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2024/12/09
株式会社角川大映スタジオ様 / 最新かつ最大規模のDolby Atmos Cinemaダビングステージ
『静かなる決闘』『大怪獣ガメラ』『Shall we ダンス?』といったヒット作が生みだされ、近年では高精細ディスプレイを使用したバーチャルプロダクション事業も手がける角川大映スタジオ。国内で唯一、自社に美術部を持つことでも有名な同スタジオだが、意外にもダビングステージの誕生は2011年と比較的最近のこと。このダビングステージにオープンから13年を経てついに大規模な改修が施された。待望のDolby Atmos Cinemaへの対応をはじめ、生まれ変わった本スタジオに込められた優れたノウハウを紐解いていきたい。
待望のDolby Atmos Cinema対応
今回の角川大映スタジオダビングステージ改修においてもっともエポックメイキングな点といえば、何よりもDolby Atmos Cinemaへの対応ということになるだろう。国内では、東映デジタルセンター、グロービジョンに続く3部屋目のDolby Atmos対応ダビングステージの誕生になるが、デュアルヘッド72フェーダーのS6を備えた角川大映スタジオは現時点で最新かつ最大規模のDolby Atmosダビングステージということになる。Dolby Atmosへの対応にあたって新たに天井へのスピーカー設置が必要になるため、遮音壁の内側、スクリーン裏のフロントバッフルを除き、ほぼすべての内装意匠を解体してイチからの工事が実施されているほか、フロントLCRを除くすべてのスピーカー+サブウーファーもDolby社のレギュレーションに基づいて新規導入されるなど、まさに生まれ変わったと言って過言ではない大規模な改修となっている。
📷天井と壁面にずらりと並んだサラウンドスピーカー。「Dolby Atmos Theatrical Studio Certification Program Requirements」に基づいて、サイドが左右壁面に7本ずつ、ハイトが天井左右に7本ずつ、リアが背後壁面6本の合計34本のサラウンドに加え、サラウンド用サブウーファー4本が使用されている。
同じDolby Atmosといっても、家庭での視聴を前提とするDolby Atmos Homeと、映画館での視聴を前提とした制作となるDolby Atmos Cinemaでは、Dolby社のレギュレーションを満たすために求められるスピーカーシステムがまったく異なっている。ベッドチャンネルに対して1対1の関係でスピーカーを配置するDolby Atmos Homeに対して、Dolby Atmos Cinemaでは映画館と同様にディフューズ・サラウンドを使用することで面によるサラウンド環境の再生を行うということになる。家庭よりもはるかに広い映画館においては、視聴する位置による音響体験の差を極力なくすことが求められ、作品の音響制作に関わる最終段であるダビングステージでは、その環境を再現することが必須というわけだ。
📷ダビングステージのフロント、透過スクリーンの裏に設置されたLCRは既存のJBL 5742+サブウーファーJBL 4642Aを残している。LCR用のアンプはステージ裏に別途ラッキングされているのだが、今回の更新に伴い、スピーカーケーブルも試写室と同じBELDENに更新されている。
必要なスピーカーの本数はDolby社の「Dolby Atmos Theatrical Studio Certification Program Requirements」という文書に記されており、部屋の横幅と前後の奥行きに応じて、リアサラウンドとサイドおよびハイトスピーカーの本数が細かく指定されている。今回の角川大映スタジオの場合、サイドが左右壁面に7本ずつ、ハイトが天井左右に7本ずつ、リアが背後壁面6本の合計34本のサラウンドに加え、サラウンド用サブウーファー4本が使用されることとなった。ベース・マネージメント用に設置されたこれらのサブウーファーは天井の四隅から少し内側に入ったあたりに設置された。
既存流用となるフロントのJBL 5742に合わせ、サラウンドスピーカーもすべてJBLで揃えられている。基本的にはJBL 9310が採用されているが、カバーエリアの関係でハイトの一部にはJBL AM5212/00が使用されることになった。カバーエリアやスピーカーの設置角度に関してもDolby社の厳密な規定が存在しているのだが、このレギュレーションで興味深いのは、すべてのスピーカーをミキシングポイントとなる1点に向けるのではなく、一部のサラウンドスピーカーはCMA(Critical Mix Area)と呼ばれるミキシング作業をおこなうエリアの四隅または辺縁に向けるよう指定されている点だろう。このあたりも、シネマ制作ならではの仕様と言えるのではないだろうか。
もうひとつ、Dolby Atmos HomeとDolby Atmos Cinemaの大きな違いをあげるのであれば、ソフトウェア・レンダラーが異なっていることだ。シネマ・レンダラーでは、Cinema roomという、ディフューズ・サラウンドを構成するためのスピーカー・アレイ設定ウィンドウのほか、 レンダラー内部でベースマネジメントを行う機能が搭載されている。シネマ・レンダラーは市販されておらず、手に入れるにはそのダビングステージがDolby社の認定を受けなければならない。ベースマネジメントを除くEQ / Delayといった電気的な補正はBSS BLU-806。角川大映スタジオにとって使い慣れたAudio Architectを使用している。シネマ制作においては、Dolby Atmosだけではなく、従来の5.1や7.1サラウンド制作も当然存在する。そうしたフォーマットの違いごとにプリセットを作成し、作業内容に応じて切り替えて使用する形だ。
📷サラウンドスピーカーは一新され、JBL 9310が新規導入された。 写真上で確認できるように、カバーエリアの関係で天井スピーカーのうち6本だけはJBL AM5212/00となっている。
後に詳述するが、今回の角川大映スタジオのシステム構成はMTRX IIとDanteをフル活用した非常にシンプルなものになっている。A-Chainのすべての音声信号はMTRX IIからDante信号として1本のLANケーブルで出力され、ネットワークスイッチを介してB-Chainの入口となる2台のBLU-806に接続されている。ここで電気的な補正(スピーカーマネジメント)を施された音声は再度Danteネットワークへデジタルのまま送られ、RME M-32 DA Pro II-DでDA処理がおこなわれ ている(Dante 対応モデルは国内非取扱)。DAコンバーターは複数の機種を試したうえで、RMEが選ばれている。DAまでの経路において可能な限りフォーマット変換を避けシンプルなシグナルフローとすることで、個々のサウンドの解像度・明瞭度を向上させたいという想いが反映されたシステム構築となる。
DAされた音声は、Crown IT5000HDとDCi 8|600 DAからなるパワーアンプ群に送られる。フロントLCRとすべてのサブウーファーがIT5000HD、サラウンドスピーカーがDCi 8|600 DAという受け持ちだ。 ちなみにそれぞれ、IT5000HDはAES、DCi 8|600 DAはDanteでも接続されており、M-32 DA Pro II-Dをバイパスした信号を受け取ることが可能。万一、DAまでの経路に不具合があった場合にリダンダントとして機能させることが可能になっている。
📷マシンルームの様子。ダクトの下に見えているのが映写機NEC NC2000C。システムからの映像出しは作業に応じてEX Pro ToolsのVideo Trackと、Media ComposerとのSatellite Linkが併用されている。
国内初導入のPost Moduleを含むデュアルヘッドPro Tools S6
📷CMA全景。KVMはIHSE Dracoを使用したマトリクス方式となっており、どの席からどのマシンでも操作可能だ。
もうひとつの大きな変更点は、AMS Neve DFC GeminiからAvid S6への音声卓の更新だ。素材の仕込み段階からすでに作業の中心となっているPro Toolsとの親和性の高さに加えて、今回の改修におけるテーマのひとつであるクリーンで解像度の高いより現代的なサウ ンドを目指すという方向性が大きな決め手になったようだ。そのS6は、国内のシネマ制作ではスタンダードとなりつつあるデュアルヘッ ド、72フェーダー、5ノブという仕様。日本音響エンジニアリング製作の特注デスクによって設置されている。そして、Dolby Atmos対応ということで、これも国内では多数の導入がある移動可能な特注ボックスに収められたJoystick Moduleを備え、さらに、国内初の導入となったPost Moduleが採用されている。
📷特注デスクに収められた72フェーダーのAvid S6。Master Moduleは盤面の中央に置かれている。一見シングルヘッドに見えるが、左側の離れた位置にふたつめのMaster Moduleが設置されている。
デュアルヘッドは1つのシステムにMaster Moduleが2基ある仕様(システムIDはMaster Moduleに紐づいているため、ライセンスとしては2つのシステムを1箇所で使用しているという形)。S6で1つのMaster Moduleが掴めるのは64フェーダーまでのため、72フェーダーという大規模な盤面を実現するにはデュアルヘッドの採用は必須となる。しかし、それよりも重要なのはデュアルヘッドを採用することで、S6の盤面を完全に2つの異なるエリアに分割することができるということだ。映画制作のダビングにおいてはひとつのシーンで同時に様々な音が鳴るため、セリフ、効果音、音楽のように、それぞれ各グループを担当する2〜3人のミキサーが同時に音声卓で作業をするということが一般的。デュアルヘッドを採用しておけば、どちらのMaster Moduleがどこまでのモジュール列を掴むのかがあらかじめ確定されるため、機能的にも視覚的にも各ミキサーが作業するフェーダーを明確に切り分けることができる。
2つのMaster Moduleの内の1つめは72フェーダーを構成する9モジュールを4:5に分割する位置、つまりサーフェスの中央に設置されているが、角川大映スタジオの大きな特徴は、2つめのMaster Moduleが72フェーダーから約1人分の作業スペースを隔てて離れた位置に設置されていることだ。センターのマスターフェーダーを挟んで左側には、セリフのミキサーが、右側には効果音のミキサーがという想定で構成が組まれている。
📷スタジオエンジニア席には2台目のMaster ModuleやMOM、Clarity Mなどのユーティリティ関連機器が置かれている。
この、2つめのMaster Module付近はスタジオエンジニアの作業スペースとして想定されており、ここに国内初の採用となるS6 / S4 Post Moduleが並べて配置されている。このPost Moduleだが、その名称とは異なり、いわゆる国内で言うところのポストプロダクションというよりは映画ダビングに特化した機能を持ったモジュールだ。 モジュールにはトグル切り替えが可能なパドルが並んでおり、これでダバーへ流し込まれる各ステムの再生 / 録音をワンタッチで切り替えることができる。また、S6システムにPost Moduleが含まれていると専用のメーターを表示することができるのだが、このメーターではメインのアウトプットに加えて、 各プレイアウトからの出力を一覧で監視することができる。ちなみに、Post Moduleの前方に設置されたDisplay Moduleはデスクに直接挿さっているのではなく、イギリスのスタジオ家具メーカーであるSoundz Fishyが製作しているS6 Lowered Displayというアタッチメントを使用してデスクに埋め込まれている。デスクはその他モジュールが埋め込まれた部分と同サイズで製作されているので、例えばMaster ModuleとPost Moduleの位置を入れ替えるようなことも可能になっている。
📷左)Master Moduleの左下にあるのが国内初導入となったPost Module。DFCに搭載されていたパドル式のRec / Play切り替え機能を提供するほか、各Macからのアウトプットを監視できる専用メーターをS6に追加する。右)デスク同様、日本音響エンジニアリング製作の特注ボックスに収められたJoy Stick Module。CMAを移動しながら試聴できるよう、ケーブルも延長されている。
MTRX IIが実現したSimple is Bestな機器構成
今回のダビングステージ改修にあたっては、システム設計においても解像度の向上がひとつのテーマとなっている。そのための手法として検討されたのが、システムをシンプルにすることでシグナル・パスを最短化するというものだ。
AMS Neve DFC GeminiやEuphonix System 5といったDSPコンソールからAvid S6への更新においては、大きく分けてふたつの方針が考えられる。まずは、ミキサー用のPro Toolsシステムを導入し、S6を従来のコンソールと同じくミキサーとして使用する方法だ。プレイアウト用の各Pro Toolsからの信号はいったんミキサーを担うPro Tools MTRXに集約され、これに接続されたPro ToolsをS6で操作することでDSPコンソールを使用していた時と同じ、再生機→ミキサー→録音機、というワークフローを再現できるだけでなく、必要に応じてPro Tools内でのインボックス・ミキシングも活用することができるが、当然システム規模は大きくなり、その分信号経路も複雑になる。
角川大映スタジオが採用したのはもうひとつの方針、各プレイアウトPro Toolsが1台のMTRX IIを介しダイレクトにDubber Pro Toolsに接続される構成だ。システムの構成をシンプルにすることで 、音声信号は異なる機器間での受け渡しや、それに伴うフォーマット変換によるロスを最小限に抑えながら、最短経路のみを通ってB-Chainまで到達することができる。
📷左)マシンルームに設置されたラック群。画像内左から2架がプレイアウトPro Tools関連、一番右がB-Chain関連のラックとなっており、その間にはMedia Composerやパッチ盤がラッキングされている。中)B-Chain関連ラック。そのサウンドが高く評価され採用されたRME DA 32 Pro II-D、スピーカーマネジメントを担うBLU-806のほか、Dante信号をヘッドホン出力用にDAするTASCAM ML-32D、ユーティリティとしてMADI-AESコンバーターADI-6432やRME DA/AD 32 Pro II-Dなどがあり、足元にはサラウンドスピーカー用のパワーアンプ類が設置されている。右)Dubber / EX Pro Toolsシステム(右)とRMUのラック(左)。左下にMTRX IIが2台見えるが、2台目は予備機として導入されており、本線はすべて1台目のMTRX IIに接続されている。
ダビングステージに限らず音声を扱うスタジオの機器構成にあたっては、いくらシグナル・フローをシンプルにしたいといっても、Pro Toolsからの信号だけを出せればよいわけではなく、ハードウェア・エフェクターや持ち込み機材などの外部機器との接続、メーターやヘッドホンへの出力などの様々な回線が本線の音声信号系統に加えて必要となる。そうした多数のデジタル信号を同時に扱うことを可能にしているのがPro Tools MTRX IIだ。初代MTRXではDanteがオプション扱いだったため、ダビングステージのような大規模なシステムを初代MTRXで実現しようとした場合は、オプションカード・スロットをほかの拡張カードと取り合いになってしまうという課題があった。どうしても2台のMTRXが必要になってしまう。MTRX IIでは初代でオプション扱いだったDante I/O(256ch)とSPQ機能が本体に標準搭載されたことで、7基のDigilink I/O CardでPro Tools接続したとしても、その上でMADI 3系統(本体1系統、オプションカード2系統)とDante 256chという豊富な数の回線を外部とやり取りすることができたというわけだ。
角川大映スタジオでは、プレイアウトとしてDialogue、Music、SE-1、SE-2、EX、そしてレコーダーとしてDubberが1台からなる合計6台のPro Toolsシステムが運用されている。すべてMac Proによるシステムで、EXがHDX2仕様、その他はすべてHDX3仕様となっており、HDXカードからDigiLinkケーブルで1台のMTRX IIに直接接続されている。DialogueとDubberがHDX2枚分(128ch)、Music・SE-1・SE-2がHDX1枚分(64ch)ずつ、MTRX IIのオプションスロットに換装された7枚のDigilink I/O Cardにつながっており、EXはMTRX II本体の2基のDigiLink ポートに接続されている。MTRX IIの残り1基のオプションスロットにはMADIカードがインストールされており、オンボードのMADIポートと合わせて、RME製 MADI-AD / DA / AESコンバーターを介してアナログ / デジタルのパッチに上がり、アウトボード、持ち込み機器の接続用のトランク回線として使用されている。DanteはB-Chainへの送り出しのほか、TASCAM ML-32Dを介してメーター送りなどの回線として使用されている。
MTRX IIのもうひとつの特徴が、国内では2023年秋頃からリリースされているThunderbolt 3モジュールだ。オプションカード・スロットとは別に用意されたスロットに換装することで、Mac-MTRX II間で256chの信号をやり取りすることが可能になる。Thunderboltと聞くと思わず「MTRX ⅡがNative環境でも使える!」という発想になりそうだが、今回のシステム設計においては、RMUの接続をPro Toolsが接続されているMTRX Ⅱへダイレクトに接続することができるということになり、RMU用のAudio I/Fが不要になる。つまり、RMUを含めたすべてのPCがダイレクトに1台のMTRX IIに接続することができる、ということになる。
RMU含め7台のPCからの640chの信号と、ユーティリティーのDante、MADIの320chという信号を1台で取り扱っていることとなる。すべてをこのMTRX IIに集約することで、非常にシンプルなシステム構築となっていることがおわかりいただけるだろう。
各Mac Proには、持ち込み機材用の入出力やヘッドホンアウトを確保するためのI/Oも接続されているが、ダビング作業における音声信号の本線としては、5台のプレイアウトと1台のDubber、そしてRMUという7台のMacが1台のMTRX IIに集約されており、そして、 このMTRX IIからDante1回線ですべてのアウトプットがB-Chainへと出力されている。スペックとして理解はしていたが、実際に現場で動いているところを目の当たりにすると、MTRX IIの柔軟性と拡張性の高さに改めて驚かされる。
同期を制する者は音を制する!?
📷DXD-16 から出力された10MHzクロックはDCD-24でWordとしてリジェネレートされ各機器へ。10MHzクロックはすべてのSync XがDXD-16からダイレクトに受けている。
今回のダビングステージ改修にあたって、角川大映スタジオがこだわったもうひとつの点が同期系統の刷新だ。このダビングステージでは、24fpsだけではなく23.97fpsなどの様々なフレームレートを持った動画素材を扱う機会があり、音声ファイルにしてもダイアログは48kHz、音楽は96kHzなど複数のサンプリング周波数の素材を同時に扱う場面は多い。こうした状況となる中、多数の機器へ異なるフォーマットの同期信号を1箇所で管理できるようなグランドマスターが求められていた。
そこで採用されたのが、Brainstorm DXD-16。国内では放送局への導入が多い機材だが、ハウスシンクのマスターとしてだけではなく、GPSクロックを受けてのPTP出力が可能ということから中継現場で採用されるケースも多い。受けのMTRX II、出しのDXD-16とでも言うべきか、音声システムにおけるMTRX IIと同様、DXD-16もあまりにも多機能・高機能であるため、その特色を簡潔に解説することは難しい。GPSクロック、PTP v1/v2、10MHz、Video Reference、WC、マスターにもスレーブにもなれるなど、およそクロックに求められる機能はすべて備えていると言っても過言ではない。
実は今回の改修における機材選定にあたっては、B-Chainの音質に大きな影響を与えるDAコンバーターはもちろんだが、マスタークロックの試聴デモも実施されている。国内で入手できるほとんどのマスタークロックを試聴した結果、DXD-16が選ばれたというわけだ。ワークフローの効率化と解像度の向上を高い次元で両立したいという強い熱意を感じるエピソードではないだろうか。国内で入手できるPTP対応機器の場合、GPSシグナルが必須という機器が多く、自身で同期信号を生成するジェネレーターとしての機能を持たないものが多いのだが、DXD-16は自分自身がマスタージェネレーターとなることが可能で、角川大映スタジオではその精度をさらに上げるために内部の発信機をOCXOにグレードアップするオプションを追加している。
角川大映スタジオのダビングステージではこのDXD-16のインターナルOCXOをマスターとして、10MHz、1080p/24fps・NTSC/29.97fpsのVideo Reference、48kHz AES、96kHz WCの全信号を同時に出力しており、DanteネットワークのPTPマスターとしての機能も担っている。
このダビングステージで特徴的なのは、音質の向上を意図して10MHz信号が大きく活用されているところだろう。DXD-16は16個の各出力から同時に異なるフォーマットの同期信号を出力できるのだが、そのうちの半数である8系統を10MHzに割いている。1つはパッチに上がっており、もう1系統はBrainstorm DCD-24に接続、システムへのWCはここで再生成して分配されている。そして、残る6系統はすべてAvid Sync Xにダイレクトに接続され、各Pro Toolsシステムの同期を取っている。SYNC HDからSync Xへの進化において、この10MHz信号への対応は非常に大きなポイントだ。10MHzでPro Toolsシステムの同期を取るというのは、システム設計の段階で今回角川大映スタジオが大きなポイントとしていたところだ。
居住性にもこだわった「和モダン」な内装
📷フロント側から見たダビングステージ全景。明るく柔らかな印象を湛えた仕上がりになっているのがお分かりいただけるだろう。もちろん、試写時には照明を落とし、映画館と同様に部屋を暗くすることが可能だ。
📷組子細工が取り入れられた室内照明。結果的に反射面を減らすことにもつながり、音響特性にも一役買っているという。
今回の改修にあたっては、Dolby Atmos Cinema対応や音の解像度向上といったサウンド面だけではなく、居住性の高さも追求されている。内装工事と音響施工を担当したのは日本音響エンジニアリング。 ダビングステージというと、黒やチャコールといった暗い配色の部屋をイメージすることが多いと思うが、生まれ変わった角川大映スタジオのダビングステージは非常に明るく開放的な雰囲気に仕上げられている。作品によっては1、2週間こもるということも珍しくないということで、長期間にわたる作業になっても気が滅入ることのない居心地のよい空間にしたかったのだという。「和モダン」をコンセプトにデザインされた部屋の壁面には日本伝統の組子細工を取り入れた照明が配されており、暖かな色合いは訪れる者をやさしく迎え入れてくれるようだ。壁面に灯りがあることで圧迫感のない開放的な空間を演出するとともに、日本音響エンジニアリングによれば、組子構造が透過面となることで結果的に音響的な寄与もあったそうだ。
Avid S6の設置は特注デスクによるもので、こちらも日本音響エンジニアリングによる製作。フェーダー面とデスク面が同じ高さになるようにS6が埋め込まれている形で、すでに述べた通り2つめのMater Moduleが離れたアシスタント席に設置されているのが特徴だ。この特注デスクは木材のもともとの色合いを生かしたナチュラルなカラーで、従来のイメージと比べるとかなり明るい印象を受ける。こうしたところにも、明るくあたたかな空間にしたいという強い想いを感じる。
📷左)特注デスクに据え付けられたメーター台。VUメーターと並ぶのはいまだに愛用者の多いDK Technologies。 右)床面やデスク天板は明るい配色であるだけでなく、天然の木目を生かした意匠が心に安らぎを与える。
角川大映スタジオには以前のダビングステージと建築面で同じ構造の試写室があるのだが、試写室には客席があるため、以前のダビングステージに比べて少し響きがデッドになっており、音の明瞭度やサラウンドの解像度という点でダビングステージよりも優れているように感じていたという。今回の改修にあたって、この響きの部分を合わせたいというのも音響における角川大映スタジオの希望だったようだ。
今回はDolby Atmosへの対応ということで、従来は存在しなかった天井へのスピーカー取り付けが必要であり、加えてDolby Atmosに最適な音響空間にするためにスクリーンを含むフロント部分以外は遮音層の内側はほぼすべて解体、吸音層もイチからやり直しということで工事の規模は大きかったが、却って音響的な要望には応えやすかったようだ。明瞭度を向上させつつも必要以上にデッドにならないよう、低域のコントロールに腐心したということで、壁面内部の吸音層の一部にAGSを使用するなどの処置が施されている。壁の内部にAGSが使用されている例は珍しいのではないだろうか。
📷株式会社角川大映スタジオ ポストプロダクション 技術課 竹田直樹 氏(左)、同じく山口慎太郎 氏(右)。システム設計においては主に竹田氏が主導し、現場での使いやすさや内装デザインなどは山口氏が担当された。
文字通り最新のテクノロジーをフル活用しシンプルな機器構成で大規模なシステムを実現しているマシンルームとは裏腹に、居住性を重視した和モダンな内装となった角川大映スタジオダビングステージ。待望の国内3部屋目となるDolby Atmos Cinema対応も果たした本スタジオで、これからどのような作品が生み出されるかが楽しみだ。それだけでなく、Dolby Atmos Cinema制作のためのダビングステージが増えるということは、国内におけるDolby Atmos作品の制作を加速させるという意味も持つ。今回の改修が国内のコンテンツ産業全体へ与えるインパクトの大きさも期待大だ。
📷ダビングステージがあるポストプロダクション棟。手前の建物1Fの食堂では、新旧ガメラを見ながら食事ができる。
*ProceedMagazine2024-2025号より転載
Review
2024/12/05
Apogee Symphony Studio Series:Launch Event with Bob Clearmountain at Power Station NYC 参加レポート
2024年10月9日、ニューヨークの老舗レコーディングスタジオである”The Power Station at BarkleeNYC” (旧Avatar Studios)で、Apogee社が主催するあるイベントが行われるという案内を受け取った。同社の新しいプロフェッショナルオーディオインターフェースのラインナップ“Symphony Studio Series”のローンチイベントということだが、案内をよく見ると、ボブ・クリアマウンテン氏の名前がある。同氏の紹介はもはや不要と感じるほど著名なグラミーエンジニアだが、これまでに手がけたAtmos作品を聴きながら、直々にイマーシブリスニングにまつわるトークやQ&Aの時間があるという。映画館は別としても、まだまだ音楽作品をAtmosで、さらに整った環境で聴くことができるチャンスは少ない。しかも名だたる名曲を手がけたエンジニア本人の解説が聞けるなんて、行かない理由が見つからない。というわけで、単身乗り込ませていただくことになった。
開場、そしてセッション開始
当日、19時のスタートを前にマンハッタンの西側中ほどにあるスタジオに着くと、ドリンクや軽食を楽しみながら話し込む多くの人で賑わっている。セッションが行われたのは同スタジオのアイコンとなっているSTUDIO A/LIVE ROOM。今回はProToolsからApogee Symphonyを通して、スピーカーはGenelecの協力で7.1.4のシステムが組まれていた。早めに良い席を取るつもりだったがセンターには予約席などもあり、やや後方、サークル内ギリギリの位置へ着席。 8341/ 8361を組み合わせたシステムの内側に何とか食い込んだ。
その後しばらくして、50から60ほどある客席もどんどん埋まり、いよいよセッションがスタートした。Apogeeのグローバルセールスマネージャー、グレッグ・チャン氏からのイントロダクションを経て、紹介されたクリアマウンテン氏はにこやかに挨拶し会場の大きな拍手に応えた。「知った顔も多くて逆にとても緊張するよ、このセッションの後もみんな友達でいてくれると良いんだけど・・」と笑いを交えながら、早速楽曲の試聴へ移っていった。全てAtmosミックスで、過去作品のリミックスから、新作もあるということだ。
一曲目はJoe Bonamassa “Pilgrimage”。これは実際にクリアマウンテン氏がAtmosでイマーシブコンテンツとしてミキシングした2枚目のレコードということだ。曲の最終盤、特徴的な足音のサウンドをリア側に配置することで、イマーシブならではの浮遊感、余韻が演出されているように感じた。短いイントロ曲ながら、初端からクリエイティビティが炸裂したミックスを体験し、オーディエンスの空気もやや興奮気味になったことが明らかだった。
次はROXY MUSIC ”Avaron”。会場からの大きな歓声と拍手で迎えられたこの曲を聴きつつ、いかにしてイマーシブ、ひいてはAtmosミキシングと向き合っているかという話題になる。同曲のボーカルは実際に今回のセッションが行われた部屋ずばりその場所で録音されたもので、本人も「これが私のキャリアにおいて大きな意味を持っていた」と語り、大事な作品であることが伺える。リリースは1982年だが、実は当時から「もっとスピーカーがあればいいのに」と感じていたとのこと。もっとリバーブやディレイを“配置”できる場所があればと思っていたということで、Atmosに取り組んだ経緯を次のように語った。「5.1chが25年ほど前に登場した際、妻(Apogee創業者のベネット氏)が、これをやるべき、次の大きなムーブメントになるだろう、と言っていました。彼女は常に技術の最先端にいるので、私たちは5.1chについても様々なことを試して、多くを学びました。そうしているうちにAtmosが登場し、これまでのサラウンドでの経験も経て即座にそのポテンシャルを理解しました。『ああ、これは本物だ。やらなくては』と直感したんです。」
実際のミキシングでの考え方については、このように語る。「同様のイマーシブミキシングをしたことがある人は、『なぜ特徴的な楽器をこんな場所に配置するんだろう』とか、『コーラスや曲のクライマックスをリアスピーカーに?』と懐疑的に思うかもしれません。そういった意見は理解できますし、場合によっては少々気を散らしてしまうことも考えられます。ただ、これまで聴いた曲に関しては、私自身は必ずしもそうではないと思っています。いずれも(サイドやリアに特徴的に配置される要素は)メインとなる部分ではなく、楽曲の要素として存在しています。例えばリア側に配置すると、聴く人を思わず振り向かせることができます。『あれは何だろう?あっちで何が起こっているんだ?』という感じで。言うなれば演劇を観ているようなものですね。劇場に座っていると、突然、後ろの方にスポットライトが当たって、サックスプレーヤーや素晴らしい歌手が登場するようなイメージです。」
文字だけを追うと奇を衒ったような考え方に聞こえるかも知れないが、実際に聴くと全くそんなものではないことが分かる。元々の作品を手がけたからこその楽器編成や楽曲のパーツへの解釈、ステレオからサラウンドを通して広くなったキャンバスの捉え方、それらを組み合わせて新たな演出が加えられる。当然、曲自体の本質やメッセージが変わることはないが、やはり「表現の幅」の次元が増えたとでも言うべきか、説得力のある楽曲体験だった。
クリアマウンテン氏のAtmosミキシング・テクニック
その後もどんどん試聴が続いていったが、Atmosで大事なことについていくつか言及があった。一つ目はステムとエフェクト、特にリバーブの扱いである。クリアマウンテン氏は、Atmosをミキシングする場合には基本的にステムではなく本来のマルチトラックから始めることを推奨した。「ステムにはエフェクトがすべて組み込まれていることが多いからです。バックグラウンドのステムからでは、後々あまり広がりを持たせることができず、Atmosフォーマットがなし得るものを最大限に活用できないと思う」と説明した。リバーブを新たに追加したり、リバーブのエリアを広げたり、ディレイを異なる場所に配置することで、楽器に常に結びついているわけではなく、より没入感のある効果を生み出すことができるということだ。そのサンプルとしてBryan Adamsの“Run to You”より、間奏部分のギターのみを抜粋して、元の音とAtmosミックスに使用している音を順に聴き比べた。筆者個人としては今回のセッションで最も印象に残ったパートだったが、解説として次のように語られた。
「空気感を持たせるために、いくつかの異なるインスタンスを使います。例えば、サイドに別個のディレイのペアを用意し、それが後ろの別のディレイにフィードされ、再生成されるという感じです。そうすると、波のようなエフェクトが返ってきて、それぞれにより多くのリバーブがかかります」と、独自の手法を披露。「巨大なスタジアム、または渓谷の中にいるように感じたと思います。こうしてエフェクトを拡張していくことで素晴らしい体験にすることができます」と締めくくった。当然感動したのは筆者だけではない。我々オーディエンスの多くはただひたすら、元の音からここまで「体験」として変えることができるのかと感嘆するのみだった。
また同氏の名前を冠したApogee Clearmountain’s Domain(プラグインスイート)について「リバーブの他にディレイなど様々なものが含まれていて、今のところはステレオですが、いずれはもっと大きくなるでしょう」という発言もあり、今後の展開に期待したい。
さて、Atmosを扱う上で大事なことの二つ目に話は移る。センタースピーカーの扱いについてだ。「私にとってはセンタースピーカーは非常に重要で、“焦点”と捉えています。例えばボーカルはミックスの焦点であるべきだと考えていますし、ミキシングルームに入ってコンソールの前に座ったとき、目の前にあるのがセンタースピーカーですから、言うまでもなく重要な要素です。」
ただ、一般的に、ミックスが後に映画やテレビ番組で使われることになった場合を考慮してセンタースピーカーを使わない場合もあるという。ダイアログ用に空けておく必要があるからだ。ただし、そういった場合はおそらくリレコーディングミキサーによって全体的に再度ミックスされ別物になることも考えられるため、オリジナルのミックスとしてはセンタースピーカーを使う方が良いと考えていると語った。「(焦点が定まっていると)再生しながら部屋を歩き回っても、すべてが同じ場所にきちんと留まっているように感じられます。特にボーカルに関しては、移動してほしくない。私は、ボーカルがどこかに飛び出して動き回るのではなく、あくまでセンターに留まってほしいと考えています」と話し、またLFEについても、フルレンジのスピーカーの場合不要と思うこともあるかも知れないが、音楽ならドラムや管弦楽、シンセサイザーの低音、映画なら特に爆発音などを実際に体感できるという観点で効果的だ、とその重要性を解説した。
さらに、AtmosでのLFEの注意点として、バイノーラル設定について「さまざまなオプションがあって、オフ、近距離、中距離、遠距離の設定があり、それぞれの設定を調整できます。しかしLFEはグレーアウトされていて、変更できないんです。上げたり下げたりもできません。なので、LFEが自分の望むところにあるか入念に確かめなければなりません。スピーカーのセットアップによって音が変わる場合もありますからね」と付け加えた。
次に再生された曲はBryan Ferry ”I Thought”(2002年のアルバム’Frantic’より)。この曲をAtmosでミックスした理由として、曲の物語性がある種トリガーだったことを明かした。「ある男が自分の恋人と出会うという幻想についてのストーリーです。彼女は自分に恋をすると思い込んでいますが、曲が進むにつれて、実際にはそれが彼のエゴであることに気づきます。彼女が本当に自分に恋をするわけがないと理解し、彼はどれほどの愚か者だったのかを悟っていきます。曲の冒頭はセンタースピーカーから非常に小さく始まり、徐々に進行します。ブライアン・イーノのような音が多く重なり、頭の中で回り始めるのを感じることができます。彼は徐々に混乱していく感じです。望みもなく、『ああ、どうしよう・・』と思っているような…。とにかく、私はこの曲、この物語をAtmosで作る必要があると思いました。」
そしてこの曲に続き、クリアマウンテン氏が一部ミックスを担当していて、氏の良き友人でもあるというサウンドデザイナーのアラン・マイヤーソン氏が、映画『DUNE』(邦題「DUNE/デューン 砂の惑星」)のサウンドについて解説する動画が再生された。パンデミック中の制作だったこともあり、通常各地でオーケストラの各楽器を収録して後に合体する方法が一般的だったが、同映画の音楽を担当したハンス・ジマー氏は違う方法を選択した。マイヤーソン氏は「(ジマー氏が)ハイパーサウンドデザインモードに入った」と表現したが、例えばアップライトベースはベースとしての音に加えて、スラップで演奏する際に発生する特徴的な倍音や噪音もサンプル化された。そうして収録された各楽器やボーカルなどから、数として合計2000以上にも及ぶサウンドのライブラリを作成したという。さらにそのライブラリから短く音を切り出し、ピッチを変え、他にも様々な処理を施しながら異なるキーグループに分けるという壮絶な作業があったそうだ。
前述のBryan Ferryの楽曲からの一連の話題でクリアマウンテン氏が伝えたかったこととして述べたのは、「Atmosでミキシングする時はその作品に自分が入り込み、作品に対峙するに相応しい熱意と労力を持って、クリエイティブに取り組むべき」ということだ。音楽であれ映画であれ、物語を理解し、自分もその世界にどっぷりと浸かり、全体のデザインを組み上げていく。非常にシンプルでストレートなメッセージだが、まさに真理であり、試聴した作品にはその姿勢がありありと映し出されていた。
話はクリアマウンテン氏が手がけたライブ音源のAtmosミックスに移っていく。2022年に急逝したフー・ファイターズのテイラー・ホーキンスの追悼コンサートで、8万7千人の観客を抱えた超大型ステージでのライブ収録だ。自身が「多くのライブパフォーマンスの収録を手掛けてきましたが、これが私のキャリアの中でのハイポイント」と評するもので、「ライブにおけるイマーシブ体験としては、初めての完璧なアプリケーションとも言えます」と前置きし、同ライブで演奏されたQueenの”We Will Rock You”が再生された。
「ブライアン・メイとロジャー・テイラー、そしてフー・ファイターズのメンバー、さらにルーク・スピラーという素晴らしいシンガーも参加しました。ショーの前に彼らから伝えられたのですが、『イントロのパートでは4人のドラマーが演奏する』ということでした。
なので、当然ステレオではすべてのドラムが一緒に聞こえることになりますが、その話を聞いた瞬間、私は『これはAtmosでミックスするチャンスだ』と思いました。ステレオでの収録とライブストリーミングが主軸で、Atmosの話はそれまで出ていませんでしたが、このチャンスは逃せませんでした。ロジャー・テイラーのドラムが前に聞こえ、ルーファス・テイラーが後ろにいて、さらにはドラムのローディーがステージ袖で調整する音も聞こえて、周囲に囲まれているように感じるでしょう。これは面白い体験になると思いました。実際そうなったと思っています」と、ライブならではのリアルな体験をリクリエイトした意欲作であることを語った。確かにその説明のとおり、再生が始まると一瞬にして熱気が再現されるような感覚を覚えた。心地よい緊張感と高揚感で、誰もが知る同曲のシンプルかつアイコニックなリズムが、複数のドラムでエネルギーの塊のように身体に響く。これはAtmosでミキシングを経験したことがない筆者でも「やり甲斐があるだろうな」と一瞬で腑に落ちる素晴らしいコンテンツだった。
ちなみにこの時オーディエンスから、「かなり音圧の高い収録音源だったと思うが実際には作業中どのくらいの音量でモニターしているか?」という質問があった。それに対し、「実際にはかなり静かに聴いています。85dB以下、たぶん65dBくらい。そうすると、非常に大きな音に感じられるのです。低音量でもワクワクするようなエキサイトできる音にできれば、自然とボリュームを上げたときにも効果的になります。プロデューサーや他の人がいない限り、私は通常85dB以上で聴くことはあまりありません。」ということだ。
オーディエンスとのQ&Aセッション
セッションも終盤に向かい、この後はオーディエンスとのQ&Aに移っていった。その内容をいくつか抜粋したい。
Q1)ヘッドホンでのバイノーラルでのモニターについて、通常どれくらいの時間を費やしていますか?
A1)ほとんど時間をかけていません。たまにチェックすることはありますが、スピーカーでモニターした方が音像の距離感が掴みやすいと思います。
Q2)すべての楽曲がイマーシブに適していると思いますか?
A2)いいえ、そうは思いません。いくつかの音楽ジャンル、例えばブルースなどは、基本的に高い密度を持たせたいので、音像を分離させたくない。一つのまとまったサウンドであるべきだと思います。もちろん合う楽曲もあるかもしれませんが、すべてのジャンル、すべての楽曲を無理にイマーシブにするべきではないと思います。
Q3)Atmosで制作する際、通常のステレオと比べて収録の際のマイキングに変化はありますか?
A3)それほど違いはないと思います。あるアルバムを制作したとき、プロデューサーがトライしてみようと言って各チャンネルにさまざまなアンビエントのマイクを加えて立てたことがありました。ただ、収録後に聴いてみると、実際のミックスにはあまり役に立たなかった経験があります。やはり、それよりもミキシングの段階で人工的に響きを足す方が、コントロールがうまくいくように思います。私は実際の空間のインパルスレスポンスを使用してリバーブをかけることが多いですが、ドラムなどの楽器には非常によくマッチします。またドラムに関してはオーバーヘッドや近め・遠めのマイクペアなど、いくつかパターンを用意するようにしています。
Q4)ステレオで録音されたクラシックなレコードをAtmosにリミックスしたものが多いですが、アーティストが特にAtmosで聴くために音楽を作ったレコードに関わったことはありますか?
A4)ええ、実は、マイケル・マーコート(Michael Marquart)と新作でAtmosの制作をしたことがあります。A Bad Thinkというバンドで彼は素晴らしい音楽を作っています。私たちはこれまで4枚のアルバムを制作しました。最初のアルバムでは、彼は5.1やAtmosについてあまり知らなかったのですが、5.1chでミックスしたものを聴いてもらうと、「素晴らしい!」と言って気に入ってくれました。それからは、彼の音楽やプロデュースのリファレンスとして、5.1chサラウンドやAtmosを意識して書くようになりました。実際、彼らはAtmosを意識した音楽を作っています。本当に良い作品です。
Q5)コンソール上でミックスバスのコンプレッションはどのように扱っていますか?
A5)カスタムのコンプレッサーで処理しています。それまで通常ミックスではステレオバスコンプレッサーを使っていたのですが、5.1chになった時あまりしっくり来なかったので、「これはなんとかしたい」と思うようになりました。SSLのG seriesのコンソールを使っていますが、パッチできるVCAが8つ空いていたので、コントロールのための電圧を使って他のVCAのスレーブにできないかと考えました。信号のレベルを少しブーストするためのオペアンプは必要でしたが、実際には非常にうまくいって、5.1ch用のバスコンプレッサーを作ることができました。しかし今度はAtmosになるということで再度、より複雑になりますが挑戦する必要が出てきてしまいました。幸運なことに私の優秀なアシスタントのブレンダン・ダンカンがSSLのステレオVCAカードが搭載されたユーロラックというものを見つけ出してくれて、それでさらに8つのVCAを追加することができました。全て繋ぎ合わせると16chのアナログバスコンプレッサーが出来上がった、という訳です。Apogeeのスタッフも協力してくれていくつかノブを取り付けてくれたので、サイド、リア、オーバーヘッドにどれだけのコンプレッションをかけるかを調整できるようになりました。全て別々に調整できるので、特にライブパフォーマンスのイマーシブミックスには非常に便利になりました。
こうしてあっという間に2時間弱に及ぶセッションは幕を閉じたが、最後にクリアマウンテン氏は「今日お話しした手法などは、あくまで私が試して上手くいったり気に入ったりしたことであって、皆さんに『これは絶対にこうしろ』とか、『こうしなくてはならない』などというつもりは毛頭ないことを強調しておきたいと思います。もっと違うアプローチが世の中にはたくさんあるはずです」と述べた。これだけの素晴らしい作品を世に送り出してきたにも関わらず謙虚な姿勢に感銘を受けると同時に、Atmosミックスのテクニックやイマーシブが可能にする表現にはまだまだ余地があると感じていることも理解でき、Atmosフォーマット、ひいてはイマーシブコンテンツへの同氏の期待の高さが感じられた。
セッションの後、短時間だったがタイミングを得て、自己紹介をしつつ直接クリアマウンテン氏本人と話をすることができた。物腰の柔らかい気さくな人柄で、快く写真にも応じてくれた。今回のレポートで、拙い文章表現ではあるが同氏のクリエーションの一端から発見やヒントがあれば幸いである。この機会を与えてくださった前田洋介氏に感謝の意を表して結びとしたい。ありがとうございました。
Nov. 2024 寄稿:佐藤えり沙
Support
2024/12/02
360VME Windows対応のお知らせ
この度、360VMEアプリケーションがWindowsに対応しました!
長らくWindows対応をお待ちいただいていた皆様には、大変お待たせいたしました。
今年に入り出張測定も開始され、国内でもVMEをご使用いただいての制作事例はさらに増えています。イマーシブ制作は勿論、サラウンドやステレオ制作にも対応可能な360VME。スピーカーでのミックスを意識した仕込み作業が可能になるほか、最高品質のバイノーラルによりスピーカー聴取と変わらない頭外定位が実現され、制作時のヘッドフォン疲れも軽減されるとの効果も評判いただいております。
Windows環境にて制作をされている方も、360VMEによる新たなワークフロー、制作体験をどうぞご活用ください!
◎Windows版 対応環境
OS:Windows 10、11
オーディオドライバー形式:WIndows Audio(WDM)、ASIO
360VME お申し込み
既に360VMEサービスをご購入いただいている方には、メールにてWindows版インストーラーをお送りしております。万が一届いていないという方は、お手数おかけしますがこちらのフォームよりお問い合わせください。
360VMEについての詳細や料金形態については、以下の記事をご覧ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/360vme_new-service_202406/
NEWS
2024/11/26
Proceed Magazine 2024-2025 販売開始! 特集:Cinema Sound
最高峰のコンテンツを、最新の設備が整えられた特別な場所で、最先端のテクノロジーを駆使した音響をもって体験する。スペシャルな空間で繰り広げられる一種のアトラクションとも捉えられるようなコンテンツ体験を体現しているのが映画、そしてCinema Soundの世界。今号のProceed MagazineではこのCinema Soundを特集します。角川大映スタジオに新たに設けられたダビングステージ、立命館大学 映像学部に導入されたファシリティ、スコアリングステージとして世界中のクリエイターから信頼を寄せられているウィーン・Synchron Stage Vienna。そこにあるのは、今なお感動を届けるために重ねられるたゆみない技術進化でした。いま音響の最先端で起きているアクションを捉えて、今号も情報満載でお届けです!
Proceed Magazine 2024-2025 特集:Cinema Sound
Cinema Sound
映画には夢がある。ひとときの小旅行、マインドトリップ、物語へ没頭するイマーシブ感、ヒトの五感ごとその世界観に入り込むためのスペシャルな環境は、「映画を観る」ということをいま現在においても特別なコンテンツ体験にしてくれています。その中で大きな役割を果たしているのがシネマサウンド。今回のProceed Magazineでは、拡がりを見せるイマーシブのテクノロジーを織り込みながら進んでいくシネマサウンドの最先端を取り上げ、そしてテクノロジーを紐解きます。そこにはこれからのプロフェッショナルなスタジオはもちろんのこと、パーソナルな環境においても上質な空間をしつらえるためのヒントがありそうです。さぁ、ご一緒に!
Proceed Magazine 2024-2025
全128ページ
定価:500円(本体価格455円)
発行:株式会社メディア・インテグレーション
◎SAMPLE (画像クリックで拡大表示)
◎Contents
★People of Sound / Wang One
★特集:Cinema Sound
株式会社角川大映スタジオ / 立命館大学 映像学部
Synchron Stage Vienna / 映画音響技術の基礎解説
東映音楽出版株式会社
★Sound Trip
Sony Pictures Dennis “ROC.am” Jones @L.A.
★ROCK ON PRO Technology
Meinberg / 音響芸術専門学校 / 養老孟司と小檜山賢二「虫展」
★Build Up Your Studio
パーソナル・スタジオ設計の音響学 その30
特別編 音響設計実践道場 〜第十一回 模型を吸音してみよう〜
★Power of Music
Musik Hack MASTER PLAN
ROTH BART BARON
★BrandNew
Apogee / Universal Audio / Native Instruments
RTW / WAVES / SSL / GENELEC
Non-Lethal Applications / Merging
SOUND PARTICLES / PWM / KORG
Ableton / TASCAM / musikelectronic geithain
★FUN FUN FUN
SCFEDイベのイケイケゴーゴー探報記〜! ヤマハミュージック 横浜みなとみらい
ライブミュージックの神髄
◎Proceed Magazineバックナンバーも好評販売中!
Proceed Magazine 2024
Proceed Magazine 2023-2024
Proceed Magazine 2023
Proceed Magazine 2022-2023
Proceed Magazine 2022
Proceed Magazine 2021-2022
Proceed Magazine 2021
Proceed Magazine 2020-2021
Proceed Magazine 2020
Proceed Magazine 2019-2020
Proceed Magazineへの広告掲載依頼や、内容に関するお問い合わせ、ご意見・ご感想などございましたら、下記コンタクトフォームよりご送信ください。
Sales
2024/11/19
【2024BFセール情報】Auto-Tuneシリーズを含むAntaresの対象製品が50%OFF!
業界定番ピッチ補正プラグインであるAuto-Tuneシリーズを開発するAntares社がブラックフライデーセールを開催中です!
20年以上に渡り業界標準のピッチ補正ツールとして多くのレコーディングで使用され、現代のポピュラー音楽の特徴的なボーカル効果を生み出すツールとして選ばれてきたAuto-Tuneの最新版、AUTO-TUNE Pro 11を含む対象製品が最大50% OFFでお求めいただけます!
Auto-Tune Pro 11と13種類のエフェクト・プラグインがセットになったサブスクリプションサービス「AUTO-TUNE Unlimited」も15% OFF!この機会を是非ご活用ください。
セール概要
- 対象製品:Antares社 6製品
- セール価格:通常価格から最大50%オフ
- 対象期間:2024年11月12日(火)〜 12月31日(火)23時59分
◎対象製品
AUTO-TUNE Pro 11
通常売価:¥63,500
→期間限定 ¥31,750(税抜)
Rock oN eStoreで購入
NEWS
2024/11/08
EUCON 2024.10リリース!
Pro ToolsやMedia Composer等、多くの対応アプリケーションをコントロールするEUCON の最新バージョン”2024.10”がリリースされました。
EUCON 2024.10は、幾つかの新機能を備えつつ、安定性やパフォーマンスの改善に主眼を置いたアップグレードとなっています。
EuControl, Avid Control及びS4/S6に対して、パフォーマンス最適化や安定性向上の為の50以上の改善が施されています。
EUCON 2024.10は MyAvid アカウント内からダウンロード可能、Avid Control は、各App Stores (Apple, Google, and Amazon) から入手できます。
EUCON 2024.10 now available—what’s new(Avidブログ英文)
Latest EUCON Updates – Avid Control Surfaces(Avidブログ英文)
What's New in EuControl 2024.10(英文PDF)
What's New in S4/S6 2024.10(英文PDF)
EUCON 2024.10の主な変更点
Avid Control”タブレットモード”セレクター: Avid Control各モードを、手動で選択してEuControl内でロックできるため柔軟性が向上します。
ラッチング/ノン・ラッチング・トークバック・オプション
新しいサーフェス・ソフトキーを使用して、入力、インサート、ダイナミクス、センドなどのさまざまなノブセット(機能)にフォーカス可能
ファンクション・ページ・ナビゲーション用のソフトキーを用いて、チャネルモードのオンとオフの切り替え、およびフリップのオンとオフを切り替えます。
1つのソフトキーで強力なサーフェス・ナビゲーション・マクロを作成
ハードウェア・コントロール・サーフェスOLEDのチャネルモード表示の改善
改善されたマーカーの表示と設定
Avid Control Desktop Show/Hide設定の改善: 接続されているサーフェス上のフェーダー、ノブまたはスイッチにタッチするとAvid Control Desk Topが、調整可能なタイムアウト機能に従ってフォアグランドに表示されます。Avid Control Desktop Show/Hideのソフトキーを使用します。
S4 と S6 の起動時間の短縮、PEC/DIR メーターの同期修正など
その他合計50以上の改善点により、よりスムースなオペレーションが可能となります。
Pro Tools HDXシステムをはじめとした業務用音響システムの設計・販売については、contactバナーよりお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-holiday-promotion/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2024-10/
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-media-composer-ver-2024-10%e3%83%aa%e3%83%aa%e3%83%bc%e3%82%b9%e6%83%85%e5%a0%b1/
NEWS
2024/11/08
Avid Media Composer ver.2024.10リリース情報
日本時間 2024年10月30日、Avid Media Composer バージョン2024.10がリリースされました。有効なサブスクリプション・ライセンスおよび年間プラン付永続ライセンス・ユーザーは、AvidLinkまたはMyAvidよりダウンロードして使用することが可能です。
認証されているオペレーティングシステムは:
Windows 10 64-bit 22H2 以降 (Professional 、Enterprise)
Windows 11 64-bit 22H2 以降 (Professional 、Enterprise)
macOS v12.x ~ v12.7.x、13.0~13.6.x、14.0~14.7
Mac OS Sequoia v15には対応していませんので、ご注意ください。
このリリースでは、効率性、コラボレーションとパフォーマンスを向上させるために設計された多数の新機能が搭載されています。Avid Adaを搭載したAI駆動型文字起こし機能に重点を置いたこのアップデートは、文字起こしをしたプロジェクトと文字起こしをしていないプロジェクトの両方のワークフローを合理化ができます。
主要な機能について詳しく見ていきましょう。
Media Composer 2024.10の新機能
新しいAvid Titler+
2019.6以降のTitler+の一番の問題点はパフォーマンスでした。このリリースでGPUベースに変わることで、パフォーマンスの改善と操作性が向上しました。
新しいAvid Titler+の操作に関しては、こちらのビデオをご覧ください。
オーディオ波形表示の改善
タイムラインの「波形オプション」で、シーケンスのオーディオ波形を新しい方法で表示することができます。
波形オプションは、タイムラインのファストメニューをクリックし、「波形オプション」を選択して、サブメニューから次のいずれかを選択します。
ソース レベル: 波形は録音レベルを反映します。以前からある表示方法です。
出力レベル:クリップ ゲイン、ボリューム、レンダリングされた AudioSuiteエフェクトなど、出力のボリュームに影響する変更を反映して表示します。これにより、クリップ全体の波形を確認し、ミキシングレベルの値を視覚的に捉えることができます。
フル ハイト: ピークポイントを見つけて、サイズをスケーリングします。サウンドを視覚的な感覚に合わせるための波形です。ダイアログの編集で同期をとるのが容易になります。
タイムコードで配置
ソースタイムコードを利用してビンからシーケンスにクリップを直接追加できます。この機能は、同期が取れている別クリップのビデオとオーディオを少ない操作で、シーケンスに追加することができます。AutoSequenceと組み合わせて使うと、さらに便利な機能です。
またPTMX(Pro ToolsからエクスポートされたMedia Composerクリップ)をインポートし、ソースタイムコードで直接ビンからシーケンスに追加することもできます。
この操作では、タイムラインにクリップを追加するときにトラックの選択が必要です。
トラックが足りない場合は、必要に応じて新しいトラックが作成されます。この機能を使用するときに Option (macOS) または Alt (Windows) キーを押したままにすると、トラックの選択はなく、素材は常に新しいトラックに追加されます。
ビンから「タイムコードで配置」機能を使用する場合、ソースのインマークとアウトマークは無視されますが、ソースモニターからスポットからタイムコードを使用する場合はソースのインとアウトマークが使用されます。通常、レコード側のマークが優先です。
文字起こしツールの機能強化
文字起こしツールがファストメニューに追加され、この機能にすばやくアクセスできるようになりました。
さらに、タイムコードとスピーカーID情報を表示または非表示、フォントの設定オプションで、フォントの選択、サイズ変更をしたりすることで、文字起こしツールのレイアウトをカスタマイズできます。
文字起こしツールのソース/レコードの切り替え
文字起こしツールの下部にソース/レコード切り替えボタンが追加され、ソース側またはレコード側に読み込まれたクリップの文字の表示を切り替えることができるようになりました。
また、シーケンスにあるクリップで、まだ文字起こしされていないクリップは、タイムコード、クリップ名、ステータスとともに [文字起こし] が表示され、それをクリックすると、フォアグラウンドでクリップを文字起こしできます。このメッセージは、ファストメニューか[文字起こし未完了部分を表示] を選択解除することで、非表示にもできます。残りのクリップをすべて文字起こしするには、ファストメニューの [残りのクリップを文字起こし] オプションを使用して、フォアグラウンドで処理させます。
文字起こしツールでは、表示された文字をハイライトすることで、タイムラインでインマークとアウトマークを設定することができ、再生ヘッドの位置をよりわかりやすく視覚化します。文字起こしツールでは、キーボード ショートカットを使用してテキストから直接編集したり、シーケンス内の会話の中の単語を検索したりすることもできます。さらに、SubCapと文字起こしは、すでに文字起こし済みのマスタークリップを利用できます。
SubCapを直接シーケンスへ
Media Composer v2024.2で追加された文字起こしをエクスポートする機能では、一度起こされた文字をエクスポートし、その後インポートしてSubCapを作成していました。しかし、このバージョンでは、直接シーケンスにSubCapを作成することができます。
タイムラインを右クリックして [文字起こし] > [SubCapの作成] を選択するだけで、字幕を即座に作成できます。
トラック選択ダイアログがポップアップ表示され、ユーザーは SubCapで参照するトラックを選択できます。[マスタークリップの文字起こしをシーケンスに使用する] チェックボックスをオンにすると、処理能力を節約するために、文字起こし済みのクリップが使用されます。オフにすると、選択したトラックがフォアグラウンドで文字起こしを行います。
カスタム設定でクリップを文字起こし
ビン内のクリップを右クリックし、コンテキストメニューから [文字起こし] > [文字起こし] を選択することで、フォアグラウンドで特定のクリップから文字起こしできるようになりました。このメニューを選択すると、トラック選択ダイアログがポップアップ表示され、文字起こしする特定のオーディオトラックを選択できるほか、文字起こし用の言語を追加できます。
プロジェクト作成時のトランスクリプト設定
新しいプロジェクトを作成すると、「Language Hint (言語のヒント)」や「Include new bins in transcription (新しいビンを文字起こしに含める)」などの、文字起こし設定のオプションが表示されます。これにより、プロジェクト作成時にバックグラウンドで文字起こしされるクリップを設定できます。
トランスクリプト設定が特定のワークステーションのサイト設定にすでに追加されている場合、これらのオプションはグレー表示されます。
ビンコラムのステータスと設定
新しいビンコラムには、クリップがすでに文字起こしされているかどうか、また選択された言語とオーディオトラックが表示されます。これにより、文字起こしツールでクリップを開かなくても、残りの文字起こし作業をすばやく確認できます。ビンコラムが空の場合は、文字起こしされていません。
プロジェクト/ビンサイドバーのステータス
プロジェクトとビンサイドバーのステータスコラムでは、ビンが文字起こしの対象に含まれているかどうか (「Transcription On」または「Transcription Off」) を確認できるほか、そのビンのステータス (「Transcripted (トランスクリプション済み)」または「No Clips To Transcribe (トランスクリプションするクリップがありません)」) と、まだ処理中のビンの完了率も表示されます。
ビンが「Transcription On」」に設定されていても、文字起こしできるマスタークリップがない場合は、「No Clips To Transcribe」と表示されます。これにはシークエンス、サブクリップ、グループクリップ、オーディオトラックを持たないクリップが含まれます。
Transcriptionのステータスでは、「Transcription On」に設定されているビン内のオーディオを含むマスタークリップのみが対象になります。
ビンにオフラインのクリップが含まれている場合は、完了率に含まれます。
ワークステーション間でのトランスクリプションの共有とアーカイブ
Media Composer v2024.6以前では、文字起こしは各コンピューターワークステーションで個別に作成する必要がありましたが、現在は、ワークステーション間で文字起こしのデータを共有することができるようになり、他のワークステーションにエクスポートしたり、アーカイブ目的でエクスポートしたりできます。
この機能には、Transcrips設定またはスクリプトメニューの [文字起こしを管理] ウィンドウからアクセスするか、ビン内のアイテムを右クリックして[文字起こし]サブメニューから [文字起こしを共有] を選択してアクセスします。ファイルの拡張子は、.avtです。
シーケンスの文字起こしを共有すると、シーケンス内のマスタークリップのすべての文字起こしが共有されます。
また、現在、スピーカーIDの情報は共有されません。
リストツールでUnicode としてファイルを出力
リストツールは、言語と文字のサポートを強化するために、デフォルトでファイルを Unicode データ (UTF-8) として出力します。UTF-8出力は、リストツールのプレビューペインで右クリックし、UTF-8 Encordongのオプションを選択することで有効または無効にできます。
マーカーツールのパフォーマンス改善
マーカーツールが更新され、インポート、削除、その他の操作が高速化され、インポート時間が50%以上短縮されました。さらに、10Kマーカーの制限が削除されました。
NRCSウィンドウでのシーケンス テンプレートのサポート
NRCS ツールの右上隅にある [シーケンスの作成] ボタンを使用すると、新しいシーケンスレイアウトでアクティブなシーケンステンプレートがサポートされます。
ご購入のご相談、ご質問などはcontactボタンからお気軽にお問い合わせください。
Event
2024/11/01
InterBEE 2024 出展情報 〜今を支えるプロダクトから未来を繋ぐMoIP技術まで〜
ROCK ON PROは弊社メディア・インテグレーション輸入事業部と共に今年も国内最大級の放送機器展『InterBEE 2024』に出展いたします。
◎Inter BEE 2024出展情報・会期:
<幕張メッセ会場>
2024年11月13日(水)〜15日(金)10:00~17:30 (最終日は17時まで)
・場所:幕張メッセ
・弊社展示ブース:ホール2
2524:ROCK ON PRO
2525:Proceed Magazine
2526:AMS Neve
2517:iZotope
2419:WAVES
2418:APOGEE
2410:LEWITT
・入場料:無料(全来場者登録入場制)
※来場者登録はこちらから
Inter BEE 公式WEBサイトはこちら>>
Media Integrationブランドブース詳細はコチラ
ROCK ON PROブース 今年のみどころ
◎AVID Avid Pro Tools 2024.10 / HDX / MTRX II
最新バージョンのPro Tools 2024.10と、今年夏に3年ぶりのメジャーアップデートを遂げたVideo Sync 6を連携して展示。Pro Toolsに今年追加された最新機能からPro Tools | MTRX IIを中心としたHDXシステムについてのご質問まで、ハンズオンデモ込みでROCK ON PROスタッフがお答えします。
◎めくるめくRock oNソリューション
放送クオリティのDanteベースモニターコントローラーRTW TouchControl 5とフルIP接続可能となるMusik MO-1 mk2や、究極のフルアナログスピーカーTOA ME-50FSと、本モデル専用に設計されたスタンド TAOC MSTP-ME50FSによる卓越した正確性を誇る再生システム等々、業界最前線の製品群によるオリジナルソリューションを展開します。
◎PTP Grand Master Clock
InterBEEのトレンドを見ても年々業界注目度の高まりを感じる次世代MoIPシステム。そのシステムの中でも肝となるPTP対応のGrand Master Clockを展示します。プロオーディオ業界でもその精度の高さに定評のあるBrainstorm AudioからDXD-16をご紹介。新たに取扱を開始するドイツ、Meinberg社のグランドマスタークロックは業界初展示。WOWOW様とのクラウド放送システムの実例もご紹介します!クラウド伝送、リモートプロダクション、MoIPってどうなっているの?という方も是非お越しください。
詳細は1日目 13:00から向かいのWavesブースにて開催される「MoIPクラウド活用実例:WOWOWにおけるテニス中継クラウド制作テストケースのご紹介」でも解説致します。
◎360 Virtual Mixing Environment(360VME)
今年から多くの要望をいただいていた出張測定サービスや大阪梅田からの案内も開始し、スタジオでの実運用ケースも増えてきた360VMEサービスをご紹介。弊社ブースにご来場いただいた方限定で、MILでの測定が¥10,000引きとなるスペシャルクーポンも配布します。
もちろんInterBEE 弊社ブースの風物詩であるProceed Magazine最新号も配布します!
皆様とお会いできることを楽しみにしております。是非ROCK ON PROブースへお越しください。
コンファレンス出演情報
三日目となる11/15(金)のINTER BEE FORUM 基調講演に弊社プロダクトスペシャリストの前田洋介が今年も出演いたします。非圧縮音声がインターネットを超える注目の最新ソリューションDante Connectや、超低遅延を実現する映像音声伝送プロトコルLMSを用いて副調整室のクラウド化を実証したWOWOW様とのテストケースを軸に、AoIPの今とこれからについて解説する講演です。ぜひ来場者登録の上、2F 国際会議室へとお越しください!
【タイトル】[INTER BEE FORUM 基調講演] 『AoIPの現状と音声制作のクラウド化とは?』
【日時】 2024年11月15日(金) 10:30-12:00
【場所】 幕張メッセ国際会議場 2F 国際会議室
※コンファレンスを聴講するには来場登録(無料)及びログインの後、聴講予約が必要です。
講師:前田 洋介(Media Integration シニア・テクノロジー・オフィサー / ROCK ON PRO プロダクト・スペシャリスト)
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行う。
ROCK ON PRO及びメディア・インテグレーション各ブランドブースは以下エリア!
皆様のご来場をお待ちしております!
Sales
2024/10/30
Avid Holiday プロモーション開始!Pro Tools、Sibeliusが33% OFF
Pro ToolsとSibeliusの新規サブスクリプションが33% OFFで手に入る、Avid Holidayプロモーションが開始されました。最新バージョン2024.10がリリースされたばかりのPro Toolsや、Make Music Finaleからの乗り換え先候補となるSibeliusを期間限定でお得に手に入れるチャンスです!
Avid Holiday プロモーション
期間:2024年10月30日〜2024年11月21日
概要:対象製品の販売価格が33% OFF!
対象:
Pro Tools Artistサブスクリプション新規
Pro Tools Studioサブスクリプション新規
Pro Tools Ultimateサブスクリプション新規
Sibelius Ultimateサブスクリプション新規
(*Sibelius Artistは対象外)
Avid Pro Tools Artist 年間サブスクリプション新規
通常販売価格:¥15,290(税込)
期間限定特価:¥10,230(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Avid Pro Tools Studio 年間サブスクリプション新規
通常販売価格:¥46,090(税込)
期間限定特価:¥30,910(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Avid Pro Tools Ultimate 年間サブスクリプション新規
通常販売価格:¥92,290(税込)
期間限定特価:¥61,820(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Sibelius Ultimate サブスクリプション (1年)
通常販売価格:¥30,690(税込)
期間限定特価:¥20,570(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
こちらのプロモーションも継続中!
https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-pro-tools-studio/
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid_finale_to_sibelius_promo/
2024年も残り2ヶ月、すでにホリデームードのAvidからのスペシャルオファー!業界スタンダードDAWを手にいれる絶好のチャンスです!そのほか、機材更新を見据えてのライセンス確保、永続版からサブスクリプションへの切り替え、大切なご家族への贈り物など、この機会をぜひご活用ください。
ROCK ON PROでは、Pro Toolsをはじめとした業務用システムのご相談を随時承っております。お問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
NEWS
2024/10/29
Pro Tools 2024.10がリリース!音楽・オーディオポスト両面での機能強化を実施
Pro Tools最新バージョンとなる2024.10がリリースされました。有効なサブスクリプションまたは現在アップグレード・プラン加入中の永続ライセンスをお持ちのすべてのPro Toolsユーザー、および、すべてのPro Tools Introユーザーがご利用いただけます。
(Avid LinkおよびAvidアカウントで利用可能になるまでに24時間から48時間かかる場合があります。)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools 2024.10ソフトウェア・アップデイトでは、Steinberg SpectraLayersとWaveLabのARA 2プラグインのサポート、Native Instruments Kontakt 8 Playerとコンテンツの追加、510kとBLEASSからのMIDIエフェクトプラグインなど、音楽とオーディオポストの両方のお客様向けの新機能が導入されています。
このリリースでは、MIDIプレイリソフトウェア・アップデートトトップのドラッグ&ドロップによるバーチャル・インストゥルメントへのドロップ、Dolby Atmos機能の強化なども行われています。
Pro Tools 2024.10 リリース - 新機能
Kontakt 8がPro Toolsのサンプルベースのインストゥルメントを強化
Steinberg SpectraLayers ARA 2 サポート
Steinberg WaveLab ARA 2 サポート
BLEASS Arpeggiator MIDI プラグイン
510K SEQUND LITE: ポリリズミック・シーケンシングへの入り口
主な新機能
Pro Tools ARAエコシステムがSteinberg SpectraLayersとWaveLabのサポートで拡大
2024.10 では、Steinberg の SpectraLayers プラグインと WaveLab プラグインの ARA 2 サポートが追加されました。Celemony、iZotope、Sound Radix、Synchro Artsなど、さまざまなソリューションに対応する既存のARA統合と組み合わせることで、オーディオをラウンドトリップすることなく、Pro Toolsでこれらのツールを非常に迅速かつ簡単に活用できます。さらに、有効なサブスクリプションと永続アップグレード・プランをお持ちのお客様は、このリリースの一部として Steinberg SpectraLayers Go と WaveLab Go を自動的に受け取ることができます。
SpectraLayers Go
SpectraLayers Goは、手動、自動、およびAI支援の編集ツールとプロセスの強力な組み合わせを特徴とするスペクトルオーディオエディタです。SpectraLayersを使用すると、非常に詳細なスペクトログラムでオーディオを視覚化し、レイヤーベースの編集を探索したり、AI支援アルゴリズムを使用して音楽からボーカルトラックを抽出したりすることができます。これらのツールは、リペアとリストア、音楽とポストプロダクションのミキシングと編集、クリエイティブなサウンドデザインなど、さまざまなオーディオワークフローに使用できます。
WaveLab Go
WaveLab は、業界全体で使用されている包括的なマスタリング、編集、サウンドデザイン・ソリューションです。WaveLab Goは、Pro Tools内で直接使用できるWaveLab編集環境の機能を提供します。Spectrogram、Rainbow Display、Global Loudness Analysis、LoudnessCurveなど、広範なリアルタイムのオントラック視覚化および分析ツールが活用可能です。ReSynthesisを使用した破損したオーディオの修復から、周波数とピークの問題の解決、M/Sオーディオの編集など、WaveLab Goには、非常に正確かつ直感的に作業を行うためのツールが含まれています。
Native Instruments Kontakt 8 : Pro Toolsサウンドの世界に色彩を!
AvidはNative Instrumentsと提携し、最新のKontakt 8 Playerおよび厳選されたインストゥルメント・コレクションをPro Tools全レベルに含めることになりました。Kontakt 8は、Native Instrumentの業界をリードするバーチャルインストゥルメント・プラットフォームのメジャーアップデートであり、ウェーブテーブルシンセシス、統合MIDIツール、ループやサンプルの再生と操作の新しい方法であるLeapなどの新機能が追加されています。
すべてのPro Tools製品には、Kontakt 8 PlayerとPro Tools Factory Essentialsインストゥルメント・ライブラリが含まれますが、アクティブなサブスクリプションと永続アップグレード・プランをお持ちのお客様はNative Instruments Hybrid Keysも入手でき、さらに、アクティブなPro Tools StudioとUltimateのお客様はNative Instruments Soul Sessionsを追加で入手可能です。Kontakt 8 Playerとインストゥルメントが加わることで、Pro Toolsで音楽を作成するための刺激的な新しい方法が提供され、今後はPro Tools | Sonic Dropプログラムにて、あなたの創造性を刺激するKontaktの新しいインストゥルメントが追加されていく予定です。
510kとBLEASS :MIDIプラグインで音楽のアイデアを創造!
2024.10 では、Pro Tools のお客様に、新しい音楽のアイデアを生成して実験するための 2 つの強力な MIDI プラグインが提供されています。510k SEQUND Liteは、ポリリズムを簡単に探索できる直感的なシーケンサーです。グルーヴ感あふれるエキサイティングなベースラインやセンター感あふれるメロディーなど、SEQUNDのインターフェースにはMIDIノートで瞬時に呼び出すことができるさまざまなパターンが含まれており、シームレスなトランジションと驚異的なタイミングでパターンをその場で変更することができます。
オーディオ・ディベロッパーでもあるBLEASSがトップミュージックプロデューサーのCanblasterと共同で開発したBLEASS Arpeggiator MIDIエフェクトプラグインは、従来のアップダウンパターンを超越し、ポリリズムとポリフォニー、高度に構成可能なアルペジオの大規模なコレクションを提供します。直感的なインターフェースは自発的な実験を促し、XYパッド、高度なLFO、モーションシーケンサーにより深いモジュレーションが可能になります。
510k SEQUND LiteおよびBLEASS Arpeggiatorプラグインは、アクティブなサブスクリプションと永続アップグレード・プランをお持ちのすべてのPro Toolsのお客様にご利用いただけます。
MIDIプレイリストで完璧なパフォーマンスを実現
通常、完璧なパフォーマンスをキャプチャするには、複数のテイクが必要です。Pro Toolsのオーディオ・プレイリストは、長年にわたって数え切れないほどのアーティストに使用されてきましたが、Pro Tools2024.10の新しいMIDIプレイリスト機能により、複数のMIDIテイクをレコーディングし、それらを簡単にコンピング及び編集を行い目的の結果を得ることができるようになりました。
クリップをバーチャル・インストゥルメントに簡単にドラッグ&ドロップ
モノラルおよびステレオクリップをPro Toolsのタイムライン、クリップリスト、またはワークスペースから直接サンプラーまたはドラムシーケンサープラグインにドラッグ & ドロップして、ユニークなインストゥルメントを作成できるようになりました。クリップをGrooveCellのような様々なAAXバーチャル・インストゥルメントに直接ロード可能となり、特にNative Instruments Kontakt 8 Playerの新しいLeapフレームワークでは、音楽制作とサウンドデザインの新たな音の可能性を切り開きます。
その他の新機能
MIDI エディターのフォーカスビュー
MIDIエディターのピアノロール表示で、ドラムプログラミング等に便利な、使用しているキーのみを表示可能となります。
インストゥルメントトラック上のインプットモニタリング
インストルメントの出力をリアルタイムで確認可能になりました。
DolbyAtmosスピーカーミュート
Dolby Atmosでミキシングするときに、特定のモニタリングチャンネルをすばやくトミュート/ソロする方法を提供します。
インポートセッションデータの改善
トラックの選択とインポートアクションを分離し、さまざまな種類のインポートアクションをトラックのバッチに簡単に適用できるようになり、複雑なセッションや要件でのインポートプロセスが高速化されました。
タブシステムの表示/非表示
表示されるタブの設定をすばやく設定する方法を提供し、タブシステムから未使用のARAプラグインを非表示にして、視覚的な使いやすさを向上させることができます。
2024.6で大幅にパワーアップしたARA機能に、さらにSTEINBERG SPECTRALAYERSとWAVELABが追加。また、Native InstrumentsとのコラボレーションによるPro Tools専用音源の実装など、サードパーティとの連携を広げることで業界スタンダードDAWとしてより使いやすくなるPro Tools。
ご購入の相談はROCK ON PRO、または、Rock oN Line eStoreまでお気軽にお寄せください。ROCK ON PROではPro Tools HDXシステムをはじめとした業務用制作システムの設計・販売のご相談も随時受け付けております。
Sales
2024/10/23
【10月末まで】Sonnox Oxford Limiterが今月限定のセール開催中!
