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2022/08/09
専門学校ESPエンタテインメント大阪様 〜アナログ・コンソールはオーディオの基礎基本を体現する〜
以前にも一度、本誌で取り上げさせていただいた専門学校ESPエンタテインメント大阪。前回は2年次に使用する実習室へのAvid S6導入事例であったが、今回は1年次の実習で使われている実習室にて行われたSSL AWS924導入の様子をレポートしたい。
デジタルとアナログ、両方のコンソールでのカリキュラム
専門学校ESPエンタテイメント大阪は、大阪駅の北側、周りには楽器店なども多い御堂筋線 中津駅至近にある。地上11階建ての本館と地上5階建ての1号館を有しており、音楽アーティスト科や声優芸能科、そして今回AWSを導入された音楽芸能スタッフ科が設けられている。その音楽芸能スタッフ科には2つのコースがあり、PA&レコーディング、レコーディング&MAという2つのコースが設置されている。この2つのコースはともに1年次に今回AWS924が導入された録音実習室を使い、楽器を一つ一つレコーディング、オーバーダブし、1年掛けて1つの楽曲を録音するという授業を行っているとのこと。それぞれの楽器の特性、特徴、マイキングなどをしっかりと実践をもって学べるカリキュラムだということだ。
今回導入されたAWS924はAWS900からのリプレイスとなる。ご存知のようにAWS900の後継機がAWS924であり、これまでの実績や学内に積み重ねられたノウハウも継承できる選択となった。この決定にあたっては、福岡校への導入実績があるNEVE Genesys Blackなど他のアナログコンソールも候補には挙がったそうだが、そんな中でも従来を踏襲したと言えるSSL AWS924が選択されたのには理由がある。
ミキシング・コンソールを1から学ばなければならない1年次に、シグナルの流れやプロセスなどが具体的にわかりやすいアナログコンソールで学ぶということは、生徒にとっても、教える側にとってもメリットが大きい。そして大阪校には実習室が2室あり、もう一つの部屋はすでにAvid S6というDAWを中核としたコンソールが導入されている。そこで、複雑なデジタルでのルーティングなどは2年次にもう一つのAvid S6で学ぶこととし、1年次はアナログコンソールでの授業を行うこととする。そう考えると、従来の機種をキャリーオーバーするような選択であることの方がメリットが大きかったということだ。もちろんデジタルとアナログ、両方のコンソールに触れられるということもメリットとなる。
📷 今回新たに導入されたAWS924は特注デスクに収められている。このデスクはこれまでのAWS900時代からの流用でありながらも、新たに仕上げたかのようなピッタリの収まりである。
写真で見てとれるように今回の更新でリプレイスされたのはSSL AWS924の本体のみとなり、それ以外は更新されていないのだが、引き継がれたデスクはまるでAWS924専用に用意されたかのようにフィットしている。AWS900、AWS924ともにカタログ上のサイズは同じだが、以前のAWS900よりもピッタリとデスク内に収まったと、驚かれていた。ドラムのマルチマイクでの収録にも対応する24chのコンソールは、授業内容にもまさにジャストフィットしているということだ。1年次の実習ということもあってなかなかそこまで使うことはないようだが、AWS924に更新したことでミキシング・コンソール側でのオートメーションも使えるようになった。DAW内でのオートメーションが当たり前だからこそ、このような機能が使えるアナログコンソールに触れる機会は価値があることではないだろうか。
📷 デスクの左には、マイクプリTUBE-TECH MP1A、VINTECH AUDIO DUAL72、そしてオーディオパッチが収まっている。右側にはDBX 160A、Universal Audio 1176LN、Drawmer 1960、NEVE 33609が収まる。専門学校らしく定番と呼ばれる機器が取り揃えられている形だ。
新たなるニューノーマルな傾向?
コロナ禍で実施にも配慮が必要となっている実習授業についてだが、コンサート系コースなどは実際のコンサート・イベントにキャンセルが続いて難しい局面があったものの、音楽芸能スタッフ科ではオンラインでできる授業はそちらにシフトし、実習でしか教えることができない内容のものはこの2年間も学校内で行ったということだ。なお、この部屋を使う2つのコース、PA&レコーディング、レコーディング&MAは、例年であればPA&レコーディングコースのほうが入学者数が多いそうだが、今年の新入生から初めて入学者数が逆転し、MAコースの人数が多くなったということ。これは入学してくる生徒がコンサート、ライブを体験することがほとんどなかったからではないか?ということだ。実際にコンサートに行き、そのスタッフに憧れる。そういった体験がなかなか叶わない一方で、MA映像付きの音響を画面越しに体験をすることでMAに興味を持つ。これも新たなるニューノーマルな傾向なのか興味深いところだ。
また、YouTubeなど配信のサウンド、音響効果に興味を持って入学していくる生徒は年々増加しているという。ここでしっかりとした教育を受けた若者たちが、新たなステージでエンタテイメントの形を作っていく。MAといえばテレビ業界という考え方は、もはやステレオタイプなのかもしれない。そんな未来を感じさせられた。
📷 以前に本誌でも取り上げた 2 年次の実習で使われている Avid S6 を導入したスタジオ。現場での導入実績の高いAvid S6を使っての実習は即戦力育成に直結する。フルアナログの実習室と合わせて、幅広いシステム構成のスタジオでの実習を行うことができる環境が整えられている。
まさに順当とも言える後継機種への更新。改めてあえて変えないことの意味、アナログの大切さ、そういったことを考えさせられた。カルチャー、エンターテイメントは日進月歩で進化を続けている。しかし学びの環境の中での一歩目には、オーディオの基礎基本を体現するアナログ・コンソールがある。やはりこれは大きな価値のあることなのではないだろうか。
