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dolby atmosの検索結果(223件)
NEWS
2025/05/07
Dolby Atmos Production / Mastering Suiteからのアップグレード特別価格終了のお知らせ
2023年にリリースされた Dolby Atmos Renderer v5.0 は、Dolby Atmos Production Suite(DAPS)および Dolby Atmos Mastering Suite(DAMS)を統合する形で登場しました。
これに伴い、DAPS または DAMS をお持ちのユーザーには、Dolby Atmos Renderer v5 以降へのアップグレードが $50 USDの特別価格で提供されてきましたが、この特別価格は2025年6月30日をもって終了となります。
6月30日以降はDAPS/DAMSのライセンスを保有していても、Dolby Atmos Renderer v5 を入手するには新規購入($299 USD)が必要となるため、ご注意ください。
DAPS/DAMSからDolby Atmos Renderer最新版へのアップデートはAvid StoreもしくはROCK ON PROまでお問い合わせください。
☟最新verについては以下の記事をチェック
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-3-1/
Atmos Renderer内蔵DAWも増えてきましたが、スタンドアロン版のみの機能や運用方法も多いのが現状。Dolby Atmos構築についてのご相談はROCK ON PROまで!
Support
2025/04/14
Dolby Atmos Renderer v5.3.1リリース 〜MacMini M4対応〜
Dolby Atmos Rendererの最新ver、v5.3.1がリリースされました。MacOS Sequoia 15.3.1に対応し、M4 Mac Miniが公式サポートに追加されております。
v5.3.1 DL:https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v531
v5.3.1の主な変更点
◎ macOS Sequoia 15.3.1までに対応
◎以下2機種を公式サポートに追加
・Apple Mac Mini M4 2025
・HP Z4 G5 Workstation
◎ログエクスポート機能の実装
◎バグフィックス
・Windows上でRenderer v5.3を使用する場合に、Dolby Atmos Renderer RemoteとDolby Atmos Binaural Settingsプラグイン間の接続の安定性の問題を修正(PRAU-6951)
・Dolby Atmos Renderer Communication SDKクライアントに接続している際、外部同期が無効になっているとスペースバーショートカットでトランスポートを開始できる問題を修正(PRAU-7125)
そのほか既知の問題についてはリリースノートをご確認ください。
Dolby Atmosシステムについてのご相談はROCK ON PROが承ります。お気軽にお問い合わせください。
Post
2024/12/09
株式会社角川大映スタジオ様 / 最新かつ最大規模のDolby Atmos Cinemaダビングステージ
『静かなる決闘』『大怪獣ガメラ』『Shall we ダンス?』といったヒット作が生みだされ、近年では高精細ディスプレイを使用したバーチャルプロダクション事業も手がける角川大映スタジオ。国内で唯一、自社に美術部を持つことでも有名な同スタジオだが、意外にもダビングステージの誕生は2011年と比較的最近のこと。このダビングステージにオープンから13年を経てついに大規模な改修が施された。待望のDolby Atmos Cinemaへの対応をはじめ、生まれ変わった本スタジオに込められた優れたノウハウを紐解いていきたい。
待望のDolby Atmos Cinema対応
今回の角川大映スタジオダビングステージ改修においてもっともエポックメイキングな点といえば、何よりもDolby Atmos Cinemaへの対応ということになるだろう。国内では、東映デジタルセンター、グロービジョンに続く3部屋目のDolby Atmos対応ダビングステージの誕生になるが、デュアルヘッド72フェーダーのS6を備えた角川大映スタジオは現時点で最新かつ最大規模のDolby Atmosダビングステージということになる。Dolby Atmosへの対応にあたって新たに天井へのスピーカー設置が必要になるため、遮音壁の内側、スクリーン裏のフロントバッフルを除き、ほぼすべての内装意匠を解体してイチからの工事が実施されているほか、フロントLCRを除くすべてのスピーカー+サブウーファーもDolby社のレギュレーションに基づいて新規導入されるなど、まさに生まれ変わったと言って過言ではない大規模な改修となっている。
📷天井と壁面にずらりと並んだサラウンドスピーカー。「Dolby Atmos Theatrical Studio Certification Program Requirements」に基づいて、サイドが左右壁面に7本ずつ、ハイトが天井左右に7本ずつ、リアが背後壁面6本の合計34本のサラウンドに加え、サラウンド用サブウーファー4本が使用されている。
同じDolby Atmosといっても、家庭での視聴を前提とするDolby Atmos Homeと、映画館での視聴を前提とした制作となるDolby Atmos Cinemaでは、Dolby社のレギュレーションを満たすために求められるスピーカーシステムがまったく異なっている。ベッドチャンネルに対して1対1の関係でスピーカーを配置するDolby Atmos Homeに対して、Dolby Atmos Cinemaでは映画館と同様にディフューズ・サラウンドを使用することで面によるサラウンド環境の再生を行うということになる。家庭よりもはるかに広い映画館においては、視聴する位置による音響体験の差を極力なくすことが求められ、作品の音響制作に関わる最終段であるダビングステージでは、その環境を再現することが必須というわけだ。
📷ダビングステージのフロント、透過スクリーンの裏に設置されたLCRは既存のJBL 5742+サブウーファーJBL 4642Aを残している。LCR用のアンプはステージ裏に別途ラッキングされているのだが、今回の更新に伴い、スピーカーケーブルも試写室と同じBELDENに更新されている。
必要なスピーカーの本数はDolby社の「Dolby Atmos Theatrical Studio Certification Program Requirements」という文書に記されており、部屋の横幅と前後の奥行きに応じて、リアサラウンドとサイドおよびハイトスピーカーの本数が細かく指定されている。今回の角川大映スタジオの場合、サイドが左右壁面に7本ずつ、ハイトが天井左右に7本ずつ、リアが背後壁面6本の合計34本のサラウンドに加え、サラウンド用サブウーファー4本が使用されることとなった。ベース・マネージメント用に設置されたこれらのサブウーファーは天井の四隅から少し内側に入ったあたりに設置された。
既存流用となるフロントのJBL 5742に合わせ、サラウンドスピーカーもすべてJBLで揃えられている。基本的にはJBL 9310が採用されているが、カバーエリアの関係でハイトの一部にはJBL AM5212/00が使用されることになった。カバーエリアやスピーカーの設置角度に関してもDolby社の厳密な規定が存在しているのだが、このレギュレーションで興味深いのは、すべてのスピーカーをミキシングポイントとなる1点に向けるのではなく、一部のサラウンドスピーカーはCMA(Critical Mix Area)と呼ばれるミキシング作業をおこなうエリアの四隅または辺縁に向けるよう指定されている点だろう。このあたりも、シネマ制作ならではの仕様と言えるのではないだろうか。
もうひとつ、Dolby Atmos HomeとDolby Atmos Cinemaの大きな違いをあげるのであれば、ソフトウェア・レンダラーが異なっていることだ。シネマ・レンダラーでは、Cinema roomという、ディフューズ・サラウンドを構成するためのスピーカー・アレイ設定ウィンドウのほか、 レンダラー内部でベースマネジメントを行う機能が搭載されている。シネマ・レンダラーは市販されておらず、手に入れるにはそのダビングステージがDolby社の認定を受けなければならない。ベースマネジメントを除くEQ / Delayといった電気的な補正はBSS BLU-806。角川大映スタジオにとって使い慣れたAudio Architectを使用している。シネマ制作においては、Dolby Atmosだけではなく、従来の5.1や7.1サラウンド制作も当然存在する。そうしたフォーマットの違いごとにプリセットを作成し、作業内容に応じて切り替えて使用する形だ。
📷サラウンドスピーカーは一新され、JBL 9310が新規導入された。 写真上で確認できるように、カバーエリアの関係で天井スピーカーのうち6本だけはJBL AM5212/00となっている。
後に詳述するが、今回の角川大映スタジオのシステム構成はMTRX IIとDanteをフル活用した非常にシンプルなものになっている。A-Chainのすべての音声信号はMTRX IIからDante信号として1本のLANケーブルで出力され、ネットワークスイッチを介してB-Chainの入口となる2台のBLU-806に接続されている。ここで電気的な補正(スピーカーマネジメント)を施された音声は再度Danteネットワークへデジタルのまま送られ、RME M-32 DA Pro II-DでDA処理がおこなわれ ている(Dante 対応モデルは国内非取扱)。DAコンバーターは複数の機種を試したうえで、RMEが選ばれている。DAまでの経路において可能な限りフォーマット変換を避けシンプルなシグナルフローとすることで、個々のサウンドの解像度・明瞭度を向上させたいという想いが反映されたシステム構築となる。
DAされた音声は、Crown IT5000HDとDCi 8|600 DAからなるパワーアンプ群に送られる。フロントLCRとすべてのサブウーファーがIT5000HD、サラウンドスピーカーがDCi 8|600 DAという受け持ちだ。 ちなみにそれぞれ、IT5000HDはAES、DCi 8|600 DAはDanteでも接続されており、M-32 DA Pro II-Dをバイパスした信号を受け取ることが可能。万一、DAまでの経路に不具合があった場合にリダンダントとして機能させることが可能になっている。
📷マシンルームの様子。ダクトの下に見えているのが映写機NEC NC2000C。システムからの映像出しは作業に応じてEX Pro ToolsのVideo Trackと、Media ComposerとのSatellite Linkが併用されている。
国内初導入のPost Moduleを含むデュアルヘッドPro Tools S6
📷CMA全景。KVMはIHSE Dracoを使用したマトリクス方式となっており、どの席からどのマシンでも操作可能だ。
もうひとつの大きな変更点は、AMS Neve DFC GeminiからAvid S6への音声卓の更新だ。素材の仕込み段階からすでに作業の中心となっているPro Toolsとの親和性の高さに加えて、今回の改修におけるテーマのひとつであるクリーンで解像度の高いより現代的なサウ ンドを目指すという方向性が大きな決め手になったようだ。そのS6は、国内のシネマ制作ではスタンダードとなりつつあるデュアルヘッ ド、72フェーダー、5ノブという仕様。日本音響エンジニアリング製作の特注デスクによって設置されている。そして、Dolby Atmos対応ということで、これも国内では多数の導入がある移動可能な特注ボックスに収められたJoystick Moduleを備え、さらに、国内初の導入となったPost Moduleが採用されている。
📷特注デスクに収められた72フェーダーのAvid S6。Master Moduleは盤面の中央に置かれている。一見シングルヘッドに見えるが、左側の離れた位置にふたつめのMaster Moduleが設置されている。
デュアルヘッドは1つのシステムにMaster Moduleが2基ある仕様(システムIDはMaster Moduleに紐づいているため、ライセンスとしては2つのシステムを1箇所で使用しているという形)。S6で1つのMaster Moduleが掴めるのは64フェーダーまでのため、72フェーダーという大規模な盤面を実現するにはデュアルヘッドの採用は必須となる。しかし、それよりも重要なのはデュアルヘッドを採用することで、S6の盤面を完全に2つの異なるエリアに分割することができるということだ。映画制作のダビングにおいてはひとつのシーンで同時に様々な音が鳴るため、セリフ、効果音、音楽のように、それぞれ各グループを担当する2〜3人のミキサーが同時に音声卓で作業をするということが一般的。デュアルヘッドを採用しておけば、どちらのMaster Moduleがどこまでのモジュール列を掴むのかがあらかじめ確定されるため、機能的にも視覚的にも各ミキサーが作業するフェーダーを明確に切り分けることができる。
2つのMaster Moduleの内の1つめは72フェーダーを構成する9モジュールを4:5に分割する位置、つまりサーフェスの中央に設置されているが、角川大映スタジオの大きな特徴は、2つめのMaster Moduleが72フェーダーから約1人分の作業スペースを隔てて離れた位置に設置されていることだ。センターのマスターフェーダーを挟んで左側には、セリフのミキサーが、右側には効果音のミキサーがという想定で構成が組まれている。
📷スタジオエンジニア席には2台目のMaster ModuleやMOM、Clarity Mなどのユーティリティ関連機器が置かれている。
この、2つめのMaster Module付近はスタジオエンジニアの作業スペースとして想定されており、ここに国内初の採用となるS6 / S4 Post Moduleが並べて配置されている。このPost Moduleだが、その名称とは異なり、いわゆる国内で言うところのポストプロダクションというよりは映画ダビングに特化した機能を持ったモジュールだ。 モジュールにはトグル切り替えが可能なパドルが並んでおり、これでダバーへ流し込まれる各ステムの再生 / 録音をワンタッチで切り替えることができる。また、S6システムにPost Moduleが含まれていると専用のメーターを表示することができるのだが、このメーターではメインのアウトプットに加えて、 各プレイアウトからの出力を一覧で監視することができる。ちなみに、Post Moduleの前方に設置されたDisplay Moduleはデスクに直接挿さっているのではなく、イギリスのスタジオ家具メーカーであるSoundz Fishyが製作しているS6 Lowered Displayというアタッチメントを使用してデスクに埋め込まれている。デスクはその他モジュールが埋め込まれた部分と同サイズで製作されているので、例えばMaster ModuleとPost Moduleの位置を入れ替えるようなことも可能になっている。
📷左)Master Moduleの左下にあるのが国内初導入となったPost Module。DFCに搭載されていたパドル式のRec / Play切り替え機能を提供するほか、各Macからのアウトプットを監視できる専用メーターをS6に追加する。右)デスク同様、日本音響エンジニアリング製作の特注ボックスに収められたJoy Stick Module。CMAを移動しながら試聴できるよう、ケーブルも延長されている。
MTRX IIが実現したSimple is Bestな機器構成
今回のダビングステージ改修にあたっては、システム設計においても解像度の向上がひとつのテーマとなっている。そのための手法として検討されたのが、システムをシンプルにすることでシグナル・パスを最短化するというものだ。
AMS Neve DFC GeminiやEuphonix System 5といったDSPコンソールからAvid S6への更新においては、大きく分けてふたつの方針が考えられる。まずは、ミキサー用のPro Toolsシステムを導入し、S6を従来のコンソールと同じくミキサーとして使用する方法だ。プレイアウト用の各Pro Toolsからの信号はいったんミキサーを担うPro Tools MTRXに集約され、これに接続されたPro ToolsをS6で操作することでDSPコンソールを使用していた時と同じ、再生機→ミキサー→録音機、というワークフローを再現できるだけでなく、必要に応じてPro Tools内でのインボックス・ミキシングも活用することができるが、当然システム規模は大きくなり、その分信号経路も複雑になる。
角川大映スタジオが採用したのはもうひとつの方針、各プレイアウトPro Toolsが1台のMTRX IIを介しダイレクトにDubber Pro Toolsに接続される構成だ。システムの構成をシンプルにすることで 、音声信号は異なる機器間での受け渡しや、それに伴うフォーマット変換によるロスを最小限に抑えながら、最短経路のみを通ってB-Chainまで到達することができる。
📷左)マシンルームに設置されたラック群。画像内左から2架がプレイアウトPro Tools関連、一番右がB-Chain関連のラックとなっており、その間にはMedia Composerやパッチ盤がラッキングされている。中)B-Chain関連ラック。そのサウンドが高く評価され採用されたRME DA 32 Pro II-D、スピーカーマネジメントを担うBLU-806のほか、Dante信号をヘッドホン出力用にDAするTASCAM ML-32D、ユーティリティとしてMADI-AESコンバーターADI-6432やRME DA/AD 32 Pro II-Dなどがあり、足元にはサラウンドスピーカー用のパワーアンプ類が設置されている。右)Dubber / EX Pro Toolsシステム(右)とRMUのラック(左)。左下にMTRX IIが2台見えるが、2台目は予備機として導入されており、本線はすべて1台目のMTRX IIに接続されている。
ダビングステージに限らず音声を扱うスタジオの機器構成にあたっては、いくらシグナル・フローをシンプルにしたいといっても、Pro Toolsからの信号だけを出せればよいわけではなく、ハードウェア・エフェクターや持ち込み機材などの外部機器との接続、メーターやヘッドホンへの出力などの様々な回線が本線の音声信号系統に加えて必要となる。そうした多数のデジタル信号を同時に扱うことを可能にしているのがPro Tools MTRX IIだ。初代MTRXではDanteがオプション扱いだったため、ダビングステージのような大規模なシステムを初代MTRXで実現しようとした場合は、オプションカード・スロットをほかの拡張カードと取り合いになってしまうという課題があった。どうしても2台のMTRXが必要になってしまう。MTRX IIでは初代でオプション扱いだったDante I/O(256ch)とSPQ機能が本体に標準搭載されたことで、7基のDigilink I/O CardでPro Tools接続したとしても、その上でMADI 3系統(本体1系統、オプションカード2系統)とDante 256chという豊富な数の回線を外部とやり取りすることができたというわけだ。
角川大映スタジオでは、プレイアウトとしてDialogue、Music、SE-1、SE-2、EX、そしてレコーダーとしてDubberが1台からなる合計6台のPro Toolsシステムが運用されている。すべてMac Proによるシステムで、EXがHDX2仕様、その他はすべてHDX3仕様となっており、HDXカードからDigiLinkケーブルで1台のMTRX IIに直接接続されている。DialogueとDubberがHDX2枚分(128ch)、Music・SE-1・SE-2がHDX1枚分(64ch)ずつ、MTRX IIのオプションスロットに換装された7枚のDigilink I/O Cardにつながっており、EXはMTRX II本体の2基のDigiLink ポートに接続されている。MTRX IIの残り1基のオプションスロットにはMADIカードがインストールされており、オンボードのMADIポートと合わせて、RME製 MADI-AD / DA / AESコンバーターを介してアナログ / デジタルのパッチに上がり、アウトボード、持ち込み機器の接続用のトランク回線として使用されている。DanteはB-Chainへの送り出しのほか、TASCAM ML-32Dを介してメーター送りなどの回線として使用されている。
MTRX IIのもうひとつの特徴が、国内では2023年秋頃からリリースされているThunderbolt 3モジュールだ。オプションカード・スロットとは別に用意されたスロットに換装することで、Mac-MTRX II間で256chの信号をやり取りすることが可能になる。Thunderboltと聞くと思わず「MTRX ⅡがNative環境でも使える!」という発想になりそうだが、今回のシステム設計においては、RMUの接続をPro Toolsが接続されているMTRX Ⅱへダイレクトに接続することができるということになり、RMU用のAudio I/Fが不要になる。つまり、RMUを含めたすべてのPCがダイレクトに1台のMTRX IIに接続することができる、ということになる。
RMU含め7台のPCからの640chの信号と、ユーティリティーのDante、MADIの320chという信号を1台で取り扱っていることとなる。すべてをこのMTRX IIに集約することで、非常にシンプルなシステム構築となっていることがおわかりいただけるだろう。
各Mac Proには、持ち込み機材用の入出力やヘッドホンアウトを確保するためのI/Oも接続されているが、ダビング作業における音声信号の本線としては、5台のプレイアウトと1台のDubber、そしてRMUという7台のMacが1台のMTRX IIに集約されており、そして、 このMTRX IIからDante1回線ですべてのアウトプットがB-Chainへと出力されている。スペックとして理解はしていたが、実際に現場で動いているところを目の当たりにすると、MTRX IIの柔軟性と拡張性の高さに改めて驚かされる。
同期を制する者は音を制する!?
📷DXD-16 から出力された10MHzクロックはDCD-24でWordとしてリジェネレートされ各機器へ。10MHzクロックはすべてのSync XがDXD-16からダイレクトに受けている。
今回のダビングステージ改修にあたって、角川大映スタジオがこだわったもうひとつの点が同期系統の刷新だ。このダビングステージでは、24fpsだけではなく23.97fpsなどの様々なフレームレートを持った動画素材を扱う機会があり、音声ファイルにしてもダイアログは48kHz、音楽は96kHzなど複数のサンプリング周波数の素材を同時に扱う場面は多い。こうした状況となる中、多数の機器へ異なるフォーマットの同期信号を1箇所で管理できるようなグランドマスターが求められていた。
そこで採用されたのが、Brainstorm DXD-16。国内では放送局への導入が多い機材だが、ハウスシンクのマスターとしてだけではなく、GPSクロックを受けてのPTP出力が可能ということから中継現場で採用されるケースも多い。受けのMTRX II、出しのDXD-16とでも言うべきか、音声システムにおけるMTRX IIと同様、DXD-16もあまりにも多機能・高機能であるため、その特色を簡潔に解説することは難しい。GPSクロック、PTP v1/v2、10MHz、Video Reference、WC、マスターにもスレーブにもなれるなど、およそクロックに求められる機能はすべて備えていると言っても過言ではない。
実は今回の改修における機材選定にあたっては、B-Chainの音質に大きな影響を与えるDAコンバーターはもちろんだが、マスタークロックの試聴デモも実施されている。国内で入手できるほとんどのマスタークロックを試聴した結果、DXD-16が選ばれたというわけだ。ワークフローの効率化と解像度の向上を高い次元で両立したいという強い熱意を感じるエピソードではないだろうか。国内で入手できるPTP対応機器の場合、GPSシグナルが必須という機器が多く、自身で同期信号を生成するジェネレーターとしての機能を持たないものが多いのだが、DXD-16は自分自身がマスタージェネレーターとなることが可能で、角川大映スタジオではその精度をさらに上げるために内部の発信機をOCXOにグレードアップするオプションを追加している。
角川大映スタジオのダビングステージではこのDXD-16のインターナルOCXOをマスターとして、10MHz、1080p/24fps・NTSC/29.97fpsのVideo Reference、48kHz AES、96kHz WCの全信号を同時に出力しており、DanteネットワークのPTPマスターとしての機能も担っている。
このダビングステージで特徴的なのは、音質の向上を意図して10MHz信号が大きく活用されているところだろう。DXD-16は16個の各出力から同時に異なるフォーマットの同期信号を出力できるのだが、そのうちの半数である8系統を10MHzに割いている。1つはパッチに上がっており、もう1系統はBrainstorm DCD-24に接続、システムへのWCはここで再生成して分配されている。そして、残る6系統はすべてAvid Sync Xにダイレクトに接続され、各Pro Toolsシステムの同期を取っている。SYNC HDからSync Xへの進化において、この10MHz信号への対応は非常に大きなポイントだ。10MHzでPro Toolsシステムの同期を取るというのは、システム設計の段階で今回角川大映スタジオが大きなポイントとしていたところだ。
居住性にもこだわった「和モダン」な内装
📷フロント側から見たダビングステージ全景。明るく柔らかな印象を湛えた仕上がりになっているのがお分かりいただけるだろう。もちろん、試写時には照明を落とし、映画館と同様に部屋を暗くすることが可能だ。
📷組子細工が取り入れられた室内照明。結果的に反射面を減らすことにもつながり、音響特性にも一役買っているという。
今回の改修にあたっては、Dolby Atmos Cinema対応や音の解像度向上といったサウンド面だけではなく、居住性の高さも追求されている。内装工事と音響施工を担当したのは日本音響エンジニアリング。 ダビングステージというと、黒やチャコールといった暗い配色の部屋をイメージすることが多いと思うが、生まれ変わった角川大映スタジオのダビングステージは非常に明るく開放的な雰囲気に仕上げられている。作品によっては1、2週間こもるということも珍しくないということで、長期間にわたる作業になっても気が滅入ることのない居心地のよい空間にしたかったのだという。「和モダン」をコンセプトにデザインされた部屋の壁面には日本伝統の組子細工を取り入れた照明が配されており、暖かな色合いは訪れる者をやさしく迎え入れてくれるようだ。壁面に灯りがあることで圧迫感のない開放的な空間を演出するとともに、日本音響エンジニアリングによれば、組子構造が透過面となることで結果的に音響的な寄与もあったそうだ。
Avid S6の設置は特注デスクによるもので、こちらも日本音響エンジニアリングによる製作。フェーダー面とデスク面が同じ高さになるようにS6が埋め込まれている形で、すでに述べた通り2つめのMater Moduleが離れたアシスタント席に設置されているのが特徴だ。この特注デスクは木材のもともとの色合いを生かしたナチュラルなカラーで、従来のイメージと比べるとかなり明るい印象を受ける。こうしたところにも、明るくあたたかな空間にしたいという強い想いを感じる。
📷左)特注デスクに据え付けられたメーター台。VUメーターと並ぶのはいまだに愛用者の多いDK Technologies。 右)床面やデスク天板は明るい配色であるだけでなく、天然の木目を生かした意匠が心に安らぎを与える。
角川大映スタジオには以前のダビングステージと建築面で同じ構造の試写室があるのだが、試写室には客席があるため、以前のダビングステージに比べて少し響きがデッドになっており、音の明瞭度やサラウンドの解像度という点でダビングステージよりも優れているように感じていたという。今回の改修にあたって、この響きの部分を合わせたいというのも音響における角川大映スタジオの希望だったようだ。
今回はDolby Atmosへの対応ということで、従来は存在しなかった天井へのスピーカー取り付けが必要であり、加えてDolby Atmosに最適な音響空間にするためにスクリーンを含むフロント部分以外は遮音層の内側はほぼすべて解体、吸音層もイチからやり直しということで工事の規模は大きかったが、却って音響的な要望には応えやすかったようだ。明瞭度を向上させつつも必要以上にデッドにならないよう、低域のコントロールに腐心したということで、壁面内部の吸音層の一部にAGSを使用するなどの処置が施されている。壁の内部にAGSが使用されている例は珍しいのではないだろうか。
📷株式会社角川大映スタジオ ポストプロダクション 技術課 竹田直樹 氏(左)、同じく山口慎太郎 氏(右)。システム設計においては主に竹田氏が主導し、現場での使いやすさや内装デザインなどは山口氏が担当された。
文字通り最新のテクノロジーをフル活用しシンプルな機器構成で大規模なシステムを実現しているマシンルームとは裏腹に、居住性を重視した和モダンな内装となった角川大映スタジオダビングステージ。待望の国内3部屋目となるDolby Atmos Cinema対応も果たした本スタジオで、これからどのような作品が生み出されるかが楽しみだ。それだけでなく、Dolby Atmos Cinema制作のためのダビングステージが増えるということは、国内におけるDolby Atmos作品の制作を加速させるという意味も持つ。今回の改修が国内のコンテンツ産業全体へ与えるインパクトの大きさも期待大だ。
📷ダビングステージがあるポストプロダクション棟。手前の建物1Fの食堂では、新旧ガメラを見ながら食事ができる。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
Support
2024/07/08
Pro Tools Dolby Atmos関連ノウハウビデオ情報
2023.12よりPro ToolsにDolby Atmos Renderer機能が追加され、制作環境がまた大きく構築しやすくなったDolby Atmos。AvidよりそんなPro Tools内部レンダラーについてのノウハウビデオが公開されています。スタンドアロンのRendererとはまた異なる設定が必要な内部レンダラーをこのビデオを見て使いこなしましょう!
Pro Tools Dolby Atmos 内部レンダラー
まずはこちらの動画で、基本的な機能や設定、操作について確認できます。内部レンダラーの初期設定において肝となるのがモニターパス設定ですのでお忘れなく。
リレンダラー機能及び設定解説
ダウンミックスやラウドネス管理には欠かせないリレンダラー機能についてのビデオです。
カスタム・ライブリレンダラー機能を応用したステム出力方法
Group設定をしておけば、Groupごとのソロ、ミュートのほかステム書き出しまで活用することができます。
Apple Music空間オーディオ・バイノーラル・モニター設定
AudiomoversのBinaural Renderer For Apple Musicを組み合わせれば、Logic ProでなくてもApple空間オーディオを意識したモニタリングが可能です。(購入はコチラ)
HDX DSPを使ったAtmos環境下での低レーテンシーモニター設定
まさにProToolsの内蔵機能ならではの使い方が可能。HDXシステムやハイブリッドエンジンをお使いの方は知っておいて損はない情報ですね。
まだ対応するPro Toolsをお持ちでない方は、アップグレードでDolby Atmos制作環境をGETしてみてはいかがでしょうか!
Pro Tools Ultimate 永続版アップグレード
在庫限り旧価格 ¥57,750 (本体価格:¥ 52,500)
Rock oN eStoreで購入
Support
2024/06/14
Dolby Atmos Renderer v5.3.0 リリース情報 ~レンダリングプロセスの改善やStereo Directモニタリングが搭載~
Dolby Atmos Renderer v5.3.0 がリリース レンダリング処理による問題を解決
Dolby Atmos Rendererの最新バージョンv5.3.0がリリースされました。前回v5.2.0にて実装されたレンダリング処理への問題の報告を受け、v5.1.0までと同じ旧来のレンダリングプロセスへと戻る更新となりました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v530
v5.3.0の主な変更点
サイズ・メタデータのレンダリングをDolby Atmos Renderer v5.1以前と同様の処理に更新
v5.2.0のレンダリングでは、以下の問題が報告されています。
*オブジェクトのサイズに応じてコムフィルターがかかる可能性がある(センターにパンしたドライボーカル信号で顕著)
*新しいレンダリングプロセスに導入されたオールパスフィルターは、以前のツールバージョンと比較して、大きなトゥルーピーク・ラウドネスの違いを生む可能性がある
よって、レンダリング処理をv5.1以前のものへと戻し、オールパス・フィルターは削除されました。
同様の問題が発生する可能性のあるDolby Atmosツールと、その修正バージョンは以下の通りです。
すべてのオブジェクトとベッド・チャンネルに適用されるオールパス・フィルター(Dolby Atmos Renderer v5.2で導入)を削除し、Dolbyツール間のTrue Peakラウドネスの差を低減
ラウドネスの測定方式をDolby Atmos Album Assembler v1.4と同様に統一
新しくモニタリングとリレンダーのレイアウトとしてStereo Directを追加。
Stereo Directとは
Stereo Directが追加のモニタリングおよびリレンダリング・レイアウトとして追加されました。Stereo Directは、レイアウトを介してダウンミックスされるのではなく、Atmosミックスから直接作成されます。ADMにはエクスポートされません。別の成果物としてリレンダリングしエクスポートができます。LFE信号は含まれていません。
このモニタリングおよび再レンダリング出力のトリムは、「トリムとダウンミックス」ウインドウで調整できます。ステレオダイレクトの音量をUIに表示するには、環境設定でヘッドフォン出力をステレオダイレクトに設定してください。
トランスポートタイムラインを追加
スペースバーの再生動作を変更するオプションを追加
マスターの開始/終了が、最も近いサブフレームに丸められた形で表示されるよう変更
マスターの開始/終了をトップパネルのサブフレームに表示するオプションを追加
AmbixリレンダリングのラベルをAmbiX ACN0(W)、AmbiX ACN1(Y)、AmbiX ACN2(Z)、AmbiX ACN3(X)に変更
環境設定でスリープオプションを表示しないよう変更(Macのみ)
レンダラーのトランスポートを制御するOSCコマンドに対応
Avid MTRX IIとThunderbolt™ 3オプションモジュールを認定システムに追加
修正された問題
macOS Sonoma 14.4およびVentura 13.6.5以降では、AppleのCore Audioによるセキュリティと安定性の向上のため、Dolby Atmos Renderer 5.2(およびそれ以前)のインストールに失敗する問題を修正
オブジェクトにサイズメタデータが含まれ、特定の位置に配置されている場合、書き出されたMP4のオーディオが無効化されたゾーンを無視する問題を修正
新しく発見された問題
Dolby Atmos Album AssemblerとDAWを同時にDolby Atmos Rendererに接続すると、予期しないメタデータがマスターファイルに書き込まれることがあります。接続すると、Dolby Atmos Album AssemblerがRenderer のプログラムレベルのメタデータ設定に影響します。(PRAU-6597)
リリースノート全文はこちら(原文):https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v530/release-notes
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの“製品”(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築に関するお問い合わせはROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2024/03/08
Pro Tools 2024.3 リリース!Dolby AtmosやMIDI関連機能が強化
Pro Tools 2024.3がリリースされました。Pro ToolsとSibelius間のMIDIコピー&ペーストやMIDIプラグインなどの音楽制作に関連する機能の強化のほか、Dolby Atmosのリレンダリングにカスタム・リレンダリング・オプションが追加されるなど、作曲/ポストプロダクションの両面で作業効率を大幅に改善する充実したアップデートが図られています。
有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.3をダウンロードして使用することが可能です。
Pro Tools 2024.3新機能の詳細についてはこちら(Avidブログ日本語)>>
MacOS 14.3 SONOMA サポートと既知の不具合
Pro Tools 2024.3はmacOS 14.3に対応していますが、テスト中にいくつかの不具合が確認されています。macOS 14.3 SONOMAでPro Toolsを使用することを検討中の方は事前に必ず下記リンク先の内容をご確認ください。
Pro Tools の macOS 14.x Sonoma 対応状況 (既知の不具合) - Avid Knowledge Base
ビデオ・エンジン無効の維持
ビデオを含むセッションを開くときでもビデオ・エンジンを有効にする必要がなくなりました。作業時にビデオを表示する必要がない場合に、そのリソースを節約できます。
Dolby Atmos カスタム・ライブ・リレンダリング
Pro Tools 2023.12で実装されたPro Tools内部Dolby Atmos Rendererに「カスタム・ライブ・リレンダリング」機能が追加され、Pro Tools 2024.3では、バイノーラル、2.0、5.1、7.1、5.1.2、5.1.4、7.1.4 (Pro Tools StudioおよびUltimate)、9.1.6 (Ultimate) のカスタム・ライブ・リレンダリングが可能になりました。これにより、あらかじめ遅延補正がかかった状態、さまざまなプラグインを使用した状態でリレンダリングをおこなう際の柔軟性が大幅に向上しています。
その他、Dolby Atmos関連では以下の機能強化がおこなわれています。
カスタム・ベッド・サブパス:Dolby Atmosタブのベッドにカスタム・サブパスを追加できるようになり、Dolby Atmosを利用した以前のPro Toolsセッションとの柔軟性と互換性が向上
追加のADMメタデータ:WAV ADM BWF ファイルに関する追加情報を、セッションデータのインポート・ウィンドウで表示
ADMインポートの簡素化:WAV ADM BWFファイルをインポートする際に、互換性のあるパスを再利用するようになり、必要な I/O設定構成の量が減少
Dolby Atmos Rendererウィンドウのローカライズ
MIDIプラグイン
MIDIトラックにインサートすることで、アルペジエイターやピッチシフターをプラグインチェインと同じように扱うことが可能になりました。これまで、複数のMIDIトラックを使用して複雑なルーティングを組む必要があったMIDI関連のワークフローを一気に改善する画期的な機能と言えるでしょう。
MIDIプラグイン、MIDIチェインのコンセプトについては、こちらのAvidブログに詳細が記載されています。
Pro Tools - Sibelius間でのMIDIコピー&ペースト機能
こちらもワークフローを大幅に改善する機能追加!Pro ToolsとSibeliusの間でMIDIデータをコピー&ペーストできるようになりました。Pro Toolsで制作した楽曲からスコアやパート譜を作成したり、Sibeliusで書いたパッセージをPro Tools上で確認しながらブラッシュアップしていくような作業を効率的におこなうことができるようになりました。
この機能の詳細はこちらのAvidブログで確認できます。
Sketch関連アップデート
Pro Tools内部で、Sketchウィンドウと編集ウィンドウ間でのドロップ&ドロップ機能がより充実しました。Sketch iPadアプリではコンテンツの増加やカウントオフ機能の追加などがおこなわれています。
ARAタブ、クリップエフェクトタブの独立表示
Pro Toolsウィンドウ下部に表示される、MelodyneのARAタブ、および、クリップエフェクトタブを独立して表示できるようになりました。ウィンドウの大きさを調整することも可能です。
新機能が追加されても、それを実行するために手間がかかってしまっては本末転倒。今回のアップデートはワークフローを大幅にスピードアップできる充実したものと言えるのではないでしょうか。
Pro Toolsのアップデートに関するお問い合わせをはじめ、HDXシステム構築やスタジオ設計についてのご相談はROCK ON PROまでお気軽にご連絡ください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-expiration/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-pro-tools-studio/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2023-12-support-resource/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-perpetual-new-license-get-revival/
Event
2024/02/08
UVERworld、”男祭り”ライブ映画がDolby Atmosで期間限定上映!
2023年7月30日に日産スタジアムにて開催された「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」。72000人の観客と共に作り上げたこのライブの映像作品が2024年2月9日(金)より期間限定にて全国劇場公開、3月6日(水)にBlu-ray & DVDにてリリースされる。
2011年に滋賀のライブハウスB-FLATでファンクラブの男性会員230人からスタートしたUVERworld名物の男性客限定ライブ“男祭り”。その後年々開催規模は拡大し、2019年に開催された東京ドーム公演「KING’S PARADE 男祭り FINAL at Tokyo Dome」では45000人を動員して一度は幕を閉じた企画であったが、コロナ禍を経て昨年7月に堂々の復活を遂げたのが本作に収録される公演だ。
その本作について、Dolby Atmos Mixのチェックもここで行われたというWOWOW 試写室での試写会にご招待いただき、音響制作陣にインタビューさせていただいた。詳しい内容は、次号Proceed Magazineでレポートする予定だ。
Dolby Atmosで表現する熱狂のライブ
📷左から、八反田 亮太氏(VICTOR STUDIO レコーディングエンジニア)、戸田 佳宏氏(WOWOW 技術センター 制作技術ユニット エンジニア)
UVERworldの“男祭り"がDolby Atmosでライブ映像化されるのは2019年の東京ドーム公演に引き続き2度目。前作に引き続いて今作でも音響制作をVictor Studio 八反田亮太氏、WOWOW 戸田佳宏氏が手がけられている。
前回の経験を活かし、また異なる表現に挑んだという本作。バンドとオーディエンスの圧倒的な熱量を再現するために、200ch近くに及ぶ収録や、このライブならではのオーディエンスが特徴的なミキシングについて伺うことができた。他のライブでは体感できない"男祭り"の空気が追体験できる作品となっている本作。是非劇場でご鑑賞いただいた上で、次号Proceed Magazineのレポートをお楽しみに。
現時点で発表されている情報では、本作をDolby Atmosで鑑賞できるのは今回の劇場公開時のみとなっている。見逃すことなく、全国のDolby Atmos対応シアターでこの熱狂をご体験いただきたい。
作品情報
「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」
2024年2月9日(金)より期間限定公開
※期間については各劇場にお問い合わせ下さい。
出演 :UVERworld
製作 :Sony Music Labels Inc.
配給 :WOWOW
特設サイト: https://uverworld-kingsparade2023-movie.com/
©Sony Music Labels Inc.
Event
2024/01/12
福山雅治”初”のライブフィルムにおけるDolby Atmos制作の取り組み 〜ライブを超えたライブ体験を作るために〜
福山雅治によるライブ映画『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』が、2024年1月12日(金)からのDolby Cinema他先行上映を皮切りに全国上映される。公開に先立ち、1月9日に特別上映会と音響制作陣によるトークセッションが行われた。会場はDolby Cinema環境を備えるIMAGICAエンタテインメントメディアサービス 第2試写室。詳細は次号のProceed Magazineで掲載する予定だが、ひと足早く本作における実験的なDolby Atmos制作のポイントについてお伝えしたい。
監督・福山雅治による”理想のライブ”体験を作る
本作は、2023年夏に開催された福山雅治の武道館公演の様子を、福山自らが監督を務めて映画化した作品だ。映像面では、ドローン撮影を含めた40台以上のカメラによる全方位撮影が行われ、Dolby VisonによるHDR映像が採用された。そして音響面では、128chのライブ収録音源を元にした、Dolby Atmosによるイマーシブサウンドが採用されている。本作において監督・福山雅治が目指したものが、ライブの擬似体験ではなく”ライブを超えたライブ”体験、即ち「究極のライブの理想像」であったという。そして、その監督のリクエストに柔軟に応えるため結成されたのが、染谷 和孝氏、三浦 瑞生氏、嶋田 美穂氏による音響制作チームであった。
📷左から、染谷 和孝氏(株式会社ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー)、嶋田 美穂氏(株式会社ヒューマックスシネマ HAC事業部 リレコーディングミキサー マネジャー)、三浦 瑞生氏(株式会社ミキサーズラボ 代表取締役社長 レコーディング、ミキシングエンジニア)
トークセッションでは、ライブの再現ではない理想のライブ体験の創造のため、本作における数々の実験的な取り組みについて解説されていた。制作としては始めに長年福山雅治の作品に携わられている三浦氏によってステレオミックスが制作され、そのステムデータを元に、Dolby Cinemaでのライブ映画制作は3本目となる染谷氏、既に多くのイマーシブミックスやライブ作品を手がけられてきた嶋田氏によってDolby Atmos版の制作が行われていった。
チームで取り組むDolby Atmosライブ作品制作
大規模なDolby Atmos制作にはこういった複数人による分担作業や、濃密な打ち合わせが鍵であるという。それもそのはず、最終的に1TBを超えたという量の音源データをどうやり取りしていくかは、音楽制作と映画音響双方の理解が必要となる。また、ここまでのデータ量となったのは、イマーシブ特有のトラック数の多さの他に、あらゆる修正へ対応するための準備でもあったという。福山自身が武道館で感じているという天井から降ってくるかのようなオーディエンスや、スタジオ録音した音源の併用など、作品コンセプトである福山の脳内にある理想のライブを形にしていくための数多くの実験が、唯一無二のライブフィルムを完成させた。
ステレオとDolby Atmosで共通する作品イメージは共有されていたとのことだが、ステレオ環境とDolby Atmos環境では聴こえ方が変わるのもまた事実だという。特に、スピーカー数による空間解像度の違いから、ステレオではマスクされ聴こえない音がAtmosでは聴こえるケースや、その逆なども発生する。嶋田氏によると、なかでも影響してくるのが音源中のノイズ成分であったという。そのため、iZotope RXを用いたレストレーション作業には多くの時間を要し、イマーシブを意識してノイズを消しすぎず空気感を残す修正が行われた。
Dolby Atmosを意識したマイキングやDolby CinemaコンテンツをDolby Atmos Home環境で仕込む際の注意など、本作の更なる詳細な取り組みについては次号Proceed Magazineでお伝えする予定だ。
本編136分ぶっ通しで超濃密なライブ体験を味わえる本作。ステージ上の本人が監督したライブフィルムは、観客席からの景色や他のライブ映像とは異なる体験に仕上がっており、新たな表現へ挑戦する作り手の熱気を感じた。ファンの方はもちろんのこと、イマーシブ体験に興味のある多くの方にDolby Cinemaへ足を運んでいただきたい作品である。
作品情報
『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』
2024年1月12日(金)よりドルビーシネマ他にて先行上映
2024年1月19日(金)より全国ロードショー[4週限定]
監督:福山雅治
出演:福山雅治、柊木陽太
配給:松竹
製作:アミューズ
©︎2024 Amuse Inc.
公式サイト:fukuyamamasaharu-livefilm.com
Dolby AtmosはCinemaもHomeも、制作環境構築はROCK ON PROまでご相談ください!
NEWS
2023/12/19
Dolby Atmos Album Assembler v1.3 リリース情報
Dolby Atmos Album Assembler v1.3
Dolby Atmosでミックスされた楽曲やアルバムの仕上げを簡単に行うことができるツール、Dolby Atmos Album Assemblerの最新バージョンv1.3がリリースされました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13
v1.3の主な変更点
新機能/改善:
・ プロジェクトを開いたときに、見つからないオーディオファイルへの再リンク
・ タイムライン上に見つからないクリップを表示
・ ステレオリファレンスファイルのサンプルレート変換(サポートされているサンプルレートは44.1、48、88.2、96、176.4、192 kHzです。インポート時に、ファイルはプロジェクトのサンプルレートと32ビット深度に変換されます。)
・ Preferencesのサンプルレートセレクター(Preferencesウィンドウから、Assemblerプロジェクトのサンプルレートを設定可能)
・ LFEローパスフィルター
・ Dolby Atmosエコシステム(Dolby Atmos Renderer v5.2およびAlbum Assembler v1.3を含む)全体の新しいレンダリング処理により、空間コーディングのクラスタリング処理がレンダリング、モニタリング、ラウドネス信号チェーンから削除されました。クラスタリング処理は知覚上透明(=perceptually transparent)であったため、これによるレンダリングへの聴感上の違いは生じません。
これによる利点:
- リアルタイムのレンダリングとラウドネス測定におけるCPU負荷の軽減
- オフラインラウドネス測定の高速化
・ サイズ・メタデータのレンダリング処理が改善され、バイノーラルや小型スピーカーレイアウトへのレンダリング時に、サウンドの改善とラウドネス蓄積※の軽減を実現(※:音が過剰に重なり、聴感上の音量が上がること)
・ Dolby Atmosエコシステム全体におけるラウドネス測定の調整(すり合わせ)
・ Dolby Atmos Renderer v5.2をサポート
・ 5.1.4トリム・プログラム・レベル・メタデータのサポート(存在する場合)
・ 他のDolby Atmosコンテンツ作成ツールに合わせてUIコンポーネントを更新
修正された問題:
・ Renderer v5.2以降でステレオ・リファレンス・トラックをモニタリングする場合、モニタリング・チェインは本来のステレオをパススルーさせるため、すべてのバイノーラル処理をバイパスするようになりました。(GANYMEDE-1987)さらに、レンダラー側に"Stereo reference on"状態のステータスが表示されます。
・ コンテンツによっては、ラウドネスを複数回測定すると、それぞれの測定結果が±0.1だけ異なることがありました。これは、同じコンテンツをAlbum AssemblerとDolby Atmos Rendererで測定しても確認できました。これは起こりうる丸め誤差でした。(ganymede-1731)
・ 過去にラウドネス測定を保存したプロジェクトでラウドネス解析を行うとき、解析をキャンセルするとラウドネス設定がデフォルトにリセットされる問題を修正しました。(ganymede-2348)
・ Dolby Atmos Renderer v5.1 において、トリム、ダウンミックス、バイノーラル Renderer モードのメタデータ変更が、(タイムスタンプされたサンプル位置ではなく)約 1536 サンプル早く発生していました。このトランジションは、前のクリップの終わり、またはクリップ間の無音のギャップで発生していました。メタデータのトランジションが正しいサンプル位置で発生するようになったため、聞き取れるようになった可能性があります。(GANYMEDE-2338) および (GANYMEDE-1549)
リリースノート全文はこちら(原文):
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13/release-notes
システム要件
・ Dolby Atmos Renderer v5.2以上(別途購入が必要) ※必要なコンピュータおよびOSについては、レンダラーに同梱されているマニュアルを参照してください。
・ Dolby Atmos Renderer v5.2がサポートするMacOS VenturaまたはSonomaのバージョン
・ iLokアカウント(ライセンス認証用)
【参照】Dolby Atmos Renderer v5.2.0リリース情報:
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-2/
入手方法
・90日間体験版 (Dolby Customer サイトでサインアップ&サインイン後にDL可能です)
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13
・AVIDストアでライセンス購入
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-album-assembler
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
↓ぜひこちらの記事もあわせてご確認ください
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-2/
Support
2023/12/15
Dolby Atmos Renderer v5.2.0リリース情報 〜 レンダリング処理の改善 やMac Studio M2 Ultra / macOS 14.1.1に対応 〜
Dolby Atmos Renderer v5.2.0 がリリース レンダリング処理の変更による改善
Dolby Atmos Rendererの最新バージョンv5.2.0がリリースされました。今回のリリースではレンダリング処理の変更を伴いますので、アップデートをご検討される方は必ず本記事を最後までお読みください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520
v5.2.0の主な変更点
新機能/改善:
・ Dolby Atmosエコシステム(Dolby Atmos Renderer v5.2およびAlbum Assembler v1.3を含む)全体の新しいレンダリング処理により、空間コーディングのクラスタリング処理がレンダリング、モニタリング、ラウドネス信号チェーンから削除されました。クラスタリングの廃止は、クラスタリング・プロセスが知覚上透明(=perceptually transparent)であったため、レンダリングに聴感上の違いは生じません。
これによる利点:
- リアルタイムのレンダリングとラウドネス測定におけるCPU負荷の軽減
- オフラインでのラウドネス測定とADM BWF .wavファイル書き出しの高速化
・ サイズ・メタデータのレンダリング処理が改善され、バイノーラルや小型スピーカーレイアウトへのレンダリング時に、サウンドの改善とラウドネス蓄積※の軽減を実現(※:音が過剰に重なり、聴感上の音量が上がること)
・ Dolby Atmosエコシステム全体におけるラウドネス測定の調整(すり合わせ)
・ "Speaker calibration"ウィンドウのキーボードナビゲーションを改善
・ MP4エクスポートでハイフレームレートのビデオをエクスポート
・ "Trim and downmix"ウィンドウで、5.1.4仕様のトリムをサポート
・ Dolby Atmos Album Assembler v1.3をサポート
・ Album Assemblerがステレオのリファレンスファイルをモニターしているときにそのステータスを表示
・ Mac Studio 14,14 M2 Ultraに対応
・ macOS 14.1.1をサポート
修正された不具合:
・ 一部のコンテンツで、ラウドネスを複数回測定すると、それぞれの測定結果が+/- 0.1だけ異なることがありました。これは、Dolby Atmos Rendererで同じコンテンツを測定した場合にも見られます。これは起こりうる丸め誤差でした。(PRAU-4305)
・ 旧バージョンのレンダラーを開いているときに Windows に Dolby Atmos Renderer をインストールすると、インストール中に旧バージョンが開いたままになり、新規インストール完了後に不安定になることがありました。(PRAU-2681)
・ 5.1.2 マルチチャンネルインターリーブ形式のリレンダリングを書き出すとき、 WAVEEX ラベルが含まれていませんでした。(PRAU-5984)
完全に解消された不具合:
・ 空間コーディングエミュレーションとスナップメタデータが同時にアクティブな場合、ゾーンマスキングメタデータが無効になっていました。(PRAU-2653)
・ 空間コーディングエミュレーションがオフの状態でステレオ(2.0)で モニターすると、トリムとダウンミックスの設定が適用されていませんでした。(PRAU-3685)
リリースノート全文はこちら(原文):https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520/release-notes
注意:V5.2.0以降ではレンダリングの処理に一部変更があります。
今回発表のV5.2.0以降、空間コーディングのクラスタリング処理が排除されるとのことです。それにより、この移行期間中、新しいレンダリングプロセスと以前のプロセスでコンテンツを測定した場合、ラウドネス測定値がわずかに異なる可能性があることに注意が必要とのことです。この結果はコンテンツに大きく依存するため、Dolbyは全ユーザーへのDolby Atmos Renderer v5.2およびDolby Atmos Album Assembler v1.3へのアップデートを推奨しています。また各DAWに搭載されているネイティブレンダラーについても最新バージョンへのアップデートが推奨されるとの記載があります。(※動作テスト済みのマシン/OS/DAWとなっているかにつきまして、以下"システム要件"より必ずご確認をお願いします。)
重要:先日、2023.12でPro Toolsに統合レンダラーが内蔵されましたが、今回のDolby Atmos Renderer 5.2.0の動作確認済みDAWの対象となっているのは、現時点でPro Tols 2023.9までとなっておりますのでご注意ください。なお、現在AVIDへ問い合わせ中のため、新たな情報が入り次第、本ページへの記載を更新します。(2023.12.15現在)
現在、Dolby Atmosコンテンツ制作ツールでモニタリングとラウドネス測定の両方に使用されているレンダリングプロセスには、空間コーディングのクラスタリングプロセスが含まれています。Dolby Atmos Renderer v5.2、Dolby Atmos Album Assembler v1.3、および今後リリースされるパートナーのデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)から、モニタリングとラウドネスの両方のシグナル・チェーンからクラスタリングを取り除く最新のレンダリング・プロセスに移行します。この変更にはいくつかの利点があり、ラウドネス測定にも影響があります。
>> Dolby Atmos Renderer v5.2 is Now Available (原文)
https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-2-is-now-available?language=en_US
新しいレンダリングプロセスの詳細については、以下のリンクをクリックしてお読みください:
>>Dolby Atmos monitoring and loudness updates for content creators (原文)
https://dolby.my.salesforce.com/sfc/p/#700000009YuG/a/4u000000B3IM/yYycsBj3hEI8M.3T.tbv5L5gwKVPDcV7uwF2wcDdgQE
システム要件
動作テスト済みOS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 11.7.10~14.1.1、Windows 10 Pro* およびWindows 11 Pro* でご利用いただけます。
*1台のコンピュータでDAWからDolby Atmos Rendererにオーディオをルーティングするために必要なDolby Audio Bridgeは、macOSでのみ使用可能です。
Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
サポートされるセットアップについては、公式サイトにサインアップ後閲覧可能なドキュメントを参照してください。
動作テスト済みコンピュータ
・ MacBook Pro 18,21; M1 Max 32 GB RAM
・ MacBook Pro 14,6; M2 Max 32 GB RAM
・ MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB RAM
・ MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac mini 14,12; Apple M2 Pro, 16 GB RAM
・ Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM
・ Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Studio 13,1; M1 Max, 32 GB RAM
・ Mac Studio 14,14 M2 Ultra, 32 GB RAM
動作テスト済みDAW
レンダラーは、Dolby Atmosレンダラーと通信可能なDAW(またはその他のオーディオ録音/編集ソフトウェア)をサポートしています。
・ Avid Pro Tools Ultimate 2022.12~2023.9
・ DaVinci Resolve Studio 18
・ Steinberg Nuendo 12 and 13
・ Merging Pyramix 14 Premium (Windows)
Dolby Atmos Rendererは、Dolby Atmos Music Pannerプラグインを追加することで、macOS上の他のDAWでも使用できます。
詳細はMusic Pannerのドキュメントを参照してください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの"製品"(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2023/12/13
Pro Tools 2023.12リリース〜Dolby Atmos Rendererを内蔵!!
Pro Tools最新バージョンであるPro Tools 2023.12がリリースされました。年間サポートが有効な永続ライセンス、または、有効なサブスクリプションライセンスをお持ちのユーザー様は、Avid Accountから最新バージョンをダウンロードしてご使用いただけます。
Pro Tools 2023.12のもっとも大きなトピックは、待望のDolby Atmos Renderer機能の内蔵!ハードウェア・レンダラーやDolby Atmos Audio Bridgeを使用した外部アプリケーションとしてではなく、Pro Toolsの機能の一部としてDolby Atmosのレンダリングが可能になりました。
その他、このバージョンでは、Pro Tools Sketch機能の拡張、トラック・マーカー機能への追加、I/O設定並びにルーティングへのカラー・コーディング、H.264ビデオへのSame As Source(SAS)バウンス、Native Instruments Sシリーズ・コントローラー対応、その他があります。
詳細は以下のAvid公式WEBサイトも合わせてご覧ください。
Pro Tools 2023.12 新機能紹介
Pro Tools Dolby Atmos Renderer
Pro Tools Sketch 2023.12 新機能
主な新機能
統合型Dolby Atmos レンダラー
ついに、Pro Toolsに待望のDolby Atmos Renderer機能が搭載されました。I/O設定ウィンドウに新たに追加された「Dolby Atmos」タブで設定を行うことが可能です。
新たにサポートされるDolby Atmos内部レンダラーは、Pro Tools StudioとUltimateに含まれ、セットアップ、ミキシング、モニタリングが簡素化され、イマーシブ・ミキシング・ワークフローの効率を向上させます。内部レンダラー機能を搭載することで、Dolby AtmosミックスをPro Tools内でレンダリングおよびモニターできるようになりました。
従来通り、外部レンダラーとラウンドトリップして使用する事も可能ですので、ミキシング用途やワークフローによって使い分けることも可能な統合型Dolby Atmosレンダラー機能搭載のバージョンとして、Dolby Atmos素材の仕込みや作曲段階からファイナルミックスに至るまで、幅広い用途でご活用いただけます。
新しいウィンドウでは、Atmosミックスをさまざまな視点から包括的に視覚化し、マルチスピーカーとバイノーラルのヘッドフォンモニタリングをすばやく切り替えることができます。さらに、新しいI/Oセットアップタブでは、ベッド、オブジェクト、グループ、トリム、ダウンミックスの設定が簡素化され、セッションの一部として保存され、簡単に呼び出すことができます。
Pro Tools Studioでは最大7.1.2Bedまで、Pro Tools Ultimateでは最大9.1.6BedまでのDolby Atmosレンダリングが可能です。
また、リレンダー機能は5.1、バイノーラル、ステレオを使用可能。そして、従来のDolby Atmos Rendererと同様、ラウドネス計測については5.1リレンダリングされたソースを計測している点はご注意ください。
I/O設定並びにルーティングへのカラー・コーディング
I/O設定や内部バスへのルーティングを色分けすることができるようになりました。例えば、ボーカル用やドラム用などに分けて作成してあるリバーブ用のバスを色分けしておくことで、送りたいバスを直観的かつ瞬時に選択することができるようになります。
トラック・マーカー機能拡張
2023.6 リリースで導入されたトラックマーカー機能を使用すると、ユーザーはトラック内に詳細な色分けされたコメントを追加して、音楽とオーディオの両方のポストワークフローを改善できます。
2023.12 では、この機能をベースに、より多くのマーカー・ルーラーで視認性を高め、各ルーラーに特定の目的を持たせて、テキストを表示するスペースを増やすことができます。トラックマーカーは、改善された並べ替え機能とフィルタリングオプションにより、「メモリー・ロケーション」ウィンドウ内でも、より簡単に見つけることができるようになりました。
Pro Tools Sketch 機能強化
2023.12ソフトウェア・リリースでは、SketchとPro Toolsセッション間の新しい相互運用性が導入され、新しいオーディオ・エフェクトが追加され、MIDIワークフローの改善などが追加されています。
MIDIクリップをスケッチ・ウィンドウからPro Toolsのタイムラインにドラッグすると、さらに操作するためにMIDIとして保持するか、オーディオとしてレンダリングするかを選択できるようになりました。逆に、Pro ToolsからSketchウィンドウにオーディオ・クリップをドラッグする際に、処理されたサウンドを維持するために、シグナル・チェーン全体(プラグイン処理、Elastic Audio、クリップ・エフェクトなどを含む)をレンダリングするオプションが追加されました。
このリリースでは、Sketchでクリップを微調整する新しい方法を提供するフィルターゲートエフェクトも追加されています。最後に、デスクトップのメディア・ブラウザーの改善により、ループやサンプルへのアクセスが容易になります。SketchをPro Toolsセッションに直接埋め込むこともできるようになりました。
全Pro Toolsサブスクリプション新規が20%オフ!Avid年末プロモーション開催中!!
最新バージョンがリリースされたばかりのPro Tools。Artist、Studio、Ultimateの全サブスクリプション(アカデミック版を除く)が対象の年末プロモーションも開催中!
サブスクリプションは新規と更新に価格差がないので、「今すぐ最新バージョンを使いたい!」という方はぜひ本プロモーションのご利用をご検討ください。
Avid年末プロモーションの詳細はこちらの記事でご確認ください!
9938-31154-00 Pro Tools Artist Annual Paid Annually Subscription - NEW
通常価格:¥15,290(本体価格:¥13,900)
→年末プロモーション特価¥12,232(本体価格:¥11,120)
Rock oN Line eStoreで購入>>
9938-30001-50 Pro Tools Studio Annual Paid Annually Subscription Electronic Code - NEW
通常価格:¥46,090(本体価格:¥41,900)
→年末プロモーション特価¥36,872(本体価格:¥33,520)
Rock oN Line eStoreで購入>>
9938-30123-00 Pro Tools Ultimate Annual Paid Annually Subscription Electronic Code - NEW
通常価格:¥92,290(本体価格:¥83,900)
→年末プロモーション特価¥73,832(本体価格:¥67,120)
Rock oN Line eStoreで購入>>
オーディオ・ポストプロダクションのワークフローに大きなインパクトを与える機能が多数追加されたPro Tools 2023.12。導入、お見積のご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください。
ROCK ON PROでは、Pro Tools HDXシステムをはじめとしたスタジオシステム設計を承っております。スタジオの新設や機器の更新をご検討の方は、ぜひ一度弊社へご相談ください。
Review
2023/09/18
SOUNDTRIP 2023 / Apogee Studio / 製品開発現場におけるDolby Atmos環境
Apogee Electronics社が持つApogee Studio。本社に隣接するスタジオでのDolby Atmosへの取り組み、製品と連携して育まれるテクノロジー。アメリカでのDolby Atmosへの興味、関心などを含めてレポートしていきたい。Apogeeはデジタルレコーディングを牽引してきたレジェンドとも言えるメーカーであるが、改めてそのレコーディング業界における功績を振り返るところから始めていこう。
時代を作った銘機と隣接したスタジオ
1985年に3人の創業者により設立されたApogee。正式な会社名としてはApogee Electronics Corpである。3名の創業者のうちBetty Bennettは、現在も同社の社長を務めており、Bob Clearmountainの妻としての顔も持つ人物である。今はAudio Interfaceメーカーとして認知されているApogeeだが、そのルーツはDigital Filterにある。デジタルレコーディングの黎明期である1980年代に、当時新しいリスニングメディアであったCDのデジタル歪みなど、デジタルメディア特有の問題を解決する技術をリリースしている。Apogeeの924 / 944 Anti-Aliasing Filterは、瞬く間に評価を得てリリース翌年の1986年には業界標準のデジタル・マルチトラック・レコーダーであったSONY PCM-3324、その互換機を製作していたMitsubishiのオプションとして採用されている。このフィルターは「冷たい」「硬い」と言われていたデジタル音声を、アナログライクなサウンドにすることができる魔法のようなフィルターであった。
次にリリースしたのが、AD-500 / AD-1000。このAD/DAコンバーターではUV22と呼ばれる画期的なディザーを登場させる。UV22ディザーは、その名前を見ることは少なくなったもののYAMAHAを始め多くの3rd Partyメーカーが採用した技術だ。Digital Filter、そしてディザーと画期的な技術を発表するApogeeはデジタル・オーディオの持つ持病のようなデメリットを、次々と過去のものへとしていった。
そして1997年にはAD-8000をリリース。Pro Toolsでのレコーディングがスタジオに浸透し始めた時期に登場したこの8ch AD/DAは、サウンドにこだわるスタジオの代名詞ともなっていた。当時、アナログレコーディングにこだわるエンジニアもAD-8000であればデジタルでも大丈夫、とPro Toolsへの移行を加速させた機材のひとつ。その後、Master Clock GeneraterであるBig Ben、ホームレコーディングに向けたEnsemble、Duet、さらにはiOS対応のONE、JAM、Micなどとターゲットを明確にした製品をリリースしていく。
📷往年のApogee製品ラインナップ。リリースした製品数は少ないものの、すべてが歴史を彩る銘機と呼ばれるのもばかり。1990年代のデジタルレコーディングを支えたAD-500/1000/8000は時代を代表するサウンドを作ったもの。その伝統のサウンドは現行の製品にしっかりと受け継がれている。左下のプラグインのようにUV22は様々な他メーカーの製品でも採用されディザーの重要性を業界に知らしめたApogeeの技術を象徴する製品だ。
このようにApogeeの歴史を振り返ると、時代を作った銘機が揃っていることがわかる。確固たる技術、サウンドへのこだわり、イノベーションを持った製品をリリースするメーカーであり、今日のデジタルレコーディングのベースとなる技術はApogee由来のものが数多く存在する。そのベースには、本社に隣接するApogee studioの存在が大きく関わってくる。実際のレコーディングの現場が機材を開発しているオフィスの隣にある。しかもそのスタジオをメインで使用しているのはBob Clearmountain氏であり、そこからのフィードバックを得て製品開発、チューニングを行っているということを考えるとApogeeの製品クオリティーの高さにも納得がいく。また、一部のエントリーモデルを除き、プロシューマ向けの製品はすべて本社で生産しているというのもApogeeのこだわり。一部のブティック・ブランド、ガレージメーカー以外でMade in USAというのは今や貴重な存在だ。
メーカースタジオもイマーシブ対応へ
それでは、Apogee Studioの紹介に移りたい。本社の隣にあるApogee Studioは、Old Neveをメインコンソールに据えたレコーディングスタジオ。近年はライブパフォーマンスの配信なども行っているそうだ。このスタジオも7.1.4chのイマーシブ対応に改装がすでに行われていた。Old Neveのアナログコンソールに、7.1.4chのスピーカーセット。アンバランスに感じなくもないが、それだけイマーシブミックスの需要が高いということだろう。
📷Old NEVEのコンソールが据えられたApogee Studioのコントロールルーム。モニタースピーカーはNeumann KH310での7.1.4chとなる。もちろん、Audio InterfaceにはApogee Symophony mk2。Appleとの関係も深いApogeeらしく、Logic ProでのDolby Atmosミキシングのデモも見せていただいた。
スピーカーはすべてNeumann KH310で統一されている。1980年代〜1990年代にラージモニターとアナログコンソールでの作業を行ってきたエンジニアがNeumann KHシリーズを愛用しているケースが多いように感じるのは筆者だけだろうか?ラージモニターのような豊かなローエンドを持つこのシリーズ、特に3-wayのKH310がお気に入りだということだ。実際にそのサウンドも聴かせてもらったのだが、様々な機材が置かれたコントロールルームでのイマーシブ再生ということを考えると反射が多く理想的とは言えない環境ではあったが、Apogee Symphonyの持つストレートでトランジェントの良いサウンドとNeumann KH310の豊かなボリューム感により、直接音の成分が多く部屋の響きが持つ雑味をあまり感じることもなくイマーシブ再生を聴くことができた。部屋としてのアコースティックを大きく変えることは難しいが、このように機材のセレクトによりその影響を軽減できるということはひとつの大きな経験となった。
もちろん、イマーシブミキシングの際にNeveアナログコンソールの出番はない。このコンソールはステレオ仕様となるためモニターセクションとしての利用もできない。それでもレコーディングを行うということにおいて、誰もが憧れる素晴らしいサウンドを提供することに疑いの余地はないだろう。ミキシングルームを別に用意することが多いイマーシブのミキシングルーム。別記事でも紹介しているVllage Studioもイマーシブ・ミキシングのためのスタジオは、収録用の部屋とは別のAvid S6が設置された部屋である。
それでもイマーシブ対応を果たしている理由は、Apogee Studioが音楽制作のためのスタジオであるとともに、Apogeeの製品開発のための施設でもあるということにほかならない。単純に制作スタジオということであれば、合理的な判断の上で別にイマーシブ・ミキシングルームを作ることになるだろうが、Apogeeがイマーシブ制作の環境を持つということの意味として、Apogeeのプロダクトの使用感、機能のチェックなどにも利用するということになるからだ。
ここで使われているのはもちろん、Apogee Symphony mk2。そしてバージョンアップにより機能が追加されたイマーシブ対応のモニターセクション。そのテストヘッドとしてこの環境が活用されている。さらに、音質面であったり深い部分でのユーザー・エクスペリエンスを確認するために、このほかにも2部屋、合計3部屋のイマーシブミックス環境を整えている。部屋の大きさ、部屋の設備、接続される機材、音の環境、そういったことを様々なケースでテスト、検証のできる環境がここには揃っている。ユーザの目線での製品開発、使い勝手の検証、そういったことを即座にフィードバックできる環境を持っているということもApogeeならではと言えるのだろう。
アメリカ西海岸のサウンドの秘密
もうひとつ用意されたイマーシブ環境のスペースを見ていく。こちらはGenelec the ONEで7.1.4chを構築した部屋。アメリカのスタジオらしく、遮音、吸音といった日本のスタジオのような音響設計は入っていない。正面の角に設置されたベーストラップと調音パネルが数枚設置されているのみである。この部屋はミキシングルームとしての操作デスクをミニマムにしている。PC、Audio Interface、Displayがデザインされたひとつのデスクに収められ、これだけでミキシングのシステムが完成している。
この部屋でもそのサウンドを聴かせてもらった。部屋自体の響きはあるはずなのだが、締まった低域とダイレクトに耳へ届く中高域。吸音は最低限なのに濁りを感じることのないサウンドには驚いた。低域に関しては、やはり床の影響が大きいのではないかと想像している。日本のスタジオは、遮音のために浮床構造を用いて外部からの音の侵入を防いでいる。そのために、部屋自体がその名の通り宙に浮いているような状態となっている。音というのは振動であり、その振動を遮断するということが遮音ということになる。アメリカのスタジオはどこも床はコンクリート。平屋の建物が多いロサンゼルスということもあり、地面からそのままコンクリートを流し込んだ床になっているのだろう。日本であれば、湿気を抜くためにも床下には空間を設けるのが常識となっているが、乾燥したアメリカ西海岸ではその必要が少ないのかもしれない。この床の安定感、重厚さ、そういったものが低域のタイトな響き、アメリカ西海岸のサウンドの秘密なのかもしれないと感じたところだ。
Old Neveのミキサーが鎮座するスタジオとは全く方向性の異なるサウンドではあるが、やはりここもApoogee Symphonyのサウンド。使い勝手はもちろん、そのサウンドキャラクターを確認するのに、これだけ異なった環境で聴き比べを行うことができるというのは、サウンドチューニングにとっても大きな意味を持っているのだろう。
📷リビングルームのような、開放感のある部屋に設置されたGenelecでの7.1.4chのスピーカーシステム。デスクは最小限のスペースにPC本体を含めて設置できるように設計されたカスタムデスクが置かれていた。アコースティックチューニングは最低限。音を聴きながらのチューニングの結果がこのような形で結実している。
ユーザーの利用環境もシミュレート
📷iLoudで構築された7.1.4chのミキシングルーム。イマーシブ制作を行うミニマムなシステムにおいてApogeeの製品の使い勝手などを確認するためのシステムアップがなされている。
最後に、片付いていないので、とかなり遠慮されていたのだが、ホームスタジオであればどのような環境になるか?ということをシミュレーションするためのミキシングルームを見せてもらった。ここでは、iLoudのスピーカーで7.1.4chが構築されている。イマーシブミキシングを行う上で、ミニマムな環境でのテストケースを検証しているということだ。このように、ユーザーの利用環境をシミュレートしながら、実際に作業をしてみてどうなのかというケーススタディを積み重ねていることがよく分かる。そして、次の制作環境としてターゲットとしているのが、すべてイマーシブ環境だということは特筆すべきポイント。アメリカでのイマーシブ制作の盛り上がりを強く感じずにはいられない。実際のところ、Bob Clearmountain氏へ過去に自身がレコーディングをおこなったヒットソングのイマーシブミキシング依頼が殺到しているということだ。このような新しいフォーマットへのムーブメントが感じられるのは本当に素晴らしい。過去作品のイマーシブミキシングも素晴らしいことだが、新譜、特にイマーシブを前提に制作された楽曲の盛り上がりも楽しみにしたい。
Apogeeの歴史、イノベーション、テクノロジーといったベースから、ユーザー目線での製品開発、イマーシブ時代の到来を感じさせるApogee Studioの進化。そのようなものを感じ取っていただけたのではないだろうか。この場で伝えたいことが数多く内容も多岐に渡ったが、このようなメーカー開発の現場での事例からも、アメリカでのDolby Atmos、イマーシブサウンドへの期待感が滲み出ていることが感じられる。是非ともこの感覚を共有していただければ嬉しいかぎりだ。
*ProceedMagazine2023号より転載
Support
2023/07/21
Dolby Atmos Conversion Tool v2.1.2 リリース情報
Dolby Atmos マスターファイルの編集やサンプルレート変換を行うためのソフトウェア、Dolby Atmos Conversion Toolのv2.1.2がリリースされました。
◎Dolby Atmos Conversion Tool v2.1.2
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v210
Dolby Atmos Conversion Toolとは?
Dolby Atmos Conversion Tool(ドルビーアトモスコンバージョンツール)は、Dolby Atmosコンテンツをシネマやホームシアター用に変換するために使用することができます。
「.atmos」「BWAV」などへのファイル形式の変換や、マスターファイルの編集・結合、フレームレート変換などの処理が可能です。
2023.7.21 追記
今回リリースされたv2.1.2で以下の修正が行われました。
[Composition]ウィンドウで、スタートタイムまたはFFOAが1秒に満たない(= フレーム値が00でない)マスターをトリミングした後、変換結果のスタートタイムまたはFFOAがトリミング後の設定と一致しないことがある問題が修正されました。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v212/dolby-atmos-conversion-tool-v212-release-notes/new-in-version-212
◎Dolby Atmos Conversion Tool v2.1 新機能
・96kHz ADM BWFマスターファイルの編集、結合、変換
・"Maintain pitch and length"スイッチにより、ピッチを変えずにフレームレート変換
・サンプルベースのトリミングとパディング、マスターに書き込まれる5.1および5.1.xダウンミックスの設定を指定する "Command-line only"オプション
・SMPTE ST 377-41:2021 に規定される新 IAB IMF グループメタデータの追加
・macOS Ventura、Windows 11に対応
・Appleシリコンをサポート
・UIデザインシステム更新/新アプリケーションアイコン追加
・DCPのIABフォーマットラベルを"Cinema MXF"へ変更
New features include:
・Ability to edit, join, and convert 96 kHz ADM BWF master files
・Frame rate conversion without changing pitch via the Maintain pitch and length switch
・Command-line only options for sample-based trimming and padding, and specifying 5.1 and 5.1.x downmix settings written to the master
・New IAB IMF group metadata, as specified in SMPTE ST 377-41:2021
・Support for macOS Ventura and Windows 11
・Apple silicon support
・UI design system update / New application icon
・Changed DCP IAB format labels to Cinema MXF
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v210
システム要件
Dolby Atmos Conversion Tool v2.1.2は、これらのオペレーティングシステムでのみ使用することが許可されています:
・Linux (※Dolby Atmos Conversion Tool command-line applicationのみ):
- RedHat 7.3
- Ubuntu 16.04 LTS, 18.04 LTS, and 20.04 LTS
・Mac:
- macOS 10.13 〜 13.2.1 (Appleシリコンを含む)
・Windows:
- Windows 10 (64 bit)
- Windows 11 (64-bit)
◎入手方法
Dolby Atmos Conversionは、Dolby Customer Webサイトへサインアップ&サインイン後、ダウンロード可能です。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v210
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZEcva-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023-nestream/#.ZEcveezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.ZEcvg-zP0-Q
Support
2023/07/21
Dolby Atmos Renderer v5.1 リリース情報 〜 Production SuiteとMastering Suiteの機能が統合 〜
Dolby Atmos Renderer v5.1 がリリース 新機能が追加
今年3月、Dolby Atmos Production Suite および Mastering Suiteの機能を1つのアプリケーションとして統合し、v5.0として刷新されたDolby Atmos Renderer。新たにv5.1がリリースされ、ヘッドトラッキングデバイスのサポートなど新機能が追加されました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v510
v5.1の新機能
・ ヘッド・トラッキング・デバイスのサポート
・ Dolby Atmos Binaural Settingsプラグイン(v1.3)で2つのユーザープリセット
・ バイノーラルレンダリングモードの設定が、レンダラーを再起動しても保持
・ オブジェクトビューを最大化または最小化するための新しいビューメニューとキーボードショートカット
・ オブジェクトビューで移動するオブジェクトの解像度を向上
・ パーソン・ビューの頭部アイコンの定義を改善
・ ASIOデバイスのコントロールパネルアプリケーションへのアクセスが容易に(Windowsのみ)
・ Option + C(Mac)およびAlt + C(Windows)のキーボードショートカットで、すべてのクリップインジケータをクリア
・ 左右の矢印キーによるグラフィック・イコライザー・バンド間の移動
・ summary.txtファイルとtimeline.csvファイルのラウドネス測定値の小数点以下桁数を1桁に変更
ヘッドトラッキングデバイスのサポートについて
気になるヘッドトラッキングのサポートについてですが、OSC(OpenSound Control)の出力に対応したヘッドトラッキングデバイスを使用することで実現できるとのことです。後日、対応機種が判明したら追記いたします!
レンダラーでバイノーラルコンテンツを再生する際、ヘッドトラッキングデバイスを使って頭の動きをトラッキングすることができます。バイノーラル出力は、ヘッドトラッキングデバイスの位置に応じてレンダリングされます。これにより、仮想ルーム内においてthree degrees of freedom (※)でインタラクティブな操作ができるようになります。オブジェクトビュー内でパーソン・ビューが選択されると、ヘッドトラッキングデバイスの方向が視覚的に表現されます。
ヘッドフォン出力とバイノーラルレンダリングモードを有効にした状態で、レンダラーの環境設定でヘッドトラッキングを有効にし、ドルビーOSCヘッドトラッカードライバ(レンダラーに付属)またはヘッドトラッキングデバイスメーカーが提供するヘッドトラッキングドライバを使用できます。
※3DoF(three degrees of freedom) = X軸・Y軸・Z軸の動きの検出。頭の回転や傾きまでを感知可能。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v510/dolby-atmos-renderer-v51-release-notes/new-in-dolby-atmos-renderer-v51
ビュー・メニューとキーボードショートカット
オブジェクト・ビュー(仮想3D空間)を最大化または最小化し、オブジェクト・ビューの表示と表示オプションを変更するためのビュー・メニューおよびキーボード・ショートカットが新たに追加されました。
システム要件
動作テスト済みOS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 10.14.6~13.4、Windows 10 Pro*、Windows 11 Pro*で使用できます。
*1台のコンピュータでDAWからDolby Atmos Rendererにオーディオをルーティングするために必要なDolby Audio Bridgeは、macOSでのみ使用可能です。
Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
サポートされるセットアップについては、公式サイトにサインアップ後閲覧可能なドキュメントを参照してください。
動作テスト済みコンピュータ
・ MacBook Pro 18,21; M1 Max 32 GB
・ MacBook Pro 14,6; M2 Max 32 GB
・ MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB RAM
・ MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac mini 14,12; Apple M2 Pro, 16 GB RAM
・ Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM
・ Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Studio 13,1; M1 Max, 32 GB RAM
動作テスト済みDAW
レンダラーは、Dolby Atmosレンダラーと通信可能なDAW(またはその他のオーディオ録音/編集ソフトウェア)をサポートしています。
・ Avid Pro Tools Ultimate 2021.12~2023.6
・ DaVinci Resolve Studio 18
・ Steinberg Nuendo 12
Dolby Atmos Rendererは、Dolby Atmos Music Pannerプラグインを追加することで、macOS上の他のDAWでも使用できます。
詳細はMusic Pannerのドキュメントを参照してください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v510
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの"製品"(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2023/07/06
Proceed Magazine 2023 販売開始! 特集:360 Reality Audio / Dolby Atmos
Proceed Magazine 2023号が発刊です!ふたたび世界が動き出す。そんな実感が生まれてきているいま、Proceed Magazineでは制作シーンでも世界各所で起きはじめているイノベーションの最前線を捉えます!アメリカ西海岸からはNAMM Show / NABSHOWでの新製品はもちろんのこと、Village Studio、mediaHYPERIUM、GOLD-DIGGERS、Apogee Studioといった著名スタジオのレポートを紹介、イマーシブサウンド制作においては360 Reality Audio / Dolby Atmosについて海外スタジオの動向やそのベーシックとなる基礎知識も交えてお伝えするほか、立体音響スタジオの環境をヘッドホンで再現する注目の新サービスソニー 360 VME(Virtual Mixing Environment)を詳細に解説。また、巻頭インタビューにはグラミー賞を獲得した宅見 将典 氏が登場、音楽との携わりから受賞に至るまでをセルフプロデュースという視点でお話いただきました。そして、ROCK ON PRO導入事例ではコジマプロダクションの新スタジオをご紹介です!制作に幅広い視野をもたらすトピックを満載したProceed Magazine、2023年の制作をリードする情報を満載してお届けします!
Proceed Magazine 2023 特集:360 Reality Audio / Dolby Atmos
360 Reality Audio、Dolby Atmos、ほんの数年前までは少し先にある未来のものと捉えられていたこの2つのキーワードが、2023年いよいよサウンド制作のブレイクスルーを成し遂げそうです。
イマーシブの分野はコンシューマレベルまで認知が進み、そのソリューションやプロダクトが現実のものとなっています。それに呼応するように制作の現場でも実際のコンテンツ制作によるノウハウの蓄積が進み、どのようにこのキーワードを軸にサウンドを発展させていくのか研鑽が重ねられています。
今回のProceed Magazineではこちらのキーワードのいま、その最前線を世界各地で捉え、新たなクリエイティブのワークスタイルを生み出すトピックの数々を見ていきます。さあ、ご一緒に!
Proceed Magazine 2023
全152ページ
定価:500円(本体価格455円)
発行:株式会社メディア・インテグレーション
◎SAMPLE (画像クリックで拡大表示)
◎Contents
★People of Sound
宅見 将典 氏インタビュー
★SoundTrip / Los Angeles & Las Vegas
Village Studios / GPU Audio / MTRX ll
NAMM Show / NABSHOW
★360 Reality Audio / Dolby Atmos
media HYPERIUM / イマーシブフォーマットの基礎知識
360 Virtual Mixing Environment / GOLD-DIGGERS / Apogee Studio
★Product Inside
TAOC / ONKIO Acoustics
★ROCK ON PRO導入事例
株式会社コジマプロダクション
★ROCK ON PRO Technology
TOHOスタジオ株式会社 / PixMixで深まるラウンドトリップ
しまもんの、だってわかんないんだモン!!
★Build Up Your Studio
パーソナル・スタジオ設計の音響学 その27
特別編 音響設計実践道場 〜第八回 データ整理編 その1〜
★Power of Music
TOONTRACK EZ KEYS 2 / Waves Studio Verse
Hana Hope 「HUES」ROTH BART BARON 三船雅也
★BrandNew
Positive Grid / Prism Sound / SONY / NTP Technology
Focal / Zoom / audio-technica / Roland
LEWITT / Gamechanger Audio / RME
Universal Audio / Yamaha
★FUN FUN FUN
SCFEDイベのイケイケゴーゴー探報記〜! Altphonic Studio
ライブミュージックの神髄
◎Proceed Magazineバックナンバーも好評販売中!
Proceed Magazine 2022-2023
Proceed Magazine 2022
Proceed Magazine 2021-2022
Proceed Magazine 2021
Proceed Magazine 2020-2021
Proceed Magazine 2020
Proceed Magazine 2019-2020
Proceed Magazineへの広告掲載依頼や、内容に関するお問い合わせ、ご意見・ご感想などございましたら、下記コンタクトフォームよりご送信ください。
NEWS
2023/04/07
Dolby Atmos再生対応の配信サービス NeSTREAM LiveにてAvid Creative Summit 2023のアーカイブが公開中!
Dolby Atmos形式のコンテンツ再生に対応した配信サービス 「NeSTREAM Live」にて、先日弊社にて開催いたしましたAvid Creative Summit 2023 の配信アーカイブが公開されています。
ご視聴にはスマートフォンやApple TV 、 Fire TVにNeSTREAM LIVEのアプリをインストールする必要があります。
すでにNeSTREAM Liveアプリをインストールされている方は、下記項目3記載のリンク先ページより、各セミナーのQRコードを読み込みください。
NeSTREAM Liveを使用したDolby Atmos 配信アーカイブのご視聴方法
1.視聴環境を下記から選びクリックしてください。各ページを参考の上、準備をお願いします。
・ iPhoneの方 https://nestreamlive.radius.co.jp/dolby/#anc1
・ Androidの方 https://nestreamlive.radius.co.jp/dolby/#anc2
・ Apple TV、Fire TVを使ってTVで視聴する方 https://nestreamlive.radius.co.jp/dolby/#anc3
2. それぞれの環境にNeSTREAM LIVEのアプリをインストールしてください。
※AppleTV、FireTVはそれぞれのアプリストアで「NeSTREAM LIVE」と検索してインストールしてください。
3.アプリインストール後は下記リンク先ページのQRコードを読み込むことで各セミナーをご視聴いただけます。
AVID CREATIVE SUMMIT 2023 セミナー Dolby Atmos音声配信
アーカイブ配信 : 2K映像 + Dolby Atmos
◎ACSUセミナー配信のご視聴はこちら:https://nestreamlive.radius.co.jp/special/sp_event12/
◎パソコン音楽クラブ スペシャルライブのご視聴はこちら:https://nestreamlive.radius.co.jp/special/sp_event13/
※アーカイブ配信は予告なく公開終了となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
・NeSTREAM LIVEアプリでDolby Atmos再生に対応している機器はこちら
※ Dolby Atmosに対応してないAndroid端末は無音または再生不可となります。ご了承ください。
・NeSTREAM LIVEに関するFAQはこちら
●NeSTREAM LIVE 配信視聴に関するお問い合わせ先
NeSTREAM LIVE カスタマーサポート窓口
営業時間:平日 10時~17時
電話番号:050-3528-6313
メール nestream_live@user-support.jp
公式サイト https://nestreamlive.radius.co.jp
You Tubeでのアーカイブ配信ご視聴方法
◎You Tubeでのアーカイブ配信のご視聴はこちら
※動画ウインドウ内右上の「再生リスト」をクリックすると公開中の全てのセミナーがご視聴いただけます。
Dolby Atmosをはじめとするイマーシブコンテンツの制作機材、スタジオ施工に関するご相談は導入実績豊富なROCK ON PROへご相談ください!
お問い合わせは下記コンタクトフォームよりご連絡お願いいたします。
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023/#.ZC_OtuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.ZC_OxuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZC_O1ezP0-Q
NEWS
2023/03/23
Dolby Atmos Renderer v5.0 リリース 〜 Production SuiteとMastering Suiteの機能が統合 〜
Dolby Atmos Renderer v5.0 がリリース
Dolby Atmos Production Suite および Mastering Suiteの機能が1つのアプリケーションとして統合され、Dolby Atmos Renderer v5.0としてリリースされました。
https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-0-is-Now-Available?language=en_US
Dolby Atmos Rendererアプリケーションをご利用のお客様へ。
この度、Dolby Atmos Rendererアプリケーションv5.0をリリースすることになりましたのでお知らせいたします。
Dolby Atmos Renderer v5.0は、従来のDolby Atmos Production SuiteとMastering Suiteの機能を1つのアプリケーションに統合し、音楽、ホームシアター、テレビ、ポッドキャスト、ゲームなどの分野でDolby Atmosコンテンツ制作を可能にします。
旧製品からのアップグレードについて
Dolby Atmos Production SuiteまたはDolby Atmos Mastering Suiteの既存ユーザーは、対応するDolby Atmos Renderer UpgradesをAvid Storeより購入してください。アップグレード・ライセンスを有効にするには、iLokライセンス・マネージャー・アプリケーションを介して元のiLokライセンスをサレンダー(無効化)する必要があります。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
新機能 〜待望のAppleシリコンネイティブ対応&96kHz ADM BWFに対応〜
・Appleシリコンにネイティブ対応
・96kHz ADM BWFファイルのインポート、エクスポート、モニタリング
・パフォーマンスの向上および新しく改良されたUI
・5.1.2 リレンダリングの作成
・トリムやダウンミックス設定の保持
以下はDolby Atmos Production Suiteからアップグレードするユーザー向けの新機能です。
・Windowsとの互換性
・ルームEQ
・スピーカーアレイモード
・Dolby Atmos Renderer Remoteからのコントロール
システム要件
対応OS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 10.14.6~13.2.1 およびWindows 10 Pro、Windows 11 Pro*で利用可能です。
* Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
対応DAW
・Ableton Live*
・Apple Logic Pro*
・Avid Pro Tools
・Blackmagic Designs Resolve
・Merging Pyramix
・Steinberg Nuendo**
*Dolby Atmos Music Pannerが必要です。
**ネイティブAppleシリコンモードでのDolby Atmos Renderer接続はまだサポートされていません。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v500
Q&A
元記事(原文)
>>Dolby Atmos Renderer v5.0 is Now Available:https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-0-is-Now-Available?language=en_US
◎Dolby Atmos Rendererアプリケーションは新製品ですか?
Dolby Atmos Rendererアプリケーションは、Dolby Atmos Production SuiteとDolby Atmos Mastering Suiteの機能を統合し、新たな改良および機能を加えた新製品です。
◎Dolby Atmos Production and Mastering Suitesの一部として既に存在する「Dolby Atmos Renderer」と新しい「Dolby Atmos Renderer application」の違いは何ですか?
新しいDolby Atmos Rendererアプリケーションは、従来のDolby Atmos Production and Mastering Suitesの両方の機能に加え、新しい機能および改良が加えられています。 さらに、Dolby Atmos Music Pannerプラグイン、Dolby Atmos Binaural Settingsプラグイン、Dolby LTC Generatorの新しいネイティブApple Siliconバージョンも含まれています。
◎Dolby Atmos Mastering SuiteからDolby Atmos Rendererアプリケーションにアップグレードすると、どのようなメリットがありますか?
Dolby Atmos Rendererアプリケーションには、以下のような新機能があります:
・Appleシリコンとのネイティブな互換性により、Macデバイスのパフォーマンスが向上
・Dolby Atmos Music Panner Plug-in、Dolby Atmos Binaural Settings Plug-in、Dolby LTC Generator Plug-inの新しいネイティブApple Siliconバージョン
・ADM BWFの96kHzに対応
・よりスムーズなユーザー体験を実現するためのユーザーインターフェイスの強化
◎Dolby Atmos Production SuiteからDolby Atmos Rendererアプリケーションにアップグレードするメリットは何ですか?
Dolby Atmos Rendererアプリケーションには、ルームEQ、リモート接続、アレイモードなど、これまでDolby Atmos Mastering Suiteでのみ利用可能だった機能が含まれています。さらに、以下のようないくつかの新機能があります:
・ネイティブM1 Appleシリコンとの互換性により、Macデバイスでのパフォーマンスが向上
・Dolby Atmos Music Panner Plug-in、Dolby Atmos Binaural Settings Plug-in、Dolby LTC Generator Plug-inの新しいネイティブApple Siliconバージョン
・ADM BWFの96kHzに対応。
・よりスムーズなユーザー体験を実現するためのユーザーインターフェイスの強化
◎Dolby Atmos Production and Mastering SuitesをRenderer v3.7.3で使用し続けることはできますか?
はい、Dolby Atmos Production and Mastering Suitesを引き続き使用することができます。しかし、新機能と現在進行中の開発をご活用いただくために、既存のお客様にはアップグレードをお勧めしています。
将来リリースされるドルビーソフトウェア、MacまたはWindowsオペレーティングシステム、およびDolby Atmos Rendererと連動するコンピュータは、Renderer v3.7.3ではサポートされない場合があります。Dolby Atmos Renderer v5.0で作成されたマスターファイルはすべてv3.7.3と互換性があり、反対にv3.7.3で作成されたマスターファイルはすべてDolby Atmos Renderer v5.0で互換性があります。
◎Dolby Atmos Production and Mastering Suitesのクリエイター向け販売は継続されますか?
Dolby Atmos ProductionとMastering Suitesの販売は終了しました。これらの製品をお使いの方は、より新しいDolby Atmos Rendererアプリケーションにアップグレードすることをお勧めします。
◎Dolby Atmos Rendererアプリケーションの価格はいくらですか?
・新規のお客様(Dolby Atmos Production SuiteまたはDolby Atmos Mastering Suiteをお持ちでないお客様)は、新しいDolby Atmos Rendererアプリケーションを299USドルで購入できます。
・既存のお客様(Dolby Atmos Production SuiteまたはMastering Suiteをお持ちのお客様)は、新しいDolby Atmos Rendererへのアップグレードを50USドルで購入することができます。
◎なぜ、このアップグレードに費用がかかるのですか?
今回のアップグレードの費用には、いくつかの新機能の開発とパフォーマンスの向上が含まれています。
◎Dolby Atmos Rendererアプリケーションを入手するにはどうすればよいですか?
・新規のお客様: お客様は、AvidストアでDolby Atmos Rendererアプリケーションを購入することができます。購入後、Avidからお客様のiLokアカウントにライセンスがデポジットされます。
・既存のお客様: Dolby Atmos Production SuiteおよびMastering Suiteのアップグレードは、こちらで購入できます。新しいDolby Atmos Rendererライセンスを有効にするには、iLok License Managerアプリケーションを使用して、既存のiLokライセンスをサレンダー(無効化)する必要があります。NFRやトライアルではなく、フルライセンスをサレンダーする必要があります。より詳細な手順については、こちらの記事をご覧ください。
◎Dolby Atmos Mastering Suiteには、Dolby Atmos Production Suiteが複数付属しています。Mastering Suiteをアップグレードすると、Dolby Atmos Rendererも複数手に入りますか?
いいえ、Dolby Atmos Mastering SuiteとProduction Suiteのライセンスはすべて、それぞれ50ドルで個別にアップグレードする必要があります。Dolby Atmos Production SuiteとDolby Atmos Mastering Suiteからのアップグレードはこちらで入手できます。各アップグレードには、iLok License Managerアプリケーションを使用して既存のiLokライセンスをサレンダー(無効化)する必要があります。NFRやトライアルではなく、フルライセンスをサレンダーする必要があります。より詳細な手順については、こちらのビデオをご覧ください。
◎最近、Dolby Atmos ProductionまたはMastering Suiteを購入しました。Dolby Atmos Renderer v5.0への無償アップグレードは可能でしょうか?
2023年2月1日以降に購入されたお客様は、Dolby Atmos Renderer v5.0への無償アップグレードを受けることができます。Production Suiteのお客様には、Avidからアップグレードの手順についてご連絡いたします。Mastering Suiteのお客様は、アップグレード方法について販売店にお問い合わせください。
◎Dolby Atmos Rendererを再販業者から購入することはできますか?
いいえ - Dolby Atmos Rendererアプリケーションは、Avidストアからのみ購入できます。Dolby Atmosスタジオの設定をサポートするDolby Atmos認定サービス・パートナーのリストについては、こちらのページを参照してください。
◎Dolby AtmosレンダリングがネイティブのDAWでDolby Atmosコンテンツを作成する場合、Dolby Atmos Renderer v5.0は必要でしょうか?
Dolby Atmos Renderer v5.0は、DAWがDolby Atmosレンダリングに対応していれば必要ありませんが、MP4書き出しなどの特定の機能を利用するために必要な場合があります。Dolby Atmosレンダリングに対応しているDAWは、Apple Logic Pro、Steinberg Cubase、Nuendo、Blackmagic Designs Resolveです。
◎Dolby Atmos Rendererを使用するために、他に何か購入やダウンロードが必要ですか?
Dolby Atmos RendererアプリケーションでDolby Atmosのコンテンツを作成するためには、互換性のあるDAWも必要です。対応するDAWの一覧は、こちらのページをご覧ください。
◎Dolby Atmos RendererはIntel Macで動作しますか?
はい、Intel Macは引き続きサポートされています。
◎Dolby Atmos Renderer v5.0はWindowsをサポートしていますか?
はい。ただし、RendererはDAWとは別のコンピュータにインストールする必要があります。 Rendererを同じコンピュータ上のDAWに接続するためのDolby Audio Bridgeは、Macでのみサポートされています。また、Windowsユーザーの方は、Steinberg CubaseやNuendo、Blackmagic Designs Resolveなど、Dolby Atmosのネイティブレンダリングを統合したWindowsベースのDAWを使用することもできます。
◎新しいMusic Panner、Binaural Settings、LTCプラグインはWindowsで利用できますか?
