型のPro ToolsとS6によるミキシングを中心に行う「Dubbing Stage(旧Dubbing Stage)」と、今回改修を行ったスタジオをゲーム内のインタラクティブシーンを中心としたミキシングを行うための「Dynamic Mixing Stage(旧Dynamic Mixing Stage)」としている。   この「Dynamic Mixing」は、ゲームの中でプログラムによって制御される方法でミキシングを行うことを指している。つまり、このステージはゲーム内のプログラムミキシングを行う場所であり、従来のミキシングステージとは一線を画するものだと考えているとのことだ。したがって、この部屋の音響空間及びシステムの設計思想は「リファレンスとなりうる音を再生できる特性を持ち、プログラムによるミキシングを効率的に行えるシステム」であることを第一義としている。   システムを構築する上で大切にしたことは、WindowsPC内にインストールされたゲームエンジンとオーディオミドルウェアのパラメーターを操作するのと同時に、ゲームに組み込むためのオーディオエディット/ミキシングをPro Tools上で効率的に行えるようにすること。Ultra Wideディスプレイと壁付けのTVによってそれらの情報をすべて表示し、ゲーム音声とProTools上の音声を瞬時に切り替え、あるいは同時に再生することのできるシステムにしておくことは、ゲームオーディオ制作では極めて重要、とのことだ。 ◎既存スタジオをブラッシュアップするアイデア メインのミキシング、ナレーションなどの収録に活躍するDubbing Stageと、ユーティリティ性を持たせプレビューなどにも対応できるように設計されたDynamic Mixing Stage。そのDynamic Mixing Stageはモニター環境をブラッシュアップし新しいフォーマットへの準備を行なった格好だ。部屋自体はそれほど広い空間が確保されているわけではなく、天井高も同様。その中にDOLBY ATMOS、そしてAURO 3Dといった次世代のフォーマットへ対応したモニタリングシステムを導入している。音響設計・内装工事を行った株式会社SONAからも様々な提案が行われ、そのアイデアの中から実現したのが、このスタジオのイメージを決定づける音響衝立と一体となったスピーカースタンドだ。天井に関してはスピーカーを設置するために作り直されており、内装壁も全面改修されているが、壁の防音層と床には手を加えずに最低限の予算で今回の工事を完了させている。   併せてDAWシステムについても更新が行われ、コントローラーはAVID D-Control(ICON)からAVID S3へとブラッシュアップされた。また、Dubbing Stageでモニターコントローラーとして活用されていたTAC system VMC-102はDynamic Mixing Stageへと移設され、マルチフォーマット対応のモニターコントローラーとして再セットアップが行われている。Dubbing Stageのモニターセクションには最新のAVID MTRXがインストールされ、AVID S6からの直接のコントロールによるモニタリングを行うようにこちらも再セットアップされている。 ◎フォーマットに対応する柔軟性を持つ それでは、各パートごとに詳細にご案内を行なっていきたい。まずは、何といっても金色に光り輝く音響衝立。これは完全にカスタムで、背の高いものが8本、低いものがセンター用に1本制作された。その設置はITUサラウンドの設置位置に合わせて置かれている。フロントはセンターを中心に30度、60度の角度で、Wide L/Rを含めたフォーマットとして設置が行われている。サラウンドはセンターより110度、150度と基本に忠実な配置。これらの音響衝立は、天井側のレールに沿ってサラウンドサークルの円周上を移動できるようになっている。これは、物理的に出入り口に設置場所がかかってしまっているため、大型の機器の搬入時のためという側面もあるが、今後この8枚の音響衝立の設置の自由度を担保する設計となっている。この衝立の表面は穴の空いた音響拡散パネルで仕上がっており,内部に吸音材が詰められるようになっている。吸音材の種類、ボリュームを調整することで調整が行えるようにという工夫である。 そしてちょうど耳の高さに当たる部分と、最上部の2箇所にスピーカー設置用の金具が用意されている。この金具も工夫が行われており、上下左右全て自由に微調整が行えるような設計だ。写真で設置されている位置がITU-R準拠のサラウンドフォーマットの位置であり、そのままDOLBY ATMOSのセットアップとなる。最上部の金具の位置はAURO 3D用のものであり、Hight Layerの設置位置となる。現状では、AURO 3D用のスピーカーを常設する予定はなく、AURO 3Dに変更する際には追加でこの位置へスピーカーを設置する事となる。完全に縦軸の一致する上下に設置ができるため、理想的な設置環境といえるだろう。   センターだけはTVモニターとの兼ね合いがあり背の低い衝立となっている、また、AURO 3D用のHC設置はTVの上部に設置用の金具が準備される。そして、TVモニターの下の空間にはサブウーファー2台が左右対象の位置に設置されている。天井にはセンターから45度の角度を取り、4本のスピーカーが正方形に配置されている。これが、Top Surround用のスピーカーとなる。もちろんAURO 3D用にTチャンネル用として天井の中心に金具が用意されている。また、wide L/Rの位置にも音響衝立が用意されているので、現状設置されている7.1.4のフォーマットから、9.1.4への変更も容易になっている。   このサラウンド環境はコンパクトな空間を最大限に活かし、完全に等距離、半球上へのスピーカー設置を実現している。そのために、各チャンネルの音のつながりが非常に良いということだ。また、音響衝立の中にスピーカーを設置したことにより、バッフル設置のようなメリットも出ているのではないかと想像する。スピーカー後方には十分な距離があり、そういった余裕からもサウンド面でのメリットも出ているのではないだろうか。 ◎3Dにおける同軸モニターの優位性 今回の更新にあたり、スピーカーは一新されている。カプコンでは以前より各制作スタッフのスピーカーをGenelecに統一している。できるだけ作業スペースごとの視聴環境の差をなくし、サウンドクオリティーの向上と作業効率の向上がその目的だ。そのような流れもあり、Dynamic Mixing StageではGenelecの最新機種である8341がフロントLCRの3ch用として、サラウンド及びTop Layerには一回りコンパクトな8331が選定されている。このモデルは同軸2-way+ダブルウーファーという特徴的な設計のモデル。従来の筐体より一回り小さな筐体で1クラス上の低域再生を実現してるため、DOLBY ATMOSのように全てのスピーカーにフルレンジ再生を求める環境に適したモデルの一つと言える。ちなみに8341のカタログスペックでの低域再生能力は45Hz~(-1.5dB)となっている。従来の8030クラスのサイズでこの低域再生は素晴らしい能力といえるのではないだろうか。また、スピーカーの指向性が重要となるこのような環境では、スコーカーとツイーターが同軸設計であるということも見逃せないポイント。2-way,3-wayのスピーカー軸の少しのずれが、マルチチャンネル環境では重なり合って見過ごすことのできない音のにごりの原因となるためである。   これら、Genelecのスピーカー調整はスピーカー内部のGLMにより行われている。自動補正を施したあとに手動で更にパラメーターを追い込み調整が行われた。その調整には、最新のGLM 3.0のベータバージョンが早々に利用された。GLMでは最大30本のスピーカーを調整することが出来る。そのためこの規模のスピーカーの本数であっても、一括してスピーカーマネージメントが可能となっている。   今回の更新に合わせて新しく作り直したデスクは、部屋のサラウンドサークルに合わせて奥側が円を描く形状となっている。手前側も少しアーチを描くことで部屋に自然な広がり感を与えている印象だ。もちろん見た目だけではなく作業スペースを最大限に確保するための工夫でもあるのだが、非常に収まりのよい仕上がりとなっている。このデザインはカプコンのスタッフ皆様のこだわりの結晶でもある。そしてそのアーチを描く机の上には、AVID S3とDock、モニターコントローラーのTAC system VMC-102、そして38inch-wideのPC Dispalyが並ぶ。PC Displayの左右にあるのは、BauXer(ボザール)という国内メーカーのMarty101というスピーカー。独自のタイムドメイン理論に基づく、ピュアサウンドを実現した製品が評価を得ているメーカーだ。タイムドメインというと富士通テンのEclipseシリーズが思い浮かべられるが、同じ観点ながら異なったアプローチによりタイムドメイン理論の理想を実践している製品である。また、さらにMusik RL906をニアフィールドモニターとして設置する予定もあるほか、TVからもプレビューできるようにシステムアップが行われている。 ◎AVID MTRXをフル活用したDubbing Stage Dynamic Mixing StageのシステムはVMC-102とDirectout TechnologyのANDIAMO2.XTが組み合わされている。DAWとしてはPro Tools HDX2が導入され、I/OとしてMADI HDが用意されている。MADI HDから出力されるMADI信号はANDIAMOへ入り、VMC-102のソースとして取り扱われる。ANDIAMOにはATMOS視聴用のAV AMPのPre-OUTが接続されている。AV AMPはDOLBY ATMOS等のサラウンドデコーダーとしてPS4、XBOX oneなどが接続されている。VMC上ではストレートにモニターを行うことも、5.1chへのダウンミックス、5.1chでリアをデフューズで鳴らす、ステレオのダウンミックスといったことが行えるようにセットアップされている。   ちょっとした工夫ではあるが、AV AMPの出力は一旦ANDIAMOに入った後、VMCへのソースとしての送り出しとは別にアナログアウトから出力され、Dubbing Stageでもそのサウンドが視聴できるようにセットアップされている。実はこのANDIAMOは以前よりスタジオで利用されていたものであり、それを上手く流用し今回の更新にかかるコストを最低限に押さえるといった工夫も行われている。   Dubbing StageはVMC-102が移設となったため、新たにAVID MTRIXが導入されている。Pro ToolsのI/Oとして、そしてS6のモニターセクションとしてフルにその機能を活用していただいている。7.1chのスピーカーシステムはそのままに、5,1chダウンミックス、5.1chデフューズ、stereoダウンミックスといった機能が盛り込まれている。また、CUE OUTを利用しSSL Matrixへと信号が送り込まれ、Matrixのモニターセクションで別ソースのモニタリングが可能なようにセットアップされている。AVID MTRXには、MADIで接続された2台のANDIAMO XTがあり、この2台がスピーカーへの送り出し、メーター、そしてブースのマイク回線、AV AMPの入力などを受け持っている。せっかくなので、Dubbing Stage/Bの回線をAVID MTRXに集約させようというアイディアもあったが、サンプルレートの異なった作業を行うことが出来ないというデメリットがあり、このようなシステムアップに落ち着いている。やはり収録、素材段階での96kHz作業は増加の方向にあるという。従来の48kHzでの作業との割合を考えるとスタジオ運営の柔軟性を確保するためにもこの選択がベストであったという。   AVID MTRXのモニターセクションは、AVID S6のモニターコントロールパネル、タッチスクリーンとフィジカルなノブ、ボタンからフルにコントロールすることが可能である。DADmanのアプリケーションを選択すれば、モニターセクション、そしてCUEセンドなどのパラメーターをAVID S6のフェーダーからもコントロールすることもできる。非常に柔軟性の高いこのモニターセクション、VMC-102で実現していた全てのファンクションを網羅することができた。GPIO等の外部制御を持たないAVID MTRXではあるが、AVID S6と組み合わせることでS6 MTMに備わったGPIOを活用し、そのコマンドをEuConとしてMTRXの制御を行うことができる。もう少しブラッシュアップ、設定の柔軟性が欲しいポイントではあるが、TBコマンドを受けてAVID MTRXのDimを連動することができた。少なくともコミュニケーション関係のシステムとS6 + MTRXのシステムは協調して動作することが可能である。今後、AVID S6のファームアップによりこの部分も機能が追加されていくだろう。日本仕様の要望を今後も強く出していきたいと感じた部分だ。   今回の更新ではコンパクトなスペースでもDOLBY ATMOSを実現することが可能であり、工夫次第で非常にタイトでつながりの良いサウンドを得ることができるということを実証されている。これは今後のシステム、スタジオ設計においても非常に大きなトピックとなることだろう。今後の3D Surround、Immersive Soundの広がりとともに、このような設備が増えていくのではないだろうか。この素晴らしいモニター環境を設計された株式会社SONA、そして様々なアイデアをいただいた株式会社カプコンの皆様が今後も素晴らしいコンテンツをこのスタジオから羽ばたかせることを期待して止まない。   左:株式会社カプコン プロダクション部サウンドプロダクション室 瀧本和也氏 右:株式会社ソナ 取締役/オンフューチャー株式会社 代表取締役 中原雅考氏   *ProceedMagazine2017-2018号より転載

Media

株式会社テレビ静岡様

◎ファイルベースが導入された新システムがスタート テレビ静岡は、フジテレビ系列の中部地区における基幹局。2017年の新局舎移転にあたり、2室あるMA室をお手伝いさせていただいた。旧局舎の隣に建てられた新局舎。2つのスタジオと、映像編集、MAと新規に設備の導入が行われた。   これまでは、Marging PyramixをメインDAWにYAMAHA DM2000とAV SmartのTANGOを使用していたテレビ静岡様。新局舎への移転を期に、Pro Toolsシステムへの変更を行なった。Pro Tools | HDをメインDAW、コントローラーにAvid S3とAvid Dockという組合せ。ステレオの作業がメインであるため、シンプルにまとまったシステムとなっている。Videoの再生にはVideo Slave 3 Proが導入されている。   これまでのMarging Pyramixでは同社のVQubeをVideo 再生として利用していたが、Video Slaveへと更新が行われた。これは、トータルのシステムアップの中で、編集との連携を考えた際に、Pro ToolsのもつVideo Trackでは実現できない幾つかの機能を持つことからこの選択となっている。特にタイムコード・キャラのオーバーレイ表示はVideo Slaveの特徴的な機能の一つだ。テレビ静岡の新局舎へ導入されたノンリニア編集機はEDIUSである。EDIUSでは従来コーデックであるCanopus HQXを利用しての運用が想定されている。その為、MAへファイルベースでデータを受け渡す際にも、そのままCanopus HQXでの運用ができないかということになった。Video Slaveではこのコーデックにも対応をしているということも、選択の一つの理由となった。   ファイルベースのシステムは、MAのシステム側に1台NASサーバーを設け、そのサーバーを介して編集とのデータの受け渡しを行っている。このNASサーバーはMAのDAWはもちろん、編集側のEDIUSからもマウントできるようになっている。これにより編集側からこのサーバーへ直接ファイルの書き出しが行えるように設定が行われている。MA側からも完パケのWAVデータをこのサーバー上に書き出すことで編集機から完パケ音声データを拾い上げることが出来るようになっている。テレビ静岡では、MA室にもEDIUSが用意されている。これは完パケデータ作成用の端末であり、映像編集済みのファイルを開き、MAで完成した音声を貼り込んで完パケデータを作成できるようになっている。ニュースなどリミットの厳しい作業時には、編集機の空きを待たずにMA室内で完パケデータが作成できるようにという仕掛けである。   本号の出版時には新局舎での運用が始まっているはずである。ファイルベースシステムが導入された新しいシステムの実稼働がまた一つスタートする。そのお手伝いをさせていただいたことをここに感謝し本レポートの締めくくりとさせていただく。 (左)株式会社テレビ静岡 技術局制作技術センター 佐野 亮 氏 (右) ROCK ON PRO Sales Engineer 廣井 敏孝     *ProceedMagazine2017-2018号より転載

Broadcast

株式会社タムコ様 / System Tが可能にした音声中継車の未来形

株式会社タムコは以前より稼働中の音声中継車「R-3」「R-4」に加え、新たに「R-1」を新設した。長年にわたる構想の末に満を持して完成した音声中継車「R-1」は、最新鋭の技術が詰め込まれた音声中継車となった。音声中継車の中心核であるコンソールにはSSLの新型デジタルコンソールであるSystem Tが据えられ、信号経路のほとんどをDanteで構築。これが日本1号機となるSystem Tを始め、システムのありとあらゆるポイントが革新的なシステムと言える「R-1」をご紹介したい。 ◎96kHzへのニーズに応える中継車を まずは、今回新たに製造された「R-1」のスペックをご紹介しよう。96kHz 128ch収録可能な音声中継車である「R-1」のコンソール「System T」は2クライアント対応の64フェーダーフレーム・3タッチスクリーンと、1クライアント対応の16リモートフェーダー・1タッチスクリーンPCの計80フェーダーで構成されている。Stage RackはMicPre 64chインプット・Lineアウト16chを基本セットとしたラックが3式用意され、最大で192ch インプット・48ch アウトプットに対応可能だ。そのほか、SSL Local I/Oとして、アナログ56ch(Mic)IN・24ch OUT、AES/EBU 128 I/O(96kHz時)MADI 7 I/O ポートなど、多彩な規格に対しても柔軟に対応できる。   音声中継車を造るという構想はあったものの、なかなか条件に見合うコンソールが見つからず、機材の選定には相当苦労されたようだ。その条件のうちの一つが、ハイ・サンプル・レートでの運用だったという。現在、「R-3」が96kHzに対応しているが、システム的制限でチャンネル数が半分になってしまうという。近年の動向として、放送業務でもマルチ収録が増えているそうで、その中でも96kHzへのニーズも多いという。96kHz対応という意味では「R-3」も対応しているが、システム上の制限があり収録可能なチャンネル数が半減してしまう。その点「R-1」は接続をAES67伝送信号に準拠しているDante HCを採用しており、プロジェクトが96kHzになったとしても収録チャンネル数は128chを確保できる。   新しい音声中継車を計画するにあたってクライアントである民放各局の意見を集めたが、すべての希望にしっかり答えるとなると当時はそれだけのコンソールが市場になかったという。そんな折、IBC 2015にて発表されたSSL System Tの高い拡張性と柔軟性、そして何より音質の良さが決定打となり、System Tが採用されたそうだ。 ◎Danteが拡げるSystem Tの可能性 長年に渡った構想の決定打になったSystem T。今回導入されたコンソールが国内では1号機となる。条件の一つであった「ハイ・サンプル・レートながらもマルチ・チャンネル収録が行える」という条件はSystem Tにおいてコンソールに関わるコンポーネントの通信にDanteが採用されたからではないだろうか。   2015年のIBCにて発表されたSystem Tは次世代のブロードキャストオーディオプロダクションシステムで、コントロールインターフェイスからエンジンまですべてがゼロから新規開発されたプラグシップモデルだ。エンジンは、これまでのブロードキャストコンソールであるCシリーズコンソールで採用されていたCenturi Coreとは異なり、64bit 浮動小数点処理のTempestが採用されている。すべてをゼロから設計しているゆえに、Cシリーズの後継機種という位置付けではなく、新たなフラグシップのシリーズとなる。それは音声中継車を造るにあたり一番の条件であった音質にも現れているそうで、SSLサウンドをしっかりと継承しつつ、さらに音質がはるかに向上しているとのことだ。   さらに、System Tはコンソールに関わるコンポーネントがすべてDanteで接続されている。SSL社はMADI フォーマットを規定する際に参画した1社で、これまでMADI関連の製品も多く販売してきた。しかし、MADIは48kHzでの伝送はBNCケーブル1本で64ch扱えるものの、96kHzになればその数は半減してしまう。その点、Danteは規格上Etherケーブル1本で最大512双方向(48kHz)のオーディオチャンネルを扱える。実際に扱えるチャンネル数は接続されるハードウェアにもよるが、規格上はMADIの8倍にも及ぶ。   System Tに採用されているDanteプロトコルは、冗長性にも長けている。Dante機器は1つのハードウェアをPrimaryとSecondaryの二重ネットワークで接続・構成が可能で、万が一Primaryネットワークの通信が遮断されても、瞬時にSecondaryネットワークに切り替えることが可能だ。この冗長性が、昨今のSR市場や音響設備において非常に重宝されている理由の一つでもある。前記の通り、System Tはコンポーネントの全てがDanteで接続されているが、エンジン自体も二重化されており、冗長化を図っている。音声中継車「R-1」においてもDanteは二重化されている。運転席の後方に配置されているラックにはSystem TのエンジンやNetwork I/Oらがラックマウントされているが、その最上部にPrimary、Secondaryと分けてSwitch HUBへと接続されている。さらにケーブルもPrimaryとSecondaryとで色分けされているので、メンテナンス時にも重宝するだろう。   サーフェイスはフロントに64ch、リアに16chの計80フェーダーが用意されている。同一ネットワークに接続されて個別に動作したり同一システムとして動作させることも可能だ。プロジェクトが大きくなれば大きくなるほど扱うチャンネルが増えるが、2マン・オペレートはもちろん、一人はバンド、一人はボーカル、一人はオーディエンスといった、3マン・オペレートで各自がフェーダを握ることも可能だ。タッチスクリーンを基本とした輝度の高いディスプレイは、非常に視認性が高い。タッチスクリーンはタムコとしても初の導入だそうが、その操作性は良いという。マスターセクションにはあまりボタンを多く配置せず、シンプルな設計ながらも、チャンネルストリップ部分には必要なハードウェアスイッチを備えており、必要なボタンにはすぐにアクセスできるように設計されている。なお、コンソールのチャンネルアサインなどのセッティングもこのタッチパネル上から行うので、1箇所で操作が可能だ。チャンネルストリップとセッティングを別々の画面を見ながら操作、という煩わしさからも解放されている。 ◎カスタマイズ自由なチャンネル拡張と冗長性 3ブロックからなるStage Rackには、SSL Network I/O Stageboxes SB i16とSB 8.8が計5台ラックマウントされており、1式につきAnalog 64 In/16 outを有している。上段にはラックマウントされたxMac ProServerとMac用のUPSが、下段にはNetwork I/O用のUPSとスライダックがそれぞれマウントされている。   冒頭に「R-1」のスペックをざっとご紹介したが、これはあくまでも「標準仕様」でのチャンネル数だ。Danteネットワークは、機材の追加などの変更が容易。それはもちろんSysytem Tでも例外ではなく、現在車載されている機材の他にも、臨時で入出力を増やしたい場合や異なる音色のHAが欲しい場合は、車載されているDAD TechnologyのAX32のようにDanteに対応したオーディオインターフェイスを接続すれば入出力数を増やすことも可能となる。   逆にチャンネル数が少ないプロジェクトの場合はStage Rackを1式のみ接続する、といった選択も可能だ。今回の「R-1」と同時に「R-2」という別の音声中継車も作成されており、そちらにはSSLのL300というSRコンソールが導入されているそうだ。L300 もSystem T 同様にDante ネットワークでの使用となるため、「R-1」で使用しないStage Rackは「R-2」でStage Rackとして使用したり、既存の音声中継車「R-3」のコンソールAurusに装着されたDanteカードを介してStage Rackを使用することも可能。このように「R-1」のためだけのStage Rackではなく、他の車両のStage Rackとしても活用が想定されている。さらには、音声中継車とは切り離して単独でYAMAHAなどのDante対応SRコンソールと接続したり、単独でのHAとして稼働も想定されているそうだ。フレキシブルに対応できる発想が可能なのはDanteならではだろう。 ◎安定した収録システム 車載されているDAWのAvid Pro Tools HDは、HDX2とHD MADI 2台で構成されている。なお、MacProはSonnet TechnologyのxMac Pro Serverにマウントされている。System Tに接続されたNetwork I/O MADI BridgeでDanteからMADIに変換された信号がHD MADIに入力される仕組みとなる。ストレージは3.5インチHDDを採用しており、xMac ProServerのPCIユニットからSonnet Tempo SATAカードを経由してHDDシャーシへアクセスしている。HDDシャーシはフロントからHDDの抜き差しが可能だ。収録が終わったらすぐにHDDを取り出すことができる。   Stage Rack にもマウント可能な MacPro には Nuendo と Dante カードがインストールされており、Pro Tools と同じインプットを Dante 上でパラレルにアサインしてサブ機として収録が可能だ。また、Focusrite RedNetのようなDanteポートを持つ機器をインターフェイスとしたPro Toolsを持ち込めば、こちらもバックアップとして収録をすることも容易にできる。 ◎車載された固定スピーカー 「R-1」は車両の長さが9m・幅約2.5mとミドルサイズに収まっている。しかし、コントロールルーム内は非常に広い印象を受ける。コントロールルームは奥行き3.6m、幅2.32m、高さ2mと外寸から比べると非常に広くスペースが取られている。完全カスタマイズの車両はボディがスチール製だが、ミキサー席から後方の壁面はあえて遮音壁を薄くして、低音が少し抜けるように設計されているそうだ。実際、コントロールルームで扉を閉めた時の圧迫感は低く、長時間作業でも苦にならなそうだ。   また「R-1」では常設スピーカーもマウントされた。「R-3」「R-4」では様々なクライアントが好みのスピーカーを設置できるよう対応するため、常設スピーカーは設置されてこなかった。今回常設されたMusikelectronic Geithain RL933K1は同軸3Wayモニタスピーカーだ。常設を選んだ理由としては「R-1の音色」を狙った設置ということだそうだ。もちろん、従来のようにクライアント持ち込みのスピーカーにも対応すべく、スピーカー設置スペースとしてスライド式のスペースも確保されている。その他にも外からアクセス可能なユーティリティースペースが設けられていた。ここにはStage Rack接続用のマルチケーブルなどを収納することができるので、そのまま配線作業が続けられる。こういった細部にも配慮された設計になっている。 既に稼働が始まっているという「R-1」、ユーザーからもそのサウンドは好評を得ているということだ。System Tの操作性と柔軟性、そして冗長性、安定性の確保、さらには他の中継車との運用も見据えた「R-1」は今後の中継車のベンチマークとも言えるべきものとなったのではないだろうか。ハイサンプルにも対応した将来性も豊かな「R-1」は今後も活躍を続けていくに違いない。     *ProceedMagazine2017-2018号より転載