専門学校ESPエンタテイメント大阪
音楽芸能スタッフ科 松井 英己先生
*ProceedMagazine2022号より転載
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2021/07/14
洗足学園音楽大学様 / ~作編曲と録音の両分野をシームレスに学ぶハイブリッド環境~
クラシック系、ポピュラー系と実に18もの幅広いコースを持ち業界各所へ卒業生を輩出している洗足学園音楽大学。その中で音楽音響デザインコースの一角である、B305教室、B306教室、B307教室、B308教室の4部屋についてシステムの更新がなされた。作編曲と録音の両分野をシームレスに学ぶ環境を整えることになった今回の更新ではAvid S6が採用され、またその横にはTrident 78が据えられている。アナログ・デジタルのハイブリッドとなった洗足学園音楽大学の最新システムをご紹介したい。
日本国内で一番学生数が多い音楽大学
神奈川県川崎市高津区にある洗足学園音楽大学は1967年に設立された音楽大学で、音楽の基盤となるクラシック系からポピュラー系まで実に多彩な18のコースを有している。大学院まで含めると約2300人の学生が在学しており、現在日本国内で一番学生数が多い音楽大学である。
音楽大学の基盤となるクラシック音楽系のコースはもちろんだが、新しい時代の音楽表現を模索するポピュラー音楽系のコースとして、音楽・音響デザイン、ロック& ポップス、ミュージカル、ジャズコースなど多彩なコースがあり、特に近年は声優アニメソングやバレエ、ダンス、そして舞台スタッフを育成する音楽環境創造コースなど、音楽の周辺分野まで学べるコースも設立されており、近年ますます学生が増え続けているのも特徴である。
各分野には著名な教授陣がおり、音楽制作の分野ではゲーム音楽作曲家の植松伸夫氏、伊藤賢治氏、劇伴音楽やアニソン作曲家の山下康介氏、渡辺俊幸氏、神前暁氏、さらに録音分野の教授として深田晃氏や伊藤圭一氏などが教鞭をとっている。卒業後は国内の主要オーケストラや声楽家、ミュージカル俳優、声優、劇伴作曲家やゲーム会社、大手音楽スタジオエンジニアなどへ卒業生を多数輩出している。
作編曲と録音の両分野をシームレスに
現在、洗足学園では3つのスタジオを含む複数の音響設備を備えた教室が多数稼働している。メインスタジオではオーケストラや吹奏楽など大編成のレコーディングが可能で、ピアノやドラムなどをアイソレート可能なスモールブースも完備されている。これをはじめとする3つのスタジオではSSLのアナログコンソールが導入されており、音楽・音響デザインコースの生徒だけではなく、複数のコースの生徒がレコーディングなどの授業やレッスンで使用している。また、その他にも音響設備が備えられている教室の中には、Auro-3D 13.1chシステムを設置したイマーシブオーディオ用の教室が2つあり、Pro Tools UltimateとFlux:: SPAT Revolutionが導入され、電子音響音楽の制作やゲーム音響のサウンドデザインの授業が行われている。
📷学内にある大編成レコーディングも可能なメインスタジオ、ブースは天井高を高く取られている。
今回教室の改修が行われたのは、洗足学園音楽大学(以下、洗足学園)の音楽音響デザインコースの一角である、B305教室、B306教室、B307教室、B308教室の4部屋だ。近年、音楽・音響デザインコースを専攻する学生が増えており、既存のスタジオに加えてマルチブース完備のスタジオ増設が急務となったそうだ。主科で作編曲を学ぶクリエイター系の学生は音源制作をPC内でほぼ完結しているケースが多いが、さらに録音のスキルも身につけることによってより質の高い音源を制作できるようになる。このように作編曲と録音の両分野をシームレスに学ぶことができる環境を整えることが今回のテーマの一つとなった。そして、今回の改修でのもう一つのテーマは、アナログとデジタルが融合されたハイブリッドシステムを形成すること。これは授業内容なども考慮された大学ならではのシステム設計だろう。
📷今回改修が行われた4部屋の中でも、Avid S6を中心としたコントロールルームの役割を持つB305教室。
Avid S6とTrident 78によるハイブリッド
新たに導入されたPro Tools | MTRXは既存のHD I/Oと合わせてAD/DA 48chの入出力が可能。
今回改修された4教室は大きさがそれぞれ異なり、合わせて使用することで1つのスタジオとして稼働できるよう計画された。一番広いB305教室は、Avid S6を中心としたコントロールルームの役割を持つ。既存のスタジオが主にアナログ機器を中心とした設計なのに対し、今回改修された4教室ではデジタル中心のシステムを組むように考慮され、B305教室の既存Pro Tools HDXシステムには、Pro Tools | MTRXが追加導入された。これらのAvid S6システムは、録音はもちろんMAでも数多く導入実績があり、さらにDolby Atmosなどのイマーシブ・オーディオへの拡張性も申し分ない。授業においてPro Toolsを使用することが前提の教室で、これらの点を考慮した結果、Avid S6以外の選択肢はなかったそうだ。
S6の構成は5Knob・24Faderで、サラウンドミックスに対応できるようにJoystick Moduleも追加されている。もともとこちらの教室ではサラウンドシステムを導入しており、以前はJL CooperのSurround Pannerが使用されていた。なお、Joystick Moduleはファブリックの統一感のために専用スペースに納められている。Pro Tools | MTRXはADカード24ch(うち8chはMic Pre付き)、DAカード24chとSPQカードを増設。さらに既存のHD I/O 2台と組み合わせて、Pro ToolsとしてはトータルでAD/DA 48chの入出力可能なシステムへと強化された。HAはPro Tools | MTRXに増設された8chのほか、SSLやRME、FocusriteなどのMic Preが30ch以上用意されており、好きなMic Preを選択可能のほか、最大48chのマルチチャンネル録音も可能とした。
