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dolby atmosの検索結果(196件)
NEWS
2024/03/08
Pro Tools 2024.3 リリース!Dolby AtmosやMIDI関連機能が強化
Pro Tools 2024.3がリリースされました。Pro ToolsとSibelius間のMIDIコピー&ペーストやMIDIプラグインなどの音楽制作に関連する機能の強化のほか、Dolby Atmosのリレンダリングにカスタム・リレンダリング・オプションが追加されるなど、作曲/ポストプロダクションの両面で作業効率を大幅に改善する充実したアップデートが図られています。
有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.3をダウンロードして使用することが可能です。
Pro Tools 2024.3新機能の詳細についてはこちら(Avidブログ日本語)>>
MacOS 14.3 SONOMA サポートと既知の不具合
Pro Tools 2024.3はmacOS 14.3に対応していますが、テスト中にいくつかの不具合が確認されています。macOS 14.3 SONOMAでPro Toolsを使用することを検討中の方は事前に必ず下記リンク先の内容をご確認ください。
Pro Tools の macOS 14.x Sonoma 対応状況 (既知の不具合) - Avid Knowledge Base
ビデオ・エンジン無効の維持
ビデオを含むセッションを開くときでもビデオ・エンジンを有効にする必要がなくなりました。作業時にビデオを表示する必要がない場合に、そのリソースを節約できます。
Dolby Atmos カスタム・ライブ・リレンダリング
Pro Tools 2023.12で実装されたPro Tools内部Dolby Atmos Rendererに「カスタム・ライブ・リレンダリング」機能が追加され、Pro Tools 2024.3では、バイノーラル、2.0、5.1、7.1、5.1.2、5.1.4、7.1.4 (Pro Tools StudioおよびUltimate)、9.1.6 (Ultimate) のカスタム・ライブ・リレンダリングが可能になりました。これにより、あらかじめ遅延補正がかかった状態、さまざまなプラグインを使用した状態でリレンダリングをおこなう際の柔軟性が大幅に向上しています。
その他、Dolby Atmos関連では以下の機能強化がおこなわれています。
カスタム・ベッド・サブパス:Dolby Atmosタブのベッドにカスタム・サブパスを追加できるようになり、Dolby Atmosを利用した以前のPro Toolsセッションとの柔軟性と互換性が向上
追加のADMメタデータ:WAV ADM BWF ファイルに関する追加情報を、セッションデータのインポート・ウィンドウで表示
ADMインポートの簡素化:WAV ADM BWFファイルをインポートする際に、互換性のあるパスを再利用するようになり、必要な I/O設定構成の量が減少
Dolby Atmos Rendererウィンドウのローカライズ
MIDIプラグイン
MIDIトラックにインサートすることで、アルペジエイターやピッチシフターをプラグインチェインと同じように扱うことが可能になりました。これまで、複数のMIDIトラックを使用して複雑なルーティングを組む必要があったMIDI関連のワークフローを一気に改善する画期的な機能と言えるでしょう。
MIDIプラグイン、MIDIチェインのコンセプトについては、こちらのAvidブログに詳細が記載されています。
Pro Tools - Sibelius間でのMIDIコピー&ペースト機能
こちらもワークフローを大幅に改善する機能追加!Pro ToolsとSibeliusの間でMIDIデータをコピー&ペーストできるようになりました。Pro Toolsで制作した楽曲からスコアやパート譜を作成したり、Sibeliusで書いたパッセージをPro Tools上で確認しながらブラッシュアップしていくような作業を効率的におこなうことができるようになりました。
この機能の詳細はこちらのAvidブログで確認できます。
Sketch関連アップデート
Pro Tools内部で、Sketchウィンドウと編集ウィンドウ間でのドロップ&ドロップ機能がより充実しました。Sketch iPadアプリではコンテンツの増加やカウントオフ機能の追加などがおこなわれています。
ARAタブ、クリップエフェクトタブの独立表示
Pro Toolsウィンドウ下部に表示される、MelodyneのARAタブ、および、クリップエフェクトタブを独立して表示できるようになりました。ウィンドウの大きさを調整することも可能です。
新機能が追加されても、それを実行するために手間がかかってしまっては本末転倒。今回のアップデートはワークフローを大幅にスピードアップできる充実したものと言えるのではないでしょうか。
Pro Toolsのアップデートに関するお問い合わせをはじめ、HDXシステム構築やスタジオ設計についてのご相談はROCK ON PROまでお気軽にご連絡ください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-expiration/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-pro-tools-studio/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2023-12-support-resource/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-perpetual-new-license-get-revival/
Event
2024/02/08
UVERworld、”男祭り”ライブ映画がDolby Atmosで期間限定上映!
2023年7月30日に日産スタジアムにて開催された「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」。72000人の観客と共に作り上げたこのライブの映像作品が2024年2月9日(金)より期間限定にて全国劇場公開、3月6日(水)にBlu-ray & DVDにてリリースされる。
2011年に滋賀のライブハウスB-FLATでファンクラブの男性会員230人からスタートしたUVERworld名物の男性客限定ライブ“男祭り”。その後年々開催規模は拡大し、2019年に開催された東京ドーム公演「KING’S PARADE 男祭り FINAL at Tokyo Dome」では45000人を動員して一度は幕を閉じた企画であったが、コロナ禍を経て昨年7月に堂々の復活を遂げたのが本作に収録される公演だ。
その本作について、Dolby Atmos Mixのチェックもここで行われたというWOWOW 試写室での試写会にご招待いただき、音響制作陣にインタビューさせていただいた。詳しい内容は、次号Proceed Magazineでレポートする予定だ。
Dolby Atmosで表現する熱狂のライブ
📷左から、八反田 亮太氏(VICTOR STUDIO レコーディングエンジニア)、戸田 佳宏氏(WOWOW 技術センター 制作技術ユニット エンジニア)
UVERworldの“男祭り"がDolby Atmosでライブ映像化されるのは2019年の東京ドーム公演に引き続き2度目。前作に引き続いて今作でも音響制作をVictor Studio 八反田亮太氏、WOWOW 戸田佳宏氏が手がけられている。
前回の経験を活かし、また異なる表現に挑んだという本作。バンドとオーディエンスの圧倒的な熱量を再現するために、200ch近くに及ぶ収録や、このライブならではのオーディエンスが特徴的なミキシングについて伺うことができた。他のライブでは体感できない"男祭り"の空気が追体験できる作品となっている本作。是非劇場でご鑑賞いただいた上で、次号Proceed Magazineのレポートをお楽しみに。
現時点で発表されている情報では、本作をDolby Atmosで鑑賞できるのは今回の劇場公開時のみとなっている。見逃すことなく、全国のDolby Atmos対応シアターでこの熱狂をご体験いただきたい。
作品情報
「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」
2024年2月9日(金)より期間限定公開
※期間については各劇場にお問い合わせ下さい。
出演 :UVERworld
製作 :Sony Music Labels Inc.
配給 :WOWOW
特設サイト: https://uverworld-kingsparade2023-movie.com/
©Sony Music Labels Inc.
Event
2024/01/12
福山雅治”初”のライブフィルムにおけるDolby Atmos制作の取り組み 〜ライブを超えたライブ体験を作るために〜
福山雅治によるライブ映画『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』が、2024年1月12日(金)からのDolby Cinema他先行上映を皮切りに全国上映される。公開に先立ち、1月9日に特別上映会と音響制作陣によるトークセッションが行われた。会場はDolby Cinema環境を備えるIMAGICAエンタテインメントメディアサービス 第2試写室。詳細は次号のProceed Magazineで掲載する予定だが、ひと足早く本作における実験的なDolby Atmos制作のポイントについてお伝えしたい。
監督・福山雅治による”理想のライブ”体験を作る
本作は、2023年夏に開催された福山雅治の武道館公演の様子を、福山自らが監督を務めて映画化した作品だ。映像面では、ドローン撮影を含めた40台以上のカメラによる全方位撮影が行われ、Dolby VisonによるHDR映像が採用された。そして音響面では、128chのライブ収録音源を元にした、Dolby Atmosによるイマーシブサウンドが採用されている。本作において監督・福山雅治が目指したものが、ライブの擬似体験ではなく”ライブを超えたライブ”体験、即ち「究極のライブの理想像」であったという。そして、その監督のリクエストに柔軟に応えるため結成されたのが、染谷 和孝氏、三浦 瑞生氏、嶋田 美穂氏による音響制作チームであった。
📷左から、染谷 和孝氏(株式会社ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー)、嶋田 美穂氏(株式会社ヒューマックスシネマ HAC事業部 リレコーディングミキサー マネジャー)、三浦 瑞生氏(株式会社ミキサーズラボ 代表取締役社長 レコーディング、ミキシングエンジニア)
トークセッションでは、ライブの再現ではない理想のライブ体験の創造のため、本作における数々の実験的な取り組みについて解説されていた。制作としては始めに長年福山雅治の作品に携わられている三浦氏によってステレオミックスが制作され、そのステムデータを元に、Dolby Cinemaでのライブ映画制作は3本目となる染谷氏、既に多くのイマーシブミックスやライブ作品を手がけられてきた嶋田氏によってDolby Atmos版の制作が行われていった。
チームで取り組むDolby Atmosライブ作品制作
大規模なDolby Atmos制作にはこういった複数人による分担作業や、濃密な打ち合わせが鍵であるという。それもそのはず、最終的に1TBを超えたという量の音源データをどうやり取りしていくかは、音楽制作と映画音響双方の理解が必要となる。また、ここまでのデータ量となったのは、イマーシブ特有のトラック数の多さの他に、あらゆる修正へ対応するための準備でもあったという。福山自身が武道館で感じているという天井から降ってくるかのようなオーディエンスや、スタジオ録音した音源の併用など、作品コンセプトである福山の脳内にある理想のライブを形にしていくための数多くの実験が、唯一無二のライブフィルムを完成させた。
ステレオとDolby Atmosで共通する作品イメージは共有されていたとのことだが、ステレオ環境とDolby Atmos環境では聴こえ方が変わるのもまた事実だという。特に、スピーカー数による空間解像度の違いから、ステレオではマスクされ聴こえない音がAtmosでは聴こえるケースや、その逆なども発生する。嶋田氏によると、なかでも影響してくるのが音源中のノイズ成分であったという。そのため、iZotope RXを用いたレストレーション作業には多くの時間を要し、イマーシブを意識してノイズを消しすぎず空気感を残す修正が行われた。
Dolby Atmosを意識したマイキングやDolby CinemaコンテンツをDolby Atmos Home環境で仕込む際の注意など、本作の更なる詳細な取り組みについては次号Proceed Magazineでお伝えする予定だ。
本編136分ぶっ通しで超濃密なライブ体験を味わえる本作。ステージ上の本人が監督したライブフィルムは、観客席からの景色や他のライブ映像とは異なる体験に仕上がっており、新たな表現へ挑戦する作り手の熱気を感じた。ファンの方はもちろんのこと、イマーシブ体験に興味のある多くの方にDolby Cinemaへ足を運んでいただきたい作品である。
作品情報
『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』
2024年1月12日(金)よりドルビーシネマ他にて先行上映
2024年1月19日(金)より全国ロードショー[4週限定]
監督:福山雅治
出演:福山雅治、柊木陽太
配給:松竹
製作:アミューズ
©︎2024 Amuse Inc.
公式サイト:fukuyamamasaharu-livefilm.com
Dolby AtmosはCinemaもHomeも、制作環境構築はROCK ON PROまでご相談ください!
NEWS
2023/12/19
Dolby Atmos Album Assembler v1.3 リリース情報
Dolby Atmos Album Assembler v1.3
Dolby Atmosでミックスされた楽曲やアルバムの仕上げを簡単に行うことができるツール、Dolby Atmos Album Assemblerの最新バージョンv1.3がリリースされました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13
v1.3の主な変更点
新機能/改善:
・ プロジェクトを開いたときに、見つからないオーディオファイルへの再リンク
・ タイムライン上に見つからないクリップを表示
・ ステレオリファレンスファイルのサンプルレート変換(サポートされているサンプルレートは44.1、48、88.2、96、176.4、192 kHzです。インポート時に、ファイルはプロジェクトのサンプルレートと32ビット深度に変換されます。)
・ Preferencesのサンプルレートセレクター(Preferencesウィンドウから、Assemblerプロジェクトのサンプルレートを設定可能)
・ LFEローパスフィルター
・ Dolby Atmosエコシステム(Dolby Atmos Renderer v5.2およびAlbum Assembler v1.3を含む)全体の新しいレンダリング処理により、空間コーディングのクラスタリング処理がレンダリング、モニタリング、ラウドネス信号チェーンから削除されました。クラスタリング処理は知覚上透明(=perceptually transparent)であったため、これによるレンダリングへの聴感上の違いは生じません。
これによる利点:
- リアルタイムのレンダリングとラウドネス測定におけるCPU負荷の軽減
- オフラインラウドネス測定の高速化
・ サイズ・メタデータのレンダリング処理が改善され、バイノーラルや小型スピーカーレイアウトへのレンダリング時に、サウンドの改善とラウドネス蓄積※の軽減を実現(※:音が過剰に重なり、聴感上の音量が上がること)
・ Dolby Atmosエコシステム全体におけるラウドネス測定の調整(すり合わせ)
・ Dolby Atmos Renderer v5.2をサポート
・ 5.1.4トリム・プログラム・レベル・メタデータのサポート(存在する場合)
・ 他のDolby Atmosコンテンツ作成ツールに合わせてUIコンポーネントを更新
修正された問題:
・ Renderer v5.2以降でステレオ・リファレンス・トラックをモニタリングする場合、モニタリング・チェインは本来のステレオをパススルーさせるため、すべてのバイノーラル処理をバイパスするようになりました。(GANYMEDE-1987)さらに、レンダラー側に"Stereo reference on"状態のステータスが表示されます。
・ コンテンツによっては、ラウドネスを複数回測定すると、それぞれの測定結果が±0.1だけ異なることがありました。これは、同じコンテンツをAlbum AssemblerとDolby Atmos Rendererで測定しても確認できました。これは起こりうる丸め誤差でした。(ganymede-1731)
・ 過去にラウドネス測定を保存したプロジェクトでラウドネス解析を行うとき、解析をキャンセルするとラウドネス設定がデフォルトにリセットされる問題を修正しました。(ganymede-2348)
・ Dolby Atmos Renderer v5.1 において、トリム、ダウンミックス、バイノーラル Renderer モードのメタデータ変更が、(タイムスタンプされたサンプル位置ではなく)約 1536 サンプル早く発生していました。このトランジションは、前のクリップの終わり、またはクリップ間の無音のギャップで発生していました。メタデータのトランジションが正しいサンプル位置で発生するようになったため、聞き取れるようになった可能性があります。(GANYMEDE-2338) および (GANYMEDE-1549)
リリースノート全文はこちら(原文):
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13/release-notes
システム要件
・ Dolby Atmos Renderer v5.2以上(別途購入が必要) ※必要なコンピュータおよびOSについては、レンダラーに同梱されているマニュアルを参照してください。
・ Dolby Atmos Renderer v5.2がサポートするMacOS VenturaまたはSonomaのバージョン
・ iLokアカウント(ライセンス認証用)
【参照】Dolby Atmos Renderer v5.2.0リリース情報:
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-2/
入手方法
・90日間体験版 (Dolby Customer サイトでサインアップ&サインイン後にDL可能です)
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13
・AVIDストアでライセンス購入
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-album-assembler
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
↓ぜひこちらの記事もあわせてご確認ください
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-2/
Support
2023/12/15
Dolby Atmos Renderer v5.2.0リリース情報 〜 レンダリング処理の改善 やMac Studio M2 Ultra / macOS 14.1.1に対応 〜
Dolby Atmos Renderer v5.2.0 がリリース レンダリング処理の変更による改善
Dolby Atmos Rendererの最新バージョンv5.2.0がリリースされました。今回のリリースではレンダリング処理の変更を伴いますので、アップデートをご検討される方は必ず本記事を最後までお読みください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520
v5.2.0の主な変更点
新機能/改善:
・ Dolby Atmosエコシステム(Dolby Atmos Renderer v5.2およびAlbum Assembler v1.3を含む)全体の新しいレンダリング処理により、空間コーディングのクラスタリング処理がレンダリング、モニタリング、ラウドネス信号チェーンから削除されました。クラスタリングの廃止は、クラスタリング・プロセスが知覚上透明(=perceptually transparent)であったため、レンダリングに聴感上の違いは生じません。
これによる利点:
- リアルタイムのレンダリングとラウドネス測定におけるCPU負荷の軽減
- オフラインでのラウドネス測定とADM BWF .wavファイル書き出しの高速化
・ サイズ・メタデータのレンダリング処理が改善され、バイノーラルや小型スピーカーレイアウトへのレンダリング時に、サウンドの改善とラウドネス蓄積※の軽減を実現(※:音が過剰に重なり、聴感上の音量が上がること)
・ Dolby Atmosエコシステム全体におけるラウドネス測定の調整(すり合わせ)
・ "Speaker calibration"ウィンドウのキーボードナビゲーションを改善
・ MP4エクスポートでハイフレームレートのビデオをエクスポート
・ "Trim and downmix"ウィンドウで、5.1.4仕様のトリムをサポート
・ Dolby Atmos Album Assembler v1.3をサポート
・ Album Assemblerがステレオのリファレンスファイルをモニターしているときにそのステータスを表示
・ Mac Studio 14,14 M2 Ultraに対応
・ macOS 14.1.1をサポート
修正された不具合:
・ 一部のコンテンツで、ラウドネスを複数回測定すると、それぞれの測定結果が+/- 0.1だけ異なることがありました。これは、Dolby Atmos Rendererで同じコンテンツを測定した場合にも見られます。これは起こりうる丸め誤差でした。(PRAU-4305)
・ 旧バージョンのレンダラーを開いているときに Windows に Dolby Atmos Renderer をインストールすると、インストール中に旧バージョンが開いたままになり、新規インストール完了後に不安定になることがありました。(PRAU-2681)
・ 5.1.2 マルチチャンネルインターリーブ形式のリレンダリングを書き出すとき、 WAVEEX ラベルが含まれていませんでした。(PRAU-5984)
完全に解消された不具合:
・ 空間コーディングエミュレーションとスナップメタデータが同時にアクティブな場合、ゾーンマスキングメタデータが無効になっていました。(PRAU-2653)
・ 空間コーディングエミュレーションがオフの状態でステレオ(2.0)で モニターすると、トリムとダウンミックスの設定が適用されていませんでした。(PRAU-3685)
リリースノート全文はこちら(原文):https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520/release-notes
注意:V5.2.0以降ではレンダリングの処理に一部変更があります。
今回発表のV5.2.0以降、空間コーディングのクラスタリング処理が排除されるとのことです。それにより、この移行期間中、新しいレンダリングプロセスと以前のプロセスでコンテンツを測定した場合、ラウドネス測定値がわずかに異なる可能性があることに注意が必要とのことです。この結果はコンテンツに大きく依存するため、Dolbyは全ユーザーへのDolby Atmos Renderer v5.2およびDolby Atmos Album Assembler v1.3へのアップデートを推奨しています。また各DAWに搭載されているネイティブレンダラーについても最新バージョンへのアップデートが推奨されるとの記載があります。(※動作テスト済みのマシン/OS/DAWとなっているかにつきまして、以下"システム要件"より必ずご確認をお願いします。)
重要:先日、2023.12でPro Toolsに統合レンダラーが内蔵されましたが、今回のDolby Atmos Renderer 5.2.0の動作確認済みDAWの対象となっているのは、現時点でPro Tols 2023.9までとなっておりますのでご注意ください。なお、現在AVIDへ問い合わせ中のため、新たな情報が入り次第、本ページへの記載を更新します。(2023.12.15現在)
現在、Dolby Atmosコンテンツ制作ツールでモニタリングとラウドネス測定の両方に使用されているレンダリングプロセスには、空間コーディングのクラスタリングプロセスが含まれています。Dolby Atmos Renderer v5.2、Dolby Atmos Album Assembler v1.3、および今後リリースされるパートナーのデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)から、モニタリングとラウドネスの両方のシグナル・チェーンからクラスタリングを取り除く最新のレンダリング・プロセスに移行します。この変更にはいくつかの利点があり、ラウドネス測定にも影響があります。
>> Dolby Atmos Renderer v5.2 is Now Available (原文)
https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-2-is-now-available?language=en_US
新しいレンダリングプロセスの詳細については、以下のリンクをクリックしてお読みください:
>>Dolby Atmos monitoring and loudness updates for content creators (原文)
https://dolby.my.salesforce.com/sfc/p/#700000009YuG/a/4u000000B3IM/yYycsBj3hEI8M.3T.tbv5L5gwKVPDcV7uwF2wcDdgQE
システム要件
動作テスト済みOS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 11.7.10~14.1.1、Windows 10 Pro* およびWindows 11 Pro* でご利用いただけます。
*1台のコンピュータでDAWからDolby Atmos Rendererにオーディオをルーティングするために必要なDolby Audio Bridgeは、macOSでのみ使用可能です。
Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
サポートされるセットアップについては、公式サイトにサインアップ後閲覧可能なドキュメントを参照してください。
動作テスト済みコンピュータ
・ MacBook Pro 18,21; M1 Max 32 GB RAM
・ MacBook Pro 14,6; M2 Max 32 GB RAM
・ MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB RAM
・ MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac mini 14,12; Apple M2 Pro, 16 GB RAM
・ Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM
・ Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Studio 13,1; M1 Max, 32 GB RAM
・ Mac Studio 14,14 M2 Ultra, 32 GB RAM
動作テスト済みDAW
レンダラーは、Dolby Atmosレンダラーと通信可能なDAW(またはその他のオーディオ録音/編集ソフトウェア)をサポートしています。
・ Avid Pro Tools Ultimate 2022.12~2023.9
・ DaVinci Resolve Studio 18
・ Steinberg Nuendo 12 and 13
・ Merging Pyramix 14 Premium (Windows)
Dolby Atmos Rendererは、Dolby Atmos Music Pannerプラグインを追加することで、macOS上の他のDAWでも使用できます。
詳細はMusic Pannerのドキュメントを参照してください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの"製品"(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2023/12/13
Pro Tools 2023.12リリース〜Dolby Atmos Rendererを内蔵!!
Pro Tools最新バージョンであるPro Tools 2023.12がリリースされました。年間サポートが有効な永続ライセンス、または、有効なサブスクリプションライセンスをお持ちのユーザー様は、Avid Accountから最新バージョンをダウンロードしてご使用いただけます。
Pro Tools 2023.12のもっとも大きなトピックは、待望のDolby Atmos Renderer機能の内蔵!ハードウェア・レンダラーやDolby Atmos Audio Bridgeを使用した外部アプリケーションとしてではなく、Pro Toolsの機能の一部としてDolby Atmosのレンダリングが可能になりました。
その他、このバージョンでは、Pro Tools Sketch機能の拡張、トラック・マーカー機能への追加、I/O設定並びにルーティングへのカラー・コーディング、H.264ビデオへのSame As Source(SAS)バウンス、Native Instruments Sシリーズ・コントローラー対応、その他があります。
詳細は以下のAvid公式WEBサイトも合わせてご覧ください。
Pro Tools 2023.12 新機能紹介
Pro Tools Dolby Atmos Renderer
Pro Tools Sketch 2023.12 新機能
主な新機能
統合型Dolby Atmos レンダラー
ついに、Pro Toolsに待望のDolby Atmos Renderer機能が搭載されました。I/O設定ウィンドウに新たに追加された「Dolby Atmos」タブで設定を行うことが可能です。
新たにサポートされるDolby Atmos内部レンダラーは、Pro Tools StudioとUltimateに含まれ、セットアップ、ミキシング、モニタリングが簡素化され、イマーシブ・ミキシング・ワークフローの効率を向上させます。内部レンダラー機能を搭載することで、Dolby AtmosミックスをPro Tools内でレンダリングおよびモニターできるようになりました。
従来通り、外部レンダラーとラウンドトリップして使用する事も可能ですので、ミキシング用途やワークフローによって使い分けることも可能な統合型Dolby Atmosレンダラー機能搭載のバージョンとして、Dolby Atmos素材の仕込みや作曲段階からファイナルミックスに至るまで、幅広い用途でご活用いただけます。
新しいウィンドウでは、Atmosミックスをさまざまな視点から包括的に視覚化し、マルチスピーカーとバイノーラルのヘッドフォンモニタリングをすばやく切り替えることができます。さらに、新しいI/Oセットアップタブでは、ベッド、オブジェクト、グループ、トリム、ダウンミックスの設定が簡素化され、セッションの一部として保存され、簡単に呼び出すことができます。
Pro Tools Studioでは最大7.1.2Bedまで、Pro Tools Ultimateでは最大9.1.6BedまでのDolby Atmosレンダリングが可能です。
また、リレンダー機能は5.1、バイノーラル、ステレオを使用可能。そして、従来のDolby Atmos Rendererと同様、ラウドネス計測については5.1リレンダリングされたソースを計測している点はご注意ください。
I/O設定並びにルーティングへのカラー・コーディング
I/O設定や内部バスへのルーティングを色分けすることができるようになりました。例えば、ボーカル用やドラム用などに分けて作成してあるリバーブ用のバスを色分けしておくことで、送りたいバスを直観的かつ瞬時に選択することができるようになります。
トラック・マーカー機能拡張
2023.6 リリースで導入されたトラックマーカー機能を使用すると、ユーザーはトラック内に詳細な色分けされたコメントを追加して、音楽とオーディオの両方のポストワークフローを改善できます。
2023.12 では、この機能をベースに、より多くのマーカー・ルーラーで視認性を高め、各ルーラーに特定の目的を持たせて、テキストを表示するスペースを増やすことができます。トラックマーカーは、改善された並べ替え機能とフィルタリングオプションにより、「メモリー・ロケーション」ウィンドウ内でも、より簡単に見つけることができるようになりました。
Pro Tools Sketch 機能強化
2023.12ソフトウェア・リリースでは、SketchとPro Toolsセッション間の新しい相互運用性が導入され、新しいオーディオ・エフェクトが追加され、MIDIワークフローの改善などが追加されています。
MIDIクリップをスケッチ・ウィンドウからPro Toolsのタイムラインにドラッグすると、さらに操作するためにMIDIとして保持するか、オーディオとしてレンダリングするかを選択できるようになりました。逆に、Pro ToolsからSketchウィンドウにオーディオ・クリップをドラッグする際に、処理されたサウンドを維持するために、シグナル・チェーン全体(プラグイン処理、Elastic Audio、クリップ・エフェクトなどを含む)をレンダリングするオプションが追加されました。
このリリースでは、Sketchでクリップを微調整する新しい方法を提供するフィルターゲートエフェクトも追加されています。最後に、デスクトップのメディア・ブラウザーの改善により、ループやサンプルへのアクセスが容易になります。SketchをPro Toolsセッションに直接埋め込むこともできるようになりました。
全Pro Toolsサブスクリプション新規が20%オフ!Avid年末プロモーション開催中!!
最新バージョンがリリースされたばかりのPro Tools。Artist、Studio、Ultimateの全サブスクリプション(アカデミック版を除く)が対象の年末プロモーションも開催中!
サブスクリプションは新規と更新に価格差がないので、「今すぐ最新バージョンを使いたい!」という方はぜひ本プロモーションのご利用をご検討ください。
Avid年末プロモーションの詳細はこちらの記事でご確認ください!
9938-31154-00 Pro Tools Artist Annual Paid Annually Subscription - NEW
通常価格:¥15,290(本体価格:¥13,900)
→年末プロモーション特価¥12,232(本体価格:¥11,120)
Rock oN Line eStoreで購入>>
9938-30001-50 Pro Tools Studio Annual Paid Annually Subscription Electronic Code - NEW
通常価格:¥46,090(本体価格:¥41,900)
→年末プロモーション特価¥36,872(本体価格:¥33,520)
Rock oN Line eStoreで購入>>
9938-30123-00 Pro Tools Ultimate Annual Paid Annually Subscription Electronic Code - NEW
通常価格:¥92,290(本体価格:¥83,900)
→年末プロモーション特価¥73,832(本体価格:¥67,120)
Rock oN Line eStoreで購入>>
オーディオ・ポストプロダクションのワークフローに大きなインパクトを与える機能が多数追加されたPro Tools 2023.12。導入、お見積のご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください。
ROCK ON PROでは、Pro Tools HDXシステムをはじめとしたスタジオシステム設計を承っております。スタジオの新設や機器の更新をご検討の方は、ぜひ一度弊社へご相談ください。
Review
2023/09/18
SOUNDTRIP 2023 / Apogee Studio / 製品開発現場におけるDolby Atmos環境
Apogee Electronics社が持つApogee Studio。本社に隣接するスタジオでのDolby Atmosへの取り組み、製品と連携して育まれるテクノロジー。アメリカでのDolby Atmosへの興味、関心などを含めてレポートしていきたい。Apogeeはデジタルレコーディングを牽引してきたレジェンドとも言えるメーカーであるが、改めてそのレコーディング業界における功績を振り返るところから始めていこう。
時代を作った銘機と隣接したスタジオ
1985年に3人の創業者により設立されたApogee。正式な会社名としてはApogee Electronics Corpである。3名の創業者のうちBetty Bennettは、現在も同社の社長を務めており、Bob Clearmountainの妻としての顔も持つ人物である。今はAudio Interfaceメーカーとして認知されているApogeeだが、そのルーツはDigital Filterにある。デジタルレコーディングの黎明期である1980年代に、当時新しいリスニングメディアであったCDのデジタル歪みなど、デジタルメディア特有の問題を解決する技術をリリースしている。Apogeeの924 / 944 Anti-Aliasing Filterは、瞬く間に評価を得てリリース翌年の1986年には業界標準のデジタル・マルチトラック・レコーダーであったSONY PCM-3324、その互換機を製作していたMitsubishiのオプションとして採用されている。このフィルターは「冷たい」「硬い」と言われていたデジタル音声を、アナログライクなサウンドにすることができる魔法のようなフィルターであった。
次にリリースしたのが、AD-500 / AD-1000。このAD/DAコンバーターではUV22と呼ばれる画期的なディザーを登場させる。UV22ディザーは、その名前を見ることは少なくなったもののYAMAHAを始め多くの3rd Partyメーカーが採用した技術だ。Digital Filter、そしてディザーと画期的な技術を発表するApogeeはデジタル・オーディオの持つ持病のようなデメリットを、次々と過去のものへとしていった。
そして1997年にはAD-8000をリリース。Pro Toolsでのレコーディングがスタジオに浸透し始めた時期に登場したこの8ch AD/DAは、サウンドにこだわるスタジオの代名詞ともなっていた。当時、アナログレコーディングにこだわるエンジニアもAD-8000であればデジタルでも大丈夫、とPro Toolsへの移行を加速させた機材のひとつ。その後、Master Clock GeneraterであるBig Ben、ホームレコーディングに向けたEnsemble、Duet、さらにはiOS対応のONE、JAM、Micなどとターゲットを明確にした製品をリリースしていく。
📷往年のApogee製品ラインナップ。リリースした製品数は少ないものの、すべてが歴史を彩る銘機と呼ばれるのもばかり。1990年代のデジタルレコーディングを支えたAD-500/1000/8000は時代を代表するサウンドを作ったもの。その伝統のサウンドは現行の製品にしっかりと受け継がれている。左下のプラグインのようにUV22は様々な他メーカーの製品でも採用されディザーの重要性を業界に知らしめたApogeeの技術を象徴する製品だ。
このようにApogeeの歴史を振り返ると、時代を作った銘機が揃っていることがわかる。確固たる技術、サウンドへのこだわり、イノベーションを持った製品をリリースするメーカーであり、今日のデジタルレコーディングのベースとなる技術はApogee由来のものが数多く存在する。そのベースには、本社に隣接するApogee studioの存在が大きく関わってくる。実際のレコーディングの現場が機材を開発しているオフィスの隣にある。しかもそのスタジオをメインで使用しているのはBob Clearmountain氏であり、そこからのフィードバックを得て製品開発、チューニングを行っているということを考えるとApogeeの製品クオリティーの高さにも納得がいく。また、一部のエントリーモデルを除き、プロシューマ向けの製品はすべて本社で生産しているというのもApogeeのこだわり。一部のブティック・ブランド、ガレージメーカー以外でMade in USAというのは今や貴重な存在だ。
メーカースタジオもイマーシブ対応へ
それでは、Apogee Studioの紹介に移りたい。本社の隣にあるApogee Studioは、Old Neveをメインコンソールに据えたレコーディングスタジオ。近年はライブパフォーマンスの配信なども行っているそうだ。このスタジオも7.1.4chのイマーシブ対応に改装がすでに行われていた。Old Neveのアナログコンソールに、7.1.4chのスピーカーセット。アンバランスに感じなくもないが、それだけイマーシブミックスの需要が高いということだろう。
📷Old NEVEのコンソールが据えられたApogee Studioのコントロールルーム。モニタースピーカーはNeumann KH310での7.1.4chとなる。もちろん、Audio InterfaceにはApogee Symophony mk2。Appleとの関係も深いApogeeらしく、Logic ProでのDolby Atmosミキシングのデモも見せていただいた。
スピーカーはすべてNeumann KH310で統一されている。1980年代〜1990年代にラージモニターとアナログコンソールでの作業を行ってきたエンジニアがNeumann KHシリーズを愛用しているケースが多いように感じるのは筆者だけだろうか?ラージモニターのような豊かなローエンドを持つこのシリーズ、特に3-wayのKH310がお気に入りだということだ。実際にそのサウンドも聴かせてもらったのだが、様々な機材が置かれたコントロールルームでのイマーシブ再生ということを考えると反射が多く理想的とは言えない環境ではあったが、Apogee Symphonyの持つストレートでトランジェントの良いサウンドとNeumann KH310の豊かなボリューム感により、直接音の成分が多く部屋の響きが持つ雑味をあまり感じることもなくイマーシブ再生を聴くことができた。部屋としてのアコースティックを大きく変えることは難しいが、このように機材のセレクトによりその影響を軽減できるということはひとつの大きな経験となった。
もちろん、イマーシブミキシングの際にNeveアナログコンソールの出番はない。このコンソールはステレオ仕様となるためモニターセクションとしての利用もできない。それでもレコーディングを行うということにおいて、誰もが憧れる素晴らしいサウンドを提供することに疑いの余地はないだろう。ミキシングルームを別に用意することが多いイマーシブのミキシングルーム。別記事でも紹介しているVllage Studioもイマーシブ・ミキシングのためのスタジオは、収録用の部屋とは別のAvid S6が設置された部屋である。
それでもイマーシブ対応を果たしている理由は、Apogee Studioが音楽制作のためのスタジオであるとともに、Apogeeの製品開発のための施設でもあるということにほかならない。単純に制作スタジオということであれば、合理的な判断の上で別にイマーシブ・ミキシングルームを作ることになるだろうが、Apogeeがイマーシブ制作の環境を持つということの意味として、Apogeeのプロダクトの使用感、機能のチェックなどにも利用するということになるからだ。
ここで使われているのはもちろん、Apogee Symphony mk2。そしてバージョンアップにより機能が追加されたイマーシブ対応のモニターセクション。そのテストヘッドとしてこの環境が活用されている。さらに、音質面であったり深い部分でのユーザー・エクスペリエンスを確認するために、このほかにも2部屋、合計3部屋のイマーシブミックス環境を整えている。部屋の大きさ、部屋の設備、接続される機材、音の環境、そういったことを様々なケースでテスト、検証のできる環境がここには揃っている。ユーザの目線での製品開発、使い勝手の検証、そういったことを即座にフィードバックできる環境を持っているということもApogeeならではと言えるのだろう。
アメリカ西海岸のサウンドの秘密
もうひとつ用意されたイマーシブ環境のスペースを見ていく。こちらはGenelec the ONEで7.1.4chを構築した部屋。アメリカのスタジオらしく、遮音、吸音といった日本のスタジオのような音響設計は入っていない。正面の角に設置されたベーストラップと調音パネルが数枚設置されているのみである。この部屋はミキシングルームとしての操作デスクをミニマムにしている。PC、Audio Interface、Displayがデザインされたひとつのデスクに収められ、これだけでミキシングのシステムが完成している。
この部屋でもそのサウンドを聴かせてもらった。部屋自体の響きはあるはずなのだが、締まった低域とダイレクトに耳へ届く中高域。吸音は最低限なのに濁りを感じることのないサウンドには驚いた。低域に関しては、やはり床の影響が大きいのではないかと想像している。日本のスタジオは、遮音のために浮床構造を用いて外部からの音の侵入を防いでいる。そのために、部屋自体がその名の通り宙に浮いているような状態となっている。音というのは振動であり、その振動を遮断するということが遮音ということになる。アメリカのスタジオはどこも床はコンクリート。平屋の建物が多いロサンゼルスということもあり、地面からそのままコンクリートを流し込んだ床になっているのだろう。日本であれば、湿気を抜くためにも床下には空間を設けるのが常識となっているが、乾燥したアメリカ西海岸ではその必要が少ないのかもしれない。この床の安定感、重厚さ、そういったものが低域のタイトな響き、アメリカ西海岸のサウンドの秘密なのかもしれないと感じたところだ。
Old Neveのミキサーが鎮座するスタジオとは全く方向性の異なるサウンドではあるが、やはりここもApoogee Symphonyのサウンド。使い勝手はもちろん、そのサウンドキャラクターを確認するのに、これだけ異なった環境で聴き比べを行うことができるというのは、サウンドチューニングにとっても大きな意味を持っているのだろう。
📷リビングルームのような、開放感のある部屋に設置されたGenelecでの7.1.4chのスピーカーシステム。デスクは最小限のスペースにPC本体を含めて設置できるように設計されたカスタムデスクが置かれていた。アコースティックチューニングは最低限。音を聴きながらのチューニングの結果がこのような形で結実している。
ユーザーの利用環境もシミュレート
📷iLoudで構築された7.1.4chのミキシングルーム。イマーシブ制作を行うミニマムなシステムにおいてApogeeの製品の使い勝手などを確認するためのシステムアップがなされている。
最後に、片付いていないので、とかなり遠慮されていたのだが、ホームスタジオであればどのような環境になるか?ということをシミュレーションするためのミキシングルームを見せてもらった。ここでは、iLoudのスピーカーで7.1.4chが構築されている。イマーシブミキシングを行う上で、ミニマムな環境でのテストケースを検証しているということだ。このように、ユーザーの利用環境をシミュレートしながら、実際に作業をしてみてどうなのかというケーススタディを積み重ねていることがよく分かる。そして、次の制作環境としてターゲットとしているのが、すべてイマーシブ環境だということは特筆すべきポイント。アメリカでのイマーシブ制作の盛り上がりを強く感じずにはいられない。実際のところ、Bob Clearmountain氏へ過去に自身がレコーディングをおこなったヒットソングのイマーシブミキシング依頼が殺到しているということだ。このような新しいフォーマットへのムーブメントが感じられるのは本当に素晴らしい。過去作品のイマーシブミキシングも素晴らしいことだが、新譜、特にイマーシブを前提に制作された楽曲の盛り上がりも楽しみにしたい。
Apogeeの歴史、イノベーション、テクノロジーといったベースから、ユーザー目線での製品開発、イマーシブ時代の到来を感じさせるApogee Studioの進化。そのようなものを感じ取っていただけたのではないだろうか。この場で伝えたいことが数多く内容も多岐に渡ったが、このようなメーカー開発の現場での事例からも、アメリカでのDolby Atmos、イマーシブサウンドへの期待感が滲み出ていることが感じられる。是非ともこの感覚を共有していただければ嬉しいかぎりだ。
*ProceedMagazine2023号より転載
Support
2023/07/21
Dolby Atmos Conversion Tool v2.1.2 リリース情報
Dolby Atmos マスターファイルの編集やサンプルレート変換を行うためのソフトウェア、Dolby Atmos Conversion Toolのv2.1.2がリリースされました。
◎Dolby Atmos Conversion Tool v2.1.2
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v210
Dolby Atmos Conversion Toolとは?
Dolby Atmos Conversion Tool(ドルビーアトモスコンバージョンツール)は、Dolby Atmosコンテンツをシネマやホームシアター用に変換するために使用することができます。
「.atmos」「BWAV」などへのファイル形式の変換や、マスターファイルの編集・結合、フレームレート変換などの処理が可能です。
2023.7.21 追記
今回リリースされたv2.1.2で以下の修正が行われました。
[Composition]ウィンドウで、スタートタイムまたはFFOAが1秒に満たない(= フレーム値が00でない)マスターをトリミングした後、変換結果のスタートタイムまたはFFOAがトリミング後の設定と一致しないことがある問題が修正されました。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v212/dolby-atmos-conversion-tool-v212-release-notes/new-in-version-212
◎Dolby Atmos Conversion Tool v2.1 新機能
・96kHz ADM BWFマスターファイルの編集、結合、変換
・"Maintain pitch and length"スイッチにより、ピッチを変えずにフレームレート変換
・サンプルベースのトリミングとパディング、マスターに書き込まれる5.1および5.1.xダウンミックスの設定を指定する "Command-line only"オプション
・SMPTE ST 377-41:2021 に規定される新 IAB IMF グループメタデータの追加
・macOS Ventura、Windows 11に対応
・Appleシリコンをサポート
・UIデザインシステム更新/新アプリケーションアイコン追加
・DCPのIABフォーマットラベルを"Cinema MXF"へ変更
New features include:
・Ability to edit, join, and convert 96 kHz ADM BWF master files
・Frame rate conversion without changing pitch via the Maintain pitch and length switch
・Command-line only options for sample-based trimming and padding, and specifying 5.1 and 5.1.x downmix settings written to the master
・New IAB IMF group metadata, as specified in SMPTE ST 377-41:2021
・Support for macOS Ventura and Windows 11
・Apple silicon support
・UI design system update / New application icon
・Changed DCP IAB format labels to Cinema MXF
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v210
システム要件
Dolby Atmos Conversion Tool v2.1.2は、これらのオペレーティングシステムでのみ使用することが許可されています:
・Linux (※Dolby Atmos Conversion Tool command-line applicationのみ):
- RedHat 7.3
- Ubuntu 16.04 LTS, 18.04 LTS, and 20.04 LTS
・Mac:
- macOS 10.13 〜 13.2.1 (Appleシリコンを含む)
・Windows:
- Windows 10 (64 bit)
- Windows 11 (64-bit)
◎入手方法
Dolby Atmos Conversionは、Dolby Customer Webサイトへサインアップ&サインイン後、ダウンロード可能です。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-conversion-tool-v210
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZEcva-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023-nestream/#.ZEcveezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.ZEcvg-zP0-Q
Support
2023/07/21
Dolby Atmos Renderer v5.1 リリース情報 〜 Production SuiteとMastering Suiteの機能が統合 〜
Dolby Atmos Renderer v5.1 がリリース 新機能が追加
今年3月、Dolby Atmos Production Suite および Mastering Suiteの機能を1つのアプリケーションとして統合し、v5.0として刷新されたDolby Atmos Renderer。新たにv5.1がリリースされ、ヘッドトラッキングデバイスのサポートなど新機能が追加されました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v510
v5.1の新機能
・ ヘッド・トラッキング・デバイスのサポート
・ Dolby Atmos Binaural Settingsプラグイン(v1.3)で2つのユーザープリセット
・ バイノーラルレンダリングモードの設定が、レンダラーを再起動しても保持
・ オブジェクトビューを最大化または最小化するための新しいビューメニューとキーボードショートカット
・ オブジェクトビューで移動するオブジェクトの解像度を向上
・ パーソン・ビューの頭部アイコンの定義を改善
・ ASIOデバイスのコントロールパネルアプリケーションへのアクセスが容易に(Windowsのみ)
・ Option + C(Mac)およびAlt + C(Windows)のキーボードショートカットで、すべてのクリップインジケータをクリア
・ 左右の矢印キーによるグラフィック・イコライザー・バンド間の移動
・ summary.txtファイルとtimeline.csvファイルのラウドネス測定値の小数点以下桁数を1桁に変更
ヘッドトラッキングデバイスのサポートについて
気になるヘッドトラッキングのサポートについてですが、OSC(OpenSound Control)の出力に対応したヘッドトラッキングデバイスを使用することで実現できるとのことです。後日、対応機種が判明したら追記いたします!
レンダラーでバイノーラルコンテンツを再生する際、ヘッドトラッキングデバイスを使って頭の動きをトラッキングすることができます。バイノーラル出力は、ヘッドトラッキングデバイスの位置に応じてレンダリングされます。これにより、仮想ルーム内においてthree degrees of freedom (※)でインタラクティブな操作ができるようになります。オブジェクトビュー内でパーソン・ビューが選択されると、ヘッドトラッキングデバイスの方向が視覚的に表現されます。
ヘッドフォン出力とバイノーラルレンダリングモードを有効にした状態で、レンダラーの環境設定でヘッドトラッキングを有効にし、ドルビーOSCヘッドトラッカードライバ(レンダラーに付属)またはヘッドトラッキングデバイスメーカーが提供するヘッドトラッキングドライバを使用できます。
※3DoF(three degrees of freedom) = X軸・Y軸・Z軸の動きの検出。頭の回転や傾きまでを感知可能。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v510/dolby-atmos-renderer-v51-release-notes/new-in-dolby-atmos-renderer-v51
ビュー・メニューとキーボードショートカット
オブジェクト・ビュー(仮想3D空間)を最大化または最小化し、オブジェクト・ビューの表示と表示オプションを変更するためのビュー・メニューおよびキーボード・ショートカットが新たに追加されました。
システム要件
動作テスト済みOS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 10.14.6~13.4、Windows 10 Pro*、Windows 11 Pro*で使用できます。
*1台のコンピュータでDAWからDolby Atmos Rendererにオーディオをルーティングするために必要なDolby Audio Bridgeは、macOSでのみ使用可能です。
Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
サポートされるセットアップについては、公式サイトにサインアップ後閲覧可能なドキュメントを参照してください。
動作テスト済みコンピュータ
・ MacBook Pro 18,21; M1 Max 32 GB
・ MacBook Pro 14,6; M2 Max 32 GB
・ MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB RAM
・ MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac mini 14,12; Apple M2 Pro, 16 GB RAM
・ Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM
・ Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Studio 13,1; M1 Max, 32 GB RAM
動作テスト済みDAW
レンダラーは、Dolby Atmosレンダラーと通信可能なDAW(またはその他のオーディオ録音/編集ソフトウェア)をサポートしています。
・ Avid Pro Tools Ultimate 2021.12~2023.6
・ DaVinci Resolve Studio 18
・ Steinberg Nuendo 12
Dolby Atmos Rendererは、Dolby Atmos Music Pannerプラグインを追加することで、macOS上の他のDAWでも使用できます。
詳細はMusic Pannerのドキュメントを参照してください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v510
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの"製品"(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2023/07/06
Proceed Magazine 2023 販売開始! 特集:360 Reality Audio / Dolby Atmos
Proceed Magazine 2023号が発刊です!ふたたび世界が動き出す。そんな実感が生まれてきているいま、Proceed Magazineでは制作シーンでも世界各所で起きはじめているイノベーションの最前線を捉えます!アメリカ西海岸からはNAMM Show / NABSHOWでの新製品はもちろんのこと、Village Studio、mediaHYPERIUM、GOLD-DIGGERS、Apogee Studioといった著名スタジオのレポートを紹介、イマーシブサウンド制作においては360 Reality Audio / Dolby Atmosについて海外スタジオの動向やそのベーシックとなる基礎知識も交えてお伝えするほか、立体音響スタジオの環境をヘッドホンで再現する注目の新サービスソニー 360 VME(Virtual Mixing Environment)を詳細に解説。また、巻頭インタビューにはグラミー賞を獲得した宅見 将典 氏が登場、音楽との携わりから受賞に至るまでをセルフプロデュースという視点でお話いただきました。そして、ROCK ON PRO導入事例ではコジマプロダクションの新スタジオをご紹介です!制作に幅広い視野をもたらすトピックを満載したProceed Magazine、2023年の制作をリードする情報を満載してお届けします!
Proceed Magazine 2023 特集:360 Reality Audio / Dolby Atmos
360 Reality Audio、Dolby Atmos、ほんの数年前までは少し先にある未来のものと捉えられていたこの2つのキーワードが、2023年いよいよサウンド制作のブレイクスルーを成し遂げそうです。
イマーシブの分野はコンシューマレベルまで認知が進み、そのソリューションやプロダクトが現実のものとなっています。それに呼応するように制作の現場でも実際のコンテンツ制作によるノウハウの蓄積が進み、どのようにこのキーワードを軸にサウンドを発展させていくのか研鑽が重ねられています。
今回のProceed Magazineではこちらのキーワードのいま、その最前線を世界各地で捉え、新たなクリエイティブのワークスタイルを生み出すトピックの数々を見ていきます。さあ、ご一緒に!
Proceed Magazine 2023
全152ページ
定価:500円(本体価格455円)
発行:株式会社メディア・インテグレーション
◎SAMPLE (画像クリックで拡大表示)
◎Contents
★People of Sound
宅見 将典 氏インタビュー
★SoundTrip / Los Angeles & Las Vegas
Village Studios / GPU Audio / MTRX ll
NAMM Show / NABSHOW
★360 Reality Audio / Dolby Atmos
media HYPERIUM / イマーシブフォーマットの基礎知識
360 Virtual Mixing Environment / GOLD-DIGGERS / Apogee Studio
★Product Inside
TAOC / ONKIO Acoustics
★ROCK ON PRO導入事例
株式会社コジマプロダクション
★ROCK ON PRO Technology
TOHOスタジオ株式会社 / PixMixで深まるラウンドトリップ
しまもんの、だってわかんないんだモン!!
★Build Up Your Studio
パーソナル・スタジオ設計の音響学 その27
特別編 音響設計実践道場 〜第八回 データ整理編 その1〜
★Power of Music
TOONTRACK EZ KEYS 2 / Waves Studio Verse
Hana Hope 「HUES」ROTH BART BARON 三船雅也
★BrandNew
Positive Grid / Prism Sound / SONY / NTP Technology
Focal / Zoom / audio-technica / Roland
LEWITT / Gamechanger Audio / RME
Universal Audio / Yamaha
★FUN FUN FUN
SCFEDイベのイケイケゴーゴー探報記〜! Altphonic Studio
ライブミュージックの神髄
◎Proceed Magazineバックナンバーも好評販売中!
Proceed Magazine 2022-2023
Proceed Magazine 2022
Proceed Magazine 2021-2022
Proceed Magazine 2021
Proceed Magazine 2020-2021
Proceed Magazine 2020
Proceed Magazine 2019-2020
Proceed Magazineへの広告掲載依頼や、内容に関するお問い合わせ、ご意見・ご感想などございましたら、下記コンタクトフォームよりご送信ください。
NEWS
2023/04/07
Dolby Atmos再生対応の配信サービス NeSTREAM LiveにてAvid Creative Summit 2023のアーカイブが公開中!
Dolby Atmos形式のコンテンツ再生に対応した配信サービス 「NeSTREAM Live」にて、先日弊社にて開催いたしましたAvid Creative Summit 2023 の配信アーカイブが公開されています。
ご視聴にはスマートフォンやApple TV 、 Fire TVにNeSTREAM LIVEのアプリをインストールする必要があります。
すでにNeSTREAM Liveアプリをインストールされている方は、下記項目3記載のリンク先ページより、各セミナーのQRコードを読み込みください。
NeSTREAM Liveを使用したDolby Atmos 配信アーカイブのご視聴方法
1.視聴環境を下記から選びクリックしてください。各ページを参考の上、準備をお願いします。
・ iPhoneの方 https://nestreamlive.radius.co.jp/dolby/#anc1
・ Androidの方 https://nestreamlive.radius.co.jp/dolby/#anc2
・ Apple TV、Fire TVを使ってTVで視聴する方 https://nestreamlive.radius.co.jp/dolby/#anc3
2. それぞれの環境にNeSTREAM LIVEのアプリをインストールしてください。
※AppleTV、FireTVはそれぞれのアプリストアで「NeSTREAM LIVE」と検索してインストールしてください。
3.アプリインストール後は下記リンク先ページのQRコードを読み込むことで各セミナーをご視聴いただけます。
AVID CREATIVE SUMMIT 2023 セミナー Dolby Atmos音声配信
アーカイブ配信 : 2K映像 + Dolby Atmos
◎ACSUセミナー配信のご視聴はこちら:https://nestreamlive.radius.co.jp/special/sp_event12/
◎パソコン音楽クラブ スペシャルライブのご視聴はこちら:https://nestreamlive.radius.co.jp/special/sp_event13/
※アーカイブ配信は予告なく公開終了となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
・NeSTREAM LIVEアプリでDolby Atmos再生に対応している機器はこちら
※ Dolby Atmosに対応してないAndroid端末は無音または再生不可となります。ご了承ください。
・NeSTREAM LIVEに関するFAQはこちら
●NeSTREAM LIVE 配信視聴に関するお問い合わせ先
NeSTREAM LIVE カスタマーサポート窓口
営業時間:平日 10時~17時
電話番号:050-3528-6313
メール nestream_live@user-support.jp
公式サイト https://nestreamlive.radius.co.jp
You Tubeでのアーカイブ配信ご視聴方法
◎You Tubeでのアーカイブ配信のご視聴はこちら
※動画ウインドウ内右上の「再生リスト」をクリックすると公開中の全てのセミナーがご視聴いただけます。
Dolby Atmosをはじめとするイマーシブコンテンツの制作機材、スタジオ施工に関するご相談は導入実績豊富なROCK ON PROへご相談ください!
お問い合わせは下記コンタクトフォームよりご連絡お願いいたします。
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023/#.ZC_OtuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.ZC_OxuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZC_O1ezP0-Q
NEWS
2023/03/23
Dolby Atmos Renderer v5.0 リリース 〜 Production SuiteとMastering Suiteの機能が統合 〜
Dolby Atmos Renderer v5.0 がリリース
Dolby Atmos Production Suite および Mastering Suiteの機能が1つのアプリケーションとして統合され、Dolby Atmos Renderer v5.0としてリリースされました。
https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-0-is-Now-Available?language=en_US
Dolby Atmos Rendererアプリケーションをご利用のお客様へ。
この度、Dolby Atmos Rendererアプリケーションv5.0をリリースすることになりましたのでお知らせいたします。
Dolby Atmos Renderer v5.0は、従来のDolby Atmos Production SuiteとMastering Suiteの機能を1つのアプリケーションに統合し、音楽、ホームシアター、テレビ、ポッドキャスト、ゲームなどの分野でDolby Atmosコンテンツ制作を可能にします。
旧製品からのアップグレードについて
Dolby Atmos Production SuiteまたはDolby Atmos Mastering Suiteの既存ユーザーは、対応するDolby Atmos Renderer UpgradesをAvid Storeより購入してください。アップグレード・ライセンスを有効にするには、iLokライセンス・マネージャー・アプリケーションを介して元のiLokライセンスをサレンダー(無効化)する必要があります。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
新機能 〜待望のAppleシリコンネイティブ対応&96kHz ADM BWFに対応〜
・Appleシリコンにネイティブ対応
・96kHz ADM BWFファイルのインポート、エクスポート、モニタリング
・パフォーマンスの向上および新しく改良されたUI
・5.1.2 リレンダリングの作成
・トリムやダウンミックス設定の保持
以下はDolby Atmos Production Suiteからアップグレードするユーザー向けの新機能です。
・Windowsとの互換性
・ルームEQ
・スピーカーアレイモード
・Dolby Atmos Renderer Remoteからのコントロール
システム要件
対応OS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 10.14.6~13.2.1 およびWindows 10 Pro、Windows 11 Pro*で利用可能です。
* Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
対応DAW
・Ableton Live*
・Apple Logic Pro*
・Avid Pro Tools
・Blackmagic Designs Resolve
・Merging Pyramix
・Steinberg Nuendo**
*Dolby Atmos Music Pannerが必要です。
**ネイティブAppleシリコンモードでのDolby Atmos Renderer接続はまだサポートされていません。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v500
Q&A
元記事(原文)
>>Dolby Atmos Renderer v5.0 is Now Available:https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-0-is-Now-Available?language=en_US
◎Dolby Atmos Rendererアプリケーションは新製品ですか?
Dolby Atmos Rendererアプリケーションは、Dolby Atmos Production SuiteとDolby Atmos Mastering Suiteの機能を統合し、新たな改良および機能を加えた新製品です。
◎Dolby Atmos Production and Mastering Suitesの一部として既に存在する「Dolby Atmos Renderer」と新しい「Dolby Atmos Renderer application」の違いは何ですか?
新しいDolby Atmos Rendererアプリケーションは、従来のDolby Atmos Production and Mastering Suitesの両方の機能に加え、新しい機能および改良が加えられています。 さらに、Dolby Atmos Music Pannerプラグイン、Dolby Atmos Binaural Settingsプラグイン、Dolby LTC Generatorの新しいネイティブApple Siliconバージョンも含まれています。
◎Dolby Atmos Mastering SuiteからDolby Atmos Rendererアプリケーションにアップグレードすると、どのようなメリットがありますか?
Dolby Atmos Rendererアプリケーションには、以下のような新機能があります:
・Appleシリコンとのネイティブな互換性により、Macデバイスのパフォーマンスが向上
・Dolby Atmos Music Panner Plug-in、Dolby Atmos Binaural Settings Plug-in、Dolby LTC Generator Plug-inの新しいネイティブApple Siliconバージョン
・ADM BWFの96kHzに対応
・よりスムーズなユーザー体験を実現するためのユーザーインターフェイスの強化
◎Dolby Atmos Production SuiteからDolby Atmos Rendererアプリケーションにアップグレードするメリットは何ですか?
Dolby Atmos Rendererアプリケーションには、ルームEQ、リモート接続、アレイモードなど、これまでDolby Atmos Mastering Suiteでのみ利用可能だった機能が含まれています。さらに、以下のようないくつかの新機能があります:
・ネイティブM1 Appleシリコンとの互換性により、Macデバイスでのパフォーマンスが向上
・Dolby Atmos Music Panner Plug-in、Dolby Atmos Binaural Settings Plug-in、Dolby LTC Generator Plug-inの新しいネイティブApple Siliconバージョン
・ADM BWFの96kHzに対応。
・よりスムーズなユーザー体験を実現するためのユーザーインターフェイスの強化
◎Dolby Atmos Production and Mastering SuitesをRenderer v3.7.3で使用し続けることはできますか?
はい、Dolby Atmos Production and Mastering Suitesを引き続き使用することができます。しかし、新機能と現在進行中の開発をご活用いただくために、既存のお客様にはアップグレードをお勧めしています。
将来リリースされるドルビーソフトウェア、MacまたはWindowsオペレーティングシステム、およびDolby Atmos Rendererと連動するコンピュータは、Renderer v3.7.3ではサポートされない場合があります。Dolby Atmos Renderer v5.0で作成されたマスターファイルはすべてv3.7.3と互換性があり、反対にv3.7.3で作成されたマスターファイルはすべてDolby Atmos Renderer v5.0で互換性があります。
◎Dolby Atmos Production and Mastering Suitesのクリエイター向け販売は継続されますか?
Dolby Atmos ProductionとMastering Suitesの販売は終了しました。これらの製品をお使いの方は、より新しいDolby Atmos Rendererアプリケーションにアップグレードすることをお勧めします。
◎Dolby Atmos Rendererアプリケーションの価格はいくらですか?
・新規のお客様(Dolby Atmos Production SuiteまたはDolby Atmos Mastering Suiteをお持ちでないお客様)は、新しいDolby Atmos Rendererアプリケーションを299USドルで購入できます。
・既存のお客様(Dolby Atmos Production SuiteまたはMastering Suiteをお持ちのお客様)は、新しいDolby Atmos Rendererへのアップグレードを50USドルで購入することができます。
◎なぜ、このアップグレードに費用がかかるのですか?
今回のアップグレードの費用には、いくつかの新機能の開発とパフォーマンスの向上が含まれています。
◎Dolby Atmos Rendererアプリケーションを入手するにはどうすればよいですか?
・新規のお客様: お客様は、AvidストアでDolby Atmos Rendererアプリケーションを購入することができます。購入後、Avidからお客様のiLokアカウントにライセンスがデポジットされます。
・既存のお客様: Dolby Atmos Production SuiteおよびMastering Suiteのアップグレードは、こちらで購入できます。新しいDolby Atmos Rendererライセンスを有効にするには、iLok License Managerアプリケーションを使用して、既存のiLokライセンスをサレンダー(無効化)する必要があります。NFRやトライアルではなく、フルライセンスをサレンダーする必要があります。より詳細な手順については、こちらの記事をご覧ください。
◎Dolby Atmos Mastering Suiteには、Dolby Atmos Production Suiteが複数付属しています。Mastering Suiteをアップグレードすると、Dolby Atmos Rendererも複数手に入りますか?
いいえ、Dolby Atmos Mastering SuiteとProduction Suiteのライセンスはすべて、それぞれ50ドルで個別にアップグレードする必要があります。Dolby Atmos Production SuiteとDolby Atmos Mastering Suiteからのアップグレードはこちらで入手できます。各アップグレードには、iLok License Managerアプリケーションを使用して既存のiLokライセンスをサレンダー(無効化)する必要があります。NFRやトライアルではなく、フルライセンスをサレンダーする必要があります。より詳細な手順については、こちらのビデオをご覧ください。
◎最近、Dolby Atmos ProductionまたはMastering Suiteを購入しました。Dolby Atmos Renderer v5.0への無償アップグレードは可能でしょうか?
2023年2月1日以降に購入されたお客様は、Dolby Atmos Renderer v5.0への無償アップグレードを受けることができます。Production Suiteのお客様には、Avidからアップグレードの手順についてご連絡いたします。Mastering Suiteのお客様は、アップグレード方法について販売店にお問い合わせください。
◎Dolby Atmos Rendererを再販業者から購入することはできますか?
いいえ - Dolby Atmos Rendererアプリケーションは、Avidストアからのみ購入できます。Dolby Atmosスタジオの設定をサポートするDolby Atmos認定サービス・パートナーのリストについては、こちらのページを参照してください。
◎Dolby AtmosレンダリングがネイティブのDAWでDolby Atmosコンテンツを作成する場合、Dolby Atmos Renderer v5.0は必要でしょうか?
Dolby Atmos Renderer v5.0は、DAWがDolby Atmosレンダリングに対応していれば必要ありませんが、MP4書き出しなどの特定の機能を利用するために必要な場合があります。Dolby Atmosレンダリングに対応しているDAWは、Apple Logic Pro、Steinberg Cubase、Nuendo、Blackmagic Designs Resolveです。
◎Dolby Atmos Rendererを使用するために、他に何か購入やダウンロードが必要ですか?
Dolby Atmos RendererアプリケーションでDolby Atmosのコンテンツを作成するためには、互換性のあるDAWも必要です。対応するDAWの一覧は、こちらのページをご覧ください。
◎Dolby Atmos RendererはIntel Macで動作しますか?
はい、Intel Macは引き続きサポートされています。
◎Dolby Atmos Renderer v5.0はWindowsをサポートしていますか?
はい。ただし、RendererはDAWとは別のコンピュータにインストールする必要があります。 Rendererを同じコンピュータ上のDAWに接続するためのDolby Audio Bridgeは、Macでのみサポートされています。また、Windowsユーザーの方は、Steinberg CubaseやNuendo、Blackmagic Designs Resolveなど、Dolby Atmosのネイティブレンダリングを統合したWindowsベースのDAWを使用することもできます。
◎新しいMusic Panner、Binaural Settings、LTCプラグインはWindowsで利用できますか?
いいえ、現時点では、これらのプラグインはmacOSでのみ利用可能です。
◎新たにサポートされたハードウェア構成はありますか?
Dolby Atmos Renderer v5.0は、Apple Mac Studio、新しいM2 Apple Mac mini、NUC 12 Pro、Windows用のSweetwater CS400でサポートされています。MacのMADI & Dante用のNTP DAD Core 256や、M1/M2 MacのDanteワークフロー用のMerging Technologies AES 67 VAD PremiumなどのI/Oハードウェアオプションを追加しています。
◎Dolby Atmos Rendererは最新のmacOSとWindowsオペレーティングシステムに対応していますか?
Dolby Atmos Renderer v5.0は、macOS VenturaとWindows 11をサポートしています。
◎Dolby Atmos Album Assembler v1.1はDolby Atmos Renderer v5.0と併用できますか?
Album Assembler v1.1は現時点ではDolby Atmos Renderer 5.0との動作確認は実施されておりません。Album Assemblerの次期バージョンにて、Renderer v5.0のサポートが追加される予定です。
◎Dolby Atmos Renderer v3.7.3の既存の設定ファイルをRenderer v5.0で使用することは可能ですか?
はい、v3.7.3の.atmosIRと.atmosfcgファイルはv5.0で使用することができます。アップグレードする前に、v3.7.3の設定のバックアップを作成することをお勧めします。
◎Dolby Atmos Renderer v5.0から削除された機能はありますか?
はい、Pro Tools用のSend and Returnワークフローは削除されました。Dolby Audio Bridge、そして最近ではPro Tools Audio BridgeとAux I/Oワークフローの登場により、Send and Returnプラグインは不要になりました。
上記Q&Aで一部言及されている新規ハードウェア構成などにつきましては、今後のアップデート情報が届き次第、随時更新予定です。Dolby Atmos 制作に対応したスタジオの設計・施工については導入実績豊富なROCK ON PROへおまかせください。下記コンタクトフォームよりお気軽にお問合せください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#1
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023/#.ZBwKzezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/nugen-audio-halo-vision-review/#.ZBwKcezP0-Q
Tech
2023/03/23
今こそはじめよう Dolby Atmos!〜これからDolby Atmos 制作を始めるあなたに役立つ情報まとめ〜
「Dolby Atmos制作に興味があるけど、何から始めればいいのか分からない!」「どこで情報を集めたらいいの?」という方のために、Dolby Atmos関連の最新情報を随時掲載していきます。
Dolby Atmos 最新情報はこちら(2023.4.25更新)
Dolby Japan Event Portal - Dolby Japan
◉Dolby Japan Event Portal(ドルビージャパンイベントポータル)
https://www.dolbyjapan.com/
Dolby Atmosに興味を持ったらまず訪れていただきたいのが、Dolby Japan Event Portal(ドルビージャパンイベントポータル)。Dolby技術に対応した各種イベント情報を発信しているサイトです。注目は画面右上"Dolbyイベント"タブ内の"Dolby Atmos Music Creation 101"。
Dolby Atmos制作を始めるにあたり最低限知っておくべき基本から、スタジオの準備、制作ワークフロー、ミキシング、レンダリングと、その手順が丁寧に解説されたビデオが日本語字幕付きで公開されています。1本の動画が10分〜20分前後でサクッと見られる内容にまとまっているため、日々の作業が忙しくてなかなか時間が取れないという方にもオススメです。
また、同サイトには制作者向けワークフロー解説サイト、"Dolby Atmos Music Creator's Summit(ドルビーアトモスミュージッククリエイターズサミット)"も公開されています。こちらはDolby Atmos制作の流れが、視覚的に分かりやすいフローチャートで解説されており、パート毎の要点をすぐにチェックすることできます。後半は制作者インタビュー映像も掲載されており、Dolby Atmos制作の最前線で活躍されているエンジニア/クリエイターの方々のリアルな体験談を視聴することができます。
Dolby Professional Support Learning -
◉Dolby Professional Support Learning(ドルビープロフェッショナルサポートラーニング)
https://learning.dolby.com/hc/en-us
テキストベースで学びたいという方にオススメなのがこちらのサイト、"Dolby Professional Support Learning"です。2022年4月現在、「Dolby Atmos Music」「Dolby Atmos Post Production」「Dolby Vision Post Production」の3項目が公開されています。全文英語ですが、ワークフローの各項目がモジュール形式でロジカルに記述されており、特定の項目のみを重点的に学習したい時に活用できます。
※2022/4/22 追記 "Dolby Atmos Musicトレーニング"が日本語対応しました https://learning.dolby.com/hc/ja/sections/4406037447828-Dolby-Atmos-Music%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0
Sound&Recording Magazine(サンレコ)
◉Sound&Recording Magazine(サンレコ)
https://www.snrec.jp/search?q=dolby+atmos
こちらはすでにご存知の方も多くいらっしゃるかと思いますが、"サンレコ"の愛称でお馴染みSound&Recording MagazineさんでもDolby Atmos関連の情報が多く発信されています。特にエンジニアの古賀健一さんによる連載企画「DIYで造るイマーシブ・スタジオ」では、Dolby Atmosとの出会いから、実際にイマーシブ対応スタジオを設計・施工され、その後の活用状況まで詳細にレポートされています。必見です!
【番外編】英文の翻訳にはDeepLの活用がオススメ!
◉DeepL(ディープエル)
https://www.deepl.com/translator
DeepLは、海外の技術情報を検索する際に非常に便利な翻訳サイトです。「英語は苦手…」「従来の翻訳サイトでは意味がよくわからない…」という方も、ご安心ください!DeepLが自然な日本語に翻訳してくれます。
今シブ 今こそ渋谷でイマーシブ - Rock oN Company WEB
◉今シブ 今こそ渋谷でイマーシブ - Rock oN Company WEB
個人のお客様で「色々調べてみて必要な機材は分かったけど、どこかでまとめて購入できる場所ないかな〜」と思った方はぜひ渋谷Rock oN Companyへ足をお運びください。(※要事前予約) 豊富な知識を持つRock oN スタッフがあなたのご環境に合わせたシステムをご提案いたします。
・スタンド設置編https://www.miroc.co.jp/rock-on/ima-shibu2022/
・モニタースピーカー選び編 https://www.miroc.co.jp/rock-on/imasibu-2022-2/
・オーディオ・インターフェース編 https://www.miroc.co.jp/how_to/imasibu-2022_audio-interface/
ROCK ON PRO
◉ROCK ON PRO
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関する法人様のお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。本ページ上部"Works"タブまたは、下記URLより、過去の導入実績をご覧いただけます。
導入事例:https://pro.miroc.co.jp/works/#.YxBUsezP0-Q
メールでのお問い合わせは、下記コンタクトフォームよりお送りください。
Dolby Atmos 関連最新情報はこちら
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-conversion-tool-v2-1/#.ZEcvquzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZBwJpezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/acsu2023/#.ZBwKOezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolbyatmos-for-cars-report/#.ZBwKW-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/nugen-audio-halo-vision-review/#.ZBwKcezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-3/#.YxrxGOzP0-R
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-album-assembler/
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-music-panner-update/#.YocOffPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-2/#.YlUAm9PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-phrtf-app/#.YkqMH5PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.YkqMMZPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.YkqMOpPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-released/#.YkqMV5PP0-Q
Event
2023/01/24
「Dolby Atmos for Cars 」国内初出展 1/25(水)〜27(金)「第15回 オートモーティブ ワールド」にて
Dolby Atmos for Carsが国内初出展 1/25(水)〜27(金) @東京ビッグサイト
1月25日(水)〜27日(金)の3日間に渡り、東京ビッグサイトにて「第15回オートモーティブワールド-クルマの先端技術展-」が開催されます。
このイベントは、自動車やその関連部品をはじめとする各種メーカー、自動車業界新規参入企業を主な来場ターゲットとし、サブタイトルの通り、クルマの先端技術に関する様々な展示やセミナーが開催予定です。具体的には、「第15回カーエレクトロニクス技術展」や「第13回 クルマの軽量化 技術展」、「第6回 自動運転 EXPO」など、各テーマごとの展示会やセミナーが複数同時開催されており、一つの大きなイベントとして構成されています。
今回このオートモーティブワールドの構成展の一つ、「第15回[国際]カーエレクトロニクス技術展 (カーエレ JAPAN)」に、ドルビージャパンが参加し、車内でDolby Atmosコンテンツを楽しめる「Dolby Atmos for Cars」の国内初となるデモ展示が行われます。海外ではすでに市販車への導入・販売が始まっている同サービスですが、日本でのサービス展開としては、これから市販車へのアピールが本格化していくタイミングとのこと。先日メディア向けの体験会が開催され、一足先に体験させていただくことができましたので、その模様をレポートします。
【開催展名】第15回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-
【会期】2023年1月25日[水]~1月27日[金] 10:00~17:00
【会場】東京ビッグサイト
【主催】RX Japan株式会社
【併催企画】オートモーティブ ワールド セミナー
注1:招待券をお持ちでない場合、入場料5,000円/人
注2:本展は商談のための展示会ですので、学生の方および18歳未満の方のご入場はお断りいたします。
↓詳細はこちらのURLよりご確認ください。
【URL】https://www.automotiveworld.jp/tokyo/ja-jp.html%20a-jp.html
Dolby Atmos For Cars とは? ~自動車業界で広がる"CASE"~
すでにご存知の方も多いかと思いますが、Dolby Atmosというフォーマット自体はもともと映画向けのサラウンド規格の一つとしてその歴史が始まり、その後、音楽向けのDolby Atmos Musicも登場。2021年にはApple Musicが空間オーディオへ対応したことで大きな話題となりました。現在、個人でDolby Atmosを楽しむ方法として、対応イヤフォンでのバイノーラル再生をはじめ、対応しているテレビやスマートフォンのスピーカー、サウンドバーなど、一般家庭でも気軽に楽しめる再生環境が充実しつつあります。
そしていよいよ自動車でもDolby Atmosを楽しもう!という動きが出てきたわけですが、その背景には、現在自動車業界で広がっている"CASE"と呼ばれる考え方があります。これは、Connectivity、Autonomous、Shared & Service、Electricの頭文字をとったもので、2016年、メルセデス・ベンツの中長期戦略の中で初めて言及されたものです。
CASEで目指す内容の具体例としては、
「自動運転機能により、運転から解放される」
「電気自動車化で内燃機関がなくなることで静寂性が増し、音楽や映画などをより本格的に楽しめるようになる」
「充電の待ち時間が快適な空間へ」
といったものが挙げられます。
従来は単なる移動手段であった自動車が、今まさに、エンタメ提供の場へと変化していく中にあり、そこに対するDolbyの新たな提案がこのDolby Atmos For Carsということです。
◎CASE がもたらすエンタメの重要性
Connectivity / Internet接続、スマホ操作性ニーズ(スマホOS進出)、ストリーミングサービス、コンテンツ増
Autonomous / 運転からの解放:音楽、映像、ゲーム、カラオケ、睡眠、リラックス、仕事
Shared & Service / 車を選ぶ基準の変化:新サービスの車室流入
Electric / 電動化:車内静寂性向上、充電待ち時間(∼30min)、車室空間拡大・空間自由度向上
海外ではすでに市販車への導入が始まっている
世界初となるDolby Atmos対応車は2021年3月21日、米国ルシード・モータースによって発表された"Lucid Air"。こちらは国内未上陸のストリーミングサービス"Tidal"経由でのDolby Atmos Music再生に対応しています。
昨年3月・6月には中国のニオから"ET7"、"ES7"が登場。同6月に理想汽車(リ・オート)からはSUV型の“L9”、その後も、XPENG(シャオペン)、メルセデス・ベンツ、ポールスター、ロータス、ボルボ…と続々と対応車が発表・販売されています。
Dolby Atmos For Cars 対応車 例
・Lucid Motors Lucid Air https://news.dolby.com/en-WW/197447-lucid-air-is-the-world-s-first-vehicle-to-integrate-dolby-atmos
・NIO ET7 https://news.dolby.com/en-WW/204730-nio-et7-comes-standard-with-dolby-atmos
・Li Auto L9 https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/li-auto/
・XPENG G9 https://heyxpeng.com/g9
・Polestar 3 https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/polestar/
・Lotus Eletre https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/lotus/
・VOLVO EX90 https://professional.dolby.com/music/dolby-atmos-for-cars/volvo/#gref
Dolby Atmos for Cars を一足先に体験
当日はDolby Atmosや、Dolby Atmos For Carsの市場動向の説明の後、トヨタ アルファードをベースに、ドルビージャパンがカスタムで用意したという試乗車にて、Dolby Atmos For Carsを体験することができました。
📷 用意されていた試乗車のスピーカーレイアウトは7.1.6ch。平面7chは全て2Way仕様となっているため、スピーカー数としては計21本となる。
📷 EDMやオーケストラなどの試聴音源を、6本の天井スピーカーの有無でそれぞれ比較視聴。まずは天井スピーカー”あり”から試聴し、EDM楽曲では、一番盛り上がるタイミングでSEのトラックが車内を縦横無尽にパンニングする様子が体感できた。オーケストラ楽曲では、まるでそこはホールなのではないかと錯覚するような、車体の存在を感じさせない広い音場が感じられた。
📷 ダッシュボード上に並ぶフロントスピーカー。センタースピーカー前方にはウーファーも設置されている。
📷 モニターはフロントパネルとシート2列目前方に計3枚設置。視聴ソースとしてApple MusicがインストールされたPCの画面が表示されていた。
📷 フロントレフトのスピーカー。写真では確認できないが、Lch Rchのウーファーは、左右それぞれのドア足元部分に設置されている。
📷 トップミドルのスピーカー。シート2列目のウインドウ上方に設置されている。
📷 サラウンドバックのスピーカー。シート3列目の左右に設置されているため、スイートスポットは2列目の中央あたりになる。
📷 運転席から後方側を見た様子。天井スピーカー"なし"の構成だとこれらのスピーカーは再生されないが、バーチャライザー機能によってうまく補完され、"包まれ感"はしっかりと残っていた。
体験を終えて 〜 今年中の国内初市販車の登場に期待!
実際に体験してみて、車の内壁全体から音が鳴っているかのような包まれ感のあるサウンドはこれまでに経験したことがなく、とても新鮮でした。特にオーケストラの音源を聴いた時の空間の広さは格別で、心地よく運転が出来そうだなと思いました。
Dolby Atmosをはじめとするイマーシブサラウンドは、スピーカーで体験すれば、誰もが非常に楽しく、ステレオとは全く違った臨場感を得られると思います。しかし、その環境を一般家庭で構築しようとした場合、サウンドバーならまだしも、対応のAVアンプやスピーカーを全て揃えて…というのは、まだ少しハードルが高いと思います。今後、Dolby Atmos For Carsのような自動車向けシステムの普及が進めば、イマーシブな音楽体験がもっと身近になっていくのではないでしょうか。
第15回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展- 開催概要
第15回オートモーティブ ワールドはいよいよ25日から開催されます。カーオーディオ関連の開発担当の方や、Dolby Atmos対応のOTTに携わっている方など、ご興味がある方はぜひ事前登録の上、足を運んでみてはいかがでしょうか?
【開催展名】第15回 オートモーティブ ワールド -クルマの先端技術展-
【会期】2023年1月25日[水]~1月27日[金] 10:00~17:00
【会場】東京ビッグサイト
【主催】RX Japan株式会社
【併催企画】オートモーティブ ワールド セミナー
注1:招待券をお持ちでない場合、入場料5,000円/人
注2:本展は商談のための展示会ですので、学生の方および18歳未満の方のご入場はお断りいたします。
↓詳細はこちらのURLよりご確認ください。
【URL】https://www.automotiveworld.jp/tokyo/ja-jp.html%20a-jp.html
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関する法人様のお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。本ページ上部”Works”タブ、または下記URLより、過去の導入実績をご覧いただけます。
導入事例:https://pro.miroc.co.jp/works/#.YxBUsezP0-Q
メールでのお問い合わせは、こちらのコンタクトフォームよりお送りください。
https://pro.miroc.co.jp/works/capcom-bitmasterstudio-proceed2022-2023/#.Y89YmuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.Y89VIuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.Y89Xo-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/soundcity-proceed2022-23/#.Y89YjezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.Y89YTezP0-Q
Solution
2023/01/11
Nugen Audio Halo Vision クイックレビュー ~ Pro ToolsとDolby Atmos Render での活用方法も紹介 ~
昨年10月にNuge Audioよりリリースされた新プラグイン、Halo Vision。"Halo"と言えば同社が既にリリースしている、Halo Upmix/Downmixといった製品を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。それらはステレオ〜サラウンド〜イマーシブといったフォーマット間のアップミックス/ダウンミックスを行うためのツールでしたが、今回登場したHalo Visonは、イマーシブサラウンド編集に特化した強力なアナライザーです。
今回、NUGEN Audioはこの製品の開発をスタートするにあたり、「イマーシブ・サウンドを視覚的に表示するとしたら、何が求められているのか」を正確に把握するため、多くのエンジニアを対象に詳細な市場調査を行ったとのこと。その結果生まれたのがこのHalo Visionということで期待大です。本記事では、その活用方法を考察してみたいと思います。
◎自在にカスタマイズ表示可能な7種類のビュー
表示可能な項目は以下の7種類。何だかあまり聞き慣れない単語が並んでいますが、1つずつ見ていきましょう。
- コリレーション・マトリックス - Correlation Matrix
- コリレーション・ウェブ - Correlation Web
- 周波数ヘイズ - Frequency Haze
- ロケーションヘイズ - Location Haze
- スペクトル - Spectrum
- トゥルーピーク - True Peak
- タイムコード - Timecode
◎コリレーションビューで各チャンネルの位相の相関を可視化する
他のプラグインではあまり見かけない表示がこのコリレーション・ウェブとコリレーション・マトリックス の機能だと思います。まず、蜘蛛の巣状のコリレーション・ウェブですが、これはシンプルに位相が反相関状態になっているチャンネル間の線が点灯し、判別できるようになっています。コリレーション・マトリックスはそれをさらに詳しくしたようなもので、各チャンネル間の位相がどのような関係にあるのか、分かりやすく三色で色分けされるようになっています。具体的には、位相の相関がニュートラルな時は黄色、相関状態の時は緑色、反相関状態の時は赤色になります。
メーカーの説明によると、これらはコンテクスト相関、つまり、単純な相関を示しているわけではなく、チャンネル間のレベル差を考慮し、問題となりそうな相関関係のみを洗い出してくれているとのこと。そしてそのしきい値は標準の設定に加え、自分で設定することも可能です。
■コリレーション・ウェブ - Correlation Web
"相関ウェブは、各スピーカー間の接続線でチャンネルのネットワークを表示します。2つのチャンネル間の位相関係が反相関になると、対応する線が赤い線で結ばれます。"
■コリレーション・マトリックス - Correlation Matrix
”コリレーション・マトリックスは、各チャンネル間の位相関係を色別に表示します。より詳細な分析には大きなアーチ型メーターを使用し、ユーザー定義の閾値で反相関の警告を表示します。”
”これらの表示では、デフォルトでコンテクスト相関が使用されます。一般的な相関メーターの計算方法では、2つの信号が非常に反相関しているように見えることがありますが、一方の信号が他方の信号より非常に大きかったり、小さかったりする場合は、それらを同時に混ぜ合わせても特に問題ない場合があります。Contextual Correlationは、このようなレベル差を補正し、問題となりそうな相関関係のみを強調します。”
任意のチャンネルを選択すると関係する線がハイライトされる
コリレーション・ウェブの設定画面
コリレーション・マトリックスの設定画面
◎ヘイズビューでサラウンドフィールド内の周波数とエネルギーを可視化する
"Haze "が日本語で「もや」や、「かすみ」を表す通り、サラウンドフィールド内の周波数分布とエネルギー分布を細かい光の粒子で、可視化することができます。これは同社のHalo Upmix/Downmixを触ったことがある方にはおなじみの表示ですね。なんだかんだ言っても、最終判断はやはり自分の耳で行うことになるとは思いますが、こうしてメーターで機械的に視覚化されることで、聴覚上の感覚と照らし合わせて確認することができるようになるというのは、非常に意味があるのではないでしょうか。
■周波数ヘイズ - Frequency Haze
"円形の周波数ヘイズは、低周波数を中心に、高周波数を外周に配置し、サラウンドフィールド全体の周波数分布を表示し、一般的なスピーカーの位置にチャンネルラベルを表示します。"
■ロケーションヘイズ - Location Haze
"ロケーション・ヘイズは、オーディオの知覚位置を視覚化するもので、サラウンド・フィールド全体のエネルギー分布を表示し、明るい部分は「エネルギー」が増大していることを示します。"
◎スペクトル/トゥルーピーク/タイムコード
他の表示については普段からDAWをお使いの方にはお馴染みの機能かもしれませんが、周波数帯域ごとの音量を確認できるスペクトル、サンプルピークメーターでは検出できないアナログ波形のピークを検出するトゥルーピーク、そしてタイムコードの表示が可能となっています。表示色のカスタマイズもでき、非常に見やすいUI設計となっています。
■スペクトル - Spectrum
"Combined' モードでは、全てのチャンネルの FFT レベル対周波数グラフを 1 つのスペクトルで表示します。
Groups' モードでは、各チャンネルをいくつかのスペクトラムグループごとに整理することができます。"
■トゥルーピーク - True Peak
"True Peakビューは、各チャンネルのTrue Peak dBレベルメーターを表示します。"
■タイムコード - Timecode
"Timecodeビューは、現在のホスト/DAWの再生位置に基づいたタイムコードの読み出しを表示します。"
スペクトラム表示も細かく設定が可能
チャンネルグループの設定も自由自在
タイムコードは時:分:秒:フレームごとに色の変更が可能
なんと176色から選択可能!色にこだわりがあるという方も安心
◎用途
・7.1.2までのサラウンドおよびイマーシブミックスの解析
・位相相関のチェック
・空間情報の視覚化
・異なるチャンネル・フォーマットでのミックスの確認
・慣れないスタジオや音響特性が好ましくない部屋でのミキシング
◎Dolby Atmos制作時の活用方法
Pro Tools 2022.9からの新機能Aux I/O及び Pro Tools Audio Bridgeを活用することで、Dolby Atmos Rendererからの出力をシンプルにPro Tools内に戻すことが可能となりました。これを活用してDolby Atmos Rendererから出力された7.1.2chをPro Tools内に立ち上げ、そこにHalo Visionをインサートすることでメータリングができるようになる、というわけですね。
Aux I/Oの設定方法はAvid Japanが公開しているこちらの日本語Tips動画よりご確認ください。
関連リンク:
Rock oN Line eStoreで購入:
https://store.miroc.co.jp/product/80930
国内代理店紹介ページ:
https://www.minet.jp/brand/nugen-audio/halo-vision/
Nugen Audio紹介ページ:
https://nugenaudio.com/halovision/
イマーシブサラウンド制作システム構築のご相談は、実績豊富なROCK ON PROまで。下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
Event
2023/01/11
1月14日(土)11:00〜 洗足学園音楽大学 Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」開催
Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」 概要
来たる1月14日(土)、15日(日)、洗足学園音楽大学ジャズコースによる配信ライブが開催されます。14日(土)11時からの配信は、音楽・音響デザインコースとのコラボにより、Dolby Atmosでのライブ配信も行われるとのことです。
配信日時:2023年1月14日(土)11:00 ~ 17:30
詳細ページ
・Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」
https://course.senzoku-online.jp/sc/?page_id=2472
音楽・音響デザインコースの「Dolby Atmos Recording Project」の第二弾として、1月14日(土)11:00より「ジャズコースライブ2023」をB305スタジオからDolby Atmosでライブ配信(無料)いたします。Dolby Atmosの録音やミックスは深田晃先生と学生スタッフが担当し、配信はNeSTREAMのエンジニアの皆様にサポートしていただきます。ジャズコース学生によるYoutube配信と併せてお楽しみください。→Dolby Atomosとは?