いいえ、現時点では、これらのプラグインはmacOSでのみ利用可能です。
◎新たにサポートされたハードウェア構成はありますか?
Dolby Atmos Renderer v5.0は、Apple Mac Studio、新しいM2 Apple Mac mini、NUC 12 Pro、Windows用のSweetwater CS400でサポートされています。MacのMADI & Dante用のNTP DAD Core 256や、M1/M2 MacのDanteワークフロー用のMerging Technologies AES 67 VAD PremiumなどのI/Oハードウェアオプションを追加しています。
◎Dolby Atmos Rendererは最新のmacOSとWindowsオペレーティングシステムに対応していますか?
Dolby Atmos Renderer v5.0は、macOS VenturaとWindows 11をサポートしています。
◎Dolby Atmos Album Assembler v1.1はDolby Atmos Renderer v5.0と併用できますか?
Album Assembler v1.1は現時点ではDolby Atmos Renderer 5.0との動作確認は実施されておりません。Album Assemblerの次期バージョンにて、Renderer v5.0のサポートが追加される予定です。
◎Dolby Atmos Renderer v3.7.3の既存の設定ファイルをRenderer v5.0で使用することは可能ですか?
はい、v3.7.3の.atmosIRと.atmosfcgファイルはv5.0で使用することができます。アップグレードする前に、v3.7.3の設定のバックアップを作成することをお勧めします。
◎Dolby Atmos Renderer v5.0から削除された機能はありますか?
はい、Pro Tools用のSend and Returnワークフローは削除されました。Dolby Audio Bridge、そして最近ではPro Tools Audio BridgeとAux I/Oワークフローの登場により、Send and Returnプラグインは不要になりました。
上記Q&Aで一部言及されている新規ハードウェア構成などにつきましては、今後のアップデート情報が届き次第、随時更新予定です。Dolby Atmos 制作に対応したスタジオの設計・施工については導入実績豊富なROCK ON PROへおまかせください。下記コンタクトフォームよりお気軽にお問合せください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#1
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023/#.ZBwKzezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/nugen-audio-halo-vision-review/#.ZBwKcezP0-Q
Tech
2023/03/23
今こそはじめよう Dolby Atmos!〜これからDolby Atmos 制作を始めるあなたに役立つ情報まとめ〜
「Dolby Atmos制作に興味があるけど、何から始めればいいのか分からない!」「どこで情報を集めたらいいの?」という方のために、Dolby Atmos関連の最新情報を随時掲載していきます。
Dolby Atmos 最新情報はこちら(2023.4.25更新)
Dolby Japan Event Portal - Dolby Japan
◉Dolby Japan Event Portal(ドルビージャパンイベントポータル)
https://www.dolbyjapan.com/
Dolby Atmosに興味を持ったらまず訪れていただきたいのが、Dolby Japan Event Portal(ドルビージャパンイベントポータル)。Dolby技術に対応した各種イベント情報を発信しているサイトです。注目は画面右上"Dolbyイベント"タブ内の"Dolby Atmos Music Creation 101"。
Dolby Atmos制作を始めるにあたり最低限知っておくべき基本から、スタジオの準備、制作ワークフロー、ミキシング、レンダリングと、その手順が丁寧に解説されたビデオが日本語字幕付きで公開されています。1本の動画が10分〜20分前後でサクッと見られる内容にまとまっているため、日々の作業が忙しくてなかなか時間が取れないという方にもオススメです。
また、同サイトには制作者向けワークフロー解説サイト、"Dolby Atmos Music Creator's Summit(ドルビーアトモスミュージッククリエイターズサミット)"も公開されています。こちらはDolby Atmos制作の流れが、視覚的に分かりやすいフローチャートで解説されており、パート毎の要点をすぐにチェックすることできます。後半は制作者インタビュー映像も掲載されており、Dolby Atmos制作の最前線で活躍されているエンジニア/クリエイターの方々のリアルな体験談を視聴することができます。
Dolby Professional Support Learning -
◉Dolby Professional Support Learning(ドルビープロフェッショナルサポートラーニング)
https://learning.dolby.com/hc/en-us
テキストベースで学びたいという方にオススメなのがこちらのサイト、"Dolby Professional Support Learning"です。2022年4月現在、「Dolby Atmos Music」「Dolby Atmos Post Production」「Dolby Vision Post Production」の3項目が公開されています。全文英語ですが、ワークフローの各項目がモジュール形式でロジカルに記述されており、特定の項目のみを重点的に学習したい時に活用できます。
※2022/4/22 追記 "Dolby Atmos Musicトレーニング"が日本語対応しました https://learning.dolby.com/hc/ja/sections/4406037447828-Dolby-Atmos-Music%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0
Sound&Recording Magazine(サンレコ)
◉Sound&Recording Magazine(サンレコ)
https://www.snrec.jp/search?q=dolby+atmos
こちらはすでにご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、"サンレコ"の愛称でお馴染みSound&Recording MagazineさんでもDolby Atmos関連の情報が多く発信されています。特にエンジニアの古賀健一さんによる連載企画「DIYで造るイマーシブ・スタジオ」では、Dolby Atmosとの出会いから、実際にイマーシブ対応スタジオを設計・施工され、その後の活用状況まで詳細にレポートされています。必見です!
【番外編】英文の翻訳にはDeepLの活用がオススメ!
◉DeepL(ディープエル)
https://www.deepl.com/translator
DeepLは、海外の技術情報を検索する際に非常に便利な翻訳サイトです。「英語は苦手…」「従来の翻訳サイトでは意味がよくわからない…」という方も、ご安心ください!DeepLが自然な日本語に翻訳してくれます。
今シブ 今こそ渋谷でイマーシブ - Rock oN Company WEB
◉今シブ 今こそ渋谷でイマーシブ - Rock oN Company WEB
個人のお客様で「色々調べてみて必要な機材は分かったけど、どこかでまとめて購入できる場所ないかな〜」と思った方はぜひ渋谷Rock oN Companyへ足をお運びください。(※要事前予約) 豊富な知識を持つRock oN スタッフがあなたのご環境に合わせたシステムをご提案いたします。
・スタンド設置編https://www.miroc.co.jp/rock-on/ima-shibu2022/
・モニタースピーカー選び編 https://www.miroc.co.jp/rock-on/imasibu-2022-2/
・オーディオ・インターフェース編 https://www.miroc.co.jp/how_to/imasibu-2022_audio-interface/
ROCK ON PRO
◉ROCK ON PRO
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関する法人様のお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。本ページ上部"Works"タブまたは、下記URLより、過去の導入実績をご覧いただけます。
導入事例:https://pro.miroc.co.jp/works/#.YxBUsezP0-Q
メールでのお問い合わせは、下記コンタクトフォームよりお送りください。
Dolby Atmos 関連最新情報はこちら
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-conversion-tool-v2-1/#.ZEcvquzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZBwJpezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023/#.ZBwKOezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolbyatmos-for-cars-report/#.ZBwKW-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/nugen-audio-halo-vision-review/#.ZBwKcezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-3/#.YxrxGOzP0-R
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-album-assembler/
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-music-panner-update/#.YocOffPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-2/#.YlUAm9PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-phrtf-app/#.YkqMH5PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.YkqMMZPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.YkqMOpPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-released/#.YkqMV5PP0-Q
Event
2023/01/24
「Dolby Atmos for Cars 」国内初出展 1/25(水)〜27(金)「第15回 オートモーティブ ワールド」にて
Dolby Atmos for Carsが国内初出展 1/25(水)〜27(金) @東京ビッグサイト
1月25日(水)〜27日(金)の3日間に渡り、東京ビッグサイトにて「第15回オートモーティブワールド-クルマの先端技術展-」が開催されます。
このイベントは、自動車やその関連部品をはじめとする各種メーカー、自動車業界新規参入企業を主な来場ターゲットとし、サブタイトルの通り、クルマの先端技術に関する様々な展示やセミナーが開催予定です。具体的には、「第15回カーエレクトロニクス技術展」や「第13回 クルマの軽量化 技術展」、「第6回 自動運転 EXPO」など、各テーマごとの展示会やセミナーが複数同時開催されており、一つの大きなイベントとして構成されています。
今回このオートモーティブワールドの構成展の一つ、「第15回[国際]カーエレクトロニクス技術展 (カーエレ JAPAN)」に、ドルビージャパンが参加し、車内でDolby Atmosコンテンツを楽しめる「Dolby Atmos for Cars」の国内初となるデモ展示が行われます。海外ではすでに市販車への導入・販売が始まっている同サービスですが、日本でのサービス展開としては、これから市販車へのアピールが本格化していくタイミングとのこと。先日メディア向けの体験会が開催され、一足先に体験させていただくことができましたので、その模様をレポートします。
【開催展名】第15回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-
【会期】2023年1月25日[水]~1月27日[金] 10:00~17:00
【会場】東京ビッグサイト
【主催】RX Japan株式会社
【併催企画】オートモーティブ ワールド セミナー
注1:招待券をお持ちでない場合、入場料5,000円/人
注2:本展は商談のための展示会ですので、学生の方および18歳未満の方のご入場はお断りいたします。
↓詳細はこちらのURLよりご確認ください。
【URL】https://www.automotiveworld.jp/tokyo/ja-jp.html%20a-jp.html
Dolby Atmos For Cars とは? ~自動車業界で広がる"CASE"~
すでにご存知の方も多いかと思いますが、Dolby Atmosというフォーマット自体はもともと映画向けのサラウンド規格の一つとしてその歴史が始まり、その後、音楽向けのDolby Atmos Musicも登場。2021年にはApple Musicが空間オーディオへ対応したことで大きな話題となりました。現在、個人でDolby Atmosを楽しむ方法として、対応イヤフォンでのバイノーラル再生をはじめ、対応しているテレビやスマートフォンのスピーカー、サウンドバーなど、一般家庭でも気軽に楽しめる再生環境が充実しつつあります。
そしていよいよ自動車でもDolby Atmosを楽しもう!という動きが出てきたわけですが、その背景には、現在自動車業界で広がっている"CASE"と呼ばれる考え方があります。これは、Connectivity、Autonomous、Shared & Service、Electricの頭文字をとったもので、2016年、メルセデス・ベンツの中長期戦略の中で初めて言及されたものです。
CASEで目指す内容の具体例としては、
「自動運転機能により、運転から解放される」
「電気自動車化で内燃機関がなくなることで静寂性が増し、音楽や映画などをより本格的に楽しめるようになる」
「充電の待ち時間が快適な空間へ」
といったものが挙げられます。
従来は単なる移動手段であった自動車が、今まさに、エンタメ提供の場へと変化していく中にあり、そこに対するDolbyの新たな提案がこのDolby Atmos For Carsということです。
◎CASE がもたらすエンタメの重要性
Connectivity / Internet接続、スマホ操作性ニーズ(スマホOS進出)、ストリーミングサービス、コンテンツ増
Autonomous / 運転からの解放:音楽、映像、ゲーム、カラオケ、睡眠、リラックス、仕事
Shared & Service / 車を選ぶ基準の変化:新サービスの車室流入
Electric / 電動化:車内静寂性向上、充電待ち時間(∼30min)、車室空間拡大・空間自由度向上
海外ではすでに市販車への導入が始まっている
世界初となるDolby Atmos対応車は2021年3月21日、米国ルシード・モータースによって発表された"Lucid Air"。こちらは国内未上陸のストリーミングサービス"Tidal"経由でのDolby Atmos Music再生に対応しています。
昨年3月・6月には中国のニオから"ET7"、"ES7"が登場。同6月に理想汽車(リ・オート)からはSUV型の“L9”、その後も、XPENG(シャオペン)、メルセデス・ベンツ、ポールスター、ロータス、ボルボ…と続々と対応車が発表・販売されています。
Dolby Atmos For Cars 対応車 例
・Lucid Motors Lucid Air https://news.dolby.com/en-WW/197447-lucid-air-is-the-world-s-first-vehicle-to-integrate-dolby-atmos
・NIO ET7 https://news.dolby.com/en-WW/204730-nio-et7-comes-standard-with-dolby-atmos
・Li Auto L9 https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/li-auto/
・XPENG G9 https://heyxpeng.com/g9
・Polestar 3 https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/polestar/
・Lotus Eletre https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/lotus/
・VOLVO EX90 https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/volvo/#gref
Dolby Atmos for Cars を一足先に体験
当日はDolby Atmosや、Dolby Atmos For Carsの市場動向の説明の後、トヨタ アルファードをベースに、ドルビージャパンがカスタムで用意したという試乗車にて、Dolby Atmos For Carsを体験することができました。
📷 用意されていた試乗車のスピーカーレイアウトは7.1.6ch。平面7chは全て2Way仕様となっているため、スピーカー数としては計21本となる。
📷 EDMやオーケストラなどの試聴音源を、6本の天井スピーカーの有無でそれぞれ比較視聴。まずは天井スピーカー”あり”から試聴し、EDM楽曲では、一番盛り上がるタイミングでSEのトラックが車内を縦横無尽にパンニングする様子が体感できた。オーケストラ楽曲では、まるでそこはホールなのではないかと錯覚するような、車体の存在を感じさせない広い音場が感じられた。
📷 ダッシュボード上に並ぶフロントスピーカー。センタースピーカー前方にはウーファーも設置されている。
📷 モニターはフロントパネルとシート2列目前方に計3枚設置。視聴ソースとしてApple MusicがインストールされたPCの画面が表示されていた。
📷 フロントレフトのスピーカー。写真では確認できないが、Lch Rchのウーファーは、左右それぞれのドア足元部分に設置されている。
📷 トップミドルのスピーカー。シート2列目のウインドウ上方に設置されている。
📷 サラウンドバックのスピーカー。シート3列目の左右に設置されているため、スイートスポットは2列目の中央あたりになる。
📷 運転席から後方側を見た様子。天井スピーカー"なし"の構成だとこれらのスピーカーは再生されないが、バーチャライザー機能によってうまく補完され、"包まれ感"はしっかりと残っていた。
体験を終えて 〜 今年中の国内初市販車の登場に期待!
実際に体験してみて、車の内壁全体から音が鳴っているかのような包まれ感のあるサウンドはこれまでに経験したことがなく、とても新鮮でした。特にオーケストラの音源を聴いた時の空間の広さは格別で、心地よく運転が出来そうだなと思いました。
Dolby Atmosをはじめとするイマーシブサラウンドは、スピーカーで体験すれば、誰もが非常に楽しく、ステレオとは全く違った臨場感を得られると思います。しかし、その環境を一般家庭で構築しようとした場合、サウンドバーならまだしも、対応のAVアンプやスピーカーを全て揃えて…というのは、まだ少しハードルが高いと思います。今後、Dolby Atmos For Carsのような自動車向けシステムの普及が進めば、イマーシブな音楽体験がもっと身近になっていくのではないでしょうか。
第15回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展- 開催概要
第15回オートモーティブ ワールドはいよいよ25日から開催されます。カーオーディオ関連の開発担当の方や、Dolby Atmos対応のOTTに携わっている方など、ご興味がある方はぜひ事前登録の上、足を運んでみてはいかがでしょうか?
【開催展名】第15回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-
【会期】2023年1月25日[水]~1月27日[金] 10:00~17:00
【会場】東京ビッグサイト
【主催】RX Japan株式会社
【併催企画】オートモーティブ ワールド セミナー
注1:招待券をお持ちでない場合、入場料5,000円/人
注2:本展は商談のための展示会ですので、学生の方および18歳未満の方のご入場はお断りいたします。
↓詳細はこちらのURLよりご確認ください。
【URL】https://www.automotiveworld.jp/tokyo/ja-jp.html%20a-jp.html
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関する法人様のお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。本ページ上部”Works”タブ、または下記URLより、過去の導入実績をご覧いただけます。
導入事例:https://pro.miroc.co.jp/works/#.YxBUsezP0-Q
メールでのお問い合わせは、こちらのコンタクトフォームよりお送りください。
https://pro.miroc.co.jp/works/capcom-bitmasterstudio-proceed2022-2023/#.Y89YmuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.Y89VIuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.Y89Xo-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/soundcity-proceed2022-23/#.Y89YjezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.Y89YTezP0-Q
Solution
2023/01/11
Nugen Audio Halo Vision クイックレビュー ~ Pro ToolsとDolby Atmos Render での活用方法も紹介 ~
昨年10月にNuge Audioよりリリースされた新プラグイン、Halo Vision。"Halo"と言えば同社が既にリリースしている、Halo Upmix/Downmixといった製品を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。それらはステレオ〜サラウンド〜イマーシブといったフォーマット間のアップミックス/ダウンミックスを行うためのツールでしたが、今回登場したHalo Visonは、イマーシブサラウンド編集に特化した強力なアナライザーです。
今回、NUGEN Audioはこの製品の開発をスタートするにあたり、「イマーシブ・サウンドを視覚的に表示するとしたら、何が求められているのか」を正確に把握するため、多くのエンジニアを対象に詳細な市場調査を行ったとのこと。その結果生まれたのがこのHalo Visionということで期待大です。本記事では、その活用方法を考察してみたいと思います。
◎自在にカスタマイズ表示可能な7種類のビュー
表示可能な項目は以下の7種類。何だかあまり聞き慣れない単語が並んでいますが、1つずつ見ていきましょう。
- コリレーション・マトリックス - Correlation Matrix
- コリレーション・ウェブ - Correlation Web
- 周波数ヘイズ - Frequency Haze
- ロケーションヘイズ - Location Haze
- スペクトル - Spectrum
- トゥルーピーク - True Peak
- タイムコード - Timecode
◎コリレーションビューで各チャンネルの位相の相関を可視化する
他のプラグインではあまり見かけない表示がこのコリレーション・ウェブとコリレーション・マトリックス の機能だと思います。まず、蜘蛛の巣状のコリレーション・ウェブですが、これはシンプルに位相が反相関状態になっているチャンネル間の線が点灯し、判別できるようになっています。コリレーション・マトリックスはそれをさらに詳しくしたようなもので、各チャンネル間の位相がどのような関係にあるのか、分かりやすく三色で色分けされるようになっています。具体的には、位相の相関がニュートラルな時は黄色、相関状態の時は緑色、反相関状態の時は赤色になります。
メーカーの説明によると、これらはコンテクスト相関、つまり、単純な相関を示しているわけではなく、チャンネル間のレベル差を考慮し、問題となりそうな相関関係のみを洗い出してくれているとのこと。そしてそのしきい値は標準の設定に加え、自分で設定することも可能です。
■コリレーション・ウェブ - Correlation Web
"相関ウェブは、各スピーカー間の接続線でチャンネルのネットワークを表示します。2つのチャンネル間の位相関係が反相関になると、対応する線が赤い線で結ばれます。"
■コリレーション・マトリックス - Correlation Matrix
”コリレーション・マトリックスは、各チャンネル間の位相関係を色別に表示します。より詳細な分析には大きなアーチ型メーターを使用し、ユーザー定義の閾値で反相関の警告を表示します。”
”これらの表示では、デフォルトでコンテクスト相関が使用されます。一般的な相関メーターの計算方法では、2つの信号が非常に反相関しているように見えることがありますが、一方の信号が他方の信号より非常に大きかったり、小さかったりする場合は、それらを同時に混ぜ合わせても特に問題ない場合があります。Contextual Correlationは、このようなレベル差を補正し、問題となりそうな相関関係のみを強調します。”
任意のチャンネルを選択すると関係する線がハイライトされる
コリレーション・ウェブの設定画面
コリレーション・マトリックスの設定画面
◎ヘイズビューでサラウンドフィールド内の周波数とエネルギーを可視化する
"Haze "が日本語で「もや」や、「かすみ」を表す通り、サラウンドフィールド内の周波数分布とエネルギー分布を細かい光の粒子で、可視化することができます。これは同社のHalo Upmix/Downmixを触ったことがある方にはおなじみの表示ですね。なんだかんだ言っても、最終判断はやはり自分の耳で行うことになるとは思いますが、こうしてメーターで機械的に視覚化されることで、聴覚上の感覚と照らし合わせて確認することができるようになるというのは、非常に意味があるのではないでしょうか。
■周波数ヘイズ - Frequency Haze
"円形の周波数ヘイズは、低周波数を中心に、高周波数を外周に配置し、サラウンドフィールド全体の周波数分布を表示し、一般的なスピーカーの位置にチャンネルラベルを表示します。"
■ロケーションヘイズ - Location Haze
"ロケーション・ヘイズは、オーディオの知覚位置を視覚化するもので、サラウンド・フィールド全体のエネルギー分布を表示し、明るい部分は「エネルギー」が増大していることを示します。"
◎スペクトル/トゥルーピーク/タイムコード
他の表示については普段からDAWをお使いの方にはお馴染みの機能かもしれませんが、周波数帯域ごとの音量を確認できるスペクトル、サンプルピークメーターでは検出できないアナログ波形のピークを検出するトゥルーピーク、そしてタイムコードの表示が可能となっています。表示色のカスタマイズもでき、非常に見やすいUI設計となっています。
■スペクトル - Spectrum
"Combined' モードでは、全てのチャンネルの FFT レベル対周波数グラフを 1 つのスペクトルで表示します。
Groups' モードでは、各チャンネルをいくつかのスペクトラムグループごとに整理することができます。"
■トゥルーピーク - True Peak
"True Peakビューは、各チャンネルのTrue Peak dBレベルメーターを表示します。"
■タイムコード - Timecode
"Timecodeビューは、現在のホスト/DAWの再生位置に基づいたタイムコードの読み出しを表示します。"
スペクトラム表示も細かく設定が可能
チャンネルグループの設定も自由自在
タイムコードは時:分:秒:フレームごとに色の変更が可能
なんと176色から選択可能!色にこだわりがあるという方も安心
◎用途
・7.1.2までのサラウンドおよびイマーシブミックスの解析
・位相相関のチェック
・空間情報の視覚化
・異なるチャンネル・フォーマットでのミックスの確認
・慣れないスタジオや音響特性が好ましくない部屋でのミキシング
◎Dolby Atmos制作時の活用方法
Pro Tools 2022.9からの新機能Aux I/O及び Pro Tools Audio Bridgeを活用することで、Dolby Atmos Rendererからの出力をシンプルにPro Tools内に戻すことが可能となりました。これを活用してDolby Atmos Rendererから出力された7.1.2chをPro Tools内に立ち上げ、そこにHalo Visionをインサートすることでメータリングができるようになる、というわけですね。
Aux I/Oの設定方法はAvid Japanが公開しているこちらの日本語Tips動画よりご確認ください。
関連リンク:
Rock oN Line eStoreで購入:
https://store.miroc.co.jp/product/80930
国内代理店紹介ページ:
https://www.minet.jp/brand/nugen-audio/halo-vision/
Nugen Audio紹介ページ:
https://nugenaudio.com/halovision/
イマーシブサラウンド制作システム構築のご相談は、実績豊富なROCK ON PROまで。下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
Event
2023/01/11
1月14日(土)11:00〜 洗足学園音楽大学 Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」開催
Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」 概要
来たる1月14日(土)、15日(日)、洗足学園音楽大学ジャズコースによる配信ライブが開催されます。14日(土)11時からの配信は、音楽・音響デザインコースとのコラボにより、Dolby Atmosでのライブ配信も行われるとのことです。
配信日時:2023年1月14日(土)11:00 ~ 17:30
詳細ページ
・Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」
https://course.senzoku-online.jp/sc/?page_id=2472
音楽・音響デザインコースの「Dolby Atmos Recording Project」の第二弾として、1月14日(土)11:00より「ジャズコースライブ2023」をB305スタジオからDolby Atmosでライブ配信(無料)いたします。Dolby Atmosの録音やミックスは深田晃先生と学生スタッフが担当し、配信はNeSTREAMのエンジニアの皆様にサポートしていただきます。ジャズコース学生によるYoutube配信と併せてお楽しみください。→Dolby Atomosとは?
→ 音楽・音響デザインコース「Dolby Atmos Recording Project」の紹介
※Dolby Atmos配信は1月14日(土)のみです。1月15日(日)はジャズコースのYoutube配信をお楽しみください。
Dolby Atmosでの視聴はNeSTREAM LIVEから
Dolby Atmosライブ配信の視聴にはスマートフォンやApple TV / Fire TVにNeSTREAM LIVEのアプリをインストールする必要があります。
視聴方法詳細はこちらからご確認ください。
Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」視聴方法:https://course.senzoku-online.jp/sc/?page_id=2472
◆配信視聴に関するお問い合わせはこちら
NeSTREAM LIVE カスタマーサポート窓口
営業時間:平日 10時~17時 050-3528-6313
nestream_live@user-support.jp
https://nestreamlive.radius.co.jp
Dolby Atmosの制作環境に関するご相談は実績豊富なROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
Support
2022/09/09
Dolby Atmos Renderer v3.7.3 アップデート情報
Dolby Atmos Renderer v3.7.3がリリース
直感的なDolby Atmosミキシングを可能にする制作ツール"Dolby Atmos Renderer(ドルビーアトモスレンダラー)"の最新版となるv3.7.3が公開されています。
今回はM1 Macでの動作や拡張子のレターケースに関する改善が含まれているとのこと。詳細は下記URLからもご確認いただけます。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v373
Dolby Atmos Renderer アプリケーション v3.7.3 のリリースをお知らせいたします。Dolby Atmos Renderer v3.7.3 には、Dolby Atmos Renderer ソフトウェアを使用して Dolby Atmos でコンテンツをオーサリングするための重要な修正が含まれています。
Dolby Atmos Renderer v3.7.3 は、macOS 12.14.6 から 12.5.1 を実行する Intel ベースの Mac でサポートされています。Renderer v3.7.3 は、M1 ベースの Mac の macOS Monterey 12.5.1 と互換性があります (Rosetta 2 経由)。
本リリースでの主な改善点
- M1チップ搭載Macで、Renderのモニタリングや再生時に、音声のクリックやグリッチが発生することがあった問題を修正
- Avid HDX Core オーディオドライバと Dolby Audio Bridgeオーディオ入力デバイスを96kHzで使用する場合、Rendererが起動時にクラッシュすることがあった問題を修正
- 従来はレターケース(大文字/小文字)に厳密な".atmosIR"という拡張子のファイルのみ読み込み可能であったところ、v3.7.3では、任意のレターケース(例.atmosirまたは.ATMOSIRなど)にすることが可能に
システム要件
Dolby Atmos Production Suite:
macOS 10.14.6 〜 12.5.1 及び対応のDAWで利用可能
Dolby Atmos Mastering Suite:
macOS 10.14.6 〜 12.5.1 または Windows 10 Pro と 対応のDAWで利用可能
セットアップ方法詳細は、ドキュメントをご参照ください。
Dolby Atmos Renderer最新版は下記URLよりダウンロード可能です。(Dolby Customerページへの登録が必要です)
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v373
Dolby Atmos Rendererが含まれるDolby Atmos Production SuiteはAVIDストアよりご購入いただけます。
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-production-suite
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関するお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。下記コンタクトフォームよりご連絡をお待ちしております。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.YlT9-9PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.YlT_ktPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.YlT_dtPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-creative-summit-2021-online/#.YlT_g9PP0-Q
NEWS
2022/08/08
Dolby Atmos 用マスタリングツール Dolby Atmos Album Assemblerがリリース(90日間体験版有り)
Dolby Atmos Album Assemblerは、Dolby Atmosでミキシングされた楽曲やアルバムの仕上げを行うのに便利なツールです。Dolby Atmos Renderer(Dolby Atmos Production Suite または Mastering Suite に付属、要別途購入)と組み合わせて使用する Album Assembler は、Dolby Atmos Music のマスタリングツールとして、今回新たに開発されたものです。ストリーミング・サービスに配信する前に、アルバム曲順の構成や、2chステレオミックスとの比較機能など、Dolby Atmos対応楽曲のマスタリングに必要な機能がすべて揃っています。
Dolby Atmos Album Assemblerの主な機能
・複数のDolby Atmos ADM BWF ファイルをインポートしてタイムライン上でシーケンス化
・Dolby Atmos Rendererアプリケーション(Dolby Atmos ProductionまたはMastering Suiteで別途購入する必要があります)に接続してのモニタリング
・曲の長さの編集とフェードイン/アウトの適用
・曲のレベル調整
・Dolby Atmosのためにゼロから構築されたEQおよびリミッター処理テクノロジを適用
・Dolby Atmosの楽曲をStereo reference track機能でマスタリング済みのステレオ・ファイルとリアルタイム比較
・ラウドネスの測定
・Dolby Atmos ADM BWFファイルでのマスター書き出し
入手方法
・90日間体験版 (Dolby Customer サイトでサインアップ&サインイン後にDL可能です)
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v100
・AVIDストアでライセンス購入(2022年8月現在 $99 / ¥11,000〜)
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-album-assembler
Dolby Atmosでの新規楽曲リリースも最近かなり増えてきている中、便利なマスタリング用ツールが登場しました。こちらのライセンスの購入は現在AVIDストアからのみ可能となっております。Dolby Atmosをはじめ、イマーシブオーディオ制作環境導入のご相談は、実績豊富なROCK ON PROにお任せください!お問合せは下記コンタクトフォームからお待ちしております。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/comparison-of-atmos-360ra/
Support
2022/06/28
【どう違う?】 Dolby Atmos Musicと 360 Reality Audioの4つの違い
News!360VMEのプロファイル測定サービス実施中!詳細はこちらをご確認ください。
News!360 Reality Audio クリエイター向け最新情報はこちらに随時追加中!あわせてご確認ください。
2021年、Apple Musicが空間オーディオに対応し大きな話題となりましたが、以降、Dolby Atmo Musicや360 Reality Audioといったイマーシブフォーマット対応の音楽コンテンツが続々とリリースされ続けています。これらのフォーマットは2022年6月現在、Apple Musicをはじめ、TidalやDeezer、Amazon Music HDといったストリーミングサービス等で楽しむことができますが、そろそろ「自分の作品もイマーシブ化してみたい!」という方も増えてきたのではないでしょうか。「いざやってみよう!」と思い立ったみなさんが気になるのが、「Doby Atmos Musicと360 Reality Audioってどう違うの?」という部分だと思います。本記事で2つのフォーマットについて、それぞれの歴史、イマーシブへのアプローチ、制作ツール、そして対応している音楽配信サービスという4つの観点から比較してみたいと思います。
1.歴史の違い 〜映画音響からスタートしたDolby Atmos、新たな音楽体験を目指した360 Reality Audio〜
まずは両者の開発スタートの経緯を見ていきましょう。
Dolby Atmos Music → 元々は映画音響として開発スタート
360 Reality Audio → 開発当初より新たな音楽体験を志向
Dolby Atmosは2012年、映画音響向けのイマーシブサラウンド規格として誕生しました。現在でも多くの映画作品における音響制作は5.1chサラウンドのフォーマットが用いられるケースが一般的ですが、7.1chや9.1chと平面上に配置するスピーカーを増やすことで、より臨場感、立体感のあるサウンドが追求されてきました。これにより、前後左右の音像定位は自由度がが高まっていったわけですが、さらなるリアリティ、没入感を求めたDolbyは天井にもスピーカーを配置することで、高さ方向の音像定位を再現できるDolby Atmosを開発しました。かくして最初は映画館向けとして開発され、その後Xboxなどのゲーム機や民生のオーディオプレーヤー、スマートフォンなど様々なデバイスにDolby Atmosの技術が搭載されていくなかで、ミュージシャン達からの要望もあり、2020年のCESでDolby Atmos Musicが発表されました。
一方、2019年のCESで発表された360 Reality Audioは、業務用/民生問わず、長年に渡りハイグレードなオーディオ機器を開発してきたソニーの要素技術から誕生しました。公式サイトによると「360 Reality Audioとは、ソニーの360立体音響技術を用いた新しい没入感のある音楽体験」とされています。つまり、はじめから新しい音楽体験を作り出すことを目標に開発された経緯があり、元々映画音響からスタートしたDolby Atmosとは少し出発点が違います。
2.イマーシブへのアプローチ方法の違い 〜チャンネルベースとオブジェクトベース〜
上述した開発経緯の違いが具体的に現れているのが、両者のイマーシブへのアプローチ方法の違いです。
Dolby Atmos Music → チャンネルベース(ベッド) とオブジェクトベースのハイブリッド(最大7.1.2 Bed + 118 Object)
360 Reality Audio → 完全オブジェクトベース (最大128 Object)
Dolby Atmosは、チャンネルベースとオブジェクトベースという2種類の方式が組み合わされているのに対し、360 Reality Audioは完全オブジェクトベースとなっています。
チャンネルベースでは、従来のステレオ2chや、平面サラウンドの5.1ch、7.1ch、イマーシブサラウンドの5.1.2chや7.1.2chなど、あらかじめ定められたスピーカー配置からの出力を想定してミキシングを行い、チャンネルごとの音声を完成させていきます。ちなみにこの時、各スピーカーから出力される信号のことを“Bed(ベッド)”と呼びます。それぞれの音像はスピーカーチャンネルに対して固定されるため、後からチャンネル数を変更したいとき、チャンネル数が減る時はダウンミックスという方法を使用し、チャンネル数が増える時は、再度ミキシングする必要があります。
オブジェクトベースでは、3次元のパンニング情報などをもつメタデータをオーディオとともに記録・伝送し、再生デバイス側でそれらを再生環境のチャンネルフォーマットに合わせてデコードを行います。これは3次元空間内を縦横無尽に動き回るような、点音源(ポイントソース)の再生に適した方式です。これを行うためには、再生デバイス側がその規格の再生に対応していることが前提となってきますが、再生環境ごとのチャンネルフォーマットの違いを、いわばデコーダーが吸収するような形となるので、一定のクオリティが担保されるという大きなメリットがあります。
Dolby Atmos Musicでは最大でBed 7.1.2ch + Object 118ch = 128chのトラックを使用することができ、360 Reality Audioはフルオブジェクトで128chのトラックを使用することができます。
従来の映画音響制作からチャンネルベースの流れを引き継ぎ、さらにオブジェクトベースを組み合わせることでイマーシブ音像を作るDolby Atmosと、新たな音楽体験 = 4π(全周)を360度、自在に動き回るオブジェクトベースでカバーする360 Reality Audio。下の画像を見てもわかる通り、Dolby Atmosは半球上に音像を定位できるのに対し、360 Reality Audioは全球上に音を配置させることが可能です。この球体の下半分 = "南半球"の有無も一つの大きな違いです。
↑Dolby Atmosは"北半球"のみ=耳の高さより上側に音を配置可能(画像クリックで拡大)
↑360 Reality Audioでは"南半球"を含む4π空間上に音を配置可能(画像クリックで拡大)
「じゃあ、制作時のスピーカー配置はどうなるの?」と思った方は、こちらの導入事例をぜひご参照ください。従来のDolby Atmos向けスピーカー配列にボトム3本を追加し、360 Reality Audioの制作にも対応したソニーPCL株式会社様での事例です。
>>Sound on 4π Part 4 / ソニーPCL株式会社 〜360 Reality Audioのリアルが究極のコンテンツ体験を生む〜https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-4/
https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-4/
3.専用制作ツール(プラグイン)の違い 〜Dolby Atmos Dolby Atmos Renderer、360 WalkMix Creator™️〜
Dolby Atmos、360 Reality Audioには下記の通り、それぞれ専用の制作ツールとなるプラグインが存在します。ただし、Cubase ProやNuendo、Logic ProではDolby Atmosの納品向けADM BWAVファイルの書き出しを行うことができるので、Dolby Atmos Dolby Atmos Rendererの購入は必ずしも必要というわけではありません。
Dolby Atmos Music → 対応DAW単体またはDAWとDolby Atmos Dolby Atmos Rendererの組み合わせ
360 Reality Audio → DAWと360 WalkMix Creator™️ プラグインの組み合わせ
◎Dolby Atmos Dolby Atmos Renderer
Dolby Atmos Musicの納品時には通常、1つ以上のDolby Atmosマスターファイルの提出が必要となります。Dolby Atmos Rendererに含まれるソフトウェアを使って書き出すことができるマスターファイルは以下の3種類です。(納品時に必要なファイルに関しては各種配信サービスによって異なりますので、詳細はそちらでご確認ください。)
.atmos ファイルセット – .atmos、.atmos.audio、.atmos.metadata ファイルで構成
ADM BWF – .wav ファイル
IMF IAB – .mxf ファイル (ポストプロダクション利用のみ)
このDolby Atmos RendererはAVIDストアより購入可能です。
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-production-suite
Dolby Atmos Renderer使用方法解説動画はこちら
◎360 WalkMix Creator™️
360 Reality Audioの制作には、現在360 WalkMix Creator™️というプラグイン必須です。主要なDAWのほとんどに対応していますしていますのでご安心を(詳細こちら)。こちらは弊社輸入事業部オンラインストアやRock oN Line eStoreでもご購入いただけます。
・Rock oN Line eStore販売ページ:https://store.miroc.co.jp/product/77346
※以前は360 Reality Audio Creative Suite(360RACS)という名称であったため、初期の弊社コンテンツでは360RACS表記となっている場合がございます。
4.対応している配信サービスの違い(2022年6月現在)
2022年6月現在、それぞれのフォーマットでの配信に対応している音楽ストリーミングサービスは以下の通りとなっています。
Dolby Atmos Music → Apple Music、Amazon Music HD、Tidal HiFi Plus、nugs.net Hi-Fi Streaming
360 Reality Audio → Amazon Music HD、Tidal HiFi Plus、Deezer HiFi、nugs.net Hi-Fi Streaming
詳しい試聴方法についてはこちらの記事シリーズをご参照ください。
◉360 Reality Audio クリエイター向け最新情報はこちらに随時追加中。入門編はこちらから。
本記事では、Dolby Atmos Music及び、360 Reality Audioの違いについて説明しました。これらに関する情報は、弊社WEB上のHeadline>>3D Audioタグで一括表示可能です!イマーシブミキシングのノウハウがまだまだ模索段階にある今だからこそ、多くの発見もあり、楽しいタイミングだと思います。ROCK ON PROはそんな新時代の音響制作にチャレンジするクリエイターのみなさまを全力でサポートします!お問い合わせは下記コンタクトフォームよりお待ちしています。
<関連記事>
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-news/
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-on-4%cf%80-proceed2021/
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-1/
Music
2022/05/20
Dolby Atmos Music Panner アップデート情報
このページではDolby Atmos Music Pannerに関する新着情報をお知らせします。
Dolby Atmos Music Pannerとは?
Dolby Atmos Music Pannerプラグインは、Dolby Atmos Rendererに接続されたMac上のDAWで使用し、Dolby Atmos Music ミックス内のオーディオオブジェクトを配置することができます。
ミュージック・パンナーを使ったこの組み合わせでは、3次元のオーディオ空間にオーディオ・オブジェクトを配置することができます。
また、パンナーには、オブジェクトの配置を、DAWのテンポに同期させて動かせるシーケンサーが搭載されています。
Dolby Atmos Music Pannerのインストーラーには、AAX、AU、VST3バージョンが含まれています。
配布先URL:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-music-panner-v120
※DLにはcustomer.dolby.comへの登録&ログインが必要です。
システム要件
Dolby Atmos Music Pannerを使用するには、Dolby Atmos Renderer v3.7.1以降が動作するDolby Atmos Production SuiteまたはMastering Suiteが必要です。
対応DAW
・Ableton Live 11.1
・Apple Logic Pro X 10.6.3
・Avid Pro Tools Ultimate 2021.12
・Steinberg Nuendo 11.0.41.448
※macOS Mojave上で動作するNuendoでの使用はサポートされていません。
Dolby Atmos Music Panner V1.2.0 (2022.3.28 更新)
オートメーション書き込みコントロール(Pro Toolsのみ)
Pro Tools 2021.12以降とDolby Atmos Music Panner v1.2(AAXバージョン)では、パンナー・オートメーションをPro Toolsオートメーション・レーンに書き込み、Dolby Atmos Music PannerオートメーションをPro Toolsパン・オートメーションに変換し、Pro ToolsからADM BWF .wav マスターとしてセッションを書き出すときにそのオートメーションのメタデータを含めることができます。
シーケンサのステップを遅くする
x16スイッチを使えば、現在のステップの長さを16倍遅くすることができます。
ステレオオブジェクトのリンク解除
Dolby Atmos Music Pannerステレオプラグインは、ステレオオブジェクトのリンクとアンリンクに対応しています。オブジェクトのリンクが解除されると、左右のチャンネルのX、Y、Z、Sizeを別々に調整することができるようになります。
X/Y/Z、Sizeのロータリーコントロールとポジションディスプレイのオブジェクトアサインラベル表示
X、Y、Z、Sizeのロータリーコントロールとポジションディスプレイには、オブジェクトの割り当てを示すラベルが表示されるようになりました。
Dolby Atmos制作に関するお問い合わせ、モニタリングシステム導入のご相談はこちらのコンタクトフォームからご送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pick-up-pro-tools-studio/
https://pro.miroc.co.jp/headline/protools-lineup-renewal/#.YocNAfPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-2/
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/
Support
2022/04/12
Dolby Atmos Renderer v3.7.2 アップデート情報
Dolby Atmos Renderer v3.7.2がリリース
直感的なDolby Atmosミキシングを可能にする制作ツール"Dolby Atmos Renderer(ドルビーアトモスレンダラー)"の最新版となるv3.7.2が公開されています。
今回はHT-RMUのリモートコントロール用ソフトウェア"Dolby Atmos Renderer Remote"のWindowsマシンにおけるファイルブラウジングの修正やデフォルトのバイノーラル設定の改善が含まれているとのこと。詳細は下記URLからもご確認いただけます。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v372
Dolby Atmos Renderer アプリケーション v3.7.2 のリリースをお知らせします。このリリースには、Dolby Atmos Production Suite および Mastering Suite の有効ライセンスでのインストールに使用される Mac および PC インストーラの両方に対するアップデートが含まれています。
本リリースでの主な改善点
- Dolby Atmos Renderer Remote のWindowsマシンにおけるファイルブラウジングに関する修正
- Dolby Atmos Binaural Settings Plug-in v1.1.2 をサポート
- デフォルトのバイノーラル設定の改善
- ドキュメントの改善
- 特殊文字を含むファイル名のエクスポートに関する修正
システム要件
Dolby Atmos Production Suite:
macOS 10.14.6 〜 11.6.1 及び対応のDAWで利用可能
Dolby Atmos Mastering Suite:
macOS 10.14.6 〜 11.6.1 または Windows 10 Pro と 対応のDAWで利用可能
セットアップ方法詳細は、ドキュメントをご参照ください。
Dolby Atmos Renderer最新版は下記URLよりダウンロード可能です。(Dolby Customerページへの登録が必要です)
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v372
Dolby Atmos Rendererが含まれるDolby Atmos Production SuiteはAVIDストアよりご購入いただけます。
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-production-suite
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関するお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。下記コンタクトフォームよりご連絡をお待ちしております。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.YlT9-9PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.YlT_ktPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.YlT_dtPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-creative-summit-2021-online/#.YlT_g9PP0-Q
Headline
2022/02/24
We want more Atmos!〜Dolby Atmosコンテンツ制作の最前線〜
Apple Musicの空間オーディオ対応などによりいよいよ一般ユーザーに立体音響を届けられるようになってきた。Proceed Magizineでは、これまで空間オーディオに関する技術的な内容を何度か紹介してきたが、この状況の中で実際にどのような音をユーザーに届けるのかという中身の部分について、深田 晃氏、戸田信子氏、陣内一真氏、古賀 健一氏、murozo氏という様々な分野で活躍されている皆様の制作最前線を伺った。Dolby Atmos制作の舞台裏からAtmos Musicの未来まで、大いに盛り上がりを見せた座談会の様子をお伝えしていく。
●ご参加者様:プロフィール
深田 晃
レコーディングエンジニア
CBS/SONY録音部チーフエンジニア、NHK放送技術局・番組制作技術部チーフエンジニアを歴任。あらゆるジャンルの音楽に関わるが、主にオーケストラレコーディングを担当。1997年、AES NYで「Fukada Tree」を発表後、多くのサラウンド番組制作・国際共同制作に関わる。 2011年 dream window inc. を設立、アーティストCD、映画のスコアリング、クラシック音楽録音、マルチチャンネル音響作品制作や空間音響デザイン行っている。AES Fellow IPS 英国放送音響家協会会員 、JAPRS 日本音楽スタジオ協会理事、米国レコーディングアカデミー(グラミー)会員、洗足学園音楽大学 音楽・音響デザイン客員教授。
戸田信子 x 陣内一真
COMPOSER | MUSIC DIRECTOR| SCORE PRODUCER
東京・ロサンゼルスを拠点とした作曲家ユニット。
2003年、バークリー音楽大学の映画音楽作曲科と現代作曲&プロダクション科を卒業した後、ゲーム「メタルギアソリッド4」でタッグを組み音楽制作をスタート。オーケストラレコーディングとハリウッドの映画音楽制作におけるプロダクションノウハウを学び、2011年サウンドトラックに特化した音楽プロダクション「FILM SCORE LLC」をロサンゼルスに設立。エレクトリックなサウンドデザインとオーケストラとを組み合わせたハイブリッドの音楽制作をLAにあるハンスジマーのラボ「リモートコントロール」の制作チームと共に進めている。ロサンゼルス、ロンドン、プラハなどの海外オーケストラの収録経験も多く、さらにフィルムスコアリングを用いた作曲手法を使い、映像と音楽をフィットさせ相乗効果をあげる音作りで全世界向けの映画、アニメ、ゲーム音楽を手掛けている。マイクロソフトのゲーム「Halo 5」のサントラでは初登場で全米ビルボードのサウンドトラックTOP2入りを果たすなど、近年目覚ましい活躍を続けており、これまでにゴールデンリール賞(MPSE)の長編外国語映画部門音響編集賞や英国アカデミー賞ゲーム部門音楽賞など、様々な音楽賞を受賞している。
主な代表作:『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』『太秦ライムライト』『Halo 5』『ULTRAMAN』『攻殻機動隊SAC_2045』『スター・ウォーズ:ビジョンズ 』など多数。
古賀 健一
レコーディングエンジニア
レコーディング・エンジニア。青葉台スタジオに入社後、フリーランスとして独立。2014年にXylomania Studioを設立。これまでに チャットモンチー、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Official 髭男dism、MOSHIMO、ichikoro、D.W.ニコルズなどの作品に携わる。また、商業スタジオやミュージシャンのプライベート・スタジオの音響アドバイスも手掛ける。
Xylomania Studio
murozo
レコーディングエンジニア
Crystal Soundを拠点に活動する気鋭のレコーディング・ミックスエンジニア。超特急、TAEYO、week dudus、Sound’s DeliなどHIPHOP、R&Bからポップスまで様々な楽曲制作に携わり、Dolby AtmosミックスにおいてはSySiSY「Weekend」、Lil’Yukichi 「May I… feat. antihoney」などメジャーからインディーまで幅広く手掛けている。
Crystal Sound
劇伴制作におけるDolby Atmos
ROCK ON PRO(以下、R):本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。さっそくですが、みなさまそれぞれの「Atmos事情」のようなものあれば伺いたいのですが。
戸田:Netflixが納品形態としてAtmosを推奨していることもあり、実際にAtmos制作に関わる機会は多くなっています。ただ、劇伴音楽という立場からすると、Atmosによって得られる「空間」は効果音で自由に使ってもらう、というスタンスでいるほうがよい結果になると思っています。特殊な効果以外では頭上から音楽が聴こえる必然性はないですし、逆に見ている方を混乱させてしまうことにもなりかねない。そうではなくて、作品の効果を高めるためにどうやって「空間」の中で効果音と共存していくか、ということを考えることが多いですね。
深田 晃 氏
深田:映画の場合は、音楽と効果音の役割分担というものがありますよね。最近関わらせてもらったある映画作品で、少年合唱団が歌うシーンがあって、それは高さが追加されることで7.1chよりもさらにドキドキする、引き込まれるシーンになったなと思っています。
戸田:オブジェクトトラックを使って音楽を動かす、ということはありますか?
古賀:今のぼくのデフォルトのセッティングでは、20個のオブジェクトトラックが常に立ち上がってます。9chのワイドチャンネル用、トップフロント用、トップリア用のセンドを6チャンネル分作ってるんです。あとはSpat Revolutionで9.1.6のリバーブを作って常に送り込んでたりするので、その分はオブジェクトを使いたいって感じですね。でも、別に動かしたいわけではなく鳴らしたいだけ。まだ映画でAtmosをやってないんですけど、たぶんセリフの関係とかで音楽がワイドチャンネルに逃げなきゃいけない場面ってあると思うんです。そのために、それくらいのオブジェクトは必要なんじゃないかなって。ただ、オブジェクトの使い方は難しいな、と。逆に聞いてみたかったんですが、劇伴では音楽に何チャンネルくらいのオブジェクトトラックをもらえるんですか?
戸田:基本的にはベッドのみで、オブジェクトは使わないようにしてます。劇中ではなくオープニング / エンディングとかでオブジェクトを使って音楽を聴かせる、という使い方をする場合はあるんですけど。その時はステムからオブジェクト化して、Atmosにした場合の効果をエンジニアさんと確認しながら制作したんですが、それは全スピーカーを音楽だけに使えるからやれることで…。もちろん、新しい使い方は模索してるんですが、現時点では劇中で音楽を回したり、というのはやはり無理なので、考え方としてはサラウンドから空間をさらに広げるという形になっていますね。
R:ハイトチャンネルからの音ってどんな使い方をするんですか?
戸田 信子 氏
陣内一真 氏
戸田:ビックリさせる効果を出すために使ったりしました。テーマソングがついてる敵キャラがいるんですけど、登場シーンでその歌を上から降らせたりとか。攻殻(註:Netflix『攻殻機動隊 SAC_2045』)だと、ハイトを使ったのはそれくらいですかね。ハイトはやはり主に効果音が使ってました。
古賀:効果音をハイトから出す時って、プラグインで広げたりしたんでしょうか。
陣内:いや、それ用のパンニングと空間処理でやってたと思います。効果の方は正確にはわからないですが、音楽に関しては今回ほとんどがシンセだったので、ものによってはプラグインで広げちゃうと音がスカスカになってしまう。なので、基本的にはパンニングでちゃんとその位置に持ってく、という形でしたね。
古賀:Atmosの仕込みはどうやってますか?
戸田:仕込みはうちのスタジオでやってます。11月公開の劇場版(註:2021年11月12日〜25日に上映された『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』)の場合は、すでにNetflixで使用したデータをサラウンドのステムで用意してあったので、それをバラしてAtmosにミックスし直しました。12話あったものを2時間にまとめてるのでほぼ付け替えでした。
古賀:Atmosのままとっておくわけではないんですね。
戸田:Atmosのステムだと5、60GBになるわけですよ。データで送るのもままならない(笑)
古賀 健一 氏
古賀:2時間映画だと、何日くらいダビングステージ(註:映画制作で、ファイナルミックスを行うスタジオ)に入られますか?
戸田:向こうだと、普通は2週間はあります。その代わり、終わっても白紙に戻されることもありますよ。
陣内:ダビングまで終わった映画のオープニングを作り直さなきゃならないとか。「スタジオでアシスタントが準備してるから今すぐ行って。午後から監督レビューだから。」とか言われて(笑)
戸田:とある番組では、監督OKまで出てあとは確認チェックだけっていう段階から「これニュースの音楽みたいだから変えて」とか。一週間ダビングしてあともうちょっとで終わるってところで、家に帰って音楽作り直しましたよ(笑)
R:日本だとダビングにそんなに時間は割いてもらえないですね。
戸田:そういう点では私たちの環境は恵まれていて。『攻殻機動隊 SAC_2045』はCGの制作ペースに合わせる形で、1ヶ月で2話のペースで制作してたんです。映像に合わせてイチから作ってプレゼンして…「違う」って言われてまた戻る、みたいな(笑)。12話作ると半年なので監督の好みとかもわかってきてすごくやりやすかったです。
陣内:やっぱり、シーンに合わせて書けた方が楽です。効果のガイドももらえたんで、それに合わせて引くところは引くということもできたんで。
R:今回の攻殻はじっくり見させていただいたんですが、音楽と効果音が入れ替わり立ち替わりで場面を作っていくような作品という印象でした。
戸田:ありがとうございます。監督が、もともとフィルムスコアリングをやりたかったという方なので、そういう音になったのかもしれません。今回の作品は展開が激しくて、これはたぶん選曲(註:新たに作曲せず、既存の曲を使用すること)ではできなかったな、って(笑)
陣内:Atmosということで言うと、あらかじめ曲ができていて後からそれを「Atmosで」っていうよりは、全体の音響に対してちゃんと曲をデザインしていける方が効果的なのかなって、ダビングをしていて思いましたね。例えば、10分間バトルし続けるシーンがあったとして、既存の曲を10分間ループさせるわけにはいかないですから。
murozo 氏
古賀:最終的なビジョンを共有していることはすごく大事ですよね。
戸田:特にAtmosだと、効果音がどこから鳴るかだけじゃなくて、効果音の種類とかでも世界が変わっちゃうじゃないですか。シリアスな音楽を作ってきたのに効果音はコミカル、みたいになると全然違うし。そういうことをちゃんと打ち合わせできた方がいいですね。
古賀:効果音がすごく低音を出してきたりすると、「この曲、ベース要らなかったじゃん」みたいになっちゃう。
戸田:BGMが邪魔になっちゃいますからね。
陣内:実際、一番下の音域の使い方は結構気を使いますね。いたるところでドーン!と来るわけにいかない、というか。
戸田:カークラッシュのシーンとか、効果音からすれば一番「ドーン!」といきたいところじゃないですか。そういうシーンでは、キワまで音楽でガァーっと盛り上げてパッ!と逃げる、みたいにするんですけど…たまに効果も逃げちゃって「シーン…」みたいな、「え?新しい演出??」みたいなことになることもあります(笑)
古賀:ピクチャーロック(註:以降、映像に変更がない状態のこと)はあるんですか?アニメだと、あとから映像を変更できるじゃないですか。
戸田:ピクチャーロックは大前提ですね。
陣内:効果のタイミングは特にそうですね。
戸田:シーンごと変わったりしない限り音楽はある程度は対応できますけど、効果音は数フレーム違うだけで気持ち悪いことになっちゃいますから。
音楽制作におけるDolby Atmos
R:いわゆる音楽作品の場合はいかがでしょう?
古賀:やっぱりAtmosと相性がいいのはライブものなんですよね。「今回はAtmosでやってみませんか?」っていう提案も、ライブものだと受け入れてもらいやすいです。
R:やっぱりライブ空間を再現する、というのは方向性として分かりやすいですよね。
戸田:やり方としては、コンサートとかライブを収録して再現する方向にした方が、絶対Atmosの良さは生かせますよね。アイドルグループが映画館を貸し切ってAtmosでライブビューイング中継やったりしてますけど、実はあの方向が一番効果的なのかなと思ったりします。
深田:Atmosになって変わったことというと、客席後方に立てていたマイクは使わなくなりましたね。今までは客席で聴いている音場を意識していたんですけど、Atmosになってからは指揮者のあたりをリスニングポイントとして意識するようになりました。以前のフロントLRが、サイドチャンネルに近くなる感じです。立体音響になることでオケに寄っていっても違和感がないように感じます。
R:マイクのお話が出たのでお伺いしますが、Atmos制作にあたってレコーディングに変化はありましたか?
古賀:ぼくはAmbisonicsマイクを立てまくってます。Atmosに使わなくても、2chのアンビとか、あとで何にでも使えますし。ただ、スタジオのメンテがちゃんとしてないといけないんですよ。Ambisonicsだと、1チャンネル録れてなかったら全部ダメになってしまう。4チェンネルのレベルもきれいに揃わないと位置情報がずれるので、HAも精度の高いものが求められます。その辺は悩ましいと思いつつ、スタジオのメンテナンスをするモチベーションと捉えてます(笑)
深田:Atmosになって「ハイトが追加された」と考えると、メインLRの真上に置くとしても、AB、XY、ORTF…組み合わせは無数にあるじゃないですか。そういうものをいろいろと実験してはいますね。
R:サラウンドの時のように新しいアレイが発表されるでしょうか?
深田:AESではいろいろ出てるみたいですよ。ただ、ハイトにマイクを立てるとなると、ミドルレイヤーの音がハイトのマイクに入ってしまうという問題が起こるんです。だから、理屈で言えば単一指向の方が向いているっていうことになるんですけど、そうすると、マイクの距離をどうするかという話にもなる。でも、いろいろ試した結果ではそこはあまり大きな問題にはならなそうでした。
R:まずは「ハイトのマイクがある」ということが重要、ということですね。
深田:そうですね。それと、単一指向の方が中心周波数が高いところにあってクリアーな音になるから、そうした意味でも単一指向の方が立体音響に向いているという理屈になるんですけど…聴いた感じは全指向の方が好きだったり、いろいろ難しいですね(笑)。ぼくはメインのLRマイクの上に立ててるやつは単一で、オケの中で録ってるマイクは全指向にしてます。
古賀:ぼくはホールでは三点吊り(註:ステージ上方にマイクを設置するためのワイヤー機構)にAmbisonicsマイクを立ててます。これにメインのLRマイクを足して、芯はメインでしっかり録るって感じです。三点吊りに複数のマイクをちゃんと設置するのって難しいじゃないですか。何度もやり直すとホールのひとに怒られちゃうので(笑)Ambisonicsマイクはカプセルの位置が固定されてるから、その辺の心配がない(笑)客席とステージ上にも使って、Ambisonicsマイクを3本使ってます。
Dolby Atmosとデジタルミュージック
R:Atmos制作ならではの難しさみたいなものはありますか?
戸田:打ち込み制作の限界について、強く感じますね。攻殻のようなSF作品だとサンプルライブラリのようなものを使用する機会も多いんですが、もともとAtmosミックスを前提に収録されていないものが多いので、Atmosの良さを活かしきれていないと感じることがあります。なので、生オケを収録するような場合ははじめから各マイクを各スピーカーに当てられるような配置で演奏を録る、アンビエンスを録る、というようなこと目指してます。
陣内:市販のサンプルライブラリだと、ステレオまでしかないというものも多いですが、それだとその時点で選択肢から外れちゃう。少なくともクアッドで鳴らせるサンプルが必要です。それでも、5.1chの時はまだよかったんですけど、7.1.2chになると音が空っぽすぎるので、メインのほかにルームマイクが収録されているようなライブラリだったらそれも全部立ち上げたりして…なんとか疑似的に作ってはいたんですけど。
戸田:ルームとメインとサラウンド…
陣内:それとスポット。各楽器でそれがステレオで4本ずつ、となると結構データ量がかさんじゃって。
戸田:そうなると、何百トラックも使うような音楽は扱えなくなっちゃうんですよ。特に、96kHzとかで収録してさらにマイクの本数が増えると大変なことになってしまいます。どちらかというと、機材やツールのスペック的なところがまだAtmosに対応できてない部分があるように感じます。Atmosで使用することを前提にした音源も全然少ないですし。
陣内:いまのぼくらのセットアップでいうと、ウッドウィンドとストリングスはAtmosフロント / リアのチャンネルがあるライブラリーなんですよ。けれども、全部立ち上げるとちょっと…音が鳴らなくなっちゃうので(笑)サンプル用のPCが1台1セクションみたいな…ストリングスで1台、ブラスで1台、みたいな感じになっちゃってます。
古賀:昔のGIGA STUDIO時代に戻ってるみたいですね(笑)
陣内:音源のコアのクオリティみたいなものが、顕著に出てくるんです。ソフトシンセにありがちなエフェクトで音ができているようなものだと、リバーブを切ると全然楽器の音にならずに使いものにならないんですよ。リバーブもステレオでかかっちゃってるし。なので、原音がいいシンセに限定されてくるという印象です。書き出す時も、ディレイやリバーブは別系統で出して、ドライはドライで残っている状態で出さないといけない。
深田:そう考えると、生でやった方が楽ですね(笑)
戸田:ほんとにその通りです!
Atmos Musicの普及とミックス
R:Apple MusicやLogic ProのDolby Atmos対応についてはいかがでしょう。
Murozo:シェアが大きいApple MusicがDolby Atmosに対応したのは大きいと思います。
古賀:ぼくらエンジニアは、どこか馴れちゃってる部分があると思うんですよ。リスナーの方が「理由はわからないけど、明らかにこれまでの音楽とは違う!」って、気付いてる印象があります。特に若い子たちは、そういう新しい表現を貪欲に受け入れてくれてるように見えます。
Murozo:海外と比べて日本のスタートが大きく遅れたわけではないので、海外よりもいいものを制作することもできる大きなチャンスだと思っています。当初は過去作をアップミックスしただけのようなものも多かったですが、最近はAtmosを前提にしたいい作品が出てきているようにも思います。
古賀:すごく熱心な方もいて、昨日も「Atmosはすごくいいから、これでうちのアーティストも出したいんだ!」って方がうちのスタジオに来てくれて。そういうひとたちってやっぱり世界を見てて、「世界のプレイリストの中に並べたら、絶対この子のよさに気づいてもらえる」っていう熱い想いを持った方なんですよ。
戸田:ステレオマスターをプラグインでアップミックスしただけのような作品ばかりになってしまうと、Atmosの良さがうまく伝わらないんじゃないかというのは心配ですね。さっきのサンプル音源の話と同じで、ステレオ前提で録ったものをAtmosにしようとすると、ないものをあるように聴かせるためにいろんな無理が出てきてしまう気がします。これからAtmosの新録作品がどんどん出てくることに期待します。
R:LogicがAtmos対応したのも大きなニュースですね。
Murozo:作家さんが「ちょっとやってみようか」でパッとできるところまで来たということですからね、どんどん挑戦したいです。
古賀:Atmosミックスは難しい、みたいに思っている方もいると思うんですけど、ステレオの方がはるかに難しいですよ。ちゃんと録音しておけば各チャンネルに置くだけで終わりですからね。
R:実はステレオほどシビアなレベル管理は要らないんですよね。
深田:5.1chの時って、スイートスポットからちょっと外れると、リアから出してる音なんか特にすごく不自然に聴こえましたよね。それが、Atmosでは高さ方向があるせいか、そういう状況でもあんまり変な感じにはならないというか…スイートスポットが広がった、という印象がありますね。
古賀:円の外に出て聴くのが楽しくて好き(笑)「あー、半球状だな〜」って思います。
Murozo:円の外で聴いた時に違和感がなくなったら「できたな」って判断してます(笑)
古賀:サウンドトラックについてはどうですか?
戸田:Atmosで配信できるようになって、制作したフォーマットのまま聴いてもらえるようになったのはよかったですね。ただ、それがどういう環境で聴かれてるか、っていうことに関しては逆にわからなくなっちゃうわけで。ステレオを作らなきゃいけない時は、もうダウンミックスですね。
陣内:本来なら、ステレオはステレオのバランスがあるので、別途ミックスしたいですが。
深田:ぼくは5.1chや7.1chとは別に、もう一度ステレオ用のミックスを作ります。作品にもよると思うんですけど、映像作品の音楽って短くなりがちで楽曲として成立しにくいものがありますよね。いまよく一緒に仕事してる作家さんは作品の中で使用されているのとは別に、楽曲として成立する尺のあるバージョンを作曲したりしてますね。
戸田:挿入歌はそういう作り方をしたりしますね。劇伴として使う以上の尺で、2ミックスも別に用意したりします。
ヘッドホンとユーザー体験
深田:ヘッドホンとスピーカーの互換性については、すごく考えさせられます。オブジェクトトラックにしちゃうと、スピーカーのないところは全部ファンタムになるわけですよね。そうすると、ヘッドホンで作ったものを映画館で再生すると「ちょっと違うな」って感じになっちゃう。映画作品だと効果音がいっぱいあってすごく立体感があるように感じるんだけど、音楽だけだとそれほど(立体音響の)効果が感じられないんだよね。だから、最近はあんまり複雑にせずにやろうかな、と思ってるんですけど。
古賀:そう。東映のダビングステージにはじめてAtmos作品を持って行った時に結構ショックを受けて…。映画って7.1.2chなんで、自分が思ってたよりハイトチャンネルの幅が狭かったんです。サイドスピーカーの位置も思ってたよりも上にあるので、要は「ハイト」って思ってた範囲がより狭い。劇場中を回ってるイメージで作った音が、全然回ってなくて、ガッカリして帰ってきたっていう経験があります。(一同:笑)
古賀:それ以降、Atmosの音場が「半球体なんだ」ってことをすごく意識するようになりました。上側の空間っていうのはサイドに比べるとすごく狭い。Appleの空間オーディオの話で言うと、あれもやっぱり半球体だし、イヤホンなんかで聴くと後ろの音は小さくなっちゃうって感じます。それに、バイノーラルにするとショートディレイみたいなものがかかっちゃうんですけど、それを嫌う方もいる。それを避けるには、Ls/Rs(サイドに配置されたL/Rチャンネル)に音を置いちゃうのがよくて、海外のミックスとかでは歌がLs/Rsから出てるものが増えてきてる。ただ、それをやるとスピーカーで聴いた時に破綻するから、最初に「ヘッドホン特化型にしますか?」ってことは必ず確認してます。
Murozo:それで、センターがない楽曲が増えてるんですね。
古賀:LFEもセンターも使わない、メインのパートはLs/Rsにある、っていうヘッドホン特化型のミックスも出てきてますよね。バイノーラルにすると、それが結構バランスがいいんです。Atmosだとモノラル表現ひとつとってもいろいろな方法がある。ハードセンターのモノラル、LRファントムのモノラル、上のチャンネルを使ったモノラル…ヘッドホンで聴くと全部違って聴こえるので、3パターンくらい作って「どのモノラルが好きですか?」って聞いたりしてる。
R:実は、そこがみなさんに一番聞きたかったことで。配信コンテンツやApple Musicのようないまの空間オーディオって、たぶん9割以上の方がヘッドホン / イヤホンで聴くことになると思うんです。下手したらNetflixもそうですし。でも、制作者側はスピーカーで作っていて…。そこの差分はどうやって埋めてますか?
Murozo:ぼくはひたすらスピーカーと、Air Podsのような空間オーディオ対応イヤホンとの間を行き来して聴き比べてますね。それがいまできる最善の方法かな、と。
深田:バイノーラルレンダリングすると、LRがハッキリしなくなるんですよね。スピーカーの方がそこはちゃんと出るんだけど、ヘッドホンはもう無視できない時代のようにも感じていて。写真を撮るだけで疑似的に耳型が取れるようなイヤホンとか、ヘッドホン/イヤホンもどんどん性能はよくなってくと思うんですよ。いつも言うんですけど、メガネってみんなそれぞれ違うじゃないですか。同じようにイヤホンもパーソナライズするってことをもっと簡単にできる時代が来るんじゃないかな。
戸田:Atmosをステレオにダウンミックスした時に、もともと作ったミックスとだいぶ違うなっていうようなことが起こったりします。なかなかそういうところまで、事前に確認するのって難しいなと感じています。
古賀:いま個人的に思ってるのは、スピーカーのセッティングと調整をちゃんと追い込めば、その差はかなり埋められるということです。実はある時点でその手応えが得られたのでAtmos用のスピーカーを揃えたっていうのがあります。
陣内:なるほど。
深田:Appleの空間オーディオはAtmosの距離パラメーターは反映してないんですよね。TidalとかAmazonは反映してるんですけど。
古賀:はい。その機能がLogicにはついたんで、Appleの今後に期待ですね。
R:ゲームは何年も前からすでにDolby Atmosに対応していますが、ゲーム音楽での制作はどのようなものだったのでしょう?
陣内:『マーベルアイアンマン VR』の時は、オーディオエンジニアの意向もあって音楽はクアッド納品しましたね。頭を動かしたそのまま音楽も動くというものではなかったんですが、人間の頭部をソースにしたモジュレーションを軽くかける、みたいなことをやってました。上に行ったり下に行ったり激しく動くんですが、そういう部分は音楽では表現できなかったので、画面では伝わりにくいスピード感とかを表現する方向にフォーカスした記憶があります。
戸田:ゲームで難しいのが、仮想空間の中をプレイヤーが360°自由に動けちゃうんですよね。すると、じゃあ音楽ってどこから聴こえるんでしょうね??っていう…。結局、効果音は空間で鳴っているけど、音楽だけヘッドホンで聴いてます、みたいな感じになっちゃうんですよ。
陣内:実際、Xbox Oneから7.1.4で出せますよってことで、あらかじめほかのタイトルを聴いてみたら音楽はステレオだったんですよ。それで、効果音と音楽の空間感にすごく差があって…。効果音は空間に広がっているんだけど、音楽はずっと耳元で鳴ってるみたいな。
深田:だいぶ前ですけど、ビョークのVRコンテンツも音はステレオでした(笑)
R:ヘッドトラッキングものはちょっと難しいみたいですね。音楽って、どうしても定位のようなものが必要なんだな、って感じました。
古賀:音楽サブスクリプションサービスの対応は嬉しいんですが、ヘッドホンから先に体験すると「こんなもんか」と思ってしまう人もいるんじゃないかということは心配ですね。先にスピーカーを体験してもらえればAtmosのよさは伝わると思うので、そういう体験の機会が増えるといいですね。
戸田:そういう意味では、やっぱり映画は劇場(=映画館)で見てもらいたいという思いがあるんです。劇場って、作ったものを意図した通りに観せられるという最高の場所のひとつなんですよ。だから、クリストファー・ノーランなんかは、その一回の視聴の中ですべてを体験させることを目指して制作する。それってものすごく高い技術力で緻密に制御されてるから聴けるわけで、音が破綻してたら物語も頭に入ってこない。だから、その作品をしっかり演出できるところまで追い込まないといけない、っていうのは映画をやる上での掟だと思うんですよね。
R:やはり、やる以上はちゃんとしたものを作りたいですよね。
戸田:そうですね。国内でAtmos対応の映画館がやっと3館くらいできた時にインドにはもう60館くらいあって、日本はアジアの中で一番遅れてたわけじゃないですか。Atmosミックスができるスタジオもまだまだ少ない中、せっかく苦労して作っても観られる映画館がないと結局その良さが伝わらないってことになっちゃうんじゃないかな、と。映像の世界もそうだと思うんですけど、設備投資も必要ですし。それをやる必然性みたいなもの…仕事の量とか、Atmosにすることの重要性、あとは周りの声だとかが挙がってこないと、せっかく映画館を作っても外国作品しかないような状態になりかねない。日本も、作品をもっと海外に輸出することを考えれば、予算はちゃんと回るんじゃないかと思うので、ぜひ頑張ってAtmos作品を撮ってほしいですね。
Atmos Musicの展望
戸田:サウンドトラックを専門的に収録するためのオーケストラを立ち上げたんですが、いろんな企業さんに「ぜひ私のオーケストラを使って実験してください」ってお願いしたことがあるんです。その時来てくださった企業さんがやったのは、指揮者の右手前方くらいにマイクを立てて、客席ではなくステージ上で聴こえる音を立体音響で再現するという内容でした。映像も演奏者が指揮者を見る角度からのもので。それはとても面白かったんですけど、じゃあそれを何に使うのか、というところまでは落とし込めなかったんです。
深田:新日本フィルの配信の時に似たようなことをしました。木管、バイオリン、指揮者、ピアニスト…みたいに固定カメラがいくつかあって、それぞれの目線の音を作りたいという内容でした。それで、Atmosミックスを6パターンも作って(笑)、映像を切り替えると音も切り替わる、っていう(笑)。コロナで配信しかできなくなったので、新しいことにチャレンジする試みのひとつで体験としては新鮮で面白かったんですけど、純粋に音楽を楽しむというのとはやはりちょっと違うかな、と。
R:ついつい、意味もなく回してしまったり(笑)
深田:5.1chの初期の頃がそうだったんですが、新しい技術ができて、ツールが生まれて、いろんなことができるようになるとついつい小手先でいろいろと遊びたくなっちゃう(笑)。そういうことに囚われずに音楽の本質を捉えた上で新しい、という作品がどんどん出てきてほしいですね。
古賀:「配信するとCDが売れなくなるから」とか「ステレオはできてるからアップミックスでいいじゃん」みたいな考えの方も残念ながらいらっしゃるんですよね。そういう方に納得してもらうためにも、よりよい環境でAtmosミックスを聴いてもらえる機会を増やしていかないと、と思います。
戸田:根性論みたいであまり言いたくないんですけど、クリエイター、つまりモノを創っているひとたちが、次の時代を創れるかもしれない可能性が目の前にある時に、そこから手を引くっていうことが私は率直に「やだな」って思っちゃうんですよね。もちろん、いろいろな困難がありますけど、そこをなんとかやりくりしてでも「日本から発信できるすごいものができるかもしれない!」っていうことをモチベーションとしてるはずじゃないですか。たとえ社会的なムーブメントがなくても、「私たちがそういう作品を創ればいいじゃん」って考えるのがクリエーターの使命というか、性だと思うんですよ。
古賀:楽観的な話題だと、Atmosカーっていうのがあるんですよね。この前、富山でAtmosタクシーっていうのに乗ったんですよ(笑)そしたら、NetflixとかAmazon HDが入ってて。開発が進めば車でAtmosを聴けるようになるっていうシチュエーションは激増するんじゃないかと思ってるんです。そうなったら、どうやってAtmosのよさを広めようかなんていう心配は5年くらいで全部解決されちゃうんじゃないか、と。
We want more Atmos!
古賀:生収録の話だと、いま国内にはAtmosで活かせる響きを録れるスタジオが少ないんですよね。
深田:スタジオってもともと響きを録るとか音をリッチに録るというのではなくて、なるべく響かないように、ほかのマイクに音がカブらないようにっていう発想で設計されてますからね。ちょっと響くスタジオって、芸大の千住(東京芸術大学 千住キャンパス)のスタジオくらいですね。あれくらい響くスタジオって国内にはないですよ。
戸田:私が立ち上げたオーケストラも、まさにそれが課題で。一番の問題は日本にはスコアリングステージ(註:劇伴制作用の、オーケストラが収録できる大規模スタジオ)がないっていうことだったんですよ。この前も海外作品の音楽を録っていたんですが、録りたいものを録りたい配置で録れるスタジオがない。仕方がないので、ミューザ川崎、オペラシティ、所沢のミューズとか、ホールにオーケストラを入れて、マイクもいろいろと変えて、いわゆる「映画音楽!」的なトラディショナルなクラシックからハイブリッドなものまで…いろいろと試してるんです。それはそれでいいものが録れるんですけど、スタジオで、クロースマイクで録るような芯のある音、映画で使えるっていうレベルまで持っていくというのは難しくて。
深田:今は(コロナによって)難しいですけど、オーケストラの練習場みたいなところって意外にいいんですよ、それこそスコアリングステージみたいで。遮音板みたいのはないんですけど、スペースとしては全然使える。以前、札響さん(札幌交響楽団)の練習場というところで普通のアルバム用のレコーディングをしたことがあるんですよ。広くて、結構スタジオ感覚で使えたんです。
戸田:卓(音声卓)はどこに置いたんですか?
深田:ぼくは卓はほとんど使わないんですよ。HAからI/Fを介して、そのままPCに入れてしまう。
古賀:モニタリングはヘッドフォンですか?