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株式会社メディア・シティ様 / Avid S6でセンターポジションオペレーションを実現する

適度なライブ感を持ち、高い天井高による優れた音響環境を持ち合わせるMedia City Ginza East。そのシステムがFiarlight ConstellationからAvid S6へと更新された。そのコンセプト、そしてスタジオとしての魅力に迫っていきたい。 ◎天井高がもたらす飽和感のないサウンド このスタジオの特長は何といっても、高い天井。そして、国内のスタジオではあまり見ることの無い正面のハードバッフル。この組み合わせによる適度なライブ感を持った音響環境となっている。高い天井高は、空間容積に直結し、余裕のある響き、そして反射音の低減など様々なメリットをもたらす。そして、レンガにより作られたハードバッフル。一部分であればレンガ等の素材を使用したスタジオを見ることはあるが、正面の壁全面がレンガというこのスタジオコンセプトには驚かされる。天井高の高さもあり実現できたこの仕様。適度な、心地よい響きをスタジオにもたらしている。   天井高のもたらすメリットはサラウンド作業の際に一番顕著に感じるということだ。5.1chのシステムが組まれたこの部屋で、天井高のおかげもあり、サウンドが飽和すること無く気持ちよくミキシングを行うことが出来るという。まさに空間容積に余裕があるからこそのメリットだ。 ◎真っ先に選択肢に挙がったAvid S6 今回の更新では、その音響的な魅力には手を加えず、スタジオのオープン当時に導入されたFairlight ConstellationからAvid S6への更新が行われた。やはり更新にあたり、Pro ToolsというDAWは選択肢から外れることはなく、統合型の作業効率の良いプロダクトとして真っ先に選択肢に挙がったのは、やはりAvid S6。元々は、Avid System5を導入候補の筆頭としていたということだが、更新の時期にディスコンになり、その機能を受け継いだAvid S6を試したところ、System5の操作感を受け継ぎ、Pro Toolsをダイレクトにコントロールできるこのプロダクトが正常進化したモデルであると感じセレクトされている。作業の中心はDAW内部へと確実にシフトをしている今、Avid S6以外の候補が選ばれることはなかったということだ。   そして選ばれたAvid S6のサイズは非常にコンパクトなS6-M40-16Fader仕様。もっとフェーダーが必要ではないかとも考えたが、Avid S6の強力なレイアウト機能などを使いこなすことにより、常にセンターポジションで作業を行いたいということからも、あえてフェーダー数を減らしている。もちろん、もっとフェーダーが欲しいという意見も出たが、今回の更新は16フェーダーという決着を見ている。実際に作業を行うと、フェーダー数に関する不満が出ることはほとんど無く、むしろコンソールをコンパクトにすることで、作業スペースとなる両サイドのデスク面が大きく取れるなど、ほかのメリットも見えてきたそうだ。サラウンド・ミキシングにも対応したこの部屋、やはりセンターポジションで作業を行うということが第一のメリットだが、CM作業の多いこのスタジオにとっては作業スペースに余裕を持てたこともプラスとなっている。   Pro ToolsのシステムはHDX1、Media Composerを利用したVideo Satelliteのシステムが組まれている。サブのシステムはなく、1台のPro Toolsで全てをまかなっているという。InterfaceはHD I/Oが1台とSync HDというシンプルな構成。サラウンドモニター対応のシステムを1台のI/Oでまかなうためにはその設計にもストレスが掛かるが、シンプルに構成することでそれを回避している。Video SatelliteのシステムはVideo InterfaceにBlackmagic DesignのUltra Studioが組み合わされ、4Kに対応したシステムアップとなっている。メインのTVも4K化が済んでいるので、4K作業にも対応可能だ。 ◎各スタジオで統一されたサウンド システム上での音質的なポイントは、モニターコントローラーにセレクトをしたGrace Design m906。AVIDではS6の標準的なモニターコントローラーとしてICON時代より引き続きXMONを販売しているが、導入にあたりこの部分を好みの製品に変えたいということでGrace Design m906をセレクトしたということだ。複雑なモニターセレクトなどは必要ないのでシンプルに音質重視で設計されたこの機種は、スタジオの音のクオリティーに貢献しているという。このセレクトはMedia Cityのもう一つの拠点である品川スタジオと同じサウンドクオリティーを担保するという意味からも重要な機材の一つとなっている。メインモニターはバッフルに埋め込まれたGenelec 1037Bが目を引くが、普段の作業はニアフィールドのADAM A7Xで行うことが多いということ。このスピーカーはバランス良く低域から高域までストレートに再生することが出来るので、重宝している製品ということ。ただし、少し低域が強いのでそのあたりは補正をして使っているというこだわりも教えていただいた。音の出方の気に入った製品をチューニングして利用するという、エンジニアのこだわりが感じられるセレクト。サラウンド用にはGenelecの8030が用意されている。 Media City Ginza Eastのもう一部屋のMAも同時にシステム更新が行われ、Pro Tools周りのシステムは同一、コンソールをArtist Mix2台の16Faderとフェーダー数を揃えたシステムが導入されている。サウンドの統一を図るためにモニターコントローラーにはGrace Design m904、SpeakerはADAM A7Xとこちらも一貫したセレクト。ステレオ作業であればどちらの部屋でも、ほぼ同じ環境(流石にコントローラー部分はS6とArtist MIXで同じとは言えないが)サウンドクオリティーで作業を行うことが出来るよう工夫されている。 Media City MAグループ グループ長 清田 政男 氏 今後は、Dolby ATMOS、8Kなど新しい技術に対して積極的にチャレンジをして行きたいと熱くお話をさせていただいたの印象的であった。最後とはなるが、取材でお話をお伺いしたMedia City MAグループ グループ長の清田氏、そして、システム・インテグレーションを行われた株式会社MTRの富岡氏への感謝を持ってReportを終わらせていただく。     *ProceedMagazine2017-2018号より転載

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有限会社ガリレオクラブ様 / Yamaha MMP1が司り、Danteが全てをつなぐ

・STUDIO-A 大阪で1991年に創業した有限会社ガリレオクラブ。MA専門のポストプロダクションとしてこれまでにも様々な新しいチャレンジを行なってきた同社が、3部屋のMAのシステムを一新した。いち早くサラウンドへ取り組んだり、大阪で最初にFairlightでのMAを始めたりとチャレンジを続ける同社。2006年に現在の扇町に移転をしてから初の大規模更新となった今回。更新システムはYamaha Nuageという選択となった。そのお話を同社、石川氏と飯田氏にお話を伺った。 ◎Nuendoシステムを支える環境 導入当時はDAW界のポルシェなどという呼び声も聞こえたFairlightを長く使ってきたガリレオクラブ、同社が何故FairlightからSteinberg NuendoとYamaha Nuageという組み合わせに移行したのだろうか?まず挙げられたのはサポートの側面。やはり業務で使用するシステムであるため、大阪に拠点を構えすぐにメンテナンスの体制が取れるYamahaは選択肢の一つとなった。またSteinberg Nuendoに古くから携わるYamaha 山本氏が在阪していることも大きな理由となったのではないだろうか。専用ハードウェアでの構成となるFairlightがタイムリーなサポートを求められるのはなおさらで、拠点の有無は大きな要素となったようだ。 また、飯田氏は個人的にCubaseのユーザーであり、Nuendoに対しての抵抗感がまったくなく、むしろ良い部分を知っていたというのも大きなポイント。7.1ch対応のサラウンド制作も行っている同社としてはトラック数の制約なく作業ができるNuendoの魅力は大きい。いち早く22.2chやDOLBY ATMOS、AURO等のフォーマットへの対応を果たすなど、今後の作業の発展次第では安心感のある機能を持っているのもNuendoの魅力である。   そして、Windows環境でも安定運用できるというのも導入の理由となっている。Cubaseから派生したNuendoの歴史を紐解いても、やはり開発の軸足がWindowsにあることは確か。カスタマイズ性の高いPCを使用することにより快適な作業が期待できる。そして何より大阪には、Steinberg PartnerのDAW専用PCメーカーOM Factoryがあるのも心強い。PCの構成の自由度が高いということはそれだけ相性問題などに出会う確率も高くなる。その部分を担保した専門性の高いメーカーが近くにあるということで、安心してWindowsでNuendoという環境が成立できる。実際今回の導入されたNuendoは全てがOM Factory製のカスタムPCでの導入となっている。 ・記事冒頭のSTUDIO-Aに付設されるBOOTH-A ◎Danteがすべての部屋をつなぐ もちろん、Fairlightから他のDAWへの更新を考えた際にPro Toolsが候補に上がったのは間違いない。国内でも多くのポストプロダクションがPro Toolsを使用しているのは事実である。Avid S6 + Pro Tools、そして旧来のコンソール+DAWというアイデアも候補に上がったということだが、やはりトータル・リコールの出来る一体型のシステムであるFairlight Constellationを使っていた同社にとって、コンソール+DAWの環境は魅力的ではあるものの効率面を考えると候補から脱落。Avid S6 + Pro Toolsはシステムの手堅さ、他のスタジオとの互換性などメリットは十分に感じたが採用には至らなかった。その理由はここからご紹介するシステムアップ面にある。   今回、ガリレオクラブの3部屋のMA更新とともに、3部屋あるSoundDesign(仕込み)も更新された。そして、以前から構想としてあった全てのスタジオの音声回線を繋いでおきたいというトータルでの目的もあった。そこで目を付けたのが、NuageシステムのフロントエンドとなるNuage I/Oが採用するDanteだ。AoIPとしてすでにPAの現場などで普及しているDanteは手堅いシステムであり、失敗の許されない現場で使われているということからも信頼性の高い機材であるといえる。今回3室のMAと3室のSoundDesignは全てが共通のDante Networkへと接続が行われている。   ご覧いただきたいのだが、MA室に関してはPCからの回線、Nuage I/Oからの回線、そして、モニターコントロール用のYamaha MMP1全てが同一のDante Networkへと接続されている。Sound EditはPCからのDanteとI/Oを兼ねるYamaha O1V96にオプションとして追加されたDante-MY16-AUD2が接続される。これにより、どこからでも自由に制約なく信号の受け渡しが可能となっている。このシステムが組めるということがNuage導入の最後の決め手となったのは間違いない。その背景には、次にご紹介するYamaha MMP1の存在が大きい。 ◎シグナルを司るYamaha MMP1 Nuageシステムはコントローラーとしてという側面だけでなく、「Nuendoをエンジンとしたコンソールを作りたい」というYamahaの思想が色濃く反映されたシステム。この考えもコンソール+DAWも候補として挙がっていたガリレオクラブの考えと一致する部分だ。しかし、従来のNuageシステムは、モニターコントロールに関してはNuendoのソフトウェアに統合されたControl Room機能を活用するということでのシステムアップが推奨されていた。やはり、外部にハードウェアでモニターコントローラーを持たせ、トークバック、カフコントロールなどのコミュニケーションと合わせて制御できるソリューションが望まれていた。その要望を受けてYamahaが従来はDME64Nが担っていたようなプロセッシングを、現代のスタジオに合わせより特化した機能を搭載して登場させたのが、MMP1だ。   それでは、Yamaha MMP1を詳しく見ていきたい。Yamahaがこれまでに培ったDMEシリーズ、MTXシリーズ等のシグナルプロセッサー。その技術を用いて、Nuageのモニターセクションにジャストフィットする製品として作られたのがこちらのMMP1。特徴的なのはその入力部分。基本の入力をDanteとして、Analogは8in / 8out、AES/EBU 16in / 16out と最低限。Danteのネットワーク上に接続して利用することを前提とし、最低限のEXT INPUTと、スピーカー接続用のOUTに絞った非常にコンセプトの明快な製品に仕上がっている。内部はDME譲りの柔軟なシグナルフローに加えて、モニターセクションが自由自在に構築できるようになっている。取材時点ではNuageとの融合の実態を全て確認することはできなかったが、NuageのMMP1コントロール対応については2017年冬にアップデートのリリースを予定しており、トータルでのインテグレートが期待できる製品といえる。   この製品の登場により、Nuageは単体でのコンソールとしての機能を手に入れることとなる。そして、前述の通り16in / 10outの自由にアサイン可能なGPIを持つことにより、カフコントロール、トークバックなどのコミュニケーション機能をMMP1の内部で完結することが可能となる。ここでもDanteの持つシグナルルーティングの柔軟性が生きる部分である。マイク入力は、一旦Nuage I/OによりDanteの1回線となれば、まずMMP1に送り込みカフの制御を受けた上で、PCのDante Acceleratorへと接続され、DAWへと入力される。全てがNetwork上での出来事であり、シンプルなEthernet回線の中でそのシグナルルーティングは行われる。   ガリレオクラブの思い描く次世代のスタジオのあり方。全てのスタジオの音声がネットワークを介して自由に接続されるという未来が、MMP1の登場により一気に現実のものとなった。もちろんDante I/Oを多数用意して、一旦Analogにした後にシグナルプロセッシングを行い、またDanteへと戻すということも出来るが、システム規模は非常に大きくなってしまう。MMP1の様に基本的に全てをDante Network上で信号の受け渡しの出来る製品は、まさに今回のキーデバイスと言えるだろう。 ・STUDIO-B ◎従来の作業効率を失わない工夫 Nuageを中心にNuendoをメインDAWとしてシステムアップをされたガリレオクラブだが、効果用にPro Toolsの用意もある。NuageはPro Toolsに切り替えたとしても、その操作は行える。Nuageの持つ操作の柔軟性、そういった点からも便利に使えているということだ。   実際にこのシステムを見たお客様からは、デスクについて褒められることが多いという。カスタムで作られ、サイドテーブルと一台となるデザインの机。その細部には細かいこだわりが多くある。まず、Nuageの設置についてはフェーダー面とフラットになるように設計されている。従来設置のFairlight Constellationは角度の付いた面にフェーダーがあったため、その操作感との統一も考えてNuageは後ろを少し持ち上げて設定、Constellationと合わせるために7度の角度が付けられている。また、コンパクトになったことを感じさせないように、サイドテーブルを大きくした。これによりディレクタースペースが大きくなり好評いただいている部分ということだ。   また、Nuage I/Oの音質に関しても高い評価をしているということだ。Pro Toolsは以前より候補として外せない存在であり、その評価は常に行なっていたということ。それでも、メインのDAWとして導入が行われなかったのは、以前の192 I/Oの音質が満足できるものではなかったからだということだ。当時使用していたFairlightの音質は高く、さすがは専用設計のDAW界のポルシェと言ったところ。今回Nuage I/Oをテストしたところ、そのFairlightの音質とほぼ同等だという結論が出ている。もちろん、Avid HD I/Oが音質向上しているということは知っているが、それ以上にNuage I/Oの音質は優れているという判断が導入の際にはあったということだ。 ・STUDIO-C ◎Yamaha MMP1 Yamaha Nuageの登場から早くも3年以上が過ぎようとしている。YamahaのNuageリリース時のコンセプトであるNuendoをミキシングエンジンとしたコンソール。これを実現するピースとして登場が待ち望まれていたハードウェアでのモニターセクション、それがこのMMP1である。こう書いてしまうとNuageでしか使えないように聞こえてしまうが、そうではない汎用性を持ちつつもNuageとの深いインテグレートを実現した機器ということだ。 MMP1の詳細を見てみたい。その入出力はAnalog IN/OUT 8ch、AES/EBU 16ch、そしてDante 64chとなる。そして内部には8chのChannel Stripとフレキシブルな40 x 32のMonitor Matrix、32 x 32のSpeaker Matrixがあり、32chのOutputに対してEQ/Dlyといったスピーカーマネージメント用のプロセッサー、そして全てのチャンネルを跨いだBass Managementが備わっている。   もちろんモニターセクションなので、これらの機能を外部からコントロールすることで、ソースの切替、スピーカーセットの切替、ボリュームコントロールなどを行うことができる。Nuageであれば、Nuage Masterからのコントロールが可能である。そのコントロール信号は、Danteの回線に重畳させることが可能なので別途コントロール用の信号線を準備する必要はない。Nuage以外のシステムとへのインテグレーション時もDanteでシステムアップを行っていればそのネットワーク経由でのコントロールが可能である。   スピーカーマネージメント部分は、定評あるYamaha DME譲り。8band EQとDelayが備わる。プロセッサーパワーの関係から残念ながらFIRの採用は見送られたものの、DSPの世代としては最新の物が使われているため音質に関してもブラッシュアップされているということだ。位相に関してシビアなベースマネジメント用のフィルターにはFIRが備えられているのは特筆すべき点ではないだろうか。   そして、Yamahaの製品らしく非常に豊富なGPIを備えているのがMMP1の特徴の一つ。内部のプロセッシングほぼすべてのファンクションのコントロールが可能な柔軟なGPIを持っている。Yamahaのコンセプトとしては、このGPIを活用してCough ControlもMMP1に担わせるように設計が行われている。そのためにInputにChannel Stripが用意されており、ここへMicの回線をアサインしCoughのON/OFFに合わせてMuteを制御、それによりCoughの制御を実現できる。このGPI信号に合わせてBTなどを総合制御することでCough Control unitなどの機能をMMP1が実現する。 今後Danteベースのシステムアップが増えると、MMP1はそのシステムのスピーカーマネージメントシステムとして脚光を浴びることだろう。32chものスピーカーマネージメントを行うことが可能なパワフルな製品。そう考えるとコストパフォーマンスも抜群に高く、すでにこの製品を中核としたシステムアップも行われている。AoIPを活用したプロダクション・スタジオシステムのラストピースが誕生したと言えるだろう。 国内でも先行してDante Networkを活用したスタジオのシステム構築を行われたガリレオクラブの皆様、そしてシステム設計を行われた日豊株式会社の池谷氏、株式会社ヤマハ・ミュージック・ジャパンの山本氏、豊浦氏のチャレンジに敬意を表しこのReportを締めくくらせていただきたい。     *ProceedMagazine2017-2018号より転載

Post

静岡放送株式会社様

◎Pro Tools+Video Slaveの構成で実現した効率的な作業環境 1952年に民放のAMラジオ局として全国17番目にオンエアを開始、その6年後の1958年に民放のアナログテレビ局として全国12番目に本放送をスタートした静岡放送。そのMA室の改修工事を担当させていただいた。県下最大のシェアを持つ地元新聞、静岡新聞の系列で、報道をはじめドキュメンタリーや情報系など自社制作に力を入れている放送局である。   MA室は2年前に内装の更新を行なったが、機材はそのままという状況であった。今回、機材の一新とともにミキサーデスクなどの什器の刷新、ブースとのコミュニケーション関連の機器の更新を行っている。これまでのPro Tools + Video Satelliteというシステムから、1台のPCによるPro Tools + Video Slaveというシンプルな構成に入替えが行われた。やはり、Video Slave導入の最大のポイントはタイムコードキャラクターのオーバーレイ表示。MAエンジニアには馴染みの無いノンリニアの編集機を利用するVideo Satelliteは、多機能すぎて操作の煩雑さを感じていたということ。ファンクション自体はフル機能のノンリニア編集ソリューションであるMedia Composerを使うVideo Satelliteには劣るものの、MA作業として欲しい機能が網羅されているVideo Slaveは、まさに静岡放送様のワークフローにジャストフィットするものであった。   今回の更新では、これまで使用してきたAVID C24からAVID S3への更新も行われている。フェーダー数は減ったものの、ロータリーエンコーダーは増えており、EuConの持つレイアウト機能を活用すればフェーダー数の減少はフォローできる。さらに、エンコーダーが増えていることによってプラグインの操作などでメリットが生まれることになる。また、サイズがコンパクトになった事により、デスク上が広く使えるようになったという点も作業上ではメリットがある。   また、VTRラックとの音声のやり取りをこれまではAESで行なっていたが、今回の更新ではSDI-Embeddedへとシステムを更新している。これによりVTRラックにあるSDI Routerを活用しての柔軟な運用を実現している。ちょっとした工夫ではあるが、使い勝手の向上した部分だ。 改装からそれほど時間のたっていない、このMA室に新しい什器、機器が導入されたことでまるで新設の部屋のようにフレッシュな環境となっている。PCの台数も1台となり、シンプルで効率の良い作業環境が実現できている。常設ではないが、サラウンド用のスピーカーセットもあり様々なコンテンツに対応ができる静岡放送のMA室。その更新をお手伝いできたことに感謝を述べ、本レポートの終わりとしたい。     *ProceedMagazine2017-2018号より転載

