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ROCK ON PRO

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株式会社バスク様 / 随所に光る経験に裏付けられた創意工夫

フジサンケイグループの1社として、テレビドラマと映画を専門にするポストプロダクション「VASC」(バスク)様のAvid S6導入をご紹介したい。映画を専門とするダビングステージを持つポスプロと異なり、MA室の延長線上で映画整音とドラマという長尺の番組に特化した独自のスタイル。これまでのシステムから今回どのようにしてAvid S6の導入となったのか?システムの歴史も含めて紐解いてみたい。

◎その運用にフィットしたEuphonixという選択

バスク様のMA室のシステムはEuphonix CS2000とFairlight MXFの組合せでスタートしている。長尺の番組を扱うということで、そのチャンネル数は多い。それを柔軟にハンドリングできる大規模マトリクスをもったCS2000はバスク様にとってベストな選択であったということだ。DAWのFairlight MXFも、当時は高度な編集機能を持った業務機として揺るぎない地位を築いていた製品だ。
 
Euphonix CS2000はアナログ回路で設計されたチャンネルストリップをデジタル制御のマトリクスで柔軟に内部接続をすることで、運用の柔軟性をもたせたこの時代には非常に画期的なコンソール。YAMAHAのO2Rが登場し、デジタルコンソールの利便性が認められていたところに、ラージコンソールと同等のアナログ回路と、デジタルコンソールの利便性を融合させた機器として登場した先進性に溢れたコンソールである。
 
その後、MA室を増設する際に導入したのがAMEKのデジタルコンソール。このときにもDAWはFairlightが採用されている。さらに3室目のMA室を2003年にOPENしている。このとき採用されたのはEuphonixのMaxAirで、DAWには同じくFairlightが採用されている。そして2005年にはCS2000の更新があり、Euphonix System-5が選択された。CS2000の利便性を更に拡張し、チャンネルストリップ部分もデジタル化したコンソール。デジタル技術も進化し、デジタルながら「空気感を再現できるコンソール」として高い音質評価を得たハイエンド製品だ。System5は映画の本場であるハリウッドでも評価を得ており、今でも数多くのダビングステージで使われている製品の一つでもある。
 
現在メインで使われているPro Toolsの導入は2008年まで待つこととなる。やはりFairlightと比較して、当時のPro Toolsは今ほどの使い勝手を持ち得ていなかった。バスク様は2007年の湾岸スタジオ開設当初よりポスプロ管理として業務を行っている。DAW機器の選定をするに辺り、自社ミキサー卓をAMEK~D-controlへ更新し、そこでAvidへ多くのフィードバックを伝えた結果、Fairlightを使用していた自社が満足出来る使い勝手へと進化していく事が確認出来たのでAvid Pro Toolsを導入、引き続き自社にも導入するに至った。
 
AMEKが導入されている部屋のシステムは、Digidesign D-Controlを経て2015年にEuphonix System-5へと更新が行われている。現在稼働している汐留に移転する前は、2式のSystem-5で運用を行なっていたということだ。このようにシステムの変遷を振り返ってみると、常にEuphonixのコンソールが1台は稼働しているという環境である。Euphonixの魅力についてお話を伺うと、その運用の柔軟性が真っ先に思いつくということだ。長尺のテレビドラマ、映画が作業の中心となると、1作品ごとに求められる作業スタイルが変化をする。それに柔軟に対応できるシステムとしてEuphonixの製品はジャストフィットしたということだろう。


MA1

MA1 System5

MA2 2列目に埋め込まれたCM408

MA2


◎System-5とD-Controlを受け継いだS6へ

そして、今回の汐留への移転を期に2室としていたMA室を再び3室体制へと拡張している。System-5が生産完了となり、その後継として開発が進んでいたAvid S6を選択したのは、これまでの経緯を考えると必然に感じられる。しかし、Avid S6はSystem-5の大きな魅力であったマトリクスエンジン「eMIX」にあたる部分を持っていない。Pro Tools自体が柔軟なシグナルルーティングが可能だといっても、複数システムを並走させる映画の作業では、最終のステムミックスを行うためのミキサーは必須である。そのような大規模なシステムを必要とする場合は、これまで通り移設したSystem-5を活用し、規模の小さな作業を効率的に行うために一回り小さな3室目を計画、Avid S6を導入となっている。