プロフェッショナルコンソールSONY OXF-R3の開発で培われた技術を活かし世界中の業務用スタジオで活用される英国Sonnoxのプラグインが、1ヶ月限定のセールを実施中!
今月のセール製品は、『限りなく透明に近いリミッター』を謳うOxford Limiter!
マスター・チャンネルでの使用を念頭において開発されており、リミッターの存在を感じさせないレベル管理から音楽的なエンハンスをもたらすマキシマイザーまで、柔軟に業務機器クオリティに応えるプラグインとなっています。
最新のアップデートにより業界標準のトゥルーピーク規格ITU-R BS.1770-4に対応。またコンシューマー再生機器のDAの挙動を考慮し、インターサンプル・ピークを表示・制御するオート・コンペンセイション機能も搭載しています。
そんなOxford Limiterが今月限定の86%OFFでお求めいただけます!期間は10/31(木)17:00まで。
この機会をぜひご活用ください。
◎対象製品
Sonnox / Oxford Limiter (Native)
通常 ¥42,700
→¥5,980(税込)
Rock oN eStoreで購入!
◎動作環境
Windows:10 - 11
macOS:10.12 (Sierra) - 14.3 (Sonoma) - IntelおよびApple Silicon Mac対応
VST3、AU、AAX Native ※いずれも64bitのみ
アクティベート:iLok 2/3 USB Smart Key、iLok Cloud
スタジオ定番プラグインのご用命はROCK ON PROが承ります。下記CONTACTフォームよりご相談ください。
Sales
2024/10/16
Nuendoが半額に!「Nuendo Mega Sale 2024」実施中!
ポストプロダクション、ゲーム、ミュージックと世界中のスタジオで愛用されているSteinberg Nuendoが半額となる「Nuendo Mega Sale 2024」が実施中です!
最新バージョンであるNuendo 13では、AIによる音声ノイズ除去プラグインVoice Separatorや音源のニュアンスを合わせるTonal Match、ボイス処理エフェクトが一括で扱えるVocalChainなどの新規プラグインのほか、日本でも次世代地上波放送の音声規格に採用されるMPEG-H制作の完全サポート、Dolby Atmos Home 9.1.6対応とまさに一線級のプロフェッショナルツールとなっています。
そんなNuendoを半額で手に入れられるこのチャンスを絶対にお見逃しなく!
セール概要
Nuendo Mega Sale 2024
◎内容:Nuendo対象製品を半額の特別価格で販売
◎期間:2024年10月30日(水)まで
◎対象製品
Steinberg / NUENDO 13(DL版)
市場想定価格 ¥141,900(税込)
→セール価格 ¥70,950(税込)
Rock oN eStoreで購入!
Steinberg / NUENDO 13
アップデート版 from 12(DL版)
市場想定価格 ¥28,600(税込)
→セール価格 ¥14,300(税込)
Rock oN eStoreで購入!
Steinberg / NUENDO 13(パッケージ版)
市場想定価格 ¥141,900(税込)
→セール価格 ¥70,950(税込)
Rock oN eStoreで購入!
Steinberg / NUENDO 13
アップデート版 from 12(パッケージ版)
市場想定価格 ¥28,600(税込)
→セール価格 ¥14,300(税込)
Rock oN eStoreで購入!
12からのアップデートをお考えの方もこの機会にぜひ!お見積もりのご相談はROCK ON PROまで!
Event
2024/10/09
【10/25(金)】体験しなきゃわからない!SONY 360 VMEでイマーシブを始めようセミナー【Umeda開催】
ついにSONY 360 VMEが大阪に上陸!!
昨年のサービス開始から高い注目を集める、イマーシブミキシングの新しいスタイルであるSONY 360 VME。ヘッドフォンでスピーカー再生を再現するこの技術。文字では伝わらないその凄さ、皆さんに体験していただき、その技術を解説するスペシャルな1日をご提供します!
こんな方におすすめ
これからイマーシブミキシングを始めようと考えている方
スピーカーは用意できないけどイマーシブミックスに興味のある方
バイノーラルの最新技術に興味のある方
脳を騙されたい方
イベント概要
体験しなきゃわからない!SONY 360 VMEでイマーシブを始めようセミナー
◎開催日:2024年10月25日(金)
体験会 13:00〜
セミナー 17:00~
◎開催場所:Rock oN Umeda UNLIMITED STUDIO / EXHIBITION SPACE
(大阪府大阪市北区芝田 1 丁目 4-14 芝田町ビル 6F)
◎講師
SONY 花田氏
ROCK ON PRO 前田洋介
お申し込みはこちら
Sales
2024/10/02
【12/31までさらに期間延長!!】MBOX StudioにPro Tools Studio永続ライセンスが期間限定で付属!
MBOX StudioにはPro Tools Studioサブスクリプションが1年間付属していますが、2023年12月7日から2024年1月31日までの期間限定で、このサブスクリプションの代わりにPro Tools Studio永続ライセンスが付与されるキャンペーンが実施されます。
2024年2月1日追記:キャンペーンの終了期間が2024年3月31日まで延長されました!
2024年4月1日追記:キャンペーンの終了期間が2024年6月30日まで再延長されました!
2024年7月1日追記:キャンペーンの終了期間が2024年9月30日まで再々延長されました!
2024年10月2日追記:キャンペーンの終了期間が2024年12月31日まで再々々延長されました!
音楽制作に必要なPro Tools Studio、それも、永続版(¥92,290 税込)がまるまる無料になる太っ腹なプロモーション!
し・か・も!今なら在庫限りの旧価格特価品あり!!
→旧価格在庫はおかげさまで完売いたしました。
MBOX導入を検討中の方は、ぜひこの機会をご活用ください!
Avid MBOX Studio
通常販売価格:¥138,600(本体価格:¥126,000)
在庫限り旧価格特価:¥ 116,600 (本体価格:¥ 106,000)
旧価格在庫はおかげさまで完売いたしました。
Rock oN Line eStoreで購入!>>
*旧定価在庫が完売次第、通常販売価格での販売となります。
プロモーション概要
期間限定プロモ:MBOX StudioにPro Tools Studio永続ライセンスがバンドル!
実施期間: 2023年12月7日(木)〜2024年1月31日(水)
2024年3月31日(日)まで延長!
2024年6月30日(日)まで再延長!
2024年9月30日(月)まで再々延長!
猶予期間: 2023年11月7日(火)〜12月6日(水)までにご購入いただいたユーザー様も同様の特典を受けられます。
MBOX Studio製品紹介(Avidブログ)>>
MBOX Studio製品紹介プレイリスト(Avid公式YouTube)
本プロモの開始日は2023/12/7ですが、30日間の猶予期間(11月7日〜12月7日)が設定されているため、2023/11/7〜本プロモ開始までの期間にMBOX Studioを購入された方にもPro Tools Studio永続ライセンスが提供されるようになっています。
永続ライセンスは、MyAvidの「まだダウンロードされていない製品」セクションに自動的に配信され、Avidでの準備が整い次第、アクティベートできます。また、その旨を知らせるメールも自動的に送信されます。
プロモーション期間中にアクティベーションを行い、すでに有効なサブスクリプションまたは永続契約を結んでいるお客様には、新しいPro Tools Studio永続アクティベーションがMyAvidの「未ダウンロード製品」セクションに表示されます。
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https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-user-guide-manual-japanese/
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https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-mbox-studio-delivery-schedule/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-review-recording-movie/
コンパクトなボディに業務用スタジオに匹敵する機能を詰め込んだMBOX Studio。ホームスタジオで「あったら便利」な機能が網羅され、コンデンサー/ダイナミック織り混ぜで8本のマイクを接続することも可能なパワフルなNative I/Fです。
ぜひ、この機会に導入をご検討ください!
Event
2024/10/02
【10/7(月)】WavesLive eMotion LV1 Classic 関西最速ハンズオンセミナー【Umeda開催】
10月1日に発表されたWaves初の一体型ライブコンソールeMotion LV1 Classic
従来から様々なライブサウンドやブロードキャストの現場で信頼と実績のあるWaves eMotion LV1コンソールからコンパクトな一体型コンソール版「eMotion LV1 Classic」が登場しました。
サウンドのミキサー・エンジン、21.5インチの大型マルチタッチ・スクリーンとパワフルなフィジカル・コントロール部を組み合わせたクイックアクセスUI、業界で広く評価されている最先端のプロセッシング、そして堅牢な構造により、Wavesが提供するライブ・ミキシング・パワーをコンパクトなコンソールに詰め込みました。
だれでもこの製品に触れることのできるスペシャルセッションを、Rock oN Umedaにて大阪最速開催いたします!
コンパクトながらハイパワーなライブコンソールの新生LV1 Classicをぜひご体験ください。
開催概要
WavesLive 新製品!
eMotion LV1 Classic 関西最速ハンズオンセミナー
日時:10月7日(月)
13:00~
ご好評につき13時の部は満席となりました!
そこで同日17:00〜19:00にも同内容を開催します!お申し込み受付中!
場所:Rock oN Umeda Exhibision Space
(大阪府大阪市北区芝田 1 丁目 4-14 芝田町ビル 6F)
定員:限定15名
講師:Media Integration 佐藤翔太
お申し込みはこちら
製品紹介
eMotion LV1 Classicは、Waves初の一体型ライブコンソールとして満を持して登場したプロダクト。W402mm x H561mm x D560mm, 17.2kgというコンパクトなサイズに、16in/12outのアナログ入出力, AES入出力, 4つのSoundGridポートを標準搭載。ミキサーエンジンは64モノラル/ステレオ入力チャンネルに44のステレオバス等を搭載し、今までLV1やSuperRackを扱われてきた方々にはお馴染みのUIを21.5インチのタッチスクリーンと16+1本のアルプス社製フェーダーにて直感的に操作可能です。
もちろんSoundGridネットワークによりIONIC 16などのI/O追加やDante、MADIへの対応も可能。あらゆる規模のシステムとして柔軟に活躍します。
Extreme Server Gen10相当のWavesプロセッサーにてライブに最適化された定番のWavesプラグインが利用できるほか、オプションのDugen Auto Mixer機能も合わせてLV1 Classicは持ち運び可能の強力な一台となることでしょう。
WAVES LIVE / eMotion LV1 Classic
¥1,595,000(本体価格:¥1,450,000)
11月発売予定!
お求めはリニューアルしたeStoreや
ROCK ON PROまで!
セミナーお申し込みはこちら
NEWS
2024/09/30
DADman ver5.7.2 リリース!
Pro Tools MTRX II / MTRX Studioのドライバーでありモニターセクションを司るDADmanの最新バージョンv5.7.2がリリースされています。
同時にMTRX製品ラインのファームウェアアップデートも提供されています。
システム要件、互換性
v.5.7.2 (build 1)
macOS Big Sur – Sequoia(11 - 15) Intel / Apple silicon
互換:macOS macOS High Sierra - Catalina(10.13 – 10.15)
Windows 10, 11
新機能
メインウインドウのセクションボタン(「AD」、「DA」、「Mon」、「Con」、「Conf」)に、セクションの内容を示すツールチップが追加され、クリックすると対応するセクションが折りたたみ/展開されるようになりました。
「About DADman」からバージョン情報をクリップボードにコピーする「Copy Information」ボタンが追加されました。これには、接続デバイスのリスト、OS情報、DAD Thunderboltドライバーのバージョンが含まれます。
メインメニューに「Open Recent Profile」メニューが追加されました。
macOS: モニタープロファイルウィンドウのサイズが変更可能に
変更点
ADチャンネル・ストリップの位相反転ボタンが「Ø」記号表記に。(以前の「Ph」表記から「Phantom power」と「Phase invert」の混同を避けるため)
バグフィックス
モニター出力セットを切り替えた際のモニターEQパラメーターのマッピングエラーを修正。
Windows:一部のシステムで、VCRUNTIME140_1.DLLファイルが見つからないためにDADmanが起動に失敗していた問題を修正
macOS: ファイルの読み書きに失敗した場合、DADmanが警告するようになりました。
ファームウェアの新機能
MTRXII:Danteカードの誤カードエラーアラームを修正。
MTRXII:MADI同軸出力のスルーレートを低減。
DAカード:DAボードとAX Center Analogベースボードのチャンネル8の位相エラーを修正
MADI、AES、Dante、SDIカード:サンプルレート変換の改善
その他の変更点に関しましてはリリースノートをご確認ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2024-6/
Sales
2024/09/28
AvidがFinaleからSibeliusへのクロスグレード・プロモを実施中!
譜面作成の定番ソフトウェアであった米MakeMusic社「Finale」の突然の開発/販売終了を受け、Avidは現在FinaleからSibeliusへのクロスグレード・プロモーションを実施中です!
FinaleユーザーはSibelius Ultimateの永続版および1年間サブスクリプションが特別プライスで手に入ります!
Finaleで作成したファイルは、Finale上でMusicXML形式でエクスポートすることでSibeliusでも開くことができるため、今までのプロジェクトを引き継いでクロスグレードいただくことも可能です。詳しいデータ移行の手順はこちらをご確認ください
プロモ詳細
Finaleのシリアル番号をお持ちの方は、Sibelius Ultimateがプロモ価格で購入いただけます。
期間:2024年12月31日まで
対象製品:
・Sibelius Ultimate 年間サブスクリプション Finaleクロスグレード
9938-30121-00 Sibelius Ultimate 1-Year Subscription Crossgrade from full versions of Finale
販売価格:¥15,290(税抜¥13,900)
お求めはROCK ON PROまで!
・Sibelius Ultimate 永続版 Finaleクロスグレード
9938-30014-00 Sibelius Ultimate Perpetual Competitive Crossgrade inc. 1 year of upgrades
販売価格:¥22,990(税抜¥20,900)
お求めはROCK ON PROまで!
クロスグレード利用方法
1:クロスグレードをご購入の上、www.avid.com/register にてAvidの製品ライセンスを登録してください。
2:アカウントのクロスグレードの資格を確認するために、Finaleのシリアル番号を入力します。
3:完了すると、Sibelius Ultimateの新しいライセンスが付与されます。
Avidプロモ詳細ページ:https://connect.avid.com/finale-to-sibelius-crossgrade-jp.html
⇩こちらも要チェック!
Avid公式ブログ「FinaleユーザーがSibeliusで気に入るところトップ5」:https://connect.avid.com/top-5-things-finale-users-will-love-about-sibelius-jp.html
期間は年内まで!永続版のクロスグレードはこのタイミングでの復活となります!Finaleを使われていた教育機関様も、このタイミングで世界で最も売れている楽譜作成ツールであるSibeliusをご検討してみてはいかがでしょうか。ご相談はROCK ON PROまでお問い合わせください。
Support
2024/09/27
Avid DigiLink I/Oライセンス販売終了のお知らせ
Pro Tools DigiLink I/Oライセンスの販売は終了となりました。
Pro Tools 2022.4のリリース以降、Pro Tools UltimateソフトウェアにてHDシステム(HDX、HDネイティブ、および接続インターフェース)を利用する際、DigiLink I/Oライセンスはソフトウェア内に組み込まれており、別途ライセンスは不要となっております。
(ライセンスが必要となる場合の詳細はこちらをご確認ください)
Avidの販売終了に伴い、弊社ROCK ON PROにおいても取扱は終了となること、ご容赦ください。
該当製品:9938-30189-00 Pro Tools DigiLink I/O License
該当のProToolsバージョンをご使用の方の中で、新規にDigiLink I/Oライセンスが必要となる場合は、Pro Tools 2022.4以降へのアップグレードをご検討ください。
Avidの最新プロダクト、販売状況については、下記contactバーナーよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2024/09/27
RME待望の新型、MADI face XT IIが発売!
RMEよりMADI faceの新モデル、MADI face XT IIが発売となりました!
前モデルMADIface XTから筐体サイズやチャンネル数はそのままに、アナログとデジタル両方の領域で大幅な性能向上を実現。持ち出しのレコーディングシステムや簡易マルチチャンネル再生システムからスタジオ常設のMADIシステム中枢まで、3系統のMADI入出力により様々なシーンで活躍してくれる1台なのは間違いないでしょう!
主要機能紹介
MADIオプティカル入出力×2、MADIコアキシャル入出力×1による192ch@48kHzのMADI入出力、アナログ、AES合わせて最大196入力/198出力を搭載するスペックは前モデルから引き継ぎ、XLRライン出力の最大出力レベルが+15dBuから+24dBuにまで向上!すべての出力で基準レベルが+24,+19,+13,+4(dBu)から選択できるようになりました。
その他MADIface XTからの変化点としては、アナログ回路の強化によりSN比やTHD、THD+N、入出力におけるインピーダンスや周波数特性までが向上。PCI Expressポートは廃止され、リモートコントロール用ミニDIN端子がARC USB接続用端子に変更。SteadyClockは勿論SteadyClock FSにアップデートされています。クラス・コンプライアント・モードによりドライバーレスでの動作が確保されているのも取り回しが良いですね。
製品概要
RME / MADIface XT II
¥385,000 (本体価格:¥ 350,000)
>>Rock oN eStoreで購入!
ROCK ON PROでお見積り!
MADIインターフェースの王道RMEの中でも新たなスタンダードとなる本機、AoIPが盛り上がる中まだまだスタジオ中枢に流れるMADIのインターフェースとしてどうぞ!お見積り、導入のご相談はROCK ON PROが承ります。
Event
2024/09/19
サンレコフェス2024にて、360VMEを体験しよう!
サンレコ主催のセミナー&展示会イベント『サンレコフェス』が今週末9月21日(土)、22日(日)に開催されます。
3回目の開催となるこのイベントで、昨年も大盛況いただいた360VMEの体験ブースが今年も登場!
ご自身で体験されて初めてそのクオリティの高さを実感いただける360VME、まだ体験されたことのない方はこの機会にぜひ足をお運びください。
イベント概要
会期:2024年9月21日(土)、22日(日) 各日12:00〜18:00
会場:KANDA SQUARE ROOM & CONFERENCE
〒101-0054 東京都千代田区神田錦町二丁目2番地1
入場無料(登録制) ※一部セミナーは有料
サンレコフェス2024 入場登録はコチラから!
イベント詳細ページ:https://www.snrec.jp/entry/news/srfes2024info
360VME体験ブース会場:サンレコフェス内特設ルーム
実施時間:各日12:00〜18:00、毎時00分、30分開始
参加無料
360VME体験は、お席に余裕があれば当日飛び込みでのご案内も可能です!
お気軽にご参加ください。
📷昨年の360VME体験ブースの模様
21日(土)の展示終了後には、サンレコWeb会員限定の抽選会も開催されるそう。弊社MIブース含め、皆様のご参加をお待ちしております!
Sales
2024/09/18
Nugen Audio 創立20周年記念 All 20%OFFプロモーション開催中!
世界中のポストプロダクション、音楽スタジオで使用されるNugen Audio。ラウドネスメーター、ラウドネス補正、サラウンドへのアップミックスなどの現場で求められる性能を、直感的なインターフェースによって提供しています。
このNugen Audioの20周年を記念して、10月17日(木)までNugen Audioの全てのプラグイン、バンドル、スタンドアローン・アプリケーション、アップグレードが20%OFFとなるプロモーションを実施中!この機会をぜひご利用ください。
Nugen Audio 創立20周年記念 プロモーション
◎ プロモーション期間:2024年9月12日(木) ~ 10月17日(木) 14:00まで
◎ プロモーション価格でのご発注締切:10月17日(木) 正午
◎ 対象製品:Nugen Audioの全製品
◎ 納品方式:シリアル番号をメールでお届けいたします。
Rock oN Line eStoreで購入>>
Sales
2024/09/14
Pitch ‘n Time 25周年記念セール開催!期間限定、12/5まで
Serato社創立時の最初の製品であり、タイムストレッチ&ピッチシフトの業界標準プラグインであるPitch ‘n Timeが25周年を迎えることを記念して、同プラグインが30% OFFの特価で手に入る期間限定セールが開催中です。
元となる音源のピッチとテンポをそれぞれ独立してコントロールできるPitch ‘n Time。デジタルが当たり前になった今からは想像し難いですが、テープとレコードしかなかった時代からすると、この発想自体がオーディオ制作の新たな時代を告げる衝撃的なものでした。
Pitch ‘n Timeはその登場から25年間、さらなる研究と改良を重ね進化を続けてきました。未体験のDAWルーキーも、かつてお世話になったベテラン勢も、この機会にぜひ最新のPitch ‘n Timeをお試しください!
Pitch ‘n Time 発売25周年記念セール
期間:2024年9月14日(土)〜2024年12月5日(木)
内容:対象製品が30% OFF
対象製品:Pitch ‘n Time Pro、及び、Pitch ‘n Time LE
Serato
Pitch ‘n Time Pro
対応DAW:Avid Pro Tools
通常価格:¥129,800(税込)
セール特価:¥90,860(30%OFF)
※ 価格はすべて税込です。
Rock oN Line eStoreで購入>>
Serato
Pitch ‘n Time LE
対応DAW:Avid Pro Tools / Apple Logic Pro
通常価格:¥64,900
セール特価:¥45,430(30%OFF)
※ 価格はすべて税込です。
Rock oN Line eStoreで購入>>
録音・編集のすべてがテープだった時代には、ピッチとテンポは不可分でした。まだまだその時代の発想が主流だった25年前、まさにデジタルならではの処理機能を搭載したPitch ‘n Timeの登場は、オーディオワークフローの発想自体を一歩先に進めたと言っても過言ではないでしょう。25年という時間の試金石が、そのクオリティを証明しています。
ROCK ON PROではオーディオワークフローへの深い理解と最新の技術に関する幅広い知識を基に、お客様に最適なソリューションを提供しています。スタジオ設計や機器更新のご相談は、contactフォームよりお気軽にお問い合わせください。
Education
2024/09/10
放送芸術学院専門学校 様 / 幅広い授業に対応するスタジオシステムの最大公約数
放送芸術学院専門学校(BAC)は、大阪市北区天満橋にある放送、音響、映像に関する人材を育成する専門学校であり、関西で唯一となる放送業界が創った学校。また、eスポーツや声優といった分野を中心にした姉妹校、大阪アニメ・声優&eスポーツ専門学校も併設されており、学生の皆さんが様々な業界へのアプローチを行うことができるよう幅広いカリキュラムが用意されている。今回は放送芸術学院専門学校に新設されたコントロールB / Cスタジオの導入事例をご紹介したい。
業界の現場と繋がりが深い放送人材育成校
放送芸術学院専門学校は、その設立経緯にも学校を特色づける大きな特徴を持っている。元々は制作プロダクションの株式会社東通が放送業界の人材育成を目的に創立した学校、つまり放送業界が人材育成のために立ち上げた学校というわけだ。そのため、産学連携教育と銘打って企業の依頼を受けて実際にオンエアされる番組を制作したり、ステージに出演したりと現場で学ぶ実践的なカリキュラムが多数組まれており、いまも放送業界との繋がりが深い。1994年に数多くの専門学校を擁する滋慶学園グループの運営となり、現在の校舎も2012年4月に天満橋に完成、今回取り上げるコントロールB / Cスタジオもこの天満橋校舎に新設されている。2014年の竣工当初からはPro ToolsとMedia ComposerをSatellite Linkで同期させるシステム運用としていたが、今後より音声に特化した授業にも対応するために今回のスタジオ改修が計画された。
幅広いカリキュラムに対応するシステムとは
コントロールルーム
レコーディングスタジオB
レコーディングスタジオC
📷広さを充分にとったスペースで行われる授業は収録のみならず多岐にわたる。このスタジオに挟まれるようにコントロールルームが設置され、両スタジオへの対応はもちろん、校内に張り巡らされたDanteのネットワークで別階にある施設の収録もここで行うことができる。
数多くのカリキュラムを抱える同校の設備である、求められる機能も多岐にわたることとなった。収録関連の授業で信号の流れを把握するためにコンソールは必須となりながらも、そのほかの各コースの授業での使用も想定して、MA・アテレコ・ミックスなど様々な用途に合わせた対応をとる必要もある。レコーディングブースとして使用されることもあれば、ミーティングや別の授業が行われることもあるとのことだ。機材の使われ方という軸で見れば、Blu-rayディスクを視聴するという単純に音声を出力するだけという程度の用途もあるため、Pro Toolsありきの完全なコントロールサーフェスということだけでは、運用として扱いづらい局面も出てきてしまうし、逆にアナログ、もしくはデジタルミキサーだけでは今後の拡張性に欠けてしまう。念頭に置かれたのは、オーディオミキサーとしての用途を満たし、コントロールサーフェスの利便性を備えるシステム。今回はこれをAvid MTRX llとS4の組み合わせで実現したわけだ。
システムの中核にあるMTRX ll
前述の通り、多種多彩な授業への対応を実現するために、豊富な入出力とマトリクスを備えるMTRX llは不可欠となった。そして、校内にシステム構築を進めていくにあたって課題となったのは各スタジオとのコミュニケーション機能の確立である。通常のMAスタジオではアナウンサーブースがあり、コントロールルームとのトークバックシステムが常設されているわけだが、ここでは授業内容に沿ったマイクやトークバックスピーカーを設置する必要もある。もちろん学校ということからも、その仕組みや構成を学ぶことも授業の一環としてあるだろう。常にセッティングされたままとはせずに臨機応変であることが求められる。
その様々な用途に対応するべく駆使されているのが、DADmanのモニタープロファイルだ。トークバックの信号、CDやPro Toolsからの2Mixなどの信号をどこに送るか、トークバックのボタンが押された際に、どの系統にDimがかかりハウリングを防止するかなど、すべての要望にDADmanは応えてくれている。たとえば、各部屋のソースをDADmanのモニタープロファイル機能で扱うことで、各所の音量レベルをすべてS4およびDADman上で操作ができることもメリットのひとつ。そのほか、各スタジオのコネクターボックス下にバウンダリーマイクが仕込まれておりバックトークも可能、コントロールルームでスタジオ内の様子を聞くこともできる。
📷マイクプリはGrace Design m108を採用、その左には708S1の子機。
📷デスク左下のラックには最大7.1ch対応となるTASCAMのBlu-rayプレイヤーBD-MP1やStudio Equipment / 708S1の親機が収められている。
なお、今回はスタジオイクイプメント社のコミュニケーションシステムを用いて構築されているが、S4との連携はMTMのGPI/O機能にて連動ができるよう設定された。マルチチャンネルのオーディオソースをトークバックボタンなどでどのようにDimをかけるかなど、様々な制御をS4のGPI/O機能で可能にできるシステムとしている。Studio Equipment / 708S1のトークバックボタンが押された制御信号をS4が受け取り、DADmanのモニタープロファイルの機能にあるTB Dim機能を働かせることにより、スピーカーなどのDimがかかる仕組みだ。
また、校内にはDante用の回線が張り巡らされており、MTRX llに標準で搭載されているDanteポートを用いて、別フロアの7階・ドリームホールや1階・サブコントロールルームでの収録も可能となっている。B / Cサブがある4階にはAスタジオやラジオスタジオもあり、各スタジオとのDante信号のやりとりも可能となっている。
MTRX llはスタジオの将来を描ける
今回、MTRX llが採用された理由は他にもある。MTRX llが持つ大きな特長である優れた拡張性だ。現状の入出力は必要最小限の拡張カード構成にはなっているが、ここへDAカードを追加することにより容易にイマーシブ対応が可能となり、今後の授業をイマーシブサウンドに対応させていく構想も実現可能だ。また、モニターコントローラーとしての機能もDADmanのモニタープロファイル機能により、高価なイマーシブ対応のハードウェアモニターコントローラーなどを導入せずとも実現が可能となる。イマーシブのミックス環境とレコーディング機能のどちらにも対応できる機材は数少ないのではないだろうか。
📷今回のスタジオを監修した有限会社テーク・ワンオーディオ Sound Engineer 田中 貢 氏(右)、MasteringEngineer 中西 祐之 氏(左)。
Avid S4とMTRX llの導入で柔軟性高いシステムとなったコントロールB / Cスタジオ。今後もイマーシブ対応のみならず放送業界では技術の進歩や視聴者のニーズが常に変遷していくことだろう。そのような業界の動向に沿いながら実習環境を充実させていくためのベースとなる骨格がいまここに整えられた。また、録音関連以外の授業にも対応できるそのフレキシブルさは、同校が抱える幅広いカリキュラムに対する最大公約数とも言えるだろう。
*ProceedMagazine2024号より転載
Event
2024/09/06
【9/27(金):Rock oN Umeda開催】RTW Presents “TouchControl 5 Meets ATMOS” Atmosミックスの第一人者がナビゲート!革新的コントローラーによるモニタリング
Dante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラー『RTW TouchControl 5』をフィーチャーしたセミナーイベントを弊社Rock oN Umedaにて開催いたします。
最大22.2chのモニターコントロールを実現する完全イマーシブ対応のスタンドアローンモニター・コントローラーである『RTW TouchControl 5』。測定器メーカーとして歴史を紡いできたRTWらしい高度なメータリング機能は、ミキシング環境に何をもたらすのか?このイベントでは、サウンドデザイナーの染谷和孝氏によるDolby Atmosミックスにおいて重要なモニタリングについてのトークに加え、梅田店に新たに誕生したUnlimited Studioの7.1.4ch環境にて、イマーシブミキシングに関してのスペシャルセッションも。新しくなったRock oN梅田店でのセミナー!是非とも奮ってご参加ください。
さらにさらに!セミナー参加者にはRock oN梅田店にてTouchControl5が10%OFFで購入できるクーポンコードをプレゼントいたします!
お申し込みはこちら
イベント概要
日時:2024年9月27日(金)
OPEN:16:30 START:17:00
場所:Rock oN Umeda 大阪府大阪市北区芝田 1 丁目 4-14 芝田町ビル 6F
ナビゲーター:染谷和孝 氏(サウンドデザイナー)
参加費:無料
参加特典:Rock oN 新梅田店 店頭にて、TouchControl 5 を10%OFFで購入できるクーポンコードをプレゼント!
主催:ビーテック株式会社
協力:Rock oN Umeda、ROCK ON PRO
RTW TouchControl 5
TouchControl 5はDante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラーです。
RTWが長年培ってきた放送クオリティのモニターコントローラーで、直観的に操作できる5″のタッチスクリーンとデスクトップの貴重なスペースを無駄にしないコンパクトサイズとなっています。もちろんRTWの誇るSPLを含む正確なメータリングとビルトインされたマイクによる環境設定も可能です。
・Dante® Audio over IPネットワークを使用したモニタリング
・SPL測定とトークバック用にマイクロフォンを搭載
・プレミアムPPM、トゥルーピーク、VUのメーター表示
RTW / TouchControl 5
¥ 654,500 (本体価格:¥ 595,000)
Rock oN eStoreでの購入はこちら!
ROCK ON PROでの見積もり依頼も
問い合わせフォームからどうぞ!
ナビゲーター:染谷和孝 氏
株式会社ソナ 制作技術部
サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。
お申し込みはこちら
Broadcast
2024/09/06
日本初全館フルIP化!オールIP放送局が与えるインパクト〜テレビ大阪株式会社〜
この春、新局舎へと移転を行うテレビ大阪。旧局舎の隣の新築ビルという最高の条件での移転である。新局舎への移転ということもありマスターからすべての設備を一新、これを機に局内のオールIP化を行っている。副調整室のシステムを中心にオールIP化のメリット・デメリット、実際にシステム設計を行ってみての課題点、今後に向けた取り組みなど取り上げていきたい。
マスター、サブ、スタジオのすべてをIP化
在阪のテレビ局各局が新局舎への移転を完了させる中、大阪で一番古い局舎となっていたテレビ大阪。10年ほど前から移転の話は出ていたということだが、具体的なスタートは2020年ごろから、およそ4年をかけて移転更新が行われている。今回、IPソリューションとして採用されているST-2110の実製品のリリースが見られるようになってきたのが2019年ごろだと考えると、まさにST-2110が次世代のMoIPの盟主となることが見え始めたタイミングだと言える。数年早ければ、オールIP化へ踏み切ることはなかったのではないかとも想像してしまうような、絶好のタイミングで更新計画が始められたということになる。
今回の移転工事ではマスター、サブ、スタジオのすべてがMoIP ST-2110で接続されIP化。さらには、局内のいたるところにST-2110のポケットを設け、どこからでも中継が行えるように工夫が行われている。従来であれば、映像・音声・制御・インカムなど様々な回線を各所に引き回す必要があるため、なかなか多数の場所にポケットを設けることは難しかったが、1本のネットワークケーブルで複数回線、かつ双方向の伝送を行うことができるIPネットワークは、多くの場所への回線引き回しを容易にしている。
オールIPベースでの放送システムへ
📷天満橋側の大阪中心部に新しく誕生したテレビ大阪新社屋。幾何学模様を描くファサードが目を引く。エントランスにももちろん、ST-2110の回線が引かれておりここからの中継も行える。
今回のオールIP化の導入に至る経緯にはストーリーがある。TXN系列6局のうち4局合同でマスターの更新を行うという計画が同時期に立ち上がった。これは、系列局で同様のシステムを一括発注することで導入コストの削減と相互運用性の向上を目指すという大規模なプロジェクト。この計画のひとつのテーマとして「IP化されたマスター」というポイントがあった。いまの時代に更新をするのであれば、将来を見越してIPベースでのシステム更新を行うことは必然であったということだ。ちなみに、合同でIPマスター更新を行ったのは、テレビ北海道、テレビせとうち、テレビ九州、そしてテレビ大阪の4局である。すでに他3局ではIPマスターへの更新が完了しており実際に稼働もなされている。
テレビ大阪は、新局舎への移転タイミングでの導入ということもあり、運用は新局舎へのカットオーバーのタイミングからとなる。そして、テレビ大阪はサブ・スタジオなどを含めた一括更新となるため、オールIPの放送局となった点がサブなどは従来設備で運用し順次IP化への更新を待つ他の3局と異なるところ。実のところ、テレビ大阪では当初サブ・スタジオに関してはSDIベースの映像とアナログベースのオーディオを用いた従来システムでの導入を検討していたということだ。しかしながら、系列局合同でIPマスターを導入するというのは大きな契機。現場としては、いまだ実績の少ないIPベースのシステムに対して抵抗感がなかったわけではないが、このタイミングで従来システムを組んでしまうと「最後のベースバンドシステム」となってしまう恐れもある。マスターも含めたオールIP放送局として日本初の試みにチャレンジするのか?最後のレガシーとなるのか?社内での議論が続けられたことは想像に難くない。
IPベースのメリットを活かした制作体制
📷音声卓は36Fader の Calrec Argo-S。モジュール構成となるこの省スペースに機能が詰め込まれている。
今回の移転更新では、2室の同一システムを備えたサブと、大小2部屋のスタジオが新設された。旧局舎と比べると1部屋ずつコンパクトな体制にすることができている、IPベースとしたことの効能が現れた格好だ。まずは、スタジオをそれぞれのサブから共有したり、システムの変更もプリセットを呼び出すだけで完了したりと各部屋の稼働効率の向上が見込める。また、これまではパッチ盤で実際にケーブルを接続したりといった物理的な切り替え作業も多かったが、想定されるクロスポイントを事前にプリセット化しておけば、これまでとは比べ物にならないくらい素早く変更が確実に行えるようになる。IPベースであれば規模をとりまとめてしまったとしても充分に従来業務への対応可能であるという判断に至ったそうだ。
📷2部屋目となる副調整室。各コントローラーがひと回りずつ小さいものになっているが、システム構成は同一のシステムとなっている。片方のシステムを覚えれば両部屋とも使えるようになるよう工夫が随所に行われている。
IP化における最大の課題は「遅延」である。信号が機器を経由するたびに必ず発生するバッファー、IP伝送を行うにあたり避けては通れない必要悪のような存在だ。収録、ポストプロであれば遅延を吸収する余地もあるが、生放送のようなライブプロダクションにおいては問題となるケースも多い。わかりやすい部分で言えば、返しのモニターが挙げられる。ベースバンドであれば各機器の処理遅延のみで済んでいたものが、IPベースではバッファーによる遅延が加わり、最低でも2〜3フレームの遅延が生じてしまう。返しモニター専用にスタジオ内にベースバンドのサブシステム(PAでいうところのステージコンソールのような発想)もあったが、せっかくオールIPに踏み切るのにそれでは意味がないということになり、スイッチャーの一番遅延量の少ない経路での出力を戻しにするということでまずは運用を開始してみることとなった。お話をお聞きした時点では運用開始前であったため、まさに今後の運用の中で適切なワークフローを見つけていくべきポイントだと言える。
従来システムの柔軟性とIPベースの融合
それでは、サブに導入された音声ミックスのシステムを見ていきたい。放送局のシステムとしては驚くほど機材量が少ないということが一目でわかる。スタジオフロアからの回線は基本的にアナログで立ち上がってきており、ワイヤレスなどのレシーバーからはDanteが採用されている。フロアの回線はラックのCalrec AE5743(アナログIP Gateway)でAoIPへと変換されコンソールへと立ち上がる流れ。
ミキサーのミキシングエンジンは、Clarecの最新モデルであるImPulse1が採用されている。これはまさに導入ギリギリのタイミングでリリースとなったIPベースのミキシングエンジンで、たった1Uというコンパクトな筐体で標準で304chのプロセッシングパスという十分なパワーを持つ。ちなみに、ImPulse1は追加ライセンスの購入で最大672パスまで拡張が可能である。これにIOフレームを組み合わせDante、アナログIP Gateway、ST-2110-30それぞれの入出力を行っている。このミキシングエンジンは二重化され、同一仕様のモデルが2台導入された。フレーム自体が1Uとコンパクトなため、ハードウェア・リダンダンシーを取ったシステムとは思えないほどコンパクトにまとまっている。コンソールは、Clarecのこちらも最新モデルであるARGO Sが導入だ。モジュール構成のコンソールで、柔軟な拡張性と構築の自由度を持つ最新サーフェスである。
📷最上段でEthernetケーブルが接続されているのが、副調整室のシステムコアとなるCalrec ImPulse1。たった1Uの筐体で標準で304chもの信号を処理することができ、2台のコアで冗長化が図られている。その下の緑の3Uの機器がCalrec AE5743、Mic / Line 32in / outのIOボックスだ。やはり、オーディオの出入り口としてアナログ音声がなくなることはしばらくないだろう。コネクタの実装などの必然性もあるがコアと比べると大きな機器となる。
当初はDanteのステージボックスをフロアに置き、インプットの回線をすべてDanteで運用するというアイデアも出ていたということだが、バックアップの意味も含め最低限のアナログを残すということを念頭にシステムを構築、ミキシングコンソールでダイレクトにアナログ信号を受けたほうが使い勝手も良いという結論に至ったということだ。やはり、マイクプリのリモートなどのことを考えると理にかなっていると言える。アナログ、AES/EBUといった従来のシステムと同様の柔軟性とIPベースの融合。どこからIPベースの信号とするかというのはシステム設計者の腕の見せどころとなっていくだろう。その最終形態は入口から出口までのオールIPになるのであろうが、マイクやスピーカーというアナログ変換器が最初と最後に存在するオーディオの世界では、なかなかアナログを完全に排除するということは難しい。
📷音声のラックは2本だが詰めれば1本にまとまりそうな程の構成。これでシステムの2重化も達成しているのは驚きである。
ご覧の通り、非常にコンパクトにまとめられたシステム。実際、コンバーターIOフレームなどが主な機器で番組に合わせたシステムの変更を行おうと思い立ったら、Calrecのプリセットを読み替えるだけで大抵のことには対応できる。別スタジオの回線をインプットとして取るのも、IOシェアをしているので自由にアサイン可能だ。このようにシステムがコンパクトとなることで、その設定変更は今まで以上に簡単に素早く行えるようになる。サブを1部屋減らしてもこれまで通りの運用が可能と判断する理由もここにあるわけだ。
逆にIP化のデメリットとしては、信号が目に見えないということを挙げられていた。1本のEtherケーブルの中ではどこからの信号がどのような順番で流れているのか、誰かが知らないうちにクロスポイントを打ち替えたりしていないだろうか、確かに目に見えないところの設定が多いため、シグナルを追いかけるのが難しくなっている。慣れるという部分も大きいのだが、1本のケーブルにどのような信号が流れているのかを簡単に可視化する方法は早期に実現してもらいたい部分でもある。なお、テレビ大阪では事故防止としてクロスポイントの大部分をロックして変更不可とし、確実な運用を目指すとのことだ。
また、Dante とST-2110-30 を併用している理由としては、利便性を考慮してのこと。ワイヤレスマイクのレシーバーなど対応製品の多さでは、Danteに分がある。これまでも使われてきた機材の活用も含め、オーディオのインプット系統ではDanteを使うよう適材適所でのシステムアップが行われているということだ。実際のところとしてはST-2110-30(Audio)の遅延量は、Dante以下の値に設定することもできる。しかし、映像回線として使われているST-2110(Video)の遅延量が大きく、それに引っ張られてオーディオも大きな遅延量となってしまうということだ。
📷左)紫色の機器がPTP v1 のグランドマスター。この機器を入れることでPTP v1 のDante ネットワークの安定性を高めることに成功している。右)もう一部屋のラックがこちら。AE5743は無いが、モジュラーユニットにアナログIOを準備しさらにシンプルな構成。基本的なシステムアップは、同一であることが見て取れる。
SoundGrid Sever、新たな業界標準機へ
さらに収録用のPro Toolsも用意されている。CalrecにはSoundGridの入出力を行うI/Oが準備されている。外部エフェクターとして導入されたSoundGrid Serverとともに、Pro ToolsもCoreAudio用のSoundGrid Driverで信号を受取り収録が行えるようになっている。もちろん、Pro Toolsからの再生もミキシングコンソールへと立ち上がる。これもIPベースならではの柔軟性に富んだシステムである。Pro ToolsのシステムはMacBookで準備され、2部屋のサブの共有機材となっている。常に2部屋で必要でないものは共有する、IPベースならではの簡便な接続環境が成せる技である。
📷外部エフェクターとして導入されたWAVES SUPERRACK。低遅延でWAVESのプラグインを使うことができるこのシステム。Liveサウンド、Broadcastの現場では重宝されている。
ここで導入されたSoundGrid Severは外部エフェクターとしてWAVESのプラグインが使えるというスグレモノ。外部のマルチエフェクターが絶滅危惧種となっている今日において、まさに救世主的な存在。WAVESだけではなくVSTについても動作する製品の情報が届いているので、こちらも業界標準機となる予感がしているところだ。こだわりのあのリバーブを使いたい、などという要望はやはり多いもの。もちろんリコール機能もしっかり備えられており、安心して使用できるプロの現場ならではの製品となるのではないだろうか。
IPシステムでのリスクヘッジ
サブとしてのメイン回線はすべてST-2110に集約されているが、インカムの回線だけは別となっている。インカムはST-2110にも対応したClearCamの製品が導入され、ST-2110での運用を行っているのだが個別のネットワークとしている。これはトラブル時の切り分けや、従来型のシステムが導入されている中継車などとの相互運用性を考えてのことだという。すべて混ぜることもできるが、敢えて切り分ける。こういった工夫も今後のIPシステムでは考えていくべき課題のひとつ。集約することによるスケールメリット、トラブル時の切り分け、運用の可用性、多様なベクトルから判断を行い決定をしていく必要があると改めて考えさせられた。
今後についてもお話を伺った。オールIPとしたことで、今後は中継先との接続もIPベースへとシフトしていきたいということだ。まずは、今回導入のシステムを安定稼働させることが先決ではあるが、IPの持つメリットを最大限に活かしたIPベースでの中継システムの構築や、リモートプロダクションにもチャレンジしていきたいとのこと。また、1ヶ月単位でのスポーツイベントなど、ダークファイバーをレンタルしてリモートプロダクションを行ったりということも視野に入れているということだ。まずは、局内に張り巡らした中継ポイントからの受けからスタートし、徐々に規模を拡大していきたいとのこと。IP伝送による受けサブ、リモートプロダクションというのは今後の大きなトレンドとなることが予想される。こういった取り組みも本誌で取り上げていきたい。
📷左からお話を伺ったテレビ大阪株式会社 技術局 制作技術部 齊藤 智丈 氏、有限会社テーク・ワン オーディオ 代表取締役 岩井 佳明 氏
まさに次世代のシステムと言えるオールIPによるシステム構築の取り組み。課題点である「遅延」に対してどのように対応し、ワークフローを構築していくのか。実稼働後にもぜひともお話を伺いたいところだ。利便性と柔軟性、このポイントに関してIPは圧倒的に優位であることに異論はないだろう。スケールメリットを享受するためには、できうる限り大規模なシステムとするということもポイントのひとつ。これらを併せ持ったシステムがテレビ大阪にはあったということだ。この新局舎への移転というタイミングでの大規模なST-2110の導入は、今後を占う重要なモデルケースとなることだろう。すでに全国の放送局から見学の問い合わせも来ているということ。こういった注目度の高さからも今回導入のシステムが与える放送業界へのインパクトの強さが感じられた。
*ProceedMagazine2024号より転載
Media
2024/09/03
よくわかるAoIP臨時特別講座!「AES67ってなに?」〜AoIPのいま、未来を知る。〜
AoIP、ネットワークオーディオを採用した放送局やレコーディング現場では、従来の(メタル)ケーブルからイーサネットケーブルに取って代わり、IPパケットで音声信号を伝送することで大きなメリットを実現していますが、ご存知のとおりでいくつもの仕様やプロトコルが存在していて、一般ユーザーには若干わかりにくい状況であることは確かです。そして、購入したばかりだというAoIPであるAES67対応の機材を手に「これをしっかり知り尽くしたい!」と意気込んでいるのが今回の講座にやってきたMクン。そんなMクンにROCK ON PRO 洋介がネットワークオーディオの世界を紐解きます。
まずは、AoIPってなに?
Mクン:Dante、RAVENNA、AVB、いくつものオーディオネットワーク規格があって制作現場でも目にすることが多くなってきたんですが、その中でもAES67についてお話を伺いたいんです。
ROCK ON PRO 洋介:なるほど。ところでなんでまた今日はAES67?
Mクン:実はNeumannのスピーカー KH 150 AES67モデルとオーディオインターフェースのMT 48を購入したんです。AES67に対応した製品なんでせっかくなら使いこなしてAES67の恩恵に授かりたいな、と。まずは「AoIPってなに?」というところから教えてもらえませんか?
洋介:了解しました! AoIPは「Audio over Internet Protocol」の略で、TCP/IPベースのイーサネットを使ってオーディオ信号をやりとりする規格です。AoIPのメリットとしてどういうことがあるかというと、信号分配の際に分配器を必要とせず、汎用のイーサネットハブで1対多数のオーディオを含む信号を簡単に送れることです。もうひとつは、1本のケーブルで多チャンネルを送れることですが、多チャンネルオーディオ転送規格に関してはMADIがありますし、またずっと以前からはADATがありますよね。その中でもAES67が優れている点は、回線の通信速度が現在主流となっている1ギガビットイーサネットであれば256ものチャンネルを転送可能だということです。
Mクン:少ないケーブルで多チャンネル送れるというのは、経済的にも、設定や設置の労力的にもメリットですよね。
洋介:実は挙げられるメリットはまだあって、1本のケーブルで「双方向」の通信を行えるのも大きいメリットです。イーサネットケーブル1本に対し、In / Outの概念がなくなるので繋ぎ間違えもなくなりますよね。あとDante Connectが登場して、クラウドネットワークを介した世界中からの接続ができるようになってきているので、遠隔地とのやりとりも特殊な環境を必要とせず汎用の製品やネットワークを使えることでコストの削減を図ることができます。少し未来の話をすると、ダークファイバー(NTTが保有する光回線のうち使用されていない回線)を使えば、汎用のインターネット回線の速度を超えたデータ転送が遠隔地間でもローカルエリア上として行える可能性があります。例えば、東京と地方のオフィスを繋ぐ場合に物理的に離れていても両拠点は同じネットワーク上にいる状態にすることができてしまうんです。
Mクン:ダークファイバーを使って遠隔運用しているところはあるんですか?
洋介:ありますよ。放送業界が先行していて、離れた支局間でダークファイバーを引いている事例があります。例を挙げると、F1の放送では鈴鹿サーキットなど世界中のサーキットとドイツのデータセンター間でダークファイバーを繋げ、世界規模で実況放送を実現しています。では、ここからはAES67制定の経緯について話していきましょう。
📷身近な存在のオーディオi/FやスピーカーでもAES67対応製品がリリースされている。Mクンが購入したというこのKHシリーズ(右)とMT 48(左)の接続ではDAコンバーターも不要となるためシンプルなシステム構成に。
AES67策定の経緯
洋介:AES67の元になった規格は、2010年にMerging Technologies社とLAWO社が立ち上げた「RAVENNA」です。このRAVENNAをベースにして、AES(Audio Engineering Society)がAoIPの規格として制定したのがAES67です。AES67の規格はRAVENNAの仕様により汎用性を持たせる方向で策定されています。例えば、レイテンシーの最小値を大きくしたり、ストリーム数に関してはRAVENNAが最大128chに対し、AES67は8chまでといったように仕様を緩い方向に制定して汎用性を持たせています。
その後、SMPTE ST2110-30(ST2110は映画テレビ技術者協会(SMPTE)によって開発されたメディアをIP経由で移動させるための規格)という規格のオーディオパケット部分としてAES67が採用されます。SMPTE ST2110は、映像パケットとオーディオパケットを別々に送信するのが大きな特徴です。もうひとつ前のVoIP規格にSMPTE ST2022というものがあるのですが、これはSDIの信号をそのままパケットにして送信します。そこからより現代的な新しいテクノロジーを組み込んだIP転送を実現しようという目的で策定されたのがSMPTE ST2110です。オーディオ部分に関していうと、ST2110-30が非圧縮での基本的なAES67互換規格であり、さらにST2110-31になるとメタデータまで含めた通信ができるようになりました。こういったST2110の拡張とともにAES67も今後拡大していくと予想されてます。
Mクン:AES67のサンプリングレートは48kHz固定となっていますが、これは今後変わっていくのでしょうか?
洋介:恐らくですが、48kHzという仕様で一旦固定されたままになるのではないでしょうか。放送業界においては、現時点で一般的に多く使われているのが24Bit / 48kHで、ハイサンプルの需要がほぼなく、それ以上のスペックは必要ないと判断されているようです。このようにRAVENNAから派生したAES67ですが、放送業界、映像業界をバックボーンにして成長を続けています。一方、RAVENNAとDanteの違いを話すと、TCP/IPの規格としてDanteの方が1つジェネレーションが古い規格を一部使用しています。その代表がPTPで、DanteはPTP(Precision Time Protocol)のバージョン1を用いていて、RAVENNAやST2110の基礎技術はPTPのバージョン2です。このバージョン1と2には下位互換がなく、実際は別物というくらい違います。同一ネットワーク上にお互いを流しても問題ないのですが、上位バージョンが下位バージョンの信号を受けることができません。現在の普及具合でいうとDanteのほうが多いのですが、こういったことからDanteを採用しているメーカーは将来性に関して危惧を始めているところがあると聞いています。
PTPバージョン1と2の違い
Mクン:そのバージョン1とバージョン2の違いとは何でしょう?
洋介:ネットワークプロトコルの技術的に複雑な話になるので、ここでは深く立ち入りませんが、単純に互換性がないということだけ覚えておいてください。このPTPですが、TCP/IP通信プロトコルとしてそもそもの大きな役割はクロック同期です。AoIPもVoIPも動作原理上バッファーが必要であり、それによりレイテンシーが必ず発生します。これはIP伝送のデメリットのひとつとして必ず話題に挙がることです。なぜバッファーが必要かというと、ネットワーク経路上にはネットワークインターフェイス、イーサネットスイッチなど多くのデバイスが挟まり、遅延が発生するのは避けることができません。
その事実への対処法として、バッファーへパケットデータを溜め込み、各パケットが送出されるタイミングの同期を行なってデータを出す、という同期のためのタイムスタンプの役割を行うのがPTPです。これは、ワードクロックやビデオクロックといった動作とは異なります。PTPでは各々のパケットに番号札を振って順番を決めるようなイメージで、そのバッファー分の遅延が必ず発生することになります。
Mクン:なるほど。では、オーディオのワードクロックでは精度が高い製品を使えば、一般的に音も良くなると思うんですが、PTPに関しては音質に対して影響するものなのでしょうか?
洋介:音質に影響しないというのが一般的な解釈です。RAVENNAの信号を受け、出力はアナログオーディオの場合の機材にもワードクロックが搭載されているわけで、AD/DAプロセッサーの動作はワードクロックで制御されています。つまり、IPデータの部分とワードクロックが作用する部分は完全に分離されていることになるので音質には影響しない、というのが設計上からの帰結です。現在の主流は、PTPとワードクロックを同時に出力するグランドマスター機能を持った機材を用いてシステム全体の整合性を取っています。
少し話が脱線しますが、AoIPにおけるレイテンシーの問題はグローバルなインターネットを越えても、依然存在し続けることになります。ただし、どれだけレイテンシーが大きくなったとしても、送信順が入れ違いになったとしても、届いたパケットの順番はPTPのタイムスタンプの順に並べられ、順番は変わらないわけです。
長遅延、インターネットを超えての伝送などの際には、このPTPのマスタークロックの上位の存在として、皆さんがカーナビなどでも恩恵を授かっているGPS衛星の信号を活用します。GPS衛星は地球の上空20,000kmに、常時24機(プラス予備7機)が飛行しています。GPS衛星は地球上どこにいても、遮蔽物がない限り6機が視界に入るように運用されています。そして、運用されているGPS衛星はお互いに時刻の同期が取られています。ということは、このGPSの衛星信号を受けられれば、世界中どこにいても同期された同一タイミングを得ることができるわけです。普段、何気なく車のカーナビを使っていますが、同期に関しては壮大な動作が背後にあるんです(笑)。
Mクン:宇宙から同期信号が届いているんですね!そういった先進技術は、今後私たちのような音声技術を扱う業界にも恩恵があるんでしょうか?
洋介:例えば、現在話題のイーロン・マスクが率いるスターリンク社(アメリカの民間企業スペースXが運用している衛星インターネットアクセスサービス)からのデータをPTPマスターとして受け取れるようになれば、もっと面白いことが起こるかもしれないですね。一方でデメリットを挙げるとすれば、やはりどこまでもレイテンシーがつきまとうという点ですね。オーディオの世界ではマイクやスピーカーといったアナログ領域で動作する製品がまだ大部分を占めるので、「信号の経路上、どのタイミングでAoIPにするか」というのはひとつの課題です。マイク自体でDante接続する製品も出てきていますが、ハイエンド製品はまだ市場に出てきてないですよね。これから期待したいところです。
AoIP、レコーディング現場への導入状況は?
Mクン:AoIPの導入は放送業界が先行しているそうですが、レコーディング環境への導入状況はどうなんでしょうか?
洋介:レコーディングスタジオに関してはこれから普及が始まるかどうかといった状況です。大きなスタジオになると設備が建設時に固定されているものが多く、変更する機会がなかなかないということが関係していそうです。また、別の理由としてパッチベイの存在もあるかもしれません。現状使っているレコーディング機器の接続を繋ぎ変えるにあたって、これまで慣れ親しんだパッチベイから離れたくない、という心理もありそうです。まあ、パッチケーブルを抜き差しするだけですからね。
スタジオにはアナログ機器がたくさん存在しますが、AoIPが本当にパワーを発揮するのは端から端までをIPベースにした場合で、ここで初めてメリットが生まれます。一部にでも従来のアナログ機器が存在すると、そこには必然的にAD/DAコンバーター(アナログとAoIPの変換機)が必要になるので、コンバーターの分だけコストが必要になってしまいますよね。Dolby Atmosをはじめとするイマーシブオーディオのような多チャンネルを前提としたシステム設計が必要スタジオには需要があると思います。
Mクン:AoIPでシステムを組む場合、Danteを採用するにしろ、ST2110を採用するにしろ、それに対応した機材更新が必要ですが、どのプロトコルを採用しても対応できるように冗長性を持たせたシステムの組み方は可能ですか?
洋介:システム設計は個別のネットワークとして組まれているケースが多いですね。本誌でも事例として紹介しているテレビ大阪様ではオーディオのフロントエンド(インプット側)はDanteですが、コンソールのアウトや映像のスイッチャーはST2110という構成です。従来の銅線ベースの環境に比べるとシステム図が驚くほどシンプルで、機材数もとても少なくて済みます。放送業界ではフルVoIP化の流れが来ていて、新局舎など施設を一新するタイミングで、副調整室やマスターなど、全設備オールIP化の設計が始まっています。SMPTE ST2110のイーサネットのコンセントを至るところに設置し、局内どこからでも中継ができるシステムが組まれています。
Mクン:そういった大規模な更新のタイミングであれば、既存のアナログ機器を一新したシステムにリニューアルできるメリットがありますね。
洋介:そうですね。未来を見据えてAoIPやVoIPシステムでリニューアルできる大きなチャンスですね。
AES67のメリット
Mクン:話をAES67に戻すと、Danteに比べてAES67のメリットはどんなことがあるんでしょうか? また、対応した製品がますます普及していきそうですが、今後のAoIPはどうなっていくのでしょう?
洋介:まず、Danteについては普及が進んでいるものの、先ほど話したPTPバージョン1の問題が依然として残ります。DanteにもAES67互換モードがすでに搭載されているのですが、Dante Network上のすべての機器をAES67互換モードで動作させることはできず、ネットワーク上の1台のみをAES67互換モードで動作させてゲートウェイとして使うということになります。言い換えると、AoIP / VoIPのメリットであるすべての機器が常に接続されているという状況を作ることが難しいということでもあります。これは、先にもお話したPTPのバージョンの違いにより生じている問題であり、一朝一夕で解決できる問題ではないでしょう。一方、RAVENNAはAES67の上位互換であり、SMPTE ST2110の一部でもあります。放送局など映像業界でのSMPTE ST2110の普及とともに今後導入が進むことが予想されます。音声のみの現場ではDanteが活用され、映像も絡んだ現場ではRAVENNA、というように棲み分けが進むかもしれませんね。
Mクン:私は「AES67 ニアイコール RAVENNA」という認識だったので、ST2110という存在がその先にあるというのは知りませんでした。
洋介:ST2110があってのAES67なんですよね。逆に言うと、ST2110を採用している映像メーカーはAES67対応だったりしますね。
Mクン:なるほど。私が購入したNeumannのオーディオインターフェイスMT 48はAES67に対応しているんですが、「RAVENNAベースのAES67」という表記がされていて納得がいきました。同じく購入したNeumannのスピーカー、KHシリーズもAES67に対応しているんですが、そのメリットはどんなことでしょう?
洋介:RAVENNAはAES67の上位互換なので、RAVENNAと書かれているものはすべてAES67だと考えていいです。一番大きいのはレイテンシーの問題で、AES67は最低1msでそれ以下は難しいんですけど、RAVENNAはもっと短くできます。KHシリーズとMT 48を組み合わせればDAコンバーターいらずになる、というのが大きなメリットです。システム的にもシンプルで気持ちいい構成ですよね。最近の製品の多くは、スピーカー自体でADしDSP処理してアンプ部分に送るという動作なんですが、それなら「デジタルのまんまで良くない?」って思うんですよね(笑)。シグナルとしてシンプルなので。
AoIP普及のこれから
Mクン:これからサウンド・エンジニアの方は音の知識だけでなく、ネットワークの知識も必要になってきそうな感じですね。
洋介:うーん、どうでしょう? まずはブラウザ上で設定するルーティングの仕方、クロスポイントを打つということに慣れるということで良さそうです。そこから先は我々のようなシステム設計、導入を担当する側が受け持ちさせていただきますので。実際、DanteでもRAVENNAやAES67でも基本的に設定項目は全部一緒なので、もちろんGUIの見た目は異なりますが、汎用のTCP/IPベースのイーサネットの世界なのでひとつ覚えれば他にも通じる汎用性があります。
今後、AoIPの普及はさらに進むでしょう。現在はまだシステムの範囲が1部屋で完結しているスケールなのでAoIPを用いるスケールメリットはあまりないのですが、これからさらに外へと繋がっていくと大きく変わっていくはずです。すにで汎用のインターネットで映像や音声がやりとりできる世界になり、グローバルなインターネットで放送クオリティーの伝送が可能となっています。
放送局の場合だと、これまでサブでしか受けられなかった中継回線などが、イーサネットケーブルを引けばMA室でも受けられるようになります。こうなれば受けサブとしてMA室を活用するという使用用途の拡張が見込めます。従来は音声信号に加え、同期信号もすべてケーブルを引っ張らなければいけなかったものが、イーサネットケーブル1本で対応できるようになるのは革新的です。さらに、光ファイバーを導入できれば、同じケーブル設備を使って通信速度、使用可能帯域をアップグレードしていくこともできます、従来のメタル銅線では実現できないことですよね。
Mクン:今日は色々と興味深い話をありがとうございました!
いかがだったでしょうか、「なるほど〜!」連発となったMクンはAES67がどのようなものなのか、そしてAoIPのメリットや抱えている課題点など、オーディオのIP伝送がいま置かれている現状もしっかりと把握できたようです。これからの制作システム設計における大きなキーワードとなるAoIP。もちろんそのメリットは従来のワークフローを大幅に塗り替えていくでしょう、そしてそのシステムが与えるインパクトたるや如何なるものか!?その進展から目が離せませんね!
