本サイトでの Cookie の使用について

Shibuya 03-3477-1776
Umeda 06-6131-3078

Headline

NEWS
2025/10/03

Avid NEXIS PRO+ 80TB リリース!

小規模ブロダクション向けに設計されたAvid NEXIS PRO+に、80TBモデルがリリースとなりました! 従来のNEXIS PRO+ 40TBから基本性能はそのままに、1筐体あたりの容量が倍増の80TBへとボリュームアップ。1TBあたり~34%ほど低価格となるコストパフォーマンスを実現。1システムにつき4台のエンジンまで組み合わせることができ、最大320TBまでの拡張が可能となります。 また、今後のソフトウェア・アップデートにより追加されるNEXIS Remote機能により、エディターは必要なメディアのみをローカルにキャッシュすることで、どこからでも高解像度メディアをリアルタイムかつシームレスに扱えます。ビンロックとプロジェクト共有のワークフローをリモートコラボレーション環境に適応できる形として拡張可能ということです。 通信帯域速度の高速化やコンテンツの高解像度化などから、オーディオポスト、教育、ビデオ・ポストプロダクション業界で扱うデータは日々大容量化していきます。成長を続ける業界を見越したストレージソリューションの拡張に対応できるAvid NEXIS PRO+を是非ご活用ください。 ・Avid NEXIS Pro+ 80TB with Subscription ・Avid NEXIS Pro+ 80TB with Perpetual >>ROCK ON PROに見積もりを依頼 Avid NEXIS PRO+ ◎クリエイティブなコラボレーションを実現 短い時間でもっと多くのコンテンツをという要求が高まる昨今、Avid NEXIS PRO+は、チームを横断し、メディアやシーケンスを共有し、最大24人の同時接続対応によって同じプロジェクトでリアルタイムに共同作業を行えます。 ◎プロダクションの成長に合わせて拡張できるシステム 最大4台までNEXIS PRO+エンジンは接続でき、最大容量は80TBモデルで320TBまで拡張可能。また帯域幅も4台で2.8 GB/sまで拡大できます。4K/UHDのプロジェクトにも安心して対応できる共有ストレージです。 ◎Avid NEXIS|VFS バーチャル・ファイル・システム NEXIS Fシリーズと共通のVFSを採用し、仮想的な単一の共有リソース・ブールにアセットを集約。実績のある高い信頼性、柔軟性、最適化を提供します。
Media
2025/09/24

音響的ニッポンの電気事情 / シンテック ノイズ低減アイソレートトランス

電源で音が変わる。音響チューニングの代表的な手法として、みなさんにもよく知られていることのひとつ。インレットの電源ケーブルを交換したり、クリーン電源などを導入したりと、いろいろな工夫を行っている方も多いかもしれません。しかしながら、その先の電源コンセントの向こう側に目を向けたことはあるでしょうか。実は、ここに埋めることのできない欧米と日本の電源事情の大きな違いがあるのです。それも欧米と、だけではなく世界中で日本だけが違うと言ってもよいほどの差が存在しています。ここでは、電源の供給方法の違いから、そのメリット、デメリット、なぜ日本で欧米と同じ音が出せないのか、電源供給の根本部分の差異により導かれるその理由を紐解いていきましょう。 「その秘密は電柱にあり。」 まずはじめに、そもそも電源とは何か?から見ていきましょう。電気の源と書いて「電源」。読んで字の如く、「電」気を供給する「源」とという意味です。その電気は発電所で生み出され、送電線から変電所、電柱、各使用者のもとへとたどり着きます。この送電線や電柱、じっくりと観察したことのある方はいますでしょうか。当たり前にありすぎて意識することはほとんどないのですが、ここに電気を送る大きな秘密が隠されています。 身近なところで電柱を見てみましょう。その一番上には必ず3本の太い電線がつながっています。同様に送電線は、必ず3の倍数の電線が接続されています。日本全国どこに行っても、電柱の送電路は3本の電線になっています。この3本であるということが非常に重要です。まずは、日本の送電方式として利用されている三相3線方式をご紹介します。 「三相3線方式、ここまでは同じ。」 必ず3本の電線により送られている方式ということで、三相3線方式という名称の「3線」という部分は直感的に捉えられますが、そもそもなぜ3本なのでしょうか。電気は2本の電線があれば送ることができるのではないか、電気の基礎知識のある方であればそう考えるでしょう。これは名称の前半にある「三相」で送電しているというところがポイント、送電路で使われているのは交流ですので、正確には三相交流が送電されているということになります。辞書的な解説であれば、120度位相をずらした同一周波数の交流を3本の送電路のそれぞれ2本を使い3組の交流を送電する。ということになります。なるほど、全然わからないですよね。 発電機の仕組みとしては、回転する磁石の周りに120度ずらした位置にコイルを配置することで三相電源を作ることができます。回転する磁石により電気が発生するということは、理科で習ったモーターと発電機の話を思い出してください。コイルと磁石の位置関係が120度ずれている=位相が120度ずれている波形が取り出せるということです。この発電方式は、世界中で周波数、出力電圧の違いはあれど、基本構造は全く同じです。発電された時点では、世界と日本の電気は同じであると言えるでしょう。
Event
2025/09/05