📷アナログパッチベイとHA類。SSL、RME、FocusriteなどのMic Preが30ch以上用意されている。
今回の改修で特徴となったのが、Avid S6横に設置されたTrident 78。デジタルとアナログのハイブリットシステムを構築しているわけだが、授業ではスタジオ録音を初めて経験する1年生から上級生まで様々な学生が使用するため、デジタル機器だけではなくアナログ機器についての学習も行えるようにハイブリッドシステムが採用されたということだ。Trident 78をHAやサミング・ミキサーとしても使用できるよう、Monitor OutはPro Tools | MTRXへ、Direct OutとGroup OutはHD I/Oへとそれぞれパッチベイ経由で接続されている。特にTrident 78のMonitor Outがパッチベイ経由なのは、デジタル中心のシステムではあるが、授業内容によってはTridentのみでも授業が行えるように、あえてAvid S6とPro Tools | MTRXを経由せずにも使用できるように設計された。
📷B305教室にはAvid S6 5Knob-24faderとTrident 78が並ぶ、アナログ機器の学習も行えるハイブリッドなシステムだ。Trident 78の下にはAV AmpとBlu-rayプレイヤー、Apple TVが収められている。
また、Pro Tools | MTRXはモニターコントロールとしても設定された。AD/DAのチャンネル数が豊富に拡張されているが、モニター系統はいたってシンプルに構成されており、ソースはPro Tools、TridentとAV Ampの3つに絞られたが、5.1chサラウンドで構成されている。AV AmpはBlu-rayプレイヤーのほか、Apple TVとHDMI外部入力が用意されており、持ち込みPCなど映像だけではなく音声もメインスピーカーからサラウンドで視聴が可能だ。民生機系の機材をAV Ampにまとめることで、音声のレベル差なども解消させている。
S6マスターセクションの隣に用意された専用スペースにはJoystick Moduleが収められている。
ソース切り替えに連動させるため、Pro Tools | MTRXとAES/EBU接続されたClarity M。
ワイヤレスで揃えられたマウスとキーボードは授業形態の自由度を高めるために、Avid S6とセパレートされた。
独立して使用可能なB308教室
マルチブースのなかで一番広いB308教室にはドラムセットが常設され、マイクの種類や位置など集中的にマイキングに関する授業やレッスンができるよう考慮された。これらの回線は壁面パネル経由でB305教室での録音を可能にしたほか、B308教室に設置されているPro Toolsシステムでも録音可能である。
こちらの独立したPro ToolsシステムではインターフェイスにPro Tools | Carbonが採用され、こちらでもPro Toolsを中心とした授業が行えるよう設計された。こちらの教室は単独で授業を行うことが多く、作曲系のレッスンで使用されることも多いため、Pro Tools以外にもLogicがインストールされている。こういったHost DAWが複数ある場合、それぞれのアプリケーションで同一インターフェイスを使用することが想定される。従来のインターフェイスであれば、それぞれのアプリケーションを同時に起動することは難しいが、Pro Tools | CarbonのAVB接続ではPro Toolsと他アプリケーションで同時にI/Oを共有できる。AVBのストリームをPro Tools専用の帯域とCore Audioとして使用可能な帯域とで分けることにより、Pro Toolsと他DAWが同時起動できる仕組みは、こちらの教室では非常に有効な機能だ。
📷B308教室の独立したPro Tools システムはPro Tools | Carbonをインターフェイスにし、AVB接続による他DAWと同時起動できる仕組みを活かした授業が行われている。また、こちらのClarity MはUSB接続となっている。
また、Pro Tools | Carbonの特長でもあるハイブリッド・エンジンにより、DSPエンジンの恩恵を受けることができるため、DSPプラグインを使用したり、ローレイテンシーでレコーディングをする、といった作業も可能だ。音質についても講師陣からの評価が非常に高く、作編曲と録音の両分野をシームレスに学ぶという点でも最適なインターフェイスである。システムの中心がPro Tools | Carbonではあるが、こちらの教室でも様々な授業が行われるため、B305教室と同様にHDMI外部入力にも対応したシステムが構築されている。こちらはAvid S6やPro Tools | MTRXのようなシステムはないため、モニターシステムはSPL MTCが導入されている。
4教室を連結、1つのスタジオに
今回の改修において最大の特徴である教室間を連携したシステムは、録音ができるマルチブースを完備するためでもあるが、昨今のコロナ対策として密集を避けて録音授業やレッスンを実施できるようにする目的もある。各教室は一般の録音スタジオのようにガラス窓などは設けられていないが、その代わりに各教室壁面に用意されたパネルには音声トランク回線のほか映像回線も用意されており、全てがB305教室とB308教室へ接続することができる。
📷4分割表示されたモニタディスプレイ。画面の上部には小型カメラが設置されている。
B305教室の映像系ラック。Smart Videohubでソースアサインを可能にしている。
4部屋に用意されたテレビモニターシステムは、モニタディスプレイと上部に設置された監視カメラ用の小型カメラから構成されている。B305教室では、各教室のカメラ回線がBlackmagic Design Smart Videohub Clean Switch 12x12に接続されており、各部屋への分配を可能にしている。さらに組み込まれたMulti View 4で4部屋のカメラ映像をまとめて1画面で表示し、各教室同士でコミュニケーションを可能にした。それだけではなく、分散授業の際にはB305教室の模様を全画面でディスプレイに表示し、B305教室では各部屋の学生の様子をモニタリングしたりと、授業内容によって自由にカスタマイズ可能である。