*ProceedMagazine2024号より転載
Media
2024/08/30
RIEDEL製品が支えるF1サーカスの舞台裏〜MediorNetで結ばれたIPグローバルネットワーク〜
IP伝送が拡げる可能性は我々が位置する音響の分野のみならず多岐にわたる。音や映像が必要とされる分野であればIP伝送によって従来のシステムにとって代わるワークフローのブレイクスルーが起こり得る。そのひとつが今回取材を行ったF1サーカスとも呼ばれる、世界規模のスポーツイベントにおけるRIEDELの取り組みだ。本誌では以前にもご紹介をしたが、あれから5年を経てそのバックボーンを支える技術、ソリューションはどれほど進化したのだろうか。
レースに欠かせない通信のマネジメント
2024年のF1カレンダーは大きく変わり、日本グランプリが例年の秋の開催から春開催へと移動された。これまでであれば、秋のレースはその年のドライバーチャンピオンが決まるころのレースであり、テクニカルサーキットして世界にその名を馳せる鈴鹿サーキットが最後の腕試しという側面もあったのだが、今年は桜の季節に開催されシーズンも始まったばかりということもあり、パドックは終始和やかなムードに包まれていた。今回取材に入ったのは木曜日。F1は金曜日に練習走行、土曜日に予選、日曜日に決勝というスケジュールとなっており、木曜日はレースデイに向けての準備日といったところ。その準備日だからこそ見ることができるレースの裏側も多く充実の取材となった。まずは、取材協力をいただいたRiedel Communicationsの各位に感謝を申し上げたい。
準備日とはいえ鈴鹿サーキットは、レースに向けた準備がしっかりと進められており、木曜日は恒例のパドックウォークが実施されるということで多くの観客が来場していた。パドックウォークは、レースデイには立ち入ることのできないパドックやメインストレートを歩くことができるイベント。入場券もレースが行われない日ということもあり安く設定されており、さすがにガレージの中までは入れないものの、レースでピットクルーたちがタイヤ交換などを行うその場に立てる、ということでこれを目当てに来場される方も多数。また、この日はメインスタンドも開放されていてサーキットの好きなところに行けるのもパドックウォークの魅力。もちろん、レースデイの高揚感まではないものの、鈴鹿サーキットでF1の雰囲気を味わいたいということであれば、この木曜日の来場にも価値がある。
📷レース前の木曜日に開催されたパドックウォーク。メインストレートも一般開放され賑わいを見せるこの写真の中に、RIEDELの回線敷設スタッフが数日間かけて仕込んだアンテナほかの機材も多数あるのがお分かりになるだろうか。既に木曜のこの段階で準備万端となっているわけだ。
前置きが長くなってしまったが、まずRIEDELのF1における立ち位置を確認しておこう。RIEDELはFIA(F1を主催する国際自動車連盟)から業務依頼を受けて、F1における通信全般をマネージメントしている。通信全般とひとことで言ってもF1会場で取り扱われている通信は膨大な量となる。各チームのインカム、オフィシャルからの無線連絡、ドライバーとのコミュニケーションなどの音声通信。それに、各車6台ずつの車載カメラ映像、審判用にも使われるコースの監視用のカメラ(鈴鹿サーキットでは20台以上がコース脇に設置された)、F1レースカーから送られてくるテレメトリーデータ(エンジン情報、燃料残量、タイヤ温度、ドライバーの操作など車に関するデータ)など多種多様。もちろん、その種類の多さから必然的にデータボリュームも非常に大きなものとなる。
コミュニケーションのメッシュを運用する
📷インカムがずらりと並んだピット内。よく見るとスタッフ個人ごとに名前が記されている。
なぜ、RIEDELがF1の運営に関わるようになったのかという部分にも触れておきたい。RIEDELはMotorola製トランシーバーのレンタル会社としてスタートした。単に機材をレンタルするということだけではなく、イベント会場などで活用されるトランシーバーのグループライン設計や、運営、無線電波の管理なども行い今日に至っている。
F1会場でも各チームへ120台前後のトランシーバーがレンタルされ、その管理運営を行っているということだ。残念ながらチームスポンサードの兼ね合いもあり全20チーム中17チームへの提供となっているとのこと。本来であれば全チーム一括での運営が望ましいのは確かであるが、他の無線機器メーカーなどがスポンサーとなってしまった場合はその限りではないようだ。しかしながら、RIEDEL以外のトランシーバーを使用しているチームの回線もRIEDELがデータを受取りして一括での運営管理を行っていることには変わりない。そのため、各チーム内でのグループラインなどの構築のためにRIEDELから最低1名ずつのスタッフが帯同しているそうだ。これは、それぞれのチーム事情を汲み取り、最適な運用を行うと同時に、チーム間の情報機密などへも配慮した対応だと思われる。
運用は大きく変わらないものの、トランシーバー自体についてはRIEDELのベストセラー製品でもあるBoleroの導入が進んでいるということだ。従来のトランシーバーでは2チャンネルの送受信。チャンネル数がさらに必要なマネージャークラスのスタッフは、2台のトランシーバーを併用し4チャンネルの運用を行っていて、腰の両サイドに2台のトランシーバーをぶら下げたスタイルは、チームの中心人物である証とも言えたのだが、Boleroを使えば1台のベルトパックで6チャンネルの送受信が可能となる。やはりこれば評価が高い、各チームからBolero導入へのリクエストも多く寄せられているそうだ。
各チームで多少の違いはあるのだろうと想像するが、現場で話を聞いたインカムの送受信先を図にして掲載しておく。ドライバーと会話ができるスタッフは最低限とし、レーシングディレクター(監督)がドライバー、ピットクルー、ガレージのそれぞれへ指示を行うことでレースを進行するというのが基本。そのやりとりを聞くだけのスタッフもいれば、発信を行えるスタッフも必要となり、複雑にコミュニケーションのメッシュが構築されている。
さらに、サーキット外のスタッフもこのコミュニケーションに参加する。世界各国にある各チームのヘッドクォーターへと必要な回線が送られ、車の情報などを監視して現場のスタッフへ適切な指示がリアルタイムに出されているということだ。また、回線が送られるのはヘッドクォーターだけではない。例えば、Visa Cash App RB Formula One Team であれば、ヘッドクオーターがイタリアのファエンツァ 、エンジン開発拠点は日本のホンダ・レーシングといったように分かれており、それぞれの国で別のコントロールルームからエンジンの様子などを監視している。
取りまとめると、各チームではサーキットに80名程度、それ以外のヘッドクオーターや各開発拠点に100名以上という人員体制でレースマネージメントが行われているということ。1台のレーシングカーを走らせることには想像以上に数多くのスタッフが関わっている。なお、RIEDELは各チームのヘッドクオーターまでの接続を担当しており、ヘッドクオーターから先の各開発拠点への通信はそれぞれのチームが独自にコミュニケーション回線を持っているということだ。
年間24戦を支えるRIEDELのチーム編成
F1の運営に関わっているRIEDELのスタッフは、大きく3つのチームに分けられている。1つが実際のレースデイの運営を行うテクニカルチーム。それ以外の2チームは、事前に会場内でのワイヤリングを主に請負う回線敷設チームだ。テクニカルチームは基本的に水曜日の現地入り、木曜日にチェック、金曜日からのレースデイという流れだが、回線敷設チームは決勝日の10日程度前に現地に入り、サーキット各所へのカメラの設置、無線アンテナの設営など機材コンテナが到着したらすぐにチェックが行えるよう準備を行っているということ。また、決勝が終わったら撤収作業を行って速やかに次のサーキットへ向かわなければならない。レースは3週連続での開催スケジュールもある。よって交互に世界中を飛び回れるよう回線敷設は2チームが編成されているが、それでもかなり過密なスケジュールをこなすことになる。
ちなみに、すべてのケーブル類は持ち込みされており、現地での機材のレンタルなどは一切行われない。これは、確実性を担保するための重要なポイントであり、今後も変えることはありえないと言っていたのは印象的。質実剛健なドイツ人らしい完璧を求める考え方だ。
セーフティーカーに備えられた通信システム
今回の取材は木曜日ということもあり、レースカーの走行はなくセーフティーカーによるシステムテストが行われていた。セーフティーカーには、F1のレースカーと全く同様の車載カメラ、テレメトリー、ラップ等の計測装置が搭載されており、これらを使って各種テストを行っている。なんと、今回はそのセキュリティーカーに搭載されたこれらの機器を見せていただく機会を得られたのでここで紹介しておきたい。
F1で今年使われているセーフティーカーはAMG GT。そのトランクルームに各種データの送受信装置、データの変換装置が備え付けられている。こちらと同じ機器がレースカーにも備えられ、レースカーに車載された6台ものカメラの映像データも車上で圧縮され無線で送信されている。アンテナもインカム用のアンテナと、それ以外のデータ用のアンテナ、さらには審判用の装置、これらもレースカーと同様だ。
これらはF1レースカーの設計の邪魔にならないようそれぞれが非常にコンパクトであり、パッケージ化されていることがよく分かる。ちなみに、トランクルームの中央にある黒い大きなボックスは、セーフティーカーの灯火類のためのボックス(赤色灯等など)であり、こちらはレースカーに搭載されず、その左右の金色だったりの小さなボックス類が各種計測装置である。右手の金色のボックス類がカメラの映像を圧縮したりといった映像関連、左側がテレメトリーとインカム関連だということだ。
📷システムテストに用いられていたセーフティーカーの様子。トランク内にレースカーと同様の機材が積み込まれている。ルーフ上には各種アンテナが据えられており、そのどれもがレースカーに搭載することを前提にコンパクトな設計がなされている。
航空コンテナの中に設置されたサーバーラック
📷ラックサーバーが収められているという航空コンテナ。このコンテナごと世界各地のF1サーカスを巡っていく。
それでは、実際に用いられている通信の運用について見ていこう。それぞれのチームの無線チャンネル数は各チーム6〜8チャンネル前後、そこへオフィシャルの回線やエマージェンシーの回線などを加え、サーキット全体では200チャンネル前後の無線回線が飛び交っている。これらの信号はすべてIP化され、ネットワークセンターと呼ばれるバックヤードのサーバーラックへと送られている。これらすべての回線は不正のチェックなどにも使用されるため、全回線がレースデイを通して記録されているとのこと。また、サーキットに持ち込まれたサーバーでの収録はもちろん、RIEDEL本社にあるサーバールームでも併せて収録が行われるような仕組みになっている。なお、サーキットに持ち込まれたサーバーはあくまでもバックアップだそうだ。レース終了とともに次の会場への移動のために電源が落とされパッキングが始まってしまうからである。
2019年にもこのネットワークセンターのサーバーラックを見せてもらったのだが、このラックに収まる製品は大幅に変わっていた。まず取り上げたいのは、インカムの総合制御を行うための機器がAll IP化されたことに伴い、最新機種であるArtist 1024の1台に集約されていたことだ。従来の最大構成機種であったArtist 128は、その機種名の通り128chのハンドリングを6Uの筐体で行っていたが、Artist 1024はたった2Uの筐体で1024chのハンドリングを可能としている。このスペックによって予備回線のサブ機までをも含めてもわずか4Uで運用が事足りてしまっている。ラックには従来型の非IPの製品も収まっているが、これらは機材の更新が済んでいないチームで使用されている機器の予備機だということ。3本のラックの内の1本は、予備機材の運搬用ということになる。
他には、テレメトリー・映像データ送信用のMediorNet、多重化された電源、現地のバックアップレコーディング用のストレージサーバーといったところ。前回の取材時には非常に複雑なシステムだと感じたが、2024年版のラックはそれぞれの機器がシンプルに役割を持ち動作している。それらの機器のことを知っている方であれば、ひと目見て全貌が(もちろん、概要レベルだが)把握できるくらいにまでスリム化が行われていた。
📷数多くのインカム回線をハンドリングするArtist 1024。見ての通りArtist 1024を2台、わずか4Uでの構成だ。
これらのラックは、飛行機にそのまま積めるように航空コンテナの中に設置されている。コンテナは2台あり、回線関連の機器が収められたコンテナと、もう1台がストレージサーバー。航空輸送を行うということで、離陸、着陸のショックに耐えられるようかなり厳重な仕掛けが行われていたのも印象的。コンテナの中でラックは前後方向に敷かれたレールの上に設置され、それがかなりのサイズのダンパーで前後の壁面と固定されている。基本的に前後方向の衝撃を想定して、このダンパーでその衝撃を吸収しようということだ。2024年は24戦が世界各地で予定されており、そのたびに飛行機に積まれて次のサーキットへと移動される特殊な環境である。着陸のたびにダメージを受けることがないよう、これまでの経験を活かしてこのような構造を取っているということだ。
●RIEDEL MediorNet
2009年に登場した世界初となるFiber-BaseのVoIPトランスポート。さらにAudio、GPIO、もちろんRIEDELインカムの制御信号など様々な信号を同時に送受信できる。ファイバーケーブルを使った長距離伝送という特長だけではないこの規格は、世界中の大規模イベントのバックボーンとして使われている。本誌でも取り上げたF1以外にも、世界スポーツ大会、W杯サッカー、アメリカズカップなどが代表的な事例となる。ひとつのトランスポートで現場に流れるすべて(と言ってしまっても差し支えないだろう)の信号を一括で送受信することができるシステムである。
自社専用ダークファイバーで世界中へ
これらのコンテナ・ラックに集約された回線は、RIEDEL Networkの持つダークファイバー回線でRIEDEL本社へと送られる。RIEDEL NetworkはRIEDELのグループ会社で、世界中にダークファイバーの回線を持ち、その管理運用を行っている。その拠点まではそれぞれの国の回線を使用するが、世界中にあるRIEDEL Networkの回線が接続されているデータセンターからは自社回線での運用となる。各国内の回線であれば問題が起きることはそれほど多くない、それを他国へ送ろうとした際に問題が発生することが多い。そういったトラブルを回避するためにも自社で世界中にダークファイバーを持っているということになる。
また、RIEDEL本社の地下には、核シェルターに近い構造のセキュリティーレベルが高いデータセンターが設置されている。ここで、F1のすべてのデータが保管されているそうだ。各チームからのリクエストによる再審判や、車載カメラ、コースサイドのカメラ、各チームの無線音声などすべての情報がここに保管されている。FIAから直接の依頼を受けて業務を行っているRIEDELは、さながら運営側・主催者側のバックボーンを担っているといった様相だ。
ちなみに、F1のコントロールセンター(審判室)は、リモートでの運営となっている。RIEDEL本国に送られた回線は、ヨーロッパに設置されたコントロールセンター、そして、各チームのHQへと送られている。まさにRIEDEL本社がF1サーカスのワールドワイドのハブとなっているということだ。一旦レースの現場でデータを束ねて、確実なファシリティ、バックボーンのある本社拠点へ送る。それを必要なものに応じて切り出しを行い、世界中へを再発信する。世界中を転戦するF1サーカスならではの知恵と運用ノウハウである。
ちなみに、我々が楽しんでいるTVなどの中継回線は、コースサイドの映像などが会場で共有され、中継用の別ネットワークとして運営されているということだ。前回取材時の2019年はこの部分もRIEDELの回線を使ったリモートプロダクションが行われていたが、サーキット内での回線分岐で別の運用となっていた。これらの設備を見ることはできなかったが、サーキット内に中継用のブースがあるような様子はなく、RIEDELのスタッフもそのような設備がサーキット内に準備されているのは見たことがないということだったので、リモートプロダクションでの制作が行われているのは確かなようであった。別のネットワークを通じて行われるリモートプロダクション、2024年度の放映権を持つのはDAZNだが、どのようなスキームで制作されているのか興味が尽きないところだ。
総じてみると、2019年と比較してもシステムのコンパクト化、コロナを乗り越えたことによるスタッフの省力化、リモートの活用範囲の拡大などが随所に見られた。そして、バックボーンとなる回線のIP化が進み、Artist 1024のような大規模ルーターが現実のものとして運用されるようになっている。目に見える進化はそれほど大きくないのかもしれないが、そのバックボーンとなる技術はやはり日進月歩で進化を続けている。
IPによる物理回線のボリュームは劇的に減っており、要所要所は一対のファイバーケーブルで賄えるようになっている。ある意味、この記事において写真などで視覚的にお伝えできるものが減っているとも言えるのだが、これこそがIP化が進展した証左であり次世代のシステム、ソリューションの中核が現場に導入されているということに相違ない。
10年以上も前から一対のファイバーケーブルで、映像・音声・シリアル通信まで送受信できるシステムを提案しているRIEDEL。やっと時代が追いついてきているということなのだろうか。F1のような世界規模の現場からのリクエストで制作され鍛え上げられてきたRIEDELの製品。国内でも活用が多く見られるインカムは、RIEDELの持つテクノロジーの一端でしかない。トータルシステムとして導入して本来のバリューを発揮するRIEDELの製品群。今回のような事例から次世代のシステム・ソリューションにおけるヒントを見つけていただければ幸いである。
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/27
Cross Phase Studio 様 / クリエイティブが交差する、外部貸出も行う関西有数のイマーシブ拠点
大阪城の間近、大阪市天満に居を構えるCross Phase Studio。ゲーム / 遊技機のサウンド制作をメインに、近年では映像作品のポストプロダクション業務も増加するなど、関西圏で大きな存在感を持つCross Phase株式会社の自社スタジオだ。2022年末にイマーシブ・フォーマットへ対応するためのアップデートを果たした同スタジオだが、このたびには自社スタジオの外部貸出も開始させたそうだ。関西でのイマーシブ・オーディオをリードする存在ともなるCross Phase Studioへ早速取材にお邪魔した。
サウンドの持つ力を知る場所を多くの方に
Cross Phase株式会社は代表の金子氏が中心となって、数人のクリエイターとともに2015年に設立されたサウンド制作会社。「当時の勤務先ではだんだん管理的な業務のウェイトが増えていて、もっとクリエイティブな部分に携わっていたいと考えていました。きっかけはよくある呑みの席での雑談だったのですが、本当に独立してしまった(笑)」という同氏は元遊技機メーカー勤務。幼少期を海外で過ごしMTVを見て育ったことから大の音楽好きで、同じく好きだった遊技機と音楽の両方を仕事にできる業界を選んだということだ。
設立当初は各クリエイターが自宅の制作環境で制作を行っており本社は事務所機能だけだったが、自社スタジオであるCross Phase Studioを作るにあたり、本社所在地も現在の大阪市天満に移転している。そのスタジオもステレオのみでスタートしたのだが、Apple Digital Masters認定を受けるための過程でDolby Atmosの盛り上がりを知り、大きな可能性を感じたことで2022年末にイマーシブ・オーディオへ対応する運びとなったそうだ。
スタジオを持ってからも同社では積極的にテレワークやリモート制作を取り入れており、そのためのインフラは金子氏がみずから整えているとのこと。最適なソリューションが存在しない場合は自社製の業務ツールやソフトウェアを開発することもあるという。「ゲーム業界は横のつながりが強い。自分たちの経験に加え、サウンド外の情報や情勢も踏まえて効率化、向上化の手段を常に探っています。」といい、クリエイティブな作業に集中できる環境づくりを心がけている。設立時の想いを実践し続けていることが窺える。
📷Cross Phase株式会社 代表の金子氏。
金子氏に限らず全員が元ゲーム / 遊技機メーカー勤務のクリエイター集団である同社の強みは、ゲーム / 遊技機のサウンドに関わる工程すべてを把握しており、サウンドプロジェクト全体をワンストップで請け負える点にある。プロジェクト自体の企画から、楽曲や効果音などの制作、音声収録など各種レコーディング、ゲームや遊技機への実装・デバッグのすべての工程でクライアントと協業することが可能だ。
近年はゲーム / 遊技機分野にとどまらず映像作品の音声制作などへも活躍の場を広げているが、そのきっかけは1本の映画作品だったようだ。「ロケ収録した音声を整音する依頼だったのですが、元の音声があまりいい状態ではなくて…。当社でできる限りいいものにならないか試行錯誤したところ、その結果にクライアントがすごく喜んでくれたんです。それで、みんな音の大切さに気付いてないだけで、いい音を聴いてもらえばわかってくれるんだということに気付いたんです」という。
こうした経験から、もともと自社業務専用と考えていたCross Phase Studioの外部貸出を開始したそうだ。「Dolby Atmosを聴いてもらうと多くのクライアントが興味を示してくれます。当社のクリエイターからも、イマーシブを前提とするとそれ以前とは作曲のコンセプトがまったく変わる、という話もありました。せっかくの環境なのでもっと多くのみなさんにサウンドの持つ力を体験して知ってほしいんです。」そして、「Cross Phaseという社名は、さまざまなクリエイティブが交差する場所にしたいという想いで名付けました。関西圏には才能あるクリエイターがたくさんいるので、みなさんとともに関西発で全国のシーンを盛り上げていきたいと思っています」と熱を込めて語ってくれた。
7.1.4 ch をADAMで構成
Cross Phase Studioのイマーシブシステムは7.1.4構成となっておりDolby Atmosへの対応がメインとなるが、DAWシステムには360 Walkmix Creator™️もインストールされており、360 Reality Audioのプリミックスにも対応が可能だ。
モニタースピーカーはADAM AUDIO。9本のA4VとSub 12という組み合わせとなっている。それとは別に、ステレオミッドフィールドモニターとして同じくADAM AUDIOのA77Xが導入されている。スタイリッシュな内装や質実剛健な機材選定と相まって、見た目にもスタジオ全体に引き締まった印象を与えているが、そのADAM AUDIOが導入された経緯については、「スタジオ開設当初は某有名ブランドのスピーカーを使用してたのですが、あまり音に面白みを感じられなくて…。スピーカーを更新しよう(当時はまだステレオのみ)ということで試聴会を行ったのですが、当社のクリエイターのひとりがADAMを愛用していたので候補の中に入れていたんです。そうしたら、聴いた瞬間(笑)、全員一致でADAMに決まりました。そうした経験があったので、イマーシブ環境の導入に際してもADAM一択でしたね。」とのこと。
📷7.1.4の構成で組まれたスピーカーはスタッフ全員で行った試聴会の結果、ADAMで統一された。天井にも吊られたA4Vのほか、ステレオミッドフィールド用にA77Xが設置されている。
もちろん、ADAM AUDIOも有名ブランドではあるが、その時点での”定番のサウンド”に飽き足らずクリエイターが納得できるものを追求していくという姿勢には、音は映像の添え物ではない、あるいは例えそうした場面であってもクリエイティビティを十二分に発揮して作品に貢献するのだという、エンターテインメント分野を生き抜く同社の強い意志を感じる。そうした意味では、ADAM AUDIOのサウンドは同社全体のアイデンティティでもあると言えるのではないだろうか。関西エリアに拠点を置くクリエイターには、ぜひ一度Cross Phase Studioを借りてそのサウンドを体験してほしい。
デジタル、コンパクト、クリーンな「今」のスタジオ
それではCross Phase Studioのシステムを見ていこう。金子氏の「当社はスタジオとしては後発。イマーシブ導入もそうですが、ほかのスタジオにはない特色を打ち出していく必要性を感じていました。今の時代の若いスタジオということで、デジタルをメインにしたコンパクトなシステムで、クリーンなサウンドを念頭に置いて選定しています。」という言葉通り、DAW周りは非常に現代的な構成になっている。
📷メインのデスクと後方のデスクに2組のコントロールサーフェスが組まれているのが大きな特徴。前方メインデスクにはAvid S3とDock、後方にはAvid S1が2台。ステレオとイマーシブで異なるスイートスポットに対応するため、それぞれのミキシングポイントが設けられた格好だ。
スタジオにコンソールはなく、Pro Tools | S3 + Pro Tools | Dock + DAD MOMと、2 x Pro Tools | S1 + DAD MOMというコントロールサーフェスを中心とした構成。サーフェスが二組あるのはステレオ再生とイマーシブ再生ではスイートスポットが変わるため、コントロールルームの中に2ヶ所のミキシングポイントを置いているからである。DAWはもちろんPro Tools Ultimate、バックアップレコーダー兼メディアプレイヤーとしてTASCAM DA3000も導入されている。
オーディオI/FにはPro Tools | MTRX Studioを採用。モニターコントロールはDAD MOMからコントロールするDADmanが担っているため、ステレオ / イマーシブのスピーカーはすべてこのMTRX Studioと直接つながれている。MTRX StudioにはFocusrite A16RがDanteで接続されており、後述するアウトボードのためにアナログI/Oを拡張する役割を担っている。また、スピーカーの音響補正もMTRX Studioに内蔵されているSPQ機能を使用して実施。測定にはsonorworks soundID Referenceを使用したという。現在ではsoundID Referenceで作成したプロファイルを直接DADmanにインポートすることができるが、導入時にはまだその機能がなく、ディレイ値などはすべてDADmanに手打ちしたとのこと。
📷上段にMTRX Studioがあり、その下が本文中でも触れたflock audio The Patch。数々のアウトボードが操作性にも配慮されてラッキングされていた。
必要最小限で済ますならばこれだけでもシステムとしては成立するのだが、スッキリとした見た目と裏腹に同スタジオはアウトボード類も充実している。SSLやBettermakerなどのクリーン系ハイエンド機からAvalon DesignやManleyなどの真空管系、さらに、Kempfer・Fractal Audio Systemsといったアンプシミュレーター、大量のプラグイン処理を実現するWaves SoundGrid Extreme Serverやappolo Twin、そろそろビンテージ機に認定されそうなWaves L2(ハードウェア!)も導入されており、現時点でも対応できる音作りは非常に広いと言えそうだが、「当社のクリエイターたちと相談しながら、その時々に必要と考えた機材はこれからも増やしていく予定です」とのこと。
これらのスタジオ機器の中で、金子氏がもっとも気に入っているのはflock audio The Patchなのだという。金子氏をして「この機材がなかったら当社のスタジオは実現していなかった」とまで言わしめるThe Patchは、1Uの機体の内部にフルアナログで32in / outのシグナルパスを持ち、そのすべてのルーティングをMac / PCから行えるというまさに現代のパッチベイである。Cross Phase Studioではアナログ入力系は基本的に一度このThe Patchに接続され、そこからA16Rを介してDanteでMTRX Studioへ入力される。日々の運用のしやすさだけでなくメンテナンス性や拡張性の観点からも、確かにThe Patchの導入がもたらした恩恵は大きいと言えるだろう。
コントロールルームの隣にはひとつのブースが併設されている。ゲーム / 遊技機分野から始まっているということもあってボーカル・台詞など声の収録がメインだが、必要に応じて楽器の収録もできるように作られている。印象的だったのは、マイクの横に譜面台とともにiPad / タブレットを固定できるアタッチメントが置かれていたことだ。台詞録りといえば今でも紙の台本というイメージが強いが、個別収録の現場では徐々に台本もデジタル化が進んでいるようだ。
📷コントロールルームのすぐ隣にはブースが設置されている、ボーカル・ダイアログなど声の収録だけではなく、楽器にも対応できる充分なスペースを確保している。
ブース内の様子は撮影が可能でコントロールルームにはBlackmagic Design ATEM Miniが設置されていた。「もともと音楽1本だけの会社ではないので、徐々にオファーが増えている映像制作やライブ配信をはじめとした様々な分野にチャレンジしていきたい。最近、知人から当社のブースをビジネス系YouTube動画の制作に使いたいというオファーもありました(笑)。バンドレコーディングはもちろん、“歌みた“などのボーカルレコーディングや楽器録音など、ぜひ色々なクリエイターやアーティストに使って欲しいです。」とのことで、同社が活躍するフィールドはさらに広がっていきそうだ。
最近では海外からのオファーも増えてきたというCross Phase。金子氏は「ゆくゆくは国産メーカーの機器を増やして、日本ならではのスタジオとして海外の方にも来てもらえるようにしたいですね」と語る。イマーシブ制作の環境が整ったスタジオを借りることができるというのは、まだ全国的に見ても珍しい事例である。関西圏を拠点にするクリエイターは、ぜひ一度Cross Phase Studioで「サウンドの持つ力」を体験して知ってほしい。
*ProceedMagazine2024号より転載
Event
2024/08/26
【9/2~4】Rock oN新梅田店にて360VME関西初の体験会を開催!
今年6月より待望の出張測定サービスも開始し、早速スタジオに伺っての測定も実施中の360 Virtual Mixing Environment(360VME)サービス。実際にVMEを使用した制作実績も生まれ、業界内でも測定された方を中心にじわじわとその高い性能が広まっています。
しかし百聞は一見にしかず、ならぬ百見は一聞にしかずの技術なのもまた事実。
そこで、今までの体験会は東京での開催のみでしたが。。。
8/20(金)にプレオープンしたばかりのRock oN新梅田店にて、関西初の360VME体験会を実施します!
ご参加いただいた方には出張測定が¥20,000引きとなる特別クーポンも贈呈!
今まで東京の体験会にお越しいただけなかった皆様にもようやく驚きの再現力をご体感いただけます。
またこれより梅田を拠点に出張測定サポートを強化し、西日本の皆様にも測定サービスをスムーズにご利用いただける体制を整備いたします。まずは体験会にお越しいただき、そのクオリティをご確認ください!
◎開催日程
開催日:9月2日〜4日の3日間
開催時間:13時、15時、17時 (各30分)
定員:各時間 定員2名
参加費:無料
参加特典:360VME 〜出張測定〜 20,000円OFFクーポン
体験会お申し込みはコチラ
【ご注意】フォームからのお申し込み時点ではお申し込みは完了しません。
開催日/時間ごとの先着順のためフォーム送信後に落選となる可能性がございます。
こちらからお申し込み完了のご連絡が届いた時点で完了となります。予めご了承下さい。
改めて、360VMEとは 〜スタジオを持ち運ぶ〜
SONY 360 Virtual Mixing Environmentとは、複数のスピーカーで構成されたスタジオの音場を独自の測定技術によりヘッドホンで正確に再現する技術。SONYが長年研究開発してきたバーチャルサラウンドの延長線上にあるテクノロジーであり、プロのクリエイターが制作で扱える最高品質のバイノーラルモニタリング技術として開発された経緯があります。
コロナ禍にはハリウッドのSony Picturesで使用実績を積みトップクリエイターの意見を踏まえて開発された360VMEは、バイノーラルでの再現が特に難しいとされるセンター方向の定位を含め汎用のバイノーラルとは比べ物にならないクオリティを実現しています。
360VMEの大きな特徴がその測定方法にあります。360VMEでは、個々人の頭の形によるプライベートHRTFはもちろんのこと、使用するスピーカー、ヘッドフォンの特性、部屋の反射などを含めた空間の音響特性までをまとめて計測。それにより、まさに測定するその環境その位置で測定者その人の鼓膜に届く音を再現するのです。
また意外と知られていないのが、360VMEはイマーシブフォーマット以外にも、5.1chや7.1chといったサラウンド、ステレオにもお使いいただける技術であるということ。うちにはイマーシブ環境が無いという方でも、お持ちのシステムで測定いただくも良し、MIL Studioのイマーシブ環境をお持ち帰りいただくのも良しのサービスとなっております。
スタジオを持ち運ぶというコンセプトがご理解いただけたでしょうか? MIL Studioの完全4π音響空間をご自身のイマーシブモニター環境とすることも、普段利用されているスタジオの音を自宅に持ち帰って仕込み作業を行うことも可能にする360VMEで、新たな制作スタイルを手に入れましょう。
料金体系
① 360VME プロファイル料金
1プロファイル/1年 ¥40,000(税別)
1プロファイル/6ヶ月 ¥25,000(税別)
※プロファイルデータは 有効期限付きのサブスクリプションモデルとなります
② 360VME 測定料金
MILスタジオでの測定 1人測定/¥40,000(税別)
出張測定サービス 1出張/¥80,000(税別)
※出張測定サービスは、3プロファイル以上でのお申し込みをお願いします。
①プロファイルサブスクリプション + ②測定料金 = 360VME測定サービス合計金額となります。
新しくなったRock oN梅田店でまずはその効果をご体験ください!きっと驚かれるはずです。
渋谷店でも引き続き測定デモは実施中です!店頭スタッフへお問い合わせください。
梅田体験会お申し込みはコチラ
またVME体験会だけでなく新梅田店では9/6(金)のグランドオープンに向けて様々なイベントを計画中!日々完成へと近づく新たな梅田店を一緒に作り上げてください!
プレオープンイベント「みんなで作ろうRock oN」の詳細はコチラをチェック!
出張測定、MILでの測定お申し込みやより詳しい情報は↓↓以下のページからお待ちしております↓↓
https://pro.miroc.co.jp/headline/360vme_new-service_202406/
MIL studioについてはこちら↓
https://www.minet.jp/contents/info/mil-studio/
Event
2024/08/25
【8/30(金)開催】RTW Presents “TouchControl 5 Meets ATMOS” Atmosミックスの第一人者がナビゲート!革新的コントローラーによるモニタリング
8/30(金)、Dante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラー『RTW TouchControl 5』をフィーチャーしたセミナーイベントを弊社LUSH HUBにて開催いたします。
このイベントでは、サウンドデザイナーの染谷和孝氏によるDolby Atmosミックスにおいて重要なモニタリングについてのトークセッションに加え、Dolby Atmos 7.1.4環境を備えた別室にてTouchControl 5を実際に操作できるハンズオン体験をご用意しています。さらに軽食やドリンクのご用意もいたしますので、クリエイター同士の交流も深まることでしょう。
さらにさらに!セミナー参加者にはRock oN渋谷店にてTouchControl5が10%OFFで購入できるクーポンコードをプレゼントいたします!
参加費は無料で、抽選で30名様限定となります。この貴重な学びと交流の場をぜひお楽しみください。
お申し込みはこちら
イベント概要
日時:2024年8月30日(金)
OPEN:16:30 START:17:00
場所:渋谷LUSH HUB 東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F
ナビゲーター:染谷和孝 氏(サウンドデザイナー)
参加費:無料
定員:完全予約 30名様限定
お申込み締め切り:2024年8月23日(金)24:00
抽選結果ご連絡日:2024年8月26日(月)
主催:ビーテック株式会社
協力:LUSH HUB、ROCK ON PRO
RTW TouchControl 5
TouchControl 5はDante®ベースのAoIPを利用したメータリング機能付きモニターコントローラーです。
RTWが長年培ってきた放送クオリティのモニターコントローラーで、直観的に操作できる5″のタッチスクリーンとデスクトップの貴重なスペースを無駄にしないコンパクトサイズとなっています。もちろんRTWの誇るSPLを含む正確なメータリングとビルトインされたマイクによる環境設定も可能です。
・Dante® Audio over IPネットワークを使用したモニタリング
・SPL測定とトークバック用にマイクロフォンを搭載
・プレミアムPPM、トゥルーピーク、VUのメーター表示
ナビゲーター:染谷和孝 氏
株式会社ソナ 制作技術部
サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。
お申し込みはこちら
Music
2024/08/23
日本最大の男祭り、その熱量をコンテンツに込める〜UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium〜
昨夏、日産スタジアムにて開催された音楽ライブ「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」。この72,000人の観客とともに作り上げた公演を記録した映像作品が全国劇場公開された。男性のみが参加できるという日本最大の「男祭り」、劇場版の音響にはDolby Atmosが採用され、約7万人もの男性観客のみが集ったその熱狂を再現したという本作。音響制作を手がけられたWOWOW 戸田 佳宏氏、VICTOR STUDIO 八反田 亮太氏にお話を伺った。
ライブの熱狂を再現する作品を
📷右)戸田 佳宏 氏 / 株式会社WOWOW 技術センター 制作技術ユニット エンジニア 左)八反田 亮太氏 / VICTOR STUDIO レコーディングエンジニア
Rock oN(以下、R):本日はお時間いただきありがとうございます。まず最初に、本作制作の概要についてお聞きしてもよろしいですか?
戸田:今回のDolby Atmos版の制作は、UVERworldさんの男祭りというこれだけの観客が入ってしかも男性だけというこのライブの熱量を表現できないか、追体験を作り出せないかというところからスタートしました。大まかな分担としては、八反田さんがステレオミックスを制作し、それを基に僕がDolby Atmosミックスを制作したという流れです。
R:ステレオとAtmosの制作については、お二人の間でコミュニケーションを取って進められたのでしょうか?
八反田:Dolby Atmosにする段階では、基本的に戸田さんにお任せしていました。戸田さんとはライブ作品をAtmosで制作するのは2度目で、前回の東京ドーム(『UVERworld KING’S PARADE 男祭り FINAL at Tokyo Dome 2019.12.20』)でも一緒に制作をしているので、その経験もあってすり合わせが大きく必要になることはありませんでした。
戸田:このライブ自体のコンセプトでもあるのですが、オーディエンス、演奏の”熱量”というところをステレオ、Atmosともに重要視していました。僕がもともとテレビ番組からミックスを始めているのもあるのかもしれないですが、会場を再現するという作り方に慣れていたので、まず会場をAtmosで再現するところから始めました。そうやって制作するとオーディエンス、会場感が大きいものになっていくので、それを八反田さんに確認していただいて、音楽としてのミックスのクオリティを高めていくという流れですね。逆にCDミックスのような質感に寄りすぎてもライブの熱量が足りなくなっていくので、その境界線を見極めながらの作業になりました。
八反田:作業している時は「もっと熱量を!」というワードが飛び交っていましたね(笑)。
戸田:Atmosミックスではアリーナ前方の位置でライブを見ている感覚をイメージしていました。ライブ会場ではこうだよな、という聴こえ方を再現するという方向ですね。映像作品なのでボーカルに寄る画もあるので、そういった場面でも成立するようなバランスを意識しました。
八反田:ステレオでこれだとドラムが大きすぎるよな、というのもAtmosでは可能なバランスだったりするので、音楽としてのバランスも込みでライブをどう聴かせたいかという理想を突き詰めた部分もあります。
日産スタジアムでのライブ収録
📷1~16がステレオミックス用、17~42がDolby Atmos用に立てられたマイク。色によって高さの階層が分けて記されており、赤がアリーナレベル、青が2Fスタンド、緑がトップ用のマイクとなっている。31~34はバックスクリーン下のスペースに立てられた。
R:収録についてはどういった座組で行われたのでしょうか?
戸田:基本はパッケージ収録用のステレオ前提でライブレコーディングチームがプランニングをされていたので、3Dオーディオ版として足りないところをWOWOWチームで追加しました。事前にステレオのチームとマイク図面の打ち合わせを行い、マイク設置位置を調整しました。録音は音声中継車で録ることができる回線数を20chほど超えてしまったので追加でレコーダーを持ち込みました。ドラムセットが3つあったのもあって、全体で150chくらい使用していますね。そのうちオーディエンスマイクだけでステレオ用で16本、Atmos用でさらに26本立てました。
R:日産スタジアムってかなり広いですよね。回線は信号変換などを行って伝送されたのですか?
戸田:アリーナレベルは、音声中継車までアナログケーブルで引きました。スタンドレベルも端子盤を使って中継車までアナログですね。足りない部分だけOTARI Lightwinderを使ってオプティカルケーブルで引くこともしました。スタジアムはとにかく距離が長いのと、基本的にはサッカーの撮影用に設計された端子盤なので、スタンド席のマイクなどは養生などをして観客の中を通さないといけないのが結構大変でした。
R:ステージのフロントに立っているマイクは観客の方を向いているんですか?
戸田:そうですね。それはステージの端から観客に向けて立てられたマイクです。レスポンスの収録用です。曲中は邪魔にならないように工夫しながらミックスしました。包まれ感には前からのオーディエンスも重要なので。
R:Atmos用に設置したマイクについては、どういった計画で設置されたのでしょうか?
戸田:Atmos用のマイクはステレオ用から足りないところ、スピーカー位置で考えるとサラウンドのサイド、リア、トップなどを埋めていくという考え方で置いていきました。
八反田:キャットウォークに置いたマイクが被りも少なく歓声がよく録れていて、お客さんに包まれる感じ、特に男の一体感を出すのに使えました。イマーシブ用マイクで収録した音源は、ステレオミックスでも使用しています。
約150chの素材によるDolby Atmos ミックス
R:これだけ広い会場のアンビエンスだと、タイムアライメントが大変ではなかったですか?
戸田:そこはだいぶ調整しましたね。一番最初の作業がPAミックスと時間軸を調整したアンビエンスをミックスし、会場の雰囲気を作っていくことでした。スタジアムは一番距離があるところで100m以上離れているので、単純計算で0.3〜0.5秒音が遅れてマイクに到達します。
R:合わせる時はオーディオファイルをずらしていったのですか?
戸田:オーディエンスマイクの音を前へ(時間軸として)と調整していきました。ぴったり合うと気持ちいいというわけでもないし、単純にマイク距離に合わせればいいというわけでもないので、波形も見つつ、スピーカーとの距離を考えて経験で調整していきました。正解があったら知りたい作業でしたね。
R:空気感、スタジアム感との兼ね合いということですね。MCのシーンではスタジアムの残響感というか、声が広がっていくのを細かく聴き取ることができました。リバーブは後から足されたりしたのですか?
戸田:MCの場面ではリバーブを付け足す処理などは行なっていません。オーディエンスマイクで拾った音のタイムアライメントを調整して、ほぼそのまま会場の響きを使っています。ステージマイクに対してのリバーブは、一部AltiverbのQuadチャンネルを使っています。
R:ライブではMCからスムーズに歌唱に入るシーンも多かったと思いますが、そこの切り替えはどうされたんですか?
戸田:そこが今回の作品の難しいところでした。見る人にもMCからすっと音楽に入ってもらいたいけど、かといって急に空間が狭くなってしまうと没入感が損なわれてしまうので、会場の広さを感じながらも音楽にフォーカスしてもらえるように、MCと楽曲中のボーカルのリバーブではミックスで差をつけるなどで工夫しています。
R:なるほど。アンビエンスの音処理などはされました?
戸田:曲によってアンビ感が強すぎるものはボーカルと被る帯域を抜いたりはしています。前回の東京ドームでは意図しない音を消すこともしたのですが、今回は距離感を持ってマイクを置けたので近い音を消すことは前回ほどなかったです。
R:オブジェクトの移動は使いました?
戸田:ほぼ動かしていないですね。画や人の動きに合わせて移動もしていないです。バンドとしての音楽作品という前提があるので、そこは崩さないように気を付けています。シーケンスの音は少し動かした所があります。画がない音なので、そういうのは散らばらせても意外と違和感がないかなと感じています。
📷会場内に設置されたマイクの様子。左上はクランプで観客席の手すりに付けられたマイク。すり鉢状になっている会場の下のレイヤーを狙うイメージで立てられた。また、その右の写真は屋根裏のキャットウォークから突き出すようにクランプで設置されたトップ用マイク。天井との距離は近いが、上からの跳ね返りはあまり気にならずオーディエンスの熱気が上手く録れたという。
R:イマーシブになるとチャンネル数が増えて作業量が増えるイメージを持たれている方も多いと思うのですが、逆にイマーシブになることで楽になる部分などはあったりしますか?
戸田:空間の解像度が上がって聴いてもらいたい音が出しやすくなりますね。2chにまとめる必要が無いので。
八反田:確かにそういう意味ではステレオと方向性の違うものとしてAtmosは作っていますね。ステレオとは違うアプローチでの音の分離のさせ方ができますし、Atmosを使えば面や広い空間で鳴らす表現もできます。東京ドームの時もそういうトライはしましたが、今回はより挑戦しました。ドームは閉じた空間で残響も多いので、今回は広く開けたスタジアムとしての音作りを心がけています。
R:被りが減る分、EQワークは楽になりますよね。
戸田:空間を拡げていくと音が抜けてきますね。逆に拡がりよりも固まりが求められる場合は、コンプをかけたりもします。
R:イマーシブミックスのコンプって難しくないですか?ハードコンプになると空間や位相が歪む感じが出ますよね。
戸田:すぐにピークを突いてしまうDolby Atmosでどう音圧を稼ぐかはポイントですよね。今回はサイドチェイン用のAUXバスを使って、モノラル成分をトリガーにオブジェクト全体で同じ動きのコンプをかける工夫をしています。オーディエンスのオブジェクトを一括で叩くコンプなどですね。ベッドのトラックにはNugen Audio ISL2も使っています。
R:スピーカー本数よりマイク本数の方が多いので、間を埋めるポジションも使いつつになると思いますが、パンニングの際はファンタム定位も積極的に使われましたか?
戸田:位相干渉が出てくるのであまりファンタム定位は使わずにいきました。基本の考え方はチャンネルベースの位置に近いパンニングになっていると思います。ダビングステージで聴いた時に、スピーカー位置の関係でどうしても後ろに音が溜まってしまうので、マイクによってはスピーカー・スナップ(近傍のスピーカーにパンニングポジションを定位させる機能)を入れて音が溢れすぎないようにスッキリさせました。
Dolby Atmos Home環境とダビングステージの違い
R:丁度ダビングの話が出ましたが、ダビングステージでは正面がスクリーンバックのスピーカーになっていたりとDolby Atmos Homeの環境で仕込んできたものと鳴り方が変わると思うのですが、そこは意識されましたか?
戸田:スクリーンバックというよりは、サラウンドスピーカーの角度とXカーブの影響で変わるなという印象です。東京ドームの時はXカーブをすごく意識して、全体にEQをかけたんですけど、今回違う挑戦として、オーディエンスでなるべくオブジェクトを使う手法にしてみました。とにかく高さ方向のあるものやワイドスピーカーを使いたいものはオブジェクトにしていったら、ダビングステージでもイメージに近い鳴り方をしてくれました。もちろん部屋の広さとスピーカーの位置が違うので、仕込みの時から定位を変えてバランスをとりました。
R:ダビングはスピーカー位置が全部高いですからね。
戸田:全体の定位が上がっていってしまうので、そうするとまとまりも出てこないんですよね。なのでトップに配置していた音をどんどん下げていきました。トップの位置もシネマでは完全に天井ですから、そこから鳴るとまた違和感になってしまう。スタジアムは天井が空いているので、本来観客がいない高い位置からオーディエンスが聴こえてしまうのは不自然になってしまうと考えました。
R:これだけオーディエンスがあると、オブジェクトの数が足りなくなりませんでした?
戸田:そうですね、当時の社内のシステムではオブジェクトが最大54しか使えなかったので工夫しました。サラウンドはベッドでも7chあるので、スピーカー位置の音はベッドでいいかなと。どうしても真後ろに置きたい音などにオブジェクトを使いました。楽器系もオブジェクトにするものはステムにまとめています。
R:シネマ環境のオブジェクトでは、サラウンドがアレイで鳴るかピンポイントで鳴るかという違いが特に大きいですよね。
戸田:はい。なのでオーディエンスがピンポイントで鳴るようにオブジェクトで仕込みました。ベッドを使用しアレイから音を出力すると環境によりますが、8本くらいのスピーカーが鳴ります。オーディエンスの鳴り方をオブジェクトで制御できたことで空間を作るための微調整がやりやすかったです。ただ、観客のレスポンスはベッドを使用してアレイから流すことで、他の音を含めた全体の繋がりが良くなるという発見がありました。
R:最後に、音楽ライブコンテンツとしてDolby Atmosを制作してみてどう感じていますか?
八反田:誤解を恐れずに言えば、2chがライブを“記録“として残すことに対してDolby Atmosは“体験“として残せることにとても可能性を感じています。今回は会場の再現に重きを置きましたが、逆にライブのオーディエンスとしては味わえない体験を表現することも面白そうです。
戸田:Dolby Atmosでは、音楽的に表現できる空間が広くなることで、一度に配置できる音数が増えます。こういう表現手法があることでアーティストの方のインスピレーションに繋がり、新たな制作手法が生まれると嬉しく思います。またライブ作品では、取り扱いの難しいオーディエンスも含めて、会場感を損なわずに音楽を伝えられるというのがDolby Atmos含めイマーシブオーディオの良さなのかなと考えています。
一度きりのライブのあの空間、そして体験を再び作り出すという、ライブコンテンツフォーマットとしてのDolby Atmosのパワーを本作からは強く感じた。72,000人の男性のみという特殊なライブ会場。その熱量をコンテンツに込めるという取り組みは、様々な工夫により作品にしっかりと結実していた。やはり会場の空気感=熱量を捉えるためには、多数のアンビエントマイクによる空間のキャプチャーが重要であり、これは事前のマイクプランから始まることだということを改めて考えさせられた。イマーシブオーディオの制作数も徐々に増えている昨今、制作現場ではプロジェクト毎に実験と挑戦が積み上げられている。過渡期にあるイマーシブコンテンツ制作の潮流の中、自らの表現手法、明日の定石も同じように蓄積されているようだ。
UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium
出演:UVERworld
製作:Sony Music Labels Inc.
配給:WOWOW
©Sony Music Labels Inc.
*ProceedMagazine2024号より転載
NEWS
2024/08/22
【店頭視聴も!】musikから最小サイズの同軸2way「MO-1 MK.II」が登場!
同軸モニタースピーカーを代表するメーカーであるドイツのmusikelectronic geithainから、待望の新製品が発売となります!
MO-1 MK.IIは前作MO-1の意志を引き継ぎmusikラインナップで最小サイズのモニタースピーカーです。中継車のために開発されたという前モデルから再設計が施され、新たにDSPチップを搭載。さらにオプションでDante/AES67対応も可能になっています!
高さ約22cm、横幅約15cmというサイズは限られたスペースでの利用はもちろん、同軸の持つ抜群の定位感を活かしたイマーシブ、サラウンド用スピーカーとしても間違いなく活躍してくれるでしょう。
来週より、日本で唯一の実機展示をRock oN渋谷店/梅田店で実施予定!
最小サイズから繰り出されるmusikサウンドを店頭でぜひご体験ください!
Rock oN Shibuya
東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツ1F
Rock oN Umeda 8/20よりリニューアルプレオープン!詳しくはコチラ
大阪府大阪市北区芝田 1 丁目 4-14 芝田町ビル 6F
機能紹介 ~小型ながらも多機能な1本~
多くのスタジオで導入されてきた信頼のあるmusik製品群の中でエントリークラスに位置する本機。musikの特徴である同軸設計による定位感の良さ、奥行きの表現力や圧倒的な解像度は業界内でも定評です。
今回新たにユーザー設定可能なDSPが搭載され、数種類のフィルタープリセットやディレイタイムの調整が可能に。なんとオプションによりDante/AES67での接続にも対応するため、マルチチャンネルのシステムもEthernetケーブルでシンプルに構築ができるのは大きなポイント。
2つのXLR入力からはモノダウンミックスが可能な他、PWM方式を採用した内蔵アンプ、高効率なスイッチング電源など、小さな筐体に多くの機能と拡張性が詰め込まれた注目の製品となっています。
製品概要
musikelectronic / MO-1 MK.II
¥660,000(税込)
Rock oN eStoreで購入>>
アクティブ同軸2ウェイスピーカー
最大音圧レベル:108dB r = 1 m
周波数特性:50Hz~22kHz ±3dB
歪率(83dB/r=1m):-40dB
クロスオーバー周波数:3.5kHz
内蔵パワーアンプ出力:95W / 4Ω(低域)、95W / 4Ω(高域)
入力コネクター:XLR 3F アナログ、RJ45 Dante/AES67 (オプション)
ユニット構成:低域 100mm コーン、高域 19mm ドームツィーター
消費電力:7VA (アイドル時)、80VA(フルロード時)
キャビネット材質:MDF
キャビネット仕上:ブラック or セミグロスホワイト
寸法:214 H x 147 W x 192 D mm
重量:3.5 kg
musikelectronic久々の新モデルとなるMO-1 MK.IIは、現代のスタジオニーズを意識した広い可能性を持つプロダクトではないでしょうか!ご自宅のスタジオ環境をグレードアップさせる1本としても是非ご検討ください!導入のご相談はROCK ON PROまで。
Music
2024/08/20
「ライブを超えたライブ体験」の実現に向けて〜FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏〜
今年1月、アーティスト・福山雅治による初監督作品 『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』が公開された。昨年夏に開催された武道館公演を収録した本作は、ドローン撮影による映像やDolby Atmosが採り入れられ、福山本人による監修のもと “ライブを超えたライブ” 体験と銘打たれた作品となっている。今回は特別に、本作の音響制作陣である染谷 和孝氏、三浦 瑞生氏、嶋田 美穂氏にお越しいただき、本作における音響制作についてお話を伺うことができた。
📷
左)三浦 瑞生氏:株式会社ミキサーズラボ 代表取締役社長 レコーディング、ミキシングエンジニア
中)嶋田 美穂氏:株式会社ヒューマックスエンタテインメント ポストプロダクション事業部 リレコーディングミキサー マネジャー
右)染谷 和孝氏:株式会社ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー
”理想のライブの音”に至るまで
Rock oN(以下、R):まずは、今回の企画の経緯について聞かせていただけますか?
染谷:私はこれまで嵐、三代目 J Soul Brothers(以下JSB3)のライブフィルム作品のAtmos ミックスを担当させていただきました。嶋田さんとは前作のJSB3からご一緒させていただいていて、その二作目ということになります。嶋田さんとのお話の中で、私たちが一番注意していたことは、音楽エンジニアの方とのチームワークの構築でした。三浦さんは長年福山さんの音楽を支えてこられた日本を代表するエンジニアさんであり、すでにチーム福山としての完成されたビジョンやチームワークはできあがっています。そこに我々がどのように参加させていただくかを特に慎重に考えました。Atmos制作内容以前に、チームメンバーとしての信頼を得るというのはとても大切な部分です。その配慮を間違えると「作品の最終着地点が変わるな」と感じていましたので、最初に三浦さんにAtmosで制作する上でどういうことができるのか、いくつかのご説明と方向性をご相談させていただきました。そして最終的に、三浦さんと福山さんの中でステレオミックスをまず制作していただいて、その揺るぎない骨子をAtmosミックスに拡張していく方向で制作を進めていくことに決まりました。
R:Atmosで収録した作品として今作で特徴的なのが、ライブの再現ではなく、“ライブを超えたライブ体験”というコンセプトを大事にされていますが、その方向性というのも話し合う中で決まっていったのですか?
染谷:収録が終わり、まず三浦さんがステレオミックスをされて、その後何曲かAtmosミックスを行い、福山さんにお聴かせする機会がありました。そこで福山さんが、オーディエンス(歓声)のバランスを自分の手で調整しながらAtmosの感覚、できることを探っていかれる時間がありました。
嶋田:そこで、閃かれた瞬間がありましたよね。
染谷:武道館特有の上から降ってくるような歓声やセンターステージに立っている福山さんでしか感じられない雰囲気をこのDolby Atmosなら“お客さんに体感・体験していただくことができる“と確信されたんだと思います。その後の作業でも、福山さんの「追体験じゃないんですよ」という言葉がすごく印象に残っています。まさにステージ上での実体験として感じていただくこと、それが私たちのミッションだったわけです。
R:では録音の段階ではどのような構想で進められていたのですか?
染谷:収録段階では、2階、3階と高さ方向での空間的なレイヤーをキャプチャーしたいと考えていました。
嶋田:最終的にオーディエンスマイクは合計で28本になりましたね。PAの前にも立ててみたりはしたのですが、音を聴くと微妙に位相干渉していたので結局は使っていません。
三浦:基本のステレオミックス用がまず20本あって、そこに染谷さんがAtmos用に8本足されました。基本的には、PAスピーカーの指向性からなるべく外れたところから、お客さんの声や拍手を主に狙うように設置しています。
R:オーディエンスの音源の配置は、基本マイク位置をイメージして置かれていますか?
染谷:そうですね。上下で100段階あるとしたら、2階は40、3階は90~100くらいに置いてレイヤー感を出しています。上から降りそそぐ歓声を表現するには、上、下の二段階ではなく、これまでの経験から中間を設けて階層的に降ろしていった方が結果的に良かったので、今回はこのように配置しました。
R:福山さんが向く方向、映像の画角によってアンビエントのバランス感は変えたのですか?
染谷:そこは変えていないです。それをすると音楽との相関関係から音像が崩れていくので、基本的にオーディエンスは一回決めたらあまり動かさない方が良いように思います。楽器の位置なども基本は、三浦さんと福山さんが決められたステレオ音源の位置関係を基準にしてAtmos的な修正をしています。
Atmosミックスのための下準備とは
R:収録後はどういった調整をされたのでしょうか?
染谷:録った音をシンプルにAtmosで並べると、当然位相干渉を起こしていますので、タイムアライメント作業で修正を行います。具体的な方法としてはAtmosレンダラーでステレオと9.1.4chを何度も切り替えながらディレイを使用してms単位での補正を行います。レンダラーでステレオにしたときに正しくコントロールできていない場合は、確実に位相干渉するので判断できます。また、嶋田さんのコメントの通り、会場の反射で位相干渉した音が録れている場合もありますから、マイクの選定なども含めて進めていきました。
R:ディレイということは遅らせていく方で調整されたのですか。
染谷:今回はそうですね。ドームなどの広い会場だったら早めていると思うのですが、武道館では遅らせていった方がいい結果が得られました。早めていくと空間が狭くなっていくので、だんだん武道館らしさがなくなり、タイトな方向になってしまうんです。ですので、よりリアルに感じていただけるよう、疑似的に武道館の空間を創りだしています。実際にはセンターステージの真ん中のマイクを基準にして、他のマイクがどのように聴こえてくるかを考えながらディレイ値を導き出していきました。
R:逆にステレオだとオーディエンスを後ろにずらしての調整とかは難しいと思いますがどうでした?
三浦:オーディエンスマイクの時間軸の位置はそのままで、音量バランスで調整しています。フロントマイクをメインにして、お客さんの声の近さなどからバランスをとりました。やっぱり一番気になるのは、ボーカルの声がオーディエンスマイクを上げることで滲まないように、そこは色々な方法で処理しています。
R:Atmos用に追加したマイクはステレオでも使われましたか?
三浦:使っています。Atmosとステレオである程度共通した雰囲気を作る方がいいのかなと思って。スピーカーの数が変わる以上は聴こえ方も変わるのは分かっていましたが、福山さんとの作業の中でステレオ、Atmosで共通のイメージを固めておかないといけないと思ったのもありますし、会場の雰囲気を伝えることでできる音も含まれていましたので。
染谷:三浦さんがステレオの制作をされている間、嶋田さんと私はひたすらiZotope RXを使った収録済みオーディエンス素材のノイズ除去、レストレーション作業の日々でしたね。
嶋田:トータル 3、4ヶ月くらいしてましたよね。
R:RXはある程度まとめてマルチトラックモードでの処理も使われました?
嶋田:これがすごく難しいんですけど、28トラック分まとめて処理する場合も、1トラックずつ処理する場合もあります。私はノイズの種類によって使い方を変えました。例えばお客さんの咳を消したい場合、一番近いマイクだけでなくすべてのマイクに入っているので、綺麗に消したくなりますよね。でもすべて消すと空間のニュアンスまで無くなってしまうので、そのバランスは悩みました。近すぎる拍手なども全部消すのか、薄くするのかの判断は、喝采の拍手なのか、しっとりとした拍手なのかという拍手のニュアンス込みで考えたりもしましたね。
染谷:消せば良いってものでもないんですよ。音に味が無くなるというか。拍手を取る時はDe-Clickを使いますが、Sensitivityをどこの値にもってくるか最初の初期設定が大事です。
R:その設定はお二人で共有されていたんですか?
嶋田:最初に染谷さんがノイズの種類に合わせて大体の値を設定していただいて、そこから微調整しながら進めました。
染谷:作業が進んでいくとだんだんその値から変わっていきますけどね(笑)。リハの時に録っておいたベースノイズをサンプルにして全体にレストレーションをかけることもしています。武道館の空調ノイズって結構大きいんですよ。でもSpectral De-Noiseを若干かけるくらいです。やっぱり抜きすぎてもダメなんです。抜かないのもダメですけど、そこはうまくコントロールする必要があります。
染谷:基本的にクラップなどの素材も音楽チームの方で作っていただいて、とても助かりました。
三浦:ステレオミックスの仕込みの段階で福山さんとミックスの方向性の確認をした際に、通常はオーディエンスのレベルを演奏中は低めにして、演奏後はかなり上げるというようにメリハリをつけていますが、今回は曲中もお客さんのハンドクラップ(手拍子)がしっかり聴こえるくらいレベルを上げ目にしてくれというリクエストがありました。「これは記録フィルムではなくエンターテイメントだから」ということも仰っていたので、ライブ中の他の場所から良いハンドクラップの素材を抜き出し、違和感がない程度にそれを足して音を厚くするなどのお化粧も加えています。
📷三浦氏が用意したAtmos用ステムは合計111トラックに及ぶ。28chをひと固まりとしたオーディエンスは、素材間の繋ぎやバランスを考慮した嶋田氏の細かな編集により何重にも重ねられた。時にはPCモニターに入りきらない量のトラックを一括で操作することもあるため、タイムライン上での素材管理は特に気を張る作業であったという。高解像度なAtmosに合わせたiZotope RXによる修正も、作業全体を通して取り組まれた。
R:その他に足された音源などはありますか?
三浦:シーケンスデータですね。ライブでは打ち込みのリズムトラック、ストリングスなどのシーケンスの音はある程度まとまって扱われます。それはライブPAで扱いやすいように設計されているからなのですが、映画やパッケージの制作ではもう少し細かく分割されたデータを使って楽曲ごとに音色を差別化したくなるので、スタジオ音源(CDトラックに収録されているもの)を制作した際の、シーケンスデータを使用しました。なのでトラック数は膨大な数になっています(笑)。
嶋田:480トラックくらい使われていますよね!Atmos用に持ってきていただいた時には111ステムくらいにまとめてくださりました。
三浦:楽曲ごとにキックの音作りなども変えたくなるので、するとどんどんトラック数は増えていってしまいますよね。作業は大変だけど、その方が良いものになるかなと。今回はAtmosということでオーディエンスも全部分けて仕込んだので、後々少し足したい時にPro Toolsのボイスが足りなくなったんですよ。オーディオだけで1TB以上あるので、弊社のシステムではワークに収まりきらず、SSDから直の読み書きで作業しました。Atmosは初めてのことだったので、これも貴重な体験だったなと思っています。
染谷:本当に想像以上にものすごい数の音が入っているんですよ。
嶋田:相当集中して聴かないと入っているかわからない音もあるんですが、その音をミュートして聴いてみると、やはり楽曲が成立しなくなるんです。そういった大切な音が数多くありました。
R:ステムをやり取りされる中で、データを受け渡す際の要望などはあったのですか?
染谷:僕からお願いしたのは、三浦さんの分けやすいようにということだけです。後から聞くと、後々の修正のことも考えて分けてくださっていたとのことでした。ありがとうございます。
三浦:ステレオではOKが出たとしても、環境が変わってAtmosになれば聴こえ方も変わるだろうというのがあったので、主要な音はできるだけ分けました。その方が後からの修正も対応できるかなと思って、シーケンスデータもいくつかに分けたり、リバーブと元音は分けてお渡ししましたよね。想定通り、Atmosになってからの修正も発生したので、分けておいてよかったなと思っています。
嶋田:その際はすごく助かりました。特に、オーディエンスマイクもまとめることなく28本分を個別で渡してくださったので、MAの段階ですぐに定位が反映できたはとてもありがたかったです。
チームで取り組むDolby Atmos制作
染谷:今回は三浦さんが音楽を担当されて、僕と嶋田さんでAtmosまわりを担当したんですけど、チームの役割分担がすごく明確になっているからこそできたことが沢山ありました。そのなかの一つとして、編集された映像に対して膨大な音素材を嶋田さんが並べ替えて、ミックスができる状態にしてくれる安心感というのはすごく大きかったです。今回、嶋田さんには、大きく2つのお願いをしました。①映像に合わせてのステム管理、使うトラックの選定、とても重要な基本となるAtmosミックス、②足りないオーディエンスを付け足すという作業をしてもらいました。何度も言っちゃいますが、すごいトラック数なので並べるのも大変だったと思います。
三浦:こちらからお渡ししたのはライブ本編まるまる一本分の素材なので、そこから映画の尺、映像に合わせての調整をしていただきました。
嶋田:映像編集の段階で一曲ずつ絶妙な曲間にするための尺調整や曲順の入れ替えがあったり、エディットポイントが多めで、いつもより時間をかけた記憶があります。特に普段のMAでは扱わないこのトラック数を一括で動かすとなると、本当に神経を使う作業になるんですよ。修正素材を張り込む時にも、一旦別のタイムラインに置いて、他のオーディオファイルと一緒に映像のタイムラインに置いたりと、とにかくズレないように工夫をしていました。
R:Atmosで広げるといってもLCRを中心に作られていたなと拝見して感じているんですけれど、やはり映画館ではセンタースピーカーを基本に、スクリーンバックでの音が中心になりますか。
嶋田:映像作品なので、正面のメインステージの楽器の配置、三浦さんのステレオのイメージを崩さないバランスで置きました。空間を作るのはオーディエンスマイクを軸にしています。さらに立体感を出すためにギターを少し後ろに置いてみたりもしました。ボーカルはセンター固定です。しっかりと聴かせたいボーカルをレスポンス良く出すために、LRにこぼすなどはせずに勝負しました。なんですが、、、ラスト2曲はセンターステージの特別感を出すために中央に近い定位に変えています。
染谷:福山さんからの定位に関するリクエスト多くありましたね。印象的な部分では今さんのギターを回したり、SaxやStringsの定位、コーラスの定位はここに置いて欲しい、など曲ごとの細かな指定がありました。
R:ベッドとオブジェクトの使い分けについてはどう設計されました?
嶋田:基本的には楽器はベッド、オーディエンスをオブジェクトにしました。それでもすべてのオーディエンスマイクをオブジェクトにするとオブジェクト数がすぐオーバーするので、その選定はだいぶ計算しました。
染谷:やっぱりどうしてもオブジェクトの数は足りなくなります。 Auxトラックを使用して、オブジェクトトラックに送り込む方法もありますけど、映像の変更が最後まであったり、それに伴うオーディエンスの追加が多くなると、EQを個別に変えたりなどの対応がとても複雑になります。瞬時の判断が求められる作業では、脳内で整理しながら一旦AUXにまとめてレンダラーへ送っている余裕は無くなってきます。やはり1対1の方が即時の対応はしやすかったです。今考えているのは、ベッドってどこまでの移動感を表現できるのか?ということです。先ほどギターを回したと言いましたが、それも実はベッドなんです。ベッドだとアレイで鳴るので、どこの位置で回すかということは考えないといけませんでしたが、最終的に上下のファンタム音像を作って回してあげるとHomeでもCinemaでもある程度の上下感を保って回ってくれることが分かりました。絶対に高さ方向に動くものはすべてオブジェクトじゃなきゃダメ!という固定概念を疑ってみようかなと思って挑戦してみたんですけど。嶋田さんはどのように感じましたか?
嶋田:こんなにベッドで動くんだ、というのが素直な感想です。私も動くものや高さを出すものはオブジェクトじゃないと、という気持ちがずっとあったんですけど、今のオブジェクト数の制約の中ではこういった工夫をしていかないといけないなと思っています。
📷Dolby Atmos Home環境でのプリミックスは、Atmosミックスを担当したお二人が在籍するヒューマックスエンタテインメント、SONAのスタジオが使用された。劇場公開作品でもHome環境を上手に活用することは、制作に伴う時間的・金銭的な問題への重要なアプローチとなりえる。その為には、スピーカーの選定やモニターシステムの調整などCinema環境を意識したHome環境の構築が肝心だ。なお、ファイナルミックスは本編が東映のダビングステージ、予告編がグロービジョンにて行われた。
シネマ環境を意識したプリミックス
染谷:今回、ダビングステージを何ヶ月も拘束することはできないので、Dolby Atmos Home環境でダビングのプリミックスを行いました。Homeのスタジオが増えてきていますが、Homeで完結しない場合もこれから多く出てくると思うので、今回はこういった制作スタイルにトライしてみようと考えました。
嶋田:Homeでのプリミックスでまず気をつけなければならないのが、モニターレベルの設定です。映画館で欲しい音圧感が、普段作業している79dBCでは足りないなと感じたので、Homeから82dBCで作業していました。
染谷:最終確認は85dBCでモニターするべきなんですが、作業では82dBCくらいが良いと感じています、スピーカーとの距離が近いスタジオ環境では85dBCだと圧迫感があって長時間の作業が厳しくなってしまいます。
嶋田:ダビングステージでは空間の空気層が違う(スピーカーとの距離が違う)ので、ダビングステージの音質感や、リバーブのかかり方をHomeでもイメージしながら作業しました。またダビングステージは間接音が多く、Homeでは少し近すぎるかなというクラップも、ダビングステージにいけばもう少し馴染むから大丈夫だとサバ読みしながらの作業です。
染谷:Dolby Atmos Cinemaの制作経験がある我々は、ある程度その変化のイメージが持てますが、慣れていない方はHomeとの違いにものすごくショックを受けられる方も多いと聞いています。三浦さんはどうでした?
三浦:やはり空間が大きいなと、その点ではより武道館のイメージにより近くなるなとは感じましたね。
R:ダビングではどう鳴るか分かって作業しているかが本当に大事ですよね。やはりダビングは、映画館と同等の広さの部屋になりますからね。
染谷:直接音と間接音の比率、スピーカーの距離が全然違いますからね。制作される際はそういったことを含めて、きちんと考えていかないといけません。
嶋田:今回Homeからダビングステージに入ってのイコライジング修正もほぼなかったですね。
染谷:ダビング、試写室、劇場といろんな場所によっても音は変わるんだなというのは思います。どれが本当なんだろうなと思いながらも、現状では80点とれていればいいのかなと思うことにしています。
R:それは映画関係の方々よく仰ってます。ある程度割り切っていかないとやりようがないですよね。三浦さんは今回初めてAtmosの制作を経験されましたが、またやりたいと思われます?
三浦:このチームでなら!
染谷・嶋田:ありがとうございます(笑)。
三浦:染谷さん、嶋田さんには、客席のオーディエンスマイクのレベルを上げると、被っている楽器の音まであがっちゃうんですが、そういう音も綺麗に取っていただいて。
染谷:でも、その基本となる三浦さんのステムの音がめちゃくちゃに良かったです。
嶋田:聴いた瞬間に大丈夫だと思いましたもんね。もう私たちはこれに寄り添っていけばいいんだと思いました。
染谷:今回は特に皆さんのご協力のもと素晴らしいチームワークから素敵な作品が完成しました。短い時間ではありましたが、三浦さんのご尽力で私たち3名のチーム力も発揮できたと感じています。プロフェッショナルな方達と一緒に仕事をするのは楽しいですね。
三浦:そういった話で言うと、最後ダビングステージの最終チェックに伺った際、より音がスッキリと良くなっていると感じたんです。なぜか聞いたらクロックを吟味され変えられたとのことで、最後まで音を良くするために試行錯誤されるこの方達と一緒にやれて良かったなと感じています。
染谷:その部分はずっと嶋田さんと悩んでいた部分でした。DCPのフレームレートは24fpsですが、実際の収録や音響制作は23.976fpsの方が進めやすいです。しかし最終的に24fpsにしなくてはいけない。そこでPro Toolsのセッションを24fpsに変換してトラックインポートかけると、劇的に音が変わってしまう。さらにDCP用Atmosマスター制作時、.rplファイルからMXFファイル(シネマ用プリントマスターファイル)に変換する際にも音が変わってしまうんです。
この2つの関門をどう乗り越えるかは以前からすごく悩んでいました。今回はそれを克服する方法にチャレンジし、ある程度の合格点まで達成できたと感じています。どうしたかというと、今回はSRC(=Sample Rate Convertor)を使いました。Pro Toolsのセッションは23.976fpsのまま、SRCで24fpsに変換してシネマ用のAtmosファイルを作成したところ、三浦さんに聴いていただいたスッキリした音になったんです!今後もこの方法を採用していきたいですね。
R:SRCといっても色々とあると思うのですが、どのメーカーの製品を使われたんですか?
嶋田:Avid MTRXの中で、MADI to MADIでSRCしました。以前から24fpsに変換するタイミングでこんなに音が変わってしまうんだとショックを受けていたんですが、今回で解決策が見つかって良かったです。
染谷:MXFファイルにしたら音が変わる問題も実は解決して、結局シネマサーバーを一度再起動したら改善されました。普段はあまり再起動しない機器らしいので、一回リフレッシュさせてあげるのは特にデジタル機器では大きな意味がありますね。こういった細かなノウハウをみんなで情報共有して、より苦労が減るようになってくれればと願っています。
R:この手の情報は、日々現場で作業をされている方ならではです。今日は、Atmos制作に関わる大変重要なポイントをついたお話を沢山お聞きすることができました。ありがとうございました。
📷本作を題材に特別上映会・トークセッションも今年頭に開催された。
本作はアーティストの脳内にある“ライブの理想像”を追求したことで、Dolby Atmosによるライブ表現の新たな可能性が切り拓かれた作品に仕上がっている。音に関しても、アーティストが、ステージで聴いている音を再現するという、新しい試みだ。それは、アーティストと制作チームがコミュニケーションを通じて共通のビジョンを持ち制作が進められたことで実現された。修正やダビングといったあらゆる工程を見越した上でのワークフローデザインは、作業効率はもちろん最終的なクオリティにも直結するということが、今回のインタビューを通して伝わってきた。入念な準備を行い、マイクアレンジを煮詰めることの重要性を改めて実感する。そして何より、より良い作品作りにはより良いチーム作りからという本制作陣の姿勢は、イマーシブ制作に関係なく大いに参考となるだろう。
FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM言霊の幸わう夏@NIPPON BUDOKAN 2023
監督:福山雅治
出演:福山雅治、柊木陽太
配給:松竹
製作:アミューズ
©︎2024 Amuse Inc.
