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ROCK ON PRO
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新世代3D サラウンドDOLBY ATMOS
盟主DOLBY の提唱する次世代フォーマット
最大64ch ディスクリート駆動
次代の3D Sound を担うDOLBY ATMOS映画におけるサラウンドには非常に長い歴史を持っている、現在の5.1ch のシステムも既に20 年近い歴史を持つスタンダード。そして次のジェネレーションとして考えられているのが3D Sound システムである。 |
3D SOUND は高さの表現へ
3D と言えば映像であれば立体視、奥行きの表現となるが、既に音声におけるサラウンドについて平面方向の拡張は行われている。次のステップは縦方向、つまり高さを表現することにあり、さらなる高地場音響を提供しようというのが各社のターゲットとなっている。
その特徴は単純にTOP CH を追加するということではなく、部屋の中を自由自在に音を動かせるようなシステムの開発に焦点があてられており、前号でご紹介をしたAURO 3D とこのDOLBY ATMOS がその規格として具体的に運用され始めている状況だ。
高い対応力を備えたDOLBY ATMOS
まずはDOLBY ATMOS のフォーマットからご紹介したい。スクリーンバックには従来のDOLBY Digital と同様にLCR の3ch、サラウンドはスクリーンの直近からウォールSP の配置を行うというのが変更点、これにより全周においてスピーカーが配置されることとなり、さらに3D の表現となるため天井に2列のスピーカーを配置する。スピーカーの設置数は最大で64ch までコントロールが可能。劇場、スクリーンのサイズに応じて変更可能だが、これに関してはDOLBY 社のスピーカー・セッティング・ガイドラインが用意されている。
部屋の広さに応じて、設置される推奨スピーカー本数が決定され、その設置位置情報および能力がATMOS 用音声レンダリングユニット(RMU=Rendering Managiment Unit) に登録される。つまり、必ずしも64 本のスピーカーを用意しなければならないということではなく、あくまでも最大で64chという内容だ。
なお、スピーカーのマネージメントはRMU が担当し、入力はMADI が2系統合計128ch、出力はMADI1系統で64ch。そのコントロールはEthernet での接続となる。ATMOS ミックスにはBed(ベッド)と呼ばれる従来のチャンネルベースとスピーカーを自由に移動できるObject(オブジェクト)を使用することとなる。ベッドはこれまでのDOLBY SURROUND 7.1 に天井の2列をそれぞれ1ch とした9.1ch の構成。従来のアレータイプのチャンネルを意識した音場再現を目的とし、移動や定位感を必要としない音源に用いる。一方オブジェクトは、ATMOSPANNER プラグインで決定した3D 空間位置情報をMetadata として持った単独の音声となる。スピーカー間を自由に遷移できるため移動感や定位感を強調したい音源に用い、このMetadata を基にオブジェクトはRMU 内部でダビングステージの規模に見合うスピーカー配置を反映したレンダリングを行い、ベッドと合成されて出力されることとなる。なお、ATMOS で使用可能な同時発生音は128 音源となり、これらをベッドとオブジェクトで分け合って使用する。
前述にもあったように、劇場のサイズに応じて、スピーカーの設置数は変化することとなる。ATMOS では部屋の空間のどの方向から音声を再生するか、ということをオブジェクトに情報として持たせて移動をさせているが、劇場、スクリーンの変化に対応する高い互換性への仕掛けがこの点にある。従来の7.1ch以上に細かくスムーズなパンニング時の音像移動がオブジェクトを利用することで実現でき、部屋の隅、角など、これまで音像を定位させることが難しかったゾーンに対してもオブジェクトならば定位させることが可能となるからだ。そのオブジェクトをコントロールするためのATMOS PANNER だが、現時点では、AVID Pro Tools用のプラグインとして提供されている。プラグインはオブジェクトの何チャンネルを操作しているのかといった情報を事前に設定し、Ethernet を経由してRMU へ位置情報を送り込む役割を担っている。Pro Tools 11 の情報にもDOLBY ATMOS 対応と表記がなされており、非常に親和性の高いシステムが今後登場することが予想される。
実際のダビング作業を整理していくと、現状ベッドのミックスは従来通りの手法で行う。オブジェクトのチャンネルに関してはダバーへ単独で送り出した上で、ATMOS PANNER プラグインをダバー上で用いて位置情報を指定するという使用方法が取られているとのこと。そして、ダバーで最終的にまとめられたものが2系統のMADI を通じてRMU へと送り出され、スピーカーの本数に応じたバランスで劇場内へ再生されるということになる。なお、ATMOS のミックスではアウトプットが最大64ch にも及ぶため、モニターのボリューム調整を従来のシステムで行うことができない。従って、モニターバランスのコントローラーはRMU が行うこととなるがこの部分に関してもAVID system5,AMS/NEVE 等のダビング用コンソールでリモート出来るように開発中というコメントが入っている。
ベースマネージメントへの対策
現状では、スピーカー本数分のアンプとベースマネージメントコントローラーが必要となる。ATMOS では、リアチャンネルもフルレンジ再生を推奨している(HPF を通す場合には、リアにもSW を設置)ため、今までのWallSpeaker ほどの調整は要らないとの話もあるが、可能性が増えれば増えるほど調整を追い込みたくなるもの。今後のシステムの実例には注意を払う必要があると思われる。もちろんフロントは従来と変わらずスクリーンバックの特性を取る必要があるため、調整が全く必要ないということにはならない。
映画における3D Surround の展望
ATMOS で制作された音声の上映館へのデリバリーは、DCP での配信システムを利用して問題なく行うことが出来るものとなっている。DCP にATMOS 専用データを記録することで、従来の5.1ch や7.1ch に加えATOMOSの128ch の音声データとオブジェクトの位置情報が配信されることになる。これによりシアターのフォーマットに左右されないデータの生成が可能だ。
上映スクリーンの現状再生専用のデコーダーCP850 のデリバリーが開始され、着実にスクリーン数を増やしている。ATMOS 対応再生プロッセッサーが販売されたことで、劇場でのATMOS 導入が現実的なものとなる。AURO 3D とともに、次世代3D 音響の注目フォーマットであるATMOS。今後の展開と、上映館の増加状況など、その経過を注意深く見守る必要がある。残念ながら2013 年5 月時点では国内での上映館が存在しない状況ではあるが、アメリカを始め、中国、韓国、台湾、インド等のアジア諸国に執筆時点で上映スクリーンが100 以上導入され、制作された作品は40 作品を超えている。海外へ訪れた際には是非とも体験してきていただきたい次世代の音響技術である。 |