もちろんCUE Boxも各部屋に配置されているが、授業という形態を取るにあたり受講者全員がヘッドホンモニタリングするということは難しい。そのため、CUEシステムの1、2chをSDIに変換してモニタディスプレイの回線にエンベデッドし、各モニタディスプレイに分配、ディスプレイの音量ボリュームを上げることで、ヘッドホンをしていない受講者もCUE回線を聴くことができるよう設計された。こういった活用方法は一般の音楽スタジオでは見られない設計で、大学の教室ならではの特徴である。
ジャンルを越えていく教室の活用法
実際にAvid S6を使用して、まずはじめにPro Tools | MTRXの音質の良さが際立ったという。音質に定評のあるPro Tools | MTRXは音楽大学の講師陣からも絶賛だ。さらに、Avid |S6はレイアウトモードが大変便利だという。24ch仕様でフェーダー数に限りがあるため、レイアウトをカスタマイズできる機能は操作性が良く、柔軟にレイアウトを組むことができて再現性も高い。レイアウトデータがセッションに保存されるところも特徴で管理がしやすいのも特徴だ。視認性の高さという点では、ディスプレイモジュールに波形が表示され、リアルタイムに縦にスクロール表示されるのも視覚的に発音タイミングを掴みやすいので、MAなどで活用できそうだという。
実際にこちらの教室で行われる授業は、録音系の授業やレッスンでは実習が中心となり、学生作品や他コースからの依頼などで様々なジャンル、編成でのレコーディングやトラックダウンをS6で学び、またTrident 78、SSL Logic Alpha、RME Octamic、MTRXなどの様々なマイクプリの比較や、アナログとデジタルの音質の聴き比べなども行う。今後はMAやゲーム音響制作のレッスンでも使用予定だそうで、今回導入したJoystick Moduleもぜひ活用していきたいと語る。ほかにも、ジャンルの枠にとらわれないコース間のコラボレーション企画や学生の自主企画が多く執り行われており、2021年3月には、声優アニメソングコース、ダンスコース、音楽・音響デザインコース、音楽環境創造コースのコラボレーションによる、2.5次元ミュージカルが上映された。このようにユニークな企画が多く開催されているのも、学生の自主性を重んじる洗足学園ならではである。
また、コロナ禍により全面的な遠隔授業やレッスン室にパーティションを設置するなど、万全の感染対策を施した上で、いち早く対面でのレッスンを実現したことや、年間200回以上も上演されている演奏会では、入場者数の制限や無観客の配信イベントとして開催するなど、学生の学びを止めることなく、実践を積み重ねることで専門性を磨き、能力や技術の幅を広げている。
今後、このS6システムを活用して学生作品のコンペを実施し、優秀作品をこのスタジオで制作することを検討しているという。音楽大学のリソースを活かして、演奏系コースとのレコーディングプロジェクトを進めたり、こちらの教室を中核にした学内の遠隔レコーディングネットワークをさらに充実させる計画もある。アフターコロナでどの音楽大学も学びのスタイルを模索している中ではあるが、このように洗足学園ならではの制作環境を実現し、学びの場を提供し続けていくのではないだろうか。
洗足学園音楽大学 音楽・音響デザインコースで教鞭をとる各氏。前列左から、伊藤 圭一氏、森 威功氏、山下 康介氏、林 洋子氏。また、後列はスタジオ改修に携わった株式会社楽器音響 日下部 紀臣氏(右)、ROCK ON PRO 赤尾真由美(左)
*ProceedMagazine2021号より転載
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2019/01/31
専門学校ESPエンタテインメント福岡 様 / AMS NEVE Genesysで実現する充実のカリキュラム
多くの人材を業界へ輩出するESPミュージックアカデミーが福岡に新たな校舎を新設、レコーディング課の実習室として素晴らしいスタジオが作られた。リズムセクション収録の可能な広いブースと、授業を前提に広く作られたコントロールルーム。そして、そこに導入されたAMS NEVEGenesys。細かい部分までこだわりを持って設計されたそのスタジオをレポートしたい。
1:AMS NEVE Genesysという合理的なセレクト
まずは導入されたコンソールの話から始めるが、実は東京・大阪・福岡の各校舎ではそれぞれ異なった機材が導入されている。東京校は2 部屋の実習室があるが、それぞれSSL 4000G+ とSSL 9000が導入されており両方とも大型のアナログコンソールとなる。大阪校も2 部屋の実習室、こちらはSSL AWS948とAVID S6で、アナログコンソールとPro Toolsコントローラーという組み合わせになる。そして今回この福岡校に導入されたのはAMS NEVE Genesysである。ここから読み取れるのは、東京校では最初にアナログコンソールでシグナルフローなどの概念をしっかりと学び、次のステップへというカリキュラム。大阪校では1年目にSSL AWSでアナログコンソールでの実習、2年目はAVID S6で最新環境を体験するという2段構えの想定、福岡校は1 部屋で両方のコンセプトを兼ね備えた実習を行えるAMS NEVE Genesys、と各校とも実に合理的なセレクトが行われていることがわかる。
今回は新校舎ということもありプランニングには1年以上の時間がかけられているのだが、コンソールの選定には多くの候補が検討されたということだ。その中で最後まで残ったのが、今回導入されたAMS NEVE GenesysとAVID S6。学生には現場に出た際に学校で学んだ機材と同じもので作業を行ってほしいという意見もあり、今後のスタンダードとなりうるAVID S6は有力な候補であったが、やはり授業を行うことを前提に考えるとアナログコンソールであるということは外せないという判断にたどり着いたとのこと。ミキシングを教える際に非常に重要なシグナルフロー。デジタルだと柔軟性が高いがゆえにどうしても具体的になっていかないが、アナログコンソールであれば一つ一つのツマミを順に追いかけることで信号がどのような順番で処理が行われているのかがわかる。これは実習を行う上で非常に重要なポイントとして考えているということだ。