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/16
Xylomania Studio「Studio 2」様 / 11.2.6.4イマーシブによる”空間の再現”
スタジオでのレコーディング / ミキシングだけでなく、ライブ音源、映画主題歌、ミュージカルなど多くの作品を手掛ける古賀 健一 氏。音楽分野におけるマルチチャンネル・サラウンド制作の先駆者であり、2020年末には自身のスタジオ「Xylomania Studio」(シロマニアスタジオ)を手作りで9.4.4.5スピーカー・システムへとアップデートしたことも記憶に新しいが、そのXylomania Studioで2部屋目のイマーシブ・オーディオ対応スタジオとなる「Studio 2」がオープンした。11.2.6.4という、スタジオとしては国内最大級のスピーカー・システムが導入され、Dolby Atmos、Sony 360 Reality Audio、5.1 Surround、ステレオといったあらゆる音声制作フォーマットに対応するだけでなく、立体音響の作曲やイマーシブ・コンサートの仕込みも可能。さらに、120inchスクリーンと8Kプロジェクタも設置されており、ポストプロダクションにも対応できるなど、どのような分野の作業にも活用できることを念頭に構築されている。この超ハイスペック・イマーシブ・レンタル・スタジオについて、オープンまでの経緯やそのコンセプトについてお話を伺った。
Beatlesの時代にイマーシブ表現があったら
Xylomania Studio 古賀 健一 氏
Official髭男dismのApple Music空間オーディオ制作や第28回 日本プロ音楽録音賞 Immersive部門 最優秀賞の受賞など、名実ともに国内イマーシブ音楽制作の最前線を走る古賀 健一 氏。その活躍の場はコンサートライブや映画主題歌など多岐に渡り、自身の経験をスタジオ作りのコンサルティングなどを通してより多くのエンジニアやアーティストと共有する活動も行っている。
まさにイマーシブの伝道師とも呼べる古賀氏だが、音の空間表現に関心を持ったのはDolby Atmosが生まれるよりもはるか以前、彼の学生時代にまで遡るという。「現場ではたくさんの楽器、たくさんの音が鳴っているのに、それを表現する手段がステレオしかないということにずっと疑問を持っていた」という古賀氏だが、学生時代に出会ったSACDではじめて5.1サラウンドを体験して衝撃を受ける。
「これこそが、音楽表現のあるべき姿だ」と感じた古賀氏だが、「当時はPro Tools LEにサラウンドオプションを追加するお金もなかった」という中で工夫を重ねて再生システムを構築し、5.1サラウンド作品をひたすら聴いていたという。古賀氏といえば、自身のスタジオであるXylomania StudioをDIYでイマーシブ対応に改修し、その様子をサウンド&レコーディング・マガジン誌上で連載していたこともあるが、彼の飽くなき探究心とDIY精神はすでにこのころから備わっていたようだ。
その後も独自に空間表現を探究していた古賀氏だが、Dolby Atmosの登場によって、「これなら、もっと自由でもっと手軽に、音楽表現を追求できるんじゃないか」と感じたことで自身のスタジオをイマーシブ・オーディオ対応へと改修することを決める。しかし、「当初は5.1.4、なんなら、5.1.2で十分だと考えてました。そうしたら、Netflixが出したガイドラインが7.1.4となっていて、個人で用意できる予算では無理だと悟った」ことで、法人としてのXylomania Studioを設立することを決意したのだという。それから最初のスタジオができるまでについては、サンレコ誌への連載が今でもWEBで読めるので、ぜひそちらをご覧いただきたい。
Xylomania Studioがイマーシブ制作に対応したのが2020年12月。それから3年の時を経て、同社ふたつ目のイマーシブ・スタジオがオープンした理由や、この間に古賀氏自身の心境、イマーシブ・オーディオを取り巻く環境に変化はあったのだろうか。「ぼく自身のことを言えば、イマーシブへの関心はますます深まるばかりです。探究したいことはどんどん出てくる。周囲の環境については、やはりApple Musicの”空間オーディオ”の影響は大きいです。それ以前と比べると、関心を持ってくれるひとは確実に増えた。もともと、ぼくはお金になるかどうかは考えて動かないんです。Xylomania Studioも、ただ自分が探究したいという思いだけで作ったものだったので、成功する目論見なんてなかった。それが、ビジネスとしてきちんと成立するところまでたどり着けたことについては、仲間たちと”神風が吹いたね”なんて言っています」という。
今回オープンしたXylomania Studio「Studio 2」の計画がはじまったのは2022年夏。より多くの人にイマーシブ表現の可能性を体験してほしいと考えた古賀氏が、イマーシブ・スタジオの外部貸出を検討したことがスタートとなっている。
音楽ジャンルによってはイマーシブ表現が合わないものもある、という意見もあるが、これに対して古賀氏の「モノにはモノの、ステレオにはステレオのよさがあるのは確か。でも、ぼくは”イマーシブが合わないジャンル”なんてないと思ってます。だって、もしBeatlesの時代にイマーシブ表現があったら、彼らは絶対にやってたと思いませんか?」という言葉には、思わず深く頷いてしまった。「ふたつ目のスタジオを作ろうという気持ちになれたのも、空間オーディオによってイマーシブ制作がビジネスの軌道に乗ることができたからこそ。」という古賀氏。そうした仕事を通して関わったひとたちへの恩返しのためにも、国内のイマーシブ・シーンを盛り上げるようなアクションを積極的に取っていきたいという気持ちがあるようだ。
当初はStudio 1を貸出し、その間に自身が作業をおこなうための部屋を作ろうとしていたようだが、さまざまな紆余曲折を経て、結果的にはStudio 1をも超える、国内最高峰のイマーシブ・レンタル・スタジオが完成した。誌面で語り尽くせぬ豊富なエピソードとともに、以下、Xylomania Studio「Studio 2」のシステムを見ていきたい。
11.2.6.4イマーシブによる”空間の再現”
📷「Studio 2」はサイドの壁面色違いの箇所にインウォールでスピーカーを設置、この解決策により窮屈感はまったくなく、実際よりも広々とした居心地を実現した。肝心のサウンドについても映画館をはるかに超える音響空間を創出している。
11.2.6.4インウォール・スピーカー・システムによるイマーシブ再生環境、Danteを駆使したネットワーク伝送、ハイクオリティなブースとしての機能、大型スクリーンと8Kプロジェクタなど、Xylomania Studio「Studio 2」のトピックは枚挙にいとまがないが、このスタジオの最大の特徴は”限りなく本番環境に近い音場を提供できること”である。Studio 2の先鋭的かつ挑戦的なスペックのすべては、スタジオの中でどれだけ作品の最終形に近い響きを提供できるか、という目的に集約されているからだ。
古賀氏は「自分のスタジオでこう鳴っていれば例えばダビングステージではこういう音になるだろう、ということを想像することはできます。でも、その差を常に想像しながら作業を続けることはすごいストレス。仕込んだ音を現場で鳴らした時に、スタジオで意図した通りに鳴るような、本当の意味での”仕込み”ができる部屋を作りたかった」ということのようだ。「この部屋でミックスしたものをそのままライブに持ち込める、ダビングステージで作業したミックスを持ち込めばそのままここで配信用のマスターが作れる、そんなスタジオにしたかった。」
この、言わば音が響く空間を再現するというコンセプトを可能にしているのは、まぎれもなく11.2.6.4イマーシブ・システムだ。Studio 2のスピーカー配置は一般的なDolby Atmosレイアウトをもとに、サイド・リアとハイトは左右に3本ずつのスピーカーを持ち、それによって映画館やダビングステージのアレイ再生やディフューズ・サラウンド音場を再現している点が大きな特徴。実は、Studio 2の再生環境はその計画の途中まで既存のStudio 1と同じ9.2.6.4のシステムを組む方向で進んでいたのだという。しかし、古賀氏のある経験がきっかけで今の11.2.6.4へと拡張されることになったようだ。「ある映画主題歌の仕事でダビングステージを訪れた時、リア方向に振った音が思っていたより後方まで回り込んだんです。今までのニアフィールドの環境で映画作品の最終形をイメージすることには限界があると感じ、アレイ再生ができる環境を作るために急遽スピーカーを2本追加することにしました。」
📷フロントLCRに採用されたci140。センターとLRの間がサブウーファーのci140sub。
その11.2.6.4イマーシブ・システムを構成するスピーカーは、すべてPCMのインウォール・モデルである「ciシリーズ」。フロントLCR:ci140、ワイド&サラウンド:ci65、ハイト:ci45、ボトム:ci30、SW:ci140sub となっており、2台のサブウーファーはセンター・スピーカーとワイド・スピーカーの間に配置されている。
スピーカーをインウォール中心にするというアイデアも、計画を進める中で生まれたものだという。先述の通り、当初は今のStudio 1を貸出している間に自身が作業をおこなうための部屋を作ろうとしていたため、もともとレコーディング・ブースとして使用していたスペースに、スタンド立てのコンパクトなイマーシブ再生システムを導入しようと考えていたという。だが、スピーカーをスタンドで立ててしまうとブースとして使用するには狭くなりすぎてしまう。ブースとしての機能は削れないため、”もっとコンパクトなシステムにしなければ”という課題に対して古賀氏が辿り着いた結論が、以前にコンサルティングを請け負ったスタジオに導入した、”インウォール・スピーカー”にヒントを得たようだった。システムを小さくするのではなく、逆に大きくしてしまうことで解決するという発想には脱帽だ。
モデルの決定にはメーカーの提案が強く影響しているとのことだが、「ci140は国内にデモ機がなかったので、聴かずに決めました(笑)」というから驚きだ。古賀氏は「チームとして関わってくれる姿勢が何よりも大事。こういう縁は大切にしたいんです」といい、その気概に応えるように、PMCはその後のDolby本社との長いやりとりなどにおいて尽力してくれたという。
📷上左)サラウンドチャンネルをアレイ再生にすることで、映画館と同じディフューズ・サラウンドを再現することを可能にしている。上右)サイド/ワイド/リアはci65。後から角度を微調整できるように固定されておらず、インシュレーターに乗せているだけだという。下左)ハイト・スピーカーはci45。下右)ボトム・スピーカーを設置しているため、Dolby Atmosだけではなく、Sony 360 Reality Audioなどの下方向に音響空間を持つイマーシブ制作にも対応可能。「ボトムはリアにもあった方がよい」という古賀氏の判断で、フロント/リアそれぞれに2本ずつのci30が置かれている。
最後まで追い込んだアコースティック
Studio 2が再現できるのは、もちろん映画館の音響空間だけではない。マシンルームに置かれたメインのMac Studioとは別に、Flux:: Spat Revolution Ultimate WFS Add-on optionがインストールされたM1 Mac miniが置かれており、リバーブの処理などを専用で行わせることができる。このSpat Revolution Ultimateに備わっているリバーブエンジンを使用して、Studio 2ではさまざまな音響空間を再現することが可能だ。必要に応じて、波面合成によるさらなるリアリティの追求もできるようになっている。
古賀氏が特に意識しているのは、コンサートライブ空間の再現。「このスタジオを使えば、イマーシブ・コンサートの本番環境とほとんど変わらない音場でシーケンスの仕込みができます。PAエンジニアはもとより、若手の作曲家などにもどんどん活用してほしい。」というが、一方で「ひとつ後悔しているのは、センターに埋め込んだサブウーファーもci140にしておけば、フロンタルファイブのライブと同じ環境にできたこと。それに気付いても、時すでに遅しでしたけど」と言って笑っていた。常に理想を追求する姿勢が、実に古賀氏らしい。
📷Flux:: Spat Revolution Ultimate WFS Add-on option
さらに、Spat Revolution UltimateはStudio 2をレコーディング・ブースとして使用した際にも活用することができる。マイクからの入力をSpat Revolution Ultimateに通し、リバーブ成分をイマーシブ・スピーカーから出力するというものだ。こうすることで、歌手や楽器の音とリバーブを同時に録音することができ、あたかもコンサートホールや広いスタジオで収録されたかのような自然な響きを加えることができる。「後からプラグインで足すだけだと、自然な響きは得られない。ぼくは、リバーブは絶対に録りと同時に収録しておいた方がいいと考えています。」
こうした空間再現を可能にするためには、当然、スピーカーのポジションや角度、ルームアコースティック、スピーカーの補正などをシビアに追い込んでいく必要がある。Studio 2はもともと8畳程度の小さな空間に造られており、広さを確保するために平行面を残さざるを得なかったというが、その分、「内装工事中に何度も工事を止め、何度もスピーカーを設置して、実際に音を鳴らしてスピーカーの位置と吸音を追い込んでいきました」という。その結果、どうしても低域の特性に納得できなかった古賀氏は、工事の終盤になってスピーカーの設置全体を後方に5cmずらすことを決めたという。「大工さんからしたら、もう、驚愕ですよ。でも、おかげで音響軸は1mmのずれもなくキマってます。極限まで追い込んだ音を体験したことがある以上、半端なことはしたくなかった。」
電気的な補正を担っているのはTrinnov Audio MC-PROとAvid Pro Tools | MTRX II。MC-PROはDante入力仕様となっており、先にこちらで補正をおこない、MTRX II内蔵のSPQ機能を使用してディレイ値やEQの細かい部分を追い込んでいる。「MC-PROの自動補正は大枠を決めるのにすごく便利。SPQは詳細な補正値を確認しながらマニュアルで追い込んでいけるのが優れている」と感じているようだ。
📷「最初から導入を決めていた」というTrinnov MC PROは数多くの実績を持つ音場補正ソリューション。MC PROもパワーアンプもDante入力を持つモデルを選定しており、システム内の伝送はすべてDanteで賄えるように設計されている。
テクノロジーとユーティリティの両立
📷「Studio 2」のミキシング・デスク。コントロール・サーフェスはPro Tools | S1とPro Tools | Dockの組み合わせ。デスク上にはRedNet X2PやDAD MOMも見える。
Studio 2のシステム内部はすべてデジタル接続。Studio 1 - Studio 2間の音声信号がMADIである以外は、パワーアンプの入力まですべてDanteネットワークによって繋がっている。モニターセクションの音声信号はすべて96kHz伝送だ。パッチ盤を見るとキャノン端子は8口しかなく、DanteやMADI、HDMIなどの端子が備わっていることにスタジオの先進性が見て取れる。
メインMacはMac Studio M2 UltraとSonnet DuoModo xEcho IIIシャーシの組み合わせ。MacBookなどの外部エンジニアの持ち込みを想定して、HDXカードをシャーシに換装できるこの形としている。オーディオI/OはAvidのフラッグシップであるPro Tools | MTRX II。「MTRX IIになって、DanteとSPQが標準搭載になったことは大きい。」という。オプションカードの構成はAD x2、DA x2、Dante x1、MADI x1、DigiLink x2となっており8個のスロットをフルに使用している。確かに、同じ構成を実現するためには初代MTRXだったらベースユニットが2台必要なところだった。合計3組となるDigiLinkポートは、それぞれ、ステレオ、5.1、Dolby Atmos専用としてI/O設定を組んでおり、出力フォーマットが変わるたびにI/O設定を変更する必要がないように配慮されている。
📷左)本文中にもある通り「初代MTRXなら2台導入する必要があった」わけで、結果的にMTRX IIの登場は「Studio 2」の実現にも大きく貢献したということになる。中)メインMacをMac Studio + TBシャーシとすることで、クリエイターがMacを持ちこんだ場合でもHDXカードを使用した作業が可能になっている。RMU I/FのCore 256はあらゆるフォーマットの音声をRMUに接続。「Studio 2」ではDanteまたはMADIを状況に応じて使い分けている。
Dolby Atmosハードウェア・レンダラー(HT-RMU)はMac miniでこちらもCPUはM2仕様。Apple Siliconは長尺の作品でも安定した動作をしてくれるので安心とのこと。RMUのI/FにはDAD Core 256をチョイス。Thunderbolt接続でDante / MADIどちらも受けられることが選定の決め手になったようだ。96kHz作業時はDante、48kHzへのSRCが必要な時はDirectOut Technologies MADI.SRCを介してMADIで信号をやりとりしているという。
Studio 2のサイドラックには、ユーティリティI/OとしてThunderbolt 3オプションが換装されたPro Tools | MTRX Studioが設置されているほか、Focusrite RedNet X2PやNeumann MT48も見える。Studio 2でちょっとした入出力がほしくなったときに、パッと対応できるようにしてあるとのこと。「作曲家やディレクターにとってソフトウェアでの操作はわかりにくい部分があると思うので、直感的に作業できるように便利デバイスとして設置してある」という配慮のようだ。
📷左右のサイドラックには、Logic ProやSpat RevolutionがインストールされたMacBook Pro、フロントパネルで操作が可能なMTRX Studio、各種ショートカットキーをアサインしたタブレット端末などを設置。
個人的に面白いと感じたのは、AudioMovers Listen ToとBinaural Rendererの使い方だ。DAWのマスター出力をインターネット上でストリーミングすることで、リモート環境でのリアルタイム制作を可能にするプラグインなのだが、この機能を使ってスマートフォンにリンクを送り、AirPodsでバイノーラル・ミックスのチェックを行うのだという。たしかに、こうすればわざわざマシンルームまで行ってMacとBluetooth接続をしなくて済んでしまう。
操作性の部分でもこれほどまでに追い込まれているStudio 2だが、「それでも、これをこう使ったらできるんじゃないか!?と思ったことは、実際にはほとんどできなかった」と古賀氏は話す。古賀氏のアイデアは、進歩するテクノロジーをただ追うのではなくむしろ追い越す勢いで溢れ出しているということだろう。
「Amazonで見つけて買った(笑)」というデスクは、キャスターと昇降機能付き。作業内容やフォーマットによってミキシングポイントを移動できるように、ケーブル長も余裕を持たせてあるという。「この部屋にはこれだけのスペックを詰め込みましたけど、内覧会で一番聞かれたのが、そのデスクと腰にフィットする椅子、どこで買ったんですか!?だった(笑)」というが、確かに尋ねたくなる気持ちもわかるスグレモノだと感じた。
紆余曲折を経て、結果的に古賀氏自身のメインスタジオよりも高機能・高品質なスタジオとなったStudio 2だが、このことについて古賀氏は「9.1.4のStudio1を作ってからの3年間で、9.1.6に対応したスタジオは国内にだいぶ増えたと思ってます。だったら、ぼくがまた同じことをやっても意味がない。ぼくが先頭を走れば、必ずそれを追い越すひとたちが現れます。そうやって、国内シーンの盛り上がりに貢献できたらいい」と語ってくれた。「このスタジオのようなスペックが当たり前になった暁には、ぼくはここを売ってまた新しい部屋をつくります!今度は天井高が取れる場所がいいな〜」といって笑う古賀氏だが、遠くない将来、きっとその日が来るのだろうと感じた。
*ProceedMagazine2024号より転載
Music
2024/08/13
Bob Clearmountain〜 伝説のエンジニア ボブ・クリアマウンテンが描くミックス・ノウハウのすべて 〜
去る4月、伝説のレコーディング・エンジニアであるボブ・クリアマウンテン氏が来日。東京・麻布台のSoundCity B Studioにおいて「伝説のエンジニア ボブ・クリアマウンテンが描くミックス・ノウハウのすべて」と題したセミナー・イベントが開催された。受講者20名限定で開催されたこのイベントでは、注目を集める“音楽のイマーシブ・ミックス”について、ボブ・クリアマウンテンがそのワークフローとテクニックを約3時間にわたって解説。途中、一般には公開されていない著名な楽曲のイマーシブ・ミックスが特別に披露されるなど、大変充実した内容のイベントとなった。ここではその模様をダイジェストでお伝えしたい。
イマーシブ・オーディオへの取り組み
Bob Clearmountain氏:私は音楽のサラウンド・ミックスにいち早く取り組んだエンジニアのひとりだと思いますが、イマーシブ・オーディオに関しては、妻(注:Apogee ElectronicsのCEO、ベティー・ベネット氏)から、“これは素晴らしいテクノロジーだから、ぜひ取り組むべきだ”と背中を押されたことがきっかけになりました。実際に音楽のイマーシブ・ミックスを手がけたのは、皆さんご存知のザ・バンドが最初です。私はザ・バンドの名盤3作品の5.1chミックスを手がけたのですが、その中の1枚「カフーツ」というアルバムの作業をしているときに、レコード会社の担当者から、“Dolby Atmosでもミックスしてみないか”というオファーがあったのです。
その後間もなく、ジョー・ボナマッサの「Time Clocks」というアルバムもDolby Atmosでミックスしました。これが私にとって音楽のイマーシブ・ミックスの2作目になります。このアルバムのプロデューサーであるケヴィン・シャーリーはオーストラリア出身で、ディジュリドゥのサウンドがとても印象的な作品です。このアルバムは何年も前の作品であったため、レーベル・サイドもアーティスト本人も、最初はDolby Atmos化にあまり関心がありませんでした。ただ、私は自分のスタジオをDolby Atmosに対応させたばかりだったので、Dolby Atmosバージョンをジョー・ボナマッサ本人、ケヴィン・シャーリー、レーベルのスタッフに聴いてもらったのです。そうしたら彼らはそのサウンドに感銘を受け、“これは素晴らしい、ぜひリリースしよう”ということになりました。それがきっかけで、ケヴィンも自身のスタジオをDolby Atmosに対応させましたよ(笑)。
私は1980年代、ロキシー・ミュージックの「Avalon」というアルバムをミックスしましたが、あれだけ様々な要素が含まれている作品がステレオという音場の中に収められているのはもったいないと前々から感じていました。もっと音場が広ければ、要素をいろいろな場所に定位できるのに… という想いが、常に頭の中にあったのです。もちろんそれは、イマーシブ・オーディオどころか、サラウンドが登場する以前の話で、いつかその想いを叶えたいと思っていました。その後、念願かなって「Avalon」のサラウンド・ミックスを作ることができました。そしてイマーシブ・オーディオの時代が到来し、「Avalon」のプロデューサーであるレット・ダヴィースと“これは絶対にDolby Atmosでミックスするべきだ”ということになったのです。
Dolby Atmosバージョンの「Avalon」を体験された方なら分かると思いますが、かなりの要素が後方に配置されており、そのようなバランスの楽曲は珍しいのではないかと思います。たとえば、印象的な女性のコーラスも後方に配置されています。なぜこのようなバランスにしたかと言えば、ステレオ・ミックスを手がけたときもそうだったのですが、演劇のような音響にしたいと考えたからです。楽曲に登場する演者、ボーカリスト、プレーヤーを舞台に配置するようなイメージでしょうか。ですので、キーとなるブライアン・フェリーのボーカルはフロント・センターですが、他の要素は異なる場所に定位させました。
イマーシブ・ミックスというと、多くの要素が動き回るミックスを想起する方も多いのではないかと思います。もちろん、そういうミックスも可能ですが、Dolby Atmosバージョンの「Avalon」ではそういうダイナミックなパンニングはほとんどありません。言ってみれば静的なミックスであり、ジェット機やヘリコプター、アイアンマンが登場するようなミックスではないのです。
SSL 4000Gを使用したイマーシブ・ミックス
📷オーディオの入出力を担うのはApogeeのSymphony I/O Mk II。Atmosミックスとステレオミックスを同時に作るワークフローではこれらを切り替えながら作業を行うことになるが、その際に素早く切り替えを行うことができるSymphony I/O Mk IIのモニター・コントロール機能は重宝されているようだ。SSL 4000Gの後段にある「プリント・リグ」と呼んでいるセクションで下図のようなセッティングを切り替えながら制作が進められていく。
私はイマーシブ・ミックスもアナログ・コンソールのSSL 4000Gでミックスしています。SSL 4000Gには再生用のAvid Pro Toolsから72chのオーディオが入力され、そしてミックスしたオーディオは、“プリント・リグ”と呼んでいる再生用とは別のPro Toolsにレコーディングします。“プリント・リグ”のPro Toolsは、最終のレコーダーであると同時にモニター・コントローラーとしての役割も担っています。
そして再生用Pro Toolsと“プリント・リグ”のPro Tools、両方のオーディオ入出力を担うのは、ApogeeのSymphony I/O Mk IIです。私は、ステレオ・ミックスとDolby Atmosミックスを同時に作りますが、Symphony I/O Mk IIでのモニター・コントロール機能は、まさしく私のワークフローのために搭載されているような機能と言えます。私は7.1.4chのDolby Atmosミックスと、ニア・フィールド・スピーカーやテレビなどに送る3組のステレオ・ミックスを切り替えながら作業を行いますが、Symphony I/O Mk IIではそういったワークフローに最適な機材です。ステレオ・ペアを最大16組作成することができ、非常に柔軟な作業環境を構築できるため、過去に手がけた5.1chのサラウンド・ミックスと比較しながらの作業も容易です。
肝心のミキシングについて、アナログ・コンソールのSSL 4000Gで一体どのようにイマーシブ・ミックスを行っているのか、疑問に感じた人もいるかもしれません。しかし決して特別なことを行っているわけではなく、そのルーティングはストレートでシンプルです。SSL 4000Gに入力した信号は、チャンネル・ストリップで調整した後、Dolby Atmos用のチャンネルとして、スモール・フェーダーのトリム・チャンネルを活用して送っているのです。スモール・フェーダーは基本ユニティーで使用し、レベルはラージ・フェーダーの方で調整してから、ポスト・フェーダーでスモール・フェーダーに送ります。スモール・フェーダーから2本のスピーカーに同時に送ることは基本ありませんが、隣り同士のスピーカーに同じ信号を送って、パンでバランスを調整することはあります。また、このルーティングですと、基本オートメーションを使用することができません。オートメーションを使いたいときは、専用のバスを作り、そちらに送ることで対処しています。
私のSSL SL4000Gは特別仕様で、VCAとバス・コンプレッサーが4基追加で備わっています。標準のステレオ・バスのDCを、追加搭載した4基のVCA / バス・コンプレッサーにパッチすることで、すべてのバス・コンプレッサーの挙動をスレーブさせ、ステレオ・ミックスとマルチ・チャンネル・ミックスのコンプレッションの整合性を取っているのです。ただ、これだけの構成では5.1chのサラウンド・ミックスには対応できても、7.1.4chのイマーシブ・ミックスには対応できません。それでどうしようかと悩んでいたときに、Reverb(編注:楽器・機材専門のオンライン・マーケットプレイス)でSSLのVCA / バス・コンプレッサーをラック仕様にノックダウンした機材を発見し、それを入手して同じようにDC接続することで、7.1.4chのイマーシブ・ミックスに対応させました。これはとてもユニークなシステムで、おそらく世界中を探しても同じようなことをやっている人はいないと思います(笑)。もちろん、サウンドは素晴らしいの一言です。
Dolby Atmosミックスは、7.1.2chのベッドと最大128個のオブジェクトで構成されますが、私は基本的にベッドルーム(7.1.2)でミックスを行います。オブジェクトは動く要素、たとえば映画に登場するヘリコプターなどのサウンドを再現する上では役に立ちますが、音楽のイマーシブ・ミックスにはあまり必要だとは思っていません。ですので、Dolby Atmosミックスと言っても私はハイト・スピーカーを除いた7.1chで音づくりをしています。なお、ハイト・チャンネルに関してDolby Laboratoriesは2chのステレオとして規定していますが、私は4chのクアッドとして捉え、シンセサイザーやスラップバック・ディレイなどを配置したりして活用しています。
ステレオ・ミックスのステムはできるだけ使用しない
先ほどもお話ししたとおり、私はステレオ・ミックスとDolby Atmosミックスを同時に行います。最初にステレオ・ミックスを作り、そこから書き出したステムを使ってDolby Atmosミックスを作る人が多いと思うので、私のワークフローは珍しいかもしれません。なぜステレオ・ミックスとDolby Atmosミックスを同時に行うのかと言えば、私はステレオ・ミックスから書き出したステムに、ミキシングを縛られたくないからです。ステレオ・ミックスのステムは、エフェクトも一緒に書き出されてしまっているため、もう少しフィールドを広げたいと思っても簡単にはいきません。楽曲の中心であるボーカルですらまとめられてしまっているので、私はDolby Atmosミックスに入る前に、iZotope RXを使ってセンターのボーカルとサイドのボーカルを分離します。
ですので、可能な限りオリジナルのセッションからDolby Atmosミックスを作るべきであると考えていますが、これは理想であって、実際には難しいケースもあるでしょう。もちろんステムから作られたDolby Atmosミックスの中にも素晴らしい作品はあります。たとえば、アラバマ・シェイクスのボーカリスト、ブリタニー・ハワードの「What Now」という曲。このミックスを手がけたのはショーン・エヴェレットというエンジニアですが、彼はステムをスピーカーから再生して、それをマイクで録音するなど、抜群のクリエイティビティを発揮しています。まさしくファンキーな彼のキャラクターが反映されたミックスだと思っています。
アーティストの意向を反映させる
最近はレコード会社から、昔の名盤のDolby Atmos化を依頼されることが多くなりました。しかしDolby Atmos化にあたって、アーティスト・サイドの意向がまったく反映されていないことが多いのです。意向が反映されていないどころか、自分の作品がDolby Atmosミックスされたことをリリースされるまで知らなかったというアーティストもいるくらいです。音楽はアーティストが生み出したアート作品です。可能な限りアーティストの意向を反映させるべきであると考えています。
私が1980年代にミックスしたヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「Sports」というアルバムがあります。何年か前にこの作品のディレクターから、“「Sports」のDolby Atmosミックスを作ったので聴いてみないか”という連絡がありました。興味があったので聴きに行ったのですが、その場にいた全員が“これは何かの冗談だろ?”と顔を見合わせるくらいひどいミックスだったのです。試聴環境のセットアップは完璧でしたが、聴くに耐えないミックスでどこかを修正すれば良くなるというものではありません。私はディレクターに、“Dolby Atmosミックスを作り直させてくれないか”と打診しました。予算を使い切ってしまったとのことだったのですが、個人的に思い入れのある作品だったということもあって、無償で引き受けることにしたんです。
この話には余談があります。「Sports」のDolby Atmosミックスは、Apple Musicでの配信直後にリジェクトされてしまったのです。なぜかと言うと、オリジナルのステレオ・ミックスには入っていない歌詞が入っているから。私はDolby Atmosミックスを行う際にあらためてマルチを聴き直してみたのですが、おもしろい歌詞が入っていたので、それを最後に入れてしまったんです(笑)。Appleはオリジナルの歌詞とDolby Atmosミックスの歌詞が同一でないとリジェクトしてしまうので、過去の作品のDolby Atmos化を検討されている方は気をつけてください。彼らはしっかりチェックしているようです(笑)。また、Appleは空間オーディオ・コンテンツの拡充に力を入れていますが、ステレオ・ミックスを単純にアップ・ミックスしただけの作品も基本リジェクトされてしまいます。
一世を風靡した“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”
私は古くからの友人であるブライアン・アダムスのヒット曲、「Run To You」もDolby Atmosでミックスしました。Dolby Atmosミックスの話に入る前に、どうやってこの特徴的な’80sサウンドを生み出したのか、少しご紹介しておきましょう。
この曲はカナダのバンクーバーにある「Little Mountain Studio」というスタジオでレコーディングを行いました。私はこの曲のドラムを“ビッグ・サウンド”にしたいと考えたのですが、「Little Mountain Studio」のライブ・ルームはかなりデッドで、私がイメージしていた“ビッグ・サウンド”には不向きな空間だったのです。一体どうしたものか…と思案していたとき、ライブ・ルームの真横にローディング・ベイ、 いわゆるガレージのようなスペースがあることに気付きました。試しにそこで手を叩いてみたところ、コンクリートが気持ちよく反響したので、私はドラムの周囲に比較的硬めの遮蔽板を設置し、残響をローディング・ベイ側に逃すことで、大きな鳴りのドラム・サウンドを作り出したのです。本当に素晴らしいサウンドが得られたので、このセッティングを再現できるように、アシスタントに頼んでドラムやマイクの位置を記録してもらいました。ですので、この“ビッグ・サウンド”は、後にこのスタジオでレコーディングされたボン・ジョヴィやエアロ・スミスの曲でも聴くことができます。
「Run To You」をレコーディングしたのはもう40年も前のことになりますが、自分がやっていることは今も昔も大きく変わっていません。確かに世の中にはトレンドというものがあります。「Run To You」をレコーディングした1980年代はリバーブが強いサウンドが主流でしたが、1990年代になると逆にドライなサウンドが好まれるようになりました。そしてご存知のとおり、現代は再びリバーブを使ったサウンドが主流になっています。そういったトレンドに従うこともありますが、私は天邪鬼なのでまったく違ったサウンドを試すこともあります。いつの時代も自分のスタイルを崩すことはありません。
よく“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”と言われることがありますが、私は自分のサウンドについて意識したことはありません。私はあくまでもクライアントであるアーティストのためにミックスを行っているのです。アーティストと一緒に作り上げたサウンドが、結果的に“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”になっているのではないかと思っています。
イマーシブ・ミックスにおける各要素の定位
「Run To You」のDolby Atmosミックスについてですが、まずセンターには楽曲の基盤となるボーカル、ベース、スネア、キックといった音を定位させました。こういった音をなぜセンターに集めるかと言うと、私はライブ・コンサートのようなイメージでミックスを行うからです。ロックやポップスのライブ・コンサートでは、これらの音がセンターから聴こえます。ご存知のように、再生環境におけるセンター・スピーカーという考え方は映画から来ています。映画の中心となる音はダイアログで、それはほとんどの場合がセンターに定位されます。その考え方をそのまま音楽に適用しても、問題はないと考えています。
それではサイド、リア、ハイトには、どのような音を定位させるのがいいのでしょうか。楽曲の基盤となる音に関してはセンターに集めた方がいいと言いましたが、同じギターでもパワー・コードのような音ではない、たとえばアコースティック・ギターのような音ならば、サイドに振ってみてもいいかもしれません。キーボードに関しても同じで、ピアノはセンターに定位させる場合が多いですが、シンセサイザーのような音はリアやハイトに定位させると良い結果が得られます。
Dolby Atmosというフォーマットにおいて特徴的な要素と言えるのが、ハイト・スピーカーです。“音楽のミックスで、ハイト・スピーカーなんて使いどころがあるのか?”と思われる人もいるかもしれませんが、実際はとても有用です。たとえば私はアンビエンス… リバーブで作り出した残響ではなく、インパルス・レスポンスにおけるアンビエンスをハイト・スピーカーに送り、これによって空間の高さを演出しています。
もうひとつ、LFEという要素についてです。サブ・ウーファーに関してはミックスを補強してくれる有用な要素ではあるのですが、必須ではないというのが私の考え方です。私はLFEなしでミックスを成立させ、それを補強する際に使用しています。また、ミッド・ファーはバイノーラルのオプションではグレイアウトされて設定することができません。あまりLFEに頼り過ぎてしまうと、ヘッドホンで聴いたときに音像が崩れてしまうので注意が必要です。
イマーシブ・ミックスにおけるエフェクト処理
「Run To You」のDolby Atmosミックスでは、ボーカルだけでなくシンセサイザーのディレイ音もリアに配置しています。タイミングが楽曲のテンポよりもオフなので、一聴すると“曲に合っているのか?”と思う人もいるかもしれませんが、ディエッサーを強めにかけることによってミックスに戻した際に馴染むサウンドを作り出しているのです。ギターに関しても同じく、それだけで聴くとバラバラな印象があったので三連符のディレイを使用し、ディレイ音が返る度にリバーブを付加していき、さらには歪みも加えることで、奥行き感と立体感のあるサウンドを作り出しています。こういったエフェクトには、私が開発に関わったApogee Clearmountain’s Domainを使用しました。先ほども言ったとおり、私の頭の中にあったのはライブ・コンサートのようなサウンドです。私はライブ・サウンドが大好きなので、それをスタジオで再現するという音作りになっています。また、パーカッションが空間の中を飛び回っているように聴こえるかもしれませんが、こういったサウンドもエフェクトのみで作り出しています。このミックスではオブジェクトを使用していません。楽曲を構成する要素はステレオ・ミックスと同一です。スピーカーの構成が違うだけで、こうも印象が変わるという好例だと思います。
プラグインに関して、イマーシブ・ミックスで最も多用しているのがクアッド処理に対応しているリバーブです。具体的にはApogee Clearmountain’s Domainを最もよく使います。イマーシブ・ミックス用のクアッド・リバーブは、そのままフォールドバックしてステレオ・ミックスにも使用します。最近は位相を自動で合わせてくれたりするような管理系のプラグインが多く出回っていますが、そういったツールを使い過ぎるとサウンドのパワー感が失われてしまうような印象を持っています。実際にそういったツールを使ったことがありますが、最終的には使用しない方が良い結果になったケースの方が多かったです。
📷Apogee Clearmountain’s Domain:ミックスでも多用しているというApogee Clearmountain’s Domain。画面左側のシグナルフローに沿うようにボブ・クリアマウンテン独自のFXシグナルチェーンを再現している。もちろん、プリセットもボブ独自のものが用意されており、ロードして「あの」サウンドがどのように構築されているのかを解析するという視点も持つと実に興味深いプラグインだと言えるだろう。
イマーシブ・オーディオで楽曲の物語性を強化する
イマーシブ・オーディオは、アーティストが楽曲に込めた物語性を強化してくれるフォーマットであると考えています。私の古くからの友人であるブルース・スプリングスティーンは歌詞をとても重視するアーティストです。彼は歌詞に込めた物語性をいかにサウンドに盛り込むかということを常に考えており、私は彼のそういう想いをミックスで楽曲に反映させようと長年努力してきました。
ブライアン・フェリーの「I Thought」という曲があります。それほど有名ではないかもしれませんが、私のお気に入りの曲です。この曲の歌詞は、男性がガール・フレンドに対して抱いているイメージが、徐々に現実とは違うことに気づいていく… という内容になっています。男性が想っているほどガール・フレンドは彼のことを想っているわけではない…。これはブライアンから聞いたストーリーではなく歌詞を読んだ私の勝手な解釈ですが、私はこの解釈に基いてモノラルで始まるシンプルな音像がどんどん複雑な音像になっていく… というイメージでミックスしました。そして最後は男性の悲しさや虚しさについてをノイズを強調することで表現したのです。ちなみにこの曲はブライアン・フェリー名義ですが、ロキシー・ミュージックのメンバーも参加しています。おそらく最後のノイズはブライアン・イーノのアイデアだったのかなと想像しています。
Dolby Atmos for Everyone!
Dolby Atmosに興味はあるけれども、制作できる環境を持っていないという人も多いかもしれません。しかしその敷居は年々低くなっており、いくつかのDAWの最新バージョンにはDolby Atmosレンダラーが標準で搭載されています。その先駆けとなったのがApple Logic Proで、Steinberg NuendoやPro Toolsの最新バージョンにもDolby Atmosレンダラーが統合されています。このようにDolby Atmosは決して特別なものではなく、今や誰でも取り組むことができるフォーマットと言っていいでしょう。もちろん、Symphony I/O Mk IIはこれらすべてのDAWに対応しています。その柔軟なモニター・コントロール機能は、Dolby Atmosコンテンツの制作に最適ですので、ぜひご購入いただければと思います(笑)。Dolby Atmosで作業するには多くのオーディオ入出力が必要になりますが、Symphony I/O Mk IIではDanteに対応しています。コンピューター側に特別なハードウェアを装着しなくても、Dante Virtual Soundcardを使用すれば、Symphony I/O Mk IIとDanteで接続することができます。この際に有用なのがGinger Audioというメーカーが開発しているGroundControl SPHEREで、このソフトウェアを組み合わせることによって複雑なルーティングでも簡単かつ効率よくセットアップすることができます。
私が今日、明確にしておきたいのは、イマーシブ・オーディオというのは新しいテクノロジーではあるのですが、多くのレコード会社がサポートしてくれているので、一時のブームで廃れてしまうようなものではないということです。これからイマーシブ・ミックスされた素晴らしい作品がどんどんリリースされることでしょう。我々ミュージック・プロダクションに携わる者たちは、皆で情報交換をしてこの新しいテクノロジーを積極的にバックアップしていくべきだと考えています。
今回のセミナーでは、私が行なっているDolby Atmosミックスのワークフローについてご紹介しましたが、必ずしもこれが正解というわけではありません。たとえば、私はセンター・スピーカーを重要な要素として捉えていますが、エンジニアの中にはセンター・スピーカーを使用しないという人もいます。そういうミキシングで、アーティストのイメージが反映されるのであれば、もちろん何も問題はないのです。ですので、自分自身のアイデアで、自分自身の手法を見つけてください。
充実の内容となった今回のセミナー。イマーシブサウンドという新たな世界観を自身のワークフローで昇華してさらに一歩先の結果を追い求めている様子がよくわかる。その中でも、アーティストの意図をしっかりと反映するためのミックスという軸は今も昔も変わっておらず、“ボブ・クリアマウンテン・サウンド”とされる名ミックスを生み出す源泉となっているように感じる。レジェンドによる新たな試みはまだまだ続きそうだ。
*ProceedMagazine2024号より転載
Media
2024/08/09
N響「第9」、最先端イマーシブ配信の饗宴。〜NHKテクノロジーズ MPEG-H 3D Audio 22.2ch音響 / NeSTREAM LIVE / KORG Live Extreme〜
年末も差し迫る2023年12月26日に行われた、NHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサート。 その年の最後を飾る華やかなコンサートと同時に、NHKテクノロジーズ(NT)が主催する次世代を担うコンテンツ配信技術のテストだ。次世代のイマーシブ配信はどのようになるのか、同一のコンテンツをリアルタイムに比較するという貴重な機会である。その模様、そしてどのようなシステムアップが行われたのか、壮大なスケールで行われた実験の詳細をレポートする。
●取材協力
・株式会社NHKテクノロジーズ
・株式会社クープ NeSTREAM LIVE
・株式会社コルグ Live Extreme
3つのイマーシブオーディオ配信を同時テスト
まずは、この日に行われたテストの全容からお伝えしたい。イマーシブフォーマット・オーディオのリアルタイム配信実験と言ってもただの実験ではない、3種類のフォーマットと圧縮方式の異なるシステムが使われ、それらを比較するということが行われた。1つ目は、次世代の放送規格としての8K MPEG-H(HEVC+22.2ch音響MPEG-H 3D Audio *BaselineProfile level4)の配信テスト。2つ目がNeSTREAM LIVEを使った、4K HDR(Dolby Vision)+ Dolby Atmos 5.1.4ch@48kHzの配信テスト。3つ目がKORG Live Extremeを使った、4K + AURO-3D 5.1.4ch@96kHzの配信テストだ。さらに、NeSTREAM LIVEでは、HDR伝送の実験も併せて行われた。イマーシブフォーマットのライブストリーム配信というだけでも興味深いところなのだが、次世代の技術をにらみ、技術的に現実のものとして登場してきている複数を比較するという取り組みを目にすることができるのは大変貴重な機会だと言える。
全体のシステムを紹介する前に、それぞれのコーデックや同時配信されたフォーマットなどを確認しておきたい。22.2chは、次世代地上デジタル放送での採用も決まったMPEG-H 3D Audioでの試験、NeSTREAM LIVEは、NetflixなどストリーミングサービスでのDolby Atmos配信と同一の技術となるDolby Digital Plusでの配信、KORG Live ExtremeはAURO-3Dの圧縮技術を使った配信となっている。圧縮率はNeSTREAM LiveのDolby Digital Plusが640kbps、次にMPEG-Hの22.2chで1chあたり80kbps。Live Extremeは10Mbps程度となっている。
映像についても触れておこう。22.2chと組み合わされるのは、もちろん8K HEVCの映像、NeSTREAM LIVEは同社初のチャレンジとして4K Dolby Visonコーデックによる4K HDR映像の配信テストが合わせて行われた。KORG Live Extremeは、4Kの動画となっている。次世代フォーマットであるということを考えると当たり前のことかもしれないが、各社イマーシブと組み合わせる音声として4K以上の動画を準備している。KORG Live Extremeでは、HPLコーデックによる2chバイノーラルの伝送実験も行われた。イマーシブの視聴環境がないという想定では、このようなサブチャンネルでのバイノーラル配信というのは必要なファクターである。ちなみに、Dolby Atmosであれば再生アプリ側でバイノーラルを作ることができるためこの部分に関しては大きな問題とならない。
IPで張り巡らされたシステムアップ
📷仮設でのシステム構築のため、長距離の伝送を絡めた大規模なシステムアップとなっている。DanteのFiber伝送、Riedel MediorNet、OTARI LightWinderが各種適材適所で使われている。また、できるかぎり信号の共有を図り、チャンネル数の多いイマーシブサウンド3種類をうまく伝送し、最終の配信ステーションへと送り込んでいるのがわかる。実際のミックスは、22.2chのバランスを基本にそこからダウンコンバート(一部チャンネルカット)を行った信号が使われた。
それでは、テストのために組み上げられた当日のシステムアップを紹介したい。NHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサートは、ご存知の通り年末の恒例番組として収録が行われオンエアされている。その本番収録のシステムとは別に今回のテスト配信のシステムが組まれた。マイクセッティングについても、通常収録用とは別に会場のイマーシブ収録のためのマイクが天井へ多数準備された。ステージ上空には、メインの3点吊り(デッカベースの5ポイントマイク)以外にもワイドに左右2本ずつ。客席上空には22.2chの高さ2層のレイヤーを意識したグリッド上の17本のマイクが吊られていた。
📷客席上空に吊り下げられたマイク。田の字にマイクが吊られているのが見てとれる。これは22.2chのレイヤーそのものだ。NHKホールは放送局のホールということもあり、柔軟にマイクを吊ることができるよう設計されている。一般的なホールではなかなか見ることができない光景である。
マイクの回線はホール既設の音響回線を経由して、ホール内に仮設されたT-2音声中継車のステージボックスに集約される。ここでDanteに変換されたマイクの音声は、NHKホール脇に駐車されたT-2音声中継車へと送られ、ここでミックスが作られる。この中継車にはSSL System Tが載せられているおり、中継車内で22.2ch、Dolby Atmos準拠の5.1.4chのミックスが制作され出力される。ここまでは、KORG Live Extremeが96kHzでのテストを行うこともあり、96kHzでのシステム運用となっている。
22.2chと5.1.4ch@48kHzの出力は、MADIを介しRIEDEL MediorNetへ渡され、配信用のテスト機材が設置されたNHKホールの配信基地へと送られる。もう一つの5.1.4ch@96kHzの回線はOTARI Lightwinderが使われ、こちらもNHKホールの配信基地へと送られる。ホールの内外をつなぐ長距離伝送部分は、ホールから中継車までがDante。中継車からホールへの戻りは、MediorNetとLightwinderというシステムだ。それぞれネットワークケーブル(距離の関係からオプティカルケーブルである)でのマルチチャンネル伝送となっている。
📷T-2音声中継車とその内部の様子。
ホールの配信基地には22.2ch@MPEG-H、NeSTREAM LIVE、Live Extremeそれぞれの配信用のシステムがずらりと設置されている。ここでそれぞれのエンコードが行われ、インターネット回線へと送り出される。ここで、NeSTREAM LIVEだけは4K HDRの伝送実験を行うために、AJA FS-HDRによる映像信号のHDR化の処理が行われている。会場収録用のカメラは8Kカメラが使われていたが、SDRで出力されたためHDR映像へとコンバートが行われ、万全を期すためにカラリストがその映像の調整を行っていた。機械任せでSDRからHDRの変換を行うだけでは賄えない部分をしっかりと補正、さすが検証用とはいえども万全を期すプロフェッショナルの仕事である。
このようにエンコードされ、インターネットへと送出されたそれぞれのコーデックによる配信は、渋谷ではNHK放送センターの至近にあるNHKテクノロジーズ 本社で受信して視聴が行われるということになる。そのほか渋谷以外でも国内では広島県東広島芸術文化ホールくらら、海外ではドイツでの視聴が行われた。我々取材班は渋谷での視聴に立会いさせていただいたが、他会場でも問題なく受信が行えていたと聞いている。
📷上左)NHKホールの副調整室に設置された3つの配信システム。写真中央の2台並んだデスクトップのシステムは、KORG Live Extremeのシステムだ。上右)こちらが、NeSTREAM LIVEのDolby Atmos信号を生成するためのラック。ここでリアルタイムにDolby Digital Plusへとエンコードが行われる。下左)8K+22.2chを制作するためのPanasonic製レコーダー。8K 60Pの収録を可能とするモンスターマシンで収録が行われた。下右)NeSTREAM LIVEで使われたHDRの信号生成のためのラック。最上段のAJA FS-HDRがアップコンバートのコアエンジン。
それぞれに持つ優位性が明確に
実際に配信された3種類を聴いてみると、それぞれのメリットが際立つ結果となった。イマーシブというフォーマットの臨場感、このポイントに関してはやはりチャンネル数が多い22.2chのフォーマットが圧倒的。密度の濃い空間再現は、やはりチャンネル数の多さに依るところが大きいということを実感する。今回の実験では、ミキシングの都合からDolby Atmos準拠の5.1.4 chでの伝送となった他の2種の倍以上のチャンネル数があるのだから、この結果も抱いていたイメージ通りと言えるだろう。もう一つは、圧縮率によるクオリティーの差異。今回はKORG Live Extremeが96kHzでの伝送となったが、やはり低圧縮であることの優位性が配信を通じても感じられる。NeSTREAM LIVEについては、現実的な帯域幅で必要十分なイマーシブ体験を伝送できる、現在のテクノロジーレベルに一番合致したものであるということも実感した。その中でDolby Visionと組み合わせた4K HDR体験は、映像のクオリティーの高さとともに、音声がイマーシブであることの意味を改めて感じるところ。Dolby Vision HDRによる広色域は、映像をより自然なものとして届けることができる。それと組み合わさるイマーシブ音声はより一層の魅力を持ったものとなっていた。
前述もしているが、それぞれの配信におけるオーディオコーデックの圧縮率は、NeSTREAM LIVEのDolby Digital Plusが640kbps、次にMPEG-Hの22.2chが1chあたり80kbps。Live Extremeは10Mbps程度となっている。このように実際の数字にしてみると、NeSTREAM LIVEの圧縮率の高さが際立つ。640kbpsに映像を加えてと考えると、現時点ではこれが一番現実的な帯域幅であることは間違いない。
ちなみに、YouTubeの執筆時点での標準オーディオコーデックはAAC-LC 320kbpsである。言い換えれば、NeSTREAM LIVEはこの倍の帯域でDolby Atmosを配信できるということである。KORG Live Extremeにおける96kHzのクオリティーは確かに素晴らしかった、しかし10Mbpsという帯域を考えると多数へ行なわれる配信の性格上、汎用的とは言い難い一面も否めない。しかしながらプレミアムな体験を限定数に、というようなケースなど活用の可能性には充分な余地がある。22.2chのチャンネル数による圧倒的な体験はやはり他の追従を許さない。8K映像と合わせてどこまで現実的な送信帯域にまで圧縮できるかが今後の課題だろう。22.2ch音響を伝送したMPEG-H 3D Audioは任意のスピーカーレイアウトやバイノーラル音声に視聴者側で選択し視聴することができる。22.2ch音響の臨場感を保ったまま、視聴者の様々な環境で視聴することが可能となる。AVアンプやサウンドバー、アプリケーションなどの普及に期待したい。
このような貴重な実験の場を取材させていただけたことにまずは感謝申し上げたい。取材ということではあったが、各種フォーマットを同時に比較できるということは非常に大きな体験であり、他では得ることのできない大きな知見となった。伝送帯域やフォーマット、コーデックによる違い、それらを同一のコンテンツで、最新のライブ配信の現場で体験することができるというのは唯一無二のこと。これらの次世代に向けた配信が今後さらに発展し、様々なコンテンツに活用されていくことを切に願うところである。
*ProceedMagazine2024号より転載
NEWS
2024/08/08
Media Composer パーフェクトガイド 発売中!
Media Composerの技術書として日本初出版となる『Media Composer パーフェクトガイド』発売中!
Media Composerにこれからはじめて触れる初心者の方や、入社後に編集業務に携わられた方がより深く学んで頂けるような内容になっており、学生・新入社員の教材としてもうってつけの書籍がついに登場しました。
書籍の概要 〜基本操作から実践テクニックまで〜
映像制作の基本となるシークエンスの編集操作から、各種エフェクトや字幕、オーディオ編集など工程を一つひとつ解説。
著者は現役でTV番組のエディター業務に携わられている、Media Composer使用歴27年のもとたかし氏。著者が長年にわたる現場での経験で培った実践的テクニックもふんだんに盛り込まれております。
機能はver.2024.2まで網羅されており、注目のAIテクノロジーAvid Adaの文字起こしや字幕生成についても掲載。
本棚に一冊あれば安心のリファレンス・ブックとして、皆様の助けとなってくれるでしょう!
目次
◎ CHAPTER 00 Media Composerの基本
◎ CHAPTER 01 クリップとメディア
◎ CHAPTER 02 シークエンスの作成とタイムライン
◎ CHAPTER 03 シークエンスの編集
◎ CHAPTER 04 エフェクト
◎ CHAPTER 05 合成・タイトル
◎ CHAPTER 06 カラーコレクション
◎ CHAPTER 07 オーディオ
◎ CHAPTER 08 マルチカメラ・4K&HDR・フィルム
◎ CHAPTER 09 エクスポート・デジタルカット
一部ページはこちらのPDFから確認することができます。
Media Composer パーフェクトガイド
もとたかし 著
B5判/544ページ
定価5,280円(本体4,800円+税10%)
ISBN 978-4-297-14134-9
出版社サイト:https://gihyo.jp/book/2024/978-4-297-14134-9
著者プロフィール:フリーランスのテクニカルライター/Avidエディター。放送業界にて編集作業に携わる傍ら,Avid製品を中心としたレビュー記事の執筆などを行う。
登場から35年、ポスプロの定番編集機として使用され続けているMedia Composer待望のガイドブックです。日々最新情報をお伝えしておりますが、基礎テクニックに立ち返りMedia Composerをマスターしましょう!Media Composer、Pro Toolsシステムのご相談はROCK ON PROまで!
NEWS
2024/08/07
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もちろん新規でのご購入もお待ちしております!
キャンペーン概要
内容:対象の6製品が、期間限定プロモーション価格でご購入いただけます。
期間:2024年8月7日〜8月29日14時まで
◎対象製品
Loudness Toolkit 2
通常価格:¥154,300
→プロモ特価:¥102,080(本体価格:¥92,800)
VisLM-H 2 ラウドネス・メーター、LM-Correct 2 ラウドネス自動補正プラグイン、ISL 2 トゥルー・ピーク・リミッターのバンドル製品。業界標準ツールを一度で手に入れられるお得なセット品。
製品の詳細はこちら>>
LM-Correct 2
通常価格:¥68,500
→プロモ特価:¥45,320(本体価格:¥41,200)
作成済みのファイルを、ARIB TR-B32、EBU R128、ITU-R B.S 1770-2などの国際ラウドネス規格に自動的に補正します。スタンドアロン、Audio Suiteで動作。
製品の詳細はこちら>>
VisLM-H 2
通常価格:¥77,100
→プロモ特価:¥50,930(本体価格:¥46,300)
ARIB TR-B32等の規準に対応したラウドネス&トゥルー・ピーク・メーター。インテグレート、ショートタイム、ダイナミクスレンジなど、ラウドネス基準に準じた制作に欠かせない機能を備えています。
製品の詳細はこちら>>
ISL 2 | True Peak Limiter
通常価格:¥42,800
→プロモ特価:¥28,270(本体価格:¥25,700)
ITU-R B.S.1770で定められたアルゴリズムに準拠した、トゥルー・ピーク・リミッター。
製品の詳細はこちら>>
LM-Correct 2 DynApt Extension
通常価格:¥34,200
→プロモ特価:¥22,660(本体価格:¥20,600)
LM-Correct 2 with DynApt extension
通常価格:¥98,230
→プロモ特価:¥67,980(本体価格:¥61,800)
製品の詳細はこちら>>
ミキシング中に使用するメーター、書き出し時のトゥルー・ピーク・リミッター、制作後の自動補正と、ラウドネスに関連する作業を一手に担うことが可能なNugen Audio。コンテンツ制作に必携のプラグイン集の期間限定プロモーションをお見逃しなく!
プロモーションに関するご質問、ご購入の相談、お問い合わせは、ROCK ON PROまでお気軽にお寄せください。
NEWS
2024/08/02
養老孟司と小檜山賢二「虫展」にメディア・インテグレーションが機材提供
大分県立美術館、通称OPAMで7月13日より開催されている「虫展」。養老孟司先生と小檜山賢二先生によるユニークな虫達の展示。その一角に「多様性の部屋」があり、ここでは、映像と音声によるインスタレーション展示が行われている。ここの音響設備に株式会社メディア・インテグレーションは技術提供及び、機材協力を行った。
東京大学名誉教授で、解剖学者の養老孟司。「バカの壁」の著者としても知られるが、趣味のひとつに昆虫採集がある。「論理的に意味がわからないことがたくさんある(からおもしろい)」などと養老節の聞いた数多くの名言を残している。今回の展示で、その養老先生とタッグを組んだのが、慶応大学教授で写真家でもある小檜山賢二。少しずつピントをずらした数百枚の写真を合成して1枚の画像を仕上げる被写界深度合成を、マクロレンズを使用して虫の撮影に適用。なんと初期は、紙焼きした写真を1枚ずつ手で切って、つなぎ合わせて1枚の写真を作っていたというから筋金入りだ。人の目を超えた深度合成写真と、養老孟司の独自の視点。そのコラボレーションが、今回のOPAMで開催されている「虫展」である。
当社が協力した「多様性の部屋」は、演出・アートディレクションを行う宮坂淳氏による映像(先生たちの撮りためた1000枚以上の写真が使われている)と、安田寿之氏による楽曲で構成された映像と音響によるインスタレーション展示。森の中から、大きくなったり小さくなったりする虫たち。パネル上に並べられた虫たちは、1枚として同じ写真は使われておらず、まさに多様性を物語っている。音楽はメインの楽曲とは別に、左右の壁面からそれぞれ個別の音が再生されており、それぞれの再生時間が異なるため、ランダムに組み合わさって一つの音響を作り出している。1日いても、実は一度も同じ音楽にならない。再生される音も多様性を表現するためにこだわり、正面、左右の3方向からの音でイマーシブ感を提供することにも成功している。
📷<写真右下>右から楽曲制作・音響デザインの安田 寿之氏、展示構成・演出・アートディレクションを務めた宮坂 淳氏、ROCK ON PRO 前田洋介。
この音楽の再生には、Focal CI On Wall 301 Blackが使われている。ホームシアター用として設計されたスピーカーではあるが、美術館の展示室に掛けられていても違和感のないデザイン。もちろん音質もFocalということでクリアできらびやかなサウンドを提供する。音楽に加えられた自然界の虫の音なども、自然なサウンドとして「多様性の部屋」に足を踏み入れた観客を包み込む。来場者の皆さまに少しでもよい体験をしていただけるよう、制作者のイメージ、意図が伝えられるよう、当社では機材の提供、スピーカーの設置設計、音響調整の手伝いをさせていただいた。
坂茂氏による国内屈指の建築も一見の価値のある、大分県立美術館へぜひお越しいただきたい。巨大な深度合成写真に興奮した子どもたちの姿とともに、記憶に残る展覧会となることだろう。そして「多様性の部屋」で不思議な虫たちとの交流をお楽しみいただければ幸いだ。
養老孟司と小檜山賢二「虫展」
会期:2024年7月13日(土)~8月25日(日)
開館時間:10:00~19:00 ※金曜日・土曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
会場:大分県立美術館 1階 展示室A
主催者:公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団・大分県立美術館
観覧料:一般 1,200円/大学・高校生 1,000円/中学生以下は無料
詳細:https://www.opam.jp/exhibitions/detail/1539
Sales
2024/08/01
Prism Sound ADA-128サマーセール2024開催!
ミックスウェーブ株式会社より、Prism Sound ADA-128 サマーセールのお知らせが届きました!
ADA-128は、Prism Soundのフラッグシップである”Dream”シリーズを受け継ぎ昨年7月に発売されたAD/DAコンバーター。4つのホストモジュールと16のI/Oモジュールを組み合わせ大規模システムの核としても柔軟に機能する、まさに夢のモンスターインターフェースです。
そんなADA-128本体が25%OFF!さらにオプションカードやもセール対象になっております!この機会をお見逃しなく!
セール詳細
■セール実施期間
2024年8月1日(木)~2024年8月29日(木)
■実施概要
2024年8月1日から8月29日の期間中、対象のPrism Sound ADA-128関連製品が最大25%オフ!
※商品は本国へのオーダーのため、納期目安は受注後約2ヶ月程度となります。
セール対象製品
ADA-128-Chassis (ADA-128本体のみ)
販売価格:¥ 1,452,000 (本体価格:¥ 1,320,000)
→¥1,089,000 (本体価格:¥990,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
AD128 8Ch-AD オプションカード
販売価格:¥ 506,000 (本体価格:¥ 460,000)
→¥446,600 (本体価格:¥406,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
AD128 8Ch-DA オプションカード
販売価格:¥ 506,000 (本体価格:¥ 460,000)
→¥446,600 (本体価格:¥406,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
ADA-128-DANTE-Chassis
(ADA-128-Chassis +Danteカード実装済みモデル)
販売価格:¥ 1,597,200 (本体価格:¥1,452,000)
→¥1,258,400 (本体価格:¥1,144,000)
ROCK ON PROで見積>>
ADA-128-PTHDX-Chassis
(ADA-128-Chassis +PTHDXカード実装済みモデル)
販売価格:¥ 1,548,800 (本体価格:¥1,408,000)
→¥1,210,000 (本体価格:¥1,100,000)
ROCK ON PROで見積>>
ADA-128-AES-Chassis
(ADA-128-Chassis +AESカード実装済みモデル)
販売価格:¥ 1,548,800 (本体価格:¥1,408,000)
→¥1,210,000 (本体価格:¥1,100,000)
ROCK ON PROで見積>>
Prism Soundが5年の歳月をかけて開発した最高音質のAD/DAコンバーター、ADA-128。Datneカードを実装するとハイエンドStageBoxとしても活用できるなど夢の広がる1台です。
導入やデモなどのご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問合せください。
NEWS
2024/07/29
SOUND PARTICLESより、新製品「inDelay(インディレイ)」が登場
コンピュータ・グラフィックの概念に基づいた独自のソフトウェア開発で知られ、近年は3Dシンセ SkyDust 3Dやスマホを利用したイマーシブパンナーSpace Controllerなど唯一無二のプラグインを発表しているポルトガルのメーカーSOUND PARTICLES社が、新製品「inDelay」をリリースしました!
さらにinDelayを含めた、新しいプラグイン・バンドル製品や発売記念25%OFFも実施中です!
主な機能〜パーティクル技術によるクリエイティブな効果〜
SOUND PARTICLES社が社名にも掲げる3Dパーティクル技術によって複雑なディレイも簡単に実現が可能。直感的なパラメータ操作で基本的なディレイからダイナミックな音響演出までが制作できます。
機能は大きく3つのモード[チャンネル、タップ、パーティクル]に別れており、入力信号に対するディレイ設定から各タップの詳細な設定、入力信号を元に最大100もの同時出力が可能なパーティクルディレイが設定できます。
UI下部のタイムエディターでは、入力波形に対して視覚的なディレイタイム、レベル調整が行えます。同社のAIRプラグイン技術を応用した、大気による距離や奥行きシミュレート機能も搭載。
全てのプラグインがイマーシブフォーマットに対応しているSOUND PARTICLES社ですので、inDelayももちろんマルチチャンネルに対応。Dolby Atmosは最大11.1.8まで、ハリウッドのサウンドデザインでも使用されていることからIMAX 12.0やAuro 13.1、NHK 22.2などのフォーマットが入力、出力の両方に対応しています。
発売記念セール情報
inDelayの発売を記念して、同社全製品25%オフの「7月セール」も実施中!
inDelayを含めた、新しいプラグイン・バンドル 以下3製品も対象です。
- Essential
- 8FX
- Spatial Music II
セール期間:2024年7月24日(水)〜 8月2日(水)
※8月2日(金)以降も、inDelay、AudioMatrix、SkyDust 3D/Stereo、Space Controller Studioは、25%オフの価格が続きます。
製品情報
SOUND PARTICLES / inDelay
標準価格:¥30,800 (本体価格:¥28,000)
→25%オフ価格:¥23,100 (本体価格:¥21,000)
>>Rock oN eSotreで購入
SOUND PARTICLESよりまたユニークなエフェクトプラグインが登場しました!音楽やサウンドデザインでまだ誰も聞いたことのない音を創り出す強い味方となってくれるはず!
イマーシブ制作ツールのご相談はROCK ON PROまでお問い合わせください。
Tech
2024/07/18
マルチトラック録音時のデジタルリファレンスレベルの改定について
既にご存知の方も多いかと思われますが、JAPRS(一般社団法人 日本音楽スタジオ協会)が、デジタルマルチレコーディングにおけるリファレンスレベル推奨値を「0VU=-18dBFS」へと改定しました。
これまでは「0VU(+4dB)=-16dBFS」という推奨値が設定されており、それはデジタルマルチトラックレコーダーが登場した当時、アナログレコーダーとのレベル相関やデジタル機器が持つS/N比、16bitというダイナミックレンジの解像度を踏まえて策定された値でした。
しかし、今日における24bitレコーディング、ハイレゾ等を踏まえた制作環境やfloat型演算などのデジタル信号処理の向上、普及を踏まえたリファレンスレベル改定に関する提案書がエンジニア有志からJAPRSに提出されたのを発端として、協会が検討を重ねた結果今回の改定となったようです。
業務対応(アーカイブやポストプロダクション等)により即座に推奨値への対応が困難なスタジオにおいては、従来の「0VU(+4dB)=- 16 or - 20dBFS」運用も可としていることですが、スタジオにおいて採用しているリファレンスレベルを利用者に分かるように必ず明記することとしています。(「0VU=-16dBFS」を継続採用するスタジオも同様)
※マルチトラック録音時に限る推奨値で、その他のマスタリング等におけるリファレンスレベルについて定めるものではありません。
皆様のスタジオは既にご対応されましたか?ご使用になるスタジオの設定値を確認し、アナログ機器との受け渡しでレベル差が生じないようにお気をつけください。
Sales
2024/07/17
【7/31(火)まで】Neumann KU100 プライスプロモーション開催中!
ゼンハイザージャパン株式会社が、Neumann KU100の期間限定プロモーションを開催中です!
ダミーヘッドマイクの大定番であるNeumann KU100は、セルフノイズが低く広い帯域でナチュラルなバイノーラル収録が行えます。臨場感のあるライブ収録やASMR、ボイスドラマといったコンテンツから、フィールドレコーディングや開発・研究用途に至るまでバイノーラル録音が活躍する場面は増えています。バイノーラルマイクのスタンダードをお得に手にいれられるこの機会をお見逃しなく!
キャンペーン対象期間:
2024年7月31日(火)受注分まで
※受注受付期間内であっても数量限定のため、受注数に達し次第終了となります
対象製品
Neumann / KU 100
参考通常価格:¥1,573,000(本体価格:¥1,430,000)
→プロモーション特価:¥1,197,900
(本体価格:¥1,089,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
バイノーラルコンテンツに使用するHRTFは作品のクオリティや音作り、なによりリスナーに立体的に感じてもらえるかどうかに大きく関わってきます。3D Audioクリエイターは大定番HRTFであるKU100の音を知っておいて損はありません!お求めはROCK ON PROまでどうぞ!
NEWS
2024/07/17
Proceed Magazine 2024 販売開始! 特集:STORY
今号をもちましてついに通算30号(!)を迎えたProceed Magazine、2024号の特集は「STORY」と銘打って、イマーシブオーディオの実際からコンテンツ制作・配信・スタジオのストーリーを追いかけます。Bob Cleamountainが取り組むイマーシブサウンド、ライブ体験をイマーシブという手法で昇華させる福山雅治、UVERworldのコンテンツ制作、N響第9を舞台にイマーシブ配信の有用性を確認する壮大な試み、これまでのノウハウからさらなる可能性を生み出しているXylomania Studio、Cross Phase Studio。実際のコンテンツ制作に伴い、具体的なディテールがあらわになってきた様子は新たな刺激になるのではないでしょうか。また「IP伝送最前線」では F1においてグローバルなIP伝送を行うRIEDEL社の実例を鈴鹿サーキットまで突撃取材!したほか、日本初の全館フルIP化・オールIP放送局としてリニューアルされたテレビ大阪のシステムもご紹介します。いま音響の最先端で起きているアクションを捉えて今回も情報満載でお届けです!
Proceed Magazine 2024 特集:STORY
STORY
コンテンツを紡ぐストーリー。物語の始まりは波瀾万丈に、突然のヒーローの登場で生まれる展開、そして宿敵と決死の対決を経て、ついに訪れた永遠の平穏、、、のはずだったが!、、、と空想は限りなく拡がります。そして、音響の最先端を舞台にイマーシブサウンドをテーマにした物語は、いよいよそのストーリーの新たな局面を迎えています。
これまでのトライする、新たな表現を獲得する、といった進取のスタンスで取り組んできたものが、実際のコンテンツ制作を数々伴うことで具体的な制作ディテールをあらわにしています。30号を迎えた今回のProceed Magazine(ありがとうございます!)では、その最前線を取り上げて皆さんと一緒にその物語へDive In!します。まさしく現在も進行しているイマーシブストーリー、そのストーリーの主人公となり未来へ物語を継続させるのはクリエイターたる皆さんです。ぜひご一緒に体感してください!
Proceed Magazine 2024
全154ページ
定価:500円(本体価格455円)
発行:株式会社メディア・インテグレーション
◎SAMPLE (画像クリックで拡大表示)
◎Contents
★People of Sound / Lucky Kilimanjaro
★特集:STORY
Bob Clearmountain / FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏
UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium
N響「第9」、最先端イマーシブ配信の饗宴。
Xylomania Studio / Cross Phase Studio
★PRO Tech Special IP伝送最前線
RIEDEL MediorNet / テレビ大阪株式会社
NDIとAWSで支える東京・大阪二元中継
★Sound Trip
Sound Trip@L.A. & Las Vegas / Sony Pictures Studio & NAB Show
★Product Inside
FLUX:: Spat Revolution WFS / Neve Genesys G3D
★ROCK ON PRO導入事例
放送芸術学院専門学校
★ROCK ON PRO Technology
Pro Tools 2024.6 / AES67とは!?
ドクトルタケウチのぉ〜!現代サーバー事情の超整理 -その2-
★Build Up Your Studio
パーソナル・スタジオ設計の音響学 その29
特別編 音響設計実践道場 〜第十回 データ整理編 その3〜
★Power of Music
MAGES. / 「KA・WA・YO」- FOR MUSIC -
ROTH BART BARON 「8」TOUR
★BrandNew
SONY 360VME / AMS Neve / Ableton / iZotope
IK Multimedia / Lewitt / AlphaTheta / Yamaha
KERWAX / OEKSOUND / API
★FUN FUN FUN
SCFEDイベのイケイケゴーゴー探報記〜! エイベックス機材倉庫
ライブミュージックの神髄
◎Proceed Magazineバックナンバーも好評販売中!
Proceed Magazine 2023-2024
Proceed Magazine 2023
Proceed Magazine 2022-2023
Proceed Magazine 2022
Proceed Magazine 2021-2022
Proceed Magazine 2021
Proceed Magazine 2020-2021
Proceed Magazine 2020
Proceed Magazine 2019-2020
Proceed Magazineへの広告掲載依頼や、内容に関するお問い合わせ、ご意見・ご感想などございましたら、下記コンタクトフォームよりご送信ください。
Sales
2024/07/16
【7月限定】GRACE designがモニターコントローラー対象のキャッシュバックキャンペーンを開催中!
国内外で数多くのプロフェッショナルスタジオが採用しているGRACE design社のリファレンス・モニターコントローラーを、お得にお買い求めいただけるキャンペーンが開催中です!
対象製品は以下の4機種!
・イマーシブモニターコントローラー m908
・ステレオモニターコントローラー m905 / m905 Analog
・DAC内蔵ヘッドホンアンプ・プリアンプ m900
原音忠実にこだわりプロフェッショナル・ツールとして日々開発を続けているGRACE designのモニターコントローラーを、この機会にどうぞ!
キャンペーン詳細
内容:キャンペーン期間中に対象機種をご購入いただくと、キャッシュバック分をお値引きして販売いたします。
期間:2024年7月31日まで
◎対象製品
m908
通常価格¥1,450,000(税込¥1,595,000)
→特別価格¥1,300,000(税込¥1,430,000)
Rock oN eStoreで購入!
NEWS
2024/07/12
Avid Huddleリリース!ポスプロのレビューを迅速化!
Avid Huddleが2024年6月20日にリリースされました。
SaaSソリューションのHuddleは、Media ComposerとMicrosoft Teamsを安全にリンクすることで、ポストプロダクションのレビューを迅速化することができるMedia Composerのオプション機能です。
コロナ禍以降、ライフスタイルの変化やネット回線の高速化に伴い、リモートでのプロセスのレビューは多くのクリエターやアーティストに支持されています。
https://youtu.be/rggRVTzyqIE?si=wluPwZjtyQGboeNL
では、Avid Huddleを紹介していきましょう。
Avid Huddleの3つのすごい!
即時性
Avid Huddleは、Media ComposerのプルダウンメニューからAvid HuddleとMicrosoftのアカウントにアクセスし、Microsoft Teamsの会議を開始することができます。
Huddleを使うエディタは、Media Composerを介してタイムラインにあるシーケンスの再生をコントロールします。そして、会議参加者はその編集内容をMicrosoft Teams上で確認することができ、さらにMicrosoft Teamsの描画ツールを使って、フレーム内に描画とコメントを追加することができます。
Media Composerからの出力はフルフレーム、そしてフレーム精度でのコマ送りが可能なため、正確な位置で注釈をつけることができます。(YouTubeなどのwebブラウズのプレイヤーでは、このフレーム精度でのコマ送りが難しいことは、皆様もよくお分かりの通りです)
また付けられたコメントは会議終了後、シーケンスの「マーカー」として利用したり、PDFファイルを作成することができます。
複数のシーケンスのレビューを行うことができます。
タイムラインに別のシーケンスをロードするだけで、瞬時にレビューするシーケンスを切り替えることができます。会議室に表示されていた最初のシーケンスのコメントは一旦非表示になり、二番目のシーケンスに対してのディスカッションを新しく開始できます。そして最初のシーケンスに戻すと、コメントは最初のシーケンスのコメント表示に戻ります。
安全性
従来からよくあるレビュー方法では、誰もが視聴できる汎用性のあるファイルにエクスポートし、複数の関係者にファイルを送ったり、またはサイトにアップロードしたりすることがあります。
しかし、それら一連の作業は、クリエイティブな作業とは別の時間を費やすことになり、さらに、人為的な作業を介すため、安全性に乏しいプロセスになります。
セキュリティは最も重要な優先事項です。Avid Huddleでは、メディアの作成も、アップロードもありません。ただMedia Composerのタイムラインを再生するだけで、SRTの暗号化された編集結果を共有することができます。
SRTのストリームは傍受したり記録したりすることができず、そのデータはどこにも保存されず、会議終了後にメディアは残りません。
高品質
Media Composerの出力はSRTライブストリームで、Microsoft Teamsに直接送信されます。
SRTはSecure Reliable Transport (セキュア・リライアブル・トランスポート)の略称です。遠隔地への安定した映像伝送を目的とし開発されており、高い安全性、確実性、接続性を可能にする技術として、2017年よりオープンソース化され、現在ではAvidを含む600社以上のメーカーがその開発に参加しています。
以前、この技術についてご紹介しておりますので、詳しく知りたい方はこちらのページもご覧ください。
https://pro.miroc.co.jp/solution/ndi%ef%b8%8e-srt-proceed2022/
Avid Huddleを使うための3つの要件
◎Avid Huddleライセンス
柔軟な月額サービスモデルにより、必要なときに必要なものだけを支払うことができます。
共同セッションに必要なAvid Huddleライセンスは、タイムラインを再生するMedia Composer用に1つだけです。
通常価格 月額:¥15,290 (本体価格:¥13,900)
通常価格 年額:¥154,000 (本体価格:¥140,000)
◎Media Composer Ultimate / Media Composer Enterprise 2023.12以降 または
◎Media Composer 2024.6以降
◎Microsoft Teams license (Microsoft 365 Business Basic/Business Standerd/Education)
(会議参加者は、Microsoft Teamsにゲストとして参加するためのリンクのみが必要)
ご興味のある方は、お気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください。
Avid Huddleの優れたビデオ・オーディオストリームミングを是非ご体験ください。
Support
2024/07/08
Pro Tools Dolby Atmos関連ノウハウビデオ情報
2023.12よりPro ToolsにDolby Atmos Renderer機能が追加され、制作環境がまた大きく構築しやすくなったDolby Atmos。AvidよりそんなPro Tools内部レンダラーについてのノウハウビデオが公開されています。スタンドアロンのRendererとはまた異なる設定が必要な内部レンダラーをこのビデオを見て使いこなしましょう!
Pro Tools Dolby Atmos 内部レンダラー
まずはこちらの動画で、基本的な機能や設定、操作について確認できます。内部レンダラーの初期設定において肝となるのがモニターパス設定ですのでお忘れなく。
リレンダラー機能及び設定解説
ダウンミックスやラウドネス管理には欠かせないリレンダラー機能についてのビデオです。
カスタム・ライブリレンダラー機能を応用したステム出力方法
Group設定をしておけば、Groupごとのソロ、ミュートのほかステム書き出しまで活用することができます。
Apple Music空間オーディオ・バイノーラル・モニター設定
AudiomoversのBinaural Renderer For Apple Musicを組み合わせれば、Logic ProでなくてもApple空間オーディオを意識したモニタリングが可能です。(購入はコチラ)
HDX DSPを使ったAtmos環境下での低レーテンシーモニター設定
まさにProToolsの内蔵機能ならではの使い方が可能。HDXシステムやハイブリッドエンジンをお使いの方は知っておいて損はない情報ですね。
まだ対応するPro Toolsをお持ちでない方は、アップグレードでDolby Atmos制作環境をGETしてみてはいかがでしょうか!
Pro Tools Ultimate 永続版アップグレード
在庫限り旧価格 ¥57,750 (本体価格:¥ 52,500)
Rock oN eStoreで購入
Event
2024/07/05
【7月10~11日開催】関西放送機器展、サウンドフェスタに出展します
ROCK ON PRO/Media Integrationは関西放送機器展、サウンドフェスタにイベント出展いたします。
今年は両イベントが7月10日(水)・11日(木)の同日開催。この機会を活かすべく、なんとサウンドフェスタと関西放送機器展の弊社ブースを最新のIP伝送技術で中継!Danteをインターネット回線に乗せて送出するDanteConnectは国内初展示となります!クラウドスイッチャーを用いたNDIによる映像中継も組み合わせた、次世代の音声映像伝送展示をご覧あれ!
会場では出来立てホヤホヤのProceed Magazine最新号も配布します!
ご質問・ご相談だけでもお気軽にお越しください。西日本の皆様とお会い出来ることを楽しみにしております!
■第9回 関西放送機器展
>>公式サイト(https://www.tv-osaka.co.jp/kbe/#outline)
期間:2024年7月10日(水)・11日(木)
場所:大阪南港 ATCホール(大阪市住之江区南港北2-1-10)
☆ROCK ON PROブース番号:A-50
展示概要
サウンドフェスタとDante Connect & NDIを使用したIP中継を実現!クラウド稼働のNDIスイッチャーVizrt Viz Vectar Plusを組み合わせ、クラウド化した放送システムの未来を実際にご覧いただけます!また放送用コンソールと連携するマルチエフェクターWaves Live SuperRack SoundGridも展示!
主な展示機器
Dante Connect、Waves CloudMX、Avid MTRX II +Thunderbolt 3 option、Lewitt RAY、ほか
■サウンドフェスタ2024
>>公式サイト(https://sound-festa.com/sf2024-2)
期間:2024年7月10日(水)・11日(木)
場所:大阪国際会議場 グランキューブ大阪 5F〜7F(大阪市北区中之島5丁目3番51号)
☆ROCK ON PROブース番号:7105(7F)
展示概要
関西放送機器展とDante Connect & NDIを使用したIP中継を実現!Cloud上での音声ミキサー、映像スイッチャーソリューションを実際にご覧いただけます。Pro ToolsとSPAT Revolutionを組み合わせたライブイマーシブシステムデモのほか、今年のNAMMで発表されたWaves SuperRack LiveBox Danteも国内初公開!