【9/30(火)】ELEMENTS JAPAN PREMIERE 開催!

It’s not only file server, This is the “Future Storage”. まさに、”Future Storage”と呼ぶにふさわしいソリューションが日本上陸。 NLE、DAWでの作業が当たり前となったポストプロダクション作業。ELEMENTS製品は、Adobe Premiere / Blackmagic Design Davinci / Avid Media ComposerなどのNLE、DAWの動作条件を満たすFile Serverであることはもちろん、これらのNLEとの連携まで踏み込んだワークフローを提供します。そして、ワークフローの中心となるファイル・ストレージにMAMを中心とした様々な機能を加えているのがこのELEMENTS製品の大きな特長。従来は多数のメーカーによる製品を組み合わせて、その機能を実現する必要があったMAMを、ELEMENTS製品ではひとつに統合してトランスコード、ファイルシェア、コラボレーションを実現します。まさに”Future Storage”と呼ぶにふさわしい新しいソリューションが日本上陸です。 ELEMENTSをROCK ON PROが日本国内へご紹介します。 ELEMENTS JAPAN PREMIERE 9/30(火)開催。 ストレージであり、トランスコーダーであること。ELEMENTSを製品を捉えるこのキーワードの真実、その魅力と実力を体感していただけるプレミアデーを開催します。Premiere / Da Vinci / Media ComposerといったNLEとの連携、先進のMAM、コラボレーション機能をハンズオン。また、インターセプター田巻氏から現場目線で見たワークフローの劇的な改善方法、ドイツ・ELEMENTS社からHeiko Schlueter氏による豊富な海外事例をご紹介いただきます。 ELEMENTS JAPAN PREMIERE 2025 開催日時:2025年 9月30日(火) 14:30開場 15:00〜18:00 会場:LUSH HUB / 東京都渋谷区神南1-8-18 クオリア神南フラッツB1F *Rock oN 渋谷店 地下1階 参加費:無料 参加方法:本記事に設置の申込フォームリンクボタンよりお申し込みください。 【contents】 ●ELEMENTS先進の機能やPremiere/Da vinci/Media ComposerとのNLE連携をハンズオン ●欧州最大の放送機器展IBC2025、現地の最先端情報を最速レポート ●インターセプター田巻氏による、ELEMENTSによるワークフロー劇的改善TIPS ●ELEMENTS社 Heiko氏が紹介する、世界にひろがるELEMENTS導入事例 Instructor 株式会社インターセプター 編集技師/カラリスト 田巻源太 氏 1982年新潟県出身。新潟大学中退。高校時代より映画製作に関わり始め、ラジオ・テレビディレクターを経て、映画編集・仕上げに携わる。また、Mac版DaVinciリリースに伴い、DaVinci Resolveを使用、現在は認定トレーナーとして後進育成のためのセミナーや日本でのユーザーズグループの管理運営や開発協力なども行う。 作品歴 青山真治監督「共喰い」「最上のプロポーズ」「贖罪の奏鳴曲」(編集・グレーディング) 冨永昌敬監督「コンナオトナノオンナノコ」「パンドラの匣」「乱暴と待機」「目を閉じてギラギラ」「ローリング」(編集・仕上担当) 武正春監督「百円の恋」(グレーディング) SABU監督「ハピネス」(編集) ダレン・リン・バウズマン製作総指揮「CROW'S BLOOD」(DIT,カラリスト) 他多数。 ELEMENTS Germany Syslink GmbH Heiko Schlueter 氏 ELEMENTS社、欧州営業部長であるハイコ・シュルター氏は1990年よりドイツのAppleシステムインテグレーターとしてキャリアをスタートし、主要な放送機器を取り扱うvideokonzept GmbHを設立、直近ではEditShare社に13年間在籍し、大規模ストレージプロジェクトの技術面と市場動向の両面に精通しています。 ROCK ON PRO シニア・テクノロジー・オフィサー 前田洋介 レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。 ROCK ON PRO Product Specialist Team / Section Leader 山之下朝陽 Immersive Audioを用いた芸術音響作品を創作し国内外で発表を行なってきた経験から、音楽表現を支える最先端の技術を広めるべくROCK ON PROへ。メガネは伊達。
Broadcast
2025/09/03

