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ROCK ON PRO

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有限会社ガリレオクラブ様 / Yamaha MMP1が司り、Danteが全てをつなぐ

・STUDIO-A

大阪で1991年に創業した有限会社ガリレオクラブ。MA専門のポストプロダクションとしてこれまでにも様々な新しいチャレンジを行なってきた同社が、3部屋のMAのシステムを一新した。いち早くサラウンドへ取り組んだり、大阪で最初にFairlightでのMAを始めたりとチャレンジを続ける同社。2006年に現在の扇町に移転をしてから初の大規模更新となった今回。更新システムはYamaha Nuageという選択となった。そのお話を同社、石川氏と飯田氏にお話を伺った。

◎Nuendoシステムを支える環境

導入当時はDAW界のポルシェなどという呼び声も聞こえたFairlightを長く使ってきたガリレオクラブ、同社が何故FairlightからSteinberg NuendoとYamaha Nuageという組み合わせに移行したのだろうか?まず挙げられたのはサポートの側面。やはり業務で使用するシステムであるため、大阪に拠点を構えすぐにメンテナンスの体制が取れるYamahaは選択肢の一つとなった。またSteinberg Nuendoに古くから携わるYamaha 山本氏が在阪していることも大きな理由となったのではないだろうか。専用ハードウェアでの構成となるFairlightがタイムリーなサポートを求められるのはなおさらで、拠点の有無は大きな要素となったようだ。

また、飯田氏は個人的にCubaseのユーザーであり、Nuendoに対しての抵抗感がまったくなく、むしろ良い部分を知っていたというのも大きなポイント。7.1ch対応のサラウンド制作も行っている同社としてはトラック数の制約なく作業ができるNuendoの魅力は大きい。いち早く22.2chやDOLBY ATMOS、AURO等のフォーマットへの対応を果たすなど、今後の作業の発展次第では安心感のある機能を持っているのもNuendoの魅力である。
 
そして、Windows環境でも安定運用できるというのも導入の理由となっている。Cubaseから派生したNuendoの歴史を紐解いても、やはり開発の軸足がWindowsにあることは確か。カスタマイズ性の高いPCを使用することにより快適な作業が期待できる。そして何より大阪には、Steinberg PartnerのDAW専用PCメーカーOM Factoryがあるのも心強い。PCの構成の自由度が高いということはそれだけ相性問題などに出会う確率も高くなる。その部分を担保した専門性の高いメーカーが近くにあるということで、安心してWindowsでNuendoという環境が成立できる。実際今回の導入されたNuendoは全てがOM Factory製のカスタムPCでの導入となっている。

・記事冒頭のSTUDIO-Aに付設されるBOOTH-A

◎Danteがすべての部屋をつなぐ

もちろん、Fairlightから他のDAWへの更新を考えた際にPro Toolsが候補に上がったのは間違いない。国内でも多くのポストプロダクションがPro Toolsを使用しているのは事実である。Avid S6 + Pro Tools、そして旧来のコンソール+DAWというアイデアも候補に上がったということだが、やはりトータル・リコールの出来る一体型のシステムであるFairlight Constellationを使っていた同社にとって、コンソール+DAWの環境は魅力的ではあるものの効率面を考えると候補から脱落。Avid S6 + Pro Toolsはシステムの手堅さ、他のスタジオとの互換性などメリットは十分に感じたが採用には至らなかった。その理由はここからご紹介するシステムアップ面にある。
 

今回、ガリレオクラブの3部屋のMA更新とともに、3部屋あるSoundDesign(仕込み)も更新された。そして、以前から構想としてあった全てのスタジオの音声回線を繋いでおきたいというトータルでの目的もあった。そこで目を付けたのが、NuageシステムのフロントエンドとなるNuage I/Oが採用するDanteだ。AoIPとしてすでにPAの現場などで普及しているDanteは手堅いシステムであり、失敗の許されない現場で使われているということからも信頼性の高い機材であるといえる。今回3室のMAと3室のSoundDesignは全てが共通のDante Networkへと接続が行われている。
 