深田:いや、控え室みたいな部屋をひとつ借りて、スピーカーでモニターします。
戸田:クリックがある時はどうしてますか?いまの劇伴だと、いわゆる「同期もの」を録りたいことも多いんですが、オケが80人規模なのでキューボックスが足りなくて…。
古賀:ぼくも小ホールの録音の時とか、自分で持ってるキューボックスを持っていきますが、やっぱり限界がある。下手をするとキューボックスのためだけに外部の業者さんを呼ばなきゃいけなくなる。
戸田:そうですね。スタジオじゃないので、搬入とセッティングで3時間かかったりとかもあって。そういうことを考えるとどうかとも思うんですが、オーケストラが7、80人の規模なのでスタジオでは録れない…なんとかならないかな、と。
古賀:結論としては、日本にスコアリングステージを作ればいいってことに(笑)
戸田:みんなでお金出し合って作りましょうよ〜(泣)
古賀:それやって死ねたら本望かな、と思ってます(笑)
戸田:結局、日本でできないから海外に行かなきゃいけなくなっちゃうんですよ。プラハとか行くと、それこそAtmosの収録とかもどんどんはじめているんですね。今日話したような音源ライブラリの限界もあって、これからAtmosによって生収録が重要視されますし、LAとかからも劇伴制作の依頼があってすごく盛り上がってるんです。海外の映画とか、Netflixでやってるような作品を日本で収録する…そういう制作を輸出するということをやりたいっていうのが、私のひとつの目標としてあるんです。それができたら、日本のAtmosミュージックはもっと盛り上がるな、って。
R:日本にスコアリングステージを作るというのが、一番いい結論なのかも知れないですね。
戸田:ROCK ON PRO で監修してください(笑)というか、ここにいるメンバーでスコアリングステージ作れるんじゃないですか?(一同:笑)
それぞれに専門分野の異なるプロフェッショナルたちによる座談会らしく、忌憚のない意見が飛び交うものとなった。配信事業の対応によるDolby Atmos体験の裾野の広がりを歓迎しながらも、制作者の意図しない環境で聴かれてしまう可能性を危惧される様子が印象に残っている。一部ではバズワード化しているDolby Atmos / 空間オーディオというテクノロジーを真に豊かなユーザー体験へと結実させるためには、地に足のついた制作・聴取が必要だと感じた。読者の皆さまの身近なところにも制作ツールは数多く存在するようになっている、ぜひその制作を実際に体験してみてほしい。
*ProceedMagazine2021-22号より転載
Music
2022/02/04
株式会社 SureBiz様 / 〜Dolby Atmos、技術革新に伴って音楽表現が進化する 〜
2021年6月、Appleが空間オーディオの配信をスタートした。そのフォーマットとして採用されているはご存知の通りでDolby Atmosである。以前より、Dolby Atmos Musicというものはもちろん存在していたが、この空間オーディオの配信開始というニュースを皮切りにDolby Atmosへの注目度は一気に高まった。弊社でもシステム導入や制作についてのご相談なども急増したように感じられる。今回はこの状況下でDolby Atmos制作環境を2021年9月に導入された株式会社 SureBizを訪問しお話を伺った。
需要が高まるDolby Atmos環境を
SureBizは楽曲制作をワンストップで請け負うことにできる音楽制作会社。複数の作家、エンジニアが所属しており、作曲、編曲、レコーディング、ミキシング、マスタリングをすべて行えるのが特長だ。都心からもほど近い洗足池にCrystal Soundと銘打たれたスタジオを所有し、そのスタジオで制作からミキシング、マスタリングまで対応している。今回はそのCrystal SoundへDolby Atmos Mixingが行えるシステムが導入された。2020年の後半よりDolby Atmosでのミキシングがどのようなものか検討を進めていたそうだが、Appleの空間オーディオがスタートしたことでDolby Atmosによるミックスの依頼が増えたこと、さらなる普及が予測されることからシステム導入を決断されたという。
我々でも各制作会社のお客様からDolby Atmosに対してのお問合せを多くいただいている状況ではあるが、現状ではヘッドフォンなどで作業したものを、Dolby Atmos環境のあるMAスタジオ等で仕上げるというようなワークフローが多いようだ。その中で、SureBizのような楽曲制作を行っている会社のスタジオにDolby Atmos環境が導入されるということは、制作スキームを一歩前進させる大きく意味のあることではないだろうか。
📷 洗足池駅近くにある"Crystal Sound"。制作、レコーディング、ミキシング、マスタリングと楽曲制作に必要工程がすべてできるようになったスタジオだ。メインモニターはmusikelectronic / RL901K、サブモニターにAmphion / One18。Atmos用モニターにGENELEC / 8330APとなっている。
サウンドとデザインを調和する配置プラン
まず、既存のスタジオへDolby Atmosのシステムを導入する際にネックになるのは天井スピーカーの設置だろう。Crystal Soundは天井高2500mmとそこまで高くはない。そこで、できるだけハイトスピーカーとの距離を取りつつ、Dolbyが出している認証範囲内に収まるようにスピーカーの位置を指定させていただいた。L,C,Rまでの距離は130cm、サイドとリアのスピーカーは175cmにスタンド立てで設置されている。スタジオ施工についてはジーハ防音設計株式会社によるものだ。その際に課題となったのがスタジオのデザインを損なわずにスピーカーを設置できるようにすること。打ち合わせを重ねて、デザイン、コストも考慮し、天井に板のラインを2本作り、そこにスピーカーを設置できるようにして全体のデザインバランスを調和させている。電源ボックス、通線用モールなど黒に統一し、できるだけその存在が意識されないように工夫されている。
📷 紫の矢印の先が平面の7ch。青い矢印の先が天井スピーカーとなっている。これを基にジーハ防音設計株式会社様にて天井板、電源ボックス、配線ルートを施工いただいた。
Redシリーズ、GENELECの組み合わせ
Dolby Atmos Musicの制作ではDAWとRendererを同一Mac内で立ち上げて制作することも可能だ。ただし、そのような形にするとCPUの負荷が重くマシンスペックを必要とする。本スタジオのエンジニアであるmurozo氏は普段からMacBook Proを持ち歩き作業されており、そこにRendererを入れて作業することはできなくはないのだが、やはり動作的に限界を感じていた。そのためCrystal Soundにシステムを導入されるにあたっては、そのCPU負荷を分散するべくRendererは別のMacにて動作させるようシステム設計をした。Renderer側はFocusrite REDNET PCIeR、Red 16LineをI/Oとしている。
RendererのI/OセットアップではREDNET PCIeRがInput、Red 16Line がOutputに指定される。Pro Toolsが立ち上がるMacBook ProのI/OにはDigiface Danteを選択している。Pro Tools 2021.7からNativeでのI/O数が64chに拡張されたので、このシステムでは64chのMixingができるシステムとなる。ちなみに、Pro Tools側をHDX2、MTRXを導入することにより128chのフルスペックまで対応することも可能だが、この仕様はコスト的に見てもハードルが高い。今回の64ch仕様は導入コストを抑えつつ要件を満たした形として、これからの導入を検討するユーザーには是非お勧めしたいプランだ。
📷 CPU処理を分散するため、Pro ToolsのミキシングマシンとDolby Atmos Rendererマシンを分離。Danteを使用したシステムを構築している。64chのDolby Atmosミキシングが可能な環境となっている。Pro Tools 側のハードウェアのアップグレードにより128chのシステムも構築可能だ。
モニターコントロールにはREDNET R1とRed 16Lineの組み合わせを採用している。これがまた優秀だ。SourceとしてRendererから7.1.4ch、Apple TVでの空間オーディオ作品試聴用の7.1.4chを切り替えながら作業ができるようになっている。また、Rendererからバイノーラル変換された信号をHP OUTに送っているため、ヘッドフォンを着ければすぐにバイノーラルのチェックもできる。スピーカーについてはGENELEC 8330APと7360Aが使われており、補正についてはGLMでの補正にて調整している。マルチチャンネルを行う際は補正をどこで行うか、というポイントが課題になるが、GLMはやはりコストパフォーマンスに優れている。今回のFocusrite Redシリーズ、GENELECの組み合わせはDolby Atmos導入を検討されている方にベストマッチとも言える組み合わせと言えるだろう。
📷 左は机下のラック。左列下部に今回導入いただいたRed 16Line(オーディオインターフェース)、SR6015(AVアンプ)、SWR2100P-5G(Danteスイッチ)が確認できる。ラックトレイを使用して、AppleTV、Digiface Danteもこの中に収まっている。右はGENELEC /8330AP。天井スピーカーであっても音の繋がりを重視し平面のスピーカーからサイズを落とさなかった。
Dolby Atmos環境で聴こえてくる発見
実際にDolby Atmosシステムを導入されてからの様子についてどのような印象を持っているかも伺ってみたところ、Apple TVで空間オーディオ作品を聴きながら、REDNET R1で各スピーカーをSoloにしてみて、その定位にどんな音が入っているかなどを研究できるのが便利だというコメントをいただいた。空間オーディオによって音楽の新しい世界がスタートしたわけだが、スタートしたばかりだからこそ様々なクオリティの音源があるという。システムを導入したことにより、スピーカーでDolby Atmos作品を聴く機会が増え、その中での発見も多くあるようだ。ステレオミックスとは異なり、セオリーがまだ固まっていない世界なので、Mixigを重ねるごとに新しい発見や自身の成長を確認できることがすごく楽しいと語ってくれた。その一例となるが、2MixのステムからDolby Atmos Mixをする際は、EQやサチュレーションなどの音作りをした上で配置しないと迫力のあるサウンドにならないなど、数多くの作品に触れて作業を重ねることで、そのノウハウも蓄積されてきているとのことだ。
📷 Dolby Atmos用のモニターコントロールで使用されているREDNET R1、各スピーカーのSolo機能は作品研究に重宝しているとのことだ。Source1にRendererのプレイバックの7.1.4ch。Source2にAppleTVで再生される空間オーディオに試聴の7.1.4chがアサインされている。制作時も聴き比べながら作業が可能だ。
技術革新に伴って音楽表現が進化する
最後に今後の展望をmurozo氏に伺ってみた。現状、Dolby Atmos Mixingによる音楽制作は黎明期にあり、前述のようにApple Musicの空間オーディオでジャンル問わずにリリース曲のチェックを行うと、どの方法論が正しいのか確信が持てないほどの多様さがあり、まだ世界中で戸惑っているエンジニアも多いのではないか、という。その一方で、技術革新に伴って音楽表現が進化することは歴史上明らかなので、Dolby Atmosをはじめとする立体音響技術を活かした表現がこれから益々の進化を遂げることは間違いないとも感じているそうだ。「そんな新しい時代の始まりに少しでも貢献できるように、またアーティストやプロデューサーのニーズに応じて的確なアプローチを提供できるように日々Dolby Atmosの研究を重ね、より多くのリリースに関わっていければと考えています。」と力強いコメントをいただいた。
📷 株式会社SureBiz murozo氏
今後さらなる普及が期待されるDolby Atmos。世界が同じスタートラインに立った状況で、どのような作品が今後出てくるのか。ワールドワイドで拡がるムーブメントの中で、いち早くシステムを導入し研鑽を積み重ねているSureBiz / Crystal Soundからも新たな表現のセオリーやノウハウが数多く見出されていくはずである。そしてそこからどのようなサウンドが生まれてくるのか、進化した音楽表現の登場に期待していきたい。
*ProceedMagazine2021-22号より転載
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-creative-summit-2021-online/#.YfzvmvXP3OQ
Headline
2022/01/28
名古屋芸術大学 学生によるオーケストラ・バイノーラル・ライブ配信 ~ Dolby Atmos / 360 Reality Audio / AURO-3D ~
名古屋芸術大学 学生によるオーケストラ・バイノーラル・ライブ配信
~ Dolby Atmos / 360 Reality Audio / AURO-3D ~
Text by 名古屋芸術大学 サウンドメディア・コンポジションコース 長江和哉
2021年1月から8月にかけて3 回に渡り、私が録音を教える本学サウンドメディア・コンポジションコースの学生が中心となり、本学オーケストラのコンサートをバイノーラル音声でライブ配信した。本コースは、作曲、録音、音響を学び、新しい時代に必要となる音楽表現を研究していくコースであるが、このようなコンサートのライブ配信を初めて行ったのはコロナ禍が始まった2020年の3月、本学ウィンドアカデミーコースによるコンサートの際に、学生有志が身の回りにある機材を用いて行ったことが始まりである。
その後、2020年夏に配信の基本的な機材を揃え、2020年10月より音楽的な音声や映像によるライブ配信を目指し、コンサートごとに参加者を募り、その都度配信チームを編成し、この1年半で7回のライブ配信を行ってきた。2021年1月からは、研究のために「何か新しいこと」にトライできたらということで、音声は通常ステレオとバイノーラルと2 つのミックスをリアルタイムに作成しライブ配信を行った。筆者は、これらの取り組みを10月20日から23日に行われた、AES Fall Online 2021 Conventionで、ARTSRIDGE 濱﨑公男氏、東京芸術大学 亀川徹氏、WOWOW 入交英雄氏とともに「Next Generation Audio forAdvanced Music Creations and Distributions - Part 2」と題したワークショップで発表したが、今回はProceed Magazineの読者の皆さんにもその詳細をレポートさせていただきたい。
背景
コロナが私たちの生活を激変させた2020年。芸術大学である本学も、慣れない画面越しでのオンライン授業で前期が始まり、教員、学生とも、パソコン、スマホ、カメラ、マイク、スピーカー、イヤホンなどの機器と毎日接する暮らしが始まった。そんな中、演奏実技や実習系の科目は前期の途中より対面授業となり、人と人のリアルなコミュニケーション、そして、そもそも音楽とはどのようなものであったかを再確認した時間となった。
本学では毎年様々なコンサートを企画しているが、その中でも、コロナ禍の中で最初に行われることになった2020年10月22日のオーケストラコンサートは、有観客を予定しながら、コロナの状況が悪化した場合を考慮して配信も同時に行うことが夏頃に決まった。そもそも本コースは、作曲、録音、音響を学ぶコースであるが、学生達がカメラや映像機材を組織することでコンサートのライブ配信ができるのでは、というアイデアはどこからとなく出てきた。そして、2020年夏にビデオ・スイッチャー ROLAND V-1 SDIを導入し、すでにあったSonyの4Kハンディカムを用いながら、HDMIをSDIに変換し50m伝送するケーブルドラムを自作するなどして配信機器を整えた。
振り返って考えてみると、このアイデアは教員である私自身が、オンライン授業のためのカメラや映像周辺機器を組織した経験がなければ敬遠していたかもしれない。なぜならコロナ以前は全く映像配信の知識はなかったからである。そして、この配信プロジェクトには多くの学生が参加してきたが、このコロナ禍でのオンラインでのコミュニケーションという経験がなければ、学生もこれほど映像配信に興味を示さなかったかもしれない。今、改めて振り返ってみるとこれらの配信はコロナ禍の副産物なのかもしれないと感じている。
3D Audio
2020年から2021年夏にかけて、本学のスタジオのPro Tools システムを14年間使用したPro Tools HD 192 I/O からPro Tools HD HDX MTRXシステムに更新した。この際に、5.1chであったスピーカー環境をCR1は7.1.4ch に、CR2は5.1.4ch に変更した。これらシステムにおける更新のほとんどは、学生と一緒にカスタマイズしながら行った。その後、このスタジオを用いて2020年度の卒業制作では数人の学生が3D Audioの作品に取り組み始めた。今回のバイノーラル配信を始めようとしたきっかけはコロナのみではなく、本学スタジオのシステム入れ替えにも関係があるように感じている。
📷 CR1は、7.1.4 Genelec 8330 11本のシステム。CR2は5.1.4 L-C-R 8030 LS-RS 8020、トップスピーカー4つは8020を設置。Dolby Atmos Production Suite、360 Reality Audio Creative Suite、AURO-3D Creative Tools Suite & Auro-HeadPhone が動作可能な環境となった。
📷 2020年8月、CR1のPro Tools HDXのインストールの様子。この時のPro Toolsの入れ替えはROCK ON PROの前田洋介氏にサポートいただきながら行ったが、2021年8月に行ったCR2の入れ替えは私たちのみで行うことができた。
バイノーラル配信
2020 年10 月に三井住友海上しらかわホールで行った1 回目のオーケストラライブ配信は無事に終了し、2 回目の12 月に愛知芸術劇場コンサートホールで行なったライブ配信も同様に無事に終えることができた。そして、3 回目となる2021 年1 月のコンサートでは、もう一歩進んだ要素をライブ配信に取り入れると良いのではと私から学生に提案した。本来は3D Audio でライブ配信ができたらと思ったが、まだマルチチャンネルで音声を伝送するのは難しい。そこで、私たちは3D Audio 制作ツールの制作の補助や確認のためとなるバイノーラル出力を、そのままライブ配信の音声として使用することはできないかと考えた。
まず最初に、本学が2020年に導入したDolby Atmos Production Suite(DAPS)を用い、学生とともに以前行われたコンサートのマルチトラックファイルを別のPro Toolsより再生しながらMADI経由で各マイクの信号を入力し、ライブバイノーラルミックスをすることができるかのテストを行なったが、それほど困難なく実現できることがわかった。その後、私たちは様々なストレステストを行った。DAPSを用いたライブバイノーラルミックスは、Pro Toolsで録音しながらインプットスルーした信号をDAPSにセンドしバイノーラル処理させ、Pro Toolsにリターンするという、Macにとってはかなりの負荷になることとなるが、そのストレステストを事前に行うことで、「何を行ったらシステムがハングするか」を見極めることができた。このような方法で1月29日は、Dolby Atmos Production Suiteでライブ配信を行った。その後、そのほかのツールでも配信を行いたいという意見が学生から出て、6月3日は360 Reality Audio Creative Suite、8月9日はAURO-3D Creative Tools Suite & Auro-HeadPhoneを用いてライブ配信を行った。
📷 ライブ配信の舞台裏。プロデューサー、テクニカルディレクター、カメラ、スイッチャー、標準ステレオミックス、バイノーラルミックスといった役割にわかれ毎回14名程度のチームを組織した。
📷 カメラマンとスコアラー。スイッチャー担当があらかじめカメラ割りを決め、それに基づき撮影を行ったが、全員が初めての経験からスタートした。
バイノーラル研究
私たちは、バイノーラル3D Audio制作ツールの中でどのようにバイノーラル信号が生成されているかを知る必要があると考えた。バイノーラル音声を作成する方法は、バイノーラルマイクで集音するか、マルチマイクでミキシングされた信号を3D Audio制作ツールを用いて処理するかの2つ方法がある。バイノーラルマイクはマイクのみで完結するが、楽器ごとにバランスを取ることは困難である。となると必然的に3D Audio制作ツールでとなるわけであるが、それらはいったいどのような仕組みであるか?これらのツールの中身はいわゆるブラックボックスであるが、これまで筆者が行った研究では、大きく分けて2つの処理がなされているように察している。
その一つ目がEQ、つまり周波数ドメイン、そしてもう一つがリバーブやディレイと行った時間ドメインである。まず、周波数ドメインについて、それは、DAWにおける各トラックの信号をステレオのようにそのまま出力させるのではなく、その定位を実現するために、頭部伝達関数=HRTF(Head related transfer function) という、音が人間の鼓膜に届くまでの、耳介、外耳道、人頭および肩までふくめた周辺物によって生じる音の変化の伝達関数から導き出されたEQ処理がなされる。そして、時間ドメインについて、再生はヘッドフォンでヘッドホンではあるが実際には部屋で聴いているような印象になるように、リバーブの付加やディレイが用いられ空間的な制御がなされていると察している。
📷 2016年11 月、ドイツトーンマイスター協会主催のコンベンション「Tonmeistertagung 2016」でのAURO-3Dのプレゼンテーションより。左の写真は、耳介に対して上方、前方からの音声の伝達パスについて、どのような周波数のピークディップが起こるかについての説明。右の写真は、バイノーラル処理のプロックダイアグラム。入力信号は、Early Reflection (初期反射) とLate Reverberation (後部残響音) とともにHRTF処理され、ヘッドホンのためのEQを経てBinaural 2.0として出力されると解説されていた。(ドイツ・ケルンメッセにて筆者撮影)
そして、私たちはそれらを具体的に知るために分析を行った。方法はDAWよりピンクノイズを出力し、バイノーラル処理された音声をDAWに戻し、HRTFのEQカーブを分析。また、AUDIO EASEAltiverb 7のリバーブサンプリング用のスイープ音を出力し、付加されるリバーブなどを分析した。その結果、3つの3D Audio制作ツールのそれぞれの処理は三者三様であることがわかった。
📷 ピンクノイズを用いた、Dolby Atmos Production Suiteでのバイノーラル処理研究の様子。距離の設定はmid。トップレイヤの一番後ろに音源を定位した際は、このような周波数ドメインでの処理がされる。同様の方法で、360 Reality Audio Creative Suite、AURO-3D Creative Tools Suite & Auro-HeadPhoneを用いて研究した。
その後、かつて収録したマルチトラックを用いて、どのようにミックスすると音楽的な音色がありながら立体感を得られるかということを検討した。具体的には、Dolby Atmos Production Suiteは、トラックごとにバイノーラル処理するかしないかを選択でき、near mid farという3 つの距離を設定することができる。私たちはその組み合わせについて検討した。1. バイノーラル処理しないもの 2. 全てのトラックをバイノーラル処理したもの 3. メインマイクLCR、HL-HR、Vnのスポットマイクのみバイノーラル処理しないもの、これら3つのミックスを作成し比較した。
📷 Dolby Atmos Production Suite でのバイノーラル処理の設定を3 パターン試し、どのように設定すると、音楽的な音色で立体感が得られるかを検討した。
その結果、音楽的な音色という観点から、すべてのトラックをバイノーラル処理することが常に良いとは限らないことがわかった。 そこで、標準ステレオとバイノーラルのミックスは、まず全く別のミックスを作成する必要があること、また、メインマイク、ルームマイクについて、バイノーラルで多くのルームマイクを用いるとサウンドがコムフィルターの関係で濁ることがわかった。その後、様々な組み合わせを試したが、3Dスピーカーで再生される音源としては多くのルームマイクが必要であるが、バイノーラルではメインマイクから遠く離れたHLS-HRS、つまり、メインマイクと異なる性質を持ったルームマイクとスポットマイク、そしてリバーブも必要であることがわかった。
ライブ配信セットアップ
📷 2021 年1月29日名古屋芸術大学学生オーケストラ with 名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団特別演奏会
指揮 : 高谷 光信 ピアノ : 瀧澤 俊(本学学生) 愛知県芸術劇場コンサートホール
バイノーラル研究を経て、通常ステレオとバイノーラルと2つの動画ストリームを配信するために、写真のように収録配信機材を組織した。メインマイクについて、通常ステレオとバイノーラルでは、L-RとHLS-HRSのみ用いたが、事後に行う3Dスピーカーによるミックスのためにこのようにマイクを配置した。
1:2021/1/29:Dolby Atmos Production Suite
名古屋芸術大学学生オーケストラ with 名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団特別演奏会
指揮 : 高谷 光信 ピアノ : 瀧澤 俊(本学学生) 愛知県芸術劇場コンサートホール
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2:2021/6/3:360 Reality Audio Creative Suite
名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団 第7回定期演奏会「オール ハイドン プログラム」
指揮 : 松井 慶太 合唱 : 名古屋芸術大学ハルモニア合唱団 Tp. 宮本 弦 Sop. 伊藤 晴 Alt. 谷田 育代
Ten. 中井 亮一 Bar. 塚本 伸彦 愛知県芸術劇場コンサートホール
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3:2021/8/9:AURO-3D Creative Tools Suite/Auro-HeadPhone
名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団 第8 回定期演奏会「オール モーツァルト プログラム」
三井住友海上しらかわホール
>>詳細URL
📷 2014年に導入したRME MADIface XT。2台ありステージボックスからのマイク信号をメイン、バックアップの2式のDAW に分配できる。
📷 ステーシの平台の近くに設置したRME OctaMic XTC。ステージボックスはメインマイク用のRME Micstasyとともに2式あり、光ファイバーNeuatric opticalCONを用いMADIface XTと接続している。ステーシの平台の近くに設置したRME OctaMic XTC。ステージボックスはメインマイク用のRME Micstasyとともに2式あり、光ファイバーNeuatric opticalCONを用いMADIface XTと接続している。
サウンドコンセプト
バイノーラル研究を経て、どのようなサウンドコンセプトにし、各楽器を定位させると良いかを検討した。私たちは、定位について方法は2つあると考えた。それは、まず客席から舞台を見たように定位にするアイデアと、オーケストラの中にいるようなアイデアである。その両方を試したが、前者はヘッドホンで聴くと後ろは響きしかないように感じた。次に、オーケストラの中心、弦楽器と木管楽器の間にいるような定位を試したが、音楽的にはアレンジがより見通せるようになり、また音響的にも包まれている感じが増した。その結果より私たちは後者を選択した。以下は6月3日のコンサートライブ配信のWeb に記したサウンドコンセプトと360 Reality Audio Creative Suite での音源定位である。
📷 2021年6月3日「オール ハイドン プログラム」の定位図。後方に様々な楽器を定位させた。" バイノーラル・ステレオのコンセプトは「舞台上のオーケストラ中央で聴いているような感覚」。客席で聴いているようなサウンドではなく、オーケストラの弦楽器と木管楽器の間の位置で聴いているようにしたいと考えました。具体的には、弦楽器は前、木管楽器や合唱は後といったように360 度の空間に各楽器の音を配置しました。一方で通常ステレオのコンセプトは、「指揮者が聴いているような感覚」。指揮台上に配置したメインマイクを中心としながら左右と奥行きを表現したいと考えました。"
ポストプロダクション
📷 ポストプロダクションの様子。上はDolby Atmos Production Suiteでのバイノーラルミックス。
2020年10月に初めて行なったコンサートライブ配信が無事に終わった後、配信チームのメンバーは、「何度見てもリスナーに観てよかったと満足していただくことができる音楽」とするためには、様々なポストプロダクション作業が必要なことを理解した。映像のスイチングミス、カメラのブレやピントがうまくいかなかったところを他カメラのデータを用い修正、また音声もミキシング操作に起因するバランスがふさわしくないところは再ミックス、他にも演奏が音楽的にふさわしくなかったところはGPのテイクを用いて編集を行う必要もあり、最終的には必要のないノイズを除去するノイズレストレーションも行いながら、アーカイブ版として再度アップすることが必要であることがわかった。1回目の配信ではこれらの作業が大変に感じられたが、2回目以降は作業をどのように分担し、効率よく進めて行くかも考慮することができた。
終わりに
AES Fall Online 2021 Conventionでの発表のために、8月30日から9月6日まで本コースのFacebookとTwitterで告知し、オンラインでアンケートを行った。3回のコンサート音源の同じ箇所を通常ステレオとバイノーラルと交互に再生し、その印象を返答する方式で行い62人から返答を得た。
結果は、「バイノーラルは、標準ステレオよりも音楽に囲まれていると感じたか?」については、リスナーの69%が同意、もしくは強く同意したが、「バイノーラルは、標準ステレオよりその音楽にとっても好ましいと思ったか? 」については、リスナーの50%が同意、もしくは強く同意した。さらに、バイノーラルが将来において標準ステレオに取って代わるかについては、40%が同意しない、もしくはまったく同意しないという意見が得られた。これらの結果からは、私たちの音源制作方法についてはまだ改善の余地があるということと、やはり人々の耳のかたちは様々で、HRTFデータのパーソナライズ化が必須であるのではということを察することができた。
私たちの最終目標は「より音楽に没頭することができる音響体験」をリスナーに届けることである。コロナ禍で今までとは異なる生活様式となったが、本コースでは、このコロナを機にこれまで行って来なかったライブ配信に取り組むことができた。映像と音声を伴った制作は、教員にとっても学生にとっても未知のことに直面したが、これらに挑戦することは、とても貴重な取り組みとなった。今年度後期は、4回のオーケストラや吹奏楽、室内楽のコンサートの配信を予定しているが、これからも新しいテクノロジーを取り入れながら配信を行って行きたい。最後に、今回のバイノーラル配信の技術サポートの対応をいただいた、ドルビージャパン、ソニー ホームエンタテインメント& サウンドプロダクツ事業本部、Auro Technologiesの各氏に感謝申し上げたい。
Interview
配信チームの学生に、ライブ配信に参加してどのようなことを感じたかをインタビューした。
3年:武石智仁さん:テクニカルディレクター担当
本学でのライブ配信は、新型コロナウィルス感染症が流行する初期であった2020年3月に、ウインドアカデミーコースの定期演奏会の配信を学生のみで行ったことから始まりました。その時は十分な機材も知識もなく行いましたが、2020年8月に配信機材が導入され、これまで10回のライブ配信に参加しました。そして、2021年1月からは、何か新しい取り組みをしたいと考え、ステレオ音声だけではなくバイノーラル音声を用いた配信も行うことができました。私自身としては、ここまでの試行錯誤と成長が最も大切な経験となりました。初期の配信ではわからないことが多くありましたが、回数を重ねることで改善することができました。そして、この3回のバイノーラル配信では、技術的な部分をまとめる立場となり、メンバーと一つの配信を作り上げる中で、どのような映像や音声だと演奏がよりその音楽にとってふさわしくリスナーに届けられるかを考えました。回数を重ねるにつれ、単に演奏を伝えるだけでなく、演奏者の思いまでを届けることが大切なのだと気付くことができました。
3年:細川尚弥さん:バイノーラル・バランスエンジニア担当
8月9日の配信の際、AURO-3Dの制作用ツールを用いたバイノーラルミックスを担当しました。ミックスについては、映像とのマッチングのこともあり、前衛的すぎる定位のアイデアは用いることができないながら、ステレオでは作れない独特の空気感を構築することができました。配信中はマウスによるフェーダーワークのみでミックスを行う必要があり慌ただしく感じましたが、「このフェーダーがリスナーに繋がっている」というスリルを感じながらミックスすることができました。実は私は、昨年大学を休学し、半年間 Rock oN Company渋谷店にて働かせていただきました。その際、業界全体で3D Audioの普及に力を入れていることを感じました。そして、今回初めてバイノーラルのミックスに取り組むことができましたが、初めてシステムに触れた際は、通常ステレオとは異なり考えなければならないことが多く難しい印象でした。ただ、今回のミックスのコンセプトはステレオミックスからの拡張をしていく方法であったので、可能性とやりがいを実際に肌で感じることができました。今後は配信とバイノーラルを掛け合わせることについて深く考え、勉強していきたいです。
3年:澤田智季さん:バイノーラル・バランスエンジニア担当
私はこれまでに何度かライブ配信に参加させていただきました。1月29日の際にはバランスエンジニアを担当いたしました。本番ではステレオのミックスを担当しましたが、ポスプロダクションではバイノーラルのミックスを行いました。バイノーラルのミックスは通常のステレオのミックスと比べて、「こういう場合はこうした方が良い」というノウハウが無いので、私たちなりの発想で直感的にミックスを行いました。単に「バイオリンの音が後ろから出たらおもしろそうだから後ろに定位させよう」という考え方でミックスをすると前衛的なサウンドになってしまい、オーケストラ音楽には合わないと感じました。バイノーラルをより音楽的に聴かせようと思うと通常のステレオミックスの理解も必要だと感じました。今後、バイノーラルミックスのクオリティを上げるためには、「ステレオ+α」の考え方でミックスをすること、バイノーラルミックスを行うツールへの理解を深めることが大切だと感じました。
3年:伊東桜佳さん:プロデューサー、スイッチャー、バランスエンジニア担当
私はこれまでの配信の中で、プロデューサー、スイッチャー、バランスエンジニア等、様々なセクションを担当しました。音の面では、バイノーラルという新しい方法でステレオ配信とは違う空間感の良さを " 誰にでも分かりやすく" 伝えることの難しさを感じました。映像の面では、少しのミスもリスナーには気になる点となるため、スイッチャーとしてどう映像を選択していくかに難しさを感じました。音、映像ともにいくら計画を立てていても、本番は予定通りとはいかない分、メンバーとのコミュニケーションを大切にしながら、 " 今" を配信していくことはとても貴重な経験となりました。さらに私たちが伝えたいものを伝えられる配信ができるよう、これからも研究していきたいと思います。
3年:長谷川伊吹さん:カメラ担当
私はこれまで8回にわたりライブ配信に参加し、様々な役割を経験しましたが、その中でカメラの画角の決め方が一番難しく感じました。例えば、同じ楽器を撮る時でも、同じような画にならないようにするにはどうすれば良いのか、ということを心掛けていました。楽器をアップにした画にするのか、人ひとりの全身が入る程度にアップするのか、パート全体を撮るのかなど、様々な選択肢の中から瞬時にふさわしい画を選択することが難しいと感じました。反面、この活動を行なった1年半の中で、技術力だけでなく、事前準備や楽曲の理解が大切なのだと痛感しました。
1年:新留潤青さん:カメラ担当
私はライブ配信の技術を学ぶために配信チームに参加しました。これまで2回参加して2回ともカメラを担当しました。私の最初の考えは「オーケストラの配信なので視聴する人はまず音を重視しているだろう」と考えていました。しかし、実際のところ特に初めてオーケストラをインターネットで視聴する人にとっては、音よりも映像を大切に感じているのではないかと思いました。つまり、クラシックを聴き慣れていない人に、どんな楽器が何人いるか?、どんな会場にいるのか?という情報を音のみで伝えるのは技術的にとても難しいと感じたからです。しかし、今後、3D Audioがあれば音のみでもそれが可能かもしれません。YouTubeでのライブ配信で音楽を伝送する方法は、普段クラシックに馴染みのない人にも勧めやすく良い方法であると感じました。
3年:碓井陽香さん:スイッチャー担当
私は何度かライブ配信に参加させていただきましたが、そのほとんどがカメラやスイッチャーなどの映像関係でした。スイッチャーをやって感じたことは、" このライブ配信を観ている人にストレスを感じさせず画面を切り替えることがいかに難しいか" ということや、" どのように音楽と映像マッチングさせるか" ということです。映像の切り替え部分は事前にスコアに記し、ある程度決めていましたが、本番で違うカメラの方が良い画だと感じたら臨機応変に変えていくことや、音楽のシーンが移り変わっていくのに合わせて、映像もクロスフェードするなど、その場その場で考えてスイッチングしていくのがとてもスリリングで楽しかったです。
3年:中島琢人さん:プロデューサー担当
私は大学の配信チームでプロデューサーを2回担当しました。その際、1つの演奏会にとても多くの方が携わっていることを肌で感じることができました。そして、コロナ禍でも配信を通して音楽を届けられることにやりがいを感じながら、感謝の気持ちを持って取り組むことができ、最終的にはポストプロダクションを終えるまで、メンバーに支えられながらチームをまとめることができました。このように毎回新しいバイノーラルの技術的な取り組みに挑戦しながら互いに知識を高め合い協力して配信を行うことができ、とても貴重な経験になりました。
*ProceedMagazine2021-22号より転載
Event
2021/11/18
【11/25 開催】Pro Tools|HDXでDolby Atmosミックスfeat.グレゴリ・ジェルメン
2021年11月25日(木) 18:00より、Avid協賛による『「サンレコ・セミナー」Pro Tools|HDXでDolby Atmosミックスfeat.グレゴリ・ジェルメン』がオンライン開催されます。
Avid Atmos認定プログラムPT210DVの資格も取得し、実際のDolby Atmos Musicミックスの経験も豊富なエンジニアであるグレゴリ・ジェルメン氏のAtmosミックス・ノウハウや、彼自身のお気に入りツール等、Pro ToolsにおけるAtmosミックスワークフローに大いに活用できる内容をご覧いただけます。
オンラインセミナー自体の配信方法も、Pro Tools HDX + MTRXを使用し、Dolby Atmos Renderer経由でリットーベースの立体音響システムに接続、そのままバイノーラル配信される形となりますので、イマーシブ・オーディオならではの臨場感も感じ取っていただける予定です。
参加費無料、事前登録不要のセミナーですので、Dolby Atmos ミックスにご関心のあるユーザー様はぜひチェックしてみてください。
セミナー概要
日時:2021年11月25日(木) 18:00〜
場所:Sound & Recording Magazine誌特設WEBページ上にて配信
講師:グレゴリ・ジェルメン氏(Sonic Synergies Engineering)
参加費:無料、事前登録不要
*配信ページは告知ページを兼ねております。セミナー開始時刻以降、ブラウザの再読み込み等をお試しください。
講師紹介
グレゴリ・ジェルメン氏。レコーディング・エンジニアになるべくパリから来日し、専門学校卒業後スタジオグリーンバード、Digz Inc, Groupを経て2021年に独立。Sonic Synergies Engineeringを設立。バンドものからR&BまでのJポップ、Kポップなど多岐にわたって活躍している。AVID認定Dolby Atmos Mixer。手掛けた作品などはこちらから。https://linktr.ee/mixedbygreg
関連記事
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Headline
2021/10/08
Dolby Atmos Renderer 最新版V3.7 がリリース
Dolby Atmos Renderer V3.7 がリリース
Dolby Atmos Production SuiteおよびDolby Atmos Mastering Suiteに含まれる、Dolby Atmos Rendererソフトの最新バージョンが、先日Dolbyよりリリースされました。
V3.7では、Intel MacとM1 Mac(Rosetta 2経由)の両方でmacOS Big Surに対応(※注意点あり)したことや、Dolby Audio Bridgeがv2.0となるなど、多くの改良が加えられています。
Dolby Atmos Renderer V3.7 変更点ハイライト
Big Sur(IntelおよびM1)互換(Intelで認定、Rosetta 2経由でM1と互換性あり)
Dolby Audio Bridge v2.0 –自動的にクロックを供給
LTCプラグインV2.0
MTC機能の削除
バイノーラル設定プラグインv1.1
オーディオをカスタムビデオと共にMP4でエクスポート可能に
Pro Tools、Nuendo、DaVinci Resolveのクイックスタートテンプレート/プリセットを更新
Input/Master設定に関する表示の分離
スピーカーのミュート
アップデート内容の詳細はこちらのリリースノートよりご確認ください。
>>Dolby Atmos Renderer Release Notes 15 September 2021 Software v3.7
https://developer.dolby.com/globalassets/tools--media/production-tools/dolby-atmos-production-suite/dolby_atmos_renderer_v3.7_release_notes.pdf
macOS Big Sur 11.5 対応
macOS Big Sur(Intel及びRosetta 2経由のM1)に対応!ただし、M1ベースのMACの場合、下記にあるようにパフォーマンスに問題が生じる可能性があるとのことですので、現段階ではIntel搭載のマシンの使用を推奨します。
Dolby Atmos Renderer V3.7は、macOS Big Sur 11.5が動作するIntelベースのMacに対応しています。Renderer v3.7は、M1ベースのMac(Rosetta 2搭載)のmacOS Big Sur 11.5と互換性がありますが、Rosetta 2はアプリケーションとARMプロセッサの間のトランスレーションレイヤーであるため、パフォーマンスに問題が生じる可能性があります。
注意:M1ベースのMacでRenderer v3.7にアップグレードする前に、オーディオI/Oとライセンス認証(iLok)に必要なすべてのドライバーがM1に対応していることを確認してください。
Dolby Audio Bridge V2.0
DAWとDolby Atmos Rendererの接続時、Core Audioベースの仮想デバイスとして動作するDolby Audio bridge。今回のバージョンアップにより、出力ハードウェアに対して自動的にクロック同期されるようになったとのこと(!)
設定が少々複雑なアグリゲートデバイスを組む手間がなくなったのは嬉しいですね。
Dolby Audio Bridge v2.0は、出力ハードウェアに対して自動的にクロッキングを行います。これにより、適切なクロックを供給するためにアグリゲートデバイスを使用するというワークアラウンドが不要となりました。
Dolby Audio Bridge仮想ドライバのこの新しいバージョンは,Rendererのインストーラーパッケージに含まれており、インストール時に選択する必要があります。Dolby Audio Bridge v1.0で作成されたアグリゲートデバイスは今後利用できなくなります。
Dolby Audio Bridge v2.0のインストールには、コンピューターの再起動は必要ありません。
注意:v2.0をインストールすると、コンピュータからDolby Audio Bridge v1.0が自動的に削除されます。
重要:古いバージョンのレンダラーをインストールした場合、古いインストーラー・パッケージに含まれるDolby Audio Bridge v1.0(アイコンなし)はインストールしないでください。Dolby Audio Bridge v2.0(図のようなアイコン)をシステム上の唯一のブリッジとして使用してください。ブリッジのv2.0はRenderer v3.5以前で動作しますが、特定のワークフローではアグリゲート・デバイスが依然として必要です。
Dolby LTC Generator V2.0 (AAX、AU、VST3対応、MTCは削除)
Dolby LTC Generatorは今回のバージョンアップにより、フレームレートや開始時刻の設定ができないDAWにも対応できるよう設定項目が増えました。
また、以前からもLTC over Audioでの同期が推奨されてはいたものの、これまでは可能だったMTC同期が本バージョン以降使用できなくなりました。
重要:Dolby LTC Generatorプラグインv1.0を含む古いPro Toolsテンプレートは、プラグインのv2.0を使用するために手動でアップデートする必要があります。
注意:NuendoとResolveにはタイムコード・ジェネレーターがあります。Dolbyが提供するNuendoテンプレートには、Steinberg SMPTEGeneratorプラグインが挿入されたトラックが含まれています。
Pro Tools、Nuendo、DaVinci Resolveのクイックスタートテンプレート/プリセットを更新
今回の様々な仕様変更に伴い、各種DAW用のテンプレートやプリセットもリニューアル。着々とDolby Atmos制作環境の幅が広がっているのを実感します。
Renderer v3.7のインストーラーには、新規または更新されたDAWテンプレートとプリセットが含まれています。
- 新しいテンプレート Nuendo 10.3およびNuendo 11
- 新しいプリセット Resolve Studio 17 Fairlight
- 更新されたテンプレート Pro ToolsおよびNuendo 10
注意:Dolby社が提供するNuendoテンプレートまたはResolveプリセットを使用する前に、テンプレートまたはプリセットの使用に関する情報を参照してください。
Dolby Audio Bridgeを使用したPro Toolsのセッション・テンプレートには、Dolby LTC Generatorプラグインが挿入されたトラックが1つ含まれるようになりました(LTCをプラグインから使用するか、外部ハードウェアから使用するかは問いません)。入力/出力(I/O)設定ファイルは、LTC over Audio信号をRendererのチャンネル129にルーティングするように設定されています。
注意:テンプレートを使用するためには、必ずLTC Generatorプラグインをインストールしてください。このプラグインはRendererのインストーラーに含まれています。
警告: Dolby LTC Generatorからの信号がスピーカーに出力されていないことを確認してください。
デフォルトフレームレートが24fpsに
Rendererのデフォルトフレームレート設定が24fpsに変更されたのは、地味に嬉しい改善ですね!
- Rendererのデフォルトフレームレートが24fpsに変更されました。
Rendererのフレームレートは、プリファレンスの"Driver"から設定でき、メインウィンドウのヘッダーに表示されます。
- デジタルオーディオワークステーション(DAW)とRendererのフレームレートが一致しない場合、フレームレート不一致のエラーメッセージが表示されます。
Rendererのフレームレートが一致しない場合、フレームレート不一致のエラーメッセージが表示されます。これにより、DAWまたはRendererのフレームレートを変更するように警告されます。
注意:このメッセージは、ミスマッチが初めて発生したときに表示されるので、修正する必要があります。修正しない場合は、次回の再初期化までメッセージは表示されません。
このメッセージは、LTC over AudioやSend and Returnプラグインを使用している設定で表示されます。RME MADI PCIカードを使用している場合は、Hammerfall DSPアプリケーションでフレームレートを手動で設定してください。
マスター書き出し時、カスタムのビデオファイルや音声のみでMP4書き出し可能に
マスターファイルをブラックビデオ以外にも任意のビデオファイルと共に書き出したり、音声のみのMP4を書き出しできるようになりました!
"Export master to .mp4"ウインドウには、「ビデオ」セクションが追加され、以下のオプションがあります。
Black video:オーディオエンコードの長さに合わせてブラックビデオを作成します。これはRenderer v3.5以前の動作です。
No video:音声のみのmp4を作成します。ブラックビデオを必要としない音声のみの再生機器では、このオプションを使用してください。
Custom video:出力される.mp4 にカスタムビデオストリームが埋め込まれます。カスタムビデオの入力は、h264ビデオエレメンタリーストリームを持つmp4である必要があります。再生の同期をとるために、ビデオの開始点がオーディオの開始点またはイン点と一致するようにしてください。
注意:音声とビデオの長さが異なる場合、ファイルは長い方に合わせられることを示す警告が表示されます。
Dolby Atmos Production Suiteシステム要件
Dolby Atmos Production Suiteライセンスで動作するDolby Atmos Rendererは、複数の構成でテストされています。Tested CPU、OS、DAWは、Renderer v3.7を実行するDolby Atmos Production Suiteシステムの最小ハードウェアおよびソフトウェアシステム要件を示しています。
Tested CPUs
• MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB random-access memory (RAM)
• MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
• Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
• Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
• Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
• Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM (with Rosetta 2)
Tested operating systems
• macOS Big Sur (version 11.4, 11.5)
• macOS Catalina (version 10.15.7)
Tested DAWs
• Ableton Live*
• Live 10.1.9
• Live 10.1.35
• Apple Logic Pro*
• Logic Pro 10.6.2
• Logic Pro 10.4.8
• Avid Pro Tools Ultimate
• Pro Tools Ultimate 2021.6
• Pro Tools Ultimate 2021.3.1
• Pro Tools Ultimate 2020.12
• Resolve Studio 17
• Steinberg Nuendo
• Nuendo 10.3.10
• Nuendo 11.0.20
*Dolby Atmos Music Pannerが必要です。
Apple Musicの空間オーディオ対応もあり、国内におけるDolby Atmosコンテンツの需要も日々高まってきているのを実感します。音楽スタジオやポストプロダクションのMA・ダビングルームをDolby Atmos制作に対応したい!といったご相談は、導入実績豊富なROCK ON PROまで是非お問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-on-4%cf%80-proceed2021/#.YWATGGb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-free-trial-package/#.YV2JlGb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/daps-90day-trial/#.YWASrmb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/netflix-sol-levante-dolby-atmos-pro-tools-session-file-open-source/#.YWASxGb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/mtrx_webinar_archive_202007/#.YWAS42b7TOQ
Headline
2021/08/19
Dolby Atmos 関連情報 ~ Avid Blog
ここ数年で、Netflix、Amazon、Appleなど、新世代のメディアプラットフォームの旗手が続々と Dolby Atmos 対応を表明し、ユーザーがイマーシブ/空間オーディオを体験する機会は今後も増えていくと予想されます。
Avid Blog には、Pro Tools を使用した環境に限らず、Dolby Atmos 制作にかかわる数多くのノウハウや事例が掲載されています。
これから Dolby Atmos 制作に挑戦したいと考えている方、イマーシブオーディオに関する知見をより深めたいエンジニアのみなさま、ご自身の音楽を Dolby Atmos フォーマットで発表したいと考えているミュージシャンの方々など、どのような方にも参考になりそうな内容ですので、こちらの記事で一気に紹介させていただきます。
Dolby Atmos Music 関連の最新記事
AvidPlayで Dolby Atmos® Music を配信する方法(Apple Music編)
インディーズ系アーティスト/バンドやプロダクションが、AvidPlay を使って Apple Music の空間オーディオでコンテンツ配信する方法を、具体的に解説しています。
Dolby Atmos Musicでミックスするためのヒントとトリック
Dolby Atmos Music をバイノーラルミックスする際のノウハウを、22項目に渡って解説しています。Dolby Atmos でのスピーカー・ミックスに関して、一定以上の知識/経験のある方がバイノーラル・ミックスに挑戦する場合に有効な、少し上級者向けの内容となっています。
まとめページ、動画再生リストなど
Avid Web: Dolby Atmos Music関連情報ランディング・ページ
Dolby Atmos Music 制作のためのAvid ソリューションなどを紹介しているページです。
Pro Tools | Ultimate - Dolby Atmosミキシング関連ビデオ
Pro Tools | Ultimate で Dolby Atmos 制作を行う際の基本的なワークフローを解説しています。設定からデリバリーまで、実際の画面を見ながら確認できます。
Dolby Atmos Music トライアル・パッケージ 無償ダウンロード
こちらの記事でも紹介した、Pro Tools | Ultimate と Dolby Atmos Renderer の無償トライアルパッケージです。
その他、Dolby Atmos 関連ブログ
グラミー賞受賞者 ダレル・ソープのイマーシブミュージック・ミキシングに関する3つのポイント
ヘッドフォンを使用してDolby Atmos Mixを作成する
Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!
Sound That Moves – イマーシブ・オーディオ・プロダクション統合ワークフローの解説
AvidPlayで Dolby Atmos® Music を配信する方法
Dolby Atmos® Music のミキシング体験とAvidPlayでの配信
Dolby Atmosの中核となるPro Toolsインターフェース
あなたにとって、最適なDolby Atmos® ソフトウェアとは?
Pro Tools | UltimateとMTRXでDolby Atmos Homeファイナル・ミックス・ステージを構築提案!
Pro Tools | Ultimateによる Dolby Atmos 制作フローの概要
ROCK ON PRO では、お客様のご要望に合わせた最適なシステム提案をさせていただいております。ご相談・ご質問は、ぜひ下記 contact ボタンよりお気軽にお問い合わせください。
Music
2021/07/21
Chimpanzee Studio 様 / 〜コンパクトスタジオのスタイルを広げるDolby Atmos〜
本職はプロのミュージシャン。ドラマーを生業としつつ、スタジオの経営を鹿児島で行う大久保氏。そのスタジオにDolby Atmosの制作システムを導入させていただいたので詳細をお伝えしたい。かなり幅広い作品の録音に携わりつつも、自身もミュージシャンとしてステージに立つ大久保氏。どのようにしてスタジオ運営を始め、そしてDolby Atmosに出会ったのだろうか?まずは、スタジオ開設までのお話からお伺いした。
90年代のロスで積み重ねた感覚
それではスタジオ開設に至る経緯をたどってみたい。鹿児島出身である大久保氏は学生時代より楽器を始め、広島の大学に進学。その頃より本格的に音楽活動を始めていたということだ。普通であれば、学生時代に特にミュージシャンとしての道を見出した多くの場合は、ライブハウスの数、レコーディングセッションの数など仕事が多くある東京、大阪、福岡といった大都市をベースに活動を本格化させるのが一般的である。しかし大久保氏は日本を飛び出し、全てにおいて規模が大きく好きな音楽がたくさん生まれたロサンジェルスの地へと一気に飛び立った。ロサンジェルスは、ハリウッドを始めとしたエンターテイメント産業の中心地。大規模なプロジェクト、本場のエンターテイメントに触れることとなる。なぜ、アメリカ、そしてロサンジェルスを選んだのか?その答えは文化の違いとのことだ。アメリカには町ごとに音楽がある。ロス、ニューヨーク、シアトル、アトランタ、それぞれの街にそれぞれの音楽がある。そんな多様性、幅の広さが魅力だという。
Chimpanzee Studio(チンパンジースタジオ)
大久保 重樹 氏
ロスに移住してからは、ミュージシャンとして活躍をする傍ら、住んでいた近くにあったレコーディングスタジオのブッキングマネージメント、日本からのミュージシャンのコンサルなどを行ったということだ。時代は1990年代、まだまだ日本のアーティストたちもこぞってアメリカまでレコーディングに出かけていた時代。そこで、自身もミュージシャンで参加したり、スタジオ・コーディネイトを行ったりと忙しい日々を過ごしていたそうで、ロスでも老舗のSunset Soundやバーニー・グランドマンにも頻繁に通っていたというからその活躍がいかに本格的なものであったかが伺える。
そんな環境下で、スタジオによく出入りをし、実際にレコーディングを数多く経験するうちに、録音というものに興味が湧いてきたということだ。まずは、自身のドラムの音を理想に近づけたい、どうしたらより良いサウンドへと変わるのか?そういったことに興味を持った。そして、今でも現役として使っているBrent Averillのマイクプリを入手することになる。今では名前が変わりBAE Audioとなっているが、当時はまさに自宅の一角に作業場を設け、手作業で一台ずつ製品を作っていた文字通りガレージメーカーだった時代。創業者の名前をそのままにメーカー名をBrent Averillとしていたのも、自身の名前をフロントパネルにサイン代わりにプリントした程度、というなんとものどかな時代である。
大久保氏は、実際にBrent氏の自宅(本社?)へ出向き今でもメインで活用しているMic Preを購入したそうだ。そのエピソードも非常に面白いものなので少し紹介したい。Brentさんの自宅は大久保氏とは近所だったというのも訪問したきっかけだった。そしてそこで対応してもらったのが、なんと現Chandler Limitedの創業者であるWade Goeke氏。その後、世界を代表するアウトボードメーカーを立ち上げることとなるGoeke氏の下積み時代に出会っているというのは、ロサンジェルスという街の懐の深さを感じさせるエピソードだ。
📷Pro ToolsのI/O関連とMicPreは正面デスクの右側に設置。上のラックにはDirectout ANDIAMO、AVID MTRX。下のラックには、DBX 160A、Brent Avirill NEVE 1272、Drawmer 1960が入っている。
ネットの可能性を汲み取った1997年、鹿児島へ
そんなロスでの生活は1990年に始まったそうだが、時代はインターネットが普及への黎明期を迎えていた時期でもある。ロスと日本の通信は国際電話もあったが、すでにEメールが活用され始めていたということ。必然性、仕事のためのツールとしてインターネットにいち早く触れた大久保氏は「これさえあれば世界のどこでも仕事ができる」と感じた。アーティストならではなのだろうか?いち早くその技術の持つ可能性を感じ取り、活用方法を思いつく。感性と一言で言ってしまえば容易いが、人よりも一歩先をゆく感覚を信じ、鹿児島へと居を移すこととなる。ロスで知り合ったいろいろな方とのコネクション、人脈はインターネットがあればつながっていられる。それを信じて帰国の際に地元である鹿児島へと戻ったのである。帰国したのが1997年、日本ではこれからインターネットが本格的に普及しようかというタイミングである。その感性の高さには驚かされる。
鹿児島に帰ってからは、マンションでヤマハのアビテックスで防音した部屋を作りDAWを導入したということだ。最初はDigital PerfomerにADATという当時主流であったシステム。もちろんミュージシャンが本職なので、最初はエンジニアというよりも自分のスキルを上げるための作業といった色合いが強かったそうだ。そのエンジニアリングも、やればやるほど奥が深くどんどんとのめり込んで行き、自身でドラムのレコーディングができるスタジオの設立を夢に描くようになる。ドラムということで防音のことを考え、少し市街地から離れた田んぼの真ん中に土地を見つけ、自宅の引っ越しとともに3年がかりで作り上げたのが、現在のチンパンジースタジオだということだ。今は周りも住宅地となっているが、引っ越した当時は本当に田んぼの真ん中だったということ。音響・防音工事は株式会社SONAに依頼をし、Pro Toolsシステムを導入した。
スタジオのオープンは2007年。オープンしてからは、国内のアーティストだけではなく、韓国のアーティストの作品を手掛けることも多いということだ。チンパンジースタジオができるまではライブハウスや練習スタジオに併設する形での簡易的な録音のできる場所しかなかったそうで、鹿児島で録音に特化したスタジオはここだけとなる。チンパンジースタジオでの録音作業は、地元のCM音楽の制作が一番多いということだ。自身がメインで演奏活動を行うJazzはやはり多くなるものの、ジャンルにこだわりはなく様々なミュージシャンの録音を行っている。
地元ゆかりのアーティストがライブで鹿児島に来た際にレコーディングを行うというケースも多いということだ。名前は挙げられないが大御所のアーティストも地元でゆっくりとしつつ、レコーディングを行うということもあるということ。また面白いのは韓国のアーティストのレコーディング。特に釜山からレコーディングに来るアーティストが多いということだ。福岡の対岸に位置する釜山は、福岡の倍以上の人口を抱える韓国第2の都市でもある。しかし、韓国も日本と同様にソウルへの1極集中が起こっており、釜山には録音のできる施設が無いのが実情の様子。そんな中、海外レコーディング先としてこのチンパンジースタジオが選ばれることが多いということだ。
📷錦江湾から望む鹿児島のシンボルとも言える桜島。チンパンジースタジオは市街から15分ほどの距離にある。
📷Proceed Magazine本誌で別途記事を掲載している鹿児島ジャズフェスティバルのステッカーがここにも、大久保氏はプレイヤーとして参加している。
省スペースDolby Atmos環境のカギ
📷内装のブラッシュアップに合わせ、レッドとブラックを基調としスタイリッシュにリフォームされたコントロールルーム。右にあるSSL XL Deskはもともと正面に設置されていたものだが、DAWでの作業が増えてきたこと、またAtmosの制作作業がメインとなることを考えPCのデスクと位置が入れ替えられている。またリフォームの際にサラウンド側の回線が壁から出るようにコンセントプレートが増設されている様子がわかる。Atmos用のスピーカーはGenelec 8020、メインのステレオスピーカーはADAM A7Xとなっている。
スタジオをオープンさせてからは、憧れであったアナログコンソールSSL XL Deskを導入したりマイクを買い集めていったりと、少しづつその環境を進化をさせていった。そして今回、大きな更新となるDolby Atmos環境の導入を迎えることとなる。Dolby Atmosを知るきっかけは、とあるお客様からDolby Atmosでの制作はできないか?という問い合わせがあったところから。それこそAtmosとは?というところから調べていき、これこそが次の時代を切り拓くものになると感じたということ。この問い合わせがあったのはまさにコロナ禍での自粛中。今まで通りの活動もできずにいたところでもあり、なにか新しいことへの試みをと考えていたこともあってAtmos導入へと踏み切ったそうだ。
当初は、部屋内にトラスを組みスピーカーを取り付けるという追加工事で行おうという簡易的なプランだったというが、やるのであればしっかりやろうということなり天井、壁面の内装工事をやり直してスピーカーを取り付けている。レギュレーションとして45度という角度を要求するDolby Atmosのスピーカー設置位置を理想のポジションへと取り付けるためには、ある程度の天井高が必要であるが、もともとの天井の高さもあり取り付けの位置に関しても理想に近い位置への設置が可能であった。取り付けについても補強を施すことで対応しているという。合わせて、壁面にも補強を行いスピーカーを取り付けている。このような設置とすることで、部屋の中にスピーカースタンドが林立することを避け、すっきりとした仕上がりになっている。また、同時にワイヤリングも壁面内部に埋め込むことで、仕上がりの美しさにもつながっている。環境構築にはパワードスピーカーを用いるケースが多いが、そうなると、天井や後方のサラウンドスピーカーの位置までオーディオ・ケーブルとともに電源も引き回さなければならない。これをきれいに仕上げるためには、やはり内装をやり直すということは効果的な方法と言える。
📷天井のスピーカーはDolby Atmosのリファレンスに沿って、開き角度(Azimuth)45度、仰角(Elevation)45度に設置されている。天井が高く余裕を持って理想の位置へ設置が行われた。
今回のDolby Atmos環境の導入に関しては、内装工事という物理的にスピーカーを取り付ける工事もあったが、システムとしてはオーディオインターフェースをMTRXへと更新し、Dolby Atmos Production Suiteを導入いただいたというシンプルな更新となっている。XL Deskを使ったアナログのシステム部分はそのままにMTRXでモニターコントロールを行うAtmos Speakerシステムを追加したような形だ。録音と従来のステレオミキシングに関しては、今まで通りSSL XL Deskをメインとしたシステムとなるが、Dolby Atmosミックスを行う際にも従来システムとの融合を図った更新が行われている。やはり今回のシステム更新においてMTRXの存在は大きく、ローコストでのDolby Atmos環境構築にはなくてはならないキーデバイスとしてシステムの中核を担っている。
📷今回更新のキーデバイスとなったAvid MTRX、持ち出しての出張レコーディングなどでも利用するため別ラックへのマウントとなっている。
📷収録時のメインコンソールとなるSSL XL Desk。プレイヤーモニターへのCueMixなどはこのミキサーの中で作られる。アナログミキサーなのでピュアにゼロレイテンシーでのモニタリングが可能だ。
📷ブースはドラム収録できる容積が与えられ、天井も高くアコースティックも考えられた設計だ。
Dolby Atmos構築のハードルを下げるには
エンドユーザーに関しては、ヘッドフォンでの視聴がメインとなるDolby Atmos Musicだが、制作段階においてスピーカーでしっかりと確認を行えることは重要だ。仕込み作業をヘッドフォンで行うことはもちろん、ヘッドフォンでのミックスを最終的にしっかりと確認することは必要なポイントではある。しかし、ヘッドフォンでの視聴となるとバイノーラルのプロセッサーを挟んだサウンドを聴くことになる。バイノーラルのプロセスでは、上下や後方といった音像定位を表現するために、周波数分布、位相といったものに手が加わることとなる。サウンドに手を加えることにより、擬似的に通常のヘッドフォン再生では再現できない位置へと音像を定位させているのだ。これは技術的にも必要悪とも言える部分であり、これを無くすことは難しい。スピーカーでの再生であればバイノーラルのプロセスを通らないサウンドを確認することができ、プロセス前のサウンドで位相や定位などがおかしくないか、といったことを確認できる。これは業務として納品物の状態を確認するという視点からも重要だと言える。
制作の流れとしては、スピーカーで仕上げ、その後にヘッドフォンでどのように聴こえるかを確認するわけだが、バイノーラルのプロセスを通っているということは、ここに個人差が生じることになる。よって、ヘッドフォンでの確認に関して絶対ということは無い。ステレオでのMIXでもどのような再生装置で再生するのかによってサウンドは変質するが、その度合がバイノーラルでは耳の形、頭の形といった個人差により更に変化が生じるということになる。ここで、何をリファレンスとすればよいのかという課題が生じ、その答え探しの模索が始まったところだと言えるだろう。バイノーラルのプロセスでは音像を定位させた位置により、音色にも変化が生じる。そういったところをスピーカーとヘッドフォンで聴き比べながら調整を進めるということになる。
制作のノウハウ的な部分に話が脱線してしまったが、スピーカーでサウンドを確認できる環境が重要であるということをご理解いただけたのではないだろうか。省スペースなDolby Atmos環境であっても、物理的に複数のスピーカーを導入するといった機材の追加は、その後に制作される作品のクオリティのために必要となる。また、システムとしてはAvid MTRXの登場が大きい。モニターコントローラーや、スピーカーチューニングなどこれまでであれば個別に必要であった様々な機器を、この一台に集約することができている。チンパンジースタジオでは、このMTRXの機能をフルに活用し、機材の更新は最低限にして、内装更新やスピーカー設置といったフィジカルな部分に予算のウェイトを置いている。前号でご紹介した弊社のリファレンスルームもしかり、そのスペースにおけるキーポイント明らかにし、そこに焦点をあてて予算を投入することで、Dolby Atmos Music制作環境の構築はそれほど高いハードルにはならないということをご理解いただきたい。
大久保氏は今回Dolby Atmosのシステムを導入するまでは、完全にステレオ・オンリーの制作を行ってきており、5.1chサラウンドのミキシング経験もなかったそうだが、今回の導入でステレオから一気にDolby Atmos 7.1.4chへとジャンプアップしている格好だ。お話をお伺いしたときには、まだまだ練習中ですと謙遜されていたが、実際にミックスもすでに行っており本格稼働が近いことも感じられる。今後はアーティストの作品はもちろん、ライブ空間の再現など様々なことにチャレンジしたいと意気込みを聞くことができた。鹿児島で導入されたDolby Atmosが、その活動に新たな扉を開いているようである。
*ProceedMagazine2021号より転載
NEWS
2021/07/09
Dolby AtmosやSONY 360 RA関連記事が一度に見られる!3D Audioボタンを設置しました。
Apple Musicでの配信がスタートしたことで、いよいよ本格的な普及が予想されるDolby Atmos Music。次世代放送規格MPEG-Hコーデックを使用し、これから爆発的な普及もあり得るSONY 360 Reality Audio(360 RA)。
これらに代表される、3Dオーディオ/空間オーディオ/Immersive Sound関連の記事をピックアップして表示することができる「3D Audio」ボタンをROCK ON PRO WEBサイトトップページに設置しました。
この分野の初期から様々な情報を発信してきたROCK ON PROならではの豊富なリソースを、ぜひご活用ください!
3Dオーディオ関連記事一覧>>
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2021/06/17
【AVID】Dolby Atmos Music トライアル・パッケージを配布中!
Apple Musicの"空間オーディオ"対応で世間の関心が高まっているイマがチャンス!
先日、ついにApple Musicの「空間オーディオ」機能の提供が開始されました。「早速試してみた!」という"耳が早い"音楽ファン達によるネット上の反応も概ね上々。いわゆる頭内定位が発生しない(※1)という点が、「音楽はスピーカーでしか聴かない」という層にも徐々に受け入れられ始めているのではないでしょうか。(※1 頭内定位:通常のステレオ音源をイヤフォンやヘッドフォンで聴く際、音像が頭の中で鳴っているように聞こえる現象)
さて、普段よりDAWでの楽曲制作に親しんでいる皆さまの中には、「自分の楽曲をDolby Atmos Music化してみたい!」と思った方も多いはず。本記事では、そんなあなたへの朗報をお届けします!
>>「そもそもDolby Atmosって何!?」という方はこちらの記事をチェック↓
https://pro.miroc.co.jp/solution/dolby-atmos-proceed2020/#.YMs6yDb7TOQ
必要なモノはPCとヘッドフォン!〜Dolby Atmos Music トライアル・パッケージを無料で入手〜
NEWS
2021/02/19
Dolby Atmos Production Suite 90日間トライアルライセンスが入手可能
Dolby Customerサイトにて、Dolby Atmos Production Suiteの90日間トライアルライセンスが提供されています。Dolby Atmos Production Suite(以下DAPS)とは、AVIDストアにて通常約$300で販売されている有償のプラグインで、Dolby Atmos Rendererや、Dolby Audio Bridge、Pro Tools/Nuendo用のテンプレートなど、Dolby Atmos作品の制作に必要なツールが含まれています。※Dolby Audio BridgeはmacOSのCore Audioベースの技術のため、MACのみ対応
90日間トライアルライセンスの入手方法は簡単!
1.こちらのページから名前、メールアドレス、興味のある分野に関する簡単なアンケートを入力、エンドユーザーライセンス契約とプライバシーポリシーに関する文章を読み、ラジオボタンをONにして"SUBMIT"をクリックして次のページへ。
2."Download Version 3.5"をクリックして、最新のDAPSを入手。"GET TRIAL LICENSE"をクリックして次のページへ。
3.iLok IDと登録メールアドレスを入力すると、iLokアカウントにライセンスがデポジットされます。あとはいつも通り、お使いのiLokにライセンスを移動してソフトウェアを起動します。
どうやって作業を始めるの?
いざインストールして、誰しもが最初に試みるのが通称"音源ぐりぐり"だと思いますが、その方法は弊社刊行のProceed Magazine 2020または下記のページにてご確認ください。(Pro Toolsのバージョンが古いため外見が異なっている部分がありますが、基本的な操作は同じです。)
https://pro.miroc.co.jp/solution/dolby-atmos-proceed2020/#6
これを機に、是非、Dolby Atmos Musicのミキシングに挑戦してみてはいかがでしょうか? お問い合わせは下記コンタクトフォームからご送信ください。
その他、Dolby Atmos関連情報
>>Rock oN 渋谷リファレンスルームではDolby Atmosの試聴体験ができます。現在来店は完全ご予約制ですので、こちらからお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/rock-on-reference-room-dolby-atmos/#.YC8k2xP7TOQ
>>Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!
https://pro.miroc.co.jp/headline/netflix-sol-levante-dolby-atmos-pro-tools-session-file-open-source/#.YC8ldhP7TOQ
>>AVID BLOGにてDolby Atmos Music ミキシング体験記が公開中!
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-blog-dolby-atmos-2020-08/#.YC8pzRP7TOQ
・Dolby Atmos制作にもぴったり、AVID MTRX Studioの詳細をCheck!
>>AVID MTRX Studio ウェビナー アーカイブ映像公開中!
https://pro.miroc.co.jp/headline/mtrx_webinar_archive_202007/#.YC-YHxP7TOQ
NEWS
2020/11/27
「初音ミクシンフォニー2019」のDolby Atmos®(ドルビーアトモス)音源が Amazon Music HD 向けに全世界配信リリース!!11/27(金)〜
今年、開催5周年を迎える「初音ミクシンフォニー」が、初のサントリーホール公演を2020年9月21日(月・祝)に行い、2020年10月17日(土)に横浜公演、さらに今週 11月27日(金)にフェスティバルホールで大阪公演を迎える。その大阪公演の開催日に、「初音ミクシンフォニー2019」の一部演奏曲をドルビーアトモス音源としてAmazon Music HDにおいて配信リリースすることが決定した。
ドルビーアトモスは、モノラルとステレオの制約を超えて、まったく新しい方法で音楽を表現できる立体音響技術であり、「イマーシブサウンド」と言われる没入感溢れる体験を可能にするもので、開催5周年を迎える初音ミクシンフォニーとして是非体感して欲しい内容となっている。初音ミクシンフォニー大阪公演では、配信リリースを記念して会場ホワイエにてその「初音ミクシンフォニー2019」のドルビーアトモス音源が聴けるAmazon EchoシリーズのEcho Studioを簡易設置した試聴ブースを設ける予定となっている。同ブースでは、Amazon Music HDを通じて没入感のあるサウンドで楽しむことができる。
また、「初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜」では、来年2月3日(水)に今年の横浜公演の模様を収録したBlu- ray、CD(2枚組)の発売を予定しており、大阪公演で予約特典会も開催されることになっている。さらに、大阪公演同日から開催されるマジカルミライ2020 in OSAKAにも「初音ミクシンフォニー」として企業ブース出展を行い、そこで初披露となる「刺繍アート」や「トレーディングアクリルキーホルダー(全7種)」の先行販売も行われる。
■タイトル:
Hatsune Miku Symphony 〜5th Anniversary Dolby Atmos Edition〜
■リリース日
2020 年 11 月 27 日(金)
■収録曲:(初音ミクシンフォニー2019 音源) 1.1/6 -out of the gravity- feat. 初音ミク 2.メモリ feat.巡音ルカ
3.ねぇ、どろどろさん feat. 鏡音リン
4.on the rocks
5.ピアノ×フォルテ×スキャンダル feat. MEIKO
6.ピアノ五重奏・名曲メドレー(トルコ行進曲 - オワタ\(^o^)/、嗚呼、素晴らしきニャン生) 7.Catch the Wave
8.たいせつなこと feat. 初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、KAITO、MEIKO、重音テト 9.カンタレラ
10.SPiCa feat. 初音ミク
■配信リンク
https://WarnerMusicJapan.lnk.to/hms2019daPu
※「ドルビーアトモス」音源をお楽しみ頂くには、Echo Studioが必要です。
ドルビーアトモス ミュージックとは?
「ドルビーアトモス」は、まったく新しい方法で音楽とつながることを可能にする立体音響技術であり、リスナーは、比類のないクリアさで、楽曲に秘められたニュアンスを発見することができます。また、リスナーの周りに配置された楽器の複雑なハーモニー、部屋を埋める伝説のギターソロ、聴衆の上を流れるドロップ、歌詞の間に吹き込まれた微妙な息吹など、「ドルビーアトモス」は音楽により多くのスペースと自由を与え、アーティストが意図した通りのディテールとニュアンスを解き放ちます。
※Dolby、ドルビー、Dolby Atmos、およびダブルD記号は、アメリカ合衆国と/またはその他の国におけるドルビーラボラトリーズ の商標または登録商標です。
「初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜」横浜公演の Blu-ray&CD 発売決定!! 2021.2.3(水) 発売
■初音ミクシンフォニー 〜Miku Symphony2020 オーケストラライブ Blu-ray 価格:¥6,000+税
品番:WPXL-90246
数量限定!!5 周年記念ホログラム仕様缶バッジ封入!!(7 種ランダム)
■初音ミクシンフォニー〜Miku Symphony2020 オーケストラライブ CD 価格:¥3,000+税
品番:WPCL-13266/7
【初音ミクシンフォニー5 周年テーマ曲】舞台【初音ミクオリジナル曲】
https://youtu.be/Oh7oLGK6ORc
Hatsune Miku Symphony 2020〜5th Anniversary〜2020.09.21 at SUNTORY HALL
https://youtu.be/4J5KJpvgLAU
■イベント概要
初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜 大阪公演 2020 年 11 月 27 日(金)
フェスティバルホール
18:00 開場/19:00 開演
演奏:大阪交響楽団
指揮:栗田博文 MC:初音ミク 他
特別協力:SEGA feat. HATSUNE MIKU Project
※客席の収容率を 50%とし、前後左右に1席ずつ間隔を空けて座席指定をさせていただきます。 ※休憩無し1部制の公演とさせていただきます。
「初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜」横浜公演オフィシャルグッズ通販サイト販売中!!
https://store.wmg.jp/shop/mikusymphony
【初音ミクシンフォニー2020】オフィシャルサイト
https://sp.wmg.jp/mikusymphony/
【初音ミクシンフォニー2020】オフィシャルツイッター
https://twitter.com/mikusymphony
【初音ミクシンフォニー2019】1/6 -out of the gravity- feat. 初音ミク【オーケストラ ライブ CD】
https://youtu.be/CdRig4N6qrk
【初音ミクシンフォニー2019】横浜公演ダイジェスト映像【オーケストラ ライブ CD】
https://youtu.be/59VcXf8Ek3U
Dolby Atmosの制作環境に関するお問い合わせは、実例豊富なROCK ON PROまで!こちらのコンタクトフォームよりご相談ください。↓
Rock oN渋谷リファレンススタジオでは、Dolby Atmosのサウンドを体験できます!↓ ※要事前予約
https://pro.miroc.co.jp/headline/rock-on-reference-room-dolby-atmos/
NetflixがDolby Atmosミックスを行ったPro Toolsセッションファイルを公開中!↓
https://pro.miroc.co.jp/headline/netflix-sol-levante-dolby-atmos-pro-tools-session-file-open-source/
気になるDolby Atmosの仕組み、そして自宅でDolby Atmosミキシングを始めるには? ↓
https://pro.miroc.co.jp/solution/dolby-atmos-proceed2020/
Mac miniではじめるDolby Atmos制作!↓
https://pro.miroc.co.jp/solution/mac-mini-ht-rmu/
NEWS
2020/10/14
Dolby Atmosに対応!Rock oN Shibuyaリファレンスルーム アップデート完了!!
Rock oN ShibuyaリファレンスルームがDolby Atmosに完全対応いたしました。理想的な7.1.4ch Dolby Atmosルームへのアップデートを果たし、文字通りの"リファレンスルーム"となったRock oN Shibuyaでぜひ最新のイマーシブサウンドを体験してください!
画像上段:施工中の様子。スピーカーユニットを収めるキャビネットの取り付けが行われた。 画像下段:スピーカーの設置が完了した様子。フロントはほぼ従来通りだが、ハードセンターを設置できるようにアップデートされている。
ついにDolby Atmos対応を果たした新たなリファレンスルーム。サイド、リアだけでなく天井に埋め込まれたハイトスピーカーがご覧いだけるだろうか。
真下から見るとこのようになる。ダウンライトの内側、ちょうど柱の角付近の天井にスピーカーが埋め込まれている。
Left側。今回新たに設置されたスピーカーは、設備向け新ブランドFocal CIから同軸モデル100 ICW 8を採用。躯体工事が不要な軽量設計とスタイリッシュな外観は、ホームシアターにも最適だ。
こちらはRight側。スピーカーキャビネットは施工を請け負ってくれた株式会社ソナによる製作。天井に埋め込まれたスピーカーも、内部でキャビネットに収められている。
Left側のサイド/リアスピーカーは、壁面に新たな張り出し部分を作りつけた上で埋め込まれている。まるではじめからこのような部屋だったかのように美しい仕上がりは、まさにソナ様の手腕によるものだ。
CIから100 ICW 8近影。なんと、ツイーター部分は角度を調整することが可能。ルームの特性に応じて、最適な音響調整を行うことが可能となっている。
https://youtu.be/EmMyGliTMgI
Dolby Atmosに完全対応 ~Pro ToolsセッションやOTT、Blu-ray、ゲーム試聴までOK!
Dolby Atmos再生環境として理想的な7.1.4chスピーカーレイアウトを実現した今回のアップデート。同時にBlu-rayプレイヤー兼用でXbox oneを導入し、Dolby Atmosコンテンツを幅広くご視聴いただくことが可能となりました。しかし、なんといってもRock oNならではのポイントはPro Toolsセッションを再生することが可能ということ!Dolby Atmosを制作リファレンス環境で気軽に・手軽に体験していただけます!
Rock oN Shibuyaリファレンスルームで体験できること!
Pro ToolsによるDolby Atmosミックスの試聴
Xbox oneを使用したDolby Atmos対応ゲームの視聴
Xbox oneによるOTTコンテンツの視聴
Blu-rayディスクによるDolby Atmosコンテンツの視聴
放送・映画制作に従事されている方のみならず、Dolby Atmosミュージックも本格的に始動しつつある今日、クリエイター/音楽ミキサーの方々も要注目のシステムとなっております!
こんな方におすすめ!
Dolby Atmos用のモニターを探している
普段と違う環境でDolby Atmosセッションをチェックしたい
Dolby Atmos環境でマイクやアウトボード機材を選定したい
Dolby Atmosによるイマーシブサウンドを体験したい
新ブランド Focal CIを導入 ~高品質・軽量設計・短工期!
今回のアップデートに際してサイド・リア・ハイトに設置されたのは、サウンドクオリティに定評のある仏Focal社による新ブランド「Focal CI」から100 ICW 8という同軸モデル。ご存知の通り、多数のスピーカーを配置するイマーシブサウンドにおいては位相の点で圧倒的な優位性を持つ同軸スピーカーは理想的なチョイスです。
Focal CIはFocal社が新たに立ち上げた設備向けブランド。設備向けというと館内放送用や飲食店でBGMを流すためのものというイメージを持たれるかも知れませんが、そこはもともとHi-Fiオーディオ向け製品も展開しているFocal。そうした用途だけでなく、ホームシアターやスタジオも視野に入れて開発された製品となっております。
Focal CI全ラインナップについて、詳しくはこちら>>
この度、Rock oN Shibuya リファレンスルームに導入されたFocla CI 100 ICW 8。以前から「点音源のようだ」と評されるFocalのスピーカーだが、同軸仕様の同モデルは真の点音源となる。11個ものスピーカーが並ぶ中でも位相差による定位感のボヤけやサウンドの濁りを回避し、クリーンなモニター環境を確保することが可能だ。
100 ICW 8について、詳しくはこちら>>
今回の工事が2日間という非常に短い期間で完了することができたのも、この100 ICW 8の導入によるところが大きかったように思えます。通常、埋め込み型のスピーカーを設置する際には耐荷重の問題が障壁となることが多いものです。重量のあるスピーカを壁や天井に埋め込もうとすると建物が持つ耐荷重を超えてしまう可能性があるため、スピーカーの設置工事以前に躯体の補強工事などに多くの日数を費やすことになるからです。
その点、パッシブタイプの100 ICW 8は2kg弱という軽量設計のため、躯体工事の必要性がグッと下がります。実際に、今回の工事でも躯体や壁・天井の補強は行っていません。加えて、さすがフランスのメーカーと言いたくなる美麗な外観は、既存の部屋に後付けしたとは思えないほど美しい仕上がりに貢献しています。そして、1発¥36,300(税込)という価格も非常に魅力的です。
こうしたモデルを選定することで、既存設備のDolby Atmosへのアップデートは想像よりもはるかに気軽に行えることになるでしょうう。。
Focal CI 100 ICW 8のイチオシポイント!
Focal社による信頼のサウンドクオリティ
同軸モデルでイマーシブ環境に最適
1.7kgという軽量設計
ルームの品格を損なわない美しい外観
1ユニット¥36,300(税込)という低価格
Focal CI全ラインナップについて、詳しくはこちら>>
100 ICW 8について、詳しくはこちら>>
Dolby社推奨レイアウトを踏襲 ~Dolby Atmosのリファレンスルームとしてご活用ください!
マルチチャンネルサラウンド・システムの構築で最難関となるポイントは、スピーカーレイアウトかも知れません。部屋の広さや構造によって、どうしても規格に則った配置が不可能な場合もあります。Rock oN Pro Shibuyaリファレンスルームは幸いにもそうした問題をクリアし、リスニングポイントを中心とした各スピーカー間の角度、天井高など、ほとんどの要素がDolby社推奨の理想的なものとなっています。厳密にはサイドスピーカーの位置がやや高いのですが、100 ICW 8に搭載されたツイーター角度調整機構により、サウンド的な問題はまったくありません!
まさに、Dolby Atmosのためのリファレンスルームへと進化したRock oN Shibuya リファレンスルームへ、ぜひお越しください。もちろん、従来同様ステレオでのご試聴も承っております!
Dolby Atmosシステム導入、ご相談などはDolby認定ディーラーであるROCK ON PRO までお気軽にお問い合わせください。
Tech
2020/09/28
Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!
https://youtu.be/Ecr_02W2Csw
Pro Tools | HDX, S6などを使用してDolby Atmosミックスされた4K HDR/Atmosアニメ作品「Sol Levante」のオーディオ・プロダクション・ストーリーがAvidブログに掲載されました。2020年4月に公開されたこの作品の特徴は、その制作過程や、Pro Toolsセッション・ファイル等の素材も全てオープン・ソースとしてプロダクションに公開していることです。
既にNetflixパートナーとなられているスタジオ様では、ダウンロードして再生なさっているところも多いと思いますが、こういった制作環境やワークフローを、より広く告知したいというAvidからの要望に、Netflixが賛同する形でブログ公開となったようです。
>>Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!(Avidブログ日本語版)
Dolby Atmosミックスにご関心をお寄せのお客様は、上記リンクより、ぜひご一読されることをおすすめいたします。
ブログ中程にリンクされているムービーでは、文中では触れられていない、ウィル・ファイルズ氏によるS6でのミックスの模様をご覧いただける他、コメントも日本語でご覧いただけます。
Pro Tools セッションファイルを含むオープンソース・コンテンツは、ブログ中程のテキストにリンクされているNetflixのページからダウンロードできるようになっています。
Sound That Moves – イマーシブ・オーディオ・プロダクション統合ワークフローの解説
また、このブログ公開に合わせて、Pro Tools | HDXを初めとするAvidのDolby Atmosミックスに有効な各種製品並びに技術情報をまとめたランディングページも作成されています。Dolby Atmos制作ツールのハウツー的な内容も含まれておりますので、Pro ToolsにおけるDolby Atmosワークフローの概要が掴めるのではないでしょうか。
Dolby Atmos 認定ディーラーであるROCK ON PROなら、システム設計からキッティングまで、Pro Tools | HDXシステムでのDolby Atmos制作ワークフローを完全サポート!下記contactバナーよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
Dolby Atmos RMU ブランドページ
Music
2020/08/25
AVID BLOGにてDolby Atmos Music ミキシング体験記が公開中!
AVID BLOGにてDolby Atmos Musicのミキシング体験記が公開されています。記事を執筆したのは、カリフォルニア州ロサンゼルス近郊に音楽スタジオ"The Record House"を構えるミキシングエンジニア、Mert Ozcan氏。公式プロフィールによると、彼はバークリー音楽大学を卒業後、Abbey Road、British Grove、Capitol and Interscope Studiosといった世界的にも権威ある数々の音楽スタジオでエンジニアとしての腕を磨き、同じくエンジニア兼ミュージシャンであるBeto Vargas氏と共にThe Record Houseを立ち上げたそうです。
記事ではMert氏によるDolby Atmos Musicミキシングに関する考察がアツく語られているので、ご興味がある方は是非ともご一読してみてはいかがでしょうか?
◎こちらからチェック!
Dolby Atmos® Music のミキシング体験とAvidPlayでの配信 - AVID BLOG
http://www.avidblogs.com/ja/dolby-atmos-music-avidplay/
「まるでモノクロがカラーになったみたいだ」
「スタジオを変えたくなった」
「普通に音楽を聴くなんてもう無理です」
これらはアーティストやミュージシャンが、The Record House の新しくできたAtmosミックスルームで Dolby Atmos Music を聴いた時のいくつかのコメントです。この体験が特別なものであった事を物語っています。
上記ページより一部抜粋
◎公式サイトからはMert氏らが手がけた音楽作品も実際に試聴可能です!
The Record House 公式サイト
https://the-record-house.com/
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Media
2020/08/11
ゼロからはじめるDOLBY ATMOS / 3Dオーディオの世界へDIVE IN !!
2020年1月、CES2020にてお披露目された"Dolby Atmos Music"。映画向けの音響規格の一つであるDolby Atmosを、新たなる"3D"音楽体験として取り入れよう、という試みだ。実は、前年5月頃より"Dolby Atmosで音楽を制作しよう”という動きがあり、ドルビーは世界的大手の音楽レーベル、ユニバーサルミュージックとの協業を進めてきた。"Dolby Atmos"は元々映画音響用のフォーマットとして2012年に誕生している。その後、ヨーロッパを中心に対応劇場が急速に増え、海外では既に5000スクリーン以上、国内でもここ数年で30スクリーン以上に渡りDolby Atmosのシステムが導入されてきた。
また、映画の他にもVRやゲーム市場でもすでにその名を轟かせており、今回、満を持しての音楽分野への参入となる。Dolby Atmos Music自体は、既にプロオーディオ系の様々なメディアにて取り上げられているが、「Dolby Atmosという名称は聞いたことがある程度」「Dolby Atmosでの制作に興味があるが、日本語の情報が少ない」という声もまだまだ多い。そこでこの記事では、今のうちに知っておきたいDolby Atmosの基礎知識から、Dolby Atmosミックスの始めの一歩までを出来るだけ分かりやすい表現で紹介していきたい。
目次
コンテンツは消費の時代から”体験”の時代に 〜イマーシブなオーディオ体験とは?〜
まずは Dolby Atmosを体験しよう! / 映画、音楽、ゲームでの採用例
ベッドとオブジェクトって何!? / Dolby Atmos基礎知識
Dolby Atmos制作を始めよう / 必要なものは何?
自宅で始めるDolby Atmosミックス / Dolby Atmos Renderer × Pro Tools 2020.3【Send/Return編】
自宅で始めるDolby Atmosミックス / Dolby Atmos Renderer × Pro Tools 2020.3【CoreAudio編】
1.コンテンツは消費の時代から”体験”の時代に 〜イマーシブなオーディオ体験とは?〜
近年、"3Dオーディオ"という言葉をよく見かけるようになった。今のところ、その厳密な定義は存在していないが、古くからは"立体音響"や"三次元音響"といった言葉でも知られており、文字通り、音の位置方向を360度、立体的に感じられる音響方式のことを指す。その歴史は非常に古く、諸説あるがおよそ1世紀に渡るとも言われている。
点音源のモノラルに始まり、左右を表現できるようになったステレオ。そして、5.1、7.1、9.1…とその数を増やすことによって、さらなる音の広がりや奥行きを表現できるようになったサラウンド。と、ここまででもイマーシブな(*1)オーディオ体験ができていたのだが、そこにいよいよ、天井や足元といった高さ方向にもスピーカーが加わり、三次元空間を飛び回るような音の再生が可能になった。それぞれの方式は厳密には異なるが、3DオーディオフォーマットにはDolby Atmos、Auro-3D、DTS:X、NHK22.2ch、Sony360 Reality Audioなどといったものがある。
基本的に、これまでこうした3Dフォーマットのオーディオを再生するにはチャンネル数に応じた複数のスピーカーが必要だった。そのため、立体的な音像定位の再現性と、そうした再生環境の手軽さはどうしてもトレードオフになっており、なかなか世間一般に浸透しづらいという状況が続いていた。そこで、いま再注目を浴びているのが"バイノーラル(*2)録音・再生方式"だ。個人差はあるものの原理は単純明快で、「人間の頭部を模したダミーヘッドマイクで録音すれば、再生時にも人間が普段自分の耳で聞いているような立体的な音像が得られる」という仕組み。当然ながらデジタル化が進んだ現代においては、もはやダミーヘッドすら必要なく、HRTF関数(*3)を用いれば、デジタルデータ上で人間の頭側部の物理的音響特性を計算・再現してしまうことができる。
バイノーラル再生自体は全くもって新しい技術というわけではないのだが、「音楽をスマホでストリーミング再生しつつ、ヘッドホンorイヤホンで聴く」というスタイルが完全に定着した今、既存の環境で気軽にイマーシブオーディオを楽しめるようになったというのが注目すべきポイントだ。モバイルでのDolby Atmos再生をはじめ、Sonyの360 Rearity Audio、ストリーミングサービスのバイノーラル音声広告といった場面でも活用されている。
*1 イマーシブ=Immersive : 没入型の *2 バイノーラル= Binaural : 両耳(用)の *3 HRTF=Head Related Transfer Function : 頭部伝達関数
2.まずは Dolby Atmosを体験しよう! / 映画、音楽、ゲームでの採用例
では、Dolby Atmosは一体どのようなシーンで採用されているのだろうか。百聞は一見に如かず、これまでDolby Atmos作品に触れたことがないという方は、まずは是非とも体験していただきたい。
映画
映画館でDolby Atmosを体験するためには、専用設計のスクリーンで鑑賞する必要がある。これには2種類あり、一つがオーディオの規格であるDolby Atmosのみに対応したもの、もう一つがDolby Atmosに加え、映像の規格であるDolby Visionにも対応したものだ。後者は"Dolby Cinema"と呼ばれ、現時点では国内7スクリーン(開業予定含む)に導入されている。
Dolby Atmosでの上映に対応している劇場は年々増加していて、2020年4月現在で導入予定含む数値にはなるが、既に国内では 36スクリーン、海外では5000スクリーン以上にも及んでいる。 (いずれもDolby Atmos + Dolby Cinema計)当然ながら対応作品も年々増えており、ライブストリーミング等、映画作品以外のデジタルコンテンツも含めると、国内では130作品、海外ではその10倍の1300を超える作品がDolby Atmosで制作されている。いくつか例を挙げると、国内興行収入130億円を超える大ヒットとなった2018年の「ボヘミアン・ラプソディ」をはじめ、2020年のアカデミーでは作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」、同じく録音賞を受賞した「1917 命をかけた伝令」などといった作品がDolby Atmosで制作されている。
●Dolby Atmos採用映画の例
アイアンマン3 / アナと雪の女王 / ラ・ラ・ランド/ パラサイト / フォードvsフェラーリ / ジョーカー / 1917 命をかけた伝令 / ボヘミアンラプソディetc...