主な展示機器
Dante Connect、Waves Cloud MX、SuperRack LiveBox Dante、Avid Pro Tools | Ultimate、SPAT Revolution、Avid MTRX Studio、Focal CI、ほか
Support
2024/07/05
Avid Media Composer ver.2024.6リリース情報〜
日本時間 2024年6月28日未明、Avid Media Composer バージョン2024.6がリリースされました。有効なサブスクリプション・ライセンスおよび年間プラン付永続ライセンス・ユーザーは、AvidLinkまたはMyAvidよりダウンロードして使用することが可能です。
今回のリリースでは、文字起こしツールの効率化、Pro Toolsセッションファイルのインポート新機能に伴うカラーマーカー拡張やオーディオのオーディオボリュームとパンのサブフレームのなど、使いやすさがさらに向上しています。
文字起こしツールは、Media Composer |UltimateとMedia Composer | Enterpriseに標準で含まれます。また、PhraseFindオプションをサブスクライブすることで、Media Composer Standardのサブスクリプション版およびMedia Composer永続ライセンス版でも利用可能です。
それでは新機能を見ていきましょう。
文字起こしウィンドウ
[ツール] > [トランスクリプト ツール] を選択して、文字起こしウィンドウを開くことができます。文字起こしツールはソースモニタにロードされているクリップの文字起こしが、タイムコードとスピーカーIDと共に表示されます。
デフォルトでは、起こされた文字とソースモニタの再生ヘッドが連動しており、再生をすると、緑色の文字でテキストを追従します。また、イン点とアウト点をつけると、その範囲のテキストに緑色の帯がつきます。
連動を外す時には、文字起こしウィンドウの左下にあるギャングボタンをクリックします。
スピーカーID
Media Composer 2024.2では文字起こしをすると、話し手を識別できるようになりました。このリリースでは、さらにスピーカーIDの名前を変更したり、正しいスピーカーIDに修正することができます。
スピーカーIDを変更するには、名前をダブルクリックし、新しい名前を入力します。スピーカーIDにエラーがある場合には、スピーカーIDの修正ができます。例えば、複数のスピーカーが1つのIDを共有していたりする場合には、スピーカー名を右クリックし、「Add new speaker」で追加します。
サブクリップとグループのマスタークリップ参照
Media Composerでは、マスタークリップの文字起こしだけがデータベースに保存できるようになりました。文字起こしを行うと、マスタークリップの文字起こしを参照するかどうかを決めることができます。
[尋ねる]はデフォルト設定です。
これにより、サブクリップまたはグループクリップの文字起こしにかかる時間が節約できます。
またサブクリップの文字起こしに加えられた変更は、マスタークリップにも反映され、さらにスピーカーIDの変更も同様に更新されます。
クリップの文字起こしをビン単位で管理する
デフォルトで、Media Composerはプロジェクト内のすべてのメディアの文字起こしを行います。
しかし、音楽や効果音、オーディオのないメディアなど、文字起こしが不要な場合があります。クリップの文字起こしをさせないことで、コンピュータのリソースを無駄に使用することがなくなります。また、長編の作品を編集する際のリソースの節約にもつながります。
ビンを右クリックし、[文字起こしインでキシングから除外]またはを[文字起こしインでキシングに含める]を選択できます。ビンコンテナサイドバーの右側には、それがどう設定されているかが表示されます。
さらに、トランスクリプト設定ウィンドウに「すべての新規ビンを文字起こしインデクシングに含める」という新しいオプションがあります。この設定のチェックを外すと、すべての新しいビンがトランスクリプションから除外されます。
Pro Toolsセッション (.PTXM) のインポート
Pro Toolsのセッションファイルをエクスポートする機能は、2022.12から搭載されましたが、段階的に機能が強化され、今回のバージョンでは、Media Composerでプロツールスのセッションデータがインポートできるようになりました。
Pro ToolsセッションファイルをMedia Composerでインポートすることで、より迅速かつ効率的に作業を行うことができます。
Pro Toolsではファイルを「セッション (Media Composer対応)」として保存すると、Media Composer 2024.6(以上)でインポート可能となる新しい拡張子「.ptxm」が付いたファイルが作成されます。
参考情報(ビデオ):Media Composer 対応セッションを Pro Toolsでエクスポート
制限事項
Pro Toolsからエクスポートされた.ptxmファイルには、次の項目は含まれません。
・ビデオトラック
・フォルダ
・MIDIトラック(別のトラックのインストゥルメントを介して録音されている場合を除く)
・VCMトラック(ただし、オートメーション データは統合されます)
・マスターフェーダー(レンダリングに直接含まれている場合を除く)
また、オーディオを生成する非オーディオ トラック (Aux、ルーティング フォルダー、インストゥルメントなど) は、オーディオ トラックに変換されます。さらに、Media Composerは現在、管理対象メディアとして 32 ビット フロートをサポートしていません。そのため、リンクされた32 ビット フロート ファイルを変換および統合すると、0 dBしきい値を超えるオーディオを含むメディアはクリップされます。
マーカーの色とフィールドの拡張
Media Composerのマーカー色は16色に拡張され、紫、バイオレット、ピンク、デニム、フォレスト、オレンジ、ゴールド、グレーが追加されました。また、「マーカー名」フィールドに含まれていた情報は、「マーカー名」と「ユーザー」に分割されました。
以前のバージョンの Media Composer でマーカーを表示すると、拡張された色オプションは元の8色にマッピングされ、「ユーザー」フィールドは「マーカー名」フィールドに戻ります。マーカーをテキストファイルとしてエクスポートして以前のバージョンにインポートすると、拡張された色はすべてデフォルトで1色になり、「マーカー名」フィールドは無視されます。
ボリュームとパンコントロールのサブフレームオートメーション
ボリュームとパンコントロールのサブフレームオートメーションによる読み取りと書き込みが、Media Composerで利用できるようになりました。サブフレームオートメーションにより、Media Composerでオーディオファイルを操作する際の精度が向上し、Pro Toolsとの互換性も向上します。
サブフレームオートメーションは、フレームベースのオートメーションと同様に機能します。まずトラックコントロールパネルのボリューム/パンボタンをクリックして、ボリュームまたはパンのオートメーションを有効にします。サブフレームオートメーションポイントを追加するには、クリップの上にマウスを置き、Shift + Command + Option (macOS) または Shift + Control + Alt (Windows) キーボードコマンドを押したままにします。これにより、「+」記号の付いた小さな手のアイコンが表示されます。次に、1フレーム間で、オートメーションラインセグメントをクリックします。オートメーションポイントをサブフレームの位置に移動するには、Command + Option (macOS) または Control + Alt (Windows) を押したままオートメーションポイントをドラッグします。ユーザーが元の修飾キー、Option (macOS)、または Alt (Windows) を押したままにすると、最初のオートメーション ポイントがフレーム境界にスナップされます。
オーディオミキサーを使用して記録されたオートメーションはフレーム精度が維持されますが、作成後にサブフレームレベルで調整できます。
OpenTimelineIO (OTIO) のパブリック プレビューのアップデート
Avidでは、継続的な取り組みの一環として、オープン ソース コミュニティに参加し、ユーザー向けに OpenTimelineIO (OTIO) 機能をサポートしています。2024.2で紹介された時はWindowsのみのサポートでしたが、今回はMacでもサポートされることになりました。
OTIOはEDL (Edit Decision List)のような、ファイル交換形式であり、シーケンス内に配置されるマスタークリップを表します。ただし、EDL とは異なり、OTIO ファイルには複数のビデオ トラックとオーディオ トラックが含むことができます。この形式は主に、簡単にファイルを変換できることを必要とするVFXおよびオンラインワークフローを対象としています。
Media ComposerからOTIO ファイルをエクスポートする場合には、ディゾルブなどの最も基本的なエフェクトのみが含まれます。
Media Composerは、リンクされたメディアを含むシーケンスや、インターリーブされたオーディオ ファイルを含む外部で作成されたクリップのOTIOファイルをエクスポートしません。
また、現在のリリースではOTIOファイルをMedia Composeにインポートすることができません。
Media Composerについてのお問い合わせ、ご相談はお気軽にROCK ON PROまでご連絡ください。
NEWS
2024/06/21
Pro Tools 2024.6リリース!ワークフローを加速する多数のアップデートを実施
Pro Tools 2024.6がリリースされました。今回のアップデートではARA 2対応の拡大とRX Spectral Editorの付属、刷新されたセッションインポート機能など、大規模セッションをより効率的かつ確実にハンドリングするための機能強化が図られているほか、MIDIプラグイン追加やSibelius・Media Composerとの連携強化なども施され、ポストプロダクションだけでなく音楽制作においても、より効率的な作業ができるように工夫されています。
有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.6をダウンロードして使用することが可能です。
ARA 2対応アプリケーションにiZotope RX Spectral Editorなどが追加
すでにARAに対応しているCelemony Melodyneに加え、2024.6からは以下のアプリケーションがARAに対応します。
・iZotope RX Spectral Editor(現状、その他のモジュールは非対応)
・Sound Radix Auto-Align 2
・Sound Radix Auto-Align Post 2
・Synchro Arts RePitch(Elements、Standard)
・Synchro Arts VocAlign(Project、Ultra)
・Synchro Arts Revoice Pro
これらのアプリケーションがARAに対応することで、ポストプロダクションで必要とされるオーディオ処理の結果を「ミックスの中で」「リアルタイムに」確認することが可能になります。
RX Spectral Editor、及び、RePitch Elementsは、Pro Tools Artist / Studio / Ultimateに付属します。
Pro Tools Dolby Atmos関連機能の強化
Dolby AtmosレンダラーのUIデザインがより使いやすく変更されました。出力フォーマットの追加、Pro Toolsウィンドウからの設定変更など、より素早いワークフローを実現するアップデートが施されています。
Pro Toolsウィンドウ上で設定変更が可能に
これまでメニューに入らないとアクセスできなかった「バイノーラルモードの変更」と「Dolby Atmosグループ設定のアサイン/変更」が、編集/ミックスウィンドウのトラックからダイレクトに操作できるようになりました。
また、これらの設定は再生中にも変更できるようになり、より最適な設定をリアルタイムに選択することができるようになりました。
Dolby Atmosグループのソロ/ミュート
内部レンダラーのUIがブラッシュアップされ、ウィンドウ上部にDolby Atmosグループごとのソロ/ミュートボタンが追加されました。この機能も、再生中に使用可能です。
これまでウィンドウ上部にあった各種設定メニューは、歯車マークをクリックするとウィンドウが拡張して表示されるようになりました。
出力フォーマットの追加
モニタリングとリレンダー出力に「9.1.4」「7.1.2」「ステレオ(Direct)」が追加されました。もちろん、既存の9.1.6、7.1.4、ステレオはそのまま残っています。従来の「ステレオ」は5.1ミックスをダウンミックスしたものを出力していましたが、新しいステレオ(Direct)は、ステレオ用のミックスを別途制作する場合に使用します。
オフラインでのリレンダリングが可能に
ライブ・リレンダラーでフリーズ、コミット、トラックのバウンスが可能になりました。もちろん、プラグインのオフラインバウンスにも対応しています。
メモリロケーション機能の強化
メモリロケーションを一括で管理する新しいウィンドウが追加されました。絞り込みやマーカー名での検索機能も備えており、膨大なマーカーをこれまでより効果的に活用することができるようになります。
また、マーカールーラーごとに表示/非表示を切り替える機能や、タイムライン上のマーカーへ移動するためのショートカットなどの機能追加も実施されています。
セッションインポート機能の強化改善
セッションインポート時のメニューがアップデートされ、現代のワークフローによりマッチしたデザインになりました。トラック/マーカーのリストが広くなり、ウィンドウ自体も広げることができるようになり、トラック数が膨大になる現代のセッションファイルをより効率よく扱うことができるようになります。
フォルダトラックはインポートウィンドウ上で展開することも可能、トラック名/マーカー名での検索機能も追加され、目的のトラックをすばやく見つけることができます。
Media Composer・Sibeliusとの連携強化
Pro Toolsのセッション書き出しから、Media Composerにインポートできる新しい形式のファイル「.ptxm」をエクスポートできるようになりました。.ptxmにはステレオ、5.1、7.1バスのボリュームとパンのオートメーションを保存することが可能。Dolby Atmosのリレンダーファイルをエクスポートすることもできます。
Media Composerでは、今後のアップデートで.ptxmファイルをインポートすることができるようになります(開発中)。
Sibeliusとの連携では、これまでSibelius→Pro Toolsで可能だったコピー&ペーストを、Pro Tools→Sibeliusでも実行可能になりました。MIDIノートのコピー&ペーストにも対応しています。
ふたつのMIDIプラグインが新登場
MIDIプラグインに下記2点が追加されました。
・Mixed In Key Captain Chords Lite:指定したコードからハーモニーを自動生成
・Human Lite:MIDIトラックに人間的な揺らぎを付加
MIDIエディタの表示オプション
MIDIエディタに下記2つの機能が追加されました。
・キーボードと個別のノートにピッチを表示
・半音階の#/b表示をワンクリックで切り替え
上記の機能はDock表示・ウィンドウ表示のいずれでも使用可能で、それぞれに別々の設定を施すことも可能です。
ユーザーからの声を反映し、着実に現代的なワークフローに対応するPro Tools。有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.6をダウンロードして使用することが可能です。
新規導入、アップデート、HDXシステムなど、ご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問合せください。
NEWS
2024/06/18
Pro ToolsとDropbox Replayが連携!プロジェクトの共有&レビューフローに革新を
Avid Pro Toolsが新たにDropbox Replayとの機能連携を発表しました!
これにより、制作したMAやミックスを共同製作者やプロデューサーと簡単に共有し、得たフィードバックを素早くプロジェクト上に反映することが可能です。共有、フィードバック、編集の一連のフローがメールやテキスト、ファイル共有サービスなどに分散してしまっている方も、Pro ToolsとDropbox Replayによって一括管理してしまいましょう!
バウンス&アップロードで簡単共有
Dropbox Replayとは、Dropboxが提供する動画、画像、オーディオ ファイルのレビューツール。クリエイティブツールとして設計されているのでバージョン管理やロスレスHDオーディオ再生対応などの機能も搭載されています。すでにAdobe After EffectsやPremiere Pro、Apple Final Cut Pro、DaVinci Resolveなどの映像編集ソフトとの連携が実装されてきたDropbox Replayが、ついにPro Toolsとも機能連携されました!
Dropbox Replayアプリとの連携はボタン一つで簡単に行えます。あとはBounce Mixをアップロードして、共有ワークスペースや共有リンクからシェアするのみ。レビュアーはiPadやブラウザからの確認も可能です。
詳しい使用方法はこちら:https://help.dropbox.com/ja-jp/integrations/dropbox-replay-avid-pro-tools
タイムコード付きのコメントをマーカーレーンにインポート!
レビュアーは、指摘したい箇所をタイムライン上でコメント可能。コメントにはタイムコードが埋め込まれ、Protoolsにレビューデータを取り込むとそのコメントがセッション上のトラック・マーカーとして表示されます!
修正箇所に素早くアクセスできるのはもちろん、修正についての齟齬も防ぐことができます。エクスポートにインポート、アップロードしてダウンロードして、修正箇所管理、、といった時間を短縮し、より効率よく実制作時間を確保するのに役立ってくれることでしょう。
実際に使用している様子がわかる公式動画はこちら↓
普段からDropboxを活用されている方も、そうでない方も、制作における事務的なフローを見直してクリエイションを加速させましょう! 制作環境構築に関するご相談もROCK ON PROまでお寄せ下さい!
Support
2024/06/14
Dolby Atmos Renderer v5.3.0 リリース情報 ~レンダリングプロセスの改善やStereo Directモニタリングが搭載~
Dolby Atmos Renderer v5.3.0 がリリース レンダリング処理による問題を解決
Dolby Atmos Rendererの最新バージョンv5.3.0がリリースされました。前回v5.2.0にて実装されたレンダリング処理への問題の報告を受け、v5.1.0までと同じ旧来のレンダリングプロセスへと戻る更新となりました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v530
v5.3.0の主な変更点
サイズ・メタデータのレンダリングをDolby Atmos Renderer v5.1以前と同様の処理に更新
v5.2.0のレンダリングでは、以下の問題が報告されています。
*オブジェクトのサイズに応じてコムフィルターがかかる可能性がある(センターにパンしたドライボーカル信号で顕著)
*新しいレンダリングプロセスに導入されたオールパスフィルターは、以前のツールバージョンと比較して、大きなトゥルーピーク・ラウドネスの違いを生む可能性がある
よって、レンダリング処理をv5.1以前のものへと戻し、オールパス・フィルターは削除されました。
同様の問題が発生する可能性のあるDolby Atmosツールと、その修正バージョンは以下の通りです。
すべてのオブジェクトとベッド・チャンネルに適用されるオールパス・フィルター(Dolby Atmos Renderer v5.2で導入)を削除し、Dolbyツール間のTrue Peakラウドネスの差を低減
ラウドネスの測定方式をDolby Atmos Album Assembler v1.4と同様に統一
新しくモニタリングとリレンダーのレイアウトとしてStereo Directを追加。
Stereo Directとは
Stereo Directが追加のモニタリングおよびリレンダリング・レイアウトとして追加されました。Stereo Directは、レイアウトを介してダウンミックスされるのではなく、Atmosミックスから直接作成されます。ADMにはエクスポートされません。別の成果物としてリレンダリングしエクスポートができます。LFE信号は含まれていません。
このモニタリングおよび再レンダリング出力のトリムは、「トリムとダウンミックス」ウインドウで調整できます。ステレオダイレクトの音量をUIに表示するには、環境設定でヘッドフォン出力をステレオダイレクトに設定してください。
トランスポートタイムラインを追加
スペースバーの再生動作を変更するオプションを追加
マスターの開始/終了が、最も近いサブフレームに丸められた形で表示されるよう変更
マスターの開始/終了をトップパネルのサブフレームに表示するオプションを追加
AmbixリレンダリングのラベルをAmbiX ACN0(W)、AmbiX ACN1(Y)、AmbiX ACN2(Z)、AmbiX ACN3(X)に変更
環境設定でスリープオプションを表示しないよう変更(Macのみ)
レンダラーのトランスポートを制御するOSCコマンドに対応
Avid MTRX IIとThunderbolt™ 3オプションモジュールを認定システムに追加
修正された問題
macOS Sonoma 14.4およびVentura 13.6.5以降では、AppleのCore Audioによるセキュリティと安定性の向上のため、Dolby Atmos Renderer 5.2(およびそれ以前)のインストールに失敗する問題を修正
オブジェクトにサイズメタデータが含まれ、特定の位置に配置されている場合、書き出されたMP4のオーディオが無効化されたゾーンを無視する問題を修正
新しく発見された問題
Dolby Atmos Album AssemblerとDAWを同時にDolby Atmos Rendererに接続すると、予期しないメタデータがマスターファイルに書き込まれることがあります。接続すると、Dolby Atmos Album AssemblerがRenderer のプログラムレベルのメタデータ設定に影響します。(PRAU-6597)
リリースノート全文はこちら(原文):https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v530/release-notes
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの“製品”(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築に関するお問い合わせはROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2024/06/11
VocAlignに新バージョン&新ラインナップが発表!定番ボーカルアライメントツールが更なる進化
ボーカルアライメントツールの世界的な定番であるSynchro Arts社のプラグインVocAlignに、新バージョン「VocAlign 6」がリリースされました!
バージョン5の青を基調としたUIデザインも一新され、今回は黒色になったVocAlign 6。もちろんビジュアル面だけでなく、ダブトラックやバックコーラスの処理機能、ProTools ARA対応といった機能面での進化も見逃せません!
また今回のリリースから、製品ラインナップの名称が以下の通り変更となりました。
・VocAlign Ultra → VocAlign Pro
・VocAlign Project → VocAlign Standard
主な機能
◎ボーカル処理がさらに高速化!
Revoice Proにも搭載のSmart Align技術を活かし、複数のボーカルやプリセットを瞬時に処理!更なるシンクポイントの改善とグループアライメント機能 (*PROのみ) により、ボーカル補正処理に割く時間をさらに短縮できるようになっています。
◎タイトネスコントロールであらゆるシーンに対応
アライメントの強度(どれくらい正確にアライメントするか)を細かく調整できるタイトネスコントロール機能により、自身のイメージに近いボーカルを突き詰めることも。様々なシーンのテイストに合う自然なボーカルが実現できます。
他にも、ダブトラックをグループに割り当てて同時処理ができるプロセス・グループ機能や設定したガイドに合わせて各トラックのボーカルを追従させるピッチ補正、解析によるバックコーラス補正など、Synchro Arts独自の処理技術によるスマートな機能が盛りだくさんです! (プロセス・グループ、Smart PitchはPROのみの機能)
動作環境
macOS 10.11以上
IntelプロセッサまたはApple Silicon(Mシリーズ)プロセッサ
AU、VST3、またはAAX 64ビットホスト
Windows 10以上
IntelまたはAMDプロセッサ
VST3、またはAAX 64ビットホスト
Synchro Arts / VocAlign 6 Pro
販売価格:¥60,170 (本体価格:¥ 54,700)
>> Rock oN Line eStoreで購入!
Synchro Arts / VocAlign 6 Standard
販売価格:¥25,300 (本体価格:¥ 23,000)
>> Rock oN Line eStoreで購入!
更なる進化を遂げたVocAlign 6を駆使して、思い描くボーカルを素早く実現させましょう!音楽制作ツールのご相談もROCK ON PROが承ります!
Event
2024/06/11
デジタルコンソールを体験できる展示会イベント『Yamaha Music Japan Pro Audio Day 2024』開催
来る2024年6月18日(火)、19日(水)の2日間、デジタルミキシングシステム「RIVAGE PMシリーズ」全ラインアップをワークショップ形式で体験できる展示会イベント『Yamaha Music Japan Pro Audio Day 2024』が開催されます。
当日は「RIVAGE PMシリーズ」だけでなく、話題のデジタルミキシングコンソール「DM7シリーズ」や「DM3シリーズ」、ラウドスピーカー「DHRシリーズ」「CHRシリーズ」などの展示コーナーや、Danteの基礎知識などをお届けするセミナーコーナーが設けられる予定です。
『Yamaha Music Japan Pro Audio Day 2024』
日時:2024年6月18日(火) 13:30開場 / 17:00閉場
2024年6月19日(水) 10:00開場 / 17:00閉場
会場:渋谷ストリームホール(アクセス)
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷3-21-3 渋谷ストリームA棟
(JR山手線 渋谷駅 中央改札もしくは南改札から、東口方面 渋谷スクランブルスクエア2階貫通路を経由して直結)
申込・参加方法:
・本イベントは無料でどなたでもご参加いただけます。
・当日受付で名刺を1枚頂戴、またはお名前のご記入をお願いいたします。
ヤマハ・プロオーディオのハイエンド製品が一同に会する本イベント。実際の機器に触れていただき、その魅力や機能について体験いただける貴重な機会をぜひご利用ください。
NEWS
2024/05/31
Avid 2023 Top Audio Reseller ASIA / 2023 Team Avid Award ASIA を受賞しました!!
2023年度、アジアにおけるAvid社のオーディオ製品を最も販売したディーラーとして弊社メディア・インテグレーションが表彰されました!今回は併せてTeam Avid Award ASIAも受賞しており、広くAvid製品の普及に努めるなど販売以外での活動も評価をいただいた格好です。
ワールドワイドにオーディオ制作のスタンダードとなっているAvid製品ですが、アジアでも数々の国境を超えたコンテンツが生み出され、それに併せるように各国のディーラーも活発に事業展開をおこなっております。その中で!ここ日本での販売を担う私どもがアジアのトップディーラーとして今回の褒賞をいただけたのは、ひとえに他ならぬ皆様のご支持のおかげでございます!厚く厚く御礼申し上げます。
今後も皆様のクリエイティブワークが一層充実したものとなるよう、情報発信からサポートに至るまで更なる邁進を続けてまいります。今後ともメディア・インテグレーション並びにROCK ON PROをご愛顧いただけますようお願い申し上げます!
Support
2024/05/13
MBOX Control v1.0.2リリース〜macOS Sonoma (14.4.1) 対応
Avid最新のNative I/OであるMBOX Studioのコントロールアプリ「MBOX Control」がアップデートされ、macOS Sonomaに対応いたしました。
その他の新しい機能はありませんが、数多くの課題修正が施されております。
詳細はAvidナレッジベース「MBOX Control Release Notes」(英文)をご覧ください。
6月30日まで!MBOX Studioご購入&製品登録でPro Tools Studio永続版を無償でゲット!!
2024年6月30日までにMBOX Studioをご購入いただき、さらにAvidアカウントに製品登録をおこなっていただくと、Pro Tools Studio永続ライセンスがアカウントに無償でデポジットされます。
製品登録完了までが条件ですので、在庫のあるうちにお早めにお問い合わせください!
Avid MBOX Studio
通常販売価格:¥138,600(本体価格:¥126,000)
Rock oN Line eStoreで購入!>>
https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-pro-tools-studio/
NEWS
2024/05/10
360VME出張測定開始&価格改定のお知らせ
360VME、出張測定開始
ついに6月より、360VME出張測定サービスが開始されます!!
SONYがイマーシブ制作を行われるクリエイター全てのためにその技術を展開しているSONY 360 Virtual Mixing Environment(360VME)。Rock oNのイマーシブ拠点MILスタジオにてそのサウンドをお持ち帰りいただくべくサービスを展開していましたが、ついに第2フェーズへとSONY 360 VMEサービスは突入します。
ご体験を頂いた方には、非常に高評価を頂いているSONY 360 VMEサービスです。MILスタジオと言うRock oNの誇るイマーシブスタジオのサウンド環境をヘッドフォンに閉じ込めてお持ち帰りいただくという、まさに夢のようなサービス。しかし、すでにイマーシブスタジオをお持ちの方からは自身のスタジオの環境を持ち歩きたいという声を多くいただいていました。
その声に答えるべくSONYと協議を進め、6月より出張測定のサービス開始となります!
料金体系変更のお知らせ
あわせて、SONY 360 VMEのStart Up Price期間も終了し、料金体系も変更となります。
① 360VME プロファイル料金
1プロファイル/1年 ¥40,000(税別)
1プロファイル/6ヶ月 ¥25,000(税別)
※プロファイルデータは 期間限定のサブスクリプションモデルとなります
② 360VME プロファイル測定料金
MILスタジオでの測定 1測定/¥40,000(税別)
出張測定サービス ¥80,000(税別)
※出張測定サービスは、3プロファイル以上でのお申し込みをお願いします。
①プロファイルサブスクリプション + ②測定料金 = 360VME測定サービス合計金額となります。
Sample Case #1 〜MILでの測定〜MILスタジオで、SONY 360 Reality AudioとDolby Atmosフォーマットのプロファイルを測定。
1年間のサブスクリプション・プロファイルを購入。
2プロファイル/1年 ¥40,000 ✗ 2 = ¥80,000(税別)
MILスタジオでの測定(2プロファイル) ¥40,000 ✗ 2 = ¥80,000(税別)
合計 ¥160,000(税別)
Sample Case #2 〜出張測定〜出張測定で、4名分のプロファイルを測定。1年間のサブスクリプション・プロファイルを購入
4プロファイル/1年 ¥40,000 ✗ 4 = ¥160,000(税別)
出張測定サービス(1プロファイル)¥80,000 ✗ 1 = ¥80,000(税別)
合計 ¥240,000(税別)
上記新価格は、6月よりの適用となります。
5月中のお申し込みに関しては、これまでの料金体系でのお受付とさせていただきます。
◎360VMEプロファイル更新料金に関して
測定を伴わないプロファイル期間更新の料金の設定を行う予定です。こちら、SONY様との協議が完了し次第、告知の方を行わせていただきます。
測定は引き続きこちらのフォームからお申し込みいただけます↓
360VME測定 お申し込み
ご不明な点などございましたら、ROCK ON PROまでお問い合わせください。
360 Virtual Mixing Environment詳細ページはこちら↓
https://www.minet.jp/brand/sony-360-vme/sony-360-vitual-mixing-environment/
MIL studioについてはこちら↓
https://www.minet.jp/contents/info/mil-studio/
NEWS
2024/05/02
5/10(金)社内研修に伴う全社短縮営業のお知らせ
お客様各位
平素はご高配を賜り、誠にありがとうございます。
勝手ながらではございますが、下記日程を社内研修のため臨時短縮営業とさせていただきます。
お客様、ならびにお取引先各社様にはご不便をおかけしてしいまい大変申し訳ございません。
なお、当日14:00以降のお問い合わせにつきましては、翌営業日となる5/13(月)以降、順次ご対応を進めてまいります。
●ROCK ON PRO / 臨時短縮営業のお知らせ
・2024年5月10日(金)
臨時短縮営業時間:10:00〜14:00
また、同日は弊社店舗、ECサイトにつきましても12:00 ~ 14:00の短縮営業となりますのであらかじめご了承ください。
以上、何卒ご了承のほど宜しくお願い申し上げます。
Support
2024/05/02
Pro Tools 2024.3.1 リリース(不具合修正バージョン)
Pro Tools 2024.3に含まれていた課題が改修された、Pro Tools 2024.3.1がリリースされています。
主に2024.3で新機能が追加されたMIDI関連の課題修正と、macOS Sonoma対応改善が行われました。動作確認済macOS Sonomaでは、M1、M2、M3 システムの Efficiency Core を利用することで、パフォーマンスが大幅に向上しているとのことです。
特にSonoma環境で使用されているユーザー様は以下の情報をご一読の上、アップデート(無償)をご検討ください。
Pro Tools 2024.3.1で修正された不具合は以下となります。
macOS Sonoma
メニューがリストの途中でスクロールしなくなる問題を修正 (PT-318989)
メニューが開いている間、エディットウィンドウとミックスウィンドウのスクロールを防止 (PT-319070)
メニューをナビゲートするためのボイスオーバーコマンドをサポート (PT-319499 / PT-319494)
メニューにアクセスする Apple スクリプトの問題を修正 (PT-317403)
macOS Sonoma 上での Keyboard Maestro 機能対応 (PT-312684)
Setup>Hardware でソフトクリップ機能を使うとクラッシュする問題を修正 (PT-320637)
Sounds In Sync スクリプトが macOS Sonoma のメニューと連動 (PT-312667)
macOS 14.4 以降で、Pro Tools Audio Bridge をインストール後、再起動せずともすぐに表示 (PT-321583)
MIDI
オーディオトラックへの録音中に保存を押すと、MIDIノートがスキップされることがあるバグを修正(PT-320601)
インストゥルメントのチェインアウトをMIDIトラックに録音中、MIDI FXプラグインの量とハードウェアバッファサイズによっては、MIDIの最初のノートがスキップされることがあるバグを修正 (PT-319992)
インストゥルメントトラックを複製すると、相対的なターゲットVI(ヴァーチャル・インストゥルメント) Chain Outの割り当てが維持されるようになりました (PT-320147)
Delay Compensation (MIDI)
Chain Inプラグインを含むInstrumentトラックの初期ノートがスキップされることがあるバグを修正(PT-320602)
トラックに複数のMIDIプラグインをスタックしても、レイテンシーの余分なバッファが追加されなくなりました (PT-320459)
高レイテンシーのセッションでMIDI ThruをChain Inで使用する際のディレイ補正の精度を改善 (PT-320506)
トラックにハードウェアインサートが存在する場合、テンポシンクされたVIが再び時間通りになるよう改善 (PT-320155)
他のディレイを誘発するプラグインがトラック上に後から挿入された場合、テンポシンクされたMIDI生成プラグインが時間通りになるよう改善(PT-320056)
セッションに遅延がある場合、テンポ同期されたプラグインのタイミング精度が向上(PT-317056/PT-263943)
Chain Inを使用したテンポシンクされたVIのオンライン・トラック・バウンスとコミットは、オフライン・バウンスまたはコミットの後に行われた場合、時間通りに行われるよう改善 (PT-320241)
その他の修正点につきましては、リリースノートをご確認ください。
Pro Tools 2024.3 / 2024.3.1 リリース・ノート
本件に関するご不明点、また、Pro Toolsシステム設計のご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください。
Event
2024/04/25
5/14(火)ウェビナー開催!「NAB 2024 After Report」!
先日開催されたNAB 2024。ショーレポート記事も連日お届けしてまいりましたが、そこではお伝えしきれなかった情報をまとめてご紹介するウェビナー、「NAB 2024 After Report」を5/14(火)17:00より開催です!
到着早々に訪れたL.A. Sony Picturesに始まり、ラスベガスでのNAB SHOWでの注目製品はもちろんのこと、NDI 6・Thunderbolt 5など将来を担う規格やSSLのクラウドミキシング、その他にもWeb記事ではお伝えしきれなかったニューカマーの数々。リアルな会場の雰囲気を携えて、現地へ赴いた(羽ばたいた?)ROCK ON PRO 前田 洋介が渾身のレポートを行います!
また、当日はAvidよりDaniel Lovell 氏をゲストに迎え、現地でもハンズオンされていたPro Toolsの次期バージョン 2024.6(予定)をテクニカルプレビュー。特にPro Tools内に制作に必須となっているプラグインが統合された「ARA」には、現地の様子を見るとiZotope RXだけでなく、Auto-Align / Re-Pitch / Revoice Pro Link / VocAlignといった名前も見えており、さらなる展開があるようです!
開催URLなど詳細は下記をご参照ください。2024年を占う製品の数々を現地の情報とともに解説していきます、ぜひご一緒に!
◎ウェビナー開催概要
NAB 2024 After Report !!
・日時:2024年5月14日(火) 17:00-18:00
・講師:
Avid Technology / Daniel Lovell 氏
ROCK ON PRO / 前田 洋介
・参加費:無料
・視聴方法:You Tube Liveにて生配信
◎You Tube Live 視聴URL:https://youtube.com/live/NGhQXMqn2Gw?feature=share
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology
APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
講師:前田 洋介
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
Product Specialist
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
Event
2024/04/19
NAB SHOW 2024レポート!最新情報を現地ラスベガスよりお届けです!
今年もやってまいりました!北米最大の放送機器展「NAB SHOW」がラスベガスで開催、ROCK ON PRO 前田洋介が今年もアメリカへ羽ばたいております!現地からの最新情報を続々とレポートです!
さらなる進化を提示しているVizrtブースでのNDI6や、DaVinci Resolve 19はもとより大量の新製品を発表したBlacmagic Design、SSLのクラウドミキシングソリューション、 今年のトレンドとなるあろうThunderbolt 5関連、果てには3PLAY MEDIA社のAI DUBBING(AI自動翻訳『吹替』!)まで!そのほかにも活況を呈するNAB会場の様子が余すところなく伝えております。また、アメリカ到着早々にはL.AのSony Pictures Studio(!)を訪れた模様、こちらも必見です!
2024年を占うプロダクトの数々、技術・規格のトレンドが見えてきたNAB SHOW 2024、詳しくは下記URLよりレポートまとめページへアクセスしてください!
●Rock oN Webサイト/ NAB 2024
https://www.miroc.co.jp/category/report2/showreport/nab2024/
Support
2024/04/01
Avid保守再加入ポリシーの変更に関するお知らせ〜Pro Toolsサポート情報
2024/4/1より、Avidの保守再加入に関するポリシーが見直されました。
主な変更点は以下をご参照ください。
1. 再加入費用が保守金額の25%から35%に上がります。
2. 以下のケースに関しては再加入が認められません。
故障したハードウェアに対する既存のRMAまたはカスタマー・ケアのケースが存在する場合
2年以上保守が切れているAvidハードウェア製品
保守が切れた(サポート保証外の)Avidハードウェアで、再加入を希望する次回保守の開始日より6年以上前に出荷されたもの
保守が切れた(サポート保証外の)Avidハードウェアで、9か月以内に製品サポート完了日を迎えるもの
特に、上記2.についてはこれまでと大きく運用が変更される部分ですのでご注意ください。
保守が切れている製品が故障した場合、ご自身でケースを立てずにまずは販売店へご相談ください。
更新内容に関してはAvid Advantageサポートプラン利用規約にも反映される予定です。
Sales
2024/04/01
Neumann U87 Ai プライスプロモーションが開催!
ゼンハイザージャパン株式会社から、Neumann U87 Aiの期間限定プロモーションのお知らせが届きました!業界標準、スタジオマイクの大定番U87シリーズの現行機種であるU87Ai、いつか手に入れたいと思っていた方も、買い足したい方も、期間限定プライスで入手できるこの機会をお見逃しなく!
キャンペーン対象期間:
2024年4月1日(月) ~ 2024年4月30日(火)受注分まで
※受注受付期間内であっても数量限定のため、受注数に達し次第終了となります
対象製品
Neumann / U 87 Ai
参考通常価格:¥539,550(本体価格:¥490,500)
→プロモーション特価:¥458,150
(本体価格:¥416,500)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Neumann / U 87 Ai STUDIO SET
(サスペンションEA87付きセット)
さらにRock oN限定でマイクケーブルプレゼント!
参考通常価格:¥572,000(本体価格:¥520,000)
→プロモーション特価:¥486,200
(本体価格:¥442,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
3つの極性と滑らかなサウンド、オールマイティに活躍する世界的スタンダードな1本を新しい季節にいかがですか? レコーディングスタジオ機材のご相談もROCK ON PROまでご連絡ください。
NEWS
2024/03/29
Indoor 2 発売!ポスプロ向けリバーブが待望のアップグレード
AltiverbやSpeakerphoneなどがポスプロでも高い評価を得ているオランダのソフトウェアメーカーAudio Ease社。その主力製品の一つである、屋内音響に特化したリバーブプラグインIndoorが、待望のアップグレードです。約7年8ヶ月ぶりのメジャーアップグレードという「Indoor2」は、Appleシリコンにネイティブ対応、VST3対応などの進化を遂げています!
10のロケーション、60の空間で計1,000以上のインパルス・レスポンスを収録しており、マイク向きやドアの開閉の調節が可能なIndoor。かねてより7.1.2chのDolby Atmosフォーマットにも対応しています。Audio Ease定評の音響空間技術を駆使した高クオリティなリバーブ・プラグインです。
Indoor制作におけるIR収録の様子
主な新仕様 ~広がる動作環境~
・Appleシリコン搭載環境にネイティブ対応
・VST3フォーマット対応
・iLokのマシン認証に対応。USBキーに加えてコンピュータ本体にライセンス情報を記録可
これらのアップグレードにより、Indoorを使用できるシステム環境がより広がりました。
また、Windows版も後日対応予定とのことです。
Audio Ease / Indoor 2
¥111,100 (本体価格:¥101,000)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Indoor 1 to 2
(インドア1から2へのアップグレード)
標準価格:¥12,298(税込)
お求めはROCK ON PROまで!
※2023年3月18日以降にIndoorの前バージョン(Indoor 1)をアクティベートされたユーザーは、
無償アップグレードの対象になっています。詳しくは、AUDIO EASE社から届いている通知メールをご覧ください。
Altiverb8に続いてAppleシリコン搭載環境にネイティブ対応し、さらに活躍の場を広げたIndoor 2をぜひご活用ください!AudioEase製品などポスプロ制作ツールについてのご相談はROCK ON PROが承ります。
Sales
2024/03/22
【追記あり】10セット限定!Pro Tools | Carbon + Carbon Pre バンドルキャンペーン
筐体内部にHDXカードと同じDSPチップを内蔵し、HDXカードのないシステムでもAAX DSPプラグインを使用することができるPro Tools | Carbon。音楽制作のための必要な機能と高品質のオーディオ性能を兼ね備えたこのPro Tools | Carbonと、Pro Tools | Carbonに8チャンネルのマイクプリを追加するPro Tools | Carbon Preをセットにしたお得なバンドル製品を10セット限定、Rock oN Company / ROCK ON PRO限定で販売します。
Avid Pro Tools | Carbon Hybrid Audio Production System + Pro Tools | Carbon Pre
通常合計販売価格:¥1,056,330
限定キャンペーン特価:¥898,000(本体価格:¥816,364)
終了時期:10セット限定!限定販売数に達し次第終了
お買い求めはRock oN Company店頭、または、ROCK ON PROまでお問い合わせください。
*本キャンペーンはRock oN Compnay及びROCK ON PRO独自のキャンペーンとなります。ほかの販売店様ではご購入いただけませんのでご注意ください。
Pro Tools StudioでもAAX DSPを使用可能に
Pro Tools | Carbonには、8チャンネルの高品質マイクプリ、全面パネルに設置された4系統のHPアウト、トークバックマイクの内蔵など、高いクオリティの音楽制作をスムーズにおこなうための機能が詰め込まれています。しかし、Pro Tools | Carbonの最大の特徴は、Hybrid Engineを使用することで、ネイティブ環境でもAAX DSPプラグインによるニアゼロ・レイテンシーの恩恵を受けられることにあります。
Pro Tools UltimateでHDXカードなしの構成や、HDXカードに対応していないPro Tools Studioを中心としたシステムでも、HDXシステムと同等の環境でレコーディングをおこなうことができます。
Hybrid EngineによるDSPのON/OFFは各トラックに配された雷マークのボタンをクリックするだけで簡単に切り替えることが可能。レコーディング中にリバーブだけをDSPモードで掛け録りし、トラックはCPUベースで再生する、といった、DSPとCPUそれぞれのパワーを最大限に活用することができるようになります。
Pro Toolsとのシームレスな統合
Pro Tools | Carbon、及び、Pro Tools | Carbon Preのもうひとつのアドバンテージが、Pro Tools内部からすべての設定が可能であるということです。例えば、AvidフラッグシップI/OであるMTRX IIの場合、ルーティングマトリクスやモニターセクションのコントロールのために、Pro Toolsとは別にDADmanソフトウェアを立ち上げる必要がありますが、Pro Tools | Carbon / Pro Tools Carbon Preの場合はPro Tools画面だけでコントロールが完結します。
数量限定!Pro Tools | Carbon + Pro Tools | Carbon Preバンドルキャンペーン
HD I/Oの発売から10年以上を経て、Avidが新たな純正I/Oとして開発したPro Tools | CarbonとPro Tools | Carbon Pre。小規模・中規模のレコーディングだけでなく、Pro Tools | Carbon Preをさらに追加していくことで従来のHD I/O + PREを代替する規模のシステムまで拡張することも可能です。
個別に購入するよりも¥150,000以上もお得な本キャンペーン。レコーディングシステムの更新/グレードアップをご検討中のみなさまは、ぜひこの機会をご利用ください!
Avid Pro Tools | Carbon Hybrid Audio Production System + Pro Tools | Carbon Pre バンドルキャンペーン
通常合計販売価格:¥1,056,330
限定キャンペーン特価:¥898,000(本体価格:¥816,364)
終了時期:10セット限定!限定販売数に達し次第終了
お買い求めはRock oN Company店頭、または、ROCK ON PROまでお問い合わせください。
*本キャンペーンはRock oN Compnay及びROCK ON PRO独自のキャンペーンとなります。ほかの販売店様ではご購入いただけませんのでご注意ください。
Pro Tools | Carbonについてのより詳細な情報はこちら>>(Avid WEBサイト)
Pro Tools | Carbon Preについてのより詳細な情報はこちら>>(Avid WEBサイト)
3月22日追記
Pro Tools | Carbon Preを使用した実例はこちら>>(サンレコWEB)
Pro Tools | Carbonに関する過去の記事
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-carbon-proceedmagazine
https://pro.miroc.co.jp/headline/pt-carbon-hybrid-engine-yt-playlists
https://pro.miroc.co.jp/headline/avid-new-products-mbox-studio-pro-tools-carbon-pre
NEWS
2024/03/15
Avid Sibelius 2024.3 リリース ~Pro ToolsとのMIDI連携が強化!~
AVIDの楽譜作成ソフトウェアSibeliusの新バージョン、2024.3がリリースされました!
Pro Toolsとの間でMIDIのコピー&ペーストが可能になったほか、キーパッド機能の改良やリモートコントロール対応など、Sibeliusユーザーにとってはさらに使い勝手が向上するアップデートとなっています。
Pro ToolsとのMIDIコピー&ペースト運用
Sibelius 2024.3の大きなアップデートとして、同タイミングでリリースされたPro Tools 2024.3との間でMIDIをシームレスにコピー&ペーストできるようになりました。
Pro ToolsからSibeliusでは、パブリック・クリップボードにMIDIをコピーし、ノート、ピッチ、ノートの長さ、クリップ内のタイミング/位置、クリップ全体の連続コントローラーデータなど、関連するすべてのMIDI情報とともにSibeliusに貼り付けることができます。
SibeliusからProToolsへのコピー&ペーストでは、パッセージ選択またはコンダクター・トラック全体をすべての関連データとともにコピーし、Pro Toolsに直接貼り付けることもできるようになります。
Pro ToolsとSibelius両方を使用されている作曲家の方にとってはかなり嬉しい機能でしょう。
キーパッドの改善 サイズ変更に対応!
キーパッドが自由なサイズ変更に対応しました。マウスのクリック&ドラッグによる直感的な操作やコマンドによる段階的な調整が可能。あらゆる環境のユーザーにとって作業の快適さに直結するアップデートです。
また、キーパッドの4番目のレイアウトにカスタム・アーティキュレーションが追加され、探しにくいシンボルもキーパッドから簡単に出せるようになりました。
Sibelius Connectでリモートコントロール
Sibelius Connectを使用すると、ローカルまたはモバイルデバイス、タブレットの制御アプリを使用して、Sibeliusをリモートで制御できるようになります。
SoundflowやStreamDeckからのリモート制御も可能で、作業スピードを向上させられる機能です。
その他詳しいアップデートは公式サイトをご確認ください。
ProToolsとの連携強化でさらに使いやすくなったSibeliusにご注目!Sibelius for androidのベータ版配信も始まっていますよ。ご購入、お見積もりの相談はROCK ON PROまで!
Sales
2024/03/15
【3/28まで】Sennheiser / Neumann 年度末プロモセール開催!
ゼンハイザージャパン株式会社から、年度末プライスプロモーションのお知らせが届きました!
期間中、キャンペーン対象製品をお得にGETできるチャンスです。数量限定、期間限定のため、ぜひこの機会をお見逃しなく!
キャンペーン対象期間: 2024年3月14日(木) ~ 2024年3月28日(木)まで
キャンペーン内容: 対象製品を本体価格¥99,800でご購入いただけます。(スピーカーは1台あたりのお値段となります。)
対象製品
◎Sennheiser
MD 441-U / マイクロフォン スーパーカーディオイド
通常価格:¥190,300(本体価格:¥¥173,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
MKH 416-P48U3 / ショットガン マイク
通常価格:¥138,600(本体価格:¥¥126,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
A 5000-CP / 半球型ヘリカルパッシブアンテナ
通常価格:¥182,600(本体価格:¥¥166,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
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EW 100 G4-945-S-JB / ボーカルセット (SKM100-S/945 付属)
通常価格:¥161,700(本体価格:¥¥147,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
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EW 100 G4-935-S-JB / ボーカルセット (SKM100-S/935 付属)
通常価格:¥161,700(本体価格:¥¥147,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
◎Neumann
KH 120 II EU/KR / スピーカー 5.5”ドライバー 灰
通常価格:¥148,500(本体価格:¥¥135,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800) (1台あたりのお値段です)
Rock oN Line eStoreで購入>>
KH 120 II W / スピーカー 5.5”ドライバー 白
通常価格:¥148,500(本体価格:¥¥135,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800) (1台あたりのお値段です)
Rock oN Line eStoreで購入>>
KM 184 MT / KM180 一体型 カーディオイド マット
通常価格:¥140,800(本体価格:¥¥128,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
KM 184 / KM180 一体型 カーディオイド ニッケル
通常価格:¥140,800(本体価格:¥¥128,000)
→年度末プロモーション特価¥109,780
(本体価格:¥99,800)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Sennheiser、Neumannの気になっていた製品や定番製品を購入する絶好の機会です!ご購入、お見積りの相談はROCK ON PROまでお気軽にお問合せください。
Support
2024/03/11
Pro ToolsとmacOS Sonomaの既知の不具合 – Pro Tools サポート情報
先日リリースされたバージョン2024.3にて、Pro ToolsとHDXシステムはmacOS Sonoma (14.3.1) に対応しましたが、重大な既知の不具合が見つかっています。Pro Toolsをご使用のユーザー様は、現状、macOS Sonomaへのアップデートは推奨されません。
最新情報はAvidナレッジベースでご確認ください。
macOS 14.4
新しいmacOS 14.4 Sonomaアップデートにより、AppleシリコンMac上のいくつかのiLokオーソライズ・プラグインに問題が発生しています。PACE Anti-Piracy社では、この問題を認識しており原因究明作業中です。この問題が解消されるまで、macOS 14.4へのアップデートは推奨されません。
macOS 14.3.1
Pro Tools ソフトウェアにおける問題
多コアのインテル・マシン(28-core Mac Proなど)を低バッファーサイズで使用した際の、オーディオ性能の劣化。
Aux I/Oデバイスを使用した際に不定期にエラーが出る。
ボイスオーバー・アクセシビリティ機能でポップアップやコンテクストメニューが表示されない。
インテルMac上で、Dolby Atmos内部レンダラーUIに、balls/textが表示されなかったり、top/rearビューが正しく表示されない場合がある。
編集ウィンドウのトラック名やトラック・アウトプット・アサインのツールチップが表示されない事がある。
Avidプラグインのいくつかでグラフィック表示不具合が発生する場合がある。
ミックスまたは編集ウィンドウ上におけるスクロール最中にメニューが開いたままなる場合がある。
インプットに「声を分離」モードが選択されている際に警告が出ない。
Pro Tools ハードウェアにおける問題
高サンプルレート・セッションにおける潜在的なサンプル落ちを含む、Pro Tools | Carbon の性能劣化問題。
Carbonセントラルにおけるエラー・ステータスの発生、または、拡張デバイスがAudio MIDI設定に作成されない。
HDXシステムにおいて、設定>ハードウェア でソフトクリップを選択すると、ソフトウェアがフリーズする。
MBOX Studioを低いハードウェア・バッファーサイズで使用した際に、正しく再生スタート出来ない場合がある。
3rd パーティー製品の問題
Keyboard Maestro経由でメニューが選択できない。
Sync scripts内のSoundsが Pro Tools メニューにアクセスできない。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-support-resource/
Support
2024/03/08
【Pro Tools 2024.3対応版】Pro Tools サポート情報一覧
Pro Tools 2024.3のリリースに伴い、Avidの各種サポートページが更新されています。システム要件や対応するOSなどの情報が記載されていますので、システム更新やPro Toolsのアップグレードをご検討中の方はご参照ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-on-macos-sonoma/
Pro Tools 2024.3新機能ガイド
新機能ガイド日本語版PDFです。
Avid Japan YouTubeチャンネル
最新の6本がPro Tools 2024.3で追加された機能に関する動画です。
Pro Tools 2024.3リリース・ノート
システム要件、対応するハードウェア、新機能などの情報へのリンクが記載されています。
Pro Tools リリース・ノート
過去のバージョンを含めた、Pro Tools各バージョンにおける不具合修正内容などの情報が記載されています。
Pro Tools システム要件
Pro Toolsを動作させるための基本的なマシンスペックなどが記載されています。
Pro Tools OS (オペレーティングシステム) 互換性 リスト
Pro Toolsのバージョンと、macOS/Windowsの対応表です。
Pro ToolsでサポートされるAppleコンピュータとオペレーティング・システム
AvidによってPro Toolsの動作検証が実施されているApple製コンピュータの一覧が記載されています。
Pro ToolsでサポートされるWindowsコンピュータとオペレーティング・システム
AvidによってPro Toolsの動作検証が実施されているWindowsコンピュータの一覧が記載されています。
Pro Tools | Carbon システム・サポートと互換性
システム要件、対応するコンピュータ、対応OSからユーザーガイドへのリンクまで、Pro Tools | Carbonに関する情報がまとまっています。
Pro Tools ビデオ・ペリフェラル
Pro Toolsが対応するAvidビデオ機器とドライバのバージョンマッチングが一覧できます。
EUCON 互換性
EUCON各バージョンとPro Tools各バージョンの対応OSを調べられます。EUCON最新の2023.11はmacOS Sonomaに対応していますが、Pro ToolsはSonomaには未対応ですのでご注意ください。
Pro Toolsアップグレード・コードの登録方法
アップグレード・コードをアカウントに登録し、ダウンロード可能にするまでの手順を解説した動画です。
Pro Tools ソフトウェア・アップデート
最新版をどこからダウンロードするか記載されています。
Pro Tools 初期設定削除方法
コンピューター最適化ガイド – Mac及びWindows
Pro Toolsをインストールする前に設定すべき諸項目に関するガイドです。
Pro Tools と Media Composer を同一のシステムに混在させる際の注意点
Sibelius と Pro Tools を同一のシステムに混在させる際の注意点
Pro Tools のバージョンとリリース日(v9 以降)
Pro Toolsアップデートの最新版
古いバージョンの情報も載っています。
Pro Tools ドキュメント
マニュアルや新機能ガイドです。新バージョンが出るたびに更新され、日本語版も順次追加されます。過去のバージョンのドキュメントもダウンロードできます。
ROCK ON PROでは、Pro Tools HDXシステムをはじめとしたスタジオシステム設計を承っております。スタジオの新設や機器の更新をご検討の方は、ぜひ一度弊社へご相談ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-on-macos-sonoma/
NEWS
2024/03/08
Pro Tools 2024.3 リリース!Dolby AtmosやMIDI関連機能が強化
Pro Tools 2024.3がリリースされました。Pro ToolsとSibelius間のMIDIコピー&ペーストやMIDIプラグインなどの音楽制作に関連する機能の強化のほか、Dolby Atmosのリレンダリングにカスタム・リレンダリング・オプションが追加されるなど、作曲/ポストプロダクションの両面で作業効率を大幅に改善する充実したアップデートが図られています。
有効なサブスクリプション、または、年間サポートプランが有効なライセンスをお持ちのユーザー様は、すでにAvidアカウントからPro Tools 2024.3をダウンロードして使用することが可能です。
Pro Tools 2024.3新機能の詳細についてはこちら(Avidブログ日本語)>>
MacOS 14.3 SONOMA サポートと既知の不具合
Pro Tools 2024.3はmacOS 14.3に対応していますが、テスト中にいくつかの不具合が確認されています。macOS 14.3 SONOMAでPro Toolsを使用することを検討中の方は事前に必ず下記リンク先の内容をご確認ください。
Pro Tools の macOS 14.x Sonoma 対応状況 (既知の不具合) - Avid Knowledge Base
ビデオ・エンジン無効の維持
ビデオを含むセッションを開くときでもビデオ・エンジンを有効にする必要がなくなりました。作業時にビデオを表示する必要がない場合に、そのリソースを節約できます。
Dolby Atmos カスタム・ライブ・リレンダリング
Pro Tools 2023.12で実装されたPro Tools内部Dolby Atmos Rendererに「カスタム・ライブ・リレンダリング」機能が追加され、Pro Tools 2024.3では、バイノーラル、2.0、5.1、7.1、5.1.2、5.1.4、7.1.4 (Pro Tools StudioおよびUltimate)、9.1.6 (Ultimate) のカスタム・ライブ・リレンダリングが可能になりました。これにより、あらかじめ遅延補正がかかった状態、さまざまなプラグインを使用した状態でリレンダリングをおこなう際の柔軟性が大幅に向上しています。
その他、Dolby Atmos関連では以下の機能強化がおこなわれています。
カスタム・ベッド・サブパス:Dolby Atmosタブのベッドにカスタム・サブパスを追加できるようになり、Dolby Atmosを利用した以前のPro Toolsセッションとの柔軟性と互換性が向上
追加のADMメタデータ:WAV ADM BWF ファイルに関する追加情報を、セッションデータのインポート・ウィンドウで表示
ADMインポートの簡素化:WAV ADM BWFファイルをインポートする際に、互換性のあるパスを再利用するようになり、必要な I/O設定構成の量が減少
Dolby Atmos Rendererウィンドウのローカライズ
MIDIプラグイン
MIDIトラックにインサートすることで、アルペジエイターやピッチシフターをプラグインチェインと同じように扱うことが可能になりました。これまで、複数のMIDIトラックを使用して複雑なルーティングを組む必要があったMIDI関連のワークフローを一気に改善する画期的な機能と言えるでしょう。
MIDIプラグイン、MIDIチェインのコンセプトについては、こちらのAvidブログに詳細が記載されています。
Pro Tools - Sibelius間でのMIDIコピー&ペースト機能
こちらもワークフローを大幅に改善する機能追加!Pro ToolsとSibeliusの間でMIDIデータをコピー&ペーストできるようになりました。Pro Toolsで制作した楽曲からスコアやパート譜を作成したり、Sibeliusで書いたパッセージをPro Tools上で確認しながらブラッシュアップしていくような作業を効率的におこなうことができるようになりました。
この機能の詳細はこちらのAvidブログで確認できます。
Sketch関連アップデート
Pro Tools内部で、Sketchウィンドウと編集ウィンドウ間でのドロップ&ドロップ機能がより充実しました。Sketch iPadアプリではコンテンツの増加やカウントオフ機能の追加などがおこなわれています。
ARAタブ、クリップエフェクトタブの独立表示
Pro Toolsウィンドウ下部に表示される、MelodyneのARAタブ、および、クリップエフェクトタブを独立して表示できるようになりました。ウィンドウの大きさを調整することも可能です。
新機能が追加されても、それを実行するために手間がかかってしまっては本末転倒。今回のアップデートはワークフローを大幅にスピードアップできる充実したものと言えるのではないでしょうか。
Pro Toolsのアップデートに関するお問い合わせをはじめ、HDXシステム構築やスタジオ設計についてのご相談はROCK ON PROまでお気軽にご連絡ください!
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-expiration/
https://pro.miroc.co.jp/headline/mbox-studio-pro-tools-studio/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2023-12-support-resource/
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-perpetual-new-license-get-revival/
NEWS
2024/03/07
AMS NeveからDante-MADIコンバーターStarNet DM256が登場!
AMS Neveが最大256チャンネルのDanteと256チャンネルのMADIの双方向変換が可能なコンバーター「StarNet DM256」を発表しました!
今年のNAMMにて発表された本製品は、今やあらゆるシステムの要として機能しているDante、そしてMADIの変換を1Uで担うパワフルなコンバーター。FPGAのDanteモジュールであるDante IP CoreをNeve製品として初採用したDM256は、その名の通り256chのコンバートが4つのMADIポートより可能です。
柔軟かつ必要な機能を1Uに詰め込んだデザイン
MADIポートはデュプレックスSCのオプティカル接続とデュアルBNCのコアキシャル接続に対応。また、64chと56chの切り替え、1FS(44.1kHzまたは48kHz)にのみ対応のレガシーMADI機器もロックするレガシークロックオプションモードも搭載しているため、既設のMADIシステムにすぐにでも導入ができます。
冗長性に関する機能では、デュアルイーサネットポート接続によるDante接続のほか、新たに開発されたMCM(Maximum Channel mapping)により、サンプルレート切り替えによるMADIの各ポートにおけるチャンネル数の変化に影響しないDante-MADI間のI/Oマッピング設定を組むことが可能となっています。サンプルレートを頻繁に変える環境でお使いの方には安心の機能なのではないでしょうか。
Dante機器としてDante controllerでの設定はもちろん、フロントのOLEDパネルによりMADI各ポートの設定に素早くアクセス可能。
また、最新の低ドリフト水晶発振器クロッキング・システムとPLLを採用し、マスタークロックとしての使用も想定されています。
正式な発売時期、価格については続報をお待ちください!
AMS Neve国内代理店サイト:https://www.minet.jp/brand/ams-neve/top/
AMS Neve本国メーカーサイト:https://www.ams-neve.com/<
同時に発表されたDante対応16x16 AD/DAコンバーター「StarNet ADA16」と共に、DanteシステムにAWS Neveユニットを迎えてみてはいかがでしょうか?
Danteシステム構築のご相談はROCK ON PROまで!
Support
2024/03/04
Avid Media Composer ver.2024.2リリース情報
日本時間 2024年2月28日、Avid Media Composer バージョン2024.2がリリースされました。有効なサブスクリプション・ライセンスおよび年間プラン付永続ライセンス・ユーザーは、AvidLinkまたはMyAvidよりダウンロードして使用することが可能です。
今回は、Media Composer 2024.2では、macOS Catalina(バージョン 10.5) およびmacOS Big Sur (バージョン 11)はサポートされませんので、macをご使用の方はご注意ください。
このバージョンでサポートしているOSは次の通りです。
Windows 10 64ビット 22H2以降 (ProfessionalおよびEnterprise)
Windows 11 64ビット 22H2以降 (ProfessionalおよびEnterprise)
macOS 12.x~12.7.x、13.x~13.6.x、14.0~14.1
今回のバージョンアップは、ユーザーからのフィードバックを受けてのリリース内容になります。
Media Composer 2024.2 新機能
複数のプロジェクトで利用可能な文字起こしデータベース
PhraseFind AIとScriptSync AI の文字起こしデータベースの改善により、すでに文字起こしされたクリップの文字起こしを、複数のプロジェクトで使用できるようになります。メディアを複数の場所で再利用する場合には、一度だけ文字起こしをすることで、時間を節約できます。
シーケンスからの文字起こしのエクスポートとサブキャップのエクスポート
Media Composerでは、クリップからの文字起こしをエクスポートする機能に加えて、シーケンスから「文字起こしをエクスポート」と「SubCapをエクスポート」という2種類のエクスポートができるようになりました。
シーケンスを右クリックして「文字起こし>文字起こしをエクスポート」を選択すると、ミックスダウンするオーディオトラックの選択肢がユーザーに表示されます。これは、会話を分離し、文字起こしの結果をさらに良くするために使用されます。
さらに、シーケンスを右クリックして「文字起こし > SubCapのエクスポート」を選択すると、オーディオトラック選択用の同様のオプションが表示され、エフェクトエディター ウィンドウのSubCapエフェクトにインポートできる文字起こしファイルが出力され、その結果、シーケンス全体にわたる適切な時間で、キャプションが配置されます。
話し手(Speaker)にIDをつけて、文字起こしをエクスポート
Media Composer からエクスポートされた複数の話し手による文字起こしに、話し手それぞれに識別情報が含まれるようになりました。話し手が一人しか存在しない場合でも、個々の話し手は番号(Speaker1、Speaker2など)で示されます。
文字起こし設定の言語選択
Media ComposerのAiによる文字起こしはデフォルトで多言語対応ですが、ユーザーはクリップのインデックス作成時に使用する特定の言語を定義できます。これにより、文字起こしが開始される前にインデクサーに有用な情報が提供されます。これは、プロジェクトである特定の言語だけが使用されており、最初の結果が満足のいくものではなかった場合、より正確な結果が得られるかもしれない場合にのみ実行してください。
プロジェクト設定のTranscript設定で言語選択にアクセスします。起こされた文字はデータベースに保存され、複数のプロジェクト間で共有できます。ただし、言語選択は、プロジェクトごとに指定する必要があります。
PhraseFind AI、ScriptSync AI、およびその他の関連タスクで同じデータベースを共有するには、言語設定がプロジェクト間で一致している必要があります。
タイムラインにソーストラック名を表示
Media Composerは、プロダクションで使用されるカメラ、オーディオレコーダー、その他のデバイスからメタデータにアクセスし、それらの情報をタイムラインに直接追加できるようになりました。
特定のオーディオチャネルで使用されているマイクを示すメタデータは、参照したり、置き換えたりする必要がある場合に、特に役立ちます。このメタデータはMedia Composerに取り込まれると、ビンコラムに表示され、タイムラインの「クリップテキスト」、「ソーストラックの変更」、ソースサイドのパッチの「ソーストラック名の表示」をなどの表示で確認することができます。
ビンに表示された名前は、オンセットのサウンドミキサーによって入力されたメタデータをチャンネルごとに取り込むことができ、TRK1、TRK2、AudioTrack 1、2などの名前が付けられています。タイムラインのファストメニューを使用して、「クリップテキスト>ソーストラック名」を選択すると、対応するメタデータをクリップ名と一緒にクリップ上に直接表示します。
また、タイムライン内のクリップを選択して右クリックし、「ソーストラックの変更」を選択すると、マイクの配置を表すメタデータが表示され、タイムライン内のクリップのチャンネルを簡単に切り替えできます。
クリップがソースモニターにロードされた状態で、タイムラインのファーストメニューで「ソーストラック名の表示」をオンにすることで、ソース側パッチのマイク情報を表示することもできます。
さらに、これらのメタデータはユーザーが変更することができ、書き換えられたデータは表示に反映されるため、編集トラックのクリップの視認性が上がります。
OpenTimelineIO (OTIO) のパブリック プレビュー
OpenTimelineIOは、主にVFXとオンラインワークフローで使用されるビデオアプリケーション間の情報交換用に設計されたオープンソースの交換フォーマットです。この形式は、シーケンスやクリップに関する情報をわかりやすいテキストで表示され、AAF、XML、または EDLファイルなどの代替とみなされることがあります。.otioファイルを開くと、技術に詳しいユーザーが選択したテキストエディターで情報を解釈して変更することが容易になります。このようにして、Media Composerを開かずに、クリップの長さの変更、シーケンスへのクリップの追加や削除、単純なスクリプトの利点を活用できるその他の操作を、Media Composerを開かずに、比較的簡単に実行できます。
エンターテインメント業界全体での、OTIOサポートの拡大に対応して、AvidはMedia Composerの最新バージョン(Windows のみ)にOTIO出力のパブリックプレビューを搭載しました。
Media ComposerでOTIOを使用するには、シーケンスを右クリックし、「出力」>「送信先」>「OTIO」を選択し、.otioファイルを保存する場所を選択します。
Media Composerについてのお問い合わせ、ご相談はROCK ON PROまでご連絡ください。
Event
2024/02/08
UVERworld、”男祭り”ライブ映画がDolby Atmosで期間限定上映!
2023年7月30日に日産スタジアムにて開催された「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」。72000人の観客と共に作り上げたこのライブの映像作品が2024年2月9日(金)より期間限定にて全国劇場公開、3月6日(水)にBlu-ray & DVDにてリリースされる。
2011年に滋賀のライブハウスB-FLATでファンクラブの男性会員230人からスタートしたUVERworld名物の男性客限定ライブ“男祭り”。その後年々開催規模は拡大し、2019年に開催された東京ドーム公演「KING’S PARADE 男祭り FINAL at Tokyo Dome」では45000人を動員して一度は幕を閉じた企画であったが、コロナ禍を経て昨年7月に堂々の復活を遂げたのが本作に収録される公演だ。
その本作について、Dolby Atmos Mixのチェックもここで行われたというWOWOW 試写室での試写会にご招待いただき、音響制作陣にインタビューさせていただいた。詳しい内容は、次号Proceed Magazineでレポートする予定だ。
Dolby Atmosで表現する熱狂のライブ
📷左から、八反田 亮太氏(VICTOR STUDIO レコーディングエンジニア)、戸田 佳宏氏(WOWOW 技術センター 制作技術ユニット エンジニア)
UVERworldの“男祭り"がDolby Atmosでライブ映像化されるのは2019年の東京ドーム公演に引き続き2度目。前作に引き続いて今作でも音響制作をVictor Studio 八反田亮太氏、WOWOW 戸田佳宏氏が手がけられている。
前回の経験を活かし、また異なる表現に挑んだという本作。バンドとオーディエンスの圧倒的な熱量を再現するために、200ch近くに及ぶ収録や、このライブならではのオーディエンスが特徴的なミキシングについて伺うことができた。他のライブでは体感できない"男祭り"の空気が追体験できる作品となっている本作。是非劇場でご鑑賞いただいた上で、次号Proceed Magazineのレポートをお楽しみに。
現時点で発表されている情報では、本作をDolby Atmosで鑑賞できるのは今回の劇場公開時のみとなっている。見逃すことなく、全国のDolby Atmos対応シアターでこの熱狂をご体験いただきたい。
作品情報
「UVERworld KING’S PARADE 男祭り REBORN at Nissan Stadium」
2024年2月9日(金)より期間限定公開
※期間については各劇場にお問い合わせ下さい。
出演 :UVERworld
製作 :Sony Music Labels Inc.
配給 :WOWOW
特設サイト: https://uverworld-kingsparade2023-movie.com/
©Sony Music Labels Inc.
Support
2024/02/07
Pro Tools 2023.12.1 リリース(不具合修正バージョン)
Pro Tools 2023.12に含まれていた重大な課題が改修された、Pro Tools 2023.12.1がリリースされています。特に、Pro Tools 2023.12でDolby Atmosワークを実施されるユーザー様、および、HDXシステムを使用されているユーザー様は以下の情報をご一読の上、アップデート(無償)をご検討ください。
Pro Tools 2023.12.1は、以下の不具合修正のため2024年1月16日にリリースされました。
Dolby Atmos® ワークフロー
Pro Tools 2023.12.0 経由で、Dolby Atmos® WAV ADM BWFをバウンスしたりオフライン・リレンダーする際に問題が見つかりました。バウンスされたオーディオに警告なしに断続的なノイズが混入する可能性があります。ベッドやオブジェクトに直接アサインされたトラックに、Pro Limiterなど特定のプラグインがインサートされている場合に発生する事が多い様です。この問題はPro Tools 2023.12.1で修正されました(PT-317207)。
8,000サンプルを超える遅延のあるセッションにてWAV ADMをオンライン・バウンスした際にPro Toolsがフリーズする症状を修正(PT-316860)。
Pro Tools ハードウェア
Pro Tools 2023.12.0の起動時、Pro Tools | HDXまたはPro Tools | HD Nativeのファームウェア・アップデートがAAE -1164 エラーで失敗する問題を修正(PT-317106)。
注意: Pro Tools | HD Nativeはファームウェア・アップデート後に再起動する必要があります。
これに伴い、リリースノートの内容もアップデートされています(同一のページに追記の形)。
Pro Tools 2023.12 / 2023.12.1 リリース・ノート(Avidナレッジベース日本語版)
本件に関するご不明点、また、Pro Toolsシステム設計のご相談はROCK ON PROまでお気軽にお問い合わせください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/pro-tools-2023-12-support-resource/
NEWS
2024/02/05
WaveLab 12がリリース!ARA対応で他DAWでも使用が可能に!
Steinbergのマスタリング・ソフトウェア「WaveLab」の新バージョン「WaveLab 12」がリリースされました!
今回のバージョンではマスタリングやオーディオ編集を進化させる新しいワークフローや約80個におよぶ新機能が追加されています。マスタリングエンジニアはもちろんのこと、音楽や音に関わる多くの方々にとって役立つ要注目のアップデートです。
新機能〜ARAで他DAWでも利用可能〜
ARA2(Audio Random Access)に対応したことにより、Cubase、Nuendo、Reaper、Studio OneなどといったARA対応DAWでARAプラグインとして使用できるようになります。WaveLabの強力な機能をDAW上のオーディオファイルに直接使うことができるようになるのは、エンジニアにとって大きな選択肢となります。(Pro版)
オーディオエディターやモンタージュ上で、オーディオ波形を周波数帯域に応じた色分けで表示できます。歯擦音やローエンドといったポイントに任意の色を設定することで、素早いオーディオ処理が可能にな(Pro版、Elements版)
オーディオモンタージュのメタノーマライザーに3つの新機能が追加されました。ステムをあるレベルまでノーマライズする際、ステム間のバランスを維持しながら、すべてのクリップのラウドネスを調整することなどが可能になります。(Pro版)
そのほかにもオーディオの品質管理やトラブルシュートに役立つNull Test Trackや、6つの新プラグインなど新機能は盛りだくさんです。詳細は公式サイトをご覧ください。
STEINBERG / WaveLab Pro 12(DL版)
価格:¥69,850(本体価格:¥63,500)
Rock oN eStoreで購入!>>
STEINBERG / WaveLab Pro 12 アカデミック版 (DL版)
価格:¥34,870(本体価格:¥31,700)
Rock oN eStoreで購入!>>
前回のメジャーアップデートから2年半ぶりとなるWaveLab12。ARA対応により、多くの方のワークフローに組み込みやすくなりました!マスタリング環境のご相談はROCK ON PROまで!