→ 音楽・音響デザインコース「Dolby Atmos Recording Project」の紹介
※Dolby Atmos配信は1月14日(土)のみです。1月15日(日)はジャズコースのYoutube配信をお楽しみください。
Dolby Atmosでの視聴はNeSTREAM LIVEから
Dolby Atmosライブ配信の視聴にはスマートフォンやApple TV / Fire TVにNeSTREAM LIVEのアプリをインストールする必要があります。
視聴方法詳細はこちらからご確認ください。
Dolby Atmosライブ配信「ジャズコースライブ2023」視聴方法:https://course.senzoku-online.jp/sc/?page_id=2472
◆配信視聴に関するお問い合わせはこちら
NeSTREAM LIVE カスタマーサポート窓口
営業時間:平日 10時~17時 050-3528-6313
nestream_live@user-support.jp
https://nestreamlive.radius.co.jp
Dolby Atmosの制作環境に関するご相談は実績豊富なROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
Support
2022/09/09
Dolby Atmos Renderer v3.7.3 アップデート情報
Dolby Atmos Renderer v3.7.3がリリース
直感的なDolby Atmosミキシングを可能にする制作ツール"Dolby Atmos Renderer(ドルビーアトモスレンダラー)"の最新版となるv3.7.3が公開されています。
今回はM1 Macでの動作や拡張子のレターケースに関する改善が含まれているとのこと。詳細は下記URLからもご確認いただけます。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v373
Dolby Atmos Renderer アプリケーション v3.7.3 のリリースをお知らせいたします。Dolby Atmos Renderer v3.7.3 には、Dolby Atmos Renderer ソフトウェアを使用して Dolby Atmos でコンテンツをオーサリングするための重要な修正が含まれています。
Dolby Atmos Renderer v3.7.3 は、macOS 12.14.6 から 12.5.1 を実行する Intel ベースの Mac でサポートされています。Renderer v3.7.3 は、M1 ベースの Mac の macOS Monterey 12.5.1 と互換性があります (Rosetta 2 経由)。
本リリースでの主な改善点
- M1チップ搭載Macで、Renderのモニタリングや再生時に、音声のクリックやグリッチが発生することがあった問題を修正
- Avid HDX Core オーディオドライバと Dolby Audio Bridgeオーディオ入力デバイスを96kHzで使用する場合、Rendererが起動時にクラッシュすることがあった問題を修正
- 従来はレターケース(大文字/小文字)に厳密な".atmosIR"という拡張子のファイルのみ読み込み可能であったところ、v3.7.3では、任意のレターケース(例.atmosirまたは.ATMOSIRなど)にすることが可能に
システム要件
Dolby Atmos Production Suite:
macOS 10.14.6 〜 12.5.1 及び対応のDAWで利用可能
Dolby Atmos Mastering Suite:
macOS 10.14.6 〜 12.5.1 または Windows 10 Pro と 対応のDAWで利用可能
セットアップ方法詳細は、ドキュメントをご参照ください。
Dolby Atmos Renderer最新版は下記URLよりダウンロード可能です。(Dolby Customerページへの登録が必要です)
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v373
Dolby Atmos Rendererが含まれるDolby Atmos Production SuiteはAVIDストアよりご購入いただけます。
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-production-suite
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関するお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。下記コンタクトフォームよりご連絡をお待ちしております。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.YlT9-9PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.YlT_ktPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.YlT_dtPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-creative-summit-2021-online/#.YlT_g9PP0-Q
NEWS
2022/08/08
Dolby Atmos 用マスタリングツール Dolby Atmos Album Assemblerがリリース(90日間体験版有り)
Dolby Atmos Album Assemblerは、Dolby Atmosでミキシングされた楽曲やアルバムの仕上げを行うのに便利なツールです。Dolby Atmos Renderer(Dolby Atmos Production Suite または Mastering Suite に付属、要別途購入)と組み合わせて使用する Album Assembler は、Dolby Atmos Music のマスタリングツールとして、今回新たに開発されたものです。ストリーミング・サービスに配信する前に、アルバム曲順の構成や、2chステレオミックスとの比較機能など、Dolby Atmos対応楽曲のマスタリングに必要な機能がすべて揃っています。
Dolby Atmos Album Assemblerの主な機能
・複数のDolby Atmos ADM BWF ファイルをインポートしてタイムライン上でシーケンス化
・Dolby Atmos Rendererアプリケーション(Dolby Atmos ProductionまたはMastering Suiteで別途購入する必要があります)に接続してのモニタリング
・曲の長さの編集とフェードイン/アウトの適用
・曲のレベル調整
・Dolby Atmosのためにゼロから構築されたEQおよびリミッター処理テクノロジを適用
・Dolby Atmosの楽曲をStereo reference track機能でマスタリング済みのステレオ・ファイルとリアルタイム比較
・ラウドネスの測定
・Dolby Atmos ADM BWFファイルでのマスター書き出し
入手方法
・90日間体験版 (Dolby Customer サイトでサインアップ&サインイン後にDL可能です)
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v100
・AVIDストアでライセンス購入(2022年8月現在 $99 / ¥11,000〜)
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-album-assembler
Dolby Atmosでの新規楽曲リリースも最近かなり増えてきている中、便利なマスタリング用ツールが登場しました。こちらのライセンスの購入は現在AVIDストアからのみ可能となっております。Dolby Atmosをはじめ、イマーシブオーディオ制作環境導入のご相談は、実績豊富なROCK ON PROにお任せください!お問合せは下記コンタクトフォームからお待ちしております。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/comparison-of-atmos-360ra/
Support
2022/06/28
【どう違う?】 Dolby Atmos Musicと 360 Reality Audioの4つの違い
News!360VMEのプロファイル測定サービス実施中!詳細はこちらをご確認ください。
News!360 Reality Audio クリエイター向け最新情報はこちらに随時追加中!あわせてご確認ください。
2021年、Apple Musicが空間オーディオに対応し大きな話題となりましたが、以降、Dolby Atmo Musicや360 Reality Audioといったイマーシブフォーマット対応の音楽コンテンツが続々とリリースされ続けています。これらのフォーマットは2022年6月現在、Apple Musicをはじめ、TidalやDeezer、Amazon Music HDといったストリーミングサービス等で楽しむことができますが、そろそろ「自分の作品もイマーシブ化してみたい!」という方も増えてきたのではないでしょうか。「いざやってみよう!」と思い立ったみなさんが気になるのが、「Doby Atmos Musicと360 Reality Audioってどう違うの?」という部分だと思います。本記事で2つのフォーマットについて、それぞれの歴史、イマーシブへのアプローチ、制作ツール、そして対応している音楽配信サービスという4つの観点から比較してみたいと思います。
1.歴史の違い 〜映画音響からスタートしたDolby Atmos、新たな音楽体験を目指した360 Reality Audio〜
まずは両者の開発スタートの経緯を見ていきましょう。
Dolby Atmos Music → 元々は映画音響として開発スタート
360 Reality Audio → 開発当初より新たな音楽体験を志向
Dolby Atmosは2012年、映画音響向けのイマーシブサラウンド規格として誕生しました。現在でも多くの映画作品における音響制作は5.1chサラウンドのフォーマットが用いられるケースが一般的ですが、7.1chや9.1chと平面上に配置するスピーカーを増やすことで、より臨場感、立体感のあるサウンドが追求されてきました。これにより、前後左右の音像定位は自由度がが高まっていったわけですが、さらなるリアリティ、没入感を求めたDolbyは天井にもスピーカーを配置することで、高さ方向の音像定位を再現できるDolby Atmosを開発しました。かくして最初は映画館向けとして開発され、その後Xboxなどのゲーム機や民生のオーディオプレーヤー、スマートフォンなど様々なデバイスにDolby Atmosの技術が搭載されていくなかで、ミュージシャン達からの要望もあり、2020年のCESでDolby Atmos Musicが発表されました。
一方、2019年のCESで発表された360 Reality Audioは、業務用/民生問わず、長年に渡りハイグレードなオーディオ機器を開発してきたソニーの要素技術から誕生しました。公式サイトによると「360 Reality Audioとは、ソニーの360立体音響技術を用いた新しい没入感のある音楽体験」とされています。つまり、はじめから新しい音楽体験を作り出すことを目標に開発された経緯があり、元々映画音響からスタートしたDolby Atmosとは少し出発点が違います。
2.イマーシブへのアプローチ方法の違い 〜チャンネルベースとオブジェクトベース〜
上述した開発経緯の違いが具体的に現れているのが、両者のイマーシブへのアプローチ方法の違いです。
Dolby Atmos Music → チャンネルベース(ベッド) とオブジェクトベースのハイブリッド(最大7.1.2 Bed + 118 Object)
360 Reality Audio → 完全オブジェクトベース (最大128 Object)
Dolby Atmosは、チャンネルベースとオブジェクトベースという2種類の方式が組み合わされているのに対し、360 Reality Audioは完全オブジェクトベースとなっています。
チャンネルベースでは、従来のステレオ2chや、平面サラウンドの5.1ch、7.1ch、イマーシブサラウンドの5.1.2chや7.1.2chなど、あらかじめ定められたスピーカー配置からの出力を想定してミキシングを行い、チャンネルごとの音声を完成させていきます。ちなみにこの時、各スピーカーから出力される信号のことを“Bed(ベッド)”と呼びます。それぞれの音像はスピーカーチャンネルに対して固定されるため、後からチャンネル数を変更したいとき、チャンネル数が減る時はダウンミックスという方法を使用し、チャンネル数が増える時は、再度ミキシングする必要があります。
オブジェクトベースでは、3次元のパンニング情報などをもつメタデータをオーディオとともに記録・伝送し、再生デバイス側でそれらを再生環境のチャンネルフォーマットに合わせてデコードを行います。これは3次元空間内を縦横無尽に動き回るような、点音源(ポイントソース)の再生に適した方式です。これを行うためには、再生デバイス側がその規格の再生に対応していることが前提となってきますが、再生環境ごとのチャンネルフォーマットの違いを、いわばデコーダーが吸収するような形となるので、一定のクオリティが担保されるという大きなメリットがあります。
Dolby Atmos Musicでは最大でBed 7.1.2ch + Object 118ch = 128chのトラックを使用することができ、360 Reality Audioはフルオブジェクトで128chのトラックを使用することができます。
従来の映画音響制作からチャンネルベースの流れを引き継ぎ、さらにオブジェクトベースを組み合わせることでイマーシブ音像を作るDolby Atmosと、新たな音楽体験 = 4π(全周)を360度、自在に動き回るオブジェクトベースでカバーする360 Reality Audio。下の画像を見てもわかる通り、Dolby Atmosは半球上に音像を定位できるのに対し、360 Reality Audioは全球上に音を配置させることが可能です。この球体の下半分 = "南半球"の有無も一つの大きな違いです。
↑Dolby Atmosは"北半球"のみ=耳の高さより上側に音を配置可能(画像クリックで拡大)
↑360 Reality Audioでは"南半球"を含む4π空間上に音を配置可能(画像クリックで拡大)
「じゃあ、制作時のスピーカー配置はどうなるの?」と思った方は、こちらの導入事例をぜひご参照ください。従来のDolby Atmos向けスピーカー配列にボトム3本を追加し、360 Reality Audioの制作にも対応したソニーPCL株式会社様での事例です。
>>Sound on 4π Part 4 / ソニーPCL株式会社 〜360 Reality Audioのリアルが究極のコンテンツ体験を生む〜https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-4/
https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-4/
3.専用制作ツール(プラグイン)の違い 〜Dolby Atmos Dolby Atmos Renderer、360 WalkMix Creator™️〜
Dolby Atmos、360 Reality Audioには下記の通り、それぞれ専用の制作ツールとなるプラグインが存在します。ただし、Cubase ProやNuendo、Logic ProではDolby Atmosの納品向けADM BWAVファイルの書き出しを行うことができるので、Dolby Atmos Dolby Atmos Rendererの購入は必ずしも必要というわけではありません。
Dolby Atmos Music → 対応DAW単体またはDAWとDolby Atmos Dolby Atmos Rendererの組み合わせ
360 Reality Audio → DAWと360 WalkMix Creator™️ プラグインの組み合わせ
◎Dolby Atmos Dolby Atmos Renderer
Dolby Atmos Musicの納品時には通常、1つ以上のDolby Atmosマスターファイルの提出が必要となります。Dolby Atmos Rendererに含まれるソフトウェアを使って書き出すことができるマスターファイルは以下の3種類です。(納品時に必要なファイルに関しては各種配信サービスによって異なりますので、詳細はそちらでご確認ください。)
.atmos ファイルセット – .atmos、.atmos.audio、.atmos.metadata ファイルで構成
ADM BWF – .wav ファイル
IMF IAB – .mxf ファイル (ポストプロダクション利用のみ)
このDolby Atmos RendererはAVIDストアより購入可能です。
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-production-suite
Dolby Atmos Renderer使用方法解説動画はこちら
◎360 WalkMix Creator™️
360 Reality Audioの制作には、現在360 WalkMix Creator™️というプラグイン必須です。主要なDAWのほとんどに対応していますしていますのでご安心を(詳細こちら)。こちらは弊社輸入事業部オンラインストアやRock oN Line eStoreでもご購入いただけます。
・Rock oN Line eStore販売ページ:https://store.miroc.co.jp/product/77346
※以前は360 Reality Audio Creative Suite(360RACS)という名称であったため、初期の弊社コンテンツでは360RACS表記となっている場合がございます。
4.対応している配信サービスの違い(2022年6月現在)
2022年6月現在、それぞれのフォーマットでの配信に対応している音楽ストリーミングサービスは以下の通りとなっています。
Dolby Atmos Music → Apple Music、Amazon Music HD、Tidal HiFi Plus、nugs.net Hi-Fi Streaming
360 Reality Audio → Amazon Music HD、Tidal HiFi Plus、Deezer HiFi、nugs.net Hi-Fi Streaming
詳しい試聴方法についてはこちらの記事シリーズをご参照ください。
◉360 Reality Audio クリエイター向け最新情報はこちらに随時追加中。入門編はこちらから。
本記事では、Dolby Atmos Music及び、360 Reality Audioの違いについて説明しました。これらに関する情報は、弊社WEB上のHeadline>>3D Audioタグで一括表示可能です!イマーシブミキシングのノウハウがまだまだ模索段階にある今だからこそ、多くの発見もあり、楽しいタイミングだと思います。ROCK ON PROはそんな新時代の音響制作にチャレンジするクリエイターのみなさまを全力でサポートします!お問い合わせは下記コンタクトフォームよりお待ちしています。
<関連記事>
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-news/
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-on-4%cf%80-proceed2021/
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-1/
Music
2022/05/20
Dolby Atmos Music Panner アップデート情報
このページではDolby Atmos Music Pannerに関する新着情報をお知らせします。
Dolby Atmos Music Pannerとは?
Dolby Atmos Music Pannerプラグインは、Dolby Atmos Rendererに接続されたMac上のDAWで使用し、Dolby Atmos Music ミックス内のオーディオオブジェクトを配置することができます。
ミュージック・パンナーを使ったこの組み合わせでは、3次元のオーディオ空間にオーディオ・オブジェクトを配置することができます。
また、パンナーには、オブジェクトの配置を、DAWのテンポに同期させて動かせるシーケンサーが搭載されています。
Dolby Atmos Music Pannerのインストーラーには、AAX、AU、VST3バージョンが含まれています。
配布先URL:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-music-panner-v120
※DLにはcustomer.dolby.comへの登録&ログインが必要です。
システム要件
Dolby Atmos Music Pannerを使用するには、Dolby Atmos Renderer v3.7.1以降が動作するDolby Atmos Production SuiteまたはMastering Suiteが必要です。
対応DAW
・Ableton Live 11.1
・Apple Logic Pro X 10.6.3
・Avid Pro Tools Ultimate 2021.12
・Steinberg Nuendo 11.0.41.448
※macOS Mojave上で動作するNuendoでの使用はサポートされていません。
Dolby Atmos Music Panner V1.2.0 (2022.3.28 更新)
オートメーション書き込みコントロール(Pro Toolsのみ)
Pro Tools 2021.12以降とDolby Atmos Music Panner v1.2(AAXバージョン)では、パンナー・オートメーションをPro Toolsオートメーション・レーンに書き込み、Dolby Atmos Music PannerオートメーションをPro Toolsパン・オートメーションに変換し、Pro ToolsからADM BWF .wav マスターとしてセッションを書き出すときにそのオートメーションのメタデータを含めることができます。
シーケンサのステップを遅くする
x16スイッチを使えば、現在のステップの長さを16倍遅くすることができます。
ステレオオブジェクトのリンク解除
Dolby Atmos Music Pannerステレオプラグインは、ステレオオブジェクトのリンクとアンリンクに対応しています。オブジェクトのリンクが解除されると、左右のチャンネルのX、Y、Z、Sizeを別々に調整することができるようになります。
X/Y/Z、Sizeのロータリーコントロールとポジションディスプレイのオブジェクトアサインラベル表示
X、Y、Z、Sizeのロータリーコントロールとポジションディスプレイには、オブジェクトの割り当てを示すラベルが表示されるようになりました。
Dolby Atmos制作に関するお問い合わせ、モニタリングシステム導入のご相談はこちらのコンタクトフォームからご送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pick-up-pro-tools-studio/
https://pro.miroc.co.jp/headline/protools-lineup-renewal/#.YocNAfPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v3-7-2/
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/
Support
2022/04/12
Dolby Atmos Renderer v3.7.2 アップデート情報
Dolby Atmos Renderer v3.7.2がリリース
直感的なDolby Atmosミキシングを可能にする制作ツール"Dolby Atmos Renderer(ドルビーアトモスレンダラー)"の最新版となるv3.7.2が公開されています。
今回はHT-RMUのリモートコントロール用ソフトウェア"Dolby Atmos Renderer Remote"のWindowsマシンにおけるファイルブラウジングの修正やデフォルトのバイノーラル設定の改善が含まれているとのこと。詳細は下記URLからもご確認いただけます。
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v372
Dolby Atmos Renderer アプリケーション v3.7.2 のリリースをお知らせします。このリリースには、Dolby Atmos Production Suite および Mastering Suite の有効ライセンスでのインストールに使用される Mac および PC インストーラの両方に対するアップデートが含まれています。
本リリースでの主な改善点
- Dolby Atmos Renderer Remote のWindowsマシンにおけるファイルブラウジングに関する修正
- Dolby Atmos Binaural Settings Plug-in v1.1.2 をサポート
- デフォルトのバイノーラル設定の改善
- ドキュメントの改善
- 特殊文字を含むファイル名のエクスポートに関する修正
システム要件
Dolby Atmos Production Suite:
macOS 10.14.6 〜 11.6.1 及び対応のDAWで利用可能
Dolby Atmos Mastering Suite:
macOS 10.14.6 〜 11.6.1 または Windows 10 Pro と 対応のDAWで利用可能
セットアップ方法詳細は、ドキュメントをご参照ください。
Dolby Atmos Renderer最新版は下記URLよりダウンロード可能です。(Dolby Customerページへの登録が必要です)
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-production-and-mastering-suites-v372
Dolby Atmos Rendererが含まれるDolby Atmos Production SuiteはAVIDストアよりご購入いただけます。
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-production-suite
Dolby Atmos制作機材、スタジオ施工に関するお問い合わせは実績豊富なROCK ON PROにお任せください。下記コンタクトフォームよりご連絡をお待ちしております。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.YlT9-9PP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/we-want-more-atmos-proceed2021-22/#.YlT_ktPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/surebiz-proceed2021-22/#.YlT_dtPP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-creative-summit-2021-online/#.YlT_g9PP0-Q
Headline
2022/02/24
We want more Atmos!〜Dolby Atmosコンテンツ制作の最前線〜
Apple Musicの空間オーディオ対応などによりいよいよ一般ユーザーに立体音響を届けられるようになってきた。Proceed Magizineでは、これまで空間オーディオに関する技術的な内容を何度か紹介してきたが、この状況の中で実際にどのような音をユーザーに届けるのかという中身の部分について、深田 晃氏、戸田信子氏、陣内一真氏、古賀 健一氏、murozo氏という様々な分野で活躍されている皆様の制作最前線を伺った。Dolby Atmos制作の舞台裏からAtmos Musicの未来まで、大いに盛り上がりを見せた座談会の様子をお伝えしていく。
●ご参加者様:プロフィール
深田 晃
レコーディングエンジニア
CBS/SONY録音部チーフエンジニア、NHK放送技術局・番組制作技術部チーフエンジニアを歴任。あらゆるジャンルの音楽に関わるが、主にオーケストラレコーディングを担当。1997年、AES NYで「Fukada Tree」を発表後、多くのサラウンド番組制作・国際共同制作に関わる。 2011年 dream window inc. を設立、アーティストCD、映画のスコアリング、クラシック音楽録音、マルチチャンネル音響作品制作や空間音響デザイン行っている。AES Fellow IPS 英国放送音響家協会会員 、JAPRS 日本音楽スタジオ協会理事、米国レコーディングアカデミー(グラミー)会員、洗足学園音楽大学 音楽・音響デザイン客員教授。
戸田信子 x 陣内一真
COMPOSER | MUSIC DIRECTOR| SCORE PRODUCER
東京・ロサンゼルスを拠点とした作曲家ユニット。
2003年、バークリー音楽大学の映画音楽作曲科と現代作曲&プロダクション科を卒業した後、ゲーム「メタルギアソリッド4」でタッグを組み音楽制作をスタート。オーケストラレコーディングとハリウッドの映画音楽制作におけるプロダクションノウハウを学び、2011年サウンドトラックに特化した音楽プロダクション「FILM SCORE LLC」をロサンゼルスに設立。エレクトリックなサウンドデザインとオーケストラとを組み合わせたハイブリッドの音楽制作をLAにあるハンスジマーのラボ「リモートコントロール」の制作チームと共に進めている。ロサンゼルス、ロンドン、プラハなどの海外オーケストラの収録経験も多く、さらにフィルムスコアリングを用いた作曲手法を使い、映像と音楽をフィットさせ相乗効果をあげる音作りで全世界向けの映画、アニメ、ゲーム音楽を手掛けている。マイクロソフトのゲーム「Halo 5」のサントラでは初登場で全米ビルボードのサウンドトラックTOP2入りを果たすなど、近年目覚ましい活躍を続けており、これまでにゴールデンリール賞(MPSE)の長編外国語映画部門音響編集賞や英国アカデミー賞ゲーム部門音楽賞など、様々な音楽賞を受賞している。
主な代表作:『メタルギアソリッド4 ガンズ・オブ・ザ・パトリオット』『太秦ライムライト』『Halo 5』『ULTRAMAN』『攻殻機動隊SAC_2045』『スター・ウォーズ:ビジョンズ 』など多数。
古賀 健一
レコーディングエンジニア
レコーディング・エンジニア。青葉台スタジオに入社後、フリーランスとして独立。2014年にXylomania Studioを設立。これまでに チャットモンチー、ASIAN KUNG-FU GENERATION、Official 髭男dism、MOSHIMO、ichikoro、D.W.ニコルズなどの作品に携わる。また、商業スタジオやミュージシャンのプライベート・スタジオの音響アドバイスも手掛ける。
Xylomania Studio
murozo
レコーディングエンジニア
Crystal Soundを拠点に活動する気鋭のレコーディング・ミックスエンジニア。超特急、TAEYO、week dudus、Sound’s DeliなどHIPHOP、R&Bからポップスまで様々な楽曲制作に携わり、Dolby AtmosミックスにおいてはSySiSY「Weekend」、Lil’Yukichi 「May I… feat. antihoney」などメジャーからインディーまで幅広く手掛けている。
Crystal Sound
劇伴制作におけるDolby Atmos
ROCK ON PRO(以下、R):本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございます。さっそくですが、みなさまそれぞれの「Atmos事情」のようなものあれば伺いたいのですが。
戸田:Netflixが納品形態としてAtmosを推奨していることもあり、実際にAtmos制作に関わる機会は多くなっています。ただ、劇伴音楽という立場からすると、Atmosによって得られる「空間」は効果音で自由に使ってもらう、というスタンスでいるほうがよい結果になると思っています。特殊な効果以外では頭上から音楽が聴こえる必然性はないですし、逆に見ている方を混乱させてしまうことにもなりかねない。そうではなくて、作品の効果を高めるためにどうやって「空間」の中で効果音と共存していくか、ということを考えることが多いですね。
深田 晃 氏
深田:映画の場合は、音楽と効果音の役割分担というものがありますよね。最近関わらせてもらったある映画作品で、少年合唱団が歌うシーンがあって、それは高さが追加されることで7.1chよりもさらにドキドキする、引き込まれるシーンになったなと思っています。
戸田:オブジェクトトラックを使って音楽を動かす、ということはありますか?
古賀:今のぼくのデフォルトのセッティングでは、20個のオブジェクトトラックが常に立ち上がってます。9chのワイドチャンネル用、トップフロント用、トップリア用のセンドを6チャンネル分作ってるんです。あとはSpat Revolutionで9.1.6のリバーブを作って常に送り込んでたりするので、その分はオブジェクトを使いたいって感じですね。でも、別に動かしたいわけではなく鳴らしたいだけ。まだ映画でAtmosをやってないんですけど、たぶんセリフの関係とかで音楽がワイドチャンネルに逃げなきゃいけない場面ってあると思うんです。そのために、それくらいのオブジェクトは必要なんじゃないかなって。ただ、オブジェクトの使い方は難しいな、と。逆に聞いてみたかったんですが、劇伴では音楽に何チャンネルくらいのオブジェクトトラックをもらえるんですか?
戸田:基本的にはベッドのみで、オブジェクトは使わないようにしてます。劇中ではなくオープニング / エンディングとかでオブジェクトを使って音楽を聴かせる、という使い方をする場合はあるんですけど。その時はステムからオブジェクト化して、Atmosにした場合の効果をエンジニアさんと確認しながら制作したんですが、それは全スピーカーを音楽だけに使えるからやれることで…。もちろん、新しい使い方は模索してるんですが、現時点では劇中で音楽を回したり、というのはやはり無理なので、考え方としてはサラウンドから空間をさらに広げるという形になっていますね。
R:ハイトチャンネルからの音ってどんな使い方をするんですか?
戸田 信子 氏
陣内一真 氏
戸田:ビックリさせる効果を出すために使ったりしました。テーマソングがついてる敵キャラがいるんですけど、登場シーンでその歌を上から降らせたりとか。攻殻(註:Netflix『攻殻機動隊 SAC_2045』)だと、ハイトを使ったのはそれくらいですかね。ハイトはやはり主に効果音が使ってました。
古賀:効果音をハイトから出す時って、プラグインで広げたりしたんでしょうか。
陣内:いや、それ用のパンニングと空間処理でやってたと思います。効果の方は正確にはわからないですが、音楽に関しては今回ほとんどがシンセだったので、ものによってはプラグインで広げちゃうと音がスカスカになってしまう。なので、基本的にはパンニングでちゃんとその位置に持ってく、という形でしたね。
古賀:Atmosの仕込みはどうやってますか?
戸田:仕込みはうちのスタジオでやってます。11月公開の劇場版(註:2021年11月12日〜25日に上映された『攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争』)の場合は、すでにNetflixで使用したデータをサラウンドのステムで用意してあったので、それをバラしてAtmosにミックスし直しました。12話あったものを2時間にまとめてるのでほぼ付け替えでした。
古賀:Atmosのままとっておくわけではないんですね。
戸田:Atmosのステムだと5、60GBになるわけですよ。データで送るのもままならない(笑)
古賀 健一 氏
古賀:2時間映画だと、何日くらいダビングステージ(註:映画制作で、ファイナルミックスを行うスタジオ)に入られますか?
戸田:向こうだと、普通は2週間はあります。その代わり、終わっても白紙に戻されることもありますよ。
陣内:ダビングまで終わった映画のオープニングを作り直さなきゃならないとか。「スタジオでアシスタントが準備してるから今すぐ行って。午後から監督レビューだから。」とか言われて(笑)
戸田:とある番組では、監督OKまで出てあとは確認チェックだけっていう段階から「これニュースの音楽みたいだから変えて」とか。一週間ダビングしてあともうちょっとで終わるってところで、家に帰って音楽作り直しましたよ(笑)
R:日本だとダビングにそんなに時間は割いてもらえないですね。
戸田:そういう点では私たちの環境は恵まれていて。『攻殻機動隊 SAC_2045』はCGの制作ペースに合わせる形で、1ヶ月で2話のペースで制作してたんです。映像に合わせてイチから作ってプレゼンして…「違う」って言われてまた戻る、みたいな(笑)。12話作ると半年なので監督の好みとかもわかってきてすごくやりやすかったです。
陣内:やっぱり、シーンに合わせて書けた方が楽です。効果のガイドももらえたんで、それに合わせて引くところは引くということもできたんで。
R:今回の攻殻はじっくり見させていただいたんですが、音楽と効果音が入れ替わり立ち替わりで場面を作っていくような作品という印象でした。
戸田:ありがとうございます。監督が、もともとフィルムスコアリングをやりたかったという方なので、そういう音になったのかもしれません。今回の作品は展開が激しくて、これはたぶん選曲(註:新たに作曲せず、既存の曲を使用すること)ではできなかったな、って(笑)
陣内:Atmosということで言うと、あらかじめ曲ができていて後からそれを「Atmosで」っていうよりは、全体の音響に対してちゃんと曲をデザインしていける方が効果的なのかなって、ダビングをしていて思いましたね。例えば、10分間バトルし続けるシーンがあったとして、既存の曲を10分間ループさせるわけにはいかないですから。
murozo 氏
古賀:最終的なビジョンを共有していることはすごく大事ですよね。
戸田:特にAtmosだと、効果音がどこから鳴るかだけじゃなくて、効果音の種類とかでも世界が変わっちゃうじゃないですか。シリアスな音楽を作ってきたのに効果音はコミカル、みたいになると全然違うし。そういうことをちゃんと打ち合わせできた方がいいですね。
古賀:効果音がすごく低音を出してきたりすると、「この曲、ベース要らなかったじゃん」みたいになっちゃう。
戸田:BGMが邪魔になっちゃいますからね。
陣内:実際、一番下の音域の使い方は結構気を使いますね。いたるところでドーン!と来るわけにいかない、というか。
戸田:カークラッシュのシーンとか、効果音からすれば一番「ドーン!」といきたいところじゃないですか。そういうシーンでは、キワまで音楽でガァーっと盛り上げてパッ!と逃げる、みたいにするんですけど…たまに効果も逃げちゃって「シーン…」みたいな、「え?新しい演出??」みたいなことになることもあります(笑)
古賀:ピクチャーロック(註:以降、映像に変更がない状態のこと)はあるんですか?アニメだと、あとから映像を変更できるじゃないですか。
戸田:ピクチャーロックは大前提ですね。
陣内:効果のタイミングは特にそうですね。
戸田:シーンごと変わったりしない限り音楽はある程度は対応できますけど、効果音は数フレーム違うだけで気持ち悪いことになっちゃいますから。
音楽制作におけるDolby Atmos
R:いわゆる音楽作品の場合はいかがでしょう?
古賀:やっぱりAtmosと相性がいいのはライブものなんですよね。「今回はAtmosでやってみませんか?」っていう提案も、ライブものだと受け入れてもらいやすいです。
R:やっぱりライブ空間を再現する、というのは方向性として分かりやすいですよね。
戸田:やり方としては、コンサートとかライブを収録して再現する方向にした方が、絶対Atmosの良さは生かせますよね。アイドルグループが映画館を貸し切ってAtmosでライブビューイング中継やったりしてますけど、実はあの方向が一番効果的なのかなと思ったりします。
深田:Atmosになって変わったことというと、客席後方に立てていたマイクは使わなくなりましたね。今までは客席で聴いている音場を意識していたんですけど、Atmosになってからは指揮者のあたりをリスニングポイントとして意識するようになりました。以前のフロントLRが、サイドチャンネルに近くなる感じです。立体音響になることでオケに寄っていっても違和感がないように感じます。
R:マイクのお話が出たのでお伺いしますが、Atmos制作にあたってレコーディングに変化はありましたか?
古賀:ぼくはAmbisonicsマイクを立てまくってます。Atmosに使わなくても、2chのアンビとか、あとで何にでも使えますし。ただ、スタジオのメンテがちゃんとしてないといけないんですよ。Ambisonicsだと、1チャンネル録れてなかったら全部ダメになってしまう。4チェンネルのレベルもきれいに揃わないと位置情報がずれるので、HAも精度の高いものが求められます。その辺は悩ましいと思いつつ、スタジオのメンテナンスをするモチベーションと捉えてます(笑)
深田:Atmosになって「ハイトが追加された」と考えると、メインLRの真上に置くとしても、AB、XY、ORTF…組み合わせは無数にあるじゃないですか。そういうものをいろいろと実験してはいますね。
R:サラウンドの時のように新しいアレイが発表されるでしょうか?
深田:AESではいろいろ出てるみたいですよ。ただ、ハイトにマイクを立てるとなると、ミドルレイヤーの音がハイトのマイクに入ってしまうという問題が起こるんです。だから、理屈で言えば単一指向の方が向いているっていうことになるんですけど、そうすると、マイクの距離をどうするかという話にもなる。でも、いろいろ試した結果ではそこはあまり大きな問題にはならなそうでした。
R:まずは「ハイトのマイクがある」ということが重要、ということですね。
深田:そうですね。それと、単一指向の方が中心周波数が高いところにあってクリアーな音になるから、そうした意味でも単一指向の方が立体音響に向いているという理屈になるんですけど…聴いた感じは全指向の方が好きだったり、いろいろ難しいですね(笑)。ぼくはメインのLRマイクの上に立ててるやつは単一で、オケの中で録ってるマイクは全指向にしてます。
古賀:ぼくはホールでは三点吊り(註:ステージ上方にマイクを設置するためのワイヤー機構)にAmbisonicsマイクを立ててます。これにメインのLRマイクを足して、芯はメインでしっかり録るって感じです。三点吊りに複数のマイクをちゃんと設置するのって難しいじゃないですか。何度もやり直すとホールのひとに怒られちゃうので(笑)Ambisonicsマイクはカプセルの位置が固定されてるから、その辺の心配がない(笑)客席とステージ上にも使って、Ambisonicsマイクを3本使ってます。
Dolby Atmosとデジタルミュージック
R:Atmos制作ならではの難しさみたいなものはありますか?
戸田:打ち込み制作の限界について、強く感じますね。攻殻のようなSF作品だとサンプルライブラリのようなものを使用する機会も多いんですが、もともとAtmosミックスを前提に収録されていないものが多いので、Atmosの良さを活かしきれていないと感じることがあります。なので、生オケを収録するような場合ははじめから各マイクを各スピーカーに当てられるような配置で演奏を録る、アンビエンスを録る、というようなこと目指してます。
陣内:市販のサンプルライブラリだと、ステレオまでしかないというものも多いですが、それだとその時点で選択肢から外れちゃう。少なくともクアッドで鳴らせるサンプルが必要です。それでも、5.1chの時はまだよかったんですけど、7.1.2chになると音が空っぽすぎるので、メインのほかにルームマイクが収録されているようなライブラリだったらそれも全部立ち上げたりして…なんとか疑似的に作ってはいたんですけど。
戸田:ルームとメインとサラウンド…
陣内:それとスポット。各楽器でそれがステレオで4本ずつ、となると結構データ量がかさんじゃって。
戸田:そうなると、何百トラックも使うような音楽は扱えなくなっちゃうんですよ。特に、96kHzとかで収録してさらにマイクの本数が増えると大変なことになってしまいます。どちらかというと、機材やツールのスペック的なところがまだAtmosに対応できてない部分があるように感じます。Atmosで使用することを前提にした音源も全然少ないですし。
陣内:いまのぼくらのセットアップでいうと、ウッドウィンドとストリングスはAtmosフロント / リアのチャンネルがあるライブラリーなんですよ。けれども、全部立ち上げるとちょっと…音が鳴らなくなっちゃうので(笑)サンプル用のPCが1台1セクションみたいな…ストリングスで1台、ブラスで1台、みたいな感じになっちゃってます。
古賀:昔のGIGA STUDIO時代に戻ってるみたいですね(笑)
陣内:音源のコアのクオリティみたいなものが、顕著に出てくるんです。ソフトシンセにありがちなエフェクトで音ができているようなものだと、リバーブを切ると全然楽器の音にならずに使いものにならないんですよ。リバーブもステレオでかかっちゃってるし。なので、原音がいいシンセに限定されてくるという印象です。書き出す時も、ディレイやリバーブは別系統で出して、ドライはドライで残っている状態で出さないといけない。
深田:そう考えると、生でやった方が楽ですね(笑)
戸田:ほんとにその通りです!
Atmos Musicの普及とミックス
R:Apple MusicやLogic ProのDolby Atmos対応についてはいかがでしょう。
Murozo:シェアが大きいApple MusicがDolby Atmosに対応したのは大きいと思います。
古賀:ぼくらエンジニアは、どこか馴れちゃってる部分があると思うんですよ。リスナーの方が「理由はわからないけど、明らかにこれまでの音楽とは違う!」って、気付いてる印象があります。特に若い子たちは、そういう新しい表現を貪欲に受け入れてくれてるように見えます。
Murozo:海外と比べて日本のスタートが大きく遅れたわけではないので、海外よりもいいものを制作することもできる大きなチャンスだと思っています。当初は過去作をアップミックスしただけのようなものも多かったですが、最近はAtmosを前提にしたいい作品が出てきているようにも思います。
古賀:すごく熱心な方もいて、昨日も「Atmosはすごくいいから、これでうちのアーティストも出したいんだ!」って方がうちのスタジオに来てくれて。そういうひとたちってやっぱり世界を見てて、「世界のプレイリストの中に並べたら、絶対この子のよさに気づいてもらえる」っていう熱い想いを持った方なんですよ。
戸田:ステレオマスターをプラグインでアップミックスしただけのような作品ばかりになってしまうと、Atmosの良さがうまく伝わらないんじゃないかというのは心配ですね。さっきのサンプル音源の話と同じで、ステレオ前提で録ったものをAtmosにしようとすると、ないものをあるように聴かせるためにいろんな無理が出てきてしまう気がします。これからAtmosの新録作品がどんどん出てくることに期待します。
R:LogicがAtmos対応したのも大きなニュースですね。
Murozo:作家さんが「ちょっとやってみようか」でパッとできるところまで来たということですからね、どんどん挑戦したいです。
古賀:Atmosミックスは難しい、みたいに思っている方もいると思うんですけど、ステレオの方がはるかに難しいですよ。ちゃんと録音しておけば各チャンネルに置くだけで終わりですからね。
R:実はステレオほどシビアなレベル管理は要らないんですよね。
深田:5.1chの時って、スイートスポットからちょっと外れると、リアから出してる音なんか特にすごく不自然に聴こえましたよね。それが、Atmosでは高さ方向があるせいか、そういう状況でもあんまり変な感じにはならないというか…スイートスポットが広がった、という印象がありますね。
古賀:円の外に出て聴くのが楽しくて好き(笑)「あー、半球状だな〜」って思います。
Murozo:円の外で聴いた時に違和感がなくなったら「できたな」って判断してます(笑)
古賀:サウンドトラックについてはどうですか?
戸田:Atmosで配信できるようになって、制作したフォーマットのまま聴いてもらえるようになったのはよかったですね。ただ、それがどういう環境で聴かれてるか、っていうことに関しては逆にわからなくなっちゃうわけで。ステレオを作らなきゃいけない時は、もうダウンミックスですね。
陣内:本来なら、ステレオはステレオのバランスがあるので、別途ミックスしたいですが。
深田:ぼくは5.1chや7.1chとは別に、もう一度ステレオ用のミックスを作ります。作品にもよると思うんですけど、映像作品の音楽って短くなりがちで楽曲として成立しにくいものがありますよね。いまよく一緒に仕事してる作家さんは作品の中で使用されているのとは別に、楽曲として成立する尺のあるバージョンを作曲したりしてますね。
戸田:挿入歌はそういう作り方をしたりしますね。劇伴として使う以上の尺で、2ミックスも別に用意したりします。
ヘッドホンとユーザー体験
深田:ヘッドホンとスピーカーの互換性については、すごく考えさせられます。オブジェクトトラックにしちゃうと、スピーカーのないところは全部ファンタムになるわけですよね。そうすると、ヘッドホンで作ったものを映画館で再生すると「ちょっと違うな」って感じになっちゃう。映画作品だと効果音がいっぱいあってすごく立体感があるように感じるんだけど、音楽だけだとそれほど(立体音響の)効果が感じられないんだよね。だから、最近はあんまり複雑にせずにやろうかな、と思ってるんですけど。
古賀:そう。東映のダビングステージにはじめてAtmos作品を持って行った時に結構ショックを受けて…。映画って7.1.2chなんで、自分が思ってたよりハイトチャンネルの幅が狭かったんです。サイドスピーカーの位置も思ってたよりも上にあるので、要は「ハイト」って思ってた範囲がより狭い。劇場中を回ってるイメージで作った音が、全然回ってなくて、ガッカリして帰ってきたっていう経験があります。(一同:笑)
古賀:それ以降、Atmosの音場が「半球体なんだ」ってことをすごく意識するようになりました。上側の空間っていうのはサイドに比べるとすごく狭い。Appleの空間オーディオの話で言うと、あれもやっぱり半球体だし、イヤホンなんかで聴くと後ろの音は小さくなっちゃうって感じます。それに、バイノーラルにするとショートディレイみたいなものがかかっちゃうんですけど、それを嫌う方もいる。それを避けるには、Ls/Rs(サイドに配置されたL/Rチャンネル)に音を置いちゃうのがよくて、海外のミックスとかでは歌がLs/Rsから出てるものが増えてきてる。ただ、それをやるとスピーカーで聴いた時に破綻するから、最初に「ヘッドホン特化型にしますか?」ってことは必ず確認してます。
Murozo:それで、センターがない楽曲が増えてるんですね。
古賀:LFEもセンターも使わない、メインのパートはLs/Rsにある、っていうヘッドホン特化型のミックスも出てきてますよね。バイノーラルにすると、それが結構バランスがいいんです。Atmosだとモノラル表現ひとつとってもいろいろな方法がある。ハードセンターのモノラル、LRファントムのモノラル、上のチャンネルを使ったモノラル…ヘッドホンで聴くと全部違って聴こえるので、3パターンくらい作って「どのモノラルが好きですか?」って聞いたりしてる。
R:実は、そこがみなさんに一番聞きたかったことで。配信コンテンツやApple Musicのようないまの空間オーディオって、たぶん9割以上の方がヘッドホン / イヤホンで聴くことになると思うんです。下手したらNetflixもそうですし。でも、制作者側はスピーカーで作っていて…。そこの差分はどうやって埋めてますか?
Murozo:ぼくはひたすらスピーカーと、Air Podsのような空間オーディオ対応イヤホンとの間を行き来して聴き比べてますね。それがいまできる最善の方法かな、と。
深田:バイノーラルレンダリングすると、LRがハッキリしなくなるんですよね。スピーカーの方がそこはちゃんと出るんだけど、ヘッドホンはもう無視できない時代のようにも感じていて。写真を撮るだけで疑似的に耳型が取れるようなイヤホンとか、ヘッドホン/イヤホンもどんどん性能はよくなってくと思うんですよ。いつも言うんですけど、メガネってみんなそれぞれ違うじゃないですか。同じようにイヤホンもパーソナライズするってことをもっと簡単にできる時代が来るんじゃないかな。
戸田:Atmosをステレオにダウンミックスした時に、もともと作ったミックスとだいぶ違うなっていうようなことが起こったりします。なかなかそういうところまで、事前に確認するのって難しいなと感じています。
古賀:いま個人的に思ってるのは、スピーカーのセッティングと調整をちゃんと追い込めば、その差はかなり埋められるということです。実はある時点でその手応えが得られたのでAtmos用のスピーカーを揃えたっていうのがあります。
陣内:なるほど。
深田:Appleの空間オーディオはAtmosの距離パラメーターは反映してないんですよね。TidalとかAmazonは反映してるんですけど。
古賀:はい。その機能がLogicにはついたんで、Appleの今後に期待ですね。
R:ゲームは何年も前からすでにDolby Atmosに対応していますが、ゲーム音楽での制作はどのようなものだったのでしょう?
陣内:『マーベルアイアンマン VR』の時は、オーディオエンジニアの意向もあって音楽はクアッド納品しましたね。頭を動かしたそのまま音楽も動くというものではなかったんですが、人間の頭部をソースにしたモジュレーションを軽くかける、みたいなことをやってました。上に行ったり下に行ったり激しく動くんですが、そういう部分は音楽では表現できなかったので、画面では伝わりにくいスピード感とかを表現する方向にフォーカスした記憶があります。
戸田:ゲームで難しいのが、仮想空間の中をプレイヤーが360°自由に動けちゃうんですよね。すると、じゃあ音楽ってどこから聴こえるんでしょうね??っていう…。結局、効果音は空間で鳴っているけど、音楽だけヘッドホンで聴いてます、みたいな感じになっちゃうんですよ。
陣内:実際、Xbox Oneから7.1.4で出せますよってことで、あらかじめほかのタイトルを聴いてみたら音楽はステレオだったんですよ。それで、効果音と音楽の空間感にすごく差があって…。効果音は空間に広がっているんだけど、音楽はずっと耳元で鳴ってるみたいな。
深田:だいぶ前ですけど、ビョークのVRコンテンツも音はステレオでした(笑)
R:ヘッドトラッキングものはちょっと難しいみたいですね。音楽って、どうしても定位のようなものが必要なんだな、って感じました。
古賀:音楽サブスクリプションサービスの対応は嬉しいんですが、ヘッドホンから先に体験すると「こんなもんか」と思ってしまう人もいるんじゃないかということは心配ですね。先にスピーカーを体験してもらえればAtmosのよさは伝わると思うので、そういう体験の機会が増えるといいですね。
戸田:そういう意味では、やっぱり映画は劇場(=映画館)で見てもらいたいという思いがあるんです。劇場って、作ったものを意図した通りに観せられるという最高の場所のひとつなんですよ。だから、クリストファー・ノーランなんかは、その一回の視聴の中ですべてを体験させることを目指して制作する。それってものすごく高い技術力で緻密に制御されてるから聴けるわけで、音が破綻してたら物語も頭に入ってこない。だから、その作品をしっかり演出できるところまで追い込まないといけない、っていうのは映画をやる上での掟だと思うんですよね。
R:やはり、やる以上はちゃんとしたものを作りたいですよね。
戸田:そうですね。国内でAtmos対応の映画館がやっと3館くらいできた時にインドにはもう60館くらいあって、日本はアジアの中で一番遅れてたわけじゃないですか。Atmosミックスができるスタジオもまだまだ少ない中、せっかく苦労して作っても観られる映画館がないと結局その良さが伝わらないってことになっちゃうんじゃないかな、と。映像の世界もそうだと思うんですけど、設備投資も必要ですし。それをやる必然性みたいなもの…仕事の量とか、Atmosにすることの重要性、あとは周りの声だとかが挙がってこないと、せっかく映画館を作っても外国作品しかないような状態になりかねない。日本も、作品をもっと海外に輸出することを考えれば、予算はちゃんと回るんじゃないかと思うので、ぜひ頑張ってAtmos作品を撮ってほしいですね。
Atmos Musicの展望
戸田:サウンドトラックを専門的に収録するためのオーケストラを立ち上げたんですが、いろんな企業さんに「ぜひ私のオーケストラを使って実験してください」ってお願いしたことがあるんです。その時来てくださった企業さんがやったのは、指揮者の右手前方くらいにマイクを立てて、客席ではなくステージ上で聴こえる音を立体音響で再現するという内容でした。映像も演奏者が指揮者を見る角度からのもので。それはとても面白かったんですけど、じゃあそれを何に使うのか、というところまでは落とし込めなかったんです。
深田:新日本フィルの配信の時に似たようなことをしました。木管、バイオリン、指揮者、ピアニスト…みたいに固定カメラがいくつかあって、それぞれの目線の音を作りたいという内容でした。それで、Atmosミックスを6パターンも作って(笑)、映像を切り替えると音も切り替わる、っていう(笑)。コロナで配信しかできなくなったので、新しいことにチャレンジする試みのひとつで体験としては新鮮で面白かったんですけど、純粋に音楽を楽しむというのとはやはりちょっと違うかな、と。
R:ついつい、意味もなく回してしまったり(笑)
深田:5.1chの初期の頃がそうだったんですが、新しい技術ができて、ツールが生まれて、いろんなことができるようになるとついつい小手先でいろいろと遊びたくなっちゃう(笑)。そういうことに囚われずに音楽の本質を捉えた上で新しい、という作品がどんどん出てきてほしいですね。
古賀:「配信するとCDが売れなくなるから」とか「ステレオはできてるからアップミックスでいいじゃん」みたいな考えの方も残念ながらいらっしゃるんですよね。そういう方に納得してもらうためにも、よりよい環境でAtmosミックスを聴いてもらえる機会を増やしていかないと、と思います。
戸田:根性論みたいであまり言いたくないんですけど、クリエイター、つまりモノを創っているひとたちが、次の時代を創れるかもしれない可能性が目の前にある時に、そこから手を引くっていうことが私は率直に「やだな」って思っちゃうんですよね。もちろん、いろいろな困難がありますけど、そこをなんとかやりくりしてでも「日本から発信できるすごいものができるかもしれない!」っていうことをモチベーションとしてるはずじゃないですか。たとえ社会的なムーブメントがなくても、「私たちがそういう作品を創ればいいじゃん」って考えるのがクリエーターの使命というか、性だと思うんですよ。
古賀:楽観的な話題だと、Atmosカーっていうのがあるんですよね。この前、富山でAtmosタクシーっていうのに乗ったんですよ(笑)そしたら、NetflixとかAmazon HDが入ってて。開発が進めば車でAtmosを聴けるようになるっていうシチュエーションは激増するんじゃないかと思ってるんです。そうなったら、どうやってAtmosのよさを広めようかなんていう心配は5年くらいで全部解決されちゃうんじゃないか、と。
We want more Atmos!
古賀:生収録の話だと、いま国内にはAtmosで活かせる響きを録れるスタジオが少ないんですよね。
深田:スタジオってもともと響きを録るとか音をリッチに録るというのではなくて、なるべく響かないように、ほかのマイクに音がカブらないようにっていう発想で設計されてますからね。ちょっと響くスタジオって、芸大の千住(東京芸術大学 千住キャンパス)のスタジオくらいですね。あれくらい響くスタジオって国内にはないですよ。
戸田:私が立ち上げたオーケストラも、まさにそれが課題で。一番の問題は日本にはスコアリングステージ(註:劇伴制作用の、オーケストラが収録できる大規模スタジオ)がないっていうことだったんですよ。この前も海外作品の音楽を録っていたんですが、録りたいものを録りたい配置で録れるスタジオがない。仕方がないので、ミューザ川崎、オペラシティ、所沢のミューズとか、ホールにオーケストラを入れて、マイクもいろいろと変えて、いわゆる「映画音楽!」的なトラディショナルなクラシックからハイブリッドなものまで…いろいろと試してるんです。それはそれでいいものが録れるんですけど、スタジオで、クロースマイクで録るような芯のある音、映画で使えるっていうレベルまで持っていくというのは難しくて。
深田:今は(コロナによって)難しいですけど、オーケストラの練習場みたいなところって意外にいいんですよ、それこそスコアリングステージみたいで。遮音板みたいのはないんですけど、スペースとしては全然使える。以前、札響さん(札幌交響楽団)の練習場というところで普通のアルバム用のレコーディングをしたことがあるんですよ。広くて、結構スタジオ感覚で使えたんです。
戸田:卓(音声卓)はどこに置いたんですか?
深田:ぼくは卓はほとんど使わないんですよ。HAからI/Fを介して、そのままPCに入れてしまう。
古賀:モニタリングはヘッドフォンですか?
深田:いや、控え室みたいな部屋をひとつ借りて、スピーカーでモニターします。
戸田:クリックがある時はどうしてますか?いまの劇伴だと、いわゆる「同期もの」を録りたいことも多いんですが、オケが80人規模なのでキューボックスが足りなくて…。
古賀:ぼくも小ホールの録音の時とか、自分で持ってるキューボックスを持っていきますが、やっぱり限界がある。下手をするとキューボックスのためだけに外部の業者さんを呼ばなきゃいけなくなる。
戸田:そうですね。スタジオじゃないので、搬入とセッティングで3時間かかったりとかもあって。そういうことを考えるとどうかとも思うんですが、オーケストラが7、80人の規模なのでスタジオでは録れない…なんとかならないかな、と。
古賀:結論としては、日本にスコアリングステージを作ればいいってことに(笑)
戸田:みんなでお金出し合って作りましょうよ〜(泣)
古賀:それやって死ねたら本望かな、と思ってます(笑)
戸田:結局、日本でできないから海外に行かなきゃいけなくなっちゃうんですよ。プラハとか行くと、それこそAtmosの収録とかもどんどんはじめているんですね。今日話したような音源ライブラリの限界もあって、これからAtmosによって生収録が重要視されますし、LAとかからも劇伴制作の依頼があってすごく盛り上がってるんです。海外の映画とか、Netflixでやってるような作品を日本で収録する…そういう制作を輸出するということをやりたいっていうのが、私のひとつの目標としてあるんです。それができたら、日本のAtmosミュージックはもっと盛り上がるな、って。
R:日本にスコアリングステージを作るというのが、一番いい結論なのかも知れないですね。
戸田:ROCK ON PRO で監修してください(笑)というか、ここにいるメンバーでスコアリングステージ作れるんじゃないですか?(一同:笑)
それぞれに専門分野の異なるプロフェッショナルたちによる座談会らしく、忌憚のない意見が飛び交うものとなった。配信事業の対応によるDolby Atmos体験の裾野の広がりを歓迎しながらも、制作者の意図しない環境で聴かれてしまう可能性を危惧される様子が印象に残っている。一部ではバズワード化しているDolby Atmos / 空間オーディオというテクノロジーを真に豊かなユーザー体験へと結実させるためには、地に足のついた制作・聴取が必要だと感じた。読者の皆さまの身近なところにも制作ツールは数多く存在するようになっている、ぜひその制作を実際に体験してみてほしい。
*ProceedMagazine2021-22号より転載
Music
2022/02/04
株式会社 SureBiz様 / 〜Dolby Atmos、技術革新に伴って音楽表現が進化する 〜
2021年6月、Appleが空間オーディオの配信をスタートした。そのフォーマットとして採用されているはご存知の通りでDolby Atmosである。以前より、Dolby Atmos Musicというものはもちろん存在していたが、この空間オーディオの配信開始というニュースを皮切りにDolby Atmosへの注目度は一気に高まった。弊社でもシステム導入や制作についてのご相談なども急増したように感じられる。今回はこの状況下でDolby Atmos制作環境を2021年9月に導入された株式会社 SureBizを訪問しお話を伺った。
需要が高まるDolby Atmos環境を
SureBizは楽曲制作をワンストップで請け負うことにできる音楽制作会社。複数の作家、エンジニアが所属しており、作曲、編曲、レコーディング、ミキシング、マスタリングをすべて行えるのが特長だ。都心からもほど近い洗足池にCrystal Soundと銘打たれたスタジオを所有し、そのスタジオで制作からミキシング、マスタリングまで対応している。今回はそのCrystal SoundへDolby Atmos Mixingが行えるシステムが導入された。2020年の後半よりDolby Atmosでのミキシングがどのようなものか検討を進めていたそうだが、Appleの空間オーディオがスタートしたことでDolby Atmosによるミックスの依頼が増えたこと、さらなる普及が予測されることからシステム導入を決断されたという。
我々でも各制作会社のお客様からDolby Atmosに対してのお問合せを多くいただいている状況ではあるが、現状ではヘッドフォンなどで作業したものを、Dolby Atmos環境のあるMAスタジオ等で仕上げるというようなワークフローが多いようだ。その中で、SureBizのような楽曲制作を行っている会社のスタジオにDolby Atmos環境が導入されるということは、制作スキームを一歩前進させる大きく意味のあることではないだろうか。
📷 洗足池駅近くにある"Crystal Sound"。制作、レコーディング、ミキシング、マスタリングと楽曲制作に必要工程がすべてできるようになったスタジオだ。メインモニターはmusikelectronic / RL901K、サブモニターにAmphion / One18。Atmos用モニターにGENELEC / 8330APとなっている。
サウンドとデザインを調和する配置プラン
まず、既存のスタジオへDolby Atmosのシステムを導入する際にネックになるのは天井スピーカーの設置だろう。Crystal Soundは天井高2500mmとそこまで高くはない。そこで、できるだけハイトスピーカーとの距離を取りつつ、Dolbyが出している認証範囲内に収まるようにスピーカーの位置を指定させていただいた。L,C,Rまでの距離は130cm、サイドとリアのスピーカーは175cmにスタンド立てで設置されている。スタジオ施工についてはジーハ防音設計株式会社によるものだ。その際に課題となったのがスタジオのデザインを損なわずにスピーカーを設置できるようにすること。打ち合わせを重ねて、デザイン、コストも考慮し、天井に板のラインを2本作り、そこにスピーカーを設置できるようにして全体のデザインバランスを調和させている。電源ボックス、通線用モールなど黒に統一し、できるだけその存在が意識されないように工夫されている。
📷 紫の矢印の先が平面の7ch。青い矢印の先が天井スピーカーとなっている。これを基にジーハ防音設計株式会社様にて天井板、電源ボックス、配線ルートを施工いただいた。
Redシリーズ、GENELECの組み合わせ
Dolby Atmos Musicの制作ではDAWとRendererを同一Mac内で立ち上げて制作することも可能だ。ただし、そのような形にするとCPUの負荷が重くマシンスペックを必要とする。本スタジオのエンジニアであるmurozo氏は普段からMacBook Proを持ち歩き作業されており、そこにRendererを入れて作業することはできなくはないのだが、やはり動作的に限界を感じていた。そのためCrystal Soundにシステムを導入されるにあたっては、そのCPU負荷を分散するべくRendererは別のMacにて動作させるようシステム設計をした。Renderer側はFocusrite REDNET PCIeR、Red 16LineをI/Oとしている。
RendererのI/OセットアップではREDNET PCIeRがInput、Red 16Line がOutputに指定される。Pro Toolsが立ち上がるMacBook ProのI/OにはDigiface Danteを選択している。Pro Tools 2021.7からNativeでのI/O数が64chに拡張されたので、このシステムでは64chのMixingができるシステムとなる。ちなみに、Pro Tools側をHDX2、MTRXを導入することにより128chのフルスペックまで対応することも可能だが、この仕様はコスト的に見てもハードルが高い。今回の64ch仕様は導入コストを抑えつつ要件を満たした形として、これからの導入を検討するユーザーには是非お勧めしたいプランだ。
📷 CPU処理を分散するため、Pro ToolsのミキシングマシンとDolby Atmos Rendererマシンを分離。Danteを使用したシステムを構築している。64chのDolby Atmosミキシングが可能な環境となっている。Pro Tools 側のハードウェアのアップグレードにより128chのシステムも構築可能だ。
モニターコントロールにはREDNET R1とRed 16Lineの組み合わせを採用している。これがまた優秀だ。SourceとしてRendererから7.1.4ch、Apple TVでの空間オーディオ作品試聴用の7.1.4chを切り替えながら作業ができるようになっている。また、Rendererからバイノーラル変換された信号をHP OUTに送っているため、ヘッドフォンを着ければすぐにバイノーラルのチェックもできる。スピーカーについてはGENELEC 8330APと7360Aが使われており、補正についてはGLMでの補正にて調整している。マルチチャンネルを行う際は補正をどこで行うか、というポイントが課題になるが、GLMはやはりコストパフォーマンスに優れている。今回のFocusrite Redシリーズ、GENELECの組み合わせはDolby Atmos導入を検討されている方にベストマッチとも言える組み合わせと言えるだろう。
📷 左は机下のラック。左列下部に今回導入いただいたRed 16Line(オーディオインターフェース)、SR6015(AVアンプ)、SWR2100P-5G(Danteスイッチ)が確認できる。ラックトレイを使用して、AppleTV、Digiface Danteもこの中に収まっている。右はGENELEC /8330AP。天井スピーカーであっても音の繋がりを重視し平面のスピーカーからサイズを落とさなかった。
Dolby Atmos環境で聴こえてくる発見
実際にDolby Atmosシステムを導入されてからの様子についてどのような印象を持っているかも伺ってみたところ、Apple TVで空間オーディオ作品を聴きながら、REDNET R1で各スピーカーをSoloにしてみて、その定位にどんな音が入っているかなどを研究できるのが便利だというコメントをいただいた。空間オーディオによって音楽の新しい世界がスタートしたわけだが、スタートしたばかりだからこそ様々なクオリティの音源があるという。システムを導入したことにより、スピーカーでDolby Atmos作品を聴く機会が増え、その中での発見も多くあるようだ。ステレオミックスとは異なり、セオリーがまだ固まっていない世界なので、Mixigを重ねるごとに新しい発見や自身の成長を確認できることがすごく楽しいと語ってくれた。その一例となるが、2MixのステムからDolby Atmos Mixをする際は、EQやサチュレーションなどの音作りをした上で配置しないと迫力のあるサウンドにならないなど、数多くの作品に触れて作業を重ねることで、そのノウハウも蓄積されてきているとのことだ。
📷 Dolby Atmos用のモニターコントロールで使用されているREDNET R1、各スピーカーのSolo機能は作品研究に重宝しているとのことだ。Source1にRendererのプレイバックの7.1.4ch。Source2にAppleTVで再生される空間オーディオに試聴の7.1.4chがアサインされている。制作時も聴き比べながら作業が可能だ。
技術革新に伴って音楽表現が進化する
最後に今後の展望をmurozo氏に伺ってみた。現状、Dolby Atmos Mixingによる音楽制作は黎明期にあり、前述のようにApple Musicの空間オーディオでジャンル問わずにリリース曲のチェックを行うと、どの方法論が正しいのか確信が持てないほどの多様さがあり、まだ世界中で戸惑っているエンジニアも多いのではないか、という。その一方で、技術革新に伴って音楽表現が進化することは歴史上明らかなので、Dolby Atmosをはじめとする立体音響技術を活かした表現がこれから益々の進化を遂げることは間違いないとも感じているそうだ。「そんな新しい時代の始まりに少しでも貢献できるように、またアーティストやプロデューサーのニーズに応じて的確なアプローチを提供できるように日々Dolby Atmosの研究を重ね、より多くのリリースに関わっていければと考えています。」と力強いコメントをいただいた。
📷 株式会社SureBiz murozo氏
今後さらなる普及が期待されるDolby Atmos。世界が同じスタートラインに立った状況で、どのような作品が今後出てくるのか。ワールドワイドで拡がるムーブメントの中で、いち早くシステムを導入し研鑽を積み重ねているSureBiz / Crystal Soundからも新たな表現のセオリーやノウハウが数多く見出されていくはずである。そしてそこからどのようなサウンドが生まれてくるのか、進化した音楽表現の登場に期待していきたい。
*ProceedMagazine2021-22号より転載
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-creative-summit-2021-online/#.YfzvmvXP3OQ
Headline
2022/01/28
名古屋芸術大学 学生によるオーケストラ・バイノーラル・ライブ配信 ~ Dolby Atmos / 360 Reality Audio / AURO-3D ~
名古屋芸術大学 学生によるオーケストラ・バイノーラル・ライブ配信
~ Dolby Atmos / 360 Reality Audio / AURO-3D ~
Text by 名古屋芸術大学 サウンドメディア・コンポジションコース 長江和哉
2021年1月から8月にかけて3 回に渡り、私が録音を教える本学サウンドメディア・コンポジションコースの学生が中心となり、本学オーケストラのコンサートをバイノーラル音声でライブ配信した。本コースは、作曲、録音、音響を学び、新しい時代に必要となる音楽表現を研究していくコースであるが、このようなコンサートのライブ配信を初めて行ったのはコロナ禍が始まった2020年の3月、本学ウィンドアカデミーコースによるコンサートの際に、学生有志が身の回りにある機材を用いて行ったことが始まりである。
その後、2020年夏に配信の基本的な機材を揃え、2020年10月より音楽的な音声や映像によるライブ配信を目指し、コンサートごとに参加者を募り、その都度配信チームを編成し、この1年半で7回のライブ配信を行ってきた。2021年1月からは、研究のために「何か新しいこと」にトライできたらということで、音声は通常ステレオとバイノーラルと2 つのミックスをリアルタイムに作成しライブ配信を行った。筆者は、これらの取り組みを10月20日から23日に行われた、AES Fall Online 2021 Conventionで、ARTSRIDGE 濱﨑公男氏、東京芸術大学 亀川徹氏、WOWOW 入交英雄氏とともに「Next Generation Audio forAdvanced Music Creations and Distributions - Part 2」と題したワークショップで発表したが、今回はProceed Magazineの読者の皆さんにもその詳細をレポートさせていただきたい。
背景
コロナが私たちの生活を激変させた2020年。芸術大学である本学も、慣れない画面越しでのオンライン授業で前期が始まり、教員、学生とも、パソコン、スマホ、カメラ、マイク、スピーカー、イヤホンなどの機器と毎日接する暮らしが始まった。そんな中、演奏実技や実習系の科目は前期の途中より対面授業となり、人と人のリアルなコミュニケーション、そして、そもそも音楽とはどのようなものであったかを再確認した時間となった。
本学では毎年様々なコンサートを企画しているが、その中でも、コロナ禍の中で最初に行われることになった2020年10月22日のオーケストラコンサートは、有観客を予定しながら、コロナの状況が悪化した場合を考慮して配信も同時に行うことが夏頃に決まった。そもそも本コースは、作曲、録音、音響を学ぶコースであるが、学生達がカメラや映像機材を組織することでコンサートのライブ配信ができるのでは、というアイデアはどこからとなく出てきた。そして、2020年夏にビデオ・スイッチャー ROLAND V-1 SDIを導入し、すでにあったSonyの4Kハンディカムを用いながら、HDMIをSDIに変換し50m伝送するケーブルドラムを自作するなどして配信機器を整えた。
振り返って考えてみると、このアイデアは教員である私自身が、オンライン授業のためのカメラや映像周辺機器を組織した経験がなければ敬遠していたかもしれない。なぜならコロナ以前は全く映像配信の知識はなかったからである。そして、この配信プロジェクトには多くの学生が参加してきたが、このコロナ禍でのオンラインでのコミュニケーションという経験がなければ、学生もこれほど映像配信に興味を示さなかったかもしれない。今、改めて振り返ってみるとこれらの配信はコロナ禍の副産物なのかもしれないと感じている。
3D Audio
2020年から2021年夏にかけて、本学のスタジオのPro Tools システムを14年間使用したPro Tools HD 192 I/O からPro Tools HD HDX MTRXシステムに更新した。この際に、5.1chであったスピーカー環境をCR1は7.1.4ch に、CR2は5.1.4ch に変更した。これらシステムにおける更新のほとんどは、学生と一緒にカスタマイズしながら行った。その後、このスタジオを用いて2020年度の卒業制作では数人の学生が3D Audioの作品に取り組み始めた。今回のバイノーラル配信を始めようとしたきっかけはコロナのみではなく、本学スタジオのシステム入れ替えにも関係があるように感じている。
📷 CR1は、7.1.4 Genelec 8330 11本のシステム。CR2は5.1.4 L-C-R 8030 LS-RS 8020、トップスピーカー4つは8020を設置。Dolby Atmos Production Suite、360 Reality Audio Creative Suite、AURO-3D Creative Tools Suite & Auro-HeadPhone が動作可能な環境となった。
📷 2020年8月、CR1のPro Tools HDXのインストールの様子。この時のPro Toolsの入れ替えはROCK ON PROの前田洋介氏にサポートいただきながら行ったが、2021年8月に行ったCR2の入れ替えは私たちのみで行うことができた。
バイノーラル配信
2020 年10 月に三井住友海上しらかわホールで行った1 回目のオーケストラライブ配信は無事に終了し、2 回目の12 月に愛知芸術劇場コンサートホールで行なったライブ配信も同様に無事に終えることができた。そして、3 回目となる2021 年1 月のコンサートでは、もう一歩進んだ要素をライブ配信に取り入れると良いのではと私から学生に提案した。本来は3D Audio でライブ配信ができたらと思ったが、まだマルチチャンネルで音声を伝送するのは難しい。そこで、私たちは3D Audio 制作ツールの制作の補助や確認のためとなるバイノーラル出力を、そのままライブ配信の音声として使用することはできないかと考えた。
まず最初に、本学が2020年に導入したDolby Atmos Production Suite(DAPS)を用い、学生とともに以前行われたコンサートのマルチトラックファイルを別のPro Toolsより再生しながらMADI経由で各マイクの信号を入力し、ライブバイノーラルミックスをすることができるかのテストを行なったが、それほど困難なく実現できることがわかった。その後、私たちは様々なストレステストを行った。DAPSを用いたライブバイノーラルミックスは、Pro Toolsで録音しながらインプットスルーした信号をDAPSにセンドしバイノーラル処理させ、Pro Toolsにリターンするという、Macにとってはかなりの負荷になることとなるが、そのストレステストを事前に行うことで、「何を行ったらシステムがハングするか」を見極めることができた。このような方法で1月29日は、Dolby Atmos Production Suiteでライブ配信を行った。その後、そのほかのツールでも配信を行いたいという意見が学生から出て、6月3日は360 Reality Audio Creative Suite、8月9日はAURO-3D Creative Tools Suite & Auro-HeadPhoneを用いてライブ配信を行った。
📷 ライブ配信の舞台裏。プロデューサー、テクニカルディレクター、カメラ、スイッチャー、標準ステレオミックス、バイノーラルミックスといった役割にわかれ毎回14名程度のチームを組織した。
📷 カメラマンとスコアラー。スイッチャー担当があらかじめカメラ割りを決め、それに基づき撮影を行ったが、全員が初めての経験からスタートした。
バイノーラル研究
私たちは、バイノーラル3D Audio制作ツールの中でどのようにバイノーラル信号が生成されているかを知る必要があると考えた。バイノーラル音声を作成する方法は、バイノーラルマイクで集音するか、マルチマイクでミキシングされた信号を3D Audio制作ツールを用いて処理するかの2つ方法がある。バイノーラルマイクはマイクのみで完結するが、楽器ごとにバランスを取ることは困難である。となると必然的に3D Audio制作ツールでとなるわけであるが、それらはいったいどのような仕組みであるか?これらのツールの中身はいわゆるブラックボックスであるが、これまで筆者が行った研究では、大きく分けて2つの処理がなされているように察している。
その一つ目がEQ、つまり周波数ドメイン、そしてもう一つがリバーブやディレイと行った時間ドメインである。まず、周波数ドメインについて、それは、DAWにおける各トラックの信号をステレオのようにそのまま出力させるのではなく、その定位を実現するために、頭部伝達関数=HRTF(Head related transfer function) という、音が人間の鼓膜に届くまでの、耳介、外耳道、人頭および肩までふくめた周辺物によって生じる音の変化の伝達関数から導き出されたEQ処理がなされる。そして、時間ドメインについて、再生はヘッドフォンでヘッドホンではあるが実際には部屋で聴いているような印象になるように、リバーブの付加やディレイが用いられ空間的な制御がなされていると察している。
📷 2016年11 月、ドイツトーンマイスター協会主催のコンベンション「Tonmeistertagung 2016」でのAURO-3Dのプレゼンテーションより。左の写真は、耳介に対して上方、前方からの音声の伝達パスについて、どのような周波数のピークディップが起こるかについての説明。右の写真は、バイノーラル処理のプロックダイアグラム。入力信号は、Early Reflection (初期反射) とLate Reverberation (後部残響音) とともにHRTF処理され、ヘッドホンのためのEQを経てBinaural 2.0として出力されると解説されていた。(ドイツ・ケルンメッセにて筆者撮影)
そして、私たちはそれらを具体的に知るために分析を行った。方法はDAWよりピンクノイズを出力し、バイノーラル処理された音声をDAWに戻し、HRTFのEQカーブを分析。また、AUDIO EASEAltiverb 7のリバーブサンプリング用のスイープ音を出力し、付加されるリバーブなどを分析した。その結果、3つの3D Audio制作ツールのそれぞれの処理は三者三様であることがわかった。
📷 ピンクノイズを用いた、Dolby Atmos Production Suiteでのバイノーラル処理研究の様子。距離の設定はmid。トップレイヤの一番後ろに音源を定位した際は、このような周波数ドメインでの処理がされる。同様の方法で、360 Reality Audio Creative Suite、AURO-3D Creative Tools Suite & Auro-HeadPhoneを用いて研究した。
その後、かつて収録したマルチトラックを用いて、どのようにミックスすると音楽的な音色がありながら立体感を得られるかということを検討した。具体的には、Dolby Atmos Production Suiteは、トラックごとにバイノーラル処理するかしないかを選択でき、near mid farという3 つの距離を設定することができる。私たちはその組み合わせについて検討した。1. バイノーラル処理しないもの 2. 全てのトラックをバイノーラル処理したもの 3. メインマイクLCR、HL-HR、Vnのスポットマイクのみバイノーラル処理しないもの、これら3つのミックスを作成し比較した。
📷 Dolby Atmos Production Suite でのバイノーラル処理の設定を3 パターン試し、どのように設定すると、音楽的な音色で立体感が得られるかを検討した。
その結果、音楽的な音色という観点から、すべてのトラックをバイノーラル処理することが常に良いとは限らないことがわかった。 そこで、標準ステレオとバイノーラルのミックスは、まず全く別のミックスを作成する必要があること、また、メインマイク、ルームマイクについて、バイノーラルで多くのルームマイクを用いるとサウンドがコムフィルターの関係で濁ることがわかった。その後、様々な組み合わせを試したが、3Dスピーカーで再生される音源としては多くのルームマイクが必要であるが、バイノーラルではメインマイクから遠く離れたHLS-HRS、つまり、メインマイクと異なる性質を持ったルームマイクとスポットマイク、そしてリバーブも必要であることがわかった。
ライブ配信セットアップ
📷 2021 年1月29日名古屋芸術大学学生オーケストラ with 名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団特別演奏会
指揮 : 高谷 光信 ピアノ : 瀧澤 俊(本学学生) 愛知県芸術劇場コンサートホール
バイノーラル研究を経て、通常ステレオとバイノーラルと2つの動画ストリームを配信するために、写真のように収録配信機材を組織した。メインマイクについて、通常ステレオとバイノーラルでは、L-RとHLS-HRSのみ用いたが、事後に行う3Dスピーカーによるミックスのためにこのようにマイクを配置した。
1:2021/1/29:Dolby Atmos Production Suite
名古屋芸術大学学生オーケストラ with 名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団特別演奏会
指揮 : 高谷 光信 ピアノ : 瀧澤 俊(本学学生) 愛知県芸術劇場コンサートホール
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2:2021/6/3:360 Reality Audio Creative Suite
名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団 第7回定期演奏会「オール ハイドン プログラム」
指揮 : 松井 慶太 合唱 : 名古屋芸術大学ハルモニア合唱団 Tp. 宮本 弦 Sop. 伊藤 晴 Alt. 谷田 育代
Ten. 中井 亮一 Bar. 塚本 伸彦 愛知県芸術劇場コンサートホール
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3:2021/8/9:AURO-3D Creative Tools Suite/Auro-HeadPhone
名古屋芸術大学フィルハーモニー管弦楽団 第8 回定期演奏会「オール モーツァルト プログラム」
三井住友海上しらかわホール
>>詳細URL
📷 2014年に導入したRME MADIface XT。2台ありステージボックスからのマイク信号をメイン、バックアップの2式のDAW に分配できる。
📷 ステーシの平台の近くに設置したRME OctaMic XTC。ステージボックスはメインマイク用のRME Micstasyとともに2式あり、光ファイバーNeuatric opticalCONを用いMADIface XTと接続している。ステーシの平台の近くに設置したRME OctaMic XTC。ステージボックスはメインマイク用のRME Micstasyとともに2式あり、光ファイバーNeuatric opticalCONを用いMADIface XTと接続している。
サウンドコンセプト
バイノーラル研究を経て、どのようなサウンドコンセプトにし、各楽器を定位させると良いかを検討した。私たちは、定位について方法は2つあると考えた。それは、まず客席から舞台を見たように定位にするアイデアと、オーケストラの中にいるようなアイデアである。その両方を試したが、前者はヘッドホンで聴くと後ろは響きしかないように感じた。次に、オーケストラの中心、弦楽器と木管楽器の間にいるような定位を試したが、音楽的にはアレンジがより見通せるようになり、また音響的にも包まれている感じが増した。その結果より私たちは後者を選択した。以下は6月3日のコンサートライブ配信のWeb に記したサウンドコンセプトと360 Reality Audio Creative Suite での音源定位である。
📷 2021年6月3日「オール ハイドン プログラム」の定位図。後方に様々な楽器を定位させた。" バイノーラル・ステレオのコンセプトは「舞台上のオーケストラ中央で聴いているような感覚」。客席で聴いているようなサウンドではなく、オーケストラの弦楽器と木管楽器の間の位置で聴いているようにしたいと考えました。具体的には、弦楽器は前、木管楽器や合唱は後といったように360 度の空間に各楽器の音を配置しました。一方で通常ステレオのコンセプトは、「指揮者が聴いているような感覚」。指揮台上に配置したメインマイクを中心としながら左右と奥行きを表現したいと考えました。"
ポストプロダクション
📷 ポストプロダクションの様子。上はDolby Atmos Production Suiteでのバイノーラルミックス。
2020年10月に初めて行なったコンサートライブ配信が無事に終わった後、配信チームのメンバーは、「何度見てもリスナーに観てよかったと満足していただくことができる音楽」とするためには、様々なポストプロダクション作業が必要なことを理解した。映像のスイチングミス、カメラのブレやピントがうまくいかなかったところを他カメラのデータを用い修正、また音声もミキシング操作に起因するバランスがふさわしくないところは再ミックス、他にも演奏が音楽的にふさわしくなかったところはGPのテイクを用いて編集を行う必要もあり、最終的には必要のないノイズを除去するノイズレストレーションも行いながら、アーカイブ版として再度アップすることが必要であることがわかった。1回目の配信ではこれらの作業が大変に感じられたが、2回目以降は作業をどのように分担し、効率よく進めて行くかも考慮することができた。
終わりに
AES Fall Online 2021 Conventionでの発表のために、8月30日から9月6日まで本コースのFacebookとTwitterで告知し、オンラインでアンケートを行った。3回のコンサート音源の同じ箇所を通常ステレオとバイノーラルと交互に再生し、その印象を返答する方式で行い62人から返答を得た。
結果は、「バイノーラルは、標準ステレオよりも音楽に囲まれていると感じたか?」については、リスナーの69%が同意、もしくは強く同意したが、「バイノーラルは、標準ステレオよりその音楽にとっても好ましいと思ったか? 」については、リスナーの50%が同意、もしくは強く同意した。さらに、バイノーラルが将来において標準ステレオに取って代わるかについては、40%が同意しない、もしくはまったく同意しないという意見が得られた。これらの結果からは、私たちの音源制作方法についてはまだ改善の余地があるということと、やはり人々の耳のかたちは様々で、HRTFデータのパーソナライズ化が必須であるのではということを察することができた。
私たちの最終目標は「より音楽に没頭することができる音響体験」をリスナーに届けることである。コロナ禍で今までとは異なる生活様式となったが、本コースでは、このコロナを機にこれまで行って来なかったライブ配信に取り組むことができた。映像と音声を伴った制作は、教員にとっても学生にとっても未知のことに直面したが、これらに挑戦することは、とても貴重な取り組みとなった。今年度後期は、4回のオーケストラや吹奏楽、室内楽のコンサートの配信を予定しているが、これからも新しいテクノロジーを取り入れながら配信を行って行きたい。最後に、今回のバイノーラル配信の技術サポートの対応をいただいた、ドルビージャパン、ソニー ホームエンタテインメント& サウンドプロダクツ事業本部、Auro Technologiesの各氏に感謝申し上げたい。
Interview
配信チームの学生に、ライブ配信に参加してどのようなことを感じたかをインタビューした。
3年:武石智仁さん:テクニカルディレクター担当
本学でのライブ配信は、新型コロナウィルス感染症が流行する初期であった2020年3月に、ウインドアカデミーコースの定期演奏会の配信を学生のみで行ったことから始まりました。その時は十分な機材も知識もなく行いましたが、2020年8月に配信機材が導入され、これまで10回のライブ配信に参加しました。そして、2021年1月からは、何か新しい取り組みをしたいと考え、ステレオ音声だけではなくバイノーラル音声を用いた配信も行うことができました。私自身としては、ここまでの試行錯誤と成長が最も大切な経験となりました。初期の配信ではわからないことが多くありましたが、回数を重ねることで改善することができました。そして、この3回のバイノーラル配信では、技術的な部分をまとめる立場となり、メンバーと一つの配信を作り上げる中で、どのような映像や音声だと演奏がよりその音楽にとってふさわしくリスナーに届けられるかを考えました。回数を重ねるにつれ、単に演奏を伝えるだけでなく、演奏者の思いまでを届けることが大切なのだと気付くことができました。
3年:細川尚弥さん:バイノーラル・バランスエンジニア担当
8月9日の配信の際、AURO-3Dの制作用ツールを用いたバイノーラルミックスを担当しました。ミックスについては、映像とのマッチングのこともあり、前衛的すぎる定位のアイデアは用いることができないながら、ステレオでは作れない独特の空気感を構築することができました。配信中はマウスによるフェーダーワークのみでミックスを行う必要があり慌ただしく感じましたが、「このフェーダーがリスナーに繋がっている」というスリルを感じながらミックスすることができました。実は私は、昨年大学を休学し、半年間 Rock oN Company渋谷店にて働かせていただきました。その際、業界全体で3D Audioの普及に力を入れていることを感じました。そして、今回初めてバイノーラルのミックスに取り組むことができましたが、初めてシステムに触れた際は、通常ステレオとは異なり考えなければならないことが多く難しい印象でした。ただ、今回のミックスのコンセプトはステレオミックスからの拡張をしていく方法であったので、可能性とやりがいを実際に肌で感じることができました。今後は配信とバイノーラルを掛け合わせることについて深く考え、勉強していきたいです。
3年:澤田智季さん:バイノーラル・バランスエンジニア担当
私はこれまでに何度かライブ配信に参加させていただきました。1月29日の際にはバランスエンジニアを担当いたしました。本番ではステレオのミックスを担当しましたが、ポスプロダクションではバイノーラルのミックスを行いました。バイノーラルのミックスは通常のステレオのミックスと比べて、「こういう場合はこうした方が良い」というノウハウが無いので、私たちなりの発想で直感的にミックスを行いました。単に「バイオリンの音が後ろから出たらおもしろそうだから後ろに定位させよう」という考え方でミックスをすると前衛的なサウンドになってしまい、オーケストラ音楽には合わないと感じました。バイノーラルをより音楽的に聴かせようと思うと通常のステレオミックスの理解も必要だと感じました。今後、バイノーラルミックスのクオリティを上げるためには、「ステレオ+α」の考え方でミックスをすること、バイノーラルミックスを行うツールへの理解を深めることが大切だと感じました。
3年:伊東桜佳さん:プロデューサー、スイッチャー、バランスエンジニア担当
私はこれまでの配信の中で、プロデューサー、スイッチャー、バランスエンジニア等、様々なセクションを担当しました。音の面では、バイノーラルという新しい方法でステレオ配信とは違う空間感の良さを " 誰にでも分かりやすく" 伝えることの難しさを感じました。映像の面では、少しのミスもリスナーには気になる点となるため、スイッチャーとしてどう映像を選択していくかに難しさを感じました。音、映像ともにいくら計画を立てていても、本番は予定通りとはいかない分、メンバーとのコミュニケーションを大切にしながら、 " 今" を配信していくことはとても貴重な経験となりました。さらに私たちが伝えたいものを伝えられる配信ができるよう、これからも研究していきたいと思います。
3年:長谷川伊吹さん:カメラ担当
私はこれまで8回にわたりライブ配信に参加し、様々な役割を経験しましたが、その中でカメラの画角の決め方が一番難しく感じました。例えば、同じ楽器を撮る時でも、同じような画にならないようにするにはどうすれば良いのか、ということを心掛けていました。楽器をアップにした画にするのか、人ひとりの全身が入る程度にアップするのか、パート全体を撮るのかなど、様々な選択肢の中から瞬時にふさわしい画を選択することが難しいと感じました。反面、この活動を行なった1年半の中で、技術力だけでなく、事前準備や楽曲の理解が大切なのだと痛感しました。
1年:新留潤青さん:カメラ担当
私はライブ配信の技術を学ぶために配信チームに参加しました。これまで2回参加して2回ともカメラを担当しました。私の最初の考えは「オーケストラの配信なので視聴する人はまず音を重視しているだろう」と考えていました。しかし、実際のところ特に初めてオーケストラをインターネットで視聴する人にとっては、音よりも映像を大切に感じているのではないかと思いました。つまり、クラシックを聴き慣れていない人に、どんな楽器が何人いるか?、どんな会場にいるのか?という情報を音のみで伝えるのは技術的にとても難しいと感じたからです。しかし、今後、3D Audioがあれば音のみでもそれが可能かもしれません。YouTubeでのライブ配信で音楽を伝送する方法は、普段クラシックに馴染みのない人にも勧めやすく良い方法であると感じました。
3年:碓井陽香さん:スイッチャー担当
私は何度かライブ配信に参加させていただきましたが、そのほとんどがカメラやスイッチャーなどの映像関係でした。スイッチャーをやって感じたことは、" このライブ配信を観ている人にストレスを感じさせず画面を切り替えることがいかに難しいか" ということや、" どのように音楽と映像マッチングさせるか" ということです。映像の切り替え部分は事前にスコアに記し、ある程度決めていましたが、本番で違うカメラの方が良い画だと感じたら臨機応変に変えていくことや、音楽のシーンが移り変わっていくのに合わせて、映像もクロスフェードするなど、その場その場で考えてスイッチングしていくのがとてもスリリングで楽しかったです。
3年:中島琢人さん:プロデューサー担当
私は大学の配信チームでプロデューサーを2回担当しました。その際、1つの演奏会にとても多くの方が携わっていることを肌で感じることができました。そして、コロナ禍でも配信を通して音楽を届けられることにやりがいを感じながら、感謝の気持ちを持って取り組むことができ、最終的にはポストプロダクションを終えるまで、メンバーに支えられながらチームをまとめることができました。このように毎回新しいバイノーラルの技術的な取り組みに挑戦しながら互いに知識を高め合い協力して配信を行うことができ、とても貴重な経験になりました。
*ProceedMagazine2021-22号より転載
Event
2021/11/18
【11/25 開催】Pro Tools|HDXでDolby Atmosミックスfeat.グレゴリ・ジェルメン
2021年11月25日(木) 18:00より、Avid協賛による『「サンレコ・セミナー」Pro Tools|HDXでDolby Atmosミックスfeat.グレゴリ・ジェルメン』がオンライン開催されます。
Avid Atmos認定プログラムPT210DVの資格も取得し、実際のDolby Atmos Musicミックスの経験も豊富なエンジニアであるグレゴリ・ジェルメン氏のAtmosミックス・ノウハウや、彼自身のお気に入りツール等、Pro ToolsにおけるAtmosミックスワークフローに大いに活用できる内容をご覧いただけます。
オンラインセミナー自体の配信方法も、Pro Tools HDX + MTRXを使用し、Dolby Atmos Renderer経由でリットーベースの立体音響システムに接続、そのままバイノーラル配信される形となりますので、イマーシブ・オーディオならではの臨場感も感じ取っていただける予定です。
参加費無料、事前登録不要のセミナーですので、Dolby Atmos ミックスにご関心のあるユーザー様はぜひチェックしてみてください。
セミナー概要
日時:2021年11月25日(木) 18:00〜
場所:Sound & Recording Magazine誌特設WEBページ上にて配信
講師:グレゴリ・ジェルメン氏(Sonic Synergies Engineering)
参加費:無料、事前登録不要
*配信ページは告知ページを兼ねております。セミナー開始時刻以降、ブラウザの再読み込み等をお試しください。
講師紹介
グレゴリ・ジェルメン氏。レコーディング・エンジニアになるべくパリから来日し、専門学校卒業後スタジオグリーンバード、Digz Inc, Groupを経て2021年に独立。Sonic Synergies Engineeringを設立。バンドものからR&BまでのJポップ、Kポップなど多岐にわたって活躍している。AVID認定Dolby Atmos Mixer。手掛けた作品などはこちらから。https://linktr.ee/mixedbygreg
関連記事
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Headline
2021/10/08
Dolby Atmos Renderer 最新版V3.7 がリリース
Dolby Atmos Renderer V3.7 がリリース
Dolby Atmos Production SuiteおよびDolby Atmos Mastering Suiteに含まれる、Dolby Atmos Rendererソフトの最新バージョンが、先日Dolbyよりリリースされました。
V3.7では、Intel MacとM1 Mac(Rosetta 2経由)の両方でmacOS Big Surに対応(※注意点あり)したことや、Dolby Audio Bridgeがv2.0となるなど、多くの改良が加えられています。
Dolby Atmos Renderer V3.7 変更点ハイライト
Big Sur(IntelおよびM1)互換(Intelで認定、Rosetta 2経由でM1と互換性あり)
Dolby Audio Bridge v2.0 –自動的にクロックを供給
LTCプラグインV2.0
MTC機能の削除
バイノーラル設定プラグインv1.1
オーディオをカスタムビデオと共にMP4でエクスポート可能に
Pro Tools、Nuendo、DaVinci Resolveのクイックスタートテンプレート/プリセットを更新
Input/Master設定に関する表示の分離
スピーカーのミュート
アップデート内容の詳細はこちらのリリースノートよりご確認ください。
>>Dolby Atmos Renderer Release Notes 15 September 2021 Software v3.7
https://developer.dolby.com/globalassets/tools--media/production-tools/dolby-atmos-production-suite/dolby_atmos_renderer_v3.7_release_notes.pdf
macOS Big Sur 11.5 対応
macOS Big Sur(Intel及びRosetta 2経由のM1)に対応!ただし、M1ベースのMACの場合、下記にあるようにパフォーマンスに問題が生じる可能性があるとのことですので、現段階ではIntel搭載のマシンの使用を推奨します。
Dolby Atmos Renderer V3.7は、macOS Big Sur 11.5が動作するIntelベースのMacに対応しています。Renderer v3.7は、M1ベースのMac(Rosetta 2搭載)のmacOS Big Sur 11.5と互換性がありますが、Rosetta 2はアプリケーションとARMプロセッサの間のトランスレーションレイヤーであるため、パフォーマンスに問題が生じる可能性があります。
注意:M1ベースのMacでRenderer v3.7にアップグレードする前に、オーディオI/Oとライセンス認証(iLok)に必要なすべてのドライバーがM1に対応していることを確認してください。
Dolby Audio Bridge V2.0
DAWとDolby Atmos Rendererの接続時、Core Audioベースの仮想デバイスとして動作するDolby Audio bridge。今回のバージョンアップにより、出力ハードウェアに対して自動的にクロック同期されるようになったとのこと(!)
設定が少々複雑なアグリゲートデバイスを組む手間がなくなったのは嬉しいですね。
Dolby Audio Bridge v2.0は、出力ハードウェアに対して自動的にクロッキングを行います。これにより、適切なクロックを供給するためにアグリゲートデバイスを使用するというワークアラウンドが不要となりました。
Dolby Audio Bridge仮想ドライバのこの新しいバージョンは,Rendererのインストーラーパッケージに含まれており、インストール時に選択する必要があります。Dolby Audio Bridge v1.0で作成されたアグリゲートデバイスは今後利用できなくなります。
Dolby Audio Bridge v2.0のインストールには、コンピューターの再起動は必要ありません。
注意:v2.0をインストールすると、コンピュータからDolby Audio Bridge v1.0が自動的に削除されます。
重要:古いバージョンのレンダラーをインストールした場合、古いインストーラー・パッケージに含まれるDolby Audio Bridge v1.0(アイコンなし)はインストールしないでください。Dolby Audio Bridge v2.0(図のようなアイコン)をシステム上の唯一のブリッジとして使用してください。ブリッジのv2.0はRenderer v3.5以前で動作しますが、特定のワークフローではアグリゲート・デバイスが依然として必要です。
Dolby LTC Generator V2.0 (AAX、AU、VST3対応、MTCは削除)
Dolby LTC Generatorは今回のバージョンアップにより、フレームレートや開始時刻の設定ができないDAWにも対応できるよう設定項目が増えました。
また、以前からもLTC over Audioでの同期が推奨されてはいたものの、これまでは可能だったMTC同期が本バージョン以降使用できなくなりました。
重要:Dolby LTC Generatorプラグインv1.0を含む古いPro Toolsテンプレートは、プラグインのv2.0を使用するために手動でアップデートする必要があります。
注意:NuendoとResolveにはタイムコード・ジェネレーターがあります。Dolbyが提供するNuendoテンプレートには、Steinberg SMPTEGeneratorプラグインが挿入されたトラックが含まれています。
Pro Tools、Nuendo、DaVinci Resolveのクイックスタートテンプレート/プリセットを更新
今回の様々な仕様変更に伴い、各種DAW用のテンプレートやプリセットもリニューアル。着々とDolby Atmos制作環境の幅が広がっているのを実感します。
Renderer v3.7のインストーラーには、新規または更新されたDAWテンプレートとプリセットが含まれています。
- 新しいテンプレート Nuendo 10.3およびNuendo 11
- 新しいプリセット Resolve Studio 17 Fairlight
- 更新されたテンプレート Pro ToolsおよびNuendo 10
注意:Dolby社が提供するNuendoテンプレートまたはResolveプリセットを使用する前に、テンプレートまたはプリセットの使用に関する情報を参照してください。
Dolby Audio Bridgeを使用したPro Toolsのセッション・テンプレートには、Dolby LTC Generatorプラグインが挿入されたトラックが1つ含まれるようになりました(LTCをプラグインから使用するか、外部ハードウェアから使用するかは問いません)。入力/出力(I/O)設定ファイルは、LTC over Audio信号をRendererのチャンネル129にルーティングするように設定されています。
注意:テンプレートを使用するためには、必ずLTC Generatorプラグインをインストールしてください。このプラグインはRendererのインストーラーに含まれています。
警告: Dolby LTC Generatorからの信号がスピーカーに出力されていないことを確認してください。
デフォルトフレームレートが24fpsに
Rendererのデフォルトフレームレート設定が24fpsに変更されたのは、地味に嬉しい改善ですね!