今回導入されたAMS NEVE Genesysはチャンネルストリップが16ch実装されたモデル。リズムセクションの収録を考えると16chというのは必須であり、NEVE 製のプリが16ch用意されているこの製品の魅力の一つでもある。残りのフェーダーはDAWコントロールとして働き、インラインコンソールのような使い方も可能。これもマルチトラックレコーディングのフローを教える際には非常に重要なポイントとなる。DAWへ信号を送り、それが戻ってくる(実際には、DAW内部で最終SUMはされるが)という感覚はこのクラスの製品でないと直感的に理解することは難しいのではないだろうか。
2:コントロールされた音響設計と200Vでの駆動
レコーダーとしてはAVID Pro Tools HDXが導入され、HD I/Oが2台接続、AD/DAは24ch が用意される。ここに関しては基本を知るという教育の現場であるためベーシックな構成が選択された。Pro Toolsのオペレート用のデスクは、Erogotronのカートが導入されている。このカートは医療現場用に設計されているために非常に作りもよく、耐久性も高い製品。授業の形態に応じてどこでも操作のできる環境が作り上げられている。ブースはリズムセクションが入れる十分な広さを持った空間で、アンプ類、ドラムセットなども用意された贅沢な空間となっている。楽器類もエントリークラスのものではなく、しっかりとした定番の機種が揃っているあたりにこだわりが感じられる。また、ブースとコントロールルームをつなぐ前室にもコネクターパネルが用意され、ボーカルブースや、アンプブースとしても使えるように工夫が行われている。
コントロールルーム、ブースなどは日本音響エンジニアリングによる音響設計で、しっかりとした遮音とコントロールされた響きにより充実した録音実習が行える空間となっている。ドラムが設置されている部分には、木のストライプやレンガ風塗り壁にしデッドになり過ぎず、自然な響きが得られるようになっていたり、コントロールルームとの間は大きな窓が開き、授業の際に十分な視界を確保することができる、といったように少し現場を見るだけでも考え抜かれた設計であることがわかる。さらに、ここでは音質にこだわり200Vでの駆動を行っているということだ。学校であるということを考えると必要十分以上な設計かもしれないが、本当に良い音を実習の段階から知ることができるのは、卒業して現場に出たときに必ず武器となるはずである。良い音を知らなければ、良い音は作れないのだから。
福岡の地に誕生した充実のスタジオ。ここから巣立つ学生の皆さんがどのような活躍をしていくのか非常に楽しみである。
右: 教務部 音楽アーティスト科 吉田雅史氏
中: サウンドクリエイターコース講師 大崎隼人氏
左: ROCK ON PRO 岡田詞郎
*ProceedMagazine2018-2019号より転載
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2019/01/09
京都造形芸術大学 様 / キャラクターの成立を学ぶMA 実習環境
京都市街の中でも屈指の観光地である東山の北、銀閣寺の近くにキャンパスを構える京都造形芸術大学。東山三十六峰の一つ、瓜生山の裾野に白川通りから斜面に校舎が立ち並んでいるのが特徴的。美術大学の中でも特徴的な学科が揃っており、マンガ学科、空間演出デザイン学科、文芸表現学科、こども芸術学科、歴史遺産学科など独自の学科が並ぶ。そのなかで今回AVID S6 を導入いただいたのはキャラクターデザイン学科である。どのようにAVID S6 そして、AVID Pro Tools が講義の中で活用されているのか、そのような視点も含めご紹介したい。
1:水平設置されたAVID S6
今回導入いただいたAVID S6 は24 フェーダーのモデル。それまで活躍していたAVID ICON D-Control 16 フェーダーモデルからのリプレイスとなる。そのリプレイスに伴い、AVID HD I/O からAVID MTRX への更新も同時に行われている。通常のICON からのリプレイスでは、それまで使用していたAVID X-MON(モニターコントロールユニット)はそのまま継続されるケースが多いのだが、今回は最新の設備へと積極的に更新を行っていただいた。
音質の向上、そしてモニターコントロール部分におけるAVID S6 との統合と、次世代の制作環境を見据えたシステムアップとなっている。同時に映像の再生をそれまでのVideo Satellite システムから、Video Slave へと変更をしている。このあとに活用されている実習などをご紹介するが、シンプルな作業ながら様々なファイルの受け入れが必要となっているため、より柔軟性の高いVideo Slave へと変更がなされている。
システムとしては、非常にシンプルにPro Tools HDX システムにAudio I/O としてAVID MTRX が用意された構成。そこにAVID S6 が組み合わされている。ただし、それを設置する机は特注のデスクが用意され、通常では奥に向かって高くなる傾斜のついたS6 の盤面が水平になるように工夫がなされている。AVID S6 のシャーシがきれいに収まるようにかなり工夫が行われたデスクである。これにより、非常にスッキリとした形状が実現できている。もともとサイズのコンパクトなAVID S6 があたかも机にビルトインされているように見えるなかなか特徴的な仕様となっている。
2:キャラクターに生命を宿すMA 実習
ブース等の内装に関しての更新は行われていないが、奥に広い4 名程度のアフレコが行える広さを持った空間が用意されているのが特徴となる。これは、このキャラクターデザイン学科の実習には無くてはならない広さであり、実習の内容と密接な関わりを持ったものである。キャラクターデザイン学科は、その名の通りアニメーションなどのキャラクターを生み出すことを学ぶ学科である。描き出されたキャラクターは、アイコンとしての存在は確立されるものだが、動画でキャラクターを活かすとなるとボイスが必須となる。声を吹き込むことで初めてキャラクターに生命が注ぎ込まれると言っても過言ではない。