株式会社WOWOW様 / 現代の音声中継車に求められる技術の粋

1984年に初の民間衛星放送事業者として設立され、1991年から30年間以上の長きにわたり良質なコンテンツを提供する株式会社WOWOW。有料放送局として視聴者に常に高いクオリティのコンテンツを届けるため、最新のテクノロジーを取り入れることにも積極的に取り組んでいる。同社に16年ぶりとなる新型音声中継車が導入されたということで早速取材に赴いた。精悍で剛健な外観から想像される以上の設備と機能をその内部に備えた最新音声中継車の全貌をご紹介したい。 待望のハイレゾ制作に対応 実に16年ぶりの新規配備となった最新の音声中継車は、2025年3月にWOWOW放送センターに配備されており、すでに4月には「TM NETWORK YONMARU+01 at YOKOHAMA ARENA」の収録のために、横浜アリーナで実運用デビューを飾っている。 この最新の音声中継車は96kHzハイレゾ収録、7.1.4chと5.1.4chのDolby Atmos制作への対応、Danteをフル活用したIP化など、最新の制作技術が惜しみなく投入されているだけでなく、生中継では必須となるシステムや電源の冗長性や車両としての機動性、そして、拡幅機構による2つのミックスルームなど、運用面での利便性・確実性も担保されており、現代の音声中継車に求められる技術の粋を集めた仕上がりになっている。 その中でも現場にとって待望の新機能が96kHzによるハイレゾ収録・制作への対応だ。音声中継車によるリアルタイム96kHz制作が可能になったことの恩恵がもっとも大きいと考えられるのは、やはり、音楽コンテンツの制作においてであろう。そもそも、WOWOWにとって「音楽」は開局時に掲げた5つの柱のひとつであり、同社が収録したコンサート映像が地上波で使用されたり、そのままDVDパッケージに使用されることがあるほど、音楽コンテンツ業界における同社の存在感は現在に至るまで非常に大きいものがある。 レコーディング・スタジオやコンサートSRの現場ではすでに96kHz制作が浸透しているため、音声中継車が96kHzに対応するということは、例えばコンサート収録においてはFOHミキサーからの音声をダウンサンプリングすることなく受け取り、リアルタイムにコンテンツ用のミックスをおこなうことができるということを意味する。もちろん、マスターを高いクオリティで制作することができていれば、配信先・放送先のプラットフォームに応じたフォーマットにコンバージョンする際の品質も同時に確保されるわけだ。 これは制作ワークフローだけの恩恵ではなく、アーティストにとっても大きな意味を持つだろう。一部の音楽ストリーミング・サービスやなどでは、CDよりも高いクオリティのコンテンツを視聴できる環境が増えつつある現状で、コンサートが可能な限り自分たちの意図したクオリティのまま収録されているというということは、アーティストたちにとってもまさに「待望」の出来事だと言えるのではないだろうか。 拡幅機構による2つのイマーシブ対応ルームを実現 新音声中継車のもうひとつの目玉と言えるのが、内部に2つのイマーシブ対応ルームを持っている点だ。WOWOW新音声中継車は車両の前後でふたつのミックスルームに分かれる2ルーム構成を取っており、同社では車両後方を「Room-A」、前方を「Room-B」と呼称している。 呼称の通り、どちらかと言うとRoom-Aがメイン、Room-Bがサブという扱いになる。こうした構成を取る場合、車両サイズの都合でどうしてもサブ側は狭くなりがちだが、新音声中継車では車両前半分の左側面が外側にせり出す拡幅機構を搭載することで、Room-BにもRoom-Aと遜色ない居住性と音響性能を持たせることに成功している。 