- Rendererのデフォルトフレームレートが24fpsに変更されました。
Rendererのフレームレートは、プリファレンスの"Driver"から設定でき、メインウィンドウのヘッダーに表示されます。
- デジタルオーディオワークステーション(DAW)とRendererのフレームレートが一致しない場合、フレームレート不一致のエラーメッセージが表示されます。
Rendererのフレームレートが一致しない場合、フレームレート不一致のエラーメッセージが表示されます。これにより、DAWまたはRendererのフレームレートを変更するように警告されます。
注意:このメッセージは、ミスマッチが初めて発生したときに表示されるので、修正する必要があります。修正しない場合は、次回の再初期化までメッセージは表示されません。
このメッセージは、LTC over AudioやSend and Returnプラグインを使用している設定で表示されます。RME MADI PCIカードを使用している場合は、Hammerfall DSPアプリケーションでフレームレートを手動で設定してください。
マスター書き出し時、カスタムのビデオファイルや音声のみでMP4書き出し可能に
マスターファイルをブラックビデオ以外にも任意のビデオファイルと共に書き出したり、音声のみのMP4を書き出しできるようになりました!
"Export master to .mp4"ウインドウには、「ビデオ」セクションが追加され、以下のオプションがあります。
Black video:オーディオエンコードの長さに合わせてブラックビデオを作成します。これはRenderer v3.5以前の動作です。
No video:音声のみのmp4を作成します。ブラックビデオを必要としない音声のみの再生機器では、このオプションを使用してください。
Custom video:出力される.mp4 にカスタムビデオストリームが埋め込まれます。カスタムビデオの入力は、h264ビデオエレメンタリーストリームを持つmp4である必要があります。再生の同期をとるために、ビデオの開始点がオーディオの開始点またはイン点と一致するようにしてください。
注意:音声とビデオの長さが異なる場合、ファイルは長い方に合わせられることを示す警告が表示されます。
Dolby Atmos Production Suiteシステム要件
Dolby Atmos Production Suiteライセンスで動作するDolby Atmos Rendererは、複数の構成でテストされています。Tested CPU、OS、DAWは、Renderer v3.7を実行するDolby Atmos Production Suiteシステムの最小ハードウェアおよびソフトウェアシステム要件を示しています。
Tested CPUs
• MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB random-access memory (RAM)
• MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
• Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
• Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
• Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
• Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM (with Rosetta 2)
Tested operating systems
• macOS Big Sur (version 11.4, 11.5)
• macOS Catalina (version 10.15.7)
Tested DAWs
• Ableton Live*
• Live 10.1.9
• Live 10.1.35
• Apple Logic Pro*
• Logic Pro 10.6.2
• Logic Pro 10.4.8
• Avid Pro Tools Ultimate
• Pro Tools Ultimate 2021.6
• Pro Tools Ultimate 2021.3.1
• Pro Tools Ultimate 2020.12
• Resolve Studio 17
• Steinberg Nuendo
• Nuendo 10.3.10
• Nuendo 11.0.20
*Dolby Atmos Music Pannerが必要です。
Apple Musicの空間オーディオ対応もあり、国内におけるDolby Atmosコンテンツの需要も日々高まってきているのを実感します。音楽スタジオやポストプロダクションのMA・ダビングルームをDolby Atmos制作に対応したい!といったご相談は、導入実績豊富なROCK ON PROまで是非お問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-on-4%cf%80-proceed2021/#.YWATGGb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-free-trial-package/#.YV2JlGb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/daps-90day-trial/#.YWASrmb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/netflix-sol-levante-dolby-atmos-pro-tools-session-file-open-source/#.YWASxGb7TOQ
https://pro.miroc.co.jp/headline/mtrx_webinar_archive_202007/#.YWAS42b7TOQ
Headline
2021/08/19
Dolby Atmos 関連情報 ~ Avid Blog
ここ数年で、Netflix、Amazon、Appleなど、新世代のメディアプラットフォームの旗手が続々と Dolby Atmos 対応を表明し、ユーザーがイマーシブ/空間オーディオを体験する機会は今後も増えていくと予想されます。
Avid Blog には、Pro Tools を使用した環境に限らず、Dolby Atmos 制作にかかわる数多くのノウハウや事例が掲載されています。
これから Dolby Atmos 制作に挑戦したいと考えている方、イマーシブオーディオに関する知見をより深めたいエンジニアのみなさま、ご自身の音楽を Dolby Atmos フォーマットで発表したいと考えているミュージシャンの方々など、どのような方にも参考になりそうな内容ですので、こちらの記事で一気に紹介させていただきます。
Dolby Atmos Music 関連の最新記事
AvidPlayで Dolby Atmos® Music を配信する方法(Apple Music編)
インディーズ系アーティスト/バンドやプロダクションが、AvidPlay を使って Apple Music の空間オーディオでコンテンツ配信する方法を、具体的に解説しています。
Dolby Atmos Musicでミックスするためのヒントとトリック
Dolby Atmos Music をバイノーラルミックスする際のノウハウを、22項目に渡って解説しています。Dolby Atmos でのスピーカー・ミックスに関して、一定以上の知識/経験のある方がバイノーラル・ミックスに挑戦する場合に有効な、少し上級者向けの内容となっています。
まとめページ、動画再生リストなど
Avid Web: Dolby Atmos Music関連情報ランディング・ページ
Dolby Atmos Music 制作のためのAvid ソリューションなどを紹介しているページです。
Pro Tools | Ultimate - Dolby Atmosミキシング関連ビデオ
Pro Tools | Ultimate で Dolby Atmos 制作を行う際の基本的なワークフローを解説しています。設定からデリバリーまで、実際の画面を見ながら確認できます。
Dolby Atmos Music トライアル・パッケージ 無償ダウンロード
こちらの記事でも紹介した、Pro Tools | Ultimate と Dolby Atmos Renderer の無償トライアルパッケージです。
その他、Dolby Atmos 関連ブログ
グラミー賞受賞者 ダレル・ソープのイマーシブミュージック・ミキシングに関する3つのポイント
ヘッドフォンを使用してDolby Atmos Mixを作成する
Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!
Sound That Moves – イマーシブ・オーディオ・プロダクション統合ワークフローの解説
AvidPlayで Dolby Atmos® Music を配信する方法
Dolby Atmos® Music のミキシング体験とAvidPlayでの配信
Dolby Atmosの中核となるPro Toolsインターフェース
あなたにとって、最適なDolby Atmos® ソフトウェアとは?
Pro Tools | UltimateとMTRXでDolby Atmos Homeファイナル・ミックス・ステージを構築提案!
Pro Tools | Ultimateによる Dolby Atmos 制作フローの概要
ROCK ON PRO では、お客様のご要望に合わせた最適なシステム提案をさせていただいております。ご相談・ご質問は、ぜひ下記 contact ボタンよりお気軽にお問い合わせください。
Music
2021/07/21
Chimpanzee Studio 様 / 〜コンパクトスタジオのスタイルを広げるDolby Atmos〜
本職はプロのミュージシャン。ドラマーを生業としつつ、スタジオの経営を鹿児島で行う大久保氏。そのスタジオにDolby Atmosの制作システムを導入させていただいたので詳細をお伝えしたい。かなり幅広い作品の録音に携わりつつも、自身もミュージシャンとしてステージに立つ大久保氏。どのようにしてスタジオ運営を始め、そしてDolby Atmosに出会ったのだろうか?まずは、スタジオ開設までのお話からお伺いした。
90年代のロスで積み重ねた感覚
それではスタジオ開設に至る経緯をたどってみたい。鹿児島出身である大久保氏は学生時代より楽器を始め、広島の大学に進学。その頃より本格的に音楽活動を始めていたということだ。普通であれば、学生時代に特にミュージシャンとしての道を見出した多くの場合は、ライブハウスの数、レコーディングセッションの数など仕事が多くある東京、大阪、福岡といった大都市をベースに活動を本格化させるのが一般的である。しかし大久保氏は日本を飛び出し、全てにおいて規模が大きく好きな音楽がたくさん生まれたロサンジェルスの地へと一気に飛び立った。ロサンジェルスは、ハリウッドを始めとしたエンターテイメント産業の中心地。大規模なプロジェクト、本場のエンターテイメントに触れることとなる。なぜ、アメリカ、そしてロサンジェルスを選んだのか?その答えは文化の違いとのことだ。アメリカには町ごとに音楽がある。ロス、ニューヨーク、シアトル、アトランタ、それぞれの街にそれぞれの音楽がある。そんな多様性、幅の広さが魅力だという。
Chimpanzee Studio(チンパンジースタジオ)
大久保 重樹 氏
ロスに移住してからは、ミュージシャンとして活躍をする傍ら、住んでいた近くにあったレコーディングスタジオのブッキングマネージメント、日本からのミュージシャンのコンサルなどを行ったということだ。時代は1990年代、まだまだ日本のアーティストたちもこぞってアメリカまでレコーディングに出かけていた時代。そこで、自身もミュージシャンで参加したり、スタジオ・コーディネイトを行ったりと忙しい日々を過ごしていたそうで、ロスでも老舗のSunset Soundやバーニー・グランドマンにも頻繁に通っていたというからその活躍がいかに本格的なものであったかが伺える。
そんな環境下で、スタジオによく出入りをし、実際にレコーディングを数多く経験するうちに、録音というものに興味が湧いてきたということだ。まずは、自身のドラムの音を理想に近づけたい、どうしたらより良いサウンドへと変わるのか?そういったことに興味を持った。そして、今でも現役として使っているBrent Averillのマイクプリを入手することになる。今では名前が変わりBAE Audioとなっているが、当時はまさに自宅の一角に作業場を設け、手作業で一台ずつ製品を作っていた文字通りガレージメーカーだった時代。創業者の名前をそのままにメーカー名をBrent Averillとしていたのも、自身の名前をフロントパネルにサイン代わりにプリントした程度、というなんとものどかな時代である。
大久保氏は、実際にBrent氏の自宅(本社?)へ出向き今でもメインで活用しているMic Preを購入したそうだ。そのエピソードも非常に面白いものなので少し紹介したい。Brentさんの自宅は大久保氏とは近所だったというのも訪問したきっかけだった。そしてそこで対応してもらったのが、なんと現Chandler Limitedの創業者であるWade Goeke氏。その後、世界を代表するアウトボードメーカーを立ち上げることとなるGoeke氏の下積み時代に出会っているというのは、ロサンジェルスという街の懐の深さを感じさせるエピソードだ。
📷Pro ToolsのI/O関連とMicPreは正面デスクの右側に設置。上のラックにはDirectout ANDIAMO、AVID MTRX。下のラックには、DBX 160A、Brent Avirill NEVE 1272、Drawmer 1960が入っている。
ネットの可能性を汲み取った1997年、鹿児島へ
そんなロスでの生活は1990年に始まったそうだが、時代はインターネットが普及への黎明期を迎えていた時期でもある。ロスと日本の通信は国際電話もあったが、すでにEメールが活用され始めていたということ。必然性、仕事のためのツールとしてインターネットにいち早く触れた大久保氏は「これさえあれば世界のどこでも仕事ができる」と感じた。アーティストならではなのだろうか?いち早くその技術の持つ可能性を感じ取り、活用方法を思いつく。感性と一言で言ってしまえば容易いが、人よりも一歩先をゆく感覚を信じ、鹿児島へと居を移すこととなる。ロスで知り合ったいろいろな方とのコネクション、人脈はインターネットがあればつながっていられる。それを信じて帰国の際に地元である鹿児島へと戻ったのである。帰国したのが1997年、日本ではこれからインターネットが本格的に普及しようかというタイミングである。その感性の高さには驚かされる。
鹿児島に帰ってからは、マンションでヤマハのアビテックスで防音した部屋を作りDAWを導入したということだ。最初はDigital PerfomerにADATという当時主流であったシステム。もちろんミュージシャンが本職なので、最初はエンジニアというよりも自分のスキルを上げるための作業といった色合いが強かったそうだ。そのエンジニアリングも、やればやるほど奥が深くどんどんとのめり込んで行き、自身でドラムのレコーディングができるスタジオの設立を夢に描くようになる。ドラムということで防音のことを考え、少し市街地から離れた田んぼの真ん中に土地を見つけ、自宅の引っ越しとともに3年がかりで作り上げたのが、現在のチンパンジースタジオだということだ。今は周りも住宅地となっているが、引っ越した当時は本当に田んぼの真ん中だったということ。音響・防音工事は株式会社SONAに依頼をし、Pro Toolsシステムを導入した。
スタジオのオープンは2007年。オープンしてからは、国内のアーティストだけではなく、韓国のアーティストの作品を手掛けることも多いということだ。チンパンジースタジオができるまではライブハウスや練習スタジオに併設する形での簡易的な録音のできる場所しかなかったそうで、鹿児島で録音に特化したスタジオはここだけとなる。チンパンジースタジオでの録音作業は、地元のCM音楽の制作が一番多いということだ。自身がメインで演奏活動を行うJazzはやはり多くなるものの、ジャンルにこだわりはなく様々なミュージシャンの録音を行っている。
地元ゆかりのアーティストがライブで鹿児島に来た際にレコーディングを行うというケースも多いということだ。名前は挙げられないが大御所のアーティストも地元でゆっくりとしつつ、レコーディングを行うということもあるということ。また面白いのは韓国のアーティストのレコーディング。特に釜山からレコーディングに来るアーティストが多いということだ。福岡の対岸に位置する釜山は、福岡の倍以上の人口を抱える韓国第2の都市でもある。しかし、韓国も日本と同様にソウルへの1極集中が起こっており、釜山には録音のできる施設が無いのが実情の様子。そんな中、海外レコーディング先としてこのチンパンジースタジオが選ばれることが多いということだ。
📷錦江湾から望む鹿児島のシンボルとも言える桜島。チンパンジースタジオは市街から15分ほどの距離にある。
📷Proceed Magazine本誌で別途記事を掲載している鹿児島ジャズフェスティバルのステッカーがここにも、大久保氏はプレイヤーとして参加している。
省スペースDolby Atmos環境のカギ
📷内装のブラッシュアップに合わせ、レッドとブラックを基調としスタイリッシュにリフォームされたコントロールルーム。右にあるSSL XL Deskはもともと正面に設置されていたものだが、DAWでの作業が増えてきたこと、またAtmosの制作作業がメインとなることを考えPCのデスクと位置が入れ替えられている。またリフォームの際にサラウンド側の回線が壁から出るようにコンセントプレートが増設されている様子がわかる。Atmos用のスピーカーはGenelec 8020、メインのステレオスピーカーはADAM A7Xとなっている。
スタジオをオープンさせてからは、憧れであったアナログコンソールSSL XL Deskを導入したりマイクを買い集めていったりと、少しづつその環境を進化をさせていった。そして今回、大きな更新となるDolby Atmos環境の導入を迎えることとなる。Dolby Atmosを知るきっかけは、とあるお客様からDolby Atmosでの制作はできないか?という問い合わせがあったところから。それこそAtmosとは?というところから調べていき、これこそが次の時代を切り拓くものになると感じたということ。この問い合わせがあったのはまさにコロナ禍での自粛中。今まで通りの活動もできずにいたところでもあり、なにか新しいことへの試みをと考えていたこともあってAtmos導入へと踏み切ったそうだ。
当初は、部屋内にトラスを組みスピーカーを取り付けるという追加工事で行おうという簡易的なプランだったというが、やるのであればしっかりやろうということなり天井、壁面の内装工事をやり直してスピーカーを取り付けている。レギュレーションとして45度という角度を要求するDolby Atmosのスピーカー設置位置を理想のポジションへと取り付けるためには、ある程度の天井高が必要であるが、もともとの天井の高さもあり取り付けの位置に関しても理想に近い位置への設置が可能であった。取り付けについても補強を施すことで対応しているという。合わせて、壁面にも補強を行いスピーカーを取り付けている。このような設置とすることで、部屋の中にスピーカースタンドが林立することを避け、すっきりとした仕上がりになっている。また、同時にワイヤリングも壁面内部に埋め込むことで、仕上がりの美しさにもつながっている。環境構築にはパワードスピーカーを用いるケースが多いが、そうなると、天井や後方のサラウンドスピーカーの位置までオーディオ・ケーブルとともに電源も引き回さなければならない。これをきれいに仕上げるためには、やはり内装をやり直すということは効果的な方法と言える。
📷天井のスピーカーはDolby Atmosのリファレンスに沿って、開き角度(Azimuth)45度、仰角(Elevation)45度に設置されている。天井が高く余裕を持って理想の位置へ設置が行われた。
今回のDolby Atmos環境の導入に関しては、内装工事という物理的にスピーカーを取り付ける工事もあったが、システムとしてはオーディオインターフェースをMTRXへと更新し、Dolby Atmos Production Suiteを導入いただいたというシンプルな更新となっている。XL Deskを使ったアナログのシステム部分はそのままにMTRXでモニターコントロールを行うAtmos Speakerシステムを追加したような形だ。録音と従来のステレオミキシングに関しては、今まで通りSSL XL Deskをメインとしたシステムとなるが、Dolby Atmosミックスを行う際にも従来システムとの融合を図った更新が行われている。やはり今回のシステム更新においてMTRXの存在は大きく、ローコストでのDolby Atmos環境構築にはなくてはならないキーデバイスとしてシステムの中核を担っている。
📷今回更新のキーデバイスとなったAvid MTRX、持ち出しての出張レコーディングなどでも利用するため別ラックへのマウントとなっている。
📷収録時のメインコンソールとなるSSL XL Desk。プレイヤーモニターへのCueMixなどはこのミキサーの中で作られる。アナログミキサーなのでピュアにゼロレイテンシーでのモニタリングが可能だ。
📷ブースはドラム収録できる容積が与えられ、天井も高くアコースティックも考えられた設計だ。
Dolby Atmos構築のハードルを下げるには
エンドユーザーに関しては、ヘッドフォンでの視聴がメインとなるDolby Atmos Musicだが、制作段階においてスピーカーでしっかりと確認を行えることは重要だ。仕込み作業をヘッドフォンで行うことはもちろん、ヘッドフォンでのミックスを最終的にしっかりと確認することは必要なポイントではある。しかし、ヘッドフォンでの視聴となるとバイノーラルのプロセッサーを挟んだサウンドを聴くことになる。バイノーラルのプロセスでは、上下や後方といった音像定位を表現するために、周波数分布、位相といったものに手が加わることとなる。サウンドに手を加えることにより、擬似的に通常のヘッドフォン再生では再現できない位置へと音像を定位させているのだ。これは技術的にも必要悪とも言える部分であり、これを無くすことは難しい。スピーカーでの再生であればバイノーラルのプロセスを通らないサウンドを確認することができ、プロセス前のサウンドで位相や定位などがおかしくないか、といったことを確認できる。これは業務として納品物の状態を確認するという視点からも重要だと言える。
制作の流れとしては、スピーカーで仕上げ、その後にヘッドフォンでどのように聴こえるかを確認するわけだが、バイノーラルのプロセスを通っているということは、ここに個人差が生じることになる。よって、ヘッドフォンでの確認に関して絶対ということは無い。ステレオでのMIXでもどのような再生装置で再生するのかによってサウンドは変質するが、その度合がバイノーラルでは耳の形、頭の形といった個人差により更に変化が生じるということになる。ここで、何をリファレンスとすればよいのかという課題が生じ、その答え探しの模索が始まったところだと言えるだろう。バイノーラルのプロセスでは音像を定位させた位置により、音色にも変化が生じる。そういったところをスピーカーとヘッドフォンで聴き比べながら調整を進めるということになる。
制作のノウハウ的な部分に話が脱線してしまったが、スピーカーでサウンドを確認できる環境が重要であるということをご理解いただけたのではないだろうか。省スペースなDolby Atmos環境であっても、物理的に複数のスピーカーを導入するといった機材の追加は、その後に制作される作品のクオリティのために必要となる。また、システムとしてはAvid MTRXの登場が大きい。モニターコントローラーや、スピーカーチューニングなどこれまでであれば個別に必要であった様々な機器を、この一台に集約することができている。チンパンジースタジオでは、このMTRXの機能をフルに活用し、機材の更新は最低限にして、内装更新やスピーカー設置といったフィジカルな部分に予算のウェイトを置いている。前号でご紹介した弊社のリファレンスルームもしかり、そのスペースにおけるキーポイント明らかにし、そこに焦点をあてて予算を投入することで、Dolby Atmos Music制作環境の構築はそれほど高いハードルにはならないということをご理解いただきたい。
大久保氏は今回Dolby Atmosのシステムを導入するまでは、完全にステレオ・オンリーの制作を行ってきており、5.1chサラウンドのミキシング経験もなかったそうだが、今回の導入でステレオから一気にDolby Atmos 7.1.4chへとジャンプアップしている格好だ。お話をお伺いしたときには、まだまだ練習中ですと謙遜されていたが、実際にミックスもすでに行っており本格稼働が近いことも感じられる。今後はアーティストの作品はもちろん、ライブ空間の再現など様々なことにチャレンジしたいと意気込みを聞くことができた。鹿児島で導入されたDolby Atmosが、その活動に新たな扉を開いているようである。
*ProceedMagazine2021号より転載
NEWS
2021/07/09
Dolby AtmosやSONY 360 RA関連記事が一度に見られる!3D Audioボタンを設置しました。
Apple Musicでの配信がスタートしたことで、いよいよ本格的な普及が予想されるDolby Atmos Music。次世代放送規格MPEG-Hコーデックを使用し、これから爆発的な普及もあり得るSONY 360 Reality Audio(360 RA)。
これらに代表される、3Dオーディオ/空間オーディオ/Immersive Sound関連の記事をピックアップして表示することができる「3D Audio」ボタンをROCK ON PRO WEBサイトトップページに設置しました。
この分野の初期から様々な情報を発信してきたROCK ON PROならではの豊富なリソースを、ぜひご活用ください!
3Dオーディオ関連記事一覧>>
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2021/06/17
【AVID】Dolby Atmos Music トライアル・パッケージを配布中!
Apple Musicの"空間オーディオ"対応で世間の関心が高まっているイマがチャンス!
先日、ついにApple Musicの「空間オーディオ」機能の提供が開始されました。「早速試してみた!」という"耳が早い"音楽ファン達によるネット上の反応も概ね上々。いわゆる頭内定位が発生しない(※1)という点が、「音楽はスピーカーでしか聴かない」という層にも徐々に受け入れられ始めているのではないでしょうか。(※1 頭内定位:通常のステレオ音源をイヤフォンやヘッドフォンで聴く際、音像が頭の中で鳴っているように聞こえる現象)
さて、普段よりDAWでの楽曲制作に親しんでいる皆さまの中には、「自分の楽曲をDolby Atmos Music化してみたい!」と思った方も多いはず。本記事では、そんなあなたへの朗報をお届けします!
>>「そもそもDolby Atmosって何!?」という方はこちらの記事をチェック↓
https://pro.miroc.co.jp/solution/dolby-atmos-proceed2020/#.YMs6yDb7TOQ
必要なモノはPCとヘッドフォン!〜Dolby Atmos Music トライアル・パッケージを無料で入手〜
NEWS
2021/02/19
Dolby Atmos Production Suite 90日間トライアルライセンスが入手可能
Dolby Customerサイトにて、Dolby Atmos Production Suiteの90日間トライアルライセンスが提供されています。Dolby Atmos Production Suite(以下DAPS)とは、AVIDストアにて通常約$300で販売されている有償のプラグインで、Dolby Atmos Rendererや、Dolby Audio Bridge、Pro Tools/Nuendo用のテンプレートなど、Dolby Atmos作品の制作に必要なツールが含まれています。※Dolby Audio BridgeはmacOSのCore Audioベースの技術のため、MACのみ対応
90日間トライアルライセンスの入手方法は簡単!
1.こちらのページから名前、メールアドレス、興味のある分野に関する簡単なアンケートを入力、エンドユーザーライセンス契約とプライバシーポリシーに関する文章を読み、ラジオボタンをONにして"SUBMIT"をクリックして次のページへ。
2."Download Version 3.5"をクリックして、最新のDAPSを入手。"GET TRIAL LICENSE"をクリックして次のページへ。
3.iLok IDと登録メールアドレスを入力すると、iLokアカウントにライセンスがデポジットされます。あとはいつも通り、お使いのiLokにライセンスを移動してソフトウェアを起動します。
どうやって作業を始めるの?
いざインストールして、誰しもが最初に試みるのが通称"音源ぐりぐり"だと思いますが、その方法は弊社刊行のProceed Magazine 2020または下記のページにてご確認ください。(Pro Toolsのバージョンが古いため外見が異なっている部分がありますが、基本的な操作は同じです。)
https://pro.miroc.co.jp/solution/dolby-atmos-proceed2020/#6
これを機に、是非、Dolby Atmos Musicのミキシングに挑戦してみてはいかがでしょうか? お問い合わせは下記コンタクトフォームからご送信ください。
その他、Dolby Atmos関連情報
>>Rock oN 渋谷リファレンスルームではDolby Atmosの試聴体験ができます。現在来店は完全ご予約制ですので、こちらからお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/rock-on-reference-room-dolby-atmos/#.YC8k2xP7TOQ
>>Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!
https://pro.miroc.co.jp/headline/netflix-sol-levante-dolby-atmos-pro-tools-session-file-open-source/#.YC8ldhP7TOQ
>>AVID BLOGにてDolby Atmos Music ミキシング体験記が公開中!
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-blog-dolby-atmos-2020-08/#.YC8pzRP7TOQ
・Dolby Atmos制作にもぴったり、AVID MTRX Studioの詳細をCheck!
>>AVID MTRX Studio ウェビナー アーカイブ映像公開中!
https://pro.miroc.co.jp/headline/mtrx_webinar_archive_202007/#.YC-YHxP7TOQ
NEWS
2020/11/27
「初音ミクシンフォニー2019」のDolby Atmos®(ドルビーアトモス)音源が Amazon Music HD 向けに全世界配信リリース!!11/27(金)〜
今年、開催5周年を迎える「初音ミクシンフォニー」が、初のサントリーホール公演を2020年9月21日(月・祝)に行い、2020年10月17日(土)に横浜公演、さらに今週 11月27日(金)にフェスティバルホールで大阪公演を迎える。その大阪公演の開催日に、「初音ミクシンフォニー2019」の一部演奏曲をドルビーアトモス音源としてAmazon Music HDにおいて配信リリースすることが決定した。
ドルビーアトモスは、モノラルとステレオの制約を超えて、まったく新しい方法で音楽を表現できる立体音響技術であり、「イマーシブサウンド」と言われる没入感溢れる体験を可能にするもので、開催5周年を迎える初音ミクシンフォニーとして是非体感して欲しい内容となっている。初音ミクシンフォニー大阪公演では、配信リリースを記念して会場ホワイエにてその「初音ミクシンフォニー2019」のドルビーアトモス音源が聴けるAmazon EchoシリーズのEcho Studioを簡易設置した試聴ブースを設ける予定となっている。同ブースでは、Amazon Music HDを通じて没入感のあるサウンドで楽しむことができる。
また、「初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜」では、来年2月3日(水)に今年の横浜公演の模様を収録したBlu- ray、CD(2枚組)の発売を予定しており、大阪公演で予約特典会も開催されることになっている。さらに、大阪公演同日から開催されるマジカルミライ2020 in OSAKAにも「初音ミクシンフォニー」として企業ブース出展を行い、そこで初披露となる「刺繍アート」や「トレーディングアクリルキーホルダー(全7種)」の先行販売も行われる。
■タイトル:
Hatsune Miku Symphony 〜5th Anniversary Dolby Atmos Edition〜
■リリース日
2020 年 11 月 27 日(金)
■収録曲:(初音ミクシンフォニー2019 音源) 1.1/6 -out of the gravity- feat. 初音ミク 2.メモリ feat.巡音ルカ
3.ねぇ、どろどろさん feat. 鏡音リン
4.on the rocks
5.ピアノ×フォルテ×スキャンダル feat. MEIKO
6.ピアノ五重奏・名曲メドレー(トルコ行進曲 - オワタ\(^o^)/、嗚呼、素晴らしきニャン生) 7.Catch the Wave
8.たいせつなこと feat. 初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、KAITO、MEIKO、重音テト 9.カンタレラ
10.SPiCa feat. 初音ミク
■配信リンク
https://WarnerMusicJapan.lnk.to/hms2019daPu
※「ドルビーアトモス」音源をお楽しみ頂くには、Echo Studioが必要です。
ドルビーアトモス ミュージックとは?
「ドルビーアトモス」は、まったく新しい方法で音楽とつながることを可能にする立体音響技術であり、リスナーは、比類のないクリアさで、楽曲に秘められたニュアンスを発見することができます。また、リスナーの周りに配置された楽器の複雑なハーモニー、部屋を埋める伝説のギターソロ、聴衆の上を流れるドロップ、歌詞の間に吹き込まれた微妙な息吹など、「ドルビーアトモス」は音楽により多くのスペースと自由を与え、アーティストが意図した通りのディテールとニュアンスを解き放ちます。
※Dolby、ドルビー、Dolby Atmos、およびダブルD記号は、アメリカ合衆国と/またはその他の国におけるドルビーラボラトリーズ の商標または登録商標です。
「初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜」横浜公演の Blu-ray&CD 発売決定!! 2021.2.3(水) 発売
■初音ミクシンフォニー 〜Miku Symphony2020 オーケストラライブ Blu-ray 価格:¥6,000+税
品番:WPXL-90246
数量限定!!5 周年記念ホログラム仕様缶バッジ封入!!(7 種ランダム)
■初音ミクシンフォニー〜Miku Symphony2020 オーケストラライブ CD 価格:¥3,000+税
品番:WPCL-13266/7
【初音ミクシンフォニー5 周年テーマ曲】舞台【初音ミクオリジナル曲】
https://youtu.be/Oh7oLGK6ORc
Hatsune Miku Symphony 2020〜5th Anniversary〜2020.09.21 at SUNTORY HALL
https://youtu.be/4J5KJpvgLAU
■イベント概要
初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜 大阪公演 2020 年 11 月 27 日(金)
フェスティバルホール
18:00 開場/19:00 開演
演奏:大阪交響楽団
指揮:栗田博文 MC:初音ミク 他
特別協力:SEGA feat. HATSUNE MIKU Project
※客席の収容率を 50%とし、前後左右に1席ずつ間隔を空けて座席指定をさせていただきます。 ※休憩無し1部制の公演とさせていただきます。
「初音ミクシンフォニー2020〜5th Anniversary〜」横浜公演オフィシャルグッズ通販サイト販売中!!
https://store.wmg.jp/shop/mikusymphony
【初音ミクシンフォニー2020】オフィシャルサイト
https://sp.wmg.jp/mikusymphony/
【初音ミクシンフォニー2020】オフィシャルツイッター
https://twitter.com/mikusymphony
【初音ミクシンフォニー2019】1/6 -out of the gravity- feat. 初音ミク【オーケストラ ライブ CD】
https://youtu.be/CdRig4N6qrk
【初音ミクシンフォニー2019】横浜公演ダイジェスト映像【オーケストラ ライブ CD】
https://youtu.be/59VcXf8Ek3U
Dolby Atmosの制作環境に関するお問い合わせは、実例豊富なROCK ON PROまで!こちらのコンタクトフォームよりご相談ください。↓
Rock oN渋谷リファレンススタジオでは、Dolby Atmosのサウンドを体験できます!↓ ※要事前予約
https://pro.miroc.co.jp/headline/rock-on-reference-room-dolby-atmos/
NetflixがDolby Atmosミックスを行ったPro Toolsセッションファイルを公開中!↓
https://pro.miroc.co.jp/headline/netflix-sol-levante-dolby-atmos-pro-tools-session-file-open-source/
気になるDolby Atmosの仕組み、そして自宅でDolby Atmosミキシングを始めるには? ↓
https://pro.miroc.co.jp/solution/dolby-atmos-proceed2020/
Mac miniではじめるDolby Atmos制作!↓
https://pro.miroc.co.jp/solution/mac-mini-ht-rmu/
NEWS
2020/10/14
Dolby Atmosに対応!Rock oN Shibuyaリファレンスルーム アップデート完了!!
Rock oN ShibuyaリファレンスルームがDolby Atmosに完全対応いたしました。理想的な7.1.4ch Dolby Atmosルームへのアップデートを果たし、文字通りの"リファレンスルーム"となったRock oN Shibuyaでぜひ最新のイマーシブサウンドを体験してください!
画像上段:施工中の様子。スピーカーユニットを収めるキャビネットの取り付けが行われた。 画像下段:スピーカーの設置が完了した様子。フロントはほぼ従来通りだが、ハードセンターを設置できるようにアップデートされている。
ついにDolby Atmos対応を果たした新たなリファレンスルーム。サイド、リアだけでなく天井に埋め込まれたハイトスピーカーがご覧いだけるだろうか。
真下から見るとこのようになる。ダウンライトの内側、ちょうど柱の角付近の天井にスピーカーが埋め込まれている。
Left側。今回新たに設置されたスピーカーは、設備向け新ブランドFocal CIから同軸モデル100 ICW 8を採用。躯体工事が不要な軽量設計とスタイリッシュな外観は、ホームシアターにも最適だ。
こちらはRight側。スピーカーキャビネットは施工を請け負ってくれた株式会社ソナによる製作。天井に埋め込まれたスピーカーも、内部でキャビネットに収められている。
Left側のサイド/リアスピーカーは、壁面に新たな張り出し部分を作りつけた上で埋め込まれている。まるではじめからこのような部屋だったかのように美しい仕上がりは、まさにソナ様の手腕によるものだ。
CIから100 ICW 8近影。なんと、ツイーター部分は角度を調整することが可能。ルームの特性に応じて、最適な音響調整を行うことが可能となっている。
https://youtu.be/EmMyGliTMgI
Dolby Atmosに完全対応 ~Pro ToolsセッションやOTT、Blu-ray、ゲーム試聴までOK!
Dolby Atmos再生環境として理想的な7.1.4chスピーカーレイアウトを実現した今回のアップデート。同時にBlu-rayプレイヤー兼用でXbox oneを導入し、Dolby Atmosコンテンツを幅広くご視聴いただくことが可能となりました。しかし、なんといってもRock oNならではのポイントはPro Toolsセッションを再生することが可能ということ!Dolby Atmosを制作リファレンス環境で気軽に・手軽に体験していただけます!
Rock oN Shibuyaリファレンスルームで体験できること!
Pro ToolsによるDolby Atmosミックスの試聴
Xbox oneを使用したDolby Atmos対応ゲームの視聴
Xbox oneによるOTTコンテンツの視聴
Blu-rayディスクによるDolby Atmosコンテンツの視聴
放送・映画制作に従事されている方のみならず、Dolby Atmosミュージックも本格的に始動しつつある今日、クリエイター/音楽ミキサーの方々も要注目のシステムとなっております!
こんな方におすすめ!
Dolby Atmos用のモニターを探している
普段と違う環境でDolby Atmosセッションをチェックしたい
Dolby Atmos環境でマイクやアウトボード機材を選定したい
Dolby Atmosによるイマーシブサウンドを体験したい
新ブランド Focal CIを導入 ~高品質・軽量設計・短工期!
今回のアップデートに際してサイド・リア・ハイトに設置されたのは、サウンドクオリティに定評のある仏Focal社による新ブランド「Focal CI」から100 ICW 8という同軸モデル。ご存知の通り、多数のスピーカーを配置するイマーシブサウンドにおいては位相の点で圧倒的な優位性を持つ同軸スピーカーは理想的なチョイスです。
Focal CIはFocal社が新たに立ち上げた設備向けブランド。設備向けというと館内放送用や飲食店でBGMを流すためのものというイメージを持たれるかも知れませんが、そこはもともとHi-Fiオーディオ向け製品も展開しているFocal。そうした用途だけでなく、ホームシアターやスタジオも視野に入れて開発された製品となっております。
Focal CI全ラインナップについて、詳しくはこちら>>
この度、Rock oN Shibuya リファレンスルームに導入されたFocla CI 100 ICW 8。以前から「点音源のようだ」と評されるFocalのスピーカーだが、同軸仕様の同モデルは真の点音源となる。11個ものスピーカーが並ぶ中でも位相差による定位感のボヤけやサウンドの濁りを回避し、クリーンなモニター環境を確保することが可能だ。
100 ICW 8について、詳しくはこちら>>
今回の工事が2日間という非常に短い期間で完了することができたのも、この100 ICW 8の導入によるところが大きかったように思えます。通常、埋め込み型のスピーカーを設置する際には耐荷重の問題が障壁となることが多いものです。重量のあるスピーカを壁や天井に埋め込もうとすると建物が持つ耐荷重を超えてしまう可能性があるため、スピーカーの設置工事以前に躯体の補強工事などに多くの日数を費やすことになるからです。
その点、パッシブタイプの100 ICW 8は2kg弱という軽量設計のため、躯体工事の必要性がグッと下がります。実際に、今回の工事でも躯体や壁・天井の補強は行っていません。加えて、さすがフランスのメーカーと言いたくなる美麗な外観は、既存の部屋に後付けしたとは思えないほど美しい仕上がりに貢献しています。そして、1発¥36,300(税込)という価格も非常に魅力的です。
こうしたモデルを選定することで、既存設備のDolby Atmosへのアップデートは想像よりもはるかに気軽に行えることになるでしょうう。。
Focal CI 100 ICW 8のイチオシポイント!
Focal社による信頼のサウンドクオリティ
同軸モデルでイマーシブ環境に最適
1.7kgという軽量設計
ルームの品格を損なわない美しい外観
1ユニット¥36,300(税込)という低価格
Focal CI全ラインナップについて、詳しくはこちら>>
100 ICW 8について、詳しくはこちら>>
Dolby社推奨レイアウトを踏襲 ~Dolby Atmosのリファレンスルームとしてご活用ください!
マルチチャンネルサラウンド・システムの構築で最難関となるポイントは、スピーカーレイアウトかも知れません。部屋の広さや構造によって、どうしても規格に則った配置が不可能な場合もあります。Rock oN Pro Shibuyaリファレンスルームは幸いにもそうした問題をクリアし、リスニングポイントを中心とした各スピーカー間の角度、天井高など、ほとんどの要素がDolby社推奨の理想的なものとなっています。厳密にはサイドスピーカーの位置がやや高いのですが、100 ICW 8に搭載されたツイーター角度調整機構により、サウンド的な問題はまったくありません!
まさに、Dolby Atmosのためのリファレンスルームへと進化したRock oN Shibuya リファレンスルームへ、ぜひお越しください。もちろん、従来同様ステレオでのご試聴も承っております!
Dolby Atmosシステム導入、ご相談などはDolby認定ディーラーであるROCK ON PRO までお気軽にお問い合わせください。
Tech
2020/09/28
Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!
https://youtu.be/Ecr_02W2Csw
Pro Tools | HDX, S6などを使用してDolby Atmosミックスされた4K HDR/Atmosアニメ作品「Sol Levante」のオーディオ・プロダクション・ストーリーがAvidブログに掲載されました。2020年4月に公開されたこの作品の特徴は、その制作過程や、Pro Toolsセッション・ファイル等の素材も全てオープン・ソースとしてプロダクションに公開していることです。
既にNetflixパートナーとなられているスタジオ様では、ダウンロードして再生なさっているところも多いと思いますが、こういった制作環境やワークフローを、より広く告知したいというAvidからの要望に、Netflixが賛同する形でブログ公開となったようです。
>>Netflix :オリジナル作品「Sol Levante」のDolby Atmos Pro Toolsセッション・ファイルを無償公開!(Avidブログ日本語版)
Dolby Atmosミックスにご関心をお寄せのお客様は、上記リンクより、ぜひご一読されることをおすすめいたします。
ブログ中程にリンクされているムービーでは、文中では触れられていない、ウィル・ファイルズ氏によるS6でのミックスの模様をご覧いただける他、コメントも日本語でご覧いただけます。
Pro Tools セッションファイルを含むオープンソース・コンテンツは、ブログ中程のテキストにリンクされているNetflixのページからダウンロードできるようになっています。
Sound That Moves – イマーシブ・オーディオ・プロダクション統合ワークフローの解説
また、このブログ公開に合わせて、Pro Tools | HDXを初めとするAvidのDolby Atmosミックスに有効な各種製品並びに技術情報をまとめたランディングページも作成されています。Dolby Atmos制作ツールのハウツー的な内容も含まれておりますので、Pro ToolsにおけるDolby Atmosワークフローの概要が掴めるのではないでしょうか。
Dolby Atmos 認定ディーラーであるROCK ON PROなら、システム設計からキッティングまで、Pro Tools | HDXシステムでのDolby Atmos制作ワークフローを完全サポート!下記contactバナーよりお気軽にお問い合わせくださいませ。
Dolby Atmos RMU ブランドページ
Music
2020/08/25
AVID BLOGにてDolby Atmos Music ミキシング体験記が公開中!
AVID BLOGにてDolby Atmos Musicのミキシング体験記が公開されています。記事を執筆したのは、カリフォルニア州ロサンゼルス近郊に音楽スタジオ"The Record House"を構えるミキシングエンジニア、Mert Ozcan氏。公式プロフィールによると、彼はバークリー音楽大学を卒業後、Abbey Road、British Grove、Capitol and Interscope Studiosといった世界的にも権威ある数々の音楽スタジオでエンジニアとしての腕を磨き、同じくエンジニア兼ミュージシャンであるBeto Vargas氏と共にThe Record Houseを立ち上げたそうです。
記事ではMert氏によるDolby Atmos Musicミキシングに関する考察がアツく語られているので、ご興味がある方は是非ともご一読してみてはいかがでしょうか?
◎こちらからチェック!
Dolby Atmos® Music のミキシング体験とAvidPlayでの配信 - AVID BLOG
http://www.avidblogs.com/ja/dolby-atmos-music-avidplay/
「まるでモノクロがカラーになったみたいだ」
「スタジオを変えたくなった」
「普通に音楽を聴くなんてもう無理です」
これらはアーティストやミュージシャンが、The Record House の新しくできたAtmosミックスルームで Dolby Atmos Music を聴いた時のいくつかのコメントです。この体験が特別なものであった事を物語っています。
上記ページより一部抜粋
◎公式サイトからはMert氏らが手がけた音楽作品も実際に試聴可能です!
The Record House 公式サイト
https://the-record-house.com/
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Media
2020/08/11
ゼロからはじめるDOLBY ATMOS / 3Dオーディオの世界へDIVE IN !!
2020年1月、CES2020にてお披露目された"Dolby Atmos Music"。映画向けの音響規格の一つであるDolby Atmosを、新たなる"3D"音楽体験として取り入れよう、という試みだ。実は、前年5月頃より"Dolby Atmosで音楽を制作しよう”という動きがあり、ドルビーは世界的大手の音楽レーベル、ユニバーサルミュージックとの協業を進めてきた。"Dolby Atmos"は元々映画音響用のフォーマットとして2012年に誕生している。その後、ヨーロッパを中心に対応劇場が急速に増え、海外では既に5000スクリーン以上、国内でもここ数年で30スクリーン以上に渡りDolby Atmosのシステムが導入されてきた。
また、映画の他にもVRやゲーム市場でもすでにその名を轟かせており、今回、満を持しての音楽分野への参入となる。Dolby Atmos Music自体は、既にプロオーディオ系の様々なメディアにて取り上げられているが、「Dolby Atmosという名称は聞いたことがある程度」「Dolby Atmosでの制作に興味があるが、日本語の情報が少ない」という声もまだまだ多い。そこでこの記事では、今のうちに知っておきたいDolby Atmosの基礎知識から、Dolby Atmosミックスの始めの一歩までを出来るだけ分かりやすい表現で紹介していきたい。
目次
コンテンツは消費の時代から”体験”の時代に 〜イマーシブなオーディオ体験とは?〜
まずは Dolby Atmosを体験しよう! / 映画、音楽、ゲームでの採用例
ベッドとオブジェクトって何!? / Dolby Atmos基礎知識
Dolby Atmos制作を始めよう / 必要なものは何?
自宅で始めるDolby Atmosミックス / Dolby Atmos Renderer × Pro Tools 2020.3【Send/Return編】
自宅で始めるDolby Atmosミックス / Dolby Atmos Renderer × Pro Tools 2020.3【CoreAudio編】
1.コンテンツは消費の時代から”体験”の時代に 〜イマーシブなオーディオ体験とは?〜
近年、"3Dオーディオ"という言葉をよく見かけるようになった。今のところ、その厳密な定義は存在していないが、古くからは"立体音響"や"三次元音響"といった言葉でも知られており、文字通り、音の位置方向を360度、立体的に感じられる音響方式のことを指す。その歴史は非常に古く、諸説あるがおよそ1世紀に渡るとも言われている。
点音源のモノラルに始まり、左右を表現できるようになったステレオ。そして、5.1、7.1、9.1…とその数を増やすことによって、さらなる音の広がりや奥行きを表現できるようになったサラウンド。と、ここまででもイマーシブな(*1)オーディオ体験ができていたのだが、そこにいよいよ、天井や足元といった高さ方向にもスピーカーが加わり、三次元空間を飛び回るような音の再生が可能になった。それぞれの方式は厳密には異なるが、3DオーディオフォーマットにはDolby Atmos、Auro-3D、DTS:X、NHK22.2ch、Sony360 Reality Audioなどといったものがある。
基本的に、これまでこうした3Dフォーマットのオーディオを再生するにはチャンネル数に応じた複数のスピーカーが必要だった。そのため、立体的な音像定位の再現性と、そうした再生環境の手軽さはどうしてもトレードオフになっており、なかなか世間一般に浸透しづらいという状況が続いていた。そこで、いま再注目を浴びているのが"バイノーラル(*2)録音・再生方式"だ。個人差はあるものの原理は単純明快で、「人間の頭部を模したダミーヘッドマイクで録音すれば、再生時にも人間が普段自分の耳で聞いているような立体的な音像が得られる」という仕組み。当然ながらデジタル化が進んだ現代においては、もはやダミーヘッドすら必要なく、HRTF関数(*3)を用いれば、デジタルデータ上で人間の頭側部の物理的音響特性を計算・再現してしまうことができる。
バイノーラル再生自体は全くもって新しい技術というわけではないのだが、「音楽をスマホでストリーミング再生しつつ、ヘッドホンorイヤホンで聴く」というスタイルが完全に定着した今、既存の環境で気軽にイマーシブオーディオを楽しめるようになったというのが注目すべきポイントだ。モバイルでのDolby Atmos再生をはじめ、Sonyの360 Rearity Audio、ストリーミングサービスのバイノーラル音声広告といった場面でも活用されている。
*1 イマーシブ=Immersive : 没入型の *2 バイノーラル= Binaural : 両耳(用)の *3 HRTF=Head Related Transfer Function : 頭部伝達関数
2.まずは Dolby Atmosを体験しよう! / 映画、音楽、ゲームでの採用例
では、Dolby Atmosは一体どのようなシーンで採用されているのだろうか。百聞は一見に如かず、これまでDolby Atmos作品に触れたことがないという方は、まずは是非とも体験していただきたい。
映画
映画館でDolby Atmosを体験するためには、専用設計のスクリーンで鑑賞する必要がある。これには2種類あり、一つがオーディオの規格であるDolby Atmosのみに対応したもの、もう一つがDolby Atmosに加え、映像の規格であるDolby Visionにも対応したものだ。後者は"Dolby Cinema"と呼ばれ、現時点では国内7スクリーン(開業予定含む)に導入されている。
Dolby Atmosでの上映に対応している劇場は年々増加していて、2020年4月現在で導入予定含む数値にはなるが、既に国内では 36スクリーン、海外では5000スクリーン以上にも及んでいる。 (いずれもDolby Atmos + Dolby Cinema計)当然ながら対応作品も年々増えており、ライブストリーミング等、映画作品以外のデジタルコンテンツも含めると、国内では130作品、海外ではその10倍の1300を超える作品がDolby Atmosで制作されている。いくつか例を挙げると、国内興行収入130億円を超える大ヒットとなった2018年の「ボヘミアン・ラプソディ」をはじめ、2020年のアカデミーでは作品賞を受賞した「パラサイト 半地下の家族」、同じく録音賞を受賞した「1917 命をかけた伝令」などといった作品がDolby Atmosで制作されている。
●Dolby Atmos採用映画の例
アイアンマン3 / アナと雪の女王 / ラ・ラ・ランド/ パラサイト / フォードvsフェラーリ / ジョーカー / 1917 命をかけた伝令 / ボヘミアンラプソディetc...
*Dolby 公式サイトよりDolby Atmos採用映画一覧を確認できる
ゲーム
Dolby AtmosはPCやXbox Oneといった家庭用ゲームの人気タイトルでも数多く採用されている。特に、近年流行りのFPS(First Person Shooter = 一人称視点シューティング)と呼ばれるジャンルのゲームでは、射撃音を頼りに敵の位置を把握しなければならない。そのため、Dolby Atmosを使った3Dサウンドの再生環境の需要がより高まってきているのだ。
※Windows PCやXbox OneにおいてヘッドホンでDolby Atmosを楽しみたい場合は、Dolby Access(無料)というアプリをインストールし、Dolby Atmos for Headphonesをアプリ内購入する必要がある。
●Dolby Atmos採用ゲームの例
Assassin's Creed Origins(Windows PC, Xbox One) / Final Fantasy XV(Windows PC ,Xbox One)Star / Wars Battlefront(Windows PC ,Xbox One) / ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN(Windows PC, Xbox One)
音楽
Amazon Echo Studio
そして2020年1月にCES2020で正式発表されたのが、このDolby Atmosの名を冠した新たな3Dオーディオ再生フォーマット、Dolby Atmos Musicだ。現時点で、国内ではAmazonが提供するAmazon Music HD内のみでサービスを提供しており、同社のスマートスピーカー”Amazon Echo Studio”を用いて再生することができる。アメリカでは音楽ストリーミングサービス"TIDAL"でもDolby Atmos Musicを再生することができ、こちらは対応するPCやスマホなどでも楽しめるようになっている。
ここまで、Dolby Atmosを体験してみて、皆さんはどのような感想を持たれただろうか? 当然ながら多少の個人差はあるにしても、映画であればその空間に入り込んだかのような没入感・豊かな臨場感を体験できたのではないだろうか。あるいは、人によっては「期待したほど音像が動き回っている感じが得られなかった」という方もいるだろう。しかし、それでDolby Atmosの魅力を見限るのはやや早計だ。なぜなら、この技術は、"作品の意図として、音を無意識に落とし込む”くらい自然にミックスすることを可能にしているからだ。それを念頭におき、もう一度、繊細な音の表現に耳を澄ましてみてほしい。
3.ベッドとオブジェクトって何!? 〜Dolby Atmos基礎知識〜
体験を終えたところで、ここからは技術的な側面と基礎知識を押さえていこう。ポイントとなるのは以下の3点だ。
● ベッド信号とオブジェクト信号
● 3次元情報を記録するメタデータ
● 再生環境に合わせてレンダリング
Dolby Atmosの立体的な音像定位は、2種類の方式を組み合わせて再現されている。 一つはチャンネルベースの信号 ー 5.1.2や7.1.2などあらかじめ定められたスピーカー配置を想定し、そのスピーカーから出力される信号のことを"Bed"と呼んでいる。例えば、BGMやベースノイズといった、あまり指向性が求められない音の再生に向いている。基本は音源とスピーカーが1対1の関係。従来のステレオやサラウンドのミックスと同じなので比較的イメージがつきやすいだろう。
劇場のように、一つのチャンネルが複数のスピーカーで構成されていた場合、そのチャンネルに送った音は複数のスピーカーから再生されることになる。
そしてもう一つはオブジェクトベースの信号 ー 3次元空間内を縦横無尽に動き回る、点音源(ポイントソース)の再生に適した方式だ。例えば、空を飛ぶ鳥の鳴き声や、アクション映画での動きのある効果音の再生に向いている。原理としては、3次元情報を記録するメタデータをオーディオとともに記録・伝送し、再生機器側でそれらを再生環境に合わせてレンダリング(≒変換)することで、再生環境ごとのスピーカー配列の違いをエンコーダー側で吸収できるという仕組みだ。
ある1点に音源を置いた時に、そこから音が聴こえるように、スピーカー送りを最適化するのがレンダラーの役割
Dolby AtmosのチャンネルフォーマットはBed 7.1.2ch(計10ch) + Object118ch(最大)での制作が基本となっている。この"空間を包み込むような音"の演出が得意なベッドと、”任意の1点から聞こえる音”の演出が得意なオブジェクトの両方を組み合わせることによって、Dolby Atmosは劇場での高い臨場感を生み出しているのだ。
4.Dolby Atmos制作を始めよう 〜必要なものは何?〜
Dolby Atmosはその利用目的によって、大きく2種類のフォーマットに分けられる。
まずは、一番最初に登場した映画館向けのフォーマット、Dolby Atmos Cinemaだ。これはまさにフルスペックのDolby Atmosで、先述した7.1.2chのBEDと118chのObjectにより成り立っている。このフォーマットの制作を行うためにはDolbyの基準を満たした音響空間を持つダビングステージでの作業が必要となる。しかも、劇場向けのマスターファイルを作ることができるCinema Rendering and Mastering Unit (Cinema RMU)はDolbyからの貸し出しでしか入手することができない。
もう一つは、Blu-ray やストリーミング配信向けのフォーマット、 Dolby Atmos Homeだ。実は、こちらの大元となるマスターファイル自体は Cinema 向けのものと全く同じものだ。しかし、このマスターファイルから Home 向けのエンコードを行うことで、128chのオーディオを独自の技術を活用して、できる限りクオリティーを担保したまま少ないチャンネル数に畳み込むができる。この技術によって、Blu-rayやNetflixといった家庭向けの環境でも、Dolby Atmos の迫力のサウンドを楽しめるようになった。こちらも、マスターファイルを作成するためには、HT-RMUと呼ばれるハードウェアレンダラーが必要となるが、HT-RMUは購入してスタジオに常設できるというのがCinemaとは異なる点だ。
●Dolby Atmos制作環境 比較表
※Dolby Atmos Production SuiteはWeb上、AVID Storeからご購入できるほか、Mastering Suiteにも付属している。
※Dolby Atmos Dub with RMUについてはDolby Japan(TEL: 03-3524-7300)へお問い合わせください。
●Cinema
映画館上映を目的としたマスター。ダビングステージでファイナルミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Print Masterと呼ばれるファイル群をCinema Rendering and Mastering Unit (Cinema RMU)で作成。
●Home
一般家庭での視聴を目的としたマスター。ニアフィールドモニターによるDolby Atmosスピーカー・レイアウトにてミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Master File(.atmos)と呼ばれるファイル群をHome-Theater-Rendering and Mastering Unit(HT-RMU)で作成。
Cinema用とHome用のRMUでは作成できるファイルが異なり、スピーカーレイアウト/部屋の容積に関する要件もCinema向けとHome向けで異なる。それぞれ、目的に合わせたRMUを使用する必要がある。ミキシング用のツール、DAW、プラグイン等は共通。
ここまで作品や概要を説明してきたが、そろそろDolby Atmosでの制作を皆さんも始めてみたくなってきただろうか?「でも、自宅に7.1.2chをモニターできる環境が無い!「やってみたいけど、すぐには予算が捻出できない!」という声も聞こえてきそうだが、そんな方にとっての朗報がある。Dolby Atmos Production Suiteを使えば、なんと ¥33,000 (Avid Storeで購入の場合)というローコストから、Dolby Atmos ミックスの最低限の環境が導入できてしまうのだ。このソフトウェア以外に別途必要なものはない。必要なものはスペックが少し高めのマシンと、対応DAW(Pro Tools、Nuendo、DaVinchi etc)、そしてモニター用のヘッドホンのみだ。
多少の制約はあるものの、ヘッドホンを使ったバイノーラル再生である程度のミックスができてしまうので、スタジオに持ち込んでのマスタリング前に自宅やオフィスの空き部屋といったパーソナルな環境でDolby Atmosの仕込みを行うことができる。次の項ではそのワークフローを具体的に紹介していく。
5.自宅で始めるDolby Atmosミックス 〜Dolby Atmos Renderer × Pro Tools 2020.3〜
ここからは最新のPro Tools 2020.3 とProduction Suiteを使って実際のDolby Atmosミックスのワークフローをチェックしていきたい。まず、大まかな流れとしては下記のようになる。PTとレンダラーの接続方法は、Send/Returnプラグインを使う方法とCore Audio経由でやり取りする方法の2種類がある。それでは順番に見ていこう。
1.Dolby Atmos Production SuiteをAvid Storeもしくは販売代理店にて購入しインストール。
2.Dolby Atmos Renderer(以後レンダラー)を起動各種設定を行う。
3.Pro Tools(以後PT) を起動各種設定を行う。※正しいルーティングの確立のため、必ずレンダラー →Pro Toolsの順で起動を行うこと。
4.PTの標準パンナーで3Dパンニングのオートメーションを書き込む。
5.Dolby Atmos RMU導入スタジオに持ち込む。
Send/Returnプラグインを使う方法
■Dolby Atmos Renderer の設定
● 左上Dolby Atmos Renderer → Preferences( ⌘+ , )で設定画面を表示
● Audio driver、External Sync sourceをSend/Return Plug-insに設定
● Flame rate、Sample rateを設定 ※PTの設定と合わせる
HeadphoneのRender modeをBinauralにすることで、標準HRTFでバイノーラル化された3Dパンニングを確認することができる。(※聴こえ方には個人差があります。)
■Pro Tools の設定
● 新規作成→プロジェクト名を入力→テンプレートから作成にチェック
● テンプレートグループ:Dolby Atmos Production Suite内”Dolby Atmos Renderer Send Return Mono(またはStereo)”を選択→ファイルタイプ:BWF
● 任意のサンプルレート、ビットデプス、I/O設定を入力→作成
● 設定 → ペリフェラル → Atmosタブ
● チェックボックスに2箇所ともチェックを入れる。
● RMUホストの欄には”MAC名.local”または”LOCALHOST”と入力。
接続状況を示すランプが緑色に点灯すればOK。一度接続した場合、次回からプルダウンメニューで選択できる。
編集ウィンドウを見てみると、英語でコメントが入力されたいくつかのトラックが並んでいる。
● まず、一番上の7.1.2Bedという名称のトラック ーここにBedから出力したい7.1.2の音素材をペーストまたはRECする。
● 次に、その下のObject 11という名称のトラック ーここにObjectから出力したいMonoまたはStereoの音素材をペーストまたはRECする。
● 上の画像の例では、任意の範囲をドラッグして選択、AudioSuite→Other→Signal Genetatorよりピンクノイズを生成している。
● このトラックは、画面左側、非表示になっている”SEND_〇〇_IN_ch数”という表記になっているAUXトラックに送られている。
● このAUXトラックにSendプラグインがインサートされており、パンなどのメタデータとともにレンダラーへと出力される。
試しに再生してみると、レンダラー側が上の画像のような状態になり、信号を受けているチャンネルが点灯している様子が確認できる。
赤丸で囲った部分をクリックしてアウトプットウィンドウを表示し、パンナーのポジションのつまみをぐりぐりと動かしてみよう。
すると、レンダラー内のオブジェクトが連動してぐりぐりと動くのが確認できる。
オートメーションをWriteモードにしてチェックすると、きちんと書き込んだ通りに3Dパンニングされているのが分かる。ここで、トラックの右端”オブジェクト”と書かれているボタンをクリックすると、”バス”という表示に切り替わり、その音はベッドから出力される。つまり、ベッドとオブジェクトをシームレスに切り替えることができるのだ。これは、例えば、映画などで正面のベッドから出力していたダイアローグを、”ワンシーンだけオブジェクトにして、耳元に持ってくる”といった表現に活用できそうだ。
さらにその右隣の三角形のボタンを押すごとに、” このトラックに書き込まれたメタデータをマスターとする ”( 緑点灯 ) か、” 外部のオブジェクトパンニング情報源からREC する ”( 赤丸点灯 ) か、” 何も送受信しない ”( 無点灯 ) か を選択できるようになっている。レンダラー内でレンダリングされた音は、ReturnプラグインからPTへと戻ってくる。あとは、各々のモニター環境に合わせてアウトプットしたり、RECをかけたりすることができる。
以上が、Send/Returnプラグインを利用した一連のルーティングのワークフローになる。今回はテンプレートから作成したが、もちろんはじめから好きなようにルーティングを組むことも可能だ。しかし、チャンネル数が多い場合はやや複雑になってくるので、初めての場合はまずはテンプレートからの作成をおすすめする。
CoreAudioを使う方法
はじめに、Core Audioを使う場合、Sync sourceをMTCかLTC over Audioから選択する必要がある。LTCを使う場合は、PTの130chまでの空きトラックにLTCトラックまたは、Production Suite 付属のLTC Generator プラグインを挿入→レンダラーからそのch番号を指定する。MTCを使う場合はIACバスをというものを作成する必要がある。(※IAC = Inter-application communication)
■IACバスの設定
● Mac →アプリケーション→ユーティリティ→Audio MIDI設定を開く
● タブメニューのウインドウ→IAC Driverをダブルクリック ※装置名がIACドライバなど日本語になっていた場合レンダラーでの文字化けを防ぐため”IAC Driver”など英語に変更しておくとよい
● +ボタンでポートを追加→名称を”MTC”(任意)に変更→適用をクリック
■Dolby Atmos Renderer 側の設定
● 左上Dolby Atmos Rendere → Preferences( ⌘+ , )で設定画面を表示
● Audio driverをCore Audioに設定
● Audio input deviceを”Dolby Audio Bridge”に設定 ※ここに”Dolby Audio Bridge”が表示されていない場合、Macのシステム環境設定→セキュリティとプライバシー内に関連するアラートが出ていないか確認。
● External Sync sourceをMTCに設定し、MTC MIDI deviceで先ほど作成したIAC Driver MTCを選択(またはLTC over Audioに設定しCh数を指定)
● Flame rate、Sample rateを設定 ※PTの設定と合わせる
● ヘッドホンでバイノーラルで作業する場合はHeadphone only modeを有効にすると、リレンダリングのプロセスなどを省くため、マシンに余分な負荷をかけることなく作業できる
■Pro Tools 側の設定
● 設定→プレイバックエンジンを”Dolby Audio Bridge”に。
● キャッシュサイズはできる限り大きめに設定しておくと、プレイバック時にエラーが発生しにくくなる。
● 設定→ペリフェラル→同期→MTC送信ポートを先ほど作成した”IAC Driver,MTC”に設定
● 設定 → ペリフェラル → Atmosタブ(Send/Returnの項目と同様だ)
● チェックボックスに2箇所ともチェックを入れる。
● RMUホストの欄には”MAC名.local”または”LOCALHOST”と入力。接続状況を示すランプが緑色に点灯すればOK。一度接続した場合、次回からプルダウンメニューで選択できる。
以上で、CoreAudio経由でのルーティングは完了だ。Send/Returnプラグインを利用する時のように大量のAUXトラックが必要ないため、非常にシンプルにセッティングを完了できる。また、ソフトウェアレンダラーでの仕込みから最終のマスタリングでRMUのある環境に持ち込む際にも、I/O設定をやり直さなくてよいという点もメリットの1つだろう。こちらも試しにオーディオ素材を置いて動作を確認していただきたい。
マルチチャンネルサラウンドやバイノーラルコンテンツへの需要は、日々着実に高まりつつあることが実感される。今回はゼロからはじめるDolby Atmosということで、Dolby Atmosとはどのようなものなのか、そしてDolby Atmosミックスを始めるためにはどこからスタートすればいいのか、という足がかりまでを紹介してきた。「思ったより気軽に始められそう」と、感じていただいた方も多いのではないのだろうか。
「一度体験すれば、その素晴らしさは分かる。ただ、一度体験させるまでが難しい。」というのが3Dオーディオの抱える最大の命題の命題かもしれない。これを解決するのは何よりも感動のユーザー体験を生み出すことに尽きる。そのために今後どのような3Dオーディオ制作ノウハウを蓄積していけるのか、全てのクリエイターが手を取り合って研鑽することが、未来のコンテンツを創り上げる第一歩と言えるのかもしれない。
*ProceedMagazine2020号より転載
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2020/04/17
Mac mini RMU〜コンパクトな構成でDolby Atmos ミキシングを実現
ホームシアター向けDolby Atmos(Dolby Atmos Home)マスターファイルを作成することが出来るHT-RMUシステムをMac miniで構成。劇場映画のBlu-RayリリースやVOD向けのDolby Atmos制作には必須のDolby Atmos HT-RMUシステムは、Dolby社の認証が下りている特定の機器構成でなければ構築することが出来ない。従来、認証が下りていたのは専用にカスタマイズされたWindows機やMac Proといった大型のマシンのみであったが、ついにMac miniを使用した構成の検証が完了し、正式に認可が下りた。
Pro Toolsシステムとの音声信号のやりとりにDanteを使用する構成と、MADIを使用する構成から選択することが可能で、どちらも非常にコンパクトなシステムで、フルチャンネルのDolby Atmos レンダリング/マスタリングを実現可能となっており、サイズ的にも費用的にも従来よりかなりコンパクトになった。
HT-RMUの概要についてはこちらをご覧ください>>
◎主な特徴
Dolby Atmosのマスター・ファイルである「.atmos」ファイルの作成
.atmosファイルから、家庭向けコンテンツ用の各フォーマットに合わせた納品マスターの作成
「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換
Dolby Atmos環境でのモニタリング
Dolby Atmosに対応するDAWとの連携
DAWとの接続はDanteまたはMADIから選択可能
◎対応する主なソリューション
Dolby Atmos に対応したBlu-ray作品のミキシング〜マスタリング
Dolby Atmos に対応したデジタル配信コンテンツのミキシング〜マスタリング
Dolby Atmos 映画作品のBlu-ray版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
Dolby Atmos 映画作品のデジタル配信版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
Dolby Atmos 映画作品のためのプリミキシング
構成例1:Dante
※図はクリックで拡大
RMUとPro Toolsシステムとの接続にDanteを使用する構成。拡張カードを換装したPro Tools | MTRXやFocusrite製品などの、Dante I/Fを持ったI/Oと組み合わせて使用することになる。この構成ではLTCの伝送にDanteを1回線使用してしまうため、扱えるオーディオが実質127chに制限されてしまうのが難点だが、シンプルなワイヤリング、ソフトウェア上でのシグナル制御など、Danteならではの利点も備えている。しかし、最大の魅力はなんと言ってもRMU自体が1U ラックサイズに納ってしまう点ではないだろうか。
構成例2:MADI
※図はクリックで拡大
こちらはMADI接続を使用する構成。歴史があり、安定した動作が期待できるMADIは多チャンネル伝送の分野では今でも高い信頼を得ている。この構成の場合、MADIまたはアナログの端子を使用してLTCを伝送するため、128chをフルにオーディオに割り当てることが出来るのも魅力だ。また、この構成の場合はMADI I/FをボックスタイプとPCIeカードから選択することが出来る。
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2019/12/26
株式会社角川大映スタジオ様 / Dolby Atmos導入、いままでのジャンルを越えた制作へ
1933年に開所した日本映画多摩川撮影所から始まり、80年以上の歴史をもつ角川大映スタジオ。そのサウンドを担っているポスプロ棟の中にはDubbing Stage、MA/ADR、Foley、サウンド編集室というスペースが存在している。今回の改修ではMA/ADRのDolby Atmos化、サウンド編集室のサウンドクオリティの向上を図る改修工事のお手伝いをさせていただいた。製品版の導入としては国内初であるDolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)や、Pro Tools | MTRXの機能を最大限に活かしたシステムアップなど機材面でも注目すべき改修工事となった。
映画、ドラマ、DVD、OTT作品など幅広い作業に対応したスタジオ
今回の改修のスタートだが、実はサウンド編集室の増設とサウンドクオリティ向上のための内装工事というものだった。当初はサウンド編集室をDolby Atmos対応の仕込みができるよう7.1.4chにスピーカーを増設しようというプランがあった。しかし、それだけではその後のマスタリングの工程が社内で行うことができずに、他のスタジオでの作業となってしまう。そして、サウンド編集室の天井高が十分ではないこともあり、理想に近い音環境の構築が困難であるということもあった。それならば、マスタリングまでできる環境としてMA/ADRを改修してしまうのはどうだろうか、と一気に話が進んだということだ。逆にサウンド編集室のDolby Atmos対応に関しては見送られ、MA/ADRで仕込みからマスタリングまでを行うというワークフローとなった。このような経緯でスタートした今回の導入計画その全貌をご紹介していきたい。
メインコンソールとなるAvid S6とその下部に納められたアウトボード類
今回の導入の話の前に、こちらのMA/ADRのスタジオがどのようなスタジオなのかというところを少しご説明させていただきたい。こちらのスタジオは映画、ドラマ、DVDミックス等やアフレコ、ナレーション収録からCMの歌録りなど幅広い作業に対応したスタジオとなっている。昨年メインコンソールをAvid D-ControlからAVID S6+MTRXの構成にアップデートした。Pro ToolsはMain、SE、EXと呼ばれる3台が用意され、映像出力用にWindows仕様のMediaComposerが1台用意されている。サラウンドスピーカーはGENELECで構築、LCRは8250A、サラウンドは8240Aとなっている。DME24とGLMネットワークによりキャリブレーションされ、AVID S6の導入と同じタイミングで5.1chから7.1chへと更新が行われた。今回の改修ではさらにスピーカーをDolby Atmos準拠の7.1.4chへ増設し、Dolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)を導入。さらにはMTRXオプションカードを増設することによって、シンプルかつ円滑にAtmos制作ができる環境へとアップデートされた。
国内初導入となるDolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)
今回行われた改修の大きなトピックとなるのが、国内としては初めての導入となるDolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)の存在だろう。Dolby Atmos Processer HT-RMU/J(MAC)とは「Dolby Atmos Home」制作、マスタリングのためのターンキー・システムである。HT-RMUとは"HomeTheater-Rendering and Mastering Unit"の略で、Dolby Atmos Homeのマスタリングを行うマシンということである。2017年に取り扱いを始めた当初はWindows版しかなかったが、現在ではMac OSでのシステムアップも可能となっている。さらにSoftware Version 3.2からMac miniでの構築が可能となり、導入のしやすさは格段に上がった。コストはMac miniにすることにより抑えられ、Mac mini版のHT-RMUは税別100万円という価格になっている。Windows版、MacPro版は税別200万円であったので、半分のコストで導入することができるようになったわけだ。
HT-RMU/J(MAC)の場合はDanteでDAWと音のやり取りを行う。今回のケースではMTRXの”128Channel IP Audio Dante Card”と接続するだけでProToolsとの信号のやりとりはOKというシンプルな接続となっている。HT-RMU/J(MAC)のハードウェア構成としては、Mac Pro or Mac mini、 Sonnet /xMac Pro Server(III-D、III-Rでも可、Mac miniの場合はxMac mini Server)、Focusrite / RedNet PCIeR、Audinate / ADP-DAI-AU-2X0(タイムコード信号をDanteに変換しRMUに送る役割)、外部ストレージとなる。今回導入となった構成としてはMacPro、Echo Express III-Rという組み合わせとなった。3式のProTools のそれぞれがMac Proとなっており横並びで3台ラッキングされているのだが、その横に1台分の空きがあり、今回導入のHT-RMUのMacをそこへラッキングするためxMac Pro ServerではなくIII-Rの方が都合がよかったというわけだ。
HT-RMUのMacにインストールされたDolby Atmos Rendererアプリケーションにてレンダリング、マスタリングを行うのだが、同一ネットワーク内の別のMacからもそのRendererをコントロールできるRenderer Remoteというアプリケーションが用意されている。今回はHT-RMU含む4台のMacを新しくネットワーク構築している。3台あるProTools のMacすべてにRenderer Remoteがインストールされ、どのMacからもRendererをコントロールできる。また、オブジェクトのメタデータについても3台すべてのPro Toolsから送ることができるようになっている。
DigiLink I/Oカード、Danteカードの増設によりシンプルなシステムを可能にしたMTRX
もう一点今回の改修で大きな鍵をにぎっているのはPro Tools | MTRXだ。新規に導入いただいたオプションカードは”128 Channel IP Audio Dante Card”1枚、 "DigiLink I/O Card"3枚の合計4枚となっている。”128 Channel IP Audio Dante Card”は今回のRMU導入の大きな手助けをしてくれた。128chの送受信を要求するHT-RMUとのやりとりがこのカードを入れるだけで済んでしまう。多チャンネルを扱う際にシンプルに多くのチャンネル数をハンドリングできるAoIP / Danteはかなり利便性に富む。
中央に見える4台並んだMacProの左3台がPro Toolsシステム、一番右のマシンとその上のシャーシの組み合わせにDolby Atmos Rendererをインストール。右ラックの最上段にはAvid MTRXの姿が確認できる。
また"DigiLink I/O Card"を3枚導入することにより、3つあるProTools間での音のやりとりがとてもシンプルでなおかつ多chとなった。導入前はHD I/O とMTRXがAESで信号のやりとりをしていたが、DigiLink I/O Cardの導入により各ProToolsが直接MTRXと接続される形となる。これまで、16chのやりとりであったものが、Main 160ch、SE 64ch、EX 32chと多チャンネルのやりとりができるようになった。SE、EXからMainにダビングするのはもちろんだが、HT-RMUからのRerenderer OUTを3つのProToolsどれでも録音できるようになっている。シグナルルーティングの組み替えはDADmanから操作でき、作業に合わせたプリセットを読み込むことで瞬時の切り替えも可能。このあたりのシグナルルーティングの柔軟性はMTRXならではといったところだろう。
今回の改修によりDanteカード1枚、DigiLinkカード3枚が追加され、ADカード1枚、DAカード2枚、AESカード1枚、と8スロットすべてを使用する形になっている。MTRXを核としたスタジオセットアップは、最近ではデフォルトになりつつあるが今回の構成はとても参考になる部分があるのではないだろうか。
サウンドクオリティ向上を図ったサウンド編集室
今回3部屋に増設となったサウンド編集室、ラックにはYAMAHA MMP1が格納される。後方に備えられたスピーカーの写真は7.1ch対応となっているサウンド編集室1だ。
サウンド編集室の更新も併せてご紹介したい。まず一番大きなポイントは2部屋だったものを3部屋に増設したということだ。もともとの2部屋は防音パネルを貼っていただけの部屋だったため外からの騒音が気になったとのこと。今回の工事では空調を天井隠蔽型に変更し、マシンスペースを分け二重扉を設置した。これにより気になっていた外部からの騒音もシャットアウトされた。また機材についても見直され、もともとはYAMAHA / DM1000が使用されていたが代わりにYAMAHA / MMP1が導入された。3部屋とも機材が統一され使用感に変化がないよう配慮されている。Pro Tools HDXのシステム(I/O はHD I/O 8x8x8)にモニターコントローラ兼モニタープロセッサーとしてYAMAHA / MMP1、スピーカーはGENELECという構成だ。ちなみに、YAMAHA / MMP1はiPadの専用アプリケーションにてコントロールを行なっている。サウンド編集室1は7.1chに対応し、2と3は5.1chなのだが7.1chに後から増設できるよう通線等はされ、将来における拡張性を確保している。
HT-RMUの導入から取材時点ではまだ1ヶ月も経っていないのだが、Atmos制作環境があることによっていままでになかったジャンルの仕事が増えたとのお話を伺えた。これから導入が進むことが予測されるDolby Atmosの制作環境だが、それをいち早く導入したことによるメリットはとても大きいようだ。今後は幅をさらに広げて、Atmos環境を活かしたさまざまな作品を手がけていきたいという。また、今回の導入で感じたことはHT-RMUの導入が身近になってきたということだ。実際、今回の改修では当初サウンド編集室の増設というお話だったが、最終的にはMA/ADRのAtmos化を実現、追加機材の少なさが鍵となったと言える。Dolby Atmos制作環境のご相談をいただく機会は格段に多くなっているが、リニューアルした角川大映スタジオのMA/ADRは、今後のDolby Atmos制作スタジオのケーススタディとして参考にすべき好例となるのではないだろうか。
(左)株式会社 角川大映スタジオ 営業部 ポストプロダクション技術課 課長 竹田 直樹 氏、(右)株式会社 角川大映スタジオ 営業部 ポストプロダクション技術課 サウンドエンジニア 小西 真之 氏
*ProceedMagazine2019-2020号より転載
Tech
2018/12/25
avexR studioが創り出す、新たなコンテンツのカタチ 〜Dolby Atmosでライブ配信されたa-nationの熱狂〜
2017年12月、東京・南青山にエイベックス新社屋がオープンされた。その中に、常に時代の最先端を求めるエイベックスならではのMAスタジオ「avexR studio」がある。今回はDolby Atmos対応スタジオとして設計されたこのavexR studioと、8月に味の素スタジアムで行われた「a-nation 2018 Supported by dTV & dTVチャンネル」東京公演でのDolby Atmosライブ配信という取り組みをご紹介したい。お話を伺ったのはエイベックス・エンタテインメント株式会社にて映像制作に関する統括、ならびにCEO直轄本部にて主にR&Dや新規開発案件を担当している岡田 康弘氏。スタジアムの熱気を空気感までそのままサラウンド配信するという、新たなコンテンツのあり方をどうマネジメントしたのか掘り起こしていきたい。
インハウスのXR制作ラボ
27年というキャリアの中で様々な業務に携わってきた岡田氏。その多岐にわたる「様々」ぶりを端的に感じさせるのが現在の肩書きで、なんと「映像プロデューサー兼デジタル・ディレクター兼MAエンジニア」と称しているそうだ。これもそのキャリアの成り立ちを伺うとよくわかる。1994年といえばようやくYahooが登場し、Windowsも95以前、Macで言えばPower Macintoshが発売された年だが、このITデジタルの黎明期に音楽ディレクターであるにもかかわらず、当時では珍しいデジタル担当(WEB制作)をしていたそうである。「当時の仲間からは「ハッカー岡田」というありがたいあだ名を頂戴しました(笑)。」とのことだが、この当時の世の中を思い返せばそれも頷ける。
また、初めてのマルチチャンネル(トラック)での業務は、THE STAR CLUBのアルバム「異邦人」(1994)だという。当時のMTRはもちろん、SONYのPCM3324や3348。当時の音楽スタジオの主流は3348に加え、SSL4000シリーズや9000シリーズのアナログコンソールという組み合わせだった。エンジニアのほかにもA&R、原盤制作、編曲、洋楽REPなどに携わるだけでなく、2011年には新たに立ち上がったデジタル部署においてネット配信やアプリ・WEB制作にも関わる。そして2015年からは従来の映像制作セクションと統合された現部署にて、デジタルと映像が融合されたコンテンツを制作、直近ではDolby Atmos シアターで本編上映前に流れるCMも制作している。と、ここまでくれば冒頭の多岐にわたる肩書きも納得となるのではないだろうか。その岡田氏が必要としたMAスタジオがavexR studioである、類を見ない特別なスペースになっていることは想像に難くない。
エイベックス・エンタテインメント株式会社 レーベル事業本部 企画開発グループ 映像制作ユニット マネージャー 岡田康弘 氏
まず、avexR studioの名称だが、これはコンセプトであるVR・AR等を総称したXRとエイベックスが掛け合わされたものだそうだ。dTVのVR専用アプリdTV VRでのコンテンツ配信が特に音楽分野での3DVRとして好評であったこと。またこれが「エイベックスの先進的な取り組みとして」社外にも評価されたほか、組立式の簡易VRゴーグルをCDとセットで販売した「スマプラVR」との関わりもあり、インハウスのXR制作ラボ的な施設を作ろうという流れが社内にできた。構想当初の段階では「5.1chは視聴ができるシステム」をイメージしており、マルチチャンネル編集は付加的要素だったそうだが、その後に「a-nation 2018 Supported by dTV & dTVチャンネル」でのDolby Atmos配信が決まり、スタジオ構想は7.2.4chのDolby Atmos対応スタジオへと拡大。そして完成したのがこのavexR studioである。
MTRXがハンドリングするモニターシステム
avexR studioではコンテンツにあわせて、Stereo、5.1chや7.1chなどのサラウンド、5.1.4chや7.1.4chなどのマルチチャンネルの編集が行われるが、それを可能にしているのがGenelec 8350Aと8340A、7360Aで構成される7.2.4chのスピーカーシステムと、モニターコントロールとなるPro|Mon 2である。メインシステムであるPro Toolsのインターフェイスとして導入されているAvid|MTRXでは、マトリクスルーティングを司るDADmanと、さらにモニターコントロールとして機能するPro|Monを活用しているが、このスタジオはレコーディングスタジオではなくMAがメイン。かつ各種のマルチチャンネルのミックスを行うというスタジオの特性から、プロファイルを読み込むことで瞬時にフォーマット変更やパッチ変更が行われる仕様のDADmanおよびPro|Monは様々なコンテンツを制作するにあたり非常に重要な役割を担っている。こちらののように卓がないスタジオのモニター・セクションとしてはこの機能は秀逸であるという事に尽きる。
今回、MTRXには8ch Mic HAを搭載したMic/Line Prostine ADカードと、Line入力のみのLine Prostine ADカードがそれぞれ1枚づつ搭載されており、Head Ampとしても利用可能なセッティングにしている。ほかにもMic HAはPro|MonでのTB マイク回線HAとしても活用されている。さらに、Neve 1073DPA、XLogic Alpha VHD PREとUniversal Audio 1176LN、TUBE-TECH CL1Bが手元に用意されており、アウトボードもパッチで自由に組み合わせることができる。
16ch分のDAカードは、Pro|Mon 2で設定したモニターアウトが各Genelecスピーカーへと接続されているほか、Boothへのモニター回線としても使用されている。Avid|MTRXを選択した理由の一つとして拡張性が高いことも挙げられており、近い将来はDanteモジュールを追加して、このMAスタジオに併設されている撮影スタジオと連携した多チャンネル収録の対応や、Dolby RMUへの対応も検討しているそうだ。
Nugen Audioの創意された活用
Pro Toolsとともに重宝されているのが、Nugen AudioのHalo Upmix & 3D Immersive Extensionだ。サラウンドミックスには欠かせないHalo Upmixに、さらに垂直方向への音の展開を可能にする3D Immersive Extensionを加えたプラグインは、Dolby Atmosのような立体音響では欠かせないツールとなっており、このスタジオでも欠かせないツールの一つとなっている。
実際の使用方法は、セッション上でステレオ音源をHalo Upmixにて展開し、各チャンネルのアウトプットをAUXトラックで受け、ミックス画面上で各チャンネルの微調整を行なっている。ここで注目したいのが、天井に設置された4つのスピーカーだ。Pro Toolsでは最大7.1.2chまでに対応しているが、垂直方向へは2chまでしか対応していない。そこで、Stsereo to 7.1.2 フォーマットで呼び出したHalo Upmixを画面上で5.1.4へ切り替え、そうすることでHalo Upmix上では5.1.4chフォーマットで展開されることになる。なお、Pro Toolsでは5.1.4chのフォーマットはないため、7.1.2chを単なる10chのバスとして扱い、スタジオで展開するセッションではそれぞれをわかりやすくするため、各チャンネルをモノラルAUXトラックで受けている。
GENELEC DSPで整えられた音場設計
スタジオを設計するにあたり、数多くのこだわりが散りばめられているが、スピーカー個々を含む音場設計に関してはさらに入念な設計がなされている。メインスピーカーとしてチョイスしたのはオレンジにカラーリングされたGENELECの8350Aシリーズ。そのオレンジ色にカラーリングされた8350Aをミッドレイヤーで7発設置。天井にはハイトスピーカーとして8340Aを配置、こちらは天井色に合わせてグレーがチョイスされた。極限までデッドな環境にルームチューニングされている点と、映画等のミックスを踏まえてサブウーファー7360AをLRで設置したこともこだわりの一つである。なお、これらGENELECスピーカーは全てGLM ソフトウェアでの補正、制御がかけられている。また、GENELECとは別にステレオスピーカーとしてFocal Solo6も別に用意されている。現在のミッドレイヤーは7chで構成されているが、さらにチャンネル数が増えたフォーマットも対応できるように設計されている。増設したスピーカーの位置を角度がわかるようにあえて天板で切換を設けて、スピーカーポジションがわかるようになっているため、今後チャンネル数が増えても対応できる仕組みだ。
このように工夫されたポイントは他にもある。スタジオ内で使用する電源ボックスは鋳物で作られているが、これは鋳物にすることで重量が増し、電源ボックスの振動を抑える狙いから。さらに電源ボックスまでのケーブルも床から浮かせるなど、細部にまで音質の追求がされている。そして、黒で統一されたナレーションブース。正面に設置されたテレビモニターは、Pro Toolsのビデオ出力が映る設計となっている。右手にはブース窓が設けられ、コントロールルームとのコンタクトがとれる設計だ。モニターシステムは2種類用意されており、カフシステムとキューボックスから選ぶことが可能。もちろん、モニターシステムへの音声アサインは前述の通り、DADmanのモニターコントロールを介して行われる。
また、MAスタジオとしては非常に珍しいクリアカムシステムも常設。こちらはナレーションブースとのコミュニケーション用途ではなく、MAスタジオの横に併設されている撮影スタジオとのコミュニケーションとして用意されている。現在ではトランクラインが数チャンネル用意されており、マイク数本ならMA室での収録も可能となっている。その他にもこのフロアにはオフライン編集室も併設されている。
MAブース
編集室
撮影スタジオ
Dolby Atmos Mixのライブ配信という初モノ
avexR studioの構想を拡げた今年のa-nationは大阪と東京で行われた4日間の公演がDolby Atmos Mixにてライブ配信された。「Dolbyのスタッフも、野外フェスでのDolby Atmos Mixは初めてと言っており、マイキングも含めて全てが初めての経験でした。」と岡田氏が語るように、今回のa-nationは「誰もやっていないなにか初モノを」というコンセプトのもと未だかつてない斬新な企画が行われていた。
「毎年、a-nationのキックオフ会議では「なにか誰もやってない初モノをやりたいね!」という話題が出ます。今では当たり前になった映像サブスクリプションサービスでの音楽ライブの生配信もdTVでのa-nation(2015年)が初めてでしたし、前にも記したdTV VR(2016年)も「ライブの生ステージの花道のポップアップからVRカメラが突然出てくる」なんて狂気の沙汰(笑)は、当社でなければ思いつきませんし実行しないと思います。」
岡田氏の言葉通りだが、実際、2015年から始まったリアルタイム配信は、翌年になるとVRへとフォーマットを展開し、さらに「何か誰もやっていない初モノ」となるDolby Atmos Mixのライブ配信へと発展していくひとつの導線だったように見える。
会場全体に配置されたアンビエントマイク
それでは、Dolby Atmos Mixのライブ配信がどのように行われたかを見ていきたい。まず、会場にはアリーナ席を取り囲むように16本のアンビエントマイクが設置された。アンビエントマイクのミックスにおいて、Haloとのバランスが非常に重要だったそうだ。今回の会場でのポイントを伺った。
「アンビエントマイクの配置で苦労したのは、高さと反射です。高さに関してはDolby Atmosの肝でもあるので、効果的なマイクの高さと指向を見つけるのが大変でした。反射に関してはスタジアム背面の反射音はリバーヴの深度の可変で調整しやすいのですが、マルチチャンネルは立体的であるため、音の反射の戻りが一定でなく位相のズレが激しいのが難点でした。具体的には上手右側には大きい電光掲示板があるけど、下手左側は普通の観客席だったりと。」
特にDelayの調整はバンドごとに調整が必要だったそうで、そういった意味でもHalo Upmixを展開した5.1.4のマルチアウトは活用されていた。会場のアンビエンスは遅れて届くため、Halo Upmixでプロセスされたマルチアウトチャンネルの方でDelayをかけているのだが、チャンネルによってはDelayを多めにかけたり、少なめにするなどの微調整が必要だった。そのような中でも、リハ中にアンビエントマイクのグループ2MixにHaloを挿して「自分の位相感とHaloが導き出す位相感」のギャップを感覚的に測ってみるため、Pro Toolsセッション上に視聴のためのFaderを用意して比較視聴したそうだ。
二重化されたライブミックスと収録システム、転送システム
今回はPro Toolsを中心とした収録システムが組まれた。ミックスを行なっていたMix用Pro Toolsは本線と予備回線の2回線用意され、それぞれが別の収録用Pro Toolsやマルチチャンネルレコーダーへ送られる仕組みだ。DJ Mixのようなインスト2ch Mix中心のバンドはそのまま2chを、バンドセットの場合は別に用意された収録車にて各パートがSTEM MixされてDolby Atmos Mix車へ、アンビエント等のアナログ回線はDolby Atmos Mix車内にてスプリッタで分岐されて本線と予備回線に分岐。後述するが、車載された3式のPro ToolsのインターフェイスにはすべてAvid|MTRXが採用された。コントロールはPro Toolsが稼働している各Macではなく、制御用のMacBook Proが用意され、3台ともが1台のDADmanからコントロールされていた。特に、本線Macと本線用収録Pro ToolsとはDante接続されており、DADmanの他に、Dante Controlの制御を行う必要がある。今回はライブ配信とマルチチャンネル収録があるため、どのMacでも制御は一切に行わない仕様だ。
Dolby Atmos Mix車、収録車
DADmanで3台のMTRXをコントロール
本線システム
予備システム
本線収録用システム
本線と予備回線はそれぞれSDI Enbedderへ送られる。SDI EnbedderはDolby Atmos Mix車とは別の場所で設営され、そちらでは問題なくEnbeddedされているかどうかを確認するブースが用意されていた。
ちなみに、今回のライブ配信で実際に配信された音声がDolby Atmos Mixとして試聴できた端末はNTTドコモの最新スマートフォンでGalaxy S9、Galaxy S9+、AQUOS R2、HUAWEI P20 Proの4機種となった。これらの4機種ではハードウェアに内蔵されたDolby AtmosデコーダーによりヘッドホンのみだがDolby Atmos Mixが視聴することができる。
リアルタイムミキサーとして選択されたPro ToolsとHalo Upmix
数あるDAWの中からPro Toolsが選ばれたのは、Pro Tools 12.8からDolby Atmosミキシングにネイティブ対応し、Dolby Atmos Pannerプラグインを使用しなくなったのが大きいそうだ。デフォルトで3D Panningができるようになり、3Dオブジェクトのルーティングやパンニングが追加プラグインなしで活用できるようになったり、Pro Tools Ultimate 2018.4以降では各種プラグインも含めてマルチチャンネルの対応幅が広がったことは、ミックスをするにあたり結果にたどり着くまでのプロセスが少なく済む。ライブミックスの場合は、電力やスペースの都合からコンパクトかつ高性能、そして信頼性が大事となるだけに、Pro Toolsのシステムは安心感が持てるからだと岡田氏は語る。
実際にPro Toolsセッションを覗かせてもらうと、16本のアンビエントマイクは、各チャンネルとも7.1.2のバスへアサインされ、実際のマイクに合わせて高さを出すため、Pro Toolsの3Dパンナーを使って高さ方向への配置がされていた。実際にアンビエンスだけで聞かせていただいたが、高さ方向への空気感は会場そのものが再現されている。そして、今回のミックスで核となるのがNugen Audio Halo Upmixである。
「a-nationのようなフェスの場合、出演するアーティストの編成によりバランスが都度変わります。また、各アーティストのリハーサル時間も短いことから、今回は収録車のマルチオーディオ録音チームよりいただいた各種ステムミックスをPro Toolsセッション上で2chにMixした上で、内部バス経由でHaloにて5.1.4ch化を行い、会場のアンビエントとの位相合わせも含め大変活躍しました。」
ひとつのセッション上で各パートのSTEMトラックをミックスし、バックトラックSTEMを内部バスでHalo Upmixへ送ることで、各パートの微調整も容易になる。今回のように、多種多様なアーティストが出演するとなると、楽器構成などが幅広くなりミックスバランスも非常に難しくなるが、アンビエンスのほかにも苦労したポイントはLFEの取り扱いだという。特に今回の試みがdTVチャンネル、NTT docomoの施策ということで、スマホでの視聴でなおかつヘッドフォンでの視聴に限定される。そのため、とりわけLFEの分量には苦労したそうだ。
また、アーティストの出演順によって、バンドセットの後にDJセットが来るときなどは、バランスが大きく異なる、ここもフェスならではのポイントとなった。リハーサルの際にも実際にオペレートされているところを拝見させていただいたが、バンドが変わるごとにセッションの開き直しなどは行わず、グループごとでHalo Upmixでのプリセットのリコールや、各チャンネルのバランス・広がり度合い・アンビエントのボリューム・各チャンネルのでDelay値をバンドごとに修正されていた。
長蛇の列を作ったavexR studioミックスの体験ブース
会場ではスタジアム横に用意されたCommunity Stageやフードブースが並ぶスペースの中央に、オフィシャルパートナーであるdTV・dTV chのブースが用意された。ここでは、一般の方もDolby Atmosでミックスされたコンテンツを視聴できるブースとなっており、今回のために用意されたアーティストのライブ映像のDolby Atmos Mixが無料体験!! とあって常に長蛇の列となった。こちらのミックスも前述のavexR studioにてミックスが行われている。縦方向への音の広がりが、通常のライブビデオとも違う空気感を感じられたのだが、実際にミックスするにあたりステレオにはないミックス方法を実施したとのこと。
手法としては、ステレオ音源をベースにNugen Audio Halo Upmixで5.1.4へと広げるのだが、ここでセンター成分にあえて歪みを出すそうだ。確かにソロでCenterチャンネルだけを聞いてみると歪んでいるのだが、そこへLRチャンネルを足すと歪みは目立たなくなりセンター成分は存在感が保たれる。さらに他のチャンネルもバランスを見てミックスすることで、ライブ感を損なわずに空間を定位させることが可能になるそうだ。通常の音楽ミックスでは決して用いることのない手法だが、ライブMixかつマルチチャンネルミックスだからこその手法である。
昨今の音楽視聴環境がスピーカーからヘッドフォン・イヤホンで、CDから携帯端末内のデータによる視聴へと変化してきている中で、このように身近なスマートフォンという端末でここまでハイクオリティなコンテンツが視聴できるようになることは今後の音楽業界に少なからずの変化をもたらすであろう。スマートフォンのチップがパソコンに迫る処理速度になっていることからも、今後はDolby Atmosだけではなくマルチチャンネルフォーマットがスマートフォン向けのエンジン(アプリ)をリリースするきっかけになるのではと想像される。
「ライブをマルチチャンネルでミックスして配信、またアラカルト販売するにはまだまだコストが掛かり、すぐに沢山のコンテンツが定期的に出てくるとは正直思いません。しかし、Nugen Audio Halo Upmixの様なプラグインが出てきた事により、過去のライブ映像作品の2MIX+アンビエントで迫力あるマルチオ—ディオが低コストで作れるとなると、旧作品の掘り起こしになるのではないでしょうか」と岡田氏は直近の状況を見ている。確かに現在では最新スマホの4機種のみでの視聴であるが、スマートフォン向けのエンジンがアプリに内蔵されれば、iPhoneなど既存機種への対応も期待される。
このa-nation 2018 大阪公演・東京公演の計4日間の模様のダイジェストのうち、東京公演の2日間がavexR studioにてDolby Atmosフォーマットで制作され、11月18日からdTVチャンネルにてオンデマンド配信されている。前述のDolby Atmos対応4機種のユーザーは新たなコンテンツのあり方をすぐに手元で体験できる羨望の環境とも言える。今後の展望として、「avex+XR=avexR studioなのでAR、MR、VRなどの立体映像とオブジェクトオーディオを多用したVRオーディオの両方が制作できる唯一のクリエイティヴ・ハウスとして邁進できれば。」と岡田氏は語る。かつてiTunesにて音楽配信が開始された当初、直ちに国内レーベルとして最多曲数を発表したのもエイベックスだった。「なにか誰もやっていない初モノをやりたい」という精神は今も昔も変わらず業界を牽引している証ではないだろうか。
左からROCK ON PRO 清水 修平、株式会社楽器音響 日下部 紀臣 氏、エイベックス・エンタテインメント株式会社 岡田 康弘 氏、ROCK ON PRO 赤尾 真由美、メディア・インテグレーション株式会社 山口 哲
*ProceedMagazine2018-2019号より転載
Event
2018/01/31
「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」全国ツアー第3弾!名古屋セミナー募集開始!!