*Dolby 公式サイトよりDolby Atmos採用映画一覧を確認できる
ゲーム
Dolby AtmosはPCやXbox Oneといった家庭用ゲームの人気タイトルでも数多く採用されている。特に、近年流行りのFPS(First Person Shooter = 一人称視点シューティング)と呼ばれるジャンルのゲームでは、射撃音を頼りに敵の位置を把握しなければならない。そのため、Dolby Atmosを使った3Dサウンドの再生環境の需要がより高まってきているのだ。
※Windows PCやXbox OneにおいてヘッドホンでDolby Atmosを楽しみたい場合は、Dolby Access(無料)というアプリをインストールし、Dolby Atmos for Headphonesをアプリ内購入する必要がある。
●Dolby Atmos採用ゲームの例
Assassin's Creed Origins(Windows PC, Xbox One) / Final Fantasy XV(Windows PC ,Xbox One)Star / Wars Battlefront(Windows PC ,Xbox One) / ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN(Windows PC, Xbox One)
音楽
Amazon Echo Studio
そして2020年1月にCES2020で正式発表されたのが、このDolby Atmosの名を冠した新たな3Dオーディオ再生フォーマット、Dolby Atmos Musicだ。現時点で、国内ではAmazonが提供するAmazon Music HD内のみでサービスを提供しており、同社のスマートスピーカー”Amazon Echo Studio”を用いて再生することができる。アメリカでは音楽ストリーミングサービス"TIDAL"でもDolby Atmos Musicを再生することができ、こちらは対応するPCやスマホなどでも楽しめるようになっている。
ここまで、Dolby Atmosを体験してみて、皆さんはどのような感想を持たれただろうか? 当然ながら多少の個人差はあるにしても、映画であればその空間に入り込んだかのような没入感・豊かな臨場感を体験できたのではないだろうか。あるいは、人によっては「期待したほど音像が動き回っている感じが得られなかった」という方もいるだろう。しかし、それでDolby Atmosの魅力を見限るのはやや早計だ。なぜなら、この技術は、"作品の意図として、音を無意識に落とし込む”くらい自然にミックスすることを可能にしているからだ。それを念頭におき、もう一度、繊細な音の表現に耳を澄ましてみてほしい。
3.ベッドとオブジェクトって何!? 〜Dolby Atmos基礎知識〜
体験を終えたところで、ここからは技術的な側面と基礎知識を押さえていこう。ポイントとなるのは以下の3点だ。
● ベッド信号とオブジェクト信号
● 3次元情報を記録するメタデータ
● 再生環境に合わせてレンダリング
Dolby Atmosの立体的な音像定位は、2種類の方式を組み合わせて再現されている。 一つはチャンネルベースの信号 ー 5.1.2や7.1.2などあらかじめ定められたスピーカー配置を想定し、そのスピーカーから出力される信号のことを"Bed"と呼んでいる。例えば、BGMやベースノイズといった、あまり指向性が求められない音の再生に向いている。基本は音源とスピーカーが1対1の関係。従来のステレオやサラウンドのミックスと同じなので比較的イメージがつきやすいだろう。
劇場のように、一つのチャンネルが複数のスピーカーで構成されていた場合、そのチャンネルに送った音は複数のスピーカーから再生されることになる。
そしてもう一つはオブジェクトベースの信号 ー 3次元空間内を縦横無尽に動き回る、点音源(ポイントソース)の再生に適した方式だ。例えば、空を飛ぶ鳥の鳴き声や、アクション映画での動きのある効果音の再生に向いている。原理としては、3次元情報を記録するメタデータをオーディオとともに記録・伝送し、再生機器側でそれらを再生環境に合わせてレンダリング(≒変換)することで、再生環境ごとのスピーカー配列の違いをエンコーダー側で吸収できるという仕組みだ。
ある1点に音源を置いた時に、そこから音が聴こえるように、スピーカー送りを最適化するのがレンダラーの役割
Dolby AtmosのチャンネルフォーマットはBed 7.1.2ch(計10ch) + Object118ch(最大)での制作が基本となっている。この"空間を包み込むような音"の演出が得意なベッドと、”任意の1点から聞こえる音”の演出が得意なオブジェクトの両方を組み合わせることによって、Dolby Atmosは劇場での高い臨場感を生み出しているのだ。
4.Dolby Atmos制作を始めよう 〜必要なものは何?〜
Dolby Atmosはその利用目的によって、大きく2種類のフォーマットに分けられる。
まずは、一番最初に登場した映画館向けのフォーマット、Dolby Atmos Cinemaだ。これはまさにフルスペックのDolby Atmosで、先述した7.1.2chのBEDと118chのObjectにより成り立っている。このフォーマットの制作を行うためにはDolbyの基準を満たした音響空間を持つダビングステージでの作業が必要となる。しかも、劇場向けのマスターファイルを作ることができるCinema Rendering and Mastering Unit (Cinema RMU)はDolbyからの貸し出しでしか入手することができない。
もう一つは、Blu-ray やストリーミング配信向けのフォーマット、 Dolby Atmos Homeだ。実は、こちらの大元となるマスターファイル自体は Cinema 向けのものと全く同じものだ。しかし、このマスターファイルから Home 向けのエンコードを行うことで、128chのオーディオを独自の技術を活用して、できる限りクオリティーを担保したまま少ないチャンネル数に畳み込むができる。この技術によって、Blu-rayやNetflixといった家庭向けの環境でも、Dolby Atmos の迫力のサウンドを楽しめるようになった。こちらも、マスターファイルを作成するためには、HT-RMUと呼ばれるハードウェアレンダラーが必要となるが、HT-RMUは購入してスタジオに常設できるというのがCinemaとは異なる点だ。
●Dolby Atmos制作環境 比較表
※Dolby Atmos Production SuiteはWeb上、AVID Storeからご購入できるほか、Mastering Suiteにも付属している。
※Dolby Atmos Dub with RMUについてはDolby Japan(TEL: 03-3524-7300)へお問い合わせください。
●Cinema
映画館上映を目的としたマスター。ダビングステージでファイナルミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Print Masterと呼ばれるファイル群をCinema Rendering and Mastering Unit (Cinema RMU)で作成。
●Home
一般家庭での視聴を目的としたマスター。ニアフィールドモニターによるDolby Atmosスピーカー・レイアウトにてミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Master File(.atmos)と呼ばれるファイル群をHome-Theater-Rendering and Mastering Unit(HT-RMU)で作成。
Cinema用とHome用のRMUでは作成できるファイルが異なり、スピーカーレイアウト/部屋の容積に関する要件もCinema向けとHome向けで異なる。それぞれ、目的に合わせたRMUを使用する必要がある。ミキシング用のツール、DAW、プラグイン等は共通。
ここまで作品や概要を説明してきたが、そろそろDolby Atmosでの制作を皆さんも始めてみたくなってきただろうか?「でも、自宅に7.1.2chをモニターできる環境が無い!「やってみたいけど、すぐには予算が捻出できない!」という声も聞こえてきそうだが、そんな方にとっての朗報がある。Dolby Atmos Production Suiteを使えば、なんと ¥33,000 (Avid Storeで購入の場合)というローコストから、Dolby Atmos ミックスの最低限の環境が導入できてしまうのだ。このソフトウェア以外に別途必要なものはない。必要なものはスペックが少し高めのマシンと、対応DAW(Pro Tools、Nuendo、DaVinchi etc)、そしてモニター用のヘッドホンのみだ。
多少の制約はあるものの、ヘッドホンを使ったバイノーラル再生である程度のミックスができてしまうので、スタジオに持ち込んでのマスタリング前に自宅やオフィスの空き部屋といったパーソナルな環境でDolby Atmosの仕込みを行うことができる。次の項ではそのワークフローを具体的に紹介していく。
5.自宅で始めるDolby Atmosミックス 〜Dolby Atmos Renderer × Pro Tools 2020.3〜
ここからは最新のPro Tools 2020.3 とProduction Suiteを使って実際のDolby Atmosミックスのワークフローをチェックしていきたい。まず、大まかな流れとしては下記のようになる。PTとレンダラーの接続方法は、Send/Returnプラグインを使う方法とCore Audio経由でやり取りする方法の2種類がある。それでは順番に見ていこう。
1.Dolby Atmos Production SuiteをAvid Storeもしくは販売代理店にて購入しインストール。
2.Dolby Atmos Renderer(以後レンダラー)を起動各種設定を行う。
3.Pro Tools(以後PT) を起動各種設定を行う。※正しいルーティングの確立のため、必ずレンダラー →Pro Toolsの順で起動を行うこと。
4.PTの標準パンナーで3Dパンニングのオートメーションを書き込む。
5.Dolby Atmos RMU導入スタジオに持ち込む。
Send/Returnプラグインを使う方法
■Dolby Atmos Renderer の設定
● 左上Dolby Atmos Renderer → Preferences( ⌘+ , )で設定画面を表示
● Audio driver、External Sync sourceをSend/Return Plug-insに設定
● Flame rate、Sample rateを設定 ※PTの設定と合わせる
HeadphoneのRender modeをBinauralにすることで、標準HRTFでバイノーラル化された3Dパンニングを確認することができる。(※聴こえ方には個人差があります。)
■Pro Tools の設定
● 新規作成→プロジェクト名を入力→テンプレートから作成にチェック
● テンプレートグループ:Dolby Atmos Production Suite内”Dolby Atmos Renderer Send Return Mono(またはStereo)”を選択→ファイルタイプ:BWF
● 任意のサンプルレート、ビットデプス、I/O設定を入力→作成
● 設定 → ペリフェラル → Atmosタブ
● チェックボックスに2箇所ともチェックを入れる。
● RMUホストの欄には”MAC名.local”または”LOCALHOST”と入力。
接続状況を示すランプが緑色に点灯すればOK。一度接続した場合、次回からプルダウンメニューで選択できる。
編集ウィンドウを見てみると、英語でコメントが入力されたいくつかのトラックが並んでいる。
● まず、一番上の7.1.2Bedという名称のトラック ーここにBedから出力したい7.1.2の音素材をペーストまたはRECする。
● 次に、その下のObject 11という名称のトラック ーここにObjectから出力したいMonoまたはStereoの音素材をペーストまたはRECする。
● 上の画像の例では、任意の範囲をドラッグして選択、AudioSuite→Other→Signal Genetatorよりピンクノイズを生成している。
● このトラックは、画面左側、非表示になっている”SEND_〇〇_IN_ch数”という表記になっているAUXトラックに送られている。
● このAUXトラックにSendプラグインがインサートされており、パンなどのメタデータとともにレンダラーへと出力される。
試しに再生してみると、レンダラー側が上の画像のような状態になり、信号を受けているチャンネルが点灯している様子が確認できる。
赤丸で囲った部分をクリックしてアウトプットウィンドウを表示し、パンナーのポジションのつまみをぐりぐりと動かしてみよう。
すると、レンダラー内のオブジェクトが連動してぐりぐりと動くのが確認できる。
オートメーションをWriteモードにしてチェックすると、きちんと書き込んだ通りに3Dパンニングされているのが分かる。ここで、トラックの右端”オブジェクト”と書かれているボタンをクリックすると、”バス”という表示に切り替わり、その音はベッドから出力される。つまり、ベッドとオブジェクトをシームレスに切り替えることができるのだ。これは、例えば、映画などで正面のベッドから出力していたダイアローグを、”ワンシーンだけオブジェクトにして、耳元に持ってくる”といった表現に活用できそうだ。
さらにその右隣の三角形のボタンを押すごとに、” このトラックに書き込まれたメタデータをマスターとする ”( 緑点灯 ) か、” 外部のオブジェクトパンニング情報源からREC する ”( 赤丸点灯 ) か、” 何も送受信しない ”( 無点灯 ) か を選択できるようになっている。レンダラー内でレンダリングされた音は、ReturnプラグインからPTへと戻ってくる。あとは、各々のモニター環境に合わせてアウトプットしたり、RECをかけたりすることができる。
以上が、Send/Returnプラグインを利用した一連のルーティングのワークフローになる。今回はテンプレートから作成したが、もちろんはじめから好きなようにルーティングを組むことも可能だ。しかし、チャンネル数が多い場合はやや複雑になってくるので、初めての場合はまずはテンプレートからの作成をおすすめする。
CoreAudioを使う方法
はじめに、Core Audioを使う場合、Sync sourceをMTCかLTC over Audioから選択する必要がある。LTCを使う場合は、PTの130chまでの空きトラックにLTCトラックまたは、Production Suite 付属のLTC Generator プラグインを挿入→レンダラーからそのch番号を指定する。MTCを使う場合はIACバスをというものを作成する必要がある。(※IAC = Inter-application communication)
■IACバスの設定
● Mac →アプリケーション→ユーティリティ→Audio MIDI設定を開く
● タブメニューのウインドウ→IAC Driverをダブルクリック ※装置名がIACドライバなど日本語になっていた場合レンダラーでの文字化けを防ぐため”IAC Driver”など英語に変更しておくとよい
● +ボタンでポートを追加→名称を”MTC”(任意)に変更→適用をクリック
■Dolby Atmos Renderer 側の設定
● 左上Dolby Atmos Rendere → Preferences( ⌘+ , )で設定画面を表示
● Audio driverをCore Audioに設定
● Audio input deviceを”Dolby Audio Bridge”に設定 ※ここに”Dolby Audio Bridge”が表示されていない場合、Macのシステム環境設定→セキュリティとプライバシー内に関連するアラートが出ていないか確認。
● External Sync sourceをMTCに設定し、MTC MIDI deviceで先ほど作成したIAC Driver MTCを選択(またはLTC over Audioに設定しCh数を指定)
● Flame rate、Sample rateを設定 ※PTの設定と合わせる
● ヘッドホンでバイノーラルで作業する場合はHeadphone only modeを有効にすると、リレンダリングのプロセスなどを省くため、マシンに余分な負荷をかけることなく作業できる
■Pro Tools 側の設定
● 設定→プレイバックエンジンを”Dolby Audio Bridge”に。
● キャッシュサイズはできる限り大きめに設定しておくと、プレイバック時にエラーが発生しにくくなる。
● 設定→ペリフェラル→同期→MTC送信ポートを先ほど作成した”IAC Driver,MTC”に設定
● 設定 → ペリフェラル → Atmosタブ(Send/Returnの項目と同様だ)
● チェックボックスに2箇所ともチェックを入れる。
● RMUホストの欄には”MAC名.local”または”LOCALHOST”と入力。接続状況を示すランプが緑色に点灯すればOK。一度接続した場合、次回からプルダウンメニューで選択できる。
以上で、CoreAudio経由でのルーティングは完了だ。Send/Returnプラグインを利用する時のように大量のAUXトラックが必要ないため、非常にシンプルにセッティングを完了できる。また、ソフトウェアレンダラーでの仕込みから最終のマスタリングでRMUのある環境に持ち込む際にも、I/O設定をやり直さなくてよいという点もメリットの1つだろう。こちらも試しにオーディオ素材を置いて動作を確認していただきたい。
マルチチャンネルサラウンドやバイノーラルコンテンツへの需要は、日々着実に高まりつつあることが実感される。今回はゼロからはじめるDolby Atmosということで、Dolby Atmosとはどのようなものなのか、そしてDolby Atmosミックスを始めるためにはどこからスタートすればいいのか、という足がかりまでを紹介してきた。「思ったより気軽に始められそう」と、感じていただいた方も多いのではないのだろうか。
「一度体験すれば、その素晴らしさは分かる。ただ、一度体験させるまでが難しい。」というのが3Dオーディオの抱える最大の命題の命題かもしれない。これを解決するのは何よりも感動のユーザー体験を生み出すことに尽きる。そのために今後どのような3Dオーディオ制作ノウハウを蓄積していけるのか、全てのクリエイターが手を取り合って研鑽することが、未来のコンテンツを創り上げる第一歩と言えるのかもしれない。
*ProceedMagazine2020号より転載
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2020/04/17
Mac mini RMU〜コンパクトな構成でDolby Atmos ミキシングを実現
ホームシアター向けDolby Atmos(Dolby Atmos Home)マスターファイルを作成することが出来るHT-RMUシステムをMac miniで構成。劇場映画のBlu-RayリリースやVOD向けのDolby Atmos制作には必須のDolby Atmos HT-RMUシステムは、Dolby社の認証が下りている特定の機器構成でなければ構築することが出来ない。従来、認証が下りていたのは専用にカスタマイズされたWindows機やMac Proといった大型のマシンのみであったが、ついにMac miniを使用した構成の検証が完了し、正式に認可が下りた。
Pro Toolsシステムとの音声信号のやりとりにDanteを使用する構成と、MADIを使用する構成から選択することが可能で、どちらも非常にコンパクトなシステムで、フルチャンネルのDolby Atmos レンダリング/マスタリングを実現可能となっており、サイズ的にも費用的にも従来よりかなりコンパクトになった。
HT-RMUの概要についてはこちらをご覧ください>>
◎主な特徴
Dolby Atmosのマスター・ファイルである「.atmos」ファイルの作成
.atmosファイルから、家庭向けコンテンツ用の各フォーマットに合わせた納品マスターの作成
「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換
Dolby Atmos環境でのモニタリング
Dolby Atmosに対応するDAWとの連携
DAWとの接続はDanteまたはMADIから選択可能
◎対応する主なソリューション
Dolby Atmos に対応したBlu-ray作品のミキシング〜マスタリング
Dolby Atmos に対応したデジタル配信コンテンツのミキシング〜マスタリング
Dolby Atmos 映画作品のBlu-ray版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
Dolby Atmos 映画作品のデジタル配信版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
Dolby Atmos 映画作品のためのプリミキシング
構成例1:Dante
※図はクリックで拡大
RMUとPro Toolsシステムとの接続にDanteを使用する構成。拡張カードを換装したPro Tools | MTRXやFocusrite製品などの、Dante I/Fを持ったI/Oと組み合わせて使用することになる。この構成ではLTCの伝送にDanteを1回線使用してしまうため、扱えるオーディオが実質127chに制限されてしまうのが難点だが、シンプルなワイヤリング、ソフトウェア上でのシグナル制御など、Danteならではの利点も備えている。しかし、最大の魅力はなんと言ってもRMU自体が1U ラックサイズに納ってしまう点ではないだろうか。
構成例2:MADI
※図はクリックで拡大
こちらはMADI接続を使用する構成。歴史があり、安定した動作が期待できるMADIは多チャンネル伝送の分野では今でも高い信頼を得ている。この構成の場合、MADIまたはアナログの端子を使用してLTCを伝送するため、128chをフルにオーディオに割り当てることが出来るのも魅力だ。また、この構成の場合はMADI I/FをボックスタイプとPCIeカードから選択することが出来る。
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2019/12/26
株式会社角川大映スタジオ様 / Dolby Atmos導入、いままでのジャンルを越えた制作へ
1933年に開所した日本映画多摩川撮影所から始まり、80年以上の歴史をもつ角川大映スタジオ。そのサウンドを担っているポスプロ棟の中にはDubbing Stage、MA/ADR、Foley、サウンド編集室というスペースが存在している。今回の改修ではMA/ADRのDolby Atmos化、サウンド編集室のサウンドクオリティの向上を図る改修工事のお手伝いをさせていただいた。製品版の導入としては国内初であるDolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)や、Pro Tools | MTRXの機能を最大限に活かしたシステムアップなど機材面でも注目すべき改修工事となった。
映画、ドラマ、DVD、OTT作品など幅広い作業に対応したスタジオ
今回の改修のスタートだが、実はサウンド編集室の増設とサウンドクオリティ向上のための内装工事というものだった。当初はサウンド編集室をDolby Atmos対応の仕込みができるよう7.1.4chにスピーカーを増設しようというプランがあった。しかし、それだけではその後のマスタリングの工程が社内で行うことができずに、他のスタジオでの作業となってしまう。そして、サウンド編集室の天井高が十分ではないこともあり、理想に近い音環境の構築が困難であるということもあった。それならば、マスタリングまでできる環境としてMA/ADRを改修してしまうのはどうだろうか、と一気に話が進んだということだ。逆にサウンド編集室のDolby Atmos対応に関しては見送られ、MA/ADRで仕込みからマスタリングまでを行うというワークフローとなった。このような経緯でスタートした今回の導入計画その全貌をご紹介していきたい。
メインコンソールとなるAvid S6とその下部に納められたアウトボード類
今回の導入の話の前に、こちらのMA/ADRのスタジオがどのようなスタジオなのかというところを少しご説明させていただきたい。こちらのスタジオは映画、ドラマ、DVDミックス等やアフレコ、ナレーション収録からCMの歌録りなど幅広い作業に対応したスタジオとなっている。昨年メインコンソールをAvid D-ControlからAVID S6+MTRXの構成にアップデートした。Pro ToolsはMain、SE、EXと呼ばれる3台が用意され、映像出力用にWindows仕様のMediaComposerが1台用意されている。サラウンドスピーカーはGENELECで構築、LCRは8250A、サラウンドは8240Aとなっている。DME24とGLMネットワークによりキャリブレーションされ、AVID S6の導入と同じタイミングで5.1chから7.1chへと更新が行われた。今回の改修ではさらにスピーカーをDolby Atmos準拠の7.1.4chへ増設し、Dolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)を導入。さらにはMTRXオプションカードを増設することによって、シンプルかつ円滑にAtmos制作ができる環境へとアップデートされた。
国内初導入となるDolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)
今回行われた改修の大きなトピックとなるのが、国内としては初めての導入となるDolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)の存在だろう。Dolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)とは「Dolby Atmos Home」制作、マスタリングのためのターンキー・システムである。HT-RMUとは"HomeTheater-Rendering and Mastering Unit"の略で、Dolby Atmos Homeのマスタリングを行うマシンということである。2017年に取り扱いを始めた当初はWindows版しかなかったが、現在ではMac OSでのシステムアップも可能となっている。さらにSoftware Version 3.2からMac miniでの構築が可能となり、導入のしやすさは格段に上がった。コストはMac miniにすることにより抑えられ、Mac mini版のHT-RMUは税別100万円という価格になっている。Windows版、MacPro版は税別200万円であったので、半分のコストで導入することができるようになったわけだ。
HT-RMU/J(MAC)の場合はDanteでDAWと音のやり取りを行う。今回のケースではMTRXの”128Channel IP Audio Dante Card”と接続するだけでProToolsとの信号のやりとりはOKというシンプルな接続となっている。HT-RMU/J(MAC)のハードウェア構成としては、Mac Pro or Mac mini、 Sonnet /xMac Pro Server(III-D、III-Rでも可、Mac miniの場合はxMac mini Server)、Focusrite / RedNet PCIeR、Audinate / ADP-DAI-AU-2X0(タイムコード信号をDanteに変換しRMUに送る役割)、外部ストレージとなる。今回導入となった構成としてはMacPro、Echo Express III-Rという組み合わせとなった。3式のProTools のそれぞれがMac Proとなっており横並びで3台ラッキングされているのだが、その横に1台分の空きがあり、今回導入のHT-RMUのMacをそこへラッキングするためxMac Pro ServerではなくIII-Rの方が都合がよかったというわけだ。
HT-RMUのMacにインストールされたDolby Atmos Rendererアプリケーションにてレンダリング、マスタリングを行うのだが、同一ネットワーク内の別のMacからもそのRendererをコントロールできるRenderer Remoteというアプリケーションが用意されている。今回はHT-RMU含む4台のMacを新しくネットワーク構築している。3台あるProTools のMacすべてにRenderer Remoteがインストールされ、どのMacからもRendererをコントロールできる。また、オブジェクトのメタデータについても3台すべてのPro Toolsから送ることができるようになっている。
DigiLink I/Oカード、Danteカードの増設によりシンプルなシステムを可能にしたMTRX
もう一点今回の改修で大きな鍵をにぎっているのはPro Tools | MTRXだ。新規に導入いただいたオプションカードは”128 Channel IP Audio Dante Card”1枚、 "DigiLink I/O Card"3枚の合計4枚となっている。”128 Channel IP Audio Dante Card”は今回のRMU導入の大きな手助けをしてくれた。128chの送受信を要求するHT-RMUとのやりとりがこのカードを入れるだけで済んでしまう。多チャンネルを扱う際にシンプルに多くのチャンネル数をハンドリングできるAoIP / Danteはかなり利便性に富む。
中央に見える4台並んだMacProの左3台がPro Toolsシステム、一番右のマシンとその上のシャーシの組み合わせにDolby Atmos Rendererをインストール。右ラックの最上段にはAvid MTRXの姿が確認できる。
また"DigiLink I/O Card"を3枚導入することにより、3つあるProTools間での音のやりとりがとてもシンプルでなおかつ多chとなった。導入前はHD I/O とMTRXがAESで信号のやりとりをしていたが、DigiLink I/O Cardの導入により各ProToolsが直接MTRXと接続される形となる。これまで、16chのやりとりであったものが、Main 160ch、SE 64ch、EX 32chと多チャンネルのやりとりができるようになった。SE、EXからMainにダビングするのはもちろんだが、HT-RMUからのRerenderer OUTを3つのProToolsどれでも録音できるようになっている。シグナルルーティングの組み替えはDADmanから操作でき、作業に合わせたプリセットを読み込むことで瞬時の切り替えも可能。このあたりのシグナルルーティングの柔軟性はMTRXならではといったところだろう。
今回の改修によりDanteカード1枚、DigiLinkカード3枚が追加され、ADカード1枚、DAカード2枚、AESカード1枚、と8スロットすべてを使用する形になっている。MTRXを核としたスタジオセットアップは、最近ではデフォルトになりつつあるが今回の構成はとても参考になる部分があるのではないだろうか。
サウンドクオリティ向上を図ったサウンド編集室
今回3部屋に増設となったサウンド編集室、ラックにはYAMAHA MMP1が格納される。後方に備えられたスピーカーの写真は7.1ch対応となっているサウンド編集室1だ。
サウンド編集室の更新も併せてご紹介したい。まず一番大きなポイントは2部屋だったものを3部屋に増設したということだ。もともとの2部屋は防音パネルを貼っていただけの部屋だったため外からの騒音が気になったとのこと。今回の工事では空調を天井隠蔽型に変更し、マシンスペースを分け二重扉を設置した。これにより気になっていた外部からの騒音もシャットアウトされた。また機材についても見直され、もともとはYAMAHA / DM1000が使用されていたが代わりにYAMAHA / MMP1が導入された。3部屋とも機材が統一され使用感に変化がないよう配慮されている。Pro Tools HDXのシステム(I/O はHD I/O 8x8x8)にモニターコントローラ兼モニタープロセッサーとしてYAMAHA / MMP1、スピーカーはGENELECという構成だ。ちなみに、YAMAHA / MMP1はiPadの専用アプリケーションにてコントロールを行なっている。サウンド編集室1は7.1chに対応し、2と3は5.1chなのだが7.1chに後から増設できるよう通線等はされ、将来における拡張性を確保している。
HT-RMUの導入から取材時点ではまだ1ヶ月も経っていないのだが、Atmos制作環境があることによっていままでになかったジャンルの仕事が増えたとのお話を伺えた。これから導入が進むことが予測されるDolby Atmosの制作環境だが、それをいち早く導入したことによるメリットはとても大きいようだ。今後は幅をさらに広げて、Atmos環境を活かしたさまざまな作品を手がけていきたいという。また、今回の導入で感じたことはHT-RMUの導入が身近になってきたということだ。実際、今回の改修では当初サウンド編集室の増設というお話だったが、最終的にはMA/ADRのAtmos化を実現、追加機材の少なさが鍵となったと言える。Dolby Atmos制作環境のご相談をいただく機会は格段に多くなっているが、リニューアルした角川大映スタジオのMA/ADRは、今後のDolby Atmos制作スタジオのケーススタディとして参考にすべき好例となるのではないだろうか。
(左)株式会社 角川大映スタジオ 営業部 ポストプロダクション技術課 課長 竹田 直樹 氏、(右)株式会社 角川大映スタジオ 営業部 ポストプロダクション技術課 サウンドエンジニア 小西 真之 氏
*ProceedMagazine2019-2020号より転載
Tech
2018/12/25
avexR studioが創り出す、新たなコンテンツのカタチ 〜Dolby Atmosでライブ配信されたa-nationの熱狂〜
2017年12月、東京・南青山にエイベックス新社屋がオープンされた。その中に、常に時代の最先端を求めるエイベックスならではのMAスタジオ「avexR studio」がある。今回はDolby Atmos対応スタジオとして設計されたこのavexR studioと、8月に味の素スタジアムで行われた「a-nation 2018 Supported by dTV & dTVチャンネル」東京公演でのDolby Atmosライブ配信という取り組みをご紹介したい。お話を伺ったのはエイベックス・エンタテインメント株式会社にて映像制作に関する統括、ならびにCEO直轄本部にて主にR&Dや新規開発案件を担当している岡田 康弘氏。スタジアムの熱気を空気感までそのままサラウンド配信するという、新たなコンテンツのあり方をどうマネジメントしたのか掘り起こしていきたい。
インハウスのXR制作ラボ
27年というキャリアの中で様々な業務に携わってきた岡田氏。その多岐にわたる「様々」ぶりを端的に感じさせるのが現在の肩書きで、なんと「映像プロデューサー兼デジタル・ディレクター兼MAエンジニア」と称しているそうだ。これもそのキャリアの成り立ちを伺うとよくわかる。1994年といえばようやくYahooが登場し、Windowsも95以前、Macで言えばPower Macintoshが発売された年だが、このITデジタルの黎明期に音楽ディレクターであるにもかかわらず、当時では珍しいデジタル担当(WEB制作)をしていたそうである。「当時の仲間からは「ハッカー岡田」というありがたいあだ名を頂戴しました(笑)。」とのことだが、この当時の世の中を思い返せばそれも頷ける。
また、初めてのマルチチャンネル(トラック)での業務は、THE STAR CLUBのアルバム「異邦人」(1994)だという。当時のMTRはもちろん、SONYのPCM3324や3348。当時の音楽スタジオの主流は3348に加え、SSL4000シリーズや9000シリーズのアナログコンソールという組み合わせだった。エンジニアのほかにもA&R、原盤制作、編曲、洋楽REPなどに携わるだけでなく、2011年には新たに立ち上がったデジタル部署においてネット配信やアプリ・WEB制作にも関わる。そして2015年からは従来の映像制作セクションと統合された現部署にて、デジタルと映像が融合されたコンテンツを制作、直近ではDolby Atmos シアターで本編上映前に流れるCMも制作している。と、ここまでくれば冒頭の多岐にわたる肩書きも納得となるのではないだろうか。その岡田氏が必要としたMAスタジオがavexR studioである、類を見ない特別なスペースになっていることは想像に難くない。
エイベックス・エンタテインメント株式会社 レーベル事業本部 企画開発グループ 映像制作ユニット マネージャー 岡田康弘 氏
まず、avexR studioの名称だが、これはコンセプトであるVR・AR等を総称したXRとエイベックスが掛け合わされたものだそうだ。dTVのVR専用アプリdTV VRでのコンテンツ配信が特に音楽分野での3DVRとして好評であったこと。またこれが「エイベックスの先進的な取り組みとして」社外にも評価されたほか、組立式の簡易VRゴーグルをCDとセットで販売した「スマプラVR」との関わりもあり、インハウスのXR制作ラボ的な施設を作ろうという流れが社内にできた。構想当初の段階では「5.1chは視聴ができるシステム」をイメージしており、マルチチャンネル編集は付加的要素だったそうだが、その後に「a-nation 2018 Supported by dTV & dTVチャンネル」でのDolby Atmos配信が決まり、スタジオ構想は7.2.4chのDolby Atmos対応スタジオへと拡大。そして完成したのがこのavexR studioである。
MTRXがハンドリングするモニターシステム
avexR studioではコンテンツにあわせて、Stereo、5.1chや7.1chなどのサラウンド、5.1.4chや7.1.4chなどのマルチチャンネルの編集が行われるが、それを可能にしているのがGenelec 8350Aと8340A、7360Aで構成される7.2.4chのスピーカーシステムと、モニターコントロールとなるPro|Mon 2である。メインシステムであるPro Toolsのインターフェイスとして導入されているAvid|MTRXでは、マトリクスルーティングを司るDADmanと、さらにモニターコントロールとして機能するPro|Monを活用しているが、このスタジオはレコーディングスタジオではなくMAがメイン。かつ各種のマルチチャンネルのミックスを行うというスタジオの特性から、プロファイルを読み込むことで瞬時にフォーマット変更やパッチ変更が行われる仕様のDADmanおよびPro|Monは様々なコンテンツを制作するにあたり非常に重要な役割を担っている。こちらののように卓がないスタジオのモニター・セクションとしてはこの機能は秀逸であるという事に尽きる。
今回、MTRXには8ch Mic HAを搭載したMic/Line Prostine ADカードと、Line入力のみのLine Prostine ADカードがそれぞれ1枚づつ搭載されており、Head Ampとしても利用可能なセッティングにしている。ほかにもMic HAはPro|MonでのTB マイク回線HAとしても活用されている。さらに、Neve 1073DPA、XLogic Alpha VHD PREとUniversal Audio 1176LN、TUBE-TECH CL1Bが手元に用意されており、アウトボードもパッチで自由に組み合わせることができる。
16ch分のDAカードは、Pro|Mon 2で設定したモニターアウトが各Genelecスピーカーへと接続されているほか、Boothへのモニター回線としても使用されている。Avid|MTRXを選択した理由の一つとして拡張性が高いことも挙げられており、近い将来はDanteモジュールを追加して、このMAスタジオに併設されている撮影スタジオと連携した多チャンネル収録の対応や、Dolby RMUへの対応も検討しているそうだ。
Nugen Audioの創意された活用
Pro Toolsとともに重宝されているのが、Nugen AudioのHalo Upmix & 3D Immersive Extensionだ。サラウンドミックスには欠かせないHalo Upmixに、さらに垂直方向への音の展開を可能にする3D Immersive Extensionを加えたプラグインは、Dolby Atmosのような立体音響では欠かせないツールとなっており、このスタジオでも欠かせないツールの一つとなっている。
実際の使用方法は、セッション上でステレオ音源をHalo Upmixにて展開し、各チャンネルのアウトプットをAUXトラックで受け、ミックス画面上で各チャンネルの微調整を行なっている。ここで注目したいのが、天井に設置された4つのスピーカーだ。Pro Toolsでは最大7.1.2chまでに対応しているが、垂直方向へは2chまでしか対応していない。そこで、Stsereo to 7.1.2 フォーマットで呼び出したHalo Upmixを画面上で5.1.4へ切り替え、そうすることでHalo Upmix上では5.1.4chフォーマットで展開されることになる。なお、Pro Toolsでは5.1.4chのフォーマットはないため、7.1.2chを単なる10chのバスとして扱い、スタジオで展開するセッションではそれぞれをわかりやすくするため、各チャンネルをモノラルAUXトラックで受けている。
GENELEC DSPで整えられた音場設計
スタジオを設計するにあたり、数多くのこだわりが散りばめられているが、スピーカー個々を含む音場設計に関してはさらに入念な設計がなされている。メインスピーカーとしてチョイスしたのはオレンジにカラーリングされたGENELECの8350Aシリーズ。そのオレンジ色にカラーリングされた8350Aをミッドレイヤーで7発設置。天井にはハイトスピーカーとして8340Aを配置、こちらは天井色に合わせてグレーがチョイスされた。極限までデッドな環境にルームチューニングされている点と、映画等のミックスを踏まえてサブウーファー7360AをLRで設置したこともこだわりの一つである。なお、これらGENELECスピーカーは全てGLM ソフトウェアでの補正、制御がかけられている。また、GENELECとは別にステレオスピーカーとしてFocal Solo6も別に用意されている。現在のミッドレイヤーは7chで構成されているが、さらにチャンネル数が増えたフォーマットも対応できるように設計されている。増設したスピーカーの位置を角度がわかるようにあえて天板で切換を設けて、スピーカーポジションがわかるようになっているため、今後チャンネル数が増えても対応できる仕組みだ。
このように工夫されたポイントは他にもある。スタジオ内で使用する電源ボックスは鋳物で作られているが、これは鋳物にすることで重量が増し、電源ボックスの振動を抑える狙いから。さらに電源ボックスまでのケーブルも床から浮かせるなど、細部にまで音質の追求がされている。そして、黒で統一されたナレーションブース。正面に設置されたテレビモニターは、Pro Toolsのビデオ出力が映る設計となっている。右手にはブース窓が設けられ、コントロールルームとのコンタクトがとれる設計だ。モニターシステムは2種類用意されており、カフシステムとキューボックスから選ぶことが可能。もちろん、モニターシステムへの音声アサインは前述の通り、DADmanのモニターコントロールを介して行われる。
また、MAスタジオとしては非常に珍しいクリアカムシステムも常設。こちらはナレーションブースとのコミュニケーション用途ではなく、MAスタジオの横に併設されている撮影スタジオとのコミュニケーションとして用意されている。現在ではトランクラインが数チャンネル用意されており、マイク数本ならMA室での収録も可能となっている。その他にもこのフロアにはオフライン編集室も併設されている。
MAブース
編集室
撮影スタジオ
Dolby Atmos Mixのライブ配信という初モノ
avexR studioの構想を拡げた今年のa-nationは大阪と東京で行われた4日間の公演がDolby Atmos Mixにてライブ配信された。「Dolbyのスタッフも、野外フェスでのDolby Atmos Mixは初めてと言っており、マイキングも含めて全てが初めての経験でした。」と岡田氏が語るように、今回のa-nationは「誰もやっていないなにか初モノを」というコンセプトのもと未だかつてない斬新な企画が行われていた。
「毎年、a-nationのキックオフ会議では「なにか誰もやってない初モノをやりたいね!」という話題が出ます。今では当たり前になった映像サブスクリプションサービスでの音楽ライブの生配信もdTVでのa-nation(2015年)が初めてでしたし、前にも記したdTV VR(2016年)も「ライブの生ステージの花道のポップアップからVRカメラが突然出てくる」なんて狂気の沙汰(笑)は、当社でなければ思いつきませんし実行しないと思います。」
岡田氏の言葉通りだが、実際、2015年から始まったリアルタイム配信は、翌年になるとVRへとフォーマットを展開し、さらに「何か誰もやっていない初モノ」となるDolby Atmos Mixのライブ配信へと発展していくひとつの導線だったように見える。
会場全体に配置されたアンビエントマイク
それでは、Dolby Atmos Mixのライブ配信がどのように行われたかを見ていきたい。まず、会場にはアリーナ席を取り囲むように16本のアンビエントマイクが設置された。アンビエントマイクのミックスにおいて、Haloとのバランスが非常に重要だったそうだ。今回の会場でのポイントを伺った。
「アンビエントマイクの配置で苦労したのは、高さと反射です。高さに関してはDolby Atmosの肝でもあるので、効果的なマイクの高さと指向を見つけるのが大変でした。反射に関してはスタジアム背面の反射音はリバーヴの深度の可変で調整しやすいのですが、マルチチャンネルは立体的であるため、音の反射の戻りが一定でなく位相のズレが激しいのが難点でした。具体的には上手右側には大きい電光掲示板があるけど、下手左側は普通の観客席だったりと。」
特にDelayの調整はバンドごとに調整が必要だったそうで、そういった意味でもHalo Upmixを展開した5.1.4のマルチアウトは活用されていた。会場のアンビエンスは遅れて届くため、Halo Upmixでプロセスされたマルチアウトチャンネルの方でDelayをかけているのだが、チャンネルによってはDelayを多めにかけたり、少なめにするなどの微調整が必要だった。そのような中でも、リハ中にアンビエントマイクのグループ2MixにHaloを挿して「自分の位相感とHaloが導き出す位相感」のギャップを感覚的に測ってみるため、Pro Toolsセッション上に視聴のためのFaderを用意して比較視聴したそうだ。
二重化されたライブミックスと収録システム、転送システム
今回はPro Toolsを中心とした収録システムが組まれた。ミックスを行なっていたMix用Pro Toolsは本線と予備回線の2回線用意され、それぞれが別の収録用Pro Toolsやマルチチャンネルレコーダーへ送られる仕組みだ。DJ Mixのようなインスト2ch Mix中心のバンドはそのまま2chを、バンドセットの場合は別に用意された収録車にて各パートがSTEM MixされてDolby Atmos Mix車へ、アンビエント等のアナログ回線はDolby Atmos Mix車内にてスプリッタで分岐されて本線と予備回線に分岐。後述するが、車載された3式のPro ToolsのインターフェイスにはすべてAvid|MTRXが採用された。コントロールはPro Toolsが稼働している各Macではなく、制御用のMacBook Proが用意され、3台ともが1台のDADmanからコントロールされていた。特に、本線Macと本線用収録Pro ToolsとはDante接続されており、DADmanの他に、Dante Controlの制御を行う必要がある。今回はライブ配信とマルチチャンネル収録があるため、どのMacでも制御は一切に行わない仕様だ。
Dolby Atmos Mix車、収録車
DADmanで3台のMTRXをコントロール
本線システム
予備システム
本線収録用システム
本線と予備回線はそれぞれSDI Enbedderへ送られる。SDI EnbedderはDolby Atmos Mix車とは別の場所で設営され、そちらでは問題なくEnbeddedされているかどうかを確認するブースが用意されていた。
ちなみに、今回のライブ配信で実際に配信された音声がDolby Atmos Mixとして試聴できた端末はNTTドコモの最新スマートフォンでGalaxy S9、Galaxy S9+、AQUOS R2、HUAWEI P20 Proの4機種となった。これらの4機種ではハードウェアに内蔵されたDolby AtmosデコーダーによりヘッドホンのみだがDolby Atmos Mixが視聴することができる。
リアルタイムミキサーとして選択されたPro ToolsとHalo Upmix
数あるDAWの中からPro Toolsが選ばれたのは、Pro Tools 12.8からDolby Atmosミキシングにネイティブ対応し、Dolby Atmos Pannerプラグインを使用しなくなったのが大きいそうだ。デフォルトで3D Panningができるようになり、3Dオブジェクトのルーティングやパンニングが追加プラグインなしで活用できるようになったり、Pro Tools Ultimate 2018.4以降では各種プラグインも含めてマルチチャンネルの対応幅が広がったことは、ミックスをするにあたり結果にたどり着くまでのプロセスが少なく済む。ライブミックスの場合は、電力やスペースの都合からコンパクトかつ高性能、そして信頼性が大事となるだけに、Pro Toolsのシステムは安心感が持てるからだと岡田氏は語る。
実際にPro Toolsセッションを覗かせてもらうと、16本のアンビエントマイクは、各チャンネルとも7.1.2のバスへアサインされ、実際のマイクに合わせて高さを出すため、Pro Toolsの3Dパンナーを使って高さ方向への配置がされていた。実際にアンビエンスだけで聞かせていただいたが、高さ方向への空気感は会場そのものが再現されている。そして、今回のミックスで核となるのがNugen Audio Halo Upmixである。
「a-nationのようなフェスの場合、出演するアーティストの編成によりバランスが都度変わります。また、各アーティストのリハーサル時間も短いことから、今回は収録車のマルチオーディオ録音チームよりいただいた各種ステムミックスをPro Toolsセッション上で2chにMixした上で、内部バス経由でHaloにて5.1.4ch化を行い、会場のアンビエントとの位相合わせも含め大変活躍しました。」
ひとつのセッション上で各パートのSTEMトラックをミックスし、バックトラックSTEMを内部バスでHalo Upmixへ送ることで、各パートの微調整も容易になる。今回のように、多種多様なアーティストが出演するとなると、楽器構成などが幅広くなりミックスバランスも非常に難しくなるが、アンビエンスのほかにも苦労したポイントはLFEの取り扱いだという。特に今回の試みがdTVチャンネル、NTT docomoの施策ということで、スマホでの視聴でなおかつヘッドフォンでの視聴に限定される。そのため、とりわけLFEの分量には苦労したそうだ。
また、アーティストの出演順によって、バンドセットの後にDJセットが来るときなどは、バランスが大きく異なる、ここもフェスならではのポイントとなった。リハーサルの際にも実際にオペレートされているところを拝見させていただいたが、バンドが変わるごとにセッションの開き直しなどは行わず、グループごとでHalo Upmixでのプリセットのリコールや、各チャンネルのバランス・広がり度合い・アンビエントのボリューム・各チャンネルのでDelay値をバンドごとに修正されていた。
長蛇の列を作ったavexR studioミックスの体験ブース
会場ではスタジアム横に用意されたCommunity Stageやフードブースが並ぶスペースの中央に、オフィシャルパートナーであるdTV・dTV chのブースが用意された。ここでは、一般の方もDolby Atmosでミックスされたコンテンツを視聴できるブースとなっており、今回のために用意されたアーティストのライブ映像のDolby Atmos Mixが無料体験!! とあって常に長蛇の列となった。こちらのミックスも前述のavexR studioにてミックスが行われている。縦方向への音の広がりが、通常のライブビデオとも違う空気感を感じられたのだが、実際にミックスするにあたりステレオにはないミックス方法を実施したとのこと。
手法としては、ステレオ音源をベースにNugen Audio Halo Upmixで5.1.4へと広げるのだが、ここでセンター成分にあえて歪みを出すそうだ。確かにソロでCenterチャンネルだけを聞いてみると歪んでいるのだが、そこへLRチャンネルを足すと歪みは目立たなくなりセンター成分は存在感が保たれる。さらに他のチャンネルもバランスを見てミックスすることで、ライブ感を損なわずに空間を定位させることが可能になるそうだ。通常の音楽ミックスでは決して用いることのない手法だが、ライブMixかつマルチチャンネルミックスだからこその手法である。
昨今の音楽視聴環境がスピーカーからヘッドフォン・イヤホンで、CDから携帯端末内のデータによる視聴へと変化してきている中で、このように身近なスマートフォンという端末でここまでハイクオリティなコンテンツが視聴できるようになることは今後の音楽業界に少なからずの変化をもたらすであろう。スマートフォンのチップがパソコンに迫る処理速度になっていることからも、今後はDolby Atmosだけではなくマルチチャンネルフォーマットがスマートフォン向けのエンジン(アプリ)をリリースするきっかけになるのではと想像される。
「ライブをマルチチャンネルでミックスして配信、またアラカルト販売するにはまだまだコストが掛かり、すぐに沢山のコンテンツが定期的に出てくるとは正直思いません。しかし、Nugen Audio Halo Upmixの様なプラグインが出てきた事により、過去のライブ映像作品の2MIX+アンビエントで迫力あるマルチオ—ディオが低コストで作れるとなると、旧作品の掘り起こしになるのではないでしょうか」と岡田氏は直近の状況を見ている。確かに現在では最新スマホの4機種のみでの視聴であるが、スマートフォン向けのエンジンがアプリに内蔵されれば、iPhoneなど既存機種への対応も期待される。
このa-nation 2018 大阪公演・東京公演の計4日間の模様のダイジェストのうち、東京公演の2日間がavexR studioにてDolby Atmosフォーマットで制作され、11月18日からdTVチャンネルにてオンデマンド配信されている。前述のDolby Atmos対応4機種のユーザーは新たなコンテンツのあり方をすぐに手元で体験できる羨望の環境とも言える。今後の展望として、「avex+XR=avexR studioなのでAR、MR、VRなどの立体映像とオブジェクトオーディオを多用したVRオーディオの両方が制作できる唯一のクリエイティヴ・ハウスとして邁進できれば。」と岡田氏は語る。かつてiTunesにて音楽配信が開始された当初、直ちに国内レーベルとして最多曲数を発表したのもエイベックスだった。「なにか誰もやっていない初モノをやりたい」という精神は今も昔も変わらず業界を牽引している証ではないだろうか。
左からROCK ON PRO 清水 修平、株式会社楽器音響 日下部 紀臣 氏、エイベックス・エンタテインメント株式会社 岡田 康弘 氏、ROCK ON PRO 赤尾 真由美、メディア・インテグレーション株式会社 山口 哲
*ProceedMagazine2018-2019号より転載
Event
2018/01/31
「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」全国ツアー第3弾!名古屋セミナー募集開始!!
東京、大阪と開催し大変好評をいただいた「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」が名古屋で開催決定!参加募集を開始いたします!今回はセミナー終了後に隣接するミッドランドシネマ様へお伺いして、上映中の映画によるDolby Atmos鑑賞会を予定しています。セミナー参加者の皆さんと実際に劇場でDolby Atmosを一緒に体験しましょう!
もちろんセミナーではその最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介いたします。国内でも販売の始まるDolby Atmos Mastering Suite、そしてProduction Suite、それらと緊密な連携でワークフローを形作るAVID Pro Tools 2018。どのようにシステムアップし、どのように動作を行うのか…?Dolby Atmos Mastering Suite DealerであるROCK ON PROでは、Dolby Atmosに関する疑問・質問にお応えしていきます!名古屋セミナーへのご参加ご予約お待ちしております!!
※追記:大変恐縮ですが14:30からのセミナースタートに時間変更をしております。詳細は下記の開催要項をご確認ください。ご承知おきのほどお願い申し上げます。
◎こんな方にオススメ
・Dolby Atmosとはなにか、その基本から知りたい方
・Atmos Home、Atmos Theaterといった、Dolby Atmosの種類について理解を深めたい方
・Production Suite、Mastering Suite、Dolby Atmos RMUなど、制作ツールについて理解を深めたい方
・Dolby Atmos制作に必要なその他の機材/スタジオ環境について知りたい方
・3Dサラウンド、VRコンテンツ制作に関する情報を最先端にアップデートしたい方
・Dolby Atmosワークフローについて基本から知りたい方
・実際にDolby Atmosを体感したい方
◎セミナー・トピック
第1部 Dolby Atmosの現状
講師:中山 尚幸 氏(Dolby Japan 株式会社)
全世界で爆発的な導入・制作の進むDolby Atmos。あらためてAtmosとはどのようなフォーマットなのか?その制作環境は、どのようになっているのか?基本的な部分から、現在の最新情報、現状の環境といった部分をじっくりと時間をかけて解説いただきます。Dolby Atmosにご興味のある方であれば、どの様な方でも役に立つ導入講座です。
トピック
・Dolby Atmosフォーマットの基本概念
・Dolby Atmosの種類(ホームとシアターの違い)
・制作ツールの種類(Production SuiteとMastering Suite)
第2部 Dolby Atmos制作環境とそのワークフロー徹底解説
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)
具体的にDolby Atmosの制作を行うには、何が必要なのか?どの様な設備を揃えれば良いのか?ターゲットとする規模、サイズに合わせたソリューションを解説。部屋に合わせて、そしてターゲットとするアウトプットに対して必要とされる要素も変化するDolby Atmosを整理してご案内を行います。
そして、実際の制作において必要となるツール。今回はPro Tools HDシステムでの実例を交えながら、どのように制作を行うのか、シグナルフローなどをご確認いただきながら、ひとつづつ解説します。最新のPro Tools 2018で実現したシームレスなワークフローは、現実感のあるDolby Atmos制作環境を構築可能にします。スピーカーを使わずにヘッドフォンでのプリミックスの手法など、手軽に始められるワークフローなども織り交ぜながらその実態に迫ります。
トピック
・Dolby Atmos制作のためのシステム
-制作に必要な機材/設備
-スタジオ規模/目的に合わせたシステムの種類
・Pro Tools 12.8におけるDolby Atmosワークフロー
-Dolby Atmosプラグイン
-Dolby Atmos RMUとの連携
-手軽に始めるAtmosワークフロー
◎開催要項
場所:AP名古屋.名駅 7F 会議室N+M
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4-10-25 名駅IMAIビル
(https://www.tc-forum.co.jp/kansai-area/ap-nagoya)
日時:2018年2月20日(火)
※追記:大変恐縮ですが14:30からのセミナースタートに時間変更をしております。ご承知おきのほどお願い申し上げます。
14:15 開場
14:30 セミナースタート
・Dolby Atmosの現状:中山 尚之(Dolby Japan)
・制作環境とそのワークフロー徹底解説:前田 洋介(ROCK ON PRO)
16:30 Q&A、セミナー終了、ミッドランドスクウェアシネマへ移動
17:20 ミッドランドスクウェアシネマにて上映作品によるDolby Atmos鑑賞
※上映作品の鑑賞につきましてはセミナーお申込みの方へスケジュール、タイトル、鑑賞参加費用等をご連絡をさせていただき、鑑賞会へのご参加の有無を確認させていただきます。
※作品鑑賞後には懇親会を予定しています。奮ってのご参加をお待ちしております。
定員:30名
参加費:セミナー無料(鑑賞会参加費用については、セミナーご参加お申込みの方々へ別途ご案内を
差し上げます。セミナーのみのご参加も可能です。)
主催:(株)メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部
お問い合わせ先:ROCK ON PRO (TEL: 03-3477-1776)
ROCK ON PRO Umeda (TEL: 06-6131-3078)
講師:中山 尚之(Dolby Japan)、前田 洋介(ROCK ON PRO)
会場地図
Tech
2017/12/12
「Dolby Atmos Home」制作のためのターンキー・システムを販売開始!
既存のサラウンド・システムに加え、「オブジェクト・ベース」という新たなコンセプトを取り入れることでシネマ・オーディオに革新をもたらすDolby Atmos。世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなりました。しかし、新たな方式を取り入れるということは、必然的に従来とは異なるシステムやワークフローが要求されることとなります。
ROCK ON PROはDolby Atmos Mastering Suite認定ディーラーとして、制作を希望するみなさまからの疑問や制作用ツール導入に関するご相談にお応えいたします!「どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか? 」そんな疑問をお持ちの方も、まさに「これからDolby Atmosの制作を始めよう!」という方も、まずはROCK ON PROまでお問い合わせください!
◎ホームシアター向け納品ファイル作成に必須のシステムをターンキーで!
制作のための業務用ツールはこれまで、ドルビー社からのレンタルという形で制作現場に提供されていました。その中でも条件がもっともシビアな映画制作向けのツール類は今後もDolby社経由で入手することになりますが、Blu-ray Discやデジタル配信コンテンツを制作するためのツールはDolby社の認定を受けたディーラー経由で販売されることとなります。
ROCK ON PROでは、これら家庭向けDolby Atmosコンテンツの制作から納品マスター・ファイル (Dolby Atmos Home) の作成までを行うことが可能となる、ターンキー・システムの販売を開始いたしました。
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/J
構成
・Dolby社推奨 DELL Workstation
・Dolby Atmos Mastering Suite 同梱
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software インストール済
・MADI2系統 I/O、LTC I/O カード実装済
・二重化電源、内蔵ディスクは全てSSD
・ハードウェア製品保証5年間、ASP(ROCK ON PRO年間サポート)加入対象製品(有料)
主な機能
・Dolby Atmosのマスター・ファイルである「.atmos」ファイルの作成
・.atmosファイルから、家庭向けコンテンツ用の各フォーマットに合わせた納品マスターの作成
・「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos環境でのモニタリング
・Dolby Atmosに対応するDAWとの連携
対応するソリューション
・Dolby Atmos に対応したBlu-ray作品のミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos に対応したデジタル配信コンテンツのミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のBlu-ray版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のデジタル配信版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のためのプリミキシング
・VRコンテンツのミキシング〜マスタリング
価格
ROCK ON PROまでお問合わせください!
◎HT-RMUとは何か〜Cinema用RMUとHome用HT-RMU
Dolby Atmosコンテンツ制作のためには、ミックスのためのツールに加え、完成したミックスからファイナルデータを作成するためのDolby Atmos RMU (Redering Mastering Unit)と呼ばれるハードウェア・システムが必要となります。Dolby Atmos RMU はDolby Atmos環境でのモニタリングのためのレンダラーとしての使用も可能であり、ハードウェア・レンダラーとも呼ばれます。
RMUには映画館での上映を目的としたマスター(Dolby Atmos Cinema)を作成するためのものと、Blu-rayやデジタル配信コンテンツなどの家庭やモバイル環境で視聴することを目的としたマスター(Dolby Atmos Home)を作成するためのものがあります。後者のDolby Atmos Homeの制作を目的としたRMUがHT-RMUと呼ばれるハードウェア・システムです。これは、映画館とホームシアターではスピーカー・レイアウトが異なるため、使用されるマスターファイルやレンダリングのプロセスも異なり、それぞれ目的に合わせたRMUを使用する必要があるためです。
参考までに、Dolby Atmos Cinema作成のためにはCinema用RMUを備えた「ダビング・ステージ」と呼ばれるスタジオ設備を構築する必要があります。これらはDolby社によって要件が厳しく管理されているため、Dolby社と直接コンタクトを取る必要があります。
>>こちらの比較表もご覧ください
◎HT-RMUシステムのシグナル・フロー
Dolby Atmosコンテンツのミキシングは、これまで通りPro ToolsなどのDAWで行います。HT-RMUはDAWから、MADI経由でオーディオデータを受け取ると同時に、Atmosパンナーを通じてオブジェクトの位置情報であるオブジェクト・メタデータを受け取り、「.atmos」という拡張子を持つマスターファイルを作成します。最終的に、この「.atmos」ファイルから「Dolby True HD」などのメディアに合わせた納品ファイルを作成するところまでを行うことができます。
さらに、RMUからMADIで出力される信号を任意のスピーカーに接続することで、Dolby Atmos環境でのモニタリングが可能となります。
◎Dolby Atmos Mastering SuiteとProduction Suite
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/Jに付属するDolby Atmos Mastering Suiteは、HT-RMUに実質的な機能を与えるためのエンジンと、Pro Tools上でAtmosミックスを行うためのツールであるDolby Atmos Production Suite のライセンス x3をバンドルしたソフトウェア・ライセンスです。
Dolby Atmos Production SuiteはPro Tools | HD 専用のDolby Atmosミキシング・ツールです。Pro Toolsと同一のMac上で動作するソフトウェア・レンダラーと、ソフトウェア/ハードウェア・レンダラーにオブジェクト・メタデータを送ることができるパンナー・プラグインとを中心としたツールボックスです。これだけでもPro ToolsからのDolby Atmosミックスをモニタリングすることが可能ですが、.atmosファイルを書き出すことは出来ません。Dolby Atmos Mastring SuiteはProduction Suite のライセンス3本に加え、HT-RMU上で動作するマスタリング・エンジンなどを含むツール群で、下記ソフトウェアがバンドルされています。
Dolby Atmos Mastring Suite
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software for Windows
HT-RMUのレンダリング/マスタリング・エンジンとWEBサービス
・Dolby Atmos Conversion Tools (for PC and Mac)
「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos Production Suite x3ライセンス
Dolby Atmos Production Suite
・Pro Tools | HD 専用のAtmosパンナー類
・Dolby Atmosソフトウェア・レンダラー
・パンナー/コンバーターなどのVR制作用ツール
Dolby Atmos Production Suite単体はAvid Storeでの販売となります。
>>各プラグインの詳細などはAvidブログでご確認いただけます。
>>次項の比較表もご覧ください
◎Dolby Atmos 制作用ツール 機能比較表
Cinema:映画館上映を目的としたマスター。ダビングステージでファイナルミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Print Masterと呼ばれるファイル群をRendering Master Unit(RMU)で作成。
Home:一般家庭での視聴を目的としたマスター。ニアフィールドモニターによるAtmosスピーカー・レイアウトにてミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Master File(.atmos)と呼ばれるファイル群をHome-Theater-Rendering Master Unit(HT-RMU)で作成。
Cinema用とHome用のRMUでは作成できるファイルが異なり、スピーカーレイアウト/部屋の容積に関する要件もCinema向けとHome向けで異なる。それぞれ、目的に合わせたRMUを使用する必要がある。ミキシング用のツール、DAW、プラグイン等は共通。
※Dolby Atmos Production SuiteはWeb上、AVID Storeからご購入できるほか、Mastering Suiteにも付属しています。
※Dolby Atmos Dub with RMUについてはDolby Japanへお問い合わせください。
◎ROCK ON PRO導入事例
beBlue AOYAMA様
2014年、東京・青山という全国でも屈指の好立地に誕生し、MonoからDolby Atmosまで対応可能なMAスタジオ beBlue AOYAMA。こちらのスタジオの誕生にROCK ON PROが関わらせていただいた当時の導入事例です。
THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能とした将来性の高いシステム、機材導入などを決定付けたスタジオ構築に関するコンセプトなど、読み応え満載の記事となっております!
>>導入事例はこちらからご覧ください!!
◎「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」大阪・名古屋でも開催!
ROCK ON PROでは、新たなワークフロー、新たなシステムが要求されるDolby Atmos制作に関して、その最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介するセミナーを開催中です。12/7(木)には東京でのセミナーが開催、さらに、12/27(水)には大阪での開催が決定しており、日程は未定ですが名古屋での開催も決まっています。Dolby Atmosの制作について、踏み込んだ情報をお探しの方は最寄りの会場までぜひご参加ください!
Event
2017/12/08
「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」全国ツアー第2弾 大阪セミナー募集開始!!
大盛況の内に幕を閉じた東京でのセミナーに続き、「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」第2弾となる大阪での参加者募集を開始いたします!世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなったDolby Atmos。その最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介いたします。国内でも販売の始まるDolby Atmos Mastering Suite、そしてProduction Suite、それらと緊密な連携でワークフローを形作るAVID Pro Tools 12.8。どのようにシステムアップし、どのように動作を行うのか…?Dolby Atmos Mastering Suite DealerであるROCK ON PROでは、Dolby Atmosに関する疑問・質問に徹底的にお答えするため全国セミナー・ツアー第2弾!大阪セミナーへのご参加ご予約お待ちしております!!
◎こんな方にオススメ
・Dolby Atmosとはなにか、その基本から知りたい方
・Atmos Home、Atmos Theaterといった、Dolby Atmosの種類について理解を深めたい方
・Production Suite、Mastering Suite、Dolby Atmos RMUなど、制作ツールについて理解を深めたい方
・Dolby Atmos制作に必要なその他の機材/スタジオ環境について知りたい方
・3Dサラウンド、VRコンテンツ制作に関する情報を最先端にアップデートしたい方
・Dolby Atmosワークフローについて基本から知りたい方
◎セミナー・トピック
第1部 Dolby Atmosの現状
講師:中山 尚幸 氏(Dolby Japan 株式会社)
全世界で爆発的な導入・制作の進むDolby Atmos。あらためてAtmosとはどのようなフォーマットなのか?その制作環境は、どのようになっているのか?基本的な部分から、現在の最新情報、現状の環境といった部分をじっくりと時間をかけて解説いただきます。Dolby Atmosにご興味のある方であれば、どの様な方でも役に立つ導入講座。
トピック
・Dolby Atmosフォーマットの基本概念
・Dolby Atmosの種類(ホームとシアターの違い)
・制作ツールの種類(Production SuiteとMastering Suite)
第2部 Dolby Atmos制作環境とそのワークフロー徹底解説
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)
具体的にDolby Atmosの制作を行うには、何が必要なのか?どの様な設備を揃えれば良いのか?ターゲットとする規模、サイズに合わせたソリューションのご提案を行います。部屋に合わせて、ターゲットとするアウトプットに対して必要とされるものの変わるDolby Atmosを整理してご案内を行います。
そして、実際の制作において必要となるツール。今回はPro Tools HDシステムでの実例を交えながら、どのように制作を行うのか、シグナルフローなどをご確認いただきながら、ひとつづつ解説を行います。最新のPro Tools 12.8で実現したシームレスなワークフローは、現実感のあるDolby Atmos制作環境をご提供します。スピーカーを使わずにヘッドフォンでのプリミックスの手法など、手軽に始められるワークフローなども織り交ぜながらその実態に迫ります。
トピック
・Dolby Atmos制作のためのシステム
-制作に必要な機材/設備
-スタジオ規模/目的に合わせたシステムの種類
・Pro Tools 12.8におけるDolby Atmosワークフロー
-Dolby Atmosプラグイン
-Dolby Atmos RMUとの連携
-手軽に始めるAtmosワークフロー
◎開催要項
場所:ガリレオクラブ Aスタジオ
〒530-0026 大阪市北区神山町1-5 扇町公園ビル 2階(https://galileo-club.com)
日時:2017年12月27日(水)
14:15 開場
14:30 セミナースタート
・Dolby Atmosの現状:中山 尚之(Dolby Japan)
・制作環境とそのワークフロー徹底解説:前田 洋介(ROCK ON PRO)
16:30 Q&A、終了
定員:15名
参加費:無料
主催:(株)メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部
お問い合わせ先:ROCK ON PRO Umeda TEL 06-6131-3078
講師:中山 尚之(Dolby Japan)、前田 洋介(ROCK ON PRO)
会場地図
Event
2017/11/24
ROCK ON PRO Presents「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」全国ツアー第1弾 東京セミナー募集開始!!
世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなったDolby Atmos。その最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介いたします。国内でも販売の始まるDolby Atmos Mastering Suite、そしてProduction Suite、それらと緊密な連携でワークフローを形作るAVID Pro Tools 12.8。どのようにシステムアップし、どのように動作を行うのか…?
国内では2社となるDolby Atmos Mastering Suite Dealer。その1社であるROCK ON PROでは、Dolby Atmosに関する疑問・質問に徹底的にお答えするため全国セミナー・ツアーを決行!第1弾となる東京セミナーの募集を開始いたします!!
12/7追記:◎開催終了いたしました、ご来場いただき誠にありがとうございました
◎こんな方にオススメ
・Dolby Atmosとはなにか、その基本から知りたい方
・Atmos Home、Atmos Theaterといった、Dolby Atmosの種類について理解を深めたい方
・Production Suite、Mastering Suite、Dolby Atmos RMUなど、制作ツールについて理解を深めたい方
・Dolby Atmos制作に必要なその他の機材/スタジオ環境について知りたい方
・3Dサラウンド、VRコンテンツ制作に関する情報を最先端にアップデートしたい方
・Dolby Atmosワークフローについて基本から知りたい方
◎セミナー・トピック
第1部 Dolby Atmosの現状
講師:中山 尚幸 氏(Dolby Japan 株式会社)
全世界で爆発的な導入・制作の進むDolby Atmos。あらためてAtmosとはどのようなフォーマットなのか?その制作環境は、どのようになっているのか?基本的な部分から、現在の最新情報、現状の環境といった部分をじっくりと時間をかけて解説いただきます。Dolby Atmosにご興味のある方であれば、どの様な方でも役に立つ導入講座。
トピック
・Dolby Atmosフォーマットの基本概念
・Dolby Atmosの種類(ホームとシアターの違い)
・制作ツールの種類(Production SuiteとMastering Suite)
第2部 Dolby Atmos制作環境とそのワークフロー徹底解説
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)
具体的にDolby Atmosの制作を行うには、何が必要なのか?どの様な設備を揃えれば良いのか?ターゲットとする規模、サイズに合わせたソリューションのご提案を行います。部屋に合わせて、ターゲットとするアウトプットに対して必要とされるものの変わるDolby Atmosを整理してご案内を行います。
そして、実際の制作において必要となるツール。今回はPro Tools HDシステムでの実例を交えながら、どのように制作を行うのか、シグナルフローなどをご確認いただきながら、ひとつづつ解説を行います。最新のPro Tools 12.8で実現したシームレスなワークフローは、現実感のあるDolby Atmos制作環境をご提供します。スピーカーを使わずにヘッドフォンでのプリミックスの手法など、手軽に始められるワークフローなども織り交ぜながらその実態に迫ります。
トピック
・Dolby Atmos制作のためのシステム
-制作に必要な機材/設備
-スタジオ規模/目的に合わせたシステムの種類
・Pro Tools 12.8におけるDolby Atmosワークフロー
-Dolby Atmosプラグイン
-Dolby Atmos RMUとの連携
-手軽に始めるAtmosワークフロー
◎開催要項
場所:ROCK ON PROセミナールーム
東京都渋谷区神南1-4-8神南渡辺ビル2F
日時:2017年12月7日(木)
15:45 開場
16:00 セミナースタート
・Dolby Atmosの現状:中山 尚之(Dolby Japan)
・制作環境とそのワークフロー徹底解説:前田 洋介(ROCK ON PRO)
18:00 Q&A、終了
定員:30名
参加費:無料
主催:(株)メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部
講師:中山 尚之(Dolby Japan)、前田 洋介(ROCK ON PRO)
会場は下記Rock oN Shibuya店の向かいのビル 2Fとなります。
12/7追記:◎開催終了いたしました、ご来場いただき誠にありがとうございました
Tech
2017/10/13
Pro Tools Information / Pro Tools | HD 12.8によるDolby Atmos® 制作フローの概要がAvidブログで公開されました!
発表当初よりDolby Atmos対応が注目されていたPro Toos|HD 12.8ですが、Dolby社による制作ツールの充実とそれらのツールの国内販売開始により、一層身近になったDolby Atmosプロダクション・ワークフローをPro Tools | HD 12.8の関連機能と共に紹介するAvidブログが公開されました。
ブログではAtmosについての基本的な概説から、Dolby社の提供するAtmosワークフローのためのツールの紹介、さらにPro Tools固有のAtmos対応機能からS6とのインテグレーションまで、各項目詳細な解説が行われております。
詳細はこちら>>Pro Tools | HD 12.8によるDolby Atmos® 制作フローの概要
Dolby Atmosワークフローの肝とも言えるDolby Atmos Rendere。Pro Toolsから受け取ったオブジェクトオーディオをレンダーします。このレンダラーからの信号をバスなどで受けることで、Dolby Atmosとしてモニターすることができる。バイノーラルへフォールドダウンすれば、ヘッドホン再生環境だけでもAtmosのプリミックスを行うことが可能に!
こちらはPro Tools本体のパンナー。複数のビューを備え、Dolby社のパンナープラグインを使用しなくても自由度の高いパンニングが可能。
なんとS6のマスターモジュールではタッチパネルを使用して3Dパンニングが可能!視覚的に情報を把握しながら直感的に操作が行えることで、より創造性の高い制作が行えるでしょう。
ROCK ON PROはブログでも触れられている「Dolby Atmos Mastering Suite」の国内ディーラーですので、ご不明点はROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください!
Brand
2017/05/31
Dolby Atmos
既存のサラウンド・システムに加え、「オブジェクト・ベース」という新たなコンセプトを取り入れることでシネマ・オーディオに革新をもたらすDolby Atmos。世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなりました。しかし、新たな方式を取り入れるということは、必然的に従来とは異なるシステムやワークフローが要求されることとなります。
ROCK ON PROはDolby Atmos Mastering Suite認定ディーラーとして、制作を希望するみなさまからの疑問や制作用ツール導入に関するご相談にお応えいたします。「どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか? 」そんな疑問をお持ちの方も、まさに「これからDolby Atmosの制作を始めよう!」という方も、まずはROCK ON PROまでお問い合わせください。
◎ホームシアター向け納品ファイル作成に必須のシステムをターンキーで
制作のための業務用ツールはこれまで、ドルビー社からのレンタルという形で制作現場に提供されていました。その中でも条件がもっともシビアな映画制作向けのツール類は今後もDolby社経由で入手することになりますが、Blu-ray Discやデジタル配信コンテンツを制作するためのツールはDolby社の認定を受けたディーラー経由で販売されることとなります。ROCK ON PROでは、これら家庭向けDolby Atmosコンテンツの制作から納品マスター・ファイル (Dolby Atmos Home) の作成までを行うことが可能となる、ターンキー・システムをご提供します。
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/JRMU-Dell
◎構成
・Dolby社推奨 DELL Workstation
・Dolby Atmos Mastering Suite 同梱
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software インストール済
・MADI2系統 I/O、LTC I/O カード実装済
・二重化電源、内蔵ディスクは全てSSD
・ハードウェア製品保証5年間、ASP(ROCK ON PRO年間サポート)加入対象製品(有料)
◎主な機能
・Dolby Atmosのマスター・ファイルである「.atmos」ファイルの作成
・.atmosファイルから、家庭向けコンテンツ用の各フォーマットに合わせた納品マスターの作成
・「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos環境でのモニタリング
・Dolby Atmosに対応するDAWとの連携
◎対応するソリューション
・Dolby Atmos に対応したBlu-ray作品のミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos に対応したデジタル配信コンテンツのミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のBlu-ray版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のデジタル配信版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のためのプリミキシング
・VRコンテンツのミキシング〜マスタリング
◎HT-RMUとは何か〜Cinema用RMUとHome用HT-RMU
Dolby Atmosコンテンツ制作のためには、ミックスのためのツールに加え、完成したミックスからファイナルデータを作成するためのDolby Atmos RMU (Redering Mastering Unit)と呼ばれるハードウェア・システムが必要となります。Dolby Atmos RMU はDolby Atmos環境でのモニタリングのためのレンダラーとしての使用も可能であり、ハードウェア・レンダラーとも呼ばれます。
RMUには映画館での上映を目的としたマスター(Dolby Atmos Cinema)を作成するためのものと、Blu-rayやデジタル配信コンテンツなどの家庭やモバイル環境で視聴することを目的としたマスター(Dolby Atmos Home)を作成するためのものがあります。後者のDolby Atmos Homeの制作を目的としたRMUがHT-RMUと呼ばれるハードウェア・システムです。これは、映画館とホームシアターではスピーカー・レイアウトが異なるため、使用されるマスターファイルやレンダリングのプロセスも異なり、それぞれ目的に合わせたRMUを使用する必要があるためです。
参考までに、Dolby Atmos Cinema作成のためにはCinema用RMUを備えた「ダビング・ステージ」と呼ばれるスタジオ設備を構築する必要があります。これらはDolby社によって要件が厳しく管理されているため、Dolby社と直接コンタクトを取る必要があります。
◎HT-RMUシステムのシグナル・フロー
Dolby Atmosコンテンツのミキシングは、これまで通りPro ToolsなどのDAWで行います。HT-RMUはDAWから、MADI経由でオーディオデータを受け取ると同時に、Atmosパンナーを通じてオブジェクトの位置情報であるオブジェクト・メタデータを受け取り、「.atmos」という拡張子を持つマスターファイルを作成します。最終的に、この「.atmos」ファイルから「Dolby True HD」などのメディアに合わせた納品ファイルを作成するところまでを行うことができます。
さらに、RMUからMADIで出力される信号を任意のスピーカーに接続することで、Dolby Atmos環境でのモニタリングが可能となります。
◎Dolby Atmos Mastering SuiteとProduction Suite
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/Jに付属するDolby Atmos Mastering Suiteは、HT-RMUに実質的な機能を与えるためのエンジンと、Pro Tools上でAtmosミックスを行うためのツールであるDolby Atmos Production Suite のライセンス x3をバンドルしたソフトウェア・ライセンスです。
Dolby Atmos Production SuiteはPro Tools | HD 専用のDolby Atmosミキシング・ツールです。Pro Toolsと同一のMac上で動作するソフトウェア・レンダラーと、ソフトウェア/ハードウェア・レンダラーにオブジェクト・メタデータを送ることができるパンナー・プラグインとを中心としたツールボックスです。これだけでもPro ToolsからのDolby Atmosミックスをモニタリングすることが可能ですが、.atmosファイルを書き出すことは出来ません。Dolby Atmos Mastring SuiteはProduction Suite のライセンス3本に加え、HT-RMU上で動作するマスタリング・エンジンなどを含むツール群で、下記ソフトウェアがバンドルされています。
Dolby Atmos Mastring Suite
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software for Windows
HT-RMUのレンダリング/マスタリング・エンジンとWEBサービス
・Dolby Atmos Conversion Tools (for PC and Mac)
「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos Production Suite x3ライセンス
Dolby Atmos Production Suite
・Pro Tools | HD 専用のAtmosパンナー類
・Dolby Atmosソフトウェア・レンダラー
・パンナー/コンバーターなどのVR制作用ツール
Dolby Atmos Production Suite単体はAvid Storeでの販売となります。
>>各プラグインの詳細などはAvidブログでご確認いただけます。
◎Dolby Atmos 制作用ツール 機能比較表
Cinema:映画館上映を目的としたマスター。ダビングステージでファイナルミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Print Masterと呼ばれるファイル群をRendering Master Unit(RMU)で作成。
Home:一般家庭での視聴を目的としたマスター。ニアフィールドモニターによるAtmosスピーカー・レイアウトにてミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Master File(.atmos)と呼ばれるファイル群をHome-Theater-Rendering Master Unit(HT-RMU)で作成。
Cinema用とHome用のRMUでは作成できるファイルが異なり、スピーカーレイアウト/部屋の容積に関する要件もCinema向けとHome向けで異なります。それぞれ、目的に合わせたRMUを使用する必要があります。ミキシング用のツール、DAW、プラグイン等は共通です。
※Dolby Atmos Production SuiteはWeb上、AVID Storeからご購入できるほか、Mastering Suiteにも付属しています。
※Dolby Atmos Dub with RMUについてはDolby Japanへお問い合わせください。
ROCK ON PRO 導入事例:beBlue AOYAMA様
2014年、東京・青山という全国でも屈指の好立地に誕生し、MonoからDolby Atmosまで対応可能なMAスタジオ beBlue AOYAMA。こちらのスタジオの誕生にROCK ON PROが関わらせていただいた当時の導入事例です。THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能とした将来性の高いシステム、機材導入などを決定付けたスタジオ構築に関するコンセプトなどをご紹介しています。
Post
2014/11/13
Sound Design のベース DOLBY ATMOS 普及の鍵となるスタジオが完成 〜 beBlue AOYAMA 〜
東京・青山という都内屈指の立地に世界各国で導入が進む Dolby Atmosへ対応したMAスタジオが誕生した。THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能としたシステムは、将来へも布石した先進のスタジオと言える。今回の導入事例では数々のアイデアが詰め込まれたシステムの詳細に迫りたい。
01 プロジェクトを推し進めた DOLBY ATMOS というキーワード
有限会社ビー・ブルー様は名古屋に本拠地を持つ、主に映像作品のサウンドデザイン(選曲・音楽制作も含む)を行っている会社である。物語の始まりは「東京にスタジオを作りたい」という構想を、THX pm3認証に沿ったプランニングで数多くのスタジオ構築に実績がある染谷 和孝 氏に語ったところから始まる。東京には2chのMA スタジオも5.1chのMA スタジオも多数存在する。新しくスタジオを作るとなると同じようなコンセプトのスタジオを作っていたのでは成り立たない。そこでしっかりとした個性を持ったスタジオを作るには明確に差別化されたコンセプトが必要となる。
その答えを見つけるターニングポイントとなったのが東映株式会社でのDolby Atmos対応のダビングステージを視察した際のこと、Dolby Atmosというキーワードの実際を見る事によってこれまでの計画は一つの方向に向かって急激に走り出していくことになる。元々のコンセプトとしてTHX pm3の認証とシーリングスピーカーは導入したい考えであったが、そのシーリングがDolby Atmosに出会って大きな化学反応を起こし、今回のコンセプトに「小規模スタジオでのDolby Atmos」という一つの目標が出来たとも言える。しかし、まだその時点では「Local Renderer」の正式リリースの声は聞けず、結果的にはリリースを想定しての船出となった。また、その新しいチャレンジと言えるDolby Atmosのシステムアップだが、やはり予算との擦り合わせは大きな課題となる。果たしてDolby Atmosの導入コストの規模感はどうなるのか、ベースとなる音響を整えた環境は構築できるのか、新しいコンセプトとの折り合いは有限会社ビー・ブルー様にとってもこだわりを持って臨む新たな試みとなった。
02 DOLBY ATMOS 導入を推し進めた Local Renderer
前述のように当初はDolby Atmosの構想はなく、7.1chの整えられたレギュレーションに基づいたMAとしてコンセプトを考えていたとのことである。5.1chであればしっかりと調整が行き届いた設備もあるが、7.1chとなると整った環境を探す事も難しい。その一方で、Blu-rayやゲームコンテンツなどは既に7.1chがベーシックとなっており、7.1chの設備をきちんと整える事は充分な意味を持つ。また、MAと言えば48kHzがデフォルトとなりデジタルでシステムが組まれていることも多いため、ハイレゾ(96kHz以上)への対応も差別化を図る上で重要なコンセプトとなっていた。この7.1chとハイレゾ制作というベーシックプランにDolby Atmos対応が加わってスタジオのプランは試行錯誤を繰り返して行くことになる。
そして2014年春、ついにLocal Rendererの大まかな情報を得ることが出来た。それまでのDolby Atmos制作環境はシネマ用のダビングステージ向けシステムしか用意されていなかったが、このLocal Renderer の登場により中小規模のスタジオでも視聴環境が整備できればDolby Atmosの導入が可能となる。つまり、この発表によって初めてDolby Atmos作品の事前作業(プリミックス)への希望が明らかになり、スタジオ構築の方向性も定まっていく。例えば、完成後の設備追加では環境整備(音響調整)が難しいDolby Atmosフォーマットのスピーカー配置など、そのプランニングが一気に現在の完成形へと固まっていった。ちなみにLocal RendererとはDolby社が提供するPro Tools用プラグインで、Dolby AtmosのレンダリングをCUPベースで行うことができ、ダビングステージに持ち込む効果音等のサウンドデザインをニアフィールドDolby Atmosモニター環境で行うことができる製品である。
しかしながら、この2014年春の時点の情報では、Dolby社のLocal Rendererに関しては技術発表の段階であり、明確なリリース時期や本当にリリースが果たされるのかも不透明な状況。その中でもスピーカー配置などハードウェア的な準備がなければDolby Atmosの導入も難しくなってしまうため、アコースティックデザイナーである株式会社ソナの中原氏による緻密な音響設計が行われ、先行して設備を準備しLocal Rendererの登場を待つということとなった。
結果的にこのLocal Rendererの発表タイミングはbeBlue様にとって「非常にラッキーだった」と代表の青木氏も強調されていた。シーリング(天井)のスピーカーに関しては躯体の補強など様々な追加要素が必要となり、既存スタジオにシーリングを追加するハードルは高いと言える。これが設計段階からシーリングを見込んでプランニングが出来たのもLocal Rendererの開発が有限会社ビー・ブルー様にとって絶妙のタイミングで行われたからに他ならない。もしその開発が半年遅かったらDolby Atmos用のスピーカー構成にはなっていなかった可能性もあったとのこと。このほかにもDolby Atmos ホーム用のRMU(Rendering and Mastering Unit)の提供が開始したのもまさにスタジオの工事期間中。このRMUは シネマ用のプリントマスターから、ホームシアター用にDolby Atmos ミックスをリマスタリングするDolby Atmos ホームにとってのまさに心臓部、そのアジアでの1号機がこのスタジオに導入されている。このスタジオのプランニング、工事の進行と共にキープロダクトが発表されていくという非常なラッキーを携えてスタジオは完成していくこととなった。
03 DOLBY ATMOS と THX pm3 がもたらす コンセプトの軸
「ファイナルミックスの完成度は、8割以上がプリミックスの出来次第だと思っている」と染谷氏は語る。このスタジオではDolby Atmosの事前作業とプリミックスを行ってもらい、ダビングステージで完成度の高いファイナルを作ってもらいたいという思いがあるとのこと。この設備を活用してプリミックスをじっくりと行ってもらいたいというのが大きなコンセプトの一つである。この実現にはLocal Rendererの存在は非常に大きなものとなった。CPUベースのレンダリングエンジンでDolby Atmosの環境を実現することを可能とするこのシステムは、コスト的にも規模感としてもコンセプトにフィットした。
そして、もう一つのコンセプトはDolby Atmos ホーム用のRMUの登場によりもたらされた。今後コンテンツの増加が予想されるDolby Atmos ホーム用のコンテンツ制作拠点として存在することも意義が大きい。さらに今後はBlu-ray用のオーサリング、リマスター等の作業も見込んでいる。もちろん現時点ではDolby Atmosの仕事だけでスタジオのスケジュールが埋まるとは考えてはおらず、MONOから7.1chの仕事まで全部がしっかりと行えるよう細かな設計されている。Dolby Atmosに特化したスタジオではなく、車のギアのように切り替えることでモードが変わり全てに対応できる環境というのが目的としてあった。その点をこのstudio 0(ゼロ)ではDolby AtmosとTHX pm3いうコンセプトの軸を与えることで差別化、機能性の明確化を行っている。
Dolby Atmosに関してまさにBlu-ray Discの発売が始まり大きな局面に差し掛かっているが、ここで非常に大切な作業が生まれる。染谷氏はSONY PCL時代に「なぜCDにはマスタリングがあるのにDVDにはないのか?」ということを提唱した。DVDこそコーディング(非可逆の圧縮)が行われそのサウンドが変質する可能性はCDなどよりも圧倒的に高い。エンジニアにとってスタジオで作った音とパッケージに収録される音の変化は自身で確認を行うべきなのに、なぜDVDにはマスタリングが無いのかが不思議で仕方が無かったとのこと。SONY PCLでは自身の携わった作品のエンコードまで責任をもって作業を行うことが出来る設備とワークフローを確立してきた。DVDに必須コーデックとして採用されたDolby DIGITALに代表される非可逆圧縮での音質や音量の変化が、どのような特性や仕組みで生じているかをつかむ必要があった。マスタリングの必要性は圧縮によるものだけではなく、映画作品の民生用パッケージ化では音響処理を施した大空間施設での再生を目的とした音声信号を、家庭に設置されたホームシアターに最適な状態にマスタリングする目的もある。
そしてDolby Atmosでも同じことが言える。シネマ用のDCPに収録されるDolby Atmos音声と民生用に提供されるDolby Atmos ホームではコーデックや収録再生の仕組みに違いがあり、マスタリングの重要性はこれまでの5.1chや7.1ch以上に大きい。Blu-rayではDolby Atmos音声収録のために可逆圧縮であるDolby TrueHDや非可逆圧縮であるDolby Digital Plusを選択することが可能であり、それらのコーデックに用意された様々なパラメータは適切に設定する必要がある。さらに映画用Dolby Atmosもまた多くのスピーカーを設備し音響処理を施した大空間施設での再生を目的としているため、ニアフィールドモニターが基本となるDolby Atmosホーム環境での再生音場確認及びマスタリングは、コンテンツ配給のワークフローになくてはならない。そしてもっとも重要なことは、Dolby Atmosホームのマスターファイルを作成する工程であるということ。このマスターファイルが後工程のエンコード処理における素材ファイルとなる。Dolby Atmos ホームの詳細は、別途本号で特集をしているのでそちらを是非とも参考いただきたい。
04 DAW をミキシングエンジンとする NUAGE のメリット
新たなコンセプトへのチャレンジということもあり、今回導入のシステムについても特色がある。まずはスタジオの全景でも存在感のあるYAMAHA NUAGEだがこの点はプロダクトの可能性にかけた導入、国内の製品であるアドバンテージを活かして、メーカーには多くの要望に前向きに取り組んでもらったという。その結果、特筆すべきPro Tools 2式とのリレーションなどのほか、今回のスタジオのコンセプトとして必須となる機能の数々が実現している。
また、このセレクトではコストメリットも得られる。今や1000万円のコンソールやコントローラーも高価に感じてしまうが、そのような中での選択は非常にコストを重視した。もちろん多くの予算があれば、大好きなSSL等の大型コンソールの選択となるはずだが、何を選択しどんな機能を満たしていくのか?という部分を重視して考え抜かれている。今回の導入で必須機能となったのは7.1chに対応したマルチチャンネルのモニターコントロール。大型コンソールであればもちろん実現可能だが、それに変わるコンソールは何があるのかを考えると選択肢が殆ど無い。そのような現状の中で浮上したのがDAWをミキシングエンジンとして取り扱うYAMAHA NUAGE。この製品であればNuendoが今後も拡張することで対応フォーマットは順次追加され、もちろん現時点で7.1chへの対応は言うまでもない。更にモニター補正として導入されているDME64との連携により実現されている機能も多い。Atmos対応のモニターシステムとの連動を考えた結論がNUAGE導入であった。そのNUAGEエンジンが実際に何を行っているのかというと、Pro Tools2台とMedia Composerで構成されるStellite Linkからの信号を受け、NUAGE I/Oを利用した、ダイレクトモニタリング機能により出力している。もちろんNuendoのユーザーがスタジオを使う場合には、DAWとしても利用可能なシステムアップとなっている。
もう一つ、B-Chainにコストを掛けるという点もコンセプトに基づく。スタジオの音響をしっかりとした設備にという重要なコンセプトを実現するためにB-Chainの充実は必須となる。DAWなどは後からの更新も可能だが、スピーカーへと導かれるB-Chian部分は音響設計と密接に結びつくため後からの変更が難しい部分だ。具体的には補正用に3台のDME64とMini-YGDAIシリーズのMY8-LAKEカードを使用している。ここもYAMAHA製品を使用しNUAGEを含めたトータルでのシステムアップにつながっている部分。今回のシステムでYAMAHA製品が中核となっているのはメーカーとしての対応力にプランニングを進める上での大きな可能性を感じたことが大きなファクター、NUAGEの最新バージョンには染谷氏のアイデアも数多く含まれているとのことだ。
05 Pro Tools 用の HUI コントローラーという 新たな NUAGE 像
これまでの作業の中でも特にゲームの仕事はイン・ザ・ボックスのミックスを要求されることが多く、特に近年は作品のほぼ100%がそのとおりとなっている。以前は、コンソールミックスに対する慣れがあり、イン・ザ・ボックスのミックスが上手く出来ない時期もあったとのこと。その時に試みたのがMackie Controlだけでのミックス。この作業をひたすら行いコンソールでもイン・ザ・ボックスでも優れたミックスを行えることを目指して研鑽を重ねた時期もあったとのこと。C300時代にはHUIモードが登場しコンソール側でも同様の作業を行うことが可能となった。イン・ザ・ボックスでもコンソールミックスでもクライアントのオファーに柔軟に対応できるような準備を行っていた。そのような経緯もあり、NUAGEでのHUIミックスには大きな違和感はなく、スタンドアローンのコンソールではないことのデメリットはほとんど感じないとのことだ。すでにコンソールとコントローラーの境界線が希薄になっているということを感じる一幕である。もちろんラージコンソールの優位性は誰よりも熟知している。マスターセクションのつくり、感触の良さ、豊富なマトリクス、人間工学に則った優れた設計。優れたメリットがあることは認めるが、残念ながらイン・ザ・ボックスでのミックスがクライアントから求められる現場においては、NUAGEのようなHUIミックスなどを考慮するべきだとの意見をいただいた。
発想の転換によりNUAGEの魅力は大きく広がる。Nuendo専用という意識を外して優れたHUIコントローラーとすると、また違った魅力が見えてくる。Pro Toolsをコントロールすることの出来るNuendoという柔軟性に富んだミキシングエンジンを持つコントローラー。そのような捉え方をすればPro Toolsユーザーにとってもメリットが大きい、新しいコントローラーとしてのNUAGE像が見えるのではないか。エンジニアがコントローラーとして求めるのは、ほとんどがフェーダーである。もちろん、プラグインのコントロールやセンドのアサインなど欲を言えば切りが無い。しかし、最も使用するのはどの機能なのかを考えればHUIでも対応ができるという発想に至るのではないだろうか。限られた予算を有効活用するための非常にシンプルな切り分けがここにはある。
06 THX pm3
室内音響に関してはTHX pm3の認証を得ている。従来の日本のTHX pm3スタジオにはインストールされていないシーリングチャンネルやLw,Rw等のAtmosに特徴的なスピーカーの配置に関しても、設計段階からTHX、Dolby、SONAによる詳細なディスカッションが行われており、最終的には3社にとっても妥協のないスピーカーレイアウトがstdio 0(ゼロ)では実現されている。最終的にはそれら全てのスピーカーを含んだモニター調整がTHXのスタッフにより実施されており、優秀な成績でTHX pm3の認証を得ている。特筆すべきは、ベースマネージメント無しで、全チャンネル20Hz〜20kHzの広帯域再生を可能とし、更にTHX pm3の承認を実現しているという点。基本的にはベースマネージメントの使用が前提となるTHX pm3規格をそれ無しで取得できるほど、室内音響的に低域の制御ができているということだ。音楽系のミキサーに敬遠されがちなベースマネージメントが無いということで、是非とも音楽ミックスでもこの部屋を活用してもらいたいとのことだ。筆者もこの部屋で行われた音楽用のDolby Atmosミックスを是非とも聴いてみたいところだ。
◎染谷氏とサラウンドテクノロジーの歩み
染谷 和孝 氏
有限会社 ビー・ブルー
サウンドデザイナー/ミキシングエンジニア
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年(株)ダイマジックのスタジオ設立に参加。2014年より有限会社 ビー・ブルーに所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2014年9月よりAES日本支部監事を担当。
染谷氏がサラウンドに触れたのは30年以上も前のこと。アナログハイビジョン時代に「銀河の魚」のサウンドデザインとサラウンドミックスを担当したときに遡る。それをきっかけにInterBEEの国際シンポジウムなどにも参加するようになる。そこで元NHK制作技術センター長の沢口氏との大きな出会いもあり、それが全てのスタートになったとのこと。
サラウンドには黎明期から関わりがあるが、一貫してその根底には「サウンドデザイン」という概念があり、その発展の礎となっている。「サウンドデザイン」との出会いは、ProSound誌に掲載されていたSkywalker Soundの記事だとのこと。当時はInterBEEにSkywalker Soundからエンジニアが参加しており、様々なきっかけから徐々に交流が始まり、Skywalker Soundへの訪問など研鑽を積み重ねてはいたが、なかなかサラウンドの部屋を作ることは出来なかった。
次の契機となったのは1999年にロスで行われたSurround 2000というイベント、ここではTHX pm3と出会うことになる。このイベントはまさにSONY PCL の改装を決定する時期に重なっていた、当初はステレオの部屋を作るという方針であったが、このイベントと前後してサラウンドの部屋を作る計画が進行、スタジオのコンセプトを詰めるために自費で2週間サンフランシスコに行き、THX社とSkywalker Soundを見学して回った。そこで体験したサウンドは「音の消え際が聞こえる」と表現されるほどの繊細さ。今まで聞こえなかった音が聞こえるという体験することとなる。
その当時はまだITU-Rなどを始めとする様々なサラウンド再生基準が取り上げられ、その優位性が語られている段階であったが、その中から明確なレギュレーションに守られたTHX pm3選択した。信頼性の高い音響特性を持ったスタジオを構築し、アジア初のTHX pm3スタジオとなった。その後も染谷氏はTHX pm3の認証を得た世界標準の音響特性を持ったスタジオを数多く創り上げている。
Dolby Atmos採用に踏み切った染谷氏のポリシーの中には「真のブルーオーシャンを目指さなければいけない」ということが有る。真のブルーオーシャンを構築するためには、クローズドに全てを秘密にしてはならないと考えているというのも非常に新鮮なコメントとして聞こえた。現代を生き抜くためにはこのスタジオで得た知識・情報を開示し、それを共有する仲間が増える事が最も大切な要素。新しいことを始める為の仲間探しが今まさに始まったところだとコメントを頂いている。もう一つ「マイノリティーからマジョリティーへ」という言葉も頂いた。このスタジオ、そしてDolby Atmosが共に羽ばたくためにはマジョリティーになることは大切なこと。マイノリティーのままではなく、普及も進んで行かなければ意味がなくなってしまう。次に続くスタジオ・エンジニアの存在はなくてはならないもの、エンジニアリングのテクニックに関しても同様に隠すのではなく伝えることで、業界全体が豊かになるのであれば、その方が重要な事だとの考えも伺えた。
インタビューを終えて感じるのは、明確なコンセプトのもと、限られた予算を必要な部分に十分にかけた染谷氏のこだわりと考えが非常にわかりやすくスタジオに存在していたこと。また、最新の機材ソリューションの結晶のようなシステムとなっているが、突飛な存在とはならずに違和感なくそのシステムへ入っていける間口の広さも感じる。Dolby Atmos対応だからといってステレオやモノラルの作業のことを切り捨てずに「ギアチェンジ」出来るというコンセプトがしっかりと息づいているように感じた。染谷氏のコンセプトを受け、東映株式会社に続き国内2例目となるDolby Atmosの室内音響を設計された株式会社ソナ、アジア初となるDolby Atmos ホームシステムを設計した株式会社レアルソニード、そして機材のバージョンアップ等様々なソリューション面でのバックアップを行ったヤマハ株式会社、各社の持つ技術が非常に高いレベルで結実している。今後このスタジオから創りだされる作品に、早く出会いたいと強く感じた取材であった。
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2014/06/06
JPPA DOLBY ATMOS勉強会レポート
JPPA(日本ポストプロダクション協会)オーディオ部会のDOLBY ATMOS勉強会が開催されました。30名の募集のセミナーに40名以上が参加と、業界全体のDOLBY ATMOSへの注目度の高さを感じさせるセッションでした。2日間にわたり、開催された今回のセミナーですが、初日は、DOLBY社での座学と実際に上映されている劇場での視聴。2日目は、国内唯一のDOLBY ATMOS対応のダビングステージである東映様へお伺いして実際の作業環境などを見学するという非常に濃い内容。残念ながら、初日しか参加ができませんでしたがその模様をレポートしたいと思います。
先ずは、座学。ここでは、DOBY ATMOSがどのようなものなのか?どのような設備により制作されるのかを学びました。その内容は、別の記事(//pro.miroc.co.jp/2013/07/02/3d-suround-dolby-atmos/)をご覧いただくとして、実際に構内での導入の際にガイドラインとして利用されている資料から、劇場、ダビングステージでのスピーカーのセッティングとモニタリング環境の構築方法を中心に解説がありました。
その制作概要を簡単にご説明すると、ATMOSには128chのオーディオトラックが用意されており、そのうち10chがミックスのベースとなるBedと呼ばれる従来の7.1chサラウンドトラックにTOPレイヤーの2chが加えられたもの。このBedのミックスは、今まで通りのサラウンドミックスで作るということになる。しかし、現時点ではDAW側にATMOS BED対応の9.1ch Pannerが無いため7.1chのサラウンドバスと2chのバスを組合せての制作になっているということだ。いち早くDAW側の対応がまたれる部分である。
ATMOSの特徴であるオブジェクトは残りの118chを対象としている。現時点では、Pro Tools ようにAAX pluginとして用意されているATMOS Pannerにオブジェクトの位置情報を書き込んでいくことになる。そして、そのモニタリングはATMOS PannerからRMUと呼ばれるレンダリングユニットに送られ、劇場、ダビングのスピーカーの台数に合わせて定位がレンダリングされ任意の出力から再生されることになる。ATMOS Panner自体は、Pro Toolsのセッション内にインサートされるが、そのトラックのオーディオデータ、出力には一切の影響を及ぼさない。あくまでも位置情報をオートメーションデータとして記録し、RMUを動作させるものである。
この説明は、先日弊社主催で行われたAVID Creative Summit 2014内で東映の畠山氏にご解説いただいている動画を公開しているので是非ともご参考いただきたい。(//pro.miroc.co.jp/2014/05/28/avid-creative-summit-201405/)
最後に国内でのDOLBY ATMOSの導入状況の紹介があった。本セミナー時点での国内上映館は6スクリーン。
・TOHOシネマズ ららぽーと船橋(開業2013年11月22日)
・イオンシネマ幕張新都心(開業2013年12月20日)
・TOHOシネマズくずはモール(開業2014年3月12日)
・イオンシネマ和歌山(開業2014年3月16日)
・TOHOシネマズ日本橋(開業2014年3月20日)
・シネマサンシャイン平和島(開業2014年4月25日)
また今後の決定しているスクリーンは以下の2スクリーン
・イオンシネマ名古屋茶屋(開業予定2014年6月27日)
・シネマサンシャイン下関(開業予定2014年7月)
ATMOS上映館を地図上でサーチできる映画館検索ページはこちら>>>
(http://www.dolby.com/jp/ja/consumer/content/movie/theater/find-a-cinema.html?ct=Dolby-Atmos)
世界的には5月22日時点で475スクリーンが稼働しており、北米ではすでに164スクリーンが 稼働中。ATMOS対応のスタジオも世界的に見ると69となっている。
そして、国内でもATMOSでの制作が決定した作品がついに決定!!2015年春公開予定の「THE NEXT GENERATION パトレイバー」がATMOSで制作されることになったということです。今から、公開が楽しみですね!!!
座学のあとは、実際の上映館での視聴。作品は話題の「アナと雪の女王」を鑑賞しました。全編がディズニーらしくミュージカル仕立てで物語が進行しますが、ATMOSシステムの特徴でもあるフルレンジ再生を行うサラウンドスピーカーは音圧レベルとしても従来の感覚を覆します。サイドまで回りこませた音楽のミックスは会場を包み込むようなライブ感を演出していたのが印象的。始まったばかりのATMOSミックスですので、実験的な部分も含まれていたかもしれません、しかし激しく頭上を音が飛び交うようなこともなく、セリフ、歌はセンターに定位して画面に集中させることを意識したと思われる非常に落ち着いたミックス。もちろん吹雪のシーンなど頭上からのサウンドが効果的に使用されていました。筆者は、ATMOSでの2つ目の作品でしたが、新しい、音での表現、再現ということを改めて強く感じます。今後の動向も(特に映画館以外での活用にも期待が膨らみますね)、これから公開の作品も全てが楽しみな最新サウンドシステム。皆様も是非映画館へ足を運んで体験下さい!
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2013/12/25
映画館へ行こう!!DOLBY ATMOS体験記
話題のDolby ATMOSを見てきました!!!レポートアップしましたので、是非とも御覧ください!!!
レポートはこちら>>>
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2013/11/23
Dolby ATMOS上映館が国内デビュー〜TOHOシネマズ ららぽーと船橋
[caption id="attachment_11376" align="alignright" width="300" caption="画像はイメージです"][/caption]
国内での導入が待たれていた次世代の3D音響システム「Dolby ATMOS」。遂に11/22TOHOシネマズ ららぽーと船橋似て上映が開始されました。天井に設置された2列のスピーカーアレイにより再現される3D立体音響は今までにない臨場感を提供します。すでに海外での導入は進み、作品数もかなりの制作が行われています。
この秋に改装された東映・東京撮影所内のダビングステージにも「Dolby ATMOS」システムが導入され、国内に制作環境と上映館が揃ったことになります。今後も導入が進むことが予想される3D音響システム、体験の価値があります!!!
執筆時点では、「パシフィック・リム」「スタートレック In To The Darkness」の2作品が上映中です。オススメです!!
Dolby ATMOSの解説記事はこちら>>>
TOHOシネマズ ららぽーと船橋はこちらから>>>
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2013/07/02
新世代3D サラウンドDOLBY ATMOS
盟主DOLBY の提唱する次世代フォーマット
最大64ch ディスクリート駆動
次代の3D Sound を担うDOLBY ATMOS
映画におけるサラウンドには非常に長い歴史を持っている、現在の5.1ch のシステムも既に20 年近い歴史を持つスタンダード。そして次のジェネレーションとして考えられているのが3D Sound システムである。
DOLBYDigital 規格で業界を牽引するDOLBY 社もATMOS と呼ばれる新規格を発表、実際に作品の制作、公開も海外では行われており、2012 年公開の「ホビット 思いがけない冒険」はその代表作と言える。全米を中心に世界中でATMOS 対応のスクリーンが登場し、早くも100 館を超える上映館が現状で稼働、さらには25 を超えるダビングステージがATMOS 対応へと生まれ変わっている。次代の3D Sound System の急先鋒となるATMOS についてその概要をご案内していきたい。
3D SOUND は高さの表現へ
3D と言えば映像であれば立体視、奥行きの表現となるが、既に音声におけるサラウンドについて平面方向の拡張は行われている。次のステップは縦方向、つまり高さを表現することにあり、さらなる高地場音響を提供しようというのが各社のターゲットとなっている。
その特徴は単純にTOP CH を追加するということではなく、部屋の中を自由自在に音を動かせるようなシステムの開発に焦点があてられており、前号でご紹介をしたAURO 3D とこのDOLBY ATMOS がその規格として具体的に運用され始めている状況だ。
高い対応力を備えたDOLBY ATMOS
まずはDOLBY ATMOS のフォーマットからご紹介したい。スクリーンバックには従来のDOLBY Digital と同様にLCR の3ch、サラウンドはスクリーンの直近からウォールSP の配置を行うというのが変更点、これにより全周においてスピーカーが配置されることとなり、さらに3D の表現となるため天井に2列のスピーカーを配置する。スピーカーの設置数は最大で64ch までコントロールが可能。劇場、スクリーンのサイズに応じて変更可能だが、これに関してはDOLBY 社のスピーカー・セッティング・ガイドラインが用意されている。
部屋の広さに応じて、設置される推奨スピーカー本数が決定され、その設置位置情報および能力がATMOS 用音声レンダリングユニット(RMU=Rendering Managiment Unit) に登録される。つまり、必ずしも64 本のスピーカーを用意しなければならないということではなく、あくまでも最大で64chという内容だ。
なお、スピーカーのマネージメントはRMU が担当し、入力はMADI が2系統合計128ch、出力はMADI1系統で64ch。そのコントロールはEthernet での接続となる。ATMOS ミックスにはBed(ベッド)と呼ばれる従来のチャンネルベースとスピーカーを自由に移動できるObject(オブジェクト)を使用することとなる。ベッドはこれまでのDOLBY SURROUND 7.1 に天井の2列をそれぞれ1ch とした9.1ch の構成。従来のアレータイプのチャンネルを意識した音場再現を目的とし、移動や定位感を必要としない音源に用いる。一方オブジェクトは、ATMOSPANNER プラグインで決定した3D 空間位置情報をMetadata として持った単独の音声となる。スピーカー間を自由に遷移できるため移動感や定位感を強調したい音源に用い、このMetadata を基にオブジェクトはRMU 内部でダビングステージの規模に見合うスピーカー配置を反映したレンダリングを行い、ベッドと合成されて出力されることとなる。なお、ATMOS で使用可能な同時発生音は128 音源となり、これらをベッドとオブジェクトで分け合って使用する。
[caption id="attachment_11379" align="alignright" width="300" caption="Pro Tools 用のATMOS Panner プラグイン。これがオブジェクト の位置情報を生成する"][/caption]
前述にもあったように、劇場のサイズに応じて、スピーカーの設置数は変化することとなる。ATMOS では部屋の空間のどの方向から音声を再生するか、ということをオブジェクトに情報として持たせて移動をさせているが、劇場、スクリーンの変化に対応する高い互換性への仕掛けがこの点にある。従来の7.1ch以上に細かくスムーズなパンニング時の音像移動がオブジェクトを利用することで実現でき、部屋の隅、角など、これまで音像を定位させることが難しかったゾーンに対してもオブジェクトならば定位させることが可能となるからだ。そのオブジェクトをコントロールするためのATMOS PANNER だが、現時点では、AVID Pro Tools用のプラグインとして提供されている。プラグインはオブジェクトの何チャンネルを操作しているのかといった情報を事前に設定し、Ethernet を経由してRMU へ位置情報を送り込む役割を担っている。Pro Tools 11 の情報にもDOLBY ATMOS 対応と表記がなされており、非常に親和性の高いシステムが今後登場することが予想される。
[caption id="attachment_11380" align="alignright" width="300" caption="DOLBY ATMOS のキーデバイスRMU のコントロール画面。左 上の点がアクティブなオブジェクトを表し、右下の3D がオブジェ クトの位置を表示"][/caption]
実際のダビング作業を整理していくと、現状ベッドのミックスは従来通りの手法で行う。オブジェクトのチャンネルに関してはダバーへ単独で送り出した上で、ATMOS PANNER プラグインをダバー上で用いて位置情報を指定するという使用方法が取られているとのこと。そして、ダバーで最終的にまとめられたものが2系統のMADI を通じてRMU へと送り出され、スピーカーの本数に応じたバランスで劇場内へ再生されるということになる。なお、ATMOS のミックスではアウトプットが最大64ch にも及ぶため、モニターのボリューム調整を従来のシステムで行うことができない。従って、モニターバランスのコントローラーはRMU が行うこととなるがこの部分に関してもAVID system5,AMS/NEVE 等のダビング用コンソールでリモート出来るように開発中というコメントが入っている。
ベースマネージメントへの対策
現状では、スピーカー本数分のアンプとベースマネージメントコントローラーが必要となる。ATMOS では、リアチャンネルもフルレンジ再生を推奨している(HPF を通す場合には、リアにもSW を設置)ため、今までのWallSpeaker ほどの調整は要らないとの話もあるが、可能性が増えれば増えるほど調整を追い込みたくなるもの。今後のシステムの実例には注意を払う必要があると思われる。もちろんフロントは従来と変わらずスクリーンバックの特性を取る必要があるため、調整が全く必要ないということにはならない。
映画における3D Surround の展望
[caption id="attachment_11381" align="alignright" width="300" caption="CP850 : 劇場用のATMOS 再生プロセッサー。メイ赤:既存のサラウンドスピーカー 青:ATMOSで追加となるサラウンドスピーカー ンのアウトプットは MADIで出力される。"][/caption]
ATMOS で制作された音声の上映館へのデリバリーは、DCP での配信システムを利用して問題なく行うことが出来るものとなっている。DCP にATMOS 専用データを記録することで、従来の5.1ch や7.1ch に加えATOMOSの128ch の音声データとオブジェクトの位置情報が配信されることになる。これによりシアターのフォーマットに左右されないデータの生成が可能だ。
上映スクリーンの現状
再生専用のデコーダーCP850 のデリバリーが開始され、着実にスクリーン数を増やしている。ATMOS 対応再生プロッセッサーが販売されたことで、劇場でのATMOS 導入が現実的なものとなる。AURO 3D とともに、次世代3D 音響の注目フォーマットであるATMOS。今後の展開と、上映館の増加状況など、その経過を注意深く見守る必要がある。残念ながら2013 年5 月時点では国内での上映館が存在しない状況ではあるが、アメリカを始め、中国、韓国、台湾、インド等のアジア諸国に執筆時点で上映スクリーンが100 以上導入され、制作された作品は40 作品を超えている。海外へ訪れた際には是非とも体験してきていただきたい次世代の音響技術である。
Headline
2021/08/20
Dolby が Atmos Music 制作ワークフローWEBサイトを開設
Dolby Atmos Music 制作者に向けた、ワークフローを紹介するWEBサイトが開設されました。
Dolby Atmos Music Creator's Summit と名付けられたこのページでは、Dolby Atmos Music のワークフローを紹介するビデオや、DAWをはじめとした Dolby Atmos ミックスに必要な制作ツールを紹介するフローチャート、そして、実際に Dolby Atmos Music を制作しているエンジニアの方々のインタビュー動画などをご覧いただけます。
そのほか、Dolby Atmos Music Festival や Dolby × Sports Online Experience などのイベントサイトへのリンク、制作に使用できる機材や Dolby Atmos 対応サービスリストなどへのアクセスも設置されています。
Apple Music や Amazon Music HD が対応したことで、今後大きな広がりを見せるであろう Dolby Atmos Music。その知見を、もう一歩深めることができる内容になっていますので、ご関心をお持ちの方はぜひご覧いただくことをおすすめいたします。
Dolby Atmos Music Creator's Summit WEB ページ
Dolby Atmos 制作ツールやシステム設計に関するお問い合わせは、ROCK ON PRO までお気軽にご連絡ください。
Event
2024/09/06
【9/27(金):Rock oN Umeda開催】RTW Presents “TouchControl 5 Meets ATMOS” Atmosミックスの第一人者がナビゲート!革新的コントローラーによるモニタリング
Dante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラー『RTW TouchControl 5』をフィーチャーしたセミナーイベントを弊社Rock oN Umedaにて開催いたします。
最大22.2chのモニターコントロールを実現する完全イマーシブ対応のスタンドアローンモニター・コントローラーである『RTW TouchControl 5』。測定器メーカーとして歴史を紡いできたRTWらしい高度なメータリング機能は、ミキシング環境に何をもたらすのか?このイベントでは、サウンドデザイナーの染谷和孝氏によるDolby Atmosミックスにおいて重要なモニタリングについてのトークに加え、梅田店に新たに誕生したUnlimited Studioの7.1.4ch環境にて、イマーシブミキシングに関してのスペシャルセッションも。新しくなったRock oN梅田店でのセミナー!是非とも奮ってご参加ください。
さらにさらに!セミナー参加者にはRock oN梅田店にてTouchControl5が10%OFFで購入できるクーポンコードをプレゼントいたします!
お申し込みはこちら
イベント概要
日時:2024年9月27日(金)
OPEN:16:30 START:17:00
場所:Rock oN Umeda 大阪府大阪市北区芝田 1 丁目 4-14 芝田町ビル 6F
ナビゲーター:染谷和孝 氏(サウンドデザイナー)
参加費:無料
参加特典:Rock oN 新梅田店 店頭にて、TouchControl 5 を10%OFFで購入できるクーポンコードをプレゼント!
主催:ビーテック株式会社
協力:Rock oN Umeda、ROCK ON PRO
RTW TouchControl 5
TouchControl 5はDante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラーです。
RTWが長年培ってきた放送クオリティのモニターコントローラーで、直観的に操作できる5″のタッチスクリーンとデスクトップの貴重なスペースを無駄にしないコンパクトサイズとなっています。もちろんRTWの誇るSPLを含む正確なメータリングとビルトインされたマイクによる環境設定も可能です。
・Dante® Audio over IPネットワークを使用したモニタリング
・SPL測定とトークバック用にマイクロフォンを搭載
・プレミアムPPM、トゥルーピーク、VUのメーター表示
RTW / TouchControl 5
¥ 654,500 (本体価格:¥ 595,000)
Rock oN eStoreでの購入はこちら!
ROCK ON PROでの見積もり依頼も
問い合わせフォームからどうぞ!
ナビゲーター:染谷和孝 氏
株式会社ソナ 制作技術部
サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。
お申し込みはこちら
Event
2024/08/25
【8/30(金)開催】RTW Presents “TouchControl 5 Meets ATMOS” Atmosミックスの第一人者がナビゲート!革新的コントローラーによるモニタリング
8/30(金)、Dante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラー『RTW TouchControl 5』をフィーチャーしたセミナーイベントを弊社LUSH HUBにて開催いたします。
このイベントでは、サウンドデザイナーの染谷和孝氏によるDolby Atmosミックスにおいて重要なモニタリングについてのトークセッションに加え、Dolby Atmos 7.1.4環境を備えた別室にてTouchControl 5を実際に操作できるハンズオン体験をご用意しています。さらに軽食やドリンクのご用意もいたしますので、クリエイター同士の交流も深まることでしょう。
さらにさらに!セミナー参加者にはRock oN渋谷店にてTouchControl5が10%OFFで購入できるクーポンコードをプレゼントいたします!
参加費は無料で、抽選で30名様限定となります。この貴重な学びと交流の場をぜひお楽しみください。
お申し込みはこちら
イベント概要
日時:2024年8月30日(金)
OPEN:16:30 START:17:00
場所:渋谷LUSH HUB 東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F
ナビゲーター:染谷和孝 氏(サウンドデザイナー)
参加費:無料
定員:完全予約 30名様限定
お申込み締め切り:2024年8月23日(金)24:00
抽選結果ご連絡日:2024年8月26日(月)
主催:ビーテック株式会社
協力:LUSH HUB、ROCK ON PRO
RTW TouchControl 5
TouchControl 5はDante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラーです。
RTWが長年培ってきた放送クオリティのモニターコントローラーで、直観的に操作できる5″のタッチスクリーンとデスクトップの貴重なスペースを無駄にしないコンパクトサイズとなっています。もちろんRTWの誇るSPLを含む正確なメータリングとビルトインされたマイクによる環境設定も可能です。
・Dante® Audio over IPネットワークを使用したモニタリング
・SPL測定とトークバック用にマイクロフォンを搭載
・プレミアムPPM、トゥルーピーク、VUのメーター表示
ナビゲーター:染谷和孝 氏
株式会社ソナ 制作技術部
サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。
お申し込みはこちら
Event
2023/08/03
【本イベントは終了しました】360RAもATMOSも360VMEで実現!イマーシブMixRevolution!
先日、いよいよ一般向けの測定申し込みが開始されたSONY 360 Virtual Mixing Environment(通称360VME)。個々人のプロファイルを測定することで、HRTF + スピーカーやその部屋の音響特性を含め、そっくりそのままヘッドフォンの中で再現することが可能です。イマーシブ制作に携わっている方、これから制作に挑戦してみたいという方の中には、ご興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回、そんな皆さまのために、360VMEの測定体験会の場をご用意いたしました。体験会終了後には、場所を移し、あらためて360VMEの解説セミナー、そしてイマーシブ制作の未来についてみんなで語り合える"今シブ懇親会"を開催いたします。堅苦しい内容ではございませんので、ぜひお気軽にご参加ください!
受付は終了しました
◎360RAもATMOSも360VMEで実現!イマーシブMixRevolution!
〜MIL Studio 4π音響を再現する360VME ヘッドフォンでイマーシブMIXに革命を〜
測定体験会にお申込みいただいた先着12名様(注1)を弊社MIL Studioにお招きし、360VMEの測定および制作環境を想定した試聴セットをご準備。VMEの実力、その精度、ヘッドフォンミキシングの可能性を実体験していただきます。
その後、渋谷LUSH HUBへと会場を移し、Crystal Soundエンジニアmurozo氏をゲストとしてお迎えして、あらためて360VMEの概要や技術的背景、そして、測定会場として世界三拠点のうちの一つに選ばれたMIL Studioをご紹介。
murozo氏には、実際に360VMEを使用して行われた作業の実体験を元に、VMEにより広がる可能性、ヘッドフォンミキシングでどこまでできる?といった部分についてお話しいただきます。ここでは「360VMEで何ができるの?」「360VMEの持つ可能性は?」「360VMEの実力は?」といった疑問について、徹底的に解説いたします。
さらにセミナー終了後には、今回ご体験いただいた皆さまと、現在イマーシブ制作に携わっているmurozo氏、そして今後イマーシブ制作を検討されている皆さまを含め、全員で360VMEの有効性、可能性をアツく語り合える"今シブ懇親会"を開催いたします!
体験してみなければ分からない360VMEの実力を、この機会にぜひ存分にお楽しみください!