Broadcast

佐藤直紀邸ワークスペース

スタジオ感を徹底排除したワークスペース、総計12台のMacが連携したリアルタイム演奏システム、そしてその華麗なる融合。今回は2年の月日をかけて遂に完成した佐藤直紀氏のワークスペースを取材。佐藤直紀氏本人、そして住友林業株式会社と共に施工を請け負ったSONAプロジェクトマネージャー萩原氏両名によるスペシャルインタビューをお届けする。 佐藤 直紀 氏 1970年5月2日生まれ、千葉県出身。 1993年、東京音楽大学作曲科映画放送音楽コースを卒業後、映画、TVドラマ、CMなど、様々な音楽分野で幅広く活躍する。第29回日本アカデミー賞最優秀音楽賞受賞、第31回、38回、40回日本アカデミー賞優秀音楽賞受賞。 萩原 一哉 氏 (株)ソナ 統括管理グループ プロジェクトマネージャー 稲葉建設(株) 建築音響グループ 統括マネージャー 常にお客様の立場に立って、様々なご要望に沿ったご提案ができるよう日々精進しています。趣味は、ギタープレーとバンド活動。自身のバンドで彼方此方ライブ活動 ◎部屋の空気をスタジオに近づけない Rock:この度は完成おめでとうございます。最初に設計当初の目的から伺っても良いでしょうか? 佐藤:そうですね、まず私からは『スタジオにしたくなかった』ということです。これだけの広さがあって予算があればスタジオを作ることも可能でしたが、仕事場=スタジオとなると居心地が良い場所ではない。あくまで私の仕事は曲を書くことですので一番大事なのは仕事をしやすいリラックスできる環境でした。そのため『スタジオをつくらない』、『スタジオっぽい内装を避けたい』という点がポイントでしたね。 萩原:そうですね、その点が前提でしたので、一般的なものを極力使わず、かつ機能的な部分とバランスを保つことがポイントでした。住友林業のデザイナーさんに、どこに音響的な材料を使うべきかをお伝えし、外観が所謂スタジオのようにならないよう留意しました。 佐藤:音響的観点であれば当然窓がない方がいいのですが、窓がない家は日常的な空間ではなく、ストレスも溜まります。私の本音をいえば防音すらもしたくなくて、外から鳥の声や近所の子供の声が聞こえる方がベストなのです。しかし仕事場として24時間使用しなければいけない状況もありますから、今回は自分の部屋にいる感覚で仕事をできるようお願いいたしました。 萩原:防音の部分では佐藤さんの作業環境について事前に詳細を把握、相談の上、一般的なスタジオにあるような防音設備を取り入れてはいません。佐藤さんがお仕事をされても近隣に迷惑がかからない程度の仕様になっています。 Rock:内装やインテリアも素敵ですが、このデザインの希望はどのような経緯で決まったのでしょう? 萩原:インテリアについては、住友林業のデザイナーさんに全てを一任しています。SONAは音響的観点だけをお伝えして、それに見合った材料をお伝えしたのみです。あとはどこにその材料を使うかですが、例えば布が貼ってある壁や、天井の掘り上げた黒い部分、コンソールの正面の大型テレビ部分などに対して吸音措置を行い、部屋全体的には吸音をしすぎず『部屋の空気の雰囲気をスタジオに近づけない』いわばリビングっぽい響きになっていますね。 Rock:なるほど、中でも椅子や作業机などのデザインはこだわりを感じますね。 佐藤:これは私や萩原さんのこだわりではなく住友林業のインテリアデザイナーさんのこだわりです。ここの部屋の雰囲気のセンスやデザインは住友林業さん結構楽しんでやってもらいました。私は先ほどのコンセプトだけを話して、あとは『いい部屋を作ってくださいね』とだけお伝えしました。私のこだわりというわけではない、というと気に入ってないみたいですが、とても気に入っていますよ(笑) 萩原:最初に住友林業の建築士の方と話された際、建築士さんからいくつかパターンを提出しますか?と聞かれ、佐藤さんが『あなたが思っている一番をください』と言われたのが印象的でしたね。あれが忘れられないですね。その集大成がここです。 佐藤:もちろん途中少し遊んでもらった部分もありますよ(笑)。例えばこの線がまっすぐだったのを斜めにしました。 萩原:そう! 床のラインと天井のラインがあってないですよね。 佐藤:遊び心がありますね。 萩原:音響的観点から考えるとどうしてもシンメトリーにしたいと考えてしまいますが、そういう観点を持たない方が作るとこうなるのだなと感心しました。 佐藤:この斜めのラインには意味があって、実は外壁に対しては垂直なのですよ。斜めの箱の中に違う箱が入っている計算されたイメージなのです。 Rock:なるほど、家としてみたら幾何学的な模様なのですね! 佐藤:もちろんそんなことスタジオの中に入ったらわかりませんけどね(笑)  でも物を作るこだわりってそういうことなのだと思っています。基本的に建築設計と曲を書くことは似ている部分があると思っていて、何パターンを作っても本人の中で良いものは一つなのだと思います。それをまず出してもらうことが良いものができる秘訣だと考えています。 ◎空間と機能の両立 Rock:ベストと思ったイメージを具現化したわけですね! 具体的に防音遮音というカテゴリについては、SONAさんと住友林業さんとの作業分岐のポイントはどこだったのでしょう? 萩原:まず当初は防音工事の作業の仕方を住友林業さんに理解してもらわなければなりませんでした。ただ厚く重たい素材を貼れば防音になると思われがちですが、床や天井についてなぜこのような作業が必要かを説明し、先方から図面をいただいて、すり合わせのやり取りが度々発生しましたね。例えば空調も家庭用エアコンではなく、機械は部屋の外置きかつ機械本体の騒音が聞こえないようにするダクトの処理など、一般の建設会社では施工できません。空調機械自体は住友林業さんで設置しましたが、それら以降のダクト工事などは弊社で行わせていただきました。 Rock:となると今回のSONAさんとしてのクリアすべきラインはどの辺りだったのでしょう? 萩原:空調もそうですし、佐藤さんがお使いの機材に関わる電源のことなどですね。スタジオっぽくないとは言いつつも業務上必要です。ノイズカット機能や無停電の機能があるトランス、あとはマシンルームから各機材への配線方法などです。いかにスタジオっぽく見えないような方法、でも実際はスタジオっぽいことを行う、そのアイデアを出す作業を今回行わせていただきました。 佐藤:萩原さんにとってそこは一番大変でしたよね。私も住友さんも『スタジオっぽくしたくない』と言いながら、スタジオとしての機能はなければいけない部屋です。両立の部分で最も苦労されたと思います。音の響きよりも『ここに石を使いたい』などインテリア的な要望とのバランスはご苦労されたと思います。 萩原:作業場は見ての通りモニター画面もたくさん並んでいますが、スタジオっぽくなくデザインできたと思います。例えば防音ドアもスタジオと考えるならよくあるガチャっと開くハンドル式の重量ドアになりますが、今回は防音ドアのパッキン部分をマグネットにすることで、冷蔵庫方式でのように密閉する特殊なドアを使っています。スタジオドアのように締め付けなくて良いのです。これは作るのが大変で非常にシビアな製作工程がありますので、苦労したのはそういう部分ですね。 Rock:確かにドア一つで印象が大きく変わりますね。メインデスク周辺の機材配置などワークフロー上はどのような意味がありますでしょうか? 佐藤:私が中央に座って、素早く各PC前に行けること、中央席からでも見やすいことですね。 萩原:正面の机は調整設計に時間をかけましたね。メインデスクの構成は作家さんのスタイルで鍵盤優先か、PC優先かで変わります。佐藤さんの場合は作譜作業がメインですから、鍵盤の位置が通常より高いのです。 佐藤:私の場合は譜面を書くということが一番長い作業なので、メインとする配置を作っていただきました。 ◎あくまでワークスペースであること Rock:メインデスク周りはハードウェア音源などがありませんが、PC環境ベースへの移行はいつ頃ですか? 佐藤:ソフトシンセに移行した段階からですね。一個一個段階を経て増えていったもので、突然こうなったわけではないのです。最初はもちろんハードウェア音源、途中でギガサンプラーの頃は2台のみの環境でした。ハードウェア音源が徐々に減りつつソフトウェア音源へクロスフェードしていったのは自然の流れですね。 Rock:現在でもハードウェアシンセサイザーではアナログシーンが再燃していますが、そのあたりに興味を感じますか? 佐藤:私自身は機材自体に全く興味がなく、その辺りはROCK ON PROさんにお任せしています。なぜなら私は曲を書くのが仕事なので、音の良し悪しはエンジニアに任せています。響き自体に関してシビアというでもありません、ここでトラックダウンするわけでもありませんしね。『曲を書きやすい環境』があれば良いので、機材構成もそのための構成になっています。アナログシンセは元来作成した音を保存して呼び出せるわけでもありませんし、便利ではないものにこだわる時間よりは1曲でも多くを書きたいですね。 Rock:作曲と編集を割り切ることでシステム構成はクリアになりますよね。昨今の若いクリエイターなどは作曲から編集、ミックスまで任されてしまうことも多いようですが、そのあたりはどう感じられますか? 佐藤:実際はそうですよね。確実に音楽の予算は減っていますから、作曲からミックスまでやらなければいけない。スタジオを作りたくないというのは、それが嫌だったのもあります。スタジオというと『トラックダウンができますよね』『Vocal一本くらい入れられますよね』うちがスタジオと言わず仕事場と言っているのは、スタジオと言った時点でそれら全てを担ってしまう恐怖です。 萩原:あくまで佐藤邸ワークスペースというのを部屋の名前にしています。日頃スタジオを作っている我々としてはそういう意味では楽でした。1m数万円のケーブルにこだわる方もたくさんいますが、佐藤さんからはそのような部分への要求はなく、又、この空間でそれらのクオリティの違いを聞き分けるには、モニタリング環境はよりシビアになり、結果スタジオになってしまいますからね。 Rock:新しいワークスペースを完成させての喜びをコメントにしていただいてもいいですか? 佐藤:僕以上に色々な方々とこだわって作ったワークスペース、実に2年かかりました。これだけ良いワークスペースは長く作曲家を続けるモチベーションになります。 Rock:この部屋だからこういう曲が生まれるという化学反応はありますか? 佐藤:まだ始まったばかりですが、それはわからないです。長く居る空間ですから居心地のいい部屋を作ることは絶対でしたが、必ずしも良い部屋を作ったから良い曲が作るわけではありません。もちろん、書けるといいですけど(笑) Rock:曲作りを本格的に始められた頃の機材環境はどうだったんでしょう? 佐藤:一人暮らしをしていた六本木が最初のワークスペースだったと思います。当時はサンプラーが多かったですね、AKAI Sシリーズを6、7台使って、あとはEMUなどラックシンセを多数活用していました。機材や音源との出会いという面ではずっと前に遡りますがYAMAHA DX7などTOTOやハワードジョーンズとかのサウンドを聞いて憧れて買ってもらったのを覚えています。 Rock:ハワードジョーンズは当時衝撃的でしたね。サウンドもPOPでしたし。プリンスの前座だったのを覚えています。 佐藤:あの当時はキーボード並べて弾くってのが格好良かったですね。最初のワークスペースに話を戻しますが、私は自宅とワークスペースの場所を分けてしまうと、仕事に向かう足が止まってしまうんですよ(笑)。 よく切り替えられる人もいると聞きますが、私はおそらくなんだかんだ理由つけていかなくなって(笑) 眠たくなったら1分で寝られる、仕事しようかと思ったらすぐいける、という環境を作っておくのが重要です。 Rock:部屋の一部という発想はその頃から継承されているのですね。職業作家を目指されたきっかけは何でしょう? 佐藤:今でこそ劇伴作家をやりたい方は多くなりました。私は映画やドラマなどのエンターテインメントが好きなので、音楽という立場からそのように関わりたいと漠然とした目標を持っていました。ただ当時は映像音楽だけでなくJ-POPなど色々やりたかった。およその記憶ですが、当時15年前くらい前にSMAPが一流のミュージシャンを使って、凄いレベルの高い曲を書いていました。あれに憧れてSMAPのための曲を散々書いたのですが全く採用されませんでした。 Rock:コンペなどにも出されたのですか? 佐藤:当時はコンペおよそ200曲、300曲が当たり前でした。本当は曲が書きたいのではなく、アレンジがやりたかった。海外の一流ミュージシャンとの仕事ができることに憧れていましたが、アレンジャーとしてだけでは業界に入れないので曲を書きながらやりなさいと当時先輩方に言われて、SMAP用の曲を何曲も書きましたが結果は全然ダメでした。 Rock:海外ではアレンジャー専門職はいないのでしょうか 佐藤:いらっしゃるでしょう。ただ日本では曲が採用されたらアレンジもできるという内容で売っていかないと仕事が入り辛いと当時制作の方から言われたのを覚えています。 Rock:当時のSMAPというと米国西海岸で収録したCDですね。 佐藤:はい、私はフュージョンが大学の頃は大好きで、CDにクレジットされていたアーティストたちがSMAPのアルバムに多く参加しているんですよ。彼らと会う一番の近道はこれだ! と当時思いましたね(笑) あの頃のSMAPのアルバムがいい意味でやりたい放題で、セールス面以上にレベルの高い楽曲を多く入れていて純粋に憧れましたね。その後J-POPと映画音楽と両立をできればよかったのですが、そんなに甘くなかったです。劇伴音楽以上にJ-POPはレベルが高すぎて、何かの傍らというやり方ではとても出来ませんでした。 Rock:専業でないと厳しそうですか? 佐藤:はい、J-POPのアレンジャーとか本当に私は尊敬します。あのクオリティはとても生半可な関わり方ではできないです。 ◎書き続けたことが今に繋がっている Rock:その後の佐藤さんのご活躍は皆知るところですが、現在の職業作家を取り巻く環境についてはどう思われますか? 佐藤:なかなか作曲家にとって難しい時代に来ていると思います。一人で多様な仕事をこなす人=優秀とされているので、エンジニア的な能力など作曲と違う技能が必要です。楽器や音源が多い人のほうがサウンドは残念ながら純粋に曲を書く技術がなくとも豊かになるし、曲を書けなくても楽器でカバーできるシーンもありますから当然お金も必要です。純粋な作曲家としての道は以前より険しいでしょうね。 Rock:工夫が必要ということですね。 佐藤:昔よりもバランス感覚がとても大事になっており、素直に大変だと思います。ただ私が本当に危惧していることは『バランス感覚が良い人は、便利屋として専門になってしまう』状況です。低予算で仕事をこなし続けることで、その後同様の仕事が膨大に増えてしまうことが問題です。器用に依頼をこなすほど便利屋として使われてしまうのは難しい話です。 Rock:確かにPCベースの制作環境の中、より純粋に音楽に向かい合うのが難しくなっていると我々も感じます。 佐藤:それはもう音楽に限らないと思います。職人的な人にとって非常に難しい時代です。役者さんも、役者馬鹿なんて言葉はもう通用しない。テレビ番宣で気の利いたコメントも短い時間で言えないと本職さえもやっていけない時代です。ひと昔だと曲だけ書ければ良いという時代もありましたが、人間性、コミュニケーション能力などが必ず必要となってきます。 Rock:ここまで来ると運の部分がありますね。 佐藤:頑張ってもらうしかないですね。大きいチャンスを掴んだ際にどのようにブレイクするか。作曲家としては、いい曲をとにかく書き続けて、タイミングと運を待つことしかないですね。 Rock:良い曲は降ってきますか? 佐藤:降ってきませんよ! すんなり書けることは一回もなくて、今回こそ書けないかもと思い、締め切りに間に合わないと思いながらギリギリで出来上がる奇跡の連続なのです。一ヶ月に30〜40曲作る必要があるので、風呂入りながら鼻歌で作るとか、散歩しながらドライブしながらなんてことは全くなくて、机に向かって1日1曲以上必要ですから必死に絞り出すんです。1日1曲書いたら明らかにインプットよりアウトプットのほうが多いので、そんなスラスラと書けるわけはありません。しかし、そんな中でもとにかく書き続けたことが今に繋がっていると考えています。 ◎KEY POINT   ・Mac pro 2台、銀Mac pro 2台、Mac mini 8台の計12台が連動した驚異のシステム 中核を担うMacpro2台にはDigital PerformerとAvid ProToolsがそれぞれスタンバイ。このDigital Performerから複数台のMacminiへとiConnectivity社のmio10×2台を通じてMIDI情報を分配。8台のMacmini上のソフト音源を同時演奏し、そのオーディオをもう一台のMacproをベースとしたAvid ProToolsHDXシステムでリアルタイムに収録。HD I/O 16×16 Analog 4台併用で64トラックの同時録音に対応している。Macmini各機のオーディオインターフェースは主にRME FirefaceUCをスタンバイ。Digital PerformerからMIDI分配を行うMacproには不要となるオーディオインターフェースは接続されていない。     ・Mac mini毎に異なるカテゴリのViennaInstrumentsがスタンドアローン起動 まず4台のMacminiと1台の銀Macpro上ではViennaInstrumentsがスタンドアローンで起動。それぞれ弦/金管/木管/パーカッション(+BFD3)/ハープ&コーラスと1台毎に担うカテゴリが整理されている。残りの4台はLA ScoringStringsなどいわゆるKONTAKT系ライブラリを完備。まさに音源の多さはサウンドを豊かにするという氏の言葉を体現するライブラリ集だ。   ・ワイヤリング 床下コンクリート中に配管を打ち、テーブル類の背面からアクセスが可能な仕様。配線ピットで蓋が取れる構造すら削除し、ディスプレイ以外完全にケーブルが視界から消えるようにデザイン。マウス類もワイヤレス。スタジオ機材専用電源は照明や雑用コンセントと系統から分別。3kVA電源+無停電装置バッテリーも用意されている。     ・防音ドア 防音ドアのパッキン部分をマグネットにすることで、冷蔵庫方式で密閉するドアを採用。ハンドル付き重量ドアを使わないだけで出入りのストレスを極限まで軽減。   構想から2年の月日を経て完成した「ワークスペース」。長い時間を過ごす空間だからこそ、その居住性も問われ、もちろんワークスペースとしての機能も求められる。その実現のために音楽、建築とフィールドは違えどクリエイター同士のアイデアが切磋琢磨してできあがった空間、この場所にいると感じられるその空気感も佐藤氏のクリエイティブの源泉になっていくのではないだろうか。     *ProceedMagazine2017-2018号より転載

Music

ROCK ON PRO導入事例/中京テレビ 放送株式会社様~リニア・ノンリニアを融合し、更なる進化へのマージンをもったシステム~

東海3県(愛知、岐阜、三重)をエリアとする中京テレビ放送株式会社は新局舎への移転に伴い、その設備全てを一新する大規模な導入を行われた。放送局でよく見られる隣の敷地への新局舎への設備更新ではなく、これまでの名古屋市東部の八事に立地する旧局舎から名古屋駅前の笹島地区への完全移転となる。ROCK ON PROではその移転工事の制作音声に関わる工事、システムの導入をお手伝いさせていただいた。 ◎大命題となったファイルベースワークフローの導入 旧局舎には2部屋のMA室と1部屋の簡易MA室、5部屋のレコード室と呼ばれる音声仕込み用の設備があった。MA室はコンソールにStuder Vista7、メインのDAWとしてMerging社のPyramix、サブDAWとしてAVID Pro Tools、レコード室にはAVID Pro Toolsがそれぞれ導入されていた。今回の更新に伴い、全てのシステム、ワークフローのファイルベース化が大命題としてあり、それに則ったソリューション、システムの導入を行っている。制作編集、報道編集それぞれとネットワークで接続され、ファイルでのやり取りを基本とし、さらに報道で起こりうるスピードに対応するVTRや、SONY XDCAM Station XDS-PD2000に対してのリニア作業まで、幅広いワークフローに対応することの出来るシステムが求められることとなった。

Broadcast

株式会社バスク様 / 随所に光る経験に裏付けられた創意工夫

フジサンケイグループの1社として、テレビドラマと映画を専門にするポストプロダクション「VASC」(バスク)様のAvid S6導入をご紹介したい。映画を専門とするダビングステージを持つポスプロと異なり、MA室の延長線上で映画整音とドラマという長尺の番組に特化した独自のスタイル。これまでのシステムから今回どのようにしてAvid S6の導入となったのか?システムの歴史も含めて紐解いてみたい。 ◎その運用にフィットしたEuphonixという選択 バスク様のMA室のシステムはEuphonix CS2000とFairlight MXFの組合せでスタートしている。長尺の番組を扱うということで、そのチャンネル数は多い。それを柔軟にハンドリングできる大規模マトリクスをもったCS2000はバスク様にとってベストな選択であったということだ。DAWのFairlight MXFも、当時は高度な編集機能を持った業務機として揺るぎない地位を築いていた製品だ。   Euphonix CS2000はアナログ回路で設計されたチャンネルストリップをデジタル制御のマトリクスで柔軟に内部接続をすることで、運用の柔軟性をもたせたこの時代には非常に画期的なコンソール。YAMAHAのO2Rが登場し、デジタルコンソールの利便性が認められていたところに、ラージコンソールと同等のアナログ回路と、デジタルコンソールの利便性を融合させた機器として登場した先進性に溢れたコンソールである。   その後、MA室を増設する際に導入したのがAMEKのデジタルコンソール。このときにもDAWはFairlightが採用されている。さらに3室目のMA室を2003年にOPENしている。このとき採用されたのはEuphonixのMaxAirで、DAWには同じくFairlightが採用されている。そして2005年にはCS2000の更新があり、Euphonix System-5が選択された。CS2000の利便性を更に拡張し、チャンネルストリップ部分もデジタル化したコンソール。デジタル技術も進化し、デジタルながら「空気感を再現できるコンソール」として高い音質評価を得たハイエンド製品だ。System5は映画の本場であるハリウッドでも評価を得ており、今でも数多くのダビングステージで使われている製品の一つでもある。   現在メインで使われているPro Toolsの導入は2008年まで待つこととなる。やはりFairlightと比較して、当時のPro Toolsは今ほどの使い勝手を持ち得ていなかった。バスク様は2007年の湾岸スタジオ開設当初よりポスプロ管理として業務を行っている。DAW機器の選定をするに辺り、自社ミキサー卓をAMEK~D-controlへ更新し、そこでAvidへ多くのフィードバックを伝えた結果、Fairlightを使用していた自社が満足出来る使い勝手へと進化していく事が確認出来たのでAvid Pro Toolsを導入、引き続き自社にも導入するに至った。   AMEKが導入されている部屋のシステムは、Digidesign D-Controlを経て2015年にEuphonix System-5へと更新が行われている。現在稼働している汐留に移転する前は、2式のSystem-5で運用を行なっていたということだ。このようにシステムの変遷を振り返ってみると、常にEuphonixのコンソールが1台は稼働しているという環境である。Euphonixの魅力についてお話を伺うと、その運用の柔軟性が真っ先に思いつくということだ。長尺のテレビドラマ、映画が作業の中心となると、1作品ごとに求められる作業スタイルが変化をする。それに柔軟に対応できるシステムとしてEuphonixの製品はジャストフィットしたということだろう。 MA1 MA1 System5 MA2 2列目に埋め込まれたCM408 MA2 ◎System-5とD-Controlを受け継いだS6へ そして、今回の汐留への移転を期に2室としていたMA室を再び3室体制へと拡張している。System-5が生産完了となり、その後継として開発が進んでいたAvid S6を選択したのは、これまでの経緯を考えると必然に感じられる。しかし、Avid S6はSystem-5の大きな魅力であったマトリクスエンジン「eMIX」にあたる部分を持っていない。Pro Tools自体が柔軟なシグナルルーティングが可能だといっても、複数システムを並走させる映画の作業では、最終のステムミックスを行うためのミキサーは必須である。そのような大規模なシステムを必要とする場合は、これまで通り移設したSystem-5を活用し、規模の小さな作業を効率的に行うために一回り小さな3室目を計画、Avid S6を導入となっている。 MA3 System-5の部屋には、3台のPro ToolsがHybrid Systemと呼ばれるEuConによる接続でリモートが出来るようになっている。コンソールとの信号のやり取りには、Avid HD MADIが使われているということだ。非常に特徴的な、前後に分割されたSystem-5はセンターポジションでミキサーも、効果音のスタッフも作業が行えるように工夫された結果だ。このような柔軟な設置が行えるのはEuphonix System-5の魅力のひとつ。コンソールが8chごとのモジュール構造となっているからこそ実現できているポイントだ。   新設のAvid S6のシステムは、24フェーダー仕様。フレームは最大40フェーダーまで拡張できるものを採用し、将来的な拡張性も確保されている。現場で作業されるスタッフの多くが、以前同社に導入されていたDigidesign D-Controlのオペレート経験があるため、導入は非常にスムーズであったということ。System-5とD-Control、両者の後継として開発されたAvid S6。その両者を知るユーザーの目に、S6は正常進化の製品として受け入れられているということだ。System-5の持つ柔軟なオペレートと、D-Controlの持つ高いPro Toolsとのインテグレート。それぞれが持っていた美点がS6にしっかりと受け継がれている。 MA3に導入されたS6 ◎デスクからストレージまで、考え抜かれた作業効率 Avid S6の収められたデスクは、使い勝手にこだわったカスタム設計。System-5の設置を見ても、バスク様は長時間の作業を前提として、少しでも快適な環境を構築したいという高い意識がこのような部分からも強く感じられる。どれだけよく出来た機器も、人が触れる部分が使い勝手にマッチしていないとストレスを感じることとなる。特に長時間の作業ではそれが顕著であり、作品の仕上がりにも影響することを良く知っているからこそ、このような部分にしっかりとコストを掛けているのだと感じた。 また、モニターコントローラーにはGrace Design m904が採用されている。クオリティに直結するモニター環境の要となるこの部分にこだわりの製品をチョイスしている。そして、スピーカーにはDynaudio Air-6が採用されている。これまでのSystem-5の部屋で使われている同社のAir-20との共通性を確保する選択だ。映画関係のスタジオで好まれるDynaudioはラージモニターの鳴りを感じることが出来る稀有な存在。DSPによるコントロールを持ったフラッグシップであるこのAirシリーズが生産完了となったことを惜しむユーザーは多い、このラインナップの復活に期待したいところだ。   録音用のブースは2部屋有り、3室のMA室からそれぞれで使用できるように設計されている。新設のAvid S6の設置されたMA3にはMic PreとしてAMEK 9098 DMAが用意されている。AMEKのコンソールを使われていた同社の歴史が伺える部分ではないだろうか。 Grace Design m904が採用された MicPreにはAMEK 9098 DMA バスク様は、編集室とMA室の共有ストレージとして大規模なAvid ISISシステムを導入されている。総容量384TB、12筐体の大規模なISISがMA室の各Pro Toolsに接続されている。通常の作業では、全てのデータがISIS上に置かれ、ローカルのストレージで作業を行うということは無いということだ。Videoの再生システムとしては、Avid Media Composerが導入され、Pro ToolsとVideo Satellite systemが構築されている。編集との高度な連携により、作業の効率を高めているということだ。 マシンルーム 全体を通じて感じられる、利便性と音質、非常に重要な2つのファクターに対しての高いこだわり。テレビドラマと、映画という2つの軸に対してぶれることなく行われた使い勝手のブラッシュアップ。歴史あるスタジオならではの経験に裏付けられた創意工夫が随所に感じられるシステムである。一見何気なく整然と設置されているように見えるが、一つ一つにこだわりが織り交ぜられた、優れた作業環境であるといえる。最後になるが、お話を伺った株式会社バスク 執行役員 音声技術センター長 小林祐二氏、そして、このシステムの構築を行われた株式会社エム・ティー・アール 冨岡成一郎氏にこの場を借りて御礼と感謝を申し上げたい。 ・写真左から、株式会社エム・ティー・アール 冨岡 成一郎 氏、株式会社バスク 亀山 貴之 氏、蜂谷 博 氏、佐藤 真美 氏、執行役員 音声技術センター長 小林 祐二 氏、株式会社メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部 岡田 詞朗、前田 洋介     *ProceedMagazine2017Spring号より転載