そのため、キャラクターに対してボイスを吹き込む、動画(アニメーションが中心)に対して音声(ボイスだけではなく音楽、効果音なども含め)を加えるMA 作業を行うことになる。そのような実習を行うための空間としてこの教室が存在している。高学年時の選択制の授業のための実習室ということだが、音と映像のコラボレーションの重要性、そしてそれを体感することでの相乗効果など様々なメリットを得るための実践的な授業が行われている。もちろん、卒業制作などの制作物の仕上げとして音声を加えるなど、授業を選択していない学生の作品制作にも活用されているということだ。
ご承知のように、アニメーションは映像が出来上がった時点では、一切の音のない視覚だけの世界である。そこに生命を吹き込み、動きを生み出すのは音響の仕事となる。試しに初めて見るアニメを無音で見てみてほしい。過去に見たことがあるアニメだと、キャラクターの声を覚えてしまっているので向いていない、ドラえもんの映像を見てその声を思い出せない方はいないだろう。はじめてのキャラクターに出会ったときにどのような声でしゃべるのか?これは、キャラクターの設定として非常に重要な要素である。同じ絵柄であったとしても、声色一つで全く別のキャラクターになってしまうからだ。
つまり、絵を書くだけではなくどのようにキャラクターが成立していくのか?そういった部分にまで踏み込んで学ぶこと、それが大学のキャラクターデザイン学科としての教育であり、しかもそれが最新の機材を活用して行われている。ちなみに京都造形芸術大学には、この設備以外にも映画学科が持つ映画用の音声制作設備があるということだ。
アニメーション関係では、卒業生に幾原邦彦(セーラームーンR、少女革命ウテナなど)、山田尚子(けいおん!、聲の形)といった素晴らしい才能が揃う。これからも日本のアニメーションを牽引する逸材がこの現場から登場していくことになるだろう。
京都造形芸術大学 村上聡先生、田口雅敏先生
*ProceedMagazine2018-2019号より転載
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2017/05/23
専門学校 ESPエンタテインメント 大阪様 / 最高峰の機材で確実な力となる貴重な体験を得る
大阪梅田にほど近い、中津駅そばに専門学校ESPエンタテインメント大阪はある。大阪駅からも徒歩で楽器店の並ぶ通りを抜けると学校がある、そんな立地だ。みなさんもご存知のようにESPは日本を代表するギターメーカーの一つであり、個性あるクラフトモデルを多くリリースしているメーカー。学校の開設は古く30年以上の歴史を誇る。当初は、ギター制作学院としてスタート。その後、東京・高田馬場に専門学校ESPミュージカルアカデミーを開校し、ミュージシャンの育成をスタートする。ミュージシャンだけではなく、パフォーマー、コンサートスタッフ、アーティストスタッフ、ピアノ調律、レコーディングと分野を広げ、今では芸能全般をフォローする総合専門学校となっている。
◎「現場主義」を実現する充実した環境
今回取材を行なった大阪校の開校は13年前、音楽アーティストの育成、音響・コンサートスタッフの育成、声優、芸能と幅広い学科を開設し業界へ人材を送り出している。学校の特色としては「現場主義」という言葉が真っ先に飛び出した。講師は、現役の現場で作業をおこなうエンジニアが多く、即戦力を育成するためのプログラムが組まれているということだ。コンサートスタッフ・コースなどは、学生時代から、実際の現場での実習を受けることが出来ることが大きな魅力になっている。これは、卒業後の採用にもシナジーを生み、実際の現場での動きを見聞きし、共に仕事をしたことがある学生の中から採用を行うことが出来る、ということにもつながっている。実際の進路を聞いてみると、7~8割の学生が就職しているということ。門戸が狭いと思われがちな、音楽業界へこれだけの就職率を持つということは素晴らしいことではないだろうか。
もちろん、学内のイベントも運営は学生が主体。講師がサポートに回り、実践的な実習を中心に授業が行われているということ。今回取材させていただいた、レコーディングスタジオも、学生の演奏を学生がレコーディングするという、両者にとって貴重な経験となるカリキュラムとなっている。MAの授業もあり、そこでは声優科の学生を録音するという形を取っているということだ。学内のリソースで様々な現場の再現ができ、最新の機材と、現場同様の環境で実習が出来るというのは学生にとって理想的な環境であると言えるだろう。
このレコーディング・スタジオを利用する学生は1年時に隣の校舎に設置されたSSL AWS900のスタジオで基礎を学ぶ。2年時にこのAVID S6の設置された環境で、応用となるエンジニアリングを学ぶということだ。やはり、レコーディングの基本、シグナルルーティングなどを、学ぶにはアナログコンソールは最適である。これは、デジタル全盛の現代においても変わらないことだ。やはり、全てが、物理的につながり1対1の関係であるアナログは全ての基本であるということだろう。2年時にはAVID S6というサーフェースに環境を変え、実践的なDAWの使いこなしを学ぶこととなる。豊富に用意されたアナログアウトボードも、その思想の現れであり、レコーディング、マイキングの更に踏み込んだパートとして、機器、メーカーによるサウンドの違い、そのセレクトといったところを体験、体感できるように準備されているということだ。
アウトボードラックには、マイクプリだけでもSSL、API、Vintech、Manleyとハイエンドの製品が並ぶ。コンプはUniversal Audio 1176とTUBETECH CL-1Bという定番の機種。リバーブもLexiconとTCという2台があり、その違いを確認することが出来るようになっている。なんとも贅沢な環境である。ハイエンドの製品のサウンドに触れ、その違いを体感することは、その後現場に出て確実に経験の下地として蓄積されていくことであろう。
◎将来のスタンダードを踏まえた機材選定