(注1)お申し込みの先着順12名様までとさせていただきます。あらかじめご了承ください。
◎こんな方におすすめ:
360 Reality Audio、Dolby Atmosコンテンツの制作に興味がある方
イマーシブミックスに興味があるが、制作環境の構築にお悩みの方
(例:スピーカーの選定で悩んでいる、設置環境が用意できない…etc)
汎用プロファイルでのバイノーラル再生に不満のある方
MIL Studioの音響環境でミキシングを行なってみたい方
イベント概要
◎体験トライアルセミナー:『360RAもATMOSも360VMEで実現!イマーシブMixRevolution!』
〜MIL Studio 4π音響を再現する360VME ヘッドフォンでイマーシブMIXに革命を〜
◎セミナーゲスト講師:murozo氏(Crystal Sound レコーディングエンジニア)
◎日時:2023年8月22日(火)
・12:00 ~ 16:00 : 360VME 測定体験会 @MIL Studio
- 所要時間は1名につき約20分。1時間あたり3名、最大12名の方の実施を想定しています。体験終了後はセミナー開始まで自由時間となりますが、遅くとも5分前までには集合をお願いします。
・17:00 ~ 18:00 : 360VME セミナー @LUSH HUB
・18:00 ~ 20:00 : 今シブ懇親会 @LUSH HUB
※上記は予定時間です。祐天寺駅から渋谷駅までのご移動につきましては恐れ入りますが公共交通機関をご利用ください。
◎開催場所:MIL Studio 、LUSH HUB
・360VME測定体験会 : MIL Studio
- 祐天寺駅より徒歩3分 ※住所は体験会ご参加の方にのみメールでご案内いたします。
・360VMEセミナー&今シブ懇親会 : LUSH HUB
- 渋谷駅より徒歩9分 東京都渋谷区神南 1-8-18 クオリア神南フラッツ B1F (Rock oN Company 地下)
◎お申し込み方法:下記ボタンより申込フォームをご送信ください
受付は終了しました
※フォームを送信後、自動返信による内容確認のメールが届きます。その後、順次ご予約確定のご案内を別途メールにて差し上げます。メールが届かない場合、迷惑メールフォルダの確認をお願いいたします。
◎お申し込み期限について:
・セミナーおよび懇親会の申込期限は特に定めませんが、MIL Studioでの測定体験会は先着順で12名様までとさせていただきます。
・想定を上回るお申し込みをいただいた場合、早めに受付を終了する場合もございますので、あらかじめご了承ください。
講師紹介
murozo
オーディオエンジニア
Crystal Soundを拠点に活動する気鋭のオーディオエンジニア。レコーディング・ミックス・マスタリングをはじめ、Dolby Atmos・360Reality Audioによるイマーシブ作品にも携わる。山下智久、MAZZEL、1MILL、LEX、Bonbero、ShowyVICTORなどHIPHOP、R&Bからポップスまで国内外問わず幅広く手掛けている。
9月にも360VME体験会のみを実施予定です。8月の日程ではご参加が難しいという方は、ぜひこちらの日程もご検討ください。1組3名様まで。2日間で計12組限定です!詳細はこちら、もしくはページ下部のバナーをクリックしてご確認ください。
本イベントに関するお問い合わせは、下記コンタクトフォームより送信ください。
8月のご参加が難しいという方は、ぜひ9月の体験会もご検討ください。↓
https://pro.miroc.co.jp/2023/08/03/360vme-event2/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sony_360-vme_report/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mdr-mv1-vme-release/
https://pro.miroc.co.jp/works/milstudio-system-proceed2022/
https://pro.miroc.co.jp/works/mil-studio-tech-proceed2022/
NEWS
2022/04/01
Dolby Personalized HRTF App (iOS)ベータ版が公開中
Dolby Personalized HRTF ベータ版が公開中
昨年、Apple Musicが空間オーディオの再生に対応し、大きな話題を集めました。現在Amazon Music HDやTidalといった別のサービスでもロスレスやハイレゾ、空間オーディオの再生に対応し、それらはストリーミングサービスにおける付加価値として、一般の音楽リスナー達にも徐々に受け入れられはじめています。
各フォーマット、一長一短ありますが、中でもバイノーラル再生時の"個人化HRTF"への対応は重要なポイントの一つと言えるでしょう。なぜなら、マルチチャンネルからバイノーラルへのレンダリング時に、個人最適化されたHRTF関数を使うことでより正確な立体音像定位を得られるようになるからです。
例えば過去弊社記事でもご紹介させていただいている通り、360 Reality Audioでは、対応製品とスマートフォンアプリを活用することで、個人最適化された音像定位で音楽を楽しむことができるのが特徴で、同様のサービスはCreative TechnologyのSuper X-fiやEmbodyのImmerseなどが挙げられます。
そんな中、これまでそのような動向が見られなかったDolbyより個人化HRTF作成アプリ「PHRTF Creator」のベータ版が公開されました。これは現段階ではリスナー向けではなく、主に音楽、映画、TV、ゲーム業界でDolby Atmos制作に携わっているプロ向けの機能となっているようです。
Dolby Professionalのページへ:
https://professional.dolby.com/phrtf/
ベータ版試用手順
・必要事項:
- iOS 13以降を搭載したFace IDに対応したiPhone
- Dolby Atmos Renderer v3.7.1 ( こちらからダウンロード可能です。※1)
- 試聴可能なドルビーアトモスコンテンツ
※1:起動にはDolby Atmos Production Suiteのライセンスが必要です。Dolby Atmos Renderer ソフトウェアのダウンロードページでサインアップすると、90 日間の トライアルライセンスをリクエストすることができるようになります。iLokアカウントに認証ライセンスをデポジットしてもらうためには、iLokのログイン情報が必要となりますのでご注意ください。
・ベータ版のインストール方法
1.テストに使用するiOSデバイスにTestFlightをインストールします。
2.iOSデバイスから次のリンクをクリックします。:https://testflight.apple.com/join/7lxusSow
3.「Accept」→「Install」の順にタップします。
4.「PHRTF Creator」アプリを開き、指示に従って操作してください。
5.キャプチャが完了すると、メールとiOSのプッシュ通知が届きます。
・PHRTFのダウンロード
1.PHRTF作成成功の通知を受け取った後、PCから phrtf.dolby.com/renderer にアクセスし、PHRTF Creator Appで使用したものと同じ認証情報でログインしてください。
2.PHRTFをダウンロードします。このファイルは、Creatorアプリで入力した姓名の.personlized_headphoneファイルです。ブラウザからデフォルトのダウンロード場所にダウンロードされます。PHRTF CreatorアプリのLabelフィールドを使用してダウンロードを区別することができますので、任意の時点で追加のキャプチャを作成することができます。
3.ファイルのダウンロードが完了したら、ブラウザウィンドウを閉じます。
・PHRTFを適用する
1.personlized_headphoneファイルをデフォルトのダウンロード先からハードディスク上の以下のフォルダにドラッグ&ドロップしてください。
- macOS:/Users//Library/Application Support/Dolby/Dolby Atmos Renderer/Binaural Configurations
- Windows:ProgramData\Dolby\Dolby Atmos Renderer\Binaural Configurations
2.Dolby Atmos Rendererを起動し、PreferencesのHeadphoneタブで"Headphone processing"が"ON"になっていること、"Render mode"が"Binaural"に設定されていることを確認してください。
3.ヘッドフォンに正しくルーティングするために、PreferencesのDriverタブで"Headphone Only mode"を有効にすることを推奨します。
4.Rendererの右上に"Binaural configurations"というドロップダウンが表示されるようになります。このドロップダウンより、先ほど作成したPHRTFに変更します。
5.ドロップダウンの横にある情報アイコンの上にカーソルを置くと、PHRTFの情報を見ることができます。
6.作成したPHRTFで、アトモスコンテンツをお楽しみください!
Dolby Atmos Rendererをお使いの方は是非お試しください!
Dolby Atmos 制作に関するお問い合わせは下記コンタクトフォームよりお寄せください。
Event
2018/11/07
Inter BEE 2018 出展情報 ~ Pro Tools、Dolby、Dante、Share Strage、AoIP、次代を担うテクノロジーを体験!~
歴史と実績に裏づけされた、日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展として、コンテンツビジネスにかかわる最新のイノベーションが国内外から一堂に会する国際展示会であるInter BEE。ROCK ON PROはこの国内最大級の放送機器展示会Inter BEE 2018に今年も出展いたします。ホール6 #6213 Avid パートナーブースではDolby Atmos+Danteという最新ソリューションとPro Toolsの連携を体験いただけるシステムや、Avid Nexisがポストプロダクションにもららす恩恵を実際にPro Toolsと接続した形でご体験いただける展示など、最新ソリューションをハンズオンで展示するほか、関連するセミナーを実施いたします。また、ホール2 #2115ではオーディオ/ビデオ IP 伝送の最新規格であるSMPTE ST-2110について、詳しくお伝えするセミナーを実施いたします。
AVIDブース:HALL 6 #6213
ROCK ON PROは、ホール6 #6213 Avid パートナーブースへ出展いたします。ブース内では最新のソリューションとPro Toolsの連携を、実際にPro Toolsシステムと接続した状態でハンズオンでお試しいただける形で展示を行います。「AUDIO POST」コーナーではAvid Nexis + Pro Tools | Ultimateというシステムでポストプロダクションにおけるシェア・サーバーの活用を、「Pro Mixing」コーナーではDolby Atmosの最新Version.3によるミキシング環境をAoIPであるDanteを使いPro Tools | Ultimate + Pro Tools | MTRXというシステムでの動作を、それぞれ実際に触れていただける展示を展開します。さらに、展示内容をより深く理解いただくためのROCK ON PRO Product Specialistらによるセミナーを毎日実施。最新のワークフローを実現するAvidソリューションを体験いただけます。
セミナー情報
◎Pro Tools とFlux:: Spat Revolution によるイマーシブ・3Dオーディオ制作の最新ソリューション 〜 創業開発者 ゲイル・マルティネ スペシャル・デモンストレーション〜
Dolby Atmos、Ambisonics、22.2ch など主要フォーマットに全て対応し、イマーシブ・オーディオ・ツールの決定版として導入が進むSpat Revolution。ProTools 環境でのフロー、今後の進化をFlux:: 創業者である ゲイル・マルティネ氏にご紹介いただきます。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 メインステージ
時間:各日 15:20 〜 15:40
講師:Flux:: Founder, CEO, Head Software Engineering ゲイル・マルティネ 氏
株式会社メディア・インテグレーション 山口 哲
◎イマーシブ・3Dオーディオ制作のためのFlux:: Spat Revolutionの活用
〜 効率的で自由度の高い立体音響制作〜
ルーティング、トランスコードなど自由度も高く、効率的かつ創造性に優れたフロー。Dolby Atmos、Ambisonics、22.2ch などに対応したイマーシブ・オーディオ・ツールの決定版となるSpat Revolution を今後の開発予定とともにご紹介します。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ
時間:各日 12:00 〜 12:20
講師:株式会社メディア・インテグレーション MI事業部 山口 哲
◎Pro Toolsに最適化されたAvid NEXISの活用
〜ネットワークストレージを活用したAudio Productionワークフロー〜
オーディオポストプロダクションでの作業に大きな共有ストレージ容量は必要がないと思われがちですが、効果音の作成やナレーション、BGMなど、気づいてみればミキシング作業においては何人もの人との協調作業が必須となります。データコピー等の雑務を減らし、そのフローをスムーズに効率良くすることができるツールの1つが共有ストレージです。Avid NEXISストレージを中心とした、オーディオワークフローの効率化についてご紹介いたします。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ
時間:各日 13:40 〜 14:00
講師:ROCK ON PRO 桜井宏樹 / 丹治信子
◎Pro Toolsで制作するDolby Atmosプロダクション
〜毎日放送での「音舞台」を題材とした事例を中心にワークフローご紹介〜
国内でも制作が盛り上がりはじめたDolby Atmos、株式会社毎日放送の制作する「音舞台」でもDolby Atmosフォーマットへ制作が行われた。今年の「音舞台」は東大寺での開催、その際に収録された音声をImmersiveに展開。将来の配信などに備えたテストケースとして、制作が行われている。その素材を題材にDolby Atmosのワークフローの最新バージョンとなるV3、RMUのMac対応など最新情報を盛り込んでお届けします。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ
時間:各日 14:40 〜 15:00
講師:ROCK ON PRO Product Specialist 前田洋介
ハンズオン展示情報
◎オーディオ・ポスト "AVID NEXISによる働き方改革、作業の効率を徹底重視するシステムの現在"
まだまだ一般的とは言えないAudio Productionにおけるデータサーバーの活用。Avid NEXIS シリーズが実現するデータ共有による効率的なワークフローを体感いただけるシステムアップ。Pro Tools、Media Composerとのオーケストレーションにより、具体的にどれくらいの作業効率の向上が実現できるのか?実稼働するシステムをハンズオンで、そのレスポンス、具体的なワークフローをご確認いただけます。
◎プロミキシング "AoIPを活用した最新のAudio Mixing環境でDolby Atmosを実現"
Immersive Audioとして確固たる地位を築くDolby Atmosの最新Version.3によるMixing環境をAoIPであるDanteを使い構築。AVIDの最新ハードウェアMTRXによる柔軟かつ大規模なシステムの実例を展開します。併せてミキシングに欠かせないPlugin各種、そして初登場となるVideo Slave4をハンズオンで展示します。最新のシステムアップをご確認ください。
◎イマーシブ・オーディオ "イマーシブ・オーディオ・ツールの最先端を体験"
イマーシブ・オーディオ・ツールの最先端、FLUX:: Spat Revolution、Nugen Audio Halo Upmixを中心にポスト・プロダクションの効率性と音質の向上を提供するソリューション、ツールをハンズオン、よりリアルにワークフローの向上を体感いただけます。
Media Integrationブース:HALL 2 #2115
HALL 2 #2115 Media Integrationブースでは、これからのオーディオ/ビデオ伝送を担うであろう重要なテクノロジーであるSMPTE ST-2110を基礎から深く知ることが出来るセミナーを行います。昨年のIBCのタイミングで策定され、ビデオ/オーディオ、同期信号、コントロール信号を1本のEthernetケーブルによってパケット伝送することが可能なこの規格。従来のオーディオ伝送との違い、既存システムとの置き換え/相互運用の可能性など、ナレッジを一気にブラッシュアップする機会を提供します。
>>(株)メディア・インテグレーション MI事業部のWebサイトはこちら
セミナー情報
◎ProceedMagazine連動セミナー!! 次世代の伝送規格SMPTE ST-2110徹底解説!!
〜AES67を内包するVoIP規格ST-2110。音声映像の統合されたNetworkの全貌〜
IBC2017でついにその姿を表したSMPTE ST-2110。汎用のTCP/IPを利用し、すでに十分に発達したITインフラとの一体化を見せ始めている。IT業界では「最大かつ最後の大物」として大きな注目を集めている分野の真打ちとも言えるこの規格。すでに十分な広がりを見せるAES67がこの規格内でどの様な広がりを見せるのか、その概要を解説する。
場所:HALL 2 #2115 Media Integrationブース内 セミナー・ステージ
時間:11/14(水) 16:00
11/15(木) 16:00
11/16(金) 12:00
講師:ROCK ON PRO Product Specialist 前田洋介
Event
2025/06/13
7/11(金) Avid Creative Summit 2025 開催情報&申込開始!
~クリエイティブ制作のためのリアルノウハウイベント。~
日進月歩の進化を遂げているクリエイティブの制作、そこには常にAvidのソリューションの存在があります。クリエイターにとって欠かすことのできないAvidソリューションの現在地、そして未来を解き明かすAvid Creative Summit。2025年はメディアエンタープライズの更なる発展につながるAI & クラウドソリューション、クリエイティブワークで世界中を繋げるAoIPといったテクニカルな話題はもちろん、サウンド制作のためのPro Tools最新情報、そしてその世界を拡げるiZotopeのトピックについてはイマーシブミックスの手法を染谷和孝氏(SONA)が解説、また、吉田保氏(Mixer’s Lab)・モリシー氏(Awesome City Club)のセッションでは実際のレコーディングワークから生まれるミックスノウハウの数々をご紹介します。リアルな現場から生まれる情報を皆さんと共有する一期一会のこの機会、ぜひご参加ください!
■Avid Creative Summit 2025
開催日時:2025年7月11日(金) 開場12:30 、セミナー13:00~17:45、懇親会18:00~19:00 終了予定
東京会場:渋谷LUSH HUB
参加費用:無料
定員:各回50名
*本イベントについて後日動画配信などはございませんので、あらかじめご了承ください。
お申し込み方法:下記ボタンより申込フォームを送信ください
ご好評につき、各回定員に達したため、受付を終了いたしました。
たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
ご来場者様プレゼント!大抽選会開催!
セミナーセッション終了後に懇親会、また、2025年の制作シーンを彩る注目の製品を用意したご来場者様プレゼント大抽選会を開催します!これまでも数々のドラマを生んできたAvid Creative Summit大抽選会、今年はどなたが幸運を引き当てるのか、参加しなければ始まりません!プレゼント賞品の全貌は当日イベント内にて発表です!最後のセッションまで見逃せないAvid Creative Summit 2025にご期待ください!
◎タイムスケジュールのご案内
◎セミナーのご案内
◎Session1「What's New Pro Tools 〜Pro Tools 2025.6で生み出す、新しいワークフロー〜 」
7月11日(金) 13:00〜13:45
2025年最初のリリースとなるVer2025.6がついに登場!満を持して登場するこのVerではポストプロダクション、音楽制作のワークフローを新たなレベルへ引き上げる新機能が搭載されています。本セミナーではお馴染みのAvidのDaniel Lovell氏をお迎えし、Pro Tools 2025.6を徹底解説!新型Macへの対応状況など気になる情報も?!音楽制作ワークフロー解説でバウンス清水も登場!
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology
APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
清水 修平
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
Sales Engineer
大手レコーディングスタジオでの現場経験から、ヴィンテージ機器の本物の音を知る男。寝ながらでもパンチイン・アウトを行うテクニック、その絶妙なクロスフェードでどんな波形も繋ぐその姿はさながら手術を行うドクターのよう。ソフトなキャラクターとは裏腹に、サウンドに対しての感性とPro Toolsのオペレートテクニックはメジャークラス。Sales Engineerとして『良い音』を目指す全ての方、現場の皆様の役に立つべく日々研鑽を積み重ねている。
◎Session2「iZotope × 染谷和孝 最新EquinoxとRXを活用したイマーシブミックス手法 」
7月11日(金) 14:00〜14:45
今年4月にリリースされたiZotopeフラッグシップリバーブEquinoxとRX 11 Advancedを活用したポストプロダクションの最前線に迫ります。講師に染谷和孝氏をお迎えし、イマーシブ対応のアンマスクリバーブとRXによる最新アプローチをご紹介いたします。
講師:染谷 和孝氏
株式会社 ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
SONA https://www.sona.co.jp/
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。
◎Session3「Avid AI & クラウド・ソリューションで切り拓くメディア・エンタープライズの未来」
7月11日(金) 15:00〜15:45
本セミナーでは、NAB 2025でアナウンスされたAvidの最新AI & クラウド関連ソリューションを紹介。Pro ToolsやMedia Composer等といった制作ツールでのクリエイティビティーを促進させるAI関連機能の特徴と開発コンセプトを詳しく解説、さらに、AWS対応もアナウンスされたAvidクラウド・ソリューションによる効率的で生産性の高いリモート・プロダクション環境の実際も紹介します。
講師:粟谷 充 氏
Avid Technology
ソリューションデザイン・アンド・コンサルティング マネージャー
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオDAWのカスタマーサポートとして経歴をスタート。さらに、ビデオ製品のカスタマーサポートを経て、報道システムの提案、設計、構築にプロジェクトマネージャーとして携わる。その後、OTTシステム向けクラウドサービス提案を経験し、現在は多岐にわたる知識と経験を活かして、クラウド、仮想化、IP系製品を提案する、Avidのソリューションデザイン・アンド・コンサルティング マネージャーとして活躍しています。
◎Session4「エンジニア吉田保氏に聞く!ミュージシャン目線でのミックステクニック」
7月11日(金) 16:00〜16:45
現代のシティポップを代表するAwesome City Clubのギタリストであるモリシー氏。バンドとしての活動と並行してアレンジなどDAWを使用した制作も数多く手がけています。そしてシティポップといえば、数々の名曲をミックスしてきたトップエンジニア・吉田保氏の存在なくしては語れません。今回はこのシティポップというキーワードを携えた両名にご登壇いただき、ミュージシャンの目線からトップエンジニア吉田保氏に聞きたかった質問をどんどん投げかけてしまおう!というセッション。エンジニアのみならず、DAWを使うすべてのユーザー必聴となること間違いなしです!
講師:吉田 保氏
株式会社ミキサーズラボ エンジニア
日本レコーディングエンジニア協会(JAREC)理事長
Mixer’s Lab:https://www.mixerslab.com/
1968年東芝EMI入社。以降RVC、CBS/SONY 六本木スタジオを経て1989年 (株)サウンド・マジック・コーポレーション設立。1999年日本ミキサー協会設立当初より副理事長就任。現在、特定非営利活動法人日本レコーディングエンジニア協会理事長。
<主な作品>
山下 達郎、竹内 まりや、稲垣 潤一、大瀧 詠一、吉田 美奈子、浜田 省吾、ティナ、スクエアー、松田 聖子、Kinki Kids、アトランティックスター、RAG FAIR、キンモクセイ等多数。近年では、ソニー・ミュージックダイレクトより「吉田保リマスタリングシリーズ」がリリースされ、話題となった。
講師:モリシー 氏
Awesome City Club
Awesome City Club:https://www.awesomecityclub.com/
2015年にメジャーデビュー。2021年には映画「花束みたいな恋をした」に出演し、インスパイアソング「勿忘」をリリースすると再生回数は11億回を突破。同年末には、第63回日本レコード大賞にて「優秀作品賞」を受賞し、第72回NHK紅白歌合戦への初出場を果たした。Awesome City Clubの活動のみならず、imaseなど他アーティストのライブやレコーディングへの参加、またアレンジャーとしても多方面で活動している。コーヒー好きが高じて、2020年より生まれ育った永福町で「MORISHIMA COFFEE STAND」をスタート。現在は下高井戸にて本業の傍ら店主として店に立っている。
前田 洋介
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
シニア・テクノロジー・オフィサー
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
◎Session5「世界とつながる!Dante Connect & 使いこなしのキーテクノロジー Dante Domain Maneger徹底解説」
7月11日(金) 17:00〜17:45
世界中どことでもDanteのリアルタイム伝送を実現するDante Connectおよび、ST-2110、AES67との相互運用の必須テクノロジー、そしてレイテンシーの壁を超えるDante Domain Maneger。これを活用すればPro ToolsシステムもMTRXを介して世界中と接続が!その技術を徹底解説いたします!
講師:高見沢 雄一郎 氏
Audinate
シニアテクニカルセールスエンジニア
NEC/Sony/Dolbyにて、MPEG AACの符号化方式提案と低演算量実装、液晶テレビ開発、技術部門統括や次世代地デジ標準化など、一貫して音響・映像信号処理とその配信技術に従事。2024年1月より現職。
講師:前田 洋介
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
シニア・テクノロジー・オフィサー
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
募集要項
■Avid Creative Summit 2025
開催日時:2025年7月11日(金)
・開場 12:30
・セミナー(計5セッション) 13:00 〜 17:45
・懇親会 18:00 〜 19:00
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
参加費用:無料
定員:各回50名
お申し込み方法:下記ボタンより申込フォームを送信ください
ご好評につき、各回定員に達したため、受付を終了いたしました。
たくさんのご応募、誠にありがとうございました。
アクセス
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
【ご注意事項】
※本イベントについて後日動画配信などはございませんので、あらかじめご了承ください。
※会場座席数には限りがございます。原則、当日先着順でのご案内とさせていただきます。誠に恐れ入りますが座席の確保はできませんのであらかじめご了承ください。
※セミナーの内容は予告なく変更となる場合がございます。
※著作権保護の為、写真撮影および録音は差し控えていただきますようお願いいたします。
※当日は、ご来場者様向けの駐車場の用意はございません。公共交通機関でのご来場、もしくは周辺のコインパーキングをご利用下さい。
Review
2025/01/30
Vienna Synchron Stage / 最先端を超えた、伝統と現代テクノロジーの融合。
シネマサウンドがまさに生み出される現場、スコアリングステージとして世界でも屈指の規模とクオリティを誇るVienna Synchron Stage。音楽が生活の一部、文化ともなり作品やプロダクトが育まれているオーストリア・ウィーンの地において、どのような環境が整えられているのだろうか。併せてお届けする、Vienna Synchron StageのエンジニアであるBernd Mazagg 氏、また今回の訪問をアテンドしていただいたLEWITT社 CEOのRoman Perchon 氏のインタビューを通じてみると、ウィーンが持つクリエイティブに対するアティチュードや空気が感じられてくる。
(Text by 伊部友博(MiM Media))
伝統と最先端が折り重なる瞬間
「美しく青きドナウ」、19世紀のウィーンで活躍したヨハン・シュトラウス2世が書き残したワルツは、今でもオーストリア国民の琴線に触れるメロディで深く愛されているという。そのドナウ川が東西に横切り、かつてバルト海とイタリアを結んだ街道との交点という要衝にウィーンは位置している。ご存知の通り、オーストリア=ハンガリー帝国の首都であり音楽の都として栄え、20世紀の初頭にはすでに200万人の人口を抱える世界屈指の都市となっていた。
現在も同等の人口を抱え、23の行政区で構成されるウィーン市街は地下鉄と路面電車がくまなく走りながらも、シュテファン大聖堂などの伝統的な建造物が数多く残され、いまもその街並みとともにある。ヨーロッパの都市はいずれもそうだが、市街地を見回すとまるで中世にタイムスリップしたような感覚とそれに折り重なる現代のテクノロジーが交錯する、一種の浮遊感のような不思議さが唯一無二の魅力ではないだろうか。
このような歴史と伝統をいまに活かしていく文化は、音楽の都ウィーンにおける音響の分野についても同様である。今回訪問したVienna Synchron Stageは、歴史的なランドマークとなる建造物として保護されていた「Synchron halle」を受け継いだ施設だが、最新鋭の設備を整えたまさしく「いま」の映画音楽を支えるスコアリングステージとなっている。
世界的タイトルを支えるステージ
📷Vienna Synchron Stage / STAGE A
オーケストラとシンセで壮大な世界観を作り出し、数多くの映画音楽をリリースしてきたハンス・ジマー。第一人者と言って過言ではないハンス・ジマーもこのVienna Synchron Stageのクライアントである。公式なオープン直後には、ロン・ハワード(「ダ・ヴィンチ・コード」、「アポロ13」など)の「インフェルノ」、ピーター・モーガン(「クイーン」など)のNetflix作品「ザ・クラウン」がこのSynchron Stageでレコーディングされている。スタート段階から世界的なタイトルで使用されることからも、ステージが持つその実力は折り紙つきで制作サイドの信頼と期待がうかがいとれるだろう。STAGE Aのクラシカルな見た目とは裏腹に、そのファシリティが最新タイトルをしっかり支えることができることの証左と言えるのではないだろうか。
ハウス・イン・ハウス構造
📷施設外観、竣工当時より特殊なハウス・イン・ハウス構造を採っている。
このVienna Synchron Stageはその源流を辿ると、戦前1939年の”Synchron halle”に遡る。戦争という暗い影の中での誕生となったわけだが、国の威信がかけられた建造物だけあって、その建設当初から画期的な構造を持っていた。外部からノイズをできる限り防ぎたいのは今も昔も同じであり、ここでは竣工当時の特別な設計基礎で建物を分離し、ホールへの空気の流入までも遮断するハウス・イン・ハウス構造が用いられている。つまり、レコーディングにまつわる施設が建物の中にさらに建てられている格好となり、録音で使用されるスペースはオフィスなどと完全に分離されている構造だ。壁と壁の間は最大で10フィートの空間が設けられているそうで、これだけの広大なスペースでありながら遮音に対する建物自体のまさしく基礎体力が違う。
📷竣工当時のVienna Synchron Stage / STAGE A
このノイズに対するケアは現在の空調にも及んでいる。通常であれば換気は煙突効果に伴ってスペースの上方に向けて流れていくが、ノイズの原因ともなりうるために逆転の発想で天井から空気をゆっくり押し流して排気しているそうだ。暖房・換気・空調を担う統合システムが地下に設けられ、STAGE Aほかの各部屋や楽器保管室とつながっており、温度・湿度を一定に保つだけでなく無騒音で稼働する。このシステムは非常に大きな体積の空気を処理しており、すべての空気が1時間に2-3回入れ替わるほどの能力持っているとのこと。この空調システムのおかげでコロナ禍においても営業を続けることができたほどだそうだ。
歴史の中に息づく最新ファシリティ
そして、この”Synchron halle”は戦後もスコアリングステージとして稼働しながら、歴史的建造物の認定を受け、オーストリア放送協会(ORF)のもとで運営されていたのだが、時を経た2013年にVienna Symphonic Library GmbHが施設を購入し改修計画がスタートする。2015年の公式オープンに至るまで2年の歳月をかけて行われた改修は、建物自体の基礎体力は活かしながらもゼロベースで新設されていったそうだ。
📷Vienna Synchron Stage / CONTROL A
まず、Synchron Stageの中枢とも言えるのがCONTROL Aである。STAGE Aの最奥に窓が見えるのがわかるだろうか、中空2Fに設けられたこの窓の向こうがCONTROL Aとなっており、そこからはSTAGE Aの全体が見渡せる。後方のゲストエリアも含めると115平米もの広さを持ち、近代的ながらも木材をふんだんに使った室内には最大で25名ほどが収容できるそうで、設計段階から大規模なプロジェクトをあらかじめ想定していたこともうかがいとれる。コントロールルームの上部には音響調整用の反射板や吸音板が張り巡らされているが、これはこの部屋のために測定を行い製作されたワンオフのもの。デザインにも配慮されており存在感を感じさせないのだが、実際にはこの部屋がより大きな部屋に感じられるような効果を生み出しているという。
メインコンソールのSSL Duality 96chは扇形に据えられ、その上には500シリーズのNeve 88RLB、BAE 312A、AEA RPQ500、Meris 440がずらりと並べられている。スピーカーはラージにADAM S6Xがサラウンドで設置されるほか、ミッドフィールドにADAM S3H、ハイトにADAM S2V、LFEにADAM Sub15を用意、最大で9.1ch(Auro3D)のセットアップとなる。このコントロールルームと各ステージ・ブースとの回線となるレコーディング・チェーンはすべてアナログで、サウンドエンジニアが必要とする「色」を残した形でミックスが行えるように設計されているそうだ。これ以降はDanteで接続されており、クライアントの要望次第では96kHzのみならず192kHzのサンプリングレートで制作が進められることもあるという。
📷Vienna Synchron Stage / CONTROL B
CONTROL BはSTAGE Aを挟んだ反対側に位置している。CONTROL Aと連携することもありながら小規模なSTAGEでの収録やアイソレートブースでの収録などを主に行っているそうだが、SSL Duality 48chとDolby Atmos 7.1.4で構成されたADAMのスピーカー群を見るとその規模感は補完的な意味合いを超えたものとなっている。そのほかにもプロデューサー向け、コンポーザー向け、エディター向けのラウンジがプリプロ用に用意されるだけでなく、ここに200を超える楽器のストレージ、もちろんオフィスとしての機能も加わり、2,000平米ものスペースは余すところなく有効に振り分けられている。
創り出すということだけへ集中する空間
そしてVienna Synchron Stageの顔となるのがメインのスコアリングステージであるSTAGE Aである。こちらは最大130名を収容する540平米の広さをもち、天井高は最大で12m、他に類を見ない音響特性を生み出す源となっている。前述のハウス・イン・ハウス構造やエアフローの特別なシステムなどでノイズレベルも16 dBAと非常に低く、外界と隔絶されたクリエイティブな空間は創り出すということだけへの集中を促される。
訪問当日にデッカツリーでセッティングされたメインツリーにはNEUMANN M 150 Tube、Sennheiser MKH 8020、LEWITT LCT 1040、といったマイクが設置されていた。映画音楽においては、非常に静かなニュアンスのストリングス録音を行うことも多々ある。しかもそのストリングスを2層、3層と重ねていくため、「ノイズがない」ということ自体が重要なファクターとなってくるそうだ。その結果のマイクセレクトが前述となっており、いわゆるヴィンテージマイクが用いられていないのもこの点からだという。
特に、LEWITT LCT 1040についてはFETとチューブを選択できるため、大編成でのOmniから、小規模な編成であればカーディオイドにしてチューブとFET混ぜていくなど、録音するオーケストラの規模によってキャラクターを合わせていけることが魅力。チューブ、FETのどちらかだけではなくミックスできる点にソースに対する対応力を感じるそうだ。そして、リモートでコントロールルームから設定を変更することもできる。こうした利便性も、伝統的な印象のSynchron Stageで、イメージに反してヴィンテージが使用されていないひとつの理由だ。
📷写真左上より、STAGE B、ISO BOOTH、INSTRUMENT STORAGE、下段はCOMPOSER’S LOUNGE、EDITOR’S LOUNGE、PRODUCER’S LOUNGEと並ぶ。
●Vienna Instruments
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に所属していた経歴を持つチェロ奏者Herb Tucmandlにより、2000年に設立されたVIENNA SYMPHONIC LIBRARY社。大容量オーケストラ・ライブラリの先駆けとなり、オーケストラを知るプロならではの設計思想とリアリティのあるサウンドが評価され、Vienna Instruments音源シリーズは2005年から約19年にわたる超ロングセラーを記録。2017年には、Vienna Synchron Stageで収録されたサウンドを処理する高性能エンジン「VIENNA SYNCHRON PLAYER」を開発し、交響楽や室内楽、合唱団などのオーケストラ音源を中心に数多くの製品をラインナップしている。各楽器のシートポジションで録音されたサウンドは、Vienna Synchron Stageの音像が再現された仕上がりになっているだけでなく、同社がステージを全面改修して目指した理想のオーケストラサウンドを手に入れることができる。
ここまでVienna Synchron Stageの施設としての概要を見てきた。歴史的建造物として保護されるような建物に現代最新の設備が収められ、前世代のテクノロジーの付加価値と現代の技術が溶け合うことで、言わば「最先端を超えた」施設になっている。記事内でご紹介したVienna Synchron Stageのホームページにはさらに詳細なファシリティの紹介がなされており、見るだけでも探検しているような感覚で、最先端を超えたという意味合いも一層感じていただけるだろう。続いては、このVienna Synchron Stageでエンジニアを務めるBernd Mazagg 氏のインタビューをお届けする。
『 オーディエンスのために最高のクオリティで感動を生み出す 』
〜Vienna Synchron Stage / Bernd Mazagg
📷Vienna Synchron Stage / Bernd Mazagg 氏
ウィーンの歴史あるランドマークともなっていたシンクロハレを受け継ぎながらも、最先端の設備を導入して現代的なスコアリングステージへと変貌を遂げたVienna Synchron Stage。21世紀となったいまでも最新シネマサウンドを数多く生み出すこの場所で、サウンドエンジニアリングを手がけるBernd Mazagg 氏にお話を伺うことができた。
Q:このSynchron Stageは2013年に引き継いでから、2年の計画期間を経て全面改修されたそうですが、どのような改修がなされたのでしょうか。
Vienna Synchron Stageは、音源ソフトウェアメーカーとしても知られているVienna Symphonic Library GmbHの一部門となっています。同社は音源の開発に14年間携わった後の新たな挑戦としてスコアリング・ステージを作ることにしたんです。そして、現在のSynchron Stageとなっているホール6をオーストリアの放送局ORFから購入し、2013年から計画をスタートさせ、2015年の初めに実際の改修を開始しました。このプロジェクトは建築の世界で著名なWalters-Storyk Design Group (WSDG)と建築家のSchneider+Schumacherとのコラボレーションになっており、私たちはプロジェクトに深く携わることができました。
Q:長い歴史を持つステージですが、音響的な改修もあったのでしょうか。
そうですね、例えばSTAGE Aは音響的に私がこれまで聴いた中でも最高と言える部屋のひとつです。ただし、70年代から80年代にかけてのようですが、誰かがコンクリートの床を持ち込んだり、壁の音響パネルを布に張り替えたり、あちこちに小さな損傷が見つかったんです。私たちは幸運にも建設当時の作業日誌を見つけることができ、この施設を建設する際に何を達成しようとしていたのかを理解することができました。そして、WSDGの協力を得ながらコンクリートの床を撤去し、大きな音響要素である木製の床を導入し、「プロらしくない」音響要素を取り除いて、より良い中域の周波数特性を持ったオリジナルの音響を取り戻すことができたんです。
CONTROL Aがある場所は、以前は小さなレコーディング・ステージで、初期のころはフォーリー・ステージでした。つまりここは、コントロールルームとするためにゼロから作られた部屋で、ここでもWSDGは音響面で素晴らしい仕事をしてくれました。96チャンネルのSSL Duality、ADAMのスピーカー(S6xとSub15で5.1ch、S3H、S2VとSub15で5.1.4chのセットアップ)、NeveやBAEといった数多くの500プリアンプモジュール、3式のPro Toolsも最新鋭のものを導入しています。また、ウッドがふんだんに使われ、素敵な照明もあり、この部屋で仕事をするのは最高の気分なんです!
CONTROL Bも完全な新設です。実はこのエリアを建設するために5つの部屋を取り壊さなければなりませんでした。CONTROL Bは、48チャンネルのSSL Dualityを中心に、ADAM(S5H、S3H、S2VとSub15)のDolby Atmos認証を受けたセットアップとなっていて、小規模なレコーディングやミックスに使用します。すぐそばのISO BOOTHはCONTROL Bに直接接続されていて、ボーカルブースとして使うだけでなく、ハープをオーケストラからアイソレートするために使ったりもします。STAGE Bもゼロから設計されており、CONTROL Bを使用したレコーディングや、ピアノ、パーカッション用の大きなアイソレートブースとして使用しています。
これらの部屋はすべてアナログで接続されており、指揮者とミュージシャンの間のレイテンシーを考慮しています。建物内にはDanteネットワークが張り巡らされていて、8kmのアナログケーブルと36kmのネットワークケーブルが引き込まれているんです。また、ビデオマトリックスで制御されるアナログビデオシステムも導入されました。
📷CONTROL Aのコンソールに並んだ500シリーズ
Q:こちらでのでの録音はやはり映画音楽が多いのでしょうか?
ほとんどの場合、映画音楽やストリーミングサービスの作品についての録音です。主なクライアントはMarvel、Netflix、Disney+、Apple TVなどで、ルーカスフィルムの「The Acolyte」、マーベルの「Loki 2」、「ロード・オブ・ザ・リング」のメインテーマと聖歌隊も録音させていただきました。ゲーム作品についてもVRの「Asgard’s Wrath 2」や「スター・ウォーズ ジェダイ:サバイバー」など数多くのゲーム作品も録音しています。ということで、質問にお答えするとなると95%が映画やゲームのスコアリングで、5%がその他のレコーディングといったところでしょうか。
Q:オリジナルのスコアリング・ステージにはフィルム・オルガンもありますよね。
この施設は2009年にランドマーク保護の建造物に指定されていますが、その主な理由はオリジナルのスコアリングステージに収められている世界で唯一のシネマ・オルガンにあります。残念なことに、警察が取り壊しを中止させる前にすべてのケーブルとリレーはすでに取り外されていたので動くことはなく、改修には莫大な費用がかかるのですが、私たちはなんとか使えるようにならないかと考えています。昔は演出に深みを出すためにオーケストラと一緒にとても低い音を出すのに使われていました。あと、シネマFXとしても使われていたんです。乗馬、電話、ホーン、ドラムセット、雷など、ありとあらゆるFXでこのLenkwilのオルガンを使い録音するのはとても楽しかったでしょうね。
📷世界で唯一となるLenkwilのフィルムオルガン
Q:そのような伝統的なファシリティがある中で、現代の録音機材や技術はどのように映っているのでしょう。
損失よりも利益の方が大きいと思います。ヒスやノイズは減ったし、録音スピードも昔よりずっと速くなりました。録音を再開する前に必ずテープを巻き戻したり、トラック数の制限についてを考えてもそうです。確かに、アナログ・テープを使うと暖かい音がしますが、良いコンバーターを使えばそれに近づけるのではないでしょうか。コンバーターの前に本当に良いアナログの経路があることがとても重要です。優れたマイク、優れたプリアンプ、信号が変換される前の優れたアナログ機器。これはあくまで私の意見ですが。
Q:中でもこの広大なステージを収録するには優れたマイクが数多く必要となりそうですね。
通常のセッションでは最大70本のマイクを使いますが、大規模なセッションになると90本にもなります。メインマイク(LCR)はNeumannのM 150で、セクションごとのマイキングにはM 49、U 67、U 87、KM 184を使いますが、MKH 800やMKH 8000シリーズといったSennheiserのマイクもたくさん使います。ブラス用にはAEA44、Royer SF2、Coles 4038のようなリボンマイク。それから、いわゆるワイドとしてよく使っているのがLEWITTのLCT 1040で、真空管とFETの中間のような音を作れるのが気に入っています、リモートでスイートスポットのセッティングを聴いたりできるのも素晴らしいですよね。LCT 540 Sは非常に用途の広いマイクで、私はチェロ、ティンパニ、ピアノ、そして多くの打楽器に使用しています、ノイジーになりすぎることなく多くのゲインを得ることができるんです。
📷訪問時にセットされていたSTAGE Aのメインツリー、またLEWITT LCT 1040のリモートコントローラーはCONTROL Aに設置。
Q:あなたにとっての理想的なオーケストラ・サウンドについて教えてください。
オーケストラの音がみずみずしく、それでいてサウンドの上部やセクション間に空気感があるのが好きです。定位の良さと奥行きは私にとってとても重要なんです。でも一番大事なのは、エモーショナルで魂に響くようなサウンドであること。これを実現するためには、オーケストラの適切なバランスを見つけなければなりません。ただ、これには大変な時間が必要となるので、私たちがウィーン交響楽団という自分たちのオーケストラを持てているということは非常に幸せなことです。ミュージシャンたちとは長い間一緒にいて、演奏を聴いたり感じたりすることができています。オーケストラのバランスを整えることは、エンジニアにとって最も重要な仕事です。確かにマイクのセットアップが優れていることも重要ですが、オーケストラではそのバランスが最も重要でしょう。
Q:ありがとうございます。最後になりますが、ウィーンから産み出される音楽や製品に込められたスピリットとはどのようなものでしょう。
「音楽がすべて」ということです。たとえ、その背景が非常に技術的であったとしても、重要なのは音楽を創造すること自体なんです。私たちが録音しているときには、誰も技術的な細かいことを考えてはいません。私たちの目標は誰もが音楽に100%集中できるようにすることです。それはサンプルの制作でも同じです。音楽家は作曲や楽器の演奏に集中すればよく、バックグラウンドで起こっている複雑なことは考えなくていいんです。すべてはオーディエンスのために最高のクオリティで感動を生み出す、これを第一にしています。
『 ”Make yourself heard” すべてのクリエイティブなマインドを現実に 』
〜LEWITT GmbH CEO Roman Perchon
📷LEWITT GmbH CEO Roman Perchon 氏
ウィーン工科大学で学んだのちにAKGでそのキャリアを積み、マイクにはまだまだ進化の余地があると2009年にLEWITT GmbHを立ち上げたRoman Perchon 氏。2014年の日本上陸時にもインタビューを行っているが、10年という時間の中でそのラインナップも増え、ユーザーからの支持、そしてポジションも確立されたいま、どのようなビジョンで次のステップを見ているのか、ウィーン・LEWITT社にてお話しを伺うことができた。
Q:LEWITTを取り巻く環境に多くの変化があった中で、現在のビジョンと10年前のビジョンの変化や違いをどう感じますか?
そうですね。とても多くのことが起こりました。もし、私たちのビジョンについて何が変わったかと聞かれたら、私たちはまだ同じ価値観と同じビジョンを持っていると思います。設立当初から”Make yourself heard”というスローガンを掲げていたのですが、今でもこのスローガンを大切にしています。
私たちのビジョンはクリエイティブなマインドを持つすべての人たちが、卓越したサウンドで自分自身を表現できるようにすること。そして、私たちがどのようにサポートできるかというと、優れた製品、クオリティを向上させる製品、ワークフローを簡単にする製品、アーティストやユーザーが本当にやりたいことをするためのスペースと時間を提供する製品を提供することです。曲を演奏するとかレコーディングするとか、やりたいことを実現するための本当に良いツールを「すべてのクリエイティブな人々」に提供したいんです。それは昔から変わっていません。だから、そういう意味では同じです。大きく変わったのは、私たちが成長したことで、このビジョンにより近づいたことです。
Q:確かにこの10年で新たなユーザー層が出てきていますよね。
そうですよね。YouTubeやPodcastをやっている人がたくさん増えました。そして、ストリームや自分のホームスタジオを持っている人も増えました。そして、今まで通りプロのスタジオやテレビ局ももちろんあります。だからこそ、ビジョンを考えるときは「すべての」クリエイティブな人々と言いたいんです。
Q:そして、新しい技術やサステナビリティなど環境自体も変わってきています。
持続可能性はとても重要です。ここで働くすべての人たちもお客様も持続可能性に関心を持っているでしょう。私たちは日用品ブランドではありません。私たちの製品は、基本的に生産された時点で環境にかなりのインパクトを与えることになります。私たちのゴールは、品質がよく、長期間にわたって優れた性能を発揮する製品を提供することです。長く使える製品を作ることで、生産時に環境に与える負荷や環境フットプリントを最小限に抑えられるようにしています。
他にも、製品を設計する際には材料についての検討を行って配慮したり、パッケージについてもそうです。例えば、LCT 1040のようなハイエンド製品では内装にクッションとなるフォームインレイを使用しますが、ほかの製品ではその代わりに紙パルプを使用する場合もあります。また、LCT 440 PURE - VIDA editionは、NGO「Rainforest of the Austrians(オーストリアの熱帯雨林)」とのプロジェクトで、収益の一部をコスタリカの森林保護のために寄付しています。これからも、このようなウィンウィンとなる連携を探していきたいですね。
Q:技術面としてはイマーシブのフォーマットが登場してきました。
私たちが音楽を聴く方法について、たくさんの進歩が起こっているのを見るのは本当に素晴らしいことですよね。非常に専門化された形ではなく、すべてのクリエイティブなマインドが現実になるような興味深いアイデアがあるかもしれません。私たちができることがあるかどうかを見つけること、議論を重ねることが必要です。
📷ウィーン、LEWITTオフィス内にはイマーシブのセットも
Q:LEWITTの祖業はマイクメーカーですが、オーディオ・インターフェイスやヘッドホンなど製品ラインが拡がってきていますよね。
まず、私たちは非常にグローバルな組織を確立して多くの市場に進出しています。そして高度な知識や技術も持っています。ならば、それをある製品カテゴリーだけに適用するのではなく、他のどのような製品が潜在的なユーザーにとって必要なのかということに用いたいと考えたんです。クリエイティブな心を持っていて、できるだけ効率的で自然な方法で自分自身を表現したいのであれば、どこでどんな製品が必要だろうか、どうやってワークフローやクオリティを向上させることができるのか。そう考えるとユーザーはマイクだけを使うわけではありませんので、オーディオ・インターフェースも提供するというのはとても自然なステップだったんです。
そしてもちろん、こういったクリエイティブな人々はヘッドフォンも使いますよね?スピーカーや他の製品も使います。それから、当然ビジネス上の考慮もあります。顧客グループの規模は?これを開発する技術はあるのか?そのような製品を開発するために、どれくらいの投資が必要なのか?もちろん、こうしたことも考慮しなければなりません。でも、私たちが本当に興味があるのは、自分自身を表現したいクリエイティブなマインドのためのエコシステムを構築することなんです。
Q:次の質問ですが、将来のマイク制作において何か特別な言葉やキーワード、技術やアイデアはありますか?
私たちがいまとても注目しているのはAI、ニューラル・ネットワークです。私たちの製品には次々とソフトウェアを採用していますので、製品の在り方も大きく変わっていくでしょう。その変化の中でも、私たちは受動的な傍観者ではなく、むしろ積極的なプレーヤーでありたいのです。AIはとても興味深い研究分野ですし、私たちはすでにこの技術を用いています。もちろん、将来のプロジェクトにも応用するつもりです。
📷ヨーロッパらしく1人あたりのスペースが広く取られた開放的なLEWITTオフィス
Q:LEWITTは比較的新しい会社でありながら、主要なマイクメーカーの一角となりました。その成長要因はどのようなものだったのでしょう。
まず、私たちは常に大きなインパクトを与えたいと考えていました。小さなブランドのままでは実現できないことであることは明白だったので、私たちはグローバルブランドになりたかったんです。この点について創業当時の私はとても幸運で、ビジネス面でも製造面でもサポートしてくれるパートナーに出会えました。そして、クリエイティブで知識豊富なチームを組むこともできました。その人々と、高度な技術力、それを正しく応用するアイデアによって、エンドユーザーに対して他社が提供できないような価値の提供を実現してきました。
もう一つは、市場やユーザーのニーズをよく理解することです。私たちは業界とのつながりが深いので、ツアー・アーティストやスタジオと緊密に連絡を取り合っています。このようなコミュニティに対して、彼らが既成概念にとらわれない発想ができるような時間と場所を確保すれば、あとは互いに会話が生まれて、たいていはたくさんのアイデアを発見することができます。
ただし、私たちにとって実は一番大変なのは、できることには限りがあるということです。人数、投資、時間、リソースは限られていますよね?たくさんのアイデアを得るのはいいことですが、もうひとつとても重要なプロセスは、それらをフィルタリングして本当に有望なものに集中することです。
📷ゆるやかな時間を感じさせるウィーンの街並み。下の写真はウィーン楽友協会、この大ホールは通称「黄金のホール」と呼ばれ、音楽の都ウィーンの中心的存在となっている。
Q:最後にお伺いしますが、ウィーンという場所はあなたの人生やビジネスにどのような影響を与えたでしょうか?
まず、ウィーンは私の故郷です。オーストリアとウィーンには、多くのマイクブランドが生まれてきたようにオーディオ・エンジニアリングの長い歴史があります。それに、ウィーンは夢を追うにもとてもいい場所だと思います。大都会の長所もありますけど、迷子になるほど大きくはないから疲れませんしね(笑)。
創業当時からそのビジョンは全くぶれていない。クリエイティブなマインドを現実にするための必要なツールを提供するという実にシンプルなもので、私心ではなく大義すら感じさせる。そのための既成概念にとらわれない新分野へのチャレンジも次々と行われている。このことがまたその先のシナジーを生んでいくのだろう、次の10年後にLEWITTがどのような姿で活躍しているか期待していきたい。
Vienna Synchron Stageを中心に見てきたが、ウィーンという街が持つ音楽の伝統や脈々と受け継がれた素養とでもいうべきようなもの、つまりカルチャーとして存在している「感覚」がごくごく自然に生活する人々からプロフェッショナルまで深く根付いていることがよく感じられたのではないだろうか。これは音楽のみならずクリエイターがモノを創る、表現を行うということに対するリスペクトの姿勢が現れているようでもあり、それが醸成されていった長い年月そのものがこのウィーンという街には息づいている、それを確かに感じさせられる訪問となった。
●Vienna Synchron Stage / HP
Synchron Stageの公式ホームページがこちら。Facilityタブの画面をクリックすると施設内の各部屋の詳細を見ることができる。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
Media
2025/01/16
映画音響技術の基礎解説
映画のダビングとテレビにおけるMAは、同じくコンテンツ制作における音声の最終仕上げの段階となるが似て非なるもの。システム的な違いではなく、音響的な部分や視聴環境に求められる事柄の差異となると奥深く、全容を把握するためには整理整頓が必要だ。ここでは映画音響におけるXカーブ、センタースピーカー、ウォールサラウンド、フィルムに対するサウンドトラックといった、様々な特殊要素を技術的な側面から紐解いていきたい。
MA、ダビング、空間の違い
テレビの番組制作のためのMA室、昨今では配信番組など映像に音声を付けて仕上げる幅広い用途で活用されるスタジオだ。ここに求められるファクターは、音の正確性、解像度ということになるだろう。制作されたコンテンツはどのような環境で視聴されるかはわからないため、作品として100点満点の解答はないとも言えるのだが、そんな中でもMA室はリファレンスとなる環境であることが求められる。できる限り正確な音の再生を行うために、周波数特性、音の立ち上がり、強弱の再現、それらを実現するための吸音処理や反射音のコントロールなどを行い、音響設計をしっかりと行った環境を作り上げ、そこで作業を行うこととなる。
それでは、映画音響の仕上げに使われるダビングステージはどうだろうか?映画館での上映を前提に音響の仕上げが行われるダビングステージ。この空間に求められる要素は、どんな映画館で上映されたとしても再現がしっかりと行われるサウンド、ということになるだろう。映画館には上映用の規定があり、音圧に関しては-20dBfs = 85SPLという規定となる。そして、スクリーンの裏に設置されるL,C,R chのスピーカーに対しては、Xカーブと呼ばれる周波数特性に関わるカーブが存在する。ダビングステージはこれらを再現したスタジオであることが求められる。
また、映画館という大空間での再生を前提とするため、大空間での再生の再現というのも重要だ。MA室であれば、遠くても3m程度に設置されるスピーカーが、ダビングステージでは大きな部屋ともなると10mもの距離になる。そして、部屋が広いということは、直接音と間接音とのバランスがニアフィールドとは明らかに違った環境となる。ニアフィールドであれば、直接音が支配的にはなるが、10mも離れたスピーカーでは間接音も含めてその空間のサウンドになることはご想像いただけるだろう。
とはいえ、映画館ごとに間接音の状況は異なる。ダビングステージとしての最適解は、大空間らしいサウンドを保ちつつ、解像度、レスポンス、特性などの担保を行うという、相反した要素をはらむものになる。間接音があるということは、周波数や位相に対しての乱れが必然的に生まれる。リフレクションが加わるということはそういうことだ。ルーム・リバーブ的な要素が含まれると想像いただければイメージしやすいだろうか。その具合の調整がまさに音響設計の腕の見せどころだろう。スピーカーから飛び出したあとの音響建築的な部分での話になるため、機器の電気的な調整だけでは賄いきれないところ。まとめて言い換えれば、この間接音のコントロールがダビングステージのサウンドにおいて重要になるということだ。
Xカーブに合わせた空間調整
小空間で仕込んだ音を、大空間で再生したときに生じる差異。特に高域の特性の変化に関しては100年前にトーキーから光学録音へと映画が進化したころから問題視されている。アカデミーカーブ、Xカーブと言われるものが、まさにそれへ対処するために生み出されたものである。SMPTE ST-202としてその後標準化されるのだが、これらのカーブの求めるところとしては、測定機での周波数特性と聴感上の周波数特性を合わせるということがそのスタート地点にある。
この映画館における音響特性に関する研究は、まさにJBLとDolbyの歴史そのものでもある。再生機器側の性能向上、収録されるマスター音源のテクノロジー、それらの相互に及ぼしあう影響を、これまでの作品の再生とこれから生み出される作品の再生それぞれに対して最適なものとする100年に渡って継続されてきた歴史であり、この部分も興味深いストーリが数多く詰まっている。中でもDolbyの果たす役割は大きく、ノイズリダクションに始まり、フォーマットの進化、マスター音源の進化など、必然性を持って映画のサウンドフォーマットが形作られ継承されている。
スクリーンの透過特性(スクリーンの裏に置かれたスピーカーの高域成分は、サウンドスクリーンだとしても高域減衰が生じる)、低域よりも高域のほうが距離減衰量が大きいことによって、スピーカーから視聴位置が遠いために生じる高域減衰、空間が広いため間接音による干渉などにより生じる高域減衰。様々な要素によりダビングステージの容積に起因する高域減衰というものは、一般的なスタジオと比較しても多く生じる傾向にある。これは、映画館においても同様であり、その再現を求められるダビングステージでも同じように特性の変化が生まれる。
ダビングステージのスイートスポットにおける特性を測れば、当たり前のように高域の減衰した特性が出現する。しかし、これを電気的にフラットにしようとすることは間違いである。なぜなら、直接音に関してはスクリーンの透過特性、距離減衰の影響は受けるものの、ある程度フラットな特性が担保されているためである。反射音、間接音に起因する高域減衰(位相干渉等によるもの)を含めた特性をもとにフラットな特性を狙ってしまうと、結果的に高域が持ち上がった特性を作ることになってしまう。冒頭でも述べたように、大空間における直接音と間接音のバランスに依っており、大空間になればなるほど間接音の比重が大きくなり、高域が下がってくるということである。
お気付きかもしれないが、スイートスポットにおけるフラットな特性を電気的に補正して作ってしまうと、直接音としては高域の持ち上がった特性になるということである。これは、スイートスポットを離れた、特にスクリーンに近い位置での視聴時に顕著となる。直接音が支配的であり、高域の持ち上がったサウンドをダイレクトに聴いてしまうため、視聴体験に大きな影響を及ぼすことになる。
このような高域の持ち上がった特性とならないように、高域をロールオフしたターゲットカーブを設定し、それに合わせた音響調整を行うようにするのが、Xカーブに合わせた調整ということになる。厳密には劇場の座席数に応じたターゲットとなる周波数特性のカーブが設定されており、座席数の少ないものでは高域の減衰量が少なく、多くなれば減衰量が大きくなる、そのようなターゲットとなる特性が提示されている。
これらのターゲットカーブに関しては、ぴったりに周波数特性を合わせ込むということではなく、スピーカー単体としてフラットな特性で出力した際に、スクリーンや部屋などの影響を受けた上でターゲットカーブに収まっているかどうかを確認するところがあくまでもスタートポイントである。言い換えれば、許容誤差の範囲内に収まっているのであれば、それは想定通りの結果であり、それ以上の補正を行う必要はないということでもある。
小空間における映画作品の仕上げに関しては各所ご意見もあるところだろう。大空間における音響再現が行えていないということは確かにあり、それによって再現性が低いというご意見ももっともである。しかし、上記のようにXカーブの成立を紐解いて見ていくと、フラットな特性で作られた音源が空間の大小にかかわらず、ある一定の聴こえ方をするためのターゲットカーブ、とまとめられる。その視点から考えれば、フラットな特性を持ったスタジオで仕上げられた作品であれば、大空間に持っていったとしても一定の基準内での聴こえ方が担保されているので問題ないとも捉えることができる。
ただし、スクリーンの透過特性という物理的なフィルター分に関しては、やはり考慮する必要があると筆者は考えているが、どちらの意見も間違いではないし、ダビングステージといっても数多の映画館すべての再現となるわけではない。完璧な答えを得ることは難しいが、プロフェッショナルの仕事としてどこまでの再現を求めるのかという尺度になるのだろう。そして、これらのことを理解していれば、より良い作品、そしてバランスを作ることができるということでもある。
100年以上の歴史から、映画の音響に関するセオリーはできあがっている。こちらのほうが良いと言っても、一朝一夕に変わることができない過去との互換性や、大空間での平均化された視聴体験に対しての担保など要素を多彩に含んだテクノロジーの結晶体である。だからこそ映画というエンターテイメントのフォーマットは普遍的なものとして歴史を超えて受け継がれ、エンターテイメントの一つの形として存在し続けている。
映画の必須要素、センタースピーカー
次はセンタースピーカーについてを取り上げる。センタースピーカーはITU基準の5.1chにもあるので、それとは何が違うのかということからお話を進めたい。
映画におけるセンタースピーカーは、映画のサウンドトラックが登場した当初から存在する。その当時はモノラル再生環境、センタースピーカー1本からのスタートしたためである。映画館におけるセンタースピーカーが非常に重要であることは、ニアフィールドでのステレオミックスを中心に行っていると、なかなか気が付かないかもしれない。ステレオ作品であれば、センター定位はファントム・センターとして形作られる。しかし、映画館での視聴を想像して欲しい。きっちりとL,Rチャンネルのスピーカーの中心線に座ることができればよいが、1席でも左右にズレてしまうとファントムで作ったセンター定位はズレてしまう。
ハード・スピーカーでのセンターチャンネルがあることで、劇場内どの席からでもスクリーン中央からのセンター定位を感じることができる。これが劇場におけるセンタースピーカーの重要性のほぼすべてと言っても過言ではない。そのため、映画サウンドトラックの進化の歴史は、モノラルの次は3ch(L,C,R ch)、そして初のサラウンドであるアナログ・マトリクス・エンコードを活用したDolby SR(L,C,R + Sround)、そしてDolby Digital (5.1ch)、Dolby Atmosへと進化している。順を追って見ていくと、センターチャンネルを中心に左右へ広がっていったということがおわかりいただけるのではないだろうか。
このようなことから、映画においてセリフの基本はハードセンターである。よほどのことがない限りこのセオリーを外すことはない。画面に二人登場人物がいるので少し左右にパンを振って、ということを思いつくかもしれないが、前述の通りでファントム定位を使用すると劇場に足を運んだユーザーは着席する座席の位置によって定位が変わってしまう。
そうであれば、やはりファントムではなくハードセンターで再生をする。これは、映画における普遍的なものとして受け継がれている。Dolby Atmosになりオブジェクトという新しい技術が採用され、ギミックとして左右の壁面からも点音源として再生を行うということが可能となり、これを活用した作品も見受けられるが、ストーリーテリングを行うダイアログに関しては、やはりハードセンターは外せない。これまでのチャンネルベース・ミキシングの手法を踏襲したうえで、オブジェクト・ミックスがあるというDolbyの判断は正しいと感じている。劇場での再生を念頭においたミックスだからこその要素となるわけだ。
皆さんは、そのセンターチャンネルがどこに設置されているかご存知だろうか。スクリーンの裏にあるため通常は目にすることのないスピーカーではあるが、その名の通りスクリーンのちょうど中心に設置されている。高さ方向としては、スピーカーの音響軸を高さ方向に3等分した上端から1/3の位置というのが設置基準である。高さ方向に関しては素直にスクリーンの中央とイメージしてしまうところかもしれない。なぜ1/3になったのかという理由を解説している文献を探すことはできなかったのだが、すべての客席に対して音を届けるために高さが必要であったとか、サラウンドスピーカーとの高さを揃えようと考えるとこれくらいがちょうどいいなど様々な推測がある。
ちなみにではあるが、サラウンドスピーカーはスクリーンバックのL,C,Rchと音響軸的に平面に収まるように設置されている。壁面のサラウンドスピーカーの並びをそのまま伸ばしたあたりに、スクリーンバックのスピーカーの音響軸があるということだ。逆に言えば、壁面のサラウンドスピーカーの設置位置は、スクリーンサイズによって上下するということでもある。スクリーンが大きければ音響軸は高くなり、サラウンドスピーカーアレイの設置位置も高くなるということだ。
ウォール・サラウンド
もうひとつ、ITU 5.1chとの大きな違いがサラウンドチャンネルに関してだ。ITUでは点音源での再生となるサラウンドチャンネルが、シネマフォーマットではウォール・サラウンドアレイと呼ばれる壁面に設置された複数のスピーカーで再生されることとなる。デフューズ・サラウンドとも呼ばれるこのシステムは、やはり劇場でどの座席であっても一定のサラウンド感を感じられるように、という意図のもとにその設置が考えられている。
しかし、面で再生されるこのサラウンドチャンネルは定位感のある再生には不向きであり、Dolby Digitalまでの作品ではもっぱら環境音や音楽のリバーブなどの再生に活用されていた。もちろん、これは空間を囲むという意味では大きな効果があり、没入感を高めるための仕組みとしては大きな成功を収めている。Dolby Digital以前のSRではマトリクス・エンコードの特性上、正面に対して位相差を持ったサウンドしか配置をすることができず、まさに音を後方にこぼすといったことしかできなかったが、Dolby Digitalになりようやくチャンネルがディスクリートとなり、イメージした音がそこに入れられるようになったという技術的な進化も大きい。
さらに、Dolby Atmosではオブジェクトが使用できるようになり、点音源としてのサラウンド・チャンネルの活用が可能となった。この進化は大きく、ウォールで再生するベッドチャンネルと点音源で再生するオブジェクト・チャンネルを使い分けることで、音による画面外の表現が幅広く行えるようになった。スタジオ設計側としては、サラウンドも全チャンネルフラットにフルレンジの再生を求められることとなり、サラウンドスピーカーの選定において従来とは異なるノウハウが求められるようにもなってきている。再生環境として求められるスペックが増えるということは、逆説的には再生できる表現の可能性が広がったということでもある。これは進化であり大いに歓迎すべきポイントである。
フィルムに対するサウンドトラック
これらの映画音響の歴史は、まさにサウンドトラックの進化の歴史そのものでもあり、互換性が考えられながら新しいものへと連なっている。フィルムを上映して映像だけを楽しむサイレント映画から、それにレコードを同時に再生することで音を付け加えるという試みへと進化するが、まったく同期がとられていないため、当時は雰囲気として音楽を流す程度といったことが主流だったそうだ。
また、当時は活動写真弁士と呼ばれる映画に対して解説を加える解説者がいた。少し脱線するが、活動弁士という文化は日本独自のもの。海外ではテキストで状況説明を加えることで、映像同士に連続性をもたせることでレコードでの音楽再生のみというものが主流だった。しかし、日本では映画以前より人形浄瑠璃における太夫と三味線や、歌舞伎における出語りなど、口頭で場面の解説を加える、今風に言えば解説ナレーションの文化があった。もちろん、落語に代表される話芸の文化が盛んだったこともこのバックボーンにはあったのだろう。当初は、幕間の場繋ぎとしての解説者だったものが、上映中にもそれを盛り上げるための語り部となり、独自の進化を遂げたというのは興味深いところである。
フィルムで上映される映像と音声の記録されたレコードなどの媒体を同期するということは当時の技術では難しく、いくつものテクノロジーが発明されては消えていくということを繰り返していた。フィルム上にサウンドトラックを焼き付けるというサウンド・オン・フィルム。具体的には、光学録音された音声トラックを映像フィルムに焼き付けるという手法により技術革新を迎えるのだが、光学録音自体の特許登録がなされた1907年から、ハリウッドメジャーが共通フォーマットとして互換性を持ったサウンド・オン・フィルム技術を採用する1927年までに、なんと20年もの歳月がかかっている。その間、レコード等の録音媒体を使用した同期再生のチャレンジも続けられたが、確固たる実績となる技術へとは発展しなかった。サウンド・オン・フィルムの光学録音技術は、映画がデジタル化されDCP(Digital Cinema Package)でのデータ上映になるまでのフィルム上映では普通に使われ続けていくこととなる。
無音のサイレント映画に対してトーキー映画と言われる、映画に音をつけるという技術は瞬く間に普及することになる。1927年にハリウッドで採用されたということは前述の通りだが、その移行は早く、ハリウッドで制作された最後のサイレント映画が1929年ということからも、たったの2年間で時代の主流を奪っている。日本国内は活動弁士という独自の文化があったため、1938年になっても国内制作の1/3の映画はサイレントのままであったということだ。活動弁士の職を奪うということもあるが、贔屓の活動弁士による上映を見るため(聴くため)に劇場に足を運ぶということもあったということだ。今となっては想像することしかできないが、日本における最初期の映画とは人形浄瑠璃などの視覚的なエンターテイメントがフィルムになったという感覚だったのではないだろうか。
トーキー映画が黎明期を迎えてからのサウンドトラックの歴史は、まさに光学録音の歴史と言える。光学録音とは今日DAWなどで表示される波形をフィルムに焼き付けるというものだ。非常に細いスリットに光を当ててその記録を行うというのがその始まりだ。
光の強弱はまさに音の強弱であり、電気信号に変換された音声の強弱を光としてフィルム上に記録するということになる。しかし、ノイズや周りへのこぼれ(光なので屈折や解析などで周辺に溢れてしまう)、高域再生不足、様々な問題に直面し、それを乗り越えるノイズリダクションや、多チャンネル化の技術となっていく。光学録音に対して大きくは、ノイズの低減と高域再生特性の改善がそのテーマとして、様々な方式が出現しては消えていくということを繰り返す。それと並行して磁気記録技術が確立され、映像フィルムに磁気を塗布し、そこにサウンドトラックを収録するということも行われた。これは1950年代頃から70年代にかけてであり、Cinerama、Cinema Scopeといったものがその代表である。フロント3ch、サラウンド1chという仕様が一般的であった。
Dolby Atmosへの道筋
このような様々な技術や規格が乱立する中で、業界の標準となり今でも活躍をしているのがDolbyである。ノイズリダクション技術が世界的に認められ、映画の光学録音の収録などでも活用されていたDolby。1976年に開発されたDolby Stereoはマトリクス・エンコードを活用した2chのサウンドトラックでフロント3ch、サラウンド1ch仕様の4chの再生を可能とする技術として瞬く間に世界の標準フォーマットとなる。少しややこしいのだが、Dolby Stereoは2ch音声の技術ではなく、マトリクス・エンコードされた4chサラウンドの技術である。2trの音声トラックの収録であったことからStereoと名乗ったのだろうが、今となっては少し誤解を招く名称である。
このDolby Stereoを世界中が注目するようになるきっかけとなった作品は「スター・ウォーズ エピソード 4 / 新たなる希望」である。このDolby Stereoの特徴となるのが、エンコードされた2chの音声トラックは、そのまま2chステレオで再生しても違和感なく聴くことができるという点。後方互換性を備えたフォーマットであったということは特筆すべきところだ。しかし、そのマトリクス・エンコードの特性から、サラウンドチャンネルに低域成分を加えることはできず、ディレイ処理もエンコード時に加わるため輪郭のあるはっきりとした音をサラウンドに配置することができなかった。とはいえ、このDolby StereoはDolby SR(Spectral Recording)として音響特性を改善させ、多くの映画館で採用されたまさに80年代の業界標準とも言えるフォーマットである。
アナログ時代の真打ちであるDolby Stereoの次の世代は、フィルムにデジタルデータを焼き付けることでその再生を行ったDolby Digitalの登場を待つこととなる。1992年に登場したDolby Digitalは圧縮された5.1chのディスクリート音声をフィルムに焼き付けつけるフォーマットである。しかも、Dolby Stereoの光学2trの音声トラックはそのままに、追加でのデータの焼き込みを可能としている。図版を見ると、パーフォレーションの隙間にQRコードのような図形データとして符号化されたものが書き込まれている。これを読み込み、5.1chの音声を取り出すフォーマットである。
Dolby Stereoの上映館でもDolby Digital上映館でも同一のフィルムで上映できるため、フィルム上映における標準フォーマットとして今日に至るまで標準フォーマットとして採用が続いている。映画館の5.1ch再生のスクリーンは、そのすべてがこのDolby Digitalでの上映と思って差し支えない。もちろん、1990年代にはそれに対抗するフォーマットとして非圧縮の5.1chで高音質を特徴としたDTS、大型スクリーン向けにフロントのチャンネル数を5chとした7.1chサラウンドのSDDS(Sony Dynamic Digital Sound)があった。残念ながら、DTSもSDDSも映画館向けのフォーマットとしては生き残ることができなかった。DTSに関しては、DTS-Xとしてイマーシブを引っ提げて再び映画館に戻ってくる動きもあるのでここは要チェックである。
2000年代半ばに、ネットやコンピューター技術の進化に合わせて映画館での上映が物理的なフィルムから、DCP(Digital Cinema Package)と呼ばれるデータでの上映に切り替わった。現在でも少ないとはいえフィルムでの上映を行っている劇場もあり、やはりフィルムの需要がゼロになったわけではなくDolby Digitalでの制作を行うことが今でも続けられているのだが、DCPであればフィルム上にサウンドトラックを記録するといった物理的な制約もなくなり、ほぼすべてがデータでの上映になっていると言っていい状況だ。
そして、DCPになったからこそ生まれたのが、データ容量が大きいDolby Atmosというフォーマットである。Blu-rayや配信ではDolby True-HDと呼ばれる技術により圧縮が行われているが、映画におけるDolby Atmos Cinemaは、Rendererで収録された最大128chのデータがそのまま収録され、Dolbyのフォーマットとしては初となる非圧縮での劇場上映を実現している。
まだまだ、歴史を紐解くと他のファクターも存在する映画音響に関する様々な特殊要素。ここではその代表とも言えるXカーブ、センタースピーカー、ウォールサラウンド、フィルムに対するサウンドトラックに触れたが、それらすべては大空間において座席に着席して視聴しているすべてのユーザーへより良い音響を届けるために考えられたものであるということを忘れてはならない。
スイートスポットでの視聴はあくまでも制作においての判断を行う場所であり、そこを離れても意図した音響設計が一定以上で再現できる環境構築のために100年の歳月が掛けられたノウハウである。映画の制作に携わることがなければなかなか足を踏み入れることのないダビングステージや映画の音響制作。そこでの考え方や、ノウハウは興味深いものが数多くある。今回の解説が映画音響以外でもサウンドに関わる方にとって何らかの刺激となれば幸いである。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
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2025/01/09
劇伴制作のシゴト 東映音楽出版株式会社 本谷氏に訊く
映画の音を構成する要素は大きくDialogue(台詞)、Music(音楽)、Effect(効果音)の3つに分類される。それぞれの要素を録音技師、作曲家や音楽プロデューサー、効果音によるサウンドデザインを行う音響効果、フォーリーといったプロフェッショナルが担当し、1本の映画における音を作り上げる。今回はなかでも劇伴制作に焦点を当て、映画音楽をはじめとした劇伴制作を手がける東映音楽出版株式会社のエンジニア、本谷侑紀氏に制作の流れについて解説いただいた。劇伴制作という仕事はどういったものかという基本的な部分から、劇伴という音楽ならではの制作ポイント、近年の潮流といった内容について制作ワークフローとともにいま一度紐解いていこう。
1:制作依頼
劇伴制作とひとくちに言っても任される範囲は現場によって様々だ。レコーディングエンジニアとしてのみ参加する場合もあれば、音楽プロデューサーとして方向性を決める段階からダビングまで一貫して制作に関わるケースもある。どの段階から制作に参加するか、というのは基本的に音楽制作の枠組みが決まったタイミングで制作が依頼される。というのも、エンジニアとしての依頼は作曲家からの指名で決まることが多い。本谷氏の場合、東映音楽出版に所属する制作エンジニアとして自社作品か外部作品なのかでも関わり方は変化してくるという。社内外で制作・エンジニアとして依頼がある場合や、自社作品の場合は制作依頼を出す立場に回ることもあるそうだ。
また、既成曲(劇中曲)の有無も制作工程に影響してくる。既成曲が無い作品の場合は、現場に作曲家とともに出向くこともあるが、本格的に始動するのは撮影が終わり、オールラッシュ(映像編集において尺やカットが確定した段階)の後からとなる。シーンの尺が決まっていないことには場面に合わせて作曲することもできない。ただし、現場によってはメインテーマなど一部を編集前に制作し、監督が編集を行う際のイメージを手助けするものとして使用されることもある。
一方で既成曲が多い場合、例えばライブシーンがある作品などではプレスコ(プレスコアリング:先に制作されたセリフや音楽に合わせての撮影)となるため、プロジェクトの脚本段階などと並行して音楽が発注され、プレスコ用に編集された上で撮影時に使用される。ここでの制作はあくまでプレスコ用の音源であり、そこからライブシーンでの歓声などが足されるなどの再編集が行われ実際に使用する音源となるのだ。劇中曲の場合は歌モノも多く、そういった場合は劇伴チームとは別の制作チームが立てられることが多い。
2:劇伴プランの設計
オールラッシュが終わりシーンの尺が決定した段階で、「線引き」と呼ばれる打ち合わせに入る。作曲家、監督やプロデューサーといった制作陣とともにどのシーンに音楽を使用するかを決めていく作業だ。この段階で全体の曲数と、曲調の明暗や盛り上げるポイントといったおおまかな曲の方向性を設計していく。監督が編集段階で音楽を入れたい箇所に仮の楽曲を挿入しているケースもあるとのことだ。映画1本のうち劇伴の占める割合については、もちろん作品にもよるが2時間の実写ドラマの場合大体40~50分尺、曲数にして20~25曲あたりが平均だという。
3:作曲
作品に必要な音楽が決まったところで、作曲家による作曲期間に突入する。期間にして約1〜2ヶ月ほど、その中で数曲ずつを監督・制作陣と確認しながらデモを完成させていく。楽曲チェックは少ない映画でも2~3回は繰り返される。作曲に取り掛かる順番は、まずメインテーマとなる曲を作り、次にそのアレンジバージョンを数パターン、その後作品の時系列順に制作していかれることが多いそうだ。作曲期間もエンジニア的な観点からストリングスの最適なサイズや、生録音かシンセ音源かといった音色の提案・判断などを行っていく。
4:レコーディング
作曲の工程が完了すると、譜面作成を経てレコーディングにとりかかる。譜面作成は、作曲家が書いた楽譜の清書やパート譜の作成を行う専門職である写譜屋の仕事だ。劇伴のレコーディングは読者もイメージされている通り、ストリングス、ブラス、木管が多い。数日というレコーディング日程で数十曲にわたる楽曲を録り終えるためにも、とにかくスムーズな進行が肝となる。
ここで本谷氏が実際に行なっているレコーディングのテクニックを紹介する。それは2種類の異なる色合いのマイクを立てておくというもの。5.1chや7.1chサラウンド用のオフマイクセットが基本となるのだが、そこにLRをもう2本追加することによってミックス時にLR+サラウンドワイドなど組み合わせの選択肢が広がる。オンマイクに関してもスタジオ定番のNeumann U 67やU 87に加えて最近はリボンマイク Samar Audio Design VL37をよく使うとのこと。限られたレコーディング時間の中でもミックス時の可能性を確保し、より作品に合致した楽曲を仕上げるための工夫だ。また万が一メインのRECが不調だった時のための保険の意味もあるという。
使用するスタジオは予算、編成のサイズ、響きを出したいか抑えたいか、といった観点から作曲家と相談して決めていく。少ない人数でよく響かせたいならあのスタジオ、8型が入るのはこのスタジオといったように様々なスタジオの特徴を把握していることがもちろん前提となる。
コラム 弦の編成の表し方
「6型」や「8型」とは何でしょうか?これは弦楽器の編成を表す際に使われる用語です。ストリングスの基本構成は1st Violin、2nd Violin、Viola、Cello、Contrabassの5パート。型の数字は1st Violinの人数を表し、そこからパートの音域が低くなるごとに2人(1プルトとも言う)ずつ減らしていくのが基本のパターンです。例えば8型だと以下のとおり。
1st Violin:8人(4プルト) / 2nd Violin:6人(3プルト) / Viola:4人(2プルト) / Cello:4人(2プルト) / Contrabass:2人(1プルト)
これを別の言い方としてパート順に「86442」と呼ぶこともあります。他にも「弦カル」はカルテット(Violin 2人、Viola 1人、Cello 1人)「ダブカル」はダブルカルテット(カルテットの倍の編成)の意味。さらに、大規模なオーケストラでは木・金管、打楽器を含めた1管、2管という編成も存在します。別のジャンルではドラム、ギター、ベース、キーボードの編成を4リズムと言ったりもしますよね。これらは必要なスタジオの広さの指標として使われる用語でもあります。
5:トラックダウン
レコーディングが終了するとすぐにミックス、トラックダウン(TD)の作業がスタートする。録音素材のノイズリダクションに始まり、EQ、コンプといったミキシングからサラウンドパンニングまで音楽ステムの仕込みを行う工程だ。通常の音楽ミックスと大きく異なるのが、ダイアログやエフェクトが入ることを見越しての音楽ミックスになるということ。本谷氏は、セリフが入り音楽のレベルが下がる場合も想定してリアを活かすといったアプローチを行うこともあるという。また、センターチャンネルのダイアログとどう音楽を共存させるかについては、ハードセンター、ファントムセンター、その中間といったミックスのパターンを持っておき、演出や作家の意図に合わせてどう使い分けるかを考えていくとのことだ。
また、ダイアログや効果のエンジニアから制作したステムを共有してもらい、それらのレベルに合わせたミックスを施すことも近年はあるという。劇伴は作曲、レコーディングの工程を経る以上、ダイアログや効果よりも作業が後ろになるため、他の2部門が先に仕込みを終えていることが多くなる。逆にレコーディングデータを参考として共有することもあるという。ダビング前にデータを共有しあうことでより精度の高い仕込み作業が可能になる。完成したデータは自身でダビング作業まで担う場合と、選曲(ミュージックエディター)にステムを受け渡しダビング作業に持ち込まれる場合に分かれる。
6:ダビング
各部門がそれぞれ制作した素材がダビングステージに持ち込まれ、制作の最終的なミックスが行われる。期間として約12日ほどの日程の作業工程を一例として挙げよう。
映画はフィルム時代の慣習から20分弱を1ロールとして本編を区切り、ロールごとにダビングを行うという手順が今でも残っている。前半の仕込み日では実際に各素材が組み合わさってダビングされる際のレベル感を確認し、各自修正作業を行っていく。システムやマシンスペックの向上によりダビングでもマルチトラックのセッションデータをある程度そのまま持ち込めるようになったため、ここで修正が発生した際でもすぐに対応できるようレコーディングの別素材などとスムーズな切り替えが行えるセッションとして下準備を行い臨んでいる。ダビングが完了するとプリントマスターが作成され、晴れて映画の完成だ。
7:近年の劇伴制作の潮流
本谷氏によるとまずここ数年の流れとして、ダビングステージ含めスタジオにAvid S6が普及したことにより仕込みとの差異が少なく作業に入ることが可能になったことが大きいそうだ。エンジニアの多くがS6に慣れ始めて作業効率も上がり、Neve DFCのころと比べてミックスセッションからのスムーズな移行と高い再現性が保たれていることが作業における大きな変化となった。
もうひとつがDolby Atmosの登場だ。ポップスの音楽がApple Musicの対応により国内では映画に先行してAtmos化している傾向は、サラウンドが音楽では広まらなかった今までとは違う現象と捉えており、同じく音楽を扱う劇伴エンジニアも音楽エンジニアとノウハウを共有していければという。
また、Dolby Atmosからダウンミックスして作成した5.1chは、初めから5.1chで制作した音源とは同じチャンネル数でも異なる定位やダイナミクス感が得られるため、新たな発見があることも気に入っているポイントだそう。今後、日本映画界においてDolby Atmosが普及するためには、Dolby Atmos Cinemaに対応したスタジオや劇場が増えること、Dolby Atmos= 制作費が高いという業界のイメージが変わることが鍵となると感じられている。本谷氏は早速Dolby Atmosでの制作にも挑戦されている。
📷東映音楽出版が構えるポスプロスタジオ、Studio”Room”。VoやGtを中心としたレコーディング環境と劇伴制作のTD環境を併せ持つフレキシブルなスタジオだ。今年6月に改修が行われ、7.1.4chのDolby Atmos Homeに対応となった。リアサラウンドにはADAM Audio S2V、ハイトには同じくADAM AudioのA7Xを採用。既存の配線も有効活用し、特注のSP設置金具によって既存のスタジオ環境の中にハイトスピーカーが増設された。モニターコントローラーはGRACE design m908を使用。サラウンドのころから導入していたm908のDante接続により、Dolby Atmos化という回線数の増加にも難なく対応することができた。
日本で劇伴制作に携わるエンジニアの数は増えているとお聞きした。また今回触れることができた職種の他にも、多くのプロフェッショナルが日本映画の音を支えている。映画音響の世界は、新しいテクノロジーの登場とそれを取り入れるスタジオや教育の現場によって、技術はもちろん業界の風習も含めて日々発展しているのだ。そのような中で様々なことに取り組み、もっとできることがあることを皆で知っていきたいという本谷氏の姿勢が強く印象に残っている。
東映音楽出版株式会社
本谷 侑紀 氏
84年生まれ。2005年、東映音楽出版・南麻布スタジオルーム入社。2009年「おと・な・り」(監督・熊澤尚人、音楽・安川午朗)で映画劇伴を初担当。以降は主に映画・ドラマの劇伴にレコーディングエンジニア、ポスプロのミュージックエディターとして携わる。近年の主な作品(Rec,Mix&MusicEditorとして参加)に、『シャイロックの子供たち』(本木克英監督、音楽・安川午朗)、『ある閉ざされた雪の山荘で』(飯塚健監督、音楽・海田庄吾)、『リボルバー・リリー(行定勲監督、音楽・半野喜弘)』、『11人の賊軍(白石和彌監督、音楽・松隈ケンタ)』がある。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
Education
2025/01/02
音響芸術専門学校様 / 未来への入口となるイマーシブ・システム教室
1973年に、国内では初となる音響制作技術の専門教育機関として開校した音響芸術専門学校。この夏、同校教室に満を持してイマーシブ・システムが導入されたということで、早速取材に伺った。応じてくれたのは同校学校長・理事長の見上 陽一郎 氏。イマーシブ・サラウンドの要であるスピーカーの選定や、教育機関ならではのテクノロジーに対する視点など、これからイマーシブ・システムを教室へ導入するにあたっては大いに参考となるだろう。
シンプルかつ充実したシステム
今回、音響芸術専門学校が導入したのは7.1.4ch構成のイマーシブ・サラウンド・システム。学内の教室のひとつを専用の部屋にしたもので、教室の中央前方寄りの位置にトラスとスタンドを使用して組まれている。教室の隅に12Uの機器ラックが置かれており、システムとしてはこれがすべてというコンパクトさだ。機器ラックにはPro ToolsがインストールされたMac Studioのほか、BDプレイヤー、AVアンプ、そしてオーディオI/FとしてMTRX Studioが収められている。MTRX StudioにはThunderbolt 3オプションモジュールが追加されており、Mac StudioとはHDXではなくThunderboltで接続されている。そのため、HDXカードをマウントするための外部シャーシも不要となっている。
MTRX II、およびMTRX Studioに使用することができるThunderbolt 3モジュールの登場は、オーディオ・システム設計における柔軟性を飛躍させたと感じる。MTRXシリーズがHDXカードなしでMacと直接つながるということは、単にオーディオ I/Oの選択肢を広げるということに留まらず、256ch Dante、64ch MADIなどの接続性や、スピーカーマネジメント機能であるSPQをNative環境に提供するということになる。さらに、1台のMTRXに2台のMac(+HDX)を接続できるため、DADmanの持つ巨大なルーティング・マトリクスを活用した大規模なシステム構築をシンプルに実現することも可能だ。そして、こうした拡張の方向とは逆にNative環境でDADmanを使用できるということは、MacとMTRXだけで外部機器とのルーティングやモニターセクションまでを含めたオーディオ・システム全体を完成させることができるということを意味する。音響芸術専門学校のようにシステムを最小化することもまた、Thunderbolt 3モジュールの登場によって可能となるということだ。
スピーカーに選ばれたのはEVE Audioで、2Wayニアフィールド・モニタースピーカーSC205とサブウーファーTS108の組み合わせ。ハイト4本はStage Evolutionの組み立て式パイプトラスにIsoAcousticsのマウンターを介して、平面サラウンド7本はUltimate Supportのスピーカースタンドを使用して設置されており、部屋の内装に手を加えることなくイマーシブ・システムを導入している。
📷イマーシブ・システムの組み上げで課題となるのはハイトの設置をどう行うかだろう。今回の組み上げでは照明用の製品を数多くリリースするStage Evolutionのトラスを使用した。コストパフォーマンスに秀でているだけでなく、堅牢な作りでスピーカーを支えており、ここにIsoAcousticsのマウンターを使用してハイトスピーカーを設置となっている。このように内装工事を行うこともなく簡便にイマーシブ環境を構築できるのは大きな魅力だろう。
国内初となるEVE Audioによるイマーシブ構築
EVE Audioによるイマーシブ・システムの構築は国内ではこれが初の事例となる。今回の導入に先立ち、音響芸術専門学校では10機種におよぶスピーカーの試聴会を実施しており、並み居るライバル機を押さえてこのEVE Audioが採用された格好だ。試聴会には同校の教員の中から、レコーディング・エンジニア、ディレクター、バンドマン、映像エディターなど、様々なバックグラウンドを持つ方々が参加し、多角的な視点でスピーカーを選定している。
試聴したすべての機種に対して、帯域ごとのバランス、反応の早さ、 全体的な印象などを数値化した採点を各教員がおこなったところ、このSC205ともう1機種の点数が目立って高かったという。「試聴会の段階ではまったく予備知識なしで聴かせてもらって、評価の高かった2機種の価格を調べたら、もう1機種とSC205には価格差がだいぶありました。SC205は随分コスパよくない?という話になり、こちらに決まったという感じです」とのことで、必然的に数多くのスピーカーを揃える必要があるイマーシブ・システムにおいては、クオリティの高さだけでなく費用とのバランスも重要であることが改めてわかる。SC205の音については「すごくバランスがよくて、ハイもよく伸びているし低音のレスポンスもすごくクイック。そして、音量が大きめの時と小さめの時であまりバランス感が変わらないところが気に入った」とのことで、 こうした特性も多数のスピーカーを使用するイマーシブ環境において大きな強みと言える。
そのEVE Audioは、リボンツイーターの実力をプロオーディオ業界に知らしめたADAM Audioの創立者でもあるRoland Stenz 氏が2011年に新たにベルリンで立ち上げたメーカー。ADAM Audioと同じくAir Motion Transformer(AMT)方式のリボンツイーターが特徴的だ。一般にリボンツイーターはドームツイーターと比べて軽量のため反応が早く、高域の再生にアドバンテージがある一方で、軽量であるがゆえに能率においてはドームツイーターに劣ると言われている。
これを解決しようとしたのがAMT方式で、この方式ではリボンが蛇腹状に折りたたまれており、折り目に対して垂直方向に電流が流れるように設計されている。すると、蛇腹のヒダを形成する向かい合った面には必ず逆方向の電流が流れるため、ローレンツ力(フレミングの左手の法則で表される電磁場中で運動する荷電粒子が受ける力)によってヒダは互いに寄ったり離れたりを繰り返す。この動きによって各ヒダの間の空気を押し出す形となり、従来のリボンツイーターと比べて約4倍の能率を得ることができるとされている。
また、EVE Audioは当初からDSPによるデジタル・コントロールをフィーチャーした野心的なブランドでもある。再生する帯域に対する適切なユニットのサイズ設計が難しいとされるリボンツイーターを採用しているEVE Audioにとって、クロスオーバーを精密にコントロールできるデジタル回路の搭載はまさに鬼に金棒と言えるだろう。アナログ的な歪みがそのブランドの味だと捉えることもできるが、スピーカー自体が信号に味をつけるべきではないというのがEVE Audioのコンセプトだということだ。
導入の経緯と今後の展望
2021年にApple MusicがDolby Atmosに対応したことをきっかけに、音楽だけでなくあらゆる分野で国内のイマーシブ制作への関心は年々高まっていると感じる。今回の音響芸術専門学校のイマーシブ・システム導入も、そうした流れを受けてのものかと考えていたのだが、専門学校と最新テクノロジーとの関係というのはそれほど単純なものではないようだ。
📷学校法人東京芸術学園 音響芸術専門学校 理事長/学校長 見上 陽一郎 氏
「最先端のものを追いかけても、それが5年後、10年後にはもう最先端ではなくなるし、なくなってしまっているかも知れない。2年間という限られた時間の中で、何がコアで何が枝葉かということは見極めていかないといけません。」と見上氏が言うとおり、軽々に流行りを追いかけてしまうと、学生が身につけなければならなかったはずの技術をないがしろにしてしまう結果になりかねない。専門学校と四年制大学のもっとも大きな違いは、専門学校が実際の現場で活用できる技術の教授をその主な目的としている点にある。それぞれの校風によって違いはあるものの、専門学校と比較すると、大学という場所は研究、つまり知的探求にかなりの比重を置いている場合がほとんどである。学生の卒業後の進路を見ても、大学で音響研究に携わった学生はオーディオ・エンジニアにはならずにそのまま研究職に就くことも多く、制作現場に就職する割合は専門学校卒業生の方がはるかに高いのだという。
極論すれば、大学ではステレオ制作を経験させることなくいきなりイマーシブ・オーディオに取り組ませることも可能であり、将来的にはそうした最新技術をみずから開発できるような人材の育成を目指しているのに対して、制作現場でプロフェッショナルなエンジニアとして活躍できる人材の育成が目的である専門学校にとっては、イマーシブ制作よりも基本となるモノラルやステレオでの制作技術を2年間で身につけさせるということの方が絶対的な命題ということになる。
そうした中で、同校がイマーシブ・システムの導入に踏み切ったきっかけのひとつは、実際に現場で制作をおこなうことになる専門学校生が在学中にイマーシブ制作に取り組むべき時期が来たと感じたからだという。「私はJASのコンクール(RecST:学生の制作する音楽録音作品コンテスト)の審査員や一般社団法人AES日本支部の代表理事を務めているのですが、そのどちらの活動においても、今は大学や大学院に在籍している方々が出してくる作品で2チャンネルのものというのは非常に少くて、大半がイマーシブ・オーディオ系なんです。ただし、 学生時代にそういったマルチチャンネル再生の作品を一生懸命作った大学生や大学院生の大半が、レコーディングエンジニアやMAエンジニアの道へ進まず、実際にその作品づくりをするエンジニアになるのは当校の卒業生など専門学校出身者が中心です。そこで、これからこういう分野リードしていくためには、やはり私たちの学校でもこうしたシステムを導入して、イマーシブ・オーディオ作品を専門学校生が生み出していくようにしないといけないよね、ということをこの2、3年じわじわと感じていたんです。」
導入されたばかりのイマーシブ・システムの今後の運用については、大きく分けてふたつのことを念頭に置いているという。ひとつは、すべての学生にイマーシブ・サラウンドという技術が存在することを知ってもらい、その技術的概要に関する知識を身につけ、実際の音を体験させるということ。「こういうシステムを組むときにはどういう規格に基づいて組まれているのかとか、どんな機材構成になっているのかとか。どのようなソフトを使って、どういう手順で作品が作られているのか。ここまでは全学生を対象に授業でやろうと考えています。つまり、卒業後に現場で出会った時に、イマーシブ・オーディオの世界というのが自分にとって未知のものではなくて、授業でやりました、そこから出てくる音も聴いています、というような状態で学生を世に送り出そうということです。これが一番ベーシックな部分で、全学生が対象ですね。」
もうひとつは、特に意欲の高い学生に対してカリキュラムの枠を超えた体験を提供すること。同校は27名のAES学生会員を擁しており、これは日本の学生会員の中では圧倒的に人数が多い。彼らはAESやRecSTを通して同年代の大学生たちのイマーシブ作品から大いに刺激を受けているようで、卒業制作で早速このシステムを使いたいという学生もいるという。そうした学生の意欲に応えるということも、今回の導入の理由になっているようだ。「2年生の夏ごろになると、2chなら大体ひと通りのことはできる状態になっています。そうした学生たちはこのシステムもすんなり理解できますね。もう、目がキラキラですよ、早く使わせろって言って(笑)。」
ちなみに、機器ラックの上にはPlayStation 4が置かれているのだが、 学校としてはこのシステムを使用してゲームで遊ぶことも奨励しているという。「語弊があるかも知れませんが、ここは学生に遊び場を提供しているようなつもり。作品づくりでもゲームでも、遊びを通してとにかくまずは体験することが重要だと考えています。」とのことだ。実際に学生はゲームをプレイすることを通じてもイマーシブ・オーディオの可能性を体験しているようで、ここでFPSをプレイした教員がとてつもなく良いスコアを出したと学内で話題になったそうだ。見上氏は「そうした話はすぐに学生の中で広まります。そうやって、興味を持つ学生がどんどん増えてくれたらいい」と言って微笑んでいた。
NYやロンドンへの出張の際は、滞在日数よりも多い公演を見るほどのミュージカル好きという見上氏だが、海外の公演で音がフロントからしか鳴らないような作品はもうほとんどないのだという。それに比べると国内のイマーシブ制作はまだまだこれからと言える。その意味で、将来、制作に携わる若者たちが気軽にイマーシブを経験できる場所ができたことは確かな一歩である。「このくらいの規模、このくらいのコストで、こういうところで学生たちが遊べて作品を作って...これが当たり前って感じる環境になってくるんだったらそれで十分ですよね」と見上氏も言うように、イマーシブ・オーディオ・システム導入に対する気持ちの部分でのハードルが少しでも下がってくれればよいと感じている。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
Review
2024/12/26
Waves新プラグイン『Immersive Wrapper』紹介レビュー!