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専門学校 ESPエンタテインメント 大阪様 / 最高峰の機材で確実な力となる貴重な体験を得る

大阪梅田にほど近い、中津駅そばに専門学校ESPエンタテインメント大阪はある。大阪駅からも徒歩で楽器店の並ぶ通りを抜けると学校がある、そんな立地だ。みなさんもご存知のようにESPは日本を代表するギターメーカーの一つであり、個性あるクラフトモデルを多くリリースしているメーカー。学校の開設は古く30年以上の歴史を誇る。当初は、ギター制作学院としてスタート。その後、東京・高田馬場に専門学校ESPミュージカルアカデミーを開校し、ミュージシャンの育成をスタートする。ミュージシャンだけではなく、パフォーマー、コンサートスタッフ、アーティストスタッフ、ピアノ調律、レコーディングと分野を広げ、今では芸能全般をフォローする総合専門学校となっている。 ◎「現場主義」を実現する充実した環境 今回取材を行なった大阪校の開校は13年前、音楽アーティストの育成、音響・コンサートスタッフの育成、声優、芸能と幅広い学科を開設し業界へ人材を送り出している。学校の特色としては「現場主義」という言葉が真っ先に飛び出した。講師は、現役の現場で作業をおこなうエンジニアが多く、即戦力を育成するためのプログラムが組まれているということだ。コンサートスタッフ・コースなどは、学生時代から、実際の現場での実習を受けることが出来ることが大きな魅力になっている。これは、卒業後の採用にもシナジーを生み、実際の現場での動きを見聞きし、共に仕事をしたことがある学生の中から採用を行うことが出来る、ということにもつながっている。実際の進路を聞いてみると、7~8割の学生が就職しているということ。門戸が狭いと思われがちな、音楽業界へこれだけの就職率を持つということは素晴らしいことではないだろうか。   もちろん、学内のイベントも運営は学生が主体。講師がサポートに回り、実践的な実習を中心に授業が行われているということ。今回取材させていただいた、レコーディングスタジオも、学生の演奏を学生がレコーディングするという、両者にとって貴重な経験となるカリキュラムとなっている。MAの授業もあり、そこでは声優科の学生を録音するという形を取っているということだ。学内のリソースで様々な現場の再現ができ、最新の機材と、現場同様の環境で実習が出来るというのは学生にとって理想的な環境であると言えるだろう。   このレコーディング・スタジオを利用する学生は1年時に隣の校舎に設置されたSSL AWS900のスタジオで基礎を学ぶ。2年時にこのAVID S6の設置された環境で、応用となるエンジニアリングを学ぶということだ。やはり、レコーディングの基本、シグナルルーティングなどを、学ぶにはアナログコンソールは最適である。これは、デジタル全盛の現代においても変わらないことだ。やはり、全てが、物理的につながり1対1の関係であるアナログは全ての基本であるということだろう。2年時にはAVID S6というサーフェースに環境を変え、実践的なDAWの使いこなしを学ぶこととなる。豊富に用意されたアナログアウトボードも、その思想の現れであり、レコーディング、マイキングの更に踏み込んだパートとして、機器、メーカーによるサウンドの違い、そのセレクトといったところを体験、体感できるように準備されているということだ。   アウトボードラックには、マイクプリだけでもSSL、API、Vintech、Manleyとハイエンドの製品が並ぶ。コンプはUniversal Audio 1176とTUBETECH CL-1Bという定番の機種。リバーブもLexiconとTCという2台があり、その違いを確認することが出来るようになっている。なんとも贅沢な環境である。ハイエンドの製品のサウンドに触れ、その違いを体感することは、その後現場に出て確実に経験の下地として蓄積されていくことであろう。 ◎将来のスタンダードを踏まえた機材選定 それでは、ここから今回更新されたAVID S6に関して見ていきたい。この教室には元々Digidesign D-Control 32 Faderが設置されていた。10年以上稼働したこのサーフェースの更新にあたり、SSLなど他にも候補は出たものの、やはりその後継であるAVID S6が採用されたということだ。SSL AWS900を1年時に使い2年時にステップアップして、別の環境を用意するという観点からも、即戦力育成という学校の方針から、今後導入が進むと考えられるこの製品を選択するということに大きな迷いはなかったということだ。   AVID S6の構成は24 Fader - 9 Knobの仕様。フェーダー数が8本減ってはいるが、AVID S6の持つ柔軟なレイアウト機能や、スピル機能を考えるとこのサイズでも十分という結論になったということだ。ノブに関しては、各種パラメーターを学生が俯瞰出来る環境のほうがわかりやすいという目線からこちらの仕様を選択したということ。導入直後ということもあり、講師の方々もどのようにこのAVID S6を教えていくのか?まさに検討が始まっているということだ。様々な使い方が可能なAVID S6だが、どのように使いこなしていくのか?それぞれの個性が出る部分だ。ユーザのアイディアに柔軟に対応できるAVID S6の真価を引き出してほしいと願うところである。 AVID S6に接続されるPro Toolsも同時に更新され、Pro Tools HDXの環境へと更新が行われている。InterfaceにはAVID HD I/O 8×8×8が3台用意され、モニターコントローラーとしてAVID XMONが、またMic PreとしてAVID Preが採用されている。XMONとPreは、これまでのD-Control環境でも使用していた製品ということで、AVID S6のメーカー純正環境として採用されている。特にPreはAVID S6のサーフェースから直接のリモートコントロールが可能な製品であり、コンソール感覚でのチャンネルごとのゲイン設定などのリモートコントロールが可能となっている。 プラグイン関係の更新としては、UADが追加で導入された。現場での採用率が高くなっているUAD。レコーディングでの掛け録りなど、色々と試してみたいと積極的に新しい技術を教えていこうという意欲の感じられる部分である。なかなかプラスアルファの部分にまで踏み込んで学べる環境はない中で、このような積極的な姿勢を持つ学校の存在は、非常に心強く感じた。   この教室では、MAの実習も行われている。その為、Videoの再生環境が整えられている。Pro ToolsのVideo Trackからの出力はもちろんだが、TImecodeのオーバーレイ表示できるVideo Slave 3 Proが追加で導入された。国内に導入されたばかりのソリューションであるVideo Slave 3 Proは講師陣にも非常に好評。タイムコード表示の柔軟性、ADRの支援機能などこれまでは得られなかった、機能に好印象を持っていただいている。Pro ToolsのVideo Trackでの基本的な使い方と共に、ESPを出た学生はもう一つの環境を知った人材として今後羽ばたいていくことだろう。 現場での採用が加速度的に進む、AVID S6。その環境を学生時代から知り、学ぶことの出来る環境は増え始めている。DAWにかじりついての作業だけではなく、豊富なアナログ機器に触れ、最高峰のコントロール・サーフェスでの作業を知る。現場に出て、確実に力となる貴重な体験を得ることの出来る環境が揃っていると感じる。もう一度学生に戻り、ゆっくりと機材と向かい合いたい。そんなことを感じる取材であった。 専門学校ESPエンタテインメント 教務部主任 サウンドクリエイター科 学科長 今村典也 氏 今回更新のご協力を頂いたESPエンタテイメント大阪のスタッフの皆様     *ProceedMagazine2017Spring号より転載

Education

MONOOTO STUDIO

大阪中津からほど近い場所に位置する『MONOOTO STUDIO』。MAから音楽まで幅広くミキシングを行うオーナー村山氏のこだわりが詰まったカジュアルでハイセンスなレイアウトを持つスタジオとなっている。小規模ながらも、ファイルベース稼働のローコストスタジオとして地元大阪で着実に浸透しつつあり、オープン4周年の節目においてRock oN PRO UMEDAが新スタジオ増築のお手伝いをさせていただいた。 ハイセンスで暖かなレコーディング空間 ウンドエンジニアとして長年フリーランス活動をされたいた村山氏がおよそ4年前に設立した『MONOOTO STUDIO』。無機質になりがちなスタジオ空間を、村山氏セレクトのスタジオ家具にオーダーメイド什器や照明、オブジェクト等により非常に暖かなリラックス出来る空間に仕上げている。筆者もまるでカフェで寛いでいるかのような感覚に陥ってしまうほどのコンフォートぶりである。"自分が良いと思えるものだけを揃える。"といったストレートなコンセプトをベースにセレクトされたスタジオイクイップメントや、小規模ながらも今回 Rock oN PRO Umedaによって新規導入された機材を合わせてこちらで簡単にご紹介していきたい。 2フロア構成でキャパシティに合わせた展開 既存の4Fと新設された5Fの2フロアに分かれたスタジオは、機能的に大きな差を設けず、録音ブース、アウトボード各種、そしてProTools 12と Artist Mixをベースとしたコントロールシステムという構成で統一されている。既存の4Fのスタジオをベースに5Fに新規でスタジオをオープンさせている。どちらも同様のクオリティで業務が行えるが、案件に応じた使い分けをしており概ね4Fをメインに案内していることが多いそうだ。 新設された5Fスタジオ 2フロア共にモニタースピーカーは柔らかな音質が特長の『FOCAL』社で揃えており、4Fは3wayの『Twin 6 Be』、5Fは2way『CMS 65』と音のサイズ感に違いを持たせている。『Twin 6 Be』は音楽的な響きを持ちながらも、モニターとしての正確さを合わせ持っており、村山氏が試聴会で聞いて一目惚れしたというセレクト。ベリリウムツイーターによる高解像度な高域と柔らかな中域の押し出しの絶妙なバランスが特長のFocalだが、以前のスピーカーでは感じ得なかった音の鳴りに当初は困惑したというエピソードも。 メインDAWにはやはりPro Toolsを採用、今回、最新のバージョンにアップグレードしたことで非効率なオートメーションやノーマライズを不要にするクイックプロジェクトやクリップゲインなど新機能が搭載された。MA作業などクリップ編集が圧倒的な割合を占める『MONOOTO STUDIO』では、シンプルでMTRライクな『ProTools』がベストだと村山氏は太鼓判を押す。また、DAWコントローラーとしては全てのスタジオに『Artist Mix』を導入している。   自身がバンドでのCDリリースや、フジロックへの出演などMAエンジニアとしては、音楽寄りの濃いキャリアを持つ村山氏。音響効果などでもその経歴の滲む作品作りが行われていることだろう。機器の選定、スタジオデザインなど随所に、音楽を愛する村山氏のセンスが感じられるスタジオとなっている。 MONOOTO STUDIO 村山 拓也 氏 関西エリアでもPro Toolsの更新導入とともに、これまでの業務を見直してさらなる効率とクオリティを求めているケースとなった。最新のプランニングにより得られたワークフローは、現場で一層の輝きを放ちユーザーにとっても価値ある更新となっている。個性とオリジナリティに溢れるその様子が今後もますます拡がっていくよう、ROCK ON PRO Umedaではより一層のサポートを続けていきたい。     *ProceedMagazine2016-2017号より転載

Music

株式会社サウンズ・ユー

大阪福島区にある在阪の老舗MA・音楽制作スタジオ「株式会社サウンズ・ユー」。本社スタジオでのMA作業、音楽制作のほか、IMAGICAウェストや各放送局でのMA業務に多数のエンジニアを派遣するという技術協力も行っている。その本社には3部屋のスタジオがあり、すべてPro Tools|HDでの運用、サラウンドに対応したスタジオが完備されている。今回は、そのうちの1部屋を全面改修し、残り2部屋については最新のバージョン12へPro Toolsの更新を行うこととなった。 時代のニーズに合わせたスタイルを追求 今回の新設スタジオは、従来のミキサーベースのスタイルから大きく変貌を遂げている。ファイルベースの作業が増加しつつある今のニーズに合わせるように、大型コンソール主体のスタイルからPC/DAWをメインとしたシンプルなワークステーションへと移行。その中核には『Pro Tools S3』が鎮座する。そのコンセプトは、大型の機器を極力排除し音響環境を最善の状態にし、機器としてのミキサーがスタジオの主役ではなく、エンジニア自身が中心となり、作品を作り上げているといった構図を意識している。作業のためのデスクは特注であり、お客様の書いた手書きのラフスケッチから理想を追い求め制作された物。そのサイズ感、形状など細部に渡るこだわりが詰まっている。   いわゆるサウンドデザイナーとしてのスタイルが理想形として透けて見える。今回改装したこのMA室はコントロールルームはゆったりとしたスペースが確保され、作品に携わる全関係者が一同に介せるほどの広さだ。これは、システムのコンパクト化によりマシンルームが排除された事によるメリット。これにより、クライアントが同席する際にも、遮る物のない優れたコミュニケーション環境が得られる。もちろん、ハイクオリティなモニタリングをキープできる絶妙な距離感など、様々なファクターも実現している。 コアオペレーションを『VMC-102』に集約 ラージモニターにはMusikのフラッグシップモデル『RL901K』を採用。シンプルなスタジオのルックスに大きなインパクトを加えている。スピーカー背面への回り込みを排除する独自のカーディオイド処理により、素直で耳馴染みの良いワンランク上のモニター環境を実現した。また、このカーディオイド特性より、ディレクター席、クライアント席での視聴環境の向上に対しても一役買っている。   モニターコントロールは、VMC-102とDirectout Technologies ANDIAMO.2の組み合わせで、マシンルームからの外線とスタジオ内の機器すべてを集約し、集中的にコントールを可能としている。モニター機能はもちろんの事、VMC-102には基本のコミュニケーション機能と制御をフルに活用し、カフ、トークバック等のコミュニケーション関係も全て制御している。これをVMC-102の設定で実現し、カフシステムの専用コントローラーを不要としている。カスタマイズ可能なタッチパネルには、モニターセレクト機能の他、強制カフON/OFF、CUE OUTを活用したマシンルームへの連絡線への確立など、そのアイデアを特注品の様に作りこんでいる。これらの機能を実現するために必要であった、制御系の機器、既存の製品のカスタマイズなどはROCK ON PRO umedaのスタッフが実現している。 コンパクトながら音質、使い勝手に徹底定期にこだわったシステムアップ。必要な部分への限られた予算の投入が行われた、見るべきところの多いシステムである。ポストプロダクションとして必要とされる機能を、選りすぐり限りなくコンパクトにシステムを収めている。そして、音質・機能ともに充実した環境ができあがっていることをご報告したい。 株式会社サウンズ・ユー 勝瑞 純一 氏 / 大橋 光樹 氏     *ProceedMagazine2016-2017号より転載

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ROCK ON PRO導入事例/株式会社イクシード 様 〜長期的視点からのAVID S6導入〜

外苑前からほど近い立地の株式会社イクシード様は株式会社ビジョンユニバース様とのコラボレーションにより、CMを中心にVPなどを制作しているポストプロダクションだ。今回、SSL Avant+からAVID S6への更新を行なった。その事例をご紹介していきたい。 ◎S6でIn the Boxの環境へ最適化 イクシード様は2000年創立、映像編集からMAまでのポストプロダクションワークフローを提供する会社だ。創業当時はAVIDの編集システムをメインにAutodesk、そしてMAのシステムをマイセン通り沿いに1部屋用意して業務にあたっていた。その後、現在のビジョンユニバースが所有するビルへ移転し、2部屋のAutodesk Suite、1部屋のAVID DS Suite、2部屋のAVID Media Composer Suite という全5部屋と、ビジョンユニバースと共同で運営する2部屋のMAというラインナップとなっている。代表取締役の中野氏自身がAVID DSのオペレータでもあったということでAVIDのソリューションに対しての造詣が大変深い。MAはFairlight MFX3とSSL Avant+を組合せたシステムアップであったが、導入からの年数と周りのポストプロダクションの情勢から4年前にAVID Pro Toolsへと移行を行なっている。編集のソリューションがAVID中心ということもあり、いち早くVideo Satellite SystemによるVideo Playback Systemを導入していただいている。 今回はSSLラージコンソールからの更新、やはりコンソールではなくコントローラーとなるということに対して様々な意見の交換が行われた。その中でポイントとなったのは、維持費、そして将来性というファクター、更にはPro Toolsとの親和性というのも重要視されたポイントだ。導入から10年以上が経過していたSSL Avant+は、やはり故障した際のメンテナンス費、今後のパーツ供給に対する不安などがあった。登場して日の浅いAVID S6ではあるが、すでに世界中で1000台以上の出荷が行われている非常に大きな成功を収めたソリューション。初期不良などの歩留まりはファーストリリースでは見られたものの、リビジョンアップにより現在ではノーメンテナンスと言って良い状況まで改善され、安定度の高いシステムとなっている。やはり、好調なセールスはユーザーからの多大なフィードバックを生み、製品のブラッシュアップに大きな効果を生んでいることが実感できる。もちろんSSL Avant+からの順当なリプレイスといえばSSL C300ということになるが、コスト的な面がネックとなった。更にPro Toolsの導入からコンソールミックスを行う機会は激減し、Pro Toolsの内部ミックスがフローとして定着していたことで、Pro Toolsをこれまで以上に上手く扱える製品が良いということもあった。 ◎VCA Spillを活用してコンソールライクなフローを実現 メインエンジニアの山崎氏は、Fairlightユーザーであり、コンソールミックスを現場で行ってきたエンジニア。Pro Toolsの内部ミックスをArtist Mixで行なっていたが、やはり少なからずストレスを感じていたとのこと。AVID S6の導入からは、VCA Master FaderをセンターにSpill Zoneで呼出し、SSLコンソールと同じようなスタイルでのミキシングに回帰したという話が印象的。AVID S6はPro Toolsをエンジンとしたコンソールという見方も出来る製品。そのコンセプトの通り、まさに「コンソール」として使っていただいている。波形が表示されたりと、これまでのコンソールにはなかった、多くのフィードバックを持ち、快適な環境へと進化することができているとコメントを頂いている。更にVCA Spill機能により、個別のフェーダーへのアクセスも用意なのもお気に入りの機能ということだ。Pro Toolsの持つ多彩な機能を、ユーザーのスタイルに合わせ様々な使い方を可能としているのも、この製品の魅力ではないだろうか。 ナレーションブースは2名での収録に対応、余裕のある空間が魅力だ。 普段利用する収録用のアウトボードは手元のラックに集約している。ICONIC KZ912、NECE 33609,TUBE-TECH LCA-2Bが収まる ◎強力なシグナル・マトリクス機能でDAD AX32へ回線を集約 次に、システムアップのポイントを見てみたい。AVID S6への更新に併せて周辺機器を一新されている。従来、SSLのマスターセクションとカスタムで作られたモニター切替ボックスの持つ複雑なルーティングは、DAD AX32とTAC system VMC-102の組み合わせによりその機能を再現している。AX32、VMC-102ともに今後のバージョンアップによる含みを持った状態での導入ではあるが、AVID S6のバージョンアップなど今後の機能追加によって更なるシステムの充実が期待できるラインナップの導入となっている。基本的にスタジオの全ての回線はDAD AX32に集約している。この製品の持つ強力なシグナル・マトリクス機能をフルに活用しルーティングを行なっている。デジタル領域でのXY matrixであるため、分配機能を活用しADA,DDAレスのシステムアップを実現している。 TAC SYSTEM VMC-102は、ご要望いただいたアシスタントデスクからのモニターコントロールを実現するという側面も併せ持っている。これまではカスタムのモニターボックスがSSLの後段に組み込まれていたが、その役目を併せ持った製品として導入いただいている。設置場所が自由なVMC-102はモニターコントロールリモートとしての機能を実現してくれた。現状ではVMC内部のDSPによりモニターコントロールの実際のシグナル処理を行なっているが、将来的にはDAD AX32のコントロール機能によりDAD側へその機能を移すことを視野に入れての導入となっている。AVID S6とDADの連携、そしてDADとVMC-102の連携、この3機種が協調して動作するようになればミキサーはAVID S6のセンターセクションからのモニターコントロール、アシスタントはVMC-102からのコントロールということが実現されることとなる。積極的なバージョンアップが予定されている機器を中心とした導入により、将来性の高いシステムとなっている。 ◎SDI EmbededのAudio Outで完全にロックしたLayback また、こだわって導入を行なったのがDAD AX32のオプションとして用意されているSDI OUTの機能。DAD AX32はminidigilink portを持っているのでPro Tools HDXから直接Audio Interfaceとしての接続が可能だ。余談ではあるが、先日AVIDから公式にサポートが発表され、AVIDお墨付きのInterfaceとなったのも大きなニュースだ。話を元に戻すが、Digilinkにより接続されたAudio Interfaceから直接SDI EmbededのAudio Outが出来るのはPro Toolsシステムにとっても大きなニュース。これまでVTRへのLaybackはAESで接続するのが定番であったが、Pro Toolsから直接の出力を実現したということで理論的にはフレーム内での揺れのない完全にロックしたLaybackが実現されることとなる。SDIというフレームを基準としたデータの中に、Digital Audio データを並べることができるのでフレームエッジが完全に一致したデータをVTRへ返すことを可能としている。これは、今後のポストプロダクション・システムにとって大きなトピックとなるだろう。どうしても防ぎきれなかったフレーム内での数サンプルのズレを完全に一致させることが出来るようになるということになる、これはエンジニアの山崎氏が大いにこだわったポイントだ。   またスピーカーマネージメントシステムとしてPeavey MediaMatrix Nionを導入していただいている。モニター補正を96kHzで行うことの出来るこのプロセッサーはサウンドの純度を保ったまま補正が行えるほか、イコライザー・ディレイとして活用いただいている。本来はもっといろいろなことが行えるプロセッサーなので、こちらも将来のシステム拡張に含みを持たせた更新であると言える。アミューズメントパークなどの設備としての導入が目立つ本製品だが、その音質の高さはもっと導入が進んでもいいと感じさせられる機器だ。 イクシード様は、今後のバージョンアップに大きな含みを残し、まさに未来において進化できるシステムを導入されている。デジタルならではと言えるこの最新の機器を組み合わせた構成。それを従来のデジタルコンソールのスタイルで利用されているというのが、AVID S6の懐の深さを物語っていると感じている。ユーザーのスタイルに合わせどのようにでも活用できるのが、AVID S6の大きな魅力の一つだと改めて再認識させられる。今回導入いただいた機材の進化とともに、どのようにワークスタイルが進化してゆくのか?非常に楽しみな事例となっている。改めて、株式会社イクシードの皆様、システム工事を担当されたレアルソニード様への感謝を申し上げて結びとしたい。 左より、ROCK ON PRO 町田幸紀、株式会社イクシード 田中 嵩樹 氏、株式会社イクシード 代表取締役 中野 真佳 氏、株式会社ビジョンユニバース エンジニア 山崎 博司 氏、ROCK ON PRO 前田洋介