それでは、ここから今回更新されたAVID S6に関して見ていきたい。この教室には元々Digidesign D-Control 32 Faderが設置されていた。10年以上稼働したこのサーフェースの更新にあたり、SSLなど他にも候補は出たものの、やはりその後継であるAVID S6が採用されたということだ。SSL AWS900を1年時に使い2年時にステップアップして、別の環境を用意するという観点からも、即戦力育成という学校の方針から、今後導入が進むと考えられるこの製品を選択するということに大きな迷いはなかったということだ。
AVID S6の構成は24 Fader - 9 Knobの仕様。フェーダー数が8本減ってはいるが、AVID S6の持つ柔軟なレイアウト機能や、スピル機能を考えるとこのサイズでも十分という結論になったということだ。ノブに関しては、各種パラメーターを学生が俯瞰出来る環境のほうがわかりやすいという目線からこちらの仕様を選択したということ。導入直後ということもあり、講師の方々もどのようにこのAVID S6を教えていくのか?まさに検討が始まっているということだ。様々な使い方が可能なAVID S6だが、どのように使いこなしていくのか?それぞれの個性が出る部分だ。ユーザのアイディアに柔軟に対応できるAVID S6の真価を引き出してほしいと願うところである。
AVID S6に接続されるPro Toolsも同時に更新され、Pro Tools HDXの環境へと更新が行われている。InterfaceにはAVID HD I/O 8×8×8が3台用意され、モニターコントローラーとしてAVID XMONが、またMic PreとしてAVID Preが採用されている。XMONとPreは、これまでのD-Control環境でも使用していた製品ということで、AVID S6のメーカー純正環境として採用されている。特にPreはAVID S6のサーフェースから直接のリモートコントロールが可能な製品であり、コンソール感覚でのチャンネルごとのゲイン設定などのリモートコントロールが可能となっている。
プラグイン関係の更新としては、UADが追加で導入された。現場での採用率が高くなっているUAD。レコーディングでの掛け録りなど、色々と試してみたいと積極的に新しい技術を教えていこうという意欲の感じられる部分である。なかなかプラスアルファの部分にまで踏み込んで学べる環境はない中で、このような積極的な姿勢を持つ学校の存在は、非常に心強く感じた。
この教室では、MAの実習も行われている。その為、Videoの再生環境が整えられている。Pro ToolsのVideo Trackからの出力はもちろんだが、TImecodeのオーバーレイ表示できるVideo Slave 3 Proが追加で導入された。国内に導入されたばかりのソリューションであるVideo Slave 3 Proは講師陣にも非常に好評。タイムコード表示の柔軟性、ADRの支援機能などこれまでは得られなかった、機能に好印象を持っていただいている。Pro ToolsのVideo Trackでの基本的な使い方と共に、ESPを出た学生はもう一つの環境を知った人材として今後羽ばたいていくことだろう。
現場での採用が加速度的に進む、AVID S6。その環境を学生時代から知り、学ぶことの出来る環境は増え始めている。DAWにかじりついての作業だけではなく、豊富なアナログ機器に触れ、最高峰のコントロール・サーフェスでの作業を知る。現場に出て、確実に力となる貴重な体験を得ることの出来る環境が揃っていると感じる。もう一度学生に戻り、ゆっくりと機材と向かい合いたい。そんなことを感じる取材であった。
専門学校ESPエンタテインメント 教務部主任 サウンドクリエイター科 学科長 今村典也 氏
今回更新のご協力を頂いたESPエンタテイメント大阪のスタッフの皆様
*ProceedMagazine2017Spring号より転載
Education
2015/12/25
ROCK ON PRO導入事例/学校法人 片柳学園 日本工学院八王子専門学校 ミュージックカレッジ
学校法人 片柳学園「日本工学院八王子専門学校」のミュージックカレッジ・レコーディングクリエイター学科に専門学校として国内初となるAVID S6を導入させていただいた。その導入の経緯、選定の決め手などを同学科教員 藤義隆先生にお話を伺った。
日本工学院のポリシー『人間力』
日本工学院は1947年に、東京・蒲田に開校した創美学園がそのルーツとなっている。当初は洋裁と絵画の学校としてスタート、その後、織物科、英語科、人形科等を次々と開設。1953年にテレビ放送の開始をきっかけとして「日本テレビ技術学校」を設立。放送関連学科の開設を行ない、教育環境、設備の充実に努め時代の先端を行く人材を育てている。1964年の東京オリンピックではNHKの技術補助員として30名の学生を実況中継に参加させている。1976年に校名を現在の「日本工学院専門学校」に改める。この時点ですでに学生数は7500名という規模となっている。今回導入をした八王子キャンパスは1986年の開設、翌1987年に「日本工学院八王子専門学校」が開校しており、つくば万博への協力出展、米国トップの工学系大学となるマサチューセッツ工科大学(MIT)との交流協定、最先端のマルチメディア研究を行う南カリフォルニア大学(USC)との提携等、日本有数の教育機関としてその規模を拡大している。
専門学校でありながらいち早く1987年より3年制のカリキュラムも実施し、より高いレベルでの人材の育成に務めている。専門学校として、即戦力の人材育成が大きな役割ということはもちろんであるが、『人間力』の教育に実は一番力を入れているとお話を伺った。スキル、技術を通常の2年間で教育することは実際の現場レベルを考えると限界がある。そうなると、社会に出て、社会人として立派に仕事をこなすことのできる『人間力』こそが本当に一番大切なスキルであり、教育ポリシーにおける重要な要素としている。国内随一と言える設備を備え、現場からの講師を多く迎えて実践的な講義を行なっている学校が、しっかりと自身を見つめた『人間力』を大切に捉えていることは心強く感じられる。
なぜAVID S6の導入に踏み切ったのか?