Event
2024/01/24
N響「第9」演奏会の裏で行われていた次世代配信に向けた取り組み 〜同一内容を複数フォーマットで比較するとどうなる?〜
年末も迫る2023年12月26日に行われたNHKホールでのNHK交響楽団によるベートーヴェン交響曲第9番「合唱つき」のチャリティーコンサート。年末の風物詩とも言える第九のコンサートを素材に次世代のコンテンツ配信の技術的なテストケースが行われた。今回、この模様を取材させていただくことができたので、まずはどのような取り組みが行われたのかについて、その概要をお伝えしたい。なお、この取り組みの詳細については、次号のProceed Magazineで掲載を予定している。
3社共同で実施された次世代のイマーシブ配信実験
NHKホールでのフルオーケストラによる演奏会の模様を、次世代の配信をにらみ様々な方式でのイマーシブ配信をテスト、比較視聴するという大掛かりな取り組みが行われた。すべてが、NHKホールから一般のインターネット回線に配信が行われ、それを別の場所にあるNHKテクノロジーズ渋谷本社に設けられた試写室で視聴するというものだ。この試写室以外にも国内2か所(東京、広島)、国外1か所(ドイツ)にMPEG-H形式で同時配信されたほか、NeSTREAM LIVE、KORG Live Extremeを介してPCやスマートフォンなどのデバイスにも同時配信された。一般のインターネット回線を通じてのテストということで、圧縮によるクオリティーの違い、フォーマットによる違いなどの確認もできるということになる。
1つ目のテストケースが、次世代の放送規格としての8K MPEG-H(HEVC+22.2ch音響MPEG-H 3D Audio *BaselineProfile level4)の配信テスト。2つ目がNeSTREAM LIVEを使った、4K HDR(Dolby Vision)+ Dolby Atmos 5.1.4ch@48kHzの配信テスト。さらに3つ目がKORG Live Extremeを使った、4K + AURO-3D 5.1.4ch@96kHzの配信テストだ。これだけの次世代配信サービス、そしてそのテストケースが一堂に会するというだけでもすごいことである。それを同一のコンテンツの生配信で比較できるということもすごい取り組みである。
📷NHKテクノロジーズの試聴室
◎MPEG-Hを使用したスーパーハイビジョン(8K HEVC+22.2ch音響)
📷NeSTREAM LIVEの試聴室
◎4K Dolby Vision+Dolby Atmos@48khz、◎2K+Dolby Atmos@48kHz、◎2K+2chステレオ@48kHz
📷KORG Live Extremeの試聴室
◎4K+AURO-3D 5.1.4ch @96kHz/48kHz、◎HPL@48kHz
まず配信の肝であるコーデック(圧縮技術)について、22.2chは、次世代地上波での採用も決まったMPEG-H 3D Audioでの試験、NeSTREAM LIVEは、Dolby Digital Plusでの配信(これは、NetflixなどストリーミングサービスでのDolby Atmos配信と同一の技術だ)、KORG Live ExtremeはAURO-3Dの圧縮技術を使った配信となっている。圧縮率は、NeSTREAM LiveのDolby Digital Plusが一番高く640kbps、次にMPEG-Hの22.2chで1ch辺り80kbps(全体でおおよそ3Mbps程度)。Live Extremeは10Mbps程度となっている。
そもそものチャンネル数が違うということもあるが、臨場感については、やはり22.2chの高密度にスピーカーの配置されたものが優れていると感じた。やはりチャンネル数の違いは、空間の密度感に直結するものだと感じる。また音質については、ビットレートに比例するものだと改めて実感した。やはり圧縮率が低いほど音の純度は高いという、ある意味当たり前でもあることを再認識することができた。
ただし、リアルタイム配信ということを念頭に考えると、クオリティーと帯域幅のバランスを取るということが重要だ。いかに高品質であっても、しっかりと届けられないのであれば意味がない。その視点で考えるとやはりDolbyの技術をベースとしたNeSTREAM LIVEには、一日の長があると言えるのではないだろうか。Dolby Atmosという最新のフォーマットを、ストリーミングとして現実的な640kbpsで伝送できるというのは、現在のインフラなどにそのまま合致するものであり、サーバー負荷、多数へのダウンストリーム、ライブ配信等には付き物である様々な課題に対して答えを出しているように感じられる。デジタルで大きな課題となるクオリティーと利便性のバランス。これは今後もエンジニアにとって大きな課題となるテーマだろう。
また、NeSTREAM LIVEでは、Dolby Visionの配信も同時にテストされたということも大きなトピックだ。4K HDR映像のライブ配信となると、まだ世界的にもあまり前例のない取り組みである。Dolby Vison + Dolby Atmosということで、Dolby Cinemaの上映ステージでのライブ・ビューイングなどハイスペックなリアルタイム配信に期待が持てると感じる。配信されているDolby Visonの映像は、暗部がしっかりと粘り、流石はHDRといった画質だ。明暗差の大きなコンサートステージでは、そのダイナミックレンジが大いに生かされていた。
各社それぞれのシステムが持つ技術的工夫については、弊社刊行の次号Proceed Magazineにてより詳しく掘り下げて解説をおこう予定だ。
22.2chが持つ他のフォーマットへの応用性
MPEG-H 3D Audio 22.2ch音響のシステムの素晴らしさは、なんと言ってもそのチャンネル数の多さにある。これは、多チャンネルでの配信を行い、視聴環境に応じてチャンネル数を減らすこともできるということだ。「大は小を兼ねる」ということは、イマーシブにおいても言える。22.2chものチャンネル数があれば、そこから、Dolby Atmosや、AURO-3Dといった別のフォーマットへのダウンミックスを行うことが出来るということだ。22.2ch音響の視聴環境を一般家庭で揃えるということはなかなか難しいのが現実。しかし、高密度に配置されたそのフォーマットから、別のフォーマットを作り出すことは容易い。そういった観点での上位フォーマットとしてその存在価値は高いということを改めて認識した。
実際の配信用のマイクアレンジ、配信のためのミックス、全体のシステム構成などについても、次号Proceed Magazineで詳細をお伝えしようと思う。こちらもぜひお楽しみに。
<取材協力>
・株式会社NHKテクノロジーズ https://www.nhk-tech.co.jp/
・株式会社クープ NeSTREAM LIVE https://nestreamlive.radius.co.jp/
・株式会社コルグ Live Extreme https://www.live-extreme.net/
「立体音響でライブ配信をやってみたい」「イマーシブサラウンド対応のスタジオを作りたい」といったご相談は、導入実績豊富なROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりご送信ください。
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2023-2024/
https://pro.miroc.co.jp/headline/proceed-magazine-2023/
Review
2024/01/23
SoundTrip @London / 伝統と革新が交わる街に生まれた先鋭
IBC 2023の会期も終わり、1週間ほどヨーロッパに滞在して様々な都市の現場を見て回った。帰国前に最後の訪問先として選んだのがイギリスの首都、ロンドン。そのロンドンでも最新設備を誇るという「RavensBourne University」と、ハリウッド・ロンドン間をAvidのクラウドサービスで結び制作を進めるポスプロ「Fulwell'73」へ訪問した。最新のロンドン事情とともにその様子をお伝えしたい。
四半世紀ぶりのロンドン
ロンドンは音楽の発信地としていくつもの歴史を作ってきた。その一方で日本ではあまり知られていないかもしれないが、映画産業も大きな規模を誇り、ハリウッド作品の30%程度はここロンドン郊外のスタジオで作られている。飛行機嫌いのスタンリー・キューブリックは、ほとんどの作品をロンドンだけで制作したという話は有名ではないだろうか。007シリーズ、スター・ウォーズシリーズで有名なパインウッド・スタジオ、ハリー・ポッターシリーズのリーブスデン・スタジオなどがこのロンドン郊外にある。もちろん音楽スタジオはそれ以上に有名だろう。本誌読者であれば、知らないはずはないアビーロード・スタジオはロンドンの中心からすぐの場所にある。ブリティッシュ・ロック、レゲエ、パンクなどロンドンを発信地とした音楽は今でも息づいている。また、ニューヨークと並ぶミュージカルの中心都市でもある。さまざまなエンターテインメントの中心地となるロンドン。筆者個人としてはなんと学生時代以来の訪問。何年ぶりかはあえて明記しないが、四半世紀の年月は時代の変化を大きく感じた。
変化を感じたとはいえ、ここはヨーロッパ。町並みや地下鉄など昔のままの姿で懐かしさを感じるところもある。バスや、タクシーは新型になり、2階建てバスの後ろで出発のベルを鳴らしていた車掌さんを懐かしく思い出したりということも。少しの時間を見つけ、ロンドンの市街を散策することもできた。大英博物館から、コヴェント・ガーデン、トラファルガー広場、ウェストミンスターとロンドンの観光客にとっての中心を散策。昔ながらのロンドンの旧市街と、ここも昔から変わらないトラファルガー広場の観光客の群れ、そしてピカピカにリニューアルされたビッグベン。伝統と革新が交わる街、などとよく言われるが、その様子はこの一角からもよく感じ取れる。東京もそうだが、ロンドンでも世界中からの観光客が戻っている、コロナが終わり日常を取り戻しているのはこちらでも同じようだ。
コヴェントガーデンあたりが、ロンドンの伝統を体現する地域だとしたら、別の日に訪れたテムズ川からの風景はまさしく今のロンドンだった。ロンドンの中心を流れるテムズ川は、海からの荷物を直接ロンドンまで運ぶ重要な交通路であった。海運の港町として発展してきたロンドンではあったが、近代に入りその重要性は徐々に薄れ、街の中心から東に10km程度の場所に、テムズバリアと呼ばれる巨大な堤防が築かれることとなった。これは、北海の海水面上昇によるテムズからの逆流、ロンドンを洪水から守るためでもある。これにより外洋からの船はロンドンまで入ってくることはできなくなり、ロンドン郊外の造船所などはその役目を終えることとなる。一番河口側の巨大なドッグはロンドン・シティー空港となった。新都心が建設され、ロンドンの新しい中心地となっているカナリー・ワーフも元々はその名の通り港の後である。
これらの新しいロンドンを過ぎ、有名なタワーブリッジからがロンドンの旧市街である。まずは、金融の中心であるシティーの高層ビル群があり、その先には巨大な丸屋根が特徴的なセントポール大聖堂。その先にはビッグベンというように、河口側からテムズ川を遡ると、ロンドンの歴史を遡るかのような体験をすることができる。ちなみにこの船旅は観光船ではなく、ロンドン交通局の運営する市民の足であるフェリーを利用している。さすがに地下鉄よりは時間が掛かるが、外の見えない地下鉄と比べると別格の体験ができるおすすめの交通手段である。
最新設備のデジタルメディア大学
それでは、ロンドンで訪問したデジタルメディアとデザインの大学「RavensBourne University」とポストプロダクション「Fulwell'73」に話を移そう。
RavensBourne University、開校は1962年にまで遡るデジタルメディアとデザインの専門大学だ。ロンドンの中心街から東に10km程度、北海の海水面上昇によるテムズからの逆流、ロンドンを洪水から守るために作られたテムズバリアと呼ばれる巨大な堤防にほど近い、ノース・グリニッジという新開発エリアに新校舎を竣工、新しく作られた総合商業施設O2アリーナの目の前に立地している。この2011年に建てられた校舎はデザイン性の高い外観を持っており、その設備はロンドンでも最新の設備を誇る学校となっている。デジタルメディアコースとしては、3学年のコースとなり各学年に60名程度が在籍し、日本からの留学生もいるということだ。
生放送を学ぶための立派なスタジオ、調整室、そしてポストプロダクションの実習室を見せていただいた。スタジオと調整室はそのまま放送ができるのではないかという充実した設備。スタジオに関しては、ポストプロダクションの実習のための収録スタジオとしても機能も併せ持っているということだ。収録された素材はすべてサーバーに保存され、完全にファイルベースでのワークフローを学ぶことができるようになっている。ポストプロダクションの実習室は、数多くの端末がずらりと並び、NLEを1人1台使ったハンズオンでの授業がここで行われている。
📷生放送を実際に学ぶためのスタジオ、調整室は5.1chの構成でCALREC Brio 3bが導入されていた。
この実習室には2部屋のMA室、1部屋のカラーグレーディング室、そしてオーディオの録音スタジオが用意されている。MA室はAvid S6が導入され、最新の環境での作業が行えるようになっている。録音スタジオは広いブースで、バンドの収録なども行える規模の機材が導入されていた。訪問したタイミングが改修中であり、あまりじっくりと見ることはできなかったが、自分たちでできることは講師陣が自分たちで行い、その導入コストを減らして機材予算に回すという涙ぐましい苦労話のほうが記憶に残っている。そして、これらの端末はすべてAvid NEXISへ接続され、生徒それぞれに与えられた自身のストレージエリアで作業を行えるようになっているということだ。
📷実習室には個別のワークスペース。右に編集室やMA室などが並んでいる。
完全なファイルベースを学べる学校と紹介したが、この設備バックボーンを持つ教育機関は世界でも有数のものではないだろうか。学生にこのような最先端の機材を触れさせてトラブルは無いのか?と少し意地悪な質問をしてみたのだが、「私は学生を一切信用していないよ(笑)」だそうだ!このポリシーのもとPCの電源ボタンにすら学生はアクセスできないような仕組みで運用を行い、端末となるPCは定期的にバックアップイメージからリカバリーが行われ、デスクトップなどに置き去りにされたデータは容赦なく消しているということ。そのためのサーバーでの運用であり、まずはそこを理解して実習に臨んでもらっているということだ。
📷(左)Avid S6が導入されたMAルーム。(右)まさしく工事中だったレコーディングスタジオはAvid S3とSSL ASP 8024が備えられている。
ハリウッドとロンドンをAvidクラウドで連携するポスプロ
📷敷地内は撮影できず、残念!
そして、もう一つの訪問先であるFulwell'73は、映画を中心に制作を行うポストプロダクションで、ハリウッドとロンドンの2つの拠点でその活動を行っている。2つの拠点で共同作業を行うために、Avidのクラウドサービスを活用してシームレスな連携を実現し、その制作環境を構築している。Media Centralなどの活用により、スタッフは出社することなく作業をどこからでも行うことができるようになったのは、大きな進歩だという話を聞くことができた。しかしながら、クラウドの仕様コストは、現時点ではオンプレミスで制作環境を構築するコストと比較すると高価であるそうだ。Fulwll'73のようにハリウッドとロンドンという海を跨いだ遠隔地での共同作業をも実現する、クラウドはまさに夢のようなソリューションではあるが、それ相応のコストが発生しており、今後解決すべきクラウドの課題ではないかという。
もちろん、ITテクノロジーなので時間とともに最適なところに落ち着いてくるということが想像されるが、それはもう少し先の未来のようだ。基本はオンプレミスでのシステムで作業を行い、必要性がある部分だけクラウドにするといったハイブリッドな環境構築がポストプロダクションには今後求められていくことだろう。利便性の向上は間違いなくあり、どのレベルでのデータ共有を行うのか、編集の作業環境の共有は必要なのか?など様々な観点からの検証を行うことが重要となる。さらには、まだ見ぬ未来にクラウドのコストがどのように変化するのかの予測も必要となる。現場が必要としてきた様々なことが実現してきたことで、次のステップとも言える議論が、まさに始まっているということを実感できた。
RavensBourne Universityからの帰り道にテムズ川フェリーを利用したのだが、最新の設備から約1時間の船旅でウェストミンスターへと至るロンドンの歴史をさかのぼる旅は、非常に興味深いものであった。歴史と伝統、最新テクノロジーとリベラルな人々、それこそがロンドンの原動力であると実感できたロンドン訪問であった。
*ProceedMagazine2023-2024号より追記・転載
Event
2024/01/18
2/9(金) Avid Creative Summit 2024 開催情報&申込開始!
~未来をつなぐIP、イマーシブにより拡張される音で共感する~
世の中はいよいよアフターコロナの時代へと変遷し、エンターテインメント・ビジネスには新たな局面が訪れています。業界の基盤となるテクノロジーは着実に発展し、昨年までの「いま」から更に進化した制作環境が私たちを待ち受けています。
今年のAvid Creative Summitは、"未来をつなぐIP、イマーシブにより拡張される音で共感する"をテーマに、ACSU史上初の東京ー大阪の二拠点同時開催にて、音楽、映像、ゲームなど多岐分野にわたるサウンド制作の最新情報を提供します。特に次世代IPメディア伝送ワークフローの提案を通じて、制作の未来像を描きます。
バラエティに富んだ計7回のセッションでは、ついにDolby Atmos Rendererを内蔵したPro Toolsの最新情報をはじめ、イマーシブ制作の実例から学び、最先端のテクノロジーに触れ、今を知るための情報が一堂に集結します。最新の制作現場に欠かせないテクノロジーに焦点を当て、フィジカル開催ならではの対面コミュニケーションを活かした新たな学びや発見の場をご提供いたします。
未来を拓くための一歩として、今年はぜひお近くの会場に足を運び、新たな知識とネットワークを築く場としてご活用いただきたいと考えています。Avid Creative Summitならではの豊富な情報と刺激的な体験をご用意しています。多くの方々のご参加を心よりお待ちしています!
■Avid Creative Summit 2024
開催日時:2024年2月9日(金) 開場13:00 、セミナー13:30~18:35、懇親会19:00~20:30 終了予定
東京会場:渋谷LUSH HUB
大阪会場:梅田セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
参加費用:無料
定員:各会場50〜100名
※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
TOPタイム
テーブルセミナー紹介協賛各社様
展示コーナー募集要項アクセス
毎回大好評!東京・大阪での各セッション終了時にご来場者様向けプレゼント抽選会を開催します!さらに!最終セッション終了時には、協賛各メーカー様からのスペシャルグッズや、2024年の制作シーンを彩る注目の製品をプレゼントする大抽選会も開催!今年最初の幸運を引き当てるのはどなたになるのか!プレゼント賞品の全貌は当日イベント内にて発表です!最後のセッションまで見逃せないAvid Creative Summit 2024 ご期待ください!
◎イベント開催方式のご案内
今回はAvid Creative Summit史上初の東京ー大阪の二拠点同時開催の試みとなります。セミナーは東京4セッション、大阪3セッションの計7セッション実施予定です。東京→大阪→東京…と交互にタイムスケジュールを組んでおりますので、一方の会場でセッションが行われているとき、もう一方の会場からは同時中継でご聴講いただけます。
※各会場とも座席数には限りがございます。原則、当日先着順でのご案内とさせていただきます。誠に恐れ入りますが座席の確保はできませんのであらかじめご了承ください。
◎タイムスケジュールのご案内
PDF:Avid Creative Summit 2024_Time Table
◎セミナーのご案内
◎Session1(東京)「What's New Avid Product 2024
〜Pro Tools 最新情報のすべて〜 」
2月9日(金) 13:30〜14:00
Pro Tools 2023.12で実装されたDolby Atmos Renderer。アップグレードしたユーザー全てに無償で提供されるDolby Atmos制作環境は、まさに、イマーシブ制作をすべてのユーザーに提供し、新時代の訪れを告げるもの。音楽配信でもDolby Atmosがスタートし、今後、その制作が当たり前のものとなっていくことが予想されます。実際にどのように使うのか、具体的なハンズオンを含めてご紹介いたします。もう一つの音楽制作者に向けたAvid Sketchは、iPadで音楽の、まさにスケッチするような感覚で作曲が出来るツールです。もちろん、iPad上で作った楽曲は、そのままPro Toolsのセッションデータとしてインポート可能です。制作から仕上げまで、Pro Toolsが全方位に進化しているその全貌をご紹介いたします。
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology
APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
◎Session2(大阪)「Flux:: Spat Revolution
〜注目の最新情報&Dolby Atmosミックスでの活用例〜 」
2月9日(金) 14:10〜14:50
様々なイマーシブ・フォーマットに対応し、編集の圧倒的な自由度と表現力を誇るSpat Revolutionは、スタジオでの制作のみならず、ライブサウンド/設備音響のリアルタイム・イマーシブ・ミキシングとしても利用されています。このSpat RevolutionをDolby Atmosミックスで活用する方法、そのメリットを開発元Flux::のビジネス開発担当シニア・マネージャーHugo Latin氏が徹底解説します。
講師:Hugo Larin氏
Snr Manager - Business Development, FLUX::, a proud member of the HARMAN Professional Solutions Group
FLUX:: https://www.flux.audio/
FLUX: SPAT Revolutionプロジェクトの主要な協力者であり、オーディオ・ミキシング、システム設計、オペレーション、ネットワーク制御、データ配信の分野で深いルーツを持つ。FLUX::イマーシブ・コンサルティング・グループを率い、FLUX::のビジネス開発を担当している。
最近のプロジェクトでは、オブジェクトベースの空間オーディオミキシング・ワークフロー、互換機器との相互接続と実装、最適化などを実現している。
プロダクション機器のレンタルとスタジオ・レコーディングでキャリアをスタートさせ、テクノロジーとエンターテインメント制作環境に対する情熱が、彼をライブ・プロダクション領域へと急速に駆り立てた。この分野での彼の活動には、様々な有名プロダクションやイベントでのミキシング、オペレーション、テクニカル・ディレクターの役割が含まれる。
Avid VENUE S6Lプラットフォームのユーザー、プロフェッショナル・オペレーター(VE110 & 210 S6L)であり、Avidのサポート代理人における認定インストラクター(ACI)でもある。
◎Session3(東京)「生徒のクリエイティビティを最大限に引き出す
〜Avid Learning Partner プログラム〜」
2月9日(金) 15:00〜15:15
現在、多くの大学、専門学校等で授業に取り入れられているAvid Pro Tools。その支援を行うためのプログラムがこのAvid Learning Partner(ALP)プログラムです。ユーザーの裾野を広げ、現場で有用な人材を育てるためには、基礎教育が重要となります。この新しく始まるALPとは一体どのようなプラグラムなのかについてご紹介いたします。
講師: Alex Brooke氏
Avid Technology
Avid Learning Partner,Program Lead Coordinator
Avid Technology:https://www.avid.com/ja/
イギリス出身。10代の頃から日本で過ごし作曲と演奏を学ぶ。
現在、Avidラーニング・パートナープログラムを含む、アジアでのAvidトレーニング・プログラムのコーディネーターとして活躍。
音楽教育を通じて次世代の音楽プロフェッショナルを支援し、育てることに情熱を傾けている。
◎Session4(大阪)「GRANBLUE FANTASY: Relinkにおけるイマーシブサウンド制作 〜素材収録からミキシング、技術進化に伴うイマーシブ制作の変革〜」
2月9日(金) 15:25〜16:05
Cygamesの新作「GRANBLUE FANTASY: Relink」を題材に、ゲームにおけるイマーシブ制作の実際、そして、それを支えるバックボーンとなる技術、ゲームの世界観やキャラクターを引き立てる為に盛り込まれた、様々なサウンドデザイン、それらの素材収録からミックスまで最新のゲームオーディオの実情、制作に触れていただける内容をお届けします。
大規模タイトルとして長期に渡る開発の中、技術の進化・進歩をどの様に取り入れていったのかなど、興味深いストーリーもお話いただける予定です。ゲームオーディオに興味のある方はもちろん、最新技術の粋を集めた最新ゲームタイトルの制作を知ることの出来る貴重な機会です。
講師:城後 真貴 氏
株式会社Cygames
サウンド本部/サウンドデザインチーム
アクションゲームのサウンド制作に携わり、2019年より株式会社Cygamesに合流。
『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、インゲームミックスや、演出やイベントシーンのサウンドディレクションを担当。
講師:妹尾 拓磨 氏
株式会社Cygames
サウンド本部/サウンドデザインチーム
スポーツゲームやアクションゲームにおける、サウンド制作に従事。2019年より株式会社Cygamesに合流。 『GRANBLUE FANTASY: Relink』では、バトルパートやキャラクターのサウンドデザイン、サウンドディレクションを担当。
株式会社Cygames:https://www.cygames.co.jp/
◎Session5(東京)「AoIP/VoIPはもう未来の規格じゃない 最新ケーススタディ
〜NDI/SRT/ST2110/DanteAV〜 」
2月9日(金) 16:15〜16:55
今年のACSUは東京、大阪の同時開催。そのシステムのバックボーンをご紹介します。NDI Bridgeを使い、どの様に安定したインターネット経由での伝送を実現しているのか?その将来的な可能性、ZoomやTeamsではく、NDIを使うことのメリットとは?最新のVoIP事情とともに、実際に使われている技術の詳細をご紹介いいたします。身近なIP伝送技術がインターネット越しに拡張されていくことは、近い将来当たり前になることでしょう。そんな未来を実感いただけるセッションです。
講師:前田 洋介
株式会社メディア・インテグレーション
ROCK ON PRO 事業部
Product Specialist
レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。
◎Session6(大阪)「360 Reality Audio 高田 英男氏による楽曲解説
〜空間の響きを活かすREC&MIX〜」
2月9日(金) 17:05〜17:45
昨年公開され、第29回日本プロ音楽録音賞Immersive部門(アコースティック・サウンド)最優秀賞作品を受賞した、tea 「Beautiful Dreamer」。この受賞作品を題材に、ミキシングを手がけられたエンジニアの高田英男氏がどのようなアプローチで3D音響の収録に臨んだのか、どのようなコンセプトでミキシングを行ったのかについてご解説いただきます。トップエンジニアの考える立体音響とは?360 Reality Audioの制作はもちろん、イマーシブオーディオのミキシングに興味のある方、全員に役立つトピックが満載。必聴のセミナーです!
講師:高田 英男 氏
MIXER’S LAB Sound Producer/Engineer
日本音楽スタジオ協会 会長
MIXER’S LAB:https://www.mixerslab.com/
一般社団法人日本音楽スタジオ協会:https://www.japrs.or.jp/
1951年、福島県生まれ。1969年、日本ビクター入社(ビクタースタジオ配属)。録音エンジニア業務に従事。2001年、ビクタースタジオ長。2012年、サウンドプロデューサーに就任。2016年ミキサーズラボ顧問。
◎Session7(東京)「Netflixの音への取り組み
〜世界中のメンバーが楽しめる音作りには何が必要?〜」
2月9日(金) 17:55〜18:35
このセミナーでは、Netflixが去年プレミアム会員向けにサポートし始めた空間オーディオについての解説、Netflixの作品が5.1チャンネルやドルビーアトモスなど、高品位なサウンドフォーマットで配信されている理由、そしてイマーシブ・オーディオ制作の際に気をつけるべきポイントやノウハウについて共有します。
講師:嵩原シンディ氏
Netflix
Sound Technologist
Netflix:https://about.netflix.com/ja
サバンナ芸術工学大学、サウンドデザイン科修士課程修了。
レコーディング、音響エンジニア、現場録音、MAなど幅広い経験と技術を習得。
ロサンゼルスを拠点にフリーランスのサウンドデザイナーとして活躍した中、手がけた作品はカンヌ、サンダンス、トライベッカ映画祭などで披露される。
また、映画「Fire in Paradise」はニュース&ドキュメンタリー・エミー賞、最優秀音響賞を獲得。2020年よりNetflix入社、技術支援部(アジア太平洋地域)の音響技術を担当。
※※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
協賛各社様による出展のご案内
当日は展示協賛各社様による最新プロダクトの展示も行われます。また、東京会場にはGenelec Oneシリーズによる7.1.4ch、大阪各会場にはFocalスピーカーでの13.0chイマーシブ展示も登場します。お楽しみに!
※展示内容は予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。
出展ご協力社様(敬称略、順不同):
・アビッドテクノロジー株式会社 https://www.avid.com/ja/
・オタリテック株式会社 https://otaritec.co.jp/
・株式会社ジェネレックジャパン https://www.genelec.jp/
・ソリッドステートロジックジャパン株式会社 https://www.solid-state-logic.co.jp/
・TOA株式会社 https://www.toa-global.com/ja
・株式会社フォーミュラ・オーディオ https://formula-audio.co.jp/index.html
・株式会社メディア・インテグレーション 輸入事業部 https://www.minet.jp/
アビッドテクノロジー株式会社(東京・大阪会場)
統合レンダラー登場でイマーシブ制作は次のステップへ
AVIDが提案する新時代のワークフロー
昨年登場したPro Tools | MTRX Ⅱをはじめ、最新版Pro Toolsでの統合レンダラーワークフロー、Pro Tools Sketchの活用方法など、Avid製品を各種展示予定です。また、東京会場Rock oN Company 店頭リファレンススタジオでは常設のAvid S4ミキシング・コンソールをご見学いただけるほか、Pro Tools | MTRX + Pro Tools | HDXシステムを想定した環境から、Avid S1やAvid Dock、Pro Tools | Carbon、MBOX Studio等によるクリエイター向けのワークフローまで、Avidが提案するソリューションを隅々までご体験いただけます。是非、各ブースで製品をご覧いただき、Avidソリューションによって実現される、制作プロセスの将来像をじっくりとご体感ください!
<展示予定製品>
・Avid S4
・Avid S1
・Avid Dock
・Pro Tools | MTRX II
・Pro Tools | MTRX Studio
・Pro Tools | Carbon
・Pro Tools | Carbon Pre
・Pro Tools | Sync X
・Pro Tools | HDX Thunderbolt 3 Chassis
・MBOX Studio
・Pro Tools
・Pro Tools Sketch
※東京・大阪各会場の詳細展示内容は後日掲載いたします。
アビッドテクノロジー株式会社:https://www.avid.com/ja/
株式会社ジェネレックジャパン(東京会場)
唯一無二の革新的メイン・モニター「8381A」& 3ウェイ
同軸モニター The Onesシリーズによるイマーシブ環境を体感!
昨年発表された革新的メイン・モニター「8381A」が、AVID Creative Summitに登場!フリースタンディング型による自由な設置、設置環境に適応するアダプティブ・ウーファーを搭載した5ウェイ構造、そしてポイント・ソース理論による自在な距離を実現したそのサウンドをご体感ください(渋谷店リファレンスルームに設置)。また、会場内のBlueRoomでは、3ウェイ同軸モニターのThe Onesシリーズによるイマーシブ環境をご用意。ステレオからイマーシブまで、最新且つ最高の試聴体験を皆様へお届けします。
<展示予定製品>
・8381A
・The Onesシリーズ
株式会社ジェネレック・ジャパン:https://www.genelec.jp/
株式会社フォーミュラ・オーディオ(東京会場)
エフェクトも音源も、プラグインはイマーシブに。
今や業界標準とも言える「ザ・コンボリューション・リバーブ」Altiverbが、12年ぶりのアップグレードで最大9.1.6ch出力を実現。
鍵盤1つ押さえるだけでも即座に3Dサウンドを生成するSkyDust 3D。出力がDolby Atmos®互換やambisonicsにも対応の空間オーディオ・シンセサイザーです。
<展示予定製品>
・AUDIO EASE Altiverb 8
・SOUND PARTICLES SkyDust 3D
株式会社フォーミュラ・オーディオ:https://formula-audio.co.jp/index.html
ソリッドステートロジックジャパン株式会社(東京会場)
Pro Tools DAWシステムにシームレスに統合するSSLプロダクトが集結!
USBインターフェイス出力機能を搭載した4chマイクプリ PURE DRIVE QUAD とハイエンドなモニタリング回路を搭載したUSBオーディオインターフェース SSL12、SSLメータープラグインを表示できる高解像度ディスプレイを搭載した1フェーダー DAWコントローラー UF1が登場予定です。Pro Tools DAWシステムにシームレスに統合するSSLプロダクトをご紹介します。
<展示予定製品>
・PURE DRIVE QUAD
・SSL12
・UF1
ソリッドステートロジックジャパン株式会社:https://www.solid-state-logic.co.jp/
オタリテック株式会社(東京・大阪会場)
革新的なテクノロジーと共に進化し続ける伝統的なサウンド。
PMCスピーカーからは、ステレオから大規模Atmosシステム用途まで幅広く使用可能な"PMC6"をステレオでご試聴いただけます。
マイク製品ではEhrlund Microphoneの"EHR-M"と、より小型化してホームレコーディングユースにも対応した新製品"NANO"を比較展示します。
またRoswell Pro Audioからは、同社の”Miniシリーズ”で初のトランス搭載機種である、"Mini K47x"、"Mini K67x"を展示します。
<展示予定製品>
・PMC アクティブスピーカー PMC6
・Roswell Pro Audio Mini K67x
・Roswell Pro Audio Mini K47x
・Ehrlund Microphone EHR-M
・Ehrlund Microphone NANO
オタリテック株式会社:https://otaritec.co.jp/
TOA株式会社(大阪会場)
妥協なきこだわりが実現する驚異の原音忠実サウンド!
ME-50FSは “再生音の原器”を目指して、商品ではなく社内評価と教育を目的として開発されました。音を正確に再生することにこだわり続けた結果、従来にはない正確な再生音と高い解像度、サイズからは想像できない低域再生能力を実現。音のプロの方々にも高く評価いただき、待望の商品化に至りました。良い音を追求する全ての方々、その中でも特に、高い再生能力が求められる放送局やマスターリングスタジオ向けの完全受注生産モデルです。
<展示予定製品>
・TOA ME-50FS
TOA株式会社:https://www.toa-global.com/ja
株式会社メディア・インテグレーション(東京・大阪会場)
イマーシブ環境やユーティリティツール、GAME制作ワークフローを加速する最新機材、さらに音楽/ポストなどカテゴリ別で、未来を担う教育機関様向けのご提案を用意しました。
◎TOKYO
次世代ライヴコンソールWaves Cloud MXによってコントロールされる会場セミナーイベントに加え、関連のユーティリティツールやFocal最新STシリーズの試聴コーナーを完備。さらにミュージック/ポストのカテゴリに特化した教育機関様向けのソリューションをコーナーにてご提案させていただきます。
<東京展示予定ブランド>
・Audiomovers
・Focal Professional
・iZotope
・KROTOS
・McDSP
・Nugen Audio
・Sonarworks
・Sonnox
・Waves
◎OSAKA
OSAKA会場セミナーと連携したGAME音楽制作のためのソリューションを展開します。Native InstrumentsやiZotopeが提唱する最新の音楽制作環境に加え、AudiomoversやFlux、Nugen Audioなどイマーシブ関連プロダクトを網羅。13.0chの試聴コーナーでは360 Reality Audioの体験も可能です。
<大阪展示予定ブランド>
・Audiomovers
・Flux:: SPAT Revolution
・iZotope
・KROTOS
・MNTRA
・Native Instruments
・Audio Futures 360 WalkMix Creator (360 Reality Audio 13.0ch 試聴コーナーあり)
株式会社メディア・インテグレーション:https://www.minet.jp/
募集要項
■Avid Creative Summit 2024
開催日時:2024年2月9日(金)
・開場 13:00
・セミナー(計7セッション) 13:30 〜 18:35
・懇親会 18:35 〜 20:30
・閉場 21:00
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
大阪会場:大阪府大阪市北区神山町1-12 セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
参加費用:無料
定員:各会場50〜100名
※本イベントは終了しました。多数のご参加誠にありがとうございました。
【ご注意事項】
※座席のご用意は各会場30席程度となります。それ以外の方は立ち見でのご視聴となりますこと、あらかじめご了承ください。(休憩用のスペースもご用意しております。)
※セミナーの内容は予告なく変更となる場合がございます。
※著作権保護の為、写真撮影および録音は差し控えていただきますようお願いいたします。
※各セミナーのアーカイブ公開の有無につきましては、後日、当WEBサイトにてご案内いたします。
※当日は、ご来場者様向けの駐車場の用意はございません。公共交通機関でのご来場、もしくは周辺のコインパーキングをご利用下さい。
アクセス
東京会場:東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F LUSH HUB
大阪会場:大阪府大阪市北区神山町1-12 セミナーハウス クロス・ウェーブ梅田
Music
2024/01/18
DDM + AWS + WAVES クラウドミキシング / Dante Domain Managerでインターネットを越えるIP伝送
Ethernetを活用したAudio over IP(AoIP)伝送の規格、Dante。すでに設備やPAなど様々な分野でその活用が進んでいるこのDanteは、ローカルネットワーク上での規格となるため遠隔地同士の接続には向いていなかった。遠隔地への接続は低レイテンシーでの伝送が必要不可欠、そのためネットワーク・レイテンシーに対する要求はシビアなものとなる。これを解決するために、Danteの開発元であるAudinateが「インターネットを越えるDante」という、新しい一歩のためにDDM=Dante Domain Managerを利用する仕組みを完成させている。
DDM=Dante Domain Manager
ご存知の通り、Danteはローカルネットワーク上で低遅延のAoIPを実現するソリューションである。ローカルでの運用を前提としたDanteをInternetに出そうとすると、ネットワーク・レイテンシーが問題となり上手くいかない。それもそのはず、ローカルでの運用を前提としているため、最長でも5msまでのレイテンシーしか設定できないからである。このレイテンシーの壁を取り払うために最近活用が始まったのが、DDM=Dante Domain Managerである。
このソリューションは、単一IPセグメントの中での運用に限定されているDanteを、さらに大規模なシステムで運用するために作られたもの。ドメインを複数作成することでそれぞれのドメイン内でそれぞれがローカル接続されているかのような挙動をするものとしてリリースされた。例えば、2つのホールを持つ施設で、すべてのDante回線を同一のネットワークとすれば、それぞれの場所も問わず任意のDante機器にアクセスできる、という柔軟性を手に入れることができる。しかし、それぞれのホールにあるすべてのDante機器が見えてしまうと煩雑になってしまう。それを解決するためにDDMを導入してそれぞれのホールを別々のドメインとし、相互に見えてほしいものだけを見えるようにする。このような仕組みがDDMの基本機能である。
AWS上でDDMを動作しレイテンシー回避
このようなDDMの機能を拡張し、インターネットを越えた全く別のドメイン同士を接続するという仕組みが登場している。DDM上でのレイテンシーは40msまで許容され、遠隔地同士だとしても国内程度の距離であれば問題なく接続することが可能となっている。この場合には、送り手、受け手どちらかの拠点にDDMのアプリケーションが動作しているPCを設置して、そこを中継点として伝送を実現するというイメージである。ただし、世界中どこからでも、というわけにはいかない。なぜなら40msというネットワークレイテンシはそれなりに大きな数字ではあるが、回線のコンディション次第ではこの数字を超えるレイテンシーが発生する可能性があるからだ。
この40msを超えるネットワークレイテンシーの改善のためにクラウドサービスを活用するという仕組みも登場している。これはAWS上でDDMを動作させることで、CDNのように分散ネットワーク処理をさせてしまおうという発想だ。ローカルのDante機器は同一国内、もしくは近距離でレイテンシーについて問題がないAWSサーバーで動作するDDMへと接続される。AWS上では世界各地のAWSサーバー同士が同期されているため、その同期されたデータと受け取り先のローカルが、許容レイテンシー内のAWSサーバー上のDDMと接続することでその遅延を回避するという仕組みだ。この仕組みにより、世界中どこからでもDanteを使ったオーディオ伝送が実現されるというわけだ。
📷IBC2023 Audinateブースでの展示は、ロンドンのAWS上で動作するWAVES Cloud MXが動作していた。右の画面にあるようにAudinateでは世界中のAWSを接続しての実証実験を行っている。
WAVES Cloud MXでクラウドミキシング
2023年に入ってからは、このAWS上でDDMが動作するということで、WAVES Cloud MXと連携しての展示がNAB / IBC等の展示会で積極的に行われている。ローカルのDanteデバイスの信号をAWS上のDDMで受け取り、その信号を同一AWS上のWAVES Cloud MXが処理を行うというものだ。ただし、オーディオのクラウドミキサーはまさに始まったばかりの分野。クラウド上にオーディオエンジンがあるということで、どのようにしてそこまでオーディオシグナルを届けるのか?ということが問題となる。DDMはその問題を解決しひとつの答えを導いている。
📷画面を見るだけではクラウドかどうかの判断は難しい。しかしよく見るとeMotion LV1がブラウザの内部で動作していることがわかる。オーディオ・インターフェースはDante Virtual Soundcard、同一AWS内での接続となるのでレイテンシーの問題は無い。
ここで、WAVES Cloud MXについて少しご紹介しておこう。WAVES Cloud MXはプラグインメーカーとして知られるWAVES社がリリースするソフトウェアミキサーのソリューションである。WAVESはeMotion LV1というソフトウェアミキサーをリリースしている。WAVESのプラグインが動作するオーディオミキサーとして、中小規模の現場ですでに活用されているPAミキサーのシステムだ。このソフトウェアをAWS上で動作するようにしたものが、WAVES Clod MXである。ソフトウェアとしてはフル機能であり、全く同一のインターフェースを持つ製品となる。プラグインが動作するのはもちろん、ネットワークMIDIを活用しローカルのフィジカルフェーダーからの操作も実現している。どこにエンジンがあるかを意識させないレイテンシーの低い動作は、クラウド上でのビデオ・スイッチャーを手掛ける各メーカーから注目を集め、NABではSONY、GrassValleyといったメーカーブースでの展示が行われていた。Audioの入出力に関しては、NDI、Danteでの入出力に対応しているのがローカルでのeMotion LV1システムとの一番の違い。ローカルのeMotion LV1では、同社の作った規格であるSoundGridでしかシグナルの入出力は行えない。
WAVESの多彩なプラグインを活用できるため、例えばDanDuganのAutomatic Mixerを組み込んだり、トータルリミッターとしてL3を使ったりと、様々な高度なオーディオ・プロセッシングを実現できている。これは、クラウド上でのビデオ・スイッチャーが持つオーディオ・ミキサーとは別格となるため、その機能を求めてメーカー各社が興味を持つということに繋がっている。Clarity Vxのようなノイズ除去や、Renaissanceシリーズに代表される高品位なEQ、Compの利用を低レイテンシーで行うことができるこのソリューションは魅力的である。その登場当時はなぜクラウドでオーディオミキサーを?という疑問の声も聞かれたが、ここはひとつ先見の明があったということだろう。
世界中どこからの回線でもミックスする
クラウド上でのビデオ・スイッチャー、クラウドミキサーのソリューションは、そのままクラウド上で配信サービスへ接続されることを前提としてスタートしている。ローカルの回線をクラウド上で集約、選択して、そのまま配信の本線へと流す。非常にわかりやすいソリューションである。その次のステップとして考えられているのが、遠隔地同士の接続時に、回線をステム化して送るというソリューション。送信先の機材量を減らすという観点から考えれば、これもひとつの回答となるのではないだろうか。ローカルからは、完全にマルチの状態でクラウドへ信号がアップされ、クラウド上でステムミックスを作り、放送拠点へとダウンストリームされる。クラウド上で前回線のバックアップレコーディングを行うといったことも可能だ。インターネット回線の速度、安定性という不確定要素は常に付きまとうが、現場へ機材を持ち込むにあたっての省力化が行えることは間違いないだろう。
前述の通り、DDMを活用したこのシステムであれば、世界中どこからの回線でもミックスすることが可能である。さらに世界中どこからでもダウンストリームすることができる。国際中継回線など、世界中に同一の信号を配るという部分でも活用が可能なのではないだろうか?オリンピック、ワールドカップなどの大規模なイベントで、世界中の放送局へ信号配信する際にも活用が可能なのではないか、と想像してしまう。IPの優位点である回線の分配というメリットを享受できる一例ではないだろうか。
📷IBC2023 SONYブースにもWAVES Cloud MXが展示されていた。SONYのクラウド・ビデオ・スイッチャーのオーディオエンジンとしての提案である。こちらではDDMではなくNDIを使ってのオーディオのやり取りがスイッチャーと行われていた。手元に置かれたWAVESのフィジカルコントローラー「FIT Controller」はクラウド上のミキシングエンジンを操作している。
まだ、サービスとしてはスタートしたばかりのDDMとAWSを活用した遠隔地の接続。その仕組みにはDante Gatewayなどが盛り込まれ、同期に関してもフォローされたソリューションができあがっている。これらのクラウドを活用したテクノロジーは加速度的に実用化が進みそうである。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Review
2024/01/16
RIEDEL Communications @Wuppertal / 世界規模のイベントを支える一大拠点
放送局のインカム、コミュニケーションのシステムとして多くの導入が見られるRIEDEL。以前のProceed MagazineでもF1 鈴鹿グランプリでのRIEDEL社のソリューションの事例をご紹介したが、今回はドイツ、ヴッパータールにあるその本社にお伺いをする機会を得た。インカムの世界的なトップメーカーであるRIEDELの本拠地でシビアな現場の信頼を勝ち得てきた製品はどのように生まれているのだろうか。
世界規模イベントのバックボーンに
RIEDEL本社のあるヴッパータール(Wuppertal)は、ドイツ第4の都市ケルンの北50km,デュッセルドルフの東30km、ドルトムントの南30kmと、大都市に囲まれライン=ルール大都市圏の一部となっている。ドイツの産業革命の中心地の一つとして早くから工業の発達した都市である。この街には、世界最古のモノレールが存在している。100年以上の歴史を持つこのモノレール、残念ながら乗車する機会には恵まれなかったが今でも市民の交通手段として活躍している。
この工業都市であるヴッパータールでRIEDELは1987年に創業。その当初からインターカム、無線トランシーバーを中心に販売を行っていた。現在でも続くモトローラ社との関係は、同社の無線通信機器との関係が深い。同社の一番最初の製品は、この無線トランシーバーとインカムとの接続を実現するインターフェースであった。製品の販売とともに、レンタル事業が同社の中核となり、大規模なイベントなどにチームを派遣してスタッフ間のコミュニケーションなどのバックボーンを支える事業を大規模に展開している。レンタル事業の成長は著しく、1993年にはF1、1994年にはオリンピック、1998年からはFIFAワールドカップ、と世界規模のイベントへの進出を果たしている。これは今日まで続いており前述のF1ではRIEDELなしではその運営が成り立たないというレベルにまで達しているほどだ。
巨大倉庫を経て届くフィードバック
このレンタル事業の現場として、まず見せていたくことができたのが巨大な倉庫!これまでに製造したRIEDEL製品はもちろん、これからレンタルするシステムのキッティング、事前のテスト、必要であればカスタマイズなども行っているということだ。レンタルのカスタマイズとは?という部分だが、例えばヨットレースの世界大会であるアメリカズカップ向けのものであれば、耐海水の対策をすべての製品に対して行うなど、そのクライアントのニーズに応じて対応しており、自社にない製品で簡単なものであれば作ってしまうことまであるそうだ。
レンタルというと、単純に製品を貸し出して返却を受けるというというイメージかも知れないが、RIEDELの行っているレンタル事業は、機材の貸出だけではなくそのオペレート、システムの構築といったところにまでおよぶ。一例としてF1であれば、インカムに加えて国際中継用の動画、音声、走行する車両から送られてくるさまざまなデータ類、ありとあらゆる会場で流れるデータを一元管理している。現場でのデータバックアップはもちろん、世界各地から国際中継のハブとなっているドイツの放送局までの回線もRIEDELの回線だ。ほかにもブンデスリーガ(ドイツのサッカー1部リーグ)の放送用回線も一手に担っている。もはや、レンタルという言葉よりも運営事業という言葉のほうが相応しいレベルである。
このような大規模、小規模問わず世界規模のイベントのバックボーンを支えるためには、相応な規模の倉庫とキッティングスペース、返却された機器のメンテナンススペースも必要となる。レンタル出荷のスペースもこの規模となればもはや物流拠点と呼んでもいいほど。このレンタル事業の現場からのフィードバックはRIEDELの製品開発の強さの秘密でもある。メーカーとユーザーという立場ではなく同じ会社の別部署同士として、リアルなフィードバック、ニーズが世界各地の現場から送られてくる。それを受けて開発された製品は、すなわちユーザーのニーズに即応した魅力的な製品になっているということは容易に想像がつくであろう。
実際に、社内で製品開発、システム開発の部署、レンタル部署は熱い議論を繰り返すことが多いということだ。「こんなことはできないのか?」「こう使ったらどうだ?」「それよりこちらの方がいいぞ!」と密接なコミニュケーションの中からさまざまな製品がまさに「現場の」ために生み出されている。
ブンデスリーガ中継のキーを担う
📷モニタールームはブンデスリーガのモニターを行うセッティングになっていた、ドイツ国内各地20ヶ所ものスタジアムからの回線を一手に担う。
レンタル事業のスペースの一番奥にはモニタールームがある。ちょっとした放送局の副調整室のようなスペースだ。見せていただいた際には、ブンデスリーガのモニターを行うセッティングになっていた。ドイツ国内各地のスタジアムからの回線状況を一手に監視し、その状況を確認、モニターするための施設となる。これを文章で一文にまとめることは簡単なのだが、実際のところを紐解けばRIEDELの自社回線でドイツ国内にある20以上のスタジアムと回線が繋がり、審判のつけるインカムの音声からスタジアムのアンビエントまですべてを聴けるということ。これはなかなか一筋縄ではいかないことである。
カメラ回線も常時4回線以上が各スタジアムから確保されていて、このヴッパータールのサーバーで全回線のバックアップ収録が行われているということだ。また、ドイツではボールや選手がグランドのどこにいるかをセンサーを使って細かくデータとして残している。このデータも同様にRIEDELのサーバーに収まる。ブンデスリーガに対してのレンタル事業とは言うが、ブンデスリーガ中継のバックボーンをすべて担っているとも言える。
そのほかの大規模イベントの際にもこのモニタールームが活用されるということだ。RIEDELでは世界中からの回線を強固なものにするためのネットワーク事業部が立ち上げられている。ヨーロッパを中心に世界中にそのアクセスポイントを設置するまでに至っており、基幹となる回線は100GbE、それ以外は10gbEで世界中を結んでいるということだ。
製品開発の分野にも目を向けてみよう。インカム、トランシーバーからスタートしたRIEDELは、インカムのマトリクス接続を実現したArtistシリーズを2000年にリリース。そして映像や音声をIP伝送するMediornetを2009年に登場させた。このMediornetが先にも紹介したような映像、音声、インカム、GPIOなどすべての会場を飛び交うデータ、情報通信を束ねる中核となっている。IP伝送技術の進化とともに取り扱いができる回線数は増加し、その機能も向上を続けている。製品に関しての開発コンセプトは、前述の通りでレンタル事業部からのフィードバックが大きなヒントを与えてくれている。
📷自然と共生した広大な敷地に建物が並ぶ、まさに一大拠点呼べる規模。エントランスのトロフィーからはF1から宇宙までRIEDEL製品が活躍する幅広い分野が感じとれる。
オープンな環境のオフィスに
各部署のコニュニケーション、風通しを良くするオープンな環境のオフィス。役職に関係なくフラットなスペースとしているようで、CEOが普段使用しているのは扉も壁もないデスクだそうだ。すっかりオフィスに馴染んでいたのだが、天井には懸垂用のバー(!)がある、これが筋トレ好きなCEOのために用意された唯一特別な設備だそうだ。
📷広々としたオフィスに企業カラーの赤が映える。フラットな仕切りのオフィスには社員同士がコミュニケーションできる仕掛けがふんだんに盛り込まれている。右写真が件の懸垂バー(!)。
ここからは写真撮影がNGになってしまったのだが、設計部署、メンテナンス、検証部署が並び、テスト用の機材や、サーバールームなど機械類がズラリ。検証に関しては、最大負荷をかけてのランニングテストを日頃から行っており、バグチェックなど、どのような大規模な現場からのトラブル報告に対しても実機検証が行えるよう、2000回線以上の映像、インカムを常に飛ばせるようなセットアップが行われている。大規模な現場で生じた予期せぬバグに対してもすぐに対処できる準備が整っているということだ。これは、現場に出ているスタッフも心強いことだろう。その後、最終の組み立て工場も見せていただいたのだが、最後の組み立てはすべて手作業。1台ずつ全数検査を行ってからの箱詰め作業が行われていた。箱から出してすぐに現場に投入されることが多い同社の製品。このようにしっかりと検査が行われていることに安心感を覚える。
世界中の現場で実際に使われるRIEDEL製品、その上で出てくるニーズ、次の世代への効率的な運用、そういったことがすべて詰まったソリューションがここにはある。国内では、まだまだインカムの利用がメインではあるが、Artist以降の製品であればMediornetとの連携も可能。RIEDELのソリューションをすべて活用した実例は興味深いものとなる、これからも様々な形でお届けしたい。また、RIEDELはIP伝送の分野で老舗とも言える存在、今もなお進化を続ける世界のトップランナーである。国内におけるIP伝送でもそのテクノロジーの活用が一層進むことに期待をしたい。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Event
2024/01/12
福山雅治”初”のライブフィルムにおけるDolby Atmos制作の取り組み 〜ライブを超えたライブ体験を作るために〜
福山雅治によるライブ映画『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』が、2024年1月12日(金)からのDolby Cinema他先行上映を皮切りに全国上映される。公開に先立ち、1月9日に特別上映会と音響制作陣によるトークセッションが行われた。会場はDolby Cinema環境を備えるIMAGICAエンタテインメントメディアサービス 第2試写室。詳細は次号のProceed Magazineで掲載する予定だが、ひと足早く本作における実験的なDolby Atmos制作のポイントについてお伝えしたい。
監督・福山雅治による”理想のライブ”体験を作る
本作は、2023年夏に開催された福山雅治の武道館公演の様子を、福山自らが監督を務めて映画化した作品だ。映像面では、ドローン撮影を含めた40台以上のカメラによる全方位撮影が行われ、Dolby VisonによるHDR映像が採用された。そして音響面では、128chのライブ収録音源を元にした、Dolby Atmosによるイマーシブサウンドが採用されている。本作において監督・福山雅治が目指したものが、ライブの擬似体験ではなく”ライブを超えたライブ”体験、即ち「究極のライブの理想像」であったという。そして、その監督のリクエストに柔軟に応えるため結成されたのが、染谷 和孝氏、三浦 瑞生氏、嶋田 美穂氏による音響制作チームであった。
📷左から、染谷 和孝氏(株式会社ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー)、嶋田 美穂氏(株式会社ヒューマックスシネマ HAC事業部 リレコーディングミキサー マネジャー)、三浦 瑞生氏(株式会社ミキサーズラボ 代表取締役社長 レコーディング、ミキシングエンジニア)
トークセッションでは、ライブの再現ではない理想のライブ体験の創造のため、本作における数々の実験的な取り組みについて解説されていた。制作としては始めに長年福山雅治の作品に携わられている三浦氏によってステレオミックスが制作され、そのステムデータを元に、Dolby Cinemaでのライブ映画制作は3本目となる染谷氏、既に多くのイマーシブミックスやライブ作品を手がけられてきた嶋田氏によってDolby Atmos版の制作が行われていった。
チームで取り組むDolby Atmosライブ作品制作
大規模なDolby Atmos制作にはこういった複数人による分担作業や、濃密な打ち合わせが鍵であるという。それもそのはず、最終的に1TBを超えたという量の音源データをどうやり取りしていくかは、音楽制作と映画音響双方の理解が必要となる。また、ここまでのデータ量となったのは、イマーシブ特有のトラック数の多さの他に、あらゆる修正へ対応するための準備でもあったという。福山自身が武道館で感じているという天井から降ってくるかのようなオーディエンスや、スタジオ録音した音源の併用など、作品コンセプトである福山の脳内にある理想のライブを形にしていくための数多くの実験が、唯一無二のライブフィルムを完成させた。
ステレオとDolby Atmosで共通する作品イメージは共有されていたとのことだが、ステレオ環境とDolby Atmos環境では聴こえ方が変わるのもまた事実だという。特に、スピーカー数による空間解像度の違いから、ステレオではマスクされ聴こえない音がAtmosでは聴こえるケースや、その逆なども発生する。嶋田氏によると、なかでも影響してくるのが音源中のノイズ成分であったという。そのため、iZotope RXを用いたレストレーション作業には多くの時間を要し、イマーシブを意識してノイズを消しすぎず空気感を残す修正が行われた。
Dolby Atmosを意識したマイキングやDolby CinemaコンテンツをDolby Atmos Home環境で仕込む際の注意など、本作の更なる詳細な取り組みについては次号Proceed Magazineでお伝えする予定だ。
本編136分ぶっ通しで超濃密なライブ体験を味わえる本作。ステージ上の本人が監督したライブフィルムは、観客席からの景色や他のライブ映像とは異なる体験に仕上がっており、新たな表現へ挑戦する作り手の熱気を感じた。ファンの方はもちろんのこと、イマーシブ体験に興味のある多くの方にDolby Cinemaへ足を運んでいただきたい作品である。
作品情報
『FUKUYAMA MASAHARU LIVE FILM 言霊の幸わう夏 @NIPPON BUDOKAN 2023』
2024年1月12日(金)よりドルビーシネマ他にて先行上映
2024年1月19日(金)より全国ロードショー[4週限定]
監督:福山雅治
出演:福山雅治、柊木陽太
配給:松竹
製作:アミューズ
©︎2024 Amuse Inc.
公式サイト:fukuyamamasaharu-livefilm.com
Dolby AtmosはCinemaもHomeも、制作環境構築はROCK ON PROまでご相談ください!