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株式会社イノセンス 様 / 作業効率を追い求めた結果 〜AVID S6導入事例〜

北陸、金沢に本社を置く株式会社イノセンス。試写室を四国・松山にも置き、この2つの拠点で制作から撮影〜編集〜MAとワンストップでのマルチメディア・サービスを提供している。地元のCM制作、起業PRのVPなど様々なコンテンツの制作を行われている会社である。作業量はかなり多く、リコール性、作業効率というものが求められる現場である。 ◎旧システムとの互換を確保する 今回導入となったAVID S6だが、そのストーリーはPro Toolsシステムの検討から始まった。それまではFairlight QDCとConstelationを使用していたが、そのサポート終了・システムの老朽化に伴い、AVID Pro Toolsへの更新を検討されていた。しかし、単純にシステムの入替えというわけにはいかない。業務におけるかなりのウェイトを占めるのがこれまでに制作したコンテンツの改定作業となるからだ。そうなると、それまでのFairlightとのデータの互換性の無いPro Toolsへの更新は、単純に入れ替えるという訳にはいかない。まず、第一段階としてPro Toolsのシステムを仮設し、使用頻度の高いデータから順にデータコピーを行うこととなる。これは、シンプルにAESで2台のDAWを繋ぎ、同期をとってのコピー作業。すでにFairlightが提供していたMXF exchangeは手に入らず、Fairlight QDC独自フォーマットのファイルをファイルベースでコンバートすることは難しくなっていたからだ。 ◎完全ファイルベースのフローにS6が合致 当初は1年程度の期間を設けFairlightのデータを移植したところで、全体的なシステムの更新を行う予定ではあったが、Pro Tools導入から半年程度たったところでConstelationの調子がどうにも悪くなってしまった。その為、計画を前倒ししてAVID S6の導入に踏み切った。AVID S6に関しては、Pro Tools導入後に次のメインシステムとなるコンソールの選定候補として実機を金沢まで持ち込みデモを行なっている。実際にその操作性を体感していただき、作業効率も求めるイノセンス様のワークフローともしっかり合致した。DAWをエンジンとするコンソールということで言えば、Fairlight Constelationと同じコンセプトではあるが、デジタルコンソールの模倣にとどまらず、更に踏み込んだ提案が数多く搭載されたAVID S6はイノセンス様の目線からも新鮮に映るポイントは多かったという。   リコール性能の高さは言うまでもなく、Display Moduleに表示される波形、自由にコンソール上のフェーダーにアサインすることの出来るレイアウト機能など、レコーダーとコンソールという従来の概念を更新することの出来るAVID S6。作業効率を第一として検討を行なっていたイノセンス様のワークフローにしっかりとマッチしたと言える。   余談ではあるが、イノセンス様のMAは完全ファイルベースでのフローとなっている。すでにVTRでの素材搬入はほぼ無く(年に1回程度)、松山支社のコンテンツMAも一手に引き受けているためにファイルでのデータのやり取りが普通のフローとして日々行われている。 ◎S6のファンクションが実現したコンパクトシステム 導入いただいたのはPro Tools HDX1、映像再生用にVideo Satellite SystemとしてAVID Media Composer、AVID S6-M40-16-5-DPというのがメインのシステムだ。AVID S6は16フェーダー5ノブというコンパクトなシステム。これまでのConstelationが24Faderということで不安はあったものの、レイアウト機能、Spill機能などを駆使することでコンパクトなシステムでも同等以上の使い勝手を得ることが出来ると判断されての導入となっている。Pro Tools HDXシステムも、サラウンド作業は無く、ステレオ作業のみということで、DSPパワー的に問題ないと判断をした。Video Satellite Systemの導入は前述のとおり、完全にファイルベースでの素材の受け渡しが前提となっているために、受入可能なファイルフォーマットの多いMedia Composerの導入は必須であった。また、キャラの表示もMedia Composerであれば問題なく行えるというのもポイントであった。Video InterfaceにはAVID DNxIOを入れさせていただき、将来の4Kフローへの準備も行なっている。 ◎VMC-102+ANDIAMOに集約、パッチベイも僅か3面に 次にシステムのディテールに目を向ける。モニターコントローラーはTAC systemのVMC-102を選択、VMC-102とTritech AGS-VMC、そしてDirectout Technologies ANDIAMO.XTの組合せで、コミュニケーション、モニター関係を集約している。回線の切替、TBのSummingなどをVMC-102で、スタジオ回線のマトリクス、信号分岐などをDirectout ANDIAMOで実現している。スタジオ機材ほぼ全てをANDIAMOへ集約することで非常にシンプルなシステムアップを実現している。ちなみに、AndiamoからPro Toolsへの接続はAESでの16chとなっている。   VMC-102とANDIAMO.XTの組合せでシステムのコアを構築したことでパッチベイがアナログ2面、ビデオ1面と非常にコンパクトに纏めることが出来た。エマージェンシー対応を考えた最低限のパッチが物理的に立ち上がっている。物理接点数を減らす、システム工事費の低減など、様々なメリットがこのシステムアップにより実現している。工事に関しても、既存のConstelationの解体撤去からS6の設置、調整まで4日間というスピード工事。5日目には動作確認、6日目にはトレーニングと、1週間を切るスケジュールでのシステム更新工事であった。もちろんこれは、システム設計、工事を担当していただいたレアルソニード様の力によるところも大きい。更にAVID S6とVMC-102,ANDIAMOの組合せというコンパクトなシステムだからこそということも出来る。   エンジニアの口出様は、AVID S6の魅力的なソフトキーをカスタマイズし、使いたいキーをフロントに持ってきたりと、作業効率を求めかなり使い込んで頂いている。このソフトキー機能は、EuConの恩恵により、Pro Toolsのほぼ全ての機能を網羅し、ショートカットにないような機能でもアサインが可能となっている。キーボード+マウスでの編集からS6+マウスでの編集になっているということが伺えるエピソードである。 東京、大阪に次ぐS6の導入事例となったイノセンス様、地方の活力を感じるとともにワンストップでのワークフローを確立していることで、一歩進んだトータルワークフローを現実のものとして形にされている。今後もバージョンアップにより進化してゆくAVID S6とともに、効率的なワークフローを確立することだろう。改めて、株式会社イノセンスの皆様、システム工事を担当されたレアルソニード様への感謝を申し上げて結びとしたい。           左より、アシスタントミキサー 水口慎也氏、同社取締役/プロデューサー 直野雅哉氏、チーフミキサー 口出洋徳氏     *ProceedMagazine2016Summer号より転載

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ABC 朝日放送株式会社様/次世代のワークフローを見越した現実回答

大阪・ABC/朝日放送株式会社様のPro Toolsの更新、またそれに伴うファイルベースワークフローへの移行をROCK ON PRO UMEDAが中心となりお手伝いをさせていただいた。長期の計画として取り組むファイルベース化の一環として音声編集システムの更新が行われたわけだが、そのコンセプトや、将来像について導入を担当された技術局 制作技術センターの和三様と神田にお話を伺った。 ◎ファイルベース移行の一環という前提 今回の更新は、8年前の新社屋移転時に導入を行なったPro ToolsシステムのPC老朽化が現実的な課題点。またPro Toolsシステム更新を主体としながら、ファイルベースワークフローへの移行の一環という位置づけも与えられている。ファイルベースへの移行は、新社屋の移転前からワーキンググループが社内に発足し、その実現に向けた取り組みが始まっていたということ。時勢として、今回の更新ではHDCAMの終了を見越した更新を行わなければならないということで、ファイルベースへの取り組みが機材選定からも行われている。   具体的には、1.Pro Tools systemのHDXへの更新、2.テープベース以外のワークフローに対応するためのVideo Satelliteの整備、3.ファイルベースフローを見越したファイルサーバーの整備、4.受入ファイルのコンバート用のEpisodeの導入この4点が柱となっている。それでは、一箇所づつその詳細を見ていきたい。 ◎Pro Tools HDXへの更新で得た効果とは それまでのTDMシステムはバージョンアップを重ねVer.9で運用を行なっていたが、Mac Proの修理対応終了など不安を抱えての運用となっていた。この部分を最新のMac ProとHDXのシステムに更新を行ったことが第一のポイント。   Pro Toolsでの運用に関してはこれまでの実績からも不安はなく、更新により実現したOffline Bounde、Clip Gainといった新機能は非常に評価され活用が始まっている。そして、スペックには現れない部分だが、音質面の向上もこのMA室で仕上げの行われる音楽番組、コンサート収録の仕上げなどでは大きなメリットになっている。以前のバージョンに比べ音ヌケが良くなっているため、SSL Avantへマルチで立ち上げてのミキシングに匹敵する音質での仕上げが行えるようになったということだ。ちなみに、Audio InterfaceはフロントエンドにSSL Alphalink MADI SXをそれまでのシステムからの引継ぎで利用していただいた。Pro Toolsとの接続はSSL DeltalinkからAVID HD MADIへと更新が行われている。SSL Alphalinkの音質をキープしつつ、今後の安定運用を見越しての更新である。 プラグインも増強している。中でもAUDIOEASE Altiverbはすでに無くてはならない存在とのこと。スタジオ収録番組の仕上げの際に、効果音として拍手や歓声を足すことがある。それを馴染ませるためにスタジオの響きに似せたプリセットを用意しているということだ。これは非常に良い結果が得られているために多くの番組で活用が始まっているということ。また、音ヌケが良くなった分を馴染ませるため、McDSPのAnalog Channelを導入している。分離が良いサウンドが気に入っているので、あまり活躍の場はないということだが、狙ったサウンドのコンセプトによって使い分けていきたいということ。併せて、DiGiGrid DLSの導入もトピックとなるポイント。プラグインパワーも十分に拡張され、サラウンド制作、そして今後のフォーマットなどにも対応できるスペックを与えられたシステムとなっている。 DiGiGrid DLS ◎Video SatelliteによるVideo Playback 今後編集と行われるファイルでのやり取りを見据え、より多くのVideo Fileの再生を実現するVideo Satelliteを導入いただいた。この更新にはもう一つの狙いがあり、既にテストケースがスタートしている4Kへの対応というのも大きな目的となっている。これまで4Kのワークフローではダウンコンバートしたファイルを都度書き出していたが、そのままのファイルがまずは再生できる機種である、ということが選定の大きな理由となったということ。数年以内にテレビ周りの更新も計画しているということなので、次世代のマルチチャンネル再生環境とともに整備を行いたいということだ。このマルチチャンネルへの展望に関してはこの後更に詳しく掘り下げたい。ここは、4Kへの取り組みを積極的に進めている朝日放送様の取り組みが感じられる部分だ。 ◎ファイルサーバーとしてTerraBlock Facilisの導入 この選定は、神田様の意向が大きく関わっている。前部署は映像編集関係であったとのことで、そこで使っていたAVID Unityが比較対象としてあったということ。UnityはAVID製品で利用する上では非常に優れたソリューションではあったが、他のNLEで使おうとすると素材のファイル一つを見つけるにも苦労するような仕様。今回の更新ではどのクライアントからでも使い易く、汎用性の高い製品にしたいというのがコンセプトとしてあった。   また、Unityでは特定の管理者がメディアの管理を行う必要があったが、このサーバーを利用するユーザーが簡単に素材の管理を行う事のできるシステムがターゲットとなった。さらに、導入されるクライアントがPro ToolsとMedia ComposerとAVID製品であるためにそれらとの親和性ももちろん重視した部分。   そうなると、特殊なシステムを利用した製品ではなく、NASベースが候補として挙がる。NASベースであれば接続したクライアントはフラットな権限を持たせることが可能だからだ。そのような経緯から、エンタープライズサーバーとしてNASをベースとしてAVIDの互換モードの定評が高いTerraBlock Facilisが最終的に選考に残った。ROCK ON PROでの事前のPro Toolsとの運用チェックによる安心感と、サーバーメンテナンスを行うことの出来るスタッフが大阪にいる、という2点が大きな決め手となったということだ。実際に導入をしてみると速度的にも不満はなく、稼働開始からサーバーダウンしてしまうような大きなトラブルも起きていないとのこと。想定していたよりも早く安定運用が行えているということだ。 ◎トランスコーダーとしてEpisodeを導入 今後のファイルでの受け渡しを考え、Telestream Episodeも同時に導入していただいた。EpisodeはVideo Fileの変換ソフト。常にサーバーを監視し、Pro Toolsに最適な形式への変換をバックグラウンドで行なっている。エンジンとなるPCはMac Miniを4台準備し、分散処理が行われている。一つのファイルを4分割しての処理を行なっているために高速性が期待できるシステムアップだ。4台のPCによりVideo Fileの実時間の半分以下の処理を実現している。受け取れるファイルの種類も多いため、将来的にも活躍が期待できるシステムだ。 ◎現時点での具体的なワークフロー 制作編集はFinal Cut Pro 7を使用。ここで書き出されたファイルの受入が現時点では行われている。ファイナルのメディアは現時点ではHDCAMとなっているので白完パケの段階でファイルを貰い、完パケはHDCAMでもらうというワークフローだ。音戻しは完パケのHDCAMに対してリニアで行われ搬入となる。従来は白完パケのデータはリムーバブルメディアを利用していたが、システム更新後はサーバーへの直接の投げ込みと、トータルでのファイルベースワークフローへと歩みを進めている。今後の制作編集システムの更新により更なる効率化が期待できる部分である。HDCAMに関しても局全体のコンセプトとしてファイル化が命題として挙がっているためにテープレス化への流れへの一部ともなっている。   ここで命題とした「ファイル化」という言葉だが、テープレスという意味とメディアレスという意味の二面性があるという話があった。テープレスとはHDCAMというテープメディアから次世代のメディアへの更新という意味を持つ、具体的にはXDCAMのようなファイルそのものを格納しているメディアがこれに当たる。メディアレスに関してはそのデータを格納しているメディア=媒体からの脱却。サーバー上に全てのデータがあり、そのデータをそのまま最終段階まで活用するという事になる。   安定運用が最も求められる放送局という環境下ではやはり目に見える物理メディアの信頼性は絶大なものがあり、目に見えない不安定要素をはらむPCベースであるサーバーではその代替とならないという考え方が多数である。サーバーベースでの運用を前提とするメディアレスと専用ハードウェアVTRベースのメディア運用を比較した際に、やはり専用ハードの安定性が優れているという判断がどのタイミングで下され、次のステップへと移行がなされるのか、今後しっかりと見極めていきたい重要なポイントだ。 ◎先進的な取り組みへのビジョン 朝日放送様はこれまでも映画祭へ出展するための映画作品の仕上げ、様々なサラウンド作品の制作など、先進的な取り組みを多く行なっている。今後のビジョンをお聞きしたところ、立体音響、オブジェクトベースの音声制作に対する強い意欲をお話いただいた。DTSが提唱するインタラクティブなDTS:Xのオブジェクト音声から、DOLBY ATMOSの持つ高臨場立体音響など様々なフォーマットを次世代のテレビ音声として検討を進めているということだ。 今後、モニター(スピーカーだけではなく映像も含めた)更新時には是非ともそれらを見越したDOLBY ATMOS対応の環境を整備したいとのこと。各分野に対して非常に造詣の深い朝日放送様の見識、今後の市場の動向、配信サービスなど次世代メディア、コンテンツのあり方などを多角的に判断した上での選定になることと思うが、そのような先進的な取り組みをROCK ON PROも共に学びお手伝いが出来ればと強く感じるインタビューとなった。 ・左より、朝日放送株式会社 技術局 制作技術センター 和三晃彰 氏 / 神田雅之 氏 / ROCK ON PRO 前田洋介     *ProeedMagazine2016Summer号より転載

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ROCK ON PRO REPORT !!/GAME AUDIOから劇伴まで、映像に音を付ける面白さ