日本工学院八王子キャンパスにはスタジオが4室ある。その中の3室は、音楽録音に対応したスタジオを持つ大規模な設備。これまでは、SSL 4000Eを設置したスタジオが2室、もう1室はSSL Axiom MTを設置したスタジオ。そして少し規模の小さいラジオ実習向けのスタジオには、YAMAHA O2Rが導入されている。今回の更新では、2台あったSSL 4000Eの片方、Studio Cに設置されていたもののリプレイスとなっている。
これにより、3室の大規模なスタジオは、コンソールの基礎となるインラインタイプのアナログミキサーSSL 4000Eと、デジタルコンソールであるAxiom MT、そして最新のDAWをコアとしたAVID S6というラインナップとなる。4000Eでコンソールのシグナルフローを学び、ミキサーの基礎、動作原理を学び、Axiomでデジタルミキサーならではの部分を吸収。マトリクスなど複雑なシグナルフローを学ぶ。そして、AVID S6ではDAWをコアとしたコンソールで最新のワークフローをというように、キャラクターの異なるシステムの設置により幅広い学習を実現している。
導入のきっかけは、1986年の八王子キャンパス開設当時に設置されたSSL 4000Eの老朽化と、学生の就職先がポストプロダクションに移ってきているという現状から。今、そしてこれからポストプロダクションで導入されるコンソールは何か?と考えるとやはりAVID S6が一番多いのではないか、また日本工学院はAVIDの認定校でもあり、AVIDのトータルソリューションを導入することでの学習効果の向上も目指しているということだ。
AVIDのトータルソリューションが出現
AVID S6はM40と呼ばれる上位のコアに、24 Fader , 9 Knob , Display Moduleという規模。もう少しコンパクトな構成も検討したようだが、複数の学生がコンソールの前に座って実習を行うことを考えると24 Faderは必須であったということ。そして、S6の最大の特長とも言えるVisual Feedbackを実体験し、その利便性により生み出されるワークフローを学んでもらうために、その他のモジュールもフルに実装を行なったということだ。
設置に関しては、国内初導入となるARGOSYの専用デスクを準備し、スタイリッシュに収まっている。入力段はAVID Preが準備され、S6からのリモートコントロールが可能となっている。この機能により、S6はまさにコンソールとしての魅力を持つ。バンド編成が入れるスタジオであるため、AVID Preは3台、合計で24チャンネルが導入されている。DAW部分はPro Tools HDX 2システムを導入。HDXカードが2枚のこのシステムは十分なプロセッシングパワーを持ち、様々な授業に対応が可能となっている。インターフェースには、HD I/Oが2台、アナログで32チャンネル分が用意されている。これは、他のスタジオとの整合性を取るという意味もあり、この規模としたとのこと。
それとは別のMac ProにVideo Satelliteシステムを導入。最新のDNxIOを備え、将来の4Kにも対応したソリューションとして、MA作業の実習にも活用できるようにシステムアップがなされている。将来的には、放送・映画学科に導入済みのAVID ISISとも接続を行いファイルべースワークフローの実習も実施してみたいとのこと。まさにAVID製品によるトータルソリューション。認定校ならではの充実の設備ということが出来る。
他にも、汚れが目立っていたクロスの張り替え、メインモニターとして利用していたUreiのスピーカーをGenelec 3080へ更新なども行なっている。MA用のテレビモニターも新しい物に更新された。一つ面白い機材が、タイムコードの確認用にPunchLight社のStudio Display USBというコンパクトなTC Displayを導入。手元でのTCカウンターの確認が可能。さらに同社のPunchLight DLiにより前室のRecording Lumpの制御を行なっている。このRecording LumpはPro Toolsに連動しているので、Rec Readyの状態になると自動的に点灯するという優れものだ。
導入が終わったところから、その設備を活用する方法を考えていかなければならない。『人間力』の向上はもちろんだが、これからの人材育成の方針として、レコーディング、MAといった業種の区別なく『音』のスペシャリストの育成が必要になるのではないかとのコメントを頂いた。これまでのように単一の分野に特化したスペシャリストではなく、幅広い視野を持ち『音』全般を知り尽くした人材。今日はレコーディング、明日はMA、そして収録作業など全てを任せられる柔軟な人材が重宝されるのではないか。そのような人材の育成のためにこのAVID S6の設備は十分に活用可能なのではないだろうかと将来像を語っていただいた。これからの時代を生き抜いていける人材には、どのようなスキルが必要なのか?未来をしっかりと考えてもらえる講師、そしてそれを支える充実の設備、まさに理想的とも言える教育環境がここにあると言えるのではないだろうか。
学校法人 片柳学園
日本工学院八王子専門学校
〒192-0983 東京都八王子市片倉町1404-1
Tel : 0120-444-700
キミの全力を発揮できる環境はココにある。専門学校の枠を超えた施設を有する緑豊かなキャンパス東京郊外の美しい自然環境広がる文教都市八王子にある、東京ドーム8個分もの広大なキャンパス。これが専門学校?というべき最新実習施設・スポーツ施設・福利厚生施設を備えています。いわば、近未来の学校のあり方を具現化したもの。ドラマ・CM・映画のロケ地として内外のメディアからも注目されている学校です。