これにより、Room-Aは7.1.4ch、Room-Bは5.1.4chのDolby Atmos制作が可能な仕様になっており、1台の音声中継車でふたつのイマーシブ制作を並行しておこなうことができるようになっている。ふたつのミックスルームは、ひとつのプログラムのためのメイン&サブとして使用することができるのはもちろん、別々のプログラムのためのミキシングを同時におこなう両メイン運用をおこなうことも可能だ。例えば、音楽フェスのライブ中継で異なるふたつの会場の収録・制作を同時に実施する、Room-Aで音楽プログラムをミックスしRoom-Bではテレビ放送用にレベル管理やテレビ独自のコンテンツを付加したミックスを制作する、といった柔軟な運用が可能になっている。 Room-Aはサウンドクオリティに定評のあるmusikelectronic geithain、Room-BはGenelec製のスピーカーで構成されている。Room-AはLCRがRL933K、平面とハイトのサラウンドがRL906という構成。Room-Bは平面チャンネルが8331A、ハイトは8010となっている。8010以外は同軸仕様のモデルが選定されており、限られたスペースでのイマーシブ制作において最大限のモニター品質を担保するという意図が読み取れる構成になっている。 📷Room-A エンドコンテンツの拡大と視聴者体験の拡張 📷株式会社 WOWOW 技術センター 制作技術ユニット エンジニア 戸田 佳宏 氏 誤解を恐れずに言うと、「ハイレゾ」「イマーシブ」と聞くと、テレビで放送できないフォーマットにWOWOWが対応することに意味があるのか、と考える方もいるかもしれない。たしかに、WOWOWは前述の通り放送事業者としてスタートを切っており、WOWOWといえば衛星テレビ放送、というイメージを持っている方もいるかもしれないが、同社は今や放送事業に留まらない多様なエンドコンテンツの制作・配信にも携わっている。2007年よりスタートした自社映画レーベル「WOWOW FILMS」による映画事業、2021年開始のインターネットによるVODサービス「WOWOWオンデマンド」といった自社サービスに加え、さまざまなプラットフォームにおけるストリーミング・サービスを提供する各社からの制作業務の請負など、ハイレゾ対応によって視聴者の体験を向上させるための素地はすでに十分に整っていたと言えるだろう。 新音声中継車と関係が深そうなものとしては、「WOWOW FILMS」による映画館でのコンサートライブ上映などという大掛かりなコンテンツも存在している。特に、インターネットベースのコンテンツに関しては、2020年のコロナ禍をきっかけに爆発的に発展し、幅広いユーザーへの浸透を果たした。今後、さまざまなエンドコンテンツがさらにそのサービスを充実させるであろうことを鑑みれば、そもそも最新技術の導入に積極的なWOWOWがこの段階でハイレゾ / イマーシブに対応した機動性の高い制作環境を導入することは、未来のための大きな布石になり得るだろう。 たしかに、現時点ではハイレゾ / イマーシブの恩恵を直接に体験できる視聴者は少ないかもしれない。しかし、収録後に放送フォーマットに落とし込むとしても、その元となる素材を可能な限り高いクオリティで収録しておくということには大きな意味がある。みずからの意図した音を可能な限りそのまま残したいというアーティストの要望、遠くない未来に放送や配信でハイレゾ / イマーシブが標準的に体験できるようになったときに、2025年にWOWOWが収録した素材がそのまま使用されるという可能性など、すでに現時点でもその活躍の仕方はいくらでも思いつくからだ。 