GAME AUDIO業界でキャリアをスタートし、その活躍の場をTV、映画へと広げる光田氏に取材を行なった。ゲームコンソールの性能という縛りの中でつくり上げる時代から、自由な表現を駆使することのできる時代へとその変遷の中を歩んできた中で生まれたこだわり。そして、機器の進化に合わせてドラスティックに移り変わるGAME AUDIOの進化の歴史を感じられる内容となった。   プロキオン・スタジオ 取締役 光田 康典 昭和47年(1972年)1月21日生まれ。山口県熊毛郡熊毛町(現・周南市)出身。 ・スクウェア在籍初期に『半熟英雄』『ロマンシングサガ2』『聖剣伝説2』などのエフェクト音の制作に携わる。作曲家としてのデビュー作は『クロノ・トリガー』。その後『ラジカルドリーマーズ』『ゼノギアス』『クロノ・クロス』の楽曲制作を担当。 ・スクウェアから独立後の主な作品は『ゼノサーガエピソード1』『イナズマイレブンシリーズ』など。『スマブラX』でもアレンジを担当している。   なぜ?GAME AUDIOの世界に飛び込んだのか? 光田氏がGAME AUDIOの世界に飛び込んだのは、業界がまだ成長の課程にある1992年の事。1990年に任天堂よりSuper Famicomが登場した頃ということになる。なぜ、GAME AUDIOの業界に飛び込んだのかと聞くと、「学生の頃からエンターテイメントが好きだった」と。学生の当時のエンターテイメントは映画がその中心であり、全てであったと振り返る。GAMEはまだ、テーブルゲーム(インベーダー、パックマンなど喫茶店の机がゲーム機だった時代)。音楽など無く、ミサイルの発射音や、撃墜音、様々な効果音は今で言う『ピコピコサウンド』として鳴っていたが、映像と音声の融合によるエンターテイメントと言うよりは、純粋なGAMEのみのコンテツであった。そのような時代に、光田氏は映画をこよなく愛し、劇伴作家になりたいという夢を抱いていた。音楽系の専門学校に通い、作曲の手法を学びながらの就職活動。まさに時代は、変革の時代に突入していた時期である。   テーブルゲーム等のある、ゲームセンターは不良の行く場所というような風潮から、存在は知っているもののあまり触れることはなかった中、Family Computerから始まる家庭用のゲームコンソールは身近なものとして存在していた。ご承知のように、Family ComputerのGAMEには、音楽が付けられそのコンテンツを盛り上げていた。オープニングテーマがあったり、その音楽というものにも注目が集まった時代である。GAMEのサウンドトラック、オーケストラアレンジのCD等、GAMEからスピンアウトした音楽コンテンツが多数作られ始めた時代でもある。その進化、発展を見るうちに、その未来に秘められているエンターテイメント性に惹かれ、GAME AUDIOの業界への就職を決めた。 光田氏が就職をした会社が株式会社スクウェア(現:株式会社スクウェア・エニックス)。最初はシンセサイザープログラマや効果音なども担当をしたことがあったそうだが、基本的には、音楽の作曲作業が中心。元々、コンピューターが好きだったということもあり、入社3年目の1995年には代表作となる『クロノ・トリガー』に作編曲という形で関わっている。他にも音楽の評価の高い『ゼノキアス』等多くの作品に関わった後、1998年に独立しプロキオン・スタジオを立ち上げている。 プラグラマーのいる作家集団 プロキオン・スタジオは、プログラマーが所属しているという点が特筆すべき点。その成果として、DS用のKORG DS-1、M01D等ソフトウェアそのものとも言えるサウンドドライバーの開発など多彩な活躍をしている。それ以外にもiPhone App等も近年では積極的な開発を行なっている。元々は、作曲家の意図した音を再現し、再生するためのサウンドドライバーの開発を主眼としていたが、業界の進化とWwise、CRIのような優秀なMiddlewareの登場により、アプリ自体の作成の方向にシフトをしている。   今でもプログラマーがいるということで、プロキオン・スタジオでは楽曲の納品携帯は、プログラムに実装した状態で行うことがほとんどだということ。これは、通常であれば、WAVデータで納品をして実装は、各ゲーム会社が行なっていたところを鳴り方、サウンドの仕様まで含めて、確認を取るという一歩踏み込んだ制作受注の形態といえる。元々、ゲーム制作会社にいたからこそ、プログラマーが社内にいるからこそ実現しているビジネスだと感じる。更には、効果音を専門とするスタッフもいるので、GAME AUDIO全般を一括しての受注も可能だということだ。効果音と音楽の制作会社が別々である場合、どのような効果音を作ってくるのか?ゲーム音楽を作曲する際には非常に重要になるので、意思疎通ができていないと合わせるのが大変とも。それが、社内で全てを一元管理し連携することでクオリティの高い制作が実現するということもプロキオン・スタジオの大きな強みといえる。 プロキオン・スタジオの立ち上げ後 プロキオン・スタジオの立ち上げ後は、GAME AUDIOはもちろんだが、アーティストのプロデュース、劇伴の作曲など多岐にわたる分野での活躍をされている。関わっているアーティストの代表は、『サラ・オレイン』。Wii用ソフト『ゼノブレイド』のエンディング「Beyond the Sky」でボーカルとしてサラを起用。2014年には「Fantasy on Ice」で安藤美姫が同曲で演技を行い話題となる。サラ自身も『関ジャニの仕分け∞』のカラオケ得点対決でMay.Jを破るなど話題の多いアーティスト。光田氏プロデュースによるアルバムをリリースしている。GAME AUDIO分野では、前述の『ゼノブレイド』、『大乱闘スマッシュブラザーズ』等多彩な活躍を続け、アニメ『イナズマイレブン』シリーズにも参加、劇場版、TV版、ゲームとマルチに楽曲の提供を行なっている。他にも、記憶に新しい2013年のアイソン彗星の特別番組、NHKスペシャル「宇宙生中継 彗星爆発 太陽系の謎」に楽曲を描き下ろしている。   GAMEとそれ以外で作曲に関して違いはあるのかとお聞きしたところ。特には変わりはないとのこと。オーダーに関してもM番表があり、それに合わせて作るという作業自体は同様。しかし、最近では、ゲームのほうが更に楽曲数が増える傾向にあるということ。アニメや、ゲームは実写と違い、全く音の無い世界に一から音をつけていく作業になる。その際には、音のない動画を何度も見返して頭のなかに音楽が流れ出すのを待つという手法をとっているということだ。どのような映像にもリズムがあり、音が含まれている。それを形にしているということだ。 光田氏のこだわり~作品の余韻 作曲の手法をお伺いしている際に、『余韻』というキーワードにたどり着いた。他の話題の際にもお話をしていた言葉ではあるが、映像を何度も見返してその中にある音を探している際に、あまりにも説明されすぎている映像から音を導くのは大変に難しい。その映像の『余韻』、『間』という、音で表現を出来る部分があって欲しい。その映像の『余韻』に音で息吹を吹き込みたいという意思がそこからは感じられた。同様にその作品自体も『余韻』を含んで欲しい、ゲームであれば、プレイを終えたあとの余韻、CDであれば聴き終わった後に、映画であればカットの切り替えの余韻など。   たとえとして、CDデッキのピックアップのお話をしていただいた。CDが全て再生を終わった後に、読み取りのピックアップがホームポジションに戻る。その時にアクチュエーターが最速で動作をするために音がする。それがCDに収録された最終楽曲の『余韻』を台無しにしてしまうのが許せないという話だ。光田氏は関わったCDは可能な限り、最終楽曲の終わった後に10秒程度の無音を意図的に付け加えているということ。これにより、ピックアップの移動までの時間稼ぎをして”台無し”になることを防いでいるということ。このような『余韻』はプレイヤー、リスナーが想像をする余地を残すことで、その余韻は一層大きなものとなるのではないかと意見を頂いた。 GAME AUDIO黎明期の作業は、プログラミングが主体 Download : PDF 黎明期を語るためには、光田氏にご教授いただいたゲームコンソールのスペックを確認する必要がある。Family Computerは1983年登場、8bit CPU(1.79MHz)動作で、音源部分はCPUに組み込まれた「パルス波」ジェネレーター2系統、「三角波」ジェネレーター1系統、ノイズジェネレーター1系統、DPCMと呼ばれる6BitのデルタPCM音源の合計5音。現代のシンセのスペックから考えると、これらのジェネレータを組み合わせて一つの音を作るの?と思ってしまうかもしれないが、この5音でゲームの中のBGMから効果音まで全てをまかなっていた。ゲームにとって重要な効果音用に音源をスタンバイさせると事実上利用できるのは2~3音。その中で作曲した楽曲をどのように再現するのか試行錯誤をしていたということだ。しかもその音源を鳴らすためには、MIDIのような汎用のものではなく、専用の言語にコンパイルをしたプログラムを使って再生をしていたということだ。シンセを制御し、発音をするための専用プログラムと想像してもらいたい。   次の世代としては、SUPER Famicomが1990年に登場する。このゲームコンソールの登場により、音源は世代更新を果たす。そのスペックは32kHzサンプリング/8チャンネル同時発音/16Bit PCMステレオ/DSPによるエフェクト処理と当時としても最高の音源が搭載された。1990年といえば、KORGであればM1の時代、WAVESTATIONが登場した年でもある。YAMAHAでは1989年にSY77が登場しPCMシンセが登場を始めた頃。RolandはDシリーズ。JVシリーズはまだ発売されていない。そんな時代に、家庭用ゲーム機に8チャンネル同時発音のPCM音源が搭載されたというのは革新的であった。しかし、そのメモリは64KBしかなく、その中にどのようにサンプルをロードするのかというのが、プログラマーの腕の見せどころ。搭載されたDSPを有効に活用し、その能力を引き出すテクニックが必要であった。効果音にチャンネルを割いたとしても、音楽用に従来比倍のチャンネルがアサイン可能ということで、まさに、GAME AUDIOの黎明期が訪れた頃である。とはいえ、内蔵音源にPCMサンプルを読み込ませ発音するという仕組みはプログラムそのもの。その当時もMIDIベースで作成した楽曲を専用のツールでコンパイルをしてプログラムとして実装を行なっていたということ。ROMカートリッジのデータ量の制約もあるので、制約の中で工夫を重ね、イメージを形にしてゆく作業であった。   光田氏は当時を振り返り、「まさにプログラマー同士でのメモリの奪い合い。それぞれにやりたいことを実現するために限られた制約の中でのコンソールの性能の限界への挑戦が日々続いていた。」とリアルなコメント。そのスペックの進化は、表にまとめてみたので見てもらいたい。実際に作曲家として思うがままに再生を出来るようになるのはPlay Station 3の登場まで待たなければならなかったという。更に時代を進めてみよう。 PCM音源の時代から表現の自由の獲得まで その後、1994年にPlay Stationが登場する。実は、SUPER Famicomに搭載された音源チップはSONY製のものであり、Play Stationに搭載された音源はその拡張版である。メモリは512KBに拡張され24チャンネルの同時発音が可能となっている。圧縮したサンプルを使えば1曲全体をサンプリングをして再生も技術的には可能であったが、コンテンツを提供するCD-ROMの容量の制限からなかなか実現する機会は少なかったとのこと。やはり、ゲーム本体のプログラム。3D再現のためのポリゴンデータ等他にも格納しなければならないデータは山のようにあったということだ。クオリティーを最大化するのであれば、CD-ROMなのでWAVのデータを格納し、プログラムとして音源に頼らずに再生するということも出来たそうだが、データ量の問題から実現は難しかったとのことだ。   更に、2000年にはPlay Station 2が登場。同じ系譜のチップが使用されメモリは2MBまで拡張される。同時発音数も48チャンネルと思いつくままに音を重ねることも出来るような仕様だ。しかし、この頃も、コンテンツの提供されるDVD-ROMの容量との戦いは続く。音声のみであれば、十分に思えるパッケージではあるが、高性能化したグラフィックエンジンに提供するためのデータ量は増加の一途をたどり、肝となる、オープニング、エンディング以外では、なかなか楽曲丸ごとをメディアから再生するということは出来なかったということだ。   そして、「思うように作曲した作品をそのままゲーム中に再生できる」Play Station 3の登場である。2006年に登場したこのゲームコンソールは、特定の音源を搭載しておらず、ゲームコンテンツ中の音声データを直接再生できるようになる。Nuendo 7のGame Audio Connect機能により注目をあつめるAudio Middlewareもこの世代になり始めてその必要性が強調される。コンテンツメディアもBlu-rayの世代となり、容量としてもやっと余裕が出る。特定の内蔵音源からの発音から、プログラムとして自由に音声再生が可能となるのは、まさにこの世代から。SUPER Famicomがその次代の最先端の音源を搭載してから15年かかって、次の世代へと進化を遂げている。逆に言えば、自由にGAME AUDIOとして表現ができるようになってまだ10年ということだ。   余談ではあるが、2004年という内蔵音源でのGAME AUDIO制作の終盤に登場したニンテンドーDSは、同時発音数16チャンネルのPCM音源が搭載され、プログラミングによりGAME AUDIOを作らなければならなかった。こうしてコンソールスペックを並べてみると、10年前の初代Play Stationよりもスペックの低い音源が搭載されているのがわかる。光田氏は、DSのサウンド開発のために、まさに10年前の製作用コンピューターを引っ張りだして作業をしたという回想をお話いただいた。 メーカー任天堂SCE任天堂SCE 機種名ニンテンドーDSPlayStation Portableニンテンドー3DSPlayStation Vita 世代携帯機第7世代携帯機第7世代携帯機第8世代携帯機第8世代 発売日2000/11/202000/12/112007/2/252007/12/16 CPUARM946E-S 67MHzPSP CPU(MIPS R4000 Core)Nitendo 1048 0H ARM

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ROCK ON PRO導入事例/学校法人 片柳学園 日本工学院八王子専門学校 ミュージックカレッジ

学校法人 片柳学園「日本工学院八王子専門学校」のミュージックカレッジ・レコーディングクリエイター学科に専門学校として国内初となるAVID S6を導入させていただいた。その導入の経緯、選定の決め手などを同学科教員 藤義隆先生にお話を伺った。 日本工学院のポリシー『人間力』 日本工学院は1947年に、東京・蒲田に開校した創美学園がそのルーツとなっている。当初は洋裁と絵画の学校としてスタート、その後、織物科、英語科、人形科等を次々と開設。1953年にテレビ放送の開始をきっかけとして「日本テレビ技術学校」を設立。放送関連学科の開設を行ない、教育環境、設備の充実に努め時代の先端を行く人材を育てている。1964年の東京オリンピックではNHKの技術補助員として30名の学生を実況中継に参加させている。1976年に校名を現在の「日本工学院専門学校」に改める。この時点ですでに学生数は7500名という規模となっている。今回導入をした八王子キャンパスは1986年の開設、翌1987年に「日本工学院八王子専門学校」が開校しており、つくば万博への協力出展、米国トップの工学系大学となるマサチューセッツ工科大学(MIT)との交流協定、最先端のマルチメディア研究を行う南カリフォルニア大学(USC)との提携等、日本有数の教育機関としてその規模を拡大している。   専門学校でありながらいち早く1987年より3年制のカリキュラムも実施し、より高いレベルでの人材の育成に務めている。専門学校として、即戦力の人材育成が大きな役割ということはもちろんであるが、『人間力』の教育に実は一番力を入れているとお話を伺った。スキル、技術を通常の2年間で教育することは実際の現場レベルを考えると限界がある。そうなると、社会に出て、社会人として立派に仕事をこなすことのできる『人間力』こそが本当に一番大切なスキルであり、教育ポリシーにおける重要な要素としている。国内随一と言える設備を備え、現場からの講師を多く迎えて実践的な講義を行なっている学校が、しっかりと自身を見つめた『人間力』を大切に捉えていることは心強く感じられる。 なぜAVID S6の導入に踏み切ったのか? 日本工学院八王子キャンパスにはスタジオが4室ある。その中の3室は、音楽録音に対応したスタジオを持つ大規模な設備。これまでは、SSL 4000Eを設置したスタジオが2室、もう1室はSSL Axiom MTを設置したスタジオ。そして少し規模の小さいラジオ実習向けのスタジオには、YAMAHA O2Rが導入されている。今回の更新では、2台あったSSL 4000Eの片方、Studio Cに設置されていたもののリプレイスとなっている。   これにより、3室の大規模なスタジオは、コンソールの基礎となるインラインタイプのアナログミキサーSSL 4000Eと、デジタルコンソールであるAxiom MT、そして最新のDAWをコアとしたAVID S6というラインナップとなる。4000Eでコンソールのシグナルフローを学び、ミキサーの基礎、動作原理を学び、Axiomでデジタルミキサーならではの部分を吸収。マトリクスなど複雑なシグナルフローを学ぶ。そして、AVID S6ではDAWをコアとしたコンソールで最新のワークフローをというように、キャラクターの異なるシステムの設置により幅広い学習を実現している。   導入のきっかけは、1986年の八王子キャンパス開設当時に設置されたSSL 4000Eの老朽化と、学生の就職先がポストプロダクションに移ってきているという現状から。今、そしてこれからポストプロダクションで導入されるコンソールは何か?と考えるとやはりAVID S6が一番多いのではないか、また日本工学院はAVIDの認定校でもあり、AVIDのトータルソリューションを導入することでの学習効果の向上も目指しているということだ。 AVIDのトータルソリューションが出現 AVID S6はM40と呼ばれる上位のコアに、24 Fader , 9 Knob , Display Moduleという規模。もう少しコンパクトな構成も検討したようだが、複数の学生がコンソールの前に座って実習を行うことを考えると24 Faderは必須であったということ。そして、S6の最大の特長とも言えるVisual Feedbackを実体験し、その利便性により生み出されるワークフローを学んでもらうために、その他のモジュールもフルに実装を行なったということだ。   設置に関しては、国内初導入となるARGOSYの専用デスクを準備し、スタイリッシュに収まっている。入力段はAVID Preが準備され、S6からのリモートコントロールが可能となっている。この機能により、S6はまさにコンソールとしての魅力を持つ。バンド編成が入れるスタジオであるため、AVID Preは3台、合計で24チャンネルが導入されている。DAW部分はPro Tools HDX 2システムを導入。HDXカードが2枚のこのシステムは十分なプロセッシングパワーを持ち、様々な授業に対応が可能となっている。インターフェースには、HD I/Oが2台、アナログで32チャンネル分が用意されている。これは、他のスタジオとの整合性を取るという意味もあり、この規模としたとのこと。 それとは別のMac ProにVideo Satelliteシステムを導入。最新のDNxIOを備え、将来の4Kにも対応したソリューションとして、MA作業の実習にも活用できるようにシステムアップがなされている。将来的には、放送・映画学科に導入済みのAVID ISISとも接続を行いファイルべースワークフローの実習も実施してみたいとのこと。まさにAVID製品によるトータルソリューション。認定校ならではの充実の設備ということが出来る。   他にも、汚れが目立っていたクロスの張り替え、メインモニターとして利用していたUreiのスピーカーをGenelec 3080へ更新なども行なっている。MA用のテレビモニターも新しい物に更新された。一つ面白い機材が、タイムコードの確認用にPunchLight社のStudio Display USBというコンパクトなTC Displayを導入。手元でのTCカウンターの確認が可能。さらに同社のPunchLight DLiにより前室のRecording Lumpの制御を行なっている。このRecording LumpはPro Toolsに連動しているので、Rec Readyの状態になると自動的に点灯するという優れものだ。 導入が終わったところから、その設備を活用する方法を考えていかなければならない。『人間力』の向上はもちろんだが、これからの人材育成の方針として、レコーディング、MAといった業種の区別なく『音』のスペシャリストの育成が必要になるのではないかとのコメントを頂いた。これまでのように単一の分野に特化したスペシャリストではなく、幅広い視野を持ち『音』全般を知り尽くした人材。今日はレコーディング、明日はMA、そして収録作業など全てを任せられる柔軟な人材が重宝されるのではないか。そのような人材の育成のためにこのAVID S6の設備は十分に活用可能なのではないだろうかと将来像を語っていただいた。これからの時代を生き抜いていける人材には、どのようなスキルが必要なのか?未来をしっかりと考えてもらえる講師、そしてそれを支える充実の設備、まさに理想的とも言える教育環境がここにあると言えるのではないだろうか。 学校法人 片柳学園  日本工学院八王子専門学校 〒192-0983 東京都八王子市片倉町1404-1 Tel : 0120-444-700   キミの全力を発揮できる環境はココにある。専門学校の枠を超えた施設を有する緑豊かなキャンパス東京郊外の美しい自然環境広がる文教都市八王子にある、東京ドーム8個分もの広大なキャンパス。これが専門学校?というべき最新実習施設・スポーツ施設・福利厚生施設を備えています。いわば、近未来の学校のあり方を具現化したもの。ドラマ・CM・映画のロケ地として内外のメディアからも注目されている学校です。

Education

ROCK ON PRO導入事例/名古屋テレビ放送株式会社様 ファイルベース更新第2弾。~実際の編集室とのデータ交換で生じた問題とその解決~

全てのデータをサーバー上からストリーム再生する。全てのMA設備の共通化を図り、作業効率の最大化を図る。VikinXのルーターにより、全MA室からのナレーションブースの共有、VTRデッキの共有という更新を2013年に行なった名古屋テレビ放送株式会社。ファイルベースの恩恵を最大限に享受する為という、大きな目標に基づき更新を行なったのだが、さらに2014年度の更新として映像編集の設備がファイルベース対応となったことで編集・音声間のファイルベースでのやり取りがスタートしている。今回はそのワークフローにおける更新作業の内容をレポートしたい。 ◎ファイル受け渡し方法の確立 編集の設備もファイルベースに移行をしたということで、編集・音声間でのファイルの移動が発生することとなった。当初は、音声サーバーを拡張し編集サーバーとの共有を行うというプランもあったが、編集機の得意とするサーバーを導入することでストレスのない制作環境を整えるということを優先し、編集サーバーと音声サーバーとの間でのファイルの受け渡しが発生することとなった。   MA側のサーバーとしては、2013年にGB labs SPACEを導入していた。このサーバーは、高速なNASという特徴を持った製品。基本的にNASであるため、WindowsもMacOSもOSレベルで機能を持つCIFS、SMB、AFPといった汎用のファイル共有プロトコルでのドライブマウントが可能だ。今回の編集側との接続に際しても、その特徴から編集機側に特定のドライバーソフトのインストール無しに、SPACEに接続できるということになる。編集側のサーバーとしてはISISが選択されたが、こちらはドライバーソフトのインストールが必要。今後のメンテナンス、クライアントアプリのバージョンアップを考えるとSPACEを双方から共有した方が、長期的にもトラブルの可能性が少ないということで、SPACE内に編集とのファイルのやり取りを行う領域を確保するという方法を選択した。 実際のワークフローとしては、CIFSマウントされたSPACEの領域へ書き出したファイルのコピーを行うという非常にシンプルなもの。編集機側のOSはWindowsの為、SPACEの共有アクセスポイントにドライブレターを振り当てることで、起動時に自動的にマウントを行えるようにしている。 ◎タイムコードキャラクターの表示問題 ファイルベースソリューションで問題となることの多いタイムコードキャラクター表示。VTRを利用していた際には、デッキにキャラクター・アウトが備わっているため顕在化しなかったが、ファイルベースでは書き出されたファイルにキャラが焼き込まれていなければ、その後の表示に関して何かしらの手段を取らなければならないということになる。その手法として考えられるのは大きく下記の3種類となる。 1)キャラクターインサーターの場合(津幡技研:HD SUPER2) 津幡技研:HD SUPER2   3種の手段それぞれの、メリット・デメリットを確認していこう。先ずはハードウェアを使用したパターン。MAのシステムのVideo Playback機器からHD-SDIの出力とLTCの出力を与えることで、LTCを元にしたタイムコードキャラクターをHD-SDI入力に対してオーバーレイして出力をするという機器がある。シンプルな機能ながらリアルタイムでの処理が必要なため定価で30万円以上という比較的高価な機器となっている。メリットとしては、シンプルなためトラブルが少ないという点。ハードウェアのスイッチひとつでキャラの表示/非表示が切り替えられる点。HD-SDI/LTC という汎用性の高い信号を与えるだけなので、一般的なMAのシステムであれば特に機器の追加無く導入が可能。編集室から受け取ったファイルに対しては手を加えないので変換待ちなどのロスタイムが生じない。逆にデメリットとしては名古屋テレビ様のように複数のMAシステムをお持ちの場合には必要な台数が増加しコストに直接跳ね返ってきてしまう。6室への導入を考えると200万円近いコストになってしまうのが痛いところ。まさに、シンプル・イズ・ベストというソリューション。2室程度のMAであれば投資効果は問題ないレベルだと言えるだろう。 2)トランスコーダーソフトウェアによるファイルベースでのキャラの焼き込み telestream Vantage telestream Episode       まさにファイルベースと言えるシステムがこちら。サーバー内を常時監視し、編集から新しいファイルがやって来る度にキャラクターを焼きこんだファイルを生成して、特定のフォルダに出力をする。候補となるソフトウェアはtelestream Episode、telestream Vantage、Omneon Carbonといったところであろう。メリットは、トランスコーダーソフトが読み取れるファイル形式であれば、MA側のシステムが確実に読み込めるファイル形式に変換を行いつつ、キャラの焼き込みが行えるという点。前述のシステムであれば、大抵のファイル形式へ実時間以内での変換が可能な点。システムをバックグラウンドに集約することができるので、現場スタッフのストレスを軽減できるという点。逆にデメリットは、バックグラウンドでのシステムの為、不具合時の発見が遅れることがある点、Vantage以外は冗長化が難しいためシステムダウン時のダウンタイムが伸びてしまう可能性を秘めている点である。また実時間以内とはいえ変換に時間が必要なため、ゼロにすることは出来ないという部分もポイントである。 3)タイムコードオーバーレイ出力が可能なVideo Playbackシステム   Avid社のVideo Satelliteシステムが先ずは思いつくと思うが、受け取ったファイルに対してタイムコードオーバーレイが可能なシステムで再生を行うという手法もある。候補としてはAVID Video Satellite、Non Lethal Applications Video Slave等のソフトウェアベースの製品、SONY XDCAM Stationのようなハードウェアベースのシステムがある。メリットは、使用するシステムによって変わる。Video Satelliteであれば、編集側がMedia Composerを利用している際にそのメリットが最大化される。プロジェクト単位でのシェアを行うことで編集側からの書き出し作業もスキップすることが可能となる。Video Slaveは国内では実績のないソフトウェアだが、シンプルに再生が可能な多機能な同期再生ソフトだ。コストを度外視すればXDCAM Stationという選択肢もある。このVTRデッキはSSDストレージを搭載しているので、CIFSでファイルの投げ込みが可能である。それを9Pinで同期を取りキャラアウト出力を映すということでも実現する。デメリットは、それぞれではあるが、コストが高いということだろう。また、個別のシステムを同期するということになるので、トラブル時の同期ズレの問題からも逃れられない。それぞれに多機能な部分は あるのだが、その部分に明確なメリットを見つけられるシステムであれば導入検討を進める価値があるのではないだろうか。 ◎名古屋テレビ様での選択 既存システムへの変更を最小限とし、現場スタッフの混乱を減らすということを念頭に置き、また、編集とのファイルの投げ込み方のワークフローから逆引き的な検討を行なった結果、先ずは3:Video Playbackシステムでのキャラ焼きは候補から外れた。今回の検討ではVideo Satelliteシステムが候補に挙がったが、編集に導入されるISISに接続をしプロジェクトと共有を行うには、その導入コストと、帯域的にISISの筐体を追加しなければならないというコスト両面から見送りとなった。 ハードウェアと、ソフトウェアどちらを選択するかというところで、メリットとデメリットの精査を進めた結果、2:ソフトウェアのパターンが最終的には採用された。コストという判断が大きかったというのもあるが、将来的に、送り込まれるファイル形式の多様化にも対応でき、且つ実時間の半分以下の速度での変換を実現するということが実証されたため、ソフトウェアベースでのシステムを導入となった。選んでいただいたのは、terestream Episodeである。 今回導入していただいた terestream Episodeは複数PCでのクラスタリング処理を実現する最上位のEpisode Engineをコアとして4台のMac Miniでシステムを構築した。この4台のクラスタリングシステムでh.264への変換が実時間のおおよそ40%で完了する。ファイルベース運用初期ということもあり、同時に編集からのファイルの投げ込みは無いという想定でEpisodeという選択となっている。ちなみに、同時に複数ファイルの処理をしたいという場合には、同社のVantageの出番となる。 ◎実際のワークフロー 編集からの投げ込み用のアクセスポイントと、編集側への音声データを投げ返す為のアクセスポイントがSPACE内に新たに用意された。前述のファイルトランスコードエンジンであるEpisodeは投げ込み用のアクセスポイントを常時監視していて、変換作業後には音声側のMAスタンバイ素材のフォルダに送り込まれる。変換完了後には、投げ込み用のフォルダからファイルは自動的に削除待ちのフォルダへと移動され、変換が完了したことがわかると同時に、削除してもよいファイルということで自動的にフォルダ分けが行えるようにしている。万が一Episodeがエラーを返し、正常に終了しなかった場合には、"Failed"というフォルダーを作成してあり、そこにファイルが転送される仕組みだ。このフォルダに素材がある場合には書き出されたファイルの不具合、もしくはEpisode自体の不具合を疑うという具合だ。 そして、MAが終わった完パケWAVデータは、SPACEの投げ返し用のアクセスポイントに置くことで、編集側との共有が可能というシステムだ。編集側からは、最低限のSPACE内の領域しか見ることが出来ない仕組みをとっているためにトラブル時の切り分けもし易いよう工夫を行なっている。 ◎今後の課題 編集側とのファイルの受け渡しが本格化すると、今まで十分であったSPACEの容量が逼迫する可能性が大いにある。そのために、SPACEの容量拡張とともに、過去素材のアーカイブを検討する必要が生じている。一般的には、放送局様での実績が高いアーカイブソリューションとしてはLTOということになるが、1つのデータ量が少ないMAのデータ保存にはあまり向いていないように感じている。これは、LTOの容量が大きいため、数カ月分のデータが1巻のテープに収まってしまうため。MA向けとしては、100TB程度の容量を重視したストレージサーバー上でホット・アーカイブを行うというのがベストソリューションではないだろうか。ビッグデータも、クラウドサービスなど、データ資源の一極集中が始まっている。そのような中、HDDストレージの容量単価の低下から1PB程度を境に、LTOのコストとHDDを使用したストレージサーバーのコストの逆転が見られるようになってきている。長期保存という点ではLTOに軍配が上がると思うが、アーカイブデータへのアクセス性を考えれば、HDDストレージでのホット・アーカイブの方に理があることは一目瞭然である。 ◎telestream Episode   今回、名古屋テレビ放送様で導入いただいたtelestream Episodeは非常に多くの機能をもったVideo Transcoder Software。限られた紙面ではあるがその機能の幾つかを紹介したい。今回の導入に当たり、キーとなった機能がSplit-and Stitch。これは、複数のPC(Win / Mac問わず)をクラスターとして並列処理を行うことで高速なトランスコードを実現する機能。通常であればクラスターを管理するSQL serverのような存在が必要となるが、Episodeでは同一のサブネット上に存在するPCであれば、簡単にクラスター化することが出来る。動作の原理は非常にシンプル。   まずは、変換元のファイルをSplitする。クラスターの参加台数に応じて切り分け、それを各PCで変換することとなる。変換が終わったら、ばらばらになったファイルをStitchする。つなぎ合わされたファイルは変換後の完成品となるという仕組みだ。これにより、CPUのパワーをフルに利用し、PCの台数に応じた高効率なファイル変換を行うことが可能となる。Splitする、Stitchするという工程で多少の時間は必要となるが、単純に2台PCがあれば約1/2、3台では約1/3と劇的に短時間での変換が出来るようになる。高価なCPUを搭載するよりも、低価格なPCを束ねたほうが早いという面白い現象がこの機能により生まれる。実際に、1台のハイスペックなMacProよりも、4台の標準構成のMac miniの方が高速に変換が行える。今後の処理の増大に対しても、別スペックのPCを接続することでの高速化が望めるのもメリットの高いシステムである。それこそ、Episodeのライセンスは必要ではあるが、余剰のPCを使うことも可能だ。   また、本文にもあるがEpisodeはフレームレートの変換、画角の変換などVideo Fileの主要な要素のほぼ全てを変換することが出来る。どのようなファイルがやってきたとしてもその後の作業で確実に処理の行えるファイルに変換を行うことが可能だ。名古屋テレビ様では、ファイルサイズの小さいh.264への変換作業をEpisodeで行っている。編集側での作業では時間のかかってしまい敬遠されがちなh.264への変換を、4台のMac miniにより実尺の1/2以下の時間で変換の行うことに成功している。そして、その後の作業で利用していただいているPro Toolsで確実に読めるファイルになっているというところも大きなメリットとなっている。もちろん変換の主目的は、キャラの焼きこみであるが、それ以外に複数のメリットを享受できていることとなる。 今後もROCK ON PROとしてより良いワークフロー、作業環境を名古屋テレビ様に使っていただくためにご要望からアイディアを生み出していきたいと考えている。順次ブラッシュアップ、定期的なメンテナンスが、アナログのソリューション以上に重要となるファイルベースのシステム。今後の名古屋テレビ様のシステムの発展も順次レポートできればと考えている。