ご覧いただきたいのだが、MA室に関してはPCからの回線、Nuage I/Oからの回線、そして、モニターコントロール用のYamaha MMP1全てが同一のDante Networkへと接続されている。Sound EditはPCからのDanteとI/Oを兼ねるYamaha O1V96にオプションとして追加されたDante-MY16-AUD2が接続される。これにより、どこからでも自由に制約なく信号の受け渡しが可能となっている。このシステムが組めるということがNuage導入の最後の決め手となったのは間違いない。その背景には、次にご紹介するYamaha MMP1の存在が大きい。

◎シグナルを司るYamaha MMP1

Nuageシステムはコントローラーとしてという側面だけでなく、「Nuendoをエンジンとしたコンソールを作りたい」というYamahaの思想が色濃く反映されたシステム。この考えもコンソール+DAWも候補として挙がっていたガリレオクラブの考えと一致する部分だ。しかし、従来のNuageシステムは、モニターコントロールに関してはNuendoのソフトウェアに統合されたControl Room機能を活用するということでのシステムアップが推奨されていた。やはり、外部にハードウェアでモニターコントローラーを持たせ、トークバック、カフコントロールなどのコミュニケーションと合わせて制御できるソリューションが望まれていた。その要望を受けてYamahaが従来はDME64Nが担っていたようなプロセッシングを、現代のスタジオに合わせより特化した機能を搭載して登場させたのが、MMP1だ。
 
それでは、Yamaha MMP1を詳しく見ていきたい。Yamahaがこれまでに培ったDMEシリーズ、MTXシリーズ等のシグナルプロセッサー。その技術を用いて、Nuageのモニターセクションにジャストフィットする製品として作られたのがこちらのMMP1。特徴的なのはその入力部分。基本の入力をDanteとして、Analogは8in / 8out、AES/EBU 16in / 16out と最低限。Danteのネットワーク上に接続して利用することを前提とし、最低限のEXT INPUTと、スピーカー接続用のOUTに絞った非常にコンセプトの明快な製品に仕上がっている。内部はDME譲りの柔軟なシグナルフローに加えて、モニターセクションが自由自在に構築できるようになっている。取材時点ではNuageとの融合の実態を全て確認することはできなかったが、NuageのMMP1コントロール対応については2017年冬にアップデートのリリースを予定しており、トータルでのインテグレートが期待できる製品といえる。
 
この製品の登場により、Nuageは単体でのコンソールとしての機能を手に入れることとなる。そして、前述の通り16in / 10outの自由にアサイン可能なGPIを持つことにより、カフコントロール、トークバックなどのコミュニケーション機能をMMP1の内部で完結することが可能となる。ここでもDanteの持つシグナルルーティングの柔軟性が生きる部分である。マイク入力は、一旦Nuage I/OによりDanteの1回線となれば、まずMMP1に送り込みカフの制御を受けた上で、PCのDante Acceleratorへと接続され、DAWへと入力される。全てがNetwork上での出来事であり、シンプルなEthernet回線の中でそのシグナルルーティングは行われる。
 
ガリレオクラブの思い描く次世代のスタジオのあり方。全てのスタジオの音声がネットワークを介して自由に接続されるという未来が、MMP1の登場により一気に現実のものとなった。もちろんDante I/Oを多数用意して、一旦Analogにした後にシグナルプロセッシングを行い、またDanteへと戻すということも出来るが、システム規模は非常に大きくなってしまう。MMP1の様に基本的に全てをDante Network上で信号の受け渡しの出来る製品は、まさに今回のキーデバイスと言えるだろう。

・STUDIO-B

◎従来の作業効率を失わない工夫

Nuageを中心にNuendoをメインDAWとしてシステムアップをされたガリレオクラブだが、効果用にPro Toolsの用意もある。NuageはPro Toolsに切り替えたとしても、その操作は行える。Nuageの持つ操作の柔軟性、そういった点からも便利に使えているということだ。
 
実際にこのシステムを見たお客様からは、デスクについて褒められることが多いという。カスタムで作られ、サイドテーブルと一台となるデザインの机。その細部には細かいこだわりが多くある。まず、Nuageの設置についてはフェーダー面とフラットになるように設計されている。従来設置のFairlight Constellationは角度の付いた面にフェーダーがあったため、その操作感との統一も考えてNuageは後ろを少し持ち上げて設定、Constellationと合わせるために7度の角度が付けられている。また、コンパクトになったことを感じさせないように、サイドテーブルを大きくした。これによりディレクタースペースが大きくなり好評いただいている部分ということだ。
 