Wavesより新プラグインImmersive Wrapperがリリースされました!こちらは全てのWavesモノラルプラグインを9.1.6chまでのイマーシブフォーマットに対応させてしまう革新的ツール。メーカー各社がイマーシブ対応プラグインを発表している最中、Wavesはマルチチャンネル・トラックの全チャンネルでモノ・プラグインを動作させる「マルチモノ」構成を用いることによって、自社の世界標準プラグイン群をそのままDolby Atmosミキシングに対応させる画期的手法を実現しました。
実際にアトモスミックスに携わられている方はオブジェクト用のグループを作成しトータルでコンプなどを使用する場面も多いでしょう。そういったイマーシブミックスのリアルなフローにも対応するグローバル・グループやサイドチェイン機能も備えた本製品は、Wavesがイマーシブミックスにおいても標準プラグインとして活躍する決定打となるのではないでしょうか。
ここからはイマーシブを推進する弊社スタッフ、バウンス清水による使用レビューをお届けします!
Waves / Immersive Wrapperレビュー by バウンス清水
こんにちは。RockoNパラダイス 今シブ店店長のバウンス清水と申します。
普段からImmersive Audio制作に力を入れており、Dolby Atmosのミックス、マスタリングを副業として行ったりもしております。
この度、Wavesから Immersive Audio制作のキラーアイテムが出たとのことなので、実際にDEMOしてみました。実際の使用感をレビューしていきます。
1.マルチチャンネルトラックにインサートして使用する方法
まずわかりやすいのがこの形だと思います。9.1.6chや7.1.4chのマスターを作ってミックスする人は多いと思いますが、そのトラックにインサートしてどんなWavesのプラグインもマスター処理で使用できるようになるということです!
そしてFront,Surround,Topsなどグルームに分けて設定を変更したりもできるのでSSLのBusCompをインサートして、Frontだけがっつりコンプをかけて、Topsはほぼかからないようにするなど自在です。さらにChを自分でカスタムして選択することも可能なので、L,C,R,Ltf,Rtfにまとめてコンプをかけて処理するなどフロント全面に対して処理したいなどもOK。もちろんEQもReverbもインサートできます。
H Reverbをインサートして、FrontはERだけ、SurroundはER/Tailまぜて、TopsはTailのみというような設定にするとFrontから来た音が手前に来て、上に抜けていくというようなReverbが作れてGoodでした!
2.オブジェクトトラックをまとめて処理する方法
私自身ほとんどオブジェクトでミックスしているので、9.1.6などのマスター処理ができるという部分にはそこまで興味をそそらなかったのですが、Immersive Wrapperはそれだけではない!”Global Group”という機能があり、処理をしたいオブジェクトトラックに全てImmersive Wrapperをインサートして、同一のグループにするとそれがまとめて処理できるようになります。SideChainに対応したDynamicsプラグインをインサートするとどのソースを入力ソースにするか決めることができるので、Kickを目立たせるために他のトラックをまとめてSideChainでキックをトリガーにCompをかけたり、、(これは実際にやってみましたがすごくよかったです。)
いままでフルオブジェクトでやっていて、課題と感じていた部分、Master処理での音作りをしているようなStereo曲に勝つためのサウンドメイクがImmersive Wrapperを使うとできそうな予感がひしひしします!
3.裏技?!Front,Surround,Topsに違うプラグインをインサート
マルチチャンネルトラックにインサートし使用して思ったことがあります。Front,Surround,Topsに違うプラグインをインサートしたいなと。Immersive Wrapperは仕様的に選択できるプラグインはひとつです。ただそれをやっているYoutubeの動画を見た気が、、と色々探っていると、、、
判明しました!!
SCHEPS OMNI CHANNELやCLA MixHubのようにプラグイン内にインサートポイントがあるプラグインを使用して、その中のインサートをそれぞれ変えることによって、FrontにMIX CENTRIC、SurroundにIDX、TopsにMM REVERBをインサートする。ということができました。これは激アツ!!!
ということでWaves のImmersive Wrapper。ガチで欲しいプラグインでした!
SCHEPS OMNI CHANNELなど、アイディア次第でとんでもないことができるアイテムに化けるモンスタープラグインではないかと震えております。
以上、バウンス清水でした!!
Waves / Immersive Wrapper
¥43,780(税込)
>>Rock oN eStoreで購入!
イマーシブ・プロセッシングの可能性をぐんと広げる製品の登場です。イマーシブ制作ツールやDolby Atmos環境の構築はROCK ON PROまでご相談ください。
レビューを担当したバウンス清水が構えるRock oN 新eStoreの特設コーナー「ROCK ON PARADISE 今シブ店」ではイマーシブオーディオの制作に役立つさまざまな情報を発信中!こちらも要チェックです!
Education
2024/12/26
立命館大学 映像学部 大阪いばらきキャンパス 様 / 驚きの規模感で整備された日本唯一の映像学部
2024年4月、大阪いばらきキャンパスへ移転した立命館大学映像学部。その移転は学部が入る建物から教室に至るまですべてが新設となるビッグプロジェクトとなった。映像学科のコンセプトに沿うように構成された最新機材の導入のうち、ROCK ON PROでお手伝いさせていただいた「映画芸術」ゾーンの施設を中心にご紹介していきたい。
最新のキャンパスへ移転
関西を代表する私立大学である立命館大学。その歴史は古く、1900年の京都法政学校を創設年として124年の歴史を持つ国内でも有数の歴史ある大学である。「立命」の名は、孟子の「尽心章句」の一節である「殀寿(ようじゅ)貳(たが)わず、身を修めて以て之れを俟(ま)つは、命を立つる所以(ゆえん)なり」に由来する。「自由と清新」の建学の精神と「平和と民主主義」の教学理念に基づき、精力的に最新学問分野を修める学部を設置している大学である。この精神は学祖である西園寺公望の国際的な感覚、新しいものへの柔軟な対応、そういったポリシーが受け継がれているのではないだろうか。
今回の移設先である立命館大学大阪いばらきキャンパスは衣笠、草津に次ぐ最新のキャンパスで2015年に開講した真新しいキャンパスである。JR京都線と近畿道に囲まれた立地となるため、移動中に目にしている方も多いのではないだろうか。ちなみに、このキャパス用地の前身はサッポロビール大阪工場である。こちらのほうが馴染みのある方もいるかも知れない。このキャンパスに作られたH棟へは今回ご紹介する映像学部と、情報理工学部が移転している。
日本唯一の総合大学における映像学部
📷Dolby Atmos Cinemaの認証を受けたシアター教室の入口。誇らしげにロゴが掲げられている。音響施工は日本音響エンジニアリング、シネコン等の施工実績のあるヒビノスペーステックがシステム工事を行っている。
ここへ移転した映像学部は、2007年に京都衣笠キャンパスで開講した、立命館大学にとって比較的新しい学部。現在の16学部の中で7番目に新しい学部となるそうだが、その2007年以降にも新設学部が数々あるということからも積極的に新しい学問分野を切り拓こうという立命館大学の姿勢がうかがえる。
映像学部(特に映画芸術ゾーン)は、衣笠キャンパスの直近にある太秦の松竹撮影所との産学連携での活動を行ってきたが、前述の通り2024年4月に大阪いばらきキャンパスに新しく建設されたH棟へと移転を行った。スタジオなどの設備も新規のキャンパスで完全新規での設計が行われ、移転におけるテクノロジー・ターゲットであるイマーシブ・オーディオへの対応を実現している。
芸術分野の学部の中に学科として映像の分野が設置されていることはあるが、こちらは学部として総合的に映像分野をカバーする国内でも稀有な存在。芸術系大学以外では唯一となる映像系の学部であり、単純に映像学部ということで括れば日本唯一となる学部である。また、芸術系の大学ではなく総合大学に設置されているということで、専門性の高い技術者を養成するというだけではなく、映像作品をクリエイトしプロデュースする、という内容の学習を行う学科であるということもその特色のひとつ。
映像学部にはその中に特定の学科が設置されているわけではなく、「映画芸術」「ゲーム・エンターテインメント」「クリエイティブ・テクノロジー」「映像マネジメント」「社会映像」の5つからなる学びのゾーンが展開されている。ゾーンと言うとわかりにくいかもしれないが、具体的には各分野の特色ある講義を選択し、3,4年時のゼミ選択で各分野に特化した学習を行うということになっている。実習授業では実際の映像作品制作を行うことを中心に、幅広い映像分野のテクノロジーに触れ、作品を作るための素養を学ぶということになる。本格的なプロの現場の機材に触れ、それを使用した制作を実習として体験する。どうしたら作品を作ることができるのか、作品を作るためには何をしなければならないのか、ということを総合的に学習しイノベーションあるクリエイターを輩出している。
設置されているゾーンを見ると映像に関連する幅広い分野が網羅されていることがわかる。今回お話を伺った「映画芸術」だけでも、プロデュース、監督、撮影、照明、脚本、演出、音響と7つの分野に特化した実習授業が設置されているということだ。実写からCG、ゲーム、VRに至るまで映像を使った表現すべてを学ぶことができる。そして、それらをプロデューサー目線で学ぶことができるというのが映像学部の最大の特長であろう。
1年時には、実習授業で短編作品を制作し、一つ一つの機材の使い方やその役目を学びながら手探りで作品創りというものに向きあう。その際にも教員は、何を伝えたいのか?何を表現したいのか?という全体像を学生自身が考えた上で、制作をサポートしているということだ。また、「映画芸術」のゼミを受講する学生は、卒業制作として1本の映像作品制作が必修となる。芸術系の大学であればその作品自体が卒業制作となるが、映像学部では作った映像作品に対して自身の学んできた分野に依った解説論文を書き、教授陣の口頭試問を受けるということだ。作品を作るということはあくまでも結果であり、それまでのプロセス、工夫、課題や成果などを考察することで全体を俯瞰した視点を学んでいく。まさにプロデューサー的な視野を持つということを目的としていることがよく分かるカリキュラムである。
立命館大学 映像学部
松蔭 信彦 教授
1961年 大阪生まれ。日本映画・テレビ録音協会会員。
1981年 フリーの録音助手として東映京都テレビプロダクションで、『銭形平次』 (主演大川橋蔵)、『桃太郎侍』(主演高橋英樹)など TV 時代劇を中心に従事した 後、映画『夢千代日記』『吉原炎上』『華の乱』など助手で参加し、1991年『真夏 の少年』で映画録音技師デビュー。以後、映画・TV ドラマ等で活動する。 主な作品歴は『魔界転生』、『男たちの大和 / YAMATO』、『憑神』、『利休にた ずねよ』、『海難 1890』、『エリカ 38』(整音担当)、『名も無い日』(整音担当) など、二度の日本アカデミー賞最優秀録音賞受賞、二度の日本アカデミー賞優秀録音 賞受賞。現在、立命館大学映像学部で後進の育成にも尽力している。
教室、MA、Foley、シアター、驚きの規模感
それでは、大阪いばらきキャンパスの映像作品に対する音響制作のための学習設備を列挙して紹介していきたい。5.1chのサラウンドを備えたMA1、Dolby Atmosの設備を持つMA2、そしてそれぞれのMA室に対応したSound Design Room1(5.1ch)、2(Dolby Atmos)。MA1,2には共有のアナウンスブースが設置されている。さらに、ADRとFoleyがある。ADRとFoleyはL,C,Rの3chのモニター環境が備わっており、収録で使用されていない際には仕込み作業を行える環境としても考えられている。さらに、基礎的な機器の操作を学んだり、ヘッドホンでの仕込み作業に使用される音響編集実習室がある。映像編集など総合的な確認用の設備として、Dolby Atmos Cinemaの視聴が可能なシアター教室。スクリーンでのグレーディングを実現するスクリーニングルームは、小規模な試聴室としての機能も持ち、こちらもDolby Atmos Homeの視聴環境を備えている。映像編集に関しては、8つの編集室と実習用のPCが並んだ教室とCGやデジタルアーカイブ用の実習室が2室あるという充実の環境。
このように、ざっと挙げただけでもその充実ぶりはおわかりいただけるだろう、これでも本誌執筆時点では「ゲーム・エンターテインメント」「映像マネージメント」のゾーンが衣笠キャンパスにまだ残っており、衣笠キャンパスと松竹スタジオをサテライトとして運用されているということ、驚きの規模感である。映像学部の1学年の定員は、2024年度から240名。前年までは160名だったということなので、大阪いばらきキャンパス移転で設備が増強されたことで1.5倍に増員されたということになる。
実習室
📷各デスクにiMacが設置され、Audio I/FにSSL2+、HPアンプ、スピーカーが準備された音響編集実習室。Pro Toolsがインストールされ、ここでDAWの操作方法などの実習授業が行われる。空いている時間には自由に使うことができるため、作品の仕込み作業などを行う生徒も多いということだ。
📷左)こちらは映像編集実習室となる。Avid Media Composer、Adobe Premier、Blackmagic Design DavinciがインストールされたWindowsでの実習が行われる。NLEを使った様々な作業を充実のスペックの環境で学ぶことができるこの実習室、さすがに各席にMaster Monitorは設置されていないが、プレビュー用にEIZOのColorEdgeシリーズが採用されている。中)シンプルにPCディスプレイが並んでいるこの部屋はCG編集実習室。WindowsベースでCG制作の実習が行われる部屋だ。完成した作品を書き出すレンダリング作業を行うために、別途サーバールームにレンダリングファームが準備されている。右)音響編集実習室を学生側から見るとこのような具合だ。DAWでの作業を行うための十分な環境が整えられていることがわかる。
履修争奪戦?人気講座を生む設備
それぞれの設備の内容に触れていこう。まずは、1~2回生の実習で主に利用されるMA1。5.1CHのサラウンド・モニター環境を備えたダビング規模の部屋となる。必修授業でも使うということで多くの生徒が着席できるようになっているこの部屋は、3台のAvid Pro Toolsが導入されている。「映画芸術」ということで映画のダビングを模したシステムアップが行われており、ダイアログ、効果音それぞれの再生用Pro Toolsとダビング用のレコーダーPro Toolsの3台体制である。このシステムにより、映画ダビングで何が行われているのか、どのようなワークフローで作業が行われているのかを実習の中で体験することができるようになっている。
サラウンドシステムに関しては、ウォール・サラウンドではなくシングル・スピーカーによるものだが、実際のウォールサラウンドでの視聴を体験するためにシアター教室が存在しているので、MA室ではそこまでの設備は導入していないということだ。ただし、以前の衣笠キャンパスでは試聴室に唯一の5.1chシステムがあるのみであったことからすると、大きくその環境は進化したと言えるだろう。実際のところ、後述するMA2でのDolby Atmos視聴の体験とともに学生のモチベーションも上がり、今期3回生のゼミ課題の作品では5本の5.1ch作品が制作された。
MA1
📷MA1と呼ばれる5.1chサラウンドの部屋がこちら。32fader仕様のAvid S6が導入され、Dialog、SE、Dubber3台のPro Toolsによるダビング作業の再現が行えるシステムが組まれている。それぞれのPro ToolsにはAvid MTRXがI/Oとして採用されており、最新のシステムが構築されている。スピーカーはGenelecの8461が特注で作られたスタンドに置かれている。さすがにL,C,Rchすべてをスクリーンバックに設置するのは無理があったため、センタースピーカーのみスクリーンバックへの設置となっている。教室ということもありスクリーン脇には演台がある。この写真後方には授業の際に学生が座るベンチシートが置かれている。
📷左)このMA1に対応した仕込み部屋がこちらのSound Design 1。スピーカーにはGenelecの8431、コンソールはAvid S4というこちらも充実の仕様だ。MA1との使い勝手含めた互換性を考えて作られた仕込み用の部屋となる。右)MA1に導入された32fader仕様のAvid S6。
そして、3~4回生の音響実習の講義室としても活用されているMA2。こちらは今回導入にあたってのコンセプトであるイマーシブ・サウンドを実践するために、Dolby Atmos Home準拠の設備を持ったMA室だ。衣笠キャンパス時代の音響実習は定員を満たさないこともあったそうだが、やはりDolby Atmosでの視聴体験という新しいMA2室の魅力の成せるところで、大阪いばらきキャンパスに移転した途端に倍率1.5倍となる人気講座になったそうだ。ちなみに、実習講座を受講することでその設備の使い方を学べば、その後は自由に空き時間でそれらの部屋を使うことができるようになるということ。この仕組みは設備利用のライセンス制だと教えていただいたが、1.5倍という高倍率はこの利用ライセンスを獲得するための履修争奪戦という様相を密かに現しているのかもしれない。
MA2には3台のPro Toolsが設置されている。それぞれの役割はMA1と同様にダイアログ、効果音、ダビングであるが、こちらではさらにDolby Atmosを学ぶためにHT-RMUが導入されている。単独で準備されたHT-RMUはHome対応のものではあるが、Cinemaであったとしてもシグナルのルーティングなどに差異はなく、ワークフローも同一であり、映画のダビングのシステムを理解するための設備としては十分なものである。
これらのMA室に対応した仕込み部屋となるのがSound Design 1と2。Sound Design1はMA1に対応している5.1chの仕込み部屋。Sound Design 2はMA2に対応したDolby Atmos視聴が可能となる部屋である。それぞれPro Toolsは1台が設置された環境となっている。学生に開放されたこのようなサラウンド対応の仕込み設備があるということ自体が珍しいなか、Dolby Atmos環境の部屋までが提供されているのは本当に贅沢な環境である。
MA2
📷Dolby Atmos Homeに対応した7.1.4chの再生環境を備えたMA2。スピーカーはGenelec 8441が採用されている。すべて同一型番のスピーカーということでつながりの良いサラウンド再生環境が実現されている。スクリーンは150インチと大型のものが導入され、「映画芸術」ゾーンとして映画を強く意識した設備であることがわかる。なお、L,C,Rchのスピーカーはしっかりとこのスクリーンの裏に設置された「映画」仕様である。コンソールはAvid S6 24Fader、この導入により他の部屋と共通した操作性を持たせることに成功している。もちろん、このAvid S6とDolby Atmosの制作環境の親和性に関しては疑いの余地はない。MA1と同様のDialog、SE、Dubberの3台に加え、HT-RMUも導入された4台体制でのシステムアップとなっている。
📷左)MA2に対応したSound Design 2がこちら。こちらもGenelec 8431による7.1.4chの設備である。Avid S4との組み合わせで高い互換性を確保した仕込みの設備となっている。Dolby Atmosのレンダラーに関しては、Pro ToolsのInternal RendererもしくはStand alone Rendererによる作業となっている。右)こちらのMA2に導入されたのはAvid S6 24Faderだ。
📷左)MA1、MA2の間に設置されているアナウンスブース。横並びで2名が座れるスペースが確保されている。カーテンが開けられている方がMA2、閉まっている右側の窓の向こうがMA1である。収録用のマイクプリにはGrace m108が準備され、マイクはNeumann U87Ai が常備されている。Avid S6のコンソール上からもリモートコントロールできるようにセットアップされている。右)MA1,2共用のマシンルーム。左右対称に左側にMA1の機材、右にMA2の機材が設置されている。KVMとしてはIHSEが採用されており、MA1,2すべてのPCがKVM Matrixに接続されている。PCに関してはMacProとMacStudioが導入されている。
それでは、ここからは立命館大学 映像学部の充実したファシリティをブロックごとにご紹介していこう。
Foley
📷L,C,Rchのモニターが置かれたFoleyのコントロールルーム。この部屋もGenelec 8431が採用されている。Avid S4が設置されており、仕込み部屋としての使い勝手も考えられた仕様となっている。マイクプリにはGraceのm108が各部屋共通の機材として導入され、Avid S4からのリモートコントロールを可能としている。Foley Stageも充実の設備で、水場から足音を収録するための数々の種類の床が準備されている。部屋自体の広さもあり、国内でも有数の規模のFoley Stageとなっている。そして何と言っても天井が高いので、抜けの良い音が収録できそうな空間である。またこの写真の奥にある倉庫には多種多様な小物などが収納されている。Foleyに使われる小物の数々はそのFoley Stageの歴史でもあり、今後どのような小物が集まって収められていくのか数年後にも覗いてみたいところである。
ADR
📷こちらもL,C,RchにGenelec 8431が置かれたADR。ブース側は十分な広さがあり、4人並びでのアニメスタイルの収録にも対応できるキャパシティーを持っている。天井も高いのでマイクブームを振っての収録も可能だろう。アフレコ、音楽収録どちらにも対応のできる広い空間である。この部屋だけが唯一Avid S1の設置された部屋となる。収録用のマイクはNeumann TLM103、KM184,Audiotechnica AT4040といった定番が揃っている。
サーバールーム / レンダリングファーム
📷今後の拡張を考えた余裕のあるスペースにサーバールーム、兼レンダリングファームが置かれている。実習用のファイルサーバーとしてAvid Nexisが導入されMAルームなど3~4年生が卒業制作を行う部屋のPCが接続されている。PCがずらりと並んだ実習室はその台数があまりにも多いため接続は見送っているということだ。デスクトップPCが棚にずらりと並んでいるのがレンダリングファームである。処理負荷の大きいレンダリング作業をPCの並列化による分散処理を行うことで効率的に完成作品を作ることができる。このような集中して処理を行う仕組みを導入することで、教室の個々のPCのスペックを抑えることができるスマートな導入手法だと感じるところだ。
映像編集室
📷卒業制作などの映像編集を行うための部屋がこちら。SONYのMaster Monitorが置かれたしっかりとした編集室になっている。PCにインストールされているソフトは実習室と同じくAvid Media Composer、Adobe Premier、Blackmagic Design Davinciとのこと。この設備を備えた映像編集室が8部屋も用意されている。この規模感は大規模なポスプロ並みである。それでも卒業制作の追い込み時期になるとこれらの設備は争奪戦になりぎっしりとスケジュールが埋まってしまうということだ。学年あたりで240名も在籍しているのだからこれでも足りないくらいということなのだろう。
Theater
📷約280席のスタジアム状に座席が並んだ大教室がこちらのシアター教室。写真を見ていただいてもわかるようにただの大教室ではなく、Dolby Atmos Cinemaの上映が可能な部屋である。BARCOのシネマプロジェクターとDCPプレイヤーにより映画館と遜色ないクオリティーでの上映が可能である。オーディオもDolby CP950が導入されたDolby Atmos認証の劇場となっている。スピーカーはJBL、パワーアンプはCROWN DCiシリーズ、プロセッサーはBSS BLUと昨今のシネコンなどでの定番の組み合わせである。通常の授業で大教室としての利用や、学生の作品の視聴など様々な用途に活用されているとのこと。将来的にはこの教室にコンソールを接続してダビングとして活用できないかという壮大なアイデアもあるということだ。そうなったら国内最大のダビングステージの誕生である。ぜひとも実現してもらいたい構想だ。
Screening Room
📷30席程度の座席を持つScreening Room。メインの用途としてはカラーグレーディングのための設備だが、そこにDolby Atmos Homeの再生環境が導入されている。これは試写室としての活用も考えられた結果であり、映像はもちろんだがオーディオも充実した視聴環境が構築されている。ウォール・サラウンド仕様の7.1.4chの配置で、JBLのシネマスピーカーが設置されている。フロントのL,C,Rchはもちろんスクリーンバックにシネマスピーカーの採用である。プロジェクターにはDCP Playerも登載され、試写を行う気満々のシステムアップとなっている。
お話を伺った、映画サウンドデザインを専門とする松陰 信彦 教授は、長年映画の録音技師として活躍をされてきた方。研究室にお邪魔したところ、博物館クラスのNAGRAやSONYのポータブル・レコーダー(その当時は持ち運べること自体に価値があった!)が完動状態で置かれていた。映画録音に対する深い造詣、そしてそれを次世代へと伝える熱い思い。学生には「今しかできないこと、社会人になったらできないかもしれないことを、この環境で学び実践して欲しい」という思いを持っているということ。大学であるからこそ、その設備と時間を大いに活用して取り組めることも多いし、それを実現できる環境を整えていきたいとのことだ。機材面はもちろんのこと、技術サポートやノウハウの共有などで私たちも連携し、その想いを支えていければ幸いである。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
Brand
2024/11/12
Non-Lethal Applications / Video Sync 6 Pro
人気の映像再生ソリューションが最新バージョンにアップデート
既存のビデオコーデックのほとんどに対応し、キャプチャーやアプリケーションへのコピーなしでビデオファイルを直接再生できる手軽さや、大きさや位置をカスタマイズできるTCカウンターの表示機能などで人気のVideo Sync Pro。その最新バージョンとなるVideo Sync 6 Proがリリースされました。
MTC/MMCを使用することでほとんどすべてのDAWのタイムラインに同期することができる従来の機能に加え、前バージョンで実装された同一マシン内でのAvid Statellite LinkによるPro Tools | Ultimateとの緊密な同期再生により、プロフェッショナルな現場に滑らかなワークフローを提供します。
最新バージョンVideo Sync 6 ProはついにWindows OSに対応。また、60fpsなどの高フレームレートビデオの再生をより安定したものにするハードウェアレンダリング機能を実装しました。
デモ版ダウンロード(Mac)>>
デモ版ダウンロード(Win)>>
ご購入はこちら>>
Video Sync 6 Pro 主な新機能
複数のメディアをインポートする際に多彩なオプションを追加
複数のメディアをタイムラインへスポットする際に、オプションを設定することが可能になりました。任意の間隔を空けてひとつのトラックにスポットする、同一のスタートポイントで複数のトラックに並べる、など、多彩な選択肢によってワンアクションで数多くのメディアをタイムライン上に配置することができます。
NDIアウトプットをサポート
Video Sync 6 Proでは、NDIデバイスへの出力に対応しました。従来通り、複数のアウトプットへ同時にビデオを出力、ディレイ値や解像度、オーバーレイの有無などを個別に設定可能です。ピクチャ・イン・ピクチャ、または、横並びの配置でふたつのビデオトラックをひとつのデバイスに出力することも可能。テイクの比較やセリフ/フォーリー録りのためのタイミング合わせなどに活用できます。
その他の新機能
-Windows OSのサポート
-MacバージョンでのOpenGLに変わるデコーディング方式の採用
-Dolby Atmos Renderer使用時に自動的にディレイ値を補正
主な機能
DAWと同期したシンプルでパワフルなビデオ再生
Video Sync はMIDIタイムコードと同期したシームレスなプレイバック環境を提供します。メジャーなDAW(Pro Tools,Logic Pro X,Cubase,Nuendo,Studio One,etc.)との同期を実現。タイムコードを生成できるDAWであればほとんどのソフトウェアとの同一PC内部での同期が可能です。Video Sync の同期エンジンは、驚くほど速いロック時間と緊密な同期を保証します。多くの場合、DAWに内蔵されているビデオエンジンを使用するよりも優れています。
Pro Toolsとの同期ではAvid Satellite Linkを使用することが可能。Pro Toolsと同一Mac内での同期、別々のホスト上での同期のいずれにも対応しています。
GPUサポートレンダー機能を持つカスタム映像再生エンジン
Video SyncはPro Res、H.264、AVC Intraなど、現在よく使用されるコーデック、および、QuickTime、MXFなどのコンテナに対応しています。
ムービークリップをあなたのDAWが読み込めるフォーマットにトランスコードする為に、時間を無駄にしないでください。ビデオクリップをVideo Syncにドラッグ&ドロップするだけで再生が可能です。Video Sync 5 Proはその優れたビデオ再生能力によって、あなたの貴重な時間を節約してくれます。
柔軟性を備えたビデオデバイスのサポート
Video Syncは、Blackmagic DesignとAJAの幅広いビデオハードウェアデバイスをサポートしています。Video SyncはSyphon frameworkもサポートしているため、ビデオフレームを他のソフトウェアアプリケーションと簡単に共有できます。
Video Syncは接続されているすべての外部ビデオデバイスだけでなく、内部のプレーヤービューにも同時に映像を出力出来ます。これにより、すべてのディスプレイで完全に同期したビデオ再生を約束します。また、プロジェクターを使用する場合は、簡単に遅延補正を掛けることも可能です。
カスタマイズ可能なムービー書き出し機能
どんなワークフローにも不可欠なものが、様々な状況に合致するよう、柔軟な形式でムービーを書き出せる機能です。ディレクターのために、音楽が追加された後の映像を書き出す必要がありませんでしたか?またはプログラムされたビジュアルキューを使ってムービーを書き出してスコアリングステージに送らなければならないことがありませんでしたか?
Video Syncは柔軟な書き出し機能でこれらを実現します。Video Sync 6 Proは、ビデオとオーディオコーデックの選択、オーディオを含めるか含めないかの選択など、柔軟な出力オプションを提供します。
その他の機能
強力なオーバーレイ機能による作業環境の改善
Video Sync 5の機能の1つにフレキシブルなオーバーレイがあります。タイムコードとフィート/フレームを切替え可能なシンプルなオーバーレイから、ストリーマー、マーカー、フラッターまで、あらゆる種類のビジュアルキューをピクチャに重ね合わせることが可能で、様々な場面で役立ちます。
キュー関連のオーバーレイはVideo Sync内で直接プログラムすることもできますが、DAWやキーボードやトリガーパッドなどのMIDI互換機器から直接トリガすることもできます。
プロフェッショナルなオーディオ機能
Video Syncは、トラックあたり最大8チャンネルのムービー上のすべてのオーディオトラックの再生に加え、DAWと同じように、作成したオーディオトラックにファイルをドラッグ&ドロップで読み込むことが可能です。Video Syncはオーディオ波形を表示し、DAWと同じように、柔軟な出力バスへのルーティングや、ソロ、ミュート、ボリューム、パンなどの標準的なオーディオコントロールを個別のトラックごとに提供します。
タイムライン編集機能
たとえフィルムで撮影された長編映画の作業をするとしても、CM、TV番組のシーズン全体、またはWEBドラマの制作をするとしても、Video Syncのタイムライン機能がカバーします。
Video Syncではプロジェクトの中に複数のタイムラインを持つことができ、各タイムラインは複数のビデオとオーディオのトラックを持つことができます。複数のビデオクリップを使用して作業するときでも、複数のタイムラインで作業する、ひとつのタイムラインにまとめて複数のビデオトラックを使用するなど、どのようなワークフローにもマッチした使い方が可能です。ビデオやオーディオクリップをインサートする、フルバージョンとコマーシャル用のショートバージョンを別々のタイムラインに分ける、これらすべてをひとつのプロジェクトの中で、最小の手間で実現します。
システム要件(Mac)
OS:macOS 10.15 Catalina 以降
CPU:Intel i5以上、Apple Silicon M1以上
RMA:8 GB以上
Graphics:Metal compatible GPU
対応ビデオデバイス:
Blackmagic Design DeckLink、UltraStudio、Intensity シリーズ
AJA KONA、Io、T-TAP シリーズ
システム要件(Win)
OS:Windows 10 22H2以降、Windows 11 22H2以降
CPU:Intel i5 (第8世代以降)、AMD Ryzen
RMA:8 GB以上
Graphics:AMD RまたはRXシリーズ以降、NVIDIA Series 700以降
対応ビデオデバイス:
Blackmagic Design DeckLink、UltraStudio、Intensity シリーズ
AJA KONA、Io、T-TAP シリーズ
製品ラインナップ
Video Sync 6 Pro
-Video Sync 6 Pro 新規ライセンス
販売価格:¥90,090(税込)
Rock oN Line eStoreでのご購入はこちらから>>
Upgrade from Video Sync 5 Pro to Video Sync 6 Pro
-Video Sync 5 Proからのアップグレード
販売価格:¥34,980(税込)
Rock oN Line eStoreでのご購入はこちらから>>
Upgrade from Video Slave 4 Pro to Video Sync 6 Pro
-Video Slave 4 Proからのアップグレード
販売価格:¥45,980(税込)
Rock oN Line eStoreでのご購入はこちらから>>
NEWS
2024/10/29
Pro Tools 2024.10がリリース!音楽・オーディオポスト両面での機能強化を実施
Pro Tools最新バージョンとなる2024.10がリリースされました。有効なサブスクリプションまたは現在アップグレード・プラン加入中の永続ライセンスをお持ちのすべてのPro Toolsユーザー、および、すべてのPro Tools Introユーザーがご利用いただけます。
(Avid LinkおよびAvidアカウントで利用可能になるまでに24時間から48時間かかる場合があります。)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools 2024.10ソフトウェア・アップデイトでは、Steinberg SpectraLayersとWaveLabのARA 2プラグインのサポート、Native Instruments Kontakt 8 Playerとコンテンツの追加、510kとBLEASSからのMIDIエフェクトプラグインなど、音楽とオーディオポストの両方のお客様向けの新機能が導入されています。
このリリースでは、MIDIプレイリソフトウェア・アップデートトトップのドラッグ&ドロップによるバーチャル・インストゥルメントへのドロップ、Dolby Atmos機能の強化なども行われています。
Pro Tools 2024.10 リリース - 新機能
Kontakt 8がPro Toolsのサンプルベースのインストゥルメントを強化
Steinberg SpectraLayers ARA 2 サポート
Steinberg WaveLab ARA 2 サポート
BLEASS Arpeggiator MIDI プラグイン
510K SEQUND LITE: ポリリズミック・シーケンシングへの入り口
主な新機能
Pro Tools ARAエコシステムがSteinberg SpectraLayersとWaveLabのサポートで拡大
2024.10 では、Steinberg の SpectraLayers プラグインと WaveLab プラグインの ARA 2 サポートが追加されました。Celemony、iZotope、Sound Radix、Synchro Artsなど、さまざまなソリューションに対応する既存のARA統合と組み合わせることで、オーディオをラウンドトリップすることなく、Pro Toolsでこれらのツールを非常に迅速かつ簡単に活用できます。さらに、有効なサブスクリプションと永続アップグレード・プランをお持ちのお客様は、このリリースの一部として Steinberg SpectraLayers Go と WaveLab Go を自動的に受け取ることができます。
SpectraLayers Go
SpectraLayers Goは、手動、自動、およびAI支援の編集ツールとプロセスの強力な組み合わせを特徴とするスペクトルオーディオエディタです。SpectraLayersを使用すると、非常に詳細なスペクトログラムでオーディオを視覚化し、レイヤーベースの編集を探索したり、AI支援アルゴリズムを使用して音楽からボーカルトラックを抽出したりすることができます。これらのツールは、リペアとリストア、音楽とポストプロダクションのミキシングと編集、クリエイティブなサウンドデザインなど、さまざまなオーディオワークフローに使用できます。
WaveLab Go
WaveLab は、業界全体で使用されている包括的なマスタリング、編集、サウンドデザイン・ソリューションです。WaveLab Goは、Pro Tools内で直接使用できるWaveLab編集環境の機能を提供します。Spectrogram、Rainbow Display、Global Loudness Analysis、LoudnessCurveなど、広範なリアルタイムのオントラック視覚化および分析ツールが活用可能です。ReSynthesisを使用した破損したオーディオの修復から、周波数とピークの問題の解決、M/Sオーディオの編集など、WaveLab Goには、非常に正確かつ直感的に作業を行うためのツールが含まれています。
Native Instruments Kontakt 8 : Pro Toolsサウンドの世界に色彩を!
AvidはNative Instrumentsと提携し、最新のKontakt 8 Playerおよび厳選されたインストゥルメント・コレクションをPro Tools全レベルに含めることになりました。Kontakt 8は、Native Instrumentの業界をリードするバーチャルインストゥルメント・プラットフォームのメジャーアップデートであり、ウェーブテーブルシンセシス、統合MIDIツール、ループやサンプルの再生と操作の新しい方法であるLeapなどの新機能が追加されています。
すべてのPro Tools製品には、Kontakt 8 PlayerとPro Tools Factory Essentialsインストゥルメント・ライブラリが含まれますが、アクティブなサブスクリプションと永続アップグレード・プランをお持ちのお客様はNative Instruments Hybrid Keysも入手でき、さらに、アクティブなPro Tools StudioとUltimateのお客様はNative Instruments Soul Sessionsを追加で入手可能です。Kontakt 8 Playerとインストゥルメントが加わることで、Pro Toolsで音楽を作成するための刺激的な新しい方法が提供され、今後はPro Tools | Sonic Dropプログラムにて、あなたの創造性を刺激するKontaktの新しいインストゥルメントが追加されていく予定です。
510kとBLEASS :MIDIプラグインで音楽のアイデアを創造!
2024.10 では、Pro Tools のお客様に、新しい音楽のアイデアを生成して実験するための 2 つの強力な MIDI プラグインが提供されています。510k SEQUND Liteは、ポリリズムを簡単に探索できる直感的なシーケンサーです。グルーヴ感あふれるエキサイティングなベースラインやセンター感あふれるメロディーなど、SEQUNDのインターフェースにはMIDIノートで瞬時に呼び出すことができるさまざまなパターンが含まれており、シームレスなトランジションと驚異的なタイミングでパターンをその場で変更することができます。
オーディオ・ディベロッパーでもあるBLEASSがトップミュージックプロデューサーのCanblasterと共同で開発したBLEASS Arpeggiator MIDIエフェクトプラグインは、従来のアップダウンパターンを超越し、ポリリズムとポリフォニー、高度に構成可能なアルペジオの大規模なコレクションを提供します。直感的なインターフェースは自発的な実験を促し、XYパッド、高度なLFO、モーションシーケンサーにより深いモジュレーションが可能になります。
510k SEQUND LiteおよびBLEASS Arpeggiatorプラグインは、アクティブなサブスクリプションと永続アップグレード・プランをお持ちのすべてのPro Toolsのお客様にご利用いただけます。
MIDIプレイリストで完璧なパフォーマンスを実現
通常、完璧なパフォーマンスをキャプチャするには、複数のテイクが必要です。Pro Toolsのオーディオ・プレイリストは、長年にわたって数え切れないほどのアーティストに使用されてきましたが、Pro Tools2024.10の新しいMIDIプレイリスト機能により、複数のMIDIテイクをレコーディングし、それらを簡単にコンピング及び編集を行い目的の結果を得ることができるようになりました。
クリップをバーチャル・インストゥルメントに簡単にドラッグ&ドロップ
モノラルおよびステレオクリップをPro Toolsのタイムライン、クリップリスト、またはワークスペースから直接サンプラーまたはドラムシーケンサープラグインにドラッグ & ドロップして、ユニークなインストゥルメントを作成できるようになりました。クリップをGrooveCellのような様々なAAXバーチャル・インストゥルメントに直接ロード可能となり、特にNative Instruments Kontakt 8 Playerの新しいLeapフレームワークでは、音楽制作とサウンドデザインの新たな音の可能性を切り開きます。
その他の新機能
MIDI エディターのフォーカスビュー
MIDIエディターのピアノロール表示で、ドラムプログラミング等に便利な、使用しているキーのみを表示可能となります。
インストゥルメントトラック上のインプットモニタリング
インストルメントの出力をリアルタイムで確認可能になりました。
DolbyAtmosスピーカーミュート
Dolby Atmosでミキシングするときに、特定のモニタリングチャンネルをすばやくトミュート/ソロする方法を提供します。
インポートセッションデータの改善
トラックの選択とインポートアクションを分離し、さまざまな種類のインポートアクションをトラックのバッチに簡単に適用できるようになり、複雑なセッションや要件でのインポートプロセスが高速化されました。
タブシステムの表示/非表示
表示されるタブの設定をすばやく設定する方法を提供し、タブシステムから未使用のARAプラグインを非表示にして、視覚的な使いやすさを向上させることができます。
2024.6で大幅にパワーアップしたARA機能に、さらにSTEINBERG SPECTRALAYERSとWAVELABが追加。また、Native InstrumentsとのコラボレーションによるPro Tools専用音源の実装など、サードパーティとの連携を広げることで業界スタンダードDAWとしてより使いやすくなるPro Tools。
ご購入の相談はROCK ON PRO、または、Rock oN Line eStoreまでお気軽にお寄せください。ROCK ON PROではPro Tools HDXシステムをはじめとした業務用制作システムの設計・販売のご相談も随時受け付けております。
Sales
2024/10/16
Nuendoが半額に!「Nuendo Mega Sale 2024」実施中!
ポストプロダクション、ゲーム、ミュージックと世界中のスタジオで愛用されているSteinberg Nuendoが半額となる「Nuendo Mega Sale 2024」が実施中です!
最新バージョンであるNuendo 13では、AIによる音声ノイズ除去プラグインVoice Separatorや音源のニュアンスを合わせるTonal Match、ボイス処理エフェクトが一括で扱えるVocalChainなどの新規プラグインのほか、日本でも次世代地上波放送の音声規格に採用されるMPEG-H制作の完全サポート、Dolby Atmos Home 9.1.6対応とまさに一線級のプロフェッショナルツールとなっています。
そんなNuendoを半額で手に入れられるこのチャンスを絶対にお見逃しなく!
セール概要
Nuendo Mega Sale 2024
◎内容:Nuendo対象製品を半額の特別価格で販売
◎期間:2024年10月30日(水)まで
◎対象製品
Steinberg / NUENDO 13(DL版)
市場想定価格 ¥141,900(税込)
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2024/09/03
よくわかるAoIP臨時特別講座!「AES67ってなに?」〜AoIPのいま、未来を知る。〜
AoIP、ネットワークオーディオを採用した放送局やレコーディング現場では、従来の(メタル)ケーブルからイーサネットケーブルに取って代わり、IPパケットで音声信号を伝送することで大きなメリットを実現していますが、ご存知のとおりでいくつもの仕様やプロトコルが存在していて、一般ユーザーには若干わかりにくい状況であることは確かです。そして、購入したばかりだというAoIPであるAES67対応の機材を手に「これをしっかり知り尽くしたい!」と意気込んでいるのが今回の講座にやってきたMクン。そんなMクンにROCK ON PRO 洋介がネットワークオーディオの世界を紐解きます。
まずは、AoIPってなに?
Mクン:Dante、RAVENNA、AVB、いくつものオーディオネットワーク規格があって制作現場でも目にすることが多くなってきたんですが、その中でもAES67についてお話を伺いたいんです。
ROCK ON PRO 洋介:なるほど。ところでなんでまた今日はAES67?
Mクン:実はNeumannのスピーカー KH 150 AES67モデルとオーディオインターフェースのMT 48を購入したんです。AES67に対応した製品なんでせっかくなら使いこなしてAES67の恩恵に授かりたいな、と。まずは「AoIPってなに?」というところから教えてもらえませんか?
洋介:了解しました! AoIPは「Audio over Internet Protocol」の略で、TCP/IPベースのイーサネットを使ってオーディオ信号をやりとりする規格です。AoIPのメリットとしてどういうことがあるかというと、信号分配の際に分配器を必要とせず、汎用のイーサネットハブで1対多数のオーディオを含む信号を簡単に送れることです。もうひとつは、1本のケーブルで多チャンネルを送れることですが、多チャンネルオーディオ転送規格に関してはMADIがありますし、またずっと以前からはADATがありますよね。その中でもAES67が優れている点は、回線の通信速度が現在主流となっている1ギガビットイーサネットであれば256ものチャンネルを転送可能だということです。
Mクン:少ないケーブルで多チャンネル送れるというのは、経済的にも、設定や設置の労力的にもメリットですよね。
洋介:実は挙げられるメリットはまだあって、1本のケーブルで「双方向」の通信を行えるのも大きいメリットです。イーサネットケーブル1本に対し、In / Outの概念がなくなるので繋ぎ間違えもなくなりますよね。あとDante Connectが登場して、クラウドネットワークを介した世界中からの接続ができるようになってきているので、遠隔地とのやりとりも特殊な環境を必要とせず汎用の製品やネットワークを使えることでコストの削減を図ることができます。少し未来の話をすると、ダークファイバー(NTTが保有する光回線のうち使用されていない回線)を使えば、汎用のインターネット回線の速度を超えたデータ転送が遠隔地間でもローカルエリア上として行える可能性があります。例えば、東京と地方のオフィスを繋ぐ場合に物理的に離れていても両拠点は同じネットワーク上にいる状態にすることができてしまうんです。
Mクン:ダークファイバーを使って遠隔運用しているところはあるんですか?
洋介:ありますよ。放送業界が先行していて、離れた支局間でダークファイバーを引いている事例があります。例を挙げると、F1の放送では鈴鹿サーキットなど世界中のサーキットとドイツのデータセンター間でダークファイバーを繋げ、世界規模で実況放送を実現しています。では、ここからはAES67制定の経緯について話していきましょう。
📷身近な存在のオーディオi/FやスピーカーでもAES67対応製品がリリースされている。Mクンが購入したというこのKHシリーズ(右)とMT 48(左)の接続ではDAコンバーターも不要となるためシンプルなシステム構成に。
AES67策定の経緯
洋介:AES67の元になった規格は、2010年にMerging Technologies社とLAWO社が立ち上げた「RAVENNA」です。このRAVENNAをベースにして、AES(Audio Engineering Society)がAoIPの規格として制定したのがAES67です。AES67の規格はRAVENNAの仕様により汎用性を持たせる方向で策定されています。例えば、レイテンシーの最小値を大きくしたり、ストリーム数に関してはRAVENNAが最大128chに対し、AES67は8chまでといったように仕様を緩い方向に制定して汎用性を持たせています。
その後、SMPTE ST2110-30(ST2110は映画テレビ技術者協会(SMPTE)によって開発されたメディアをIP経由で移動させるための規格)という規格のオーディオパケット部分としてAES67が採用されます。SMPTE ST2110は、映像パケットとオーディオパケットを別々に送信するのが大きな特徴です。もうひとつ前のVoIP規格にSMPTE ST2022というものがあるのですが、これはSDIの信号をそのままパケットにして送信します。そこからより現代的な新しいテクノロジーを組み込んだIP転送を実現しようという目的で策定されたのがSMPTE ST2110です。オーディオ部分に関していうと、ST2110-30が非圧縮での基本的なAES67互換規格であり、さらにST2110-31になるとメタデータまで含めた通信ができるようになりました。こういったST2110の拡張とともにAES67も今後拡大していくと予想されてます。
Mクン:AES67のサンプリングレートは48kHz固定となっていますが、これは今後変わっていくのでしょうか?
洋介:恐らくですが、48kHzという仕様で一旦固定されたままになるのではないでしょうか。放送業界においては、現時点で一般的に多く使われているのが24Bit / 48kHで、ハイサンプルの需要がほぼなく、それ以上のスペックは必要ないと判断されているようです。このようにRAVENNAから派生したAES67ですが、放送業界、映像業界をバックボーンにして成長を続けています。一方、RAVENNAとDanteの違いを話すと、TCP/IPの規格としてDanteの方が1つジェネレーションが古い規格を一部使用しています。その代表がPTPで、DanteはPTP(Precision Time Protocol)のバージョン1を用いていて、RAVENNAやST2110の基礎技術はPTPのバージョン2です。このバージョン1と2には下位互換がなく、実際は別物というくらい違います。同一ネットワーク上にお互いを流しても問題ないのですが、上位バージョンが下位バージョンの信号を受けることができません。現在の普及具合でいうとDanteのほうが多いのですが、こういったことからDanteを採用しているメーカーは将来性に関して危惧を始めているところがあると聞いています。
PTPバージョン1と2の違い
Mクン:そのバージョン1とバージョン2の違いとは何でしょう?
洋介:ネットワークプロトコルの技術的に複雑な話になるので、ここでは深く立ち入りませんが、単純に互換性がないということだけ覚えておいてください。このPTPですが、TCP/IP通信プロトコルとしてそもそもの大きな役割はクロック同期です。AoIPもVoIPも動作原理上バッファーが必要であり、それによりレイテンシーが必ず発生します。これはIP伝送のデメリットのひとつとして必ず話題に挙がることです。なぜバッファーが必要かというと、ネットワーク経路上にはネットワークインターフェイス、イーサネットスイッチなど多くのデバイスが挟まり、遅延が発生するのは避けることができません。
その事実への対処法として、バッファーへパケットデータを溜め込み、各パケットが送出されるタイミングの同期を行なってデータを出す、という同期のためのタイムスタンプの役割を行うのがPTPです。これは、ワードクロックやビデオクロックといった動作とは異なります。PTPでは各々のパケットに番号札を振って順番を決めるようなイメージで、そのバッファー分の遅延が必ず発生することになります。
Mクン:なるほど。では、オーディオのワードクロックでは精度が高い製品を使えば、一般的に音も良くなると思うんですが、PTPに関しては音質に対して影響するものなのでしょうか?
洋介:音質に影響しないというのが一般的な解釈です。RAVENNAの信号を受け、出力はアナログオーディオの場合の機材にもワードクロックが搭載されているわけで、AD/DAプロセッサーの動作はワードクロックで制御されています。つまり、IPデータの部分とワードクロックが作用する部分は完全に分離されていることになるので音質には影響しない、というのが設計上からの帰結です。現在の主流は、PTPとワードクロックを同時に出力するグランドマスター機能を持った機材を用いてシステム全体の整合性を取っています。
少し話が脱線しますが、AoIPにおけるレイテンシーの問題はグローバルなインターネットを越えても、依然存在し続けることになります。ただし、どれだけレイテンシーが大きくなったとしても、送信順が入れ違いになったとしても、届いたパケットの順番はPTPのタイムスタンプの順に並べられ、順番は変わらないわけです。
長遅延、インターネットを超えての伝送などの際には、このPTPのマスタークロックの上位の存在として、皆さんがカーナビなどでも恩恵を授かっているGPS衛星の信号を活用します。GPS衛星は地球の上空20,000kmに、常時24機(プラス予備7機)が飛行しています。GPS衛星は地球上どこにいても、遮蔽物がない限り6機が視界に入るように運用されています。そして、運用されているGPS衛星はお互いに時刻の同期が取られています。ということは、このGPSの衛星信号を受けられれば、世界中どこにいても同期された同一タイミングを得ることができるわけです。普段、何気なく車のカーナビを使っていますが、同期に関しては壮大な動作が背後にあるんです(笑)。
Mクン:宇宙から同期信号が届いているんですね!そういった先進技術は、今後私たちのような音声技術を扱う業界にも恩恵があるんでしょうか?
洋介:例えば、現在話題のイーロン・マスクが率いるスターリンク社(アメリカの民間企業スペースXが運用している衛星インターネットアクセスサービス)からのデータをPTPマスターとして受け取れるようになれば、もっと面白いことが起こるかもしれないですね。一方でデメリットを挙げるとすれば、やはりどこまでもレイテンシーがつきまとうという点ですね。オーディオの世界ではマイクやスピーカーといったアナログ領域で動作する製品がまだ大部分を占めるので、「信号の経路上、どのタイミングでAoIPにするか」というのはひとつの課題です。マイク自体でDante接続する製品も出てきていますが、ハイエンド製品はまだ市場に出てきてないですよね。これから期待したいところです。
AoIP、レコーディング現場への導入状況は?
Mクン:AoIPの導入は放送業界が先行しているそうですが、レコーディング環境への導入状況はどうなんでしょうか?
洋介:レコーディングスタジオに関してはこれから普及が始まるかどうかといった状況です。大きなスタジオになると設備が建設時に固定されているものが多く、変更する機会がなかなかないということが関係していそうです。また、別の理由としてパッチベイの存在もあるかもしれません。現状使っているレコーディング機器の接続を繋ぎ変えるにあたって、これまで慣れ親しんだパッチベイから離れたくない、という心理もありそうです。まあ、パッチケーブルを抜き差しするだけですからね。
スタジオにはアナログ機器がたくさん存在しますが、AoIPが本当にパワーを発揮するのは端から端までをIPベースにした場合で、ここで初めてメリットが生まれます。一部にでも従来のアナログ機器が存在すると、そこには必然的にAD/DAコンバーター(アナログとAoIPの変換機)が必要になるので、コンバーターの分だけコストが必要になってしまいますよね。Dolby Atmosをはじめとするイマーシブオーディオのような多チャンネルを前提としたシステム設計が必要スタジオには需要があると思います。
Mクン:AoIPでシステムを組む場合、Danteを採用するにしろ、ST2110を採用するにしろ、それに対応した機材更新が必要ですが、どのプロトコルを採用しても対応できるように冗長性を持たせたシステムの組み方は可能ですか?
洋介:システム設計は個別のネットワークとして組まれているケースが多いですね。本誌でも事例として紹介しているテレビ大阪様ではオーディオのフロントエンド(インプット側)はDanteですが、コンソールのアウトや映像のスイッチャーはST2110という構成です。従来の銅線ベースの環境に比べるとシステム図が驚くほどシンプルで、機材数もとても少なくて済みます。放送業界ではフルVoIP化の流れが来ていて、新局舎など施設を一新するタイミングで、副調整室やマスターなど、全設備オールIP化の設計が始まっています。SMPTE ST2110のイーサネットのコンセントを至るところに設置し、局内どこからでも中継ができるシステムが組まれています。
Mクン:そういった大規模な更新のタイミングであれば、既存のアナログ機器を一新したシステムにリニューアルできるメリットがありますね。
洋介:そうですね。未来を見据えてAoIPやVoIPシステムでリニューアルできる大きなチャンスですね。
AES67のメリット
Mクン:話をAES67に戻すと、Danteに比べてAES67のメリットはどんなことがあるんでしょうか? また、対応した製品がますます普及していきそうですが、今後のAoIPはどうなっていくのでしょう?
洋介:まず、Danteについては普及が進んでいるものの、先ほど話したPTPバージョン1の問題が依然として残ります。DanteにもAES67互換モードがすでに搭載されているのですが、Dante Network上のすべての機器をAES67互換モードで動作させることはできず、ネットワーク上の1台のみをAES67互換モードで動作させてゲートウェイとして使うということになります。言い換えると、AoIP / VoIPのメリットであるすべての機器が常に接続されているという状況を作ることが難しいということでもあります。これは、先にもお話したPTPのバージョンの違いにより生じている問題であり、一朝一夕で解決できる問題ではないでしょう。一方、RAVENNAはAES67の上位互換であり、SMPTE ST2110の一部でもあります。放送局など映像業界でのSMPTE ST2110の普及とともに今後導入が進むことが予想されます。音声のみの現場ではDanteが活用され、映像も絡んだ現場ではRAVENNA、というように棲み分けが進むかもしれませんね。
Mクン:私は「AES67 ニアイコール RAVENNA」という認識だったので、ST2110という存在がその先にあるというのは知りませんでした。
洋介:ST2110があってのAES67なんですよね。逆に言うと、ST2110を採用している映像メーカーはAES67対応だったりしますね。
Mクン:なるほど。私が購入したNeumannのオーディオインターフェイスMT 48はAES67に対応しているんですが、「RAVENNAベースのAES67」という表記がされていて納得がいきました。同じく購入したNeumannのスピーカー、KHシリーズもAES67に対応しているんですが、そのメリットはどんなことでしょう?
洋介:RAVENNAはAES67の上位互換なので、RAVENNAと書かれているものはすべてAES67だと考えていいです。一番大きいのはレイテンシーの問題で、AES67は最低1msでそれ以下は難しいんですけど、RAVENNAはもっと短くできます。KHシリーズとMT 48を組み合わせればDAコンバーターいらずになる、というのが大きなメリットです。システム的にもシンプルで気持ちいい構成ですよね。最近の製品の多くは、スピーカー自体でADしDSP処理してアンプ部分に送るという動作なんですが、それなら「デジタルのまんまで良くない?」って思うんですよね(笑)。シグナルとしてシンプルなので。
AoIP普及のこれから
Mクン:これからサウンド・エンジニアの方は音の知識だけでなく、ネットワークの知識も必要になってきそうな感じですね。
洋介:うーん、どうでしょう? まずはブラウザ上で設定するルーティングの仕方、クロスポイントを打つということに慣れるということで良さそうです。そこから先は我々のようなシステム設計、導入を担当する側が受け持ちさせていただきますので。実際、DanteでもRAVENNAやAES67でも基本的に設定項目は全部一緒なので、もちろんGUIの見た目は異なりますが、汎用のTCP/IPベースのイーサネットの世界なのでひとつ覚えれば他にも通じる汎用性があります。
今後、AoIPの普及はさらに進むでしょう。現在はまだシステムの範囲が1部屋で完結しているスケールなのでAoIPを用いるスケールメリットはあまりないのですが、これからさらに外へと繋がっていくと大きく変わっていくはずです。すにで汎用のインターネットで映像や音声がやりとりできる世界になり、グローバルなインターネットで放送クオリティーの伝送が可能となっています。
放送局の場合だと、これまでサブでしか受けられなかった中継回線などが、イーサネットケーブルを引けばMA室でも受けられるようになります。こうなれば受けサブとしてMA室を活用するという使用用途の拡張が見込めます。従来は音声信号に加え、同期信号もすべてケーブルを引っ張らなければいけなかったものが、イーサネットケーブル1本で対応できるようになるのは革新的です。さらに、光ファイバーを導入できれば、同じケーブル設備を使って通信速度、使用可能帯域をアップグレードしていくこともできます、従来のメタル銅線では実現できないことですよね。
Mクン:今日は色々と興味深い話をありがとうございました!
いかがだったでしょうか、「なるほど〜!」連発となったMクンはAES67がどのようなものなのか、そしてAoIPのメリットや抱えている課題点など、オーディオのIP伝送がいま置かれている現状もしっかりと把握できたようです。これからの制作システム設計における大きなキーワードとなるAoIP。もちろんそのメリットは従来のワークフローを大幅に塗り替えていくでしょう、そしてそのシステムが与えるインパクトたるや如何なるものか!?その進展から目が離せませんね!
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/27
Cross Phase Studio 様 / クリエイティブが交差する、外部貸出も行う関西有数のイマーシブ拠点
大阪城の間近、大阪市天満に居を構えるCross Phase Studio。ゲーム / 遊技機のサウンド制作をメインに、近年では映像作品のポストプロダクション業務も増加するなど、関西圏で大きな存在感を持つCross Phase株式会社の自社スタジオだ。2022年末にイマーシブ・フォーマットへ対応するためのアップデートを果たした同スタジオだが、このたびには自社スタジオの外部貸出も開始させたそうだ。関西でのイマーシブ・オーディオをリードする存在ともなるCross Phase Studioへ早速取材にお邪魔した。
サウンドの持つ力を知る場所を多くの方に
Cross Phase株式会社は代表の金子氏が中心となって、数人のクリエイターとともに2015年に設立されたサウンド制作会社。「当時の勤務先ではだんだん管理的な業務のウェイトが増えていて、もっとクリエイティブな部分に携わっていたいと考えていました。きっかけはよくある呑みの席での雑談だったのですが、本当に独立してしまった(笑)」という同氏は元遊技機メーカー勤務。幼少期を海外で過ごしMTVを見て育ったことから大の音楽好きで、同じく好きだった遊技機と音楽の両方を仕事にできる業界を選んだということだ。
設立当初は各クリエイターが自宅の制作環境で制作を行っており本社は事務所機能だけだったが、自社スタジオであるCross Phase Studioを作るにあたり、本社所在地も現在の大阪市天満に移転している。そのスタジオもステレオのみでスタートしたのだが、Apple Digital Masters認定を受けるための過程でDolby Atmosの盛り上がりを知り、大きな可能性を感じたことで2022年末にイマーシブ・オーディオへ対応する運びとなったそうだ。
スタジオを持ってからも同社では積極的にテレワークやリモート制作を取り入れており、そのためのインフラは金子氏がみずから整えているとのこと。最適なソリューションが存在しない場合は自社製の業務ツールやソフトウェアを開発することもあるという。「ゲーム業界は横のつながりが強い。自分たちの経験に加え、サウンド外の情報や情勢も踏まえて効率化、向上化の手段を常に探っています。」といい、クリエイティブな作業に集中できる環境づくりを心がけている。設立時の想いを実践し続けていることが窺える。
📷Cross Phase株式会社 代表の金子氏。
金子氏に限らず全員が元ゲーム / 遊技機メーカー勤務のクリエイター集団である同社の強みは、ゲーム / 遊技機のサウンドに関わる工程すべてを把握しており、サウンドプロジェクト全体をワンストップで請け負える点にある。プロジェクト自体の企画から、楽曲や効果音などの制作、音声収録など各種レコーディング、ゲームや遊技機への実装・デバッグのすべての工程でクライアントと協業することが可能だ。
近年はゲーム / 遊技機分野にとどまらず映像作品の音声制作などへも活躍の場を広げているが、そのきっかけは1本の映画作品だったようだ。「ロケ収録した音声を整音する依頼だったのですが、元の音声があまりいい状態ではなくて…。当社でできる限りいいものにならないか試行錯誤したところ、その結果にクライアントがすごく喜んでくれたんです。それで、みんな音の大切さに気付いてないだけで、いい音を聴いてもらえばわかってくれるんだということに気付いたんです」という。
こうした経験から、もともと自社業務専用と考えていたCross Phase Studioの外部貸出を開始したそうだ。「Dolby Atmosを聴いてもらうと多くのクライアントが興味を示してくれます。当社のクリエイターからも、イマーシブを前提とするとそれ以前とは作曲のコンセプトがまったく変わる、という話もありました。せっかくの環境なのでもっと多くのみなさんにサウンドの持つ力を体験して知ってほしいんです。」そして、「Cross Phaseという社名は、さまざまなクリエイティブが交差する場所にしたいという想いで名付けました。関西圏には才能あるクリエイターがたくさんいるので、みなさんとともに関西発で全国のシーンを盛り上げていきたいと思っています」と熱を込めて語ってくれた。
7.1.4 ch をADAMで構成
Cross Phase Studioのイマーシブシステムは7.1.4構成となっておりDolby Atmosへの対応がメインとなるが、DAWシステムには360 Walkmix Creator™️もインストールされており、360 Reality Audioのプリミックスにも対応が可能だ。
モニタースピーカーはADAM AUDIO。9本のA4VとSub 12という組み合わせとなっている。それとは別に、ステレオミッドフィールドモニターとして同じくADAM AUDIOのA77Xが導入されている。スタイリッシュな内装や質実剛健な機材選定と相まって、見た目にもスタジオ全体に引き締まった印象を与えているが、そのADAM AUDIOが導入された経緯については、「スタジオ開設当初は某有名ブランドのスピーカーを使用してたのですが、あまり音に面白みを感じられなくて…。スピーカーを更新しよう(当時はまだステレオのみ)ということで試聴会を行ったのですが、当社のクリエイターのひとりがADAMを愛用していたので候補の中に入れていたんです。そうしたら、聴いた瞬間(笑)、全員一致でADAMに決まりました。そうした経験があったので、イマーシブ環境の導入に際してもADAM一択でしたね。」とのこと。
📷7.1.4の構成で組まれたスピーカーはスタッフ全員で行った試聴会の結果、ADAMで統一された。天井にも吊られたA4Vのほか、ステレオミッドフィールド用にA77Xが設置されている。
もちろん、ADAM AUDIOも有名ブランドではあるが、その時点での”定番のサウンド”に飽き足らずクリエイターが納得できるものを追求していくという姿勢には、音は映像の添え物ではない、あるいは例えそうした場面であってもクリエイティビティを十二分に発揮して作品に貢献するのだという、エンターテインメント分野を生き抜く同社の強い意志を感じる。そうした意味では、ADAM AUDIOのサウンドは同社全体のアイデンティティでもあると言えるのではないだろうか。関西エリアに拠点を置くクリエイターには、ぜひ一度Cross Phase Studioを借りてそのサウンドを体験してほしい。
デジタル、コンパクト、クリーンな「今」のスタジオ
それではCross Phase Studioのシステムを見ていこう。金子氏の「当社はスタジオとしては後発。イマーシブ導入もそうですが、ほかのスタジオにはない特色を打ち出していく必要性を感じていました。今の時代の若いスタジオということで、デジタルをメインにしたコンパクトなシステムで、クリーンなサウンドを念頭に置いて選定しています。」という言葉通り、DAW周りは非常に現代的な構成になっている。
📷メインのデスクと後方のデスクに2組のコントロールサーフェスが組まれているのが大きな特徴。前方メインデスクにはAvid S3とDock、後方にはAvid S1が2台。ステレオとイマーシブで異なるスイートスポットに対応するため、それぞれのミキシングポイントが設けられた格好だ。
スタジオにコンソールはなく、Pro Tools | S3 + Pro Tools | Dock + DAD MOMと、2 x Pro Tools | S1 + DAD MOMというコントロールサーフェスを中心とした構成。サーフェスが二組あるのはステレオ再生とイマーシブ再生ではスイートスポットが変わるため、コントロールルームの中に2ヶ所のミキシングポイントを置いているからである。DAWはもちろんPro Tools Ultimate、バックアップレコーダー兼メディアプレイヤーとしてTASCAM DA3000も導入されている。
オーディオI/FにはPro Tools | MTRX Studioを採用。モニターコントロールはDAD MOMからコントロールするDADmanが担っているため、ステレオ / イマーシブのスピーカーはすべてこのMTRX Studioと直接つながれている。MTRX StudioにはFocusrite A16RがDanteで接続されており、後述するアウトボードのためにアナログI/Oを拡張する役割を担っている。また、スピーカーの音響補正もMTRX Studioに内蔵されているSPQ機能を使用して実施。測定にはsonorworks soundID Referenceを使用したという。現在ではsoundID Referenceで作成したプロファイルを直接DADmanにインポートすることができるが、導入時にはまだその機能がなく、ディレイ値などはすべてDADmanに手打ちしたとのこと。
📷上段にMTRX Studioがあり、その下が本文中でも触れたflock audio The Patch。数々のアウトボードが操作性にも配慮されてラッキングされていた。
必要最小限で済ますならばこれだけでもシステムとしては成立するのだが、スッキリとした見た目と裏腹に同スタジオはアウトボード類も充実している。SSLやBettermakerなどのクリーン系ハイエンド機からAvalon DesignやManleyなどの真空管系、さらに、Kempfer・Fractal Audio Systemsといったアンプシミュレーター、大量のプラグイン処理を実現するWaves SoundGrid Extreme Serverやappolo Twin、そろそろビンテージ機に認定されそうなWaves L2(ハードウェア!)も導入されており、現時点でも対応できる音作りは非常に広いと言えそうだが、「当社のクリエイターたちと相談しながら、その時々に必要と考えた機材はこれからも増やしていく予定です」とのこと。
これらのスタジオ機器の中で、金子氏がもっとも気に入っているのはflock audio The Patchなのだという。金子氏をして「この機材がなかったら当社のスタジオは実現していなかった」とまで言わしめるThe Patchは、1Uの機体の内部にフルアナログで32in / outのシグナルパスを持ち、そのすべてのルーティングをMac / PCから行えるというまさに現代のパッチベイである。Cross Phase Studioではアナログ入力系は基本的に一度このThe Patchに接続され、そこからA16Rを介してDanteでMTRX Studioへ入力される。日々の運用のしやすさだけでなくメンテナンス性や拡張性の観点からも、確かにThe Patchの導入がもたらした恩恵は大きいと言えるだろう。
コントロールルームの隣にはひとつのブースが併設されている。ゲーム / 遊技機分野から始まっているということもあってボーカル・台詞など声の収録がメインだが、必要に応じて楽器の収録もできるように作られている。印象的だったのは、マイクの横に譜面台とともにiPad / タブレットを固定できるアタッチメントが置かれていたことだ。台詞録りといえば今でも紙の台本というイメージが強いが、個別収録の現場では徐々に台本もデジタル化が進んでいるようだ。
📷コントロールルームのすぐ隣にはブースが設置されている、ボーカル・ダイアログなど声の収録だけではなく、楽器にも対応できる充分なスペースを確保している。
ブース内の様子は撮影が可能でコントロールルームにはBlackmagic Design ATEM Miniが設置されていた。「もともと音楽1本だけの会社ではないので、徐々にオファーが増えている映像制作やライブ配信をはじめとした様々な分野にチャレンジしていきたい。最近、知人から当社のブースをビジネス系YouTube動画の制作に使いたいというオファーもありました(笑)。バンドレコーディングはもちろん、“歌みた“などのボーカルレコーディングや楽器録音など、ぜひ色々なクリエイターやアーティストに使って欲しいです。」とのことで、同社が活躍するフィールドはさらに広がっていきそうだ。
最近では海外からのオファーも増えてきたというCross Phase。金子氏は「ゆくゆくは国産メーカーの機器を増やして、日本ならではのスタジオとして海外の方にも来てもらえるようにしたいですね」と語る。イマーシブ制作の環境が整ったスタジオを借りることができるというのは、まだ全国的に見ても珍しい事例である。関西圏を拠点にするクリエイターは、ぜひ一度Cross Phase Studioで「サウンドの持つ力」を体験して知ってほしい。
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/23
日本最大の男祭り、その熱量をコンテンツに込める〜UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium〜
昨夏、日産スタジアムにて開催された音楽ライブ「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」。この72,000人の観客とともに作り上げた公演を記録した映像作品が全国劇場公開された。男性のみが参加できるという日本最大の「男祭り」、劇場版の音響にはDolby Atmosが採用され、約7万人もの男性観客のみが集ったその熱狂を再現したという本作。音響制作を手がけられたWOWOW 戸田 佳宏氏、VICTOR STUDIO 八反田 亮太氏にお話を伺った。
ライブの熱狂を再現する作品を
📷右)戸田 佳宏 氏 / 株式会社WOWOW 技術センター 制作技術ユニット エンジニア 左)八反田 亮太氏 / VICTOR STUDIO レコーディングエンジニア
Rock oN(以下、R):本日はお時間いただきありがとうございます。まず最初に、本作制作の概要についてお聞きしてもよろしいですか?
戸田:今回のDolby Atmos版の制作は、UVERworldさんの男祭りというこれだけの観客が入ってしかも男性だけというこのライブの熱量を表現できないか、追体験を作り出せないかというところからスタートしました。大まかな分担としては、八反田さんがステレオミックスを制作し、それを基に僕がDolby Atmosミックスを制作したという流れです。
R:ステレオとAtmosの制作については、お二人の間でコミュニケーションを取って進められたのでしょうか?
八反田:Dolby Atmosにする段階では、基本的に戸田さんにお任せしていました。戸田さんとはライブ作品をAtmosで制作するのは2度目で、前回の東京ドーム(『UVERworld KING’S PARADE 男祭り FINAL at Tokyo Dome 2019.12.20』)でも一緒に制作をしているので、その経験もあってすり合わせが大きく必要になることはありませんでした。
戸田:このライブ自体のコンセプトでもあるのですが、オーディエンス、演奏の”熱量”というところをステレオ、Atmosともに重要視していました。僕がもともとテレビ番組からミックスを始めているのもあるのかもしれないですが、会場を再現するという作り方に慣れていたので、まず会場をAtmosで再現するところから始めました。そうやって制作するとオーディエンス、会場感が大きいものになっていくので、それを八反田さんに確認していただいて、音楽としてのミックスのクオリティを高めていくという流れですね。逆にCDミックスのような質感に寄りすぎてもライブの熱量が足りなくなっていくので、その境界線を見極めながらの作業になりました。
八反田:作業している時は「もっと熱量を!」というワードが飛び交っていましたね(笑)。
戸田:Atmosミックスではアリーナ前方の位置でライブを見ている感覚をイメージしていました。ライブ会場ではこうだよな、という聴こえ方を再現するという方向ですね。映像作品なのでボーカルに寄る画もあるので、そういった場面でも成立するようなバランスを意識しました。
八反田:ステレオでこれだとドラムが大きすぎるよな、というのもAtmosでは可能なバランスだったりするので、音楽としてのバランスも込みでライブをどう聴かせたいかという理想を突き詰めた部分もあります。
日産スタジアムでのライブ収録
📷1~16がステレオミックス用、17~42がDolby Atmos用に立てられたマイク。色によって高さの階層が分けて記されており、赤がアリーナレベル、青が2Fスタンド、緑がトップ用のマイクとなっている。31~34はバックスクリーン下のスペースに立てられた。
R:収録についてはどういった座組で行われたのでしょうか?
戸田:基本はパッケージ収録用のステレオ前提でライブレコーディングチームがプランニングをされていたので、3Dオーディオ版として足りないところをWOWOWチームで追加しました。事前にステレオのチームとマイク図面の打ち合わせを行い、マイク設置位置を調整しました。録音は音声中継車で録ることができる回線数を20chほど超えてしまったので追加でレコーダーを持ち込みました。ドラムセットが3つあったのもあって、全体で150chくらい使用していますね。そのうちオーディエンスマイクだけでステレオ用で16本、Atmos用でさらに26本立てました。
R:日産スタジアムってかなり広いですよね。回線は信号変換などを行って伝送されたのですか?
戸田:アリーナレベルは、音声中継車までアナログケーブルで引きました。スタンドレベルも端子盤を使って中継車までアナログですね。足りない部分だけOTARI Lightwinderを使ってオプティカルケーブルで引くこともしました。スタジアムはとにかく距離が長いのと、基本的にはサッカーの撮影用に設計された端子盤なので、スタンド席のマイクなどは養生などをして観客の中を通さないといけないのが結構大変でした。
R:ステージのフロントに立っているマイクは観客の方を向いているんですか?
戸田:そうですね。それはステージの端から観客に向けて立てられたマイクです。レスポンスの収録用です。曲中は邪魔にならないように工夫しながらミックスしました。包まれ感には前からのオーディエンスも重要なので。
R:Atmos用に設置したマイクについては、どういった計画で設置されたのでしょうか?
戸田:Atmos用のマイクはステレオ用から足りないところ、スピーカー位置で考えるとサラウンドのサイド、リア、トップなどを埋めていくという考え方で置いていきました。
八反田:キャットウォークに置いたマイクが被りも少なく歓声がよく録れていて、お客さんに包まれる感じ、特に男の一体感を出すのに使えました。イマーシブ用マイクで収録した音源は、ステレオミックスでも使用しています。
約150chの素材によるDolby Atmos ミックス
R:これだけ広い会場のアンビエンスだと、タイムアライメントが大変ではなかったですか?
戸田:そこはだいぶ調整しましたね。一番最初の作業がPAミックスと時間軸を調整したアンビエンスをミックスし、会場の雰囲気を作っていくことでした。スタジアムは一番距離があるところで100m以上離れているので、単純計算で0.3〜0.5秒音が遅れてマイクに到達します。
R:合わせる時はオーディオファイルをずらしていったのですか?
戸田:オーディエンスマイクの音を前へ(時間軸として)と調整していきました。ぴったり合うと気持ちいいというわけでもないし、単純にマイク距離に合わせればいいというわけでもないので、波形も見つつ、スピーカーとの距離を考えて経験で調整していきました。正解があったら知りたい作業でしたね。
R:空気感、スタジアム感との兼ね合いということですね。MCのシーンではスタジアムの残響感というか、声が広がっていくのを細かく聴き取ることができました。リバーブは後から足されたりしたのですか?
戸田:MCの場面ではリバーブを付け足す処理などは行なっていません。オーディエンスマイクで拾った音のタイムアライメントを調整して、ほぼそのまま会場の響きを使っています。ステージマイクに対してのリバーブは、一部AltiverbのQuadチャンネルを使っています。
R:ライブではMCからスムーズに歌唱に入るシーンも多かったと思いますが、そこの切り替えはどうされたんですか?
戸田:そこが今回の作品の難しいところでした。見る人にもMCからすっと音楽に入ってもらいたいけど、かといって急に空間が狭くなってしまうと没入感が損なわれてしまうので、会場の広さを感じながらも音楽にフォーカスしてもらえるように、MCと楽曲中のボーカルのリバーブではミックスで差をつけるなどで工夫しています。
R:なるほど。アンビエンスの音処理などはされました?
戸田:曲によってアンビ感が強すぎるものはボーカルと被る帯域を抜いたりはしています。前回の東京ドームでは意図しない音を消すこともしたのですが、今回は距離感を持ってマイクを置けたので近い音を消すことは前回ほどなかったです。
R:オブジェクトの移動は使いました?
戸田:ほぼ動かしていないですね。画や人の動きに合わせて移動もしていないです。バンドとしての音楽作品という前提があるので、そこは崩さないように気を付けています。シーケンスの音は少し動かした所があります。画がない音なので、そういうのは散らばらせても意外と違和感がないかなと感じています。
📷会場内に設置されたマイクの様子。左上はクランプで観客席の手すりに付けられたマイク。すり鉢状になっている会場の下のレイヤーを狙うイメージで立てられた。また、その右の写真は屋根裏のキャットウォークから突き出すようにクランプで設置されたトップ用マイク。天井との距離は近いが、上からの跳ね返りはあまり気にならずオーディエンスの熱気が上手く録れたという。
R:イマーシブになるとチャンネル数が増えて作業量が増えるイメージを持たれている方も多いと思うのですが、逆にイマーシブになることで楽になる部分などはあったりしますか?
戸田:空間の解像度が上がって聴いてもらいたい音が出しやすくなりますね。2chにまとめる必要が無いので。
八反田:確かにそういう意味ではステレオと方向性の違うものとしてAtmosは作っていますね。ステレオとは違うアプローチでの音の分離のさせ方ができますし、Atmosを使えば面や広い空間で鳴らす表現もできます。東京ドームの時もそういうトライはしましたが、今回はより挑戦しました。ドームは閉じた空間で残響も多いので、今回は広く開けたスタジアムとしての音作りを心がけています。
R:被りが減る分、EQワークは楽になりますよね。
戸田:空間を拡げていくと音が抜けてきますね。逆に拡がりよりも固まりが求められる場合は、コンプをかけたりもします。
R:イマーシブミックスのコンプって難しくないですか?ハードコンプになると空間や位相が歪む感じが出ますよね。
戸田:すぐにピークを突いてしまうDolby Atmosでどう音圧を稼ぐかはポイントですよね。今回はサイドチェイン用のAUXバスを使って、モノラル成分をトリガーにオブジェクト全体で同じ動きのコンプをかける工夫をしています。オーディエンスのオブジェクトを一括で叩くコンプなどですね。ベッドのトラックにはNugen Audio ISL2も使っています。
R:スピーカー本数よりマイク本数の方が多いので、間を埋めるポジションも使いつつになると思いますが、パンニングの際はファンタム定位も積極的に使われましたか?
戸田:位相干渉が出てくるのであまりファンタム定位は使わずにいきました。基本の考え方はチャンネルベースの位置に近いパンニングになっていると思います。ダビングステージで聴いた時に、スピーカー位置の関係でどうしても後ろに音が溜まってしまうので、マイクによってはスピーカー・スナップ(近傍のスピーカーにパンニングポジションを定位させる機能)を入れて音が溢れすぎないようにスッキリさせました。
Dolby Atmos Home環境とダビングステージの違い
R:丁度ダビングの話が出ましたが、ダビングステージでは正面がスクリーンバックのスピーカーになっていたりとDolby Atmos Homeの環境で仕込んできたものと鳴り方が変わると思うのですが、そこは意識されましたか?
戸田:スクリーンバックというよりは、サラウンドスピーカーの角度とXカーブの影響で変わるなという印象です。東京ドームの時はXカーブをすごく意識して、全体にEQをかけたんですけど、今回違う挑戦として、オーディエンスでなるべくオブジェクトを使う手法にしてみました。とにかく高さ方向のあるものやワイドスピーカーを使いたいものはオブジェクトにしていったら、ダビングステージでもイメージに近い鳴り方をしてくれました。もちろん部屋の広さとスピーカーの位置が違うので、仕込みの時から定位を変えてバランスをとりました。
R:ダビングはスピーカー位置が全部高いですからね。
戸田:全体の定位が上がっていってしまうので、そうするとまとまりも出てこないんですよね。なのでトップに配置していた音をどんどん下げていきました。トップの位置もシネマでは完全に天井ですから、そこから鳴るとまた違和感になってしまう。スタジアムは天井が空いているので、本来観客がいない高い位置からオーディエンスが聴こえてしまうのは不自然になってしまうと考えました。
R:これだけオーディエンスがあると、オブジェクトの数が足りなくなりませんでした?
戸田:そうですね、当時の社内のシステムではオブジェクトが最大54しか使えなかったので工夫しました。サラウンドはベッドでも7chあるので、スピーカー位置の音はベッドでいいかなと。どうしても真後ろに置きたい音などにオブジェクトを使いました。楽器系もオブジェクトにするものはステムにまとめています。
R:シネマ環境のオブジェクトでは、サラウンドがアレイで鳴るかピンポイントで鳴るかという違いが特に大きいですよね。
戸田:はい。なのでオーディエンスがピンポイントで鳴るようにオブジェクトで仕込みました。ベッドを使用しアレイから音を出力すると環境によりますが、8本くらいのスピーカーが鳴ります。オーディエンスの鳴り方をオブジェクトで制御できたことで空間を作るための微調整がやりやすかったです。ただ、観客のレスポンスはベッドを使用してアレイから流すことで、他の音を含めた全体の繋がりが良くなるという発見がありました。
R:最後に、音楽ライブコンテンツとしてDolby Atmosを制作してみてどう感じていますか?
八反田:誤解を恐れずに言えば、2chがライブを“記録“として残すことに対してDolby Atmosは“体験“として残せることにとても可能性を感じています。今回は会場の再現に重きを置きましたが、逆にライブのオーディエンスとしては味わえない体験を表現することも面白そうです。
戸田:Dolby Atmosでは、音楽的に表現できる空間が広くなることで、一度に配置できる音数が増えます。こういう表現手法があることでアーティストの方のインスピレーションに繋がり、新たな制作手法が生まれると嬉しく思います。またライブ作品では、取り扱いの難しいオーディエンスも含めて、会場感を損なわずに音楽を伝えられるというのがDolby Atmos含めイマーシブオーディオの良さなのかなと考えています。
一度きりのライブのあの空間、そして体験を再び作り出すという、ライブコンテンツフォーマットとしてのDolby Atmosのパワーを本作からは強く感じた。72,000人の男性のみという特殊なライブ会場。その熱量をコンテンツに込めるという取り組みは、様々な工夫により作品にしっかりと結実していた。やはり会場の空気感=熱量を捉えるためには、多数のアンビエントマイクによる空間のキャプチャーが重要であり、これは事前のマイクプランから始まることだということを改めて考えさせられた。イマーシブオーディオの制作数も徐々に増えている昨今、制作現場ではプロジェクト毎に実験と挑戦が積み上げられている。過渡期にあるイマーシブコンテンツ制作の潮流の中、自らの表現手法、明日の定石も同じように蓄積されているようだ。
UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium
出演:UVERworld
製作:Sony Music Labels Inc.
配給:WOWOW
©Sony Music Labels Inc.
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/20
「ライブを超えたライブ体験」の実現に向けて〜FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏〜
今年1月、アーティスト・福山雅治による初監督作品 『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』が公開された。昨年夏に開催された武道館公演を収録した本作は、ドローン撮影による映像やDolby Atmosが採り入れられ、福山本人による監修のもと “ライブを超えたライブ” 体験と銘打たれた作品となっている。今回は特別に、本作の音響制作陣である染谷 和孝氏、三浦 瑞生氏、嶋田 美穂氏にお越しいただき、本作における音響制作についてお話を伺うことができた。
📷
左)三浦 瑞生氏:株式会社ミキサーズラボ 代表取締役社長 レコーディング、ミキシングエンジニア
中)嶋田 美穂氏:株式会社ヒューマックスエンタテインメント ポストプロダクション事業部 リレコーディングミキサー マネジャー
右)染谷 和孝氏:株式会社ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
”理想のライブの音”に至るまで
Rock oN(以下、R):まずは、今回の企画の経緯について聞かせていただけますか?
染谷:私はこれまで嵐、三代目 J Soul Brothers(以下JSB3)のライブフィルム作品のAtmos ミックスを担当させていただきました。嶋田さんとは前作のJSB3からご一緒させていただいていて、その二作目ということになります。嶋田さんとのお話の中で、私たちが一番注意していたことは、音楽エンジニアの方とのチームワークの構築でした。三浦さんは長年福山さんの音楽を支えてこられた日本を代表するエンジニアさんであり、すでにチーム福山としての完成されたビジョンやチームワークはできあがっています。そこに我々がどのように参加させていただくかを特に慎重に考えました。Atmos制作内容以前に、チームメンバーとしての信頼を得るというのはとても大切な部分です。その配慮を間違えると「作品の最終着地点が変わるな」と感じていましたので、最初に三浦さんにAtmosで制作する上でどういうことができるのか、いくつかのご説明と方向性をご相談させていただきました。そして最終的に、三浦さんと福山さんの中でステレオミックスをまず制作していただいて、その揺るぎない骨子をAtmosミックスに拡張していく方向で制作を進めていくことに決まりました。
R:Atmosで収録した作品として今作で特徴的なのが、ライブの再現ではなく、“ライブを超えたライブ体験”というコンセプトを大事にされていますが、その方向性というのも話し合う中で決まっていったのですか?
染谷:収録が終わり、まず三浦さんがステレオミックスをされて、その後何曲かAtmosミックスを行い、福山さんにお聴かせする機会がありました。そこで福山さんが、オーディエンス(歓声)のバランスを自分の手で調整しながらAtmosの感覚、できることを探っていかれる時間がありました。
嶋田:そこで、閃かれた瞬間がありましたよね。
染谷:武道館特有の上から降ってくるような歓声やセンターステージに立っている福山さんでしか感じられない雰囲気をこのDolby Atmosなら“お客さんに体感・体験していただくことができる“と確信されたんだと思います。その後の作業でも、福山さんの「追体験じゃないんですよ」という言葉がすごく印象に残っています。まさにステージ上での実体験として感じていただくこと、それが私たちのミッションだったわけです。
R:では録音の段階ではどのような構想で進められていたのですか?
染谷:収録段階では、2階、3階と高さ方向での空間的なレイヤーをキャプチャーしたいと考えていました。
嶋田:最終的にオーディエンスマイクは合計で28本になりましたね。PAの前にも立ててみたりはしたのですが、音を聴くと微妙に位相干渉していたので結局は使っていません。
三浦:基本のステレオミックス用がまず20本あって、そこに染谷さんがAtmos用に8本足されました。基本的には、PAスピーカーの指向性からなるべく外れたところから、お客さんの声や拍手を主に狙うように設置しています。
R:オーディエンスの音源の配置は、基本マイク位置をイメージして置かれていますか?
染谷:そうですね。上下で100段階あるとしたら、2階は40、3階は90~100くらいに置いてレイヤー感を出しています。上から降りそそぐ歓声を表現するには、上、下の二段階ではなく、これまでの経験から中間を設けて階層的に降ろしていった方が結果的に良かったので、今回はこのように配置しました。
R:福山さんが向く方向、映像の画角によってアンビエントのバランス感は変えたのですか?
染谷:そこは変えていないです。それをすると音楽との相関関係から音像が崩れていくので、基本的にオーディエンスは一回決めたらあまり動かさない方が良いように思います。楽器の位置なども基本は、三浦さんと福山さんが決められたステレオ音源の位置関係を基準にしてAtmos的な修正をしています。
Atmosミックスのための下準備とは
R:収録後はどういった調整をされたのでしょうか?
染谷:録った音をシンプルにAtmosで並べると、当然位相干渉を起こしていますので、タイムアライメント作業で修正を行います。具体的な方法としてはAtmosレンダラーでステレオと9.1.4chを何度も切り替えながらディレイを使用してms単位での補正を行います。レンダラーでステレオにしたときに正しくコントロールできていない場合は、確実に位相干渉するので判断できます。また、嶋田さんのコメントの通り、会場の反射で位相干渉した音が録れている場合もありますから、マイクの選定なども含めて進めていきました。
R:ディレイということは遅らせていく方で調整されたのですか。
染谷:今回はそうですね。ドームなどの広い会場だったら早めていると思うのですが、武道館では遅らせていった方がいい結果が得られました。早めていくと空間が狭くなっていくので、だんだん武道館らしさがなくなり、タイトな方向になってしまうんです。ですので、よりリアルに感じていただけるよう、疑似的に武道館の空間を創りだしています。実際にはセンターステージの真ん中のマイクを基準にして、他のマイクがどのように聴こえてくるかを考えながらディレイ値を導き出していきました。
R:逆にステレオだとオーディエンスを後ろにずらしての調整とかは難しいと思いますがどうでした?
三浦:オーディエンスマイクの時間軸の位置はそのままで、音量バランスで調整しています。フロントマイクをメインにして、お客さんの声の近さなどからバランスをとりました。やっぱり一番気になるのは、ボーカルの声がオーディエンスマイクを上げることで滲まないように、そこは色々な方法で処理しています。
R:Atmos用に追加したマイクはステレオでも使われましたか?
三浦:使っています。Atmosとステレオである程度共通した雰囲気を作る方がいいのかなと思って。スピーカーの数が変わる以上は聴こえ方も変わるのは分かっていましたが、福山さんとの作業の中でステレオ、Atmosで共通のイメージを固めておかないといけないと思ったのもありますし、会場の雰囲気を伝えることでできる音も含まれていましたので。
染谷:三浦さんがステレオの制作をされている間、嶋田さんと私はひたすらiZotope RXを使った収録済みオーディエンス素材のノイズ除去、レストレーション作業の日々でしたね。
嶋田:トータル 3、4ヶ月くらいしてましたよね。
R:RXはある程度まとめてマルチトラックモードでの処理も使われました?
嶋田:これがすごく難しいんですけど、28トラック分まとめて処理する場合も、1トラックずつ処理する場合もあります。私はノイズの種類によって使い方を変えました。例えばお客さんの咳を消したい場合、一番近いマイクだけでなくすべてのマイクに入っているので、綺麗に消したくなりますよね。でもすべて消すと空間のニュアンスまで無くなってしまうので、そのバランスは悩みました。近すぎる拍手なども全部消すのか、薄くするのかの判断は、喝采の拍手なのか、しっとりとした拍手なのかという拍手のニュアンス込みで考えたりもしましたね。
染谷:消せば良いってものでもないんですよ。音に味が無くなるというか。拍手を取る時はDe-Clickを使いますが、Sensitivityをどこの値にもってくるか最初の初期設定が大事です。
R:その設定はお二人で共有されていたんですか?
嶋田:最初に染谷さんがノイズの種類に合わせて大体の値を設定していただいて、そこから微調整しながら進めました。
染谷:作業が進んでいくとだんだんその値から変わっていきますけどね(笑)。リハの時に録っておいたベースノイズをサンプルにして全体にレストレーションをかけることもしています。武道館の空調ノイズって結構大きいんですよ。でもSpectral De-Noiseを若干かけるくらいです。やっぱり抜きすぎてもダメなんです。抜かないのもダメですけど、そこはうまくコントロールする必要があります。
染谷:基本的にクラップなどの素材も音楽チームの方で作っていただいて、とても助かりました。
三浦:ステレオミックスの仕込みの段階で福山さんとミックスの方向性の確認をした際に、通常はオーディエンスのレベルを演奏中は低めにして、演奏後はかなり上げるというようにメリハリをつけていますが、今回は曲中もお客さんのハンドクラップ(手拍子)がしっかり聴こえるくらいレベルを上げ目にしてくれというリクエストがありました。「これは記録フィルムではなくエンターテイメントだから」ということも仰っていたので、ライブ中の他の場所から良いハンドクラップの素材を抜き出し、違和感がない程度にそれを足して音を厚くするなどのお化粧も加えています。
📷三浦氏が用意したAtmos用ステムは合計111トラックに及ぶ。28chをひと固まりとしたオーディエンスは、素材間の繋ぎやバランスを考慮した嶋田氏の細かな編集により何重にも重ねられた。時にはPCモニターに入りきらない量のトラックを一括で操作することもあるため、タイムライン上での素材管理は特に気を張る作業であったという。高解像度なAtmosに合わせたiZotope RXによる修正も、作業全体を通して取り組まれた。
R:その他に足された音源などはありますか?
三浦:シーケンスデータですね。ライブでは打ち込みのリズムトラック、ストリングスなどのシーケンスの音はある程度まとまって扱われます。それはライブPAで扱いやすいように設計されているからなのですが、映画やパッケージの制作ではもう少し細かく分割されたデータを使って楽曲ごとに音色を差別化したくなるので、スタジオ音源(CDトラックに収録されているもの)を制作した際の、シーケンスデータを使用しました。なのでトラック数は膨大な数になっています(笑)。
嶋田:480トラックくらい使われていますよね!Atmos用に持ってきていただいた時には111ステムくらいにまとめてくださりました。
三浦:楽曲ごとにキックの音作りなども変えたくなるので、するとどんどんトラック数は増えていってしまいますよね。作業は大変だけど、その方が良いものになるかなと。今回はAtmosということでオーディエンスも全部分けて仕込んだので、後々少し足したい時にPro Toolsのボイスが足りなくなったんですよ。オーディオだけで1TB以上あるので、弊社のシステムではワークに収まりきらず、SSDから直の読み書きで作業しました。Atmosは初めてのことだったので、これも貴重な体験だったなと思っています。
染谷:本当に想像以上にものすごい数の音が入っているんですよ。
嶋田:相当集中して聴かないと入っているかわからない音もあるんですが、その音をミュートして聴いてみると、やはり楽曲が成立しなくなるんです。そういった大切な音が数多くありました。
R:ステムをやり取りされる中で、データを受け渡す際の要望などはあったのですか?