Review
2024/01/11
BFE @Mainz / 顧客の理想を形にする仕事、インテグレーターのあるべき姿。
ドイツを代表するシステムインテグレーターであるBFE社。第1ドイツテレビであるARD、第2ドイツテレビとなるZDFといったドイツの主要放送局でのシステムインテグレートはもちろんのこと、自社工場を構えてワンオフでの製品生産まで行っている。事業としてはインテグレーターの枠組みを大きく超える存在となるBFE、同社が拠点を構えるマインツ本社へ伺った。
ドイツ公共放送の中核、マインツ
ドイツ中部、ラインラント=プファルツ州の州都でもある歴史ある街マインツに本社を構えるBFE。マインツはフランクフルトの隣町であり、実際のところフランクフルト空港から郊外電車で西へ30分程度のところにあるライン川沿いの街である。また、世界遺産でもあるライン渓谷中流上部をめぐるライン川下りはマインツを出港地としている。ローマ時代の遺跡があったり、中世ドイツの宗教的な中心地であったりと多くの歴史の中心地でもある。第二次大戦で壊滅的な被害を受けたこともあり街並みは近代的なものが多いが、伝統的な様式で作られた街の中心となるマインツ大聖堂はロマネスク様式の大聖堂としてヨーロッパでも有数のものである。
このマインツになぜBFEがあるのか。これにはこの街にZDFというドイツ最大の放送局があるからという非常に明快な理由がある。ここで少しドイツの放送事情を説明しておこう。ドイツは日本で言うところのNHKにあたる放送局が複数存在している。公共放送として国民全員から受信料を徴収し、それを財源に放送を行うという形態のものである。その1つ目が、第1ドイツテレビを運営するドイツ公共放送連盟(ARD)と呼ばれるドイツ各地に9つあるテレビ局のネットワーク。ARDは共同で放送する4チャンネルの放送と、地域ごとの独自の放送チャンネルを持つ。本誌でも取り上げているSWRはこのARDの中の1局である。もうひとつが第2ドイツテレビの頭文字を取ったZDFである。ZDFはドイツ全域をカバーして3つのチャンネルを放送しており、このZDFの本部がマインツにある。
面白いのが、ARDとZDFはそれぞれが独立した放送局ではあるが、同じドイツの公共放送として共同で運用するチャンネルが4つもあるということことだ。全国に向けた公共放送のチャンネル数は、ADRが4チャンネル,ZDFが3チャンネル、ADRとZDFの共同制作が4チャンネル。そのほかに各地域ごとの放送がADRの9つの放送局それぞれにあるということになる。すべてまとめるとかなりのチャンネル数である。視聴シェアの割合もこれらの公共放送が51%を締め、その他の商用放送と拮抗している。このように公共放送のシェアが高い国というのはかなり珍しいのではないだろうか。ちなみに受信料は18.36EUR。執筆時点のレートでは2900円程度となる。
複数メーカー製品を一括制御するKSC
各州ごとに設けられたARDの放送局に比べると、ZDFは全国区でありその規模は巨大なものである。その放送局とともにインテグレーターとして成長を遂げてきたBFE、どのようなところからこの会社は大きな飛躍を遂げたのだろうか?そのキーとなるのが「KSC system」と呼ばれるアプリケーション。放送局の設備にはさまざまな制御関係の信号があり、それらがスタジオシステムの根幹を握るものとして信号のルーティングや、チャンネルの切り替えなど、さまざまな場所で活用されている。KSCはさまざまな機器の組み合わせで構築されるそれらの制御を一括でコントロールしてしまおうというもの。当初は、GPIOやシリアルコントロール(RS-232,RS422)などを総合的にコントロールできる製品として登場。時代の進歩とともにIPベースでのコントロールにも対応し、現在でも顧客の要望に応えてKSCでコントロールできる機器は着実に増えている。
テキストで説明をするとだとシンプルだが、外部制御を受け付ける機器であればKSCを使うことですべてを一括でコントロールできるということだ。映像のルーターでも、音声信号の切り替えも、Cueランプや、トークバックなどもすべてを一括で制御できるまさに夢の製品。複数の製品を1つのボタンで一括制御させることができるようになっている。これらの機能はハードウェアのボタンにアサインし利用することができるようになっており、KSC用のパネルはBFEのオリジナル製品だ。
📷何でも切り替えられるKSC、物理パネルの種類も多彩だ。写真はSWRで導入されていた実際の製品で、ラックマウントタイプのものから単体で動作するものまで様々なラインナップを持つ。KVMの切り替え、回線の切り替え、エマージェンシー時のサブシステムへの切り替えなど、何でも一つのパネル上で行うことができる。
ZDFのシステムを構築するにあたり、伴って生じるさまざまな接続や制御の問題点をこのソフトウェアで解決してきている。まさに、現場の要望から生まれたソリューションである。このKSCシステムをZDF専用のカスタム製品として終わらせるのではなく、汎用性を持たせて次のビジネスに繋げているのがBFEの着眼点の優れたところ。放送局、ポストプロダクションに向けてシステムの開発が行われたものではあるが、IPベースでのコントロールを受け付ける製品なら何でもということで、G&DやIHSEのKVMの制御も可能としている。これと音声映像のルーティングの切り替えを総合的にコントロールすることで、街中にある監視カメラの映像を日々確認するマインツ警察などにも導入実績があるそうだ。ほかにもフランクフルト空港の案内表示板の制御など、放送とは全く関係のない分野での導入も進んでいるということだ。複数のメーカーの製品を一括でコントロールしたい。そんな要望のあるところにはこのKSC Systemが導入される可能性がある。ゼロからカスタム設計で作るよりもコスト的にもメリットが高く、既存ルーターやKVMを使い回すことができるこのKSC System。日本国内の放送局にとっても救世主となりうる存在なのではないだろうか。
理想にフィットするワンオフ製品
📷広々とした加工場。木工、金属加工の組み立てと、必要なものは何でも作れる設備が揃っている。左下は組み立て中の製品で、このフレームにテレビ・モニターが設置され床おきのモニタースタンドとなるそうだ。
BFEの成長を支えるKSCシステム。それ以外にも顧客の要望に合わせて、家具などの製作も行っている。スタジオ家具は汎用の製品ではなく機器類を実装したりと特別な要望が多い。これに確実に応えるため、BFEでは自社内ですべて手作りで家具を生産している。顧客の要望を自分たちで隅から隅まで形にする。そのような理想的な環境を構築しているわけだ。実際のところ、BFEの工場にはシステムインテグレーターの拠点とは思えない工作機械がずらりと並んでいる。このモノづくりという分野も拡大を続けており、中継車の設計改造やセットアップなども手掛けるようになっているということだ。顧客の理想を形にする仕事。まさにシステムインテグレーターにおけるひとつの究極であると感じた。
日本国内でこれらの仕事は、専門分野を含んでいるということもあって複数の会社で分業するケースが多い。BFEはどれくらいの規模の会社なのかを聞いてみると、150名程度だという。工場で自社製品であるコントロールパネルを製造しているスタッフ、木工加工をして家具を作るスタッフ、そういった人数を合わせての150名である。この人員規模で全国ネットの放送局ZDFを筆頭にさまざまな分野へ進出し、その納入を一手に担っているのは効率的なオペレーションの成せる技と言えそうだ。
また、社内をぐるりと案内いただいたのだが、エントランスのすぐ脇には広い社員食堂があり、ここでさまざまな仕事を行う社員同士がコミュニケーションを行い、業務をスムーズに進めているということ、スタッフ間のコミュニケーションを何よりも大切にしているということがうかがえる一幕である。このコミュニケーションを大切にする文化はBFEに限ったことではなく、ヨーロッパ最大の放送機器展示会であるIBCの会場を歩いていても感じるところ。機材の展示よりもカフェスペースや飲食の提供などを行い、人と人との関係があった上で機器の販売やサービスを提供するというビジネススタイルが根付いていることが感じられる。
ニーズを叶える工場セクション
少し脱線してしまったが、BFEのバックボーンとなる工場についてを見ていきたい。最初に見せてもらったのが、KSCシステムのコントロールパネルを製造する部門。パーツごとにある程度アッセンブリされたモジュールを手作業で一つ一つ組み立て、動作チェックを行い、梱包する。その一連の作業を手際よく行っていた。日本国内でも共通となるが、多品種小ロット生産の現場においては、どこも同じように一人のスタッフが一貫して生産を行っており高い技術力を持つ職人の世界を見ることができる。
次に木工加工場。大型の工作機械が並び、切り出しから加工、整形、仕上げまでを一貫で行う設備が整っていた。KSCシステムにより成長を遂げた会社という説明からだと、IT関連のソフトウェア企業のようなイメージを受けるかもしれないが、このようなモノづくりの現場を併せ持っているというところが非常に興味深い。この木工加工場の隣には金属加工場もある。プレスやカッター旋盤とほとんどの大型工作機械が揃っている。アルミであればほとんどの製品がここだけで作れるという規模だ。金属加工でフレームを作り、木工加工で机などの天板を作る。ユーザーのニーズに合わせてどのようなものでも作ってしまえる工場が社内にある。これは、クライアントのさまざまな要望に対して提案を行う立場のシステムインテグレーターとしては頼もしい限りである。よほどのものでない限りスタジオに収まる家具類はここで作ることができるだろう。
続いてキッティングのスペース。システムインテグレーターということで、事前にシステムを組み上げての動作検証やテスト運用などを行う。その場所も工場の一角にしっかりと設けられている。広い工場の一角ということもあり、十分に余裕のあるスペースが取られているのが本当に羨ましい。広い空間で余裕を持って事前の組立作業などが行われている。その先では中継車の組み上げが行われていた。もちろん車体は別の所で作ってくるということだが、車に積まれる機器の組み込み、設定、調整はBFEが行っている。見せていただいたタイミングでは、編集室が3室と簡易ナレーションブースが2室というかなり大型の車が作られていた。車体以外の中身はすべてBFEで作っているということだ。機器類だけでなく、家具類まで作れる強みがまさにここでも感じられる。限られたスペース、提携のものでは収まらない場所への特注家具の製作、そこで使われる機器類システムの設計、キッティング、もちろんKSCシステムを使った総合的な制御システムと、ワンストップでシステムの構築が行われている。
📷車庫で組み立てられていたのがこちらの中継車。中継車と言っても移動編集室である。この中に3部屋の編集室と、2部屋のナレーションブースが設置される。もちろんここでもKSCによるシステムの切り替え、画面の切り替えなどが行えるシステムが導入されている。車内にはサーバーラックもあり、インジェスト、編集用のストレージも社内で完結するシステムアップとなっていた。
BFE本社の向かいは広大な緑が拡がっており、その向こうにはZDFの巨大な建物が見える。立地としては街外れということになるが、十分な広さを持った工場を作るにはこの場所が良かったのだろう。今回お話を伺ったCEOも、本社に併設されている工場こそがBFEの発展に大きな意味を持っていると語っていた。システムインテグレーターの会社を立ち上げた人物ということもあり、モノを作ることが本当に好きなのだろう。当初は予想もしていない分野へも導入が進んでいるKSCシステムを軸として、ユーザーのニーズに確実な回答を提供する工場の存在。インテグレーターという事業におけるひとつの理想形がここにあった。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Review
2024/01/09
SWR @Mainz / ドイツ公共放送局で進むオートメーションフロー
SWR=Südwestrundfunkをそのまま日本語に訳すと南西ドイツ放送局、ドイツ国内で第1ドイツテレビとして全国ネットを構成するドイツ公共放送連盟(ARD)の系列局の一つとなる公共放送局である。シュトゥットガルトに本局を構える放送局だが、今回取材にお伺いしたマインツ、そしてバーデン=バーデンにも放送局を構える。これは、SDR(本部シュトゥットガルト)とSWR(本部バーデン=バーデン)が統合され、現在のSWRとなったためである。番組自体は、シュトゥットガルト、バーデン=バーデン、マインツの3拠点からの放送が行われ、それぞれの拠点間は複数の回線で結ばれている。今回は旧SWR時代より放送エリアの北部地域の中心とされていた規模を持つ放送局であるマインツへ赴き、ドイツの公共放送局SWRのスタジオ設備を拝見した。
ドイツにおける公共放送
ドイツの公共放送は、日本におけるNHKのように受信料を各世帯から徴収しその運営を行っている。日本との大きな違いは、その公共放送局が複数存在するという部分と、少ないながらもCMの放送があり放送局として1割程度の収入を広告収入から得ているという部分である。ドイツでは放送受信料の支払いは義務である。そのため、テレビ所有の有無に関わらず世帯ごとの受信料の徴収が行われ、その受信料は予め決められた割合により各放送局へ分配されることとなっている。
今回取材を行ったSWRはドイツの第1チャンネルにあたるADRを構成する9局の一つ。各地方ごとに設けられた9つの放送局は、共同で第1チャンネルARDの放送と、各局独自の地域放送を行っている。第1チャンネルといっても実際には共同で総合、娯楽、教育、ニュースと4つのチャンネルを運営。それ以外に地域向けのチャンネルと第2チャンネルであるZDFとの共同運営チャンネルの制作を行っている。これらのチャンネルはそれぞれ幹事局があり、SWRはZDFとの共同チャンネルとなるARTE(文化・教養)チャンネルの幹事局となっている。それ以外にも地域のラジオ放送も行っており、SWRであれば10チャンネル(内FM6波)のラジオ放送を行っている。ARDを構成する中の1局とはいえ、かなりの規模の放送局であることがおわかりいただけるのではないだろうか?キー局とまではいかないまでも、それに準ずる規模の放送局となる。
余談ではあるが、ドイツの放送局はABCモデルと呼ばれる大改革の途上である。インターネットの普及に伴う視聴環境の変化、公共放送のあり方、IT化による予算削減などの課題に取り組んでいる。現状で公共放送としてテレビ20チャンネル、ラジオ70チャンネル以上が提供されているが、これは法律で放送が義務付けられており、各放送局は予算が足りなくなったとしても放送を行う義務を持っているということでもある。これをインターネットを伝送路とした放送など柔軟な対応を進め、時代にあったメディアとしての情報発信、公共放送のあり方が模索されているところである。やはりどれだけインターネットなど情報ソースが増えたとしても、公共放送の持つ客観性、公平性、正確性など、プロのマスメディアとしての意義、存在価値は残るものと考えている。ただし、従来どおりの量が必要かどうかというところは世界中で議論が行われているところではないだろうか。
高度に自動化されたスタジオ
それでは、SWRマインツ放送局のスタジオを紹介していこう。このスタジオは、LEDパネルによる背景を備え、高度に自動化が行われた最新のスタジオであるということだ。照明機器はすべてリモートコントロール可能。天井のレール(バトンではない!)上を自在に動き回り、パンタグラフアームの先の照明は、上下、首振りなどがすべてモータライズされ遠隔操作が可能となっている。それらはプリセットが組まれており、演者の立ち位置に合わせてプリセットを呼び出すだけの仕組み。スタジオの床には細かくバミリがなされ、例えば20番の立ち位置であれば照明プリセットの20番を呼び出す、といったように新しいオペレーターが入ったとしてもすぐに使えるように工夫されている。カメラも手動オペレートの物が大半ではあるが、壁面にはこれらのプリセットに合わせて動作するPTZも準備されていた。
高度に自動化されているため、スタジオに入るスタッフの人数は最小限。番組の規模次第でコントロールルーム側の人数も変わってくるが、4〜5名で行うことが多いとのこと。スイッチング、場面転換が多い番組の場合には、2つ目の調整室も併用しデュアルオペレートでの運用が行われているということだ。スイッチャー、テロッパー、VE、照明が最低限必要なスタッフとなり、それに運用スタッフがいれば最低限のオンエアはできるようになっているということ。これらもオペレーションが定型化されれば、プリセットチェンジなどで自動化していくのが現在の流れだということだ。
KSCで集中制御するシステム
📷メインスタジオの副調整室(サブ・コントロールルーム)。映像と音声は壁で仕切られ、別の部屋になっている。ビデオ・スイッチャーはSONYが採用され、インカムはREIDEL。写真の前列には、スイッチャーとテロッパー。写真の外、後列にVE席が用意されていた。すべてのシステム切り替えはBFE製のKSCシステムが採用されている。このシステムでオーディオ、ビデオすべてのルーティング、非常用のシステムへの切り替えが行われている。
別記事でも紹介しているBFE社のKSCシステムがここでも使われており、モニター表示の切り替えなどに使われている。このシステムであれば、照明、カメラ、VEスイッチなどを総合的に制御できる。メインのビデオスイッチャーであるSONY製品が不具合となった場合には、このKSCがバックアップシステムとしてビデオルータを直接制御するシステムアップが組まれていた。ビデオスイッチャー自体を二重化するといった大規模な仕組みではなく、ビデオ回線のルーティングを行っているMiranda社のビデオルーターをKSCで制御するということである。このビデオルーターをスイッチャーのごとく使ってしまおうという発想だ。オーディオも、ビデオも、すべてが一度ルーターに入っているのがシステムアップにおけるポイント。外部制御可能なルーターにさえ一度入れてしまえばKSCで制御可能である。
オーディオに関してはLawoのコンソールが導入されていたが、その前段にはStagetech Nexusエンジンがシグナルルーターとして導入されている。この二段構えのシステムをKSCシステムでの制御と組み合わせて障害回避するシステムアップとなっている。また、5.1chのスピーカーが準備されていたが、残念ながらそれほど制作の機会は無いようである。これは、日本と同じくサラウンド制作の番組が少なくなっているということでもある。発想はシンプルに、コストを絞りつつ十分な機能を持たせることを実現しているように感じられた。
📷音声副調整室のコンソールにはLawoがインストールされていた。メインスピーカーはGenelecで5.1chの構成だ。マシンルームにはStagetec NEXUSエンジンが導入されている。これがLawoの手前にインストールされており、システム全体のオーディオルーターとして導入されている。LawoがNGとなった際には、手前のNEXUSでルーティングを切り替えるという仕組みだ。
最小人数で運営されるバーチャルスタジオ
📷フルオートメーションのカメラ、照明のシステムが導入されたバーチャルスタジオ。SWRマインツ放送局では、この部屋から毎日3回15分枠のニュースが放送されているということだ。完全グリーンバックでそこにスタジオがデジタル合成される。3台のカメラは位置の移動も含めすべてが自動化されている。隣の映像サブでは、合成結果を確認しながらスイッチングが行えるようになっている。
もう一つのスタジオも見せていただいたのだが、こちらはデイリーのニュース専用のスタジオとなっている。グリーンバックでの合成を使ったバーチャルスタジオとなり、先に見せていただいたスタジオよりもさらに自動化が進められていた。カメラが特徴的で、メインとなる3台のカメラはすべてプログラムにより自動化されている。レールの上を左右に移動するもの、天井から吊るされ上下するものと、カメラマンがいなくとも稼働できるセットとなっている。もちろん、何かのときのために1台は手動で動かせるものが準備されていたが、普段は使っていないということだ。照明もすべてリモートで調整できるものとなっており、今でもバトンをおろして照明の調整を行っている日本との差を痛感するところである。
この自動化が進められた結果、スタジオ内のスタッフは基本1名(!)、ニュースキャスターも1名ということもありスタジオ内は2名しかいない、ということになる。そのスタッフ1名となるVEがスタジオ外周部のスペースに座り、基本的にはカメラの映像を調整しているということだ。バーチャルスタジオということで、その後はデジタル合成処理が行われ映像が作られる。音声も基本的には1人配置されることになっているということ。やはりサブで放送をするスタッフは、監視という目的もあり人は減らせないようだ。自動化が進んだとしても最後まで人間がその役割を担う部分もあるということだ。
このサブは作りが少し変わっていて、ビデオとオーディオが反対を向いてセッティングされている。その前に見せていただいた部屋は、オーディオが別の部屋となっていたが、ここでは同室でそれぞれ別の向きに座るような形。やはりニュースということで即座にコミュニケーションが取れるように同室であることの方が、プライオリティーが高位という判断で同室としたそうだ。その中でもそれぞれが独立した作業を行うということを考えると、この並びはひとつの答えなのかもしれない。
DJデスクに埋め込まれたフェーダー
📷ブースのデスクに用意されたフェーダーを使い、DJがまさにワンマンオペレートでプログラムを進行させている。
次はラジオスタジオ。ここでは放送の手法という部分で日本国内との差を痛感した。先にも述べたようにSWRは10チャンネル(内FM6波)のラジオ放送を行っている。これはすごいボリュームである。3つの拠点があると言えど、このマインツで3チャンネル程度は受け持たないとチャンネル数との整合性が取れない。見せていただいた建屋には4つのラジオスタジオがあった。それぞれブースの大小はあるもののほとんどが同じ作りとなっている。
そこで伺った制作スタイルが驚きの連続であった。サブには基本的に2名。エンジニアとプロデューサーが入り、ブースにDJが入る。ゲストがいなければ、基本的にはこの3名でオンエアを行っているということだ。ここまででも限界まで省力化していることが窺える。ブースに入ると、DJデスクにフェーダーが埋め込まれている。なんとSWRでは、DJが曲の再生、ボリュームの調整などを喋りながら1人で行っているということだ。曲の再生に関しては予めスタンバイさせておき、フェーダースタートでの再生ができるようになっているということ。ゲストがいた場合には、それぞれのマイクがDJの手元のフェーダーに立ち上がるようになっていて、バランスが取れるようになっているということだ。サブに控えるエンジニアはトータルのバランスの調整というよりは、ほとんど監視に近いような業務になっているという。
サブに置かれたコンソールのフェーダー部分はパラでDJのデスク上にも置かれ、どちらからでもコントロールできるようなセッティングになっているということ。ブース側に再生機器なども置かれ、DJが手元で操作できるようになっている。もちろんサブ側にも置かれているが、基本はすべてDJが行っているということ。DJが自分のマイクのボリュームを手元で調整できるため、日本でよく見られるカフボックスは無い。また、デスクはすべて昇降式になっていて、SWRのDJの多くが椅子に座らず、立ってオンエアに臨んでいるということだ。実際にオンエアしている部屋もあったのだが、お話の通りで立って手元のフェーダーを操作しながらオンエアを行っていた。この昇降式のデスクはBFEによるカスタムの製品だということ。さまざまな違いに驚かされることばかりのラジオスタジオ。サブの方は日本のラジオ局とは大きな差を感じることはなかったのだが、ブースに入ってからそのオンエアのワークフローに驚きの連続であった。
📷コントロールルームにもミキサーはあるが、ここではほとんどフェーダーを触らないとのこと。
SWRの心臓部は
他にも、インジェストルームを見せていただいたのだが、各地から送られてくる映像はすべてインジェストされ、ファイルベースで管理されているということ。カメラで収録されてきたもの、バーデン=バーデンなど別の拠点からの映像、それらはすべてここでインジェストされサーバーに保存されている。インジェストルームには、博物館レベルのVTRも含め、ありとあらゆるデッキがずらりと並んでいたのが印象に残っている。公共放送ということもあり、どのような素材が必要になったとしても、現行のワークフローに組み込むことができる準備が行われている。現在は、基本的にXDCAMもしくはSxSが主流。それ以外にLiveUなどのインターネット回線越しに送られてくるものもあるということ。ここでも、BFEのKSCシステムが、信号回線のルーティングを一括で制御するコントロールパネルとして活躍していた。
📷文中にもあるインジェスト用のデスク。これと同様の仕様のデスクが6台用意されている。
また、6卓準備されているインジェスト用のデスクはすべてが昇降式。長時間の作業の多いインジェストのスタッフの負担を軽減するために、好きな体勢で作業ができるよう工夫がされていた。なお、ここでインジェストされたものは別の建屋にあるポストプロダクションへ送られ、そこで編集が行われるということ。60式のAdobe Premierが使われているということだ。オーディオ・ポストに関しては2部屋のMAルームがAvid Pro Toolsで運用されていて、来年にはAvid S6への更新が予定されているという。
最後にメンテナンスルームを紹介したい。常駐のメンテナンススタッフが常駐するこの部屋は、SWRの心臓部であると紹介された。マスターではなく、なぜここが心臓なのかというと、シュトゥットガルト、バーデン=バーデン、そのほか各支局との回線の監視機能を持っているからである。IPベースでの伝送により繋がっている各地との回線。それをこのメンテナンスルームで常に監視し不具合のチェックを行っている。レイテンシー、パケットエラーといった基本的なところを常に監視しているスタッフが居るということは、運用を行う側にとっては心強い限りということだ。機器不具合のメンテナンスとともに、バックボーンのメンテナンスも行っているというイメージだろうか。IPベースでの伝送が導入されることにより、常時監視を行うことが容易になる。これにより業務としては項目が増えるが、不具合を未然に防ぐということに繋がっていると感じる。
筆者にとっては初めてとなる、海外での放送局の実際を見る機会であった。日本と使用している機器に大きな違いは感じられなかったが、そのシステムアップや運用方法、省力化、自動化への取り組みなどさまざまな部分で大きな違いを感じることとなった。ここドイツでも公共放送のあり方が議論されている中、様々な努力が行われているということを肌で感じることができた。世界一合理主義な国民性と言われるドイツ。我々も見習う部分が多くあるのではないだろうか。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Review
2024/01/04
Fraunhofer IIS@Erlangen / MPEG-Hを生み出した世界最大の音響研究所
これまでにもその情報を発信してきたMPEG-H。次世代音声コーデックとしてドイツのFraunhoferが開発したこの規格、イマーシブ、インタラクティブといった次世代のエンタテインメントを担う規格となっている。今回はその開発元であるドイツ・ニュルンベルグ郊外のエルランゲンにあるFraunhofer IISを訪問し、色々とその実際を見せていただいた。改めてMPEG-Hの現在地と、その制作環境、さらにはその次のステップまで踏み込んだ情報をお届けしていきたい。
イマーシブ、インタラクティブ
📷SONY 360 Reality Audioではマスターファイルの器としてMPEG-Hを用いている。
それでは改めてMPEG-Hをおさらいしておこう。MPEG-Hは、Fraunhofer IISが次世代の音声コーデックとして発表した規格。イマーシブへの対応はもちろんだが、インタラクティブ音声への対応という点が他のコーデックとの最大の差別化ポイントではないだろうか。
まずは、イマーシブという部分を見ていきたい。一番身近なMPEG-Hとして挙げられるのははSONY 360 Reality Audioではないだろうか、フルオブジェクトの制作環境を持つこのフォーマット。各オブジェクトが持つメタデータを含んだ配信用のマスターファイルの器としてMPEG-Hが採用されている。非圧縮のオブジェクトメタデータを含むオーディオコーデックといえばADM BWFファイルがあるが、圧縮でメタデータを持つオーディオコーデックとなるとMPEG-Hがその筆頭となる。
MPEG-Hが持つもうひとつの特徴であるインタラクティブに関しては、放送分野での活用が期待されている。実際の事例として、すでに韓国、ブラジルにおいてはMPEG-Hが地上波放送の次世代コーデックとして採用され、韓国では4K地上波の次世代放送規格として平昌冬季オリンピックのタイミングから、また、ブラジルではリオデジャネイロ夏季オリンピックのタイミングから実運用が始まっている。
📷IBC 2023でソフトウェアベースでのリアルタイムエンコーダーを展開するSalsa Soundのブース。
そこでは最大15chのオーディオを伝送することができるMPEG-H(Level 3)が採用され、視聴者がリモコンでナレーションのレベルを上げ下げしたり、放送局側が用意する複数のプリセットされたバランスで音声を聴くことができるインタラクティブオーディオを実現している。スポーツ中継を例にとれば、解説の有無や応援席のレベルを中心にしたプリセットなどを選択できる。伝送できる15chのオーディオの組み合わせは自由で、5.1chのサラウンド放送にレベル調整を行いたい個別のトラックを加えてインタラクティブ性を持たせる、といったことが可能だ。もちろん、イマーシブ音声やオブジェクトオーディオを放送することもできる。
日本国内における次世代放送規格
現在、日本でも次世代放送規格に関しての議論が積極的に行われており、総務省から2023年7月に「放送システムに関する技術的条件」として、次世代地上波放送の概要が示されている。高度地上デジタルテレビジョン放送方式として、放送電波へのデジタル符号情報の伝送方式に始まり、映像の圧縮形式などとともに音声に関しても概要が示されている。入力フォーマットとしては「22.2マルチチャンネル音響に対応」とあり、現在運用されている4K / 8K衛星放送と同様のフォーマットが踏襲される。
それに加え、オブジェクトベース音響への対応も明記されているのが新しいところ。音声の符号化方式としては本記事で取り上げているMPEG-Hとともに、AC-4が併記されている。AC-4とはDolbyが提唱している次世代コーデックであり、実運用をスタートしている世界各国ではMPEG-HかAC-4かのどちらか一方を採用するケースが多いが、日本では両方式が採用されるという方向だ。なお、それぞれ準拠する規格はMPEG-H : ISO/IEC 23008-3、AC-4 : ETSI TS 103 190-2である。また、ペーパーに示された入力チャンネルは56ch。このチャンネル数はMPEG-H Level 4で規定された最大チャンネル数である。現在運用されているMPEG-H Level 3は16chとなるため、そこからするとかなりの増加と言える。これは、22.2ch放送時にも差し替え音声によるインタラクティブ放送を行うことができるチャンネル数を考慮したためとされている。
総務省HP「放送システムに関する技術的条件」
次世代放送では、放送自体の効率化により伝送可能なデータレートの向上が目論まれている。具体的には現在の地デジの16.85Mbpsから、22.25Mbpsへの向上となる予定だ。映像圧縮に関してはH.266(VVC)の採用。これは、現在一般的なH.264の二世代後継の圧縮技術である。音声も同様に現在のMPEG-2 AACからの圧縮技術の進歩もあり、さらに多くのチャンネル伝送を実現するものとされている。一例とはなるが、SONY 360 Reality AudioのMPEG-H伝送では、24chを1.5Mbpsで伝送している。この高効率な圧縮という部分に関しては、MPEG-HもAC-4もコーデックは違えど同様と言える。両者ともに、オブジェクトオーディオを扱うことができるというところも同様だ。両規格とも国際規格として規定されており、どのように両規格を使い分けていくかという議論が今後行われていくだろう。
執筆時点では、明確に次世代放送への移行タイムラインが提示されているわけではない。だが、他国ではすでに順次移行を開始していることを考えると、それほど遠くない未来に移行が開始されることは間違いない。着実に日本国内でも次世代の地上波デジタル放送の規格整備が進行している。すでに海外では放送がスタートしている事例も数多くある。技術の進歩はとどまることは無い、徐々に次世代の規格として採用されることとなっているこれらを知り、触れておくことは重要となる。
MPEG-Hをどう作るのか
AC-4に関しては、乱暴な言い方をしてしまえばDoby Atmosである。一方MPEG-Hに関しては、まだまだ国内では未知のものとして捉えられることが多いのではないだろうか。しかし、MPEG-Hが用いられていくという流れはすでに大きな流れとしてあり、Pro Tools 2023.6でインストーラーが統合されたりと具体的な形で制作環境が整い始めている。
放送におけるMPEG-Hには2つの制作パターンがある。一つはBroadcast、生放送でのMPEG-Hである。NABやIBCのレポートでもお伝えしてきているが、ハードウェアでのリアルタイムエンコーダーが各社より登場している。SDI信号にエンベデッドされた音声に対してメタデータを付加するという動作により、リアルタイムエンコードを行うこれらの機器は、すでに実際の運用に供されている。現状ではSDI信号に対してのエンコードを行う製品となり、MPEG-H Level 3の16ch仕様となっている。IBC 2023では、ソフトウェアベースでのリアルタイムエンコーダーであるSalsa Soundも登場し、その選択肢が着実に増えている。
📷Fraunhoferからリリースされている制作向けのMPEG-Hエンコーダーはさまざまなユーティリティーが提供されている。Mac OS、Windowsともに対応となり、ほとんどのワークフローにおいて不足することは無いだろう。
一方、制作向けのMPEG-Hエンコーダーは、Fraunhoferからリリースされている純正ソフトのみというのが現状である。とはいえ、やり直しが効く制作環境ということを考えれば、この純正のエンコードソフトで必要十分であることは間違いない。イマーシブオーディオにも、インタラクティブオーディオにもしっかりと対応している。Fraunhoferからはさまざまなユーティリティーが提供されており、マスターファイル視聴用のMPEG-H VVPlayer、Video FileにMPEG-Hを畳み込むためのMPEG-H Encording and Muxing Tool、メタデータ修正用のMPEG-H Info Toolなどの製品も同梱されているため、ほとんどのワークフローにおいて不足することは無いだろう。すでにMac OS、Windowsともに対応している。
イマーシブオーディオ制作においては、MPEG-H Authoring Plug-inというソフトウェアが、DAWのプラグイン(AAXおよびVST3)として提供されている。3Dパンニングを行うことができるこのソフトからファイルをExportすることで、3Dメタデータを持ったMPEG-Hのオーディオデータが作成できる。22.2chのパンニング、7.1.4chへの対応、フルオブジェクトとしてのファイル書き出しが可能と、次世代の放送用オーディオへの対応をしっかりと済ませている。
科学技術を世の中で使えるようにする
このMPEG-Hの開発元であるFraunhofer IISへの訪問を実現したのでその模様をお伝えしたい。Fraunhofer IISは、欧州最大の研究機関であるFraunhoferの一部門となるIIS=Institute for Integrated Circuits、日本語にすると集積回路研究所だ。Fraunhoferの75拠点ある研究所の一つであり、MP3の生みの親として世界中に知られる研究所である。Fraunhoferは応用研究をテーマとし、科学技術をどのように世の中で使えるようにするか、ということを民間企業からの委託研究として行っている。実際にFraunhoferの研究予算の7割は民間企業からの委託研究費で賄われているそうだ。
今回訪問したFraunhofer IISは、ドイツの南部バイエルン州第2の都市であるニュルンベルグの隣町、エルランゲンにある。ニュルンベルグは中世の城壁に囲まれた美しい旧市街をもつ伝統ある都市。IISがあるエルランゲンは大学都市であり、1700年代にその起源を遡ることができる伝統あるドイツ12大学のひとつ、エルランゲン大学がある街だ。また、第二次世界大戦後のドイツを代表する電機メーカー、シーメンスが移転してきたことで発展を遂げた街でもある。
このFraunhofer IISの研究の大きな指針のひとつが「オーディオ・メディア技術」。集積回路研究所という名前からもわかるように、デジタル技術の発展とともに符号化の技術を研究し、それがMP3へと繋がっている。その後もAAC、HE-ACC、xHE-ACC、MPEG-Hと各世代を代表するコーデックを開発してきている。現代の携帯デバイスになくてはならない技術となっている高度な圧縮技術。そして、エンタテインメントを支えてきた技術とも言えるだろう。その現在進行系の技術がMPEG-Hである。なお、すでに次世代の技術である「MPEG-I」も姿を現し始めている。
全フォーマットを正確に再現する研究スタジオ
📷大量のスピーカーが設置された試聴室。30°、45°、60°など各フォーマットに合わせた正確な位置に設置が行われ、Dolby Atmos / Auro 3D / SONY 360RA / NHK22.2などの正確なモニターが可能だ。水平、上層に2つの巨大なリングを設置し、そこにスピーカーを設置することで完全な等距離での設置を実現している。
研究所に到着してまず案内されたのが、研究のために使われているというスタジオ。Dolby Atmos、Auro 3D、NHK 22.2chといった現在規格化されているすべてのフォーマットのスピーカー配置を正確に再現し、MPEG-Hでコーディングした際の聴こえ方などを検証している。ここでのさまざまな実験をスムーズに行えるように、カスタムで作ったなんと6000ch超のルーティングが可能なモニターコントロールボックスでシグナルルーティングを行っているそうだ。
そして、スピーカーはすべて銘機「Musikelectronic Geithain / RL904」で揃えられているあたりがドイツらしい。Musikはご存知の通り旧東ドイツ、ライプツィヒで誕生したメーカーだ。その多数のスピーカーを正確な位置に設置するために、巨大な円形のトラスが吊るされている。このトラスだけで1トンを超えているということ。様々な実験を正確に行うために防音もしっかりとなされ、2メートル近い遮音層が確保されているということだ。遮音よりも響きを重視しがちな欧州のスタジオとは一線を画す、研究所らしいスタジオである。
ここではMPEG-Hでコーディングされた様々なイマーシブ・フォーマットの音源を聴かせていただいた。特定のフォーマットを持たないMPEG-H、器としての柔軟性、多様性を改めて実感した次第である。続いて、インタラクティブ・オーディオのデモとして、スポーツ素材でのダイアログの上げ下げ、ナレーションをオフにしてスタンドの観客音声のみ、などを切り替えられる様子を見せていただいた。また、音楽ライブの素材ではステレオ素材とイマーシブ素材の聴き比べ。これもMPEG-Hであればひとつのパッケージに同時に入れておくことができる。最高の環境でMPEG-Hの多様な可能性を体験することができた。
最終アウトプットまで担保する研究設備
📷シアタールーム。この部屋も現在運用されているすべてのフォーマットに対応するために、大量のスピーカーが設置されている。
また、リビングルームを模した視聴室もご案内いただいた。ここには様々な民生の再生機器が揃えられ、それらの動作のチェックや聴こえ方のチェックなどが行われているということだ。もちろんではあるが、制作向けの技術提供だけではなく再生機器を作るメーカーに対しても同様に技術協力を行っているFraunhofer。これまでも数多くのスタンダード(規格)を作ってきた研究所である。しっかりと最終の出口まで担保して、実際のユーザーの経験に対してもコミットしているということが感じ取れた。
そして、別のフロアには映画館規模のシアタールームがある。ここでは、さまざまなCinema向けのオーディオフォーマットの視聴体験が可能であり、それらの違いについてなどの研究が行えるようになっていた。筆者もここまでのマルチフォーマットのシアタールームは初めてである。ほとんど見ることのない、Aruo 3DやDTS-Xに対応したスピーカーの設置は新鮮であった。符号化技術の研究開発と言ってもやはり聴感としての確認は重要なファクターであり、様々なフォーマットを実際に試せる(聴ける)設備を持っているFraunhoferが「世界最大の音響研究所」と呼ばれるのもよくわかる。様々な環境やケースにおいてどのように音が聴かれているのか?想定されるほぼすべての体験が行える施設がここには揃っていた。
最後に、MPEG-Hはまさにいま羽ばたこうとしているところだが、その次はどのような進化を考えているのか?というお話を聞いてみた。すでにご存知かもしれないが、Fraunhoferでは「MPEG-I」というもう一世代先の技術開発をすでに終わらせている。イマーシブとインタラクティブの次として、AR / MR向けの技術を映像コーデックとともに開発をしているということだ。イマーシブであることは当たり前で、さらにインタラクティブ性を高めると考えるとやはりAR / MRに行き着くのであろう。プロセッサーの処理能力など現時点では課題も多いが、さらなる体験をユーザーに与えるための技術が形になりつつある。ベースとなる要素技術は揃ってきているので、それらをどのようにユーザーが使いやすいように形にしていくのか?ユーザーの端末の処理負荷を軽減するためにはどうしたら良いのか?具体的な課題解決に取り掛かっているそうだ。Fraunhoferの考える次世代のエンターテインメントは、パーソナルに楽しめるAR / MRということのようだ。これはキーワードとして覚えておいて損はない、いまからでもそれらの情報に対してアンテナを張っておいたほうが良いというサジェスチョンであるように感じられる。
📷(左)リビングルームを模した試聴室。サウンドバーなど民生の製品がずらりと揃う。(右)研究用の小規模な試聴室。この部屋も左ページの部屋と同様にマルチフォーマット対応の視聴環境となっている。
筆者にとっては念願とも言えるFraunhofer IISの訪問。MP3を代表に世界を変えたテクノロジーの震源地。3度の増築によりどんどん拡大を続けているこの大きな研究所で、オーディオ分野だけでも300名以上が働いているという。最先端となるMPEG-I、そしてその次の技術、そこから派生するテクノロジーもあるだろう。科学技術を実用に変えていくFraunhoferからは目が離せない。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Media
2024/01/02
株式会社Cygames 大阪サウンドフォーリースタジオ様 / 正解は持たずにのぞむ、フォーリーの醍醐味を実現する自社スタジオ
「最高のコンテンツを作る会社」をビジョンに掲げ、妥協のないコンテンツ制作に取り組む株式会社Cygames。ProceedMagazine 2022-2023号では大阪エディットルームの事例として、Dolby Atmos 7.1.4chに対応した可変レイアウトとなるスタジオ2部屋が開設された様子をご紹介したが、それとタイミングを同じくしてフォーリースタジオも大阪に設けられた。ここではそのフォーリースタジオについてレポートしていきたい。
同時期に3タイプのスタジオ開設を進める
Cygamesでは、スマートフォン向けのゲームタイトルだけではなく、コンシューマー系のタイトル開発にも力を入れている。近年のゲームはプラットフォームを問わず映像や音の表現が飛躍的に向上しており、フォトリアルで写実的な映像に合わせたサウンドを作る場面が増えてきた。効果音の制作については、それまでは外部のフォーリースタジオを借りて作業を行っていたが、効率性を考えれば時間や手間が掛かってしまうという制約があった。また、ゲーム作品では、例えばキャラクターの足音一つとっても多くの動作音があるだけでなく、ファンタジーの世界特有の表現が必要である。土、石畳、レンガ等といった様々な素材の音を既存のライブラリから作り上げるのは容易ではなく、完成度を上げていくことは中々に難しい作業だが、フォーリースタジオを使って収録した効果音は、生音ならではの音の良さに加え、ゲームによく馴染む質感の音に仕上がることが多かったという。
やはり自社のスタジオがあればより効率的に時間を使い、かつクオリティを高める試行錯誤も行えるのではないか、という思いを抱いていたところ、Cygamesのコンシューマーゲーム開発の拠点がある大阪でモーションキャプチャースタジオの設立計画が立ち上がったことをきっかけに、建物のスペック等を考慮してフォーリースタジオも同じ場所に設置する形でスタジオ設置に向けて動きだした。以前ご紹介した、MAスタジオの用途を担う大阪エディットルーム開設プロジェクトと合わせると、同時期に2つのサウンドスタジオ開設を進めるという大きなプロジェクトになったそうだ。
制約はアイデアでポジティブに変換する
フォーリースタジオを開設するための要件としてまず挙げられるのは部屋の高さと広さ。通常のレコーディングとは異なって物を振り回したりすることも多いフォーリー収録ではマストな条件となる。天井が低ければ物が当たってしまうのではないかという演者の不安とストレスを低減するため、部屋の中央付近の天井を一段高くする工夫が取り入れられている。広さについてもフォーリー収録時の演技をする上で充分なスペースを確保しているが、加えて壁の反射音の影響が強く出てしまわないよう、床やピットを部屋の真ん中に寄せて配置し、壁からの距離が取れるレイアウトを実現できた点も広さを確保できたメリットだ。
また、スタジオ内の壁面にはぐるりと木製のフローリングが敷かれ、そこも材質の一つとして使用できる。中央には大理石やコンクリート、水を貯められるようなピットが用意され多様な収録に対応できる環境が整えられた。一方、スタジオの広さがある故に反響をどのようにマネジメントするのかは大きな課題となっていたようだ。そこで取られた特徴的な対策だが、壁面の反射を積極的に発生させつつルームモードを起こさないように処理した上で、むしろその反響を収録での選択肢として活かせるようにしたそうだ。もちろん、部屋の外周に沿って用意されたカーテンによって反射面を隠し、反響をダンピングして抑えていくこともできる。さらに、日本音響エンジニアリングの柱状拡散体を設置してアコースティックも整えられており、当初は弊害と考えていた反響音を逆に利用することで、収録できる音の幅を拡げている。
施工は幾度と重なる打ち合わせやシミュレーションを経て行われたのだが、それでも予想できない不確定な要素も出てきたそうだ。例えば、このスタジオの特徴でもある天吊りマイク。天井に取り付けられた金属製のパイプに特型のマイクスタンドを引っ掛けて固定する仕様になっているのだが、実際に収録を行うとパイプに響いているのか、音声信号にノイズを感じることが出てきた。イメージ的にはドラムのオーバーヘッドを立てるイメージに近く、ドラムは音量が大きいためそれほど気になりはしないが、フォーリーの収録となると微細なノイズでも大きく感じることが多くなる。試行錯誤した結果、天吊りマイクスタンドを取り付ける際に固定ネジを締めすぎないようにすることでノイズを軽減できることがわかった。そのほかにも、部屋の天井から高周波の金属音が鳴っているようで調査したところ、空調のダクトが共振していることが判明。金属のダンピングを見直して解決したそうだ。細かな調整だが、このような積み重ねこそが収録のクオリティーアップには必要不可欠であるとのことだ。
📷ダンピングが見直されたという天吊りマイクブーム
集中環境とコミュニケーションの両立
スタジオのコンセプトで重要視している要素として、ストレスフリーであることが必要であると考えているそうだ。ブースとコントロールルームのスタッフの間で意思疎通がストレスなく行われなければ作業効率も落ちてしまい、認識の齟齬も起きがちだ。社内スタジオで自由に使える環境とはいえ、クオリティを高めるトライアンドエラーの時間まで削ってしまっては本末転倒になってしまう。
ところが、このスタジオはブースとコントロールルームが完全にセパレートされており、お互いの姿を確認できるようなガラス面も設けられていない。
一見するとコミュニケーションを妨げる要素になりそうだが、ガラス面を設けないことで演者が集中して演技に取り組める環境を整えられたという。演者にとって、人の目線があると気になって集中力の妨げになることもある。外部のスタジオでは収録の様子をクライアントがコントロールルームから見守るといったことも多いが、このスタジオは社内スタッフでの利用が主となるため、必ずしもコントロールルームから演者を直視できる必要はない。ただし、その分だけコミュニケーションを重視したシステムプランが採用された。
スタジオ内にはフォーリー収録用とは別に天吊りマイクが仕込まれており、コントロールルームからスタジオ内の音を聴くことができ、トークバックと両立できるようなコミュニケーションの制御も行なっている。映像カメラも各所に設置されており、コントロールルーム内のディスプレイにスタジオ内の様子が映され、その映像も各ディスプレイに好きなように出せるスイッチャーが設置されており、オペレーターの好みに合わせて配置することが可能となっている。コントロールルームとブースをアイソレーションすることによって演者が集中できる整った環境と、コミュニケーションを円滑にさせるシステムプランをしっかり両立させている格好だ。
正解を持たずに収録する、トライする機材
📷コントロールルームには左ラックにPUEBLO AUDIO/JR2/2+、右ラックに TUBE-TECH/HLT2Aが収められコンソールレスな環境となっている。
このスタジオではスタッフが持ち込みPCで収録することも想定されており、各種DAWに対応できるシステムが必要であった。シンプルかつシームレスにシステムを切り替えられ、コミュニケーションシステムとも両立させる必要がある。それをシステムの中核に Avid MTRXを据えることで柔軟な対応を実現している。また、「収録段階からの音作りがしっかりできるスタジオにしたい」というコンセプトもあり、アウトボード類の種類も豊富に導入された。コンプレッション、EQはデジタル領域よりもアナログ機材の方が音作りの幅が拡がるということだけではなく、その機材がそこにあるということ自体がスタッフのクリエイティビティを刺激する。スタッフが自宅で録るのではなく、「このスタジオで録りたい」という気持ちが起こるような環境を整えたかったそうだ。
そうして導入された機材のひとつが、PUEBLO AUDIO/JR2/2+。フォーリースタジオではごく小さな音を収録することが多く、ローノイズであることが求められる。過去の現場での実績からもこの機種が際立ってローノイズであることがわかっており、早々に導入が決まったようだ。また、ミキサーコンソールが無くアウトボードで補完する必要があったため、TUBE-TECH/HLT2AがEQとして据えられている。HLT2Aは繊細なEQというよりは極端なEQでサウンドを切り替えることもできるそうで、極端にローを上げて重たい表現ができないか、逆にローを切ってエッジの効いた表現はできないか、といった試行錯誤を可能にする。このほか、ヴィンテージ機材ならではのコンプレッション感が必要な場面も増えてきていることから、NEVE 33609Cも追加で導入されている。今後も機材ラインナップは充実されていくことだろう。
はじめからこういう音が録りたいというターゲットはあっても、正解を持たずに収録していくという工程がフォーリーの醍醐味だという。その中で誰でも使いやすい機材を選定するということを念頭に置き、スタッフからのリクエストも盛り込んでこれらの機材にたどり着いたそうだ。
スタジオは生き物、その成長を期待する
📷何よりもチームワークの良さが感じられた収録中の一コマと、気合いが込められた渾身の一撃も収録!!
こうして完成をみたスタジオであるが、S/Nも良く満足した録音が行えているそうだ。また、5.1chリスニングが可能となっている点もポイント。開発中のタイトルにコンシューマー作品が多く、サラウンド環境が必要なことに加え、映画のようにセンターの重要度が高いことから、ファントムセンターではなくハードセンターで収録したいという要望に沿ったものだ。また、映像作品やゲーム資料を確認しながらすぐに収録することができるため、フォーリーアーティストに映像作品の音を聴かせてクリエイティブへのモチベーションをアップしてもらいながら制作を進める、という点も狙いの一つだ。もちろん、自社スタジオとなったことで時間を気にせずクオリティの向上を目指せることが大きく、求める方向性をより具体化させて収録できるメリットは計り知れない。
今後について伺うと、スタジオは生き物であり、収録できるサウンドの特徴も次第に変わっていくと考えているそうだ。導入する資材が増えればそれが吸音や反射になって音も変わる。ピットについても使用していく経年変化でサウンドにも違いが出てくる。高域が落ち着いたり、もう少し角が取れてきたりと、年月を積み重ねてどのように音が変わっていくのかがすごく楽しみだと語っていただいた。
📷今回お話を伺った、サウンド本部/マネージャーの丸山 雅之氏(左)、サウンド本部/サウンドデザインチーム 村上 健太氏(中央)、妹尾 拓磨氏(右)。
目の前の制約はアイデアでポジティブに変換する、考え抜かれたからこそ実現できたメリット。そして、それを活かしたフォーリー収録には正解を持たずにのぞむ。ここに共通するのは先入観を捨てるということではないだろうか。先入観を「無」にしたならば、そこにあるのは創るというシンプルかつ純粋な衝動のみである。クリエイティブの本質を言い得たような、まさにプロフェッショナルの思考には感銘を受ける。今後もこのスタジオが重ねた年月は成長となって作品に反映されていくのだろう、フォーリー収録された素材がゲームというフィールドで表現されエンターテインメントを高めていくに違いない。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Support
2023/12/29
Avid Media Composer ver.2023.12リリース情報
日本時間 2023年12月13日、Avid Media Composer バージョン2023.12がリリースされました。有効なサブスクリプション・ライセンスおよび年間プラン付永続ライセンス・ユーザーは、AvidLinkまたはMyAvidよりダウンロードして使用することが可能です。
今回は、Media Composer 2023.8でプレビューされたScriptSyncとPhraseFind AIが正式にサポートされます。また、バッチサブクリップ機能は、シーケンスに対してもその機能が適用でき、機能が拡張されました。その他、UME(Universal Media Engine)による取り込みでは、.movやMP4等のインポートが可能になりました。それではMedia Composer 2023.12と2023.8の新機能をあわせて見ていきましょう。
Media Composer 2023.12 新機能
PhaseFind AIとScriptSync AIをフルサポート
PhraseFind AIとScriptSync AIはパブリックプレビューを終了し、Media Composer | EnterpriseとMedia Composer|Ultimateでフルサポートされました。
PhaseFind AI機能は、以前から定評のあるダイアログインデックス作成、検索オプションです。単語やフレーズを入力するだけで、関連するクリップを素早く見つけることができます。また自動で文字起こしができ、さらに多言語を検出することもできます。
ScriptSync AIは、ビン内のクリップをインデックスし、クリップの音声データのデータベースを作成し、既存のトランススクリプションにクリップを同期させる機能です。
1つまたは複数のクリップを選択して、右クリック>[クリップからスクリプトを作成]を選択すると、ダイアログを解析してインデックスします。文字起こしが完了すると、選択したクリップが追加されたスクリプトウインドウが自動的に開きます。必要なセリフの行をクリックすると、その場所へジャンプします。
このスクリプト作成は、ローカルシステムで処理され、ネットワークに接続する必要もないため、コンテンツの安全性は保証されます。
文字起こしをエクスポート
PhraseFind AIエンジンでクリップから作成したスクリプト(文字)文字をテキストファイルとしてエクスポートすることができます。クリップを選択し、右クリックのメニューから「文字起こしをエクスポート」を選択します。
バッチサブクリップの拡張
2023.8ではマスタークリップのみでしたが、シーケンスからもサブクリップを作成できます。のりしろの設定やシーケンスで選択したトラックでサブクリップを作成できます。新規シーケンスのオプションを選択すると、サブクリップを含む新しいシークエンスも作成できます。
AACファイルフォーマットをM4Aコンテナでエクスポート
[出力] > [ファイルにエクスポート…] > [Options…]のエクスポート形式で、M4Aコンテナを選択します。
QuickTimeがインストールされていないシステムでQuickTimeインポート
QuickTimeインポートにQuickTimeのインストールが必要なくなりました。Cataline以降、Appleが32bitのサポートを終了してから、QuickTimeとそのエンジンなどを含め、あらゆるレガシーがサポートされなくなりました。このバージョンでは、UME(ユニバーサル・メディア・エンジン)の改善により、.movやMP4等のインポートが可能です。ファイルをインポートすると、リンク後、トランスコードが行われ、ビンではリンク状態のアイコンから通常のクリップアイコンに変わります。
これにより、Media ComposerではQuickTimeコンポーネント(32bit)が必要なくなります。
SRTの最適化
SRTはストリーミングするために高帯域のバンド幅を必要とすることがよくありますが、このバージョンではパフォーマンスを最適化しました。ビデオのクオリティを維持しながら、帯域幅を抑えるLowとMedium設定、ストリーミング中の編集時の反応を向上させるための低遅延圧縮を使用するHigh設定があります。さらに、オーディオとビデオの同期が改善され、アンシラリタイムコードをSEIメタデータとして組み込むことができます。
Media Composer 2023.8で追加された機能
Media Composerクラシック ユーザー設定
[Media Composerクラシック] ユーザープロファイルは、v2018のような以前のバージョンのMedia Composerと同じようなUIと設定を作成できます。このプロファイルではウインドウがフローティングになります。
コンポーザーウインドウの中央にボタンパネルを表示
Composer設定に[中央にボタンパネルを表示] オプションを追加されました。設定>[User]タブ>[Composer]でアクセスできます。このオプションを選択すると、ソース/レコードモニターの間に(Composerウインドウの設定により)3個または6個のボタンが並んだボタンパネルが表示されます。
使用中のタイムラインにシークエンステンプレートを適用
フォーマットの変更に合わせて、現在使用中のタイムラインのトラックレイアウトやトラック名を更新します。それ以外の属性は変更されません。シークエンスを右クリックし、[シークエンステンプレートを適用]を選択し、適用したいシークエンステンプレートを選択します。
コマンドボタンのツールチップにショートカットを表示
コマンドボタンの上でポインターをホバリングすると、ショートカットが表示されます。以前はツール名だけが表示されました。
Panel SDK
Panel SDK(Software Development Kit)のAPI(Application Programming Interface)により、Media Composerと3rdパーティー製品との統合がよりスムースになります。
USBオーディオデバイスを使用したオーディオ パンチイン
ビデオハードウェアを使用しながら、オーディオパンチインデバイスとしてUSBオーディオデバイスが使用できます。HW/SWスイッチに「Desktop Audio」のチェックボックスが追加され、BlackmagicやAJAを使用しながら、これを選択して、USBオーディオデバイスからパンチインができます。長時間の再生でも同期を維持するためには、オーディオ、ビデオデバイス双方に同期信号を入力します。
クリップゲインを36dBまで拡張
クリップゲインが、最大12dBから最大36dBに拡張されました。Media ComposerとPro Toolsを並行して使用するときや、レベルの低いオーディオを使用するときに便利です。これらの値はPro ToolsセッションやAAFをインポート/エクスポートするときにも維持します。しかし、12dB以上をサポートしていない旧バージョンのMedia Composerでは、12dB以上のゲインは0dBにリセットされます。
また、36dB以上の値を持つクリップをAAFでインポートしたときには、12dB~36dB値は維持され、36dB以上の値は36dBにセットされます。
“LFE専用”モノラルトラック
オーディオ ミキサーのコンテキストメニューにある[このトラックはLFE専用]にチェックマークをつけると、任意のモノラルトラックをLFE(Low Frequency Effects)出力として指定することでき、サラウンドサウンドミックスの他のチャンネルには表示されなくなります。この機能をアクティブにすると、トラックのパンナーが表示されなくなり、再生、エクスポート、またはサラウンド ミックスのミックスダウンの作成時に、オーディオが、選択したLFEのチャンネルに自動的に「パン」されます。マルチチャンネルオーディオトラックで「トラックをモノラルに分割」を使用すると、作成されたLFEトラックがLFE専用トラックとして指定されます。Pro Tools セッション ファイルにエクスポートする場合には、LFE専用のトラックは、対応するマスターフェーダーのLFEバスにルーティングされます。互換性を保つために、2014年までの旧バージョンのMedia Composerと共有しているシーケンスでは、LFE専用トラックの動作が保持されます。
AAFでエクスポートした場合には、LFE専用トラックは、Media Composerでのみ利用でき、Pro Toolsでは利用できません。
トラック エフェクトのバイパス
Audio Project設定の[エフェクト]タブの[バイパス]セクションで[トラック]を選択すると、トラックエフェクトをバイパスできます。
オーディオ出力のデバイス選択
Audio Project設定の[ハードウェア]タブで、Media Composerがデスクトップオーディオとして使用するオーディオデバイスを選択でき、プロジェクト設定として保存できます。macOSではデフォルトで [システム設定に従う]が選択されていますが、ドロップダウンメニューからインストールされているオーディオデバイスを選択することができます。Windowsでは、インストールされているASIOをサポートしているデバイスがデフォルトで優先され、デバイスがない場合には、「DirectSound」になります。
Pro Toolsセッションエクスポートにマルチミックス ツールのオプションを追加
マルチミックスツールオプションを使用して、Pro Toolセッションエクスポートにガイドトラックを追加できるようになりました。[オーディオミックスダウンを追加]ドロップダウンメニューから[マルチミックスツール]を選択し、表示される[マルチミックス設定]メニューから[マルチミックスツールを開く]を選択します。
Media Composerについてのお問い合わせ、ご相談がある方はお気軽にROCK ON PROまでご連絡ください。
NEWS
2023/12/29
ROCK ON PRO 年末年始休業期間のご案内
平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
大変恐縮ではございますが、下記期間を年末年始の休業期間とさせていただきます。
お客様にはご不便をおかけしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
◎ROCK ON PRO 渋谷・梅田事業所 年末年始休業期間
2023年12月30日(土)〜2024年1月3日(水)
なお、新年は1月4日(木)からの営業となります。
新年もより一層のお引き立てのほど、宜しくお願い申し上げます。
Post
2023/12/28
maruni studio様 / studio m-one 9.2.6chイマーシブ構築、マルニビル改装工事の舞台裏
取材協力:株式会社エム・ティー・アール
ライブの映像コンテンツやMVをはじめ、CM、企業VP(=Video Package)など、音楽系を中心に幅広いポストプロダクション業務を手がけるマルニスタジオ。長年に渡りレコーディングスタジオとポスプロの両方を運営していた関係で、音楽系の映像コンテンツが全体の6割程度を占めるという。今年3月にリニューアルオープンされた同社所有のマルニビルは、その目玉として地下一階にDolby Atmos対応のサウンドスタジオ「studio m-one」を構えた。Musikelectronic Geithainの同軸スピーカーで統一された9.2.6ch構成のイマーシブサラウンド環境は見た目としても圧巻だが、商用スタジオとしても利用する多くの方にとって快適な環境となるよう、様々な工夫が取り入れられているという。
スケルトンから行ったリニューアル
目黒区青葉台、目黒川に程近い住宅街の一角に佇む自社所有のマルニビルは、およそ30年に渡りこの地でレコーディングスタジオとして運営されてきた。また、青葉台には当初からポスプロ業務をメインとしているもう一つの拠点が今も存在している。そして2020年3月、突然訪れたコロナ禍が世の中の動きを止めてしまったのと同様に、コンテンツ制作もしばらくの間停滞期を迎えることになる。そこで持ち上がったのが、両拠点をポストプロダクション業務に統一するというプロジェクトだ。その後社内協議を経て、自社ビルであることのメリットを活かし、全フロアを一度スケルトンにして再構築する改装工事実施を決断。2022年6月より工事がスタートし、数々の難局を乗り越えながら今年3月リニューアルオープンの運びとなった。
今回の改装工事の舞台裏はどのようなものだったのだろうか。スタジオマネージャー兼MAミキサーの横田智昭氏、MAミキサーの沖圭太氏にお話を伺ったところ、これからイマーシブ対応のスタジオを作りたいと考えている方にとって参考になるであろう、理想的なスタジオ構築へのヒントが見えてきた。
株式会社丸二商会
MARUNI STUDIO
Studio Manager
Chief Sound Engineer
横田智昭 氏
株式会社 丸二商会
MARUNI STUDIO
Sound Engineer
沖 圭太 氏
ROCK ON PRO(以下R):今回のスタジオリニューアルの最初のきっかけは何だったのでしょう。
横田: 率直な話、コロナ禍に突入してレコーディングの業務、スタジオで音を録るという仕事は停滞していた一方で、そういった中でもポスプロ業務の方は順調に稼働していました。そこで、このタイミングでポスプロ業務と拠点を統一しリニューアルしようという提案が社内から挙がったんです。
R:その後、具体的な計画や機材選定が始まったのではないかと思いますが、どのように進めていったのでしょう。
横田: このビルは自社ビルで、さらに吹き抜けがあり広く空間がとれる利点があったのですが、スケルトンまでできるという予算を確保できたのが一番大きかったですね。それが実現したからこそ、スタッフ全員で自由に考えられました。タスクの洗い出しというよりは、「自由にできるからこそ、どうレイアウトしていくのか?」というのを決めていくのが大変でした。あれこれ詰め込みすぎると予算が追いつかなくなったりして。
沖:この段階から冨岡さん(株式会社エム・ティー・アール 冨岡 成一郎氏)に相談でしたね。私はマルニと冨岡さんをつなぐ連絡担当だったのですが、無茶を言ってもレスポンスよく対応してくださいました。あと、実はスケルトンの話が出てくる前に、地下一階ではなく二階でやろうという話もありました。しかし検討していくと天井高も取れないし…ど〜にもならん!と(笑)。商業的に成り立たない、というのが分かったからこそ、思い切って「スケルトンからやろう!」という方向をみんなで向くことができたのは大きかったです。
R:では、リニューアル時にDolby Atmos対応というのは当初からお考えだったということですね。
横田: それは最初から考えていました。ポスプロのスタジオに転向するならAtmos対応にしたいと。
リニューアルが解決したポイント
📷著名な建築家によってデザインされたというこのマルニビルは、コンクリート打ちっぱなしの内壁のクールさと、階段などに見られるアール(曲面)の造形が生み出す人間的な温かみの対比がなんとも美しく印象的だ。
R:この新たなスタジオで解決された、以前からの課題はありましたか?
横田: MA室の場合、クライアントの方が大勢いらっしゃることがあります。中には、当然別の仕事も対応しながら立ち会われるということもありますが、コントロールルームの中ではそれを遠慮がちにされているのもこちらとしては心苦しかったんです。そこで、隣の前室にテレビとソファを用意して、そちらでもコントロールルームと同じ環境の音と画を流すことができるようにしました。クライアントの皆さんが別件対応を前室でしていても、コントロールルームの中で制作がどう進行をしているのかをすぐに確認できるという環境にしています。
また、コントロールルーム内とは別の場所で冷静に画音をチェックできるスペースができたというのは、従来の雑多になりがちな作業環境からすると改善されたポイントです。これは、他のMA室にもなかなか無い部分ではないかと思っています。あとは、極力スタジオ内のモノを減らす、ということですね。見ていただいて分かる通りかなり少ないと思います。音響面も含めてダイレクトな音を重視したいというのはずっと思っていて、卓上のものもなるべく小さくしました。
R:そうですよね、シンプルで洗練された印象を受けました。
📷前室にはDolby Atmos対応のサウンドバーSonos Beamを配置し、テレビのeARC出力からオーディオチャンネルを受けることでシンプルな配線を実現している。
📷優先的に導入したというTorinnov Audio D-MON、そしてDolby Atmos対応AVアンプDENON AVC-X6700Hなどが配置されたラック。
沖:機材的な話で言うと、最初の段階から決まっていたものとしてTorinnov Audio D-MON の導入がありました。これまでのMA室は15年くらい使っているのですが、経年変化もあり音を調整したいタイミングも出てきました。その調整幅が少ないというのはスタジオを長く使っていく上で、言わば足かせになってしまう、というのをすごく感じていたので、スタジオを作って今後も長く使っていけるようにしたかったんです。もちろんアコースティックな部分での調整を追い込むのも大事ですが、プラスして電気的に調整できる「伸びしろみたいなものを取っておきたい!」ということもあって、コストは高くついても「そこだけは譲らない!」というのはありまして、何も考えずに最初に予算に組み込みました(笑)。
R:もちろん出音の改善の意味もあるかと思うのですが、長く使っていく上でメンテナンス性をもたせる意味で導入されたのですね。
沖:当初はそうでしたが、結果的にAtmosの調整にもすごく良い効果が出ていますよ。
17本のMusikが表現する9.2.6ch
R:最初の段階から導入を決めていたものは他にもあるのでしょうか。
横田: 見ての通り、ムジークですね。この901のフロントのLCRは元々レコーディングで使っていたものなんです。これが、レコーディング用途であったとはいえ、私たちも当然よく聴き込んでいて素直にいいなと思わせるサウンドでした。そこで「せっかくあるこの901を活かして全てを組めないか?しかも9.2.6chという形で…」と冨岡さんにも相談させていただいて。そこもこだわりと言えばこだわりです。
R:では、慣れ親しんでいたスピーカーでイマーシブの作業も違和感も無く進められたと。
横田: そうですね。ただ、17本もあると…スゴいんだな、と(笑)。なかなか暴れん坊の子達なんですが、Torinnovが上手くまとめてくれています。
R:今回、9.2.6ch構成にされたのはどういった理由でしょう。
横田: それは僕がここを作る以前に、外部のスタジオで取り組んでいた作品が影響していて、そこでは9.2.4chで作業を行なっていました。その時にワイドスピーカーの利点について使用前と使用後を比較した時に、新しいスタジオを作るのであれば、トップを4chとするか6chとするかはさておき、平面9chはマストだな、と。中間定位が作業上すごく判断しやすい。そこを7.1.4chと比較するとやはり定位がボケる部分が出てくるんですね。結果的に7.1.4chで聴かれている環境があったとしても、制作環境としてはこの部分が物理的に分かると作業がスムーズになってくるというのがありました。
📷Topの6chにはmusikelectronic geithain RL906を採用。スケルトンからの改装により3.1mという余裕ある天井高が確保された。
R:トップスピーカーはどのように活用されていますか?
横田: トップ6chに関しては、トップの真ん中にスピーカーを置くというのは、正直最初は「要るのかな?」とも思っていたんですが、ついこの間、その効果を実感できる機会がありました。Atmosの作業を行なっていた時に雷を落とすシーンがあったんです。部屋の中でのプロジェクションマッピングになっていて、長方形の箱の中でどこからともなくワーッと雷が落ちるシーン。それを音楽の曲中の間奏に入れたかったんです。上方向の定位は分かりづらいものですが、その時の雷の音の定位が非常に分かりやすかったんです、トップの真ん中があることによってすごくやりやすさを感じました。そうしたものを作る上で定位をきちんと確認できるっていうのは良かったなと最近になって実感しています。
R:今回AVID S1を選択されたのはどのような理由からでしょう。
沖:MAという作業柄、フェーダーを頻繁に使う訳ではないので、8chもあれば十分なんです。あとは、卓ごと動かせるようにしたかったというのと、反射音の影響を極力減らすため、スタジオ内のあらゆるものをできるだけコンパクトにしました。S3じゃなくS1というのもそこからです。
横田: やはり、スイートスポットで聴かなければ分からないじゃないですか。中には卓前に座ることに抵抗があるというクライアントの方も意外と多くいらっしゃいます。だったら卓側を動かしてしまって、そこにソファや小さなテーブル、飲み物などを置いて落ち着ける環境にしてしまえば、ど真ん中で聴いていただけるかなと思いました。
📷マシンルームからのケーブルを減らすため、必要最低限かつコンパクトな機器類で構成された特注のデスク。中央にはAVID S1が埋め込まれている。
R:フロアプランに関して、他にも案はありましたか?
横田: リアやサイドのスピーカーをどのように配置できるかというところをしっかり検討して、これはすごく上手くいったと思います。サラウンドサークルのことだけを考えるとクライアントの邪魔になってしまうことがありがちです。それを、しっかりイマーシブ環境にとっての正確な配置を考えつつ、クライアントも快適に過ごせるということを、僕らの意見だけではなく営業サイドの意見も豊富に取り入れてこだわって考えました。
沖:この部屋はあえてMA室とは呼んでいません。コンセプト段階で「MA室を作るのか?」それとも「レコーディングの人もMAの人も使える部屋を作るのか?」という議論がありました。前室のスペースもいっぱいまで使って、3列ディフューズのいわゆるMA室的な部屋を作ろう、というアイデアと、ITU-Rのサラウンドサークルにできるだけ準拠した完璧な真円状に配置しようというアイデアがありまして、そこで色々話し合って揉んでいく中で今の形に落ち着きました。レコーディングの方もMAの方も皆が使える部屋となったので、より広い用途に対応できるという意味合いでもあえてMA室とはせず「studio m-one」としています。
📷将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できるAVID MTRX。B-Chainの信号はモニターコントローラーのGrace Design m908を経由し、Torinnov Audio D-MONへと接続されている。
レコーディングとMAを融和するイマーシブ
R:現場の方々から見てDolby Atmos以外の規格も含めてイマーシブ需要の高まりというのは感じますか?
横田: 確かにエンドユーザー的には広がってきているかな、という感覚はあります。そこから「スタジオを使ってもらうようにするにはどうするか?」っていうのがもう一つのテーマであったりもするので、私たちがどうやって携わっていくかというのは毎日考えていることではあります。音楽作品については、いくつかのアーティストがだんだん作り始めているような状況なんですが、これもやってみて思うのは、ノウハウがものすごく大事な部分でもあるし、発注する側からしてもある意味「未知」ではある状態です。「面白そうだけど、どういうふうにすればいいの?」とか、「どういう風にやるの?」とか、「時間はどれだけかかるの?」といった部分がまだまだ分かりづらい状況だと思います。
R:手探りなところは聴き手もそうですよね。
横田: だからこそ、私たちはいいスタジオを作らせてもらったので、これをどう活用していくか、イマーシブのニーズにどう参入していけばいいのかというのは常日頃から営業陣とも話し合っています。そこで、先日取り組んでみたのが企業系のVPコンテンツで、このstudio m-oneでAtmosを体験していただいたのをきっかけにお声がけをいただいて、VPをAtmos化するということを実験的にやらせていただきました。
他にも企画段階から携わって、「カメラアングルこういうのはどうですか?」とか「背景にこれがあるとこういう音が足せるので、こんな空間ができますよ」とか、「こういう動きで…」「俯瞰から撮ると…」とかカメラマンさんとも打ち合わせをさせていただいて、それに対して僕らが効果音をつけて制作してみたというケースもあります。クライアントは、さまざまな企業のコンテンツを受注する制作会社なのですが「どういう風に世に出していいかっていうのはちょっとまだ悩むけれども、できたコンテンツとしてはすごく面白い」という評価で、受注の段階でAtmosの表現もできると提案してみようかという流れも生まれてきているようです。そうなると、これまでAtmosとは無縁と思われた企業の方にも、商品だったり、システムだったり、それが例えば「空間」を表現することでその価値観が高まりそうな商品にはAtmosのような規格がとても効果的だ、と知っていただける機会も増えてきそうです。
R:制作はもちろん、営業面でも広がりを見せそうですよね。
横田: 先ほどの話もありましたが、あえてMA室とは呼んでいません。これまで、サラウンド制作はどちらかというとMAやダビングの世界の話で、言ったら我々には親しみがある分野でした。そこに空間オーディオが出てきてレコーディングの方が一気にAtmosへ取り組む機運が高まると、レコーディングの人たちとMA的なやり方を話すようになってきたんです。そういう時に、我々が今までやってきたサラウンドの話が活きてくる。これまではレコーディングとMAの間に垣根のようなものが感じられていたんですが、空間オーディオのスタートによってその境目が混ざってきた感覚です、これからもっとそうなっていくと思います。studio m-oneもせっかく作るなら、そのどちらにとっても垣根がないスタジオにしたかったというのが最初の展望です。Atmosへの関心にかかわらず、どのような方にでも使ってもらえるような部屋にしたいですね。
📷中央のデスクを移動させ、椅子とサイドテーブルを置くと極上のイマーシブ試聴環境へと早変わりする。この工夫により、クライアントがスタジオ中央のスイートスポットでリラックスして試聴してもらえるようになったという。「卓前で聴いてもらうのが難しいのであれば、卓ごと動かせばいい」、そうした逆転の発想から生まれたまさにクライアントファーストな配慮である。実際にこの場でライブの音源を試聴させていただいたが、非常に解像度の高いMusikサウンド、そしてTorinnov Audio D-MONによる調整の効果も相まって、良い意味でスピーカーの存在が消え、壁の向こう側に広大な空間が広がっているかのように感じられた。
●Speaker System
Dolby Atmos Home 9.2.6ch
L/C/R:musikelectronic geithain | RL901K
Wide/Side/Rear:musikelectronic geithain | RL940
Top:musikelectronic geithain | RL906
Sub:musikelectronic geithain | BASIS 14K×2
スタジオ設立30周年を迎える節目に、ポスプロ業務への一本化という新たな変革へと踏み出したマルニスタジオ。スケルトンからの改装は自由度が高い反面、決めるべきことも増えるため数々の議論が行われてきた。その際に、技術スタッフの意見はもちろん、営業陣の意見にもしっかりと耳を傾けることで、クオリティの高い制作環境を担保しつつ、クライアントを含めた利用する全ての人にとって居心地の良い空間デザインが実現された。あえてMA室と呼んでいないことからも伝わってくる、制作現場における様々な垣根を取り払い、人との対話を重視しながらより良い作品を作っていこうという姿勢には個人的に深い感銘を受けた。このstudio m-oneから、また一つ新たなムーブメントが拡がっていくのではないかという確かな予感を抱かずにはいられなかった。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
NEWS
2023/12/27
【期間限定】Jonathan’s Mastering Bootcamp アーカイブ配信を限定販売
今年11月、エアロスミス、シカゴ、デヴィッド・ボウイ、ピンク・フロイド、ニルヴァーナなどを手掛け「マスタリング界の至宝」として知られるアメリカ音楽業界屈指のマスタリングエンジニアJonathan Wyner氏を講師に迎えて、キング関口台スタジオにてマスタリング集中講座が開催されました。実際の作業手順を丁寧に紐解いた解説から、マスタリングに取り組む上での姿勢など、当日は5時間を超える濃密な講義となりました。
マスタリングエンジニアの方はもちろん、音楽制作に関わる全ての人にとって知っておいて損はない
”マスタリング”についてのセミナー。
当日は15名限定で開講された特別講義ですが、参加できなかった方のためにこの度、期間限定で配信URLの販売を実施します。(配信開始は12月28日予定・期間限定収録配信¥9,800)
動画販売は1月4日まで、視聴は1月11日23:59までの超期間限定配信!
お見逃しのないようお願いいたします。
期間限定配信を購入する
セミナー内容
マスタリングにおける基本的な心構えと目指すべき方向性、また、現代のマスタリングを取り巻く環境について、ジョナサン・ワイナーの哲学が詰まった内容になっています。
基本的なワークフローについて
マスタリングエンジニアがファイルを受け取った時に、まず確認すべき事はなんでしょうか。
サンプルレート設定やアンチエイリアシングフィルターについて、レベル、ラウドネスの確認、作業をはじめる順番に至るまで、マスタリングの基本のワークフローを紹介しながら彼の思考を丁寧に紐解きます。
さらに、各トラックの間隔設定や書き出し時のメタデータについてなど、マスタリングにおけるあらゆる側面について解説します。
プロジェクト事例~Global Jazz Institute〜
実際の楽曲データを使用し、実践に入っていきます。最初に紹介されるプロジェクトは、グラミー賞にノミネートされた作品のマスタリングです。
Ozone11を使用し、リミッター、EQ、ダイナミクスといった彼の手法について、具体的な数値設定まで解説します。
質疑応答では、作曲からマスタリングまで個人で手がけるケースの注意点や、作業時の判断基準といった参加者の抱える疑問について、1対1で答えられています。
プロジェクト事例~エンジニアの異なる3曲EP〜
各楽曲のエンジニアが異なるEPを事例としたマスタリング。曲ごとにレベル差や音色差がある際の分析とアプローチについて語られます。
また、ロックテイストの楽曲におけるローエンドの処理、曲間の繋ぎ方など、必見のプロの技を披露します。
プロジェクト事例~国内エンジニア提供楽曲1〜
国内のエンジニアから提供していただいたオーケストラ楽曲を、本人を前にしてマスタリング。プロジェクトの分析や実践を通して、元のミックスが持つサウンドを損なわず、いかに魅力を引き出すかというマスタリングについて解説します。
プロジェクト事例~国内エンジニア提供楽曲2〜
別の国内エンジニアから提供していただいた、ロックテイストの楽曲をマスタリングします。ミキシングの領域までメスを入れるマスタリング処理について解説します。
Closing Talk
ミキシングとマスタリングの関係、ステムミックスに対する考え方、そしてJonathan Wynerから皆様に伝えたいメッセージが語られます。
期間限定配信を購入する
ご購入者様にはVimeo Proでの期間限定配信URLをお送りさせていただきます。貴重な講義をお見逃しなく!
NEWS
2023/12/27
Synchro Arts、ボーカル編集ツールRevoice Pro 5をリリース!
ロンドンにてボーカル処理に特化したツールを開発するSynchro Arts社から、その製品群の中心に位置するオールインワンなボーカル編集ソリューションRevoice Proの最新版、Revoice Pro 5がリリースとなりました!
ボーカルアライメント、ピッチ補正、ボーカルダブリングが可能な本製品は、ボーカル編集ツールのなかでも素早い操作感で自然な処理を実現することに力を入れたソフトウェアとして評価されています。
Revoice Pro 5の新機能
◎最新のピッチ編集技術を搭載
ピッチ曲線を細かく変形させることが可能なシェイパーツール(Smart Shape Points)が新たに加わったほか、基礎となるピッチ/タイム/レベル編集機能も強化。
◎SmartPitch
ダブリングやハーモニーを合わせるタイミング、効果を維持する期間をインテリジェントに判断する機能により、作業時間を短縮。
◎DAWとの連携を改善
スタンドアロンソフトウェアであるRevoice Pro 5ですが、DAWとの接続もさらにスムーズになりました。Revoice Linkプラグインを使用したDAWーRevoice間の信号の受け渡しのほか、ProTools専用機能としてQuick Match、Quick Doublerプラグインを用意。VSTプラグインとして利用し処理結果をすぐにDAW上に展開できます。ARAに対応したDAWではARA2互換を用いた連携も可能です。
Synchro Arts / Revoice Pro 5
価格:¥82,720 (本体価格:¥75,200)
Rock oN eStoreで購入!>>
◎旧バージョンからの無償アップグレードも実施中
2023年6月12日以降にRevoice Pro 4をメーカー本国Webサイトにて登録した方は、Revoice Pro 5への無償アップグレードを申請できます。
無償アップグレードの申し込みや、ご自身が無償アップグレードの対象であるかどうか確認するには、下記リンクにてRevoice Pro 4の認証に用いたiLokアカウントのIDを入力後、Sendボタンをクリックしてください。
https://www.synchroarts.com/support/rvp5-free-upgrade
プロフェッショナルスタジオツールの見積、ご相談はROCK ON PROまでご連絡を!