Broadcast

株式会社松竹映像センター / 総合ポストプロダクションが加速させるワークフローの最新Style

松竹と聞いてまず思い浮かべるのはなんだろうか?京都太秦の映画村だろうか?それとも歌舞伎座だろうか?それとも「男はつらいよ」「釣りバカ日誌」?今年が120週年という松竹、その存在自体が日本の娯楽史とも言える。その歴史の中には、数多の名作、名演が残されている。古くは、小津安二郎監督、野村芳太郎監督等、日本映画史に残る会社であり、歌舞伎を現代に伝える会社でもある。   その中で、松竹映像センターの歴史を遡ると大船にあった松竹撮影所にそのルーツが有る。撮影所のポストプロダクション部門が独立した神奈川メディアセンターを母体とし、パッケージメディアの制作、CSの衛星劇場、派生のポストプロダクション作業の増加に伴い成長をしている。2015年1月にお披露目を行い稼働を開始した松竹映像センターの新拠点。元々は、大船の映画関係作業を中心としたダビングステージ、高輪台の映像編集とMAを行っていたポスト・プロダクション、そして銀座の事務所機能という3拠点に分かれていたシステムを統合し、ワンストップでの制作環境を提供する目的で作られた最新の設備だ。事務所機能、映像編集、MAスタジオは7Fに、旧大船にあった映画音声のファシリティーは天井高の取れる1Fに配置されている。ゆとりある空間で、快適なクリエイティブ作業を行ってもらいたいというコンセプトのもとに開放的な空間がそれぞれの設備には広がっている。更には、松竹の持つ豊富なコンテンツの資産を活かすためのMAM(Media Asset Management)を新設、映像編集、映画音声関連のファシリティーの強化など多岐にわたるシステム強化が行われている。   それぞれの部屋ごとに、単純な移設にとどまらない様々なブラッシュアップが行われており、統合されたワンストップでの制作環境が誕生している。トータルのデザインは乃木坂ノソニースタジオ等日本にも馴染みの深いピーター・グルナイセン氏の手によるもの。アメリカ「MIX magazine」の2015年度世界優秀新スタジオ18選に日本のスタジオとしては唯一選ばれ、海外からの注目も高いことがわかる。ROCK ON PROは今回の移転に伴い、全面的にオーディオ関連設備のお手伝いをさせていただいた。歴史と伝統、そして最新のソリューションへの飽くなき追求を行う現場のスタッフの皆さんと日々議論を戦わせながら完成した、次世代を担う最新の設備をご紹介していきたい。 1:ダビングステージ System5を中核とした96kHz対応のFilm Dubbing System 大船にあったAVID system 5コンソールを移設した映画本編仕上げ用の空間。常設となる5台のPro Tools HDXからはそれぞれ64ch@96kHzの出力が可能。InterfaceにはHD MADIが接続されSSL Alpha Link SX MADIによりDAされアナログでミキシングシステムへと接続が行われている。ミキシングシステムは96kHzでの動作でダビングに耐えうるチャンネル数の入力を確保する、ということを念頭にシステムが構築されている。この入力段にはミキサーシステムとしてのNuendoが準備されている。Nuendoは負荷分散という意味もあり3台のHP Z440にインストールされた。そのI/Oには、RME HDSPe MADI FXがそれぞれに2セットずつ設置されている。このHDSPe MADI FXは1セットあたり3系統のMADIの入力を持つため、192ch@48kHz、96ch@96kHzというスペックだ。都合1台のNuendoで192ch@96kHzのI/Oを備えているということになる。この3台のNuendoはEuConでSystem5からのコントロールが行える。System5のミキシングエンジンを最終ステムミキサーとして、その前段でのステムミックスを受け持つこととなる。EuConでのNuendoの統合はフェーダーコントロールだけではなくEQ,COMPといったコンソールとしての基本機能が遜色の無いレベルで統合される。もちろん、Pro Toolsも同一のネットワークに存在するために作業形態にあわせて、EuConでコントロールするPCは自由に切替が可能だ。 徹底した比較試聴で選ばれた音質に対するこだわりの機材 最終段のレコーダーもNuendoがチョイスされ、コンソールとはアナログで接続されている。通常であればSRCを使ってサンプルギャップを埋めてしまうことも多いのだが、その音質変化を嫌い全ての接続段でDA/ADを行いアナログによる接続をとっている。完全な線形を保つアナログを介し、デジタル・ドメインでの不要な処理を回避するこのシステムアップは、音楽のマスタリングスタジオで音声を一旦アナログで処理をするというその手法と共通する音質に対するこだわりを見ることが出来る。大規模なシステムであるために各パートでの音質の差異を最低限に押さえる必要があるが、シグナルフロー上のD/Aコンバーターに関しては全てSSL Alpha Link SX MADI、A/DコンバーターはDirect Out Technologies ANDIAMO.2に統一をするというこだわりにより構築が行われている。 Room EQの統一によるReference環境としてのStage 1Fの全ての部屋に共通となるが、Room EQとしてReal Sound Lab社のAPEQ-8 proが導入されているのも特徴の一つ。共通のRoom EQ機器を採用することで、音色差を極力減らしたいという意向の現れでもある。同一のアルゴリズムにより導かれ、同一のエンジンにより処理されフラットバランスを導くことによる共通性を求めている。このAPEQ-8 proは音響パワーという独特な数値を元にその補正を行っている。音響パワーとは『単位時間あたりの面を通過する疎密波の仕事量』ということになるのだが、それによって導かれる効果は、平均化されたデータにより導かれたターゲットに基づいて補正を行っているために想定点を中心に広い範囲で最適な補正の効果を得られるというメリットを持っている。これは広い空間を持つダビングステージでの効用が大きく、もちろん、物理的なスイートスポットは有るものの効果の及ぶ範囲が広いために複数人でのミキシング作業を行うダビングステージでは最適な補正技術であると言える。そしてスピーカーマネージメントにはPeavey Media Matrix Nionを採用している。このモデルは十分なプロセッシングパワーを持つDSPを搭載している。今回のシステムではモニター段にあたるB chainのデジタル機器はサウンドの純度を保つために96kHzでの設定を行っているが、このNionは96kHzでの設定においても十分なプロセッシングパワーを提供している。実際に内部では前段のプロセッサーで生じたレベルの微調整、EQ,Delay,CrossOver,Distributionを行っている。また、プリセットの切り替えにより7.1ch/5.1chの切替もここで行うようなシステムアップだ。 映画館との差をなくすための様々な工夫 スクリーン裏のスピーカーシステムはJBL 5732 3-Wayをフルバッフル仕様でLCRに設置。SWは4645Cを2本、左右に設置している。この選定は制作段階でのリファレンスとするべき関係各社の試写室のシステムを総合的に判断している。これらのLCRとSWのアンプはスピーカーレベルでの引き回しを最低限にするために、バッフル裏に設置が行われ、ここはLab.Gruppen C88:4が採用されている。機材選定に際しては消費電力量と、発熱量が検討されたが、1台2Uのスペースで8800W/4chの出力を持つこのモデルはこの位置への設置には最適であった。接続はHF,MFにそれぞれ1ch、LFはBTLで4400Wを当てている。2台のSWへの接続もBTLとしているが1台で賄えているのが4chモデルのメリットと言えるだろう。ここへは都合4台のC88:4が専用の変圧トランスを介し120V供給で設置されている。サラウンドスピーカーにはJBL AC18/95が採用された。このモデルは、余裕の500Wとという定格と、90度という広い指向角を持ち、最近のシネコン等新しい上演館で採用が多く見られるモデルだ。シネマカーブをNionに任せることでこのような自由なスピーカーセレクトを実現している。   スクリーンはもちろんサウンドスクリーン、有効寸法で横幅7mというサイズが確保されている。大船のスタジオと比較して縦横ともに2mほど部屋は小さくなっているが、スクリーンサイズは妥協をせずに同等のサイズをキープしている。映画はシネスコ(シネマスコープ)サイズを最大として左右を袖幕で詰めてビスタ、スタンダードへとサイズ変更を行うのが一般的。そういったことから、シネスコでの最大幅を十分に取ることが重要となる。幅7mのシネスコとすることで縦寸法を約3m確保することに成功している。 どのような要望にも答えられる柔軟なシステム ダビングは、作業を行う『組』により環境がガラリと変わる。堅実なバックボーンと、柔軟性を併せ持ったシステムアップということで、随所に余裕をもたせた回線の設計が行われている。再生機であるPro Toolsと同列には、持ち込み機器用の64chの入力をアナログ、AES/EBU、MADIとどのような機器を持ち込まれても接続できる用に準備が行われている。ダビングステージ側にもアナログ、AES共に24chのトランク回線が有りDolby,DTSなどのフィルム用の仕上げにも対応できる準備が行われている。   柔軟性は、作業環境の主体となるコンソールにも及ぶ。モジュール構造のSystem5ということを最大限に活かし、あえて固定をせずに、作業スタイルに合わせて自由に並び変えが行えるよう、特注の専用デスクを作成した。モジュールを取り外した隙間にはPCのDisplayを固定できるような仕組みも取られている。大船のスタジオでも特注のコンソールデスクを使用していたが、そのコンセプトを更に拡張したデスクとなっている。 どこでも作業ができるフレキシブルな設計 Pro Toolsの操作はこのコンソールに組み込まれるディスプレイと、Ergotron製のカートが受け持つ。カートには、SDIで延長されたPC Display、Ethernetで延長されたUSBが組み込まれ、モニタリング用のAES、電源と合わせてたった4本のケーブルで成立している。このPC Display用のSDIとUSB延長用のEthernetはマシンルーム側でパッチ出来るようになっており、好きな端末で操作を行うことが可能となっている。このシステムはダビングで完結しているわけではなく、後ほど紹介をするADR,Sound Design各室でも操作が可能となっている。ダビング中にまとまった直しを行いたい際など、そのままの環境を別の部屋から操作が行えるようになっている。   ミキサーとしてのNuendoはコンソール脇のアシスタントデスクに集約されている。4画面が用意されたこの部分だが、Adder CSS4-USBを組み込むことで1セットのKeyboardとMouseで操作できるようにセットアップされている。4画面には通常ミキシングエンジンのNuendo3台とRecorderのNuendoが表示されている。更に裏にはSystem5の設定用のeMixも映るよう接続が行われている。Nuendoはカートに送られる回線と同一の延長システムを利用しているので、組み換えも自在に行うことが出来る。 同期のコアユニットはVikinXを採用 その足元にはこのダビングステージのコアとなるシステムが収められている。全てのシステムはLTCで同期をとっており、そのMasterとなる機器のセレクターがここにある。後述するが、リファレンスの異なったそれぞれの機器間をアナログでつないでいるために、実はこのLTCシンクが理にかなった方法だという一面も有る。それ以外にもFilm同期用の機器、プロジェクターへの入力信号の切替器、緊急用のスピーカー用アンプの一括電源が用意されている。   外部エフェクターは全てミキシングエンジンに96kHzドメインで直結されている。System6000、Eventide H8000、CEDAR DNS3000、YAMAHA SPX2000が用意されており、全てのエフェクターはデジタルでの接続というのもこだわりのポイント。サウンドの純度を最大限に保ち、高品位なデジタルデータそのままに処理を行おうというコンセプトだ。ここにはアナログ、デジタルそれぞれのメリット・デメリットをしっかりと理解し、使い分ける独自のフィロソフィーを感じる。 こだわりのマスタークロックは5機種がスタンバイ そして、このスタジオのこだわりを反映させたポイントはさらに続く。音質の肝となるMaster Clockを複数用意しているのもその特徴と言えるだろう。基本としてはAudio&Design Syncroginius HD-PRO+がノンパッチでの接続となるが、それ以外にもAntelope OCX-V、TASCAM CG-1800、Rosendahl Nanosync HD、Aardbvark AardSyncがある。中でもTASCAM CG-1800は複数台有り、サンプルレート違いのDAWへのリクロッカー、Pull Up/Pull Downへの対応などでの活用を想定している。近年、映画の基本である24fpsからTV向けである23.976fpsが多く用いられるようになっている。劇場側も23.976fpsの受入がDCP対応により完了しているため、その後のTVでの放送などを見越して当初より23.976fpsで制作されることも多くなってきている。このように24fpsと23.976fpsの混在した中での作業をスムーズに行うため、同一のリファレンスからDAW内部でPull Up/Pull Downをするのではなく、リファレンス自体をPull Up/Pull Downしたものに対して同期を行うということで、このシステムを成立させている。つまり絶対的なスピードのキャリブレーションを取ったところでLTCによるポジション指定を行うことでシステムとしての成立をさせているということ。なぜ一般的な手法ではなくこのような手法をとっているかといえば24fpsで仕上げた作品を23.976fpsのマスターに仕上げるといったシチュエーションを想像して欲しい。音質変化を極力減らした環境を作ろうとすれば、このような手法になるということだ。   今後を見越した4Kプロジェクターの導入 プロジェクターは4K対応のモデルを導入し、今後の高画質化にも対応できるシステムとなっている。4K対応のプロジェクターもあるが忘れてはならないのが、大船から移設した映写機。ダビングステージから映写機がなくなっている今、フィルムでのダビングが可能なこのスタジオの価値は計り知れないものがあると思う。シネコーダーも最低限ではあるが移設をしているためにシネテープによる仕上げも可能となっている。この1Fにはフィルム編集室も用意され、スタインベックも移設が行われている。デジタル全盛の今だからこそ、このようなフィルムの技術をしっかりと残していってほしいと思う。   2:ADR あまり聞き慣れない言葉かも知れないがADRとはAutomated Dialogue Replacement、もしくはAdditional dialogue recordingの略となる。日本風に言えばアフレコである。こちらも広い空間を持つスタジオとなっており、48chという十分な回線数が準備されている。先ずはコントロールルーム側から見て行きたい。 共通化されたRoomEQで音質差を最低限に押さえる コントロールルームはダビングステージと同様にReal Sound Lab APEQ-8 proにより補正されたサラウンドシステムが導入されている。映画のスタジオらしくウォールマウントでのデフューズサラウンド仕様でスピーカーが設置されているが、ITUに変更も出来るように壁面にはコンセントが用意されている。その際のAPEQ-8の補正データもすでに準備が行われているのでプリセットを切り替えるだけでシステム変更も可能となっている。 こだわりの96kHzシステムが生み出す高音質 この部屋もシンプルなシステムながら、メインのシステムは96kHzでの動作を基本としている。Recorderとのクロックの縁を切るためにアナログを介在したダビングと同一の思想に基づいたシステムが構築されている。中心にはYAMAHA O1V96 VCMを採用、このデジタルの入出力をフルに活用し、やはりD/Aコンバーター部分にはSSL Alpha link MADI SXを用いり、ダビングとの整合性を可能な限り取っている。マイクプリはRME OctaMicとQuadMic。COMPにはオリジナルのUrei 1176と1178が用意されている。回線数自体は十分にあるので、追加でMicPreを持ち込めば更に収録チャンネル数を増やすことが可能というわけだ。 様々な用途に対応する大空間スタジオ スタジオ側は、天井の高い広い空間が確保されている。適度な吸音によりデッドすぎず、ライブすぎない程よいバランスに仕上がっている。床の中央部分だけがタイルカーペットとなっているのは、この部分を剥がすことで浮床のコンクリートが直接露出できるようになっているためだ。これは、足音などの収録を想定して、簡易的なFoleyの収録も念頭に設計されていることによる。機材的には、マイクスタンドを新調しTriad-Orbit社のスタンドを採用している。このスタンドはワンタッチロックで操作性に優れていると定評のブランド。しっかりとした作りなので、重量のあるマイクでも問題なく設置することが出来る。また、高さもあるので最大3m近いところまでリフトアップすることも可能。もう一つ、音質へのこだわりでEnhanced AudioのM600というマイクホルダーを導入した。今回はNeuman u87用に導入をしていただいたが、もちろん径さえ合えば他のマイクにも利用可能だ。点で固定することで共振を排除するという従来のマイクサスペンションとは、一線を画した思想により開発された製品である。   3:Sound Design Sound Designは共通の設備が3室準備されている。モニターシステムはADRと同様にSSLでD/AコンバートされたものをAPEQ-8 proで補正を行っている。清水氏はこのSound Designこそモニター環境が大切だと考えており、設計もそのコンセプトに基づき行われている。この部屋で仕込まれたトラックを仕上げのダビングステージでモニターした際に、どれだけ違和感、差異を感じない環境とするか、このポイントにこだわり機材の選定設計が行われている。部屋のサイズ、容積共に大きく異る部屋ではあるが、Real Sound Lab APEQ-8 proの効果もあり非常に近いモニター環境が構築できている。 徹底した比較試聴でセレクトされたスピーカーシステム そのコンセプトを支える機材はもちろんスピーカーであるが、この部屋へ導入するスピーカーは現在国内に輸入が行われているほぼ全てのモデルが試されている。Genelec,Focal,ADAMといったモニター・スピーカーメーカーからSR用途のNEXOなどに至るまで比較試聴が行われたのだが、その手法も大船のダビングステージにそれらのスピーカーを持込み、スクリーンバックのスピーカーとニアフィールドで切り替えても違和感のないモデルを選び出すという徹底した比較だ。その中で選定されたのがADRでも採用が行われているYAMAHA MSP3である。しかし、この小型のスピーカーだけではどうしてもスクリーンバックのJBL程の低域の量感を感じることは出来ない。ここで同じくYAMAHA SW10と組合せてLCRの3chをベースマネージメントすることにより、そのコンセプトが実現するよう解決している。意外と言うとYAMAHAさんに怒られてしまいそうだが、MSP3の低域のROLL OFFとSW10の高域のROLL OFFが自然なクロスオーバーとなり全く違和感を感じない。そして、SW10は3ch分のベースマネージメントが出来るというのも大きなポイント。2.1chのモニターを考えたモデルは多いがそれらはもちろん入力は2chしか無い。そうなるとLCRの3chをベースマネージメントしようとするば最低でも2台必要となる、それ以外に0.1ch用のSub Wooferも必要なために部屋がSub Wooferだらけということはあまり望ましくない。このような理由からMSP3 + SW10というシステムが導入された、是非ともこの組合せはお試しいただきたいと思う。   作業用のPCはPro Toolsが用意されている。常設のシステムとマシンルームのシステムはパッチにより切替が可能。1Fに有るDAWであれば、どのPCも操作が可能である。音声回線も全てのバックボーンはMADIで構成されているのでこちらもBNC PATCHにより任意の部屋でモニタリングが可能となっている。   4:Audio Suite こちらは高輪台からの移設、珍しいAVID ICON D-ControlのDual MAINシステムが導入されている。それぞれに接続された2台のPro Toolsと映像再生用のVideo SatelliteがSatellite Linkで同期されている。それぞれのPro Toolsは16chがたすき掛けに接続されているので、片方が不調の際には、すぐにスイッチしてそのまま作業が続行できるようなシステムアップがなされている。このメインのシステム部分には大きく手を加えずに、再生環境のブラッシュアップを目指した更新が行われている。 85dBの余裕をもって鳴らしきるADAMの迫力 この部屋の特徴は何といってもスピーカー。2ch用の既存のADAM S5X-Hが目立つが、今回の移設に合わせサラウンド作業用に7.1ch仕様でADAM S3X-Hが導入された。S3X-Hの導入により、十分な低域までのフルレンジで量感あるサラウンド再生をベースマネージメント無しで実現している。そして、スピーカーに余裕があるのでリファレンスレベルを85dBsplに設定した際にもフルビットまで破綻のない余裕ある再生を実現している。 音質のこだわりはDAコンバーターにある その音質を裏で支えるのがPro ToolsのメインアウトにセットアップされたRME ADI-8 DS。再生音質に対して音質影響の大きいD/Aコンバーターを聴き比べ、最適と思われるADI-8 DSを選定していただいた。色付けが少なく、解像度の高い印象とコメントを頂いたこの機種はモニタリングには最適といえるだろう。そして、スピーカーマネージメントシステムも音質にこだわり、Peavey Media Matrix Nionをセレクトしている。1Fダビングと同様にAudio Suiteでも96kHzでの動作を行わせている。5.1ch/7.1chの切替はもちろん、ベースマネージメントのON/OFF、X-CurveのON/OFFといった機能をプログラムしている。 柔軟な運用を可能とする多用途設計のブース また、高輪台と比較して広くなったブースにもこだわり、机に座ってのナレーションだけではなく反対の壁を向けばアテレコもできるようなシステムアップとしている。コミュニケーションシステムを追加し、通常のCufとCue Boxのデュアルシステムとした。マイクの回線にも手を加え、今まで本線に利用されていなかったApogee Rosetta 800をマイクの入力段へと接続変更を行っている。これもRMEと同様に聴き比べを行った結果であり、担当の吉田氏のこだわりが見える部分である。   5:MAM / 映像ソリューション / Film Edit MAM あまり聞きなれない言葉かも知れないがMAM=Media Asset Manegimentである。ここでは、松竹の持つ膨大な過去作品アーカイブのMedia Assetを行っている。AVID Interplay MAMがそのマネージメントツールとして利用されており、映像1フレーム単位でのメタデータの書込が可能となっている。「男はつらいよ」を例に取ればこのフレームからこのフレームまでが帝釈天のシーンで寅さんが登場しているといったことを記録し、これを後から検索することが出来るようにする仕組みだ。まずは、過去の人気作品から作業をスタートし、今後は、新作も順次メタデータの入力を行っていきたいとのこと。そのデータストレージはEMC Isilonが採用されている。このサーバーはスケールアウト型NASと言われる種類の製品で、内部のデータを消去することなくサーバー筐体の追加で容量を拡張できるという大きなメリットを持つサーバーだ。 映像ソリューション 他にも、編集室が3室、AVID編集室が3部屋、FCPを備えたノンリニア室が4室、インジェストルーム、プレビュールーム、QCルームと多様な設備が備えられている。映画はもちろん、そこから派生するパッケージメディア、配信メディアなどにも対応できる設備が整えられた、まさにOne Stopで作業を完結することのできる総合ポストプロダクションとなっている。編集用のサーバーシステムにはAVID ISIS5500が導入され、徐々にではあるが活用が始まっているとのこと。将来のファイルベースでのワークフローへの準備もすでに終わっているということになる。 Film Edit 更に1FにはFilm編集室も有り、なんとスタインベックが!! フィルム編集を行うスタジオでよく見ることが出来たこの機械も、一気に進行したDCP化の中でその姿を消している状況。Film映写機を備えたダビングステージと共に、これからも活用されることに期待をしたい一台。Filmを使用して映画を取るという伝統、技術は継承してもらいたいと切に願うところだ。 会社自体が日本映画の歴史そのものとも言える松竹。そのポストプロダクション部門は、これからの様々な形態のメディアへ対応すべく劇的な進化を遂げた。Filmから、最先端のアーカイブのMAMまでデジタルとアナログ両方に精通したスタッフが揃う松竹映像センター。今まで高輪台と大船という離れた地にあった2つのソリューションが融合し、今後のワークフローの加速が期待される。なお、松竹作品だけではなく、外部からのお客様も受け入れを行っているということだ。まさにOne Stopでの作業を実現するファシリティーが揃ったこのスタジオ、今後どのような作品がここから生まれるのか楽しみでならない。 株式会社松竹映像センター エンジニア 吉田優貴 氏