染谷:僕からお願いしたのは、三浦さんの分けやすいようにということだけです。後から聞くと、後々の修正のことも考えて分けてくださっていたとのことでした。ありがとうございます。
三浦:ステレオではOKが出たとしても、環境が変わってAtmosになれば聴こえ方も変わるだろうというのがあったので、主要な音はできるだけ分けました。その方が後からの修正も対応できるかなと思って、シーケンスデータもいくつかに分けたり、リバーブと元音は分けてお渡ししましたよね。想定通り、Atmosになってからの修正も発生したので、分けておいてよかったなと思っています。
嶋田:その際はすごく助かりました。特に、オーディエンスマイクもまとめることなく28本分を個別で渡してくださったので、MAの段階ですぐに定位が反映できたはとてもありがたかったです。
チームで取り組むDolby Atmos制作
染谷:今回は三浦さんが音楽を担当されて、僕と嶋田さんでAtmosまわりを担当したんですけど、チームの役割分担がすごく明確になっているからこそできたことが沢山ありました。そのなかの一つとして、編集された映像に対して膨大な音素材を嶋田さんが並べ替えて、ミックスができる状態にしてくれる安心感というのはすごく大きかったです。今回、嶋田さんには、大きく2つのお願いをしました。①映像に合わせてのステム管理、使うトラックの選定、とても重要な基本となるAtmosミックス、②足りないオーディエンスを付け足すという作業をしてもらいました。何度も言っちゃいますが、すごいトラック数なので並べるのも大変だったと思います。
三浦:こちらからお渡ししたのはライブ本編まるまる一本分の素材なので、そこから映画の尺、映像に合わせての調整をしていただきました。
嶋田:映像編集の段階で一曲ずつ絶妙な曲間にするための尺調整や曲順の入れ替えがあったり、エディットポイントが多めで、いつもより時間をかけた記憶があります。特に普段のMAでは扱わないこのトラック数を一括で動かすとなると、本当に神経を使う作業になるんですよ。修正素材を張り込む時にも、一旦別のタイムラインに置いて、他のオーディオファイルと一緒に映像のタイムラインに置いたりと、とにかくズレないように工夫をしていました。
R:Atmosで広げるといってもLCRを中心に作られていたなと拝見して感じているんですけれど、やはり映画館ではセンタースピーカーを基本に、スクリーンバックでの音が中心になりますか。
嶋田:映像作品なので、正面のメインステージの楽器の配置、三浦さんのステレオのイメージを崩さないバランスで置きました。空間を作るのはオーディエンスマイクを軸にしています。さらに立体感を出すためにギターを少し後ろに置いてみたりもしました。ボーカルはセンター固定です。しっかりと聴かせたいボーカルをレスポンス良く出すために、LRにこぼすなどはせずに勝負しました。なんですが、、、ラスト2曲はセンターステージの特別感を出すために中央に近い定位に変えています。
染谷:福山さんからの定位に関するリクエスト多くありましたね。印象的な部分では今さんのギターを回したり、SaxやStringsの定位、コーラスの定位はここに置いて欲しい、など曲ごとの細かな指定がありました。
R:ベッドとオブジェクトの使い分けについてはどう設計されました?
嶋田:基本的には楽器はベッド、オーディエンスをオブジェクトにしました。それでもすべてのオーディエンスマイクをオブジェクトにするとオブジェクト数がすぐオーバーするので、その選定はだいぶ計算しました。
染谷:やっぱりどうしてもオブジェクトの数は足りなくなります。 Auxトラックを使用して、オブジェクトトラックに送り込む方法もありますけど、映像の変更が最後まであったり、それに伴うオーディエンスの追加が多くなると、EQを個別に変えたりなどの対応がとても複雑になります。瞬時の判断が求められる作業では、脳内で整理しながら一旦AUXにまとめてレンダラーへ送っている余裕は無くなってきます。やはり1対1の方が即時の対応はしやすかったです。今考えているのは、ベッドってどこまでの移動感を表現できるのか?ということです。先ほどギターを回したと言いましたが、それも実はベッドなんです。ベッドだとアレイで鳴るので、どこの位置で回すかということは考えないといけませんでしたが、最終的に上下のファンタム音像を作って回してあげるとHomeでもCinemaでもある程度の上下感を保って回ってくれることが分かりました。絶対に高さ方向に動くものはすべてオブジェクトじゃなきゃダメ!という固定概念を疑ってみようかなと思って挑戦してみたんですけど。嶋田さんはどのように感じましたか?
嶋田:こんなにベッドで動くんだ、というのが素直な感想です。私も動くものや高さを出すものはオブジェクトじゃないと、という気持ちがずっとあったんですけど、今のオブジェクト数の制約の中ではこういった工夫をしていかないといけないなと思っています。
📷Dolby Atmos Home環境でのプリミックスは、Atmosミックスを担当したお二人が在籍するヒューマックスエンタテインメント、SONAのスタジオが使用された。劇場公開作品でもHome環境を上手に活用することは、制作に伴う時間的・金銭的な問題への重要なアプローチとなりえる。その為には、スピーカーの選定やモニターシステムの調整などCinema環境を意識したHome環境の構築が肝心だ。なお、ファイナルミックスは本編が東映のダビングステージ、予告編がグロービジョンにて行われた。
シネマ環境を意識したプリミックス
染谷:今回、ダビングステージを何ヶ月も拘束することはできないので、Dolby Atmos Home環境でダビングのプリミックスを行いました。Homeのスタジオが増えてきていますが、Homeで完結しない場合もこれから多く出てくると思うので、今回はこういった制作スタイルにトライしてみようと考えました。
嶋田:Homeでのプリミックスでまず気をつけなければならないのが、モニターレベルの設定です。映画館で欲しい音圧感が、普段作業している79dBCでは足りないなと感じたので、Homeから82dBCで作業していました。
染谷:最終確認は85dBCでモニターするべきなんですが、作業では82dBCくらいが良いと感じています、スピーカーとの距離が近いスタジオ環境では85dBCだと圧迫感があって長時間の作業が厳しくなってしまいます。
嶋田:ダビングステージでは空間の空気層が違う(スピーカーとの距離が違う)ので、ダビングステージの音質感や、リバーブのかかり方をHomeでもイメージしながら作業しました。またダビングステージは間接音が多く、Homeでは少し近すぎるかなというクラップも、ダビングステージにいけばもう少し馴染むから大丈夫だとサバ読みしながらの作業です。
染谷:Dolby Atmos Cinemaの制作経験がある我々は、ある程度その変化のイメージが持てますが、慣れていない方はHomeとの違いにものすごくショックを受けられる方も多いと聞いています。三浦さんはどうでした?
三浦:やはり空間が大きいなと、その点ではより武道館のイメージにより近くなるなとは感じましたね。
R:ダビングではどう鳴るか分かって作業しているかが本当に大事ですよね。やはりダビングは、映画館と同等の広さの部屋になりますからね。
染谷:直接音と間接音の比率、スピーカーの距離が全然違いますからね。制作される際はそういったことを含めて、きちんと考えていかないといけません。
嶋田:今回Homeからダビングステージに入ってのイコライジング修正もほぼなかったですね。
染谷:ダビング、試写室、劇場といろんな場所によっても音は変わるんだなというのは思います。どれが本当なんだろうなと思いながらも、現状では80点とれていればいいのかなと思うことにしています。
R:それは映画関係の方々よく仰ってます。ある程度割り切っていかないとやりようがないですよね。三浦さんは今回初めてAtmosの制作を経験されましたが、またやりたいと思われます?
三浦:このチームでなら!
染谷・嶋田:ありがとうございます(笑)。
三浦:染谷さん、嶋田さんには、客席のオーディエンスマイクのレベルを上げると、被っている楽器の音まであがっちゃうんですが、そういう音も綺麗に取っていただいて。
染谷:でも、その基本となる三浦さんのステムの音がめちゃくちゃに良かったです。
嶋田:聴いた瞬間に大丈夫だと思いましたもんね。もう私たちはこれに寄り添っていけばいいんだと思いました。
染谷:今回は特に皆さんのご協力のもと素晴らしいチームワークから素敵な作品が完成しました。短い時間ではありましたが、三浦さんのご尽力で私たち3名のチーム力も発揮できたと感じています。プロフェッショナルな方達と一緒に仕事をするのは楽しいですね。
三浦:そういった話で言うと、最後ダビングステージの最終チェックに伺った際、より音がスッキリと良くなっていると感じたんです。なぜか聞いたらクロックを吟味され変えられたとのことで、最後まで音を良くするために試行錯誤されるこの方達と一緒にやれて良かったなと感じています。
染谷:その部分はずっと嶋田さんと悩んでいた部分でした。DCPのフレームレートは24fpsですが、実際の収録や音響制作は23.976fpsの方が進めやすいです。しかし最終的に24fpsにしなくてはいけない。そこでPro Toolsのセッションを24fpsに変換してトラックインポートかけると、劇的に音が変わってしまう。さらにDCP用Atmosマスター制作時、.rplファイルからMXFファイル(シネマ用プリントマスターファイル)に変換する際にも音が変わってしまうんです。
この2つの関門をどう乗り越えるかは以前からすごく悩んでいました。今回はそれを克服する方法にチャレンジし、ある程度の合格点まで達成できたと感じています。どうしたかというと、今回はSRC(=Sample Rate Convertor)を使いました。Pro Toolsのセッションは23.976fpsのまま、SRCで24fpsに変換してシネマ用のAtmosファイルを作成したところ、三浦さんに聴いていただいたスッキリした音になったんです!今後もこの方法を採用していきたいですね。
R:SRCといっても色々とあると思うのですが、どのメーカーの製品を使われたんですか?
嶋田:Avid MTRXの中で、MADI to MADIでSRCしました。以前から24fpsに変換するタイミングでこんなに音が変わってしまうんだとショックを受けていたんですが、今回で解決策が見つかって良かったです。
染谷:MXFファイルにしたら音が変わる問題も実は解決して、結局シネマサーバーを一度再起動したら改善されました。普段はあまり再起動しない機器らしいので、一回リフレッシュさせてあげるのは特にデジタル機器では大きな意味がありますね。こういった細かなノウハウをみんなで情報共有して、より苦労が減るようになってくれればと願っています。
R:この手の情報は、日々現場で作業をされている方ならではです。今日は、Atmos制作に関わる大変重要なポイントをついたお話を沢山お聞きすることができました。ありがとうございました。
📷本作を題材に特別上映会・トークセッションも今年頭に開催された。
本作はアーティストの脳内にある“ライブの理想像”を追求したことで、Dolby Atmosによるライブ表現の新たな可能性が切り拓かれた作品に仕上がっている。音に関しても、アーティストが、ステージで聴いている音を再現するという、新しい試みだ。それは、アーティストと制作チームがコミュニケーションを通じて共通のビジョンを持ち制作が進められたことで実現された。修正やダビングといったあらゆる工程を見越した上でのワークフローデザインは、作業効率はもちろん最終的なクオリティにも直結するということが、今回のインタビューを通して伝わってきた。入念な準備を行い、マイクアレンジを煮詰めることの重要性を改めて実感する。そして何より、より良い作品作りにはより良いチーム作りからという本制作陣の姿勢は、イマーシブ制作に関係なく大いに参考となるだろう。
FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM言霊の幸わう夏@NIPPON BUDOKAN 2023
監督:福山雅治
出演:福山雅治、柊木陽太
配給:松竹
製作:アミューズ
©︎2024 Amuse Inc.
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/16
Xylomania Studio「Studio 2」様 / 11.2.6.4イマーシブによる”空間の再現”
スタジオでのレコーディング / ミキシングだけでなく、ライブ音源、映画主題歌、ミュージカルなど多くの作品を手掛ける古賀 健一 氏。音楽分野におけるマルチチャンネル・サラウンド制作の先駆者であり、2020年末には自身のスタジオ「Xylomania Studio」(シロマニアスタジオ)を手作りで9.4.4.5スピーカー・システムへとアップデートしたことも記憶に新しいが、そのXylomania Studioで2部屋目のイマーシブ・オーディオ対応スタジオとなる「Studio 2」がオープンした。11.2.6.4という、スタジオとしては国内最大級のスピーカー・システムが導入され、Dolby Atmos、Sony 360 Reality Audio、5.1 Surround、ステレオといったあらゆる音声制作フォーマットに対応するだけでなく、立体音響の作曲やイマーシブ・コンサートの仕込みも可能。さらに、120inchスクリーンと8Kプロジェクタも設置されており、ポストプロダクションにも対応できるなど、どのような分野の作業にも活用できることを念頭に構築されている。この超ハイスペック・イマーシブ・レンタル・スタジオについて、オープンまでの経緯やそのコンセプトについてお話を伺った。
Beatlesの時代にイマーシブ表現があったら
Xylomania Studio 古賀 健一 氏
Official髭男dismのApple Music空間オーディオ制作や第28回 日本プロ音楽録音賞 Immersive部門 最優秀賞の受賞など、名実ともに国内イマーシブ音楽制作の最前線を走る古賀 健一 氏。その活躍の場はコンサートライブや映画主題歌など多岐に渡り、自身の経験をスタジオ作りのコンサルティングなどを通してより多くのエンジニアやアーティストと共有する活動も行っている。
まさにイマーシブの伝道師とも呼べる古賀氏だが、音の空間表現に関心を持ったのはDolby Atmosが生まれるよりもはるか以前、彼の学生時代にまで遡るという。「現場ではたくさんの楽器、たくさんの音が鳴っているのに、それを表現する手段がステレオしかないということにずっと疑問を持っていた」という古賀氏だが、学生時代に出会ったSACDではじめて5.1サラウンドを体験して衝撃を受ける。
「これこそが、音楽表現のあるべき姿だ」と感じた古賀氏だが、「当時はPro Tools LEにサラウンドオプションを追加するお金もなかった」という中で工夫を重ねて再生システムを構築し、5.1サラウンド作品をひたすら聴いていたという。古賀氏といえば、自身のスタジオであるXylomania StudioをDIYでイマーシブ対応に改修し、その様子をサウンド&レコーディング・マガジン誌上で連載していたこともあるが、彼の飽くなき探究心とDIY精神はすでにこのころから備わっていたようだ。
その後も独自に空間表現を探究していた古賀氏だが、Dolby Atmosの登場によって、「これなら、もっと自由でもっと手軽に、音楽表現を追求できるんじゃないか」と感じたことで自身のスタジオをイマーシブ・オーディオ対応へと改修することを決める。しかし、「当初は5.1.4、なんなら、5.1.2で十分だと考えてました。そうしたら、Netflixが出したガイドラインが7.1.4となっていて、個人で用意できる予算では無理だと悟った」ことで、法人としてのXylomania Studioを設立することを決意したのだという。それから最初のスタジオができるまでについては、サンレコ誌への連載が今でもWEBで読めるので、ぜひそちらをご覧いただきたい。
Xylomania Studioがイマーシブ制作に対応したのが2020年12月。それから3年の時を経て、同社ふたつ目のイマーシブ・スタジオがオープンした理由や、この間に古賀氏自身の心境、イマーシブ・オーディオを取り巻く環境に変化はあったのだろうか。「ぼく自身のことを言えば、イマーシブへの関心はますます深まるばかりです。探究したいことはどんどん出てくる。周囲の環境については、やはりApple Musicの”空間オーディオ”の影響は大きいです。それ以前と比べると、関心を持ってくれるひとは確実に増えた。もともと、ぼくはお金になるかどうかは考えて動かないんです。Xylomania Studioも、ただ自分が探究したいという思いだけで作ったものだったので、成功する目論見なんてなかった。それが、ビジネスとしてきちんと成立するところまでたどり着けたことについては、仲間たちと”神風が吹いたね”なんて言っています」という。
今回オープンしたXylomania Studio「Studio 2」の計画がはじまったのは2022年夏。より多くの人にイマーシブ表現の可能性を体験してほしいと考えた古賀氏が、イマーシブ・スタジオの外部貸出を検討したことがスタートとなっている。
音楽ジャンルによってはイマーシブ表現が合わないものもある、という意見もあるが、これに対して古賀氏の「モノにはモノの、ステレオにはステレオのよさがあるのは確か。でも、ぼくは”イマーシブが合わないジャンル”なんてないと思ってます。だって、もしBeatlesの時代にイマーシブ表現があったら、彼らは絶対にやってたと思いませんか?」という言葉には、思わず深く頷いてしまった。「ふたつ目のスタジオを作ろうという気持ちになれたのも、空間オーディオによってイマーシブ制作がビジネスの軌道に乗ることができたからこそ。」という古賀氏。そうした仕事を通して関わったひとたちへの恩返しのためにも、国内のイマーシブ・シーンを盛り上げるようなアクションを積極的に取っていきたいという気持ちがあるようだ。
当初はStudio 1を貸出し、その間に自身が作業をおこなうための部屋を作ろうとしていたようだが、さまざまな紆余曲折を経て、結果的にはStudio 1をも超える、国内最高峰のイマーシブ・レンタル・スタジオが完成した。誌面で語り尽くせぬ豊富なエピソードとともに、以下、Xylomania Studio「Studio 2」のシステムを見ていきたい。
11.2.6.4イマーシブによる”空間の再現”
📷「Studio 2」はサイドの壁面色違いの箇所にインウォールでスピーカーを設置、この解決策により窮屈感はまったくなく、実際よりも広々とした居心地を実現した。肝心のサウンドについても映画館をはるかに超える音響空間を創出している。
11.2.6.4インウォール・スピーカー・システムによるイマーシブ再生環境、Danteを駆使したネットワーク伝送、ハイクオリティなブースとしての機能、大型スクリーンと8Kプロジェクタなど、Xylomania Studio「Studio 2」のトピックは枚挙にいとまがないが、このスタジオの最大の特徴は”限りなく本番環境に近い音場を提供できること”である。Studio 2の先鋭的かつ挑戦的なスペックのすべては、スタジオの中でどれだけ作品の最終形に近い響きを提供できるか、という目的に集約されているからだ。
古賀氏は「自分のスタジオでこう鳴っていれば例えばダビングステージではこういう音になるだろう、ということを想像することはできます。でも、その差を常に想像しながら作業を続けることはすごいストレス。仕込んだ音を現場で鳴らした時に、スタジオで意図した通りに鳴るような、本当の意味での”仕込み”ができる部屋を作りたかった」ということのようだ。「この部屋でミックスしたものをそのままライブに持ち込める、ダビングステージで作業したミックスを持ち込めばそのままここで配信用のマスターが作れる、そんなスタジオにしたかった。」
この、言わば音が響く空間を再現するというコンセプトを可能にしているのは、まぎれもなく11.2.6.4イマーシブ・システムだ。Studio 2のスピーカー配置は一般的なDolby Atmosレイアウトをもとに、サイド・リアとハイトは左右に3本ずつのスピーカーを持ち、それによって映画館やダビングステージのアレイ再生やディフューズ・サラウンド音場を再現している点が大きな特徴。実は、Studio 2の再生環境はその計画の途中まで既存のStudio 1と同じ9.2.6.4のシステムを組む方向で進んでいたのだという。しかし、古賀氏のある経験がきっかけで今の11.2.6.4へと拡張されることになったようだ。「ある映画主題歌の仕事でダビングステージを訪れた時、リア方向に振った音が思っていたより後方まで回り込んだんです。今までのニアフィールドの環境で映画作品の最終形をイメージすることには限界があると感じ、アレイ再生ができる環境を作るために急遽スピーカーを2本追加することにしました。」
📷フロントLCRに採用されたci140。センターとLRの間がサブウーファーのci140sub。
その11.2.6.4イマーシブ・システムを構成するスピーカーは、すべてPCMのインウォール・モデルである「ciシリーズ」。フロントLCR:ci140、ワイド&サラウンド:ci65、ハイト:ci45、ボトム:ci30、SW:ci140sub となっており、2台のサブウーファーはセンター・スピーカーとワイド・スピーカーの間に配置されている。
スピーカーをインウォール中心にするというアイデアも、計画を進める中で生まれたものだという。先述の通り、当初は今のStudio 1を貸出している間に自身が作業をおこなうための部屋を作ろうとしていたため、もともとレコーディング・ブースとして使用していたスペースに、スタンド立てのコンパクトなイマーシブ再生システムを導入しようと考えていたという。だが、スピーカーをスタンドで立ててしまうとブースとして使用するには狭くなりすぎてしまう。ブースとしての機能は削れないため、”もっとコンパクトなシステムにしなければ”という課題に対して古賀氏が辿り着いた結論が、以前にコンサルティングを請け負ったスタジオに導入した、”インウォール・スピーカー”にヒントを得たようだった。システムを小さくするのではなく、逆に大きくしてしまうことで解決するという発想には脱帽だ。
モデルの決定にはメーカーの提案が強く影響しているとのことだが、「ci140は国内にデモ機がなかったので、聴かずに決めました(笑)」というから驚きだ。古賀氏は「チームとして関わってくれる姿勢が何よりも大事。こういう縁は大切にしたいんです」といい、その気概に応えるように、PMCはその後のDolby本社との長いやりとりなどにおいて尽力してくれたという。
📷上左)サラウンドチャンネルをアレイ再生にすることで、映画館と同じディフューズ・サラウンドを再現することを可能にしている。上右)サイド/ワイド/リアはci65。後から角度を微調整できるように固定されておらず、インシュレーターに乗せているだけだという。下左)ハイト・スピーカーはci45。下右)ボトム・スピーカーを設置しているため、Dolby Atmosだけではなく、Sony 360 Reality Audioなどの下方向に音響空間を持つイマーシブ制作にも対応可能。「ボトムはリアにもあった方がよい」という古賀氏の判断で、フロント/リアそれぞれに2本ずつのci30が置かれている。
最後まで追い込んだアコースティック
Studio 2が再現できるのは、もちろん映画館の音響空間だけではない。マシンルームに置かれたメインのMac Studioとは別に、Flux:: Spat Revolution Ultimate WFS Add-on optionがインストールされたM1 Mac miniが置かれており、リバーブの処理などを専用で行わせることができる。このSpat Revolution Ultimateに備わっているリバーブエンジンを使用して、Studio 2ではさまざまな音響空間を再現することが可能だ。必要に応じて、波面合成によるさらなるリアリティの追求もできるようになっている。
古賀氏が特に意識しているのは、コンサートライブ空間の再現。「このスタジオを使えば、イマーシブ・コンサートの本番環境とほとんど変わらない音場でシーケンスの仕込みができます。PAエンジニアはもとより、若手の作曲家などにもどんどん活用してほしい。」というが、一方で「ひとつ後悔しているのは、センターに埋め込んだサブウーファーもci140にしておけば、フロンタルファイブのライブと同じ環境にできたこと。それに気付いても、時すでに遅しでしたけど」と言って笑っていた。常に理想を追求する姿勢が、実に古賀氏らしい。
📷Flux:: Spat Revolution Ultimate WFS Add-on option
さらに、Spat Revolution UltimateはStudio 2をレコーディング・ブースとして使用した際にも活用することができる。マイクからの入力をSpat Revolution Ultimateに通し、リバーブ成分をイマーシブ・スピーカーから出力するというものだ。こうすることで、歌手や楽器の音とリバーブを同時に録音することができ、あたかもコンサートホールや広いスタジオで収録されたかのような自然な響きを加えることができる。「後からプラグインで足すだけだと、自然な響きは得られない。ぼくは、リバーブは絶対に録りと同時に収録しておいた方がいいと考えています。」
こうした空間再現を可能にするためには、当然、スピーカーのポジションや角度、ルームアコースティック、スピーカーの補正などをシビアに追い込んでいく必要がある。Studio 2はもともと8畳程度の小さな空間に造られており、広さを確保するために平行面を残さざるを得なかったというが、その分、「内装工事中に何度も工事を止め、何度もスピーカーを設置して、実際に音を鳴らしてスピーカーの位置と吸音を追い込んでいきました」という。その結果、どうしても低域の特性に納得できなかった古賀氏は、工事の終盤になってスピーカーの設置全体を後方に5cmずらすことを決めたという。「大工さんからしたら、もう、驚愕ですよ。でも、おかげで音響軸は1mmのずれもなくキマってます。極限まで追い込んだ音を体験したことがある以上、半端なことはしたくなかった。」
電気的な補正を担っているのはTrinnov Audio MC-PROとAvid Pro Tools | MTRX II。MC-PROはDante入力仕様となっており、先にこちらで補正をおこない、MTRX II内蔵のSPQ機能を使用してディレイ値やEQの細かい部分を追い込んでいる。「MC-PROの自動補正は大枠を決めるのにすごく便利。SPQは詳細な補正値を確認しながらマニュアルで追い込んでいけるのが優れている」と感じているようだ。
📷「最初から導入を決めていた」というTrinnov MC PROは数多くの実績を持つ音場補正ソリューション。MC PROもパワーアンプもDante入力を持つモデルを選定しており、システム内の伝送はすべてDanteで賄えるように設計されている。
テクノロジーとユーティリティの両立
📷「Studio 2」のミキシング・デスク。コントロール・サーフェスはPro Tools | S1とPro Tools | Dockの組み合わせ。デスク上にはRedNet X2PやDAD MOMも見える。
Studio 2のシステム内部はすべてデジタル接続。Studio 1 - Studio 2間の音声信号がMADIである以外は、パワーアンプの入力まですべてDanteネットワークによって繋がっている。モニターセクションの音声信号はすべて96kHz伝送だ。パッチ盤を見るとキャノン端子は8口しかなく、DanteやMADI、HDMIなどの端子が備わっていることにスタジオの先進性が見て取れる。
メインMacはMac Studio M2 UltraとSonnet DuoModo xEcho IIIシャーシの組み合わせ。MacBookなどの外部エンジニアの持ち込みを想定して、HDXカードをシャーシに換装できるこの形としている。オーディオI/OはAvidのフラッグシップであるPro Tools | MTRX II。「MTRX IIになって、DanteとSPQが標準搭載になったことは大きい。」という。オプションカードの構成はAD x2、DA x2、Dante x1、MADI x1、DigiLink x2となっており8個のスロットをフルに使用している。確かに、同じ構成を実現するためには初代MTRXだったらベースユニットが2台必要なところだった。合計3組となるDigiLinkポートは、それぞれ、ステレオ、5.1、Dolby Atmos専用としてI/O設定を組んでおり、出力フォーマットが変わるたびにI/O設定を変更する必要がないように配慮されている。
📷左)本文中にもある通り「初代MTRXなら2台導入する必要があった」わけで、結果的にMTRX IIの登場は「Studio 2」の実現にも大きく貢献したということになる。中)メインMacをMac Studio + TBシャーシとすることで、クリエイターがMacを持ちこんだ場合でもHDXカードを使用した作業が可能になっている。RMU I/FのCore 256はあらゆるフォーマットの音声をRMUに接続。「Studio 2」ではDanteまたはMADIを状況に応じて使い分けている。
Dolby Atmosハードウェア・レンダラー(HT-RMU)はMac miniでこちらもCPUはM2仕様。Apple Siliconは長尺の作品でも安定した動作をしてくれるので安心とのこと。RMUのI/FにはDAD Core 256をチョイス。Thunderbolt接続でDante / MADIどちらも受けられることが選定の決め手になったようだ。96kHz作業時はDante、48kHzへのSRCが必要な時はDirectOut Technologies MADI.SRCを介してMADIで信号をやりとりしているという。
Studio 2のサイドラックには、ユーティリティI/OとしてThunderbolt 3オプションが換装されたPro Tools | MTRX Studioが設置されているほか、Focusrite RedNet X2PやNeumann MT48も見える。Studio 2でちょっとした入出力がほしくなったときに、パッと対応できるようにしてあるとのこと。「作曲家やディレクターにとってソフトウェアでの操作はわかりにくい部分があると思うので、直感的に作業できるように便利デバイスとして設置してある」という配慮のようだ。
📷左右のサイドラックには、Logic ProやSpat RevolutionがインストールされたMacBook Pro、フロントパネルで操作が可能なMTRX Studio、各種ショートカットキーをアサインしたタブレット端末などを設置。
個人的に面白いと感じたのは、AudioMovers Listen ToとBinaural Rendererの使い方だ。DAWのマスター出力をインターネット上でストリーミングすることで、リモート環境でのリアルタイム制作を可能にするプラグインなのだが、この機能を使ってスマートフォンにリンクを送り、AirPodsでバイノーラル・ミックスのチェックを行うのだという。たしかに、こうすればわざわざマシンルームまで行ってMacとBluetooth接続をしなくて済んでしまう。
操作性の部分でもこれほどまでに追い込まれているStudio 2だが、「それでも、これをこう使ったらできるんじゃないか!?と思ったことは、実際にはほとんどできなかった」と古賀氏は話す。古賀氏のアイデアは、進歩するテクノロジーをただ追うのではなくむしろ追い越す勢いで溢れ出しているということだろう。
「Amazonで見つけて買った(笑)」というデスクは、キャスターと昇降機能付き。作業内容やフォーマットによってミキシングポイントを移動できるように、ケーブル長も余裕を持たせてあるという。「この部屋にはこれだけのスペックを詰め込みましたけど、内覧会で一番聞かれたのが、そのデスクと腰にフィットする椅子、どこで買ったんですか!?だった(笑)」というが、確かに尋ねたくなる気持ちもわかるスグレモノだと感じた。
紆余曲折を経て、結果的に古賀氏自身のメインスタジオよりも高機能・高品質なスタジオとなったStudio 2だが、このことについて古賀氏は「9.1.4のStudio1を作ってからの3年間で、9.1.6に対応したスタジオは国内にだいぶ増えたと思ってます。だったら、ぼくがまた同じことをやっても意味がない。ぼくが先頭を走れば、必ずそれを追い越すひとたちが現れます。そうやって、国内シーンの盛り上がりに貢献できたらいい」と語ってくれた。「このスタジオのようなスペックが当たり前になった暁には、ぼくはここを売ってまた新しい部屋をつくります!今度は天井高が取れる場所がいいな〜」といって笑う古賀氏だが、遠くない将来、きっとその日が来るのだろうと感じた。
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/13
Bob Clearmountain〜 伝説のエンジニア ボブ・クリアマウンテンが描くミックス・ノウハウのすべて 〜
去る4月、伝説のレコーディング・エンジニアであるボブ・クリアマウンテン氏が来日。東京・麻布台のSoundCity B Studioにおいて「伝説のエンジニア ボブ・クリアマウンテンが描くミックス・ノウハウのすべて」と題したセミナー・イベントが開催された。受講者20名限定で開催されたこのイベントでは、注目を集める“音楽のイマーシブ・ミックス”について、ボブ・クリアマウンテンがそのワークフローとテクニックを約3時間にわたって解説。途中、一般には公開されていない著名な楽曲のイマーシブ・ミックスが特別に披露されるなど、大変充実した内容のイベントとなった。ここではその模様をダイジェストでお伝えしたい。
イマーシブ・オーディオへの取り組み
Bob Clearmountain氏:私は音楽のサラウンド・ミックスにいち早く取り組んだエンジニアのひとりだと思いますが、イマーシブ・オーディオに関しては、妻(注:Apogee ElectronicsのCEO、ベティー・ベネット氏)から、“これは素晴らしいテクノロジーだから、ぜひ取り組むべきだ”と背中を押されたことがきっかけになりました。実際に音楽のイマーシブ・ミックスを手がけたのは、皆さんご存知のザ・バンドが最初です。私はザ・バンドの名盤3作品の5.1chミックスを手がけたのですが、その中の1枚「カフーツ」というアルバムの作業をしているときに、レコード会社の担当者から、“Dolby Atmosでもミックスしてみないか”というオファーがあったのです。
その後間もなく、ジョー・ボナマッサの「Time Clocks」というアルバムもDolby Atmosでミックスしました。これが私にとって音楽のイマーシブ・ミックスの2作目になります。このアルバムのプロデューサーであるケヴィン・シャーリーはオーストラリア出身で、ディジュリドゥのサウンドがとても印象的な作品です。このアルバムは何年も前の作品であったため、レーベル・サイドもアーティスト本人も、最初はDolby Atmos化にあまり関心がありませんでした。ただ、私は自分のスタジオをDolby Atmosに対応させたばかりだったので、Dolby Atmosバージョンをジョー・ボナマッサ本人、ケヴィン・シャーリー、レーベルのスタッフに聴いてもらったのです。そうしたら彼らはそのサウンドに感銘を受け、“これは素晴らしい、ぜひリリースしよう”ということになりました。それがきっかけで、ケヴィンも自身のスタジオをDolby Atmosに対応させましたよ(笑)。
私は1980年代、ロキシー・ミュージックの「Avalon」というアルバムをミックスしましたが、あれだけ様々な要素が含まれている作品がステレオという音場の中に収められているのはもったいないと前々から感じていました。もっと音場が広ければ、要素をいろいろな場所に定位できるのに… という想いが、常に頭の中にあったのです。もちろんそれは、イマーシブ・オーディオどころか、サラウンドが登場する以前の話で、いつかその想いを叶えたいと思っていました。その後、念願かなって「Avalon」のサラウンド・ミックスを作ることができました。そしてイマーシブ・オーディオの時代が到来し、「Avalon」のプロデューサーであるレット・ダヴィースと“これは絶対にDolby Atmosでミックスするべきだ”ということになったのです。
Dolby Atmosバージョンの「Avalon」を体験された方なら分かると思いますが、かなりの要素が後方に配置されており、そのようなバランスの楽曲は珍しいのではないかと思います。たとえば、印象的な女性のコーラスも後方に配置されています。なぜこのようなバランスにしたかと言えば、ステレオ・ミックスを手がけたときもそうだったのですが、演劇のような音響にしたいと考えたからです。楽曲に登場する演者、ボーカリスト、プレーヤーを舞台に配置するようなイメージでしょうか。ですので、キーとなるブライアン・フェリーのボーカルはフロント・センターですが、他の要素は異なる場所に定位させました。
イマーシブ・ミックスというと、多くの要素が動き回るミックスを想起する方も多いのではないかと思います。もちろん、そういうミックスも可能ですが、Dolby Atmosバージョンの「Avalon」ではそういうダイナミックなパンニングはほとんどありません。言ってみれば静的なミックスであり、ジェット機やヘリコプター、アイアンマンが登場するようなミックスではないのです。
SSL 4000Gを使用したイマーシブ・ミックス
📷オーディオの入出力を担うのはApogeeのSymphony I/O Mk II。Atmosミックスとステレオミックスを同時に作るワークフローではこれらを切り替えながら作業を行うことになるが、その際に素早く切り替えを行うことができるSymphony I/O Mk IIのモニター・コントロール機能は重宝されているようだ。SSL 4000Gの後段にある「プリント・リグ」と呼んでいるセクションで下図のようなセッティングを切り替えながら制作が進められていく。
私はイマーシブ・ミックスもアナログ・コンソールのSSL 4000Gでミックスしています。SSL 4000Gには再生用のAvid Pro Toolsから72chのオーディオが入力され、そしてミックスしたオーディオは、“プリント・リグ”と呼んでいる再生用とは別のPro Toolsにレコーディングします。“プリント・リグ”のPro Toolsは、最終のレコーダーであると同時にモニター・コントローラーとしての役割も担っています。
そして再生用Pro Toolsと“プリント・リグ”のPro Tools、両方のオーディオ入出力を担うのは、ApogeeのSymphony I/O Mk IIです。私は、ステレオ・ミックスとDolby Atmosミックスを同時に作りますが、Symphony I/O Mk IIでのモニター・コントロール機能は、まさしく私のワークフローのために搭載されているような機能と言えます。私は7.1.4chのDolby Atmosミックスと、ニア・フィールド・スピーカーやテレビなどに送る3組のステレオ・ミックスを切り替えながら作業を行いますが、Symphony I/O Mk IIではそういったワークフローに最適な機材です。ステレオ・ペアを最大16組作成することができ、非常に柔軟な作業環境を構築できるため、過去に手がけた5.1chのサラウンド・ミックスと比較しながらの作業も容易です。
肝心のミキシングについて、アナログ・コンソールのSSL 4000Gで一体どのようにイマーシブ・ミックスを行っているのか、疑問に感じた人もいるかもしれません。しかし決して特別なことを行っているわけではなく、そのルーティングはストレートでシンプルです。SSL 4000Gに入力した信号は、チャンネル・ストリップで調整した後、Dolby Atmos用のチャンネルとして、スモール・フェーダーのトリム・チャンネルを活用して送っているのです。スモール・フェーダーは基本ユニティーで使用し、レベルはラージ・フェーダーの方で調整してから、ポスト・フェーダーでスモール・フェーダーに送ります。スモール・フェーダーから2本のスピーカーに同時に送ることは基本ありませんが、隣り同士のスピーカーに同じ信号を送って、パンでバランスを調整することはあります。また、このルーティングですと、基本オートメーションを使用することができません。オートメーションを使いたいときは、専用のバスを作り、そちらに送ることで対処しています。
私のSSL SL4000Gは特別仕様で、VCAとバス・コンプレッサーが4基追加で備わっています。標準のステレオ・バスのDCを、追加搭載した4基のVCA / バス・コンプレッサーにパッチすることで、すべてのバス・コンプレッサーの挙動をスレーブさせ、ステレオ・ミックスとマルチ・チャンネル・ミックスのコンプレッションの整合性を取っているのです。ただ、これだけの構成では5.1chのサラウンド・ミックスには対応できても、7.1.4chのイマーシブ・ミックスには対応できません。それでどうしようかと悩んでいたときに、Reverb(編注:楽器・機材専門のオンライン・マーケットプレイス)でSSLのVCA / バス・コンプレッサーをラック仕様にノックダウンした機材を発見し、それを入手して同じようにDC接続することで、7.1.4chのイマーシブ・ミックスに対応させました。これはとてもユニークなシステムで、おそらく世界中を探しても同じようなことをやっている人はいないと思います(笑)。もちろん、サウンドは素晴らしいの一言です。
Dolby Atmosミックスは、7.1.2chのベッドと最大128個のオブジェクトで構成されますが、私は基本的にベッドルーム(7.1.2)でミックスを行います。オブジェクトは動く要素、たとえば映画に登場するヘリコプターなどのサウンドを再現する上では役に立ちますが、音楽のイマーシブ・ミックスにはあまり必要だとは思っていません。ですので、Dolby Atmosミックスと言っても私はハイト・スピーカーを除いた7.1chで音づくりをしています。なお、ハイト・チャンネルに関してDolby Laboratoriesは2chのステレオとして規定していますが、私は4chのクアッドとして捉え、シンセサイザーやスラップバック・ディレイなどを配置したりして活用しています。
ステレオ・ミックスのステムはできるだけ使用しない
先ほどもお話ししたとおり、私はステレオ・ミックスとDolby Atmosミックスを同時に行います。最初にステレオ・ミックスを作り、そこから書き出したステムを使ってDolby Atmosミックスを作る人が多いと思うので、私のワークフローは珍しいかもしれません。なぜステレオ・ミックスとDolby Atmosミックスを同時に行うのかと言えば、私はステレオ・ミックスから書き出したステムに、ミキシングを縛られたくないからです。ステレオ・ミックスのステムは、エフェクトも一緒に書き出されてしまっているため、もう少しフィールドを広げたいと思っても簡単にはいきません。楽曲の中心であるボーカルですらまとめられてしまっているので、私はDolby Atmosミックスに入る前に、iZotope RXを使ってセンターのボーカルとサイドのボーカルを分離します。
ですので、可能な限りオリジナルのセッションからDolby Atmosミックスを作るべきであると考えていますが、これは理想であって、実際には難しいケースもあるでしょう。もちろんステムから作られたDolby Atmosミックスの中にも素晴らしい作品はあります。たとえば、アラバマ・シェイクスのボーカリスト、ブリタニー・ハワードの「What Now」という曲。このミックスを手がけたのはショーン・エヴェレットというエンジニアですが、彼はステムをスピーカーから再生して、それをマイクで録音するなど、抜群のクリエイティビティを発揮しています。まさしくファンキーな彼のキャラクターが反映されたミックスだと思っています。
アーティストの意向を反映させる
最近はレコード会社から、昔の名盤のDolby Atmos化を依頼されることが多くなりました。しかしDolby Atmos化にあたって、アーティスト・サイドの意向がまったく反映されていないことが多いのです。意向が反映されていないどころか、自分の作品がDolby Atmosミックスされたことをリリースされるまで知らなかったというアーティストもいるくらいです。音楽はアーティストが生み出したアート作品です。可能な限りアーティストの意向を反映させるべきであると考えています。
私が1980年代にミックスしたヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「Sports」というアルバムがあります。何年か前にこの作品のディレクターから、“「Sports」のDolby Atmosミックスを作ったので聴いてみないか”という連絡がありました。興味があったので聴きに行ったのですが、その場にいた全員が“これは何かの冗談だろ?”と顔を見合わせるくらいひどいミックスだったのです。試聴環境のセットアップは完璧でしたが、聴くに耐えないミックスでどこかを修正すれば良くなるというものではありません。私はディレクターに、“Dolby Atmosミックスを作り直させてくれないか”と打診しました。予算を使い切ってしまったとのことだったのですが、個人的に思い入れのある作品だったということもあって、無償で引き受けることにしたんです。
この話には余談があります。「Sports」のDolby Atmosミックスは、Apple Musicでの配信直後にリジェクトされてしまったのです。なぜかと言うと、オリジナルのステレオ・ミックスには入っていない歌詞が入っているから。私はDolby Atmosミックスを行う際にあらためてマルチを聴き直してみたのですが、おもしろい歌詞が入っていたので、それを最後に入れてしまったんです(笑)。Appleはオリジナルの歌詞とDolby Atmosミックスの歌詞が同一でないとリジェクトしてしまうので、過去の作品のDolby Atmos化を検討されている方は気をつけてください。彼らはしっかりチェックしているようです(笑)。また、Appleは空間オーディオ・コンテンツの拡充に力を入れていますが、ステレオ・ミックスを単純にアップ・ミックスしただけの作品も基本リジェクトされてしまいます。
一世を風靡した“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”
私は古くからの友人であるブライアン・アダムスのヒット曲、「Run To You」もDolby Atmosでミックスしました。Dolby Atmosミックスの話に入る前に、どうやってこの特徴的な’80sサウンドを生み出したのか、少しご紹介しておきましょう。
この曲はカナダのバンクーバーにある「Little Mountain Studio」というスタジオでレコーディングを行いました。私はこの曲のドラムを“ビッグ・サウンド”にしたいと考えたのですが、「Little Mountain Studio」のライブ・ルームはかなりデッドで、私がイメージしていた“ビッグ・サウンド”には不向きな空間だったのです。一体どうしたものか…と思案していたとき、ライブ・ルームの真横にローディング・ベイ、 いわゆるガレージのようなスペースがあることに気付きました。試しにそこで手を叩いてみたところ、コンクリートが気持ちよく反響したので、私はドラムの周囲に比較的硬めの遮蔽板を設置し、残響をローディング・ベイ側に逃すことで、大きな鳴りのドラム・サウンドを作り出したのです。本当に素晴らしいサウンドが得られたので、このセッティングを再現できるように、アシスタントに頼んでドラムやマイクの位置を記録してもらいました。ですので、この“ビッグ・サウンド”は、後にこのスタジオでレコーディングされたボン・ジョヴィやエアロ・スミスの曲でも聴くことができます。
「Run To You」をレコーディングしたのはもう40年も前のことになりますが、自分がやっていることは今も昔も大きく変わっていません。確かに世の中にはトレンドというものがあります。「Run To You」をレコーディングした1980年代はリバーブが強いサウンドが主流でしたが、1990年代になると逆にドライなサウンドが好まれるようになりました。そしてご存知のとおり、現代は再びリバーブを使ったサウンドが主流になっています。そういったトレンドに従うこともありますが、私は天邪鬼なのでまったく違ったサウンドを試すこともあります。いつの時代も自分のスタイルを崩すことはありません。
よく“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”と言われることがありますが、私は自分のサウンドについて意識したことはありません。私はあくまでもクライアントであるアーティストのためにミックスを行っているのです。アーティストと一緒に作り上げたサウンドが、結果的に“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”になっているのではないかと思っています。
イマーシブ・ミックスにおける各要素の定位
「Run To You」のDolby Atmosミックスについてですが、まずセンターには楽曲の基盤となるボーカル、ベース、スネア、キックといった音を定位させました。こういった音をなぜセンターに集めるかと言うと、私はライブ・コンサートのようなイメージでミックスを行うからです。ロックやポップスのライブ・コンサートでは、これらの音がセンターから聴こえます。ご存知のように、再生環境におけるセンター・スピーカーという考え方は映画から来ています。映画の中心となる音はダイアログで、それはほとんどの場合がセンターに定位されます。その考え方をそのまま音楽に適用しても、問題はないと考えています。
それではサイド、リア、ハイトには、どのような音を定位させるのがいいのでしょうか。楽曲の基盤となる音に関してはセンターに集めた方がいいと言いましたが、同じギターでもパワー・コードのような音ではない、たとえばアコースティック・ギターのような音ならば、サイドに振ってみてもいいかもしれません。キーボードに関しても同じで、ピアノはセンターに定位させる場合が多いですが、シンセサイザーのような音はリアやハイトに定位させると良い結果が得られます。
Dolby Atmosというフォーマットにおいて特徴的な要素と言えるのが、ハイト・スピーカーです。“音楽のミックスで、ハイト・スピーカーなんて使いどころがあるのか?”と思われる人もいるかもしれませんが、実際はとても有用です。たとえば私はアンビエンス… リバーブで作り出した残響ではなく、インパルス・レスポンスにおけるアンビエンスをハイト・スピーカーに送り、これによって空間の高さを演出しています。
もうひとつ、LFEという要素についてです。サブ・ウーファーに関してはミックスを補強してくれる有用な要素ではあるのですが、必須ではないというのが私の考え方です。私はLFEなしでミックスを成立させ、それを補強する際に使用しています。また、ミッド・ファーはバイノーラルのオプションではグレイアウトされて設定することができません。あまりLFEに頼り過ぎてしまうと、ヘッドホンで聴いたときに音像が崩れてしまうので注意が必要です。
イマーシブ・ミックスにおけるエフェクト処理
「Run To You」のDolby Atmosミックスでは、ボーカルだけでなくシンセサイザーのディレイ音もリアに配置しています。タイミングが楽曲のテンポよりもオフなので、一聴すると“曲に合っているのか?”と思う人もいるかもしれませんが、ディエッサーを強めにかけることによってミックスに戻した際に馴染むサウンドを作り出しているのです。ギターに関しても同じく、それだけで聴くとバラバラな印象があったので三連符のディレイを使用し、ディレイ音が返る度にリバーブを付加していき、さらには歪みも加えることで、奥行き感と立体感のあるサウンドを作り出しています。こういったエフェクトには、私が開発に関わったApogee Clearmountain’s Domainを使用しました。先ほども言ったとおり、私の頭の中にあったのはライブ・コンサートのようなサウンドです。私はライブ・サウンドが大好きなので、それをスタジオで再現するという音作りになっています。また、パーカッションが空間の中を飛び回っているように聴こえるかもしれませんが、こういったサウンドもエフェクトのみで作り出しています。このミックスではオブジェクトを使用していません。楽曲を構成する要素はステレオ・ミックスと同一です。スピーカーの構成が違うだけで、こうも印象が変わるという好例だと思います。
プラグインに関して、イマーシブ・ミックスで最も多用しているのがクアッド処理に対応しているリバーブです。具体的にはApogee Clearmountain’s Domainを最もよく使います。イマーシブ・ミックス用のクアッド・リバーブは、そのままフォールドバックしてステレオ・ミックスにも使用します。最近は位相を自動で合わせてくれたりするような管理系のプラグインが多く出回っていますが、そういったツールを使い過ぎるとサウンドのパワー感が失われてしまうような印象を持っています。実際にそういったツールを使ったことがありますが、最終的には使用しない方が良い結果になったケースの方が多かったです。
📷Apogee Clearmountain’s Domain:ミックスでも多用しているというApogee Clearmountain’s Domain。画面左側のシグナルフローに沿うようにボブ・クリアマウンテン独自のFXシグナルチェーンを再現している。もちろん、プリセットもボブ独自のものが用意されており、ロードして「あの」サウンドがどのように構築されているのかを解析するという視点も持つと実に興味深いプラグインだと言えるだろう。
イマーシブ・オーディオで楽曲の物語性を強化する
イマーシブ・オーディオは、アーティストが楽曲に込めた物語性を強化してくれるフォーマットであると考えています。私の古くからの友人であるブルース・スプリングスティーンは歌詞をとても重視するアーティストです。彼は歌詞に込めた物語性をいかにサウンドに盛り込むかということを常に考えており、私は彼のそういう想いをミックスで楽曲に反映させようと長年努力してきました。
ブライアン・フェリーの「I Thought」という曲があります。それほど有名ではないかもしれませんが、私のお気に入りの曲です。この曲の歌詞は、男性がガール・フレンドに対して抱いているイメージが、徐々に現実とは違うことに気づいていく… という内容になっています。男性が想っているほどガール・フレンドは彼のことを想っているわけではない…。これはブライアンから聞いたストーリーではなく歌詞を読んだ私の勝手な解釈ですが、私はこの解釈に基いてモノラルで始まるシンプルな音像がどんどん複雑な音像になっていく… というイメージでミックスしました。そして最後は男性の悲しさや虚しさについてをノイズを強調することで表現したのです。ちなみにこの曲はブライアン・フェリー名義ですが、ロキシー・ミュージックのメンバーも参加しています。おそらく最後のノイズはブライアン・イーノのアイデアだったのかなと想像しています。
Dolby Atmos for Everyone!
Dolby Atmosに興味はあるけれども、制作できる環境を持っていないという人も多いかもしれません。しかしその敷居は年々低くなっており、いくつかのDAWの最新バージョンにはDolby Atmosレンダラーが標準で搭載されています。その先駆けとなったのがApple Logic Proで、Steinberg NuendoやPro Toolsの最新バージョンにもDolby Atmosレンダラーが統合されています。このようにDolby Atmosは決して特別なものではなく、今や誰でも取り組むことができるフォーマットと言っていいでしょう。もちろん、Symphony I/O Mk IIはこれらすべてのDAWに対応しています。その柔軟なモニター・コントロール機能は、Dolby Atmosコンテンツの制作に最適ですので、ぜひご購入いただければと思います(笑)。Dolby Atmosで作業するには多くのオーディオ入出力が必要になりますが、Symphony I/O Mk IIではDanteに対応しています。コンピューター側に特別なハードウェアを装着しなくても、Dante Virtual Soundcardを使用すれば、Symphony I/O Mk IIとDanteで接続することができます。この際に有用なのがGinger Audioというメーカーが開発しているGroundControl SPHEREで、このソフトウェアを組み合わせることによって複雑なルーティングでも簡単かつ効率よくセットアップすることができます。
私が今日、明確にしておきたいのは、イマーシブ・オーディオというのは新しいテクノロジーではあるのですが、多くのレコード会社がサポートしてくれているので、一時のブームで廃れてしまうようなものではないということです。これからイマーシブ・ミックスされた素晴らしい作品がどんどんリリースされることでしょう。我々ミュージック・プロダクションに携わる者たちは、皆で情報交換をしてこの新しいテクノロジーを積極的にバックアップしていくべきだと考えています。
今回のセミナーでは、私が行なっているDolby Atmosミックスのワークフローについてご紹介しましたが、必ずしもこれが正解というわけではありません。たとえば、私はセンター・スピーカーを重要な要素として捉えていますが、エンジニアの中にはセンター・スピーカーを使用しないという人もいます。そういうミキシングで、アーティストのイメージが反映されるのであれば、もちろん何も問題はないのです。ですので、自分自身のアイデアで、自分自身の手法を見つけてください。
充実の内容となった今回のセミナー。イマーシブサウンドという新たな世界観を自身のワークフローで昇華してさらに一歩先の結果を追い求めている様子がよくわかる。その中でも、アーティストの意図をしっかりと反映するためのミックスという軸は今も昔も変わっておらず、“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”とされる名ミックスを生み出す源泉となっているように感じる。レジェンドによる新たな試みはまだまだ続きそうだ。
*ProceedMagazine2024号より転載
Media
2024/08/09
N響「第9」、最先端イマーシブ配信の饗宴。〜NHKテクノロジーズ MPEG-H 3D Audio 22.2ch音響 / NeSTREAM LIVE / KORG Live Extreme〜
年末も差し迫る2023年12月26日に行われた、NHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサート。 その年の最後を飾る華やかなコンサートと同時に、NHKテクノロジーズ(NT)が主催する次世代を担うコンテンツ配信技術のテストだ。次世代のイマーシブ配信はどのようになるのか、同一のコンテンツをリアルタイムに比較するという貴重な機会である。その模様、そしてどのようなシステムアップが行われたのか、壮大なスケールで行われた実験の詳細をレポートする。
●取材協力
・株式会社NHKテクノロジーズ
・株式会社クープ NeSTREAM LIVE
・株式会社コルグ Live Extreme
3つのイマーシブオーディオ配信を同時テスト
まずは、この日に行われたテストの全容からお伝えしたい。イマーシブフォーマット・オーディオのリアルタイム配信実験と言ってもただの実験ではない、3種類のフォーマットと圧縮方式の異なるシステムが使われ、それらを比較するということが行われた。1つ目は、次世代の放送規格としての8K MPEG-H(HEVC+22.2ch音響MPEG-H 3D Audio *BaselineProfile level4)の配信テスト。2つ目がNeSTREAM LIVEを使った、4K HDR(Dolby Vision)+ Dolby Atmos 5.1.4ch@48kHzの配信テスト。3つ目がKORG Live Extremeを使った、4K + AURO-3D 5.1.4ch@96kHzの配信テストだ。さらに、NeSTREAM LIVEでは、HDR伝送の実験も併せて行われた。イマーシブフォーマットのライブストリーム配信というだけでも興味深いところなのだが、次世代の技術をにらみ、技術的に現実のものとして登場してきている複数を比較するという取り組みを目にすることができるのは大変貴重な機会だと言える。
全体のシステムを紹介する前に、それぞれのコーデックや同時配信されたフォーマットなどを確認しておきたい。22.2chは、次世代地上デジタル放送での採用も決まったMPEG-H 3D Audioでの試験、NeSTREAM LIVEは、NetflixなどストリーミングサービスでのDolby Atmos配信と同一の技術となるDolby Digital Plusでの配信、KORG Live ExtremeはAURO-3Dの圧縮技術を使った配信となっている。圧縮率はNeSTREAM LiveのDolby Digital Plusが640kbps、次にMPEG-Hの22.2chで1chあたり80kbps。Live Extremeは10Mbps程度となっている。
映像についても触れておこう。22.2chと組み合わされるのは、もちろん8K HEVCの映像、NeSTREAM LIVEは同社初のチャレンジとして4K Dolby Visonコーデックによる4K HDR映像の配信テストが合わせて行われた。KORG Live Extremeは、4Kの動画となっている。次世代フォーマットであるということを考えると当たり前のことかもしれないが、各社イマーシブと組み合わせる音声として4K以上の動画を準備している。KORG Live Extremeでは、HPLコーデックによる2chバイノーラルの伝送実験も行われた。イマーシブの視聴環境がないという想定では、このようなサブチャンネルでのバイノーラル配信というのは必要なファクターである。ちなみに、Dolby Atmosであれば再生アプリ側でバイノーラルを作ることができるためこの部分に関しては大きな問題とならない。
IPで張り巡らされたシステムアップ
📷仮設でのシステム構築のため、長距離の伝送を絡めた大規模なシステムアップとなっている。DanteのFiber伝送、Riedel MediorNet、OTARI LightWinderが各種適材適所で使われている。また、できるかぎり信号の共有を図り、チャンネル数の多いイマーシブサウンド3種類をうまく伝送し、最終の配信ステーションへと送り込んでいるのがわかる。実際のミックスは、22.2chのバランスを基本にそこからダウンコンバート(一部チャンネルカット)を行った信号が使われた。
それでは、テストのために組み上げられた当日のシステムアップを紹介したい。NHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサートは、ご存知の通り年末の恒例番組として収録が行われオンエアされている。その本番収録のシステムとは別に今回のテスト配信のシステムが組まれた。マイクセッティングについても、通常収録用とは別に会場のイマーシブ収録のためのマイクが天井へ多数準備された。ステージ上空には、メインの3点吊り(デッカベースの5ポイントマイク)以外にもワイドに左右2本ずつ。客席上空には22.2chの高さ2層のレイヤーを意識したグリッド上の17本のマイクが吊られていた。
📷客席上空に吊り下げられたマイク。田の字にマイクが吊られているのが見てとれる。これは22.2chのレイヤーそのものだ。NHKホールは放送局のホールということもあり、柔軟にマイクを吊ることができるよう設計されている。一般的なホールではなかなか見ることができない光景である。
マイクの回線はホール既設の音響回線を経由して、ホール内に仮設されたT-2音声中継車のステージボックスに集約される。ここでDanteに変換されたマイクの音声は、NHKホール脇に駐車されたT-2音声中継車へと送られ、ここでミックスが作られる。この中継車にはSSL System Tが載せられているおり、中継車内で22.2ch、Dolby Atmos準拠の5.1.4chのミックスが制作され出力される。ここまでは、KORG Live Extremeが96kHzでのテストを行うこともあり、96kHzでのシステム運用となっている。
22.2chと5.1.4ch@48kHzの出力は、MADIを介しRIEDEL MediorNetへ渡され、配信用のテスト機材が設置されたNHKホールの配信基地へと送られる。もう一つの5.1.4ch@96kHzの回線はOTARI Lightwinderが使われ、こちらもNHKホールの配信基地へと送られる。ホールの内外をつなぐ長距離伝送部分は、ホールから中継車までがDante。中継車からホールへの戻りは、MediorNetとLightwinderというシステムだ。それぞれネットワークケーブル(距離の関係からオプティカルケーブルである)でのマルチチャンネル伝送となっている。
📷T-2音声中継車とその内部の様子。
ホールの配信基地には22.2ch@MPEG-H、NeSTREAM LIVE、Live Extremeそれぞれの配信用のシステムがずらりと設置されている。ここでそれぞれのエンコードが行われ、インターネット回線へと送り出される。ここで、NeSTREAM LIVEだけは4K HDRの伝送実験を行うために、AJA FS-HDRによる映像信号のHDR化の処理が行われている。会場収録用のカメラは8Kカメラが使われていたが、SDRで出力されたためHDR映像へとコンバートが行われ、万全を期すためにカラリストがその映像の調整を行っていた。機械任せでSDRからHDRの変換を行うだけでは賄えない部分をしっかりと補正、さすが検証用とはいえども万全を期すプロフェッショナルの仕事である。
このようにエンコードされ、インターネットへと送出されたそれぞれのコーデックによる配信は、渋谷ではNHK放送センターの至近にあるNHKテクノロジーズ 本社で受信して視聴が行われるということになる。そのほか渋谷以外でも国内では広島県東広島芸術文化ホールくらら、海外ではドイツでの視聴が行われた。我々取材班は渋谷での視聴に立会いさせていただいたが、他会場でも問題なく受信が行えていたと聞いている。
📷上左)NHKホールの副調整室に設置された3つの配信システム。写真中央の2台並んだデスクトップのシステムは、KORG Live Extremeのシステムだ。上右)こちらが、NeSTREAM LIVEのDolby Atmos信号を生成するためのラック。ここでリアルタイムにDolby Digital Plusへとエンコードが行われる。下左)8K+22.2chを制作するためのPanasonic製レコーダー。8K 60Pの収録を可能とするモンスターマシンで収録が行われた。下右)NeSTREAM LIVEで使われたHDRの信号生成のためのラック。最上段のAJA FS-HDRがアップコンバートのコアエンジン。
それぞれに持つ優位性が明確に
実際に配信された3種類を聴いてみると、それぞれのメリットが際立つ結果となった。イマーシブというフォーマットの臨場感、このポイントに関してはやはりチャンネル数が多い22.2chのフォーマットが圧倒的。密度の濃い空間再現は、やはりチャンネル数の多さに依るところが大きいということを実感する。今回の実験では、ミキシングの都合からDolby Atmos準拠の5.1.4 chでの伝送となった他の2種の倍以上のチャンネル数があるのだから、この結果も抱いていたイメージ通りと言えるだろう。もう一つは、圧縮率によるクオリティーの差異。今回はKORG Live Extremeが96kHzでの伝送となったが、やはり低圧縮であることの優位性が配信を通じても感じられる。NeSTREAM LIVEについては、現実的な帯域幅で必要十分なイマーシブ体験を伝送できる、現在のテクノロジーレベルに一番合致したものであるということも実感した。その中でDolby Visionと組み合わせた4K HDR体験は、映像のクオリティーの高さとともに、音声がイマーシブであることの意味を改めて感じるところ。Dolby Vision HDRによる広色域は、映像をより自然なものとして届けることができる。それと組み合わさるイマーシブ音声はより一層の魅力を持ったものとなっていた。
前述もしているが、それぞれの配信におけるオーディオコーデックの圧縮率は、NeSTREAM LIVEのDolby Digital Plusが640kbps、次にMPEG-Hの22.2chが1chあたり80kbps。Live Extremeは10Mbps程度となっている。このように実際の数字にしてみると、NeSTREAM LIVEの圧縮率の高さが際立つ。640kbpsに映像を加えてと考えると、現時点ではこれが一番現実的な帯域幅であることは間違いない。
ちなみに、YouTubeの執筆時点での標準オーディオコーデックはAAC-LC 320kbpsである。言い換えれば、NeSTREAM LIVEはこの倍の帯域でDolby Atmosを配信できるということである。KORG Live Extremeにおける96kHzのクオリティーは確かに素晴らしかった、しかし10Mbpsという帯域を考えると多数へ行なわれる配信の性格上、汎用的とは言い難い一面も否めない。しかしながらプレミアムな体験を限定数に、というようなケースなど活用の可能性には充分な余地がある。22.2chのチャンネル数による圧倒的な体験はやはり他の追従を許さない。8K映像と合わせてどこまで現実的な送信帯域にまで圧縮できるかが今後の課題だろう。22.2ch音響を伝送したMPEG-H 3D Audioは任意のスピーカーレイアウトやバイノーラル音声に視聴者側で選択し視聴することができる。22.2ch音響の臨場感を保ったまま、視聴者の様々な環境で視聴することが可能となる。AVアンプやサウンドバー、アプリケーションなどの普及に期待したい。
このような貴重な実験の場を取材させていただけたことにまずは感謝申し上げたい。取材ということではあったが、各種フォーマットを同時に比較できるということは非常に大きな体験であり、他では得ることのできない大きな知見となった。伝送帯域やフォーマット、コーデックによる違い、それらを同一のコンテンツで、最新のライブ配信の現場で体験することができるというのは唯一無二のこと。これらの次世代に向けた配信が今後さらに発展し、様々なコンテンツに活用されていくことを切に願うところである。
*ProceedMagazine2024号より転載
NEWS
2024/07/29
SOUND PARTICLESより、新製品「inDelay(インディレイ)」が登場
コンピュータ・グラフィックの概念に基づいた独自のソフトウェア開発で知られ、近年は3Dシンセ SkyDust 3Dやスマホを利用したイマーシブパンナーSpace Controllerなど唯一無二のプラグインを発表しているポルトガルのメーカーSOUND PARTICLES社が、新製品「inDelay」をリリースしました!
さらにinDelayを含めた、新しいプラグイン・バンドル製品や発売記念25%OFFも実施中です!
主な機能〜パーティクル技術によるクリエイティブな効果〜
SOUND PARTICLES社が社名にも掲げる3Dパーティクル技術によって複雑なディレイも簡単に実現が可能。直感的なパラメータ操作で基本的なディレイからダイナミックな音響演出までが制作できます。
機能は大きく3つのモード[チャンネル、タップ、パーティクル]に別れており、入力信号に対するディレイ設定から各タップの詳細な設定、入力信号を元に最大100もの同時出力が可能なパーティクルディレイが設定できます。
UI下部のタイムエディターでは、入力波形に対して視覚的なディレイタイム、レベル調整が行えます。同社のAIRプラグイン技術を応用した、大気による距離や奥行きシミュレート機能も搭載。
全てのプラグインがイマーシブフォーマットに対応しているSOUND PARTICLES社ですので、inDelayももちろんマルチチャンネルに対応。Dolby Atmosは最大11.1.8まで、ハリウッドのサウンドデザインでも使用されていることからIMAX 12.0やAuro 13.1、NHK 22.2などのフォーマットが入力、出力の両方に対応しています。
発売記念セール情報
inDelayの発売を記念して、同社全製品25%オフの「7月セール」も実施中!
inDelayを含めた、新しいプラグイン・バンドル 以下3製品も対象です。
- Essential
- 8FX
- Spatial Music II
セール期間:2024年7月24日(水)〜 8月2日(水)
※8月2日(金)以降も、inDelay、AudioMatrix、SkyDust 3D/Stereo、Space Controller Studioは、25%オフの価格が続きます。
製品情報
SOUND PARTICLES / inDelay
標準価格:¥30,800 (本体価格:¥28,000)
→25%オフ価格:¥23,100 (本体価格:¥21,000)
>>Rock oN eSotreで購入
SOUND PARTICLESよりまたユニークなエフェクトプラグインが登場しました!音楽やサウンドデザインでまだ誰も聞いたことのない音を創り出す強い味方となってくれるはず!
イマーシブ制作ツールのご相談はROCK ON PROまでお問い合わせください。
NEWS
2024/06/21
Pro Tools 2024.6リリース!ワークフローを加速する多数のアップデートを実施
Pro Tools 2024.6がリリースされました。今回のアップデートではARA 2対応の拡大とRX Spectral Editorの付属、刷新されたセッションインポート機能など、大規模セッションをより効率的かつ確実にハンドリングするための機能強化が図られているほか、MIDIプラグイン追加やSibelius・Media Composerとの連携強化なども施され、ポストプロダクションだけでなく音楽制作においても、より効率的な作業ができるように工夫されています。
有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.6をダウンロードして使用することが可能です。
ARA 2対応アプリケーションにiZotope RX Spectral Editorなどが追加
すでにARAに対応しているCelemony Melodyneに加え、2024.6からは以下のアプリケーションがARAに対応します。
・iZotope RX Spectral Editor(現状、その他のモジュールは非対応)
・Sound Radix Auto-Align 2
・Sound Radix Auto-Align Post 2
・Synchro Arts RePitch(Elements、Standard)
・Synchro Arts VocAlign(Project、Ultra)
・Synchro Arts Revoice Pro
これらのアプリケーションがARAに対応することで、ポストプロダクションで必要とされるオーディオ処理の結果を「ミックスの中で」「リアルタイムに」確認することが可能になります。
RX Spectral Editor、及び、RePitch Elementsは、Pro Tools Artist / Studio / Ultimateに付属します。
Pro Tools Dolby Atmos関連機能の強化
Dolby AtmosレンダラーのUIデザインがより使いやすく変更されました。出力フォーマットの追加、Pro Toolsウィンドウからの設定変更など、より素早いワークフローを実現するアップデートが施されています。
Pro Toolsウィンドウ上で設定変更が可能に
これまでメニューに入らないとアクセスできなかった「バイノーラルモードの変更」と「Dolby Atmosグループ設定のアサイン/変更」が、編集/ミックスウィンドウのトラックからダイレクトに操作できるようになりました。
また、これらの設定は再生中にも変更できるようになり、より最適な設定をリアルタイムに選択することができるようになりました。
Dolby Atmosグループのソロ/ミュート
内部レンダラーのUIがブラッシュアップされ、ウィンドウ上部にDolby Atmosグループごとのソロ/ミュートボタンが追加されました。この機能も、再生中に使用可能です。
これまでウィンドウ上部にあった各種設定メニューは、歯車マークをクリックするとウィンドウが拡張して表示されるようになりました。
出力フォーマットの追加
モニタリングとリレンダー出力に「9.1.4」「7.1.2」「ステレオ(Direct)」が追加されました。もちろん、既存の9.1.6、7.1.4、ステレオはそのまま残っています。従来の「ステレオ」は5.1ミックスをダウンミックスしたものを出力していましたが、新しいステレオ(Direct)は、ステレオ用のミックスを別途制作する場合に使用します。
オフラインでのリレンダリングが可能に
ライブ・リレンダラーでフリーズ、コミット、トラックのバウンスが可能になりました。もちろん、プラグインのオフラインバウンスにも対応しています。
メモリロケーション機能の強化
メモリロケーションを一括で管理する新しいウィンドウが追加されました。絞り込みやマーカー名での検索機能も備えており、膨大なマーカーをこれまでより効果的に活用することができるようになります。
また、マーカールーラーごとに表示/非表示を切り替える機能や、タイムライン上のマーカーへ移動するためのショートカットなどの機能追加も実施されています。
セッションインポート機能の強化改善
セッションインポート時のメニューがアップデートされ、現代のワークフローによりマッチしたデザインになりました。トラック/マーカーのリストが広くなり、ウィンドウ自体も広げることができるようになり、トラック数が膨大になる現代のセッションファイルをより効率よく扱うことができるようになります。
フォルダトラックはインポートウィンドウ上で展開することも可能、トラック名/マーカー名での検索機能も追加され、目的のトラックをすばやく見つけることができます。
Media Composer・Sibeliusとの連携強化
Pro Toolsのセッション書き出しから、Media Composerにインポートできる新しい形式のファイル「.ptxm」をエクスポートできるようになりました。.ptxmにはステレオ、5.1、7.1バスのボリュームとパンのオートメーションを保存することが可能。Dolby Atmosのリレンダーファイルをエクスポートすることもできます。
Media Composerでは、今後のアップデートで.ptxmファイルをインポートすることができるようになります(開発中)。
Sibeliusとの連携では、これまでSibelius→Pro Toolsで可能だったコピー&ペーストを、Pro Tools→Sibeliusでも実行可能になりました。MIDIノートのコピー&ペーストにも対応しています。
ふたつのMIDIプラグインが新登場
MIDIプラグインに下記2点が追加されました。
・Mixed In Key Captain Chords Lite:指定したコードからハーモニーを自動生成
・Human Lite:MIDIトラックに人間的な揺らぎを付加
MIDIエディタの表示オプション
MIDIエディタに下記2つの機能が追加されました。
・キーボードと個別のノートにピッチを表示
・半音階の#/b表示をワンクリックで切り替え
上記の機能はDock表示・ウィンドウ表示のいずれでも使用可能で、それぞれに別々の設定を施すことも可能です。
ユーザーからの声を反映し、着実に現代的なワークフローに対応するPro Tools。有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.6をダウンロードして使用することが可能です。
新規導入、アップデート、HDXシステムなど、ご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問合せください。
NEWS
2024/05/10
360VME出張測定開始&価格改定のお知らせ
360VME、出張測定開始
ついに6月より、360VME出張測定サービスが開始されます!!
SONYがイマーシブ制作を行われるクリエイター全てのためにその技術を展開しているSONY 360 Virtual Mixing Environment(360VME)。Rock oNのイマーシブ拠点MILスタジオにてそのサウンドをお持ち帰りいただくべくサービスを展開していましたが、ついに第2フェーズへとSONY 360 VMEサービスは突入します。
ご体験を頂いた方には、非常に高評価を頂いているSONY 360 VMEサービスです。MILスタジオと言うRock oNの誇るイマーシブスタジオのサウンド環境をヘッドフォンに閉じ込めてお持ち帰りいただくという、まさに夢のようなサービス。しかし、すでにイマーシブスタジオをお持ちの方からは自身のスタジオの環境を持ち歩きたいという声を多くいただいていました。
その声に答えるべくSONYと協議を進め、6月より出張測定のサービス開始となります!
料金体系変更のお知らせ
あわせて、SONY 360 VMEのStart Up Price期間も終了し、料金体系も変更となります。
① 360VME プロファイル料金
1プロファイル/1年 ¥40,000(税別)
1プロファイル/6ヶ月 ¥25,000(税別)
※プロファイルデータは 期間限定のサブスクリプションモデルとなります
② 360VME プロファイル測定料金
MILスタジオでの測定 1測定/¥40,000(税別)
出張測定サービス ¥80,000(税別)
※出張測定サービスは、3プロファイル以上でのお申し込みをお願いします。
①プロファイルサブスクリプション + ②測定料金 = 360VME測定サービス合計金額となります。
Sample Case #1 〜MILでの測定〜MILスタジオで、SONY 360 Reality AudioとDolby Atmosフォーマットのプロファイルを測定。
1年間のサブスクリプション・プロファイルを購入。
2プロファイル/1年 ¥40,000 ✗ 2 = ¥80,000(税別)
MILスタジオでの測定(2プロファイル) ¥40,000 ✗ 2 = ¥80,000(税別)
合計 ¥160,000(税別)
Sample Case #2 〜出張測定〜出張測定で、4名分のプロファイルを測定。1年間のサブスクリプション・プロファイルを購入
4プロファイル/1年 ¥40,000 ✗ 4 = ¥160,000(税別)
出張測定サービス(1プロファイル)¥80,000 ✗ 1 = ¥80,000(税別)
合計 ¥240,000(税別)
上記新価格は、6月よりの適用となります。
5月中のお申し込みに関しては、これまでの料金体系でのお受付とさせていただきます。
◎360VMEプロファイル更新料金に関して
測定を伴わないプロファイル期間更新の料金の設定を行う予定です。こちら、SONY様との協議が完了し次第、告知の方を行わせていただきます。
測定は引き続きこちらのフォームからお申し込みいただけます↓
360VME測定 お申し込み
ご不明な点などございましたら、ROCK ON PROまでお問い合わせください。
360 Virtual Mixing Environment詳細ページはこちら↓
https://www.minet.jp/brand/sony-360-vme/sony-360-vitual-mixing-environment/
MIL studioについてはこちら↓
https://www.minet.jp/contents/info/mil-studio/
NEWS
2024/03/29
Indoor 2 発売!ポスプロ向けリバーブが待望のアップグレード
AltiverbやSpeakerphoneなどがポスプロでも高い評価を得ているオランダのソフトウェアメーカーAudio Ease社。その主力製品の一つである、屋内音響に特化したリバーブプラグインIndoorが、待望のアップグレードです。約7年8ヶ月ぶりのメジャーアップグレードという「Indoor2」は、Appleシリコンにネイティブ対応、VST3対応などの進化を遂げています!
10のロケーション、60の空間で計1,000以上のインパルス・レスポンスを収録しており、マイク向きやドアの開閉の調節が可能なIndoor。かねてより7.1.2chのDolby Atmosフォーマットにも対応しています。Audio Ease定評の音響空間技術を駆使した高クオリティなリバーブ・プラグインです。
Indoor制作におけるIR収録の様子
主な新仕様 ~広がる動作環境~
・Appleシリコン搭載環境にネイティブ対応
・VST3フォーマット対応
・iLokのマシン認証に対応。USBキーに加えてコンピュータ本体にライセンス情報を記録可
これらのアップグレードにより、Indoorを使用できるシステム環境がより広がりました。
また、Windows版も後日対応予定とのことです。
Audio Ease / Indoor 2
¥111,100 (本体価格:¥101,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Indoor 1 to 2
(インドア1から2へのアップグレード)
標準価格:¥12,298(税込)
お求めはROCK ON PROまで!
※2023年3月18日以降にIndoorの前バージョン(Indoor 1)をアクティベートされたユーザーは、
無償アップグレードの対象になっています。詳しくは、AUDIO EASE社から届いている通知メールをご覧ください。
Altiverb8に続いてAppleシリコン搭載環境にネイティブ対応し、さらに活躍の場を広げたIndoor 2をぜひご活用ください!AudioEase製品などポスプロ制作ツールについてのご相談はROCK ON PROが承ります。
Support
2024/03/11
Pro ToolsとmacOS Sonomaの既知の不具合 – Pro Tools サポート情報
先日リリースされたバージョン2024.3にて、Pro ToolsとHDXシステムはmacOS Sonoma (14.3.1) に対応しましたが、重大な既知の不具合が見つかっています。Pro Toolsをご使用のユーザー様は、現状、macOS Sonomaへのアップデートは推奨されません。
最新情報はAvidナレッジベースでご確認ください。
macOS 14.4
新しいmacOS 14.4 Sonomaアップデートにより、AppleシリコンMac上のいくつかのiLokオーソライズ・プラグインに問題が発生しています。PACE Anti-Piracy社では、この問題を認識しており原因究明作業中です。この問題が解消されるまで、macOS 14.4へのアップデートは推奨されません。
macOS 14.3.1
Pro Tools ソフトウェアにおける問題
多コアのインテル・マシン(28-core Mac Proなど)を低バッファーサイズで使用した際の、オーディオ性能の劣化。
Aux I/Oデバイスを使用した際に不定期にエラーが出る。
ボイスオーバー・アクセシビリティ機能でポップアップやコンテクストメニューが表示されない。
インテルMac上で、Dolby Atmos内部レンダラーUIに、balls/textが表示されなかったり、top/rearビューが正しく表示されない場合がある。
編集ウィンドウのトラック名やトラック・アウトプット・アサインのツールチップが表示されない事がある。
Avidプラグインのいくつかでグラフィック表示不具合が発生する場合がある。
ミックスまたは編集ウィンドウ上におけるスクロール最中にメニューが開いたままなる場合がある。
インプットに「声を分離」モードが選択されている際に警告が出ない。
Pro Tools ハードウェアにおける問題
高サンプルレート・セッションにおける潜在的なサンプル落ちを含む、Pro Tools | Carbon の性能劣化問題。
Carbonセントラルにおけるエラー・ステータスの発生、または、拡張デバイスがAudio MIDI設定に作成されない。
HDXシステムにおいて、設定>ハードウェア でソフトクリップを選択すると、ソフトウェアがフリーズする。
MBOX Studioを低いハードウェア・バッファーサイズで使用した際に、正しく再生スタート出来ない場合がある。
3rd パーティー製品の問題
Keyboard Maestro経由でメニューが選択できない。
Sync scripts内のSoundsが Pro Tools メニューにアクセスできない。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-support-resource/
Support
2024/02/07
Pro Tools 2023.12.1 リリース(不具合修正バージョン)
Pro Tools 2023.12に含まれていた重大な課題が改修された、Pro Tools 2023.12.1がリリースされています。特に、Pro Tools 2023.12でDolby Atmosワークを実施されるユーザー様、および、HDXシステムを使用されているユーザー様は以下の情報をご一読の上、アップデート(無償)をご検討ください。
Pro Tools 2023.12.1は、以下の不具合修正のため2024年1月16日にリリースされました。
Dolby Atmos® ワークフロー
Pro Tools 2023.12.0 経由で、Dolby Atmos® WAV ADM BWFをバウンスしたりオフライン・リレンダーする際に問題が見つかりました。バウンスされたオーディオに警告なしに断続的なノイズが混入する可能性があります。ベッドやオブジェクトに直接アサインされたトラックに、Pro Limiterなど特定のプラグインがインサートされている場合に発生する事が多い様です。この問題はPro Tools 2023.12.1で修正されました(PT-317207)。
8,000サンプルを超える遅延のあるセッションにてWAV ADMをオンライン・バウンスした際にPro Toolsがフリーズする症状を修正(PT-316860)。
Pro Tools ハードウェア
Pro Tools 2023.12.0の起動時、Pro Tools | HDXまたはPro Tools | HD Nativeのファームウェア・アップデートがAAE -1164 エラーで失敗する問題を修正(PT-317106)。
注意: Pro Tools | HD Nativeはファームウェア・アップデート後に再起動する必要があります。
これに伴い、リリースノートの内容もアップデートされています(同一のページに追記の形)。
Pro Tools 2023.12 / 2023.12.1 リリース・ノート(Avidナレッジベース日本語版)
本件に関するご不明点、また、Pro Toolsシステム設計のご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2023-12-support-resource/
Event
2024/01/24
N響「第9」演奏会の裏で行われていた次世代配信に向けた取り組み 〜同一内容を複数フォーマットで比較するとどうなる?〜
年末も迫る2023年12月26日に行われたNHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサート。年末の風物詩とも言える第九のコンサートを素材に次世代のコンテンツ配信の技術的なテストケースが行われた。今回、この模様を取材させていただくことができたので、まずはどのような取り組みが行われたのかについて、その概要をお伝えしたい。なお、この取り組みの詳細については、次号のProceed Magazineで掲載を予定している。
3社共同で実施された次世代のイマーシブ配信実験
NHKホールでのフルオーケストラによる演奏会の模様を、次世代の配信をにらみ様々な方式でのイマーシブ配信をテスト、比較視聴するという大掛かりな取り組みが行われた。すべてが、NHKホールから一般のインターネット回線に配信が行われ、それを別の場所にあるNHKテクノロジーズ渋谷本社に設けられた試写室で視聴するというものだ。この試写室以外にも国内2か所(東京、広島)、国外1か所(ドイツ)にMPEG-H形式で同時配信されたほか、NeSTREAM LIVE、KORG Live Extremeを介してPCやスマートフォンなどのデバイスにも同時配信された。一般のインターネット回線を通じてのテストということで、圧縮によるクオリティーの違い、フォーマットによる違いなどの確認もできるということになる。
1つ目のテストケースが、次世代の放送規格としての8K MPEG-H(HEVC+22.2ch音響MPEG-H 3D Audio *BaselineProfile level4)の配信テスト。2つ目がNeSTREAM LIVEを使った、4K HDR(Dolby Vision)+ Dolby Atmos 5.1.4ch@48kHzの配信テスト。さらに3つ目がKORG Live Extremeを使った、4K + AURO-3D 5.1.4ch@96kHzの配信テストだ。これだけの次世代配信サービス、そしてそのテストケースが一堂に会するというだけでもすごいことである。それを同一のコンテンツの生配信で比較できるということもすごい取り組みである。
📷NHKテクノロジーズの試聴室
◎MPEG-Hを使用したスーパーハイビジョン(8K HEVC+22.2ch音響)
📷NeSTREAM LIVEの試聴室
◎4K Dolby Vision+Dolby Atmos@48khz、◎2K+Dolby Atmos@48kHz、◎2K+2chステレオ@48kHz
📷KORG Live Extremeの試聴室
◎4K+AURO-3D 5.1.4ch @96kHz/48kHz、◎HPL@48kHz
まず配信の肝であるコーデック(圧縮技術)について、22.2chは、次世代地上波での採用も決まったMPEG-H 3D Audioでの試験、NeSTREAM LIVEは、Dolby Digital Plusでの配信(これは、NetflixなどストリーミングサービスでのDolby Atmos配信と同一の技術だ)、KORG Live ExtremeはAURO-3Dの圧縮技術を使った配信となっている。圧縮率は、NeSTREAM LiveのDolby Digital Plusが一番高く640kbps、次にMPEG-Hの22.2chで1ch辺り80kbps(全体でおおよそ3Mbps程度)。Live Extremeは10Mbps程度となっている。
そもそものチャンネル数が違うということもあるが、臨場感については、やはり22.2chの高密度にスピーカーの配置されたものが優れていると感じた。やはりチャンネル数の違いは、空間の密度感に直結するものだと感じる。また音質については、ビットレートに比例するものだと改めて実感した。やはり圧縮率が低いほど音の純度は高いという、ある意味当たり前でもあることを再認識することができた。
ただし、リアルタイム配信ということを念頭に考えると、クオリティーと帯域幅のバランスを取るということが重要だ。いかに高品質であっても、しっかりと届けられないのであれば意味がない。その視点で考えるとやはりDolbyの技術をベースとしたNeSTREAM LIVEには、一日の長があると言えるのではないだろうか。Dolby Atmosという最新のフォーマットを、ストリーミングとして現実的な640kbpsで伝送できるというのは、現在のインフラなどにそのまま合致するものであり、サーバー負荷、多数へのダウンストリーム、ライブ配信等には付き物である様々な課題に対して答えを出しているように感じられる。デジタルで大きな課題となるクオリティーと利便性のバランス。これは今後もエンジニアにとって大きな課題となるテーマだろう。
また、NeSTREAM LIVEでは、Dolby Visionの配信も同時にテストされたということも大きなトピックだ。4K HDR映像のライブ配信となると、まだ世界的にもあまり前例のない取り組みである。Dolby Vison + Dolby Atmosということで、Dolby Cinemaの上映ステージでのライブ・ビューイングなどハイスペックなリアルタイム配信に期待が持てると感じる。配信されているDolby Visonの映像は、暗部がしっかりと粘り、流石はHDRといった画質だ。明暗差の大きなコンサートステージでは、そのダイナミックレンジが大いに生かされていた。
各社それぞれのシステムが持つ技術的工夫については、弊社刊行の次号Proceed Magazineにてより詳しく掘り下げて解説をおこう予定だ。
22.2chが持つ他のフォーマットへの応用性
MPEG-H 3D Audio 22.2ch音響のシステムの素晴らしさは、なんと言ってもそのチャンネル数の多さにある。これは、多チャンネルでの配信を行い、視聴環境に応じてチャンネル数を減らすこともできるということだ。「大は小を兼ねる」ということは、イマーシブにおいても言える。22.2chものチャンネル数があれば、そこから、Dolby Atmosや、AURO-3Dといった別のフォーマットへのダウンミックスを行うことが出来るということだ。22.2ch音響の視聴環境を一般家庭で揃えるということはなかなか難しいのが現実。しかし、高密度に配置されたそのフォーマットから、別のフォーマットを作り出すことは容易い。そういった観点での上位フォーマットとしてその存在価値は高いということを改めて認識した。
実際の配信用のマイクアレンジ、配信のためのミックス、全体のシステム構成などについても、次号Proceed Magazineで詳細をお伝えしようと思う。こちらもぜひお楽しみに。
<取材協力>
・株式会社NHKテクノロジーズ https://www.nhk-tech.co.jp/
・株式会社クープ NeSTREAM LIVE https://nestreamlive.radius.co.jp/
・株式会社コルグ Live Extreme https://www.live-extreme.net/
「立体音響でライブ配信をやってみたい」「イマーシブサラウンド対応のスタジオを作りたい」といったご相談は、導入実績豊富なROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりご送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2023-2024/
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2023/
Event
2024/01/18
2/9(金) Avid Creative Summit 2024 開催情報&申込開始!
~未来をつなぐIP、イマーシブにより拡張される音で共感する~
世の中はいよいよアフターコロナの時代へと変遷し、エンターテインメント・ビジネスには新たな局面が訪れています。業界の基盤となるテクノロジーは着実に発展し、昨年までの「いま」から更に進化した制作環境が私たちを待ち受けています。
今年のAvid Creative Summitは、"未来をつなぐIP、イマーシブにより拡張される音で共感する"をテーマに、ACSU史上初の東京ー大阪の二拠点同時開催にて、音楽、映像、ゲームなど多岐分野にわたるサウンド制作の最新情報を提供します。特に次世代IPメディア伝送ワークフローの提案を通じて、制作の未来像を描きます。
バラエティに富んだ計7回のセッションでは、ついにDolby Atmos Rendererを内蔵したPro Toolsの最新情報をはじめ、イマーシブ制作の実例から学び、最先端のテクノロジーに触れ、今を知るための情報が一堂に集結します。最新の制作現場に欠かせないテクノロジーに焦点を当て、フィジカル開催ならではの対面コミュニケーションを活かした新たな学びや発見の場をご提供いたします。
未来を拓くための一歩として、今年はぜひお近くの会場に足を運び、新たな知識とネットワークを築く場としてご活用いただきたいと考えています。Avid Creative Summitならではの豊富な情報と刺激的な体験をご用意しています。多くの方々のご参加を心よりお待ちしています!
■Avid Creative Summit 2024
開催日時:2024年2月9日(金) 開場13:00 、セミナー13:30~18:35、懇親会19:00~20:30 終了予定
東京会場:渋谷LUSH HUB
大阪会場:梅田セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
参加費用:無料
定員:各会場50〜100名
※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
TOPタイム
テーブルセミナー紹介協賛各社様
展示コーナー募集要項アクセス
毎回大好評!東京・大阪での各セッション終了時にご来場者様向けプレゼント抽選会を開催します!さらに!最終セッション終了時には、協賛各メーカー様からのスペシャルグッズや、2024年の制作シーンを彩る注目の製品をプレゼントする大抽選会も開催!今年最初の幸運を引き当てるのはどなたになるのか!プレゼント賞品の全貌は当日イベント内にて発表です!最後のセッションまで見逃せないAvid Creative Summit 2024 ご期待ください!
◎イベント開催方式のご案内
今回はAvid Creative Summit史上初の東京ー大阪の二拠点同時開催の試みとなります。セミナーは東京4セッション、大阪3セッションの計7セッション実施予定です。東京→大阪→東京…と交互にタイムスケジュールを組んでおりますので、一方の会場でセッションが行われているとき、もう一方の会場からは同時中継でご聴講いただけます。
※各会場とも座席数には限りがございます。原則、当日先着順でのご案内とさせていただきます。誠に恐れ入りますが座席の確保はできませんのであらかじめご了承ください。
◎タイムスケジュールのご案内
PDF:Avid Creative Summit 2024_Time Table
◎セミナーのご案内
◎Session1(東京)「What's New Avid Product 2024
〜Pro Tools 最新情報のすべて〜 」
2月9日(金) 13:30〜14:00
Pro Tools 2023.12で実装されたDolby Atmos Renderer。アップグレードしたユーザー全てに無償で提供されるDolby Atmos制作環境は、まさに、イマーシブ制作をすべてのユーザーに提供し、新時代の訪れを告げるもの。音楽配信でもDolby Atmosがスタートし、今後、その制作が当たり前のものとなっていくことが予想されます。実際にどのように使うのか、具体的なハンズオンを含めてご紹介いたします。もう一つの音楽制作者に向けたAvid Sketchは、iPadで音楽の、まさにスケッチするような感覚で作曲が出来るツールです。もちろん、iPad上で作った楽曲は、そのままPro Toolsのセッションデータとしてインポート可能です。制作から仕上げまで、Pro Toolsが全方位に進化しているその全貌をご紹介いたします。
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology
APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
◎Session2(大阪)「Flux:: Spat Revolution
〜注目の最新情報&Dolby Atmosミックスでの活用例〜 」
2月9日(金) 14:10〜14:50
様々なイマーシブ・フォーマットに対応し、編集の圧倒的な自由度と表現力を誇るSpat Revolutionは、スタジオでの制作のみならず、ライブサウンド/設備音響のリアルタイム・イマーシブ・ミキシングとしても利用されています。このSpat RevolutionをDolby Atmosミックスで活用する方法、そのメリットを開発元Flux::のビジネス開発担当シニア・マネージャーHugo Latin氏が徹底解説します。
講師:Hugo Larin氏
Snr Manager - Business Development, FLUX::, a proud member of the HARMAN Professional Solutions Group
FLUX:: https://www.flux.audio/
FLUX: SPAT Revolutionプロジェクトの主要な協力者であり、オーディオ・ミキシング、システム設計、オペレーション、ネットワーク制御、データ配信の分野で深いルーツを持つ。FLUX::イマーシブ・コンサルティング・グループを率い、FLUX::のビジネス開発を担当している。
最近のプロジェクトでは、オブジェクトベースの空間オーディオミキシング・ワークフロー、互換機器との相互接続と実装、最適化などを実現している。
プロダクション機器のレンタルとスタジオ・レコーディングでキャリアをスタートさせ、テクノロジーとエンターテインメント制作環境に対する情熱が、彼をライブ・プロダクション領域へと急速に駆り立てた。この分野での彼の活動には、様々な有名プロダクションやイベントでのミキシング、オペレーション、テクニカル・ディレクターの役割が含まれる。
Avid VENUE S6Lプラットフォームのユーザー、プロフェッショナル・オペレーター(VE110 & 210 S6L)であり、Avidのサポート代理人における認定インストラクター(ACI)でもある。
◎Session3(東京)「生徒のクリエイティビティを最大限に引き出す
〜Avid Learning Partner プログラム〜」
2月9日(金) 15:00〜15:15
現在、多くの大学、専門学校等で授業に取り入れられているAvid Pro Tools。その支援を行うためのプログラムがこのAvid Learning Partner(ALP)プログラムです。ユーザーの裾野を広げ、現場で有用な人材を育てるためには、基礎教育が重要となります。この新しく始まるALPとは一体どのようなプラグラムなのかについてご紹介いたします。
講師: Alex Brooke氏
Avid Technology
Avid Learning Partner,Program Lead Coordinator
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
イギリス出身。10代の頃から日本で過ごし作曲と演奏を学ぶ。
現在、Avidラーニング・パートナープログラムを含む、アジアでのAvidトレーニング・プログラムのコーディネーターとして活躍。
音楽教育を通じて次世代の音楽プロフェッショナルを支援し、育てることに情熱を傾けている。
◎Session4(大阪)「GRANBLUE FANTASY: Relinkにおけるイマーシブサウンド制作 〜素材収録からミキシング、技術進化に伴うイマーシブ制作の変革〜」
2月9日(金) 15:25〜16:05
Cygamesの新作「GRANBLUE FANTASY: Relink」を題材に、ゲームにおけるイマーシブ制作の実際、そして、それを支えるバックボーンとなる技術、ゲームの世界観やキャラクターを引き立てる為に盛り込まれた、様々なサウンドデザイン、それらの素材収録からミックスまで最新のゲームオーディオの実情、制作に触れていただける内容をお届けします。
大規模タイトルとして長期に渡る開発の中、技術の進化・進歩をどの様に取り入れていったのかなど、興味深いストーリーもお話いただける予定です。ゲームオーディオに興味のある方はもちろん、最新技術の粋を集めた最新ゲームタイトルの制作を知ることの出来る貴重な機会です。
講師:城後 真貴 氏
株式会社Cygames
サウンド本部/サウンドデザインチーム
アクションゲームのサウンド制作に携わり、2019年より株式会社Cygamesに合流。
『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、インゲームミックスや、演出やイベントシーンのサウンドディレクションを担当。
講師:妹尾 拓磨 氏
株式会社Cygames
サウンド本部/サウンドデザインチーム
スポーツゲームやアクションゲームにおける、サウンド制作に従事。2019年より株式会社Cygamesに合流。 『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、バトルパートやキャラクターのサウンドデザイン、サウンドディレクションを担当。
株式会社Cygames:https://www.cygames.co.jp/
◎Session5(東京)「AoIP/VoIPはもう未来の規格じゃない 最新ケーススタディ
〜NDI/SRT/ST2110/DanteAV〜 」
2月9日(金) 16:15〜16:55
今年のACSUは東京、大阪の同時開催。そのシステムのバックボーンをご紹介します。NDI Bridgeを使い、どの様に安定したインターネット経由での伝送を実現しているのか?その将来的な可能性、ZoomやTeamsではく、NDIを使うことのメリットとは?最新のVoIP事情とともに、実際に使われている技術の詳細をご紹介いいたします。身近なIP伝送技術がインターネット越しに拡張されていくことは、近い将来当たり前になることでしょう。そんな未来を実感いただけるセッションです。
講師:前田 洋介
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
Product Specialist
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
◎Session6(大阪)「360 Reality Audio 高田 英男氏による楽曲解説
〜空間の響きを活かすREC&MIX〜」
2月9日(金) 17:05〜17:45
昨年公開され、第29回日本プロ音楽録音賞Immersive部門(アコースティック・サウンド)最優秀賞作品を受賞した、tea 「Beautiful Dreamer」。この受賞作品を題材に、ミキシングを手がけられたエンジニアの高田英男氏がどのようなアプローチで3D音響の収録に臨んだのか、どのようなコンセプトでミキシングを行ったのかについてご解説いただきます。トップエンジニアの考える立体音響とは?360 Reality Audioの制作はもちろん、イマーシブオーディオのミキシングに興味のある方、全員に役立つトピックが満載。必聴のセミナーです!