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2023/12/26
株式会社三和映材社 様 / MAルーム『A2』〜大阪の老舗ポスプロが、これからの10年を見据えてMAルームをリニューアル〜
Text by Mixer
CMや企業VPといった広告案件を数多く手がける大阪の老舗ポスト・プロダクション、株式会社三和映材社が本社ビル内にあるMAルーム『A2』をリニューアルした。長らく使用されてきたヤマハ DM2000はAvid S4に入れ替えられ、モニター・スピーカーはGenelec The Ones 8331Aに更新。システム的にはシンプルながら、8331AとPro Tools | MTRXはAESで接続されるなど、音質 / 使い勝手の両面で妥協のないMAルームに仕上げられている。今回のリニューアルのコンセプトと新機材の選定ポイントについて、株式会社三和映材社 ポストプロダクション部所属のサウンド・エンジニア、筒井靖氏に話を訊いた。
大阪の老舗ポスプロ:三和映材社
大阪・梅田から徒歩圏内、新御堂筋沿いにスタジオを構える三和映材社は、1971年(昭和46年)に設立された老舗のポストプロダクションだ。映画の街:京都で、撮影機材のレンタル会社として創業した同社は、間もなくビデオ機材や照明機器のレンタル業務も手がけるようになり、1980年代にはポストプロダクション事業もスタート。同社ポストプロダクション部所属の筒井靖氏によれば、1985年の本社ビル新設を機に、ポストプロダクション事業を本格化させるようになったという。
「本社ビルは、1階が機材レンタル、3階が撮影スタジオ、5階が映像編集室、6 階が映像編集室とMA ルーム、7階がレコーディング・スタジオという構成になっていて、撮影から映像編集、MA、さらには音楽制作に至るまで、映像コンテンツの制作がワン・ストップで完遂できてしまうのが大きな特色となっています。手がけている仕事は、CMや企業さんのPRが8〜9割を占めています。製品紹介や会社紹介のビデオですね。CMと言っても、昔はテレビがほとんどだったのですが、最近はWebが多くなっています。最近は自分たちで映像編集されるお客様も増えてきたので、MA やカラコレ、合成、フィニッシングだけを弊社に依頼されるパターンも増えていますね」
📷株式会社三和映材社 ポストプロダクション部 サウンド・エンジニア 筒井 靖 氏
本社ビル内の施設は、映像編集室が3部屋(Autodesk Flame ×2、Adobe Premiere Pro ×1)、MAルームが2部屋、レコーディング・スタジオが1部屋という構成で、その他に別館にもボーカル・ダビングなどに使用できるコンパクトなスタジオが用意されているとのこと。2部屋あるMAルームは、フラッグシップの『A1』が5.1chサラウンドに対応、今回リニューアルが実施された『A2』はステレオの部屋で、どちらも1985年、ビルが竣工したときに開設されたという。
「音響設計は、日東紡さん、現在の日本音響エンジニアリングさんにお願いしました。ルーム・アコースティックは基本開設時のままで、その後は痛んだファブリックを張り替えたくらいですね。機材に関しては、『A1』はAMEK AngelaとStuderの24トラック・マルチの組み合わせでスタートし、1993年に卓を7階のレコーディング・スタジオで使用していたSSL 4000Eに入れ替えました。現在の卓は2006年に導入したSSL C300で、かなり年季が入っていますが、今年に入ってからフル・メンテナンスしたので今のところ快調に動いています。
一方の『A2』は、当初は選曲効果の仕込みで使うような部屋だったので、最初はシグマのコンパクト・ミキサーが入っていたくらいでした。その後、『A1』に4000Eを入れたタイミングで、現在のDAWの先駆け的なシステムであるSSL Scenariaを導入し、本格的なMAルームとして運用し始めたんです。Scenariaは、関西一号機のような感じでしたが、映像もノンリニアで再生できる革新的なシステムでしたね。Avid Pro Toolsを導入したのは2006年のことで、『A1』と『A2』に同時に導入しました。『A2』のメイン・コンソールは引き続きScenariaで、Pro Toolsはエディターとして使うという感じでした。映像は、ソニーのDSR-DR1000というディスク・レコーダーを9pinでロックして再生するようになったのですが、あれはワーク上げしながら再生できる画期的なマシンでした。その後、いい加減Scenariaも限界がきたので、2010年にヤマハ DM2000に更新した経緯です。」
S4は使い慣れたARGOSY製デスクに収納
📷もともとはDM2000用として設置されていたARGOSY製のスタジオ・デスクをサイド・パネルを取り外すことで使用。今回導入したAvid S4がきれいに収められた。
そして今年5月、三和映材社はMAルーム『A2』のリニューアルを実施。Pro Tools周りを刷新し、オーディオ・インターフェースとしてAvid Pro Tools | MTRXを新たに導入、長らく使われてきたDM2000はAvid S4に更新された。筒井氏によれば、約2年ほど前にリニューアルの計画が持ち上がったという。
「一番のきっかけは、Pro Tools周りとDM2000の老朽化ですね。弊社の仕事は修正 / 改訂が多いので、どちらの部屋でも作業ができるように、Pro ToolsやOSのバージョンをある程度揃えるようにしているんです。しかし以前『A2』に入っていたMac Proがかなり古く、それが足枷になってPro Toolsをバージョン・アップできないという状態になっていたんですよ。せっかくPro Toolsは進化しているのに、互換性を考慮してバージョン・アップせず、その恩恵を享受しないというのはどうなんだろうと。それでDM2000もところどころ不具合が出ていたこともあり、約2年前からリニューアルを検討し始めました」
DM2000に替わる『A2』の新しいコントロール・センターとして選定されたのが、16フェーダーのS4だ。S4は、CSM×2、MTM×1、MAM×1というコンフィギュレーションとなっている。
「作業の中心となるPro Toolsが最も快適に使えるコンソールということを考え、最終的にS4を選定しました。DM2000やC300のようなスタンドアローン・コンソールには、何か“担保されている安心感”があって良いのですが(笑)、最近はPro Toolsがメインになっていましたので、もはやコンソールにこだわることもないのかなと。一時期はコンソールをミックス・バッファー的に使っていたこともあるのですが、次第にアウトボードすら使わなくなり、完全にPro Toolsミックスになっていましたからね。
ただ、唯一心配だったのがコミュニケーション機能とモニター・セクションだったんです。以前、ICON D-Controlシステムで作られたセッションを貰ったときに、モニターを作るためのバスがずらっと並んでいたことがあって、そういった部分までPro Toolsで作らなければならないのはややこしいなと(笑)。しかしPro Tools | MTRXの登場によって、コミュニケーションとモニター・コントロールというコンソールの重要な機能をPro Toolsとは切り離して実現できるようになり、これだったらコントロール・サーフェスでもいいかなと思ったんです。Pro Toolsで行うのは純粋な音づくりだけで、環境づくりはPro Tools | MTRXがやってくれる。今回のシステムを構築する上では、Pro Tools | MTRXの存在が大きかったですね。
コントロール・サーフェスを導入するにあたり、S6やS1という選択肢もあったのですが、最終的にS4を導入することにしました。Dolby AtmosスタジオであればS6がマストだと思うのですが、ここはステレオの部屋ですし、機能的にそこまでは必要ありません。ただ、この部屋にはクライアントさんもいらっしゃるので、ホーム・スタジオのような見栄えはどうだろうと思い(笑)、S1ではなくS4を選定しました」
📷長らく使われてきたDM2000はAvid S4に更新
S4は、ARGOSY製のスタジオ・デスクに上手く収められている。このデスクは以前、DM2000用を収納して使用していたものとのことで、サイド・パネルを取り外すことで、きれいにS4が収まったという。
「予算の問題もありましたし、S4を設置するデスクをどうするか、ずっと悩んでいたんです。しかしあるときふと、DM2000のデスクにS4が収まるかもしれないと思って。実際、板を1枚抜いて、少しズラすだけできれいに収まりました。奥行きや高さは微妙に合わなかったのですが、そういった問題はコーナンで買ってきた板を敷き詰めることでクリアして(笑)。このARGOSYのデスクは、手前のパーム・レストが大きくて作業がしやすく、とても気に入っています。Macのキーボードも余裕を持って置くことができますしね。
S4の構成に関しては、8フェーダーだと頻繁に切り替えなければならないので、最低16フェーダーというのは最初から考えていたことです。ディスプレイ・モジュールは付けようか悩んだのですが、あれを入れるとPro Toolsのディスプレイを傍に置かなければなりませんし、最終的には無しとしました。各モジュールの配置は、16本のフェーダーに関しては分散させずに集約し、右側がトランスポート・コントロール、左側がフェーダーという隣の部屋のC300のレイアウトを踏襲しています」
📷システムの環境構築に大きく貢献したというAvid Pro Tools | MTRX。
『A2』のPro Toolsは1台で、Intel Xeonを積んだMac ProにHDXカードを1枚装着したシステム。オーディオ・インターフェースとなるPro Tools | MTRXも、ADカードとDAカードが1枚ずつのミニマムな構成で、MADIカードやSPQカードなどは装着していないという。
「音響補正はGenelecの『GLM』でやっているので、SPQカードが入っていない初代のPro Tools | MTRXがちょうど良いスペックでした。VMC-102のようなモニター・コントローラーを導入しなかったのは、ここはステレオのスタジオなので、複雑なモニター・マトリクスが必要ないからです。その代わり今回、カフをスタジオイクイプメント製の新しいものに入れ替えました。映像はPro Toolsのビデオ・トラックで再生し、Blackmagic Design DeckLink 4K Extremeで出力しています。Pro Toolsの現行バージョンは、いろいろなビデオ・フォーマットを再生できるので、ビデオ・トラックでもまったく不自由はありません。2面あるディスプレイは、単にミラーリングしているだけで、右側でアシスタントが編集したものを、左側のぼくがバランスを取るという役割分担になっています。それと今回、ROCK ON PROさんからのご提案でUmbrella CompanyのThe Fader Controlを導入したのですが、これが入力段にあるだけでコンソールのように録音できるので助かっています。録りのレベルも柔軟に調整することができますし、とても気に入っている機材です」
📷S4の脇に備えられたのはUmbrella Company / The Fader Controlだ。
8331AとPro Tools | MTRXをデジタルで接続
今回のリニューアルでは、ニア・フィールド・スピーカーも更新。長らく使用されてきたGenelec 8030AがThe Ones 8331Aにリプレースされた。筒井氏によれば、8331AとPro Tools | MTRXは、AESでデジタル接続されているという。
「ニア・フィールド・スピーカーは、以前はヤマハ NS-10Mを使用していたのですが、2006年にScenariaを使うのを止めたタイミングでGenelecに入れ替えました。Genelecのスピーカーは、聴き心地の良さと、スタジオ・モニターとしての分かりやすさの両方を兼ね備えているところが気に入っています。
今回、The Onesシリーズを導入したのは、別館のレコーディング・スタジオで8331A を使用していて、何度かこの部屋で試聴してみたところ、もの凄く良かったからです。なのでスピーカーに関しては、スタジオのリニューアルを検討し始めたときから、絶対に8331Aにしようと考えていました。8331Aは、8030Aよりも定位がさらにしっかりして、音の粒立ちが良くなったような気がしますね。それと同軸設計のスピーカーではあるのですが、サービス・エリアの狭さを感じないところも良いなと思っています。同軸スピーカー特有の、サービス・エリアを外れた途端に音がもやっとしてしまう感じがないというか。もちろん『GLM』も使用していて、あの機能を使うと“しっかり調整されている”という安心感がありますね(笑)。『GLM』は、左右同一のEQか個別のEQが選べますが、両方試してみたんですけど、今は左右同一のEQで使っています。
今回、8331AとPro Tools | MTRXをデジタルで接続したのは、余計なものを挟まずにピュアな音にこだわりたかったからです。隣の部屋も、C300からヤマハ DME24Nを経由して、Genelecにデジタルで接続しているのですが、その方が安定している印象があります」
今年5月にリニューアル工事が完了したという新生『A2』。完成翌日からフル稼働しているとのことで、その仕上がりにはとても満足しているという。
「皆さんのおかげで、イメージどおりのスタジオが実現できたと大変満足しています。でも、まだ改善の余地が残っていると思うので、さらに使いやすいスタジオになるように、細かい部分を追い込んでいきたいですね。新しいS4に関しては、HUIモードのDM2000とは違ってPro Toolsに直接触れているような感触があります。画面上のフェーダーがそのまま物理フェーダーになったような感覚というか。それとアシスタントがナレーションのノイズを切りながら、こちらではEQを触ったり、2マンでのパラレル作業がとてもやりやすくなりました。今回は思い切ることができませんでしたが、イマーシブ・オーディオにも興味があるので、今後チャンスがあれば挑戦してみたいと思っています。」
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Music
2023/12/21
TOA ME-50FS / スピーカー原器、その違いを正確に再生できる装置を
長さを測るためには、その長さの基準となるメートル原器と呼ばれる標準器が必要。重さを測るのであれば同様にキログラム原器が必要となる。では、スピーカーにとっての基準、トランスデューサーとしての標準はどこにあるのか?そのスピーカーの標準器を目指して開発されたのがTOAのME-50FSだ。非常放送用のスピーカー、駅のホームのスピーカーなど生活に密着した音響設備を作るTOAが、これまでの知識と技術をすべてを詰め込んで作り上げた究極のアナログ・スピーカーである。1dB、1Hzの違いを聴き分けられるスピーカー、その実現はデジタルではなく、むしろアナログで開発しないと達成できないことであったと語る。そのバックグラウンドとなるさまざまな基礎技術、要素技術の積み上げはどのような現場で培われたのだろうか?そして、その高品位な製品はどのように作られているのか?研究開発拠点であるナレッジスクエアと、生産拠点であるアコース綾部工場に伺ってその様子をじっくりと確認させていただいた。
TOA ME-50FS
価格:OPEN / 市場想定価格 ¥2,000,000(税込:ペア)
・電源:AC100V
・消費電力:30W
・周波数特性:40Hz~24kHz (-6dB)
・増幅方式:D級増幅方式
・エンクロージャ形式:バスレフ型
・使用スピーカー 低域:10cm コーン型×2 高域 : 25mmマグネシウムツイーター
・アンプ出力:250W
・アンプ歪率:0.003%
・最大出力音圧レベル:104dB
・仕上げ:木製(バーチ合板) ウレタン塗装
・寸法:290(幅)× 383(高さ)× 342(奥行)mm( 突起物除く)
・質量:約15kg(スピーカー本体1台の質量)
実は身近に必ずあるTOA製品
皆さんはTOAという会社をご存知だろうか?日本で暮らしているのであれば、TOAのスピーカーから出た音を聴いたことが必ずあるはずだ。駅のホーム、学校の教室、体育館、あなたの働いている会社の非常放送用のスピーカーもTOAの製品かもしれない。まさに生活の一部としてさまざまな情報を我々に音で伝えるためのスピーカーメーカー、それがTOAだ。
TOAの創業は、1934年と国内では老舗の電機メーカーである。創業時の社名は東亜特殊電機製造所。神戸に誕生し、マイクロフォンの製造を手掛けるところからその歴史はスタートしている。マイクロフォンと言っても現在一般的に使われている形式のものではなく、カーボンマイクロフォンと呼ばれる製品だ。これは世界で初めてエジソンが発明したマイクロフォンと同じ構造のものであり、黒電話など昔の電話機に多く使われていた形式である。周波数特性は悪いが、耐久性に優れ高い感度を持つため1980年代まで電話機では普通に使われていた。現在でも電磁波の影響を受けない、落雷の影響を受けない、低い電圧(1V程度)で動作するなどの特長から可燃物の多い化学工場や軍事施設など一部のクリティカルな現場では現役である。
このマイクロフォンは、その名の通り、カーボン(炭素)を必要とする製品である。時代は戦時中ということもあり、良質なカーボンを入手することが難しく、なんと砂糖を焼いてカーボンを作ったという逸話が残っている。要は砂糖を焦がした炭である。砂糖が贅沢品であった時代に、この工場からは一日中甘い匂いがしていたそうだ。
次に手掛けたのが、拡声装置。中でも「東亜携帯用増幅器」は、小型のトランクケースに増幅器とスピーカーを内蔵し、持ち運びのできる簡易拡声器として人気があったそうだ。他にもレコード録音装置などさまざまな音響製品を生み出していった同社だが、中心となったのは、拡声装置(アンプとスピーカー)であり、その専業メーカーとして発展をしていく。拡声装置のスピーカーとして当時使われていたのが、ホーン型のスピーカー。ドライバーユニットに徐々に広がる筒、ストレートホーンを取り付けたものである。この筒の設計により、特定の周波数の音を大きく、遠くまで指向性を持たせて届けることができるという特徴を持っている。
TOAが大きく発展するきっかけとなったのがこのホーンスピーカー。現在一般的に使われているホーンスピーカーは、リスニング用途の半円錐状のものを除けばほとんどが折り返し式ホーン。メガホンや、拡声器、選挙カーの屋根などについているものがそれである。この折り返し式ホーンはレフレックストランペットとも呼ばれる。ストレートホーンを折りたたんだ構造をしているため、全長を短くすることができ、さらにはドライバーユニットが奥まった位置にあるため防滴性能を獲得、屋外で使うにあたり優れた特徴を持っている。
このトランペットスピーカーは戦後の急速な復興に併せて大きな需要があった。同社は、黒や灰色の製品ばかりのこの市場に鮮やかな青く塗られたトランペットスピーカーを登場させ、その性能の高さも相まって高い人気を博した。青いトランペットをトレードマークに「トーアのトランペット」「トランペットのトーア」と呼ばれるまでに成長を遂げる。 1957年には、世界初となるトランジスターメガホンを発売。女性でも一人で持ち運べる拡声器としてエポックメイキングな製品となった。旅行先などでガイドさんが使っているのを記憶している方も多いのではないだろうか。いまでも、選挙の街頭演説などで見かけたりするメガホンのルーツが実は「トランペットのトーア」にある。
積み重ねた技術を音響の分野へ
1964年の東京オリンピックでは、全面的にトーアのスピーカーが使われた。東京オリンピックの開会式では世界で初めてトラック側から客席に対してPAするということが行われ、当時主流であった観客後方となるスタジアムの外側からではなく、客席に対して正対する方向からのPAは高い評価を受けた。これには、プログラムの演目に合わせてスピーカーを3分で移動させなければならない、など影の努力がかなりあったとのこと。スポーツ関連はこれをきっかけに国内のさまざまな競技場への導入が進み、お膝元である阪神甲子園球場やノエビアスタジアム神戸をはじめ全国各地でTOA製品が採用され、海外でもウィンブルドンのセンターコートなど数多くの採用実績を誇る。まさにPA=公衆拡声の技術力の高さを感じるところ。遠くまで、多くの人に明瞭な音を届ける。これを実践しているメーカーであると言えるだろう。
また、神戸のメーカーということもあって1970年の大阪万博開催の際には各所で「音によるおもてなし」を行う自動放送システムなど多くの新技術がお披露目された。この自動放送システムは、1975年の京成電鉄成田駅を皮切りに全国への導入が進んでいく。当時は、高価だったメモリーを使ったシステムでサンプラーの原型のようなものを作り、プログラム動作させていたということ。現在、駅で当たり前に流れてくる自動音声による案内放送のルーツとなるものだ。
1985年ごろからは、コンサート用のPAスピーカー、ライブハウスやディスコなどに向けたPAシステムも手掛けるようになる。これまでの「多くの人に明瞭な音を伝える」ということに加えて音質、音圧、さらには、長時間駆動しても壊れない耐久性を持った製品を開発していくことになる。ツアースピーカーには「Z-Drive」という名前が与えられ、大規模なライブ会場や屋外イベントで使われるようになる。そして、さまざまな現場に導入されるスピーカーのチューニングを行うために、世界初となるDSPを使ったサウンドデジタルプロセッサー「SAORI」を誕生させる。
この当時デジタルエフェクターは登場していたが、イコライザーやディレイ、コンプレッサーなどでサウンドチューニングをするためのデジタルプロセッサーはTOAが世界で最初に製品化をしている。このプロセッサーは主に設備として導入されるスピーカーの明瞭度を上げるためのチューニングに使われており、今では当たり前になっているDSPによるスピーカーチューニングの原点がここにある。デジタルコンソールに関しても1990年にix-9000というフルデジタルコンソールをウィーン国立歌劇場のトーンマイスターたちとともに作り上げた。音楽という芸術を伝え、楽しむためのスピーカー、そういった分野へのチャレンジも行われてきたことがわかる。
そして、TOAの中心となるもうひとつの分野が非常用放送設備。火災報知器に連動して室内にいる人々に警告を発したり、業務用放送を非常放送に切り替えたりという、国内では消防法で定められた多くの公共空間に設置されている設備である。人の命を守る音、「聞こえなかった」ということが人命に関わる重要な設備だ。今回お話を伺った松本技監が、「TOAの作る音は音を楽しむ(音楽)ためのものではなく、人の命を守る「音命(おんみょう)」だと再三に渡り言われていたのが印象的。耐火、耐熱性を持たせたスピーカーの開発、アンプ等の放送設備の耐久性・堅牢性へのこだわり、そのようなクリティカルな現場で培われた製品の品質、人命という何よりも重いものを預かる使命に基いた製品の製造を行ってきたということがTOAのもう一つの顔である。
TOA製品に息づくスピリット
さまざまな分野へのチャレンジスピリット、そして非常用設備に始まる失敗の許されない現場への製品供給、そんな土台があったからこそオリンピックや万博などでの成功があったと言える、まさに設備音響としてのトップブランドの一つである。そのチャレンジスピリットを象徴するものとして「超巨大PA通達テスト」についてのお話を伺えた。
音を遠くまで届けるということは、一つのテーマである。その実験のために、口径3メートル、全長6.6メートルという巨大なストレートホーンを製作。巨大なアンプとドライバーにより、音をどれほど遠くまで届けることができるかをテストした。もちろん街中では行うことができないため、いま明石海峡大橋があるあたりから淡路島に向けて実験を行ったということだから驚きだ。おおらかな時代でもあったということもあるが、対岸の淡路島の海岸線沿いにスタッフを配置し、どこまで聴こえているかを試したということだ。もう一回は、比叡山の山頂から琵琶湖に向けてのテストがあったとのこと。この際も琵琶湖の湖畔でどこまで音が聴こえるかを試したということだ。そのテスト結果はなんと最長到達距離12km!もちろん、風などの影響も受ける距離となるが、このような壮大な実験を国内で行ってしまう先達の技術者による挑戦に感銘を覚える。
写真撮影は許可されなかったが、クリティカルな現場に向けて行われる製品テスト用設備の充実度はさすがの一言。基本的に耐久テストは、壊れるまで行うということを基本に、実際の限界を確認しているということだ。電力に対する負荷テストはもちろん、現代社会にあふれる電波、電磁波に対する試験を行うための電波暗室、物理的な耐久性を確かめるための耐震テスト、真水や塩水を製品にかけ続ける耐水、耐塩水テストなど、本当にここは電気製品を作っているところなのかと疑うレベルのヘビーデューティーな試験施設が揃っていた。
これも「音命」に関わる重要な設備、肝心なときに期待通りの動作が求められる製品を作るための重要な設備である。筆者も初めての体験だったが、電波暗室内では外部からの電磁波を遮断した状況下で、製品に電子銃で電波を当ててその動作を確認している。これは対策が脆弱な一般レベルの電子機器であれば動作不良を起こす状況で、どこまで正常動作を行えるか?影響の少ない設計にするにはどうすればよいか?昨今話題になることの多いEMS障害などへの影響を確認しているということだ。また、この実験設備の一室には工作室があり、用意された木工、金属加工などさまざまな工具で製品のプロトタイプは自分たちで作るという。まず、自らの手による技術と発想で課題解決に挑戦するという文化がしっかりと残っており、このような姿勢はTOAすべての製品に息づいているということだ。
スピーカー原器を作ろうという取り組み
東亜特殊電機製造所からスタートし、現在ではTOAとして国内の非常用放送設備のシェア50%、公共交通機関の放送設備や設備音響のトップブランドとなった同社が、なぜここに来てリファレンスモニタースピーカーを発表したのだろうか?もちろん、Z-Driveというコンサート向けのPAシステム、ウィーン歌劇場に認められたフルデジタルコンソールix-9000など伏線はあったものの、これまで、リスニング用・モニター用のスピーカーはリリースしてこなかった。
色々とお話を伺っていくと、TOAでは社員教育の一環として「音塾」というものを実施しているということだ。ここでは、社員に音に対する感性を養ってもらうためのさまざまなトレーニングを行い、1dBの音圧の違いや1Hzの周波数の違いを聴き分けられるようになるところまで聴覚トレーニングを行っているという。
ここで問題となっていたのが、人はトレーニングをすることで聴覚を鍛えることができるのだが、その違いを正確に再生できる装置がないということだ。物理的、電気的、さまざまな要因により、スピーカーには苦手な再生周波数や出力レベルが存在する。わかりやすいところで言えば共振周波数や共鳴周波数による影響である。もちろんそれだけではなく、他にもさまざまな要因があり理想とする特性を持ったスピーカーがない。そこで作り始めたのがこのME-50FSの原型となるプロトタイプの製品。まさに標準器となるスピーカー原器を作ろうという取り組みである。
デジタルの第一人者によるフルアナログ
📷右より3人目がこのプロジェクトの中心人物の一人となる松本技監。
このプロジェクトの中心人物の一人が今回お話をお伺いした松本技監。TOAの歴史の中で紹介した世界初のDSPを用いたサウンドデジタルプロセッサー「SAORI」やツアースピーカー「Z-Drive」を開発した中心人物の一人で、音声信号のデジタル処理やスピーカーチューニングに関する第一人者とも言える方である。この松本技監が究極のスピーカー製作にあたり採用したのがフルアナログによる補正回路である。デジタルを知り尽くしているからこそのデジタル処理によるデメリット。そのまま言葉を借りるとすれば「デジタル処理は誰もが簡単に80点の性能を引き出せる、しかしそれ以上の点数を取ることができない」ということだ。
デジタルとアナログの大きな違いとしてよく挙げられるのが、離散処理か連続処理か、という部分。デジタル処理を行うためには、数値でなければデジタル処理できないということは皆さんもご理解いただけるだろう。よって、必ずサンプリングという行程を踏んで数値化する必要が絶対的に存在する。しかし、連続性を持った「波」である音声を時間軸に沿ってスライスすることで数値化を行っているため、どれだけサンプリング周波数を上げたとしても「連続性を失っている」という事実は覆せない。ほぼ同等というところまではたどり着くのだが、究極的なところで完全一致はできないということである。
もう一つはデジタル処理が一方通行であるということだ。ご存知かもしれないが、スピーカーユニットは磁界の中でコイルを前後に動かすことで空気振動を生み出し音を出力している。このときに逆起電流という現象が発生する。動いた分だけ自身が発電もしてしまうということだ。これにより、アンプ側へ逆方向の電流が流れることとなる。デジタル処理においては逆方向のプロセスは一切行われない。しかしアナログ回路であれば、逆方向の電流に対しても適切な回路設計を行うことができる。
通常のスピーカー設計では影響のない範囲として捨て置くような部分にまで目を向け、その設計を突き詰めようとした際にどうしてもデジタルでは処理をしきれない領域が生まれる。ME-50FSでは、このようなことをすべて解決させるためにフルアナログでの設計が行われているわけだ。DSPプロセッサーの生みの親とも言える松本技監がフルアナログでの回路設計を行うということで、松本氏をよく知る仲間からは驚きの声が聞かれたそうだ。しかしその裏には、デジタルを知り尽くしているからこそのアナログであるという徹底したこだわりがある。デジタル処理ではどうしてもたどり着けない限りなく100点に近い、理想の性能を追い求めるための究極とも言えるこだわりが詰まっている。
こんなことをしている製品は聞いたことがない
ME-50FSにおける設計思想は「スピーカーユニットをいかに入力に対して正確に動かすか」という一点に集約されている。低域再現などにおいて38cmウーハーなど大型のユニットが使われることも多いが、動作させる質量がサイズに比例して大きくなってしまうためレスポンスに優れなくなってしまう。動作する物体の質量が多ければそれだけその動きを止めるための力が必要ということだ。この問題に対してME-50FSでは10cmという小さなスピーカーユニットを採用することにした。口径は小さくしたものの、一般的な製品の3倍程度のストロークを持たせることでその対策がとられている。その低域の再生に抜かりはなく、バスレフ設計のエンクロージャーの設計と合わせて、40Hz(-6dB)という10cmユニットとしては驚異的な低域再生能力を獲得している。スピーカーユニットの質量を減らすことで理想に近い動作を実現し、ストロークを稼ぐことで正確な空気振動を生み出している。
これを実現するためのスピーカーユニットは、後述する自社工場であるアコース綾部工場で製造される。スピーカーユニット単品からコイルの巻数など、微細な部分まで専用設計にできるのが国内に工場を持つメーカーとしての強みである。さらに、専用設計となるこのスピーカーユニットは、実際にスピーカーユニット一つ一つの特性を測定しシリアルナンバーで管理しているということだ。大量生産品では考えられないことだが、ユニットごとの微細な特性の差異に対してもケアがなされているということだ。究極のクオリティを求めた製品であるというエピソードの一つである。修理交換の際には管理されたシリアルから限りなく近い特性のスピーカーユニットによる交換が行われるということ。こんなことをしている製品は聞いたことがない。
理想特性を獲得するための秘密兵器
この製品の最大の特徴となるのが各スピーカーに接続されたボックス。ここにはアナログによるインピーダンス補正回路が組み込まれている。話を聞くとアンプからの入力信号に対して、シンプルにパラレルで接続されているそうだ。まさにフルアナログでの理想特性を獲得するための秘密兵器がここである。アナログ回路であるため、中を覗いても抵抗、コンデンサー、コイルがぎっしりと詰まっているだけであり特別なものは一切入っていない。この回路によってME-50FSは理想的な位相特性、インピーダンス特性を獲得しているのだが、そのパーツ物量は一般的なスピーカーのそれを完全に逸脱している。「インピーダンス補正回路」とTOAが呼ぶこのボックスは、過去の試作基板と比べるとかなり小さくなっているそうで、実際にナレッジスクエアで見せてもらったのだが、4Uのサーバーか?と思わせるような巨大なものであった。ステレオ2ch分の回路が入っているからということではあったが、それにしても大きい。
📷ME-50FSの最大の特徴とも言えるインピーダンス補正回路のプロトタイプ。左右2ch分が一つのボックスに収まっている。これを上写真の赤いボックスにまでサイズダウンして現在の形状に収めている。
「インピーダンス補正回路」の内部のパーツはフルアナログということもあり、前述の通り抵抗、コンデンサー、コイルである。そしてそれぞれのパーツは理想の特性を求めるために吟味を重ねたもの。わかりやすく言えば、コイルは理想の数値を持ったワンオフで自社制作されたもの。抵抗は耐圧の高いメタルクラッド抵抗で、抵抗が特定の周波数以上で持つインダクタンスの影響がスピーカーとして出ないよう無誘導巻のものを用い、大入力に耐えるため熱容量に余裕のある大型のものが使われている。また、コイルは磁界を発生させるため、それらが相互に影響を及ぼさないように基板上の磁界にまで気を配り、縦横、一部のパーツは高さを変えて各パーツを配置。この結果、完全に手作業での製作となることは目に見えているが、究極のスピーカーを作るためには必要なことだというのがスタンスだ。
こういったポイント一つ一つ、すべてにおいてエビデンスのある技術を採用している。オーディオ業界においては非常に多くのプラシーボが存在しているが、良くも悪くも感覚的なものが多くを占める聴覚に頼ったものだからこその出来事。それを楽しむのも一興ではあるのだが、メーカーとして究極を追い求める際にそれらプラシーボは一切排除しているということだ。すべての設計、パーツの取付一つにおいても、すべてにおいて裏付けのある理由があり、必要であればそのエビデンスも提供できるようになっているということである。
スピーカーとしての完全体
こだわりの結晶体とも言えるこのスピーカー。そのポイントを挙げ出したらきりがないのだが、もう一つだけ紹介しておこう。「インピーダンス補正回路」とスピーカー本体を接続するケーブル。これもケーブル自体の持つインダクタンスの値を計算し、スピーカー内部でパラレルに接続される箇所までの長さをミリメートル単位で計算してケーブル長が決められている。設置しやすいように、などという発想ではなくエビデンスに基いた理想の長さということで設計が行われている。
内蔵されるパワーアンプはClass Dのものが採用されている、これも理想の特性を追い求めて選択されたものだ。このClass Dアンプモジュールの選定においても、TOA社内専門家による技術評価および各種測定、耐久力試験に加え、長期間の運用及び試聴評価を経て厳選されたものが使われている。ME-50FSでは、ひとつの理想のパッケージとしてパワーアンプを内蔵としているが、ユーザーにも少しの遊びを許しているポイントがある。それが、スピーカー背面にあるスピーカーI/O端子。Lineレベルの入力であれば、内臓のパワーアンプを介してスピーカーが駆動されるのだが、内蔵のパワーアンプを切り離し、外部のパワーアンプからの入力も持っているということだ。パワードスピーカーとしてはかなり珍しい設計ではないだろうか?
これこそ、このスピーカーに対する自信の現れとも言える。メーカーとしての完全なるパッケージとしての究極は、もちろん内蔵アンプであることは間違いない。しかし、外部アンプの入力を受け付けるということは、外部アンプが持つ実力を100%引き出せる「測定器」としての側面を持つスピーカーであるということでもある。一般的なパワードスピーカーではユニットの特性を補正するためにアンプ自体の出力に癖を持たせるということは少なくない。完全アナログで仕立てられたME-50FSは、どのような入力が来たとしても完全に理想的な動作をするという「スピーカーとしての完全体」を体現しているのである。
アコース綾部工場
TOAの国内の製造拠点であるアコース綾部工場。すでに大量生産品はインドネシアの工場に移行しているが、ハイエンド製品、少量生産品などは国内でひとつずつ手作業で作られている。アコース株式会社はTOA株式会社のグループ企業で、プロオーディオ機器の開発、設計、生産、出荷までを行っている。綾部工場は木工加工を中心にプロオーディオ機器を生産する拠点。もう一つの米原工場は、エレクトロニクス、電子回路などの生産を行っている。2つの工場双方ともに多品種小ロットの生産に適した工場である。
・Made in Japan!日本のものづくり
綾部工場は、京都府の綾部市にある。明智光秀で一躍有名になった福知山市の隣町で旧丹波国となる。もう少し行けば日本海に面した若狭湾、舞鶴港というあたりで、大阪から100km圏であり舞鶴若狭道で1時間強で行くことができる場所。実際のところかなりの田園風景が広がっているのだが、高速が通ってからは工業団地ができたりとそれなりの発展もしている街である。完全に余談ではあるが筆者の出生地はこの綾部市であり馴染みの深い土地である。
このアコース綾部工場は、木工加工を中心とした生産拠点ということでスピーカーエンクロージャーの生産がその中心となる。まずは、その木工加工の現場を見せていただいた。切り出し用のパネルソーや多品種小ロットの生産のためとも言えるNCルーター。多軸、かつデュアルヘッド仕様なので、複雑な加工をスピーディーに行うことができる。プログラムを読み込ませて専用の治具に材木をセットすれば、複雑化形状もあっと言う間に削り出していく。設計で想定した通りの材料がここで切り出されることとなる。
切り出された材料は塗装工程へと回される。長いレールにぶら下げられ人の手により塗装が行われる。低温で一度乾燥させた後に一度冷やし、2階部分にある高温の乾燥室へと送られる。やはりスピーカーエンクロージャーの塗装ということで黒に塗ることが多いのだろう、飛散した塗料で黒くなったこの空間は、この工場でも印象的な空間であった。ここでは、特殊塗料による塗装など、やはり小ロット多品種に対応した工程が行えるようになっている。特別色等の特注製作などもこの工場があるからこそ実現できるということだ。
次に見せていただいたのが、スピーカーの組み立ての現場。さすがにコーン紙、フレームなどは別のところで作ったものを持ってきているとのことだが、スピーカーの心臓部とも言えるマグネットとコイルはここで作っている。巨大な着磁機が並び、製品に応じた素材に対して着磁を行いマグネットを作っている。自社で製造できるということは、磁界強度、サイズなども自由自在ということだ。そして、コイルの製作に使うコイル巻き機。アナログなこの機械はどうやら自分たちで手作りしたようだという。生産に必要なものがなければ作ってしまおうという、まさに職人魂が垣間見える。
📷(左上)スピーカーを駆動するための磁石を作るための着磁機。製造する磁石のサイズに合わせ機械がずらりと並ぶ。(右上)ボイスコイルを巻くための専用機械。過去の先達の手作りであろうということだ。(左下)完成したボイスコイル。これが、コーン紙に貼られスピーカーとなる。(右下)スピーカーユニットの組立工程。コーン紙を専用の器具で接着している。
実際にコイルを巻くところを見せていただいたのだが、スピーカーコイル用の特殊な形状の素材が使われていた。一般的な丸い線材ではなく、きしめん状の平たい銅線で巻いた際に固着するようアルコールで溶ける特殊な溶剤がコーティングされている。このきしめん状の銅線にアルコールを湿らせながら巻いていくことで、巻き終わったコイルは筒状のコイルとなる。一つずつ職人が巻いていくことで巻数は自由。ボビンの経を変えたり、線材の太さを変えることでさまざまな形状のボイスコイルを作ることが可能だ。この機械で巻き終わったコイルは、焼入れを行うことで、さらにしっかりと固着されてユニット組立工程へと渡される。ツイーター等のメタルドームもここで一つずつ手作業でプレスして整形されている。さすがにこの板金用の金型は自社製造ではないということだが、製品ごとさまざまな形状の金型がずらりと準備されていた。組立工程では一つずつ専用の治具を使いエッジ、コーン紙の貼り合わせ、ボイスコイルの接着、フレームの取付などが、ひとりの職人の手によって行われる。
次が組み立ての工程。塗装の終わったエンクロージャーにユニット、キャビネットグリル、ネットワーク回路などのパーツを組み込み、梱包までを一気に行っている。大量生産のラインであれば何人もが担当するような作業を、一人でしかも手作業で行っている。多品種小ロットということで、毎日異なる製品を組み立てているのだが、間違いのないように常にマニュアルが開かれ、工程ごとにページを捲りながら作業を進めていた。組み立てられて梱包される前には、もちろんしっかりと所定の性能が出ているかチェックがなされる。これぞMade in Japan!日本のものづくりの現場を見た思いである。
・綾部という地をスピーカー製造の聖地に
整然と整えられたパーツ庫は、言わばTOAプロオーディオ製品の生まれ故郷。常に数万種類のパーツがストックされ、入念な生産計画に沿って生産が行われているということだ。写真を見ていただければわかるのだが、驚くほどこれらの工程に関わる職人は少ない。自動化できるところは機械に頼り、多品種に対応するため複雑な工程では、一人ひとりが多くの工程をこなすことで、少人数による生産を実現している。管理部門も含めた従業員数は28名、まさにプロフェッショナルの集団と言えるだろう。
このアコース綾部工場では、試作機の製造なども行っている。どのようなカスタムパーツも作ることができるこの拠点があるからこそ、TOAではさまざまな試作を繰り返し、クオリティの高い製品をリリースすることができている。そのための実験設備も備わっており、その一つが無響室だ。試作した製品がどのような特性なのか?それを作ってすぐにテストできる環境があるということだ。さまざまなバリエーションの試作機を作り、それをその場で実際にテストして、設計数値が実現できているかを確認する。まさに理想の開発環境と言える。無響室以外にも-20度〜180度までの環境が再現できるという恒温槽による温度変化による特性、耐久性のテストだったりといことも行える設備がある。
ほかにも試聴用の部屋もあり、実際に聴感テストも行っている。取材時はME-50FSのインビーダンス補正回路を設計するときに使ったであろう様々な治具などが置かれていた。そして、この部屋の片隅にはスピーカーコーン紙の共振測定器が置かれていた。スピーカーが振動しているときにレーザーでその表面の動きを測定し、不要な共振がないかを計測する。実際の素材を使っての実際の測定。計算だけではなく実際の製品で測定することによる正確性の追求。さまざまな素材の融合体であるスピーカーユニットであるからこそ必要とされる実地の重要さが感じられる。
TOAのものづくりの拠点、それがこのアコース綾部工場であり、この試作機を作るための理想的な環境があったからこそME-50FSが妥協を一切許さない製品として世にリリースされたのであろう。コイルの巻数一巻きにまで気を配って生産できるこの環境、理想を追い求めるための究極形である。今回ご案内いただいたTOAの皆さんもこの拠点があったからこそME-50FSは完成し、まさにここがME-50FSの故郷であると仰っていたのが印象的。この綾部という地をスピーカー製造の聖地に、その意気込みが実を結ぶのもそう遠くはなさそうだ。
📷(左)アコース綾部工場 (右)左より工場取材にご協力いただいたTOAの藤巴氏、ジーベックの栗山氏、アコース綾部工場の藤原氏、ME-50FSの生みの親とも言えるTOA技監の松本氏。
Studio BEWEST
ME-50FS取材の最後に訪れたのは実際のユーザーである岡山県津山市のレコーディングスタジオBEWESTにお伺いして、実際の使い勝手やその魅力についてをお話いただいた。オーナーの西本氏はバンドマンからレコーディングエンジニアへと転身した経歴を持ち、岡山市内と津山市に2つのスタジオを構える。BEWESTの独自の取り組みなども併せてお届けしたい。
・サウンドを生み出す立場からの目線
📷Stduio BEWEST オーナー兼エンジニア 西本 直樹 氏
岡山市から北へ60kmほどいったところに津山市はある。大阪からも中国道で150kmほどの距離だ。12年前にオープンしたこのスタジオはレコーディングから、ミックス・マスタリングまでをワンストップで行うスタジオとして稼働していたが、岡山市内に3年前に新しくスタジオを立ち上げたことで、今はミックスとマスタリングの拠点として稼働しているということだ。このスタジオの特長は、ビンテージから最新の製品までずらりと取り揃えられたアウトボードやマイクなどの機材。その機材リストの一部をご紹介すると、マイクはビンテージのNeumann U47 TUBE、オリジナルのtelefunken U47、SONY 800G、Chandler REDD Microphone、Ehrland EHR-Mなどビンテージの名機から、現行の製品まで幅広いラインナップを揃える。この選択の源泉はお話を伺っていくとレコーディングへの向かい合い方にあると感じた。
西本氏のルーツはバンドマンである。バンドのレコーディングを行っていく中で機材に興味を持つ。そしてギタリストとしてバンド活動を行っていた西本氏は、インディーズのレコーディング現場での体験で完成した作品の音に対してメジャーとの差を痛感したという。レコーディングのバジェットが違うから仕方がないと諦めるのではなく、その差は何なのか?この部分に興味を持ち、独学でレコーディングを行うようになっていったそうだ。機材が違うのであれば、同じものを使えば同じクオリティーになるのか?マイクは?マイクプリは?独学でどんどんと掘り下げていき、気が付いたらスタジオを作っていて日本中からレコーディングの依頼を受けるようになっていたということだ。
お話を聞いているとエンジニアとしてスタジオで経験を積んだ方とは、やはり視点が異なることに気付かされる。ミュージシャンの視点で、自身の音がどのような音なのかをしっかりと認識した上で、それがどのような音としてレコーディングされ作品になってほしいか?あくまでもサウンドを生み出す立場からの目線を貫いている。そのため、音がリアルなのか、なにか変質してしまっているのか?そういったところに対して非常に敏感であり、常に一定の音に対しての物差しを持って向かい合っているエンジニアである。
・「このまま置いていってほしい」
その西本氏とME-50FSの出会いはInterBEE 2022で話題になっていたことがきっかけだとのこと。興味を抱いた西本氏がすぐに問い合わせしたところ、TOAは岡山市内のスタジオまでデモ機を持ってきてくれたそうだ。ちょうど、岡山のスタジオでウェストキャンプ@岡山というローカルのエンジニアを日本中から集めた勉強会のようなイベントを予定していたそうで、集まった10数名のエンジニアと試聴を行うことができた。その場にいた全員が強いインパクトを受け、この製品の魅力を体感したということ。やはり雑多なInterBEEの会場ででも聴こえてきたインパクトは本物であり、スタジオでの試聴でもその印象は大きく変わらなかったということだ。その後、ミックス・マスタリングをメインで行っている津山のスタジオで改めてじっくりと試聴。改めて聴き直してもその最初に感じたインパクトは変わらず購入を即決したという。すぐにでもこのスピーカーで作品づくりをしたいという思いが強くなり「購入するので、このまま置いていってほしい」とお願いしたほどだそうだ。
ちなみに、それまでメインで使っていたスピーカーは、Focal Trio11。このスピーカーは今でも気に入っているということだが、ME-50FSとの違いについてはセンター定位のサウンドのアタック感、サスティンの見え方、音の立ち方、減衰の仕方などがはっきりと見える点。これは位相が改善していくとセンター定位がどんどんとはっきりしていくという位相感の良さからくるものだろう。ME-50FSの狙い通り、といった部分を直感的に感じ取っている。
・標準器となるサウンドの魅力
ME-50FSの導入により作業上大きく進化したことがあったそうだ。スタジオではマスタリングまでのワンストップで制作を行っているため、スタジオで作られた音源をさまざまな場所、車内や他のスピーカー環境、ヘッドフォン、イヤフォンなどで違いが出ないかを確認する作業を行っている。やはり、リスニング環境により多少の差異が生じるのは仕方がないが、イメージそのものが異なってはいないか?という部分にはかなり神経を使って仕上げているとのこと。これまでのスピーカー環境では、少なからず修正、微調整の必要があったとのことだが、ME-50FSで作業を行うようになってから、この修正作業がほとんどなくなったということだ。究極の標準器を目指して開発されたME-50FSのポテンシャルを言い表すエピソードではないだろうか。フラットである、位相変化がないということは音に色がついていないということである。そのため、他の環境であったとしてもその環境の色がつくだけで、色自体が変化するということにはならないということではないだろうか。
ほかにもサウンドとしての魅力は、奥行き感、前後の距離感、立体感などを強く感じると言う点にあるという。やはり、位相の良さ、トランジェントの良さがここには大きく影響していると感じるところだとお話いただいた。製品開発にあたりTOAがコンセプトとした部分が実際のコメントにも現れている。開発コンセプト、TOAの目指した標準器としてのサウンドが気に入った方であれば「これしかない」と思わせる実力を持った製品であると言える。
トランジェントが良い、ということは音の立ち上がりが良い、サスティンの余韻が綺麗に減衰するなどといった部分に効果的だ。これを実現するためにTOAでは10cmという小口径のユニットを採用し、ロングストローク化して最低限となる質量のユニットを使い正確にユニットを動かすということでその改善にあたっている。動き出しの軽さ、正確なユニット動作の入力に対するレスポンス。そういったことを考えるとやはりユニット自体の質量は少ないに越したことはない。打楽器などのアタック感も確実に改善しているのだが、このトランジェントの良さを一番感じるのはベースラインだという。高域に関しては他社のスピーカーもトランジェントを突き詰めているが、低域は大口径のユニットを使うため物理的に対処できないところがある。ME-50FSでは、小口径のユニットでその帯域をカバーしているため、圧倒的なトランジェント特性を低域に持たせることに成功している。
BEWESTではスピーカー補正のためにTorinnov Audioを導入している。西本氏はスピーカーを少し動したり、機材配置のレイアウトを変更するたびにTorinnovで測定を行い、自身の感覚だけではなく、測定器として何がどう変化したのかを確認しながらそのチューニングを行っている。ME-50FSを導入した際に測定を行ったところ、位相がほぼフラット!今までに見たことのないフラットな直線状の結果が表示されたということだ。これは、現在製品としてリリースされているスピーカーとしてはありえないこと。シングルスピーカーで無限バッフルといった理想的な環境であればもしかしたらそうなるかもしれない、というレベルの理想に限りなく近い結果である。位相特性は2-way / 3-wayであればそのクロスオーバー周波数付近(フィルターを使用するため)の位相のねじれ。それをME-50FSでは設計の要であるインピーダンス補正回路で解決している。また、ユニット自体の共振周波数による変化、この共振周波数はキャビネットにより生じるものもあれば、バスレフポートにより生じるものもある。スピーカー設計を行った際には、これらが基本的には絶対に生じるものであり、位相特性はかなり暴れたものになるのが普通である。言い換えれば、この位相特性がそのスピーカーの持つ音色ということが言えるのかもしれない。ME-50FSにはこれが無い。良い意味で音色を持たないスピーカーであると言えるだろう。これが、前述した他の試聴環境で聴いた際の破綻のなさに直結している。
・アナログの持つ普遍性を再認識する
同様にウィークポイントに関してもお伺いしたが、これに関してはやはりローエンドのお話が出た。10cmという口径からくるものだと感じたが、やはり大口径スピーカーのサウンドとは違う。しかし、ME-50FSは設計の優秀さもあり、それでも40Hzあたりまではしっかりと音として出力されている。それ以上低い30Hzあたりになるとさすがに苦しいが、音程を持って人間が知覚できる範囲はカバーできていると言えるだろう。このようなこともありTrio 11から移行したばかりのころはローエンドの不足を感じていたが、この部分も量感の違いはあってもしっかりと出力されているので時間とともに慣れてしまったということだ。ただし、マスタリングという観点で考えるとやはり昨今の作品で使われる20~30Hzが欲しくなることはあるそうだ。
このスピーカーを使うエンジニアとしては、アナログだから、デジタルだからという部分に拘りは特に無い。ただ、アナログの持つ普遍性とは、変わらずにあるもの、究極を目指せるものであることを改めて認識したということだ。スタジオを作ってからずっと持ち続けてきた、モニターへの悩み。このスピーカーとの出会いによりその悩みが解消された。やはりイメージして作った音と、他のスピーカーでの再生も含めた出音の差がないというのがスタジオモニターとしての理想であり、それを実現しているこのスピーカーは革命的だという。
色々なお話をお伺いしたが、TOAの開発コンセプトがまさにエンジニアの求める理想のスピーカーであったということを裏付けるかのようなお話をいくつも聞くことができた。TOAのこれまでのスピーカー開発の技術、そのすべてが詰め込まれた結晶体とも言える1台、音の標準器となるME-50FSから出力されるサウンドがどのようなものか是非体感してみていただきたい。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
NEWS
2023/12/19
Dolby Atmos Album Assembler v1.3 リリース情報
Dolby Atmos Album Assembler v1.3
Dolby Atmosでミックスされた楽曲やアルバムの仕上げを簡単に行うことができるツール、Dolby Atmos Album Assemblerの最新バージョンv1.3がリリースされました。
公式サイト:
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13
v1.3の主な変更点
新機能/改善:
・ プロジェクトを開いたときに、見つからないオーディオファイルへの再リンク
・ タイムライン上に見つからないクリップを表示
・ ステレオリファレンスファイルのサンプルレート変換(サポートされているサンプルレートは44.1、48、88.2、96、176.4、192 kHzです。インポート時に、ファイルはプロジェクトのサンプルレートと32ビット深度に変換されます。)
・ Preferencesのサンプルレートセレクター(Preferencesウィンドウから、Assemblerプロジェクトのサンプルレートを設定可能)
・ LFEローパスフィルター
・ Dolby Atmosエコシステム(Dolby Atmos Renderer v5.2およびAlbum Assembler v1.3を含む)全体の新しいレンダリング処理により、空間コーディングのクラスタリング処理がレンダリング、モニタリング、ラウドネス信号チェーンから削除されました。クラスタリング処理は知覚上透明(=perceptually transparent)であったため、これによるレンダリングへの聴感上の違いは生じません。
これによる利点:
- リアルタイムのレンダリングとラウドネス測定におけるCPU負荷の軽減
- オフラインラウドネス測定の高速化
・ サイズ・メタデータのレンダリング処理が改善され、バイノーラルや小型スピーカーレイアウトへのレンダリング時に、サウンドの改善とラウドネス蓄積※の軽減を実現(※:音が過剰に重なり、聴感上の音量が上がること)
・ Dolby Atmosエコシステム全体におけるラウドネス測定の調整(すり合わせ)
・ Dolby Atmos Renderer v5.2をサポート
・ 5.1.4トリム・プログラム・レベル・メタデータのサポート(存在する場合)
・ 他のDolby Atmosコンテンツ作成ツールに合わせてUIコンポーネントを更新
修正された問題:
・ Renderer v5.2以降でステレオ・リファレンス・トラックをモニタリングする場合、モニタリング・チェインは本来のステレオをパススルーさせるため、すべてのバイノーラル処理をバイパスするようになりました。(GANYMEDE-1987)さらに、レンダラー側に"Stereo reference on"状態のステータスが表示されます。
・ コンテンツによっては、ラウドネスを複数回測定すると、それぞれの測定結果が±0.1だけ異なることがありました。これは、同じコンテンツをAlbum AssemblerとDolby Atmos Rendererで測定しても確認できました。これは起こりうる丸め誤差でした。(ganymede-1731)
・ 過去にラウドネス測定を保存したプロジェクトでラウドネス解析を行うとき、解析をキャンセルするとラウドネス設定がデフォルトにリセットされる問題を修正しました。(ganymede-2348)
・ Dolby Atmos Renderer v5.1 において、トリム、ダウンミックス、バイノーラル Renderer モードのメタデータ変更が、(タイムスタンプされたサンプル位置ではなく)約 1536 サンプル早く発生していました。このトランジションは、前のクリップの終わり、またはクリップ間の無音のギャップで発生していました。メタデータのトランジションが正しいサンプル位置で発生するようになったため、聞き取れるようになった可能性があります。(GANYMEDE-2338) および (GANYMEDE-1549)
リリースノート全文はこちら(原文):
https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13/release-notes
システム要件
・ Dolby Atmos Renderer v5.2以上(別途購入が必要) ※必要なコンピュータおよびOSについては、レンダラーに同梱されているマニュアルを参照してください。
・ Dolby Atmos Renderer v5.2がサポートするMacOS VenturaまたはSonomaのバージョン
・ iLokアカウント(ライセンス認証用)
【参照】Dolby Atmos Renderer v5.2.0リリース情報:
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-2/
入手方法
・90日間体験版 (Dolby Customer サイトでサインアップ&サインイン後にDL可能です)
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-album-assembler-v13
・AVIDストアでライセンス購入
https://www.avid.com/ja/plugins/dolby-atmos-album-assembler
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
↓ぜひこちらの記事もあわせてご確認ください
https://pro.miroc.co.jp/headline/dolby-atmos-renderer-v5-2/
Music
2023/12/19
MTRX II / MTRX StudioにThunderbolt 3 Moduleが登場!〜新たなオーディオ・ワークフローを実現するシステムアップとは〜
NAMM Show 2023でPro Tools | MTRX IIとともに発表され、大きな話題となった「MTRX Thunderbolt 3 Module」。オーディオ制作者の長年の夢であったかもしれないAvidフラッグシップI/Oをネイティブ環境で使用できる日がついにやってきたことになる。MTRX Thunderbolt 3 Moduleの特徴は、MTRX II / MTRX StudioをCore Audioに接続するだけでなく、DigiLinkポートの入出力と同時にThunderbolt入出力を追加で使用できるという点にもある。つまり、1台のMTRX II / MTRX StudioにHDXシステムとネイティブDAWを同時に接続することが可能で、双方に信号を出し入れすることができるということだ。単に高品位なI/Oをネイティブ環境で使用できるようになるというだけでなく、中規模から大規模なシステム設計にまで影響を及ぼす注目のプロダクト「MTRX Thunderbolt 3 Module」を活用した代表的なシステムアップの例を考えてみたい。
Thunderbolt 3 Module
価格:135,080円(税込)
MTRX IIとMTRX Studioの両製品に対応したThunderbolt 3モジュールのリリースにより、DigiLink接続によるパワフルなDSP統合環境に加えて、 Thunderbolt 3経由で実現する低レイテンシーなCore Audio環境での柔軟性も実現可能となる。Thunderbolt 3オプション・モジュール経由で、MTRX IIでの使用時に最大256ch、MTRX Studioの場合では最大64chにアクセスが可能、Core Audio対応アプリケーション等をDADmanソフトウエアにルートし、より先進的なオーディオ・ワークフローが実現できる。
シーン1:Core Audio対応DAWのI/Oとして使用
MTRX Thunderbolt 3 Moduleの登場によって真っ先に思いつくのはやはり、これまでHDXシステムでしか使用できなかったMTRX II / MTRX Studioをネイティブ環境でI/Oとして使用できるようになったということだろう。Logic Pro、Nuendo、Cubase、Studio OneなどのCoreAudio対応DAW環境でAvidフラッグシップの高品位I/Oを使用することができるだけでなく、巨大なルーティング・マトリクスや柔軟なモニターコントロール機能をシステムに追加することができるようになる。
もちろん、恩恵を受けるのはサードパーティ製のDAWだけではない。HDX非対応のPro Tools Intro、Pro Tools Artist、Pro Tools Studio、さらにPro Tools Ultimateをnon-HDX環境で使用している場合にも、HDXシステムで使用されるものと同じI/Fを使用することができるようになる。特に、Pro Tools Studioはこのオプション・モジュールの登場によって、そのバリューを大きく拡大することになる。Pro Tools Studioは最大7.1.6までのバスを持ち、Dolby Atmosミキシングにも対応するなど、すでにイマーシブReadyな機能を備えているが、従来のAvidのラインナップではこれらの機能をフル活用するだけのI/Oを確保することが難しかった。MTRX Thunderbolt 3 Moduleの登場によって、Avidの統合されたIn the Boxイマーシブ・ミキシングのためのシステムが完成することになる。
シーン2:HDXシステムにダイレクトにMacを追加接続
MTRX II / MTRX Studioのドライバーであり、ルーティング機能やモニターセクション機能のコントロール・アプリでもあるDADman上では、DigiLinkからのオーディオとThunderboltからのオーディオは別々のソースとして認識されるため、これを利用してDigiLink接続のMacとThuderbolt接続のMacとの間でダイレクトに信号のやりとりができる。例えば、Dolby Atmosハードウェア・レンダラーとHDXシステムのI/Fを1台のMTRX II / MTRX Studioに兼任させることが可能になる。Pro Toolsとハードウェア・レンダラーが1:1程度の小規模なミキシングであれば、I/O数を確保しながらシステムをコンパクトにまとめることができるだろう。
もちろん、Dolby Atmosハードウェア・レンダラーだけでなく、CoreAudioにさえ対応していれば、スタンドアローンのソフトウェアシンセ、プロセッサー、DAWなどとPro Toolsの間で信号をやりとりすることができる。シンセでのパフォーマンスをリアルタイムにPro ToolsにRecする、Pro ToolsからSpat Revolutionのようなプロセッサーに信号を送る、といったことが1台のI/Fでできてしまうということだ。Thuderboltからのソースはその他のソースと同様、DADman上で自由にパッチできる。使い方の可能性は、ユーザーごとに無限に存在するだろう。(注:MTRX StudioのThuderbolt 3 I/Oは最大64チャンネル。)
シーン3:Dolby Atmosハードウェア・レンダラーのI/Fとして使用
シンプルに、HDXシステムとDolby Atmosハードウェア・レンダラーのそれぞれにMTRX IIを使用することももちろん可能だ。HDX側のMTRX IIからDanteでレンダラーに信号を送り、レンダラー側のMTRX IIからモニターセクションへ出力することになる。大規模なシステムの場合、複数のプレイアウトPro Toolsからの信号を1台のMTRX IIにまとめると、オプションカードスロットがDigiLinkカードで埋まってしまい、アナログI/Oをまったく確保できないことがある。ハードウェア・レンダラーのI/FとしてMTRX IIを採用した場合には、その空きスロットを利用して外部機器とのI/Oを確保することができる。MTRX II同士をDanteで接続していればひとつのネットワークにオーディオを接続できるので、Dante信号としてではあるがメインのMTRX IIからコントロールすることも可能だ。
NAMM Show 2023での発表以来、多くのユーザーが待ちわびたプロダクトがついに発売開始。In the Boxから大規模システムまであらゆる規模のシステムアップを柔軟にすることができるモジュールの登場により、ユーザーごとのニーズによりマッチした構成を組むことが可能になった。新たなワークフローを生み出すとも言えるこの製品、システム検討の選択肢に加えてみてはいかがだろうか。
*ProceedMagazine2023-2024号より転載
Sales
2023/12/16
ONKIO Acousticsが20%OFFのクリスマスセール開催!
数多くのアーティストに長年愛されてきたレコーディングスタジオ「音響ハウス」のStudio No.1、No.2 の“フロアの鳴り” を忠実に再現したリバーブプラグイン「ONKIO Acoustics」が、20%OFFとなるクリスマスセールを開催!
ONKIO Acousticsは、株式会社ソナ/オンフューチャー株式会社の中原雅孝氏が開発したVSVerbテクノロジーによる、素材に対して不要な音色変化が生じない高品位なリバーブです。ver1.2から音響ハウスの音を知る名だたるエンジニア陣が設計したプリセットが追加されており、日本のポップスを彩る音響ハウスの「鳴りと響き」をすぐに引き出してお使いいただけます!
セール詳細
[セール期間]
2023年12月16日 〜 2023年12月25日
[セール価格]
¥10,780→ ¥8,624 (本体価格:¥7,840)
Rock oN Line eStoreで購入>>
< 動作環境 >
■OS
- Mac macOS 10.14.6 - macOS 12(64-bit)
- Intel Mac , Apple M1対応
- Windows10 , Windows11
※32-bit版のOSとホストDAWアプリケーションはサポートされておりません
■認証方式
- iLokライセンス認証(iLok 2、iLok 3、マシンオーソライズ対応)
■対応DAW&プラグインフォーマット
- AAX Native / VST3 / AU (全て64-bitのみ対応)
音響ハウス レコーディングエンジニアの中内氏によるONKIO Acoustics解説・実践動画から、実際の使用イメージもご確認ください!
Support
2023/12/15
Dolby Atmos Renderer v5.2.0リリース情報 〜 レンダリング処理の改善 やMac Studio M2 Ultra / macOS 14.1.1に対応 〜
Dolby Atmos Renderer v5.2.0 がリリース レンダリング処理の変更による改善
Dolby Atmos Rendererの最新バージョンv5.2.0がリリースされました。今回のリリースではレンダリング処理の変更を伴いますので、アップデートをご検討される方は必ず本記事を最後までお読みください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520
v5.2.0の主な変更点
新機能/改善:
・ Dolby Atmosエコシステム(Dolby Atmos Renderer v5.2およびAlbum Assembler v1.3を含む)全体の新しいレンダリング処理により、空間コーディングのクラスタリング処理がレンダリング、モニタリング、ラウドネス信号チェーンから削除されました。クラスタリングの廃止は、クラスタリング・プロセスが知覚上透明(=perceptually transparent)であったため、レンダリングに聴感上の違いは生じません。
これによる利点:
- リアルタイムのレンダリングとラウドネス測定におけるCPU負荷の軽減
- オフラインでのラウドネス測定とADM BWF .wavファイル書き出しの高速化
・ サイズ・メタデータのレンダリング処理が改善され、バイノーラルや小型スピーカーレイアウトへのレンダリング時に、サウンドの改善とラウドネス蓄積※の軽減を実現(※:音が過剰に重なり、聴感上の音量が上がること)
・ Dolby Atmosエコシステム全体におけるラウドネス測定の調整(すり合わせ)
・ "Speaker calibration"ウィンドウのキーボードナビゲーションを改善
・ MP4エクスポートでハイフレームレートのビデオをエクスポート
・ "Trim and downmix"ウィンドウで、5.1.4仕様のトリムをサポート
・ Dolby Atmos Album Assembler v1.3をサポート
・ Album Assemblerがステレオのリファレンスファイルをモニターしているときにそのステータスを表示
・ Mac Studio 14,14 M2 Ultraに対応
・ macOS 14.1.1をサポート
修正された不具合:
・ 一部のコンテンツで、ラウドネスを複数回測定すると、それぞれの測定結果が+/- 0.1だけ異なることがありました。これは、Dolby Atmos Rendererで同じコンテンツを測定した場合にも見られます。これは起こりうる丸め誤差でした。(PRAU-4305)
・ 旧バージョンのレンダラーを開いているときに Windows に Dolby Atmos Renderer をインストールすると、インストール中に旧バージョンが開いたままになり、新規インストール完了後に不安定になることがありました。(PRAU-2681)
・ 5.1.2 マルチチャンネルインターリーブ形式のリレンダリングを書き出すとき、 WAVEEX ラベルが含まれていませんでした。(PRAU-5984)
完全に解消された不具合:
・ 空間コーディングエミュレーションとスナップメタデータが同時にアクティブな場合、ゾーンマスキングメタデータが無効になっていました。(PRAU-2653)
・ 空間コーディングエミュレーションがオフの状態でステレオ(2.0)で モニターすると、トリムとダウンミックスの設定が適用されていませんでした。(PRAU-3685)
リリースノート全文はこちら(原文):https://customer.dolby.com/content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520/release-notes
注意:V5.2.0以降ではレンダリングの処理に一部変更があります。
今回発表のV5.2.0以降、空間コーディングのクラスタリング処理が排除されるとのことです。それにより、この移行期間中、新しいレンダリングプロセスと以前のプロセスでコンテンツを測定した場合、ラウドネス測定値がわずかに異なる可能性があることに注意が必要とのことです。この結果はコンテンツに大きく依存するため、Dolbyは全ユーザーへのDolby Atmos Renderer v5.2およびDolby Atmos Album Assembler v1.3へのアップデートを推奨しています。また各DAWに搭載されているネイティブレンダラーについても最新バージョンへのアップデートが推奨されるとの記載があります。(※動作テスト済みのマシン/OS/DAWとなっているかにつきまして、以下"システム要件"より必ずご確認をお願いします。)
重要:先日、2023.12でPro Toolsに統合レンダラーが内蔵されましたが、今回のDolby Atmos Renderer 5.2.0の動作確認済みDAWの対象となっているのは、現時点でPro Tols 2023.9までとなっておりますのでご注意ください。なお、現在AVIDへ問い合わせ中のため、新たな情報が入り次第、本ページへの記載を更新します。(2023.12.15現在)
現在、Dolby Atmosコンテンツ制作ツールでモニタリングとラウドネス測定の両方に使用されているレンダリングプロセスには、空間コーディングのクラスタリングプロセスが含まれています。Dolby Atmos Renderer v5.2、Dolby Atmos Album Assembler v1.3、および今後リリースされるパートナーのデジタル・オーディオ・ワークステーション(DAW)から、モニタリングとラウドネスの両方のシグナル・チェーンからクラスタリングを取り除く最新のレンダリング・プロセスに移行します。この変更にはいくつかの利点があり、ラウドネス測定にも影響があります。
>> Dolby Atmos Renderer v5.2 is Now Available (原文)
https://professionalsupport.dolby.com/s/article/Dolby-Atmos-Renderer-v5-2-is-now-available?language=en_US
新しいレンダリングプロセスの詳細については、以下のリンクをクリックしてお読みください:
>>Dolby Atmos monitoring and loudness updates for content creators (原文)
https://dolby.my.salesforce.com/sfc/p/#700000009YuG/a/4u000000B3IM/yYycsBj3hEI8M.3T.tbv5L5gwKVPDcV7uwF2wcDdgQE
システム要件
動作テスト済みOS
Dolby Atmos Rendererは、macOS 11.7.10~14.1.1、Windows 10 Pro* およびWindows 11 Pro* でご利用いただけます。
*1台のコンピュータでDAWからDolby Atmos Rendererにオーディオをルーティングするために必要なDolby Audio Bridgeは、macOSでのみ使用可能です。
Windowsをお使いのお客様は、Dolby Atmos RendererをDAWとは別のコンピューターで実行し、DAWとの間でオーディオをルーティングするハードウェアソリューションを使用する必要があります。
サポートされるセットアップについては、公式サイトにサインアップ後閲覧可能なドキュメントを参照してください。
動作テスト済みコンピュータ
・ MacBook Pro 18,21; M1 Max 32 GB RAM
・ MacBook Pro 14,6; M2 Max 32 GB RAM
・ MacBook Pro 16,1; Intel Core i9 2.4 GHz, 32 GB RAM
・ MacBook Pro 15,1; Intel Core i7 2.6 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Pro 7,1; 8-Core Intel Xeon, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac Pro 6,1; 6-Core Intel Xeon E5, 3.5 GHz, 32 GB RAM
・ Mac mini 14,12; Apple M2 Pro, 16 GB RAM
・ Mac mini 9,1; Apple M1, 16 GB RAM
・ Mac mini 8,1; Intel Core i7 3.2 GHz, 16 GB RAM
・ Mac Studio 13,1; M1 Max, 32 GB RAM
・ Mac Studio 14,14 M2 Ultra, 32 GB RAM
動作テスト済みDAW
レンダラーは、Dolby Atmosレンダラーと通信可能なDAW(またはその他のオーディオ録音/編集ソフトウェア)をサポートしています。
・ Avid Pro Tools Ultimate 2022.12~2023.9
・ DaVinci Resolve Studio 18
・ Steinberg Nuendo 12 and 13
・ Merging Pyramix 14 Premium (Windows)
Dolby Atmos Rendererは、Dolby Atmos Music Pannerプラグインを追加することで、macOS上の他のDAWでも使用できます。
詳細はMusic Pannerのドキュメントを参照してください。
公式サイト:
https://customer.dolby.com//content-creation-and-delivery/dolby-atmos-renderer-v520
入手方法
Dolby Atmos Renderer V5.0をお持ちの方、またはすでにアップグレードされている方は、Dolbyカスタマー・サポートまたはAvidアカウントの"製品"(My Products)から最新バージョンをダウンロード可能です。新規で購入の方はAVID Storeよりダウンロード購入可能です。
◎Production Suiteからのアップグレードはこちら
◎Mastering Suiteからのアップグレードはこちら
◎新規のご購入はこちら
◎エデュケーション版はこちら
Dolby Atmos制作環境の構築、スタジオ施工に関するお問い合わせはぜひROCK ON PROまで!下記コンタクトフォームよりお気軽にお問い合わせください。
NEWS
2023/12/13
Pro Tools 2023.12リリース〜Dolby Atmos Rendererを内蔵!!
Pro Tools最新バージョンであるPro Tools 2023.12がリリースされました。年間サポートが有効な永続ライセンス、または、有効なサブスクリプションライセンスをお持ちのユーザー様は、Avid Accountから最新バージョンをダウンロードしてご使用いただけます。
Pro Tools 2023.12のもっとも大きなトピックは、待望のDolby Atmos Renderer機能の内蔵!ハードウェア・レンダラーやDolby Atmos Audio Bridgeを使用した外部アプリケーションとしてではなく、Pro Toolsの機能の一部としてDolby Atmosのレンダリングが可能になりました。
その他、このバージョンでは、Pro Tools Sketch機能の拡張、トラック・マーカー機能への追加、I/O設定並びにルーティングへのカラー・コーディング、H.264ビデオへのSame As Source(SAS)バウンス、Native Instruments Sシリーズ・コントローラー対応、その他があります。
詳細は以下のAvid公式WEBサイトも合わせてご覧ください。
Pro Tools 2023.12 新機能紹介
Pro Tools Dolby Atmos Renderer
Pro Tools Sketch 2023.12 新機能
主な新機能
統合型Dolby Atmos レンダラー
ついに、Pro Toolsに待望のDolby Atmos Renderer機能が搭載されました。I/O設定ウィンドウに新たに追加された「Dolby Atmos」タブで設定を行うことが可能です。
新たにサポートされるDolby Atmos内部レンダラーは、Pro Tools StudioとUltimateに含まれ、セットアップ、ミキシング、モニタリングが簡素化され、イマーシブ・ミキシング・ワークフローの効率を向上させます。内部レンダラー機能を搭載することで、Dolby AtmosミックスをPro Tools内でレンダリングおよびモニターできるようになりました。
従来通り、外部レンダラーとラウンドトリップして使用する事も可能ですので、ミキシング用途やワークフローによって使い分けることも可能な統合型Dolby Atmosレンダラー機能搭載のバージョンとして、Dolby Atmos素材の仕込みや作曲段階からファイナルミックスに至るまで、幅広い用途でご活用いただけます。
新しいウィンドウでは、Atmosミックスをさまざまな視点から包括的に視覚化し、マルチスピーカーとバイノーラルのヘッドフォンモニタリングをすばやく切り替えることができます。さらに、新しいI/Oセットアップタブでは、ベッド、オブジェクト、グループ、トリム、ダウンミックスの設定が簡素化され、セッションの一部として保存され、簡単に呼び出すことができます。
Pro Tools Studioでは最大7.1.2Bedまで、Pro Tools Ultimateでは最大9.1.6BedまでのDolby Atmosレンダリングが可能です。
また、リレンダー機能は5.1、バイノーラル、ステレオを使用可能。そして、従来のDolby Atmos Rendererと同様、ラウドネス計測については5.1リレンダリングされたソースを計測している点はご注意ください。
I/O設定並びにルーティングへのカラー・コーディング
I/O設定や内部バスへのルーティングを色分けすることができるようになりました。例えば、ボーカル用やドラム用などに分けて作成してあるリバーブ用のバスを色分けしておくことで、送りたいバスを直観的かつ瞬時に選択することができるようになります。
トラック・マーカー機能拡張
2023.6 リリースで導入されたトラックマーカー機能を使用すると、ユーザーはトラック内に詳細な色分けされたコメントを追加して、音楽とオーディオの両方のポストワークフローを改善できます。
2023.12 では、この機能をベースに、より多くのマーカー・ルーラーで視認性を高め、各ルーラーに特定の目的を持たせて、テキストを表示するスペースを増やすことができます。トラックマーカーは、改善された並べ替え機能とフィルタリングオプションにより、「メモリー・ロケーション」ウィンドウ内でも、より簡単に見つけることができるようになりました。
Pro Tools Sketch 機能強化
2023.12ソフトウェア・リリースでは、SketchとPro Toolsセッション間の新しい相互運用性が導入され、新しいオーディオ・エフェクトが追加され、MIDIワークフローの改善などが追加されています。
MIDIクリップをスケッチ・ウィンドウからPro Toolsのタイムラインにドラッグすると、さらに操作するためにMIDIとして保持するか、オーディオとしてレンダリングするかを選択できるようになりました。逆に、Pro ToolsからSketchウィンドウにオーディオ・クリップをドラッグする際に、処理されたサウンドを維持するために、シグナル・チェーン全体(プラグイン処理、Elastic Audio、クリップ・エフェクトなどを含む)をレンダリングするオプションが追加されました。
このリリースでは、Sketchでクリップを微調整する新しい方法を提供するフィルターゲートエフェクトも追加されています。最後に、デスクトップのメディア・ブラウザーの改善により、ループやサンプルへのアクセスが容易になります。SketchをPro Toolsセッションに直接埋め込むこともできるようになりました。
全Pro Toolsサブスクリプション新規が20%オフ!Avid年末プロモーション開催中!!
最新バージョンがリリースされたばかりのPro Tools。Artist、Studio、Ultimateの全サブスクリプション(アカデミック版を除く)が対象の年末プロモーションも開催中!
サブスクリプションは新規と更新に価格差がないので、「今すぐ最新バージョンを使いたい!」という方はぜひ本プロモーションのご利用をご検討ください。
Avid年末プロモーションの詳細はこちらの記事でご確認ください!
9938-31154-00 Pro Tools Artist Annual Paid Annually Subscription - NEW
通常価格:¥15,290(本体価格:¥13,900)
→年末プロモーション特価¥12,232(本体価格:¥11,120)
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9938-30001-50 Pro Tools Studio Annual Paid Annually Subscription Electronic Code - NEW
通常価格:¥46,090(本体価格:¥41,900)
→年末プロモーション特価¥36,872(本体価格:¥33,520)
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9938-30123-00 Pro Tools Ultimate Annual Paid Annually Subscription Electronic Code - NEW
通常価格:¥92,290(本体価格:¥83,900)
→年末プロモーション特価¥73,832(本体価格:¥67,120)
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オーディオ・ポストプロダクションのワークフローに大きなインパクトを与える機能が多数追加されたPro Tools 2023.12。導入、お見積のご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください。
ROCK ON PROでは、Pro Tools HDXシステムをはじめとしたスタジオシステム設計を承っております。スタジオの新設や機器の更新をご検討の方は、ぜひ一度弊社へご相談ください。
NEWS
2023/12/11
SSLからUSB I/O機能搭載のプリアンプ Pure Drive Quad / Octoの2機種が登場!
Solid State Logicから新製品として4chプリアンプ「Pure Drive Quad」、8chプリアンプ「Pure Drive Octo」が登場します!
ORIGINにも搭載されているSSL伝統のSuperAnalogueプリアンプにさらに2つのドライブモードが追加され、USBオーディオインターフェース搭載も搭載したマルチチャンネルプリアンプです!
2種類のDRIVEモード
Pure Driveは、SSLの代名詞でもあるクリーントーンを持ったSuperAnalogueプリアンプから、Classic Drive、Asymmetric Driveという2つのDRIVEモードに各CH独立して切り替えが可能です。
Classic Driveモードは、ORIGINコンソールのドライブモードと同じく、信号レベル、ゲインが上がるにつれて主に奇数倍音が付加されます。対してAsymmetric Driveモードでは、偶数倍音が発生し厚みのあるサウンドに。1つのマイクプリで3種のキャラクターを持つPure Driveは、様々なレコーディングに対応できること間違いなし!
USBオーディオインターフェース機能
また本製品の大きな特徴が、最大32-bit/192 kHzの入力に対応したUSB接続のオーディオインターフェース機能です。搭載のUSBサウンドカードにより、Quadでは4chのアナログ入力(最大32bit/192KHz)と12chのデジタル出力(4 AES + 8 ADAT @44.1/48 kHz)が、Octoでは8chのアナログ入力(最大32bit/192KHz)と24chのデジタル出力(8ch AES + 16ch ADAT @44.1/48 kHz)が実現! ハイクオリティのパフォーマンスを柔軟な環境で発揮してくれる、まさに現代的なプロダクトといえます。
製品情報
SSL / Pure Drive Quad
価格:¥198,000(本体価格:¥180,000)
発売時期:12月上旬
Rock oN eStoreから入手!
NEWS
2023/12/08
SSL2/SSL2+にマイク、ヘッドフォンが付いたレコーディングパックが登場!
Solid State Logicの人気オーディオインターフェース SSL2 / SSL2+に、SSL印のコンデンサーマイクとヘッドフォンがセットになった、SSL2/SSL2+レコーディングパックが12月15日(金)に発売となります。
SSL2 / SSL2+は、24ビット/192kHz対応のオーディオインターフェース。SSLコンソール4000シリーズヘッドアンプのキャラクターを再現する「LEGACY 4Kボタン」やAKM製 AD/DA コンバーター、ICとアナログトランジスターを組み合わせた高性能プリアンプを搭載し、安価ながらもSSLクオリティのサウンドを実現した幅広い層に人気の製品です。また、2023年3月に公開されたファームウェア・アップデートにより、ループバック機能も追加されています。
SMC 80 Studio Microphone & SHP 20 Headphones
ボディに刻まれたSSLの文字が特徴的なコンデンサーマイクSMC 80とヘッドフォンSHP 20は、このレコーディングパックでのみ入手できる限定製品です。
SMC 80はカプセルサイズ25mmの単一指向性マイク。最大入力音圧レベル136dB(1kHz THD1%)、S/N比78dB、セルフノイズ16dBAといったスペック。SHP 20は周波数特性15Hz-25kHz、インピーダンス32Ω、感度98±3dBの密閉型ヘッドフォンとなっています。簡易的な配信環境などを1セットで揃えることができるパッケージです。
<SSL2 Recording Pack 同梱内容>
・SSL2またはSSL2+ オーディオ・インターフェース
・ヘッドフォンSHP 20
・コンデンサーマイク SMC 80(専用ショックマウント付き)
・2.5m XLRマイクケーブル
Solid State Logic / SSL2 レコーディングパック
価格:¥49,500 (本体価格:¥45,000)
発売予定:2023年12月15日
Rock oN eStoreで予約購入!>>
Solid State Logic / SSL2+ レコーディングパック
価格:¥60,500 (本体価格:¥55,000)
発売予定:2023年12月15日
Rock oN eStoreで予約購入!>>
持ち運び可能なインターフェースや、簡易的な配信/レコーディング環境をお考えの方は選択肢の一つとしていかがでしょうか。様々な用途に合わせたシステム提案は、ROCK ON PROが承ります!
NEWS
2023/12/07
【無償UPG期間情報追加】Altiverb 8発売開始!業界標準リバーブがアップデート!!
コンボリューション(畳み込み演算)リバーブ製品として、今や業界標準とも言えるプラグインの最新バージョン『Altiverb 8』のリリースが発表されました。実在する空間の音響特性によって最高レベル品質のリバーブを生成。その種類はシドニーのオペラハウスからスコットランドの地下重油貯蔵タンクまでに至ります!
世界的に有名なコンサートホール、レコーディング・スタジオ、スコアリング・ステージをはじめ、電車の駅、バスルーム、水道管の中まで世界中のあらゆる空間で収録された実際のリバーブをミックスに付加することが可能。
刷新されたブラウズ画面により、膨大なライブラリをより容易に管理することができるようになりました!
2001年の登場から、20年以上にわたりブラッシュアップを重ねてきた『Altiverb』の最新バージョンをぜひお試しください。
製品情報
ブランド:AUDIO EASE
製品名:Altiverb 8
発売日:2023年12月6日(水)
ラインナップ:Altiverb 8 Regular、Altiverb 8 XL
ニュースの詳細>>(国内代理店公式WEBサイト)
製品の詳細>>(国内代理店公式WEBサイト)
2023/12/7 追記 無償アップグレードについて
2022年12月1日以降にAltiverb 7をオーサライズされたユーザー様は、無償でAltiverb 8へアップグレードしていただけます。
上記期間内にAltiverb 7をオーソライズした方
こちらのリンク(AUDIO EASE 本国WEBサイト)にアクセスし、アカウントに登録されたメールアドレスを入力して進めていただきます。「8」のライセンスを認証するように促されます。
インストーラは、こちらのリンク(AUDIO EASE 本国WEBサイト)にアクセスし、アカウントに登録されたメールアドレスを入力すると、インストーラをダウンロードするリンクが記載された英文メールがメーカーから届きます。
不明点がある場合は、国内代理店であるフォーミュラオーディオへお問合せください。
Altiverb 7のライセンスをお持ちで、まだオーソライズされていない方
すでに、バージョン7のシリアルナンバーで製品をオーサライズすると、始めからバージョン8のライセンスで使用が始まります。「7」から「8」へのアップグレード作業がありません。
Altiverb 7の製品パッケージには「7」のインストーラが収められていますが、「8」のインストーラを取得していただく必要がありますのでご注意ください。インストーラのダウンロード手順は、製品同梱のPDF書面で案内されています。
販売情報
AUDIO EASE / Altiverb 8 Regular
販売価格:¥77,000(本体価格:¥70,000)
・入出力フォーマット:モノラル、ステレオ
・対応サンプルレート:最大96kHz
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AUDIO EASE / Altiverb 8 XL
販売価格:¥133,100(本体価格:¥121,000)
・入出力フォーマット:モノラル〜最大9.1.6ch(DAWの仕様に依る)
・対応サンプルレート:最大384kHz
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各種アップグレードについて
Altiverb 8には、旧バージョンからのアップグレード・ライセンスが用意されています。Altiverb 6 Regular、Altiverb 6 XL、Altiverb 7 Regular、Altiverb 7 XLからAltiverb 8 RegularまたはAltiverb 8 XLへのアップグレード、および、Altiverb 8 RegularからAltiverb 8 XLへのアップグレードが可能です。
アップグレード製品の価格は、決定次第、本ページに追記いたします。
2023/12/6 追記 各種アップグレードの価格が発表されました。
Altiverb 8 Regularへのアップグレード
Altiverb 6 Regular to 8 Regular
販売価格:¥ 39,435 (本体価格:¥ 35,850)
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*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 6 XL to 8 Regular
販売価格:¥ 39,435 (本体価格:¥ 35,850)
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*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 7 Regular to 8 Regular
販売価格:¥ 14,157 (本体価格:¥ 12,870)
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*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 7 XL から Altiverb 8 Regularへのアップグレードはございません。7 XLをご使用のユーザー様はAltiverb 8 XLへのアップグレードをご検討ください。
Altiverb バージョン5以前からのアップグレードにつきましては、個別にお問い合わせください。
Altiverb 8 XLへのアップグレード
Altiverb 6 Regular to 8 XL
販売価格:¥ 95,084 (本体価格:¥ 86,440)
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*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 6 XL to 8 XL
販売価格:¥ 53,746 (本体価格:¥ 48,860)
Rock oN Line eStoreで購入>>
*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 7 Regular to 8 XL
販売価格:¥ 69,806 (本体価格:¥ 63,460)
Rock oN Line eStoreで購入>>
*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 7 XL to 8 XL
販売価格:¥ 28,468 (本体価格:¥ 25,880)
Rock oN Line eStoreで購入>>
*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb 8 Regular to 8 XL
販売価格:¥ 55,660 (本体価格:¥ 50,600)
Rock oN Line eStoreで購入>>
*旧バージョンのオーサライズに使用されたメールアドレスをお知らせください。
Altiverb バージョン5以前からのアップグレードにつきましては、個別にお問い合わせください。
現実に存在する空間のリバーブを使用するIRリバーブを浸透させた立役者とも言える『Altiverb』。20年以上のながきにわたり業界標準の地位を守ってきた信頼に加え、ライブラリを増加させながら進化を続け、急速に増加しているイマーシブ制作にも対応した製品です!
プロフェッショナルに愛用されるリバーブサウンドをぜひライブラリに追加してください。
本製品のお問い合わせをはじめ、プロフェッショナル・オーディオのご相談はお気軽にROCK ON PROまでお問い合わせください!!