また、Nuage I/Oの音質に関しても高い評価をしているということだ。Pro Toolsは以前より候補として外せない存在であり、その評価は常に行なっていたということ。それでも、メインのDAWとして導入が行われなかったのは、以前の192 I/Oの音質が満足できるものではなかったからだということだ。当時使用していたFairlightの音質は高く、さすがは専用設計のDAW界のポルシェと言ったところ。今回Nuage I/Oをテストしたところ、そのFairlightの音質とほぼ同等だという結論が出ている。もちろん、Avid HD I/Oが音質向上しているということは知っているが、それ以上にNuage I/Oの音質は優れているという判断が導入の際にはあったということだ。

・STUDIO-C

◎Yamaha MMP1

Yamaha Nuageの登場から早くも3年以上が過ぎようとしている。YamahaのNuageリリース時のコンセプトであるNuendoをミキシングエンジンとしたコンソール。これを実現するピースとして登場が待ち望まれていたハードウェアでのモニターセクション、それがこのMMP1である。こう書いてしまうとNuageでしか使えないように聞こえてしまうが、そうではない汎用性を持ちつつもNuageとの深いインテグレートを実現した機器ということだ。
MMP1の詳細を見てみたい。その入出力はAnalog IN/OUT 8ch、AES/EBU 16ch、そしてDante 64chとなる。そして内部には8chのChannel Stripとフレキシブルな40 x 32のMonitor Matrix、32 x 32のSpeaker Matrixがあり、32chのOutputに対してEQ/Dlyといったスピーカーマネージメント用のプロセッサー、そして全てのチャンネルを跨いだBass Managementが備わっている。
 
もちろんモニターセクションなので、これらの機能を外部からコントロールすることで、ソースの切替、スピーカーセットの切替、ボリュームコントロールなどを行うことができる。Nuageであれば、Nuage Masterからのコントロールが可能である。そのコントロール信号は、Danteの回線に重畳させることが可能なので別途コントロール用の信号線を準備する必要はない。Nuage以外のシステムとへのインテグレーション時もDanteでシステムアップを行っていればそのネットワーク経由でのコントロールが可能である。
 

スピーカーマネージメント部分は、定評あるYamaha DME譲り。8band EQとDelayが備わる。プロセッサーパワーの関係から残念ながらFIRの採用は見送られたものの、DSPの世代としては最新の物が使われているため音質に関してもブラッシュアップされているということだ。位相に関してシビアなベースマネジメント用のフィルターにはFIRが備えられているのは特筆すべき点ではないだろうか。
 
そして、Yamahaの製品らしく非常に豊富なGPIを備えているのがMMP1の特徴の一つ。内部のプロセッシングほぼすべてのファンクションのコントロールが可能な柔軟なGPIを持っている。Yamahaのコンセプトとしては、このGPIを活用してCough ControlもMMP1に担わせるように設計が行われている。そのためにInputにChannel Stripが用意されており、ここへMicの回線をアサインしCoughのON/OFFに合わせてMuteを制御、それによりCoughの制御を実現できる。このGPI信号に合わせてBTなどを総合制御することでCough Control unitなどの機能をMMP1が実現する。
今後Danteベースのシステムアップが増えると、MMP1はそのシステムのスピーカーマネージメントシステムとして脚光を浴びることだろう。32chものスピーカーマネージメントを行うことが可能なパワフルな製品。そう考えるとコストパフォーマンスも抜群に高く、すでにこの製品を中核としたシステムアップも行われている。AoIPを活用したプロダクション・スタジオシステムのラストピースが誕生したと言えるだろう。


国内でも先行してDante Networkを活用したスタジオのシステム構築を行われたガリレオクラブの皆様、そしてシステム設計を行われた日豊株式会社の池谷氏、株式会社ヤマハ・ミュージック・ジャパンの山本氏、豊浦氏のチャレンジに敬意を表しこのReportを締めくくらせていただきたい。

 
 
*ProceedMagazine2017-2018号より転載

*記事中に掲載されている情報は2017年11月14日時点のものです。