東京、大阪と開催し大変好評をいただいた「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」が名古屋で開催決定!参加募集を開始いたします!今回はセミナー終了後に隣接するミッドランドシネマ様へお伺いして、上映中の映画によるDolby Atmos鑑賞会を予定しています。セミナー参加者の皆さんと実際に劇場でDolby Atmosを一緒に体験しましょう!
もちろんセミナーではその最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介いたします。国内でも販売の始まるDolby Atmos Mastering Suite、そしてProduction Suite、それらと緊密な連携でワークフローを形作るAVID Pro Tools 2018。どのようにシステムアップし、どのように動作を行うのか…?Dolby Atmos Mastering Suite DealerであるROCK ON PROでは、Dolby Atmosに関する疑問・質問にお応えしていきます!名古屋セミナーへのご参加ご予約お待ちしております!!
※追記:大変恐縮ですが14:30からのセミナースタートに時間変更をしております。詳細は下記の開催要項をご確認ください。ご承知おきのほどお願い申し上げます。
◎こんな方にオススメ
・Dolby Atmosとはなにか、その基本から知りたい方
・Atmos Home、Atmos Theaterといった、Dolby Atmosの種類について理解を深めたい方
・Production Suite、Mastering Suite、Dolby Atmos RMUなど、制作ツールについて理解を深めたい方
・Dolby Atmos制作に必要なその他の機材/スタジオ環境について知りたい方
・3Dサラウンド、VRコンテンツ制作に関する情報を最先端にアップデートしたい方
・Dolby Atmosワークフローについて基本から知りたい方
・実際にDolby Atmosを体感したい方
◎セミナー・トピック
第1部 Dolby Atmosの現状
講師:中山 尚幸 氏(Dolby Japan 株式会社)
全世界で爆発的な導入・制作の進むDolby Atmos。あらためてAtmosとはどのようなフォーマットなのか?その制作環境は、どのようになっているのか?基本的な部分から、現在の最新情報、現状の環境といった部分をじっくりと時間をかけて解説いただきます。Dolby Atmosにご興味のある方であれば、どの様な方でも役に立つ導入講座です。
トピック
・Dolby Atmosフォーマットの基本概念
・Dolby Atmosの種類(ホームとシアターの違い)
・制作ツールの種類(Production SuiteとMastering Suite)
第2部 Dolby Atmos制作環境とそのワークフロー徹底解説
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)
具体的にDolby Atmosの制作を行うには、何が必要なのか?どの様な設備を揃えれば良いのか?ターゲットとする規模、サイズに合わせたソリューションを解説。部屋に合わせて、そしてターゲットとするアウトプットに対して必要とされる要素も変化するDolby Atmosを整理してご案内を行います。
そして、実際の制作において必要となるツール。今回はPro Tools HDシステムでの実例を交えながら、どのように制作を行うのか、シグナルフローなどをご確認いただきながら、ひとつづつ解説します。最新のPro Tools 2018で実現したシームレスなワークフローは、現実感のあるDolby Atmos制作環境を構築可能にします。スピーカーを使わずにヘッドフォンでのプリミックスの手法など、手軽に始められるワークフローなども織り交ぜながらその実態に迫ります。
トピック
・Dolby Atmos制作のためのシステム
-制作に必要な機材/設備
-スタジオ規模/目的に合わせたシステムの種類
・Pro Tools 12.8におけるDolby Atmosワークフロー
-Dolby Atmosプラグイン
-Dolby Atmos RMUとの連携
-手軽に始めるAtmosワークフロー
◎開催要項
場所:AP名古屋.名駅 7F 会議室N+M
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4-10-25 名駅IMAIビル
(https://www.tc-forum.co.jp/kansai-area/ap-nagoya)
日時:2018年2月20日(火)
※追記:大変恐縮ですが14:30からのセミナースタートに時間変更をしております。ご承知おきのほどお願い申し上げます。
14:15 開場
14:30 セミナースタート
・Dolby Atmosの現状:中山 尚之(Dolby Japan)
・制作環境とそのワークフロー徹底解説:前田 洋介(ROCK ON PRO)
16:30 Q&A、セミナー終了、ミッドランドスクウェアシネマへ移動
17:20 ミッドランドスクウェアシネマにて上映作品によるDolby Atmos鑑賞
※上映作品の鑑賞につきましてはセミナーお申込みの方へスケジュール、タイトル、鑑賞参加費用等をご連絡をさせていただき、鑑賞会へのご参加の有無を確認させていただきます。
※作品鑑賞後には懇親会を予定しています。奮ってのご参加をお待ちしております。
定員:30名
参加費:セミナー無料(鑑賞会参加費用については、セミナーご参加お申込みの方々へ別途ご案内を
差し上げます。セミナーのみのご参加も可能です。)
主催:(株)メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部
お問い合わせ先:ROCK ON PRO (TEL: 03-3477-1776)
ROCK ON PRO Umeda (TEL: 06-6131-3078)
講師:中山 尚之(Dolby Japan)、前田 洋介(ROCK ON PRO)
会場地図
Tech
2017/12/12
「Dolby Atmos Home」制作のためのターンキー・システムを販売開始!
既存のサラウンド・システムに加え、「オブジェクト・ベース」という新たなコンセプトを取り入れることでシネマ・オーディオに革新をもたらすDolby Atmos。世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなりました。しかし、新たな方式を取り入れるということは、必然的に従来とは異なるシステムやワークフローが要求されることとなります。
ROCK ON PROはDolby Atmos Mastering Suite認定ディーラーとして、制作を希望するみなさまからの疑問や制作用ツール導入に関するご相談にお応えいたします!「どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか? 」そんな疑問をお持ちの方も、まさに「これからDolby Atmosの制作を始めよう!」という方も、まずはROCK ON PROまでお問い合わせください!
◎ホームシアター向け納品ファイル作成に必須のシステムをターンキーで!
制作のための業務用ツールはこれまで、ドルビー社からのレンタルという形で制作現場に提供されていました。その中でも条件がもっともシビアな映画制作向けのツール類は今後もDolby社経由で入手することになりますが、Blu-ray Discやデジタル配信コンテンツを制作するためのツールはDolby社の認定を受けたディーラー経由で販売されることとなります。
ROCK ON PROでは、これら家庭向けDolby Atmosコンテンツの制作から納品マスター・ファイル (Dolby Atmos Home) の作成までを行うことが可能となる、ターンキー・システムの販売を開始いたしました。
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/J
構成
・Dolby社推奨 DELL Workstation
・Dolby Atmos Mastering Suite 同梱
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software インストール済
・MADI2系統 I/O、LTC I/O カード実装済
・二重化電源、内蔵ディスクは全てSSD
・ハードウェア製品保証5年間、ASP(ROCK ON PRO年間サポート)加入対象製品(有料)
主な機能
・Dolby Atmosのマスター・ファイルである「.atmos」ファイルの作成
・.atmosファイルから、家庭向けコンテンツ用の各フォーマットに合わせた納品マスターの作成
・「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos環境でのモニタリング
・Dolby Atmosに対応するDAWとの連携
対応するソリューション
・Dolby Atmos に対応したBlu-ray作品のミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos に対応したデジタル配信コンテンツのミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のBlu-ray版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のデジタル配信版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のためのプリミキシング
・VRコンテンツのミキシング〜マスタリング
価格
ROCK ON PROまでお問合わせください!
◎HT-RMUとは何か〜Cinema用RMUとHome用HT-RMU
Dolby Atmosコンテンツ制作のためには、ミックスのためのツールに加え、完成したミックスからファイナルデータを作成するためのDolby Atmos RMU (Redering Mastering Unit)と呼ばれるハードウェア・システムが必要となります。Dolby Atmos RMU はDolby Atmos環境でのモニタリングのためのレンダラーとしての使用も可能であり、ハードウェア・レンダラーとも呼ばれます。
RMUには映画館での上映を目的としたマスター(Dolby Atmos Cinema)を作成するためのものと、Blu-rayやデジタル配信コンテンツなどの家庭やモバイル環境で視聴することを目的としたマスター(Dolby Atmos Home)を作成するためのものがあります。後者のDolby Atmos Homeの制作を目的としたRMUがHT-RMUと呼ばれるハードウェア・システムです。これは、映画館とホームシアターではスピーカー・レイアウトが異なるため、使用されるマスターファイルやレンダリングのプロセスも異なり、それぞれ目的に合わせたRMUを使用する必要があるためです。
参考までに、Dolby Atmos Cinema作成のためにはCinema用RMUを備えた「ダビング・ステージ」と呼ばれるスタジオ設備を構築する必要があります。これらはDolby社によって要件が厳しく管理されているため、Dolby社と直接コンタクトを取る必要があります。
>>こちらの比較表もご覧ください
◎HT-RMUシステムのシグナル・フロー
Dolby Atmosコンテンツのミキシングは、これまで通りPro ToolsなどのDAWで行います。HT-RMUはDAWから、MADI経由でオーディオデータを受け取ると同時に、Atmosパンナーを通じてオブジェクトの位置情報であるオブジェクト・メタデータを受け取り、「.atmos」という拡張子を持つマスターファイルを作成します。最終的に、この「.atmos」ファイルから「Dolby True HD」などのメディアに合わせた納品ファイルを作成するところまでを行うことができます。
さらに、RMUからMADIで出力される信号を任意のスピーカーに接続することで、Dolby Atmos環境でのモニタリングが可能となります。
◎Dolby Atmos Mastering SuiteとProduction Suite
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/Jに付属するDolby Atmos Mastering Suiteは、HT-RMUに実質的な機能を与えるためのエンジンと、Pro Tools上でAtmosミックスを行うためのツールであるDolby Atmos Production Suite のライセンス x3をバンドルしたソフトウェア・ライセンスです。
Dolby Atmos Production SuiteはPro Tools | HD 専用のDolby Atmosミキシング・ツールです。Pro Toolsと同一のMac上で動作するソフトウェア・レンダラーと、ソフトウェア/ハードウェア・レンダラーにオブジェクト・メタデータを送ることができるパンナー・プラグインとを中心としたツールボックスです。これだけでもPro ToolsからのDolby Atmosミックスをモニタリングすることが可能ですが、.atmosファイルを書き出すことは出来ません。Dolby Atmos Mastring SuiteはProduction Suite のライセンス3本に加え、HT-RMU上で動作するマスタリング・エンジンなどを含むツール群で、下記ソフトウェアがバンドルされています。
Dolby Atmos Mastring Suite
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software for Windows
HT-RMUのレンダリング/マスタリング・エンジンとWEBサービス
・Dolby Atmos Conversion Tools (for PC and Mac)
「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos Production Suite x3ライセンス
Dolby Atmos Production Suite
・Pro Tools | HD 専用のAtmosパンナー類
・Dolby Atmosソフトウェア・レンダラー
・パンナー/コンバーターなどのVR制作用ツール
Dolby Atmos Production Suite単体はAvid Storeでの販売となります。
>>各プラグインの詳細などはAvidブログでご確認いただけます。
>>次項の比較表もご覧ください
◎Dolby Atmos 制作用ツール 機能比較表
Cinema:映画館上映を目的としたマスター。ダビングステージでファイナルミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Print Masterと呼ばれるファイル群をRendering Master Unit(RMU)で作成。
Home:一般家庭での視聴を目的としたマスター。ニアフィールドモニターによるAtmosスピーカー・レイアウトにてミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Master File(.atmos)と呼ばれるファイル群をHome-Theater-Rendering Master Unit(HT-RMU)で作成。
Cinema用とHome用のRMUでは作成できるファイルが異なり、スピーカーレイアウト/部屋の容積に関する要件もCinema向けとHome向けで異なる。それぞれ、目的に合わせたRMUを使用する必要がある。ミキシング用のツール、DAW、プラグイン等は共通。
※Dolby Atmos Production SuiteはWeb上、AVID Storeからご購入できるほか、Mastering Suiteにも付属しています。
※Dolby Atmos Dub with RMUについてはDolby Japanへお問い合わせください。
◎ROCK ON PRO導入事例
beBlue AOYAMA様
2014年、東京・青山という全国でも屈指の好立地に誕生し、MonoからDolby Atmosまで対応可能なMAスタジオ beBlue AOYAMA。こちらのスタジオの誕生にROCK ON PROが関わらせていただいた当時の導入事例です。
THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能とした将来性の高いシステム、機材導入などを決定付けたスタジオ構築に関するコンセプトなど、読み応え満載の記事となっております!
>>導入事例はこちらからご覧ください!!
◎「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」大阪・名古屋でも開催!
ROCK ON PROでは、新たなワークフロー、新たなシステムが要求されるDolby Atmos制作に関して、その最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介するセミナーを開催中です。12/7(木)には東京でのセミナーが開催、さらに、12/27(水)には大阪での開催が決定しており、日程は未定ですが名古屋での開催も決まっています。Dolby Atmosの制作について、踏み込んだ情報をお探しの方は最寄りの会場までぜひご参加ください!
Event
2017/12/08
「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」全国ツアー第2弾 大阪セミナー募集開始!!
大盛況の内に幕を閉じた東京でのセミナーに続き、「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」第2弾となる大阪での参加者募集を開始いたします!世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなったDolby Atmos。その最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介いたします。国内でも販売の始まるDolby Atmos Mastering Suite、そしてProduction Suite、それらと緊密な連携でワークフローを形作るAVID Pro Tools 12.8。どのようにシステムアップし、どのように動作を行うのか…?Dolby Atmos Mastering Suite DealerであるROCK ON PROでは、Dolby Atmosに関する疑問・質問に徹底的にお答えするため全国セミナー・ツアー第2弾!大阪セミナーへのご参加ご予約お待ちしております!!
◎こんな方にオススメ
・Dolby Atmosとはなにか、その基本から知りたい方
・Atmos Home、Atmos Theaterといった、Dolby Atmosの種類について理解を深めたい方
・Production Suite、Mastering Suite、Dolby Atmos RMUなど、制作ツールについて理解を深めたい方
・Dolby Atmos制作に必要なその他の機材/スタジオ環境について知りたい方
・3Dサラウンド、VRコンテンツ制作に関する情報を最先端にアップデートしたい方
・Dolby Atmosワークフローについて基本から知りたい方
◎セミナー・トピック
第1部 Dolby Atmosの現状
講師:中山 尚幸 氏(Dolby Japan 株式会社)
全世界で爆発的な導入・制作の進むDolby Atmos。あらためてAtmosとはどのようなフォーマットなのか?その制作環境は、どのようになっているのか?基本的な部分から、現在の最新情報、現状の環境といった部分をじっくりと時間をかけて解説いただきます。Dolby Atmosにご興味のある方であれば、どの様な方でも役に立つ導入講座。
トピック
・Dolby Atmosフォーマットの基本概念
・Dolby Atmosの種類(ホームとシアターの違い)
・制作ツールの種類(Production SuiteとMastering Suite)
第2部 Dolby Atmos制作環境とそのワークフロー徹底解説
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)
具体的にDolby Atmosの制作を行うには、何が必要なのか?どの様な設備を揃えれば良いのか?ターゲットとする規模、サイズに合わせたソリューションのご提案を行います。部屋に合わせて、ターゲットとするアウトプットに対して必要とされるものの変わるDolby Atmosを整理してご案内を行います。
そして、実際の制作において必要となるツール。今回はPro Tools HDシステムでの実例を交えながら、どのように制作を行うのか、シグナルフローなどをご確認いただきながら、ひとつづつ解説を行います。最新のPro Tools 12.8で実現したシームレスなワークフローは、現実感のあるDolby Atmos制作環境をご提供します。スピーカーを使わずにヘッドフォンでのプリミックスの手法など、手軽に始められるワークフローなども織り交ぜながらその実態に迫ります。
トピック
・Dolby Atmos制作のためのシステム
-制作に必要な機材/設備
-スタジオ規模/目的に合わせたシステムの種類
・Pro Tools 12.8におけるDolby Atmosワークフロー
-Dolby Atmosプラグイン
-Dolby Atmos RMUとの連携
-手軽に始めるAtmosワークフロー
◎開催要項
場所:ガリレオクラブ Aスタジオ
〒530-0026 大阪市北区神山町1-5 扇町公園ビル 2階(https://galileo-club.com)
日時:2017年12月27日(水)
14:15 開場
14:30 セミナースタート
・Dolby Atmosの現状:中山 尚之(Dolby Japan)
・制作環境とそのワークフロー徹底解説:前田 洋介(ROCK ON PRO)
16:30 Q&A、終了
定員:15名
参加費:無料
主催:(株)メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部
お問い合わせ先:ROCK ON PRO Umeda TEL 06-6131-3078
講師:中山 尚之(Dolby Japan)、前田 洋介(ROCK ON PRO)
会場地図
Event
2017/11/24
ROCK ON PRO Presents「Dolby Atmos 制作環境構築セミナー」全国ツアー第1弾 東京セミナー募集開始!!
世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなったDolby Atmos。その最新情報とともに、どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか?制作のワークフローから必要なツール類まで、じっくりとご紹介いたします。国内でも販売の始まるDolby Atmos Mastering Suite、そしてProduction Suite、それらと緊密な連携でワークフローを形作るAVID Pro Tools 12.8。どのようにシステムアップし、どのように動作を行うのか…?
国内では2社となるDolby Atmos Mastering Suite Dealer。その1社であるROCK ON PROでは、Dolby Atmosに関する疑問・質問に徹底的にお答えするため全国セミナー・ツアーを決行!第1弾となる東京セミナーの募集を開始いたします!!
12/7追記:◎開催終了いたしました、ご来場いただき誠にありがとうございました
◎こんな方にオススメ
・Dolby Atmosとはなにか、その基本から知りたい方
・Atmos Home、Atmos Theaterといった、Dolby Atmosの種類について理解を深めたい方
・Production Suite、Mastering Suite、Dolby Atmos RMUなど、制作ツールについて理解を深めたい方
・Dolby Atmos制作に必要なその他の機材/スタジオ環境について知りたい方
・3Dサラウンド、VRコンテンツ制作に関する情報を最先端にアップデートしたい方
・Dolby Atmosワークフローについて基本から知りたい方
◎セミナー・トピック
第1部 Dolby Atmosの現状
講師:中山 尚幸 氏(Dolby Japan 株式会社)
全世界で爆発的な導入・制作の進むDolby Atmos。あらためてAtmosとはどのようなフォーマットなのか?その制作環境は、どのようになっているのか?基本的な部分から、現在の最新情報、現状の環境といった部分をじっくりと時間をかけて解説いただきます。Dolby Atmosにご興味のある方であれば、どの様な方でも役に立つ導入講座。
トピック
・Dolby Atmosフォーマットの基本概念
・Dolby Atmosの種類(ホームとシアターの違い)
・制作ツールの種類(Production SuiteとMastering Suite)
第2部 Dolby Atmos制作環境とそのワークフロー徹底解説
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)
具体的にDolby Atmosの制作を行うには、何が必要なのか?どの様な設備を揃えれば良いのか?ターゲットとする規模、サイズに合わせたソリューションのご提案を行います。部屋に合わせて、ターゲットとするアウトプットに対して必要とされるものの変わるDolby Atmosを整理してご案内を行います。
そして、実際の制作において必要となるツール。今回はPro Tools HDシステムでの実例を交えながら、どのように制作を行うのか、シグナルフローなどをご確認いただきながら、ひとつづつ解説を行います。最新のPro Tools 12.8で実現したシームレスなワークフローは、現実感のあるDolby Atmos制作環境をご提供します。スピーカーを使わずにヘッドフォンでのプリミックスの手法など、手軽に始められるワークフローなども織り交ぜながらその実態に迫ります。
トピック
・Dolby Atmos制作のためのシステム
-制作に必要な機材/設備
-スタジオ規模/目的に合わせたシステムの種類
・Pro Tools 12.8におけるDolby Atmosワークフロー
-Dolby Atmosプラグイン
-Dolby Atmos RMUとの連携
-手軽に始めるAtmosワークフロー
◎開催要項
場所:ROCK ON PROセミナールーム
東京都渋谷区神南1-4-8神南渡辺ビル2F
日時:2017年12月7日(木)
15:45 開場
16:00 セミナースタート
・Dolby Atmosの現状:中山 尚之(Dolby Japan)
・制作環境とそのワークフロー徹底解説:前田 洋介(ROCK ON PRO)
18:00 Q&A、終了
定員:30名
参加費:無料
主催:(株)メディア・インテグレーション ROCK ON PRO事業部
講師:中山 尚之(Dolby Japan)、前田 洋介(ROCK ON PRO)
会場は下記Rock oN Shibuya店の向かいのビル 2Fとなります。
12/7追記:◎開催終了いたしました、ご来場いただき誠にありがとうございました
Tech
2017/10/13
Pro Tools Information / Pro Tools | HD 12.8によるDolby Atmos® 制作フローの概要がAvidブログで公開されました!
発表当初よりDolby Atmos対応が注目されていたPro Toos|HD 12.8ですが、Dolby社による制作ツールの充実とそれらのツールの国内販売開始により、一層身近になったDolby Atmosプロダクション・ワークフローをPro Tools | HD 12.8の関連機能と共に紹介するAvidブログが公開されました。
ブログではAtmosについての基本的な概説から、Dolby社の提供するAtmosワークフローのためのツールの紹介、さらにPro Tools固有のAtmos対応機能からS6とのインテグレーションまで、各項目詳細な解説が行われております。
詳細はこちら>>Pro Tools | HD 12.8によるDolby Atmos® 制作フローの概要
Dolby Atmosワークフローの肝とも言えるDolby Atmos Rendere。Pro Toolsから受け取ったオブジェクトオーディオをレンダーします。このレンダラーからの信号をバスなどで受けることで、Dolby Atmosとしてモニターすることができる。バイノーラルへフォールドダウンすれば、ヘッドホン再生環境だけでもAtmosのプリミックスを行うことが可能に!
こちらはPro Tools本体のパンナー。複数のビューを備え、Dolby社のパンナープラグインを使用しなくても自由度の高いパンニングが可能。
なんとS6のマスターモジュールではタッチパネルを使用して3Dパンニングが可能!視覚的に情報を把握しながら直感的に操作が行えることで、より創造性の高い制作が行えるでしょう。
ROCK ON PROはブログでも触れられている「Dolby Atmos Mastering Suite」の国内ディーラーですので、ご不明点はROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください!
Brand
2017/05/31
Dolby Atmos
既存のサラウンド・システムに加え、「オブジェクト・ベース」という新たなコンセプトを取り入れることでシネマ・オーディオに革新をもたらすDolby Atmos。世界中で制作が始まり、映画のみならず家庭用の配信などでも目にすることがますます多くなりました。しかし、新たな方式を取り入れるということは、必然的に従来とは異なるシステムやワークフローが要求されることとなります。
ROCK ON PROはDolby Atmos Mastering Suite認定ディーラーとして、制作を希望するみなさまからの疑問や制作用ツール導入に関するご相談にお応えいたします。「どのようにしたらDolby Atmosの作品が作れるのか? 」そんな疑問をお持ちの方も、まさに「これからDolby Atmosの制作を始めよう!」という方も、まずはROCK ON PROまでお問い合わせください。
◎ホームシアター向け納品ファイル作成に必須のシステムをターンキーで
制作のための業務用ツールはこれまで、ドルビー社からのレンタルという形で制作現場に提供されていました。その中でも条件がもっともシビアな映画制作向けのツール類は今後もDolby社経由で入手することになりますが、Blu-ray Discやデジタル配信コンテンツを制作するためのツールはDolby社の認定を受けたディーラー経由で販売されることとなります。ROCK ON PROでは、これら家庭向けDolby Atmosコンテンツの制作から納品マスター・ファイル (Dolby Atmos Home) の作成までを行うことが可能となる、ターンキー・システムをご提供します。
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/JRMU-Dell
◎構成
・Dolby社推奨 DELL Workstation
・Dolby Atmos Mastering Suite 同梱
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software インストール済
・MADI2系統 I/O、LTC I/O カード実装済
・二重化電源、内蔵ディスクは全てSSD
・ハードウェア製品保証5年間、ASP(ROCK ON PRO年間サポート)加入対象製品(有料)
◎主な機能
・Dolby Atmosのマスター・ファイルである「.atmos」ファイルの作成
・.atmosファイルから、家庭向けコンテンツ用の各フォーマットに合わせた納品マスターの作成
・「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos環境でのモニタリング
・Dolby Atmosに対応するDAWとの連携
◎対応するソリューション
・Dolby Atmos に対応したBlu-ray作品のミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos に対応したデジタル配信コンテンツのミキシング〜マスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のBlu-ray版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のデジタル配信版制作のためのリミキシング〜リマスタリング
・Dolby Atmos 映画作品のためのプリミキシング
・VRコンテンツのミキシング〜マスタリング
◎HT-RMUとは何か〜Cinema用RMUとHome用HT-RMU
Dolby Atmosコンテンツ制作のためには、ミックスのためのツールに加え、完成したミックスからファイナルデータを作成するためのDolby Atmos RMU (Redering Mastering Unit)と呼ばれるハードウェア・システムが必要となります。Dolby Atmos RMU はDolby Atmos環境でのモニタリングのためのレンダラーとしての使用も可能であり、ハードウェア・レンダラーとも呼ばれます。
RMUには映画館での上映を目的としたマスター(Dolby Atmos Cinema)を作成するためのものと、Blu-rayやデジタル配信コンテンツなどの家庭やモバイル環境で視聴することを目的としたマスター(Dolby Atmos Home)を作成するためのものがあります。後者のDolby Atmos Homeの制作を目的としたRMUがHT-RMUと呼ばれるハードウェア・システムです。これは、映画館とホームシアターではスピーカー・レイアウトが異なるため、使用されるマスターファイルやレンダリングのプロセスも異なり、それぞれ目的に合わせたRMUを使用する必要があるためです。
参考までに、Dolby Atmos Cinema作成のためにはCinema用RMUを備えた「ダビング・ステージ」と呼ばれるスタジオ設備を構築する必要があります。これらはDolby社によって要件が厳しく管理されているため、Dolby社と直接コンタクトを取る必要があります。
◎HT-RMUシステムのシグナル・フロー
Dolby Atmosコンテンツのミキシングは、これまで通りPro ToolsなどのDAWで行います。HT-RMUはDAWから、MADI経由でオーディオデータを受け取ると同時に、Atmosパンナーを通じてオブジェクトの位置情報であるオブジェクト・メタデータを受け取り、「.atmos」という拡張子を持つマスターファイルを作成します。最終的に、この「.atmos」ファイルから「Dolby True HD」などのメディアに合わせた納品ファイルを作成するところまでを行うことができます。
さらに、RMUからMADIで出力される信号を任意のスピーカーに接続することで、Dolby Atmos環境でのモニタリングが可能となります。
◎Dolby Atmos Mastering SuiteとProduction Suite
Dolby Atmos Mastering Suite with RMU/Jに付属するDolby Atmos Mastering Suiteは、HT-RMUに実質的な機能を与えるためのエンジンと、Pro Tools上でAtmosミックスを行うためのツールであるDolby Atmos Production Suite のライセンス x3をバンドルしたソフトウェア・ライセンスです。
Dolby Atmos Production SuiteはPro Tools | HD 専用のDolby Atmosミキシング・ツールです。Pro Toolsと同一のMac上で動作するソフトウェア・レンダラーと、ソフトウェア/ハードウェア・レンダラーにオブジェクト・メタデータを送ることができるパンナー・プラグインとを中心としたツールボックスです。これだけでもPro ToolsからのDolby Atmosミックスをモニタリングすることが可能ですが、.atmosファイルを書き出すことは出来ません。Dolby Atmos Mastring SuiteはProduction Suite のライセンス3本に加え、HT-RMU上で動作するマスタリング・エンジンなどを含むツール群で、下記ソフトウェアがバンドルされています。
Dolby Atmos Mastring Suite
・Dolby Atmos HT-Rendering and Mastering Software for Windows
HT-RMUのレンダリング/マスタリング・エンジンとWEBサービス
・Dolby Atmos Conversion Tools (for PC and Mac)
「.atmos」「Dolby Atmos Print Master」「BWAV」を相互に変換(フレームレートの変換も可能)
・Dolby Atmos Production Suite x3ライセンス
Dolby Atmos Production Suite
・Pro Tools | HD 専用のAtmosパンナー類
・Dolby Atmosソフトウェア・レンダラー
・パンナー/コンバーターなどのVR制作用ツール
Dolby Atmos Production Suite単体はAvid Storeでの販売となります。
>>各プラグインの詳細などはAvidブログでご確認いただけます。
◎Dolby Atmos 制作用ツール 機能比較表
Cinema:映画館上映を目的としたマスター。ダビングステージでファイナルミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Print Masterと呼ばれるファイル群をRendering Master Unit(RMU)で作成。
Home:一般家庭での視聴を目的としたマスター。ニアフィールドモニターによるAtmosスピーカー・レイアウトにてミックスとマスタリングを行う。Dolby Atmos Master File(.atmos)と呼ばれるファイル群をHome-Theater-Rendering Master Unit(HT-RMU)で作成。
Cinema用とHome用のRMUでは作成できるファイルが異なり、スピーカーレイアウト/部屋の容積に関する要件もCinema向けとHome向けで異なります。それぞれ、目的に合わせたRMUを使用する必要があります。ミキシング用のツール、DAW、プラグイン等は共通です。
※Dolby Atmos Production SuiteはWeb上、AVID Storeからご購入できるほか、Mastering Suiteにも付属しています。
※Dolby Atmos Dub with RMUについてはDolby Japanへお問い合わせください。
ROCK ON PRO 導入事例:beBlue AOYAMA様
2014年、東京・青山という全国でも屈指の好立地に誕生し、MonoからDolby Atmosまで対応可能なMAスタジオ beBlue AOYAMA。こちらのスタジオの誕生にROCK ON PROが関わらせていただいた当時の導入事例です。THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能とした将来性の高いシステム、機材導入などを決定付けたスタジオ構築に関するコンセプトなどをご紹介しています。
Post
2014/11/13
Sound Design のベース DOLBY ATMOS 普及の鍵となるスタジオが完成 〜 beBlue AOYAMA 〜
東京・青山という都内屈指の立地に世界各国で導入が進む Dolby Atmosへ対応したMAスタジオが誕生した。THX pm3認証も得た環境でCPU ベースのレンダリングエンジンによるDolby Atmos 環境とホームシアター用RMUを使用したリマスタリング環境を実現可能としたシステムは、将来へも布石した先進のスタジオと言える。今回の導入事例では数々のアイデアが詰め込まれたシステムの詳細に迫りたい。
01 プロジェクトを推し進めた DOLBY ATMOS というキーワード
有限会社ビー・ブルー様は名古屋に本拠地を持つ、主に映像作品のサウンドデザイン(選曲・音楽制作も含む)を行っている会社である。物語の始まりは「東京にスタジオを作りたい」という構想を、THX pm3認証に沿ったプランニングで数多くのスタジオ構築に実績がある染谷 和孝 氏に語ったところから始まる。東京には2chのMA スタジオも5.1chのMA スタジオも多数存在する。新しくスタジオを作るとなると同じようなコンセプトのスタジオを作っていたのでは成り立たない。そこでしっかりとした個性を持ったスタジオを作るには明確に差別化されたコンセプトが必要となる。
その答えを見つけるターニングポイントとなったのが東映株式会社でのDolby Atmos対応のダビングステージを視察した際のこと、Dolby Atmosというキーワードの実際を見る事によってこれまでの計画は一つの方向に向かって急激に走り出していくことになる。元々のコンセプトとしてTHX pm3の認証とシーリングスピーカーは導入したい考えであったが、そのシーリングがDolby Atmosに出会って大きな化学反応を起こし、今回のコンセプトに「小規模スタジオでのDolby Atmos」という一つの目標が出来たとも言える。しかし、まだその時点では「Local Renderer」の正式リリースの声は聞けず、結果的にはリリースを想定しての船出となった。また、その新しいチャレンジと言えるDolby Atmosのシステムアップだが、やはり予算との擦り合わせは大きな課題となる。果たしてDolby Atmosの導入コストの規模感はどうなるのか、ベースとなる音響を整えた環境は構築できるのか、新しいコンセプトとの折り合いは有限会社ビー・ブルー様にとってもこだわりを持って臨む新たな試みとなった。
02 DOLBY ATMOS 導入を推し進めた Local Renderer
前述のように当初はDolby Atmosの構想はなく、7.1chの整えられたレギュレーションに基づいたMAとしてコンセプトを考えていたとのことである。5.1chであればしっかりと調整が行き届いた設備もあるが、7.1chとなると整った環境を探す事も難しい。その一方で、Blu-rayやゲームコンテンツなどは既に7.1chがベーシックとなっており、7.1chの設備をきちんと整える事は充分な意味を持つ。また、MAと言えば48kHzがデフォルトとなりデジタルでシステムが組まれていることも多いため、ハイレゾ(96kHz以上)への対応も差別化を図る上で重要なコンセプトとなっていた。この7.1chとハイレゾ制作というベーシックプランにDolby Atmos対応が加わってスタジオのプランは試行錯誤を繰り返して行くことになる。
そして2014年春、ついにLocal Rendererの大まかな情報を得ることが出来た。それまでのDolby Atmos制作環境はシネマ用のダビングステージ向けシステムしか用意されていなかったが、このLocal Renderer の登場により中小規模のスタジオでも視聴環境が整備できればDolby Atmosの導入が可能となる。つまり、この発表によって初めてDolby Atmos作品の事前作業(プリミックス)への希望が明らかになり、スタジオ構築の方向性も定まっていく。例えば、完成後の設備追加では環境整備(音響調整)が難しいDolby Atmosフォーマットのスピーカー配置など、そのプランニングが一気に現在の完成形へと固まっていった。ちなみにLocal RendererとはDolby社が提供するPro Tools用プラグインで、Dolby AtmosのレンダリングをCUPベースで行うことができ、ダビングステージに持ち込む効果音等のサウンドデザインをニアフィールドDolby Atmosモニター環境で行うことができる製品である。
しかしながら、この2014年春の時点の情報では、Dolby社のLocal Rendererに関しては技術発表の段階であり、明確なリリース時期や本当にリリースが果たされるのかも不透明な状況。その中でもスピーカー配置などハードウェア的な準備がなければDolby Atmosの導入も難しくなってしまうため、アコースティックデザイナーである株式会社ソナの中原氏による緻密な音響設計が行われ、先行して設備を準備しLocal Rendererの登場を待つということとなった。
結果的にこのLocal Rendererの発表タイミングはbeBlue様にとって「非常にラッキーだった」と代表の青木氏も強調されていた。シーリング(天井)のスピーカーに関しては躯体の補強など様々な追加要素が必要となり、既存スタジオにシーリングを追加するハードルは高いと言える。これが設計段階からシーリングを見込んでプランニングが出来たのもLocal Rendererの開発が有限会社ビー・ブルー様にとって絶妙のタイミングで行われたからに他ならない。もしその開発が半年遅かったらDolby Atmos用のスピーカー構成にはなっていなかった可能性もあったとのこと。このほかにもDolby Atmos ホーム用のRMU(Rendering and Mastering Unit)の提供が開始したのもまさにスタジオの工事期間中。このRMUは シネマ用のプリントマスターから、ホームシアター用にDolby Atmos ミックスをリマスタリングするDolby Atmos ホームにとってのまさに心臓部、そのアジアでの1号機がこのスタジオに導入されている。このスタジオのプランニング、工事の進行と共にキープロダクトが発表されていくという非常なラッキーを携えてスタジオは完成していくこととなった。
03 DOLBY ATMOS と THX pm3 がもたらす コンセプトの軸
「ファイナルミックスの完成度は、8割以上がプリミックスの出来次第だと思っている」と染谷氏は語る。このスタジオではDolby Atmosの事前作業とプリミックスを行ってもらい、ダビングステージで完成度の高いファイナルを作ってもらいたいという思いがあるとのこと。この設備を活用してプリミックスをじっくりと行ってもらいたいというのが大きなコンセプトの一つである。この実現にはLocal Rendererの存在は非常に大きなものとなった。CPUベースのレンダリングエンジンでDolby Atmosの環境を実現することを可能とするこのシステムは、コスト的にも規模感としてもコンセプトにフィットした。
そして、もう一つのコンセプトはDolby Atmos ホーム用のRMUの登場によりもたらされた。今後コンテンツの増加が予想されるDolby Atmos ホーム用のコンテンツ制作拠点として存在することも意義が大きい。さらに今後はBlu-ray用のオーサリング、リマスター等の作業も見込んでいる。もちろん現時点ではDolby Atmosの仕事だけでスタジオのスケジュールが埋まるとは考えてはおらず、MONOから7.1chの仕事まで全部がしっかりと行えるよう細かな設計されている。Dolby Atmosに特化したスタジオではなく、車のギアのように切り替えることでモードが変わり全てに対応できる環境というのが目的としてあった。その点をこのstudio 0(ゼロ)ではDolby AtmosとTHX pm3いうコンセプトの軸を与えることで差別化、機能性の明確化を行っている。
Dolby Atmosに関してまさにBlu-ray Discの発売が始まり大きな局面に差し掛かっているが、ここで非常に大切な作業が生まれる。染谷氏はSONY PCL時代に「なぜCDにはマスタリングがあるのにDVDにはないのか?」ということを提唱した。DVDこそコーディング(非可逆の圧縮)が行われそのサウンドが変質する可能性はCDなどよりも圧倒的に高い。エンジニアにとってスタジオで作った音とパッケージに収録される音の変化は自身で確認を行うべきなのに、なぜDVDにはマスタリングが無いのかが不思議で仕方が無かったとのこと。SONY PCLでは自身の携わった作品のエンコードまで責任をもって作業を行うことが出来る設備とワークフローを確立してきた。DVDに必須コーデックとして採用されたDolby DIGITALに代表される非可逆圧縮での音質や音量の変化が、どのような特性や仕組みで生じているかをつかむ必要があった。マスタリングの必要性は圧縮によるものだけではなく、映画作品の民生用パッケージ化では音響処理を施した大空間施設での再生を目的とした音声信号を、家庭に設置されたホームシアターに最適な状態にマスタリングする目的もある。
そしてDolby Atmosでも同じことが言える。シネマ用のDCPに収録されるDolby Atmos音声と民生用に提供されるDolby Atmos ホームではコーデックや収録再生の仕組みに違いがあり、マスタリングの重要性はこれまでの5.1chや7.1ch以上に大きい。Blu-rayではDolby Atmos音声収録のために可逆圧縮であるDolby TrueHDや非可逆圧縮であるDolby Digital Plusを選択することが可能であり、それらのコーデックに用意された様々なパラメータは適切に設定する必要がある。さらに映画用Dolby Atmosもまた多くのスピーカーを設備し音響処理を施した大空間施設での再生を目的としているため、ニアフィールドモニターが基本となるDolby Atmosホーム環境での再生音場確認及びマスタリングは、コンテンツ配給のワークフローになくてはならない。そしてもっとも重要なことは、Dolby Atmosホームのマスターファイルを作成する工程であるということ。このマスターファイルが後工程のエンコード処理における素材ファイルとなる。Dolby Atmos ホームの詳細は、別途本号で特集をしているのでそちらを是非とも参考いただきたい。
04 DAW をミキシングエンジンとする NUAGE のメリット
新たなコンセプトへのチャレンジということもあり、今回導入のシステムについても特色がある。まずはスタジオの全景でも存在感のあるYAMAHA NUAGEだがこの点はプロダクトの可能性にかけた導入、国内の製品であるアドバンテージを活かして、メーカーには多くの要望に前向きに取り組んでもらったという。その結果、特筆すべきPro Tools 2式とのリレーションなどのほか、今回のスタジオのコンセプトとして必須となる機能の数々が実現している。
また、このセレクトではコストメリットも得られる。今や1000万円のコンソールやコントローラーも高価に感じてしまうが、そのような中での選択は非常にコストを重視した。もちろん多くの予算があれば、大好きなSSL等の大型コンソールの選択となるはずだが、何を選択しどんな機能を満たしていくのか?という部分を重視して考え抜かれている。今回の導入で必須機能となったのは7.1chに対応したマルチチャンネルのモニターコントロール。大型コンソールであればもちろん実現可能だが、それに変わるコンソールは何があるのかを考えると選択肢が殆ど無い。そのような現状の中で浮上したのがDAWをミキシングエンジンとして取り扱うYAMAHA NUAGE。この製品であればNuendoが今後も拡張することで対応フォーマットは順次追加され、もちろん現時点で7.1chへの対応は言うまでもない。更にモニター補正として導入されているDME64との連携により実現されている機能も多い。Atmos対応のモニターシステムとの連動を考えた結論がNUAGE導入であった。そのNUAGEエンジンが実際に何を行っているのかというと、Pro Tools2台とMedia Composerで構成されるStellite Linkからの信号を受け、NUAGE I/Oを利用した、ダイレクトモニタリング機能により出力している。もちろんNuendoのユーザーがスタジオを使う場合には、DAWとしても利用可能なシステムアップとなっている。
もう一つ、B-Chainにコストを掛けるという点もコンセプトに基づく。スタジオの音響をしっかりとした設備にという重要なコンセプトを実現するためにB-Chainの充実は必須となる。DAWなどは後からの更新も可能だが、スピーカーへと導かれるB-Chian部分は音響設計と密接に結びつくため後からの変更が難しい部分だ。具体的には補正用に3台のDME64とMini-YGDAIシリーズのMY8-LAKEカードを使用している。ここもYAMAHA製品を使用しNUAGEを含めたトータルでのシステムアップにつながっている部分。今回のシステムでYAMAHA製品が中核となっているのはメーカーとしての対応力にプランニングを進める上での大きな可能性を感じたことが大きなファクター、NUAGEの最新バージョンには染谷氏のアイデアも数多く含まれているとのことだ。
05 Pro Tools 用の HUI コントローラーという 新たな NUAGE 像
これまでの作業の中でも特にゲームの仕事はイン・ザ・ボックスのミックスを要求されることが多く、特に近年は作品のほぼ100%がそのとおりとなっている。以前は、コンソールミックスに対する慣れがあり、イン・ザ・ボックスのミックスが上手く出来ない時期もあったとのこと。その時に試みたのがMackie Controlだけでのミックス。この作業をひたすら行いコンソールでもイン・ザ・ボックスでも優れたミックスを行えることを目指して研鑽を重ねた時期もあったとのこと。C300時代にはHUIモードが登場しコンソール側でも同様の作業を行うことが可能となった。イン・ザ・ボックスでもコンソールミックスでもクライアントのオファーに柔軟に対応できるような準備を行っていた。そのような経緯もあり、NUAGEでのHUIミックスには大きな違和感はなく、スタンドアローンのコンソールではないことのデメリットはほとんど感じないとのことだ。すでにコンソールとコントローラーの境界線が希薄になっているということを感じる一幕である。もちろんラージコンソールの優位性は誰よりも熟知している。マスターセクションのつくり、感触の良さ、豊富なマトリクス、人間工学に則った優れた設計。優れたメリットがあることは認めるが、残念ながらイン・ザ・ボックスでのミックスがクライアントから求められる現場においては、NUAGEのようなHUIミックスなどを考慮するべきだとの意見をいただいた。
発想の転換によりNUAGEの魅力は大きく広がる。Nuendo専用という意識を外して優れたHUIコントローラーとすると、また違った魅力が見えてくる。Pro Toolsをコントロールすることの出来るNuendoという柔軟性に富んだミキシングエンジンを持つコントローラー。そのような捉え方をすればPro Toolsユーザーにとってもメリットが大きい、新しいコントローラーとしてのNUAGE像が見えるのではないか。エンジニアがコントローラーとして求めるのは、ほとんどがフェーダーである。もちろん、プラグインのコントロールやセンドのアサインなど欲を言えば切りが無い。しかし、最も使用するのはどの機能なのかを考えればHUIでも対応ができるという発想に至るのではないだろうか。限られた予算を有効活用するための非常にシンプルな切り分けがここにはある。
06 THX pm3
室内音響に関してはTHX pm3の認証を得ている。従来の日本のTHX pm3スタジオにはインストールされていないシーリングチャンネルやLw,Rw等のAtmosに特徴的なスピーカーの配置に関しても、設計段階からTHX、Dolby、SONAによる詳細なディスカッションが行われており、最終的には3社にとっても妥協のないスピーカーレイアウトがstdio 0(ゼロ)では実現されている。最終的にはそれら全てのスピーカーを含んだモニター調整がTHXのスタッフにより実施されており、優秀な成績でTHX pm3の認証を得ている。特筆すべきは、ベースマネージメント無しで、全チャンネル20Hz〜20kHzの広帯域再生を可能とし、更にTHX pm3の承認を実現しているという点。基本的にはベースマネージメントの使用が前提となるTHX pm3規格をそれ無しで取得できるほど、室内音響的に低域の制御ができているということだ。音楽系のミキサーに敬遠されがちなベースマネージメントが無いということで、是非とも音楽ミックスでもこの部屋を活用してもらいたいとのことだ。筆者もこの部屋で行われた音楽用のDolby Atmosミックスを是非とも聴いてみたいところだ。
◎染谷氏とサラウンドテクノロジーの歩み
染谷 和孝 氏
有限会社 ビー・ブルー
サウンドデザイナー/ミキシングエンジニア
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年(株)ダイマジックのスタジオ設立に参加。2014年より有限会社 ビー・ブルーに所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2014年9月よりAES日本支部監事を担当。
染谷氏がサラウンドに触れたのは30年以上も前のこと。アナログハイビジョン時代に「銀河の魚」のサウンドデザインとサラウンドミックスを担当したときに遡る。それをきっかけにInterBEEの国際シンポジウムなどにも参加するようになる。そこで元NHK制作技術センター長の沢口氏との大きな出会いもあり、それが全てのスタートになったとのこと。
サラウンドには黎明期から関わりがあるが、一貫してその根底には「サウンドデザイン」という概念があり、その発展の礎となっている。「サウンドデザイン」との出会いは、ProSound誌に掲載されていたSkywalker Soundの記事だとのこと。当時はInterBEEにSkywalker Soundからエンジニアが参加しており、様々なきっかけから徐々に交流が始まり、Skywalker Soundへの訪問など研鑽を積み重ねてはいたが、なかなかサラウンドの部屋を作ることは出来なかった。
次の契機となったのは1999年にロスで行われたSurround 2000というイベント、ここではTHX pm3と出会うことになる。このイベントはまさにSONY PCL の改装を決定する時期に重なっていた、当初はステレオの部屋を作るという方針であったが、このイベントと前後してサラウンドの部屋を作る計画が進行、スタジオのコンセプトを詰めるために自費で2週間サンフランシスコに行き、THX社とSkywalker Soundを見学して回った。そこで体験したサウンドは「音の消え際が聞こえる」と表現されるほどの繊細さ。今まで聞こえなかった音が聞こえるという体験することとなる。
その当時はまだITU-Rなどを始めとする様々なサラウンド再生基準が取り上げられ、その優位性が語られている段階であったが、その中から明確なレギュレーションに守られたTHX pm3選択した。信頼性の高い音響特性を持ったスタジオを構築し、アジア初のTHX pm3スタジオとなった。その後も染谷氏はTHX pm3の認証を得た世界標準の音響特性を持ったスタジオを数多く創り上げている。
Dolby Atmos採用に踏み切った染谷氏のポリシーの中には「真のブルーオーシャンを目指さなければいけない」ということが有る。真のブルーオーシャンを構築するためには、クローズドに全てを秘密にしてはならないと考えているというのも非常に新鮮なコメントとして聞こえた。現代を生き抜くためにはこのスタジオで得た知識・情報を開示し、それを共有する仲間が増える事が最も大切な要素。新しいことを始める為の仲間探しが今まさに始まったところだとコメントを頂いている。もう一つ「マイノリティーからマジョリティーへ」という言葉も頂いた。このスタジオ、そしてDolby Atmosが共に羽ばたくためにはマジョリティーになることは大切なこと。マイノリティーのままではなく、普及も進んで行かなければ意味がなくなってしまう。次に続くスタジオ・エンジニアの存在はなくてはならないもの、エンジニアリングのテクニックに関しても同様に隠すのではなく伝えることで、業界全体が豊かになるのであれば、その方が重要な事だとの考えも伺えた。
インタビューを終えて感じるのは、明確なコンセプトのもと、限られた予算を必要な部分に十分にかけた染谷氏のこだわりと考えが非常にわかりやすくスタジオに存在していたこと。また、最新の機材ソリューションの結晶のようなシステムとなっているが、突飛な存在とはならずに違和感なくそのシステムへ入っていける間口の広さも感じる。Dolby Atmos対応だからといってステレオやモノラルの作業のことを切り捨てずに「ギアチェンジ」出来るというコンセプトがしっかりと息づいているように感じた。染谷氏のコンセプトを受け、東映株式会社に続き国内2例目となるDolby Atmosの室内音響を設計された株式会社ソナ、アジア初となるDolby Atmos ホームシステムを設計した株式会社レアルソニード、そして機材のバージョンアップ等様々なソリューション面でのバックアップを行ったヤマハ株式会社、各社の持つ技術が非常に高いレベルで結実している。今後このスタジオから創りだされる作品に、早く出会いたいと強く感じた取材であった。
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2014/06/06
JPPA DOLBY ATMOS勉強会レポート
JPPA(日本ポストプロダクション協会)オーディオ部会のDOLBY ATMOS勉強会が開催されました。30名の募集のセミナーに40名以上が参加と、業界全体のDOLBY ATMOSへの注目度の高さを感じさせるセッションでした。2日間にわたり、開催された今回のセミナーですが、初日は、DOLBY社での座学と実際に上映されている劇場での視聴。2日目は、国内唯一のDOLBY ATMOS対応のダビングステージである東映様へお伺いして実際の作業環境などを見学するという非常に濃い内容。残念ながら、初日しか参加ができませんでしたがその模様をレポートしたいと思います。
先ずは、座学。ここでは、DOBY ATMOSがどのようなものなのか?どのような設備により制作されるのかを学びました。その内容は、別の記事(//pro.miroc.co.jp/2013/07/02/3d-suround-dolby-atmos/)をご覧いただくとして、実際に構内での導入の際にガイドラインとして利用されている資料から、劇場、ダビングステージでのスピーカーのセッティングとモニタリング環境の構築方法を中心に解説がありました。
その制作概要を簡単にご説明すると、ATMOSには128chのオーディオトラックが用意されており、そのうち10chがミックスのベースとなるBedと呼ばれる従来の7.1chサラウンドトラックにTOPレイヤーの2chが加えられたもの。このBedのミックスは、今まで通りのサラウンドミックスで作るということになる。しかし、現時点ではDAW側にATMOS BED対応の9.1ch Pannerが無いため7.1chのサラウンドバスと2chのバスを組合せての制作になっているということだ。いち早くDAW側の対応がまたれる部分である。
ATMOSの特徴であるオブジェクトは残りの118chを対象としている。現時点では、Pro Tools ようにAAX pluginとして用意されているATMOS Pannerにオブジェクトの位置情報を書き込んでいくことになる。そして、そのモニタリングはATMOS PannerからRMUと呼ばれるレンダリングユニットに送られ、劇場、ダビングのスピーカーの台数に合わせて定位がレンダリングされ任意の出力から再生されることになる。ATMOS Panner自体は、Pro Toolsのセッション内にインサートされるが、そのトラックのオーディオデータ、出力には一切の影響を及ぼさない。あくまでも位置情報をオートメーションデータとして記録し、RMUを動作させるものである。
この説明は、先日弊社主催で行われたAVID Creative Summit 2014内で東映の畠山氏にご解説いただいている動画を公開しているので是非ともご参考いただきたい。(//pro.miroc.co.jp/2014/05/28/avid-creative-summit-201405/)
最後に国内でのDOLBY ATMOSの導入状況の紹介があった。本セミナー時点での国内上映館は6スクリーン。
・TOHOシネマズ ららぽーと船橋(開業2013年11月22日)
・イオンシネマ幕張新都心(開業2013年12月20日)
・TOHOシネマズくずはモール(開業2014年3月12日)
・イオンシネマ和歌山(開業2014年3月16日)
・TOHOシネマズ日本橋(開業2014年3月20日)
・シネマサンシャイン平和島(開業2014年4月25日)
また今後の決定しているスクリーンは以下の2スクリーン
・イオンシネマ名古屋茶屋(開業予定2014年6月27日)
・シネマサンシャイン下関(開業予定2014年7月)
ATMOS上映館を地図上でサーチできる映画館検索ページはこちら>>>
(http://www.dolby.com/jp/ja/consumer/content/movie/theater/find-a-cinema.html?ct=Dolby-Atmos)
世界的には5月22日時点で475スクリーンが稼働しており、北米ではすでに164スクリーンが 稼働中。ATMOS対応のスタジオも世界的に見ると69となっている。
そして、国内でもATMOSでの制作が決定した作品がついに決定!!2015年春公開予定の「THE NEXT GENERATION パトレイバー」がATMOSで制作されることになったということです。今から、公開が楽しみですね!!!
座学のあとは、実際の上映館での視聴。作品は話題の「アナと雪の女王」を鑑賞しました。全編がディズニーらしくミュージカル仕立てで物語が進行しますが、ATMOSシステムの特徴でもあるフルレンジ再生を行うサラウンドスピーカーは音圧レベルとしても従来の感覚を覆します。サイドまで回りこませた音楽のミックスは会場を包み込むようなライブ感を演出していたのが印象的。始まったばかりのATMOSミックスですので、実験的な部分も含まれていたかもしれません、しかし激しく頭上を音が飛び交うようなこともなく、セリフ、歌はセンターに定位して画面に集中させることを意識したと思われる非常に落ち着いたミックス。もちろん吹雪のシーンなど頭上からのサウンドが効果的に使用されていました。筆者は、ATMOSでの2つ目の作品でしたが、新しい、音での表現、再現ということを改めて強く感じます。今後の動向も(特に映画館以外での活用にも期待が膨らみますね)、これから公開の作品も全てが楽しみな最新サウンドシステム。皆様も是非映画館へ足を運んで体験下さい!
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2013/12/25
映画館へ行こう!!DOLBY ATMOS体験記
話題のDolby ATMOSを見てきました!!!レポートアップしましたので、是非とも御覧ください!!!
レポートはこちら>>>
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2013/11/23
Dolby ATMOS上映館が国内デビュー〜TOHOシネマズ ららぽーと船橋
[caption id="attachment_11376" align="alignright" width="300" caption="画像はイメージです"][/caption]
国内での導入が待たれていた次世代の3D音響システム「Dolby ATMOS」。遂に11/22TOHOシネマズ ららぽーと船橋似て上映が開始されました。天井に設置された2列のスピーカーアレイにより再現される3D立体音響は今までにない臨場感を提供します。すでに海外での導入は進み、作品数もかなりの制作が行われています。
この秋に改装された東映・東京撮影所内のダビングステージにも「Dolby ATMOS」システムが導入され、国内に制作環境と上映館が揃ったことになります。今後も導入が進むことが予想される3D音響システム、体験の価値があります!!!
執筆時点では、「パシフィック・リム」「スタートレック In To The Darkness」の2作品が上映中です。オススメです!!
Dolby ATMOSの解説記事はこちら>>>
TOHOシネマズ ららぽーと船橋はこちらから>>>
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2013/07/02
新世代3D サラウンドDOLBY ATMOS
盟主DOLBY の提唱する次世代フォーマット
最大64ch ディスクリート駆動
次代の3D Sound を担うDOLBY ATMOS
映画におけるサラウンドには非常に長い歴史を持っている、現在の5.1ch のシステムも既に20 年近い歴史を持つスタンダード。そして次のジェネレーションとして考えられているのが3D Sound システムである。
DOLBYDigital 規格で業界を牽引するDOLBY 社もATMOS と呼ばれる新規格を発表、実際に作品の制作、公開も海外では行われており、2012 年公開の「ホビット 思いがけない冒険」はその代表作と言える。全米を中心に世界中でATMOS 対応のスクリーンが登場し、早くも100 館を超える上映館が現状で稼働、さらには25 を超えるダビングステージがATMOS 対応へと生まれ変わっている。次代の3D Sound System の急先鋒となるATMOS についてその概要をご案内していきたい。
3D SOUND は高さの表現へ
3D と言えば映像であれば立体視、奥行きの表現となるが、既に音声におけるサラウンドについて平面方向の拡張は行われている。次のステップは縦方向、つまり高さを表現することにあり、さらなる高地場音響を提供しようというのが各社のターゲットとなっている。
その特徴は単純にTOP CH を追加するということではなく、部屋の中を自由自在に音を動かせるようなシステムの開発に焦点があてられており、前号でご紹介をしたAURO 3D とこのDOLBY ATMOS がその規格として具体的に運用され始めている状況だ。
高い対応力を備えたDOLBY ATMOS
まずはDOLBY ATMOS のフォーマットからご紹介したい。スクリーンバックには従来のDOLBY Digital と同様にLCR の3ch、サラウンドはスクリーンの直近からウォールSP の配置を行うというのが変更点、これにより全周においてスピーカーが配置されることとなり、さらに3D の表現となるため天井に2列のスピーカーを配置する。スピーカーの設置数は最大で64ch までコントロールが可能。劇場、スクリーンのサイズに応じて変更可能だが、これに関してはDOLBY 社のスピーカー・セッティング・ガイドラインが用意されている。
部屋の広さに応じて、設置される推奨スピーカー本数が決定され、その設置位置情報および能力がATMOS 用音声レンダリングユニット(RMU=Rendering Managiment Unit) に登録される。つまり、必ずしも64 本のスピーカーを用意しなければならないということではなく、あくまでも最大で64chという内容だ。
なお、スピーカーのマネージメントはRMU が担当し、入力はMADI が2系統合計128ch、出力はMADI1系統で64ch。そのコントロールはEthernet での接続となる。ATMOS ミックスにはBed(ベッド)と呼ばれる従来のチャンネルベースとスピーカーを自由に移動できるObject(オブジェクト)を使用することとなる。ベッドはこれまでのDOLBY SURROUND 7.1 に天井の2列をそれぞれ1ch とした9.1ch の構成。従来のアレータイプのチャンネルを意識した音場再現を目的とし、移動や定位感を必要としない音源に用いる。一方オブジェクトは、ATMOSPANNER プラグインで決定した3D 空間位置情報をMetadata として持った単独の音声となる。スピーカー間を自由に遷移できるため移動感や定位感を強調したい音源に用い、このMetadata を基にオブジェクトはRMU 内部でダビングステージの規模に見合うスピーカー配置を反映したレンダリングを行い、ベッドと合成されて出力されることとなる。なお、ATMOS で使用可能な同時発生音は128 音源となり、これらをベッドとオブジェクトで分け合って使用する。
[caption id="attachment_11379" align="alignright" width="300" caption="Pro Tools 用のATMOS Panner プラグイン。これがオブジェクト の位置情報を生成する"][/caption]
前述にもあったように、劇場のサイズに応じて、スピーカーの設置数は変化することとなる。ATMOS では部屋の空間のどの方向から音声を再生するか、ということをオブジェクトに情報として持たせて移動をさせているが、劇場、スクリーンの変化に対応する高い互換性への仕掛けがこの点にある。従来の7.1ch以上に細かくスムーズなパンニング時の音像移動がオブジェクトを利用することで実現でき、部屋の隅、角など、これまで音像を定位させることが難しかったゾーンに対してもオブジェクトならば定位させることが可能となるからだ。そのオブジェクトをコントロールするためのATMOS PANNER だが、現時点では、AVID Pro Tools用のプラグインとして提供されている。プラグインはオブジェクトの何チャンネルを操作しているのかといった情報を事前に設定し、Ethernet を経由してRMU へ位置情報を送り込む役割を担っている。Pro Tools 11 の情報にもDOLBY ATMOS 対応と表記がなされており、非常に親和性の高いシステムが今後登場することが予想される。
[caption id="attachment_11380" align="alignright" width="300" caption="DOLBY ATMOS のキーデバイスRMU のコントロール画面。左 上の点がアクティブなオブジェクトを表し、右下の3D がオブジェ クトの位置を表示"][/caption]
実際のダビング作業を整理していくと、現状ベッドのミックスは従来通りの手法で行う。オブジェクトのチャンネルに関してはダバーへ単独で送り出した上で、ATMOS PANNER プラグインをダバー上で用いて位置情報を指定するという使用方法が取られているとのこと。そして、ダバーで最終的にまとめられたものが2系統のMADI を通じてRMU へと送り出され、スピーカーの本数に応じたバランスで劇場内へ再生されるということになる。なお、ATMOS のミックスではアウトプットが最大64ch にも及ぶため、モニターのボリューム調整を従来のシステムで行うことができない。従って、モニターバランスのコントローラーはRMU が行うこととなるがこの部分に関してもAVID system5,AMS/NEVE 等のダビング用コンソールでリモート出来るように開発中というコメントが入っている。
ベースマネージメントへの対策
現状では、スピーカー本数分のアンプとベースマネージメントコントローラーが必要となる。ATMOS では、リアチャンネルもフルレンジ再生を推奨している(HPF を通す場合には、リアにもSW を設置)ため、今までのWallSpeaker ほどの調整は要らないとの話もあるが、可能性が増えれば増えるほど調整を追い込みたくなるもの。今後のシステムの実例には注意を払う必要があると思われる。もちろんフロントは従来と変わらずスクリーンバックの特性を取る必要があるため、調整が全く必要ないということにはならない。
映画における3D Surround の展望
[caption id="attachment_11381" align="alignright" width="300" caption="CP850 : 劇場用のATMOS 再生プロセッサー。メイ赤:既存のサラウンドスピーカー 青:ATMOSで追加となるサラウンドスピーカー ンのアウトプットは MADIで出力される。"][/caption]
ATMOS で制作された音声の上映館へのデリバリーは、DCP での配信システムを利用して問題なく行うことが出来るものとなっている。DCP にATMOS 専用データを記録することで、従来の5.1ch や7.1ch に加えATOMOSの128ch の音声データとオブジェクトの位置情報が配信されることになる。これによりシアターのフォーマットに左右されないデータの生成が可能だ。
上映スクリーンの現状
再生専用のデコーダーCP850 のデリバリーが開始され、着実にスクリーン数を増やしている。ATMOS 対応再生プロッセッサーが販売されたことで、劇場でのATMOS 導入が現実的なものとなる。AURO 3D とともに、次世代3D 音響の注目フォーマットであるATMOS。今後の展開と、上映館の増加状況など、その経過を注意深く見守る必要がある。残念ながら2013 年5 月時点では国内での上映館が存在しない状況ではあるが、アメリカを始め、中国、韓国、台湾、インド等のアジア諸国に執筆時点で上映スクリーンが100 以上導入され、制作された作品は40 作品を超えている。海外へ訪れた際には是非とも体験してきていただきたい次世代の音響技術である。
Headline
2021/08/20
Dolby が Atmos Music 制作ワークフローWEBサイトを開設
Dolby Atmos Music 制作者に向けた、ワークフローを紹介するWEBサイトが開設されました。
Dolby Atmos Music Creator's Summit と名付けられたこのページでは、Dolby Atmos Music のワークフローを紹介するビデオや、DAWをはじめとした Dolby Atmos ミックスに必要な制作ツールを紹介するフローチャート、そして、実際に Dolby Atmos Music を制作しているエンジニアの方々のインタビュー動画などをご覧いただけます。
そのほか、Dolby Atmos Music Festival や Dolby × Sports Online Experience などのイベントサイトへのリンク、制作に使用できる機材や Dolby Atmos 対応サービスリストなどへのアクセスも設置されています。
Apple Music や Amazon Music HD が対応したことで、今後大きな広がりを見せるであろう Dolby Atmos Music。その知見を、もう一歩深めることができる内容になっていますので、ご関心をお持ちの方はぜひご覧いただくことをおすすめいたします。
Dolby Atmos Music Creator's Summit WEB ページ
Dolby Atmos 制作ツールやシステム設計に関するお問い合わせは、ROCK ON PRO までお気軽にご連絡ください。
Event
2023/08/03
【本イベントは終了しました】360RAもATMOSも360VMEで実現!イマーシブMixRevolution!
先日、いよいよ一般向けの測定申し込みが開始されたSONY 360 Virtual Mixing Environment(通称360VME)。個々人のプロファイルを測定することで、HRTF + スピーカーやその部屋の音響特性を含め、そっくりそのままヘッドフォンの中で再現することが可能です。イマーシブ制作に携わっている方、これから制作に挑戦してみたいという方の中には、ご興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回、そんな皆さまのために、360VMEの測定体験会の場をご用意いたしました。体験会終了後には、場所を移し、あらためて360VMEの解説セミナー、そしてイマーシブ制作の未来についてみんなで語り合える"今シブ懇親会"を開催いたします。堅苦しい内容ではございませんので、ぜひお気軽にご参加ください!
受付は終了しました
◎360RAもATMOSも360VMEで実現!イマーシブMixRevolution!
〜MIL Studio 4π音響を再現する360VME ヘッドフォンでイマーシブMIXに革命を〜
測定体験会にお申込みいただいた先着12名様(注1)を弊社MIL Studioにお招きし、360VMEの測定および制作環境を想定した試聴セットをご準備。VMEの実力、その精度、ヘッドフォンミキシングの可能性を実体験していただきます。
その後、渋谷LUSH HUBへと会場を移し、Crystal Soundエンジニアmurozo氏をゲストとしてお迎えして、あらためて360VMEの概要や技術的背景、そして、測定会場として世界三拠点のうちの一つに選ばれたMIL Studioをご紹介。
murozo氏には、実際に360VMEを使用して行われた作業の実体験を元に、VMEにより広がる可能性、ヘッドフォンミキシングでどこまでできる?といった部分についてお話しいただきます。ここでは「360VMEで何ができるの?」「360VMEの持つ可能性は?」「360VMEの実力は?」といった疑問について、徹底的に解説いたします。
さらにセミナー終了後には、今回ご体験いただいた皆さまと、現在イマーシブ制作に携わっているmurozo氏、そして今後イマーシブ制作を検討されている皆さまを含め、全員で360VMEの有効性、可能性をアツく語り合える"今シブ懇親会"を開催いたします!
体験してみなければ分からない360VMEの実力を、この機会にぜひ存分にお楽しみください!
(注1)お申し込みの先着順12名様までとさせていただきます。あらかじめご了承ください。
◎こんな方におすすめ:
360 Reality Audio、Dolby Atmosコンテンツの制作に興味がある方
イマーシブミックスに興味があるが、制作環境の構築にお悩みの方
(例:スピーカーの選定で悩んでいる、設置環境が用意できない…etc)
汎用プロファイルでのバイノーラル再生に不満のある方
MIL Studioの音響環境でミキシングを行なってみたい方
イベント概要
◎体験トライアルセミナー:『360RAもATMOSも360VMEで実現!イマーシブMixRevolution!』
〜MIL Studio 4π音響を再現する360VME ヘッドフォンでイマーシブMIXに革命を〜
◎セミナーゲスト講師:murozo氏(Crystal Sound レコーディングエンジニア)
◎日時:2023年8月22日(火)
・12:00 ~ 16:00 : 360VME 測定体験会 @MIL Studio
- 所要時間は1名につき約20分。1時間あたり3名、最大12名の方の実施を想定しています。体験終了後はセミナー開始まで自由時間となりますが、遅くとも5分前までには集合をお願いします。
・17:00 ~ 18:00 : 360VME セミナー @LUSH HUB
・18:00 ~ 20:00 : 今シブ懇親会 @LUSH HUB
※上記は予定時間です。祐天寺駅から渋谷駅までのご移動につきましては恐れ入りますが公共交通機関をご利用ください。
◎開催場所:MIL Studio 、LUSH HUB
・360VME測定体験会 : MIL Studio
- 祐天寺駅より徒歩3分 ※住所は体験会ご参加の方にのみメールでご案内いたします。
・360VMEセミナー&今シブ懇親会 : LUSH HUB
- 渋谷駅より徒歩9分 東京都渋谷区神南 1-8-18 クオリア神南フラッツ B1F (Rock oN Company 地下)
◎お申し込み方法:下記ボタンより申込フォームをご送信ください
受付は終了しました
※フォームを送信後、自動返信による内容確認のメールが届きます。その後、順次ご予約確定のご案内を別途メールにて差し上げます。メールが届かない場合、迷惑メールフォルダの確認をお願いいたします。
◎お申し込み期限について:
・セミナーおよび懇親会の申込期限は特に定めませんが、MIL Studioでの測定体験会は先着順で12名様までとさせていただきます。
・想定を上回るお申し込みをいただいた場合、早めに受付を終了する場合もございますので、あらかじめご了承ください。
講師紹介
murozo
オーディオエンジニア
Crystal Soundを拠点に活動する気鋭のオーディオエンジニア。レコーディング・ミックス・マスタリングをはじめ、Dolby Atmos・360Reality Audioによるイマーシブ作品にも携わる。山下智久、MAZZEL、1MILL、LEX、Bonbero、ShowyVICTORなどHIPHOP、R&Bからポップスまで国内外問わず幅広く手掛けている。
9月にも360VME体験会のみを実施予定です。8月の日程ではご参加が難しいという方は、ぜひこちらの日程もご検討ください。1組3名様まで。2日間で計12組限定です!詳細はこちら、もしくはページ下部のバナーをクリックしてご確認ください。
本イベントに関するお問い合わせは、下記コンタクトフォームより送信ください。
8月のご参加が難しいという方は、ぜひ9月の体験会もご検討ください。↓
https://pro.miroc.co.jp/2023/08/03/360vme-event2/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sony_360-vme_report/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mdr-mv1-vme-release/
https://pro.miroc.co.jp/works/milstudio-system-proceed2022/
https://pro.miroc.co.jp/works/mil-studio-tech-proceed2022/
NEWS
2022/04/01
Dolby Personalized HRTF App (iOS)ベータ版が公開中
Dolby Personalized HRTF ベータ版が公開中
昨年、Apple Musicが空間オーディオの再生に対応し、大きな話題を集めました。現在Amazon Music HDやTidalといった別のサービスでもロスレスやハイレゾ、空間オーディオの再生に対応し、それらはストリーミングサービスにおける付加価値として、一般の音楽リスナー達にも徐々に受け入れられはじめています。
各フォーマット、一長一短ありますが、中でもバイノーラル再生時の"個人化HRTF"への対応は重要なポイントの一つと言えるでしょう。なぜなら、マルチチャンネルからバイノーラルへのレンダリング時に、個人最適化されたHRTF関数を使うことでより正確な立体音像定位を得られるようになるからです。
例えば過去弊社記事でもご紹介させていただいている通り、360 Reality Audioでは、対応製品とスマートフォンアプリを活用することで、個人最適化された音像定位で音楽を楽しむことができるのが特徴で、同様のサービスはCreative TechnologyのSuper X-fiやEmbodyのImmerseなどが挙げられます。
そんな中、これまでそのような動向が見られなかったDolbyより個人化HRTF作成アプリ「PHRTF Creator」のベータ版が公開されました。これは現段階ではリスナー向けではなく、主に音楽、映画、TV、ゲーム業界でDolby Atmos制作に携わっているプロ向けの機能となっているようです。
Dolby Professionalのページへ:
https://professional.dolby.com/phrtf/
ベータ版試用手順
・必要事項:
- iOS 13以降を搭載したFace IDに対応したiPhone
- Dolby Atmos Renderer v3.7.1 ( こちらからダウンロード可能です。※1)
- 試聴可能なドルビーアトモスコンテンツ
※1:起動にはDolby Atmos Production Suiteのライセンスが必要です。Dolby Atmos Renderer ソフトウェアのダウンロードページでサインアップすると、90 日間の トライアルライセンスをリクエストすることができるようになります。iLokアカウントに認証ライセンスをデポジットしてもらうためには、iLokのログイン情報が必要となりますのでご注意ください。
・ベータ版のインストール方法
1.テストに使用するiOSデバイスにTestFlightをインストールします。
2.iOSデバイスから次のリンクをクリックします。:https://testflight.apple.com/join/7lxusSow
3.「Accept」→「Install」の順にタップします。
4.「PHRTF Creator」アプリを開き、指示に従って操作してください。
5.キャプチャが完了すると、メールとiOSのプッシュ通知が届きます。
・PHRTFのダウンロード
1.PHRTF作成成功の通知を受け取った後、PCから phrtf.dolby.com/renderer にアクセスし、PHRTF Creator Appで使用したものと同じ認証情報でログインしてください。
2.PHRTFをダウンロードします。このファイルは、Creatorアプリで入力した姓名の.personlized_headphoneファイルです。ブラウザからデフォルトのダウンロード場所にダウンロードされます。PHRTF CreatorアプリのLabelフィールドを使用してダウンロードを区別することができますので、任意の時点で追加のキャプチャを作成することができます。
3.ファイルのダウンロードが完了したら、ブラウザウィンドウを閉じます。
・PHRTFを適用する
1.personlized_headphoneファイルをデフォルトのダウンロード先からハードディスク上の以下のフォルダにドラッグ&ドロップしてください。
- macOS:/Users//Library/Application Support/Dolby/Dolby Atmos Renderer/Binaural Configurations
- Windows:ProgramData\Dolby\Dolby Atmos Renderer\Binaural Configurations
2.Dolby Atmos Rendererを起動し、PreferencesのHeadphoneタブで"Headphone processing"が"ON"になっていること、"Render mode"が"Binaural"に設定されていることを確認してください。
3.ヘッドフォンに正しくルーティングするために、PreferencesのDriverタブで"Headphone Only mode"を有効にすることを推奨します。
4.Rendererの右上に"Binaural configurations"というドロップダウンが表示されるようになります。このドロップダウンより、先ほど作成したPHRTFに変更します。
5.ドロップダウンの横にある情報アイコンの上にカーソルを置くと、PHRTFの情報を見ることができます。
6.作成したPHRTFで、アトモスコンテンツをお楽しみください!
Dolby Atmos Rendererをお使いの方は是非お試しください!
Dolby Atmos 制作に関するお問い合わせは下記コンタクトフォームよりお寄せください。
Event
2018/11/07
Inter BEE 2018 出展情報 ~ Pro Tools、Dolby、Dante、Share Strage、AoIP、次代を担うテクノロジーを体験!~
歴史と実績に裏づけされた、日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展として、コンテンツビジネスにかかわる最新のイノベーションが国内外から一堂に会する国際展示会であるInter BEE。ROCK ON PROはこの国内最大級の放送機器展示会Inter BEE 2018に今年も出展いたします。ホール6 #6213 Avid パートナーブースではDolby Atmos+Danteという最新ソリューションとPro Toolsの連携を体験いただけるシステムや、Avid Nexisがポストプロダクションにもららす恩恵を実際にPro Toolsと接続した形でご体験いただける展示など、最新ソリューションをハンズオンで展示するほか、関連するセミナーを実施いたします。また、ホール2 #2115ではオーディオ/ビデオ IP 伝送の最新規格であるSMPTE ST-2110について、詳しくお伝えするセミナーを実施いたします。
AVIDブース:HALL 6 #6213
ROCK ON PROは、ホール6 #6213 Avid パートナーブースへ出展いたします。ブース内では最新のソリューションとPro Toolsの連携を、実際にPro Toolsシステムと接続した状態でハンズオンでお試しいただける形で展示を行います。「AUDIO POST」コーナーではAvid Nexis + Pro Tools | Ultimateというシステムでポストプロダクションにおけるシェア・サーバーの活用を、「Pro Mixing」コーナーではDolby Atmosの最新Version.3によるミキシング環境をAoIPであるDanteを使いPro Tools | Ultimate + Pro Tools | MTRXというシステムでの動作を、それぞれ実際に触れていただける展示を展開します。さらに、展示内容をより深く理解いただくためのROCK ON PRO Product Specialistらによるセミナーを毎日実施。最新のワークフローを実現するAvidソリューションを体験いただけます。
セミナー情報
◎Pro Tools とFlux:: Spat Revolution によるイマーシブ・3Dオーディオ制作の最新ソリューション 〜 創業開発者 ゲイル・マルティネ スペシャル・デモンストレーション〜
Dolby Atmos、Ambisonics、22.2ch など主要フォーマットに全て対応し、イマーシブ・オーディオ・ツールの決定版として導入が進むSpat Revolution。ProTools 環境でのフロー、今後の進化をFlux:: 創業者である ゲイル・マルティネ氏にご紹介いただきます。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 メインステージ
時間:各日 15:20 〜 15:40
講師:Flux:: Founder, CEO, Head Software Engineering ゲイル・マルティネ 氏
株式会社メディア・インテグレーション 山口 哲
◎イマーシブ・3Dオーディオ制作のためのFlux:: Spat Revolutionの活用
〜 効率的で自由度の高い立体音響制作〜
ルーティング、トランスコードなど自由度も高く、効率的かつ創造性に優れたフロー。Dolby Atmos、Ambisonics、22.2ch などに対応したイマーシブ・オーディオ・ツールの決定版となるSpat Revolution を今後の開発予定とともにご紹介します。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ
時間:各日 12:00 〜 12:20
講師:株式会社メディア・インテグレーション MI事業部 山口 哲
◎Pro Toolsに最適化されたAvid NEXISの活用
〜ネットワークストレージを活用したAudio Productionワークフロー〜
オーディオポストプロダクションでの作業に大きな共有ストレージ容量は必要がないと思われがちですが、効果音の作成やナレーション、BGMなど、気づいてみればミキシング作業においては何人もの人との協調作業が必須となります。データコピー等の雑務を減らし、そのフローをスムーズに効率良くすることができるツールの1つが共有ストレージです。Avid NEXISストレージを中心とした、オーディオワークフローの効率化についてご紹介いたします。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ
時間:各日 13:40 〜 14:00
講師:ROCK ON PRO 桜井宏樹 / 丹治信子
◎Pro Toolsで制作するDolby Atmosプロダクション
〜毎日放送での「音舞台」を題材とした事例を中心にワークフローご紹介〜
国内でも制作が盛り上がりはじめたDolby Atmos、株式会社毎日放送の制作する「音舞台」でもDolby Atmosフォーマットへ制作が行われた。今年の「音舞台」は東大寺での開催、その際に収録された音声をImmersiveに展開。将来の配信などに備えたテストケースとして、制作が行われている。その素材を題材にDolby Atmosのワークフローの最新バージョンとなるV3、RMUのMac対応など最新情報を盛り込んでお届けします。
場所:ホール6 #6213 Avidブース内 イマーシブ・オーディオ・ステージ
時間:各日 14:40 〜 15:00
講師:ROCK ON PRO Product Specialist 前田洋介
ハンズオン展示情報
◎オーディオ・ポスト "AVID NEXISによる働き方改革、作業の効率を徹底重視するシステムの現在"
まだまだ一般的とは言えないAudio Productionにおけるデータサーバーの活用。Avid NEXIS シリーズが実現するデータ共有による効率的なワークフローを体感いただけるシステムアップ。Pro Tools、Media Composerとのオーケストレーションにより、具体的にどれくらいの作業効率の向上が実現できるのか?実稼働するシステムをハンズオンで、そのレスポンス、具体的なワークフローをご確認いただけます。
◎プロミキシング "AoIPを活用した最新のAudio Mixing環境でDolby Atmosを実現"
Immersive Audioとして確固たる地位を築くDolby Atmosの最新Version.3によるMixing環境をAoIPであるDanteを使い構築。AVIDの最新ハードウェアMTRXによる柔軟かつ大規模なシステムの実例を展開します。併せてミキシングに欠かせないPlugin各種、そして初登場となるVideo Slave4をハンズオンで展示します。最新のシステムアップをご確認ください。
◎イマーシブ・オーディオ "イマーシブ・オーディオ・ツールの最先端を体験"
イマーシブ・オーディオ・ツールの最先端、FLUX:: Spat Revolution、Nugen Audio Halo Upmixを中心にポスト・プロダクションの効率性と音質の向上を提供するソリューション、ツールをハンズオン、よりリアルにワークフローの向上を体感いただけます。
Media Integrationブース:HALL 2 #2115
HALL 2 #2115 Media Integrationブースでは、これからのオーディオ/ビデオ伝送を担うであろう重要なテクノロジーであるSMPTE ST-2110を基礎から深く知ることが出来るセミナーを行います。昨年のIBCのタイミングで策定され、ビデオ/オーディオ、同期信号、コントロール信号を1本のEthernetケーブルによってパケット伝送することが可能なこの規格。従来のオーディオ伝送との違い、既存システムとの置き換え/相互運用の可能性など、ナレッジを一気にブラッシュアップする機会を提供します。
>>(株)メディア・インテグレーション MI事業部のWebサイトはこちら
セミナー情報
◎ProceedMagazine連動セミナー!! 次世代の伝送規格SMPTE ST-2110徹底解説!!