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Sound Design のベース DOLBY ATMOS 普及の鍵となるスタジオが完成 〜 beBlue AOYAMA 〜

東京・青山という都内屈指の立地に世界各国で導入が進む Dolby Atmosへ対応したMAスタジオが誕生した。THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能としたシステムは、将来へも布石した先進のスタジオと言える。今回の導入事例では数々のアイデアが詰め込まれたシステムの詳細に迫りたい。 01 プロジェクトを推し進めた DOLBY ATMOS というキーワード 有限会社ビー・ブルー様は名古屋に本拠地を持つ、主に映像作品のサウンドデザイン(選曲・音楽制作も含む)を行っている会社である。物語の始まりは「東京にスタジオを作りたい」という構想を、THX pm3認証に沿ったプランニングで数多くのスタジオ構築に実績がある染谷 和孝 氏に語ったところから始まる。東京には2chのMA スタジオも5.1chのMA スタジオも多数存在する。新しくスタジオを作るとなると同じようなコンセプトのスタジオを作っていたのでは成り立たない。そこでしっかりとした個性を持ったスタジオを作るには明確に差別化されたコンセプトが必要となる。   その答えを見つけるターニングポイントとなったのが東映株式会社でのDolby Atmos対応のダビングステージを視察した際のこと、Dolby Atmosというキーワードの実際を見る事によってこれまでの計画は一つの方向に向かって急激に走り出していくことになる。元々のコンセプトとしてTHX pm3の認証とシーリングスピーカーは導入したい考えであったが、そのシーリングがDolby Atmosに出会って大きな化学反応を起こし、今回のコンセプトに「小規模スタジオでのDolby Atmos」という一つの目標が出来たとも言える。しかし、まだその時点では「Local Renderer」の正式リリースの声は聞けず、結果的にはリリースを想定しての船出となった。また、その新しいチャレンジと言えるDolby Atmosのシステムアップだが、やはり予算との擦り合わせは大きな課題となる。果たしてDolby Atmosの導入コストの規模感はどうなるのか、ベースとなる音響を整えた環境は構築できるのか、新しいコンセプトとの折り合いは有限会社ビー・ブルー様にとってもこだわりを持って臨む新たな試みとなった。 02 DOLBY ATMOS 導入を推し進めた Local Renderer 前述のように当初はDolby Atmosの構想はなく、7.1chの整えられたレギュレーションに基づいたMAとしてコンセプトを考えていたとのことである。5.1chであればしっかりと調整が行き届いた設備もあるが、7.1chとなると整った環境を探す事も難しい。その一方で、Blu-rayやゲームコンテンツなどは既に7.1chがベーシックとなっており、7.1chの設備をきちんと整える事は充分な意味を持つ。また、MAと言えば48kHzがデフォルトとなりデジタルでシステムが組まれていることも多いため、ハイレゾ(96kHz以上)への対応も差別化を図る上で重要なコンセプトとなっていた。この7.1chとハイレゾ制作というベーシックプランにDolby Atmos対応が加わってスタジオのプランは試行錯誤を繰り返して行くことになる。 そして2014年春、ついにLocal Rendererの大まかな情報を得ることが出来た。それまでのDolby Atmos制作環境はシネマ用のダビングステージ向けシステムしか用意されていなかったが、このLocal Renderer の登場により中小規模のスタジオでも視聴環境が整備できればDolby Atmosの導入が可能となる。つまり、この発表によって初めてDolby Atmos作品の事前作業(プリミックス)への希望が明らかになり、スタジオ構築の方向性も定まっていく。例えば、完成後の設備追加では環境整備(音響調整)が難しいDolby Atmosフォーマットのスピーカー配置など、そのプランニングが一気に現在の完成形へと固まっていった。ちなみにLocal RendererとはDolby社が提供するPro Tools用プラグインで、Dolby AtmosのレンダリングをCUPベースで行うことができ、ダビングステージに持ち込む効果音等のサウンドデザインをニアフィールドDolby Atmosモニター環境で行うことができる製品である。   しかしながら、この2014年春の時点の情報では、Dolby社のLocal Rendererに関しては技術発表の段階であり、明確なリリース時期や本当にリリースが果たされるのかも不透明な状況。その中でもスピーカー配置などハードウェア的な準備がなければDolby Atmosの導入も難しくなってしまうため、アコースティックデザイナーである株式会社ソナの中原氏による緻密な音響設計が行われ、先行して設備を準備しLocal Rendererの登場を待つということとなった。 結果的にこのLocal Rendererの発表タイミングはbeBlue様にとって「非常にラッキーだった」と代表の青木氏も強調されていた。シーリング(天井)のスピーカーに関しては躯体の補強など様々な追加要素が必要となり、既存スタジオにシーリングを追加するハードルは高いと言える。これが設計段階からシーリングを見込んでプランニングが出来たのもLocal Rendererの開発が有限会社ビー・ブルー様にとって絶妙のタイミングで行われたからに他ならない。もしその開発が半年遅かったらDolby Atmos用のスピーカー構成にはなっていなかった可能性もあったとのこと。このほかにもDolby Atmos ホーム用のRMU(Rendering and Mastering Unit)の提供が開始したのもまさにスタジオの工事期間中。このRMUは シネマ用のプリントマスターから、ホームシアター用にDolby Atmos ミックスをリマスタリングするDolby Atmos ホームにとってのまさに心臓部、そのアジアでの1号機がこのスタジオに導入されている。このスタジオのプランニング、工事の進行と共にキープロダクトが発表されていくという非常なラッキーを携えてスタジオは完成していくこととなった。 03 DOLBY ATMOS と THX pm3 がもたらす コンセプトの軸 「ファイナルミックスの完成度は、8割以上がプリミックスの出来次第だと思っている」と染谷氏は語る。このスタジオではDolby Atmosの事前作業とプリミックスを行ってもらい、ダビングステージで完成度の高いファイナルを作ってもらいたいという思いがあるとのこと。この設備を活用してプリミックスをじっくりと行ってもらいたいというのが大きなコンセプトの一つである。この実現にはLocal Rendererの存在は非常に大きなものとなった。CPUベースのレンダリングエンジンでDolby Atmosの環境を実現することを可能とするこのシステムは、コスト的にも規模感としてもコンセプトにフィットした。   そして、もう一つのコンセプトはDolby Atmos ホーム用のRMUの登場によりもたらされた。今後コンテンツの増加が予想されるDolby Atmos ホーム用のコンテンツ制作拠点として存在することも意義が大きい。さらに今後はBlu-ray用のオーサリング、リマスター等の作業も見込んでいる。もちろん現時点ではDolby Atmosの仕事だけでスタジオのスケジュールが埋まるとは考えてはおらず、MONOから7.1chの仕事まで全部がしっかりと行えるよう細かな設計されている。Dolby Atmosに特化したスタジオではなく、車のギアのように切り替えることでモードが変わり全てに対応できる環境というのが目的としてあった。その点をこのstudio 0(ゼロ)ではDolby AtmosとTHX pm3いうコンセプトの軸を与えることで差別化、機能性の明確化を行っている。 Dolby Atmosに関してまさにBlu-ray Discの発売が始まり大きな局面に差し掛かっているが、ここで非常に大切な作業が生まれる。染谷氏はSONY PCL時代に「なぜCDにはマスタリングがあるのにDVDにはないのか?」ということを提唱した。DVDこそコーディング(非可逆の圧縮)が行われそのサウンドが変質する可能性はCDなどよりも圧倒的に高い。エンジニアにとってスタジオで作った音とパッケージに収録される音の変化は自身で確認を行うべきなのに、なぜDVDにはマスタリングが無いのかが不思議で仕方が無かったとのこと。SONY PCLでは自身の携わった作品のエンコードまで責任をもって作業を行うことが出来る設備とワークフローを確立してきた。DVDに必須コーデックとして採用されたDolby DIGITALに代表される非可逆圧縮での音質や音量の変化が、どのような特性や仕組みで生じているかをつかむ必要があった。マスタリングの必要性は圧縮によるものだけではなく、映画作品の民生用パッケージ化では音響処理を施した大空間施設での再生を目的とした音声信号を、家庭に設置されたホームシアターに最適な状態にマスタリングする目的もある。   そしてDolby Atmosでも同じことが言える。シネマ用のDCPに収録されるDolby Atmos音声と民生用に提供されるDolby Atmos ホームではコーデックや収録再生の仕組みに違いがあり、マスタリングの重要性はこれまでの5.1chや7.1ch以上に大きい。Blu-rayではDolby Atmos音声収録のために可逆圧縮であるDolby TrueHDや非可逆圧縮であるDolby Digital Plusを選択することが可能であり、それらのコーデックに用意された様々なパラメータは適切に設定する必要がある。さらに映画用Dolby Atmosもまた多くのスピーカーを設備し音響処理を施した大空間施設での再生を目的としているため、ニアフィールドモニターが基本となるDolby Atmosホーム環境での再生音場確認及びマスタリングは、コンテンツ配給のワークフローになくてはならない。そしてもっとも重要なことは、Dolby Atmosホームのマスターファイルを作成する工程であるということ。このマスターファイルが後工程のエンコード処理における素材ファイルとなる。Dolby Atmos ホームの詳細は、別途本号で特集をしているのでそちらを是非とも参考いただきたい。 04 DAW をミキシングエンジンとする NUAGE のメリット 新たなコンセプトへのチャレンジということもあり、今回導入のシステムについても特色がある。まずはスタジオの全景でも存在感のあるYAMAHA NUAGEだがこの点はプロダクトの可能性にかけた導入、国内の製品であるアドバンテージを活かして、メーカーには多くの要望に前向きに取り組んでもらったという。その結果、特筆すべきPro Tools 2式とのリレーションなどのほか、今回のスタジオのコンセプトとして必須となる機能の数々が実現している。   また、このセレクトではコストメリットも得られる。今や1000万円のコンソールやコントローラーも高価に感じてしまうが、そのような中での選択は非常にコストを重視した。もちろん多くの予算があれば、大好きなSSL等の大型コンソールの選択となるはずだが、何を選択しどんな機能を満たしていくのか?という部分を重視して考え抜かれている。今回の導入で必須機能となったのは7.1chに対応したマルチチャンネルのモニターコントロール。大型コンソールであればもちろん実現可能だが、それに変わるコンソールは何があるのかを考えると選択肢が殆ど無い。そのような現状の中で浮上したのがDAWをミキシングエンジンとして取り扱うYAMAHA NUAGE。この製品であればNuendoが今後も拡張することで対応フォーマットは順次追加され、もちろん現時点で7.1chへの対応は言うまでもない。更にモニター補正として導入されているDME64との連携により実現されている機能も多い。Atmos対応のモニターシステムとの連動を考えた結論がNUAGE導入であった。そのNUAGEエンジンが実際に何を行っているのかというと、Pro Tools2台とMedia Composerで構成されるStellite Linkからの信号を受け、NUAGE I/Oを利用した、ダイレクトモニタリング機能により出力している。もちろんNuendoのユーザーがスタジオを使う場合には、DAWとしても利用可能なシステムアップとなっている。   もう一つ、B-Chainにコストを掛けるという点もコンセプトに基づく。スタジオの音響をしっかりとした設備にという重要なコンセプトを実現するためにB-Chainの充実は必須となる。DAWなどは後からの更新も可能だが、スピーカーへと導かれるB-Chian部分は音響設計と密接に結びつくため後からの変更が難しい部分だ。具体的には補正用に3台のDME64とMini-YGDAIシリーズのMY8-LAKEカードを使用している。ここもYAMAHA製品を使用しNUAGEを含めたトータルでのシステムアップにつながっている部分。今回のシステムでYAMAHA製品が中核となっているのはメーカーとしての対応力にプランニングを進める上での大きな可能性を感じたことが大きなファクター、NUAGEの最新バージョンには染谷氏のアイデアも数多く含まれているとのことだ。 05 Pro Tools 用の HUI コントローラーという 新たな NUAGE 像 これまでの作業の中でも特にゲームの仕事はイン・ザ・ボックスのミックスを要求されることが多く、特に近年は作品のほぼ100%がそのとおりとなっている。以前は、コンソールミックスに対する慣れがあり、イン・ザ・ボックスのミックスが上手く出来ない時期もあったとのこと。その時に試みたのがMackie Controlだけでのミックス。この作業をひたすら行いコンソールでもイン・ザ・ボックスでも優れたミックスを行えることを目指して研鑽を重ねた時期もあったとのこと。C300時代にはHUIモードが登場しコンソール側でも同様の作業を行うことが可能となった。イン・ザ・ボックスでもコンソールミックスでもクライアントのオファーに柔軟に対応できるような準備を行っていた。そのような経緯もあり、NUAGEでのHUIミックスには大きな違和感はなく、スタンドアローンのコンソールではないことのデメリットはほとんど感じないとのことだ。すでにコンソールとコントローラーの境界線が希薄になっているということを感じる一幕である。もちろんラージコンソールの優位性は誰よりも熟知している。マスターセクションのつくり、感触の良さ、豊富なマトリクス、人間工学に則った優れた設計。優れたメリットがあることは認めるが、残念ながらイン・ザ・ボックスでのミックスがクライアントから求められる現場においては、NUAGEのようなHUIミックスなどを考慮するべきだとの意見をいただいた。   発想の転換によりNUAGEの魅力は大きく広がる。Nuendo専用という意識を外して優れたHUIコントローラーとすると、また違った魅力が見えてくる。Pro Toolsをコントロールすることの出来るNuendoという柔軟性に富んだミキシングエンジンを持つコントローラー。そのような捉え方をすればPro Toolsユーザーにとってもメリットが大きい、新しいコントローラーとしてのNUAGE像が見えるのではないか。エンジニアがコントローラーとして求めるのは、ほとんどがフェーダーである。もちろん、プラグインのコントロールやセンドのアサインなど欲を言えば切りが無い。しかし、最も使用するのはどの機能なのかを考えればHUIでも対応ができるという発想に至るのではないだろうか。限られた予算を有効活用するための非常にシンプルな切り分けがここにはある。 06 THX pm3 室内音響に関してはTHX pm3の認証を得ている。従来の日本のTHX pm3スタジオにはインストールされていないシーリングチャンネルやLw,Rw等のAtmosに特徴的なスピーカーの配置に関しても、設計段階からTHX、Dolby、SONAによる詳細なディスカッションが行われており、最終的には3社にとっても妥協のないスピーカーレイアウトがstdio 0(ゼロ)では実現されている。最終的にはそれら全てのスピーカーを含んだモニター調整がTHXのスタッフにより実施されており、優秀な成績でTHX pm3の認証を得ている。特筆すべきは、ベースマネージメント無しで、全チャンネル20Hz〜20kHzの広帯域再生を可能とし、更にTHX pm3の承認を実現しているという点。基本的にはベースマネージメントの使用が前提となるTHX pm3規格をそれ無しで取得できるほど、室内音響的に低域の制御ができているということだ。音楽系のミキサーに敬遠されがちなベースマネージメントが無いということで、是非とも音楽ミックスでもこの部屋を活用してもらいたいとのことだ。筆者もこの部屋で行われた音楽用のDolby Atmosミックスを是非とも聴いてみたいところだ。 ◎染谷氏とサラウンドテクノロジーの歩み   染谷 和孝 氏 有限会社 ビー・ブルー サウンドデザイナー/ミキシングエンジニア   1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年(株)ダイマジックのスタジオ設立に参加。2014年より有限会社 ビー・ブルーに所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2014年9月よりAES日本支部監事を担当。 染谷氏がサラウンドに触れたのは30年以上も前のこと。アナログハイビジョン時代に「銀河の魚」のサウンドデザインとサラウンドミックスを担当したときに遡る。それをきっかけにInterBEEの国際シンポジウムなどにも参加するようになる。そこで元NHK制作技術センター長の沢口氏との大きな出会いもあり、それが全てのスタートになったとのこと。   サラウンドには黎明期から関わりがあるが、一貫してその根底には「サウンドデザイン」という概念があり、その発展の礎となっている。「サウンドデザイン」との出会いは、ProSound誌に掲載されていたSkywalker Soundの記事だとのこと。当時はInterBEEにSkywalker Soundからエンジニアが参加しており、様々なきっかけから徐々に交流が始まり、Skywalker Soundへの訪問など研鑽を積み重ねてはいたが、なかなかサラウンドの部屋を作ることは出来なかった。   次の契機となったのは1999年にロスで行われたSurround 2000というイベント、ここではTHX pm3と出会うことになる。このイベントはまさにSONY PCL の改装を決定する時期に重なっていた、当初はステレオの部屋を作るという方針であったが、このイベントと前後してサラウンドの部屋を作る計画が進行、スタジオのコンセプトを詰めるために自費で2週間サンフランシスコに行き、THX社とSkywalker Soundを見学して回った。そこで体験したサウンドは「音の消え際が聞こえる」と表現されるほどの繊細さ。今まで聞こえなかった音が聞こえるという体験することとなる。   その当時はまだITU-Rなどを始めとする様々なサラウンド再生基準が取り上げられ、その優位性が語られている段階であったが、その中から明確なレギュレーションに守られたTHX pm3選択した。信頼性の高い音響特性を持ったスタジオを構築し、アジア初のTHX pm3スタジオとなった。その後も染谷氏はTHX pm3の認証を得た世界標準の音響特性を持ったスタジオを数多く創り上げている。   Dolby Atmos採用に踏み切った染谷氏のポリシーの中には「真のブルーオーシャンを目指さなければいけない」ということが有る。真のブルーオーシャンを構築するためには、クローズドに全てを秘密にしてはならないと考えているというのも非常に新鮮なコメントとして聞こえた。現代を生き抜くためにはこのスタジオで得た知識・情報を開示し、それを共有する仲間が増える事が最も大切な要素。新しいことを始める為の仲間探しが今まさに始まったところだとコメントを頂いている。もう一つ「マイノリティーからマジョリティーへ」という言葉も頂いた。このスタジオ、そしてDolby Atmosが共に羽ばたくためにはマジョリティーになることは大切なこと。マイノリティーのままではなく、普及も進んで行かなければ意味がなくなってしまう。次に続くスタジオ・エンジニアの存在はなくてはならないもの、エンジニアリングのテクニックに関しても同様に隠すのではなく伝えることで、業界全体が豊かになるのであれば、その方が重要な事だとの考えも伺えた。 インタビューを終えて感じるのは、明確なコンセプトのもと、限られた予算を必要な部分に十分にかけた染谷氏のこだわりと考えが非常にわかりやすくスタジオに存在していたこと。また、最新の機材ソリューションの結晶のようなシステムとなっているが、突飛な存在とはならずに違和感なくそのシステムへ入っていける間口の広さも感じる。Dolby Atmos対応だからといってステレオやモノラルの作業のことを切り捨てずに「ギアチェンジ」出来るというコンセプトがしっかりと息づいているように感じた。染谷氏のコンセプトを受け、東映株式会社に続き国内2例目となるDolby Atmosの室内音響を設計された株式会社ソナ、アジア初となるDolby Atmos ホームシステムを設計した株式会社レアルソニード、そして機材のバージョンアップ等様々なソリューション面でのバックアップを行ったヤマハ株式会社、各社の持つ技術が非常に高いレベルで結実している。今後このスタジオから創りだされる作品に、早く出会いたいと強く感じた取材であった。

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そのワークフローを実現する

効果音をシンセサイズする、Sound Design に新たなるアプローチを。
LE・SOUNDは炎、雨、風といったその効果音をシンセサイズで創り出します。直感的なパラメーターで自由自在にサウンドを変化させ、多様なシチュエーションへリニアに対応。これまで以上にシーンに合わせたSound Design をシンセサイズする。制作ワークフローに新たなアプローチとクオリティをもたらすのがAudioGaming / LE・SOUNDです。

Video Slave 3 Pro / DAWと同期した映像再生ソリューション
Video Slave 3はMIDIタイムコードと同期したシームレスなプレイバック環境を提供します。メジャーなDAW(Pro Tools,Logic Pro X,Cubase,Nuendo,Studio One,etc.)との同期を実現。タイムコードを生成できるDAWであればほとんどのソフトウェアとの同一PC内部での同期が可能です。もちろん物理的なMIDIを使った接続でもEthernet接続でのネットワークMIDIでも接続が可能です。Video Slave 3の同期エンジンは、驚くほど速いロック時間と緊密な同期を保証します。多くの場合、DAWに内蔵されているビデオエンジンを使用するよりも優れています。内蔵のエンジンでオーディオを処理し、Video Slave 3に処理負荷の大きい映像再生を任せることで、DAWはオーディオ処理に集中することが出来るのです。

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