講師:高田 英男 氏
MIXER’S LAB Sound Producer/Engineer
日本音楽スタジオ協会 会長
MIXER’S LAB:https://www.mixerslab.com/
一般社団法人日本音楽スタジオ協会:https://www.japrs.or.jp/
1951年、福島県生まれ。1969年、日本ビクター入社(ビクタースタジオ配属)。録音エンジニア業務に従事。2001年、ビクタースタジオ長。2012年、サウンドプロデューサーに就任。2016年ミキサーズラボ顧問。
◎Session7(東京)「Netflixの音への取り組み
〜世界中のメンバーが楽しめる音作りには何が必要?〜」
2月9日(金) 17:55〜18:35
このセミナーでは、Netflixが去年プレミアム会員向けにサポートし始めた空間オーディオについての解説、Netflixの作品が5.1チャンネルやドルビーアトモスなど、高品位なサウンドフォーマットで配信されている理由、そしてイマーシブ・オーディオ制作の際に気をつけるべきポイントやノウハウについて共有します。
講師:嵩原シンディ氏
Netflix
Sound Technologist
Netflix:https://about.netflix.com/ja
サバンナ芸術工学大学、サウンドデザイン科修士課程修了。
レコーディング、音響エンジニア、現場録音、MAなど幅広い経験と技術を習得。
ロサンゼルスを拠点にフリーランスのサウンドデザイナーとして活躍した中、手がけた作品はカンヌ、サンダンス、トライベッカ映画祭などで披露される。
また、映画「Fire in Paradise」はニュース&ドキュメンタリー・エミー賞、最優秀音響賞を獲得。2020年よりNetflix入社、技術支援部(アジア太平洋地域)の音響技術を担当。
※※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
協賛各社様による出展のご案内
当日は展示協賛各社様による最新プロダクトの展示も行われます。また、東京会場にはGenelec Oneシリーズによる7.1.4ch、大阪各会場にはFocalスピーカーでの13.0chイマーシブ展示も登場します。お楽しみに!
※展示内容は予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
出展ご協力社様(敬称略、順不同):
・アビッドテクノロジー株式会社 https://www.avid.com/ja/
・オタリテック株式会社 https://otaritec.co.jp/
・株式会社ジェネレックジャパン https://www.genelec.jp/
・ソリッドステートロジックジャパン株式会社 https://www.solid-state-logic.co.jp/
・TOA株式会社 https://www.toa-global.com/ja
・株式会社フォーミュラ・オーディオ https://formula-audio.co.jp/index.html
・株式会社メディア・インテグレーション 輸入事業部 https://www.minet.jp/
アビッドテクノロジー株式会社(東京・大阪会場)
統合レンダラー登場でイマーシブ制作は次のステップへ
AVIDが提案する新時代のワークフロー
昨年登場したPro Tools | MTRX Ⅱをはじめ、最新版Pro Toolsでの統合レンダラーワークフロー、Pro Tools Sketchの活用方法など、Avid製品を各種展示予定です。また、東京会場Rock oN Company 店頭リファレンススタジオでは常設のAvid S4ミキシング・コンソールをご見学いただけるほか、Pro Tools | MTRX + Pro Tools | HDXシステムを想定した環境から、Avid S1やAvid Dock、Pro Tools | Carbon、MBOX Studio等によるクリエイター向けのワークフローまで、Avidが提案するソリューションを隅々までご体験いただけます。是非、各ブースで製品をご覧いただき、Avidソリューションによって実現される、制作プロセスの将来像をじっくりとご体感ください!
<展示予定製品>
・Avid S4
・Avid S1
・Avid Dock
・Pro Tools | MTRX II
・Pro Tools | MTRX Studio
・Pro Tools | Carbon
・Pro Tools | Carbon Pre
・Pro Tools | Sync X
・Pro Tools | HDX Thunderbolt 3 Chassis
・MBOX Studio
・Pro Tools
・Pro Tools Sketch
※東京・大阪各会場の詳細展示内容は後日掲載いたします。
アビッドテクノロジー株式会社:https://www.avid.com/ja/
株式会社ジェネレックジャパン(東京会場)
唯一無二の革新的メイン・モニター「8381A」& 3ウェイ
同軸モニター The Onesシリーズによるイマーシブ環境を体感!
昨年発表された革新的メイン・モニター「8381A」が、AVID Creative Summitに登場!フリースタンディング型による自由な設置、設置環境に適応するアダプティブ・ウーファーを搭載した5ウェイ構造、そしてポイント・ソース理論による自在な距離を実現したそのサウンドをご体感ください(渋谷店リファレンスルームに設置)。また、会場内のBlueRoomでは、3ウェイ同軸モニターのThe Onesシリーズによるイマーシブ環境をご用意。ステレオからイマーシブまで、最新且つ最高の試聴体験を皆様へお届けします。
<展示予定製品>
・8381A
・The Onesシリーズ
株式会社ジェネレック・ジャパン:https://www.genelec.jp/
株式会社フォーミュラ・オーディオ(東京会場)
エフェクトも音源も、プラグインはイマーシブに。
今や業界標準とも言える「ザ・コンボリューション・リバーブ」Altiverbが、12年ぶりのアップグレードで最大9.1.6ch出力を実現。
鍵盤1つ押さえるだけでも即座に3Dサウンドを生成するSkyDust 3D。出力がDolby Atmos®互換やambisonicsにも対応の空間オーディオ・シンセサイザーです。
<展示予定製品>
・AUDIO EASE Altiverb 8
・SOUND PARTICLES SkyDust 3D
株式会社フォーミュラ・オーディオ:https://formula-audio.co.jp/index.html
ソリッドステートロジックジャパン株式会社(東京会場)
Pro Tools DAWシステムにシームレスに統合するSSLプロダクトが集結!
USBインターフェイス出力機能を搭載した4chマイクプリ PURE DRIVE QUAD とハイエンドなモニタリング回路を搭載したUSBオーディオインターフェース SSL12、SSLメータープラグインを表示できる高解像度ディスプレイを搭載した1フェーダー DAWコントローラー UF1が登場予定です。Pro Tools DAWシステムにシームレスに統合するSSLプロダクトをご紹介します。
<展示予定製品>
・PURE DRIVE QUAD
・SSL12
・UF1
ソリッドステートロジックジャパン株式会社:https://www.solid-state-logic.co.jp/
オタリテック株式会社(東京・大阪会場)
革新的なテクノロジーと共に進化し続ける伝統的なサウンド。
PMCスピーカーからは、ステレオから大規模Atmosシステム用途まで幅広く使用可能な"PMC6"をステレオでご試聴いただけます。
マイク製品ではEhrlund Microphoneの"EHR-M"と、より小型化してホームレコーディングユースにも対応した新製品"NANO"を比較展示します。
またRoswell Pro Audioからは、同社の”Miniシリーズ”で初のトランス搭載機種である、"Mini K47x"、"Mini K67x"を展示します。
<展示予定製品>
・PMC アクティブスピーカー PMC6
・Roswell Pro Audio Mini K67x
・Roswell Pro Audio Mini K47x
・Ehrlund Microphone EHR-M
・Ehrlund Microphone NANO
オタリテック株式会社:https://otaritec.co.jp/
TOA株式会社(大阪会場)
妥協なきこだわりが実現する驚異の原音忠実サウンド!
ME-50FSは “再生音の原器”を目指して、商品ではなく社内評価と教育を目的として開発されました。音を正確に再生することにこだわり続けた結果、従来にはない正確な再生音と高い解像度、サイズからは想像できない低域再生能力を実現。音のプロの方々にも高く評価いただき、待望の商品化に至りました。良い音を追求する全ての方々、その中でも特に、高い再生能力が求められる放送局やマスターリングスタジオ向けの完全受注生産モデルです。
<展示予定製品>
・TOA ME-50FS
TOA株式会社:https://www.toa-global.com/ja
株式会社メディア・インテグレーション(東京・大阪会場)
イマーシブ環境やユーティリティツール、GAME制作ワークフローを加速する最新機材、さらに音楽/ポストなどカテゴリ別で、未来を担う教育機関様向けのご提案を用意しました。
◎TOKYO
次世代ライヴコンソールWaves Cloud MXによってコントロールされる会場セミナーイベントに加え、関連のユーティリティツールやFocal最新STシリーズの試聴コーナーを完備。さらにミュージック/ポストのカテゴリに特化した教育機関様向けのソリューションをコーナーにてご提案させていただきます。
<東京展示予定ブランド>
・Audiomovers
・Focal Professional
・iZotope
・KROTOS
・McDSP
・Nugen Audio
・Sonarworks
・Sonnox
・Waves
◎OSAKA
OSAKA会場セミナーと連携したGAME音楽制作のためのソリューションを展開します。Native InstrumentsやiZotopeが提唱する最新の音楽制作環境に加え、AudiomoversやFlux、Nugen Audioなどイマーシブ関連プロダクトを網羅。13.0chの試聴コーナーでは360 Reality Audioの体験も可能です。
<大阪展示予定ブランド>
・Audiomovers
・Flux:: SPAT Revolution
・iZotope
・KROTOS
・MNTRA
・Native Instruments
・Audio Futures 360 WalkMix Creator (360 Reality Audio 13.0ch 試聴コーナーあり)
株式会社メディア・インテグレーション:https://www.minet.jp/
募集要項
■Avid Creative Summit 2024
開催日時:2024年2月9日(金)
・開場 13:00
・セミナー(計7セッション) 13:30 〜 18:35
・懇親会 18:35 〜 20:30
・閉場 21:00
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
大阪会場:大阪府大阪市北区神山町1-12 セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
参加費用:無料
定員:各会場50〜100名
※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
【ご注意事項】
※座席のご用意は各会場30席程度となります。それ以外の方は立ち見でのご視聴となりますこと、あらかじめご了承ください。(休憩用のスペースもご用意しております。)
※セミナーの内容は予告なく変更となる場合がございます。
※著作権保護の為、写真撮影および録音は差し控えていただきますようお願いいたします。
※各セミナーのアーカイブ公開の有無につきましては、後日、当WEBサイトにてご案内いたします。
※当日は、ご来場者様向けの駐車場の用意はございません。公共交通機関でのご来場、もしくは周辺のコインパーキングをご利用下さい。
アクセス
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
大阪会場:大阪府大阪市北区神山町1-12 セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
Review
2024/01/04
Fraunhofer IIS@Erlangen / MPEG-Hを生み出した世界最大の音響研究所
これまでにもその情報を発信してきたMPEG-H。次世代音声コーデックとしてドイツのFraunhoferが開発したこの規格、イマーシブ、インタラクティブといった次世代のエンタテインメントを担う規格となっている。今回はその開発元であるドイツ・ニュルンベルグ郊外のエルランゲンにあるFraunhofer IISを訪問し、色々とその実際を見せていただいた。改めてMPEG-Hの現在地と、その制作環境、さらにはその次のステップまで踏み込んだ情報をお届けしていきたい。
イマーシブ、インタラクティブ
📷SONY 360 Reality Audioではマスターファイルの器としてMPEG-Hを用いている。
それでは改めてMPEG-Hをおさらいしておこう。MPEG-Hは、Fraunhofer IISが次世代の音声コーデックとして発表した規格。イマーシブへの対応はもちろんだが、インタラクティブ音声への対応という点が他のコーデックとの最大の差別化ポイントではないだろうか。
まずは、イマーシブという部分を見ていきたい。一番身近なMPEG-Hとして挙げられるのははSONY 360 Reality Audioではないだろうか、フルオブジェクトの制作環境を持つこのフォーマット。各オブジェクトが持つメタデータを含んだ配信用のマスターファイルの器としてMPEG-Hが採用されている。非圧縮のオブジェクトメタデータを含むオーディオコーデックといえばADM BWFファイルがあるが、圧縮でメタデータを持つオーディオコーデックとなるとMPEG-Hがその筆頭となる。
MPEG-Hが持つもうひとつの特徴であるインタラクティブに関しては、放送分野での活用が期待されている。実際の事例として、すでに韓国、ブラジルにおいてはMPEG-Hが地上波放送の次世代コーデックとして採用され、韓国では4K地上波の次世代放送規格として平昌冬季オリンピックのタイミングから、また、ブラジルではリオデジャネイロ夏季オリンピックのタイミングから実運用が始まっている。
📷IBC 2023でソフトウェアベースでのリアルタイムエンコーダーを展開するSalsa Soundのブース。
そこでは最大15chのオーディオを伝送することができるMPEG-H(Level 3)が採用され、視聴者がリモコンでナレーションのレベルを上げ下げしたり、放送局側が用意する複数のプリセットされたバランスで音声を聴くことができるインタラクティブオーディオを実現している。スポーツ中継を例にとれば、解説の有無や応援席のレベルを中心にしたプリセットなどを選択できる。伝送できる15chのオーディオの組み合わせは自由で、5.1chのサラウンド放送にレベル調整を行いたい個別のトラックを加えてインタラクティブ性を持たせる、といったことが可能だ。もちろん、イマーシブ音声やオブジェクトオーディオを放送することもできる。
日本国内における次世代放送規格
現在、日本でも次世代放送規格に関しての議論が積極的に行われており、総務省から2023年7月に「放送システムに関する技術的条件」として、次世代地上波放送の概要が示されている。高度地上デジタルテレビジョン放送方式として、放送電波へのデジタル符号情報の伝送方式に始まり、映像の圧縮形式などとともに音声に関しても概要が示されている。入力フォーマットとしては「22.2マルチチャンネル音響に対応」とあり、現在運用されている4K / 8K衛星放送と同様のフォーマットが踏襲される。
それに加え、オブジェクトベース音響への対応も明記されているのが新しいところ。音声の符号化方式としては本記事で取り上げているMPEG-Hとともに、AC-4が併記されている。AC-4とはDolbyが提唱している次世代コーデックであり、実運用をスタートしている世界各国ではMPEG-HかAC-4かのどちらか一方を採用するケースが多いが、日本では両方式が採用されるという方向だ。なお、それぞれ準拠する規格はMPEG-H : ISO/IEC 23008-3、AC-4 : ETSI TS 103 190-2である。また、ペーパーに示された入力チャンネルは56ch。このチャンネル数はMPEG-H Level 4で規定された最大チャンネル数である。現在運用されているMPEG-H Level 3は16chとなるため、そこからするとかなりの増加と言える。これは、22.2ch放送時にも差し替え音声によるインタラクティブ放送を行うことができるチャンネル数を考慮したためとされている。
総務省HP「放送システムに関する技術的条件」
次世代放送では、放送自体の効率化により伝送可能なデータレートの向上が目論まれている。具体的には現在の地デジの16.85Mbpsから、22.25Mbpsへの向上となる予定だ。映像圧縮に関してはH.266(VVC)の採用。これは、現在一般的なH.264の二世代後継の圧縮技術である。音声も同様に現在のMPEG-2 AACからの圧縮技術の進歩もあり、さらに多くのチャンネル伝送を実現するものとされている。一例とはなるが、SONY 360 Reality AudioのMPEG-H伝送では、24chを1.5Mbpsで伝送している。この高効率な圧縮という部分に関しては、MPEG-HもAC-4もコーデックは違えど同様と言える。両者ともに、オブジェクトオーディオを扱うことができるというところも同様だ。両規格とも国際規格として規定されており、どのように両規格を使い分けていくかという議論が今後行われていくだろう。
執筆時点では、明確に次世代放送への移行タイムラインが提示されているわけではない。だが、他国ではすでに順次移行を開始していることを考えると、それほど遠くない未来に移行が開始されることは間違いない。着実に日本国内でも次世代の地上波デジタル放送の規格整備が進行している。すでに海外では放送がスタートしている事例も数多くある。技術の進歩はとどまることは無い、徐々に次世代の規格として採用されることとなっているこれらを知り、触れておくことは重要となる。
MPEG-Hをどう作るのか
AC-4に関しては、乱暴な言い方をしてしまえばDoby Atmosである。一方MPEG-Hに関しては、まだまだ国内では未知のものとして捉えられることが多いのではないだろうか。しかし、MPEG-Hが用いられていくという流れはすでに大きな流れとしてあり、Pro Tools 2023.6でインストーラーが統合されたりと具体的な形で制作環境が整い始めている。
放送におけるMPEG-Hには2つの制作パターンがある。一つはBroadcast、生放送でのMPEG-Hである。NABやIBCのレポートでもお伝えしてきているが、ハードウェアでのリアルタイムエンコーダーが各社より登場している。SDI信号にエンベデッドされた音声に対してメタデータを付加するという動作により、リアルタイムエンコードを行うこれらの機器は、すでに実際の運用に供されている。現状ではSDI信号に対してのエンコードを行う製品となり、MPEG-H Level 3の16ch仕様となっている。IBC 2023では、ソフトウェアベースでのリアルタイムエンコーダーであるSalsa Soundも登場し、その選択肢が着実に増えている。
📷Fraunhoferからリリースされている制作向けのMPEG-Hエンコーダーはさまざまなユーティリティーが提供されている。Mac OS、Windowsともに対応となり、ほとんどのワークフローにおいて不足することは無いだろう。
一方、制作向けのMPEG-Hエンコーダーは、Fraunhoferからリリースされている純正ソフトのみというのが現状である。とはいえ、やり直しが効く制作環境ということを考えれば、この純正のエンコードソフトで必要十分であることは間違いない。イマーシブオーディオにも、インタラクティブオーディオにもしっかりと対応している。Fraunhoferからはさまざまなユーティリティーが提供されており、マスターファイル視聴用のMPEG-H VVPlayer、Video FileにMPEG-Hを畳み込むためのMPEG-H Encording and Muxing Tool、メタデータ修正用のMPEG-H Info Toolなどの製品も同梱されているため、ほとんどのワークフローにおいて不足することは無いだろう。すでにMac OS、Windowsともに対応している。
イマーシブオーディオ制作においては、MPEG-H Authoring Plug-inというソフトウェアが、DAWのプラグイン(AAXおよびVST3)として提供されている。3Dパンニングを行うことができるこのソフトからファイルをExportすることで、3Dメタデータを持ったMPEG-Hのオーディオデータが作成できる。22.2chのパンニング、7.1.4chへの対応、フルオブジェクトとしてのファイル書き出しが可能と、次世代の放送用オーディオへの対応をしっかりと済ませている。
科学技術を世の中で使えるようにする
このMPEG-Hの開発元であるFraunhofer IISへの訪問を実現したのでその模様をお伝えしたい。Fraunhofer IISは、欧州最大の研究機関であるFraunhoferの一部門となるIIS=Institute for Integrated Circuits、日本語にすると集積回路研究所だ。Fraunhoferの75拠点ある研究所の一つであり、MP3の生みの親として世界中に知られる研究所である。Fraunhoferは応用研究をテーマとし、科学技術をどのように世の中で使えるようにするか、ということを民間企業からの委託研究として行っている。実際にFraunhoferの研究予算の7割は民間企業からの委託研究費で賄われているそうだ。
今回訪問したFraunhofer IISは、ドイツの南部バイエルン州第2の都市であるニュルンベルグの隣町、エルランゲンにある。ニュルンベルグは中世の城壁に囲まれた美しい旧市街をもつ伝統ある都市。IISがあるエルランゲンは大学都市であり、1700年代にその起源を遡ることができる伝統あるドイツ12大学のひとつ、エルランゲン大学がある街だ。また、第二次世界大戦後のドイツを代表する電機メーカー、シーメンスが移転してきたことで発展を遂げた街でもある。
このFraunhofer IISの研究の大きな指針のひとつが「オーディオ・メディア技術」。集積回路研究所という名前からもわかるように、デジタル技術の発展とともに符号化の技術を研究し、それがMP3へと繋がっている。その後もAAC、HE-ACC、xHE-ACC、MPEG-Hと各世代を代表するコーデックを開発してきている。現代の携帯デバイスになくてはならない技術となっている高度な圧縮技術。そして、エンタテインメントを支えてきた技術とも言えるだろう。その現在進行系の技術がMPEG-Hである。なお、すでに次世代の技術である「MPEG-I」も姿を現し始めている。
全フォーマットを正確に再現する研究スタジオ
📷大量のスピーカーが設置された試聴室。30°、45°、60°など各フォーマットに合わせた正確な位置に設置が行われ、Dolby Atmos / Auro 3D / SONY 360RA / NHK22.2などの正確なモニターが可能だ。水平、上層に2つの巨大なリングを設置し、そこにスピーカーを設置することで完全な等距離での設置を実現している。
研究所に到着してまず案内されたのが、研究のために使われているというスタジオ。Dolby Atmos、Auro 3D、NHK 22.2chといった現在規格化されているすべてのフォーマットのスピーカー配置を正確に再現し、MPEG-Hでコーディングした際の聴こえ方などを検証している。ここでのさまざまな実験をスムーズに行えるように、カスタムで作ったなんと6000ch超のルーティングが可能なモニターコントロールボックスでシグナルルーティングを行っているそうだ。
そして、スピーカーはすべて銘機「Musikelectronic Geithain / RL904」で揃えられているあたりがドイツらしい。Musikはご存知の通り旧東ドイツ、ライプツィヒで誕生したメーカーだ。その多数のスピーカーを正確な位置に設置するために、巨大な円形のトラスが吊るされている。このトラスだけで1トンを超えているということ。様々な実験を正確に行うために防音もしっかりとなされ、2メートル近い遮音層が確保されているということだ。遮音よりも響きを重視しがちな欧州のスタジオとは一線を画す、研究所らしいスタジオである。
ここではMPEG-Hでコーディングされた様々なイマーシブ・フォーマットの音源を聴かせていただいた。特定のフォーマットを持たないMPEG-H、器としての柔軟性、多様性を改めて実感した次第である。続いて、インタラクティブ・オーディオのデモとして、スポーツ素材でのダイアログの上げ下げ、ナレーションをオフにしてスタンドの観客音声のみ、などを切り替えられる様子を見せていただいた。また、音楽ライブの素材ではステレオ素材とイマーシブ素材の聴き比べ。これもMPEG-Hであればひとつのパッケージに同時に入れておくことができる。最高の環境でMPEG-Hの多様な可能性を体験することができた。
最終アウトプットまで担保する研究設備
📷シアタールーム。この部屋も現在運用されているすべてのフォーマットに対応するために、大量のスピーカーが設置されている。
また、リビングルームを模した視聴室もご案内いただいた。ここには様々な民生の再生機器が揃えられ、それらの動作のチェックや聴こえ方のチェックなどが行われているということだ。もちろんではあるが、制作向けの技術提供だけではなく再生機器を作るメーカーに対しても同様に技術協力を行っているFraunhofer。これまでも数多くのスタンダード(規格)を作ってきた研究所である。しっかりと最終の出口まで担保して、実際のユーザーの経験に対してもコミットしているということが感じ取れた。
そして、別のフロアには映画館規模のシアタールームがある。ここでは、さまざまなCinema向けのオーディオフォーマットの視聴体験が可能であり、それらの違いについてなどの研究が行えるようになっていた。筆者もここまでのマルチフォーマットのシアタールームは初めてである。ほとんど見ることのない、Aruo 3DやDTS-Xに対応したスピーカーの設置は新鮮であった。符号化技術の研究開発と言ってもやはり聴感としての確認は重要なファクターであり、様々なフォーマットを実際に試せる(聴ける)設備を持っているFraunhoferが「世界最大の音響研究所」と呼ばれるのもよくわかる。様々な環境やケースにおいてどのように音が聴かれているのか?想定されるほぼすべての体験が行える施設がここには揃っていた。
最後に、MPEG-Hはまさにいま羽ばたこうとしているところだが、その次はどのような進化を考えているのか?というお話を聞いてみた。すでにご存知かもしれないが、Fraunhoferでは「MPEG-I」というもう一世代先の技術開発をすでに終わらせている。イマーシブとインタラクティブの次として、AR / MR向けの技術を映像コーデックとともに開発をしているということだ。イマーシブであることは当たり前で、さらにインタラクティブ性を高めると考えるとやはりAR / MRに行き着くのであろう。プロセッサーの処理能力など現時点では課題も多いが、さらなる体験をユーザーに与えるための技術が形になりつつある。ベースとなる要素技術は揃ってきているので、それらをどのようにユーザーが使いやすいように形にしていくのか?ユーザーの端末の処理負荷を軽減するためにはどうしたら良いのか?具体的な課題解決に取り掛かっているそうだ。Fraunhoferの考える次世代のエンターテインメントは、パーソナルに楽しめるAR / MRということのようだ。これはキーワードとして覚えておいて損はない、いまからでもそれらの情報に対してアンテナを張っておいたほうが良いというサジェスチョンであるように感じられる。
📷(左)リビングルームを模した試聴室。サウンドバーなど民生の製品がずらりと揃う。(右)研究用の小規模な試聴室。この部屋も左ページの部屋と同様にマルチフォーマット対応の視聴環境となっている。
筆者にとっては念願とも言えるFraunhofer IISの訪問。MP3を代表に世界を変えたテクノロジーの震源地。3度の増築によりどんどん拡大を続けているこの大きな研究所で、オーディオ分野だけでも300名以上が働いているという。最先端となるMPEG-I、そしてその次の技術、そこから派生するテクノロジーもあるだろう。科学技術を実用に変えていくFraunhoferからは目が離せない。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Media
2024/01/02
株式会社Cygames 大阪サウンドフォーリースタジオ様 / 正解は持たずにのぞむ、フォーリーの醍醐味を実現する自社スタジオ
「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンに掲げ、妥協のないコンテンツ制作に取り組む株式会社Cygames。ProceedMagazine 2022-2023号では大阪エディットルームの事例として、Dolby Atmos 7.1.4chに対応した可変レイアウトとなるスタジオ2部屋が開設された様子をご紹介したが、それとタイミングを同じくしてフォーリースタジオも大阪に設けられた。ここではそのフォーリースタジオについてレポートしていきたい。
同時期に3タイプのスタジオ開設を進める
Cygamesでは、スマートフォン向けのゲームタイトルだけではなく、コンシューマー系のタイトル開発にも力を入れている。近年のゲームはプラットフォームを問わず映像や音の表現が飛躍的に向上しており、フォトリアルで写実的な映像に合わせたサウンドを作る場面が増えてきた。効果音の制作については、それまでは外部のフォーリースタジオを借りて作業を行っていたが、効率性を考えれば時間や手間が掛かってしまうという制約があった。また、ゲーム作品では、例えばキャラクターの足音一つとっても多くの動作音があるだけでなく、ファンタジーの世界特有の表現が必要である。土、石畳、レンガ等といった様々な素材の音を既存のライブラリから作り上げるのは容易ではなく、完成度を上げていくことは中々に難しい作業だが、フォーリースタジオを使って収録した効果音は、生音ならではの音の良さに加え、ゲームによく馴染む質感の音に仕上がることが多かったという。
やはり自社のスタジオがあればより効率的に時間を使い、かつクオリティを高める試行錯誤も行えるのではないか、という思いを抱いていたところ、Cygamesのコンシューマーゲーム開発の拠点がある大阪でモーションキャプチャースタジオの設立計画が立ち上がったことをきっかけに、建物のスペック等を考慮してフォーリースタジオも同じ場所に設置する形でスタジオ設置に向けて動きだした。以前ご紹介した、MAスタジオの用途を担う大阪エディットルーム開設プロジェクトと合わせると、同時期に2つのサウンドスタジオ開設を進めるという大きなプロジェクトになったそうだ。
制約はアイデアでポジティブに変換する
フォーリースタジオを開設するための要件としてまず挙げられるのは部屋の高さと広さ。通常のレコーディングとは異なって物を振り回したりすることも多いフォーリー収録ではマストな条件となる。天井が低ければ物が当たってしまうのではないかという演者の不安とストレスを低減するため、部屋の中央付近の天井を一段高くする工夫が取り入れられている。広さについてもフォーリー収録時の演技をする上で充分なスペースを確保しているが、加えて壁の反射音の影響が強く出てしまわないよう、床やピットを部屋の真ん中に寄せて配置し、壁からの距離が取れるレイアウトを実現できた点も広さを確保できたメリットだ。
また、スタジオ内の壁面にはぐるりと木製のフローリングが敷かれ、そこも材質の一つとして使用できる。中央には大理石やコンクリート、水を貯められるようなピットが用意され多様な収録に対応できる環境が整えられた。一方、スタジオの広さがある故に反響をどのようにマネジメントするのかは大きな課題となっていたようだ。そこで取られた特徴的な対策だが、壁面の反射を積極的に発生させつつルームモードを起こさないように処理した上で、むしろその反響を収録での選択肢として活かせるようにしたそうだ。もちろん、部屋の外周に沿って用意されたカーテンによって反射面を隠し、反響をダンピングして抑えていくこともできる。さらに、日本音響エンジニアリングの柱状拡散体を設置してアコースティックも整えられており、当初は弊害と考えていた反響音を逆に利用することで、収録できる音の幅を拡げている。
施工は幾度と重なる打ち合わせやシミュレーションを経て行われたのだが、それでも予想できない不確定な要素も出てきたそうだ。例えば、このスタジオの特徴でもある天吊りマイク。天井に取り付けられた金属製のパイプに特型のマイクスタンドを引っ掛けて固定する仕様になっているのだが、実際に収録を行うとパイプに響いているのか、音声信号にノイズを感じることが出てきた。イメージ的にはドラムのオーバーヘッドを立てるイメージに近く、ドラムは音量が大きいためそれほど気になりはしないが、フォーリーの収録となると微細なノイズでも大きく感じることが多くなる。試行錯誤した結果、天吊りマイクスタンドを取り付ける際に固定ネジを締めすぎないようにすることでノイズを軽減できることがわかった。そのほかにも、部屋の天井から高周波の金属音が鳴っているようで調査したところ、空調のダクトが共振していることが判明。金属のダンピングを見直して解決したそうだ。細かな調整だが、このような積み重ねこそが収録のクオリティーアップには必要不可欠であるとのことだ。
📷ダンピングが見直されたという天吊りマイクブーム
集中環境とコミュニケーションの両立
スタジオのコンセプトで重要視している要素として、ストレスフリーであることが必要であると考えているそうだ。ブースとコントロールルームのスタッフの間で意思疎通がストレスなく行われなければ作業効率も落ちてしまい、認識の齟齬も起きがちだ。社内スタジオで自由に使える環境とはいえ、クオリティを高めるトライアンドエラーの時間まで削ってしまっては本末転倒になってしまう。
ところが、このスタジオはブースとコントロールルームが完全にセパレートされており、お互いの姿を確認できるようなガラス面も設けられていない。
一見するとコミュニケーションを妨げる要素になりそうだが、ガラス面を設けないことで演者が集中して演技に取り組める環境を整えられたという。演者にとって、人の目線があると気になって集中力の妨げになることもある。外部のスタジオでは収録の様子をクライアントがコントロールルームから見守るといったことも多いが、このスタジオは社内スタッフでの利用が主となるため、必ずしもコントロールルームから演者を直視できる必要はない。ただし、その分だけコミュニケーションを重視したシステムプランが採用された。
スタジオ内にはフォーリー収録用とは別に天吊りマイクが仕込まれており、コントロールルームからスタジオ内の音を聴くことができ、トークバックと両立できるようなコミュニケーションの制御も行なっている。映像カメラも各所に設置されており、コントロールルーム内のディスプレイにスタジオ内の様子が映され、その映像も各ディスプレイに好きなように出せるスイッチャーが設置されており、オペレーターの好みに合わせて配置することが可能となっている。コントロールルームとブースをアイソレーションすることによって演者が集中できる整った環境と、コミュニケーションを円滑にさせるシステムプランをしっかり両立させている格好だ。
正解を持たずに収録する、トライする機材
📷コントロールルームには左ラックにPUEBLO AUDIO/JR2/2+、右ラックに TUBE-TECH/HLT2Aが収められコンソールレスな環境となっている。
このスタジオではスタッフが持ち込みPCで収録することも想定されており、各種DAWに対応できるシステムが必要であった。シンプルかつシームレスにシステムを切り替えられ、コミュニケーションシステムとも両立させる必要がある。それをシステムの中核に Avid MTRXを据えることで柔軟な対応を実現している。また、「収録段階からの音作りがしっかりできるスタジオにしたい」というコンセプトもあり、アウトボード類の種類も豊富に導入された。コンプレッション、EQはデジタル領域よりもアナログ機材の方が音作りの幅が拡がるということだけではなく、その機材がそこにあるということ自体がスタッフのクリエイティビティを刺激する。スタッフが自宅で録るのではなく、「このスタジオで録りたい」という気持ちが起こるような環境を整えたかったそうだ。
そうして導入された機材のひとつが、PUEBLO AUDIO/JR2/2+。フォーリースタジオではごく小さな音を収録することが多く、ローノイズであることが求められる。過去の現場での実績からもこの機種が際立ってローノイズであることがわかっており、早々に導入が決まったようだ。また、ミキサーコンソールが無くアウトボードで補完する必要があったため、TUBE-TECH/HLT2AがEQとして据えられている。HLT2Aは繊細なEQというよりは極端なEQでサウンドを切り替えることもできるそうで、極端にローを上げて重たい表現ができないか、逆にローを切ってエッジの効いた表現はできないか、といった試行錯誤を可能にする。このほか、ヴィンテージ機材ならではのコンプレッション感が必要な場面も増えてきていることから、NEVE 33609Cも追加で導入されている。今後も機材ラインナップは充実されていくことだろう。
はじめからこういう音が録りたいというターゲットはあっても、正解を持たずに収録していくという工程がフォーリーの醍醐味だという。その中で誰でも使いやすい機材を選定するということを念頭に置き、スタッフからのリクエストも盛り込んでこれらの機材にたどり着いたそうだ。
スタジオは生き物、その成長を期待する
📷何よりもチームワークの良さが感じられた収録中の一コマと、気合いが込められた渾身の一撃も収録!!
こうして完成をみたスタジオであるが、S/Nも良く満足した録音が行えているそうだ。また、5.1chリスニングが可能となっている点もポイント。開発中のタイトルにコンシューマー作品が多く、サラウンド環境が必要なことに加え、映画のようにセンターの重要度が高いことから、ファントムセンターではなくハードセンターで収録したいという要望に沿ったものだ。また、映像作品やゲーム資料を確認しながらすぐに収録することができるため、フォーリーアーティストに映像作品の音を聴かせてクリエイティブへのモチベーションをアップしてもらいながら制作を進める、という点も狙いの一つだ。もちろん、自社スタジオとなったことで時間を気にせずクオリティの向上を目指せることが大きく、求める方向性をより具体化させて収録できるメリットは計り知れない。
今後について伺うと、スタジオは生き物であり、収録できるサウンドの特徴も次第に変わっていくと考えているそうだ。導入する資材が増えればそれが吸音や反射になって音も変わる。ピットについても使用していく経年変化でサウンドにも違いが出てくる。高域が落ち着いたり、もう少し角が取れてきたりと、年月を積み重ねてどのように音が変わっていくのかがすごく楽しみだと語っていただいた。
📷今回お話を伺った、サウンド本部/マネージャーの丸山 雅之氏(左)、サウンド本部/サウンドデザインチーム 村上 健太氏(中央)、妹尾 拓磨氏(右)。
目の前の制約はアイデアでポジティブに変換する、考え抜かれたからこそ実現できたメリット。そして、それを活かしたフォーリー収録には正解を持たずにのぞむ。ここに共通するのは先入観を捨てるということではないだろうか。先入観を「無」にしたならば、そこにあるのは創るというシンプルかつ純粋な衝動のみである。クリエイティブの本質を言い得たような、まさにプロフェッショナルの思考には感銘を受ける。今後もこのスタジオが重ねた年月は成長となって作品に反映されていくのだろう、フォーリー収録された素材がゲームというフィールドで表現されエンターテインメントを高めていくに違いない。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
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2023/12/28
maruni studio様 / studio m-one 9.2.6chイマーシブ構築、マルニビル改装工事の舞台裏
取材協力:株式会社エム・ティー・アール
ライブの映像コンテンツやMVをはじめ、CM、企業VP(=Video Package)など、音楽系を中心に幅広いポストプロダクション業務を手がけるマルニスタジオ。長年に渡りレコーディングスタジオとポスプロの両方を運営していた関係で、音楽系の映像コンテンツが全体の6割程度を占めるという。今年3月にリニューアルオープンされた同社所有のマルニビルは、その目玉として地下一階にDolby Atmos対応のサウンドスタジオ「studio m-one」を構えた。Musikelectronic Geithainの同軸スピーカーで統一された9.2.6ch構成のイマーシブサラウンド環境は見た目としても圧巻だが、商用スタジオとしても利用する多くの方にとって快適な環境となるよう、様々な工夫が取り入れられているという。
スケルトンから行ったリニューアル
目黒区青葉台、目黒川に程近い住宅街の一角に佇む自社所有のマルニビルは、およそ30年に渡りこの地でレコーディングスタジオとして運営されてきた。また、青葉台には当初からポスプロ業務をメインとしているもう一つの拠点が今も存在している。そして2020年3月、突然訪れたコロナ禍が世の中の動きを止めてしまったのと同様に、コンテンツ制作もしばらくの間停滞期を迎えることになる。そこで持ち上がったのが、両拠点をポストプロダクション業務に統一するというプロジェクトだ。その後社内協議を経て、自社ビルであることのメリットを活かし、全フロアを一度スケルトンにして再構築する改装工事実施を決断。2022年6月より工事がスタートし、数々の難局を乗り越えながら今年3月リニューアルオープンの運びとなった。
今回の改装工事の舞台裏はどのようなものだったのだろうか。スタジオマネージャー兼MAミキサーの横田智昭氏、MAミキサーの沖圭太氏にお話を伺ったところ、これからイマーシブ対応のスタジオを作りたいと考えている方にとって参考になるであろう、理想的なスタジオ構築へのヒントが見えてきた。
株式会社丸二商会
MARUNI STUDIO
Studio Manager
Chief Sound Engineer
横田智昭 氏
株式会社 丸二商会
MARUNI STUDIO
Sound Engineer
沖 圭太 氏
ROCK ON PRO(以下R):今回のスタジオリニューアルの最初のきっかけは何だったのでしょう。
横田: 率直な話、コロナ禍に突入してレコーディングの業務、スタジオで音を録るという仕事は停滞していた一方で、そういった中でもポスプロ業務の方は順調に稼働していました。そこで、このタイミングでポスプロ業務と拠点を統一しリニューアルしようという提案が社内から挙がったんです。
R:その後、具体的な計画や機材選定が始まったのではないかと思いますが、どのように進めていったのでしょう。
横田: このビルは自社ビルで、さらに吹き抜けがあり広く空間がとれる利点があったのですが、スケルトンまでできるという予算を確保できたのが一番大きかったですね。それが実現したからこそ、スタッフ全員で自由に考えられました。タスクの洗い出しというよりは、「自由にできるからこそ、どうレイアウトしていくのか?」というのを決めていくのが大変でした。あれこれ詰め込みすぎると予算が追いつかなくなったりして。
沖:この段階から冨岡さん(株式会社エム・ティー・アール 冨岡 成一郎氏)に相談でしたね。私はマルニと冨岡さんをつなぐ連絡担当だったのですが、無茶を言ってもレスポンスよく対応してくださいました。あと、実はスケルトンの話が出てくる前に、地下一階ではなく二階でやろうという話もありました。しかし検討していくと天井高も取れないし…ど〜にもならん!と(笑)。商業的に成り立たない、というのが分かったからこそ、思い切って「スケルトンからやろう!」という方向をみんなで向くことができたのは大きかったです。
R:では、リニューアル時にDolby Atmos対応というのは当初からお考えだったということですね。
横田: それは最初から考えていました。ポスプロのスタジオに転向するならAtmos対応にしたいと。
リニューアルが解決したポイント
📷著名な建築家によってデザインされたというこのマルニビルは、コンクリート打ちっぱなしの内壁のクールさと、階段などに見られるアール(曲面)の造形が生み出す人間的な温かみの対比がなんとも美しく印象的だ。
R:この新たなスタジオで解決された、以前からの課題はありましたか?
横田: MA室の場合、クライアントの方が大勢いらっしゃることがあります。中には、当然別の仕事も対応しながら立ち会われるということもありますが、コントロールルームの中ではそれを遠慮がちにされているのもこちらとしては心苦しかったんです。そこで、隣の前室にテレビとソファを用意して、そちらでもコントロールルームと同じ環境の音と画を流すことができるようにしました。クライアントの皆さんが別件対応を前室でしていても、コントロールルームの中で制作がどう進行をしているのかをすぐに確認できるという環境にしています。
また、コントロールルーム内とは別の場所で冷静に画音をチェックできるスペースができたというのは、従来の雑多になりがちな作業環境からすると改善されたポイントです。これは、他のMA室にもなかなか無い部分ではないかと思っています。あとは、極力スタジオ内のモノを減らす、ということですね。見ていただいて分かる通りかなり少ないと思います。音響面も含めてダイレクトな音を重視したいというのはずっと思っていて、卓上のものもなるべく小さくしました。
R:そうですよね、シンプルで洗練された印象を受けました。
📷前室にはDolby Atmos対応のサウンドバーSonos Beamを配置し、テレビのeARC出力からオーディオチャンネルを受けることでシンプルな配線を実現している。
📷優先的に導入したというTorinnov Audio D-MON、そしてDolby Atmos対応AVアンプDENON AVC-X6700Hなどが配置されたラック。
沖:機材的な話で言うと、最初の段階から決まっていたものとしてTorinnov Audio D-MON の導入がありました。これまでのMA室は15年くらい使っているのですが、経年変化もあり音を調整したいタイミングも出てきました。その調整幅が少ないというのはスタジオを長く使っていく上で、言わば足かせになってしまう、というのをすごく感じていたので、スタジオを作って今後も長く使っていけるようにしたかったんです。もちろんアコースティックな部分での調整を追い込むのも大事ですが、プラスして電気的に調整できる「伸びしろみたいなものを取っておきたい!」ということもあって、コストは高くついても「そこだけは譲らない!」というのはありまして、何も考えずに最初に予算に組み込みました(笑)。
R:もちろん出音の改善の意味もあるかと思うのですが、長く使っていく上でメンテナンス性をもたせる意味で導入されたのですね。
沖:当初はそうでしたが、結果的にAtmosの調整にもすごく良い効果が出ていますよ。
17本のMusikが表現する9.2.6ch
R:最初の段階から導入を決めていたものは他にもあるのでしょうか。
横田: 見ての通り、ムジークですね。この901のフロントのLCRは元々レコーディングで使っていたものなんです。これが、レコーディング用途であったとはいえ、私たちも当然よく聴き込んでいて素直にいいなと思わせるサウンドでした。そこで「せっかくあるこの901を活かして全てを組めないか?しかも9.2.6chという形で…」と冨岡さんにも相談させていただいて。そこもこだわりと言えばこだわりです。
R:では、慣れ親しんでいたスピーカーでイマーシブの作業も違和感も無く進められたと。
横田: そうですね。ただ、17本もあると…スゴいんだな、と(笑)。なかなか暴れん坊の子達なんですが、Torinnovが上手くまとめてくれています。
R:今回、9.2.6ch構成にされたのはどういった理由でしょう。
横田: それは僕がここを作る以前に、外部のスタジオで取り組んでいた作品が影響していて、そこでは9.2.4chで作業を行なっていました。その時にワイドスピーカーの利点について使用前と使用後を比較した時に、新しいスタジオを作るのであれば、トップを4chとするか6chとするかはさておき、平面9chはマストだな、と。中間定位が作業上すごく判断しやすい。そこを7.1.4chと比較するとやはり定位がボケる部分が出てくるんですね。結果的に7.1.4chで聴かれている環境があったとしても、制作環境としてはこの部分が物理的に分かると作業がスムーズになってくるというのがありました。
📷Topの6chにはmusikelectronic geithain RL906を採用。スケルトンからの改装により3.1mという余裕ある天井高が確保された。
R:トップスピーカーはどのように活用されていますか?
横田: トップ6chに関しては、トップの真ん中にスピーカーを置くというのは、正直最初は「要るのかな?」とも思っていたんですが、ついこの間、その効果を実感できる機会がありました。Atmosの作業を行なっていた時に雷を落とすシーンがあったんです。部屋の中でのプロジェクションマッピングになっていて、長方形の箱の中でどこからともなくワーッと雷が落ちるシーン。それを音楽の曲中の間奏に入れたかったんです。上方向の定位は分かりづらいものですが、その時の雷の音の定位が非常に分かりやすかったんです、トップの真ん中があることによってすごくやりやすさを感じました。そうしたものを作る上で定位をきちんと確認できるっていうのは良かったなと最近になって実感しています。
R:今回AVID S1を選択されたのはどのような理由からでしょう。
沖:MAという作業柄、フェーダーを頻繁に使う訳ではないので、8chもあれば十分なんです。あとは、卓ごと動かせるようにしたかったというのと、反射音の影響を極力減らすため、スタジオ内のあらゆるものをできるだけコンパクトにしました。S3じゃなくS1というのもそこからです。
横田: やはり、スイートスポットで聴かなければ分からないじゃないですか。中には卓前に座ることに抵抗があるというクライアントの方も意外と多くいらっしゃいます。だったら卓側を動かしてしまって、そこにソファや小さなテーブル、飲み物などを置いて落ち着ける環境にしてしまえば、ど真ん中で聴いていただけるかなと思いました。
📷マシンルームからのケーブルを減らすため、必要最低限かつコンパクトな機器類で構成された特注のデスク。中央にはAVID S1が埋め込まれている。
R:フロアプランに関して、他にも案はありましたか?
横田: リアやサイドのスピーカーをどのように配置できるかというところをしっかり検討して、これはすごく上手くいったと思います。サラウンドサークルのことだけを考えるとクライアントの邪魔になってしまうことがありがちです。それを、しっかりイマーシブ環境にとっての正確な配置を考えつつ、クライアントも快適に過ごせるということを、僕らの意見だけではなく営業サイドの意見も豊富に取り入れてこだわって考えました。
沖:この部屋はあえてMA室とは呼んでいません。コンセプト段階で「MA室を作るのか?」それとも「レコーディングの人もMAの人も使える部屋を作るのか?」という議論がありました。前室のスペースもいっぱいまで使って、3列ディフューズのいわゆるMA室的な部屋を作ろう、というアイデアと、ITU-Rのサラウンドサークルにできるだけ準拠した完璧な真円状に配置しようというアイデアがありまして、そこで色々話し合って揉んでいく中で今の形に落ち着きました。レコーディングの方もMAの方も皆が使える部屋となったので、より広い用途に対応できるという意味合いでもあえてMA室とはせず「studio m-one」としています。
📷将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できるAVID MTRX。B-Chainの信号はモニターコントローラーのGrace Design m908を経由し、Torinnov Audio D-MONへと接続されている。
レコーディングとMAを融和するイマーシブ
R:現場の方々から見てDolby Atmos以外の規格も含めてイマーシブ需要の高まりというのは感じますか?
横田: 確かにエンドユーザー的には広がってきているかな、という感覚はあります。そこから「スタジオを使ってもらうようにするにはどうするか?」っていうのがもう一つのテーマであったりもするので、私たちがどうやって携わっていくかというのは毎日考えていることではあります。音楽作品については、いくつかのアーティストがだんだん作り始めているような状況なんですが、これもやってみて思うのは、ノウハウがものすごく大事な部分でもあるし、発注する側からしてもある意味「未知」ではある状態です。「面白そうだけど、どういうふうにすればいいの?」とか、「どういう風にやるの?」とか、「時間はどれだけかかるの?」といった部分がまだまだ分かりづらい状況だと思います。
R:手探りなところは聴き手もそうですよね。
横田: だからこそ、私たちはいいスタジオを作らせてもらったので、これをどう活用していくか、イマーシブのニーズにどう参入していけばいいのかというのは常日頃から営業陣とも話し合っています。そこで、先日取り組んでみたのが企業系のVPコンテンツで、このstudio m-oneでAtmosを体験していただいたのをきっかけにお声がけをいただいて、VPをAtmos化するということを実験的にやらせていただきました。
他にも企画段階から携わって、「カメラアングルこういうのはどうですか?」とか「背景にこれがあるとこういう音が足せるので、こんな空間ができますよ」とか、「こういう動きで…」「俯瞰から撮ると…」とかカメラマンさんとも打ち合わせをさせていただいて、それに対して僕らが効果音をつけて制作してみたというケースもあります。クライアントは、さまざまな企業のコンテンツを受注する制作会社なのですが「どういう風に世に出していいかっていうのはちょっとまだ悩むけれども、できたコンテンツとしてはすごく面白い」という評価で、受注の段階でAtmosの表現もできると提案してみようかという流れも生まれてきているようです。そうなると、これまでAtmosとは無縁と思われた企業の方にも、商品だったり、システムだったり、それが例えば「空間」を表現することでその価値観が高まりそうな商品にはAtmosのような規格がとても効果的だ、と知っていただける機会も増えてきそうです。
R:制作はもちろん、営業面でも広がりを見せそうですよね。
横田: 先ほどの話もありましたが、あえてMA室とは呼んでいません。これまで、サラウンド制作はどちらかというとMAやダビングの世界の話で、言ったら我々には親しみがある分野でした。そこに空間オーディオが出てきてレコーディングの方が一気にAtmosへ取り組む機運が高まると、レコーディングの人たちとMA的なやり方を話すようになってきたんです。そういう時に、我々が今までやってきたサラウンドの話が活きてくる。これまではレコーディングとMAの間に垣根のようなものが感じられていたんですが、空間オーディオのスタートによってその境目が混ざってきた感覚です、これからもっとそうなっていくと思います。studio m-oneもせっかく作るなら、そのどちらにとっても垣根がないスタジオにしたかったというのが最初の展望です。Atmosへの関心にかかわらず、どのような方にでも使ってもらえるような部屋にしたいですね。
📷中央のデスクを移動させ、椅子とサイドテーブルを置くと極上のイマーシブ試聴環境へと早変わりする。この工夫により、クライアントがスタジオ中央のスイートスポットでリラックスして試聴してもらえるようになったという。「卓前で聴いてもらうのが難しいのであれば、卓ごと動かせばいい」、そうした逆転の発想から生まれたまさにクライアントファーストな配慮である。実際にこの場でライブの音源を試聴させていただいたが、非常に解像度の高いMusikサウンド、そしてTorinnov Audio D-MONによる調整の効果も相まって、良い意味でスピーカーの存在が消え、壁の向こう側に広大な空間が広がっているかのように感じられた。
●Speaker System
Dolby Atmos Home 9.2.6ch
L/C/R:musikelectronic geithain | RL901K
Wide/Side/Rear:musikelectronic geithain | RL940
Top:musikelectronic geithain | RL906
Sub:musikelectronic geithain | BASIS 14K×2
スタジオ設立30周年を迎える節目に、ポスプロ業務への一本化という新たな変革へと踏み出したマルニスタジオ。スケルトンからの改装は自由度が高い反面、決めるべきことも増えるため数々の議論が行われてきた。その際に、技術スタッフの意見はもちろん、営業陣の意見にもしっかりと耳を傾けることで、クオリティの高い制作環境を担保しつつ、クライアントを含めた利用する全ての人にとって居心地の良い空間デザインが実現された。あえてMA室と呼んでいないことからも伝わってくる、制作現場における様々な垣根を取り払い、人との対話を重視しながらより良い作品を作っていこうという姿勢には個人的に深い感銘を受けた。このstudio m-oneから、また一つ新たなムーブメントが拡がっていくのではないかという確かな予感を抱かずにはいられなかった。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
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2023/12/26
株式会社三和映材社 様 / MAルーム『A2』〜大阪の老舗ポスプロが、これからの10年を見据えてMAルームをリニューアル〜
Text by Mixer
CMや企業VPといった広告案件を数多く手がける大阪の老舗ポスト・プロダクション、株式会社三和映材社が本社ビル内にあるMAルーム『A2』をリニューアルした。長らく使用されてきたヤマハ DM2000はAvid S4に入れ替えられ、モニター・スピーカーはGenelec The Ones 8331Aに更新。システム的にはシンプルながら、8331AとPro Tools | MTRXはAESで接続されるなど、音質 / 使い勝手の両面で妥協のないMAルームに仕上げられている。今回のリニューアルのコンセプトと新機材の選定ポイントについて、株式会社三和映材社 ポストプロダクション部所属のサウンド・エンジニア、筒井靖氏に話を訊いた。
大阪の老舗ポスプロ:三和映材社
大阪・梅田から徒歩圏内、新御堂筋沿いにスタジオを構える三和映材社は、1971年(昭和46年)に設立された老舗のポストプロダクションだ。映画の街:京都で、撮影機材のレンタル会社として創業した同社は、間もなくビデオ機材や照明機器のレンタル業務も手がけるようになり、1980年代にはポストプロダクション事業もスタート。同社ポストプロダクション部所属の筒井靖氏によれば、1985年の本社ビル新設を機に、ポストプロダクション事業を本格化させるようになったという。
「本社ビルは、1階が機材レンタル、3階が撮影スタジオ、5階が映像編集室、6 階が映像編集室とMA ルーム、7階がレコーディング・スタジオという構成になっていて、撮影から映像編集、MA、さらには音楽制作に至るまで、映像コンテンツの制作がワン・ストップで完遂できてしまうのが大きな特色となっています。手がけている仕事は、CMや企業さんのPRが8〜9割を占めています。製品紹介や会社紹介のビデオですね。CMと言っても、昔はテレビがほとんどだったのですが、最近はWebが多くなっています。最近は自分たちで映像編集されるお客様も増えてきたので、MA やカラコレ、合成、フィニッシングだけを弊社に依頼されるパターンも増えていますね」
📷株式会社三和映材社 ポストプロダクション部 サウンド・エンジニア 筒井 靖 氏
本社ビル内の施設は、映像編集室が3部屋(Autodesk Flame ×2、Adobe Premiere Pro ×1)、MAルームが2部屋、レコーディング・スタジオが1部屋という構成で、その他に別館にもボーカル・ダビングなどに使用できるコンパクトなスタジオが用意されているとのこと。2部屋あるMAルームは、フラッグシップの『A1』が5.1chサラウンドに対応、今回リニューアルが実施された『A2』はステレオの部屋で、どちらも1985年、ビルが竣工したときに開設されたという。
「音響設計は、日東紡さん、現在の日本音響エンジニアリングさんにお願いしました。ルーム・アコースティックは基本開設時のままで、その後は痛んだファブリックを張り替えたくらいですね。機材に関しては、『A1』はAMEK AngelaとStuderの24トラック・マルチの組み合わせでスタートし、1993年に卓を7階のレコーディング・スタジオで使用していたSSL 4000Eに入れ替えました。現在の卓は2006年に導入したSSL C300で、かなり年季が入っていますが、今年に入ってからフル・メンテナンスしたので今のところ快調に動いています。
一方の『A2』は、当初は選曲効果の仕込みで使うような部屋だったので、最初はシグマのコンパクト・ミキサーが入っていたくらいでした。その後、『A1』に4000Eを入れたタイミングで、現在のDAWの先駆け的なシステムであるSSL Scenariaを導入し、本格的なMAルームとして運用し始めたんです。Scenariaは、関西一号機のような感じでしたが、映像もノンリニアで再生できる革新的なシステムでしたね。Avid Pro Toolsを導入したのは2006年のことで、『A1』と『A2』に同時に導入しました。『A2』のメイン・コンソールは引き続きScenariaで、Pro Toolsはエディターとして使うという感じでした。映像は、ソニーのDSR-DR1000というディスク・レコーダーを9pinでロックして再生するようになったのですが、あれはワーク上げしながら再生できる画期的なマシンでした。その後、いい加減Scenariaも限界がきたので、2010年にヤマハ DM2000に更新した経緯です。」
S4は使い慣れたARGOSY製デスクに収納
📷もともとはDM2000用として設置されていたARGOSY製のスタジオ・デスクをサイド・パネルを取り外すことで使用。今回導入したAvid S4がきれいに収められた。
そして今年5月、三和映材社はMAルーム『A2』のリニューアルを実施。Pro Tools周りを刷新し、オーディオ・インターフェースとしてAvid Pro Tools | MTRXを新たに導入、長らく使われてきたDM2000はAvid S4に更新された。筒井氏によれば、約2年ほど前にリニューアルの計画が持ち上がったという。
「一番のきっかけは、Pro Tools周りとDM2000の老朽化ですね。弊社の仕事は修正 / 改訂が多いので、どちらの部屋でも作業ができるように、Pro ToolsやOSのバージョンをある程度揃えるようにしているんです。しかし以前『A2』に入っていたMac Proがかなり古く、それが足枷になってPro Toolsをバージョン・アップできないという状態になっていたんですよ。せっかくPro Toolsは進化しているのに、互換性を考慮してバージョン・アップせず、その恩恵を享受しないというのはどうなんだろうと。それでDM2000もところどころ不具合が出ていたこともあり、約2年前からリニューアルを検討し始めました」
DM2000に替わる『A2』の新しいコントロール・センターとして選定されたのが、16フェーダーのS4だ。S4は、CSM×2、MTM×1、MAM×1というコンフィギュレーションとなっている。
「作業の中心となるPro Toolsが最も快適に使えるコンソールということを考え、最終的にS4を選定しました。DM2000やC300のようなスタンドアローン・コンソールには、何か“担保されている安心感”があって良いのですが(笑)、最近はPro Toolsがメインになっていましたので、もはやコンソールにこだわることもないのかなと。一時期はコンソールをミックス・バッファー的に使っていたこともあるのですが、次第にアウトボードすら使わなくなり、完全にPro Toolsミックスになっていましたからね。
ただ、唯一心配だったのがコミュニケーション機能とモニター・セクションだったんです。以前、ICON D-Controlシステムで作られたセッションを貰ったときに、モニターを作るためのバスがずらっと並んでいたことがあって、そういった部分までPro Toolsで作らなければならないのはややこしいなと(笑)。しかしPro Tools | MTRXの登場によって、コミュニケーションとモニター・コントロールというコンソールの重要な機能をPro Toolsとは切り離して実現できるようになり、これだったらコントロール・サーフェスでもいいかなと思ったんです。Pro Toolsで行うのは純粋な音づくりだけで、環境づくりはPro Tools | MTRXがやってくれる。今回のシステムを構築する上では、Pro Tools | MTRXの存在が大きかったですね。
コントロール・サーフェスを導入するにあたり、S6やS1という選択肢もあったのですが、最終的にS4を導入することにしました。Dolby AtmosスタジオであればS6がマストだと思うのですが、ここはステレオの部屋ですし、機能的にそこまでは必要ありません。ただ、この部屋にはクライアントさんもいらっしゃるので、ホーム・スタジオのような見栄えはどうだろうと思い(笑)、S1ではなくS4を選定しました」
📷長らく使われてきたDM2000はAvid S4に更新
S4は、ARGOSY製のスタジオ・デスクに上手く収められている。このデスクは以前、DM2000用を収納して使用していたものとのことで、サイド・パネルを取り外すことで、きれいにS4が収まったという。
「予算の問題もありましたし、S4を設置するデスクをどうするか、ずっと悩んでいたんです。しかしあるときふと、DM2000のデスクにS4が収まるかもしれないと思って。実際、板を1枚抜いて、少しズラすだけできれいに収まりました。奥行きや高さは微妙に合わなかったのですが、そういった問題はコーナンで買ってきた板を敷き詰めることでクリアして(笑)。このARGOSYのデスクは、手前のパーム・レストが大きくて作業がしやすく、とても気に入っています。Macのキーボードも余裕を持って置くことができますしね。
S4の構成に関しては、8フェーダーだと頻繁に切り替えなければならないので、最低16フェーダーというのは最初から考えていたことです。ディスプレイ・モジュールは付けようか悩んだのですが、あれを入れるとPro Toolsのディスプレイを傍に置かなければなりませんし、最終的には無しとしました。各モジュールの配置は、16本のフェーダーに関しては分散させずに集約し、右側がトランスポート・コントロール、左側がフェーダーという隣の部屋のC300のレイアウトを踏襲しています」
📷システムの環境構築に大きく貢献したというAvid Pro Tools | MTRX。
『A2』のPro Toolsは1台で、Intel Xeonを積んだMac ProにHDXカードを1枚装着したシステム。オーディオ・インターフェースとなるPro Tools | MTRXも、ADカードとDAカードが1枚ずつのミニマムな構成で、MADIカードやSPQカードなどは装着していないという。
「音響補正はGenelecの『GLM』でやっているので、SPQカードが入っていない初代のPro Tools | MTRXがちょうど良いスペックでした。VMC-102のようなモニター・コントローラーを導入しなかったのは、ここはステレオのスタジオなので、複雑なモニター・マトリクスが必要ないからです。その代わり今回、カフをスタジオイクイプメント製の新しいものに入れ替えました。映像はPro Toolsのビデオ・トラックで再生し、Blackmagic Design DeckLink 4K Extremeで出力しています。Pro Toolsの現行バージョンは、いろいろなビデオ・フォーマットを再生できるので、ビデオ・トラックでもまったく不自由はありません。2面あるディスプレイは、単にミラーリングしているだけで、右側でアシスタントが編集したものを、左側のぼくがバランスを取るという役割分担になっています。それと今回、ROCK ON PROさんからのご提案でUmbrella CompanyのThe Fader Controlを導入したのですが、これが入力段にあるだけでコンソールのように録音できるので助かっています。録りのレベルも柔軟に調整することができますし、とても気に入っている機材です」
📷S4の脇に備えられたのはUmbrella Company / The Fader Controlだ。
8331AとPro Tools | MTRXをデジタルで接続
今回のリニューアルでは、ニア・フィールド・スピーカーも更新。長らく使用されてきたGenelec 8030AがThe Ones 8331Aにリプレースされた。筒井氏によれば、8331AとPro Tools | MTRXは、AESでデジタル接続されているという。
「ニア・フィールド・スピーカーは、以前はヤマハ NS-10Mを使用していたのですが、2006年にScenariaを使うのを止めたタイミングでGenelecに入れ替えました。Genelecのスピーカーは、聴き心地の良さと、スタジオ・モニターとしての分かりやすさの両方を兼ね備えているところが気に入っています。
今回、The Onesシリーズを導入したのは、別館のレコーディング・スタジオで8331A を使用していて、何度かこの部屋で試聴してみたところ、もの凄く良かったからです。なのでスピーカーに関しては、スタジオのリニューアルを検討し始めたときから、絶対に8331Aにしようと考えていました。8331Aは、8030Aよりも定位がさらにしっかりして、音の粒立ちが良くなったような気がしますね。それと同軸設計のスピーカーではあるのですが、サービス・エリアの狭さを感じないところも良いなと思っています。同軸スピーカー特有の、サービス・エリアを外れた途端に音がもやっとしてしまう感じがないというか。もちろん『GLM』も使用していて、あの機能を使うと“しっかり調整されている”という安心感がありますね(笑)。『GLM』は、左右同一のEQか個別のEQが選べますが、両方試してみたんですけど、今は左右同一のEQで使っています。
今回、8331AとPro Tools | MTRXをデジタルで接続したのは、余計なものを挟まずにピュアな音にこだわりたかったからです。隣の部屋も、C300からヤマハ DME24Nを経由して、Genelecにデジタルで接続しているのですが、その方が安定している印象があります」
今年5月にリニューアル工事が完了したという新生『A2』。完成翌日からフル稼働しているとのことで、その仕上がりにはとても満足しているという。
「皆さんのおかげで、イメージどおりのスタジオが実現できたと大変満足しています。でも、まだ改善の余地が残っていると思うので、さらに使いやすいスタジオになるように、細かい部分を追い込んでいきたいですね。新しいS4に関しては、HUIモードのDM2000とは違ってPro Toolsに直接触れているような感触があります。画面上のフェーダーがそのまま物理フェーダーになったような感覚というか。それとアシスタントがナレーションのノイズを切りながら、こちらではEQを触ったり、2マンでのパラレル作業がとてもやりやすくなりました。今回は思い切ることができませんでしたが、イマーシブ・オーディオにも興味があるので、今後チャンスがあれば挑戦してみたいと思っています。」
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Music
2023/12/19
MTRX II / MTRX StudioにThunderbolt 3 Moduleが登場!〜新たなオーディオ・ワークフローを実現するシステムアップとは〜
NAMM Show 2023でPro Tools | MTRX IIとともに発表され、大きな話題となった「MTRX Thunderbolt 3 Module」。オーディオ制作者の長年の夢であったかもしれないAvidフラッグシップI/Oをネイティブ環境で使用できる日がついにやってきたことになる。MTRX Thunderbolt 3 Moduleの特徴は、MTRX II / MTRX StudioをCore Audioに接続するだけでなく、DigiLinkポートの入出力と同時にThunderbolt入出力を追加で使用できるという点にもある。つまり、1台のMTRX II / MTRX StudioにHDXシステムとネイティブDAWを同時に接続することが可能で、双方に信号を出し入れすることができるということだ。単に高品位なI/Oをネイティブ環境で使用できるようになるというだけでなく、中規模から大規模なシステム設計にまで影響を及ぼす注目のプロダクト「MTRX Thunderbolt 3 Module」を活用した代表的なシステムアップの例を考えてみたい。
Thunderbolt 3 Module
価格:135,080円(税込)
MTRX IIとMTRX Studioの両製品に対応したThunderbolt 3モジュールのリリースにより、DigiLink接続によるパワフルなDSP統合環境に加えて、 Thunderbolt 3経由で実現する低レイテンシーなCore Audio環境での柔軟性も実現可能となる。Thunderbolt 3オプション・モジュール経由で、MTRX IIでの使用時に最大256ch、MTRX Studioの場合では最大64chにアクセスが可能、Core Audio対応アプリケーション等をDADmanソフトウエアにルートし、より先進的なオーディオ・ワークフローが実現できる。
シーン1:Core Audio対応DAWのI/Oとして使用
MTRX Thunderbolt 3 Moduleの登場によって真っ先に思いつくのはやはり、これまでHDXシステムでしか使用できなかったMTRX II / MTRX Studioをネイティブ環境でI/Oとして使用できるようになったということだろう。Logic Pro、Nuendo、Cubase、Studio OneなどのCoreAudio対応DAW環境でAvidフラッグシップの高品位I/Oを使用することができるだけでなく、巨大なルーティング・マトリクスや柔軟なモニターコントロール機能をシステムに追加することができるようになる。
もちろん、恩恵を受けるのはサードパーティ製のDAWだけではない。HDX非対応のPro Tools Intro、Pro Tools Artist、Pro Tools Studio、さらにPro Tools Ultimateをnon-HDX環境で使用している場合にも、HDXシステムで使用されるものと同じI/Fを使用することができるようになる。特に、Pro Tools Studioはこのオプション・モジュールの登場によって、そのバリューを大きく拡大することになる。Pro Tools Studioは最大7.1.6までのバスを持ち、Dolby Atmosミキシングにも対応するなど、すでにイマーシブReadyな機能を備えているが、従来のAvidのラインナップではこれらの機能をフル活用するだけのI/Oを確保することが難しかった。MTRX Thunderbolt 3 Moduleの登場によって、Avidの統合されたIn the Boxイマーシブ・ミキシングのためのシステムが完成することになる。
シーン2:HDXシステムにダイレクトにMacを追加接続
MTRX II / MTRX Studioのドライバーであり、ルーティング機能やモニターセクション機能のコントロール・アプリでもあるDADman上では、DigiLinkからのオーディオとThunderboltからのオーディオは別々のソースとして認識されるため、これを利用してDigiLink接続のMacとThuderbolt接続のMacとの間でダイレクトに信号のやりとりができる。例えば、Dolby Atmosハードウェア・レンダラーとHDXシステムのI/Fを1台のMTRX II / MTRX Studioに兼任させることが可能になる。Pro Toolsとハードウェア・レンダラーが1:1程度の小規模なミキシングであれば、I/O数を確保しながらシステムをコンパクトにまとめることができるだろう。
もちろん、Dolby Atmosハードウェア・レンダラーだけでなく、CoreAudioにさえ対応していれば、スタンドアローンのソフトウェアシンセ、プロセッサー、DAWなどとPro Toolsの間で信号をやりとりすることができる。シンセでのパフォーマンスをリアルタイムにPro ToolsにRecする、Pro ToolsからSpat Revolutionのようなプロセッサーに信号を送る、といったことが1台のI/Fでできてしまうということだ。Thuderboltからのソースはその他のソースと同様、DADman上で自由にパッチできる。使い方の可能性は、ユーザーごとに無限に存在するだろう。(注:MTRX StudioのThuderbolt 3 I/Oは最大64チャンネル。)
シーン3:Dolby Atmosハードウェア・レンダラーのI/Fとして使用
シンプルに、HDXシステムとDolby Atmosハードウェア・レンダラーのそれぞれにMTRX IIを使用することももちろん可能だ。HDX側のMTRX IIからDanteでレンダラーに信号を送り、レンダラー側のMTRX IIからモニターセクションへ出力することになる。大規模なシステムの場合、複数のプレイアウトPro Toolsからの信号を1台のMTRX IIにまとめると、オプションカードスロットがDigiLinkカードで埋まってしまい、アナログI/Oをまったく確保できないことがある。ハードウェア・レンダラーのI/FとしてMTRX IIを採用した場合には、その空きスロットを利用して外部機器とのI/Oを確保することができる。MTRX II同士をDanteで接続していればひとつのネットワークにオーディオを接続できるので、Dante信号としてではあるがメインのMTRX IIからコントロールすることも可能だ。
NAMM Show 2023での発表以来、多くのユーザーが待ちわびたプロダクトがついに発売開始。In the Boxから大規模システムまであらゆる規模のシステムアップを柔軟にすることができるモジュールの登場により、ユーザーごとのニーズによりマッチした構成を組むことが可能になった。新たなワークフローを生み出すとも言えるこの製品、システム検討の選択肢に加えてみてはいかがだろうか。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Sales
2023/11/27
SOUND PARTICLES「ブラックフライデー/サイバーマンデー」セール開催!
コンピュータグラフィックスの概念を取り入れた独自のアルゴリズムを搭載し、全てのプラグインが最大9.1.6chまでのイマーシブオーディオ制作にも対応しているSOUND PARTICLE社が、現在「ブラックフライデー/サイバーマンデー」セールを開催中!
全製品が50%OFFで手に入れられるチャンス!ProToolsにDolby Atmos Rendererが搭載される前に、イマーシブツールをお得に揃えておきましょう!
SOUND PARTICLES社 ブラックフライデー/サイバーマンデー
概要:SOUND PARTICLES全製品が50% OFF
期間:ブラックフライデー:2023年11月15日(水)19:00 〜 11月27日(月)
サイバーマンデー:2023年11月27日(月)19:00 〜 12月3日(日)
詳細なラインナップと価格は下記WEBページで!
Rock oN Line eStore>>
SOUND PARTICLES国内代理店フォーミュラ・オーディオWEBサイト>>
https://pro.miroc.co.jp/headline/skydust-3d-sound-particles/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-particles-apple-silicon-support/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-particles-density/
NEWS
2023/11/22
MTRX Thunderbolt 3 Moduleが国内出荷開始!
AvidフラッグシップI/OであるPro Tools | MTRX IIおよびPro Tools | MTRX Studioをホストマシンへ直接接続することを可能にする、Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module。NAMM2023で発表され、システム設計の幅を大きく拡大するその機能に注目が集まっていた本製品がついに日本国内でも流通を開始いたしました!
ROCK ON PRO・Rock oN Company店頭のほか、Rock oN Line eStoreからお買い求めいただけます。
Avid
Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module
販売価格:¥ 135,080 (本体価格:¥ 122,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
MTRX Thunderbolt 3 Moduleについて
Thunderbolt 3オプション・モジュールは、Pro Tools|MTRX StudioおよびMTRX IIに対応しており、MTRX Studioでは64チャンネル、MTRX IIでは最大256チャンネルの低レイテンシー接続を備えた完全なネイティブ・システムを構築することができます。
DigiLink接続を行っているPro Tools|HDXを使用している場合も、Thunderbolt 3を併用することが可能です。この場合は、Pro Toolsのオーディオ(DigiLink経由)と、他のホスト・ベースのオーディオ・アプリケーション(Thunderbolt 3経由)を双方向にルーティングすることもでき、サウンド・デザインや作曲の可能性をより創造的に広げることができます。
また、MTRX IIまたはMTRX StudioにThunderbolt経由で接続された1台のコンピューターと、HDXにDigiLink経由で接続された別のコンピューターを、一緒に接続することも可能です。
日本語製品紹介ブログ
Pro Tools|MTRX IIとThunderbolt 3オプションの紹介
Thunderbolt 3 Moduleを使用すれば、MTRX II / MTRX Studio1台のみで複数のコンピューターからの信号を相互にやりとりすることができるようになり、システム構築の幅が大きく拡大します。HDXシステムとDolby Atmos RendererのI/Oを1台で完結できたり、外部からの持ち込みMac/PCからPro Toolsへ直接音声を取り込むことができるなど、運用面でのメリットも非常に大きいオプションモジュールとなっています。
デモのお問い合わせのほか、システム構築・スタジオ設計などのご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-pro-tools-mtrx-ii-proceed2023/
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-pro-tools-mtrx-ii-thunderbolt3-module/
Event
2023/11/22
【次回12/4(月)開催】360VME体験会@MIL STUDIO 開催告知
12月4日(月)、360 Virtual Mixing Environment(360VME)の特別体験会を弊社MIL Studioにて開催いたします。
※「360VMEって何?」という方は、まずはこちらの記事をお読みください。
◎こんな方におすすめ
360 Reality Audio、Dolby Atmosコンテンツの制作に興味がある方
イマーシブミックスに興味があるが、制作環境の構築にお悩みの方
(例:スピーカーの選定で悩んでいる、設置環境が用意できない…etc)
汎用プロファイルでのバイノーラル再生に不満のある方
MIL Studioの音響環境でミキシングを行なってみたい方
2023年12月 360VME特別体験会@MIL STUDIO 開催概要
◎日付:2023年12月4日(月)
◎時間:13時〜18時(開始時間については弊社よりご案内いたします。)
・1日最大5組 x3名 計15名様
・1組あたり最大3名様までご参加可能です。ぜひお誘い合わせの上ご参加ください。
※2名以下でお申し込みの場合、最大同時3名様まで他の参加者の方との相席とさせていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
・所要時間は1名様当たり約20分、1組で1時間となります。
◎開催場所:MIL Studio
– 祐天寺駅より徒歩3分 ※住所は体験会ご参加の方にのみメールでご案内いたします。
◎お申し込み方法:下記ボタンより申込フォームを送信ください
申込フォームはこちら
News!12月7日(木)には渋谷LUSH HUBにてURU氏、アヤノハラグチ氏をお迎えし、360 Reality Audio のセミナーおよび懇親会を開催予定です!こちらもあわせてご確認ください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-seminar-1207/
本件に関するお問い合わせは下記コンタクトフォームより送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-seminar-1207/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sony_360-vme_report/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mdr-mv1-vme-release/
Event
2023/11/15
InterBEE 2023 出展情報 〜コンテンツ制作の次世代ワークフローを実体験!〜
株式会社メディア・インテグレーションおよびROCK ON PROは今年も国内最大級の放送機器展InterBEE2023に出展いたします。
◎Inter BEE 2023出展情報・会期:
<幕張メッセ会場>2023年11月15日(水)〜17日(金)10:00~17:30 (最終日は17時まで)
<オンライン>11月6日(月)~12月15日(金)
・場所:幕張メッセ/オンライン
・弊社展示ブース:ホール1 小間番号1610(ROCK ON PRO)、小間番号1513、1508(株式会社メディア・インテグレーション)
・入場料:無料(全来場者登録入場制)
※来場者登録はこちらから
Inter BEE 公式WEBサイトはこちら>>
ROCK ON PRO/MIブースの見どころ!
◎AVID Pro Tools(ROCK ON PRO)
NAMM show2023で大きな話題となったMTRX Thunderbolt 3 ModuleをPro Tools | MTRX II に実装。オーディオ制作者の長年の夢であったかもしれないAvidフラッグシップI/OをCore Audioに接続したネイティブ環境でのシステムアップを実現、制作ソリューションの可能性を拡げるこのアイテムをハンズオンします。
◎MPEG-H(ROCK ON PRO)
Pro Tools 23.6でそのインストーラーが統合されたMPEG-H。次世代放送規格にも記載のあるこのフォーマット、実際の制作ツールのご案内と、何が出来るのか?その特徴とするインタラクティブ・オーディオとは一体何なのか?数年後に現実のものとなる最新技術にいち早く触れるチャンスです。
◎Dante Domain Manager + Waves CloudMX(MI)
AoIPの一つであるDanteはすでに多くの現場で活用され、日常的に使用される技術になりましたが、ローカルエリアネットワークでの運用という制約がつきまといます。せっかくのIPなのだから、インターネット経由で接続がしたいという要望が出るのは必然です。これをついに現実のものとするDante Domain ManagerとDante Connect、そして、クラウドサービスであるAWS。これらに加え、AWS上で動作するオーディオ・ミキサーWAVES Cloud MXを展開します。オーディオ制作環境の未来をご覧ください。
◎イマーシブゾーン(MI)
本ブースの目玉の1つである「イマーシブゾーン」では実際にDolby Atmos / 360RA制作でのモニターワークフローを体験いただけます。さらに世界中どこにいても複数の共同作業者と同時にコラボレーションすることを可能とするAudiomoversもご紹介します。
◎セミナーゾーン(MI・ROCK ON PRO)
メディア・インテグレーションおよびROCK ON PROブース展示の製品に関連した最先端技術の解説、ノウハウセミナーを実施いたします。さらにFLUX SPAT Revolutionを使ったWFS(波面合成)も実演予定です。
タイムテーブルPDFはこちら [15日 16日 17日]
※上記内容は変更される場合がございますのであらかじめご了承ください。
ROCK ON PRO / MIブース セミナー情報 15日(水)
日時:2023年11月15日(水)11:10 〜 17:00
場所:プロオーディオ部門 ホール 1 小間番号 1610 セミナーゾーン
・11時10分〜 「世界をつなぐプロジェクトを実現Audiomovers LISTENTO」
講師:Mirek Stiles 氏 (Audiomovers) & Igor Maxymenko 氏 (Audiomovers)
・11時50分〜 「音楽制作もPro Tools + Sketch 〜携帯デバイスで作曲、そのままセッションファイルへ展開〜"」
講師:小笠原 一恵 氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト)
・13時10分〜 「Waves Cloud MX & Dante Connect:世界初クラウドベースのオーディオ・ミキサー」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)& 佐藤翔太(Media Integration)
・13時50分〜 「イマーシブ制作に革命をSONY 360 VME 〜スピーカーがなくても始められる高品位イマーシブ環境〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・14時30分〜 「Waves eMotion LV1ミキサーで実演、ライブサウンドで必ず役立つWavesプラグインの使い方」
講師:出原 亮 氏(福山 Cable)
・15時10分〜 「進化を続けるPro Tools + ATMOS&RX 〜今後の必須ツールAtmos&RXが統合!その全貌に迫る〜」
講師:ダニエル・ラヴェル 氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト マネージャー)
・15時50分〜 「360 Reality Audioがもたらす音楽の拡張性!/ 360 WalkMix Creator™」
講師:高田 英男 氏(株式会社ミキサーズラボ 、日本音楽スタジオ協会会長)
・16時30分〜 「次世代放送規格MPEG-Hの持つ魅力 〜キーワードはイマーシブとインタラクティブ、次の音声制作はどうなるのか〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
ROCK ON PRO / MIブース セミナー情報 16日(木)
日時:2023年11月16日(木)11:10 〜 17:00
場所:プロオーディオ部門 ホール 1 小間番号 1610 セミナーゾーン
・11時10分〜 「イマーシブ制作に革命をSONY 360 VME 〜スピーカーがなくても始められる高品位イマーシブ環境〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・11時50分〜 「Waves Cloud MX & Dante Connect:世界初クラウドベースのオーディオ・ミキサー」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)& 佐藤翔太(Media Integration)
・13時10分〜 「進化を続けるPro Tools + ATMOS&RX 〜今後の必須ツールAtmos&RXが統合!その全貌に迫る〜」
講師:ダニエル・ラヴェル氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト マネージャー)
・13時50分〜 「不可能を可能にするOmnibus/Injectの活用方法 Audiomovers」
講師:Mirek Stiles 氏(Abbey Road Studios) & Igor Maxymenko 氏 (Audiomovers co-founder)
・14時30分〜 「Nugen Audio新製品2種、ラウドネスメーターの超定番VisLM 3の進化と、比較試聴ツールAB Assist 2の機能紹介」
講師:山口哲(Media Integration)
・15時10分〜 「iZotope Ozone 11 Preview」
講師:青木征洋(作編曲家/ギタリスト/エンジニア)
・15時50分〜 「Abbey Road 核心の歴史」
講師:Mirek Stiles 氏(Abbey Road Studios) & Igor Maxymenko 氏(Audiomovers co-founder)
・16時30分〜 「360 Reality Audioがもたらす音楽の拡張性!/ 360 WalkMix Creator™」
講師:高田 英男 氏(株式会社ミキサーズラボ 、日本音楽スタジオ協会会長)
ROCK ON PRO / MIブース セミナー情報 17日(金)
日時:2023年11月17日(金)11:10 〜 17:00
場所:プロオーディオ部門 ホール 1 小間番号 1610 セミナーゾーン
・11時10分〜 「Nugen Audio新製品2種、ラウドネスメーターの超定番VisLM 3の進化と、比較試聴ツールAB Assist 2の機能紹介」
講師:山口哲(Media Integration)
・11時50分〜 「音楽制作もPro Tools + Sketch 〜携帯デバイスで作曲、そのままセッションファイルへ展開〜」
講師:小笠原 一恵 氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト)
・13時10分〜 「イマーシブ制作に革命をSONY 360 VME 〜スピーカーがなくても始められる高品位イマーシブ環境〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・13時50分〜 「テクノロジーが導くエンジニアリングの未来 Audiomovers」
講師:Jonathan Wyner 氏(マスタリングエンジニア) & Igor Maxymenko 氏(Audiomovers)
・14時30分〜 「360 Reality Audioがもたらす音楽の拡張性!/ 360 WalkMix Creator™」
講師:高田英男 氏(株式会社ミキサーズラボ、日本音楽スタジオ協会会長)
・15時10分〜 「次世代放送規格MPEG-Hの持つ魅力 〜キーワードはイマーシブとインタラクティブ、次の音声制作はどうなるのか〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・15時50分〜 「Waves eMotion LV1ミキサーで実演、ライブサウンドで必ず役立つWavesプラグインの使い方」
講師:出原 亮 氏(福山 Cable)
・16時30分〜 「Waves Cloud MX & Dante Connect:世界初クラウドベースのオーディオ・ミキサー」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)& 佐藤翔太(Media Integration)
コンファレンス出演情報
さらに、InterBEE会期2日目となる11/16(木)のInterBEE Forum 特別講演に弊社プロダクトスペシャリストの前田洋介が今年も出演いたします。「海外製品におけるAIや機械学習の動向」をはじめ、「機械学習を使った新しい音楽生成、Deep Learningを用いたドラム音生成と音楽解析技術の紹介」、「楽曲制作や楽器演奏をサポートする編曲・楽譜AIの研究事例」など、制作業界のこれからを考える上で要注目の内容となっています。ぜひ来場者登録の上、国際会議場201会議室へとお越しください!
【タイトル】[INTER BEE FORUM 特別講演] 『AI・機械学習が創り出す新しい音と音楽』
【日時】 2023年11月16日(木) 14:30-16:00
【場所】 幕張メッセ国際会議場 2F 201会議室
【テーマ】
・海外製品におけるAIや機械学習の動向
・機械学習を使った新しい音楽生成、Deep Learningを用いたドラム音生成と音楽解析技術の紹介
・楽曲制作や楽器演奏をサポートする編曲・楽譜AIの研究事例
12/15(金)までアーカイブ配信中
配信ページ:https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2373
※コンファレンスを聴講するには来場登録(無料)及びログインが必要です。
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
Sales
2023/10/26
【在庫限り】限定10台!Apogee Symphony I/O MKII 特価のご案内
デジタル・レコーディング黎明期からクオリティの高さに定評のあるApogge Electronics。同社のフラッグシップI/OであるSymphony I/O MK IIはその高いクオリティだけでなく、様々なホストへの接続と豊富なI/Oのカスタマイズによってあらゆる現場のニーズに柔軟に対応できる仕様が高い評価を得ています。
このSymphony I/O MK IIから、DigiLinkポートを搭載したモデルである「Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis」を10台限定の特価で販売いたします!
以下のI/O構成の中からお好きなものをお選びいただき、ROCK ON PROまでお問い合わせください。
8x8x8 I/O w/8xマイクプリ
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
・Slot 2: なし
通常価格:¥814,000(本体価格:¥740,000)
限定特価:¥651,200(本体価格:¥592,000)
16x16x16 I/O w/16xマイクプリ
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
・Slot 2: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
通常価格:¥1,155,000(本体価格:¥1,050,000)
限定特価:¥1,039,500(本体価格:¥945,000)
8x8x8 I/O w/8xマイクプリ + 16x16アナログI/O
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
・Slot 2: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
通常価格:¥1,243,000(本体価格:¥1,130,000)
限定特価:¥1,056,550(本体価格:¥960,500)
16x16アナログI/O
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
・Slot 2: なし
通常価格:¥902,000(本体価格:¥820,000)
限定特価:¥721,600(本体価格:¥656,000)
32x32アナログI/O
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
・Slot 2: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
通常価格:¥1,331,000(本体価格:¥1,210,000)
限定特価:¥1,131,350(本体価格:¥1,028,500)
2023年春にはI/Oカードがブラッシュアップされ、さらにサウンドクオリティを増したSymphony I/O。Dolby Atmosを始めとしたイマーシブ制作にも十分なI/Oを搭載でき、システムの中核を担えるパワフルなI/Fです。詳細なお見積もり・納期のお問合せはROCK ON PROまでお問い合わせください!
その他、システム設計、スタジオ構築やデモのご相談も随時お待ちしております。
NEWS
2023/10/24
SCFEDイベのスタジオ探報記 第5回 ワーナーミュージック・マスタリング / RockoN Webサイトにて公開中!
憧れのスタジオを訪問してスタジオの魅力、ハイエンド機材やビンテージ機材の魅力、そして“スタジオで生まれる特別なマジック”の正体について解き明かすインタビューシリーズ「SCFEDイベのスタジオ探報記」。第5回にして初のマスタリングスタジオ、「ワーナーミュージック・マスタリング」にスタジオ探報しております!
『SCFEDイベのスタジオ探訪記 第5回:ワーナーミュージック・マスタリング』 >>>>記事本編はコチラ
Sales
2023/10/16
【1枚無料】GRACE design m908の購入でオプションカードが付いてくる期間限定キャンペーンが開催中!
10月16日から11月末日までにGRACE design m908 モニターコントローラーをお買い上げの方に、 もれなくm908オプションカード1枚をプレゼントする期間限定キャンペーンが開催されました!
GRACE design m908は、ステレオからサラウンド、Dolby Atmosや360 Reality Audioといった最大24chまでのイマーシブオーディオフォーマットに対応するモニターコントローラーとして、国内外のプロフェッショナルスタジオで採用されています。
標準では、AES3、TOSLINK、S/PDIF、ADATといった合計68chのデジタル入力、16chのバランスアナログ出力と、24chのデジタル出力を搭載していますが、オプションカードによる拡張でADの増設やDante, DigiLink, Ravenna/AES67といった今や大規模システムには欠かせない入出力の追加が可能! スタジオの用途に合わせたカスタムと、様々な入力ソース、モニタ環境を瞬時に切り替えられる利便性が好評のモニターコントローラーです。
そんなm908を今購入された方全員に、お好きなオプションカードを1枚プレゼントするキャンペーンとなっています!1枚税込149,600円のオプションカードが無料でついてくる、m908を導入する絶好の機会をお見逃しなく!
GRACE design / m908
販売価格:¥1,507,000 (本体価格:¥1,370,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
キャンペーン詳細
内容:期間中にGRACE design m908 サラウンド/イマーシブ・モニターコントローラーをお買い上げいただくと、お好きなm908オプションカードを1枚無料で差し上げます。
期間:2023年10月16日~2023年11月末日
プレゼント対象オプションカード:
・8ch AD Option
・Dante Option
・Digilink Option
・Ravenna Option (各種販売価格 ¥149,600)
キャンペーン詳細:https://umbrella-company.jp/contents/grace-design-m908-optioncard-promotion/
m908は特にイマーシブ対応スタジオなど大規模なシステムで活躍するプロフェッショナル・モニターコントローラーです。導入やシステム構築のご相談はROCK ON PROにお任せください!
ROCK ON PROのm908導入事例もぜひご参考に!
https://pro.miroc.co.jp/works/imagicatakeeshiba-proceed2022/
https://pro.miroc.co.jp/works/avexr-studio-proceed2022-23/
https://pro.miroc.co.jp/works/imagica-sdi-studio-proceed2020/
Sales
2023/10/16
バウンス清水の!皆さんの夢を実現するAVID目的別ソリューション!
Rock oNでは皆さんの夢を実現するAVIDのソリューションを多数ご用意しています!また高額お見積りでも安心の18回無金利や24回超低金利もご利用可能です。ぜひRock oNスペシャリストにご相談ください!
◎16ch ノーレイテンシーレコーディングセット
■構成製品
・Pro Tools | Carbon
・Pro Tools | Carbon Pre
・[AVB-TB] Thunderbolt AVB GE Adapter for Macs
■こんな方にオススメ!
スタジオみたいにPro Tools でレイテンシーなくレコーディングしたい!
■ここがポイント!
Carbon Preで拡張することにより16chマイクプリつきのレコーディングシステムが構築可能!
HDXシステムを組むより安く、Pro Tools ノーレーテンシーレコーディングシステムをGETできる!
■これが出来るようになる!
スタジオの様に録音したいけどHDXシステムは高くて導入するのが難しい、そんなあなたもCarbon とCarbon Preでスタジオと同等レベルの16chのレコーディングができます!
このシステムでドラムレコーディングシステムが個人で持てる!!
◎イマーシブオーディオミキシングセット
■セット① 構成製品
・MTRX Studio
・Dante Virtual Soundcard
・DB25-XLRM DigiSnake 4’ x2
■セット② 構成製品
・MTRX
・DA8 x2
・Pro Tools | MTRX 64 channel IP Audio Dante Module
・Dante Virtual Soundcard
・DB25-XLRM DigiSnake 4’ x2
■こんな方にオススメ!
Dolby Atmos、360 Reality Audioなどのイマーシブオーディオミキシングをスピーカーで始めようとしている方。
■ここがポイント!
スピーカーへの多Ch OUT、モニターコントローラーが同時に手に入るMTRX STUDIO / MTRXでストレスなくミキシング環境をシステムアップ!HDXを使わず、Dante Virtual Soundcardを使いDanteでルーティングすることによってコストを大幅ダウン!
■これが出来るようになる!
マルチチャンネルのスピーカーを扱う場合、モニターコントロールとキャリブレーションをどこでするかが課題になります。MTRXシリーズなら1台で全てができるので、ストレスフリー!
◎Next Level from HD I/Oセット
■構成製品
・MTRX
・AD8 x2
・DA8 x2
・Pro Tools Ultimate Perpetual Annual Electronic Code – UPGRADE
■こんな方にオススメ!
現在 HD I/Oを使用している方、以前よりお安くMTRXに乗り換えできる!!
■ここがポイント!
16 in/16outのMTRXへHD I/Oから以前よりお安く更新できる!Pro Tools のVerも新しくして心機一転!!
■これが出来るようになる!
拡張性と高密度新世代サウンドこそMTRXの醍醐味!HD I/Oは過去の時代のI/Oと言えるかもしれません。令和を生き抜くサウンドはMTRX以上が必要でしょう!今こそ乗り換えのファイナルチャンスです!
◎スタジオパーフェクトセット
■構成製品
・Pro Tools HDX Core with Pro Tools | Ultimate Perpetual License NEW
・iLok 3
・MTRX II
・AD8 x2
・DA8 x2
■こんな方にオススメ!
新規でPro Tools HDXシステムを導入したい方。新設スタジオを作る予定の方。
■ここがポイント!
HDXシステムが初めての方でもRock oNならモジュールインストール作業のアシストなど不安要素を解消できます!
■これが出来るようになる!
なんと言ってもノーレーテンシーレコーディング!商業スタジオはやはりHDXシステムの導入がベストでしょう!発売したばかりのフラッグシップI/Oと組み合わせて、他と差をつけよう!
Rock oN 来店予約はこちら
NEWS
2023/09/26
Rock oN 渋谷店にて360VME測定デモを開始!
今年7月に弊社MIL Studioにて測定サービスの運営を開始し、既に体験された方々からは驚きの声をいただいているSONY 360 Virtual Mixing Environment(360VME)。今までもMIL Studioでの体験会は開催してきましたが、この度Rock oN Company 渋谷店で測定デモのご案内を開始します!
今までの体験会には参加できなかった方も、Rock oN渋谷ならいつでも体験・案内が可能になります。気に入っていただければ、その場でMILでの測定サービス購入も大歓迎!またRock oN渋谷ならではのデモとして、店頭にある様々な種類のヘッドフォンによる比較なども対応可能。VME対応ヘッドフォン以外ではどれほどの精度なの?という疑問をお持ちの方も是非一度お越しください。
測定デモは、Rock oN渋谷リファレンスルームにてご体験いただけます。レコーディングスタジオクオリティでの視聴を可能とするため株式会社SONAによる音響調整を行なった、Focal CI 100 ICWをサラウンド4本、トップ4本常設の7.1.4ch Dolby Atmos環境です。
※ 店頭での測定デモは予約制とさせていただきます。
ご希望の方はRock oN Company 渋谷店 03-3477-1756 まで、お気軽にご連絡ください。
◎ Rock oN Company 渋谷
営業時間:12:00-19:00(日曜 臨時定休)
住所:〒150-0041 東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツ1F
TEL:03-3477-1756
360VME測定に関するお問い合わせや、イマーシブ制作環境のご相談などはROCK ON PROまで!
https://pro.miroc.co.jp/2023/07/13/360vme-launch/
https://pro.miroc.co.jp/solution/360vme-proceed2023/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sony_360-vme_report/