Danteを活用したフルIP化を実現 📷Room-B 前述の通り1台に2部屋を備えたWOWOW新音声中継車だが、システムの中核となる音声卓にはSSLの次世代ブロードキャストオーディオプロダクションシステム System Tが採用されている。System Tはコンソールに関わるコンポーネントがすべてDanteで接続されており、ハイサンプリングレートによるマルチチャンネル伝送に大きな強みを持つ。 さらに、Danteではひとつの機器を二重ネットワークで接続することができるため、中継業務において必須と言える冗長性の確保にも貢献している。冗長性という点でいうと、主要機器の電源二重化、無停電電源の積載、さらには車両後部には発電機を搭載するなど、音声信号だけではなく、電源瞬断のようなトラブルにも対応できる仕上がりになっている。 Room-AにはSystem TのフラッグシップであるS500(64フェーダー)、Room-BにはひとまわりコンパクトなS300(32フェーダー)が導入された。Room-AとRoom-Bは完全に独立したミックスルームとしての運用はもちろん、内部でDante接続されているため、ひとつの音声プログラムを共有することも可能。つまり、Room-AのサブとしてRoom-Bを運用することも可能ということだ。IP伝送の強みである柔軟性の高さを最大限に活用していると言えるだろう。 System Tのステージボックスには、5Uサイズのユニットで二重化電源と32系統のマイク・ライン入力 / 16系統のアナログライン出力、そして 4系統ずつの AES ペア入出力を装備するSB 32.24を採用。9台ものステージボックスを使用することで、288chアナログインプットを実現している。現在も稼働する従来の同社音声中継車が160chアナログインプットだったため、実に2倍近い規模に拡張されていることになる。インカムもRIEDEL Artist 1024、BOLERO Wireless Intercomが採用されており、音声信号だけでなくインカムもIPベースでの伝送となっている。 なお、WOWOW放送センターでは、副調整室6室すべてがDanteで接続されており、信号分配の核となる回線センターはST-2110に対応済と大規模にIP化を実現している。WOWOW全体でのIPベースでの信号運用に対する心理的ハードルはかなり低くなっている様子だ。 Danteメインの構成による意外な恩恵として、設備の軽量化にも貢献しているという。総重量が20tを超える車両が公道を走る場合、走行するすべての経路上の公道において、それを管轄する自治体への事前の申請が必要になるそうだ。数多くの機材を搭載し、拡幅機構まで備えた音声中継車の場合、この20tを確実に下回ることは存外に難しいようで、Ethernetケーブル1本で最大256chを伝送できるDanteの採用による車両総重量の軽量化は、音声中継車としての現実的な運用を考えるとかなり大きな貢献を果たしていると言えるだろう。 ユーザーの視聴体験をベストなものにするべく、常に新たな試みに挑戦してきたWOWOW。コンテンツ体験というものが大きな転換を迎えようとするこのタイミングで、現時点での最新テクノロジーを集結した音声中継車の登場というトピックは、制作側であるWOWOWだけでなく、それを享受する視聴者にとってもまさに「待望」だったと言えるだろう。取材に応じてくださったWOWOW戸田氏は、この新音声中継車を使って外部からの業務も積極的に受託したいと意気込みを語ってくれている、この音声中継車はさらなるコンテンツ制作の可能性を高めていきそうだ。   *ProceedMagazine2025号より転載
Event
2025/09/01