〜AES67を内包するVoIP規格ST-2110。音声映像の統合されたNetworkの全貌〜
IBC2017でついにその姿を表したSMPTE ST-2110。汎用のTCP/IPを利用し、すでに十分に発達したITインフラとの一体化を見せ始めている。IT業界では「最大かつ最後の大物」として大きな注目を集めている分野の真打ちとも言えるこの規格。すでに十分な広がりを見せるAES67がこの規格内でどの様な広がりを見せるのか、その概要を解説する。
場所:HALL 2 #2115 Media Integrationブース内 セミナー・ステージ
時間:11/14(水) 16:00
11/15(木) 16:00
11/16(金) 12:00
講師:ROCK ON PRO Product Specialist 前田洋介
Support
2024/03/11
Pro ToolsとmacOS Sonomaの既知の不具合 – Pro Tools サポート情報
先日リリースされたバージョン2024.3にて、Pro ToolsとHDXシステムはmacOS Sonoma (14.3.1) に対応しましたが、重大な既知の不具合が見つかっています。Pro Toolsをご使用のユーザー様は、現状、macOS Sonomaへのアップデートは推奨されません。
最新情報はAvidナレッジベースでご確認ください。
macOS 14.4
新しいmacOS 14.4 Sonomaアップデートにより、AppleシリコンMac上のいくつかのiLokオーソライズ・プラグインに問題が発生しています。PACE Anti-Piracy社では、この問題を認識しており原因究明作業中です。この問題が解消されるまで、macOS 14.4へのアップデートは推奨されません。
macOS 14.3.1
Pro Tools ソフトウェアにおける問題
多コアのインテル・マシン(28-core Mac Proなど)を低バッファーサイズで使用した際の、オーディオ性能の劣化。
Aux I/Oデバイスを使用した際に不定期にエラーが出る。
ボイスオーバー・アクセシビリティ機能でポップアップやコンテクストメニューが表示されない。
インテルMac上で、Dolby Atmos内部レンダラーUIに、balls/textが表示されなかったり、top/rearビューが正しく表示されない場合がある。
編集ウィンドウのトラック名やトラック・アウトプット・アサインのツールチップが表示されない事がある。
Avidプラグインのいくつかでグラフィック表示不具合が発生する場合がある。
ミックスまたは編集ウィンドウ上におけるスクロール最中にメニューが開いたままなる場合がある。
インプットに「声を分離」モードが選択されている際に警告が出ない。
Pro Tools ハードウェアにおける問題
高サンプルレート・セッションにおける潜在的なサンプル落ちを含む、Pro Tools | Carbon の性能劣化問題。
Carbonセントラルにおけるエラー・ステータスの発生、または、拡張デバイスがAudio MIDI設定に作成されない。
HDXシステムにおいて、設定>ハードウェア でソフトクリップを選択すると、ソフトウェアがフリーズする。
MBOX Studioを低いハードウェア・バッファーサイズで使用した際に、正しく再生スタート出来ない場合がある。
3rd パーティー製品の問題
Keyboard Maestro経由でメニューが選択できない。
Sync scripts内のSoundsが Pro Tools メニューにアクセスできない。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-support-resource/
Support
2024/02/07
Pro Tools 2023.12.1 リリース(不具合修正バージョン)
Pro Tools 2023.12に含まれていた重大な課題が改修された、Pro Tools 2023.12.1がリリースされています。特に、Pro Tools 2023.12でDolby Atmosワークを実施されるユーザー様、および、HDXシステムを使用されているユーザー様は以下の情報をご一読の上、アップデート(無償)をご検討ください。
Pro Tools 2023.12.1は、以下の不具合修正のため2024年1月16日にリリースされました。
Dolby Atmos® ワークフロー
Pro Tools 2023.12.0 経由で、Dolby Atmos® WAV ADM BWFをバウンスしたりオフライン・リレンダーする際に問題が見つかりました。バウンスされたオーディオに警告なしに断続的なノイズが混入する可能性があります。ベッドやオブジェクトに直接アサインされたトラックに、Pro Limiterなど特定のプラグインがインサートされている場合に発生する事が多い様です。この問題はPro Tools 2023.12.1で修正されました(PT-317207)。
8,000サンプルを超える遅延のあるセッションにてWAV ADMをオンライン・バウンスした際にPro Toolsがフリーズする症状を修正(PT-316860)。
Pro Tools ハードウェア
Pro Tools 2023.12.0の起動時、Pro Tools | HDXまたはPro Tools | HD Nativeのファームウェア・アップデートがAAE -1164 エラーで失敗する問題を修正(PT-317106)。
注意: Pro Tools | HD Nativeはファームウェア・アップデート後に再起動する必要があります。
これに伴い、リリースノートの内容もアップデートされています(同一のページに追記の形)。
Pro Tools 2023.12 / 2023.12.1 リリース・ノート(Avidナレッジベース日本語版)
本件に関するご不明点、また、Pro Toolsシステム設計のご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2023-12-support-resource/
Event
2024/01/24
N響「第9」演奏会の裏で行われていた次世代配信に向けた取り組み 〜同一内容を複数フォーマットで比較するとどうなる?〜
年末も迫る2023年12月26日に行われたNHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサート。年末の風物詩とも言える第九のコンサートを素材に次世代のコンテンツ配信の技術的なテストケースが行われた。今回、この模様を取材させていただくことができたので、まずはどのような取り組みが行われたのかについて、その概要をお伝えしたい。なお、この取り組みの詳細については、次号のProceed Magazineで掲載を予定している。
3社共同で実施された次世代のイマーシブ配信実験
NHKホールでのフルオーケストラによる演奏会の模様を、次世代の配信をにらみ様々な方式でのイマーシブ配信をテスト、比較視聴するという大掛かりな取り組みが行われた。すべてが、NHKホールから一般のインターネット回線に配信が行われ、それを別の場所にあるNHKテクノロジーズ渋谷本社に設けられた試写室で視聴するというものだ。この試写室以外にも国内2か所(東京、広島)、国外1か所(ドイツ)にMPEG-H形式で同時配信されたほか、NeSTREAM LIVE、KORG Live Extremeを介してPCやスマートフォンなどのデバイスにも同時配信された。一般のインターネット回線を通じてのテストということで、圧縮によるクオリティーの違い、フォーマットによる違いなどの確認もできるということになる。
1つ目のテストケースが、次世代の放送規格としての8K MPEG-H(HEVC+22.2ch音響MPEG-H 3D Audio *BaselineProfile level4)の配信テスト。2つ目がNeSTREAM LIVEを使った、4K HDR(Dolby Vision)+ Dolby Atmos 5.1.4ch@48kHzの配信テスト。さらに3つ目がKORG Live Extremeを使った、4K + AURO-3D 5.1.4ch@96kHzの配信テストだ。これだけの次世代配信サービス、そしてそのテストケースが一堂に会するというだけでもすごいことである。それを同一のコンテンツの生配信で比較できるということもすごい取り組みである。
📷NHKテクノロジーズの試聴室
◎MPEG-Hを使用したスーパーハイビジョン(8K HEVC+22.2ch音響)
📷NeSTREAM LIVEの試聴室
◎4K Dolby Vision+Dolby Atmos@48khz、◎2K+Dolby Atmos@48kHz、◎2K+2chステレオ@48kHz
📷KORG Live Extremeの試聴室
◎4K+AURO-3D 5.1.4ch @96kHz/48kHz、◎HPL@48kHz
まず配信の肝であるコーデック(圧縮技術)について、22.2chは、次世代地上波での採用も決まったMPEG-H 3D Audioでの試験、NeSTREAM LIVEは、Dolby Digital Plusでの配信(これは、NetflixなどストリーミングサービスでのDolby Atmos配信と同一の技術だ)、KORG Live ExtremeはAURO-3Dの圧縮技術を使った配信となっている。圧縮率は、NeSTREAM LiveのDolby Digital Plusが一番高く640kbps、次にMPEG-Hの22.2chで1ch辺り80kbps(全体でおおよそ3Mbps程度)。Live Extremeは10Mbps程度となっている。
そもそものチャンネル数が違うということもあるが、臨場感については、やはり22.2chの高密度にスピーカーの配置されたものが優れていると感じた。やはりチャンネル数の違いは、空間の密度感に直結するものだと感じる。また音質については、ビットレートに比例するものだと改めて実感した。やはり圧縮率が低いほど音の純度は高いという、ある意味当たり前でもあることを再認識することができた。
ただし、リアルタイム配信ということを念頭に考えると、クオリティーと帯域幅のバランスを取るということが重要だ。いかに高品質であっても、しっかりと届けられないのであれば意味がない。その視点で考えるとやはりDolbyの技術をベースとしたNeSTREAM LIVEには、一日の長があると言えるのではないだろうか。Dolby Atmosという最新のフォーマットを、ストリーミングとして現実的な640kbpsで伝送できるというのは、現在のインフラなどにそのまま合致するものであり、サーバー負荷、多数へのダウンストリーム、ライブ配信等には付き物である様々な課題に対して答えを出しているように感じられる。デジタルで大きな課題となるクオリティーと利便性のバランス。これは今後もエンジニアにとって大きな課題となるテーマだろう。
また、NeSTREAM LIVEでは、Dolby Visionの配信も同時にテストされたということも大きなトピックだ。4K HDR映像のライブ配信となると、まだ世界的にもあまり前例のない取り組みである。Dolby Vison + Dolby Atmosということで、Dolby Cinemaの上映ステージでのライブ・ビューイングなどハイスペックなリアルタイム配信に期待が持てると感じる。配信されているDolby Visonの映像は、暗部がしっかりと粘り、流石はHDRといった画質だ。明暗差の大きなコンサートステージでは、そのダイナミックレンジが大いに生かされていた。
各社それぞれのシステムが持つ技術的工夫については、弊社刊行の次号Proceed Magazineにてより詳しく掘り下げて解説をおこう予定だ。
22.2chが持つ他のフォーマットへの応用性
MPEG-H 3D Audio 22.2ch音響のシステムの素晴らしさは、なんと言ってもそのチャンネル数の多さにある。これは、多チャンネルでの配信を行い、視聴環境に応じてチャンネル数を減らすこともできるということだ。「大は小を兼ねる」ということは、イマーシブにおいても言える。22.2chものチャンネル数があれば、そこから、Dolby Atmosや、AURO-3Dといった別のフォーマットへのダウンミックスを行うことが出来るということだ。22.2ch音響の視聴環境を一般家庭で揃えるということはなかなか難しいのが現実。しかし、高密度に配置されたそのフォーマットから、別のフォーマットを作り出すことは容易い。そういった観点での上位フォーマットとしてその存在価値は高いということを改めて認識した。
実際の配信用のマイクアレンジ、配信のためのミックス、全体のシステム構成などについても、次号Proceed Magazineで詳細をお伝えしようと思う。こちらもぜひお楽しみに。
<取材協力>
・株式会社NHKテクノロジーズ https://www.nhk-tech.co.jp/
・株式会社クープ NeSTREAM LIVE https://nestreamlive.radius.co.jp/
・株式会社コルグ Live Extreme https://www.live-extreme.net/
「立体音響でライブ配信をやってみたい」「イマーシブサラウンド対応のスタジオを作りたい」といったご相談は、導入実績豊富なROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりご送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2023-2024/
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2023/
Event
2024/01/18
2/9(金) Avid Creative Summit 2024 開催情報&申込開始!
~未来をつなぐIP、イマーシブにより拡張される音で共感する~
世の中はいよいよアフターコロナの時代へと変遷し、エンターテインメント・ビジネスには新たな局面が訪れています。業界の基盤となるテクノロジーは着実に発展し、昨年までの「いま」から更に進化した制作環境が私たちを待ち受けています。
今年のAvid Creative Summitは、"未来をつなぐIP、イマーシブにより拡張される音で共感する"をテーマに、ACSU史上初の東京ー大阪の二拠点同時開催にて、音楽、映像、ゲームなど多岐分野にわたるサウンド制作の最新情報を提供します。特に次世代IPメディア伝送ワークフローの提案を通じて、制作の未来像を描きます。
バラエティに富んだ計7回のセッションでは、ついにDolby Atmos Rendererを内蔵したPro Toolsの最新情報をはじめ、イマーシブ制作の実例から学び、最先端のテクノロジーに触れ、今を知るための情報が一堂に集結します。最新の制作現場に欠かせないテクノロジーに焦点を当て、フィジカル開催ならではの対面コミュニケーションを活かした新たな学びや発見の場をご提供いたします。
未来を拓くための一歩として、今年はぜひお近くの会場に足を運び、新たな知識とネットワークを築く場としてご活用いただきたいと考えています。Avid Creative Summitならではの豊富な情報と刺激的な体験をご用意しています。多くの方々のご参加を心よりお待ちしています!
■Avid Creative Summit 2024
開催日時:2024年2月9日(金) 開場13:00 、セミナー13:30~18:35、懇親会19:00~20:30 終了予定
東京会場:渋谷LUSH HUB
大阪会場:梅田セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
参加費用:無料
定員:各会場50〜100名
※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
TOPタイム
テーブルセミナー紹介協賛各社様
展示コーナー募集要項アクセス
毎回大好評!東京・大阪での各セッション終了時にご来場者様向けプレゼント抽選会を開催します!さらに!最終セッション終了時には、協賛各メーカー様からのスペシャルグッズや、2024年の制作シーンを彩る注目の製品をプレゼントする大抽選会も開催!今年最初の幸運を引き当てるのはどなたになるのか!プレゼント賞品の全貌は当日イベント内にて発表です!最後のセッションまで見逃せないAvid Creative Summit 2024 ご期待ください!
◎イベント開催方式のご案内
今回はAvid Creative Summit史上初の東京ー大阪の二拠点同時開催の試みとなります。セミナーは東京4セッション、大阪3セッションの計7セッション実施予定です。東京→大阪→東京…と交互にタイムスケジュールを組んでおりますので、一方の会場でセッションが行われているとき、もう一方の会場からは同時中継でご聴講いただけます。
※各会場とも座席数には限りがございます。原則、当日先着順でのご案内とさせていただきます。誠に恐れ入りますが座席の確保はできませんのであらかじめご了承ください。
◎タイムスケジュールのご案内
PDF:Avid Creative Summit 2024_Time Table
◎セミナーのご案内
◎Session1(東京)「What's New Avid Product 2024
〜Pro Tools 最新情報のすべて〜 」
2月9日(金) 13:30〜14:00
Pro Tools 2023.12で実装されたDolby Atmos Renderer。アップグレードしたユーザー全てに無償で提供されるDolby Atmos制作環境は、まさに、イマーシブ制作をすべてのユーザーに提供し、新時代の訪れを告げるもの。音楽配信でもDolby Atmosがスタートし、今後、その制作が当たり前のものとなっていくことが予想されます。実際にどのように使うのか、具体的なハンズオンを含めてご紹介いたします。もう一つの音楽制作者に向けたAvid Sketchは、iPadで音楽の、まさにスケッチするような感覚で作曲が出来るツールです。もちろん、iPad上で作った楽曲は、そのままPro Toolsのセッションデータとしてインポート可能です。制作から仕上げまで、Pro Toolsが全方位に進化しているその全貌をご紹介いたします。
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology
APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
◎Session2(大阪)「Flux:: Spat Revolution
〜注目の最新情報&Dolby Atmosミックスでの活用例〜 」
2月9日(金) 14:10〜14:50
様々なイマーシブ・フォーマットに対応し、編集の圧倒的な自由度と表現力を誇るSpat Revolutionは、スタジオでの制作のみならず、ライブサウンド/設備音響のリアルタイム・イマーシブ・ミキシングとしても利用されています。このSpat RevolutionをDolby Atmosミックスで活用する方法、そのメリットを開発元Flux::のビジネス開発担当シニア・マネージャーHugo Latin氏が徹底解説します。
講師:Hugo Larin氏
Snr Manager - Business Development, FLUX::, a proud member of the HARMAN Professional Solutions Group
FLUX:: https://www.flux.audio/
FLUX: SPAT Revolutionプロジェクトの主要な協力者であり、オーディオ・ミキシング、システム設計、オペレーション、ネットワーク制御、データ配信の分野で深いルーツを持つ。FLUX::イマーシブ・コンサルティング・グループを率い、FLUX::のビジネス開発を担当している。
最近のプロジェクトでは、オブジェクトベースの空間オーディオミキシング・ワークフロー、互換機器との相互接続と実装、最適化などを実現している。
プロダクション機器のレンタルとスタジオ・レコーディングでキャリアをスタートさせ、テクノロジーとエンターテインメント制作環境に対する情熱が、彼をライブ・プロダクション領域へと急速に駆り立てた。この分野での彼の活動には、様々な有名プロダクションやイベントでのミキシング、オペレーション、テクニカル・ディレクターの役割が含まれる。
Avid VENUE S6Lプラットフォームのユーザー、プロフェッショナル・オペレーター(VE110 & 210 S6L)であり、Avidのサポート代理人における認定インストラクター(ACI)でもある。
◎Session3(東京)「生徒のクリエイティビティを最大限に引き出す
〜Avid Learning Partner プログラム〜」
2月9日(金) 15:00〜15:15
現在、多くの大学、専門学校等で授業に取り入れられているAvid Pro Tools。その支援を行うためのプログラムがこのAvid Learning Partner(ALP)プログラムです。ユーザーの裾野を広げ、現場で有用な人材を育てるためには、基礎教育が重要となります。この新しく始まるALPとは一体どのようなプラグラムなのかについてご紹介いたします。
講師: Alex Brooke氏
Avid Technology
Avid Learning Partner,Program Lead Coordinator
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
イギリス出身。10代の頃から日本で過ごし作曲と演奏を学ぶ。
現在、Avidラーニング・パートナープログラムを含む、アジアでのAvidトレーニング・プログラムのコーディネーターとして活躍。
音楽教育を通じて次世代の音楽プロフェッショナルを支援し、育てることに情熱を傾けている。
◎Session4(大阪)「GRANBLUE FANTASY: Relinkにおけるイマーシブサウンド制作 〜素材収録からミキシング、技術進化に伴うイマーシブ制作の変革〜」
2月9日(金) 15:25〜16:05
Cygamesの新作「GRANBLUE FANTASY: Relink」を題材に、ゲームにおけるイマーシブ制作の実際、そして、それを支えるバックボーンとなる技術、ゲームの世界観やキャラクターを引き立てる為に盛り込まれた、様々なサウンドデザイン、それらの素材収録からミックスまで最新のゲームオーディオの実情、制作に触れていただける内容をお届けします。
大規模タイトルとして長期に渡る開発の中、技術の進化・進歩をどの様に取り入れていったのかなど、興味深いストーリーもお話いただける予定です。ゲームオーディオに興味のある方はもちろん、最新技術の粋を集めた最新ゲームタイトルの制作を知ることの出来る貴重な機会です。
講師:城後 真貴 氏
株式会社Cygames
サウンド本部/サウンドデザインチーム
アクションゲームのサウンド制作に携わり、2019年より株式会社Cygamesに合流。
『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、インゲームミックスや、演出やイベントシーンのサウンドディレクションを担当。
講師:妹尾 拓磨 氏
株式会社Cygames
サウンド本部/サウンドデザインチーム
スポーツゲームやアクションゲームにおける、サウンド制作に従事。2019年より株式会社Cygamesに合流。 『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、バトルパートやキャラクターのサウンドデザイン、サウンドディレクションを担当。
株式会社Cygames:https://www.cygames.co.jp/
◎Session5(東京)「AoIP/VoIPはもう未来の規格じゃない 最新ケーススタディ
〜NDI/SRT/ST2110/DanteAV〜 」
2月9日(金) 16:15〜16:55
今年のACSUは東京、大阪の同時開催。そのシステムのバックボーンをご紹介します。NDI Bridgeを使い、どの様に安定したインターネット経由での伝送を実現しているのか?その将来的な可能性、ZoomやTeamsではく、NDIを使うことのメリットとは?最新のVoIP事情とともに、実際に使われている技術の詳細をご紹介いいたします。身近なIP伝送技術がインターネット越しに拡張されていくことは、近い将来当たり前になることでしょう。そんな未来を実感いただけるセッションです。
講師:前田 洋介
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
Product Specialist
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
◎Session6(大阪)「360 Reality Audio 高田 英男氏による楽曲解説
〜空間の響きを活かすREC&MIX〜」
2月9日(金) 17:05〜17:45
昨年公開され、第29回日本プロ音楽録音賞Immersive部門(アコースティック・サウンド)最優秀賞作品を受賞した、tea 「Beautiful Dreamer」。この受賞作品を題材に、ミキシングを手がけられたエンジニアの高田英男氏がどのようなアプローチで3D音響の収録に臨んだのか、どのようなコンセプトでミキシングを行ったのかについてご解説いただきます。トップエンジニアの考える立体音響とは?360 Reality Audioの制作はもちろん、イマーシブオーディオのミキシングに興味のある方、全員に役立つトピックが満載。必聴のセミナーです!
講師:高田 英男 氏
MIXER’S LAB Sound Producer/Engineer
日本音楽スタジオ協会 会長
MIXER’S LAB:https://www.mixerslab.com/
一般社団法人日本音楽スタジオ協会:https://www.japrs.or.jp/
1951年、福島県生まれ。1969年、日本ビクター入社(ビクタースタジオ配属)。録音エンジニア業務に従事。2001年、ビクタースタジオ長。2012年、サウンドプロデューサーに就任。2016年ミキサーズラボ顧問。
◎Session7(東京)「Netflixの音への取り組み
〜世界中のメンバーが楽しめる音作りには何が必要?〜」
2月9日(金) 17:55〜18:35
このセミナーでは、Netflixが去年プレミアム会員向けにサポートし始めた空間オーディオについての解説、Netflixの作品が5.1チャンネルやドルビーアトモスなど、高品位なサウンドフォーマットで配信されている理由、そしてイマーシブ・オーディオ制作の際に気をつけるべきポイントやノウハウについて共有します。
講師:嵩原シンディ氏
Netflix
Sound Technologist
Netflix:https://about.netflix.com/ja
サバンナ芸術工学大学、サウンドデザイン科修士課程修了。
レコーディング、音響エンジニア、現場録音、MAなど幅広い経験と技術を習得。
ロサンゼルスを拠点にフリーランスのサウンドデザイナーとして活躍した中、手がけた作品はカンヌ、サンダンス、トライベッカ映画祭などで披露される。
また、映画「Fire in Paradise」はニュース&ドキュメンタリー・エミー賞、最優秀音響賞を獲得。2020年よりNetflix入社、技術支援部(アジア太平洋地域)の音響技術を担当。
※※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
協賛各社様による出展のご案内
当日は展示協賛各社様による最新プロダクトの展示も行われます。また、東京会場にはGenelec Oneシリーズによる7.1.4ch、大阪各会場にはFocalスピーカーでの13.0chイマーシブ展示も登場します。お楽しみに!
※展示内容は予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
出展ご協力社様(敬称略、順不同):
・アビッドテクノロジー株式会社 https://www.avid.com/ja/
・オタリテック株式会社 https://otaritec.co.jp/
・株式会社ジェネレックジャパン https://www.genelec.jp/
・ソリッドステートロジックジャパン株式会社 https://www.solid-state-logic.co.jp/
・TOA株式会社 https://www.toa-global.com/ja
・株式会社フォーミュラ・オーディオ https://formula-audio.co.jp/index.html
・株式会社メディア・インテグレーション 輸入事業部 https://www.minet.jp/
アビッドテクノロジー株式会社(東京・大阪会場)
統合レンダラー登場でイマーシブ制作は次のステップへ
AVIDが提案する新時代のワークフロー
昨年登場したPro Tools | MTRX Ⅱをはじめ、最新版Pro Toolsでの統合レンダラーワークフロー、Pro Tools Sketchの活用方法など、Avid製品を各種展示予定です。また、東京会場Rock oN Company 店頭リファレンススタジオでは常設のAvid S4ミキシング・コンソールをご見学いただけるほか、Pro Tools | MTRX + Pro Tools | HDXシステムを想定した環境から、Avid S1やAvid Dock、Pro Tools | Carbon、MBOX Studio等によるクリエイター向けのワークフローまで、Avidが提案するソリューションを隅々までご体験いただけます。是非、各ブースで製品をご覧いただき、Avidソリューションによって実現される、制作プロセスの将来像をじっくりとご体感ください!
<展示予定製品>
・Avid S4
・Avid S1
・Avid Dock
・Pro Tools | MTRX II
・Pro Tools | MTRX Studio
・Pro Tools | Carbon
・Pro Tools | Carbon Pre
・Pro Tools | Sync X
・Pro Tools | HDX Thunderbolt 3 Chassis
・MBOX Studio
・Pro Tools
・Pro Tools Sketch
※東京・大阪各会場の詳細展示内容は後日掲載いたします。
アビッドテクノロジー株式会社:https://www.avid.com/ja/
株式会社ジェネレックジャパン(東京会場)
唯一無二の革新的メイン・モニター「8381A」& 3ウェイ
同軸モニター The Onesシリーズによるイマーシブ環境を体感!
昨年発表された革新的メイン・モニター「8381A」が、AVID Creative Summitに登場!フリースタンディング型による自由な設置、設置環境に適応するアダプティブ・ウーファーを搭載した5ウェイ構造、そしてポイント・ソース理論による自在な距離を実現したそのサウンドをご体感ください(渋谷店リファレンスルームに設置)。また、会場内のBlueRoomでは、3ウェイ同軸モニターのThe Onesシリーズによるイマーシブ環境をご用意。ステレオからイマーシブまで、最新且つ最高の試聴体験を皆様へお届けします。
<展示予定製品>
・8381A
・The Onesシリーズ
株式会社ジェネレック・ジャパン:https://www.genelec.jp/
株式会社フォーミュラ・オーディオ(東京会場)
エフェクトも音源も、プラグインはイマーシブに。
今や業界標準とも言える「ザ・コンボリューション・リバーブ」Altiverbが、12年ぶりのアップグレードで最大9.1.6ch出力を実現。
鍵盤1つ押さえるだけでも即座に3Dサウンドを生成するSkyDust 3D。出力がDolby Atmos®互換やambisonicsにも対応の空間オーディオ・シンセサイザーです。
<展示予定製品>
・AUDIO EASE Altiverb 8
・SOUND PARTICLES SkyDust 3D
株式会社フォーミュラ・オーディオ:https://formula-audio.co.jp/index.html
ソリッドステートロジックジャパン株式会社(東京会場)
Pro Tools DAWシステムにシームレスに統合するSSLプロダクトが集結!
USBインターフェイス出力機能を搭載した4chマイクプリ PURE DRIVE QUAD とハイエンドなモニタリング回路を搭載したUSBオーディオインターフェース SSL12、SSLメータープラグインを表示できる高解像度ディスプレイを搭載した1フェーダー DAWコントローラー UF1が登場予定です。Pro Tools DAWシステムにシームレスに統合するSSLプロダクトをご紹介します。
<展示予定製品>
・PURE DRIVE QUAD
・SSL12
・UF1
ソリッドステートロジックジャパン株式会社:https://www.solid-state-logic.co.jp/
オタリテック株式会社(東京・大阪会場)
革新的なテクノロジーと共に進化し続ける伝統的なサウンド。
PMCスピーカーからは、ステレオから大規模Atmosシステム用途まで幅広く使用可能な"PMC6"をステレオでご試聴いただけます。
マイク製品ではEhrlund Microphoneの"EHR-M"と、より小型化してホームレコーディングユースにも対応した新製品"NANO"を比較展示します。
またRoswell Pro Audioからは、同社の”Miniシリーズ”で初のトランス搭載機種である、"Mini K47x"、"Mini K67x"を展示します。
<展示予定製品>
・PMC アクティブスピーカー PMC6
・Roswell Pro Audio Mini K67x
・Roswell Pro Audio Mini K47x
・Ehrlund Microphone EHR-M
・Ehrlund Microphone NANO
オタリテック株式会社:https://otaritec.co.jp/
TOA株式会社(大阪会場)
妥協なきこだわりが実現する驚異の原音忠実サウンド!
ME-50FSは “再生音の原器”を目指して、商品ではなく社内評価と教育を目的として開発されました。音を正確に再生することにこだわり続けた結果、従来にはない正確な再生音と高い解像度、サイズからは想像できない低域再生能力を実現。音のプロの方々にも高く評価いただき、待望の商品化に至りました。良い音を追求する全ての方々、その中でも特に、高い再生能力が求められる放送局やマスターリングスタジオ向けの完全受注生産モデルです。
<展示予定製品>
・TOA ME-50FS
TOA株式会社:https://www.toa-global.com/ja
株式会社メディア・インテグレーション(東京・大阪会場)
イマーシブ環境やユーティリティツール、GAME制作ワークフローを加速する最新機材、さらに音楽/ポストなどカテゴリ別で、未来を担う教育機関様向けのご提案を用意しました。
◎TOKYO
次世代ライヴコンソールWaves Cloud MXによってコントロールされる会場セミナーイベントに加え、関連のユーティリティツールやFocal最新STシリーズの試聴コーナーを完備。さらにミュージック/ポストのカテゴリに特化した教育機関様向けのソリューションをコーナーにてご提案させていただきます。
<東京展示予定ブランド>
・Audiomovers
・Focal Professional
・iZotope
・KROTOS
・McDSP
・Nugen Audio
・Sonarworks
・Sonnox
・Waves
◎OSAKA
OSAKA会場セミナーと連携したGAME音楽制作のためのソリューションを展開します。Native InstrumentsやiZotopeが提唱する最新の音楽制作環境に加え、AudiomoversやFlux、Nugen Audioなどイマーシブ関連プロダクトを網羅。13.0chの試聴コーナーでは360 Reality Audioの体験も可能です。
<大阪展示予定ブランド>
・Audiomovers
・Flux:: SPAT Revolution
・iZotope
・KROTOS
・MNTRA
・Native Instruments
・Audio Futures 360 WalkMix Creator (360 Reality Audio 13.0ch 試聴コーナーあり)
株式会社メディア・インテグレーション:https://www.minet.jp/
募集要項
■Avid Creative Summit 2024
開催日時:2024年2月9日(金)
・開場 13:00
・セミナー(計7セッション) 13:30 〜 18:35
・懇親会 18:35 〜 20:30
・閉場 21:00
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
大阪会場:大阪府大阪市北区神山町1-12 セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
参加費用:無料
定員:各会場50〜100名
※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
【ご注意事項】
※座席のご用意は各会場30席程度となります。それ以外の方は立ち見でのご視聴となりますこと、あらかじめご了承ください。(休憩用のスペースもご用意しております。)
※セミナーの内容は予告なく変更となる場合がございます。
※著作権保護の為、写真撮影および録音は差し控えていただきますようお願いいたします。
※各セミナーのアーカイブ公開の有無につきましては、後日、当WEBサイトにてご案内いたします。
※当日は、ご来場者様向けの駐車場の用意はございません。公共交通機関でのご来場、もしくは周辺のコインパーキングをご利用下さい。
アクセス
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
大阪会場:大阪府大阪市北区神山町1-12 セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
Review
2024/01/04
Fraunhofer IIS@Erlangen / MPEG-Hを生み出した世界最大の音響研究所
これまでにもその情報を発信してきたMPEG-H。次世代音声コーデックとしてドイツのFraunhoferが開発したこの規格、イマーシブ、インタラクティブといった次世代のエンタテインメントを担う規格となっている。今回はその開発元であるドイツ・ニュルンベルグ郊外のエルランゲンにあるFraunhofer IISを訪問し、色々とその実際を見せていただいた。改めてMPEG-Hの現在地と、その制作環境、さらにはその次のステップまで踏み込んだ情報をお届けしていきたい。
イマーシブ、インタラクティブ
📷SONY 360 Reality Audioではマスターファイルの器としてMPEG-Hを用いている。
それでは改めてMPEG-Hをおさらいしておこう。MPEG-Hは、Fraunhofer IISが次世代の音声コーデックとして発表した規格。イマーシブへの対応はもちろんだが、インタラクティブ音声への対応という点が他のコーデックとの最大の差別化ポイントではないだろうか。
まずは、イマーシブという部分を見ていきたい。一番身近なMPEG-Hとして挙げられるのははSONY 360 Reality Audioではないだろうか、フルオブジェクトの制作環境を持つこのフォーマット。各オブジェクトが持つメタデータを含んだ配信用のマスターファイルの器としてMPEG-Hが採用されている。非圧縮のオブジェクトメタデータを含むオーディオコーデックといえばADM BWFファイルがあるが、圧縮でメタデータを持つオーディオコーデックとなるとMPEG-Hがその筆頭となる。
MPEG-Hが持つもうひとつの特徴であるインタラクティブに関しては、放送分野での活用が期待されている。実際の事例として、すでに韓国、ブラジルにおいてはMPEG-Hが地上波放送の次世代コーデックとして採用され、韓国では4K地上波の次世代放送規格として平昌冬季オリンピックのタイミングから、また、ブラジルではリオデジャネイロ夏季オリンピックのタイミングから実運用が始まっている。
📷IBC 2023でソフトウェアベースでのリアルタイムエンコーダーを展開するSalsa Soundのブース。
そこでは最大15chのオーディオを伝送することができるMPEG-H(Level 3)が採用され、視聴者がリモコンでナレーションのレベルを上げ下げしたり、放送局側が用意する複数のプリセットされたバランスで音声を聴くことができるインタラクティブオーディオを実現している。スポーツ中継を例にとれば、解説の有無や応援席のレベルを中心にしたプリセットなどを選択できる。伝送できる15chのオーディオの組み合わせは自由で、5.1chのサラウンド放送にレベル調整を行いたい個別のトラックを加えてインタラクティブ性を持たせる、といったことが可能だ。もちろん、イマーシブ音声やオブジェクトオーディオを放送することもできる。
日本国内における次世代放送規格
現在、日本でも次世代放送規格に関しての議論が積極的に行われており、総務省から2023年7月に「放送システムに関する技術的条件」として、次世代地上波放送の概要が示されている。高度地上デジタルテレビジョン放送方式として、放送電波へのデジタル符号情報の伝送方式に始まり、映像の圧縮形式などとともに音声に関しても概要が示されている。入力フォーマットとしては「22.2マルチチャンネル音響に対応」とあり、現在運用されている4K / 8K衛星放送と同様のフォーマットが踏襲される。
それに加え、オブジェクトベース音響への対応も明記されているのが新しいところ。音声の符号化方式としては本記事で取り上げているMPEG-Hとともに、AC-4が併記されている。AC-4とはDolbyが提唱している次世代コーデックであり、実運用をスタートしている世界各国ではMPEG-HかAC-4かのどちらか一方を採用するケースが多いが、日本では両方式が採用されるという方向だ。なお、それぞれ準拠する規格はMPEG-H : ISO/IEC 23008-3、AC-4 : ETSI TS 103 190-2である。また、ペーパーに示された入力チャンネルは56ch。このチャンネル数はMPEG-H Level 4で規定された最大チャンネル数である。現在運用されているMPEG-H Level 3は16chとなるため、そこからするとかなりの増加と言える。これは、22.2ch放送時にも差し替え音声によるインタラクティブ放送を行うことができるチャンネル数を考慮したためとされている。
総務省HP「放送システムに関する技術的条件」
次世代放送では、放送自体の効率化により伝送可能なデータレートの向上が目論まれている。具体的には現在の地デジの16.85Mbpsから、22.25Mbpsへの向上となる予定だ。映像圧縮に関してはH.266(VVC)の採用。これは、現在一般的なH.264の二世代後継の圧縮技術である。音声も同様に現在のMPEG-2 AACからの圧縮技術の進歩もあり、さらに多くのチャンネル伝送を実現するものとされている。一例とはなるが、SONY 360 Reality AudioのMPEG-H伝送では、24chを1.5Mbpsで伝送している。この高効率な圧縮という部分に関しては、MPEG-HもAC-4もコーデックは違えど同様と言える。両者ともに、オブジェクトオーディオを扱うことができるというところも同様だ。両規格とも国際規格として規定されており、どのように両規格を使い分けていくかという議論が今後行われていくだろう。
執筆時点では、明確に次世代放送への移行タイムラインが提示されているわけではない。だが、他国ではすでに順次移行を開始していることを考えると、それほど遠くない未来に移行が開始されることは間違いない。着実に日本国内でも次世代の地上波デジタル放送の規格整備が進行している。すでに海外では放送がスタートしている事例も数多くある。技術の進歩はとどまることは無い、徐々に次世代の規格として採用されることとなっているこれらを知り、触れておくことは重要となる。
MPEG-Hをどう作るのか
AC-4に関しては、乱暴な言い方をしてしまえばDoby Atmosである。一方MPEG-Hに関しては、まだまだ国内では未知のものとして捉えられることが多いのではないだろうか。しかし、MPEG-Hが用いられていくという流れはすでに大きな流れとしてあり、Pro Tools 2023.6でインストーラーが統合されたりと具体的な形で制作環境が整い始めている。
放送におけるMPEG-Hには2つの制作パターンがある。一つはBroadcast、生放送でのMPEG-Hである。NABやIBCのレポートでもお伝えしてきているが、ハードウェアでのリアルタイムエンコーダーが各社より登場している。SDI信号にエンベデッドされた音声に対してメタデータを付加するという動作により、リアルタイムエンコードを行うこれらの機器は、すでに実際の運用に供されている。現状ではSDI信号に対してのエンコードを行う製品となり、MPEG-H Level 3の16ch仕様となっている。IBC 2023では、ソフトウェアベースでのリアルタイムエンコーダーであるSalsa Soundも登場し、その選択肢が着実に増えている。
📷Fraunhoferからリリースされている制作向けのMPEG-Hエンコーダーはさまざまなユーティリティーが提供されている。Mac OS、Windowsともに対応となり、ほとんどのワークフローにおいて不足することは無いだろう。
一方、制作向けのMPEG-Hエンコーダーは、Fraunhoferからリリースされている純正ソフトのみというのが現状である。とはいえ、やり直しが効く制作環境ということを考えれば、この純正のエンコードソフトで必要十分であることは間違いない。イマーシブオーディオにも、インタラクティブオーディオにもしっかりと対応している。Fraunhoferからはさまざまなユーティリティーが提供されており、マスターファイル視聴用のMPEG-H VVPlayer、Video FileにMPEG-Hを畳み込むためのMPEG-H Encording and Muxing Tool、メタデータ修正用のMPEG-H Info Toolなどの製品も同梱されているため、ほとんどのワークフローにおいて不足することは無いだろう。すでにMac OS、Windowsともに対応している。
イマーシブオーディオ制作においては、MPEG-H Authoring Plug-inというソフトウェアが、DAWのプラグイン(AAXおよびVST3)として提供されている。3Dパンニングを行うことができるこのソフトからファイルをExportすることで、3Dメタデータを持ったMPEG-Hのオーディオデータが作成できる。22.2chのパンニング、7.1.4chへの対応、フルオブジェクトとしてのファイル書き出しが可能と、次世代の放送用オーディオへの対応をしっかりと済ませている。
科学技術を世の中で使えるようにする
このMPEG-Hの開発元であるFraunhofer IISへの訪問を実現したのでその模様をお伝えしたい。Fraunhofer IISは、欧州最大の研究機関であるFraunhoferの一部門となるIIS=Institute for Integrated Circuits、日本語にすると集積回路研究所だ。Fraunhoferの75拠点ある研究所の一つであり、MP3の生みの親として世界中に知られる研究所である。Fraunhoferは応用研究をテーマとし、科学技術をどのように世の中で使えるようにするか、ということを民間企業からの委託研究として行っている。実際にFraunhoferの研究予算の7割は民間企業からの委託研究費で賄われているそうだ。
今回訪問したFraunhofer IISは、ドイツの南部バイエルン州第2の都市であるニュルンベルグの隣町、エルランゲンにある。ニュルンベルグは中世の城壁に囲まれた美しい旧市街をもつ伝統ある都市。IISがあるエルランゲンは大学都市であり、1700年代にその起源を遡ることができる伝統あるドイツ12大学のひとつ、エルランゲン大学がある街だ。また、第二次世界大戦後のドイツを代表する電機メーカー、シーメンスが移転してきたことで発展を遂げた街でもある。
このFraunhofer IISの研究の大きな指針のひとつが「オーディオ・メディア技術」。集積回路研究所という名前からもわかるように、デジタル技術の発展とともに符号化の技術を研究し、それがMP3へと繋がっている。その後もAAC、HE-ACC、xHE-ACC、MPEG-Hと各世代を代表するコーデックを開発してきている。現代の携帯デバイスになくてはならない技術となっている高度な圧縮技術。そして、エンタテインメントを支えてきた技術とも言えるだろう。その現在進行系の技術がMPEG-Hである。なお、すでに次世代の技術である「MPEG-I」も姿を現し始めている。
全フォーマットを正確に再現する研究スタジオ
📷大量のスピーカーが設置された試聴室。30°、45°、60°など各フォーマットに合わせた正確な位置に設置が行われ、Dolby Atmos / Auro 3D / SONY 360RA / NHK22.2などの正確なモニターが可能だ。水平、上層に2つの巨大なリングを設置し、そこにスピーカーを設置することで完全な等距離での設置を実現している。
研究所に到着してまず案内されたのが、研究のために使われているというスタジオ。Dolby Atmos、Auro 3D、NHK 22.2chといった現在規格化されているすべてのフォーマットのスピーカー配置を正確に再現し、MPEG-Hでコーディングした際の聴こえ方などを検証している。ここでのさまざまな実験をスムーズに行えるように、カスタムで作ったなんと6000ch超のルーティングが可能なモニターコントロールボックスでシグナルルーティングを行っているそうだ。
そして、スピーカーはすべて銘機「Musikelectronic Geithain / RL904」で揃えられているあたりがドイツらしい。Musikはご存知の通り旧東ドイツ、ライプツィヒで誕生したメーカーだ。その多数のスピーカーを正確な位置に設置するために、巨大な円形のトラスが吊るされている。このトラスだけで1トンを超えているということ。様々な実験を正確に行うために防音もしっかりとなされ、2メートル近い遮音層が確保されているということだ。遮音よりも響きを重視しがちな欧州のスタジオとは一線を画す、研究所らしいスタジオである。
ここではMPEG-Hでコーディングされた様々なイマーシブ・フォーマットの音源を聴かせていただいた。特定のフォーマットを持たないMPEG-H、器としての柔軟性、多様性を改めて実感した次第である。続いて、インタラクティブ・オーディオのデモとして、スポーツ素材でのダイアログの上げ下げ、ナレーションをオフにしてスタンドの観客音声のみ、などを切り替えられる様子を見せていただいた。また、音楽ライブの素材ではステレオ素材とイマーシブ素材の聴き比べ。これもMPEG-Hであればひとつのパッケージに同時に入れておくことができる。最高の環境でMPEG-Hの多様な可能性を体験することができた。
最終アウトプットまで担保する研究設備
📷シアタールーム。この部屋も現在運用されているすべてのフォーマットに対応するために、大量のスピーカーが設置されている。
また、リビングルームを模した視聴室もご案内いただいた。ここには様々な民生の再生機器が揃えられ、それらの動作のチェックや聴こえ方のチェックなどが行われているということだ。もちろんではあるが、制作向けの技術提供だけではなく再生機器を作るメーカーに対しても同様に技術協力を行っているFraunhofer。これまでも数多くのスタンダード(規格)を作ってきた研究所である。しっかりと最終の出口まで担保して、実際のユーザーの経験に対してもコミットしているということが感じ取れた。
そして、別のフロアには映画館規模のシアタールームがある。ここでは、さまざまなCinema向けのオーディオフォーマットの視聴体験が可能であり、それらの違いについてなどの研究が行えるようになっていた。筆者もここまでのマルチフォーマットのシアタールームは初めてである。ほとんど見ることのない、Aruo 3DやDTS-Xに対応したスピーカーの設置は新鮮であった。符号化技術の研究開発と言ってもやはり聴感としての確認は重要なファクターであり、様々なフォーマットを実際に試せる(聴ける)設備を持っているFraunhoferが「世界最大の音響研究所」と呼ばれるのもよくわかる。様々な環境やケースにおいてどのように音が聴かれているのか?想定されるほぼすべての体験が行える施設がここには揃っていた。
最後に、MPEG-Hはまさにいま羽ばたこうとしているところだが、その次はどのような進化を考えているのか?というお話を聞いてみた。すでにご存知かもしれないが、Fraunhoferでは「MPEG-I」というもう一世代先の技術開発をすでに終わらせている。イマーシブとインタラクティブの次として、AR / MR向けの技術を映像コーデックとともに開発をしているということだ。イマーシブであることは当たり前で、さらにインタラクティブ性を高めると考えるとやはりAR / MRに行き着くのであろう。プロセッサーの処理能力など現時点では課題も多いが、さらなる体験をユーザーに与えるための技術が形になりつつある。ベースとなる要素技術は揃ってきているので、それらをどのようにユーザーが使いやすいように形にしていくのか?ユーザーの端末の処理負荷を軽減するためにはどうしたら良いのか?具体的な課題解決に取り掛かっているそうだ。Fraunhoferの考える次世代のエンターテインメントは、パーソナルに楽しめるAR / MRということのようだ。これはキーワードとして覚えておいて損はない、いまからでもそれらの情報に対してアンテナを張っておいたほうが良いというサジェスチョンであるように感じられる。
📷(左)リビングルームを模した試聴室。サウンドバーなど民生の製品がずらりと揃う。(右)研究用の小規模な試聴室。この部屋も左ページの部屋と同様にマルチフォーマット対応の視聴環境となっている。
筆者にとっては念願とも言えるFraunhofer IISの訪問。MP3を代表に世界を変えたテクノロジーの震源地。3度の増築によりどんどん拡大を続けているこの大きな研究所で、オーディオ分野だけでも300名以上が働いているという。最先端となるMPEG-I、そしてその次の技術、そこから派生するテクノロジーもあるだろう。科学技術を実用に変えていくFraunhoferからは目が離せない。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Media
2024/01/02
株式会社Cygames 大阪サウンドフォーリースタジオ様 / 正解は持たずにのぞむ、フォーリーの醍醐味を実現する自社スタジオ
「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンに掲げ、妥協のないコンテンツ制作に取り組む株式会社Cygames。ProceedMagazine 2022-2023号では大阪エディットルームの事例として、Dolby Atmos 7.1.4chに対応した可変レイアウトとなるスタジオ2部屋が開設された様子をご紹介したが、それとタイミングを同じくしてフォーリースタジオも大阪に設けられた。ここではそのフォーリースタジオについてレポートしていきたい。
同時期に3タイプのスタジオ開設を進める
Cygamesでは、スマートフォン向けのゲームタイトルだけではなく、コンシューマー系のタイトル開発にも力を入れている。近年のゲームはプラットフォームを問わず映像や音の表現が飛躍的に向上しており、フォトリアルで写実的な映像に合わせたサウンドを作る場面が増えてきた。効果音の制作については、それまでは外部のフォーリースタジオを借りて作業を行っていたが、効率性を考えれば時間や手間が掛かってしまうという制約があった。また、ゲーム作品では、例えばキャラクターの足音一つとっても多くの動作音があるだけでなく、ファンタジーの世界特有の表現が必要である。土、石畳、レンガ等といった様々な素材の音を既存のライブラリから作り上げるのは容易ではなく、完成度を上げていくことは中々に難しい作業だが、フォーリースタジオを使って収録した効果音は、生音ならではの音の良さに加え、ゲームによく馴染む質感の音に仕上がることが多かったという。
やはり自社のスタジオがあればより効率的に時間を使い、かつクオリティを高める試行錯誤も行えるのではないか、という思いを抱いていたところ、Cygamesのコンシューマーゲーム開発の拠点がある大阪でモーションキャプチャースタジオの設立計画が立ち上がったことをきっかけに、建物のスペック等を考慮してフォーリースタジオも同じ場所に設置する形でスタジオ設置に向けて動きだした。以前ご紹介した、MAスタジオの用途を担う大阪エディットルーム開設プロジェクトと合わせると、同時期に2つのサウンドスタジオ開設を進めるという大きなプロジェクトになったそうだ。
制約はアイデアでポジティブに変換する
フォーリースタジオを開設するための要件としてまず挙げられるのは部屋の高さと広さ。通常のレコーディングとは異なって物を振り回したりすることも多いフォーリー収録ではマストな条件となる。天井が低ければ物が当たってしまうのではないかという演者の不安とストレスを低減するため、部屋の中央付近の天井を一段高くする工夫が取り入れられている。広さについてもフォーリー収録時の演技をする上で充分なスペースを確保しているが、加えて壁の反射音の影響が強く出てしまわないよう、床やピットを部屋の真ん中に寄せて配置し、壁からの距離が取れるレイアウトを実現できた点も広さを確保できたメリットだ。
また、スタジオ内の壁面にはぐるりと木製のフローリングが敷かれ、そこも材質の一つとして使用できる。中央には大理石やコンクリート、水を貯められるようなピットが用意され多様な収録に対応できる環境が整えられた。一方、スタジオの広さがある故に反響をどのようにマネジメントするのかは大きな課題となっていたようだ。そこで取られた特徴的な対策だが、壁面の反射を積極的に発生させつつルームモードを起こさないように処理した上で、むしろその反響を収録での選択肢として活かせるようにしたそうだ。もちろん、部屋の外周に沿って用意されたカーテンによって反射面を隠し、反響をダンピングして抑えていくこともできる。さらに、日本音響エンジニアリングの柱状拡散体を設置してアコースティックも整えられており、当初は弊害と考えていた反響音を逆に利用することで、収録できる音の幅を拡げている。
施工は幾度と重なる打ち合わせやシミュレーションを経て行われたのだが、それでも予想できない不確定な要素も出てきたそうだ。例えば、このスタジオの特徴でもある天吊りマイク。天井に取り付けられた金属製のパイプに特型のマイクスタンドを引っ掛けて固定する仕様になっているのだが、実際に収録を行うとパイプに響いているのか、音声信号にノイズを感じることが出てきた。イメージ的にはドラムのオーバーヘッドを立てるイメージに近く、ドラムは音量が大きいためそれほど気になりはしないが、フォーリーの収録となると微細なノイズでも大きく感じることが多くなる。試行錯誤した結果、天吊りマイクスタンドを取り付ける際に固定ネジを締めすぎないようにすることでノイズを軽減できることがわかった。そのほかにも、部屋の天井から高周波の金属音が鳴っているようで調査したところ、空調のダクトが共振していることが判明。金属のダンピングを見直して解決したそうだ。細かな調整だが、このような積み重ねこそが収録のクオリティーアップには必要不可欠であるとのことだ。
📷ダンピングが見直されたという天吊りマイクブーム
集中環境とコミュニケーションの両立
スタジオのコンセプトで重要視している要素として、ストレスフリーであることが必要であると考えているそうだ。ブースとコントロールルームのスタッフの間で意思疎通がストレスなく行われなければ作業効率も落ちてしまい、認識の齟齬も起きがちだ。社内スタジオで自由に使える環境とはいえ、クオリティを高めるトライアンドエラーの時間まで削ってしまっては本末転倒になってしまう。
ところが、このスタジオはブースとコントロールルームが完全にセパレートされており、お互いの姿を確認できるようなガラス面も設けられていない。
一見するとコミュニケーションを妨げる要素になりそうだが、ガラス面を設けないことで演者が集中して演技に取り組める環境を整えられたという。演者にとって、人の目線があると気になって集中力の妨げになることもある。外部のスタジオでは収録の様子をクライアントがコントロールルームから見守るといったことも多いが、このスタジオは社内スタッフでの利用が主となるため、必ずしもコントロールルームから演者を直視できる必要はない。ただし、その分だけコミュニケーションを重視したシステムプランが採用された。
スタジオ内にはフォーリー収録用とは別に天吊りマイクが仕込まれており、コントロールルームからスタジオ内の音を聴くことができ、トークバックと両立できるようなコミュニケーションの制御も行なっている。映像カメラも各所に設置されており、コントロールルーム内のディスプレイにスタジオ内の様子が映され、その映像も各ディスプレイに好きなように出せるスイッチャーが設置されており、オペレーターの好みに合わせて配置することが可能となっている。コントロールルームとブースをアイソレーションすることによって演者が集中できる整った環境と、コミュニケーションを円滑にさせるシステムプランをしっかり両立させている格好だ。
正解を持たずに収録する、トライする機材
📷コントロールルームには左ラックにPUEBLO AUDIO/JR2/2+、右ラックに TUBE-TECH/HLT2Aが収められコンソールレスな環境となっている。
このスタジオではスタッフが持ち込みPCで収録することも想定されており、各種DAWに対応できるシステムが必要であった。シンプルかつシームレスにシステムを切り替えられ、コミュニケーションシステムとも両立させる必要がある。それをシステムの中核に Avid MTRXを据えることで柔軟な対応を実現している。また、「収録段階からの音作りがしっかりできるスタジオにしたい」というコンセプトもあり、アウトボード類の種類も豊富に導入された。コンプレッション、EQはデジタル領域よりもアナログ機材の方が音作りの幅が拡がるということだけではなく、その機材がそこにあるということ自体がスタッフのクリエイティビティを刺激する。スタッフが自宅で録るのではなく、「このスタジオで録りたい」という気持ちが起こるような環境を整えたかったそうだ。
そうして導入された機材のひとつが、PUEBLO AUDIO/JR2/2+。フォーリースタジオではごく小さな音を収録することが多く、ローノイズであることが求められる。過去の現場での実績からもこの機種が際立ってローノイズであることがわかっており、早々に導入が決まったようだ。また、ミキサーコンソールが無くアウトボードで補完する必要があったため、TUBE-TECH/HLT2AがEQとして据えられている。HLT2Aは繊細なEQというよりは極端なEQでサウンドを切り替えることもできるそうで、極端にローを上げて重たい表現ができないか、逆にローを切ってエッジの効いた表現はできないか、といった試行錯誤を可能にする。このほか、ヴィンテージ機材ならではのコンプレッション感が必要な場面も増えてきていることから、NEVE 33609Cも追加で導入されている。今後も機材ラインナップは充実されていくことだろう。
はじめからこういう音が録りたいというターゲットはあっても、正解を持たずに収録していくという工程がフォーリーの醍醐味だという。その中で誰でも使いやすい機材を選定するということを念頭に置き、スタッフからのリクエストも盛り込んでこれらの機材にたどり着いたそうだ。
スタジオは生き物、その成長を期待する
📷何よりもチームワークの良さが感じられた収録中の一コマと、気合いが込められた渾身の一撃も収録!!
こうして完成をみたスタジオであるが、S/Nも良く満足した録音が行えているそうだ。また、5.1chリスニングが可能となっている点もポイント。開発中のタイトルにコンシューマー作品が多く、サラウンド環境が必要なことに加え、映画のようにセンターの重要度が高いことから、ファントムセンターではなくハードセンターで収録したいという要望に沿ったものだ。また、映像作品やゲーム資料を確認しながらすぐに収録することができるため、フォーリーアーティストに映像作品の音を聴かせてクリエイティブへのモチベーションをアップしてもらいながら制作を進める、という点も狙いの一つだ。もちろん、自社スタジオとなったことで時間を気にせずクオリティの向上を目指せることが大きく、求める方向性をより具体化させて収録できるメリットは計り知れない。
今後について伺うと、スタジオは生き物であり、収録できるサウンドの特徴も次第に変わっていくと考えているそうだ。導入する資材が増えればそれが吸音や反射になって音も変わる。ピットについても使用していく経年変化でサウンドにも違いが出てくる。高域が落ち着いたり、もう少し角が取れてきたりと、年月を積み重ねてどのように音が変わっていくのかがすごく楽しみだと語っていただいた。
📷今回お話を伺った、サウンド本部/マネージャーの丸山 雅之氏(左)、サウンド本部/サウンドデザインチーム 村上 健太氏(中央)、妹尾 拓磨氏(右)。
目の前の制約はアイデアでポジティブに変換する、考え抜かれたからこそ実現できたメリット。そして、それを活かしたフォーリー収録には正解を持たずにのぞむ。ここに共通するのは先入観を捨てるということではないだろうか。先入観を「無」にしたならば、そこにあるのは創るというシンプルかつ純粋な衝動のみである。クリエイティブの本質を言い得たような、まさにプロフェッショナルの思考には感銘を受ける。今後もこのスタジオが重ねた年月は成長となって作品に反映されていくのだろう、フォーリー収録された素材がゲームというフィールドで表現されエンターテインメントを高めていくに違いない。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Post
2023/12/28
maruni studio様 / studio m-one 9.2.6chイマーシブ構築、マルニビル改装工事の舞台裏
取材協力:株式会社エム・ティー・アール
ライブの映像コンテンツやMVをはじめ、CM、企業VP(=Video Package)など、音楽系を中心に幅広いポストプロダクション業務を手がけるマルニスタジオ。長年に渡りレコーディングスタジオとポスプロの両方を運営していた関係で、音楽系の映像コンテンツが全体の6割程度を占めるという。今年3月にリニューアルオープンされた同社所有のマルニビルは、その目玉として地下一階にDolby Atmos対応のサウンドスタジオ「studio m-one」を構えた。Musikelectronic Geithainの同軸スピーカーで統一された9.2.6ch構成のイマーシブサラウンド環境は見た目としても圧巻だが、商用スタジオとしても利用する多くの方にとって快適な環境となるよう、様々な工夫が取り入れられているという。
スケルトンから行ったリニューアル
目黒区青葉台、目黒川に程近い住宅街の一角に佇む自社所有のマルニビルは、およそ30年に渡りこの地でレコーディングスタジオとして運営されてきた。また、青葉台には当初からポスプロ業務をメインとしているもう一つの拠点が今も存在している。そして2020年3月、突然訪れたコロナ禍が世の中の動きを止めてしまったのと同様に、コンテンツ制作もしばらくの間停滞期を迎えることになる。そこで持ち上がったのが、両拠点をポストプロダクション業務に統一するというプロジェクトだ。その後社内協議を経て、自社ビルであることのメリットを活かし、全フロアを一度スケルトンにして再構築する改装工事実施を決断。2022年6月より工事がスタートし、数々の難局を乗り越えながら今年3月リニューアルオープンの運びとなった。
今回の改装工事の舞台裏はどのようなものだったのだろうか。スタジオマネージャー兼MAミキサーの横田智昭氏、MAミキサーの沖圭太氏にお話を伺ったところ、これからイマーシブ対応のスタジオを作りたいと考えている方にとって参考になるであろう、理想的なスタジオ構築へのヒントが見えてきた。
株式会社丸二商会
MARUNI STUDIO
Studio Manager
Chief Sound Engineer
横田智昭 氏
株式会社 丸二商会
MARUNI STUDIO
Sound Engineer
沖 圭太 氏
ROCK ON PRO(以下R):今回のスタジオリニューアルの最初のきっかけは何だったのでしょう。
横田: 率直な話、コロナ禍に突入してレコーディングの業務、スタジオで音を録るという仕事は停滞していた一方で、そういった中でもポスプロ業務の方は順調に稼働していました。そこで、このタイミングでポスプロ業務と拠点を統一しリニューアルしようという提案が社内から挙がったんです。
R:その後、具体的な計画や機材選定が始まったのではないかと思いますが、どのように進めていったのでしょう。
横田: このビルは自社ビルで、さらに吹き抜けがあり広く空間がとれる利点があったのですが、スケルトンまでできるという予算を確保できたのが一番大きかったですね。それが実現したからこそ、スタッフ全員で自由に考えられました。タスクの洗い出しというよりは、「自由にできるからこそ、どうレイアウトしていくのか?」というのを決めていくのが大変でした。あれこれ詰め込みすぎると予算が追いつかなくなったりして。
沖:この段階から冨岡さん(株式会社エム・ティー・アール 冨岡 成一郎氏)に相談でしたね。私はマルニと冨岡さんをつなぐ連絡担当だったのですが、無茶を言ってもレスポンスよく対応してくださいました。あと、実はスケルトンの話が出てくる前に、地下一階ではなく二階でやろうという話もありました。しかし検討していくと天井高も取れないし…ど〜にもならん!と(笑)。商業的に成り立たない、というのが分かったからこそ、思い切って「スケルトンからやろう!」という方向をみんなで向くことができたのは大きかったです。
R:では、リニューアル時にDolby Atmos対応というのは当初からお考えだったということですね。
横田: それは最初から考えていました。ポスプロのスタジオに転向するならAtmos対応にしたいと。
リニューアルが解決したポイント
📷著名な建築家によってデザインされたというこのマルニビルは、コンクリート打ちっぱなしの内壁のクールさと、階段などに見られるアール(曲面)の造形が生み出す人間的な温かみの対比がなんとも美しく印象的だ。
R:この新たなスタジオで解決された、以前からの課題はありましたか?
横田: MA室の場合、クライアントの方が大勢いらっしゃることがあります。中には、当然別の仕事も対応しながら立ち会われるということもありますが、コントロールルームの中ではそれを遠慮がちにされているのもこちらとしては心苦しかったんです。そこで、隣の前室にテレビとソファを用意して、そちらでもコントロールルームと同じ環境の音と画を流すことができるようにしました。クライアントの皆さんが別件対応を前室でしていても、コントロールルームの中で制作がどう進行をしているのかをすぐに確認できるという環境にしています。
また、コントロールルーム内とは別の場所で冷静に画音をチェックできるスペースができたというのは、従来の雑多になりがちな作業環境からすると改善されたポイントです。これは、他のMA室にもなかなか無い部分ではないかと思っています。あとは、極力スタジオ内のモノを減らす、ということですね。見ていただいて分かる通りかなり少ないと思います。音響面も含めてダイレクトな音を重視したいというのはずっと思っていて、卓上のものもなるべく小さくしました。
R:そうですよね、シンプルで洗練された印象を受けました。
📷前室にはDolby Atmos対応のサウンドバーSonos Beamを配置し、テレビのeARC出力からオーディオチャンネルを受けることでシンプルな配線を実現している。
📷優先的に導入したというTorinnov Audio D-MON、そしてDolby Atmos対応AVアンプDENON AVC-X6700Hなどが配置されたラック。
沖:機材的な話で言うと、最初の段階から決まっていたものとしてTorinnov Audio D-MON の導入がありました。これまでのMA室は15年くらい使っているのですが、経年変化もあり音を調整したいタイミングも出てきました。その調整幅が少ないというのはスタジオを長く使っていく上で、言わば足かせになってしまう、というのをすごく感じていたので、スタジオを作って今後も長く使っていけるようにしたかったんです。もちろんアコースティックな部分での調整を追い込むのも大事ですが、プラスして電気的に調整できる「伸びしろみたいなものを取っておきたい!」ということもあって、コストは高くついても「そこだけは譲らない!」というのはありまして、何も考えずに最初に予算に組み込みました(笑)。
R:もちろん出音の改善の意味もあるかと思うのですが、長く使っていく上でメンテナンス性をもたせる意味で導入されたのですね。
沖:当初はそうでしたが、結果的にAtmosの調整にもすごく良い効果が出ていますよ。
17本のMusikが表現する9.2.6ch
R:最初の段階から導入を決めていたものは他にもあるのでしょうか。
横田: 見ての通り、ムジークですね。この901のフロントのLCRは元々レコーディングで使っていたものなんです。これが、レコーディング用途であったとはいえ、私たちも当然よく聴き込んでいて素直にいいなと思わせるサウンドでした。そこで「せっかくあるこの901を活かして全てを組めないか?しかも9.2.6chという形で…」と冨岡さんにも相談させていただいて。そこもこだわりと言えばこだわりです。
R:では、慣れ親しんでいたスピーカーでイマーシブの作業も違和感も無く進められたと。
横田: そうですね。ただ、17本もあると…スゴいんだな、と(笑)。なかなか暴れん坊の子達なんですが、Torinnovが上手くまとめてくれています。
R:今回、9.2.6ch構成にされたのはどういった理由でしょう。
横田: それは僕がここを作る以前に、外部のスタジオで取り組んでいた作品が影響していて、そこでは9.2.4chで作業を行なっていました。その時にワイドスピーカーの利点について使用前と使用後を比較した時に、新しいスタジオを作るのであれば、トップを4chとするか6chとするかはさておき、平面9chはマストだな、と。中間定位が作業上すごく判断しやすい。そこを7.1.4chと比較するとやはり定位がボケる部分が出てくるんですね。結果的に7.1.4chで聴かれている環境があったとしても、制作環境としてはこの部分が物理的に分かると作業がスムーズになってくるというのがありました。
📷Topの6chにはmusikelectronic geithain RL906を採用。スケルトンからの改装により3.1mという余裕ある天井高が確保された。
R:トップスピーカーはどのように活用されていますか?
横田: トップ6chに関しては、トップの真ん中にスピーカーを置くというのは、正直最初は「要るのかな?」とも思っていたんですが、ついこの間、その効果を実感できる機会がありました。Atmosの作業を行なっていた時に雷を落とすシーンがあったんです。部屋の中でのプロジェクションマッピングになっていて、長方形の箱の中でどこからともなくワーッと雷が落ちるシーン。それを音楽の曲中の間奏に入れたかったんです。上方向の定位は分かりづらいものですが、その時の雷の音の定位が非常に分かりやすかったんです、トップの真ん中があることによってすごくやりやすさを感じました。そうしたものを作る上で定位をきちんと確認できるっていうのは良かったなと最近になって実感しています。
R:今回AVID S1を選択されたのはどのような理由からでしょう。
沖:MAという作業柄、フェーダーを頻繁に使う訳ではないので、8chもあれば十分なんです。あとは、卓ごと動かせるようにしたかったというのと、反射音の影響を極力減らすため、スタジオ内のあらゆるものをできるだけコンパクトにしました。S3じゃなくS1というのもそこからです。
横田: やはり、スイートスポットで聴かなければ分からないじゃないですか。中には卓前に座ることに抵抗があるというクライアントの方も意外と多くいらっしゃいます。だったら卓側を動かしてしまって、そこにソファや小さなテーブル、飲み物などを置いて落ち着ける環境にしてしまえば、ど真ん中で聴いていただけるかなと思いました。
📷マシンルームからのケーブルを減らすため、必要最低限かつコンパクトな機器類で構成された特注のデスク。中央にはAVID S1が埋め込まれている。
R:フロアプランに関して、他にも案はありましたか?
横田: リアやサイドのスピーカーをどのように配置できるかというところをしっかり検討して、これはすごく上手くいったと思います。サラウンドサークルのことだけを考えるとクライアントの邪魔になってしまうことがありがちです。それを、しっかりイマーシブ環境にとっての正確な配置を考えつつ、クライアントも快適に過ごせるということを、僕らの意見だけではなく営業サイドの意見も豊富に取り入れてこだわって考えました。
沖:この部屋はあえてMA室とは呼んでいません。コンセプト段階で「MA室を作るのか?」それとも「レコーディングの人もMAの人も使える部屋を作るのか?」という議論がありました。前室のスペースもいっぱいまで使って、3列ディフューズのいわゆるMA室的な部屋を作ろう、というアイデアと、ITU-Rのサラウンドサークルにできるだけ準拠した完璧な真円状に配置しようというアイデアがありまして、そこで色々話し合って揉んでいく中で今の形に落ち着きました。レコーディングの方もMAの方も皆が使える部屋となったので、より広い用途に対応できるという意味合いでもあえてMA室とはせず「studio m-one」としています。
📷将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できるAVID MTRX。B-Chainの信号はモニターコントローラーのGrace Design m908を経由し、Torinnov Audio D-MONへと接続されている。
レコーディングとMAを融和するイマーシブ
R:現場の方々から見てDolby Atmos以外の規格も含めてイマーシブ需要の高まりというのは感じますか?
横田: 確かにエンドユーザー的には広がってきているかな、という感覚はあります。そこから「スタジオを使ってもらうようにするにはどうするか?」っていうのがもう一つのテーマであったりもするので、私たちがどうやって携わっていくかというのは毎日考えていることではあります。音楽作品については、いくつかのアーティストがだんだん作り始めているような状況なんですが、これもやってみて思うのは、ノウハウがものすごく大事な部分でもあるし、発注する側からしてもある意味「未知」ではある状態です。「面白そうだけど、どういうふうにすればいいの?」とか、「どういう風にやるの?」とか、「時間はどれだけかかるの?」といった部分がまだまだ分かりづらい状況だと思います。
R:手探りなところは聴き手もそうですよね。
横田: だからこそ、私たちはいいスタジオを作らせてもらったので、これをどう活用していくか、イマーシブのニーズにどう参入していけばいいのかというのは常日頃から営業陣とも話し合っています。そこで、先日取り組んでみたのが企業系のVPコンテンツで、このstudio m-oneでAtmosを体験していただいたのをきっかけにお声がけをいただいて、VPをAtmos化するということを実験的にやらせていただきました。
他にも企画段階から携わって、「カメラアングルこういうのはどうですか?」とか「背景にこれがあるとこういう音が足せるので、こんな空間ができますよ」とか、「こういう動きで…」「俯瞰から撮ると…」とかカメラマンさんとも打ち合わせをさせていただいて、それに対して僕らが効果音をつけて制作してみたというケースもあります。クライアントは、さまざまな企業のコンテンツを受注する制作会社なのですが「どういう風に世に出していいかっていうのはちょっとまだ悩むけれども、できたコンテンツとしてはすごく面白い」という評価で、受注の段階でAtmosの表現もできると提案してみようかという流れも生まれてきているようです。そうなると、これまでAtmosとは無縁と思われた企業の方にも、商品だったり、システムだったり、それが例えば「空間」を表現することでその価値観が高まりそうな商品にはAtmosのような規格がとても効果的だ、と知っていただける機会も増えてきそうです。
R:制作はもちろん、営業面でも広がりを見せそうですよね。
横田: 先ほどの話もありましたが、あえてMA室とは呼んでいません。これまで、サラウンド制作はどちらかというとMAやダビングの世界の話で、言ったら我々には親しみがある分野でした。そこに空間オーディオが出てきてレコーディングの方が一気にAtmosへ取り組む機運が高まると、レコーディングの人たちとMA的なやり方を話すようになってきたんです。そういう時に、我々が今までやってきたサラウンドの話が活きてくる。これまではレコーディングとMAの間に垣根のようなものが感じられていたんですが、空間オーディオのスタートによってその境目が混ざってきた感覚です、これからもっとそうなっていくと思います。studio m-oneもせっかく作るなら、そのどちらにとっても垣根がないスタジオにしたかったというのが最初の展望です。Atmosへの関心にかかわらず、どのような方にでも使ってもらえるような部屋にしたいですね。
📷中央のデスクを移動させ、椅子とサイドテーブルを置くと極上のイマーシブ試聴環境へと早変わりする。この工夫により、クライアントがスタジオ中央のスイートスポットでリラックスして試聴してもらえるようになったという。「卓前で聴いてもらうのが難しいのであれば、卓ごと動かせばいい」、そうした逆転の発想から生まれたまさにクライアントファーストな配慮である。実際にこの場でライブの音源を試聴させていただいたが、非常に解像度の高いMusikサウンド、そしてTorinnov Audio D-MONによる調整の効果も相まって、良い意味でスピーカーの存在が消え、壁の向こう側に広大な空間が広がっているかのように感じられた。
●Speaker System
Dolby Atmos Home 9.2.6ch
L/C/R:musikelectronic geithain | RL901K
Wide/Side/Rear:musikelectronic geithain | RL940
Top:musikelectronic geithain | RL906
Sub:musikelectronic geithain | BASIS 14K×2
スタジオ設立30周年を迎える節目に、ポスプロ業務への一本化という新たな変革へと踏み出したマルニスタジオ。スケルトンからの改装は自由度が高い反面、決めるべきことも増えるため数々の議論が行われてきた。その際に、技術スタッフの意見はもちろん、営業陣の意見にもしっかりと耳を傾けることで、クオリティの高い制作環境を担保しつつ、クライアントを含めた利用する全ての人にとって居心地の良い空間デザインが実現された。あえてMA室と呼んでいないことからも伝わってくる、制作現場における様々な垣根を取り払い、人との対話を重視しながらより良い作品を作っていこうという姿勢には個人的に深い感銘を受けた。このstudio m-oneから、また一つ新たなムーブメントが拡がっていくのではないかという確かな予感を抱かずにはいられなかった。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Post
2023/12/26
株式会社三和映材社 様 / MAルーム『A2』〜大阪の老舗ポスプロが、これからの10年を見据えてMAルームをリニューアル〜
Text by Mixer
CMや企業VPといった広告案件を数多く手がける大阪の老舗ポスト・プロダクション、株式会社三和映材社が本社ビル内にあるMAルーム『A2』をリニューアルした。長らく使用されてきたヤマハ DM2000はAvid S4に入れ替えられ、モニター・スピーカーはGenelec The Ones 8331Aに更新。システム的にはシンプルながら、8331AとPro Tools | MTRXはAESで接続されるなど、音質 / 使い勝手の両面で妥協のないMAルームに仕上げられている。今回のリニューアルのコンセプトと新機材の選定ポイントについて、株式会社三和映材社 ポストプロダクション部所属のサウンド・エンジニア、筒井靖氏に話を訊いた。
大阪の老舗ポスプロ:三和映材社
大阪・梅田から徒歩圏内、新御堂筋沿いにスタジオを構える三和映材社は、1971年(昭和46年)に設立された老舗のポストプロダクションだ。映画の街:京都で、撮影機材のレンタル会社として創業した同社は、間もなくビデオ機材や照明機器のレンタル業務も手がけるようになり、1980年代にはポストプロダクション事業もスタート。同社ポストプロダクション部所属の筒井靖氏によれば、1985年の本社ビル新設を機に、ポストプロダクション事業を本格化させるようになったという。
「本社ビルは、1階が機材レンタル、3階が撮影スタジオ、5階が映像編集室、6 階が映像編集室とMA ルーム、7階がレコーディング・スタジオという構成になっていて、撮影から映像編集、MA、さらには音楽制作に至るまで、映像コンテンツの制作がワン・ストップで完遂できてしまうのが大きな特色となっています。手がけている仕事は、CMや企業さんのPRが8〜9割を占めています。製品紹介や会社紹介のビデオですね。CMと言っても、昔はテレビがほとんどだったのですが、最近はWebが多くなっています。最近は自分たちで映像編集されるお客様も増えてきたので、MA やカラコレ、合成、フィニッシングだけを弊社に依頼されるパターンも増えていますね」
📷株式会社三和映材社 ポストプロダクション部 サウンド・エンジニア 筒井 靖 氏
本社ビル内の施設は、映像編集室が3部屋(Autodesk Flame ×2、Adobe Premiere Pro ×1)、MAルームが2部屋、レコーディング・スタジオが1部屋という構成で、その他に別館にもボーカル・ダビングなどに使用できるコンパクトなスタジオが用意されているとのこと。2部屋あるMAルームは、フラッグシップの『A1』が5.1chサラウンドに対応、今回リニューアルが実施された『A2』はステレオの部屋で、どちらも1985年、ビルが竣工したときに開設されたという。
「音響設計は、日東紡さん、現在の日本音響エンジニアリングさんにお願いしました。ルーム・アコースティックは基本開設時のままで、その後は痛んだファブリックを張り替えたくらいですね。機材に関しては、『A1』はAMEK AngelaとStuderの24トラック・マルチの組み合わせでスタートし、1993年に卓を7階のレコーディング・スタジオで使用していたSSL 4000Eに入れ替えました。現在の卓は2006年に導入したSSL C300で、かなり年季が入っていますが、今年に入ってからフル・メンテナンスしたので今のところ快調に動いています。
一方の『A2』は、当初は選曲効果の仕込みで使うような部屋だったので、最初はシグマのコンパクト・ミキサーが入っていたくらいでした。その後、『A1』に4000Eを入れたタイミングで、現在のDAWの先駆け的なシステムであるSSL Scenariaを導入し、本格的なMAルームとして運用し始めたんです。Scenariaは、関西一号機のような感じでしたが、映像もノンリニアで再生できる革新的なシステムでしたね。Avid Pro Toolsを導入したのは2006年のことで、『A1』と『A2』に同時に導入しました。『A2』のメイン・コンソールは引き続きScenariaで、Pro Toolsはエディターとして使うという感じでした。映像は、ソニーのDSR-DR1000というディスク・レコーダーを9pinでロックして再生するようになったのですが、あれはワーク上げしながら再生できる画期的なマシンでした。その後、いい加減Scenariaも限界がきたので、2010年にヤマハ DM2000に更新した経緯です。」
S4は使い慣れたARGOSY製デスクに収納
📷もともとはDM2000用として設置されていたARGOSY製のスタジオ・デスクをサイド・パネルを取り外すことで使用。今回導入したAvid S4がきれいに収められた。
そして今年5月、三和映材社はMAルーム『A2』のリニューアルを実施。Pro Tools周りを刷新し、オーディオ・インターフェースとしてAvid Pro Tools | MTRXを新たに導入、長らく使われてきたDM2000はAvid S4に更新された。筒井氏によれば、約2年ほど前にリニューアルの計画が持ち上がったという。
「一番のきっかけは、Pro Tools周りとDM2000の老朽化ですね。弊社の仕事は修正 / 改訂が多いので、どちらの部屋でも作業ができるように、Pro ToolsやOSのバージョンをある程度揃えるようにしているんです。しかし以前『A2』に入っていたMac Proがかなり古く、それが足枷になってPro Toolsをバージョン・アップできないという状態になっていたんですよ。せっかくPro Toolsは進化しているのに、互換性を考慮してバージョン・アップせず、その恩恵を享受しないというのはどうなんだろうと。それでDM2000もところどころ不具合が出ていたこともあり、約2年前からリニューアルを検討し始めました」
DM2000に替わる『A2』の新しいコントロール・センターとして選定されたのが、16フェーダーのS4だ。S4は、CSM×2、MTM×1、MAM×1というコンフィギュレーションとなっている。
「作業の中心となるPro Toolsが最も快適に使えるコンソールということを考え、最終的にS4を選定しました。DM2000やC300のようなスタンドアローン・コンソールには、何か“担保されている安心感”があって良いのですが(笑)、最近はPro Toolsがメインになっていましたので、もはやコンソールにこだわることもないのかなと。一時期はコンソールをミックス・バッファー的に使っていたこともあるのですが、次第にアウトボードすら使わなくなり、完全にPro Toolsミックスになっていましたからね。
ただ、唯一心配だったのがコミュニケーション機能とモニター・セクションだったんです。以前、ICON D-Controlシステムで作られたセッションを貰ったときに、モニターを作るためのバスがずらっと並んでいたことがあって、そういった部分までPro Toolsで作らなければならないのはややこしいなと(笑)。しかしPro Tools | MTRXの登場によって、コミュニケーションとモニター・コントロールというコンソールの重要な機能をPro Toolsとは切り離して実現できるようになり、これだったらコントロール・サーフェスでもいいかなと思ったんです。Pro Toolsで行うのは純粋な音づくりだけで、環境づくりはPro Tools | MTRXがやってくれる。今回のシステムを構築する上では、Pro Tools | MTRXの存在が大きかったですね。
コントロール・サーフェスを導入するにあたり、S6やS1という選択肢もあったのですが、最終的にS4を導入することにしました。Dolby AtmosスタジオであればS6がマストだと思うのですが、ここはステレオの部屋ですし、機能的にそこまでは必要ありません。ただ、この部屋にはクライアントさんもいらっしゃるので、ホーム・スタジオのような見栄えはどうだろうと思い(笑)、S1ではなくS4を選定しました」
📷長らく使われてきたDM2000はAvid S4に更新
S4は、ARGOSY製のスタジオ・デスクに上手く収められている。このデスクは以前、DM2000用を収納して使用していたものとのことで、サイド・パネルを取り外すことで、きれいにS4が収まったという。
「予算の問題もありましたし、S4を設置するデスクをどうするか、ずっと悩んでいたんです。しかしあるときふと、DM2000のデスクにS4が収まるかもしれないと思って。実際、板を1枚抜いて、少しズラすだけできれいに収まりました。奥行きや高さは微妙に合わなかったのですが、そういった問題はコーナンで買ってきた板を敷き詰めることでクリアして(笑)。このARGOSYのデスクは、手前のパーム・レストが大きくて作業がしやすく、とても気に入っています。Macのキーボードも余裕を持って置くことができますしね。
S4の構成に関しては、8フェーダーだと頻繁に切り替えなければならないので、最低16フェーダーというのは最初から考えていたことです。ディスプレイ・モジュールは付けようか悩んだのですが、あれを入れるとPro Toolsのディスプレイを傍に置かなければなりませんし、最終的には無しとしました。各モジュールの配置は、16本のフェーダーに関しては分散させずに集約し、右側がトランスポート・コントロール、左側がフェーダーという隣の部屋のC300のレイアウトを踏襲しています」
📷システムの環境構築に大きく貢献したというAvid Pro Tools | MTRX。
『A2』のPro Toolsは1台で、Intel Xeonを積んだMac ProにHDXカードを1枚装着したシステム。オーディオ・インターフェースとなるPro Tools | MTRXも、ADカードとDAカードが1枚ずつのミニマムな構成で、MADIカードやSPQカードなどは装着していないという。
「音響補正はGenelecの『GLM』でやっているので、SPQカードが入っていない初代のPro Tools | MTRXがちょうど良いスペックでした。VMC-102のようなモニター・コントローラーを導入しなかったのは、ここはステレオのスタジオなので、複雑なモニター・マトリクスが必要ないからです。その代わり今回、カフをスタジオイクイプメント製の新しいものに入れ替えました。映像はPro Toolsのビデオ・トラックで再生し、Blackmagic Design DeckLink 4K Extremeで出力しています。Pro Toolsの現行バージョンは、いろいろなビデオ・フォーマットを再生できるので、ビデオ・トラックでもまったく不自由はありません。2面あるディスプレイは、単にミラーリングしているだけで、右側でアシスタントが編集したものを、左側のぼくがバランスを取るという役割分担になっています。それと今回、ROCK ON PROさんからのご提案でUmbrella CompanyのThe Fader Controlを導入したのですが、これが入力段にあるだけでコンソールのように録音できるので助かっています。録りのレベルも柔軟に調整することができますし、とても気に入っている機材です」
📷S4の脇に備えられたのはUmbrella Company / The Fader Controlだ。
8331AとPro Tools | MTRXをデジタルで接続
今回のリニューアルでは、ニア・フィールド・スピーカーも更新。長らく使用されてきたGenelec 8030AがThe Ones 8331Aにリプレースされた。筒井氏によれば、8331AとPro Tools | MTRXは、AESでデジタル接続されているという。
「ニア・フィールド・スピーカーは、以前はヤマハ NS-10Mを使用していたのですが、2006年にScenariaを使うのを止めたタイミングでGenelecに入れ替えました。Genelecのスピーカーは、聴き心地の良さと、スタジオ・モニターとしての分かりやすさの両方を兼ね備えているところが気に入っています。
今回、The Onesシリーズを導入したのは、別館のレコーディング・スタジオで8331A を使用していて、何度かこの部屋で試聴してみたところ、もの凄く良かったからです。なのでスピーカーに関しては、スタジオのリニューアルを検討し始めたときから、絶対に8331Aにしようと考えていました。8331Aは、8030Aよりも定位がさらにしっかりして、音の粒立ちが良くなったような気がしますね。それと同軸設計のスピーカーではあるのですが、サービス・エリアの狭さを感じないところも良いなと思っています。同軸スピーカー特有の、サービス・エリアを外れた途端に音がもやっとしてしまう感じがないというか。もちろん『GLM』も使用していて、あの機能を使うと“しっかり調整されている”という安心感がありますね(笑)。『GLM』は、左右同一のEQか個別のEQが選べますが、両方試してみたんですけど、今は左右同一のEQで使っています。
今回、8331AとPro Tools | MTRXをデジタルで接続したのは、余計なものを挟まずにピュアな音にこだわりたかったからです。隣の部屋も、C300からヤマハ DME24Nを経由して、Genelecにデジタルで接続しているのですが、その方が安定している印象があります」
今年5月にリニューアル工事が完了したという新生『A2』。完成翌日からフル稼働しているとのことで、その仕上がりにはとても満足しているという。
「皆さんのおかげで、イメージどおりのスタジオが実現できたと大変満足しています。でも、まだ改善の余地が残っていると思うので、さらに使いやすいスタジオになるように、細かい部分を追い込んでいきたいですね。新しいS4に関しては、HUIモードのDM2000とは違ってPro Toolsに直接触れているような感触があります。画面上のフェーダーがそのまま物理フェーダーになったような感覚というか。それとアシスタントがナレーションのノイズを切りながら、こちらではEQを触ったり、2マンでのパラレル作業がとてもやりやすくなりました。今回は思い切ることができませんでしたが、イマーシブ・オーディオにも興味があるので、今後チャンスがあれば挑戦してみたいと思っています。」
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Music
2023/12/19
MTRX II / MTRX StudioにThunderbolt 3 Moduleが登場!〜新たなオーディオ・ワークフローを実現するシステムアップとは〜
NAMM Show 2023でPro Tools | MTRX IIとともに発表され、大きな話題となった「MTRX Thunderbolt 3 Module」。オーディオ制作者の長年の夢であったかもしれないAvidフラッグシップI/Oをネイティブ環境で使用できる日がついにやってきたことになる。MTRX Thunderbolt 3 Moduleの特徴は、MTRX II / MTRX StudioをCore Audioに接続するだけでなく、DigiLinkポートの入出力と同時にThunderbolt入出力を追加で使用できるという点にもある。つまり、1台のMTRX II / MTRX StudioにHDXシステムとネイティブDAWを同時に接続することが可能で、双方に信号を出し入れすることができるということだ。単に高品位なI/Oをネイティブ環境で使用できるようになるというだけでなく、中規模から大規模なシステム設計にまで影響を及ぼす注目のプロダクト「MTRX Thunderbolt 3 Module」を活用した代表的なシステムアップの例を考えてみたい。
Thunderbolt 3 Module
価格:135,080円(税込)
MTRX IIとMTRX Studioの両製品に対応したThunderbolt 3モジュールのリリースにより、DigiLink接続によるパワフルなDSP統合環境に加えて、 Thunderbolt 3経由で実現する低レイテンシーなCore Audio環境での柔軟性も実現可能となる。Thunderbolt 3オプション・モジュール経由で、MTRX IIでの使用時に最大256ch、MTRX Studioの場合では最大64chにアクセスが可能、Core Audio対応アプリケーション等をDADmanソフトウエアにルートし、より先進的なオーディオ・ワークフローが実現できる。
シーン1:Core Audio対応DAWのI/Oとして使用
MTRX Thunderbolt 3 Moduleの登場によって真っ先に思いつくのはやはり、これまでHDXシステムでしか使用できなかったMTRX II / MTRX Studioをネイティブ環境でI/Oとして使用できるようになったということだろう。Logic Pro、Nuendo、Cubase、Studio OneなどのCoreAudio対応DAW環境でAvidフラッグシップの高品位I/Oを使用することができるだけでなく、巨大なルーティング・マトリクスや柔軟なモニターコントロール機能をシステムに追加することができるようになる。
もちろん、恩恵を受けるのはサードパーティ製のDAWだけではない。HDX非対応のPro Tools Intro、Pro Tools Artist、Pro Tools Studio、さらにPro Tools Ultimateをnon-HDX環境で使用している場合にも、HDXシステムで使用されるものと同じI/Fを使用することができるようになる。特に、Pro Tools Studioはこのオプション・モジュールの登場によって、そのバリューを大きく拡大することになる。Pro Tools Studioは最大7.1.6までのバスを持ち、Dolby Atmosミキシングにも対応するなど、すでにイマーシブReadyな機能を備えているが、従来のAvidのラインナップではこれらの機能をフル活用するだけのI/Oを確保することが難しかった。MTRX Thunderbolt 3 Moduleの登場によって、Avidの統合されたIn the Boxイマーシブ・ミキシングのためのシステムが完成することになる。
シーン2:HDXシステムにダイレクトにMacを追加接続
MTRX II / MTRX Studioのドライバーであり、ルーティング機能やモニターセクション機能のコントロール・アプリでもあるDADman上では、DigiLinkからのオーディオとThunderboltからのオーディオは別々のソースとして認識されるため、これを利用してDigiLink接続のMacとThuderbolt接続のMacとの間でダイレクトに信号のやりとりができる。例えば、Dolby Atmosハードウェア・レンダラーとHDXシステムのI/Fを1台のMTRX II / MTRX Studioに兼任させることが可能になる。Pro Toolsとハードウェア・レンダラーが1:1程度の小規模なミキシングであれば、I/O数を確保しながらシステムをコンパクトにまとめることができるだろう。
もちろん、Dolby Atmosハードウェア・レンダラーだけでなく、CoreAudioにさえ対応していれば、スタンドアローンのソフトウェアシンセ、プロセッサー、DAWなどとPro Toolsの間で信号をやりとりすることができる。シンセでのパフォーマンスをリアルタイムにPro ToolsにRecする、Pro ToolsからSpat Revolutionのようなプロセッサーに信号を送る、といったことが1台のI/Fでできてしまうということだ。Thuderboltからのソースはその他のソースと同様、DADman上で自由にパッチできる。使い方の可能性は、ユーザーごとに無限に存在するだろう。(注:MTRX StudioのThuderbolt 3 I/Oは最大64チャンネル。)
シーン3:Dolby Atmosハードウェア・レンダラーのI/Fとして使用
シンプルに、HDXシステムとDolby Atmosハードウェア・レンダラーのそれぞれにMTRX IIを使用することももちろん可能だ。HDX側のMTRX IIからDanteでレンダラーに信号を送り、レンダラー側のMTRX IIからモニターセクションへ出力することになる。大規模なシステムの場合、複数のプレイアウトPro Toolsからの信号を1台のMTRX IIにまとめると、オプションカードスロットがDigiLinkカードで埋まってしまい、アナログI/Oをまったく確保できないことがある。ハードウェア・レンダラーのI/FとしてMTRX IIを採用した場合には、その空きスロットを利用して外部機器とのI/Oを確保することができる。MTRX II同士をDanteで接続していればひとつのネットワークにオーディオを接続できるので、Dante信号としてではあるがメインのMTRX IIからコントロールすることも可能だ。
NAMM Show 2023での発表以来、多くのユーザーが待ちわびたプロダクトがついに発売開始。In the Boxから大規模システムまであらゆる規模のシステムアップを柔軟にすることができるモジュールの登場により、ユーザーごとのニーズによりマッチした構成を組むことが可能になった。新たなワークフローを生み出すとも言えるこの製品、システム検討の選択肢に加えてみてはいかがだろうか。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Sales
2023/11/27
SOUND PARTICLES「ブラックフライデー/サイバーマンデー」セール開催!
コンピュータグラフィックスの概念を取り入れた独自のアルゴリズムを搭載し、全てのプラグインが最大9.1.6chまでのイマーシブオーディオ制作にも対応しているSOUND PARTICLE社が、現在「ブラックフライデー/サイバーマンデー」セールを開催中!
全製品が50%OFFで手に入れられるチャンス!ProToolsにDolby Atmos Rendererが搭載される前に、イマーシブツールをお得に揃えておきましょう!
SOUND PARTICLES社 ブラックフライデー/サイバーマンデー
概要:SOUND PARTICLES全製品が50% OFF
期間:ブラックフライデー:2023年11月15日(水)19:00 〜 11月27日(月)
サイバーマンデー:2023年11月27日(月)19:00 〜 12月3日(日)
詳細なラインナップと価格は下記WEBページで!
Rock oN Line eStore>>
SOUND PARTICLES国内代理店フォーミュラ・オーディオWEBサイト>>
https://pro.miroc.co.jp/headline/skydust-3d-sound-particles/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-particles-apple-silicon-support/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sound-particles-density/
NEWS
2023/11/22
MTRX Thunderbolt 3 Moduleが国内出荷開始!
AvidフラッグシップI/OであるPro Tools | MTRX IIおよびPro Tools | MTRX Studioをホストマシンへ直接接続することを可能にする、Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module。NAMM2023で発表され、システム設計の幅を大きく拡大するその機能に注目が集まっていた本製品がついに日本国内でも流通を開始いたしました!