MA3

System-5の部屋には、3台のPro ToolsがHybrid Systemと呼ばれるEuConによる接続でリモートが出来るようになっている。コンソールとの信号のやり取りには、Avid HD MADIが使われているということだ。非常に特徴的な、前後に分割されたSystem-5はセンターポジションでミキサーも、効果音のスタッフも作業が行えるように工夫された結果だ。このような柔軟な設置が行えるのはEuphonix System-5の魅力のひとつ。コンソールが8chごとのモジュール構造となっているからこそ実現できているポイントだ。
 
新設のAvid S6のシステムは、24フェーダー仕様。フレームは最大40フェーダーまで拡張できるものを採用し、将来的な拡張性も確保されている。現場で作業されるスタッフの多くが、以前同社に導入されていたDigidesign D-Controlのオペレート経験があるため、導入は非常にスムーズであったということ。System-5とD-Control、両者の後継として開発されたAvid S6。その両者を知るユーザーの目に、S6は正常進化の製品として受け入れられているということだ。System-5の持つ柔軟なオペレートと、D-Controlの持つ高いPro Toolsとのインテグレート。それぞれが持っていた美点がS6にしっかりと受け継がれている。

MA3に導入されたS6

◎デスクからストレージまで、考え抜かれた作業効率

Avid S6の収められたデスクは、使い勝手にこだわったカスタム設計。System-5の設置を見ても、バスク様は長時間の作業を前提として、少しでも快適な環境を構築したいという高い意識がこのような部分からも強く感じられる。どれだけよく出来た機器も、人が触れる部分が使い勝手にマッチしていないとストレスを感じることとなる。特に長時間の作業ではそれが顕著であり、作品の仕上がりにも影響することを良く知っているからこそ、このような部分にしっかりとコストを掛けているのだと感じた。

また、モニターコントローラーにはGrace Design m904が採用されている。クオリティに直結するモニター環境の要となるこの部分にこだわりの製品をチョイスしている。そして、スピーカーにはDynaudio Air-6が採用されている。これまでのSystem-5の部屋で使われている同社のAir-20との共通性を確保する選択だ。映画関係のスタジオで好まれるDynaudioはラージモニターの鳴りを感じることが出来る稀有な存在。DSPによるコントロールを持ったフラッグシップであるこのAirシリーズが生産完了となったことを惜しむユーザーは多い、このラインナップの復活に期待したいところだ。
 
録音用のブースは2部屋有り、3室のMA室からそれぞれで使用できるように設計されている。新設のAvid S6の設置されたMA3にはMic PreとしてAMEK 9098 DMAが用意されている。AMEKのコンソールを使われていた同社の歴史が伺える部分ではないだろうか。


Grace Design m904が採用された

MicPreにはAMEK 9098 DMA


バスク様は、編集室とMA室の共有ストレージとして大規模なAvid ISISシステムを導入されている。総容量384TB、12筐体の大規模なISISがMA室の各Pro Toolsに接続されている。通常の作業では、全てのデータがISIS上に置かれ、ローカルのストレージで作業を行うということは無いということだ。Videoの再生システムとしては、Avid Media Composerが導入され、Pro ToolsとVideo Satellite systemが構築されている。編集との高度な連携により、作業の効率を高めているということだ。

マシンルーム


全体を通じて感じられる、利便性と音質、非常に重要な2つのファクターに対しての高いこだわり。テレビドラマと、映画という2つの軸に対してぶれることなく行われた使い勝手のブラッシュアップ。歴史あるスタジオならではの経験に裏付けられた創意工夫が随所に感じられるシステムである。一見何気なく整然と設置されているように見えるが、一つ一つにこだわりが織り交ぜられた、優れた作業環境であるといえる。最後になるが、お話を伺った株式会社バスク 執行役員 音声技術センター長 小林祐二氏、そして、このシステムの構築を行われた株式会社エム・ティー・アール 冨岡成一郎氏にこの場を借りて御礼と感謝を申し上げたい。

・写真左から、株式会社エム・ティー・アール 冨岡 成一郎 氏、株式会社バスク 亀山 貴之 氏、蜂谷 博 氏、佐藤 真美 氏、執行役員 音声技術センター長 小林 祐二 氏、株式会社メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部 岡田 詞朗、前田 洋介

 
 
*ProceedMagazine2017Spring号より転載

*記事中に掲載されている情報は2017年05月23日時点のものです。