ROCK ON PRO・Rock oN Company店頭のほか、Rock oN Line eStoreからお買い求めいただけます。
Avid
Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module
販売価格:¥ 135,080 (本体価格:¥ 122,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
MTRX Thunderbolt 3 Moduleについて
Thunderbolt 3オプション・モジュールは、Pro Tools|MTRX StudioおよびMTRX IIに対応しており、MTRX Studioでは64チャンネル、MTRX IIでは最大256チャンネルの低レイテンシー接続を備えた完全なネイティブ・システムを構築することができます。
DigiLink接続を行っているPro Tools|HDXを使用している場合も、Thunderbolt 3を併用することが可能です。この場合は、Pro Toolsのオーディオ(DigiLink経由)と、他のホスト・ベースのオーディオ・アプリケーション(Thunderbolt 3経由)を双方向にルーティングすることもでき、サウンド・デザインや作曲の可能性をより創造的に広げることができます。
また、MTRX IIまたはMTRX StudioにThunderbolt経由で接続された1台のコンピューターと、HDXにDigiLink経由で接続された別のコンピューターを、一緒に接続することも可能です。
日本語製品紹介ブログ
Pro Tools|MTRX IIとThunderbolt 3オプションの紹介
Thunderbolt 3 Moduleを使用すれば、MTRX II / MTRX Studio1台のみで複数のコンピューターからの信号を相互にやりとりすることができるようになり、システム構築の幅が大きく拡大します。HDXシステムとDolby Atmos RendererのI/Oを1台で完結できたり、外部からの持ち込みMac/PCからPro Toolsへ直接音声を取り込むことができるなど、運用面でのメリットも非常に大きいオプションモジュールとなっています。
デモのお問い合わせのほか、システム構築・スタジオ設計などのご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-pro-tools-mtrx-ii-proceed2023/
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-pro-tools-mtrx-ii-thunderbolt3-module/
Event
2023/11/22
【次回12/4(月)開催】360VME体験会@MIL STUDIO 開催告知
12月4日(月)、360 Virtual Mixing Environment(360VME)の特別体験会を弊社MIL Studioにて開催いたします。
※「360VMEって何?」という方は、まずはこちらの記事をお読みください。
◎こんな方におすすめ
360 Reality Audio、Dolby Atmosコンテンツの制作に興味がある方
イマーシブミックスに興味があるが、制作環境の構築にお悩みの方
(例:スピーカーの選定で悩んでいる、設置環境が用意できない…etc)
汎用プロファイルでのバイノーラル再生に不満のある方
MIL Studioの音響環境でミキシングを行なってみたい方
2023年12月 360VME特別体験会@MIL STUDIO 開催概要
◎日付:2023年12月4日(月)
◎時間:13時〜18時(開始時間については弊社よりご案内いたします。)
・1日最大5組 x3名 計15名様
・1組あたり最大3名様までご参加可能です。ぜひお誘い合わせの上ご参加ください。
※2名以下でお申し込みの場合、最大同時3名様まで他の参加者の方との相席とさせていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
・所要時間は1名様当たり約20分、1組で1時間となります。
◎開催場所:MIL Studio
– 祐天寺駅より徒歩3分 ※住所は体験会ご参加の方にのみメールでご案内いたします。
◎お申し込み方法:下記ボタンより申込フォームを送信ください
申込フォームはこちら
News!12月7日(木)には渋谷LUSH HUBにてURU氏、アヤノハラグチ氏をお迎えし、360 Reality Audio のセミナーおよび懇親会を開催予定です!こちらもあわせてご確認ください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-seminar-1207/
本件に関するお問い合わせは下記コンタクトフォームより送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-seminar-1207/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sony_360-vme_report/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mdr-mv1-vme-release/
Event
2023/11/15
InterBEE 2023 出展情報 〜コンテンツ制作の次世代ワークフローを実体験!〜
株式会社メディア・インテグレーションおよびROCK ON PROは今年も国内最大級の放送機器展InterBEE2023に出展いたします。
◎Inter BEE 2023出展情報・会期:
<幕張メッセ会場>2023年11月15日(水)〜17日(金)10:00~17:30 (最終日は17時まで)
<オンライン>11月6日(月)~12月15日(金)
・場所:幕張メッセ/オンライン
・弊社展示ブース:ホール1 小間番号1610(ROCK ON PRO)、小間番号1513、1508(株式会社メディア・インテグレーション)
・入場料:無料(全来場者登録入場制)
※来場者登録はこちらから
Inter BEE 公式WEBサイトはこちら>>
ROCK ON PRO/MIブースの見どころ!
◎AVID Pro Tools(ROCK ON PRO)
NAMM show2023で大きな話題となったMTRX Thunderbolt 3 ModuleをPro Tools | MTRX II に実装。オーディオ制作者の長年の夢であったかもしれないAvidフラッグシップI/OをCore Audioに接続したネイティブ環境でのシステムアップを実現、制作ソリューションの可能性を拡げるこのアイテムをハンズオンします。
◎MPEG-H(ROCK ON PRO)
Pro Tools 23.6でそのインストーラーが統合されたMPEG-H。次世代放送規格にも記載のあるこのフォーマット、実際の制作ツールのご案内と、何が出来るのか?その特徴とするインタラクティブ・オーディオとは一体何なのか?数年後に現実のものとなる最新技術にいち早く触れるチャンスです。
◎Dante Domain Manager + Waves CloudMX(MI)
AoIPの一つであるDanteはすでに多くの現場で活用され、日常的に使用される技術になりましたが、ローカルエリアネットワークでの運用という制約がつきまといます。せっかくのIPなのだから、インターネット経由で接続がしたいという要望が出るのは必然です。これをついに現実のものとするDante Domain ManagerとDante Connect、そして、クラウドサービスであるAWS。これらに加え、AWS上で動作するオーディオ・ミキサーWAVES Cloud MXを展開します。オーディオ制作環境の未来をご覧ください。
◎イマーシブゾーン(MI)
本ブースの目玉の1つである「イマーシブゾーン」では実際にDolby Atmos / 360RA制作でのモニターワークフローを体験いただけます。さらに世界中どこにいても複数の共同作業者と同時にコラボレーションすることを可能とするAudiomoversもご紹介します。
◎セミナーゾーン(MI・ROCK ON PRO)
メディア・インテグレーションおよびROCK ON PROブース展示の製品に関連した最先端技術の解説、ノウハウセミナーを実施いたします。さらにFLUX SPAT Revolutionを使ったWFS(波面合成)も実演予定です。
タイムテーブルPDFはこちら [15日 16日 17日]
※上記内容は変更される場合がございますのであらかじめご了承ください。
ROCK ON PRO / MIブース セミナー情報 15日(水)
日時:2023年11月15日(水)11:10 〜 17:00
場所:プロオーディオ部門 ホール 1 小間番号 1610 セミナーゾーン
・11時10分〜 「世界をつなぐプロジェクトを実現Audiomovers LISTENTO」
講師:Mirek Stiles 氏 (Audiomovers) & Igor Maxymenko 氏 (Audiomovers)
・11時50分〜 「音楽制作もPro Tools + Sketch 〜携帯デバイスで作曲、そのままセッションファイルへ展開〜"」
講師:小笠原 一恵 氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト)
・13時10分〜 「Waves Cloud MX & Dante Connect:世界初クラウドベースのオーディオ・ミキサー」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)& 佐藤翔太(Media Integration)
・13時50分〜 「イマーシブ制作に革命をSONY 360 VME 〜スピーカーがなくても始められる高品位イマーシブ環境〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・14時30分〜 「Waves eMotion LV1ミキサーで実演、ライブサウンドで必ず役立つWavesプラグインの使い方」
講師:出原 亮 氏(福山 Cable)
・15時10分〜 「進化を続けるPro Tools + ATMOS&RX 〜今後の必須ツールAtmos&RXが統合!その全貌に迫る〜」
講師:ダニエル・ラヴェル 氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト マネージャー)
・15時50分〜 「360 Reality Audioがもたらす音楽の拡張性!/ 360 WalkMix Creator™」
講師:高田 英男 氏(株式会社ミキサーズラボ 、日本音楽スタジオ協会会長)
・16時30分〜 「次世代放送規格MPEG-Hの持つ魅力 〜キーワードはイマーシブとインタラクティブ、次の音声制作はどうなるのか〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
ROCK ON PRO / MIブース セミナー情報 16日(木)
日時:2023年11月16日(木)11:10 〜 17:00
場所:プロオーディオ部門 ホール 1 小間番号 1610 セミナーゾーン
・11時10分〜 「イマーシブ制作に革命をSONY 360 VME 〜スピーカーがなくても始められる高品位イマーシブ環境〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・11時50分〜 「Waves Cloud MX & Dante Connect:世界初クラウドベースのオーディオ・ミキサー」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)& 佐藤翔太(Media Integration)
・13時10分〜 「進化を続けるPro Tools + ATMOS&RX 〜今後の必須ツールAtmos&RXが統合!その全貌に迫る〜」
講師:ダニエル・ラヴェル氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト マネージャー)
・13時50分〜 「不可能を可能にするOmnibus/Injectの活用方法 Audiomovers」
講師:Mirek Stiles 氏(Abbey Road Studios) & Igor Maxymenko 氏 (Audiomovers co-founder)
・14時30分〜 「Nugen Audio新製品2種、ラウドネスメーターの超定番VisLM 3の進化と、比較試聴ツールAB Assist 2の機能紹介」
講師:山口哲(Media Integration)
・15時10分〜 「iZotope Ozone 11 Preview」
講師:青木征洋(作編曲家/ギタリスト/エンジニア)
・15時50分〜 「Abbey Road 核心の歴史」
講師:Mirek Stiles 氏(Abbey Road Studios) & Igor Maxymenko 氏(Audiomovers co-founder)
・16時30分〜 「360 Reality Audioがもたらす音楽の拡張性!/ 360 WalkMix Creator™」
講師:高田 英男 氏(株式会社ミキサーズラボ 、日本音楽スタジオ協会会長)
ROCK ON PRO / MIブース セミナー情報 17日(金)
日時:2023年11月17日(金)11:10 〜 17:00
場所:プロオーディオ部門 ホール 1 小間番号 1610 セミナーゾーン
・11時10分〜 「Nugen Audio新製品2種、ラウドネスメーターの超定番VisLM 3の進化と、比較試聴ツールAB Assist 2の機能紹介」
講師:山口哲(Media Integration)
・11時50分〜 「音楽制作もPro Tools + Sketch 〜携帯デバイスで作曲、そのままセッションファイルへ展開〜」
講師:小笠原 一恵 氏(Avid オーディオ・ソリューション・スペシャリスト)
・13時10分〜 「イマーシブ制作に革命をSONY 360 VME 〜スピーカーがなくても始められる高品位イマーシブ環境〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・13時50分〜 「テクノロジーが導くエンジニアリングの未来 Audiomovers」
講師:Jonathan Wyner 氏(マスタリングエンジニア) & Igor Maxymenko 氏(Audiomovers)
・14時30分〜 「360 Reality Audioがもたらす音楽の拡張性!/ 360 WalkMix Creator™」
講師:高田英男 氏(株式会社ミキサーズラボ、日本音楽スタジオ協会会長)
・15時10分〜 「次世代放送規格MPEG-Hの持つ魅力 〜キーワードはイマーシブとインタラクティブ、次の音声制作はどうなるのか〜」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
・15時50分〜 「Waves eMotion LV1ミキサーで実演、ライブサウンドで必ず役立つWavesプラグインの使い方」
講師:出原 亮 氏(福山 Cable)
・16時30分〜 「Waves Cloud MX & Dante Connect:世界初クラウドベースのオーディオ・ミキサー」
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO)& 佐藤翔太(Media Integration)
コンファレンス出演情報
さらに、InterBEE会期2日目となる11/16(木)のInterBEE Forum 特別講演に弊社プロダクトスペシャリストの前田洋介が今年も出演いたします。「海外製品におけるAIや機械学習の動向」をはじめ、「機械学習を使った新しい音楽生成、Deep Learningを用いたドラム音生成と音楽解析技術の紹介」、「楽曲制作や楽器演奏をサポートする編曲・楽譜AIの研究事例」など、制作業界のこれからを考える上で要注目の内容となっています。ぜひ来場者登録の上、国際会議場201会議室へとお越しください!
【タイトル】[INTER BEE FORUM 特別講演] 『AI・機械学習が創り出す新しい音と音楽』
【日時】 2023年11月16日(木) 14:30-16:00
【場所】 幕張メッセ国際会議場 2F 201会議室
【テーマ】
・海外製品におけるAIや機械学習の動向
・機械学習を使った新しい音楽生成、Deep Learningを用いたドラム音生成と音楽解析技術の紹介
・楽曲制作や楽器演奏をサポートする編曲・楽譜AIの研究事例
12/15(金)までアーカイブ配信中
配信ページ:https://www.inter-bee.com/ja/forvisitors/conference/session/?conference_id=2373
※コンファレンスを聴講するには来場登録(無料)及びログインが必要です。
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
Sales
2023/10/26
【在庫限り】限定10台!Apogee Symphony I/O MKII 特価のご案内
デジタル・レコーディング黎明期からクオリティの高さに定評のあるApogge Electronics。同社のフラッグシップI/OであるSymphony I/O MK IIはその高いクオリティだけでなく、様々なホストへの接続と豊富なI/Oのカスタマイズによってあらゆる現場のニーズに柔軟に対応できる仕様が高い評価を得ています。
このSymphony I/O MK IIから、DigiLinkポートを搭載したモデルである「Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis」を10台限定の特価で販売いたします!
以下のI/O構成の中からお好きなものをお選びいただき、ROCK ON PROまでお問い合わせください。
8x8x8 I/O w/8xマイクプリ
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
・Slot 2: なし
通常価格:¥814,000(本体価格:¥740,000)
限定特価:¥651,200(本体価格:¥592,000)
16x16x16 I/O w/16xマイクプリ
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
・Slot 2: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
通常価格:¥1,155,000(本体価格:¥1,050,000)
限定特価:¥1,039,500(本体価格:¥945,000)
8x8x8 I/O w/8xマイクプリ + 16x16アナログI/O
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 8x8 Analog I/O + 8 Mic Pre Amps + 8x8 AES オプションカード
・Slot 2: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
通常価格:¥1,243,000(本体価格:¥1,130,000)
限定特価:¥1,056,550(本体価格:¥960,500)
16x16アナログI/O
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
・Slot 2: なし
通常価格:¥902,000(本体価格:¥820,000)
限定特価:¥721,600(本体価格:¥656,000)
32x32アナログI/O
構成
・Symphony I/O MKII Pro Tools HD Chassis 本体
・Slot 1: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
・Slot 2: 16 Analog In + 16 Analog Out Module オプションカード
通常価格:¥1,331,000(本体価格:¥1,210,000)
限定特価:¥1,131,350(本体価格:¥1,028,500)
2023年春にはI/Oカードがブラッシュアップされ、さらにサウンドクオリティを増したSymphony I/O。Dolby Atmosを始めとしたイマーシブ制作にも十分なI/Oを搭載でき、システムの中核を担えるパワフルなI/Fです。詳細なお見積もり・納期のお問合せはROCK ON PROまでお問い合わせください!
その他、システム設計、スタジオ構築やデモのご相談も随時お待ちしております。
NEWS
2023/10/24
SCFEDイベのスタジオ探報記 第5回 ワーナーミュージック・マスタリング / RockoN Webサイトにて公開中!
憧れのスタジオを訪問してスタジオの魅力、ハイエンド機材やビンテージ機材の魅力、そして“スタジオで生まれる特別なマジック”の正体について解き明かすインタビューシリーズ「SCFEDイベのスタジオ探報記」。第5回にして初のマスタリングスタジオ、「ワーナーミュージック・マスタリング」にスタジオ探報しております!
『SCFEDイベのスタジオ探訪記 第5回:ワーナーミュージック・マスタリング』 >>>>記事本編はコチラ
Sales
2023/10/16
【1枚無料】GRACE design m908の購入でオプションカードが付いてくる期間限定キャンペーンが開催中!
10月16日から11月末日までにGRACE design m908 モニターコントローラーをお買い上げの方に、 もれなくm908オプションカード1枚をプレゼントする期間限定キャンペーンが開催されました!
GRACE design m908は、ステレオからサラウンド、Dolby Atmosや360 Reality Audioといった最大24chまでのイマーシブオーディオフォーマットに対応するモニターコントローラーとして、国内外のプロフェッショナルスタジオで採用されています。
標準では、AES3、TOSLINK、S/PDIF、ADATといった合計68chのデジタル入力、16chのバランスアナログ出力と、24chのデジタル出力を搭載していますが、オプションカードによる拡張でADの増設やDante, DigiLink, Ravenna/AES67といった今や大規模システムには欠かせない入出力の追加が可能! スタジオの用途に合わせたカスタムと、様々な入力ソース、モニタ環境を瞬時に切り替えられる利便性が好評のモニターコントローラーです。
そんなm908を今購入された方全員に、お好きなオプションカードを1枚プレゼントするキャンペーンとなっています!1枚税込149,600円のオプションカードが無料でついてくる、m908を導入する絶好の機会をお見逃しなく!
GRACE design / m908
販売価格:¥1,507,000 (本体価格:¥1,370,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
キャンペーン詳細
内容:期間中にGRACE design m908 サラウンド/イマーシブ・モニターコントローラーをお買い上げいただくと、お好きなm908オプションカードを1枚無料で差し上げます。
期間:2023年10月16日~2023年11月末日
プレゼント対象オプションカード:
・8ch AD Option
・Dante Option
・Digilink Option
・Ravenna Option (各種販売価格 ¥149,600)
キャンペーン詳細:https://umbrella-company.jp/contents/grace-design-m908-optioncard-promotion/
m908は特にイマーシブ対応スタジオなど大規模なシステムで活躍するプロフェッショナル・モニターコントローラーです。導入やシステム構築のご相談はROCK ON PROにお任せください!
ROCK ON PROのm908導入事例もぜひご参考に!
https://pro.miroc.co.jp/works/imagicatakeeshiba-proceed2022/
https://pro.miroc.co.jp/works/avexr-studio-proceed2022-23/
https://pro.miroc.co.jp/works/imagica-sdi-studio-proceed2020/
Sales
2023/10/16
バウンス清水の!皆さんの夢を実現するAVID目的別ソリューション!
Rock oNでは皆さんの夢を実現するAVIDのソリューションを多数ご用意しています!また高額お見積りでも安心の18回無金利や24回超低金利もご利用可能です。ぜひRock oNスペシャリストにご相談ください!
◎16ch ノーレイテンシーレコーディングセット
■構成製品
・Pro Tools | Carbon
・Pro Tools | Carbon Pre
・[AVB-TB] Thunderbolt AVB GE Adapter for Macs
■こんな方にオススメ!
スタジオみたいにPro Tools でレイテンシーなくレコーディングしたい!
■ここがポイント!
Carbon Preで拡張することにより16chマイクプリつきのレコーディングシステムが構築可能!
HDXシステムを組むより安く、Pro Tools ノーレーテンシーレコーディングシステムをGETできる!
■これが出来るようになる!
スタジオの様に録音したいけどHDXシステムは高くて導入するのが難しい、そんなあなたもCarbon とCarbon Preでスタジオと同等レベルの16chのレコーディングができます!
このシステムでドラムレコーディングシステムが個人で持てる!!
◎イマーシブオーディオミキシングセット
■セット① 構成製品
・MTRX Studio
・Dante Virtual Soundcard
・DB25-XLRM DigiSnake 4’ x2
■セット② 構成製品
・MTRX
・DA8 x2
・Pro Tools | MTRX 64 channel IP Audio Dante Module
・Dante Virtual Soundcard
・DB25-XLRM DigiSnake 4’ x2
■こんな方にオススメ!
Dolby Atmos、360 Reality Audioなどのイマーシブオーディオミキシングをスピーカーで始めようとしている方。
■ここがポイント!
スピーカーへの多Ch OUT、モニターコントローラーが同時に手に入るMTRX STUDIO / MTRXでストレスなくミキシング環境をシステムアップ!HDXを使わず、Dante Virtual Soundcardを使いDanteでルーティングすることによってコストを大幅ダウン!
■これが出来るようになる!
マルチチャンネルのスピーカーを扱う場合、モニターコントロールとキャリブレーションをどこでするかが課題になります。MTRXシリーズなら1台で全てができるので、ストレスフリー!
◎Next Level from HD I/Oセット
■構成製品
・MTRX
・AD8 x2
・DA8 x2
・Pro Tools Ultimate Perpetual Annual Electronic Code – UPGRADE
■こんな方にオススメ!
現在 HD I/Oを使用している方、以前よりお安くMTRXに乗り換えできる!!
■ここがポイント!
16 in/16outのMTRXへHD I/Oから以前よりお安く更新できる!Pro Tools のVerも新しくして心機一転!!
■これが出来るようになる!
拡張性と高密度新世代サウンドこそMTRXの醍醐味!HD I/Oは過去の時代のI/Oと言えるかもしれません。令和を生き抜くサウンドはMTRX以上が必要でしょう!今こそ乗り換えのファイナルチャンスです!
◎スタジオパーフェクトセット
■構成製品
・Pro Tools HDX Core with Pro Tools | Ultimate Perpetual License NEW
・iLok 3
・MTRX II
・AD8 x2
・DA8 x2
■こんな方にオススメ!
新規でPro Tools HDXシステムを導入したい方。新設スタジオを作る予定の方。
■ここがポイント!
HDXシステムが初めての方でもRock oNならモジュールインストール作業のアシストなど不安要素を解消できます!
■これが出来るようになる!
なんと言ってもノーレーテンシーレコーディング!商業スタジオはやはりHDXシステムの導入がベストでしょう!発売したばかりのフラッグシップI/Oと組み合わせて、他と差をつけよう!
Rock oN 来店予約はこちら
NEWS
2023/09/26
Rock oN 渋谷店にて360VME測定デモを開始!
今年7月に弊社MIL Studioにて測定サービスの運営を開始し、既に体験された方々からは驚きの声をいただいているSONY 360 Virtual Mixing Environment(360VME)。今までもMIL Studioでの体験会は開催してきましたが、この度Rock oN Company 渋谷店で測定デモのご案内を開始します!
今までの体験会には参加できなかった方も、Rock oN渋谷ならいつでも体験・案内が可能になります。気に入っていただければ、その場でMILでの測定サービス購入も大歓迎!またRock oN渋谷ならではのデモとして、店頭にある様々な種類のヘッドフォンによる比較なども対応可能。VME対応ヘッドフォン以外ではどれほどの精度なの?という疑問をお持ちの方も是非一度お越しください。
測定デモは、Rock oN渋谷リファレンスルームにてご体験いただけます。レコーディングスタジオクオリティでの視聴を可能とするため株式会社SONAによる音響調整を行なった、Focal CI 100 ICWをサラウンド4本、トップ4本常設の7.1.4ch Dolby Atmos環境です。
※ 店頭での測定デモは予約制とさせていただきます。
ご希望の方はRock oN Company 渋谷店 03-3477-1756 まで、お気軽にご連絡ください。
◎ Rock oN Company 渋谷
営業時間:12:00-19:00(日曜 臨時定休)
住所:〒150-0041 東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツ1F
TEL:03-3477-1756
360VME測定に関するお問い合わせや、イマーシブ制作環境のご相談などはROCK ON PROまで!
https://pro.miroc.co.jp/2023/07/13/360vme-launch/
https://pro.miroc.co.jp/solution/360vme-proceed2023/
https://pro.miroc.co.jp/headline/sony_360-vme_report/
NEWS
2023/09/22
Pro Tools 2023.9リリース ~ Pro Tools Sketchが新登場!
Pro Tools 2023.9がリリースされました。最新の音楽制作ワークフローに対応した作曲機能であるPro Tools Sketchウィンドウが新たに搭載されます。
また、今回のアップデートに伴い、待望のM2 Macへの対応が発表!サポートされる各種ハードウェアについては、こちらの記事でまとめております。
さらに、Pro Tools 2023.9のリリースと同時に、こちらも待望の永続ライセンスの新規販売が再開、そして、年間サポートプランの更新と再加入が統合されました。
こちらも、詳細は別ページにまとめてありますので、合わせてご確認ください。
有効なサブスクリプションまたはアップデート+サポート・プランが有効期間中の永続ライセンスをお持ちのすべてのユーザー様は、最新バージョンPro Tools 2023.9をAvidアカウントからダウンロードしていただくことが可能です。
主な新機能
Pro Tools Sketchウインドウ追加、無償iPad版Pro Tools Sketchも同時リリース
従来の編集ウィンドウとミックスウィンドウに加えて、第三のウィンドウとなるPro Tools Sketchウィンドウが追加されました。
Pro Tools Sketchクリップベースでノンリニアな楽曲制作をおこなうことが可能な作曲用ウィンドウ。「Scene」と呼ばれるシーケンスを作成し、それらを自由にリピートしたり繋ぎ合わせたりすることで、まさにスケッチをするように、楽曲制作のアイデアをすぐに形にすることが可能になります。
Pro Tools Sketchは、Pro Toolsの全てのバージョン(無料のPro Tools Introを含む)で利用できる新しいウィンドウです。
Sketchウインドウ追加により、Pro Toolsの音楽制作ワークフローは拡張され、世界クラスのレコーディング、編集、ミキシング機能にノンリニアな制作環境が追加されます。
無料のiPadアプリも別途入手できます。
Pro Tools Sketchの詳細はこちらのAvid Blogでも紹介されています。
Pro Tools 2023.9のリリースに合わせ、そのSketchウインドウで対応している全ての機能並びに無償で利用可能なサウンド・ライブラリーを搭載したPro Tools Sketch iPad版もリリースされます。Pro Tools Sketch iPad版は、Apple App ストアで無償にて入手いただけます。
Sketchで作成したデータは、Pro Tools 2023.9(以上)のSketchウインドウで、そのまま開くことが可能、より完成度を高める為、Pro Tools上で制作作業を継続できます。
Pro Tools Sketch iPad版の詳細はAvid WEBサイトのこちらのページでもご確認いただけます(英語)。
Pro Tools Sketch 基本機能
最大16トラックと事実上無制限のシーンをサポート
1GB+ループとサンプルライブラリ
数十のインストゥルメントサウンドとプリセットを備えたPlayCellおよびSynthCellソフトウェアインストゥルメント
9つのエフェクトプロセッサ
オンボード・オーディオおよびMIDI編集ツールと統合ミキサー
Pro Tools Sketch FAQ
Pro Tools Sketchはどうやって入手できますか?
Pro Tools 2023.9以上の場合は、新たなSketchウインドウとして搭載されており、iPadアプリの場合はApple Appストアにて入手できます。
Sketchは、どのPro Toolsに搭載されますか?
Pro Tools Introを含む、全てのバージョン2023.9以上のPro ToolsにSketchウインドウとして搭載されます。
Android版のPro Tools Sketchはありますか?
当初のリリース時は、デスクトップのPro Tools (Mac/Windows) アプリケーション並びにiPadアプリのみとなります。
iPhone版及びAndroid版は、将来的な対応を予定しています。
Pro Tools Sketchは無償ですか?
Pro Tools Sketch iPad版は無償です、また、無償版のPro Tools Intro Mac/Windowsアプリケーション上にもSketchウインドウは搭載されています。
Pro Tools Sketchは Pro Tools毎に機能に違っていますか?
いいえ、SketchはiPad版及びSketchウインドウともに同じ機能です(16トラック及び事実上無制限のシーン)。
Pro Tools上のEdit/Mixウインドウにデータを移行させた後は、それぞれのPro Toolsの機能を利用いただけます。
Pro Tools Sketchのファイルフォーマットは何ですか?
Sketchファイルは.ptsketch拡張子を使います。
Pro Tools Sketch iPad版で作成したデータは、どうやって他のPro Tools SketchまたはPro Toolsに持っていくのですか?
Sketch上で作成したファイルを、iCloud等のクラウドサービスまたはEmail等で送信し、他のiPadやPro Toolsで開く事ができます。
Sketchファイルをデスクトップで直接開くには、Pro Tools 2023.9以上が必要となります。
Pro Tools Sketchをエクスポートした際、使用した全てのコンテンツ(ループやサンプル)も一緒に書き出されますか?
はい、Sketchファイルは、Pro Toolsセッション・ファイルの構造とは異なり、関連する全てのファイルが1つのSketchファイル内に含まれる形で保存/書き出されます。
Pro Toolsセッション上では、Sketchウインドウはどのように連携するのですか?
ノンリニア及びリニアなワークフローの両方を使いながら作業したい場合は、Sketchをリニアなタイムラインを持つPro Toolsとシンクさせる形で作業していくことができます。
Sketch での作業を完結後、Pro Toolsのリニアなタイムラインに移行して作業したい場合は、任意または全てのSketch上のクリップをPro ToolsのEditウインドウ内のタイムライン上にドラッグ&ドロップしてデータを移行させることができます。以降は、使用するPro Toolsが持つ、全ての編集/ミックス機能を使用し楽曲を完成させることが可能となります。
1つのSketchファイルを、複数のPro Toolsセッションに対して”ピン留め”する事も可能です(Sketchウインドウ右上にあるピン・ボタンを使います)。これにより、Pro Toolsセッションを開いた際に、ピン留めしたSketchファイルが自動的に開くようになります。
Pro Tools Sketchに必要最低動作システム条件はどうなりますか?
Pro Tools Sketch iPad版の動作には、iPad OS16以上が必要です。
Pro Tools 内のSketch ウインドウは、使用する各Pro Toolsの必要動作環境に準拠します。
セッション選択範囲のエクスポート機能 (Pro Tools Studio & Ultimate のみ)
タイムラインの一部を新規セッションとしてエクスポートできるようになりました。新しい「コピーを保存…」オプションから「選択されたタイムライン範囲のみ」にチェックを入れて行います。
大規模なセッションを分割したり、その一部のみをリミックスしたい場合などに、より直感的な操作で求める結果を得ることができるようになりました。
プラグイン幅のフィルタリング (Pro Tools Studio & Ultimate のみ)
Pro Toolsがより多くのマルチチャンネル・フォーマットに対応するに従い、トラック幅の違いによって、同じプラグインが何個もプラグイン・ウィンドウに並ぶということが起こってしまっています。
これを解消するために、Pro Tools 2023.9からはプラグインが4つ以上の幅を提供する場合、それらの選択肢がサブフォルダに配置されるようになりました。
ドラッグ&ドロップによるプラグイン・スロットのリオーダー機能
これは待ち望んでいた方も多い機能ではないでしょうか!?プラグインのインサート位置をドラッグ&ドロップによって変更/入れ替えることが可能になりました!Pro Tools Intro、Artist、Sudio、UltimateのすべてのPro Toolsで使用可能です。
その他の新機能
ダッシュボードがPro Tools Sketch対応に
編集選択範囲を次のマーカーレーンまたはルーラーに移動するキーコマンドが追加され、マーカーを含むトラック間だけをすばやく移動
キーボードショートカットの特殊ペーストで、マーカーをマージ
I/O設定のデフォルト・パスのリストを統合
I/O設定のインプットタブに新しくパス順リストが追加され、Dolby Atmos Rendererからのリレンダリング・リターンに合わせたパスを簡単に作成
各新機能のより詳細な内容はこちらのAvid Blogをご覧ください。
待望のM2チップ搭載Macをサポート!
Pro Tools 2023.9にて、Pro Toolsが待望のM2チップを搭載した最新の各種Macへの対応を果たしました!
まさに待望と言える今回のアップデート。最新のOS/ハードウェア、さらに外部Thunderboltシャーシへの対応状況へのリンクはこちらの記事にまとめております。ぜひ合わせてご覧ください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-get-to-support-apple-silicon-m2-mac/
音楽的なアイデアをより直感的に実現することができるPro Tools Sketchの登場で、楽曲制作をメインとするユーザー様にとっては非常に使いやすくなったPro Tools。作曲からミックスまでをひとつのDAWで完結できるワークフローは、待ち望まれていたソリューションではないでしょうか。
新規導入はもとより最新バージョンへのアップグレードのご相談、スタジオ構築やシステム設計のお問い合わせもお気軽にお寄せください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-perpetual-new-license-get-revival/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-get-to-support-apple-silicon-m2-mac/
Review
2023/09/13
SOUNDTRIP 2023 / media HYPERIUM / Immersive Sound@ L.A.
2023年のグラミー賞でBest Immersive Audio Albumを受賞した、Stewart Copeland, Ricky Kej & Herbert Waltl「Divine Tides」。その制作を担当したプロデューサー / Herbert Waltl 氏とエンジニア Eric Schilling 氏にインタビューの機会を得た。イマーシブオーディオに対しての向かい合い方、ミキシングに対する考え方、制作者目線での貴重なコメントをいくつもいただくことができたのでご紹介していきたい。
ステレオとイマーシブで2度のGrammy Winnerに
長年にわたり、音楽業界に多大なる足跡を残しているミュージシャンであり、プロデューサーのHerbert Waltl 氏と、グロリア・エステファンを始め、ラテン、ポップスなど多彩な音楽の制作に携わるエンジニアのEric Schilling 氏のお二人にHerbert Walti氏が1996年に立ち上げたmedia HYPERIUMでお話を伺った。まずは、お二人のこれまでの実績、今年のグラミー賞を受賞した作品について振り返る。
📷写真左よりROCK ON PRO 前田洋介、Herbert Waltl 氏、Eric Schilling 氏、株式会社メディア・インテグレーション北木 隆一
Herbert Waltl 氏は3度のグラミー賞受賞、3度のグラミー賞ノミネート、数々のプラチナディスクの制作に携わったプロデューサーである。テクノロジーに精通し、新しいフォーマットへの積極的な取り組みでも知られる。1996年にmedia HYPERIUMを立ち上げ、サラウンド作品の可能性を求めて様々な研究を行ってきた。その後、イマーシブオーディオにも積極的に取り組み、Ray Charles / Lady Gaga / Pink / Sting / Jason Derulo / Sheryl Crow / Chick Corea / S.F. Symphony / BR Symphony Orchestra / Royal Concertgebouw Orchestraなどの作品に携わっている。グラミー賞でもBest music DVD Awardなどにノミネートされていることからわかるが映像関連の制作の評価も高く、映画のサウンドトラックなどの制作も行っている。まさに、サラウンド〜イマーシブと音楽フォーマットの進化とともに歩み続けている、技術をしっかりと理解したプロデューサーと言えるだろう。
Eric Schilling氏は、アメリカのトップエンジニアの一人。2000年以降に4度のグラミー賞受賞、7度のラテングラミー賞受賞。代表的な作品としては、Gloria Estefanとの16枚のアルバムが挙げられる。それ以外にもNatalie Cole / Jon Secada / Elton John / Natalie Imbruglia / Shakiraなどのアルバムを手掛けている。ラテン音楽のエッセンスを取り入れたポップスに代表作が多い。サンフランシスコ出身だが、伝説的なプロデューサーBill Szymczykとの出会いから、彼のフロリダのスタジオBayshore studioへと移籍、そこで上記したようなマイアミ発の数多くのヒット作品に携わるようになる。現在も自宅と自身のスタジオはマイアミ、オークランドにある。近年はAlicia Keysのアルバムの360 Reality Audioフォーマットへのリミックス作業を、彼女のメインエンジニアであるAnn Mincieliを中心に、George Massenburgらと今回インタビューで伺ったmedia HYPERIUMで行った。他にも数多くのイマーシブ作品に関わっている。
Divine Tides / Stewart Copeland, Ricky Kej
2023 Grammy Winnerとなった「Divine Tides」は、Stewart Copeland / Ricky Kej & Herbert Waltlによる、様々なカテゴリーの音楽を集めた宝箱のような作品。クラシック、ラテン、ゴスペル、そのベースにはRicky Kejの出身であるインド音楽など多種多様なエッセンスが詰まっている。元The PoliceのドラマーStewart Copelandは近年映画のサウンドトラックの制作を精力的におこなっており、さらにはオーケストラ向けの楽曲や、バレエ音楽、オペラなども手掛けている。そんな世界観にインド出身の新進気鋭のミュージシャンRicky Kejのエキゾチックなエッセンスをベースとしたメロディー、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団によるオーケストレーション、Southan Gospel(南アフリカをベースとするゴスペル)でグラミー賞ワールド・ミュージック部門の常連であるSoweto Gospel Choirによるハーモニー、Rasika Shekarなどインド出身のミュージシャンによるコラボーレーションが重ねられ、2021年にリリース。そして2023年の本年にグラミーを受賞した作品だ。
これを、Herbert WaltiとEric Schillingがmedia HYPERIUMでイマーシブにミキシングした。この作品は、ステレオ音源で聴いてみていただいてもわかるように広大な世界観を持つ。Stewart Copelandによる空間が拡張していくようなパーカッションサウンド。もともとイマーシブオーディオのために作られたような世界観を持つこのアルバムが、二人によるイマーシブミックスでその本来の姿を現しグラミーを再び受賞している。ステレオでの新譜とイマーシブミックスが2度にわたりグラミーを受賞したのはかなり珍しいケースなのではないだろうか。
7.2.5 + 4B、media HYPERIUM
インタービューをおこなったmedia HYPERIUMはロサンゼルスの南、ロングビーチの西にある小高い丘陵地Rolling Hillsにある。高級住宅地であるこの場所の一角にあるオフィスビルにこのスタジオはある。プール付きの豪邸が立ち並ぶ本当に静かな住宅街の商業エリアに突然スタジオがある、といったところだ。このスタジオにはミキシング用の部屋があるのみで、別の場所でレコーディングされたものをここでミキシングしているそうだ。
スピーカーはNeumannが選択されている。イヤーレベルのスピーカーはKH420、解像度が高く、大音量でなくともサウンドの迫力を感じることができる素晴らしいモデルだと絶賛されていた。イマーシブではスピーカー数が多いため、すぐに音圧過多になり疲れてしまうが、少し控えめの音量でもしっかりとサウンドを確認できるNeumann KHシリーズはお気に入りのモデルだということ。配置されたスピーカーのレイアウトは7.2.5 + 4B。イヤーレベルに7本のKH420、トップレイヤーにはKH310、ボトムはKH120とNeumannのKHシリーズで統一されている。ちなみに、特別な音響処理がなされている訳では無いオフィスとして作られたこの部屋の響きを気に入って使っているということだが、なぜこのようにバランスの取れたサウンドがするのかはあまり考えたことはなく、スピーカーを置いて鳴らしてみたら良い音がした、それがすべてだとシンプルかつ明確な答えをいただいた。
📷オフィス施設の一室に作られたスタジオ。写真の通り、水平面に7chのNeumann KH420、上部にはSONY 360 Reality Audioに合わせ仰角30度に設置された5chのKH310と、Dolby Atmosに合わせて仰角45度に設置された4chのKH150。壁面には厚手のカーテンが張り巡らされてはいるが、吸音・遮音などは行われていない。聴音用のパネルが左右に設置されているのみのシンプルなスタジオである。
音響空間の再現にとって必然の配置ができる
さてここからは、どのようなお話を聞くことができたかお伝えしていきたい。映画音楽にも関係があった二人はサラウンド、そしてDolby Atmosなどのイマーシブフォーマットに以前より取り組まれていた。ステレオに対しての可能性の広がりをフォーマットの拡張とともに感じ、それぞれのフォーマットで作品をリリースしている。
中でも360 Reality Audioは、完全な360度 4πの空間を持つフルオブジェクト指向のフォーマットということでいち早くその先進性、可能性を感じ取って作品制作に携わってきている。音楽の表現として下方向が加わったということは大きいと言う印象を持たれていた。確かに下から聴こえてくる直接音というものは少ないかもしれないが、音響空間の再現にとっては非常に重要であるということを感じている。低音の表現に関しても、やはり音を配置できる空間が広いことで柔軟性が上がるというよりは必然性を持って音の配置が行えるようになった、という感覚ということだ。楽曲として、作品として、然るべき位置から然るべき音が鳴る。表現の自由とも言い換えることができるのかもしれないが、その一方で、これまでにそれほど音の配置に悩んだことはない、というコメントは印象的であった。普段の暮らしで接している音空間、それこそが4πの空間でありそれを再現する。その中に音楽としての刺激、感覚を盛り込んでいくという作業は非常に楽しい作業だとのこと。Dolby Atmosとの同時制作の場合にも、360 Reality Audioから制作をして順に再現できる空間を狭くするという手法をとっているということだ。
📷左手後方には機器ラックがある。この角度から見ると上部のスピーカーの位置を各フォーマットに合わせて設置されているのがよく分かる。
エンジニアのEric氏は、携わったアーティストのライブパフォーマンスのサポートなども行っていることもあり、音楽を生で楽しんでいる環境の音、そんなものまでも再現したという欲求もあるという。それを考えるとイマーシブオーディオは最適なフォーマット、というよりもイマーシブだからこそ会場の熱気のようなものまで伝えることができるようになってくるのではないかと大きな可能性を感じているということだ。アメリカはライブパフォーマンスを楽しむということを非常に重要視するカルチャーがある。ライブを楽しむということは、ミュージシャンのパフォーマンスを楽しむということであり、才能に触れ、それに感動するということでもある。音楽という一瞬にして消えていくパフォーマンスとの出会い、それを非常に大切にしているし、それに対しての対価を惜しまない。そんな文化が根底にあると感じている。
これはヨーロッパでも同様で、ヨーロッパに根付くクラッシク音楽の下地は同じようなところから来ているのではないだろうか。少し脱線してしまうが、アメリカ人の強さは、日本語で言うところの「一期一会」であると筆者は感じている。一度切りの出会い、チャンスをいかにつかめるか?その瞬間にかけるパワーが桁違いに感じられる。いま楽しむと決めたら、その時間は徹底的に恥も外聞もなく楽しむ。瞬間のパワーがすごいから、素晴らしいパフォーマンスに出会ったときの反応もすごい、それが連鎖的に全体の空気となり、さらに素晴らしい音楽、時間、空間を生み出す。遠慮がないといえばそうなのかもしれないが、音楽、エンターテインメントに触れるということにおいて遠慮は必要ないもの。会場の熱気、熱狂をそのまま詰め込んだイマーシブオーディオのアルバムが誕生するのは時間の問題かもしれない。
📷作業デスク前方はこのようになっており、ボトムの3chのKH150の姿が見える。さらに2本KH150が置かれているが、これはボトム・バックサイド用で360RA作業の際に接続して使っているということだ。
音楽の持つ可能性はイマーシブオーディオの誕生により確実に進化する。表現のできるキャンパスが広がったことで、これまでと違う音楽がこれから次々と登場してくるだろう。イマーシブオーディオを楽しむ環境も今はイヤホンやヘッドホンだが、これはアメリカには合っていない。車社会であるがゆえに、カーオーディオへのイマーシブオーディオの普及が重要なポイントになるという。カーオーディオが進化すれば、運転をしながらでも新しい体験、楽しみとしてイマーシブオーディオがさらに普及するだろうということだ。ロサンゼルスのようにどこへ移動するのも車で、そして渋滞も当たり前、1時間程度のドライブは日常茶飯事という環境であれば、カーオーディオというのはひとつのキーワードである。「なんせ、いつも車の中にいるからね、、」と少々うんざりとした表情で話してくれたが、その一方でイマーシブオーディオにおけるリスニング環境の未来については明確なビジョンが見えている様子でもあった。
📷機材ラックには大量のdCsのDAコンバーターが。往年の銘機であるdCsのDAコンバーターを以前より愛用しており、ここでもスピーカーへの出力はこれでDAしているとのこと。作業用のデスク上には、Avid S1が3台並ぶ。やはり作業デスクは前方からの音にとって障害となるので、できるだけコンパクトにまとめている。PCディスプレイを左右に振り分けているのも音の聴こえ方を考えてのこと。MergingのANUBUSはモニターコントローラーとして採用されている。
映画から普及が始まったイマーシブオーディオだが、固定された画面のある映画よりもヴィジュアルの存在しない音楽のほうがより自由であり、可能性が広がっているのではないかという。映画もイマーシブにより映像に描かれた世界の再現性というところに大きく寄与しているのは間違いないし、映像を印象づける強力なインパクトの一端になっている。しかし音にとって、大きな印象の差異を引き起こす映像がないということは、ユーザーそれぞれが音楽を自由に受け取り、それを楽しむことができるということでもある。映画音楽なども手掛けてきたからこそ感じる、音楽としてのイマーシブの可能性。二人のお話からは新たなフロンティアとして音楽表現の手法がより拡がったことを楽しんでいる様子がよく伺えた。
*ProceedMagazine2023号より転載
Review
2023/09/11
SOUNDTRIP 2023 / GOLD-DIGGERS / LAにおけるSONY 360 VMEサービス測定スタジオ
サービス開始時点で世界に3拠点用意されたSONY 360 VME(Virtual Mixing Enviroment)の測定スタジオ。東京 / MIL Studio、NY / The Hit Factory、そしてLAにおける拠点がこのGOLD-DIGGERSだ。 ここではLAのスタジオを実際に訪問し、GOLD-DIGGERSがどのようなスタジオで、イマーシブ制作に対してどのような考えを持っていて、また、VMEというエポックメイキングなサービスをどのように捉えているのか、様々なお話を聞くことができたのでご紹介していきたい。
●メディア・インテグレーション 360VMEサービス概要ページ
●メディア・インテグレーション 360VME測定サービスご案内ページ
●ソニー社:360VME解説ページ
再生された7部屋のレコーディングスタジオ
📷1920年代に建てられた当時の雰囲気を残す外観。この黄色い看板もビキニバー時代のものがそのまま残されているということだ。
まずは、GOLD-DIGGERSがどのようなスタジオなのかをご紹介したい。East Hollywoodにあるこのスタジオは、ホテル、バー、ライブハウスが併設された珍しい営業形態のスタジオである。望むならば日中レコーディングを行い、新曲を夜にライブハウスで披露、そのままホテルに宿泊、といったこともできてしまう他に類を見ないスタイルだ。このスタジオがあるのはロサンゼルスを東西に貫くサンタモニカ・ブルーバード沿いの1920年代に建てられたという歴史ある建物なのだが、遡るとここで営業していたビキニバーとその上階のホテルがそのスタートとなるそうだ。そして、そのバーの後ろにあった若いミュージシャンが多く利用していたというリハーサルスタジオが、現在のレコーディングスタジオの原型となっている。
ただし、若いミュージシャンと言ってもここはロサンゼルス。デビュー前のThe Doors、Jimi Hendrix、Slayer、Hollerwood Rose(Guns'n Rosesの前身)などが利用していた場所だったという。残念ながら1990年台にはほとんど廃墟のようになっていたそうだが、これらの設備に目をつけ、手直しを行い最新の設備を持った7部屋のレコーディングスタジオと、ライブバー、そしてブティック・ホテルという現在の営業スタイルに再生させている。歴史のある場所、建物、そういったものを大切に次の時代にあった施設へと生まれ変わらせていく。アメリカらしい伝統の引き継ぎ方を感じさせるスタジオだ。ちなみに、サンタモニカ・ブルーバードに向かって掲げられている看板は、オープン当初のビキニバーのものがそのまま使われているそうだ。
📷1Fにあるライブスペースのバーカウンター、これも歴史を感じさせる重厚さ。ライブスペースのステージも照明器具も球体状のシャンデリアと洒落た作り。
360RA & Atmosコンパチブル
📷後方を振り返ると上から、Atmos用、360RA用、水平面、ボトムと4層のスピーカーが配置されているのが分かる。
GOLD-DIGGERSは7部屋のレコーディングスタジオを持つが、そのうち2部屋がイマーシブ対応となっている。今回じっくりと見させていただいたStudio 6はSONY 360 Reality Audio 5.0.5 + 4BとDolby Atmos 9.1.4両対応のスピーカーシステムを持つ。写真からもわかるように天井にSONY 360 Reality Audio用の5chのスピーカー(仰角30度)と、Dolby Atmos対応の4chのスピーカー(仰角45度)がそれぞれ独立して用意されている。この仰角の違いは音響表現にかなりの違いをもたらす。特にリアルレコーディングした音源を再現しようとした際に、音場のつながりなどに大きな影響がある。また、下方向にあたるボトムスピーカーを4ch導入しているのも特徴的。前方向だけではなく、全天周の表現ができる360 Reality Audioをしっかりとスピーカーで再現するためには、ボトムスピーカーが後方にもあったほうが効果的ということだ。確かに真下に音像を配置した際に、ボトムスピーカーで後方に配置したものがないとイヤーレベルで後方のソースが鳴ってしまう。下方向のものはしっかりとボトムスピーカーからだけ鳴らしたい、ということを考えれば理にかなったスピーカー設置である。
この部屋では、音楽作品の制作はもちろんだが、East Hollywoodという土地柄から映画のサウンドトラックの仕事も多いという。中でもイマーシブ制作への需要は高く、こちらのStudio 6は人気の高い部屋だということだ。また、写真を見ると黄色い光が強く差し込んでいることがわかる。得てして外部とは遮断された穴蔵のような空間になりがちな制作スタジオだが、こちらでは屋根から光を導くミラートンネルが用意されていて、外光をスタジオにいながら浴びることができる仕掛けがあった。晴天率の高いロサンゼルスらしいギミックだ。
📷元々ボーカルブースであった部屋をマシンルームとして使用している。フロントのL,C,Rch以外はパッシブのスピーカーとなるためアンプもこちらに収められていた。
ヘッドホンで高い精度でのプリミックスを
肝心の360 VMEの話を聞いてみると、これは本当にエキサイティングな出来事だと興奮気味に話していただいた。コマーシャルベースのスタジオということもあり、自分たちのスタジオのファシリティー、そのサウンドを持ち帰ってもらうことができるこの360VMEは革命的な出来事だという。前にも述べたようにイマーシブ制作の需要は高く、部屋が埋まってしまっているために受けられない仕事もあるということだが、360VMEサービスを使えば他の部屋でもヘッドホンでかなり高い精度でのプリミックスを行うことができる。作業の最後に一日だけスピーカーの設置されたStudio 6で作品を仕上げ、完成させるといったこともできそうだ。音楽にとって高い可能性を持つイマーシブフォーマットでの制作を停滞させることなく、逆にアクセラレートすることもできる素晴らしい技術だと表現していた。
📷今回スタジオをご案内いただいたチーフエンジニアのEd McEntee氏と筆者。
イマーシブの持つ表現力、空間の広がりは全く新しいもので、2つの大きな可能性を感じている。一つは、従来の録音というサイエンスが追い求めている空間をそのままキャプチャーして再現(「リプロデュース」という言葉を使っていたのが印象的であった)するもの。音響においてのキャンバスが、やっと実世界と同等の広がりを持ったことで実現できる高い精度でのリプロデュース。これは、今後さらに高いレベルでの制作物が登場するのではないかという期待とともに、自身もそんなチャレンジを行ってみたいと熱く語っていただいた。
もう一つは、新しい4π空間というキャンバスに対して新しいアートを誕生させるアーティストが出現してくるのではないかという期待。GOLD-DIGGERSはサイズの異なるスタジオを複数用意することで、予算の大小に関わらずアーティストを受け入れることができるようになっている。新進気鋭の才能あふれるアーティストの受け入れも積極的に行っており、その中から新しい音楽が生まれてくることに期待しているということだ。過去のメジャータイトルのイマーシブでのリミックスも多く行われているが、やはり思い出とともにあるステレオミックスの感覚を捨てられないでいる作品も多い。もちろん、イマーシブに触れるきっかけとしてリミックスという手法は素晴らしいが、その魅力を100%伝えられているかというとそうではなく、もっと素晴らしいものが生み出される可能性を秘めていると感じているそうだ。
STUDIO DIGEST !!
📷チーフのEd氏が一番のお気に入りだというStudio2。ビンテージのNeve8014が鎮座する。MicPreは最初の8chがNeve 33102、次の8chは1073という仕様。センターセクションには2254Eが2ch分埋め込まれている。その上にはBrentAvirilがMicPreとしてノックアウトしたことで有名になったラインアンプ1272が並ぶ。Neve好きにはたまらない仕様にカスタムされている。別スタジオのStudio1にはAPI 2448 32chがある。
📷もう一つのイマーシブ・ミキシング・ルームであるStudio 9(7,8は欠番)。こちらはPMC6をL,C,Rchに9.1.4ch仕様の部屋となる。
📷収録のためのSoundStage。楽器庫かと思うほどの充実したビンテージアンプ、機材のコレクションを備え、すべてのスタジオの共用ブースとしてコントロールできるように設計されている。
📷マイクコレクションの一部、こちらにはAKG D12がズラリ。マイクのコレクションは新旧問わずに評価の高いモデルが取り揃えられている。
📷こちらもビンテージのAKG C12A。Telefunkenと並び銘機となるAKG C12の後継機、C414シリーズとの端境期に生産されていた製品。そのサウンドはC12の型番通りの音が出る。
360 VMEサービスで、イマーシブ作品を作る敷居はぐっと低くなる。GOLD-DIGGERSのStudio 6をヘッドホンとともに持って帰ってもらうことで、イマーシブ制作のホームスタジオとしての価値も高まる。制作のペースも上がることが予想できる。サービスインが待ちきれないということが本当に強く感じられた。今後は、東京のMIL Studio、NewYorkのThe Hit Factory、そしてLAのGOLD-DIGGERS。このスタートラインに立っている3つのスタジオでも連携してノウハウを積み重ね、360 VMEをイマーシブ音楽制作の起爆剤にしていきたい。
*ProceedMagazine2023号より転載
Review
2023/08/30
Avid Pro Tools | MTRX II / Thunderbolt 3オプション〜期待を裏切らないフラッグシップ機の更新〜
2016年の発表以来、Avid製オーディオI/Fのフラッグシップとして多くの現場で愛用されてきたPro Tools | MTRX。AvidはNAMM Show 2023でさらなるブラッシュアップを施した後継機「Pro Tools | MTRX II」と、フラッグシップ機をNative DAWで使用するためのThunderbolt 3 オプションモジュールを併せて発表。大注目の新製品についてその機能を概観するとともにシステムアップ上の利点を考えてみたい。
●PRO TOOLS | MTRX ll / ¥1,089,000(本体価格¥990,000)
MTRXをベースに新たなFPGAを用いて、オリジナルと同等の音質を維持しつつ開発された MTRX II 。内蔵SPQ、Dante 256 Ch内蔵(Dante 128 Optionも併用可能)、マトリクスルーティングは4096 x4096へ。イマーシブ時代におけるミキシングおよびモニタリング・キャパ シティーの拡張を実現している。従来のMTRX Optionカードと完全互換を持ち、アナログ入出力を全8スロットへフルに使用することも可能。 Avidのフラッグシップモデルがいまリロードされた。
Pro Tools | MTRX ファミリーがNative環境で使用可能に!
大注目のThunderbolt 3モジュールに対応
Avid製フラッグシップ・オーディオI/Fとして信頼を寄せられてきたPro Tools | MTRX(以下、「初代MTRX」)。1500 x 1500という大規模なクロスポイントを備えたルーティング・マトリクス、モジュール方式を採用することによる高い柔軟性と拡張性、そして比類なきオーディオクオリティがプロフェッショナルな現場で愛されてきた大きな理由だろう。4月に開催されたNAMM Show2023では、その初代MTRXにさらなるパワーアップを施したPro Tools | MTRX II(以下、「MTRX II」)が発表された。MTRXファミリーの代名詞でもあるルーティングマトリクスの強化や、Dante / SPQの内蔵、アナログI/Oカードの換装上限撤廃など、さまざまな機能強化が図られている。さらに、大注目は同時に発表されたThunderbolt 3オプションモジュール。MTRX IIとMTRX StudioをついにNative環境で使用することが可能になっている。
MTRX II 自体の機能も気になるところだが、ある意味でそれ以上に注目されそうなプロダクトが、MTRX IIと同時に発表されたThunderbolt 3オプションモジュールだ。これは、オプションカードスロットではなく本体にインストールするタイプのモジュールとなっており、MTRX IIとMTRX Studioで使用することが可能。残念ながら、初代MTRXに追加することはできないのでご注意いただきたい。
これまで、Pro Tools | MTRX ファミリー(初代MTRX / MTRX II / MTRX Studio、以下、「MTRXファミリー」)をMac / PCと接続するには、本体ユニットまたはオプションカードのDigiLinkポートを使用するしかなかったが、Thunderbolt 3オプションモジュールを換装することでMTRX IIとMTRX StudioをNative環境でも使用することができるようになる。具体的に言えば、Pro Tools Studio / Artistはもちろん、Steinberg NUENDO、Apple Logic Pro、Presonus Studio OneなどのCoreAudio対応DAWにおけるNative制作環境で、AvidフラッグシップI/Oを使用できるようになるということだ。特に、ver.2022.4でマルチチャンネル制作に対応したPro Tools Studioを使用したNative環境で、大規模なルーティングとモニタリング機能を備えたMTRXファミリーを使用することができるというのは、ユーザーにとっては大きなトピックではないだろうか。
●Thunderbolt 3 Module ¥135,080(本体価格¥122,800)
📷MTRX IIとMTRX Studioの両製品に対応したThunderbolt 3モジュールがリリース。これによりDigiLink接続によるパワフルなDSP統合環境に加えて、 Thunderbolt 3経由で実現する低レイテンシーなCore Audio環境での柔軟性も実現可能となる。Thunderbolt 3オプション・モジュール経由で、MTRX IIでの使用時に256ch、MTRX Studioの場合では64chにアクセスが可能、他のアプリケーション等をDADmanソフトウエアにルートし、より先進的なDolby Atmosワークフローが実現できる。
Avidの発表によれば、Thunderbolt 3オプションはHDXとの併用が可能。DADmanのルーティングマトリクスに、I/OソースとしてHDXとは別にThunderbolt 3の入出力が見えるようになり、これらをMTRX上でルーティングすることができるようになるとのこと。イメージとしては、従来のDigiLink I/O オプション・カードを使用して複数のPro ToolsシステムをMTRXに接続する場合に近いものになる。
この機能を利用することで、メイン機とは別のマシンにインストールされたCoreAudio対応DAWとの間で信号のやりとりができるのはもちろんだが、大きな期待が寄せられるのが、MTRX II / MTRX Studio 1台で、Pro ToolsとDolby Atmosハードウェア・レンダラー間の信号をやりとりできるようになるのでは!?ということだ。システムにおいてクリティカルな部分となるため、発売開始後に実際の挙動などを実機で検証する必要はあるが、仕様上はこうした構成を取ることが可能となっている。Dolby Atmos制作のシステムアップにも一石を投じる可能性を持ったプロダクトに大いに期待したい。
Dante / SPQ内蔵など、機能面での性能もアップ
初代MTRXの拡張カードの中でも需要が高かった128ch Dante I/OとSPQだが、MTRX IIでは256ch分(@44.1/48kHz)のDante I/Oと、SPQ機能がはじめから本体の機能として内蔵されることになる。Dolby Atmosや360 Reality Audioなどのイマーシブ制作においては、オーディオ入出力もスピーカーシステムも従来よりはるかに大規模となるため、多数のオーディオを伝送できるDanteと、最大1,024のフィルターを追加して音響補正機能を提供するSPQというふたつの機能が本体内蔵になるのは、かなり豪華なアップデートではないだろうか。
ちなみに、初代MTRX用のオプションカードはMTRX IIでも引き続き使用することが可能だ。MTRX IIにビルトインされるDante I/OにはSRC機能がないため、SRCが必要な場合や、さらなるI/O数が必要な場合などは、従来通り128ch Danteカードを追加することで対応することができる。極端な例だが、8スロットすべてにDanteカードを追加した場合、MTRX II 1台で合計1280chのDante信号を扱うことができるということだ。MTRX II に内蔵されるSPQはオプションカードとして初代MTRXで使用できるものと同じ128 EQチャンネル+最大1,024フィルター。MTRX Studioに内蔵されているものとは異なり、SPQの機能をフルに使用することができる。反面、初代MTRXに内蔵されていたAES/EBU I/Oは廃止されてしまった。今後はAES/EBU信号を扱いたい場合には、オプションカードを追加することで対応することになる。
オプションカードに関してもうひとつ嬉しいアップデートは、アナログI/Oインストール数の上限が撤廃されたことだ。初代MTRXではアナログのオプションカードはInput / Output合計で6枚までしかインストールすることができなかったため、Pro Toolsシステムを大規模なアナログコンソールと接続する場合などにネックになってしまうことがあった。MTRX II ではこの上限がなくなり、8つのスロットすべてにアナログI/Oカードをインストールすることができるようになっている。
さらに、MTRXファミリーの特徴であるルーティングマトリクスとモニタープロファイル機能にも大幅なパワーアップが施されている。ルーティングマトリクスのクロスポイントは従来の1500 x 1500から、3倍近くとなる4096 x 4096に増加。モニタープロファイルで使用できる内部サミングミキサーは256 × 32から512 × 64に増加する。このアップデートにより劇場用のDolby Atmos制作においても十分な数のチャンネルを扱うことができるようになる。
初代MTRXと同様、システムのコアデバイスとしての活躍が期待されるMTRX II。AvidフラッグシップI/Fとしての期待を裏切らない仕様だ。また、待望のThunderbolt 3モジュールもついに発表となり、こちらも今後の制作環境に大きな柔軟性をもたらすことが期待される。やはり、ハードウェアで開発される新製品は、制作システムを構成するにあたりに大きなインパクトを与えることになる、今からその登場を心待ちにしたい。
*ProceedMagazine2023号より転載
Sales
2023/08/09
Nuendoが50% OFF!Steinberg『Summer Deals』開催中!!
世界中の映画 / TV のポストプロダクション、ゲームオーディオ、イマーシブサウンドのプロフェッショナルに選ばれる、業務用DAWの最高峰のひとつSTEINBERG Nuendo。Dolby Atmos関連機能の内蔵や、かゆいところに手が届くユーティリティの充実など、最先端の機能をいち早く取り入れる開発姿勢に定評があります。
最新版であるNuendo 12と、Nuendo 11からのUPGライセンスが期間限定で50% OFFとなるキャンペーンが実施中です!
STEINBERG 『Summer Deals』
期間:2023年8月9日 (水) ~ 9月7日 (木)
Nuendo 12 パッケージ版
Sale特価 ¥55,000 50%OFF!! (通常販売価格 ¥110,000)
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Nuendo 12 ダウンロード版
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Sale特価 ¥13,750 50%OFF!! (通常販売価格 ¥27,500)
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Nuendo 12 Update from Nuendo 11 ダウンロード版
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Pro Toolsと人気を二分するプロフェッショナルDAWを、この機会にぜひ手に入れてください!!その他、システム構築のお問い合わせなどはROCK ON PROまでお気軽にお問合せください。
NEWS
2023/07/27
【データシート更新】Avidが新製品を発表!Pro Tools | MTRX IIとMTRX Thunderbolt3オプションカードが登場!!
2023.7.5 追記
待望のMTRX II 初回分が入荷いたしました!発表後、早期にご予約いただいた皆さまへ順次発送予定のほか、Rock oN Company 渋谷店、梅田店へ展示機も公開予定です!導入をご検討中の方は是非店頭にて実機をご確認ください!
AvidのフラッグシップI/OであるPro Tools | MTRXにさらなるブラッシュアップとパワーアップを施した後継機種「Pro Tools | MTRX II」が発表されました。
MTRX IIはMTRXをベースに開発され、オリジナルと同等のクオリティを維持しつつ、256ch @44.1/48kHzのDante I/OやSPQ機能が内蔵され、さらに多くの柔軟性や拡張性を備えています。これによりMTRX IIでは、より多くのI/O、ミキシング及びモニタリング・キャパシティーを実現します。
さらに、オプションカードに「Pro Tools | MTRX Thuderbolt 3 Module」が新登場。Pro Tools | MTRX II (256ch)、及び、Pro Tools | MTRX Studio (64ch)をネイティブDAWに接続することが可能になります。
「Pro Tools | MTRX II」および「Pro Tools | MTRX Thuderbolt 3 Module」の発売時期は未定ですが、予約受付は本日より開始しております。
製品画像
Pro Tools | MTRX II
↑Thuderbolt3オプション・モジュール換装時
↑Thuderbolt3オプション・モジュールなし(標準仕様)
Avid Pro Tools | MTRX II Base unit with DigiLink, Dante 256 and SPQ
型番:9900-74279-00
販売価格:¥1,089,000(本体価格:¥990,000)
発売予定日:未定
Rock oN Line eStoreで今すぐ予約>>
MTRX II brochure *クリックで拡大
MTRX II brochure *クリックで拡大
MTRX II brochure *クリックで拡大
MTRX Studio brochure *クリックで拡大
MTRX Studio brochure *クリックで拡大
Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module
Avid Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module
型番:9900-74167-00
販売価格:¥135,080(本体価格:¥122,800)
発売予定日:未定
Rock oN Line eStoreで今すぐ予約>>
MTRX vs MTRX II 機能比較
Thunderbolt3モジュールに対応
MTRX IIと同時に発表されたThunderbolt3モジュールを追加して、HDXシステム環境でなくともAvidフラッグシップI/Oを使用することが可能になります。Pro Tools | MTRXファミリーが持つ柔軟で巨大なルーティング機能やモニタープロファイル機能、比類ないクオリティのサウンドを、ネイティブ環境で実現します。
Caution! Thunderbolt 3 Module は、MTRX Studio/MTRX II 用のオプションとして別売となります。MTRX IIの場合、こちらを追加することで、ネイティブ・ワークステーションを最大256チャンネルの低レーテンシー・モニター環境で接続時可能となります。
MTRX用オプションカードは引き続き使用可能
Dante、アナログ、MADIなど、以前のPro Tools | MTRX用オプションカードは新しいPro Tools | MTRX IIでも使用できます。オプションカード類の製品自体/型番に変更はありません。
256ch分のDante I/Oを内蔵
MTRXではオプションカードの追加が必要だったDante I/Oですが、MTRX IIでは標準で256ch(@44.1/48kHz)のDante I/Oが内蔵されています。
MTRX IIには128ch分のDante I/Oを追加する「Pro Tools | MTRX 128 Channel IP Audio Dante Card」を8枚まで追加できるため、合計で1280chまでのDante信号を扱えるようになります。
Caution! MTRX IIに搭載の256チャンネルDanteは、サンプルレート・コンバージョン(SRC)機能には対応していません。Dante使用時にSRCが必要な場合は、Dante 128オプション・カードを使用してください。
SPQ機能が内蔵に
Pro Tools | MTRXに128のEQチャンネルと最大1,024のフィルターを追加して音響補正機能を提供するSPQ。前モデルのMTRXではオプションカードを追加する必要がありましたが、MTRX IIにはこの機能が標準搭載されるようになりました。
アナログカードの追加上限が撤廃
豊富なバリエーションの拡張カードをベースユニットに追加することで、ユーザーがそれぞれに必要な機能をカスタマイズできることが特徴のPro Tools | MTRXですが、アナログI/Oカードについてはin/out合計で6枚までという制限がありました。
後継機Pro Tools | MTRX IIではこの制限がなくなり、8つのオプションスロットすべてにアナログI/Oカードを換装することが可能になりました。
内部ミキサーが大幅にパワーアップ
Pro Tools | MTRXのもうひとつの特徴が、その名の由来ともなっている巨大な内部ルーティングマトリクスとモニタープロファイルでした。MTRX IIではこの機能が大幅にパワーアップ。
1500x1500だった内部マトリクスは、なんと4096x4096まで増加。さらに、モニタープロファイルで使用できる内部サミングミキサーは256x32から512x64に。これにより、Dolby Atmosシネマ制作においても十分な数のチャンネルを扱うことができます。
AES/EBUはオプション対応のみに
逆に、MTRXでは内蔵だったAES/EBUデジタルI/Oに関しては、MTRX IIでは標準搭載ではなくなります。デジタルI/Oが必要な場合は、Pro Tools | MTRX 8 AES3 I/O Cardが必要になります。
MTRXファミリー機能比較表 *クリックで拡大
MTRXファミリー機能比較表 *クリックで拡大
フラッグシップI/Oをネイティブ環境に接続
CoreAudio対応DAWでMTRXファミリーを使用
新たに発表されたPro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Moduleを本体に追加することで、Pro Tools | MTRX II (256ch)、及び、Pro Tools | MTRX Studio (64ch)をネイティブ環境で使用することが可能になります。これまでHDXシステムでしか得られなかったサウンド・クオリティや柔軟なルーティング機能を、CoreAudio対応のネイティブDAWで構築することができます。
Caution! 新しいPro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Moduleに対応するのは、Pro Tools | MTRX II及びPro Tools | MTRX Studioです。以前のPro Tools | MTRXで使用することはできません。
Pro Tools Studioでマルチチャンネル制作が可能に
2022年4月のアップデートで5.1ch以上のマルチチャンネル・フォーマットに対応したPro Tools Studio(旧Pro Tools)。Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Moduleを追加したPro Tools | MTRX II、または、Pro Tools | MTRX StudioをI/Oとして使用することで、ネイティブ環境でのマルチチャンネル・サラウンド制作がよりシンプルな機器構成で実現可能になります。
Thunderbolt3はDigiLinkとの併用が可能
Avidからの発表によれば、Thunderbolt3とDigiLinkは併用が可能です。ということは、DADmanを経由することで2台のマシン間で信号のやりとりが可能になるということになります。Dolby Atmos RendererをインストールしたマシンをThunderbolt3で接続すれば、Atmos Audio Bridgeを使用せずに(=HDXを使用しながら)Dolby Atmos ミキシングをおこなうことができるようになります。
MTRX II / MTRX Thunderbolt 3 Moduleは本日より予約受付開始!
「Pro Tools | MTRX II」および「Pro Tools | MTRX Thuderbolt 3 Module」の気になる発売時期は未定ですが、予約受付は本日より開始しております。Rock oN Line eStore、または、ROCK ON PROまでお気軽にお問合せください!
Avid Pro Tools | MTRX II Base unit with DigiLink, Dante 256 and SPQ
型番:9900-74279-00
販売価格:¥1,089,000(本体価格:¥990,000)
発売予定日:未定
Rock oN Line eStoreで今すぐ予約>>
Avid Pro Tools | MTRX Thunderbolt 3 Module
型番:9900-74167-00
販売価格:¥135,080(本体価格:¥122,800)
発売予定日:未定
Rock oN Line eStoreで今すぐ予約>>
急遽発表された大型プロダクト!従来機を念頭にシステム設計をされていた方などは困惑される部分も多いことと察します。そんな時はお気軽にROCK ON PROまでご相談ください。HDXシステムをはじめとして、その他スタジオ音響システムのご相談も承ります。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-mtrx-eol/#.ZDdaOuzP0-Q
Media
2023/07/27
株式会社コジマプロダクション様 / 新たな世界を創り出す、遥かなる航海のためのSpaceship
日本を代表するゲームクリエイター・小島 秀夫氏が2015年に立ち上げた株式会社コジマプロダクション。2016年には第1作目となるタイトル「DEATH STRANDING」を発表し、2019年に待望のPS4Ⓡ版が発売されるやいなや、日本をはじめ世界各地から称賛の声があがり、米国LAで行われたThe Game Awards 2019では8部門にノミネートされ、クリフ役を演じたマッツ・ミケルセンのベスト・パフォーマンス賞を含めると3部門で賞を獲得、世界的なビッグタイトルとしてのポジションを確立した。その後も数々の受賞歴や昨年末の「DEATH STRANDING 2(Working Title)」発表など、ここ最近も話題が絶えないが、実はその裏でオフィスフロアの移転が実施されていたという。フロア移転のプロジェクトがスタートしたのは2020年の1月ごろ、昨年12月に新フロアでの稼働が開始され、サウンド制作についての設備も一新された。今回はTechnical Sound Designerの中山 啓之氏、Recording Engineer永井 将矢氏に、移転計画の舞台裏や新スタジオのシステムについて詳細にお話を伺うことができたのでご紹介していこう。
📷エントランスゲートを通った先に待ち受けている真っ暗な部屋。足元に伸びる一筋の光に導かれるまま進んだ先には、無限に続く白の空間。中央にはコジマプロダクションのシンボルキャラクター「ルーデンス」が力強く佇んでいる。ちなみにこの名前は、オランダの歴史学者ホイジンガが提唱した「ホモ・ルーデンス」(遊ぶ人)に由来しているそうだ。こうした人間の遊び心を刺激するような演出がオフィス内随所に施されていた。
Spaceship Transformation
今回のスタジオ設計のプランニング開始は2021年3月ごろと2年ほど遡る。"Spaceship Transformation"という壮大なコンセプトとともに、事業規模の拡大に伴うフロア移転が社内で伝えられ「それに見合ったスタジオを作れないか?」と、社内で協議するところからスタートしたそうだ。ゲーム制作の「何百人ものスタッフが膨大な創造と作業と時間をかけながら、ひとつのゲーム作品を作り上げていく過程」を「広大な空間を進んでいく宇宙船の航行」として置き換えてみると、制作を行うオフィスフロアはまさに宇宙船の船内やコックピットであり、そこは先進的な技術やデザインで満たされた空間であるべきだろう。勝手ながらな推察ではあるが、こう捉えると"Spaceship Transformation"が意図するところも伝わってくるのではないだろうか。
こうしたコンセプトを念頭に置きながらも、現場スタッフの頭の中には、具体的な業務への思慮が常にある。予算や法律上の問題をはじめ、各所で定められたルールなどの制約がある中で、想定される業務をしっかりとこなせるスタジオを作るというのは、やはり一筋縄ではいかなかったそうだが、しっかりと万が一に備えた冗長性や、将来に向けた拡張性を持たせるような工夫がなされたそうだ。
Rock oN (以下、RoC):本日は宜しくお願いします。まず、お二人の普段の業務内容を伺えますでしょうか。
中山 啓之 氏 (以下、中山):音の制作(サウンドデザイン)を中心にやりつつ、チームのマネジメント業務も行なっています。私は設立後半年経った頃に入社したのですが、その頃からメディア・インテグレーションにはお世話になっています。
RoC:ありがとうございます!個性的なスタッフばかりですみません…(汗)。
永井 将矢 氏 (以下、永井):私はレコーディングエンジニアとして入社したのですが、ちょうど移転の話が始まったタイミングだったため、入社から最近にかけてはスタジオの運営、管理業務を行っています。今後は音声収録の作業がメインになっていく予定です。
RoC:お二人は元々どのようなきっかけでゲームという分野のサウンド制作に携わるようになったのでしょう。
中山:子供の頃からゲームに興味を持っていたのですが、パソコンやFM音源が出始めたころにいわゆる"チップチューン"にどっぷりハマりまして(笑)。そこから趣味がどんどん広がっていく中でゲームサウンドの世界に行き着きました。当時、PC88というパソコンにYM2203というFM音源チップが載っていて、それを使ってパソコンから音を出すところから始まり、音楽を作ったり、効果音を作ったりということを色々やっていました。
RoC:チップチューンというと、やはり同時発音数の制限などもあったり?
中山:FM音源が3つとSSG(矩形波)が3つくらいだったんですけど、そこからPCが進化していって鳴らせる音も増えていって。その後、MIDIが出てきたのでシーケンサを買って、シンセサイザーを買って、というコンピュータミュージックの王道を進んできたという感じです。
永井:私は、新卒時にゲーム業界も興味はあったんですが、映画好きだったこともあってポスプロの道へ進むことにしました。最初はいつまで続けられるか不安だったのですが、収録やミックスをやっているうちにその楽しさに気づき、結果的に7年半ほどやっていました。当時はほとんど吹き替えの仕事が中心だったのですが、仕事の幅を拡げたいなと考えていたところにちょうどいいタイミングでコジマプロダクションでのレコーディングエンジニアの募集があったんです。自分が好きなゲームを制作している会社ということもあって「これはぜひやりたい!」ということで応募しました。
RoC:"Spaceship Transformation"が今回のフロア移転全体のコンセプトとのことですが、そうした大きなテーマの下で、現場レベルでのこだわりやテーマは何だったのでしょうか?
中山:音声収録やMAといった様々な業務が想定される中で、例えば内装デザインなどがそうですが、「会社としての方向性に合わせつつも必要な業務に対応したスタジオを作りたい」というのがありました。とは言え、無尽蔵に場所があるわけでもないですし、予算との兼ね合いもあるので、その中でベストを尽くせるように、まずは必要な部屋数や規模の検討、「こういうことをやりたい」という提示からスタートしました。
RoC:最初の構想は、やはり業務内容などから逆算していって決められたのでしょうか?
中山:今回の場合ですとこのコントロールルームとそれに隣接したレコーディングブース、EDITブースいくつか…というプランから一番最初の「妄想」が始まりました(笑)。そのプランを本当に一枚のテキストページに落とし込んで、それから紆余曲折が始まった格好です。
永井:一応「妄想」通りにはできた感じです(笑)。
RoC:内装も全体的に統一感があり、かなりこだわられていますよね。
中山:基本コンセプトとして、弊社のコーポレートカラーである黒と白をベースにしたデザインを念頭に細部を決めていきました。我々はデザインについては素人ですが、いくらCG技術が発展したとしても、実際に目にするとイメージと異なる部分がどうしても出てくるとは思います。そうした部分は不安でもあり、ワクワクした部分でもありました。
📷カフェテリアの半分は近未来的なデザインのカウンター、もう半分はカフェのような落ち着いた雰囲気の空間演出となっている。サウンドセクションのロビーはソファとテーブルが融合し、照明と対になったデザインがなされている。ラウンジはまさに映画のワンシーンで使われていそうな意匠で、フロアの各所が一度目にしたら忘れられない印象的なデザインとなっていた。また、用途に応じて背景を黒・緑・青の3色に変更できるスタジオも用意されており、映像コンテンツの収録も行うことができる。
RoC:スタジオ稼働に至るまで山ほどタスクがあったかと思いますが、中でも苦労されたポイントはどこでしたか?
中山:共用のオフィスビルなので、当然全てを好き勝手にやるわけにはいかず、消防法やビル管理上のルール、配管や防音構造、荷重の制限など、これまで全く知識がなかったことについて考えながら進める必要があった点です。そうした部分は施工をご担当いただいたSONAさんやビルの管理会社さんなど、色々な方々から知見をいただいて、針の穴を通すような調整をやりつつ進めていきました。
永井:今回は建築上の都合でピットを掘ることができなかったので、施工会社の方々にとっては配管が一番頭を悩まされたのではないかと思います。
中山:やはりピットではないので一度配管を作ってしまうと、後から簡単に変更ができなくなってしまいます。そういうこともあり、配線計画はかなり綿密に行いました。予備の配線も何本か入れてもらっているので、今後の拡張性にも対応しています。それから、バックアップの面については力を入れています。収録中に万が一メインのMacがトラブルを起こしても、MTRX経由で常時接続されているサブ機にスイッチして継続できるように用意してありますし、さらにMTRXについても代わりのI/Oを用意してあるので、すぐに収録が再開できるようになっています。インハウスのスタジオですが、商用スタジオ並みのバックアップシステムを実現しています。
永井:商用スタジオだと複数部屋あったりするのでトラブルが発生したら別の部屋で対応をするということもできますが、そういった意味ではここは一部屋しかないので「何かあった時に絶対何とかしなきゃいけない!」となりますから、色々なシチュエーションを考えてすぐに対応できるようにしています。
理想的なスペースに組んだ7.1.4chのDolby Atmos
📷株式会社ソナのデザインによる音響に配慮された特徴的な柱がぐるりとコントロールルームを取り囲み、その中へ円周上にGenelec 8361Aが配置されている。スクリーンバックにはL,C,R(Genelec 8361A)とその間にサブウーファーGenelec 7370APを4台設置し音圧も十分に確保された。
RoC:機材選定はどのように進めていったのでしょうか?
中山:最初の計画を立てた時に、一番最初に挙げたのは「スクリーンを導入したい!」ということでした。弊社に来られる方は、海外からのお客様や映画関係の方など多種多様にいらっしゃいます。そうしたみなさまにご視聴いただくことを想定すると、小さな液晶画面だと制作の意図が伝わらなかったり、音響の良さを伝えるのが難しかったり、ということがこれまでの経験上ありましたので、スクリーンの設置はぜひとも実現したいポイントでした。併せて、今後主流になっていくであろう4K60pの投影と、それに応じたサウンド設備をということも外せないところでした。その規格に対応させるために、映像配線はSDI-12Gを通してあります。
RoC:今回、コントロールサーフェスにAVID S4を選ばれた理由は何だったのでしょう?
中山:MAの作業の直後に音声収録を行い、その後の来客時にティザーをご覧頂いて、という事も弊社では多くありますので、素早くセッティングを切り替えられるデジタル卓を候補としました。加えて、Pro Toolsのオペレーションが中心ということもあるので、Avid S6、S4か、もしくはYamaha のNuageかという選択肢だったのですが、サイズなども色々検討した結果でAvid S4になりました。S4でもS6と遜色ない機能がありますので。
RoC:特注のアナログフェーダーが組み込まれているのは、まさにこだわりポイントですね!
永井:S6もそうですが、S4はレイアウトを自由に変えられるのが利点ですね。
RoC:MTMとAutomationモジュールが左右に入っているパターンは他ではあまり見ない配置ですが、実際S4を導入して良かったと思うところはありますか?
永井:キーボードの操作も多いので、この配置にしていると手前のスペースを広く取れるのでいいですね。あとは、モニターコントロール周りです。前職でも触れたことはあったのですが、今思えばそこまで使いこなせてなかったなと。DADmanでのソースやアウトプットの切り替えは結構やりやすいなと改めて思いました。最初に操作方法を教わった後は、自分で好きなようにカスタマイズしています。「やりたい」と思ったことが意外とすぐにできるというのは好感触でした。
📷Avid S4のオートメーションモジュール手前には特注の4chアナログフェーダーが収められている。これはスタジオラックに収められたAMS Neve 1073 DPXとMTRXのアナログ入力との間にパッチ盤を介して接続されており、頻繁に触れるであろうボリュームコントロールを手元でスムーズに行えるようにした実用を考慮したカスタムだ。また、マシンルームにはシステムの中枢となるAvid MTRXが設置され、MacProの他にも同ラックにはMac Studioをスタンバイし冗長性を確保している。
RoC:特に、カスタマイズが好きな方にはハマりますよね!スピーカーはGenelecの同軸スピーカー8361A / 8351Bを中心に、4台の7370APを加えた合計15台で構成されています。なぜこの構成になったのでしょう?
中山:スピーカー選定の段階で「Dolby Atmosに対応させよう」というのはありました。かつ、スクリーンバックから鳴らせるということ、あとは部屋のサイズに対して十分な音圧を出せるか、というところがポイントでした。そういった部分から考えていくと自ずと選択肢は絞り込まれていきました。当初は同じGenelecのS360Aで検討していたのですが、角度を変えて上に置いたり横に置いたりすることを考えると、リスニングポジションの関係もあって、最終的に同軸スピーカーの方がいいのではないかという方向に落ち着きました。
📷トップのスピーカーはGenelec 8351Bを4台設置、半球の頂点にあたる部分など各所に配線があらかじめ敷設され、将来の増設も想定されている。
永井:音質面でもすごく素直な音で、クリアで分離がよく音色ひとつひとつが聴き取りやすく感じました。今回、SONAさんに音響調整をお願いしていて私も立ち会ったのですが、デスク前方のプロジェクターが格納されている部分が床からの反射を防ぐ構造になっており、その影響もあってか低域が溜まらずクリアに聴こえるようになっています。
📷デスク前方の傾斜部分の下には、4K60p対応の超短焦点プロジェクターが収められているのだが、こちらは床からの反射音を軽減させる音響調整パネルとしての役割も担っている。
中山:何となく、これも宇宙船のようなデザインに見えますよね。
RoC:確かに、スタートレック感がありますね!
中山:来社されたお客様にも、そのような感想を頂いた事がありました。雰囲気・デザイン的にもそういった要素を色々含めています。
RoC:ウーファーはスクリーンバックに4台となっていますね。
中山:はい、LCRスピーカーのLとC、RとCの間に上下に2台ずつGenelec 7370APが設置されています。最初は2台だけの想定だったのですが、調整していくうちに音圧が足りないかも、ということで、最終的に2台追加することになりました。リスニングポイントからスピーカーまでも3.6mほどあって、天井高も2.7mと高く取れています。サラウンドスピーカーの上下や天井中央にも後からスピーカーを追加できるようにしていて、これからの拡張性も確保しています。
RoC:サラウンドやイマーシブの制作において理想的な半球状の配置になっていますよね。実際にスタジオが稼働しはじめて、周囲からの反応はいかがでしたか?
中山:「すごい」と言ってもらえる機会が多くて嬉しいですね。エンジニアの方からは「音の立ち上がりが速い」という声もあり、好評な意見をいただけていて願ったり叶ったりです(笑)。「妄想」していたスタジオがきちんと実現できたかなという印象です。
永井:いい評判をいただけて本当によかったです。こちらからコンセプトを伝えてなくても「宇宙船みたい」と言ってくれる方もいてデザイン面でも良かったなと。加えて、制作だけではなくプレゼンや海外とのコミュニケーションにも対応できるようにしたので、他部署のスタッフからも「居心地良く仕事ができる」といった声がありました。
RoC:スタジオが取り合いになったりはしないですか?
中山:まだそこまではいってないですが、いずれそうなってくるかもしれませんね(笑)。
📷コントロールルームに隣接したレコーディングブースは、実面積よりも広々とした開放感を感じさせ長時間の使用にも耐えうる快適な空間となっている。また、フロアのカーペット裏には、コンクリートやレンガ、大理石など、材質の異なる床材が仕込まれておりフォーリー収録も行うことができる。
📷Sound Editing Room はA / Bの2部屋が用意されており、いずれもGenelec 8331A + 7360Aで構成された7.1chのモニター環境が構築されている。入出力にはFocusrite Red 8 Line、モニターコントローラーには同R1が用意されており、ここでも拡張性を確保しつつもコンパクトな機材選定がなされている。また、スピーカースタンドとデスクが一体化された設計により、機材の持ち込みなどシチュエーションに応じた活用がフレキシブルに行えるようになっていることもポイントだ。
聴く人の心を動かすようなサウンドを
現在、ゲーム制作においては、映画と同じくサラウンドでの制作が主流となっており、そこからダウンミックスでステレオが作られるとのこと。ゲーミングPCのスペックの向上やバーチャルサラウンド対応ヘッドホンのラインナップが拡充し、手頃な価格でそのサウンドを楽しめる環境が整ってきており、着実にその裾野は広がっているのではないかということだ。これはイマーシブサラウンドについても同様で、一番最初の計画ではイマーシブ対応については検討されていなかったが、天井高が十分取れることが分かった段階で、今後の需要増にも備えてDolby Atmosへの対応を決めたそうだ。
現在、ゲーム制作においては、映画と同じくサラウンドでの制作が主流となっており、そこからダウンミックスでステレオが作られるとのこと。ゲーミングPCのスペックの向上やバーチャルサラウンド対応ヘッドホンのラインナップが拡充し、手頃な価格でそのサウンドを楽しめる環境が整ってきており、着実にその裾野は広がっているのではないかということだ。これはイマーシブサラウンドについても同様で、一番最初の計画ではイマーシブ対応については検討されていなかったが、天井高が十分取れることが分かった段階で、今後の需要増にも備えてDolby Atmosへの対応を決めたそうだ。
RoC:Dolby Atmosのようなイマーシブ対応をすることで、ゲームサウンドの分野でも従来からの変化を感じましたか?
中山:一般のユーザーの方々へどこまでイマーシブ環境が拡がるかということもありますが、ゲームサウンドは3D座標で処理されているものが多いので、イマーシブと相性も良く、今後チャレンジしていきたいです。
永井:ポスプロ時代にもイマーシブについては興味を持っていましたが、やはりゲームは親和性が高いように思います。プレイをしている自分がその場にいるような演出も面白いと思いますし、今後突き詰めていくべきところだと思います。
RoC:それこそチップチューンの時代は、同時発音数など技術的な制約が大きい中での難しさがあったと思いますが、今後は逆に技術的にできることがどんどん増えていく中での難しさも出てくるのでしょうか?
中山:次々と登場する高度な技術のひとつひとつに追いついていくのはなかなか大変ですが、しっかりとその進化に対応して聴く人の心を動かすようなサウンドを作っていきたいですね。
世界的な半導体不足の影響や、高層オフィスビルならではのクリアすべき課題など、大小様々な制約があった中で、現場の要件をクリアしつつコジマプロダクションとしてのコンセプトを見事に反映し完成された今回のスタジオ。Dolby Atmos制作に対応済であることはもちろん、将来的にスピーカーを増やすことになってもすぐに対応できる拡張性や、インハウスのスタジオながら商用スタジオ並みのバックアップシステムも備えており、現時点だけではない制作の将来像も念頭に置いた綿密なシステムアップが行われた。ついに動き出したこの"Spaceship"がどのような新たなる世界へと導いてくれるのか、遥かなる航海がいよいよ始まった。
*ProceedMagazine2023号より転載
NEWS
2023/07/24
SCFEDイベのスタジオ探報記 第2回 サウンドシティ / RockoN Webサイトにて公開中!
憧れのスタジオを訪問してスタジオの魅力、ハイエンド機材やビンテージ機材の魅力、そして“スタジオで生まれる特別なマジック”の正体について解き明かすインタビューシリーズ「SCFEDイベのスタジオ探報記」。第2回は、東京・麻布台の地から47年に渡って日本の音楽業界を支えてきた音楽スタジオ、
「サウンドシティ」をスタジオ探報です!
>>>>『SCFEDイベのスタジオ探訪記 第2回:サウンドシティ』
記事本編はコチラ
Music
2023/07/20
360VME / 立体音響スタジオの音場をヘッドホンで持ち歩く
ソニーが提供するイマーシブの世界がさらに広がろうとしている。360 Reality Audioでの作品リリースはもちろんのことだが、今度は制作側において大きなインパクトがあるサービスとなる「360 Virtual Mixing Environment(360VME)」が発表された。これは、立体音響スタジオの音場を、独自の測定技術によりヘッドホンで正確に再現する技術。つまり、立体音響制作に最適な環境をヘッドホンと360VMEソフトウェアでどこへでも持ち運ぶことが可能となるわけだ。ここではその詳細を見ていこう。
2023.7.13 追記
・7/13(水)より一般受付開始、8月よりMIL Studioでの測定サービスを開始いたします。
詳細は下記URLよりご確認ください。
https://www.minet.jp/contents/info/360-vme-measurement/
📷右に並ぶのが世界で3拠点となる360VMEサービスを提供するスタジオ。上よりアメリカ本土以外では唯一となるMedia Integrationの運営する東京のMIL Studio、本誌でもレポートを掲載しているLAのGOLD-DIGGERS、そしてニューヨークのThe Hit Factory。すべてのスタジオが360 Reality AudioとDolby Atmosの両方に対応したスタジオである。これらのスタジオはソニーが360VMEサービスの測定にふさわしい音響を備えたスタジオとして認定した世界でも有数のファシリティーである。こちらで個人ごとに測定を行って得られたプロファイルをもとに、その音場をヘッドホンで再現させるのが360 Vitual Mixing Environmentだ。
●360 Virtual Mixing Environment ソニーHP
●ソニー / MDR-MV1 / 価格 ¥59,400(税込)
「これはヘッドホンじゃない、スタジオだ。」イマーシブ世代に向けたソニーのStudio Refarence Headphone、MDR-MV1。このキャッチコピーに込められた「スタジオだ」という言葉には360VMEサービスも含まれているのだろうと考えさせられる。スタジオの音響空間を360VMEにより、ヘッドホンに閉じ込めて持ち帰る、そのために高い空間再現能力を与えられたヘッドホンである。360VME無しでも充分に素晴らしい特性を持った製品だが、360VMEと組み合わせることでさらなる真価を発揮するモデルと言えるだろう。
●MDR-MV1 ソニーHP
世界初のプライベートHRTF測定サービス
ついに待望のサービス開始がアナウンスされたSONY 360 VMEサービス。VMEとは「Virtual Mixing Environment」(仮想ミキシング環境)のこと。世界初となるプライベートHRTFを含むプロファイルデータを商用的に測定するサービスだ。SONY R&Dで開発され、ハリウッドのSONY Picturesで試験運用が行われていたテクノロジーで、映画の仕上げを行うダビングステージという特殊なミキシング環境を、ヘッドホンで仮想的に再現してプリミックスの助けとしようということで運用が行われていた。
広い空間でのミキシングを行うダビングステージ。そのファシリティーの運用には当たり前のことだが限界がある。ファシリティーの運用の限界を超えるための仮想化技術として、この空間音響の再現技術が活用され始めたのは2019年のこと。テスト運用を開始してすぐにコロナ禍となったが、SONY Picturesにとってはこの技術が大きな助けとなった。まさに求められる技術が、求められるタイミングで現れたわけだ。
サービス利用の流れ
国内での利用を想定して、東京・MIL Studioでの測定を例にサービス利用の流れを紹介するが、執筆時点(2023年5月下旬)では暫定となる部分もあるため実際のサービス開始時に変更の可能性があることはご容赦いただきたい。まず、利用を希望される方はWebほかで用意されたページより360VMEサービスを申し込む。この段階では測定を行うヘッドホンの個数、必要なスピーカープロファイル数をヒアリングし、いくつのプロファイルを測定する必要があるのか確認、測定費用の見積と測定日の日程調整を行う。実際のMIL Studioでの測定ではヘッドホンの測定も行いその個体差までもを含めたプロファイルを作成するため、使用されるヘッドホンの持ち込みは必須となる。
MIL Studioではそれぞれのプロファイルに合わせて測定を行った後に、そのプロファイルが正しく想定されているかを実際の音源などを使って確認、納得いくプロファイルが測定できているかを確認していただき、360VMEアプリとともにプロファイルデータをお渡しすることとなる。これらを自身の環境へインストールし、利用開始というのが大まかな流れだ。
360VMEのバックボーンとなる技術
ソニーは以前よりバーチャルサラウンドの技術に対して積極的に取り組んできた。民生の製品ではあるが、バーチャル・サラウンド・ヘッドホンなどを実際に発売している、これは5.1chサラウンドをヘッドホンで再生するという技術を盛り込んだ製品であった。このようなサラウンド仮想化の技術は、長きにわたりソニー社内で研究されてきた技術があり、その系譜として今回の360VMEサービスも存在している。そして、今回の360VMEサービスはこれまでにリリースしてきたコンシューマ向けレベルの技術ではなく、プロの現場での使用を想定したハイエンド製品としてリリースされた。このようなバーチャルサラウンド技術の精度向上には、実測に基づくプライベートHRTFの測定が必須となる。実際の使用者のHRTFを含んだデータを測定することで精度は驚くほど向上する。一般化されたHRTFとのその差異は圧倒的である。
●HRTF(Head-Related Transfer Function:頭部伝達関数)とは!?
人が音の方向を認知することが可能なのは、周波数特性の変化、左右の耳への到達時間差などを脳が判断しているからである。耳の形状や体からの反射、表皮に沿った回析など様々な要因により変化する周波数特性、左右の耳へ到達する時間差、反射によるディレイなどを表すインパルス応答特性、このようなパラメータを数値化したものがHRTF(Head-Related Transfer Function:頭部伝達関数)となる。これは個人ごとによって異なるパラメーターで、個人のHRTFを測定したものをプライベートHRTF、それを適用したバイノーラル処理を個人最適化と呼んでいる。
360VMEの技術はプライベートHRTFを測定した部屋を環境ごと測定する。それをヘッドホンのバイノーラル再生として、測定した部屋の音響環境、スピーカーの特性などをそのまま仮想環境として再現する。スピーカーの特性など、測定した部屋の音響環境ごとプロファイル化するため、厳密な意味でのプライベートHRTFではないが、その要素を含んだバイノーラル再現技術ではあると言えるだろう。
正式な意味でのプライベートHRTFは個人の頭部伝達係数であるために、予め特性を確認したスピーカーとマイクによって無響室での測定を行うこととなる。余計な響きのない空間で、単一の方角からの音源から発された音波がどのように変化して鼓膜に届くのかを測定するということになる。360VMEでは測定を行う部屋のスピーカーの個性、部屋の反射などを含めた音響特性、これらが測定したプロファイルに加わることとなる。これまでにも各社より有名スタジオのコントロールルームの音響環境を再現するようなプラグインが登場しているが、これらはプライベートHRTFにあたるデータを持たないため、どうしてもその効果の個人差は大きくなってしまう。360VMEでは、一人ひとり個人のデータを測定するためにプライベートHRTFにあたるデータを持つプロファイルデータの作成が可能となっている。
プライベートHRTFを測定しDAWと連携
それでは、実際の360VMEの測定サービスは、何が行われて何がユーザーへ提供されるのだろうか?まずは測定からご紹介していこう。測定にあたっては、まずは測定者の耳へマイクを装着することとなる。できるだけ鼓膜に近い位置で測定を行うために通称「バネマイク」と呼ばれる特殊な形状のマイクを耳孔に装着する。
マイクを装着し視聴位置に座り、始めにピンクノイズでの音圧の確認が行われる。スピーカーの信号がマイクにどれくらいのボリュームで入力されているのかを確認するということになる。次は測定を行うスピーカーからスイープ音を出力し周波数特性と位相を測定する。更に続けて、リファレンスとするヘッドホンをつけて、ヘッドホンで再生したピンクノイズとスイープを測定する。これにより、ヘッドホンの特性も含めた特性の合わせ込みを行い精度の高い空間再現を行うわけである。
📷こちらに写っているのが、360VME測定用に設計された通称「バネマイク」。このバネのような部分を耳に入れることにより、耳道を塞がずに耳の奥、鼓膜に近い位置での測定を実現している。測定においては、鼓膜にできるだけ近い位置でのデータを取るということが重要なポイント。鼓膜にどのような音が届いているのか?耳の形、耳たぶの形、頭の形など、個人差のある様々な要因により音が変化する様をこのマイクで測定することとなる。360VMEの測定ではスピーカーから出力された音源での測定だけではなく、このマイクを付けたままでヘッドホンの測定も行い精度をさらに高めている。ヘッドホンには個体差があるため、測定に使うヘッドホンは実際に普段から使っているものをお持ちいただくことになる。
測定の作業はここまでとなり、スピーカーからの再生音とヘッドフォンからの再生音、それぞれのデータからプロファイルデータを生成する。ここで生成されたプロファイルデータは、測定サービスを行ったユーザーに提供される360VMEアプリケーションに読み込ませることで、そのデータが利用可能となる。DAWなどの制作ツールと360VMEの接続は、PC内部に用意される仮想オーディオバス360 VME Audio Driverにより接続される。具体的には、DAWのオーディオ出力を360 VME Audio Driverに設定し、360VMEアプリケーションのインプットも360 VME Audio Driverに設定、アウトプットは実際に出力を行いたいオーディオインターフェースを選択するということになる。
このような仕組みにより、DAWから出力されるイマーシブフォーマットのマルチチャンネル出力が、360VMEアプリケーションから測定結果により生成されたプロファイルデータを適用したバイノーラルとして出力される。プライベートHRTFと測定を行ったスタジオのスピーカーや空間、音響特性を含んだ精度の高いバイノーラル環境での作業が可能となるということだ。
このような仕組みのため、測定時のスピーカーセット=制作DAWのアウトプットとする必要がある。そのため、Dolby Atmosの制作向けのスピーカーセットと360 Reality Audio向けのスピーカーセットはそれぞれ別のプロファイルとして測定が必要だ。また、複数のヘッドホンを使い分けたいのであれば、それも別プロファイルとして測定を行う必要がある。ちなみに360VMEの発表と同時にリリースの発表が行われたSONY MDR-MV1ヘッドホンは、360VMEのアプリケーション開発にあたりリファレンスとして使われており、その特性は360VMEアプリケーションのチューニングにも使われているということだ。360VMEサービスの測定を行う際にどのヘッドフォンで測定をしようか迷うようなことがあるのであれば、MDR-MV1を選択するのが一番間違いのない結果が得られることだろう。ただ、他のヘッドホンでも十分な効果を得ることができるので、普段から慣れたヘッドホンがあるのであればそれを使うことは全く問題ない。
●360 Virtual Mixing Environmentアプリ
※上記画像はベータ版
測定をしたプロファイルデータを読み込ませて実際の処理を行うのがこちらの360 Virtual Mixing Environmentアプリ。画像はベータ版となるため、実際のリリースタイミングでは少し見た目が変わるかもしれないが、プロファイルを読み込ませるだけではなく、各チャンネルのMute / Solo、メーターでの監視などが行えるようになっている。シグナルフロー図からもわかるように、360VME Audio Driverと呼ばれる仮想の内部オーディオバスがこのアプリケーションとともにインストールされ、DAWなどからのマルチスピーカーアウトを360VMEアプリへ接続することとなる。あくまでも仮想的にスピーカー出力をバイノーラル化する技術となるため、スピーカーアウト、レンダリングアウトを360VMEアプリへつなぐということがポイントとなる。具体的には360 WalkMix Creator™️のアウトプット、Dolby Atmos Rendererのアウトプットを接続することとなる。もちろん5.1chやステレオをつなぐことも可能だ。その場合には、その本数分のスピーカーが360VMEの技術によりヘッドホンで再現されることとなる。
📷東京・MIL Studioで測定可能となる代表的なフォーマット。これら以外についても対応可能かどうかは申し込み時にご確認いただきたい。(※Auro 3Dフォーマットの測定には2023年7月現在対応しておりません)また、当初のリリースでは16chが最大のチャンネル数として設定されている。技術的にはさらに多くのチャンネル数を処理することも可能とのことだが、DAW併用時の処理負荷とのバランスが取られている。確かに16chあれば360 WalkMix Creator™️の推奨環境である13chも対応でき、Dolby Atmosであれば9.1.6chまで賄えることになる。43.2chというMIL Studioでの測定となると、さらにチャンネル数を求めてしまいたくなるところだが、一般的なスタジオ環境との互換を考えれば必要十分な内容だと言えるだろう。
日米3拠点で測定サービスを提供
この360VMEサービスにおけるスタジオでの測定は、サービス開始当初は世界で3ヶ所のスタジオでの測定となる。日本では弊社の運営する43.2chのディスクリート再生を実現した完全4π環境を持つMIL Studio。他の2ヶ所のスタジオはアメリカにあり、ロサンゼルスのGOLD-DIGGERSとニューヨークのThe Hit Factoryとなり、新進気鋭のスタジオと老舗スタジオがそれぞれ選ばれた格好だ。音響環境や360VMEという通常のスタジオ運営とは異なるサービスへの賛同を行った3拠点で、この360VMEサービスはまず開始となる。本記事の執筆段階でサービス開始は2023年6月末〜7月上旬、価格はそのプロファイル測定数にもよるが、おおよそ7万円程度からでのスタートを予定しているということだ、本誌が発行されるころにはこれらの情報も正式なものが発表されていることだろう。(※)
※2023.7.13 追記
・7/13(水)より一般受付開始、8月中旬よりMIL Studioでの測定開始
・1プロファイル測定:68,000円(税別)+追加の測定 1プロファイルにつき 20,000円(税別) 〜
・測定可能フォーマット、価格につきましてはこちらのページからご確認ください。https://www.minet.jp/contents/info/360-vme-measurement/
360VMEサービスがスタートすることで、イマーシブ制作の環境に劇的な変化が訪れるのではないだろうか?ヘッドホンミックスの精度が上がることで、制作環境における制約が減り、作品を作るためのスタートラインがぐっと下がることを期待したい。もちろんスピーカーがある環境をすぐに揃えられるということであればそれが最高のスタートラインではあるが、スピーカーを揃えることに比べたら圧倒的に安価、かつ手軽にMIL Studioの音場、イマーシブのスピーカー環境をヘッドホンに入れて持ち帰ることができる。この画期的なサービスによる制作環境の変化に期待したいところである。
*ProceedMagazine2023号より転載
NEWS
2023/07/13
SCFEDイベのスタジオ探報記 第1回 音響ハウス / RockoN Webサイトにて公開中!
憧れのスタジオを訪問してスタジオの魅力、ハイエンド機材やビンテージ機材の魅力、そして“スタジオで生まれる特別なマジック”の正体について解き明かすインタビューシリーズ「SCFEDイベのスタジオ探報記」がスタート、記念すべき第1回では、50年にわたり数多のアーティストから愛され続け、近年ではCITY-POPの総本山としても新たに注目を集めているレコーディングスタジオ「音響ハウス」をスタジオ探報です!
>>>>『SCFEDイベのスタジオ探訪記 第1回:音響ハウス』 記事本編はコチラ
NEWS
2023/06/09
Pro Tools 2023.6 リリース!Carbonがサラウンド対応、トラックマーカー機能追加など【日本語ガイド追加】
Pro Tools最新バージョンとなるPro Tools 2023.6が発表されました。年間サポートプランまたはサブスクリプションが有効期間中のユーザーはすでにAvidアカウントからダウンロードが可能です。
Avid公式の情報は以下のリンク先よりご確認いただけます。
Pro Tools 2023.6 新機能紹介(Avidブログ日本語版)
Pro Tools 2023.6 リリース・ノート(Avidナレッジベース)
追記(2023年8月)
Pro Tools 2023.6リリースで、最大7.1.2または5.1.4のDolby Atmos環境を含むサラウンド・モニターに対応したPro Tools Carbonの新しいユーザーガイド日本語版がアップされました。
https://resources.avid.com/SupportFiles/PT/Pro_Tools_Carbon_Systems_Guide_JP.pdf
主な新機能
Pro Tools | Carbonがサラウンド・モニタリングに対応
Pro Tools | Carbonが待望のサラウンド・モニタリングに対応。これまでも複数のステレオペアを切り替えることはできましたが、Pro Tools 2023.6ではハードウェア設定から5.1ch/7.1chに対応したアウトプットを選択することができるようになりました。
さらに、メイン出力を無効にすることで10ch分のサラウンドアウトを設定することも可能。9.1chや7.1.2chのスピーカーセットへの出力が可能になりました。
リンク先の記事は英語ですが、後日、ビデオも含めて日本語にローカライズされる予定とのことです。
追記(2023年8月)リンク先の記事が日本語に翻訳されました。なおページ下部のボタンからもCarbon日本語ガイドを表示可能です。
Pro Tools Carbon Surround(Avidブログ)
コメント追加可能なトラック・マーカー機能
Pro Toolsのトラックにマーカーを追加する機能が実装されました。
マーカーは色分けが可能で、任意のマーカータイトルに加えてコメントを付けることも可能です。
音楽制作では、タイトルに構成やコードネームを記載したり、コメント機能を使用して歌詞を表示したりといった使い方ができそうです。
さらに、トラック・マーカーはMedia Composerと互換性を持ちます。MA・ポストプロダクションの現場で、よりスムースなワークフローを実現できる機能と言えそうです。
7.1.2/9.1.6などのトラック幅に対応(Pro Tools Studio 及びUltimate のみ)
今回のアップデートにより、Pro Tools Studioは5.0.2–7.1.6ch、Pro Tools Ultimateは5.0.2–9.1.6chまでのサラウンド・トラックを作成できるようになりました。
Pro Tools Ultimateはさらに、7次までの高次アンビソニックスにも対応します。
さらに、より高品位なオーディオ・マスターを作成するための、96kHz Dolby Atmos ADMのインポート及びエクスポートが可能となります(Pro Tools Studio 及びUltimate のみ)。
これにより、Dolby AtmosやMPEG-H、ゲームやVRといった幅広いコンテンツ向けのイマーシブ制作で、より精度の高いモニタリングが可能になります。
MIDI作業がより簡単に
新たにデザインされた、より直観的なイベント・オペレーション・ウインドウにより、MIDIでの作業がより簡単に行えるようになります。MIDIパフォーマンスの微調整をより素早く実行、複数コマンドの同時実行も行えるようになります。
ディバイス設定のガイド機能
新たなディバイス設定ガイド機能では、再起動時にそれまで使用していたディバイスが存在しない場合、オーディオ・ディバイスの設定の確認を促し、素早く作業に入ることが可能となります。
新機能対応比較表
【6/30まで】Pro Tools永続ライセンス再加入版プロモ実施!
有効期限が切れているPro Tools年間サポートプランを再び有効にする「永続ライセンス 再加入版」は、6月30日までの期間限定で約20% OFF!最新バージョンへのアップグレードを検討中の方は、ぜひこの機会をご利用ください!
Pro Tools Studio 永続版再加入(9938-30005-00)
通常価格:¥50,490(本体価格:¥45,900)
プロモ特価:¥39,820(本体価格:¥36,200)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools Ultimate 永続版再加入(9938-30009-00)
通常価格:¥108,460(本体価格:¥98,600)
プロモ特価:¥86,680(本体価格:¥78,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools | Carbonのサラウンド・モニタリング対応や、イマーシブ制作に必要なバスの追加など、にわかに盛り上がりを見せるイマーシブ制作への対応を加速的に進めるPro Tools。システム設計のご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-get-current-reinstatement-promotion-june-2023/
NEWS
2023/05/24
5/27(土) Apogee Presents: :ボブ・クリアマウンテン・イマーシブ・ミックス・セミナー開催!
27日(土)午前10時より、「Apogee Presents: :ボブ・クリアマウンテン・イマーシブ・ミックス・セミナー」が開催されます。アーカイブの予定はございませんので、貴重なこの機会をお見逃しなく!
概要
伝説的エンジニア、ボブ・クリアマウンテンが近年、積極的に取り組んでいるDolby Atmos ミックス。ボブ・クリアマウンテン氏の探求、経験から培ってきた最新テクニック、ノウハウを公開する本セミナーでは氏が手掛けた作品のマルチトラックを使用し、各トラックの配置、エフェクト処理などのワークフローをご紹介。またゲスト・エンジニアに多数のイマーシブ作品を手掛ける加納洋一郎氏をお招きし、日本の制作現場目線でインタラクティブにセミナーを進めます。
Apogee Presents: :ボブ・クリアマウンテン・イマーシブ・ミックス・セミナー
日時:2023年5月27日(土)10:00 配信開始 ◎視聴無料
講師:ボブ・クリアマウンテン
ゲスト:加納洋一郎
※アーカイブの予定はありません。当日の配信をご視聴いただけますようお願いします。
◎開催URL:下記YouTube URLよりご覧いただけます。
https://www.youtube.com/live/T9dvRDkkfIY?feature=share
◎当日のプログラム(予定)*
・ボブ・クリアマウンテンのイマーシブ制作環境のご紹介
・イマーシブ制作の基本ワークフロー
・イマーシブ・ミックスのテクニック(Vocal の配置と空間系処理など)
・質疑応答
*内容は変更になることがあります。
◎このセミナーの見どころ
・多数のイマーシブ・オーディオ制作を手がけるボブ・クリアマウンテンのテクニックをマルチトラックを用いて解説
・イマーシブの制作を進めていくに従ってステレオとは異なる手法、アプローチ
・ボブ・クリアマウンテンの制作環境環境、ツールをご紹介
◎本セミナーの質問を大募集
ボブ・クリアマウンテン氏、加納洋一郎氏へのご質問を特設フォームにて承ります。ご質問をいただきました方全員にお礼としてApogeeソフトウェア5%OFFクーポンをご提供させていただきます。
特設フォーム:
https://forms.zohopublic.com/mediaintegration/form/Untitled37/formperma/jTkFdqjEkCpagXo6kSdxaxalw-G3Ieurv6oBmxHCYdI
出演者プロフィール
ボブ・クリアマウンテン
Bob Clearmountain
Music Producer/ Mixing ,Recording Engineer
デビッド・ボウイの「レッツ・ダンス」ブルース・スプリングスティーンの「Born in the U.S.A.」ブライアン・アダムス「カッツ・ライク・ア・ナイフ」、ローリング・ストーンズ「 刺青の男」をはじめ無数の名盤を手掛けてきた伝説的なエンジニア。彼のシグネーチャーサウンドとも言える磨き抜かれた空間処理によるクリアなミックスは世界中のエンジニアに多大な影響を与えています。かつて彼が愛用したYAMAHA NS-10Mが世界中のエンジニアに影響を与え、モニタースピーカ−のスタンダードとなった逸話も有名。
ボブ・クリアマウンテン氏が手掛けた作品はこちら(MIX THIS! WEBページ)
加納 洋一郎
Yoichiro Kano
Music Producer/ Mixing ,Recording Engineer株式会社Mixer’s Lab にてWestside、旧 Warner Music Recording Studio(現 LabRecorders Studio) チーフEngineer歴任後、独立。
Bandサウンド、Vocalもの作品を得意としており、生きた声、艶やかな 楽器の音色は数多くのLiveレコー ディング、劇伴、大編成録音の経験からきており、Sound&Recording Magazine で3年間にわたるサラウ ンド記事連載、専門誌などへの執筆活動をこなす一方、 日本工学院専門学校非常勤講師を長く経験、現在 は専門学校(HAL東京、HAL大阪、HAL名古屋、東放音響専門学校)などの特別講師 として現場で培った知 識や経験を学生に伝えながら、近年はイマーシヴ作品に活躍の場を広げている。
株式会社ワイルドオレンジアーティスツにて音楽プロデューサーや作家マネージメントとしても活動中。
紹介予定の製品
◎Apogee Symphony I/O mk 2
→製品詳細を見る
→Rock oN Line eStoreへ
◎Apogee Clearmountain’s Domain
→製品詳細を見る
→Rock oN Line eStoreへ
◎Apogee Clearmountain’s Space
→製品詳細を見る
→Rock oN Line eStoreへ
◎Apogee Clearmountain’s Phase
→製品詳細を見る
→Rock oN Line eStoreへ
NEWS
2023/04/28
4/29(土)、30日(日)『銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀』を立体音響チェアで体験!ニコニコ超会議2023 松竹株式会社ブースにて
4月29日(土)、30日(日)、幕張メッセ 国際展示場 1〜11ホール・イベントホールにてリアル開催される 「ニコニコ超会議2023」の松竹株式会社様ブースにて、『銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀』を立体音響チェアで体験できるイベントが実施されます。
ニコニコ超会議2023 〜 超時空劇場 Powered by 松竹株式会社 ブースで体験〜
ニコニコ超会議 2023 概要: https://chokaigi.jp/2023/about/
チケット情報はこちら:https://chokaigi.jp/2023/ticket/
◎立体音響で体感せよ!『銀河英雄伝説 Die Neue These~神々の黄昏(ラグナロック)作戦~』
『作戦名は神々の黄昏(ラグナロック)』
昨年上映された『銀河英雄伝説 Die Neue These 策謀』より、銀河帝国による自由惑星同盟への大規模進攻作戦『神々の黄昏(ラグナロック)』のハイライトシーンを迫力の立体音響で体感!
ここでしか見られない特別編集の映像を、松竹映像センターの最新技術を駆使しなんと立体音響化!
Dolby Atmos(11.2ch)対応のスピーカーを搭載したポッド型チェアスピーカーで体験することにより、艦隊戦の砲撃音やメインキャラクターのセリフをまるで自分もその場に居合わせたかのように体感できるスペシャルイベントです!
\\本イベント限定、ラインハルト(CV:宮野真守)による新規収録ボイスあり!//
『“ファイエル”の言葉を合図に、卿も神々の黄昏(ラグナロック)作戦に参加せよ。』
URL:https://chokaigi.jp/2023/plan/shochiku.html#section1
◎日時(体験時間:約2分)※予定
・4月29日(土)14:00 ~ 17:30
・4月30日(日)12:00 ~ 14:45
◎場所
・幕張メッセ国際展示場 HALL4-B41
映像編集・立体音響制作:株式会社松竹映像センター
オーディオチェア提供:Audio Heart Co.,Ltd.
Dolby Atmos 7.2.4chに対応 Audio Heart VRS-1
今回、立体音響コンテンツの再生に使用されるのは、平面8ch(センターはファンタム定位のため2本使用)、サブウーファー2ch、トップ4ch、計14本のスピーカーを搭載したAudio Heart社のVRS-1というスピーカー内蔵のシアターチェア。
専用設計のスピーカーで迫力のある高音質サウンド、そしてたまご型のシェルに包まれているため、今回のようなイベント会場での展示でも周囲の騒音が軽減され、没入感のあるサウンドを楽しむことができます。
写真中央のヘッドレストの位置に後頭部を合わせるようにして座ると、より正確な音像定位で聴くことができるのでおすすめです!
超低共振周波数設計のサブウーファー、広いダイナミックレンジのアルミコーンウーファー、ボイスコイル直結振動板によりハイレゾ帯域も楽にカバーするツイータなど、このスピーカーの為に独自に開発したスピーカー・ネットワークにより、広いダイナミックレンジとともに、今までに無い超広帯域を実現することで、シェル内の自然な音響特性を実現しています。
Audio Heart VRS-1
https://audio-heart.co.jp/vrs-1/
超時空劇場 Powered by 松竹株式会社 タイムテーブル
ニコニコ超会議2023 リアル開催は4/29(土)、30日(日)の2日間!銀英伝ファンの方はもちろん、Dolby Atmosの立体音響を体験してみたいという方もぜひご来訪ください!
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-info-2022/#.ZEs_r-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5/#.ZEs_vuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/shochiku-proceed2020/#.ZEs_zuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/shochiku2018/#.ZEs_1-zP0-Q
NEWS
2023/04/24
世界初!? 3Dシンセサイザー登場!! Sound Particles “SkyDust 3D”
コンピュータ・グラフィックスの概念とパワーを音響の世界に応用することで、オリジナリティの高いサウンドを提供するポルトガルのメーカー Sound Particles。同社がリリースした最新プロダクトは、曰く「世界初」のプラグイン3Dシンセサイザー!
1音を鳴らすだけでも、即座に3Dサウンドを生成。出力は多数の "イマーシブ" フォーマットに対応。ステレオ音像では素晴らしく、空間オーディオでは比類のない性能を発揮。プロデューサー、作曲家、キーボーディスト、DJなど、音楽制作に関わる全てのプロフェッショナルに理想的な選択肢となるでしょう。
独自の3Dエンジンとポリフォニック・シンセサイザーの統合により、易しいインターフェイスで画期的なサウンド生成が可能になりました。アフタータッチで3D配置を操作、EGで各音の挙動を設定、LFOで高低を変更、空間内を動き回るアルペジオ。空間オーディオを、クリエイティブなツールとして使用できるのです。
製品の詳細はこちら>>(Formula Audio ウェブページ)
SOUND PARTICLES / SkyDust 3D
通常価格:¥51,700 (本体価格:¥47,000)
→リリース記念25%OFF! ¥38,775 (本体価格:¥35,250)
出力フォーマット:ステレオ、バイノーラル、5.1、7.1.2、13.1、22.2ch、最大6次のAmbisonicsほか30種類以上
仕様:AAX、VST3、AU対応 - スタンドアロン仕様はありません。
Rock oN Line eStoreで購入>>
SOUND PARTICLES / SkyDust Stereo
通常価格:¥25,960 (本体価格:¥23,600)
→リリース記念25%OFF! ¥19,470 (本体価格:¥17,700)
出力フォーマット:ステレオ、バイノーラルのみ
仕様:AAX、VST3、AU対応 - スタンドアロン仕様はありません。
*ヘッドフォンを使用する事で、SkyDust 3Dと同じく「空間音声」による作業が可能となります。
*SkyDust 3Dとのパラメータ互換があります(出力の設定は保たれません)。
Rock oN Line eStoreで購入>>
Gallery & Features
8つのオシレータ、各々に3D位置情報を設定可能
様々なパラメータと統合された3Dエンジンによる空間生成
使いやすいプリセット機能と画面
強力なアルペジエータ、ポリフォニック・シーケンサーを装備
現代的なFMシンセシス
各オシレータにフィルタを備えた減算合成
独特のサウンドを生む、ピッチ・エフェクト
便利なミキサー画面とエフェクト調整
かつてないほど柔軟なマトリクス
パラメータの無作為設定も可能
イマーシブ・オーディオは今や映像制作にとどまらず、作曲や音楽制作においてもDolby Atmosや360 Reality Audioを前提とした作品作りが多くなっていることを感じる今日この頃。まさに、時代が求めるカッティングエッヂなシンセと言えるでしょう!
本製品のお求めはRock oN Line eStore、または、ROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください。
Event
2023/03/09
【アーカイブ映像配信中!】AVID CREATIVE SUMMIT 2023
リアルな制作環境の「いま」、そしてクリエイターの「未来」をご提案する
サウンド制作のためのリアルノウハウイベント
コロナウィルスという未曾有の脅威により、激しい変革を迎えたエンターテインメント・ビジネス。その変化の中でWeb/IT/IPといったテクノロジーが劇的な進化を遂げ、制作環境もステップアップを行うタイミングが訪れました。長く続いた「ステレオ」から「イマーシブ」への革命が音楽のフォーマットに新しい風を吹き込み、CloudやIPの技術を活用した新しいソリューションが台頭、制作環境も劇的な変貌を遂げる準備が着々と進んでいます。
その「いま」を最新の情報・ノウハウとともに多方面から切り取り、そしてみなさまと共有する。次世代のAvid Creative Summitの幕開けとも言えるのが今回のラインナップです。これからの未来をともに歩むための第一歩として、会場に足を運んでいただき様々な情報共有、意見交換などが行える場にできたらとスタッフ一同、力を込めて準備を進めています。リアル開催+オンライン配信のハイブリッドでお届けする今年のAvid Creative Summit、多くの方のご参加をお待ちしております!
◎本配信は終了いたしました。多くの皆さまにご視聴いただき、誠にありがとうございました!一部のセミナーは下記アーカイブ配信にてお楽しみいただけます。※アーカイブ配信は予告なく公開終了場合がございます。あらかじめご了承ください。
NsSTREAM Liveでのアーカイブ配信ご視聴方法(Dolby Atmos)
◎NeSTREAM Liveを使用したDolby Atmosアーカイブ配信のご視聴方法詳細はこちらをお読みください。
すでにNeSTREAM Live アプリをインストール済みの方は、下記URLよりQRコードを読み込むことでご視聴可能です。
>>セミナー配信 ご視聴用QRコードはこちら:https://nestreamlive.radius.co.jp/special/sp_event12/
>>パソコン音楽クラブ スペシャルライブ ご視聴用QRコードはこちら:https://nestreamlive.radius.co.jp/special/sp_event13/
技術協力:株式会社クープ https://www.qooop.co.jp/index.html
NeSTREAM LIVE サービス詳細 https://nestreamlive.radius.co.jp/
You Tubeでのアーカイブ配信ご視聴方法
◎You Tubeでのアーカイブ配信のご視聴はこちら
※動画ウインドウ内右上の「再生リスト」をクリックすると公開中の全てのセミナーがご視聴いただけます。
TOPタイムテーブルオンラインの視聴方法DAY1セミナー紹介DAY2セミナー紹介協賛各社様展示コーナー同時開催コンソール展現地参加募集要項DolbyAtmos試聴方法
Pro Tools Studio / Artist 年間サブスクリプションライセンス当選者発表!
多数のご回答をいただき、誠にありがとうございました。厳正なる抽選の結果、下記のみなさまにプレゼントが当選いたしました!当選者のみなさまには別途メールにてご案内を送付しております。※メールが届いていないという方はお手数ですが迷惑メールフォルダのご確認をお願いします。
Avid Pro Tools Studio 年間サブスクリプション
新規ライセンス(4名様)
しゅるすと 様
Daisuke Sato 様
ななお 様
ヒデ 様
Avid Pro Tools Artist 年間サブスクリプション
新規ライセンス(8名様)
cafe 様 / こーが 様
さの 様 / Shizu 様
Nobuhiro 様 / 福本 様
リチャード様 / 33 様
◎タイムスケジュールのご案内
Avid Creative Summit 2023 Day1
Avid Creative Summit 2023 Day2
PDF:Avid Creative Summit 2023_Timetable_Day1
PDF:Avid Creative Summit 2023_Timetable_Day2
PDF:Avid Creative Summit 2023_Timetable_両日
【Day1】 4πが開く表現の扉
新しい表現、音楽を楽しむ環境が整った今、その制作ノウハウと最新TIPSを一挙公開
◎Day1 第一部(前半3セミナー)
◎Music Seminar #1 4πへの階段
〜 MILやVSVerb などを通して垣間見るイマーシブ制作のNext Step 〜
3月2日(木)13:15〜13:45 ◎抽選会あり
昨年誕生したMIL=Media Integration Labの音響設計を担当されたSONAの中原氏を講師に迎え、「イマーシブのその先にあるもの、次の目標地点とはどこなのか?」をテーマにお話いただきます。MILで実現した4π 試聴環境構築の舞台裏をはじめ、音響ハウスの響きを再現した話題のリバーブプラグイン「ONKIO Acoustics」のコア技術=VSVerbに関するお話など、既存フォーマットの先を見据えた立体音響のテクノロジーについて様々な視点から解説いただきます。
講師:中原 雅考 氏
株式会社ソナ 専務取締役
オンフューチャー株式会社 代表取締役
株式会社ソナ http://www.sona.co.jp/
1995年に九州芸術工科大学の修士課程を修了し、株式会社ソナに入社。以来、多くのスタジオ設計に携わる。2005年、九州大学より博士(芸術工学)を授与。2006年、尾本章教授(九州大学)とオンフューチャー株式会社を設立。ソナでの建築音響業務に加え、音響技術に関する開発などを行っている。例えば、ONKIO Acousticsに搭載されているリバーブエンジンVSVerbなどはその一例。2013年にAESジャパンアウォード、2021年に日本音響学会活動貢献賞を受賞。
◎Music Seminar #2 マスターファイルってどうなっているの?
〜 Dolby Atmos マスターファイル徹底解説 〜
3月2日(木) 14:00〜14:30
2021年6月、Apple Musicで空間オーディオが発表され、現在ではリリース作品も多く見受けられる状況となったDolby Atmos。国内でも対応スタジオやリリース作品も増え、Dolby Atmosでの作品リリースをお考えの方も多くなっているのではないでしょうか。制作のツールも揃い、誰でも手軽に制作が可能になっているということは、これまでにもいろいろな機会にご紹介させていただいています。このセミナーではミキシングが完成した後の工程を題材とし、マスターファイルってどんなフォーマット?どうやって作るの?など様々な疑問を解消すべくDolby Japan藤浪崇史氏をお招きしてお話を伺います。
講師: 藤浪 崇史 氏
Dolby Japan 株式会社
コンテンツ&ワークフロー部
コンテンツ・テクニカル・マネージャー
Dolby Japan https://www.dolbyjapan.com/
愛知県出身。カリフォルニア州立大学ノースリッジ校卒。同大学卒業後、名古屋の音響効果会社に入社。テレビやスポーツ(野球)、音楽ライブなど様々な現場で音響効果を担当する。 2022年9月Dolby Japan 入社。国内のDolby Atmosコンテンツ制作における技術サポートを担当。主な活動の一つとしてポストプロダクション、音楽スタジオ、エンジニア、アーティス トへ向けて、スタジオ制作から配信までのワークフローを解説、サポートする。
◎Music Seminar #3A.I. × Professional Vol.1
〜 iZotope Neutron 4 meets 土岐彩香 〜
3月2日(木) 14:45〜15:15 ◎抽選会あり ※アーカイブ配信なし
OzoneやNeutronに代表されるiZotopeソフトウェアが誇るA.I.アシスタント。その提案の長所と短所を捉え、どのように発展させれば良いか、A.I.アシスタントと第一線のプロエンジニアの技術が交差することで、発展への未来を導くシリーズ『A.I. × Professional』の第一回をAvid Creative Summit 2023にてお届けいたします。記念すべき第一回のゲストにはミキシングエンジニアの土岐彩香氏をお迎えし、Avid Pro Toolsセッション上でのNeutron 4との化学反応をお届けします。iZotopeのA.I.アシスタント機能は全く使っていないというエンジニア様にも、逆に頼りがちという初心者様にとっても、活用の糸口となるセミナーです。
講師:土岐 彩香 氏
Recording/Mixing engineer
WEB: https://toki.work/
青葉台スタジオからエンジニアのキャリアをスタートし、現在はフリーランスで活動中。 打ち込みと生音の合わさるダンスミュージックを得意とする。ついベースとキックを大きくしがちな、グルーブ好きエンジニア。
◎Day1 第二部(後半3セミナー)
◎Music Seminar #4 4πミックスの可能性
〜サウンドプロデューサーURU氏による360 Reality Audio ミキシングテクニック〜
3月2日(木) 15:45〜16:15 ※一部アーカイブ配信なし
イマーシブ・ミキシングは作品数が増えるにつれ、様々なテクニックやノウハウが生まれてきています。旧譜の再ミックスにはある一定のセオリーが誕生しているとも感じるようになってきていますが、新譜に関してはどうでしょうか?ソニー 360 Reality Audioでの楽曲リリースを実際に行っているURU氏を講師にお迎えし、プロデューサー、トラックメーカーをベースとした目線でのイマーシブ・ミキシングのあり方、実際の制作からのノウハウをお話しいただきます。アーティスト寄りの立場から生まれるアイデアとノウハウは、作品の世界ごと立体空間へフルダイブすることができるもの。イマーシブ・ミキシングを行っている方必見のセッションです。
講師: URU 氏
Sony Music Publishing,Japan専属作家
BIZM inc.プロデューサー
WEB:https://smpj.jp/songwriters/uru/
R&B、HIPHOP、JAZZ、ELECTRO、ROCK、LATINなど、幅広いジャンルのソングライティング、トラックメイキング、ミックスまでこなすサウンドプロデューサー。東京の自身のスタジオ”blue velvet studio”に拠点を置き、日本のアーティストに限らず、韓国、中国、台湾、香港、インドネシア、コロンビアなど、海外のアーティストの楽曲も数多く手がけている。近年は、360 Reality Audio Mixも多数手がけている。
講師:渡辺 忠敏 氏
ソニー株式会社
360 Reality Audioコンテンツ制作スペシャリスト
ソニー株式会社 https://www.sony.co.jp/
360 Reality Audioクリエイター向け特設ページ:https://www.sony.co.jp/Products/create360RA/
AVアンプなどコンシューマーオーディオ製品の音質設計やSuper Audio CDコンテンツ制作フィールドサポートを経て、現在360 Reality Audioコンテンツ制作のフィールドサポートとして国内外の制作の技術的サポートを行っている。
◎Music Seminar #5 What's New Avid Audio Product 2023
〜Pro Tools 最新情報&最新プロダクトの紹介〜
3月2日(木) 16:30〜17:00
2022年に発売されたAVID最新プロダクトMBOX Studioを中心に、Pro Toolsの最新アップデート情報やTipsをご紹介。
講師: 小笠原 一恵 氏
Avid Technology
オーディオ・ソリューション・スペシャリスト
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
ヨーロッパにてクラシックからジャズと幅広い音楽ジャンルでの作編曲および演奏活動を経て帰国、現在はAvidのオーディオ・ソリューション・スペシャリストとして活躍しています。
◎Music Seminar #6パソコン音楽クラブ SPECIAL LIVE!!
〜 Lush HubからDolby Atmosで生配信! Supported by NeSTREAM Live 〜
3月2日(木) 17:15〜17:45 ◎抽選会あり
イマーシブ・オーディオの次のステップは、ライブ配信だということに異存はないでしょう。実際にサービスを立ち上げ、活用が始まっているNeStream Liveを使ったMusic Liveを当日LUSH HUBより配信します!会場にお越しの方は、Dolby Atmosフォーマットでのライブ配信を行っている様子を、オンラインでご参加の方は実際に制作されたDolby Atmosでのライブ配信を体験。まさに、イマーシブにとって次のステップと言えるライブ配信の現在地を体験いただきます。
ゲストパフォーマンス:パソコン音楽クラブ
WEB:https://www.pasoconongaku.club/
2015年結成のDTMユニット。メンバーは⼤阪出⾝の柴⽥碧(シバタアオイ)と⻄⼭真登(ニシヤママサト)。往年のハードウェアシンセサイザー・⾳源モジュールを⽤いて⾳楽を制作している。他アーティスト作品への参加やリミックス制作も多数⼿がけており、ラフォーレ原宿グランバザールのTV-CMソング、TVドラマ「電影少⼥- VIDEO GIRL AI 2018 -」の劇伴制作、アニメ「ポケットモンスター」のEDテーマ制作など数多くの作品も担当している。演奏会も精⼒的に⾏っており、FUJIROCK2022へも出演し話題になる。2018年に初の全国流通盤となる1stアルバム『DREAM WALK』をリリース。2019年、2ndアルバム『Nigh t Flow』は第12回CDショップ⼤賞2020に⼊賞し注⽬を集める。2021年10⽉には3rdアルバム『See-Voice』をリリース。2022年7⽉には⾃⾝初のデジタルシングル『KICK&GO(feat.林⻘空)』、11⽉には『SIGN(feat.藤井隆)』をリリース。2023年トラック集「DEPOT」シリーズをリリース。
◎NeSTREAM LiveでのDolby Atmos 配信ご視聴方法
Dolby Atmosでのご視聴にはスマートフォンやApple TV 、 Fire TVにNeSTREAM LIVEのアプリをインストールする必要があります。詳細はこちらからご確認ください。
【Day2】 次世代 IP/IT/イマーシブが切り開くワークフロー
次の時代の制作環境を紐解くキーテクノロジーを、実際の事例とノウハウを交えご紹介
◎Day2 第一部(前半3セミナー)
◎Enterprise Seminar #1 Dolby Atmos制作実話
〜映画JSB3 LIVE FILM / RISING SOUND〜
3月3日(金) 13:15〜13:45 ◎抽選会あり ※アーカイブ配信なし
数多くのイマーシブ・ミキシング実績のある染谷和孝氏を講師にお迎えして、映画『JSB3 LIVE FILM / RISING SOUND』のライブフィルム制作実例を元にしたセッションをご紹介します。特に無観客ライブ映像を有観客のように感じさせるiZotope RX 10 Advancedを使用した多くのノウハウや、経験から創られるオーディエンストラックの処理方法は必見です。 ※本セミナーはアーカイブ配信の公開予定はございません。
講師:染谷 和孝 氏
株式会社ソナ
制作技術部
サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
株式会社ソナ http://www.sona.co.jp/
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部広報理事を担当。
◎Enterprise Seminar #2 最新!Avid Video Solution
〜 Avid NEXIS|EDGE、MediaCentralなど時代の先端をいくAvidの制作ソリューション 〜
3月3日(金) 14:00〜14:30
今後の制作システムを考えるにあたり、避けては通れないキーワードがクラウドではないでしょうか?国内ではようやく完全ファイルベースのソリューションが産声を上げたところですが、海外ではクラウドを活用した作業の効率化、合理化が進んでいます。Avidのクラウドソリューション、サーバーソリューションをご紹介するとともに、Media Composerの最新情報、またMedia composerとPro Toolsとの連携ワークフロー(Pix Mix)をご覧いただきます。Next Stepとしてのシステムのあり方をご体験ください。
講師:西岡 崇行 氏
Avid Technology
グローバル・プリセールス
ビデオ・ソリューションズ・スペシャリスト
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
Avid DSのアプリケーション・スペシャリストとしてアビッドテクノロジーに入社以来、20年以上に渡ってあらゆるソリューションに関わってきました。アセットマネージメントやストレージ、CGやオーディオまで、広範囲に渡る知識と経験を活かして、最適なメディア制作ソリューションの提案をミッションとし続けています。
◎Enterprise Seminar #3 サッカードイツ1部リーグで初のDolby Atmosライブリモートプロダクションを実現
3月3日(金) 14:45〜15:15 ※アーカイブ配信なし
近年発展の目覚ましいAoIP技術の一例として、ドイツのサッカー1部リーグのテレビ番組制作を実例にご紹介します。ドイツで圧倒的な人気を誇る同プログラムでは、コンテンツのさらなる充実と差別化を目的にDolby Atmosでの番組製作が始まっています。毎週ドイツの各地で行われる試合を、国内だけに留まらず世界各国の放送事業者に対して、Dolby Atmosで年間を通じてコンスタントに届けるために採用されたのが、ライブリモートプロダクションという方法です。遠隔地との通信ではある程度の遅延が発生する事は通常避けられませんが、特に生放送の番組制作では非常にシビアな事柄になってきます。今回取り上げるドイツの製作現場では、これをAoIPの技術で如何に解決して実用化へと結びつけているかという事にスポットライトを当てて、ご紹介致します。
講師:数金 千恵 氏
オタリテック株式会社
プリセールスマネージャー
オタリテック株式会社:https://otaritec.co.jp/
◎Day2 第二部(後半3セミナー)
◎Enterprise Seminar #4 Dante's Next Step!大規模システム、Videoとの共存、Dante第2章が始まります!
〜 Dante AVによるVideoとの統合、Dante on Demandによる遠隔地間の通信 〜
3月3日(金) 15:45〜16:15
AoIPの代表として市場に浸透しているDante。ライブの現場設備から、制作システムへの活用まで様々なところでその利便性が認められて普及しています。Danteの次のステップは、Dante AVと呼ばれる映像信号をDante Networkで伝送できるソリューション。映像と統合環境となることで幅広い環境でのDante活用が考えられます。また、従来はLocal Area Networkでの接続であったDanteの遠隔地点間の信号やり取りはDante Domein Managerで実現していますが、さらに大規模なシステムとしてDante on Demandの準備が進んでいます。AoIPの未来形をご覧ください。
講師:川北 敏樹 氏
Audinate
シニアマネージャー、ジャパン
Audinate:https://www.audinate.com/?lang=ja
2018年にAudinateに入社以来、AVoIPのパイオニアであるDanteを日本市場で普及させて参りました。オーディオのみのIPプラットフォームと思われがちなDanteですが、ビデオも本格化してきており、今後はクラウド環境など、さらに進化を続けてまいります。乞うご期待くださいませ。
◎Enterprise Seminar #5What's New Avid Audio Product 2023 for Post
〜 Pro Tools最新情報&最新プロダクトの紹介 〜
3月3日(金) 16:30〜17:00
Pro Toolsの最新アップデート情報やTipsなどを、Postにフューチャーした内容をハンズオンを交えながらご紹介。
講師: Daniel Lovell 氏
Avid Technology
APAC オーディオ・ソリューション・スペシャリスト
マネージャー
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
◎Enterprise Seminar #6 ゲームとイマーシブ:なぜイマーシブが求められるのか?
〜 CAPCOMのゲーム制作現場から最新のゲームオーディオ事情 〜
3月3日(金) 17:15〜17:45 ◎抽選会あり
昨年、イマーシブミキシング対応にスタジオをリニューアルし、スピーカーでのDolby Atmos視聴環境を5室備えることとなった株式会社カプコン。ゲームにとってのイマーシブとは?なぜイマーシブで制作するのか?イマーシブによるゲームの革新と進化、インタラクティブ体験の向上、ユーザー・プレゼンス。そこにあるメリットや必然とはどのようなものなのか、実際に現場の先頭に立たれている瀧本和也氏にお話をいただきます。他業界からみても興味深い、エンターテインメントの最先端を行くゲーム業界の動向、考え方を感じていただけるセッションです。
講師: 瀧本 和也 氏
株式会社カプコン
サウンドプロダクション室
サウンドデザインチーム
シニアサウンドエンジニア
株式会社カプコン:https://www.capcom.co.jp/
CAP’S TONE Capcom Soundteam Official Web:https://www.capcom.co.jp/sound/
バイオハザードシリーズ、モンスターハンターシリーズを中心にミキシングエンジニアとしてゲーム開発に参加し、ゲームオーディオ全体のクオリティを支える。近年は特にダイアログについて多くの試みでクオリティアップを担い、ゲーム内の空間演出も担当。多くのイマーシブオーディオミキシングを積極的に行い、ゲームにおけるインタラクティブなミキシングと演出的な表現としてのミキシングの融合を目指し、研究を重ねている。
協賛各社様展示コーナー 〜話題の新製品をお見逃しなく!〜
当日は協賛各社様による最新ソリューション展示を行います。中には、まだ国内初展示となる話題の新製品の姿も!? 次世代を見据えたプロダクトを知り、流行を先取りできるチャンスをお見逃しなく!
以下、展示予定の製品/システムをご紹介いたします。※展示内容は予告なく変更となる場合がありますので、あらかじめご了承ください。
出展ご協力社様(順不同):
・タックシステム株式会社 https://tacsystem.jp/
・オタリテック株式会社 https://otaritec.co.jp/
・Blackmagic Design
昨年発表され、瞬く間に話題となったDante/MADIインターフェイス NTP Technology DAD Core 256が、いよいよ国内初上陸。どこよりも早く、Avid Creative Summit LUSH HUB会場でお披露目いたします!
<展示予定製品>
・ONKIO Acoustics ・Zaor MIZA 88XL
・NeSTREAM LIVEアプリでDolby Atmos再生に対応している機器は
NEWS
2023/02/03
”Cube: Immersive” 8chキューブでの立体音響作品鑑賞会が開催
日本音楽スタジオ協会(JAPRS)賛助会員社 株式会社アコースティックフィールドがRITTO BASEとともに主催する、立体音響の可能性を知るための鑑賞会が開催されます。毎月8日前後(初回は2月11日)に開催され、参加費は無料、予約も不要となっています。
エンジニアやスタジオ運営に関わる方々をはじめ、立体音響に関心の高いみなさまはぜひ参加を検討されてはいかがでしょうか。
内容
Dolby Atmosや360 Reality Audioなどの納品フォーマットに対する音楽制作が増えてきた中、そもそも立体音響とはどの様な音場なのか? 納品フォーマットの枠内での制作では、その限られた空間表現を超えて立体音響の可能性を知ることはできません。
立体音場生成の標準フォーマットである8chキューブ(下層4chスクエア+上層4chスクエアの立方体)スピーカー配置の再生環境で、優れた立体音響作品を鑑賞することにより、立体音場とはどの様なものなのか、またどの様な可能性があるのかを思考し、立体音場そのものを意識した立体音響制作の意義を知る、あるいは、納品フォーマットで制作する上でもその経験が活きる、と考えこの鑑賞会を企画しました。
毎月8日(または8日に近い日)に開催を予定しています。
対象
立体音響作品の制作に携わる方(エンジニア、プロデューサー、ディレクター、A&R)、あるいは興味のある方、好きな方。
作品
様々なジャンルから厳選した立体音響作品
基本的に作品の入れ替えはせず、毎回同じ作品を鑑賞することができます(作品の追加はあります)
鑑賞スタイル
・1名ずつ8chキューブで作品を鑑賞
・鑑賞者はリストの中から1作品を選択
*複数曲を試聴されたい場合、あらためてお並びいただくか、お待ちいただいている方がいらっしゃらなければ続けて鑑賞できます。
開催日
2月11日(土) 13時~18時
予約不要。時間内でご都合にあわせてお越しください
会場
御茶ノ水 RITTOR BASE
東京都千代田区神田駿河台2-1 OCCビルB1
Google Map
入場料金
無料
主催
株式会社アコースティックフィールド
RITTOR BASE
詳細
鑑賞可能な作品など、イベント詳細はRITTO BASEイベントページに掲載
本イベントに関するお問い合わせは、主催者の株式会社アコースティックフィールド、または、RITTOR BASEへ直接ご連絡ください。
Media
2023/01/18
株式会社カプコン bitMASTERstudio 様 / 圧倒的なパフォーマンスと理想的なアコースティック
バイオハザード、モンスターハンター、ロックマン、ストリートファイター、魔界村など数多くの世界的ヒットタイトルを持つ世界を代表するゲームメーカーである株式会社カプコン。そのゲーム開発の拠点である大阪の研究開発ビル。ここにゲームのオーディオを制作するためのミキシングルームがある。効果音、BGMなどを制作するクリエイター、海外で収録されたダイアログや楽曲、それぞれに仕上がってきたサウンドのミックスやマスタリングを行うためのスペースとなるが、そのミキシングルームが内装からの大改修により新しく生まれ変わった。
度重ねた更新と進化、理想のアコースティック
カプコンのbitMASTERstudio が設けられたのは2006 年のこと。ゲームではカットシーンと呼ばれるムービーを使った演出ができるようになるなど、コンソールの進化や技術の進化により放送・映画と遜色たがわないレベルの音声制作環境が求められてきていた時期である。そして、ステレオからサラウンド、さらにはイマーシブへと技術の進歩によりリファレンスとしての視聴環境への要求は日々高まっていく。
こうしたゲーム業界にまつわる進化の中で、カプコンbitMASTERstudio も時代に合わせて更新が行われていくこととなる。PlayStation2 の世代ではステレオ再生が基本とされる中で、DolbyPro Logic 2 を使ったサラウンドでの表現にも挑戦。PlayStation3 /Xbox の登場以降はDolby Digital が使用できるようになり、5.1chサラウンドへの対応が一気に進むことになる。ゲームにおける音声技術の進化に関しては興味が尽きないところではあるが、また別の機会にまとめることとしたい。
2006年にbitMASTERstudioが誕生してから、次世代のスタンダードをにらみ、ゲーム業界の先を見据えた更新を続けていくこととなる。今回のレポートはまさにその集大成とも言えるものである。改めてbitMASTERstudioの歩みを振り返ってみよう。設備導入当初よりAvid Pro Tools でシステムは構築されており、この時点ではDigidesign D-Control がメインのコンソールとして導入されていた。その後、2009 年に2 部屋目となる当時のB-Studio が完成、こちらにもDigidesign D-Control が導入される。2013 年にはA-Studio の収録用ブースを改修してProTools での作業が行えるようシステムアップが行われ、2015 年にはA-Studio のコンソールがAvid S6 へと更新された。
こうして更新を続け、その時点での最新の設備を導入し続ける「bitMASTERstudio」の大きな転機が、2018年に行ったB-studioの内装から手を加えた大規模な改修工事である。ゲームにもイマーシブ・オーディオの波が訪れ、その確認をしっかりと行うことができる設備の重要性が高まってきているということを受け、いち早くイマーシブ・オーディオ対応のスタジオとしてB-stduioが大改修を受けて生まれ変わった。その詳細は以前にも本誌でも取り上げているので記憶にある方も多いのではないだろうか。金色の衝立のようなスピーカースタンドにぐるっと取り囲まれた姿。一度見たら忘れられないインパクトを持つ部屋だ。
この部屋は音響施工を株式会社ソナ(以下、SONA)が行った。この部屋における音響設計面での大きな特徴は、物理的に完全等距離に置かれたスピーカー群、これに尽きるだろう。物理的にスピーカーを等距離に設置をするということは現実的に非常に難しい。扉などの導線、お客様の座るソファー、そもそもの壁の位置など、様々な要素から少なからず妥協せざるをえない部分が存在する。B-studioでは衝立状のスタンドを部屋の中で理想の位置に設置することで完全等距離の環境を実現している。これは、アコースティック的に理想となる配置であり、そこで聴こえてくるサウンドは電気的に補正されたものとは別次元である。この経験から今回のA-studioの改修にあたっても、前回での成功体験からSONAの施工で内装変更とそれぞれのスタジオのイマーシブ化を実施している。
📷 25年に渡りカプコンのサウンドを支えるエンジニアの瀧本氏。ポスプロで培ったサウンドデザイン、音による演出などのエッセンスをゲーム業界にもたらした。
圧倒的なパフォーマンスを求めたスピーカー群
今回の更新は、A-studioおよびそのブース部分である。前述の通りでブースにもPro Toolsが導入され、Pro Toolsでの編集を行えるようにしてあったが、やはり元々は収録ブースである。そこで今回は、ブースとの間仕切りの位置を変更し、ブースをC-studioとしてひとつのスタジオとして成立させることとなった。それにより、A-studioの部屋は若干スペースを取られることになったが、マシンルームへの扉位置の変更を行いつつ、スピーカーの正面を45度斜めに傾けることでサラウンドサークルの有効寸法に影響を与えずに部屋を効率的に使えるような設計が行われた。なお、この部屋は研究開発ビルのフロアに防音間仕切りを立てることで存在している空間である。その外壁面には手を加えずに内部の間仕切り、扉の位置などを変更しつつ今回の更新は行われている。
📷 スタジオ配置がどのように変更されたかを簡単な図とした。間仕切りの変更といっても、かなり大規模な改修が行われたことがわかる。
それではそれぞれのスタジオを見ていこう。まずは、旧A-studio。こちらはDubbing Stageと名称も新たに生まれ変わっている。なんといっても正面のスピーカー群が初めに目を引くだろう。旧A-studioでは、MK社製のスピーカーがこの部屋ができた当初のタイミングから更新されることなく使用されてきた。その際にスピーカーはスクリーンバックに埋め込まれていたのだが、今回はスクリーンバックではなく80 inchの巨大な8K対応TVへと更新されたことで、すべてのスピーカーのフェイスが見えている状態での設置となった。正面に設置されたスピーカーは、一番外側にPMC IB2S XBD-AⅡ、その内側にPMC 6-2、さらに内側にはサブウーファーであるPMC8 SUBが2本ずつ、合計4本。センターチャンネルにPMC 6-2という設置である。
PMC IB2S XBDはIB2SにスーパーローボックスとしてXBDを追加した構成。2段積みで1セットとなるスピーカーである。これはステレオ作業時に最高の音質でソースを確認するために導入された。カプコンでは海外でのオーケストラなどの収録によるBGMなど、高品位な音源を多数制作している。せっかくの音源をヘッドホンやPCのスピーカーで確認するだけというのは何とも心もとない。クリエイター各自の自席にも、Genelec 8020で5.1chのシステムは設置されているが、それでもまだまだスピーカーサイズは小さい。しっかりとした音量で細部に渡り確認を行うためにもこのスピーカーが必要であった。
📷 ダブルウーファー、3-wayで構成されたPMC6-2。PMCのサウンドキャラクターを決定づけているATLのダクトが左に2つ空いているのがわかる。新設計となるスコーカーとそのウェーブガイドもこのスピーカーのキーとなるコンポーネント。
この IB2S XBDが選定されることになった経緯は2019年のInterBEEまで遡ることとなる。この年のInterBEEのPMCブースにはフラッグシップであるQB1-Aが持ち込まれていた。4本の10 inchウーファーを片チャンネル2400wという大出力アンプが奏でる豊かな低域、そして1本辺り150Kgという大質量のキャビネットがそれを支える。解像度と迫力、ボディー、パンチのあるサウンド。文字としてどのように表現したら良いのか非常に難しいところであるが、あの雑多なInterBEEの会場で聴いても、その圧倒的なパフォーマンスを体感できたことは記憶にある。このQB1-Aとの出会いからPMCのスピーカーに興味を持ち、導入にあたりPMCのラインナップの中からIB2Sを選定することとなる。しかし、IB2S単体ではなくXBD付きの構成としたということは、やはりQB1-Aを聴いたときのインパクトを求めるところがあったということだろうか。
📷 PMC QB1-Aがこちら。迫力ある存在感もさることながら、このスピーカーから再生されるサウンドは雑多なInterBEEの会場で聴いても際立ったものであった。ここでのPMCとの出会いから今回の更新へとつながったと考えると感慨深い。
6本のサブウーファーが同時駆動するシステムアップ
📷 天井にも4本のPMC6-2が設置されている。天井からの飛び出しを最低限とするため半分が埋め込まれ、クリアランスとリスニングポイントまでの距離を確保している。
サラウンド、イマーシブ用のスピーカーには、PMCの最新ラインナップであるPMC6-2が選ばれている。当初はTwo-Twoシリーズが検討されていたということだが、導入のタイミングでモデルが切り替わるということで急遽PMC6シリーズの試聴が行われ、PMC6-2に決定したという経緯がある。その際にはPMC6との比較だったということだが、ローエンドの豊かさやボリューム感、スコーカーによる中域帯の表現力はやはり PMC6-2が圧倒したようだ。それにより、天井に設置するスピーカーも含めてPMC6-2を導入することが決まった。天井部分はひと回り小さいスピーカーを選定するケースも多いが、音のつながりなどバランスを考えると同一のスピーカーで揃えることの意味は大きい。この点はスピーカー取り付けの検討を行ったSONAでもかなり頭を悩ませた部分ではあったようだが、結果的には素晴らしい環境に仕上がっている。
📷 音響へのこだわりだけでなく、意匠にもこだわり作られたサラウンド側のPMC6-2専用スタンド。フロントの三日月型のオブジェと一体感を出すため、ここにも同じコンセプトのデザインが奢られている。
サラウンド側のスピーカースタンドは、SONAの技術が詰まった特注のもの。特殊なスパイク構造でPMC6-2をメカニカルアース設置しており、スピーカーのエンクロージャーからの不要な振動を吸収している。スタンドの両サイドにはデザイン的に統一感を持った鏡面仕上げのステンレスがおごられ、無味乾燥なデザインになりがちなスピーカースタンドにデザイン的な装飾が行われている。近年ではあまり見ないことだが「気持ちよく」作業を行うという部分に大きな影響を持つ部分だろう。
サラウンド用のLFEはPMC8 SUBが4本導入された。設置スペースの関係からPMC8 SUBが選ばれているが、実際に音を出して85dBsplのリファレンスでの駆動をさせようとすると、カタログスペック的にも危惧していた点ではあったがクリップランプが点いてしまった。そこで、サブウーファー4本という構成にはなるがそれを補えるように IB2S XBDのXBD部分を同時に鳴らすようにシステムアップされている。結果、都合6本のサブウーファーが同時に駆動していることになり、XBDボックスと同時に鳴らすということで余裕を持った出力を実現できている。6本ものサブウーファーが同時に鳴るスタジオは、さすがとしか言いようがないサウンドに包まれる。
これらのスピーカーは部屋の壁面に対して正面を45度の角度をつけて設置が行われた。従来はマシンルーム向きの壁面を正面にして設置が行われていたが、角度をつけることで多数のスピーカー設置、そしてTVモニターの設置が行われる正面の懐を深く取ることに成功している。そして正面の足元には、そのスピーカーを美しく演出する衝立が設置された。足元をスッキリと見せるだけではなく色の変わる照明をそこに仕込むことで空間演出にも一役買っている。ちょっとした工夫で空間のイメージを大きく変化させることができる素晴らしいアイデアだ。天井や壁面に設置された音響調整のためのパネルはピアノブラックとも言われる鏡面仕上げの黒で仕上げられている。写真ではわかりにくいかもしれないが、クロスのつや消し感のある黒と、この音響パネルの光沢黒の対比は実際に見てみると本当に美しい。影で支える音響パネルが、過度の主張をせず存在感を消さずにいる。
Avid MTRXを中心にシステムをスリム化
📷 Dubbing Stageに導入されているAvid S6 M40は16フェーダー仕様。右半分にはウルトラワイドディスプレイがコンソール上に設置されている。キーボードの左にトラックボールが置かれているのはサウスポー仕様。この部屋を使うエンジニア3名のうち2名が左利きのため民主主義の原則でこの仕様になっているそうだ。
📷 ラックの再配置を行ったマシンルーム。3部屋分の機器がぎっしりと詰まっている。この奥にPMCのパワーアンプ専用のアンプラックがある。
作業用のコンソールに関しては、前システムを引き継いでAvid S6-M40が設置された。これまでは、SSL Matrixを収録用のサブコンソールに使ったりといろいろな機器が設置されていたが、今回の更新では足元のラックを残してそれらはすべて撤去となり、スッキリとしたシステムアップとなった。収録を行う作業の比率が下がったということ、そしてPro Toolsや開発コンソールといったPCでの作業ウェイトが大きくなってきているということが、システムをスリム化した要因だということだ。このシステムを支えるバックボーンは、Avid MTRXが導入されている。これまで使ってきたAvid MTRXはB / C-studio用に譲り、追加で1台導入してこの部屋の専用機としている。社内スタッフ同士での共有作業が中心であったため、機材をある程度共有するシステムアップで運用してきたが、メインスタジオとなるDubbing Stageの機器は独立システムとして成立させた格好だ。
主要なシステムの機器としては、このAvid MTRXとPro Tools HDXシステム、そして持ち込まれた開発PCからの音声を出力するためのAVアンプとなる。開発用PCからはゲームコンソールと同様にHDMIでの映像 / 音声の出力が行われ、これをアナログ音声にデコードするためにAVアンプが使われている。音響補正はAvid MTRX内のSPQモジュールが使われ、PMCスピーカー側のDSPは利用していない状況だ。ベースマネージメント、特に6本のサブウーファーを駆動するための信号の制御や処理がMTRXの内部で行われていることとなる。
同軸で囲む、新設された銀の部屋
📷 Dynamic Mixing Stage - SILVER。GOLDと対となるSILVERの部屋。写真で並べて見るとそのコントラストがわかりやすいだろう。スピーカーはKS Digital、デスク正面には、LCRにC88、サブウーファーとしてB88が合わせて5台設置されている。コンソールはAvid S1が導入されている。
もう一つの新設された部屋である、旧ブースとなるスペースを改修したDynamic Mixing Stage - SILVERをご紹介したい。旧B-StudioにあたるDynamic Mixing Stage - GOLDはその名の通り「GOLD=金」をデザインのテーマに作られている。そしてこちらのSILVERは「SILVER=銀」をデザインのコンセプトとして作られた。ほかの2部屋が黒を基調とした配色となっているが、こちらのSILVERは白がベースとなり音響パネルは銀色に仕上げられているのがわかる。
📷 サラウンド側のスピーカー。音響パネルで調整されたこだわりのスピーカー設置が見て取れる。この音響パネルが銀色に仕上げられており、GOLDの部屋と同様に深みのある色で仕上げられている。
スピーカーから見ていこう。こちらの部屋にはKS Digitalのスピーカーが選定された。GOLDの部屋はGenelec the ONEシリーズ、DubbingはPMCとそれぞれの部屋であえて別々のメーカーのスピーカーが選ばれている。同一のメーカーで統一してサウンドキャラクターに統一感を持たせるということも考えたということだが、様々なキャラクターのスピーカーで確認できるということも別のベクトルで考えれば必要なことだという考えからこのようなセレクトとなってる。また、多チャンネルによるイマーシブ・サラウンド構築において同軸スピーカーを選択するメリットは大きい。特にSILVERのような容積が少なく、サラウンドサークルも小さい部屋であればなおさらである。その観点からも同軸であるKS Digitalの製品がセレクトされている。正面のこれらのスピーカーはSONAのカスタム設計によるスタンドでそれぞれが独立して設置されている。こちらもすべてのスピーカーがメカニカルアース設置され、これだけ密接していても相互の物理的干渉が最低限になるように工夫が凝らされている。物理的な制約のある中で、可能な限り理想的な位置にスピーカーを自然に設置できるように工夫されていることが見て取れる。
SILVERのシステムは、AVID Pro Tools HDX、I/OはGOLDと共有のAVID MTRXが使われている。コントローラーは部屋のサイズからもAvid S1が選ばれている。シグナルのフロントエンドとなるAD/DAコンバーターはGOLDと共有ではなく、それぞれの部屋ごとにDirectout Technologies ANDIAMOが導入されている。このコンバーター部分を部屋ごとに持つことでトラブル発生時の切り分けを行いやすく、シンプルな構築を実現している。
Avid S4へ更新された金の部屋
📷 Dynamic Mixing Stage - GOLD。以前本誌でも取り上げさせていただき、大きな反響があったカプコンにとって最初のイマーシブ対応スタジオだ。
部屋の内装、スピーカーなどに変更は加えられていないが、同時にDynamic Mixing Stage - GOLDのコンソールが同じタイミングで更新されている。これまで使われていたAvid S3からAvid S4へとグレードアップだ。これによりAvid S6が導入されているDynamic Dubbing Stageとの操作性の統一も図られている。やはり、同一メーカーの製品とはいえS3とS6では操作性がかなり異なりストレスを感じることが多かったようだ。S6ならばできるのに、S6だったらもっとスムーズに作業ができたのに、ということがS4へ更新を行うことでほとんどなくなったということだ。ただし、フェーダータッチに関してだけはS6と共通にしてほしかったというコメントもいただいた。制作作業において一番触れることが多い部分だからこそ、共通した仕様であることの意味は大きいのではないだろうか。
📷 今回の更新でコンソールがAvid S4へと更新、カスタム設計の机にユニットが埋め込まれてる。これはスピーカーにかぶらないようにというコンセプトからによるもので、ディスプレイが寝かされていることからも設計のコンセプトが感じられるだろう。
GOLDのAvid S4は製品に付属する専用シャシーを使わずに、カスタム設計となったデスクへの埋め込みとしている。デスクトップのシャシーであるS4は、普通の机にそのまま設置するとどうしても高さが出てしまう。シャシーごと埋め込むというケースは多いのだが、今回はモジュールを取り出してデスクに埋め込むという手法が用いられた。S6ではこれまでにも実績のあるカスタマイズだが、S4でのカスタムデスクへの埋め込みは初の事例である。これは今後スタジオの更新を考えている方にとって参考となるのではないだろうか。
スピーカーでサウンドを確認する意義
📷 デザイン性の高い空間の居住性と、音響のバランスを高いレベルで整えることに成功し、そのコンセプトやここに至る経緯を色々とお話いただいた。GOLDの部屋で実現した理想の音環境をそれ以外の2部屋でも実現できたと語っていただいた。
すべてのスタジオを7.1.4chのイマーシブ対応としたカプコン。これまでにもレポートした検聴用の2部屋と合わせて、しっかりとしたチューニングがなされた7.1.4chの部屋を5部屋持つこととなる。
ゲームではもともとが3Dで作られているのでイマーシブに対しての親和性が高い。どういうことかと言うと、ゲーム(3Dで作られているもの)は映像や中で動くキャラクター、様々な物体すべてが、もともとオブジェクトとして配置され位置座標などを持っている。それに対して音を貼り込んでいけば、オブジェクトミックスを行っていることと一緒である。
最終エンコードを行う音声のフォーマットが何なのか、Dolby Digitalであれば5.1chに畳み込まれ、Dolby True HDであればDolby Atmos。最終フォーマットに変換するツールさえ対応していれば、ゲームとして作った音はもともとが自由空間に配置されたオブジェクトオーディオであり、すでにイマーシブであるということだ。逆にゲーム機から出力するために規格化されたフォーマットに合わせこまれているというイメージが近いのではないだろうか。
そう考えれば、しっかりとした環境でサウンドを確認することの意味は大きい。ヘッドホンでのバイノーラルでも確認はできるが、スピーカーでの確認とはやはり意味合いが異なる。バイノーラルはどうしてもHRTFによる誤差をはらむものである。スピーカーでの再生は物理的な自分の頭という誤差のないHRTFによりサウンドを確認できる。自社内にスピーカーで確認できるシステムがあるということは本当に素晴らしい環境だと言えるだろう。
ゲームにおいて画面外の音という情報の有用性を無意識ながらも体験をしている方は多いのではないだろうか。仮想現実空間であるゲームの世界、そのリアリティーのために重要な要素となるサウンド。世界中のユーザーが期待を寄せるカプコンのゲームタイトルで、そのサウンドに対するこだわりは遥かなる高みを見据えている。
📷 今回の取材にご協力いただいた皆様。左下よりカプコン瀧本和也氏、スタジオデザイン・施工を行ったSONA土倉律子氏、SONA井出将徳氏、左上に移りROCK ON PRO前田洋介、PMCの代理店であるオタリテック株式会社 渡邉浩二氏、ROCK ON PRO森本憲志。
*ProceedMagazine2022-2023号より転載
Music
2023/01/11
株式会社サウンド・シティ様 / 時代が求める最大限の価値を提供していく〜新たなフラッグシップ・スタジオ「tutumu」
麻布台の地において46年間にわたって日本の音楽産業を支え続けてきた「株式会社サウンド・シティ」。前身である「株式会社飛行館スタジオ」時代から数えればその歴史は60年を超えているが、老舗の座に安んじることなく常に時代の先端をとらえ続けてきたスタジオである。この2022年8月には、Dolby Atmos / 360 Reality Audioの両方に対応したイマーシブ・スタジオ「tutumu」(ツツム)をオープン。同社の最新にして最大の挑戦ともなったこのスタジオのシステムや、オープンに至るまでの経緯などについてお話を伺った。
新たなフラッグシップ・スタジオ「tutumu」
「サウンド・シティの、ひいては日本のフラッグシップとなるようなスタジオを作ろう」というコンセプトのもと、Dolby Atmosと360 Reality Audio両対応のイマーシブ・スタジオ開設の構想が生まれたのは2021年7月ごろ。ちょうど、同年6月に中澤氏と明地氏が取締役に就任してまもなく、同社の価値を“リブランディング”しようと考えていた時期だという。
リブランディングにあたっては、音楽レコーディング・スタジオとポストプロダクションというふたつの事業を柱として日本の「音」を支え続けてきた同社の存在意義を「よいレコーディングスタジオ、よい映像編集室、そしてよい人材をはじめとして、映像と音楽を作りたい方々に対して技術面で最大限の価値を提供していくこと」(明地氏)と再定義しており、これからの時代に求められる価値を提供することができる新たなフラッグシップ・スタジオ「tutumu」をオープンすることは、サウンド・シティという“進化を止めない老舗スタジオ”に相応しいプロジェクトだったようだ。
折しもApple Musicが空間オーディオへの対応を開始し、アーティストやクライアントからその作品作りに関する相談を受け始めていたというが、しかしそれはまだごく一部の話。音楽におけるステレオの価値も根強い状況で、これほど大規模なイマーシブ・サウンド対応へ舵を切ったことに何か確信はあったのだろうか。
明地氏によると「これまで存在した、オーディオ・ファイル向けサービスのような技術だったらtutumuの開設は決断しなかった。空間オーディオは従来のマルチチャンネルと違って、既存のストリーミング・サービスの中で聴ける。これは確実に浸透する流れだと判断できたので、だったらそれができる部屋を作ろう、と。それも、サウンド・シティの新しい“顔”になるようなスタジオを作ろうと考えました。」とのことだ。さらに同氏は「テクノロジーの進化速度はすごく速くて、スタジオで作ったモニターをヘッドホン / イヤホンで再現できる時代というのが追いかけてくるはず。その先には、音や映像を立体で楽しむ時代が来ると思う。その舞台が車内なのかメタバースなのかはわからないが、これから先は立体の中で作品を作る時代になる」という確信があるという。
マーケットが成熟してから始めるのではなく、将来、誰もが必要とする技術であるという確信に基づいて作られたtutumuは、サウンド・シティだけでなく、まさに日本の音楽スタジオ全体のフラッグシップとなるべく生まれたスタジオと言えるだろう。これには、プロジェクト発足当初からシステムの設計を中心に携わったオンズ株式会社 井上氏も「このタイミングであれば、真似しようとしてもできないスタジオを作れると思いました。そういう意味では、周りがどうということではなく、ここが発信地だという熱い想いでやらせていただきました。」と語っていた。
Dolby Atmos / 360 Reality Audioハイブリッド
tutumuの特長のひとつは、ひとつのスピーカー・システムでDolby Atmosと360 Reality Audioのどちらにも対応できるという点だ。明地氏によると、これからイマーシブ・オーディオの時代は必ず来るという確信はあったというが、将来、主流になるテクノロジーがDolby Atmosなのか360 Reality Audioなのか、それともまったく別のものになるのかはわからないため、将来的にどんな規格にも対応できるスタジオにしたいという想いがあったという。
スピーカー・レイアウトにおけるDolby Atmosと360 Reality Audioの最大の違いは、Dolby Atmosの音場が半天球であるのに対して360 Reality Audioは全天球である点だが、ただ単にDolby Atmosのレイアウトにボトム・スピーカーを足せばよい、というほど簡単にはいかない。映画館での上映を最終的な目的としているDolby Atmosと、音楽作品を前提としている360 Reality Audioでは、Hightスピーカーのレイアウトに対する考え方が異なっているのだ。
Dolby AtmosにおけるHightスピーカーのレイアウトは「半球面上でFrontのLRと同一の線上、かつ、リスニング・ポイントから前後にそれぞれ45°の角度となる位置」となっており、360 Reality Audioは「ITU-Rに準拠した配置の5.1chを上層にも配する」となっている。誤解を恐れずに言ってしまえば、Dolby Atmosはスピーカー・レイアウト全体が半球面になることを重視しており、360 Reality Audioは水平面におけるスピーカー間の角度に重きを置いているということになるだろうか。
「異なるふたつのレギュレーションを同時に満たすためのスピーカー・レイアウトについては、社内でもかなり議論を重ねた」とは日本音響エンジニアリング株式会社 佐竹氏のコメントだが、「tutumuは天井高が仕上げで3m取れる部屋だったため、ハイトスピーカーも含めて球面に近い距離ですべてのスピーカーを配置する計画が可能だった」という。具体的にはDolby Atmosの配置をベースにしつつ、360 Reality Audioにも対応できる形になっているそうだ。
昨今、イマーシブ・オーディオ対応のスタジオ開設が増えつつあるが、その中で必ず話題に挙がるのが天井の高さについてである。佐竹氏は「天井が高くなければできないということはないが、天井は高い方が有利だと思う」とのことで、この点に関しては同社の崎山氏も「天井高が足りない場合、角度を取るか距離を取るかという話になる。そうすると、例えば電気的なディレイで距離感を調整したりすることになるが、実際にスピーカーとの距離が取れている部屋と同じには決してならない」と話してくれた。「新設でこの高さをリクエストされても、物件がない。あったとしても、通り沿いの商業ビルの1Fとか、アパレルのフラッグシップ店舗が入るような高価なところしかない」(井上氏)と言う通り、新しいビルでイマーシブ・スタジオに相応しい物件を探すのは非常に難しい。
その点、tutumuは先にも述べたとおり天井高が仕上げで3m取れており、スピーカーも理想的な配置がなされている。まさに老舗の強み。社屋までもが現在では手に入れられない価値を持ったビンテージ品となっているようなものだ。そして、その恩恵は天井高だけではない。崎山氏によれば、最近の建築は鉄骨造の躯体が多く、軽量化されているため重量が掛けられず強固な遮音層の構築が難しいのだという。「ここは建物が古いので躯体が重く頑丈。すると、天井が高いだけでなく低域の出方もよくなる。スピーカーのセットをガッチリ作れるので音離れがいいんですよね。」(崎山氏)という恩恵もあるようだ。もしかしたら、理想のスタジオを作るためにあえて古き良き物件を探すということも選択肢になるのかもしれない。
時代が求めるPMCのサウンド
📷 tutumu のスピーカー構成は「9.2.5.3」となる。Dolby Atmos 9.2.4 を基本に、360 Reality Audio はTop Center x1、Bottom x3 を追加した 「9.0.5.3」で出力される。 写真右が Front LCR に用いられた「PMC6-2」、左が今回計 14 台導入された「PMC6」となる。
イマーシブ環境においてどのようなスピーカーを選定するかということは極めて重大なファクターだが、tutumuではイギリスのメーカーであるPMCが採用された。Front LCRは「PMC6-2」、Subwooferは「PMC8-2 SUB」、その他はすべて「PMC6」という構成となっており、これらはすべて発売が開始されたばかりの最新モデルだ。工事に先立ち日本音響エンジニアリングのスタジオでおこなわれたスピーカー選定会には、実はこれらのモデルは間に合わない予定だったという。しかし、奇跡的に選定会当日に到着したデモ機を試聴して、「聴いた瞬間、満場一致でこれに決まった」(サウンド・シティ 中澤氏)というほどそのサウンドに惚れ込んだようだ。
「とにかくバランスがいい。特性的にもナチュラルでイマーシブ向きだと思った」(中澤氏)、「本当に音楽的。音の立ち上がりがよく、ちゃんと動いてちゃんと止まるから余韻でドロつかない。ミキサー目線でもリスナー目線でも、どちらで聴いても完璧。これしかないですね、という感じだった」(秦氏)と大絶賛だ。秦氏によれば「イマーシブって全方向から音を浴びるので、どっと疲れたりするんですけど、これはそうした疲れを感じない」のだという。これらの新モデルについては、「そもそも、Dolbyと半ば共同開発のようにして、イマーシブに対応できることを前提に作られている」(オタリテック 兼本氏)とのこと。
オブジェクト・トラックの音像は、従来のチャンネルベースで制作されたものに比べると分離がよいため、低域をすべてSubwooferに任せてしまうとパンを振った時などに定位がねじれるという聴感上の問題が発生する。PMCの新モデルではスコーカーを新たに設計し、アンプの容量も旧モデルの2倍にすることで、各スピーカーがより広い帯域を歪みなく再生できるようにブラッシュアップされているのだ。それはSubwooferの設計にも現れており、秦氏は「いい意味でSubwooferの存在感を感じさせない音。鳴っているときは気付かないが、ミュートすると明らかな欠如感がある。これはお披露目会に来た方々が口を揃えて言ってくれて、勝った、と思いました(笑)」と嬉しそうに語ってくれた。
兼本氏によれば「音が速く歪みがない、というのはPMCが創業以来ずっと追求してきたこと。メーカーとしては、時代に合わせてアップデートしたというよりは、変わらない価値観がにわかに時代のニーズと合致した印象」とのこと。誠実なプロダクト・デザインが正当に評価される時代がやって来たということは、心から喜ばしいことだと感じたエピソードだ。
室内アコースティックへのこだわり
tutumuは、以前は「Sスタジオ」と呼ばれた音楽ミックス / MAコンバーチブルのスタジオを改修する形で施工されている。Sスタジオは紆余曲折ありながらも、最終的にはtutumuと同じ日本音響エンジニアリングが施工を担当したスタジオで、仮設ではあるものの5.1chサラウンド・ミックスもできる部屋だったという。そうした経緯から、音楽ミックスを行う部屋としての下地はある程度整っていた部屋だったが、今回の改修にあたっては前述のスピーカー・レイアウトのほかにも様々な改良が加えられている。
まず、特徴的なのはWideやBottomを含めたFrontスピーカーがすべて正面の壁に埋め込まれていることだ。これは低域の特性を暴れにくくするためで、Subwooferを除いても17本ものスピーカーを使用するtutumuのようなスタジオでは非常に重要な課題となる。また、すべて一体になっているステージをモルタルで作り直すことで、Frontスピーカー5本の特性を揃えつつ、Subwooferとのセパレートも向上させている。HightやRearスピーカーに関してはFrontのようにステージを作ることができないが、なるべくガッシリと設置できるように工夫がされているという。実際に設置工事に入った段階で天井を開けてみると空調用のダクトが通っていたようだが、こちらもほとんど作り直したようなものだという。電気的な調整では補えない、アコースティックな領域で聴こえ方を揃えていくために、マシンルームの扉も入れ替えられ、ブース扉にあったガラス窓も吸音材で蓋をされている。
📷 スタジオ後方に配されたAGS。拡散系の調音材でイマーシブ・システムの課題であるリスニング・ポイントの狭さを解消し自然な音場を生み出すのに大きな役割を果たしている。
また、tutumuを作るにあたって留意された点として、イマーシブにありがちな“リスニング・ポイントが狭い”という音響には絶対にしたくないという意向があったという。音楽ミックスの現場にはミキサーだけでなく、クライアントやアーティストが同席することもあるため、前後3列で聴いても音像が崩れないように配慮されている。また、「音楽を聴いていたら頭も動くし体も動く。そういう自然な動きを許容できるように調整している」(秦氏・井上氏)とのことだ。そうした“遊び”を作るために活用されたのが、日本音響エンジニアリングが開発・販売する「AGS」だ。「もともと音楽ミックスもできるように壁の裏には拡散系の調音材も設置されていたので、それをなるべく活かしながら、LCRスピーカーの間にもAGSに近い拡散体を仕込んで音場のバランスを整えて、さらに調整を重ねている」(佐竹氏)とのことだ。
高い機能性と品質を兼ね備えたPro Tools | MTRX
📷 3枚配されたディスプレイは左からメーター系、Pro Tools、Dolby Atmos Renderer。それぞれ別々のMacにつながっており、Video Hubで切り替えることができる。トラブルがあった時に切り分けが容易になるように、ということのようだ。iPadはPro Tools | Controlがインストールされているほか、iPhoneなどの音源をAir Dropで受け取ってすぐに再生できるようになっている。
tutumuのミキサー・デスクにはTac System「VMC-102 IP Studio Monitor Controller」とMerging Technologies「ANUBIS」が置かれている。VMC-102 IP Studio Monitor Controllerは、従来モデルVMC-102の機能を受け継ぎながら、MADI I/F とDante I/Fを1系統ずつ備え、Danteネットワーク上のルーティングを制御する「バーチャル / ルーティング」機能を新たに搭載した最新モデルだ。片や、Pyramixで有名なMerging Technologies最新のハードウェアであるANUBISも、システムのモニターセクションとなる機能を有している。こちらはDanteと肩を並べるAoIP規格であるRavenna / AES 67に対応しており、Dolby Atmosはもとより、22.2chフォーマットさえも内部でステレオにダウンミックスすることができる。
tutumuではVMC-102 IPをメインのモニターコントローラーとして使用しながら、ヘッドホンアンプのようにANUBISを使用するシステムになっている。スピーカーシステムへのアウトプットとは別系統でANUBISへのソースが立ち上げられており、例えばANUBISに接続されたヘッドホンを着ければ、メインのモニターセクションを切り替えることなくステレオやバイノーラルをモニターできる、ということが可能になるように設計されている。スピーカーへの出力はアナログ、モニターコントローラーへはDante / Ravenna、Dolby Atmos RMUとの接続はDante、音響補正を担うDatasat「AP-25」へはAES/EBU、さらに要所要所ではMADIも使用するなど、tutumuではあらゆる伝送規格を網羅するかのように様々な信号が行き交っている。この複雑な構成を一手にまとめるためにオーディオI/Fとして採用されたのが、Avidのフラッグシップ・モデル「Pro Tools | MTRX」だ。
📷 2台のPro Tools | MTRXはそれぞれInput系とOutput系を受け持ち、SPQカードによる音場補正も担っている。その上に見えるのはAvid最新のシンクロナイザー「Pro Tools | Sync X」。
Pro Tools | MTRXは、モジュール方式の構成を採用することによって高い拡張性を誇る。オプションカードを追加することで、アナログはもちろん、Dante、MADI、AES/EBU、DigiLinkポートなどといった幅広い信号のI/Oとなることが可能だ。井上氏によれば「I/FがMTRXだからこそシステムとして具現化できた」とのこと。tutumuでは2台のPro Tools | MTRXが導入されているが、1台はインプットとDolby Atmos RMUを管理、もう1台はスピーカー・システムへのアウトプットを担っている。また、Pro Tools | MTRXはシステムのI/Oだけでなく、音場補正も担っている。tutumuではDatasat AP-25で主に周波数/位相/時間特性の最適化補正をし、Pro Tools | MTRXのオプションカードSPQも使用して最終的な微調整をおこなっている。
しかし、Pro Tools | MTRX採用の理由は機能性だけではない。秦氏曰く「最初に聴いた時、こんなに違うか、と驚いた。解像度はもちろんのこと、とにかく音のスピードが速い。」と、オーディオのクオリティについても非常に満足している様子だ。また、今回導入されたPMC6-2およびPMC6にはアナログだけでなくAES3の入力もあるのだが、「MTRXのDAはとても信頼できる(井上氏)」ということで、スピーカーへのアウトプットはアナログ伝送が採用されている。これもPro Tools | MTRXのオーディオ品質の高さを窺わせるエピソードだろう。
📷 (左)デスクにはモニター・コントローラーが2台。VMC-102 IPではスピーカー・アウトプット、ANUBISではバイノーラルなどのHPアウトと、それぞれ異なるソースが割り当てられているほか、秦氏と井上氏による「魔改造」によって、360 WalkmixとPro Toolsからの出力をワンタッチで切り替えられるようになっている。(中)DATASAT AP-25 の「Dirac 音場補正機能」で周波数/位相/時間特性の最適化補正を掛けた後、Pro Tools | MTRX の SPQ で微調整をおこなっている。(右)ブース内の様子。写真右に見えるガラス戸がスピーカーの一時反射面になるということで、外側にもう一枚扉を作る形で吸音を施している。
「これからの音楽スタジオのフラッグシップとして相応しいもの ができた。」という tutumu。オフィシャルなオープンに先立っ て行われたお披露目会では、参加したクリエイターたちが創 作意欲を喚起されている様子がヒシヒシと伝わって来たとい う。この勢いを見ると「コンテンツを立体で楽しむ」という 時代は、そう遠い未来のものでもないのではないだろうか。
📷 写真左より、株式会社サウンド・シティ 取締役 明地 権氏、レコーディングエンジニア 秦 正憲氏、取締役 中澤 智氏。
取材協力:株式会社サウンド・シティ、オンズ株式会社、日本音響エンジニアリング株式会社、オタリテック株式会社
*ProceedMagazine2022-2023号より転載
Music
2022/12/28
エイベックス株式会社 avexR studio様 / ワークフローを加速させる、コンパクトに厳選された機器たち。
「エンタテインメントの可能性に挑み続ける。」という企業理念を基に、映像・音楽・テクノロジーのプロフェッショナルが同じ空間で常に交わりコンテンツを生み出していく。これをコンセプトとして2022年夏にavex groupの新たなクリエイティヴ拠点「MARIA」がオープン、本社にあったavexR studioもこちらへ移転し新たに稼働を始めた。今回の移転先となる物件は、元々スタジオとして使用されていたスペースではなくワインセラーやレストランスペースだったとのこと。全く異なる用途のスペースであったわけだが、設計図を作成し始めてから実際の工事に取り掛かるまでが4ヶ月弱という非常に短時間での準備を行い、2Fフロアをすべて改装してパワーアップしたスタジオへと変貌させた。さらに、ここにはグループ会社であるavex creative factoryのスタジオであるMAX studioも併設され、携わるコンテンツの幅が広がっている。今回はこの施設内に移設しコンパクトでありながらも随所にアップデートした新生avexR studioを紹介したい。
パワーアップしたMAスタジオ
今回更新のメインとなるMAスタジオは同じフロアにある映像編集室、多目的スタジオとセットで「avexR studio」と呼ばれている。映画や配信向けDolby Atmosコンテンツや、アーティストのコンサートフィルムといったような映像が関わる音楽系のコンテンツなど、具体的なコンテンツ名が言えないのが非常にもどかしいが「avexR studio」のMA室では誰もが聞いたことがある話題の作品やアーティストの楽曲がDolby Atmosミックスされている。
前回のMA室と同様、コンセプトカラーはこだわりのオレンジがポイントとなっている。スタジオの色基調をオフホワイトとグレーにしてグラデーションをつけることで、前回よりも落ち着いた印象となった。このスタジオで作られるコンテンツは映画などのMAに限らず音楽系のコンテンツも増えてきており、音楽機材も増えたそうだ。スタジオの大きさについては、横幅が若干コンパクトになったが、奥行きは前回と全く同じサイズで設計されている。全体容積としては移転前から80%ほどになったものの、天井高は現在のスタジオの方が高く、スピーカーと作業位置の距離をITU-R基準の1.8mで確保したレイアウトだ。モニタースピーカーを含む機材は既存の設備を流用となった。以前のMA室と音質は大きく変わらないものの、移転したことで音像がタイトになった印象を持つ。コンパクトながらもLFEスピーカーをステレオで配置するシネマ用の配置を取っているが、部屋の横幅が変わったこともあり、低音の鳴り方が感覚に馴染むように試行錯誤しながら修正をしているところだという。
📷 メインスピーカーのGenelec 8350A、ハイトスピーカーのGenelec 8340A、2ch用としてFocal Solo 6 Be。L・Rの下にはサブウーファー Genelec 8360APMが2台設置されている。
Avid S4、厳選されたコンパクトな構成
機材面で大幅にパワーアップされたのが、Avid S4の導入である。以前はコンソールレスでの作業だったが、やはりDolby Atmosなどのイマーシブオーディオを扱うにあたり、特にオブジェクトを多用するセッションの場合はフィジカルで直感的な作業が難しく、パラメータの数値を打ち込むことがメイン作業となってしまって面白みに欠けてしまうことがあったという。コンソールレスで始めたものの、結局はフィジカルコントローラーを各種試して買い足すということに至ったそうで、移転を機に効率的かつ直感的な部分を補うためにコンソールの導入を決意されたそうだ。フィジカル的なコントロールの解決については以前からの課題とされていたようで、イマーシブオーディオコンテンツの作成が本格的に始まった2017年頃から試行錯誤されていたという。
スタジオに導入されたAvid S4コンソールの構成は、Channel Strip Module 8 Faderに加えて、かねてから念願であったJoystick ModuleとExpansion Knob Module、Display Module x2を加えた3 Bay構成である。イマーシブオーディオだからこそ「オブジェクトオーディオにもフィジカルコントローラーを」ということで導入されたJoystick Moduleは、数あるフィジカルコントローラーの中からAvid S4を選択した最重要ポイントの一つである。特にMA作業は映像を見ながらの作業となるため、コンピューター画面に集中することが難しい。モニター画面とコンピューター画面の視点移動は想像以上にストレスがかかる。特に、Dolby Atmosのオブジェクトオーディオ編集はより一層ストレスがかかるが、Joystick Moduleの導入でそれも随分軽減されているそうだ。
📷 コンパクトに収められたAvid S4は着席したままでもすべてに手が届くサイズ感、ヒヤリングポイントからスピーカーまでの高さは1.8mが確保されている。
そして、Avid S6ではなくAvid S4を選択した大きな理由はサイズだという。MAスタジオとしてはかなりコンパクトな筐体となるため、スペース都合を満たすということはやはり大きな要件となる。ただし、サイズ感という問題だけでAvid S1やAvid S3を選択しなかったのは、Avid S4がモジュール式でレイアウト自在な点だ。もちろん、先ほども述べたJoystick Moduleの存在も大きな理由となるが、センターセクションなどのベース構成から好きなユニットを追加選択し、好きな位置に配置できるのでイマーシブオーディオ制作に特化したレイアウトを組み上げられるのがポイントだという。なお、Joystick Moduleはセンターセクション右手前側に配置し、手がすぐに届いて操作できるレイアウトにした。コンパクトなレイアウトに収まったAvid S4は、そのサイズ感のおかげで操作性も十分に補えているという。今回導入されたAvid S4はセンターセクション左手にチャンネルストリップモジュールが配置されているが、Avid S4ならではのノブ部分のチルト構造のおかげで座ったままS4のすべての機能にアタッチできるという。これも作業効率を上げる重要なポイントとなる。
Avid S4で特に気に入っている機能は、センターセクションに集約されたレイアウトだという。ビジュアル・フィードバック性と完全なトータル・リコールにより、セッションごとでAvid S4の各画面の機能やトラックレイアウト、カスタムプラグインレイアウトなど、さまざまなレイアウトを一括でセッションに保存できるため、セッションを開くだけでレイアウトなど様々な設定がすべて読み込まれる。現在編集中のセッションからロールバックして、古いセッションに切り替えるワークフローがたびたび発生するそうだが、そういった時でもAvid S4のトータルリコールのおかげで、細かい設定など再調整することなく即座に作業に入れる点が大きいという。セッションを切り替えるとすぐに作業に取り掛かれるので、別のミックスダウンで気分転換ができることもあるそうだ。
📷 Avid S4を挟んでデスク下のラックにはアナログボード類、とMac Proが収められている。
直感的な作業をパワフルな環境で
MTRXをインターフェイスとしたPro Tools HDシステムは、今回の移転に伴いMac Proを旧型の2013年モデルから最新の2019年モデルへ、HDXカードも1枚から2枚へと増強したことで大幅にパワーアップした。HT-RMUを導入しているが、昨今の映像コンテンツは4Kも多くなってきており、旧型Mac Proでは処理が追いつかないことも多い。また最近のPro Toolsでもビデオエンジンなどをはじめとする機能拡張の動作においてコンピューターのスペックに依存している機能もあるため、新たに導入したMac Proではメモリが96GBという仕様となった。おかげで作業効率が大幅にアップしたそうだ。なお、HT-RMUのほかDolby Atmos Production Suiteも導入されており、音楽性の強いミックスではProduction Suiteを、オブジェクト・トラックを多用する映像の方向性が強いミックスの際にはHT-RMUをとそれぞれ使い分けているそうだ。また、ビデオインターフェイスも4K対応のBlackmagic Design Ultra Studio miniへ更新されている。
📷 デスク下右手のラックにはMTRX、m908などがコンパクトに集約されている。
今回導入されたAvid S4と以前より導入されているMTRXの連携も抜群だという。モニターコントロールに関しては国内導入1台目だというGrace Designのm908を導入しており、このスタジオではアフレコやナレーションだけではなく効果音なども収録するため、ヘッドフォンやミニスピーカーなど様々なモニタ環境を瞬時に切り替えられるようにリモートコントローラーがセットとなったGraceのモニターコントロールを選択した。
MTRXは、Pro Toolsのインターフェイス機能のほかにマトリクスルーターとして稼働しており、MADIで接続されたHT-RMUの音声をMTRXで切り替えている。以前はコンピューター画面上でDADmanをマウスで操作していたが、Avid S4とDADmanを連携し、さらにソフトキーレイアウトをカスタマイズすることで、Avid S4からソース切り替えを可能とした。フィジカルかつ少ないアクションで操作できるようにカスタマイズ可能な機能はより一層直感的に作業に取り組める環境を構築した。
このスタジオでは恋愛ドラマのようなラジオドラマやポッドキャストも制作することもあるという、演出のために作中の効果音をレコーディングすることもあるそうだ。映像ありのコンテンツでは、その映像に寄り添うために音声のミックスで冒険はしにくいところだが、ラジオドラマは映像がないぶん聴き手が自由に想像できるため、オーバー気味な演出をしても違和感も少なく受け入れられるメディア。作り手も思い切ったミックスにチャレンジができる。手がけるラジオドラマはステレオではなくバイノーラルで配信されるため、Dolby Atmosの環境が活きてくる。Dolby Atmosでミックスしたオーディオは最終段でバイノーラルに変換するため、無理なく一層リアリティが増した完パケとなる。特にホラー作品などは特に恐怖感が倍増してしばらくうなされてしまうかもしれない。
発想を瞬発的にコンテンツへ、MAX Studio
📷 アイデアを即時に形にできるよう設けられたMAX Studio。右手の固定窓の向こう側がブースとなる。
ブースを隔ててMA室の奥にレイアウトされたのが「MAX Studio」である。ここではアイデアが浮かんでからすぐに制作作業に取り掛かり、1日で完パケまでできる環境が整えられた。このスタジオはエイベックスの音楽スタジオであるprime sound studio formともプリプロスタジオとも異なるキャラクターで、プロジェクトスタジオとプロスタジオの中間的な存在だという。昨今の楽曲制作で定番になりつつあるCo-Writeもこのスタジオで多く手がけられているそうで、クリエーターの発想を瞬発的にコンテンツへと形を変えることができるよう、ここでは制作の最初から最後まで一気通貫して行える。
MA室とMAX Studioで兼用となっているブースは両側にFIX窓が設けられており、普段は吸音パネルで塞がれている。MAとしてナレーションをレコーディングする際は、MA室側のパネルを外してMA室のTIE LINEを経由する。同様に、MAX Studioでボーカルのレコーディングを行う際にはMAX Studio側のパネルを外し、MAX StudioのTIE LINEを経由する。両コントロールルームに比べてブースの稼働率は低いので、あえて兼用にすることで両側のコントロールルームのスペースを確保した。
📷 ブースは兼用となりMA室とMAX Studioに挟まれたレイアウト。左右には各スタジオへのTIE LINEが設置されている。
天井高4mオーバーの多目的スタジオ
📷 モーションキャプチャースタジオとして活用されるほか、用途を問わず使用される多目的スタジオ。天井面にはトータル16台のOptiTrackカメラが取り付けられている。
約50平米の多目的スタジオは、その名の通り様々な用途を想定した作りになっている。その中でも一番多いケースとされるのが、モーションキャプチャーのスタジオとしての活用だ。天井にはOptiTrackのPrimeシリーズのカメラが常設されている。一方、下部のカメラについては仮設の形態がとられている。このスタジオでは、モーションキャプチャーのほかにグリーンバックでの合成や、YouTube配信といったものから、社内向けのZoom会議などにも使われるため、用途に合わせて暗幕・グリーンバックの有無などが選べるようになっている。
メインで使用されているモーションキャプチャーは、OptiTrackのPrimeシリーズとMotiveが導入されており、主にVTuber用途に使用されている。Motiveで演算されたデータは、カスタムで制作したエンジンによってキャラクターとリアルタイムで合成する。これら一連のリアルタイム処理された映像をそのまま配信することが可能だ。このような環境のスタジオが都心にあることは珍しい。モーションキャプチャーの特性上から広いスペースと十分な天井高が必要となり、その結果多くのスタジオが郊外に集中している。都心部という好立地ならではの制作業務も多いそうで、リモートワークが当たり前になってきている昨今でもこういった立地環境は必要な要素だと実感する。
多目的スタジオ・映像編集室とMA室の連携が取れるよう、音声・映像・サーバーそれぞれが接続されている環境だという。音声はDanteネットワークでスタジオ間を接続し、配信などを行う際に連携して使用されている。映像に関してはフロアの各部屋がSDIルーターに接続されている。例えば、多目的スタジオでVTuberがMotiveでリアルタイムに合成した映像に、MA室やMAX Studioでアフレコをつける、といったようにフロア全体で大きなスタジオとしても活用できる。
映像編集室では、Adobe Premiereを中心とした映像編集機器やCG編集機器が揃えられている。こちらも移転前の広さからおよそ1/3のスペースまでコンパクトにすることができたのだが、これはコロナ禍による制作スタイイルの変化だという。コロナ前は各自スタッフが集まって編集室で作業していたが、各自在宅で映像編集をできるようコンピューターなどの環境を整えた結果、編集室に集まって作業する必要性が薄くなり、必然的にスペースを確保する必要もなくなったそうだ。なお、こちらではモーションキャプチャーのほかにもLyric Videoなどを手掛けたり、エイベックスのYouTubeチャンネルで8月よりライブ配信されている「[J-POP] avex 24/7 Music Live(24時間365日 音楽ラジオ・24/7 Music Radio)」の画面に登場している「KA」とKAの部屋はこちらの編集室で作られたそうだ。部屋の中にある、見覚えのあるラップトップやスピーカーなど、実際の寸法からCGに落とし込まれており、各メーカーの公認も得ているという。
エイベックスの楽曲を24時間365日、ノンストップでライヴ配信する『avex 24/7 Music Live』。
話題のこのコンテンツも、岡田氏が率いるチームが手がけている
イマーシブオーディオもだいぶ浸透し、ワークフローも確立しつつあるが、昔から変わらないフローのもあるという。特に変わらないのが、こまめなセーブとセッションのバックアップだという。こまめなセーブは当たり前になってきているが、コンピューターが高速かつ安定してきているからこそ、基本であるセーブとバックアップを忘れずにしているという。バックアップに関しては、余計に気にされているそうで、セッションデータを3つのHDDやSSDにバックアップするなど冗長化に努めているそうだ。
📷 avex groupの新たなクリエイティブ拠点「MARIA」には地下にクラブスペースもあり、普段は社内の撮影やイベントに使用しながらも、時には海外のTOP DJがシークレットでプレイすることもあるという。アーティストのSNSにもたびたびこちらの部屋がアップされることも多いというこちらのスペースは、なんとメディア初公開だそうだ。DJブースの両脇には日本ではメーカー以外にここにしかないという、Function OneのDJモニタースピーカーPSM318が鎮座しており、フロアには高さ約3mのDance Stackシリーズのスピーカーセットが前後に4発。ぜひともフルパワーの音を体感してみたい。
今後は映像作品のMAのほかに音楽制作へも力を入れていくとのことで、4年前のa-nationのようなDolby Atmos配信も行っていきたいとのことだ。5Gが一般化されたことで通信環境が格段に良くなっていることや、サーバー環境も進歩しているため、以前よりもストレスなく挑めるだろう。また、イマーシブオーディオの中でも今後は360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)向けのコンテンツにも積極的に取り組んでみたいとのこと、どんな作品を手掛けられるのか楽しみである。
📷 エイベックス・エンタテインメント株式会社 レーベル事業本部
クリエイターズグループ NT&ALLIANCE 映像制作ユニット マネージャー
兼ゼネラル・プロデューサー
岡田 康弘 氏
*ProceedMagazine2022-2023号より転載
Media
2022/12/26
株式会社Cygames様 / 大阪サウンド部 エディットルーム〜妥協ないコンテンツを生み出していく、7.1.4ch可変レイアウト2スタジオ
2011年、第一弾タイトル「神撃のバハムート」を皮切りに、これまで「グランブルーファンタジー」、「Shadowverse」、「プリンセスコネクト!Re:Dive」、「ウマ娘 プリティーダービー」などのゲームタイトルをリリースしてきた株式会社Cygames。その中でも、コンシューマー・ゲーム機向けのコンテンツ制作を主に行う大阪拠点においてDolby Atmos 7.1.4chに対応したスタジオが同時に2部屋開設された。まだまだフォーマットも定まらず過渡期だというゲーム制作のイマーシブ分野において、進取の取り組みが始まった大阪Cygamesサウンド部 エディットルームをご紹介していく。
2つのエディットルーム
大阪Cygames サウンド部エディットルーム(以下、大阪エディットルーム)は梅田中心部、交通アクセスもよく大阪Cygamesの第一拠点の近くに位置する。今回新設された大阪エディットルームはDolby Atmos対応のスタジオが2部屋という構成となり、大阪Cygamesにおけるリスニングスタジオとして機能することになる。Cygamesの東京拠点では、既にエディットルーム(以下、東京エディットルーム)が6部屋稼働しているが、大阪Cygamesで制作中である「GRANBLUE FANTASY: Relink」がサラウンド対応コンテンツとなり、同じようなスタジオの必要性を感じていたことからプロジェクトが開始されることとなった。
現状、スマートフォン向けコンテンツではステレオが基本となっており、コンシューマー機等でのゲームについてはサラウンド対応といったところで、ゲームにおけるイマーシブオーディオについてはどのようなフォーマットがスタンダード化していくのか今後の動向を窺っている状況にあるという。イマーシブオーディオに注目し始めたきっかけはMicrosoftがWindowsとXBOXでDolby Atmosをサポートしたことだったそうだ。コンシューマー・ゲーム機からの視点ではSony PlayStationはHDMIからのイマーシブ系の実出力には対応せず、バイノーラル系の技術で進むなど、大手を振ってこれからはDolby Atmosとは言えない状況ではあるが、現時点ではDolby Atmosがもっともスタンダードに近い存在であり、まずはそれに取り組むことが必要であるとのこと。さらには、Sonyから360 Reality Audioも発表されたため過渡期は引き続きとなるが、新たな規格が登場してくるとそれだけイマーシブオーディオが織りなすゲームの世界がどのように発展するのか期待も高まる。
すでに、5.1chのコンテンツを制作しているが再生環境が整っている家庭はまだ少なく、作り上げたサウンドがプレイヤーに伝わっているのだろうかという歯痒さを感じているそうだ。それでも、イマーシブオーディオという素晴らしいコンテンツを見過ごすわけにはいかないので、5.1ch / 7.1ch / Dolby Atmosを取り入れ妥協することなくゲーム開発に挑戦し続ける。こういった取り組みにも「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンが見えてくる。
📷 エディットルーム A
📷 エディットルーム B
そして、今回竣工したのがこのエディットルームだ。こちらはインゲームでサラウンドを正確にリスニングすることが主な用途となっており、エディットルームA/Bという同じDolby Atmos 7.1.4ch対応の2部屋を設置することで、同時に作業ができるよう運用面での効率化が図られている。なお、エディットルームA/Bでは異なったオペレートデスクが設置されており、ルームAは固定デスク、ルームBは可動式デスクとなっている。ここにエディットルームの個性が隠されており、ルームBのデスクを移動することによりルームAはコントロールルーム、ルームBは収録スタジオのレイアウトに可変することができる。そのため、主な目的はリスニングとなってはいるが、ナレーションなども収録できるシステムを備えており、マイクプリアンプなどアウトボード系の機材も充実したラインナップが用意された。
📷 一見だけすると全く同じ部屋の写真に見えてしまうのではないだろうか、左ページが大阪Cygames エディットルームA、右ページが同じくエディットルームBの様子となる。両部屋をつなぐ窓の位置、そしてデスクとラックの形状をよく見るとお互いが連携している隣り合ったスペースであることがわかる。また、本文中でも紹介した通り、エディットルームBを収録スタジオとして使用できるようにBのデスク・ラックは可動式とされており、ナレーション収録など作業のシチュエーションによっては上図のように役割を変化させて制作を進行することができる仕組みだ。
基準となる音場
東京エディットルーム竣工時、様々なブランドのモニタースピーカーの比較試聴を行い、GENELEC The Onesシリーズを採用した。元々GENELECには高低音が強調されるようなイメージを持っていて、本命のブランドではなかったというが、The Onesシリーズを試聴した際にそのドンシャリというネガが消え、非常に良いイメージに変わったとのこと。また同軸スピーカーならではの定位感も高く評価を得ている。その流れを汲み、大阪CygamesエディットルームでもGENLEC 8331AWが採用される運びとなった。
大阪CygamesのスピーカーキャリブレーションはMTRX SPQスピーカープロセッシングを採用している。PCなどの機材が全て常設であるため、竣工時に日本音響エンジニアリングによる音響調整を行い、サウンド部スタッフ全員が同じ環境でモニタリングできるスタジオを作ることができた。なお、先立って稼働している東京エディットルームではGENELEC GLMを採用して音響調整を行なっており、PCやオーディオI/Fなど機材を持ち込むことが可能で、言わばフリースペースのような感覚で使用できるようになっている。そのため、GLMで手軽にオートキャリブレーションできるというメリットを活かしているが、状況によりリファレンスが変わるため、基準となる音場の必要性を感じていたそうだ。今回の大阪エディットルームではPCほかの機材を常設設備にして音響調整を重要視した理由がここにある。
📷 GENELEC 8331AW、Cygamesのコーポレートカラーであるホワイトのモデルをセレクト、ハイトスピーカーとして天井に吊られている。写真下はGENELEC 7350APM。スピーカーシステムと部屋のサイズを考慮し、8インチのサブウーファーが設置されている。
システムの柔軟性
大阪エディットルームでのメインDAWはOM Factory製Windowsマシンで稼働するSteinberg Nuendoとなっている。ゲームの開発環境がWindowsベースとなるため、Windows用DAWとして安定しているNuendoに信頼感があること、また、Nuendoに備えられた「Game Audio Connect」でミドルウェアのWwiseと連携できることは、膨大な音声ファイル数となるゲームのサウンド制作においては大きなメリットとなる。
一方、東京・大阪の各スタッフが使用しているDAWソフトウェアは多種多様で、スタッフ本人の意向に沿ったソフトウェアをそれぞれ導入しているとのこと。Avid Pro Tools、Apple Logic Pro、Steinberg Cubase、PreSonus Studio One、中にはAbleton Liveを使っているスタッフもいるそうだが、スタジオでの作業用として、また社外とのやり取りのためにPro Toolsは共通項。大阪のサウンド・デザイン・チームでは、ゲームサウンド制作に長年携わり、WindowsでNuendoという環境に慣れ親しんだ方が多く、今回のメインDAWについてもNuendoが採用されたのはごく自然な流れだったようだ。
📷 エディットルームAのカスタムオペレートデスク。ノンリニア編集に適するようフリースペースの広い形に設計されている。正面左手はRUPERT NEVE DESIGNS/SHELFORD CHANNEL、George Massenburg Labs / 2032、Empirical Labs/Distressor (EL-8)、Eventide/H9000 Harmonizerを、右手にはVertigo Sound/VSM-2 Full、SPL/Stereo Vitalizer MK2-T (model 9739)がマウントされている。直接操作することが少ないOM Factory製のDAW用PCやAVID Pro Tools|MTRX などは足元に収納されている。
なお、エディットルームでの中核となっているのがAvid MTRXとなっている。もちろんMTRXはProToolsで使用するイメージが強いのだが、多機能なオーディオルーティングやコンバーターとしての顔を持っており、NuendoをメインDAWとした大阪エディットルームでも中核機材として導入されている。今回の例では、各DAW PCに搭載されているYAMAHA AIC128-DからDanteで出された信号がMTRXに入り、スタジオ内のモニタースピーカー、コミュニケーション、アウトボードへアナログ信号で送信されている。また、持ち込みPCによるオペレートも想定しており、持ち込みPC用I/FにRME Fireface UFX+を設置。Fireface UFX+MTRX間はMADI規格が用いられている。
各サウンドデスクやエディットルームへの信号はDanteで張り巡らされており、スタジオ内でのルーティングはDADmanで行い、システム全体のルーティングはDante Controllerで行う、という切り分けがなされている。メインスピーカーのボリュームコントロールはNTP Technology MOM-BASEを用いてMTRXをリモートしているシステムとなっている。このシステムを実現するためという点でも、DAWを選ばず柔軟なシステムに対応するMTRXが選定される理由となった。
オペレートの多様性
今回新設の大きな要望として「4Kの画面をどこでも映せる、どこの4Kの画面でもどこにでも持っていける」、「どの音をどこでも聴ける」というテーマがあった。そのコンセプトに沿って、映像信号はADDERのKVMで、音声はDanteで、という役割分担が行われ、各サウンド部スタッフのデスクとエディットルームの音声および映像信号をやり取りするシステムが構築されている。すべてのデスクにKVMおよびDanteインターフェースが用意されており、各デスクで作業をしながらエディットルームの音声をリスニングしたり出力すると同時に、4Kの映像も映し出すことが可能となっているわけだ。
なお、その際HDMIにエンべデットされているDolby Atomsの信号をどのように各ルームとやりとりするのかが課題となっているのだが、配管の問題もあり実線を張り巡らせるのは現実的ではない。AVアンプを駆使してアナログ音声をデエンベデッドする構成もあるが、映像と音声のズレが発生しないかなど現在も検証を続けているところだ。また、映像と音声の垣根を超えるDante AV規格も選択肢の一つではあるが、現在の条件下でHDMIからDolby Atomsのチャンネル数を同時に転送することは難しいため、こちらはDante AV規格自体の発展に期待が寄せられる。ほかにも、機能拡張として各デスクでDolby Atomsをリスニングできる構想など、いまも将来に向けてスタジオ自体が成長し続けていると言えるだろう。
シンプルかつ多機能な機材レイアウト
竣工当時からの課題ではあったが、スペースの都合上でマシンルームを設けることができなかった。そこで、起動音が小さい機材はエディットルーム内に収納、スイッチングハブなどの起動音が大きい機材はスタジオ外にあるラックケースへ収納することで解決を図っている。結果的に、主だった機材がすべてスタジオ内で操作が可能で、ステータスなども目視確認ができるというメリットも生まれた。ここ近年の機器の進歩によって抑えられた起動音や、MTRXのオールインワン性を活かし必要最小限の機材構成としたからこそ実現できた機材レイアウトである。また、エディットルームAは常設のデスクとなる為、収録時でもストレスなく機材の操作ができるように手元にアウトボード系の機材が設置されている。メモや台本などを置けるスペースも広く、ノンリニア編集の理想的なオペレートスペースを作ることができている。
📷 起動音を考慮し静音ラックに収納され、スタジオ外に設置されたスイッチングハブ YAMAHA/SWR2310-10G。各エディットルームとサウンドデスク間を繋ぐDanteの信号処理を行う中核として機能している。また、左写真は別途に設けられたフォーリースタジオの様子だ。
施工にあたってはデザイン面も重要な要素となった。コーポレートカラーであるブラック / ホワイトを基調としたスペースからスタジオに入ると、内装にフローリングの床面やダークブルーを用いた落ち着いた空間が演出されている。オペレートデスクやスピーカースタンドもすべてカスタムオーダーとなっており、素材選びの段階から製作が行われたとのこと。特に、壁紙のカラーなどは大阪Cygamesが注力して開発している『GRANBLUE FANTASY: Relink』の空を意識した青が基調にされており、より制作しているコンテンツの世界観に没入して制作を進めることができそうだ。ゲーム開発ではどうしても自席でのデスクワークがメインとなるが、根本にはエディットルームをいっぱい使って楽しんで欲しい、リラックス感が感じられるように、という思いがあり、それがデザインに込められている。スタッフのモチベーションを上げるということも目的として重視されているということだ。
📷 右:株式会社Cygames サウンド部マネージャー 丸山雅之 氏 / 左:株式会社Cygames サウンド部サ ウンドデザイナー 城後真貴 氏
経験豊かなクリエイターによって一貫したクオリティでコンテンツ制作を進める大阪サウンド・デザイン・チーム。そのクオリティの基盤となるスタジオが新設されたことで、制作ワークは一層の飛躍を遂げることになるだろう。もちろん、ゲームサウンドにおけるイマーシブ制作といった観点でもここから数々のノウハウが生まれていくに違いない。ソーシャルゲームのみならずコンシューマー・ゲームの開発やアニメ制作、漫画事業など幅広い分野でコンテンツをリリースする株式会社Cygames。その「最高のコンテンツを作る会社」というビジョンの通り、妥協ないコンテンツを生み出していくための拠点がここに完成したと言えるのではないだろうか。
*ProceedMagazine2022-2023号より転載
NEWS
2022/11/04
Inter BEE 2022 出展情報〜Avid新ハードウェアや最新イマーシブツールを体験!!
国内最大規模の国際放送機器展Inter BEE 2022に出展します。当社としては、3年ぶりとなるリアル出展。2023年以降を占う制作技術の最新テクノロジー/トレンドを中心に展開いたします。当日ご来場の際は、ぜひ当社ブースへお立ち寄りください。
Inter BEE 2022出展情報
日程:2022年11月16日(水)〜18日(金)
時間:公式WEBサイトでご確認ください。
場所:幕張メッセ ホール4 小間番号4306(ROCK ON PRO)、小間番号 4503(株式会社メディア・インテグレーション)
Inter BEE 公式WEBサイトはこちら>>
Inter BEE 2022では、「ROCK ON PRO」「株式会社メディア・インテグレーション」のふたつのブースを展開します。ROCK ON PROではAvidから発表されたばかりの最新ハードウェアや、最新のイマーシブ制作ツールを体験いただける展示を実施。メディア・インテグレーションのブースでは、iZotopeとPlugin Allianceを中心とした、先進的なオーディオミックス/マスタリングツールの展示と豊富なセミナーをご用意してお待ちしております!
目次
Avid新製品&イマーシブサウンドを体験
-MBOX Studio
-Pro Tools | Carbon Pre
-最新イマーシブ・オーディオ制作ツール
-MIL=Media Integration Lab紹介
セミナー情報
iZotope、Plugin Allianceを中心とした特設ブースも展開
Avid新製品&イマーシブサウンドを体験
AES New Yorkで発表されたばかりのハードウェア新製品2機種「MBOX Studio」と「Pro Tools | Carbon Pre」を展示します。注目の新製品の実機を、最速でお試しいただくことが可能です。そのほか、Pro Tools / Media Composerの最新バージョンやDolby Atmos・360 Reality audioといった2023年の制作を担うツールをハンズオン。これらのツールを使用して制作された実際の楽曲を、バイノーラルで試聴することも可能です。
MBOX Studio
「MBOX」の名が示す通り、Avidから新たに発表されたNative I/OであるMBOX Studio。これまでのMBOXシリーズとは異なり、業務スタジオで使用される様々な機能をコンパクトな筐体に詰め込んだ、本格的なワークフローを可能とするオーディオI/Fです。注目すべきは、そのユーザービリティの高さ。細部まで考え抜かれたプロダクト・デザインにより、個人で本格的なミックス/レコーディングをおこなうユーザーが求める機能を過不足なく凝縮しています。
Inter BEE 当日にはまだ国内出荷前となる新製品を、ぜひ体験してください。
Pro Tools | Carbon Pre
2020年に発売され、HDXチップの内蔵や音楽的なサウンドで話題となったPro Tools | Carbon。高品位な8chマイクプリの拡張を望む声に応え、そのシステムを拡張するために発表されたデバイスがPro Tools | Carbon Preです。Pro Tools | Carbonと合わせて最大3台までカスケードすることで、人気のマイクプリを24chまで拡張可能な上、Pro Toolsからはひとつのデバイスとして操作することが可能です。また、Avid PREと同じプロトコルに対応し、従来のHD I/Oシステムに組み込むことも可能です。
MBOX Studio、及び、Pro Tools | Carbon Preの詳細はこちら>>
最新イマーシブ・オーディオ制作ツール
会場では、Pro Tools/Media Composerの最新バージョンに加え、イマーシブ制作に欠かせないDolby Atmos Production Suiteと360 WalkMix Creatorも、実際に体験していただくことが可能です。いずれのアプリケーションもこの1年間のアップデートによって注目の新機能やアプリケーション間の連携などが追加。さらに使いやすくなった、さまざまな機能を実際にお試しいただけます。
Pro Tools 2022.9の詳細はこちら>>
Media Composer 2022.10の詳細はこちら>>
Dolby Atmos Production Suite / 360 WalkMix Creatorの最新情報はこちら>>
MIL=Media Integration Lab紹介
創造者、クリエイターと共に新しい創造物へのインスピレーションを得るために、昨今の空間オーディオ、3Dサウンド、多彩なフォーマット、様々な可能性を体験し、実感するためのスタジオであり、空間であるMIL - Media Integration Lab。60本以上のスピーカーを備えたこの空間を会場に再現することはできませんが、実際のイマーシブ楽曲をバイノーラルで聴きながら、写真と映像でその空間を疑似体験していただけるスペースです。この「進化するラボ」を通して、当社の取り組みの一端をご覧いただければと思います。
MIL - Media Integration Labの詳細はこちら>>
MIL - Media Integration Labの技術的な解説はこちら>>
セミナー情報
フォーマットを超えていくMIL STUDIO
完全 4 π音響空間で描く、新たな世界の始まり
日時:2022年11月16日(水)〜18日(金) 14:30-15:00
場所:小間番号4306 ROCK ON PROブース内
MIL=Media Integration Lab。創造者、クリエイターと新しい創造物へのインスピレーションを得るために、昨今の空間オーディオ、3D サウンド、多彩なフォーマット、様々な可能性を体験し実感するスタジオであり、空間。Media Integrationが新設した43.2chで実現した完全 4 π音響空間をROCK ON PRO 前田 洋介がご紹介します。
講師:前田 洋介(ROCK ON PRO / プロダクト・スペシャリスト)
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
Avid Informatin 2022
2023年の制作をリードするAvidプロダクトのいま
日時:2022年11月16日(水)〜18日(金) 15:30-16:00
場所:小間番号4306 ROCK ON PROブース内
待望の新ハードウェアとなるMBOX STUDIOとCarbon Preを発表したAvid。プロフェッショナルの制作クオリティををパーソナルな環境で実現するMBOX STUDIOが魅せる機能の数々をAvid / Daniel Lovell 氏にデモンストレーションしていただきます。また、Pro Tools | Carbonシステムを拡張させるCarbon PreやPro Toolsの最新バージョン情報など、2023年の制作シーンを担うAvidプロダクトの「いま」をお伝えします。
講師:ダニエル・ラヴェル氏(Avid / APAC オーディオ・ソリューション・スペシャリスト マネージャー)
ダニエルは、東京在住のニュージーランド人です。オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
iZotope、Plugin Allianceを中心とした特設ブースも展開
ROCK ON PROブースとは別途、株式会社メディア・インテグレーションのブースでは、いま最も高い注目を集める業界標準オーディオレストレーションプラグイン最新作iZotope RX 10に加え、先進のマスタリングツールとして業界をリードするiZotope Ozone 10、さらには2022年より国内取り扱いがスタートしたPlugin Alliance製品を中心に、3日間連続でのイベントやグッズ配布、プレゼント企画を開催予定です。
オーディオ・ワークフローに革新を起こしたOzoneやRXについて、プロフェッショナルの生の声を聞くことができる貴重なセミナーを連日実施。さらに、それらを実際にDAW上で体験できる展示を用意しております。
セミナーの詳細なスケジュールはメディア・インテグレーション MI事業部WEBサイトでご確認ください。
3年ぶりとなるInter BEEへのリアル出展に向けて、みなさまにオフラインならではの体験をしていただけるよう、鋭意準備中です。会期中は感染対策にも万全の注意を払ってお待ちしておりますので、ぜひ、会場へ足をお運びください。幕張メッセでお会いできることを心待ちにしております!
Support
2022/10/17
360 WalkMix Creator™ 最新V1.4.0 リリース情報、11月1日(火)より価格改定
360 Reality Audio制作ツール「360 WalkMix Creator™」の、V1.4.0がリリースされました。待望のプレイヤー機能や、ADM及びMaster ADM形式での書き出しに対応。また、11月からの値上げもアナウンスされましたので、導入をご検討中の方はこの機会をお見逃しなく!
V1.4.0 新機能とアプリケーション - 2022年10月06日更新
・待望のプレイヤー機能、360 WalkMix Playerが登場
360 WalkMix Playerは、360 WalkMix Creatorと共にアプリケーションとして利用できるようになりました。360 WalkMix Creatorに対応しているあらゆる出力フォーマットで書き出されたオーディオを再生できるようになりました。このアプリケーションはプラグインと一緒にインストールされ、スタンドアローンアプリケーションと同じ手順で起動することができます。360 WalkMix Player を使用するには、360 WalkMix Creatorのライセンスが必要です。
・A/B 比較を実行する機能が追加
360 WalkMix Creator プラグインから、A/B 比較を実行する機能が追加されました。「リファレンス」タブから、ステレオ参照ファイルのアンロードとロード、プレイヘッドの調整、LKFS/LUFSの測定と対比、比較のための波形解析が可能です。
・書き出しの形式を追加
ADMおよびMaster ADM形式での書き出しが可能になりました。
・プラグイン内のアップデート通知からリリース内容の確認が追加
プラグイン内にてソフトウェアアップデートを示す通知には、リリースノートページ https:// 360ra.com/release-notes/ へのリンクが表示され、アップデートが自分のニーズにマッチするかどうかを判断できるようになりました。
↑
V1.4.0 安定性の改善 - 2022年10月06日更新
長時間のセッションやプロジェクトで音声が歪む可能性のある問題を修正しました。
いくつかの細かいグラフィック/Ul問題に対処しました。
過去のリリースノートはこちらからご確認いただけます。
https://360ra.com/ja/release-notes/
2022年11月1日(火)より、価格改定も発表!
さらに360 WalkMix Creatorは、2022年11月1日(火)より、価格改定が行われることも発表されました。
2022年10月31日正午までの通常価格:64,900円(税込)
2022年11月1日以降の通常価格:77,000円(税込)
Rock oN Line eStore 販売ページ:
https://store.miroc.co.jp/product/77346
ROCK ON PROでは、360 Reality Audioをはじめ、Dolby Atmosなど各種イマーシブ制作対応スタジオの導入事例も豊富です。下記コンタクトフォームより、お気軽にお問合せください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-info-2022/#.Y00XT-zP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/comparison-of-atmos-360ra/#.Y00j8ezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/360-reality-audio-360-walkmix-creator-proceed2022/#.Y00j_ezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/works/360studio-proceed2021-22/#.Y00kDuzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/nagoyageidai-proceed2021-22/#.Y00kGOzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/sound-on-4%cf%80-360ra-part-3/#.Y00kPuzP0-Q
NEWS
2022/09/29
Pro Tools 2022.9リリース!大注目の新機能を多数搭載!!
日本時間9月29日未明、最新バージョンとなるPro Tools 2022.9がリリースされました。有効なサブスクリプションまたは年間サポートをお持ちのユーザー様は、Avidアカウントからダウンロードが可能です。
リリースに先立ち発表されていた「ARA 2 Melodyne統合機能追加」だけでなく、タイムコード・バーンインの位置調整機能、そして、驚きの"AUX I/O"機能など、ミュージック/ポストプロダクションのどちらのユーザー様にとってもワークフローを加速する新機能が追加されています。
年間サポートプランが失効している方も、9/30までの年間サポート再加入プロモを利用して、ぜひ最新のPro Toolsをお試しください。
Pro Tools Intro登場!
Pro Tools Firstに代わる、新たな無償バージョンのPro Toolsです。無償版ながらPro Toolsの基本性能を備え、上位バージョンへのスムースな移行を可能とする「お試し版」としても使える他、この製品の登場により、サブスクリプション期間終了後、機能制限付きながらも作成したセッションファイルにアクセスすることが可能となりました。
Pro Tools Intro基本性能:
最大4Ch入出力(使用システム及びオーディオI/Oに依存)
最大8モノ/ステレオ・オーディオ・トラック(全サンプルレート)
最大4 Auxインプット/ルーティング・フォルダー・トラック
1 x マスター・トラック
最大8 MIDI トラック
最大8 インストゥルメント・トラック
36 エフェクト&インストゥルメント・プラグイン
16-bit, 24-bitまたは32-bit 浮動小数点オーディオ
最大192 kHzサンプルレイト対応
Pro Tools Introと、終了したPro Tools | Firstの違い
Pro Tools IntroはメインとなるPro Toolsと同じコードベースを使用していますので、新機能を含む多くの部分で互換性も維持しています。
Pro Tools Introはセッション・ファイルとしてローカルに保存可能です。
Pro Tools Introは“囲い込み形式”によるプラグイン制限はありません。
Pick Up! 全てのPro Toolsサブスクリプションやトライアルは、期間終了後、この無償版Pro Tools Introとして動作可能となります。機能制限はありますが、ライセンス終了後でも、セッションが全く開けなくなるという心配はなくなります。
ARA 2 Melodyne統合機能追加
Pro Tools編集ウインドウ上で、ワールドクラスのピッチ/タイム・ツール・セットである MelodyneをARA統合して使用する事が可能となりました。
アンドリュー・シェップスが語る Pro Toolsにおける ARA 2 Melodyne 統合機能
Pro Tools - Quick Tips
66からが新規追加されたMelodyneに関するTipsです。
Aux I/O
Pro Toolsソフトウエアで任意のプレイバック・エンジンを選択しながらその他のコアオーディオ・アプリケーション(Zoom, Apple Music, Dolby Atmos® Production Suite等)や追加のオーディオ・ハードウエアにアクセス可能となりました (macOS のみ及びBig Sur以上での対応となります)。
代表的な例としては、プレイバックエンジンとしてHDXを選択しながら、Dolby Audio Bridgeを同時に使用できることでしょう。これにより、従来は同一Mac内でレンダリングをした場合にはHDXカードの恩恵を受けられなかった、Dolby Atmos®制作ワークフローの改善が期待されます。
SoundFlow Cloud Avid Edition がPro Tools Studioで利用可能に
これまで、Pro Tools Flex 年間サブスクリプション、及び、Pro Tools Ultimate永続ライセンスのみで利用可能だった『SoundFlow Cloud Avid Edition』が、Pro Tools Studio 年間サブスクリプション並びにPro Tools Studio 永続ライセンス版でも利用可能となります。
その他の機能並びに改善点
タイムコード・オーバーレイ(またはバーンイン)上でX/Y軸設定が可能となり、ビデオ・ウインドウ内のタイムコード表示位置を微調整することが可能となりました。
マーカー数が、999 から32,000へと増加しました。
クォンタイズ・ツールバー・コントロールが編集/MIDIエディター・ウインドウ上に追加されました。
待望の新機能が多数実装され、ますます便利になるPro Tools。有効なサブスクリプションまたは年間サポートをお持ちのユーザー様は、Avidアカウントからダウンロードが可能です。
年間サポートが切れてしまっている方は、ぜひ、9月末までの9/30までの年間サポート再加入プロモを利用ください。
その他、Pro Toolsシステムに関するお問い合わせはROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-studio-ultimate-get-current-promotion/#.YzFu2OzP0-Q
Sales
2022/09/26
【本プロモーションは終了しました】9月30日まで、Pro Tools Studio & Ultimate再加入版プロモ期間延長!!
※こちらのプロモーションは終了しました。
6月限定で実施されていた「永続ライセンス 年間サポートプラン 再加入」のプロモーションが、9月30日まで延長されることが発表されました!リリースされたばかりの最新バージョンであり、待望の追加機能が数多く実装された Pro Tools 2022.6へアップデートする絶好のチャンスです。
4月のラインナップ変更に伴い販売が再開した「永続ライセンス 年間サポートプラン 再加入」ラインセンスを、期間限定でお得に入手できるプロモーションです。Pro Tools 9、または、Pro Tools HD 9 以降のバージョンで、年間サポートプランが失効しているライセンスを最新バージョンへアップデートすることができます。
ぜひこの機会に、新MacBook ProやMac Studioなどの最新の環境にも対応し、機能面でもさまざまな強化が図られているPro Tools 2022.6へのアップグレードをご検討ください!
期間限定Pro Tools Studio & Ultimate再加入版プロモ
期間:2022年9月30日まで
対象:下記のいずれかに該当し、「年間サポートプラン」が失効しているライセンス
• Pro Tools 9以降のPro Tools永続ライセンス
• Pro Tools HD 9以降のPro Tools HD
• Pro Tools Ultimate永続ライセンス
9938-30005-00 Pro Tools Studio 永続版再加入
Pro Tools Studio Annual Perpetual Upgrade & Support Plan Electronic Code - GET CURRENT
通常価格:¥42,570
期間限定特価:¥30,360 (本体価格:¥27,600)
対象:Pro Tools 9以降の「Pro Tools永続版」
Rock oN Line eStoreで購入!>>
Pro Tools Studio 2022.6の主な新機能
• Dolby Atmos関連機能の強化(オフライン・バウンス・リレンダリングなど)
• センド・デフォルトをユーザー設定の値に
• MIDIワークフローの改善点
より詳細な情報はこちら>>
Pro Tools Studio 2022.4の主な新機能
• 512オーディオ、512インストゥルメントそして1,024 MIDIトラックを装備し、より大規模なミックス環境を構築
• 豊富なプラグイン、バーチャル・インストゥルメント及びサウンドライブラリで創造性豊かな音楽制作が可能
• サラウンド・サウンド、Dolby Atmos®及びアンビソニックス環境での楽曲制作を実現
• クリップ・エフェクト対応の他、より先進的な編集やオートメーション・ツールを用いて作業可能
より詳細な情報はこちら>>
9938-30009-00 Pro Tools Ultimate 永続版再加入
Pro Tools Ultimate Annual Perpetual Upgrade & Support Plan Electronic Code - GET CURRENT
通常価格:¥91,520
期間限定特価:¥60,940 (本体価格:¥55,400)
対象:「Pro Tools Ultimate永続版」、または、Pro Tools HD9以降の「Pro Tools HD」
Rock oN Line eStoreで購入!>>
Pro Tools Ultimate 2022.6の主な新機能
• Dolby Atmos関連機能の強化(オフライン・バウンス・リレンダリングなど)
• ビデオトラックへのタイムコード・オーバーレイ
• センド・デフォルトをユーザー設定の値に
• MIDIワークフローの改善点
より詳細な情報はこちら>>
Pro Tools Ultimate/Flex 2022.4の主な新機能
• 最大256同時入力
• 最大2048オーディオ・トラック及び1024 Auxトラック
• Avid Complete Plugin Bundle, HEAT及びサウンドライブラリー付属
• Dolby Atmos®, アンビソニックス,フォルダー・トラック, クリップ・エフェクト及び4Kビデオ環境対応
より詳細な情報はこちら>>
Pro Tools 永続版 再加入のアクティベーション方法
1. Avid.comにアクセスし、 右上の「サインイン」リンクより、Avidマスターアカウントにログインします。
2. ユーザーの製品> Register Software With Codeをクリックします。
3. 「ダウンロード・コードを入力」項目に、ご購入いただいたコードを半角英数字で入力し、「Register product」を押します。
4. 「すでにiLok アカウントを持っています」項目に、アップグレード元のライセンスがあるiLok IDを入力し、「このアカウントを使用」を押します。
求められた場合には、そのiLok IDのパスワードを入力して認証します。
5. My Products ページに自動的に切り替わります。Pro ToolsまたはPro Tools | Ultimate 製品の項目から「アップグレードオプションを選択」を押して、アップグレード可能なライセンス一覧を表示させます。
6. Expiration Date/RDL (Upgrade Support Planの期限日=この日までにリリースされたバージョンのPro Toolsが起動できる)
および、System IDを確認して、アップグレード元のライセンスを選択(緑色に反転)します。
*Pro Tools HD 11Bundle, Pro Tools HD with Upgrade and Support Plan 2015などの古いライセンスにはSystem IDの存在しないものがあります。
*ここで選択されたライセンスは削除され、最新ライセンスへ置き換わります。アップグレードプランの有効なライセンスを上書きしないように、十分ご注意ください。
7. AvidアカウントのMy Productsページに、アップグレード元のSystem IDが引き継がれ、新しいUpgrade & Support Planの有効期間が表示されます。(元のライセンスにSystem IDがなかった場合には、新規のSystem IDが作成されます。)
“表示 Software Download Links & Product Details”をクリックして、最新のインストーラーを表示します。必要なものをダウンロードし、インストールします。
8. 指定したiLok ID内のアップグレード元ライセンスは削除され、新しいライセンスがデポジットされます。
iLok License Managerを起動して、最新ライセンスをiLokへダウンロードするか、
iLok Cloudを開いてオーソライズして、完了です。
念願の復活を果たした「再加入」ライセンス。魅力的な数々の新機能はもとより、Macの更新などで最新バージョンが必要だったユーザーにとっては本プロモはまたとないチャンスと言えるでしょう。
Pro Toolsの更新/アップグレードやHDXシステム構築のご相談は、お気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2022-6/#.YsfjXOzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2022-5/#.YqF9DezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/protools-lineup-renewal/#.YqF9SOzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/pick-up-pro-tools-studio/#.YqF9NOzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-hdx-chassis-price-change/#.YqF9IOzP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/protools-subscription-previous-version/#.YqF9Y-zP0-Q
Sales
2022/09/01
【期間延長 9/15まで】33%OFF!! Pro Tools Studio年間サブスクリプション・サマー・プロモーション!
数々の新機能が実装された最新版がリリースされたばかりのPro Tools Studio。そのPro Tools Studioの年間サブスクリプション版が、期間限定で33% OFFで手に入るサマー・プロモーションが開始されました。従来のPro Tools(無印)に比べかなりの大幅なパワーアップを果たしているPro Tools Studio導入をご検討のユーザー様は、ぜひこの機会をご活用ください!
2022年9月1日追記
本プロモーションが9月15日まで延長されました。次期バージョンでのARA 2への対応もアナウンスされ、ますます便利になるPro Toolsをお得に入手するチャンスです!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-ara2-melodyne
期間限定:Pro Tools Studio年間サブスクリプション・サマー・プロモーション
この夏限定でPro Tools Studio年間サブスクが33%お得に!
期間:2022年8月31日まで
期間延長!9月15日まで
対象製品:Pro Tools Studio 年間サブスクリプション(新規)
通常価格:¥38,830
→プロモ特価:¥26,070(本体価格:¥23,700)
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最新のPro Tools Studio年間サブスクリプションの主な特徴
512オーディオ、512インストゥルメントそして1,024 MIDIトラックを装備し、より大規模なミックス環境を構築
豊富なプラグイン、バーチャル・インストゥルメント及びサウンドライブラリで創造性豊かな音楽制作が可能
サラウンド・サウンド、Dolby Atmos®及びアンビソニックス環境での楽曲制作を実現
クリップ・エフェクト対応の他、より先進的な編集やオートメーション・ツールを用いて作業可能
約25万円相当のInner Circle特典がバンドル
最新版Pro Tools 2022.6のさらに詳しい情報はこちら>>
Pro Tools Studioは従来のPro Tools(無印)の後継にあたるライセンスですが、Dolby Atmosミックスやクリップエフェクトの編集など、従来はPro Tools | Ultimateが必要だったいくつかの機能が使用できるようになるなど、その機能は大幅にアップしています。直近のアップデートではMIDI関連のユーティリティも強化され、イマーシブを志向するコンポーザーにとってもEasy to useなDAWへと進化するPro Tools Studio。
導入のご相談やシステム構築などについても、お気軽にROCK ON PROへお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2022-6
https://pro.miroc.co.jp/headline/pick-up-pro-tools-studio
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-studio-ultimate-get-current-promotion
Media
2022/09/01
【MIL STUDIO技術解説】MIL誕生に寄せて〜鑑賞から体験へ 選択から多様の未来へ〜
チャンネルが少なくなければできないことがある。チャンネルが多くなければ分からないことがある。
オーディオの世界を支配するチャンネルとはいったい?
【技術解説】MIL誕生に寄せて〜鑑賞から体験へ 選択から多様の未来へ〜
中原雅考(株式会社ソナ / オンフューチャー株式会社)
📸 株式会社ソナ / オンフューチャー株式会社
中原 雅考 氏
芸術と工学の融合
スタジオと同じ音で作品を聴いてもらいたい。原音忠実再生といった希望は、多かれ少なかれ音響コンテンツ制作者にとっての願いだと思います。しかし、そのためには、ユーザーもスタジオと同じような環境にスピーカーを設置して作品を試聴しなければなりません。今や時代は多様化し、ユーザーの試聴環境は2chかサラウンドかといった単純な選択肢ではなくなっています。ともすれば、この作品はこのように聴いて欲しいといった制作者の強いこだわりが、ユーザーに対しての不用意な圧力になってしまうかもしれません。本来、作品には自由な表現が与えられるべきだと思いますが、オーディオでは、2ch、5.1ch、7.1.4chなど再生チャンネルの形式によって異なる流儀が要求されてしまいます。そのような制限は、工学が芸術を支配しているような関係にも見えてしまいます。
素晴らしい技術をもったエンジニアがスタジオでつくり出す音は最高です。その素晴らしさを多くのユーザーに伝えたいと思い、スピーカーの設置方法、調整方法、部屋の音響のことなどを様々な場面で伝えてきました。しかしそれは、ユーザーにとっては「高級な鮨屋で食べ方を指導されながらおいしさを味わっている」ような世界かもしれません。どうやら、今一度オーディオと出会った頃のユーザー体験に立ち返る必要がありそうです。工学による芸術の制限を緩和すべく、より一層の芸術と工学の融合を目指して…
誰もが気軽に良さの分かるオーディオ再生とは?
作品やユーザー(聴取者)が主役になるためのオーディオとは?
「モノ」「ステレオ」
Media
2022/09/01
完全4π音響空間で描く新たな世界の始まり。〜フォーマットを越えていく、MIL STUDIO〜
MIL=Media Integration Lab。絶えず時代の流れの中から生まれる、我々Media Integrationのミッション。創造者、クリエイターと共に新しい創造物へのインスピレーションを得るために、昨今の空間オーディオ、3Dサウンド、多彩なフォーマット、様々な可能性を体験し、実感する。そのためのスタジオであり、空間。2021年にオープンしたライブ、配信、エキシビジョンといった皆様とのまさに「ハブ」となる空間「LUSH HUB」に続き、次世代の音響、テクノロジーと体験、共有するための空間としてMILは誕生した。43.2chのディスクリート再生で実現した下方向のスピーカーを備えた完全4π音響空間。研究と体験、そこから得られるインスピレーション。それを実現するためのシステム、音響、これらをコンセプト、テクノロジー、音響など様々な切り口からご紹介していきたい。一つの事象に特化したものではないため、掴みどころがなく感じるかもしれない。しかしそれこそが次のステップであり、新しい表現の始まりでもある。
「4π」での感覚で描かれた音楽を
まずは、MIL(ミル)のコンセプトの部分からご紹介していきたい。長年2chで培われてきた音楽の表現。それは今後も残ることになるが、全く異なった「4π」での感覚で描かれた音楽が主体となる世界が新たに始まる。私たちはそのターニングポイントにあり、このMILは「進化し続けるラボ」として今後誕生するであろう様々なフォーマット、3Dの音響を入れるための器、エンコーダー、デコーダーなど様々なテクノロジーを実際に再生し体験し共有することができる。
そのために、特定のフォーマットにこだわることなく、可能性を維持、持続できる空間として設計がなされた。音響面に関しては、このあとのSONA中原氏の解説に詳細を譲るが、物理的な形状にとらわれることなく、今後進化を続けるように運営が行われていく予定である。スピーカー、音響パネルなどは、簡単に入れ替えられるようなモジュール構造での設計がなされており、かなり深い部分からの変更が可能だ。
また、MILならではの特徴として居住性にこだわった、というところは大きいだろう。各研究施設の実験室、無響室のような環境の方が、より正確な体験が行えるのかもしれない。しかしそのような空間は、まさに「Lab」であり、生み出された作品を「視聴」ではなく「検証」する場という趣である。もちろんそこに意味はあるし、価値もある。しかし、MILでは、作品自体をエンターテイメントとして受け取り、住環境にもこだわりゆっくりと楽しむことのできる環境を目指している。ユーザーの実際に近い環境での「検証」が可能であり、「視聴」を行うというよりコンテンツ自体を楽しむという方向での実験、というよりも体験が可能だ。このあとにも紹介する様々なプロセッサー、ソフトウェアを駆使して、いろいろな音環境でリラックスした環境で様々なコンテンツの視聴を行うことができる。
居住性にこだわりつつも、オーディオ、そしてビジュアルのクオリティーに妥協は無い。そのコンテンツ、作品の持つ最高の魅力を体感するために、最善と思われるオーディオとビジュアルのクオリティーを導入している。オーディオに関しては、水平よりも下方向にもスピーカーを配置した、現時点での音響空間のゴールとも言える4π空間再現による真の360イマーシブ環境を実現している。そのスピーカーにはFocal CIの3-Way Speakerを採用している。多チャンネル、イマーシブの環境では同軸のスピーカーが採用されることが多い。もちろん、2-way、3-wayといったスピーカーよりも物理的に点音源としてオーディオを出力する事ができる同軸スピーカーのメリットは大きい。しかし、設置の条件とサウンド・クオリティーを満たす同軸のユニットがなかったために、MILでは音質を重視して3-Way採用に至っている。スピーカー選定に際しては、ユニット自体の音圧放射の特性を調べ上げ、マルチチャンネルにふさわしいものを選定している。その測定の模様はこれまでの本誌にて株式会社SONA執筆の「パーソナル・スタジオ設計の音響学」に詳しい。
この部分に疑問のある方は、ぜひともMILで実際のサウンドを確認してほしい。イマーシブサウンド以降、立体音響=同軸スピーカー。この組み合わせは正しい回答ではあるが、絶対ではないということを知っていただけるはずだ。ビジュアルに関しても、最新の8K60P信号に対応したプロジェクター、そしてEASTON社のサウンドスクリーンの導入と抜かりはない。最新のテクノロジーを搭載した機材を順次導入していく予定である。多彩なフォーマットの体験の場として、またその体験を通しての学習の場として、あるいは創造の場としても今後MILを活用していく予定である。今後の情報発信、そして様々なコラボレーションなどに期待していただきたい。
📸 右写真にてご紹介するのはMIL STUDIOの設計・施工を手がけた株式会社ソナの中原 雅考 氏。後述となる同氏の技術解説も是非ご覧いただきたい。
43.2ch、4π空間をFocalで包む
ここからは、MILにおけるシステムの特徴についてご紹介していきたい。何はともあれ、この大量のスピーカーが興味の焦点ではないだろうか。スピーカーは水平方向に30度刻みで等間隔に配置される。高さ方向で見ると5層。12本 x 5層=60本。それに真上と真下の2本が加わる。現状のセッティングでは、中下層は水平面のスピーカーのウーファーボックスが設置され、下方向も半分の6本のスピーカーを設置、真下もスタンバイ状況ということで、実際には43chのディスクリートスピーカー配置となっている。それに2本の独立したサブウーファーがある。これで43.2chということだ。
📸 L,C,R chは、上から1000 IW 6、1000 IW LCR UTOPIA、HPVE1084(Low Box)が収まる。間の床にあるのがSUB 1000F(LFE)である。
これらのスピーカーはFocal CI社の最新モデルである1000シリーズがメインに使われている。正面の水平面(L,C,R ch)には同シリーズのフラッグシップである1000 IWLCR UTOPIAが設置されている。Focalではラインナップを問わず最上位モデルにこの「UTOPIA」(ユートピア)というネーミングが与えられる。CI=Custom Install、設備用、壁面埋め込み型ということで設置性重視とも捉えられ、音質が犠牲になっているのでは?と感じられる方もいるかもしれないが、同社が自信を持ってUTOPIAの名前を与えているだけに、このモデルは一切の妥協が感じられない素晴らしいサウンドを出力してくる。
それ以外の水平面と上空のTop Layerには1000 IW LCR 6が採用されている。機種名にLCRと入っていることからもわかるように、メインチャンネルを担当することを想定した3-way+1 Pussive Radiatorを搭載したモデル。Hight Layerには1000 IW 6という2-wayのモデルが設置されている。1000シリーズは、FocalのProfessionalラインで言うところのSolo 6 Be、Twin 6 Beといったラインナップに相当する。同社のアイコンとも言えるベリリウムツイーター、'W'コンポジットサンドウィチコーンを搭載した製品である。すでに高い評価を得ているFocal Solo 6 Beと同等のユニット構成のモデルが1000 IW 6。そう考えれば、そのスピーカー群のクオリティーが想像しやすいのではないだろうか。
📸 L,C,Rch以外のスピーカースタンド。上から1000 IW 6、1000 IW LCR 6、HPVE1084(Low Box)が収まる。
ベリリウムで作られたインバーテットドーム・ツイーターのサウンドは、すでに語られ尽くしているかもしれない。その優れた反応速度、濁りのないピュアな響き、Focalのサウンドキャラクターを決定づけているとも言えるサウンド。そのクオリティーをMILではマルチチャンネル、イマーシブ環境として構築した。Focal CIの1000シリーズは、クローズドバックで厚さはわずか10cm程しかない。その特徴もこのような多チャンネルのスピーカー設置を行う際には大きなメリットとなっている。今後、追加で天井にスピーカーを設置したいといった要望にも柔軟に対応できることだろう。
床下のBottom Layerのスピーカーには300シリーズが採用されている。これは物理的な問題が大きく、300 IWLCR 6がサイズ的に合致したということでこの選択肢となった。この300シリーズは、Focal Professionalで言えばSHAPEに当たるラインナップ。ユニットも同等の製品が使われている。物理的なサイズの制約があったといえ、採用できる限りで最良の選択を行っている。このモデルは300シリーズ内でのフラッグシップとなる。1000 IWLCR 6と比べると一回り以上も小さなモデルだが、ダブルウーファーにより十分な量感のあるサウンドを再生することができる。独立したLFE用のサブ・ウーファーに関してだけは、民生のラインナップであるSUB 1000 Fが採用された。これは、ユニットの整合性を取るための選択であり、Middle Layerのウーファーユニットと同一のサウンドキャラクターを得るための選択である。見ての通り、ユニット自体は全く同一のユニットである。
📸 床下に埋め込まれた300 IW LCR 6。現在は6本が設置されているが、それ以外の箇所もキャビネットは準備されている。
📸 天井に専用設計されたリング状のスピーカーキャビネット。ユニットは1000 IW LCR 6が収まる。
イヤーレベルにあたる、Middle Layerのスピーカーには、全てサブ・ウーファー用のユニットが加えられ、3-way + 1 sub。2.1chシステム的に表記するならば、1.1chのような構成となっている。音色面で支配的になるイヤーレベルのスピーカーユニットに関しては、フルレンジとしての特性を持たせるためにこのような構成をとっている。1000 IWLCR 6で低域が不足するというわけではまったくない。このモデルは、カタログスペックとしても48Hz(-3dB)からとかなりワイドレンジでの再生が可能な製品である。これにサブ・ウーファーを組み合わせることで25Hzからのフラットな特性を持たせることに成功している。
まだまだ、イマーシブ・サウンドで制作されたコンテンツはイヤーレベルに多くの主要なサウンドを配置する傾向にある。5.1chサラウンドなどとのコンパチビリティーや、これまでの制作手法などを考えれば当たり前のことではあるし、主役となるサウンドをあえて高さを変えて配置するということに、今後もそれほど大きな意味が持たされるということは無いだろう。そういったことを鑑みてもイヤーレベルのスピーカーをこのような奢った仕様にするということは間違いではない。
FIR補正、55ch分のパワーアンプ、1300mのケーブル
Focal CIのスピーカーは、全てパッシブである。そのため、このチャンネルと同数分のパワーアンプを準備することとなる。結果、必要なパワーアンプのチャンネル数はなんと55chにものぼった。2chステレオ仕様のアンプで準備をするとしたら28台が必要ということになるが、それほど多くのアンプを設置する場所は確保できないため、主要なスピーカーを4chパワーアンプとして、それ以外をInnosonix MA32/Dという2U 32chアンプを採用することとした。
主要スピーカーとは、イヤーレベルのMiddle Layerのスピーカー群であり、クロスオーバーを組む必要があるそのサブ・ウーファーの駆動用となる。これだけでも24本のスピーカーの駆動が必要であるため、4chアンプをアサインしても6台が必要となった。この6台には、Lab.Gruppen D20:4Lが採用されている。この製品は、アンプ内部にLAKE Processerが搭載されており、クロスオーバー、補正のEQなどをFIR Filterで行うことができる高機能モデルである。クロスオーバーがFIRでできるメリットの解説は専門家に任せることとするが、クロスオーバーで問題となる位相のねじれに対して有利であると覚えておいてもらえればいいのではないだろうか。
📸 Lab.Gruppen D20:4L
それ以外のスピーカーを担当するInnosonix MA32/DもオプションでDSP Processer、FIR Filterを搭載することが可能であり、MILではそれらのオプションを搭載したモデルを導入している。これらのアンプにより、スピーカーの補正はFIRとIIRの双方を駆使することができ、より高度なチューニングを可能としている。また高さごとの各レイヤーのアンプの機種を統一することもできているので、それぞれの音色に関しての差異も最小限とすることに成功している。
📸 Innosonix MA32/D
アンプとスピーカーの接続には、ドイツのSOMMER CABLEが採用された。ELEPHANT ROBUSTという4mm2 x 4芯のOFCケーブルが採用されている。同社の最上位のラインナップであり太い芯線により高い伝導率を確保している。芯線を太くしつつ外径は最低限にすることが重要なポイントであった、引き回しを行うケーブルの本数が多いため、その調整を行うために多くの苦労のあったポイントである。ちなみにMILで使用したスピーカーケーブルの総延長は実に1300mにも及ぶ。
これらのアンプまでの信号は再生機器から、全てDanteで送られる。多チャンネルをシンプルに伝送しようとすると選択肢はDanteもしくはMADIということになる。今回のシステムでは、パワーアンプが両機種ともにDanteに対応していたために、Danteでの伝送を選択した。クリティカルなライブ用途ではないために2重化は行っていないが、ケーブルはできる限り高品位なものをと考え、Cat8のケーブルでマシンラックからアンプラックまでを接続している。また、Dante用のEthernet SwitchはPanasonicのPoE対応の製品を選択。今後のシステム拡張時にも柔軟に対応できる製品をピックアップしている。
Avid MTRXで43.2chを一括コントロール
ここまでで、B-Chainにあたる部分がDanteとパワーアンプ内のDSPで構成されていることをお伝えしてきたが、本システムで一番苦労したのがここからご紹介する、モニターコントローラー部分だ。まず、必要要件として43.2ch(将来的には62.2ch)の一括ボリューム制御ができる製品であることが求められる。これができる製品を考えるとAvid MTRXの一択となる。Avid MTRXのモニター制御部分であるDADmanは、最大64chの一括制御が可能、まさにちょうど収まった格好だ。
そして、MILの環境で決まったフォーマットを再生する際に、どのチャンネルをどのスピーカーで鳴らすのか?この設定を行うのがなかなか頭を悩ませる部分だ。Dolby Atmos、SONY 360Reality Audio、AURO 3D、22.2chなど様々なフォーマットの再生が考えられる。一段プロセッサーを挟んだとしても特定のフォーマットでの再生という部分は外せない要素だ。まずは、SONA中原氏とそれぞれのフォーマットごとにどのスピーカーを駆動するのが最適か?ということを話し合った。そこで決まったスピーカーの配置に対し、各フォーマットの基本となるチャンネルマップからの出力がルーティングされるようにモニターセットを構築していった。こうすることで、再生機側は各フォーマットの標準のアウトプットマッピングのまま出力すればよいということになる。
この仕組みを作ることでシグナルルーティング・マトリクスを一箇所に集中することに成功した。DADman上のボタンで、例えばDAW-Atmos、DAW-AURO、AVamp-Atmos、、、といった具合にソースをセレクトすることし、バックグラウンドで適切にシグナルルーティングが行われる仕掛けとしている。後で詳しく説明するが、再生系としてはDAWもしくは、AVampデコードアウト、SPAT Revolutionのプロセッサーアウトの3種類。それぞれから様々なフォーマットの出力がやってくる。これを一つづつ設定していった。そしてそれらのボタンをDAD MOMのハードボタンにアサインしている。
このようにしておくことでDADmanのソフトウェアの設定に不慣れな方でも、その存在を意識することなくソースセレクトのボタンを押してボリュームをひねれば適切なスピーカーから再生されるというシステムアップを実現している。なお、Avid MTRXはあえてスタンドアローンでの設置としている。もちろんPro ToolsのAudio I/OとしてDigiLinkケーブルで直結することも可能だが、様々なアプリケーションからの再生を行うことを前提としているため、MTRXはモニターコントローラーとしての機能にのみ集中させている。
市販コンテンツからマスター素材まで対応の再生系
📸 プロジェクターはJVC DLA-V90R。「8K、LASER、HDR」と現時点で考えうる最高スペックを持つフラッグシップモデル。EASTONのサウンドスクリーンと組み合わせて最高の音とともに映像にもこだわった。
次に再生側のシステムの説明に移ろう。市販のメディア、コンテンツの再生のためにPanasonic DMR-ZR1(Blu-ray Player)、Apple TVが用意されている。これらのHDMI出力はAV Amp YAMAHA CX-A5100に接続され、このアンプ内でデコードされプリアウトより7.1.4chで出力される。このAV Ampは近い将来STORM AUDIO ISP Elite MK3へと更新される予定だ。この更新が行われれば、更に多チャンネルでのデコードが可能となり、MILのさらなるクオリティーアップへとつながる。このSTORM AUDIOはAURO 3Dの総本山とも言えるベルギー、ギャラクシースタジオ、Auro Technologies社が立ち上げたAV機器ブランドであり、AURO 3Dの高い再現はもちろん、Dolby Atmos、DTS:X pro、IMAX Enhancedといった最新の各種フォーマットに対応している。更に24chものアナログアウトを備え、Dolby Atmosであれば最大11.1.6chという多チャンネルへのデコードを行うことができる強力なAV Ampである。本来は、各スピーカーの自動補正技術なども搭載されているが、MILでは、すでにSONAによりしっかりとスピーカーの調整が行われているのでこの機能は利用しない予定である。このAV Ampの系統では、Apple TVによる各種オンデマンドサービス(Netflix等)の視聴、Apple Musicで配信されている空間オーディオ作品の視聴、Blu-ray Discの視聴を行うこととなる。
📸 映像再生用のPlayerはPanasonic DMR-ZR1が奢られている。4K Ultra Blu-ray対応はもちろん、22.2chの受信(出力時はDolby Atmosに変換)機能などを持つ。
📸 AV ampとして導入を予定しているSTORM AUDIO ISP Elite mk3。Dolby Atmos、Auro 3Dといった市販のコンテンツの魅力を余すことなく引き出すモンスターマシンだ。
もう一つの再生システムがMac Proで構築されたPCからの再生だ。これは各マスターデータやAmbisonicsなどメディアでの提供がなされていない作品の視聴に使われる。現在スタンバイしているソフトウェアとしては、Avid Pro Tools、Virtual Sonics 360 WalkMix Creator™、SONY Architect、Dolby Atmos Renderer、REAPERといったソフトになる。ここは、必要に応じて今後も増強していく予定だ。
📸 Avid Pro Tools
📸 Dolby Atmos Renderer
📸 360 WalkMix Creator™
📸 SONY Architect
📸 REAPER
Dolby Atmos、ソニー 360 Reality Audioに関して言えば、エンコード前のピュアな状態でのマスター素材を再生可能であるということが大きなメリット。配信にせよ、Blu-ray Discにせよ、パッケージ化される際にこれらのイマーシブ・フォーマットは圧縮の工程(エンコード)が必要となる。つまり、Dolby Atmosでも360 Reality Audioでも、マスターデータは最大128chのWAVデータである。さすがにこれをそのままエンドユーザーに届けられない、ということは容易に想像いただけるだろう。Dolby Atmosであれば、Dolby Atmos Rendererの最大出力に迫る9.1.6chでのレンダリング、360 Reality AudioはMILのスピーカー全てを使った43chの出力が可能である(360 Reality AudioはLFEのチャンネルを持っていないため43chとなる)。特に360 Reality Audioの再生は他では体験ができない高密度でのフルオブジェクトデータのレンダリング出力となっている。オブジェクト方式のイマーシブフォーマットの持つ高い情報量を実感することができる貴重な場所である。
REAPERでは、MILの4π空間を最大限に活かす7th orderのAmbisonicsの再生ができる。7th Ambiの持つ4π空間の音情報を43chのスピーカーで再生するという、まさにMILならではの体験が可能だ。現状のセットアップでは、IEM AllRADecoderを使用してのチャンネルベースへのデコードを行っているが、他のソフトウェアとの聴き比べなども行うことができる。この部分もこれからの伸びしろを含んだ部分となる。各フォーマットのレンダリングアウト(チャンネルベース)を一旦7th Ambiに変換して43chに改めてデコードすると言った実験もREAPER上で実施することが可能だ。
それ以外に、Stereo音源の再生のためにiFI Audio Pro iDSDが導入されている。これは、DSD / DXD / MQA / PCM192kHzなど各種ハイレゾ素材の再生に対応したモデル。イマーシブ・サウンドだけではなくステレオ再生にも最高のクオリティーを追い求めたシステム導入が行われている。
スピーカーの仮想化、FLUX SPAT Revolution
📸 視聴空間としてではなく、ラボとして様々なフォーマットの変更を担うのがFLUX:: Spat Revolutionだ。OM FactoryでSPATの動作に最適にチューンされた、カスタムWindows PC上で動作をさせている。実際にMILで利用しているSpat Revolutionのスクリーンショットを掲載しているが、Dolby Atmosの入力をMILの43.2chにアサインしているのがこちらとなる。それ以外にも22.2ch、Auro 3DなどをMILのデフォルトとしてプリセットしている。
この2つの再生系統の他に、Core i9を搭載したパワフルなWindows PCがFLUX SPAT Revolution専用機として準備されている。これは、それぞれの再生機から出力されたレンダリングアウトに対し様々なプロセスを行うものとなる。具体例を挙げるとDolby Atmosであれば、理想位置から出力された際のシュミレーションを行ったりということになる。MILのTOPレイヤーは仰角34度であるため、Dolby Atmosの推奨設置位置である仰角45度とは11度ほど差異が出ている。これをSPAT上で仰角45位置へと仮想化するということである。水平面に関しても、実際に物理的なスピーカーが設置されていない水平角100度、135度という推奨位置へと仮想化することなる。
スピーカーの仮想化というと難しそうだが、シンプルに言い換えればパンニングを行うということになる。SPAT Revolutionでは、このパンニングの方法が選択できる。3Dのパンニングとして一般的であるVBAP=Vector-Based Amplitude Panningに始まり、DBAP=Distance-Based Amplitude Panning、LBAP=Layer-Based Amplitude Panning、SPCAP=Speaker-Placement Correction Amplitude PanningといったAmplitude Pan系のものと、KNN=K Nearest Neighbourが選択できる。これらは今後のバージョンアップで更に追加されていくと見込んでいるのだが、3Dパンニングのタイプを切り替えて聴き比べができるのもSPAT Revolutionならではの魅力だ。水平面であれば、シンプルなAmplitude Panで問題は無いが、3D空間に対しては、垂直方向のパンニング、立体空間に定位させるための係数の考え方の違い、など様々なファクター、計算をどのように行うのかというところに多様なメソッドが考えられており、SPAT Revolutionを用いればこれらの聴き比べができるということになる。更にMILでの実践はできないが、SPATにはオプションでWFS=Wave Field Synthesisも用意されている。
📸 SPATを動作させるOM Factory製カスタムWindows PC
SPAT Revolutionは一般的なChannel-Baseの音声だけではなく、Scene-Baseの音声の取り扱いも可能である。具体的には7th order Ambisonics、バイノーラル音声の扱いが可能ということになる。これらScene-Baseのオーディオデータはさすがに直接の取り扱いというわけではなく、一旦Channel-Baseにデコードした上でSPATの自由空間内で各種操作が行えるということになる。ここで挙げたような3D Audioのミキシングのための様々な考え方は知っておいて損のないことばかりである。今後技術解説としてまとめた記事を掲載したいところである。
映像系統に関しては、AV ampに一旦全てが集約されInputセレクターとしても活用している。選択されたソース信号は、プロジェクターVictor DLA-V90Rに接続される。このモデルは、8k60p信号の入力に対応したハイエンドモデルである。これが、120inchのEaston E8Rサウンドスクリーンに投影される。PCの操作画面はKVM MatrixとしてAdder DDX10で制御され、1画面を切り替えて操作が行えるようにシステムアップされている。
以上が、MILにて導入された各機器である。文章としてはボリュームがあるが、実際にはAV amp以外は全てDanteでの接続のため、あっけないほどシンプルである。一本のEthernet Cableで多チャンネルを扱える、信号の分配など自由自在なルーティングが組めるDanteの恩恵を存分に活用したシステムアップとなっている。各機器がまさに適材適所という形で接続された、まさに次の世代への対応まで整えたと言っていい内容でシステムアップが行われたMILスタジオ。4πの空間再現、音を「MIL」という思いを込め実験施設とは異なった、じっくりと、ゆっくりと音を体験できる場となっている。
【LINK】MIL STUDIOの設計・施工を手がけた株式会社ソナの中原 雅考氏による技術解説
技術解説:MIL STUDIO
*ProceedMagazine2022号より転載
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2022/#.YxG8QezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/headline/360ra-info-2022/#.YxG72ezP0-Q
https://pro.miroc.co.jp/solution/360-reality-audio-360-walkmix-creator-proceed2022/
https://pro.miroc.co.jp/headline/comparison-of-atmos-360ra/#.YxG8EuzP0-Q
Post
2022/08/25
株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービス 竹芝メディアスタジオ様 / 〜五反田から竹芝への大規模移転、時代の区切りをいま目の当たりに〜
日本を代表するポストプロダクションであるIMAGICAエンタテインメントメディアサービス。その中でも古い歴史を持つ五反田の東京映像センターをクローズし、竹芝メディアスタジオへその機能を移転した。1951年より前身である東洋現像所 五反田工場としてスタートしてから70年余りの歴史に幕を閉じ、新しい竹芝の地でのスタートとなっている。特に映画の関係者にとっては、聖地ともいえる「五反田のイマジカ」。その施設と設備が竹芝でどのように構築されたのか、弊社で導入のお手伝いをしたMAを中心にお伝えしたい。
五反田から竹芝の新拠点へ
様々な映像関連サービスを提供する株式会社IMAGICA GROUP。その中の株式会社IMAGICAエンタテインメントメディアサービスの本拠地とも言える五反田の東京映像センターの設備を新拠点となる竹芝メディアスタジオへ移転させることとなった。五反田の地では、前身の東洋現像所時代より日本の映画制作における中心地としてフィルムを主軸としたサービスが展開されており、その試写室はまさに日本映画のリファレンスとも言われてきた。
昨今のフィルムでの撮影需要の動向により、五反田ではすでにフィルム関連のポストプロダクションサービスを行っていなかったが、2部屋の試写室は初号上映の場として日々活躍してきた。移転にあたっても試写室の設備を作るということで物件の選定には大きな苦労があったということだ。やはり試写室を作るとなると、十分な天井高を確保できる建屋が必要であり、それ以外の編集、ダビング、MAなどの設備もとなると、移転先を探すだけで数年がかりのプロジェクトになったということだ。移転先が決まってからは、非常にスピード感を持って話しが進んだのだが、まさにコロナ禍に突入したタイミングからの移転作業開始となり、多くの苦労がここにはあったそうだ。
5.1chからDolby Atmos Homeまで、高まるニーズ
📷 3F:MA:303
本記事で中心的にお伝えする303と呼ばれるMA室は、4部屋設けられたMA室のうちの1つでDolby Atmos Homeの再生環境を備えた部屋となる。ほぼ同等のサイズの305は、将来的にDolby Atmosの導入が行えるように準備がなされた5.1chの部屋。304、306は、303や305と比べると少し小さいサイズだが、この2部屋も5.1chサラウンドを備えた部屋となっている。五反田時代も仕込み専用の部屋も含めると4部屋が実際にはあったが、お客様をお招きできる部屋は2部屋しかなかったそうだ。竹芝では304、306は基本的には仕込み作業を行う部屋としているが、お客様をお招きしても問題のない設備となるよう設計されている。また、五反田時代に来客対応ができる5.1chサラウンドの部屋は1室の体制であったが、竹芝では全室5.1chサラウンド対応としたことでかなり柔軟な運用を可能としている。
📷 303室の機器が収まった3本のラック。MacProが4台。それぞれの動機を取るためのSync X、そしてAudio I/OはMTRXが設置されている。Pro Toolsは3Setが導入されているがMTRXは1台とし、MTRXの内部で全てがルーティングされたシンプルなシステム構成となっている。奥のラックにはスピーカーを駆動するためのLab.Gruppen Cシリーズのアンプが収まる。
今回Dolby Atmos仕様の部屋が1室、5.1ch仕様の部屋が3室と、サラウンド仕様の部屋を増強した形になっている。ここには、IMAGICAエンタテインメントメディアサービスとしてサラウンド作品の受注が増加しているという背景がある。放送向けの作品はステレオ中心ではあるが、それ以外にストリーミング向けの作品を手掛ける機会が増えているということ。昨今、ストリーミング各社が製作するオリジナルコンテンツは、5.1ch以上のフォーマットでの制作がほとんどであり、5.1chサラウンドの需要は高い状況が続いているとのこと。実際に303の部屋の稼働は半数程度が5.1ch作品になっているそうだ。お話を聞いた時点ではまだDolby Atmosの作品制作は行っていないということだったが、近い将来に予定されているとのことなので、この部屋からDolby Atmos作品が誕生する日は遠くない。前述の通り、同等の広さを持った305室には天井にスピーカー設置の準備までが行われているため、Dolby Atmosの需要動向次第では2部屋に設備を増強することが容易に行える。303にはDolby Atmos Homeのマスタリングを行うことができるDolby HT-RMU(Home Theater - Rendereing and Mastering Unit)が導入されている。これにより、仕上げまでしっかりとした環境で行うことができる設備となっている。
また、竹芝メディアスタジオでは、予算の関係でダビングステージに入れない場合や、映画のプリミックス作業を受注することもあるそうだ。通常のMA設備よりも広く設計したことにより、五反田の時に比べて劇場との差異を軽減できている。試写室との連携も同じ建屋内で完結できるため、直し作業後の確認などもスムースに行うことができるのは一つメリットと言えるだろう。MA室で仕上げた作品を試写室でチェックし、直しがあればまたMA室に戻る、そんな連携での作業も可能となっている。サラウンド作業についてで見ると、MAとダビングではスクリーンバックのスピーカー、サラウンド側スピーカーのデフューズ・サラウンドという点で再生環境に大きな違いがあるが、これをその環境が備わった試写室との運用連携で解消している。同じ建屋内で効率的にリソースを活用している格好だ。
📷 ナレーション収録からアフレコへの対応も考えられた、大きな容積が確保されたブース。アフレコ時には横並びで4名が入れるように設計が行われている。余裕のある空間なので、カメラを入れての収録など様々な用途での活用も可能だ。
音と純粋に向き合う、隠されたスピーカー
303室のスピーカーにはプロセラ社のモデルを採用、ローボックスと組み合わせて3wayの仕様での導入となっている。このスピーカーは移転に際して新しく導入したものだ。五反田で使っていたMusik RL900Aに慣れたお客様にどのように受け入れられるか、当初不安な部分もあったということだが非常に好評を得られているとのこと。写真を見ていただければわかるように、スピーカーは全てサランネットの裏に設置されておりその姿は普段は見えない。そのため、スピーカーは何を使っているのか?という問い合わせを作業後に受けることが多いということだ。これは「いい音だったので何を使っているのかが知りたい」という評価を裏付ける好意的な質問と言えるだろう。
📷 フロントバッフルに埋め込まれたスピーカーはProcella Audio P8と同社のSubWoofer P15SIの組み合わせての3Way構成。この組み合わせで、5ch全て同一のモデルで平面のサラウンドが設置されている。LFE ch用にはProcella Audio P15が2本、L、Rchそれぞれの外側に設置されている。Dolby Atmos用の天井スピーカーはProcella Audio P8が4本設置されている。写真では分かりづらいが、しっかりとセンターに軸を向けてアングルを付けて天井に埋め込まれている。
なお、スピーカーを隠したのは、スピーカーと向き合って音を聴くのではなく、そこで鳴っている音を純粋に聴いてほしいという思いから、あえて見えないようにしているとのことだ。サラウンドサイドなどでスピーカーがサランネットに隠されている環境はよく目にするが、フロント面も全て隠されているというのは新鮮さを感じる。大型のスピーカーは確かにその存在感が大きい。隠すことで音に集中してもらうという発想は今後も各所で取り上げられそうな印象を受けた。
プロセラに組み合わされるアンプは、Lab.Gruppenが採用されている。LAKEプロセッサーによるスピーカーチューニングが行えるということもあるが、サウンドのキャラクターがシャープで立ち上がりの良いサウンドだということもMAの作業には向いているということだ。やはり、余裕を持ってスピーカーを駆動するということを考え、アンプは出力的に一回り大きな容量のモデルを選定したということだ。
シンプルさと柔軟性を両立させるS6 + MTRX
📷 32Fader仕様のAvid S6カスタム。机面に対してアームレストがフラットに収まるようにカスタムデザインのデスクが用意されている。PC DisplayはAdder DDXにより、どの画面からも任意のPCを操作することができるように設計されている。
コンソールは、Avid S6が採用されている。これまではSSL Avantが使われていたが、移転に際しAvid S6の導入となった。2マン〜3マン体制での作業が多いということで、レイアウト機能、スピル・フェーダー機能といったフェーダーの並び替えにおいてAvid S6が持つ高いカスタマイズ性に注目していただき導入となった。複数のDAWをまたいで制御が行えるAvid S6は、ハリウッドで鍛え上げられた複数のエンジニアが並んで作業をするということに対して、様々な機能を持って応えてくれる。フェーダーのみの列を作ったり、必要とされる部分に機器を備えカスタマイズされた仕様となっている。このような盤面の構成の柔軟性もAvid S6がモジュール構造だからこそ実現する美点。必要なモジュールを必要な箇所に設置してセットアップができるようになっている。
また、3人目のエンジニア用にAvid Artist Mixも用意されている。Avid S6での作業も可能だが、独立したコントローラーで自由に作業を行いたい際には、Artist Mixも使えるという作業に柔軟性を持たせるための導入となっている。Dolby Atmos用のJoystickは、好きな場所に持ってきて操作ができるように独立したボックスに納められた、ステレオ作業の際には卓の後ろに隠しておけるコンパクトなサイズのものだ。
📷 コンソール左側のアシスタントデスクには、ヘッドフォンモニター用のtc.electronics BMC-2、Grace Design m908のコントローラーVTRリモコンなどが並ぶ。ダバーを操作したり、Dolby Atmos RMUを操作したりといった作業はこちらのデスクで行うことが多い。
📷 コンソールの左側は、3人目のエンジニアが来た際にAvid S6と切り離して作業ができるよう、Avid Artist Mixが設置されている。併せて個別でのヘッドフォンモニターができるようにtc.electonics BMC-2がここにも用意されている。
システムのバックボーンはAvid MTRXが受け持っている。3台のPro Toolsが常設されているが、1台のAvid MTRXでそのシステムは完結している。モニターコントロール部分は、全MA室のシステムを極力統一したいということもありGrace Designのm908が導入された。Avid MTRXはDAWシステム間のシグナル・ルーティングを受け持ち、最終段のモニターコントロールはGrace Design m908という流れだ。機器の収まったマシンルームの写真をご覧いただければ感じられる通り、複数のDAWが含まれるシステムでありながらも、非常にシンプルかつコンパクトにそれらがまとまっていることがご理解いただけるだろう。
VTRは、HDCAM SR 2台がMA用として設置されている。納品物としてVTRを求められるケースはかなり減ってきているということだが、まだアーカイブ、バックアップとしてテープが欲しいと言われることも多いということだ。2台のVTRはVikixのVideo Routerで信号が切り替えられるようになっており、全てのMA室から共用で利用できるように設計されている。
集約された機能がメリットを生む
ここ、竹芝メディアスタジオには大規模なサーバーシステムが導入され、MA室からもそのサーバーへ接続できるようになっている。基本的に持ち込まれるデータが多いということもあり、サーバー上での作業は行わず編集、試写室、QCとのデータの受け渡しで活用しているとのことだ。なお、編集〜MA〜QCというポスプロ作業一式での作業を受ける作品が多いため、サーバーを介してのデータの受け渡しはかなり頻繁に行われている。五反田時代は建屋が別棟だったこともあり、ワンストップで作業を請け負っていたとしても、編集にはお客様が立ち会うがMAはお任せ、というケースが多かったが、竹芝に来てからは、フロアを移動するだけということもあり、MAにもお客様が立ち会われる機会が増えているということ。これは移転で機能が集約されたことによって出現したメリットの一つだとのこと。
これらのシステムは、かなり多くの部分が五反田からの移設で賄われている。アウトボード類、VTR、DAW用のPCなど移設対象の機器は多岐にわたったのだが、昨今の事情もありつつ、移転に際して非常に苦労の多かったのが「稼働を損なうことなく移設をどのように進めるか」であったという。そのため、スタジオ自体のダウンタイムを最低限に留めつつ新社屋への移転を行うために段階的な引っ越しが行われた。全ての機器を新設で賄うことができれば良いのだが、なかなかそのようなわけにはいかない。竹芝で五反田の機材以外の部分を仕上げ、五反田のシステムから竹芝へ機材を移動し、動作確認を行って即時に稼働させる。そのような段取りが部屋ごとに組まれたそうだ。
竹芝メディアスタジオ-フロアガイド
7フロアに広がる、大規模なポスプロ設備。カラーグレーディング&編集、スクリーンを使ったカラーグレーディング、オフライン編集、メディアサーバー室など様々な設備が一つのビルの中に整っている。広々としたロビーや多くのミーティングスペースなども設けられており先進的な印象を与える空間も多いが、その中でもサウンドに関連する設備をダイジェストでご紹介したい。
●1F:第1試写室 / 第2試写室
📷 1F:第1試写室
📷 1F:第2試写室
100席という中規模なシネコンスクリーンクラスの座席数を備えた第1試写室。4K DLPのプロジェクターと、35mmのフィルム上映が可能な設備を備える。スクリーンはスコープサイズで横幅8.4m。第2試写室は、Dolby Cinema (Dolby Vision + Dolby Atmos)の再生に対応した設備を備えた試写室。Dolby Cinema対応のカラーグレーディング室としても活用される、ハイスペックな試写室である。音響面もDolby Atmosへの対応とともにDTS:Xへも対応。最先端のテクノロジーが導入された51席の試写室である。
●3F:ダビング
📷 3F:ダビング
📷 3F:ダビング
映画館で上映されるコンテンツのミキシングに対応したスクリーンと、デフューズサラウンド仕様のダビングルーム。主には劇場予告編のミキシングが行われている。スピーカーとアンプは試写室と同じメーカーの製品に揃えられ、サウンドキャラクターの差異が最低限になるように設計が行われている。同規模の設備が2室用意されている。
●3F:MA
📷 3F:MA
4室が設けられているMA。全ての部屋が5.1chサラウンド対応である(うち1部屋はDolby Atmos Home対応)。ネットワークでの社内サーバーへの接続により、各編集室、試写室とのデータの連携もスムーズになっている。部屋ごとの設備を出来得る限り統一することで、エンジニアの機器操作に対する負担を軽くするとともに、部屋ごとのサウンドキャラクターの統一を図っている。
●6F:QC
📷 6F:QC
作品が完成したあとのマスターデータのチェックを行う設備である。ハーディングチェックなどにとどまらず、映像の影の有無、カット、編集のミス、音声のノイズ、音量のばらつきなど、機械では判断できないような部分までも要望に応じてチェックが行われる。Dolby Atmos / 4K HDRに対応した部屋が2部屋、5.1ch対応の部屋が3部屋。合計5室のQCルームがある。
様々な苦労が、裏にはあった五反田から竹芝への大規模な移転。そしてそれに伴い行われた様々なチャレンジ。新しいシステム、部屋、音環境、まさにこれから新しい時代がスタートすることを感じさせる大規模な移転である。これから映画の聖地となっていくであろう試写室、Dolby Atmosをはじめ最新メディアに対応したMA、一つの時代の区切りをいま目の当たりにしている、そう感じさせるものであった。
*ProceedMagazine2022号より転載