【9/26開催】RTW Presents “TouchControl 5 Meets ATMOS” Vol.2 in 大阪 開催!

9/26(金) Rock oN 梅田にて、昨年も好評いただいたRTW TouchControl 5セミナーを開催します! バージョン 2.0へのアップデートにより、オブジェクトスピーカーアレイやRTA、ダイアログ計測など、現代の放送・ポスプロ環境に合わせた更なるパワーアップを果たしたTouchControl 5。 本セミナーでは、Dolby Atmos 7.1.4環境を備えた梅田、UNLIMITED STUDIOにて、染谷氏が手がけた作品データを聴きながらのライブデモンストレーションも予定しています。 参加は無料!トークや質疑応答による学び、クリエイター同士の交流など、充実した時間をご用意しております! イベント概要 日時:2025年9月26日(金)    OPEN:16:30 / START:17:00 会場:Rock oN 梅田店 大阪府大阪市北区芝田 1 丁目 4-14 芝田町ビル 6F ナビゲーター:染谷和孝 氏(サウンドデザイナー) 参加費:無料 席数:30 ※応募が多数の際は抽選となる場合がございます。 協力:Rock oN 梅田店 / ROCK ON PRO ※席数が限られているため、応募が多数の際は抽選となる場合がございます。 お申し込みはこちら RTW TouchControl 5 ・Dante® Audio over IPネットワークを使用したモニタリング(RAVENNAモデルも新登場!) ・SPL測定とトークバック用にマイクロフォンを搭載 ・プレミアムPPM、トゥルーピーク、VUのメーター表示 Ver 2.0 リリース! ・Dante®モデルにプラスしてRAVENNAモデルの登場によりAoIPを全方面からサポート ・オブジェクトスピーカーアレイに対応し多様なイマーシブモニタリングを実現 ・RTA (リアルタイムアナライザー)、XYベクタースコープ、ラウドネスチャート、強化されたベースマネジメント、Dolby Atmos® Music Curveのキャリブレーションセッティングなど、現代のスタジオ環境に応える機能の多数追加 ・シネマや配信動画のラウドネス計測にダイアログゲートが追加され、Netflix等の納品時に必要なダイアログ計測などが可能に。 製品情報の詳細は製品サイトをチェック ナビゲーター:染谷和孝 氏 株式会社ソナ 制作技術部 サウンドデザイナー/リレコーディングミキサー 1963年東京生まれ。東京工学院専門学校卒業後、(株)ビクター青山スタジオ、(株)IMAGICA、(株)イメージスタジオ109、ソニーPCL株式会社を経て、2007年に(株)ダイマジックの7.1ch対応スタジオ、2014年には(株)ビー・ブルーのDolby Atmos対応スタジオの設立に参加。2020年に株式会社ソナ制作技術部に所属を移し、サウンドデザイナー/リレコーディングミキサーとして活動中。2006年よりAES(オーディオ・エンジニアリング・ソサエティー)「Audio for Games部門」のバイスチェアーを務める。また、2019年9月よりAES日本支部 広報理事を担当。 今年発売されたTouchMonitor 5の展示も行います。ぜひ奮ってご参加ください! お申し込みはこちら
NEWS
2025/08/28

SSL Revival 4000 Analogue Signature Channel Strip 発売!

SSLより新製品、Revival 4000 Analogue Signature Channel Stripが発表されました! SSL伝統の4000シリーズコンソールのトーンを実現する、1U、1chの高性能フルアナログ・チャンネル・ストリップです。 主な機能 マイクプリには、Jensenの入力トランスJT-115K-Eを搭載。オリジナルの4000Eチャンネルストリップに採用されていたものと同じコンポーネントで、透明感あるサウンドを実現。入力は+20 dB〜+70 dB の範囲で調整が可能で、極性反転、パッド、ライン入力機能が付属。 4000 Bコンソールのデザインを継承するディエッサーは、1ノブで歯擦音をピンポイントに調整する10:1レシオ、7 kHz帯のサイドチェイン・フィルターとなっている。 Ultimateを冠するダイナミクスセクションは、Eシリーズをフル機能で忠実に再現。ゲインリダクションの戻り方を定速とするリニアリリースモードや素早くコンプをかけるファストアタックモードを備え、時代を作った伝説的なサウンドを作り込める。 お馴染み4バンドEQセクションでは、伝統の4000E Brown Knobと、ジョージ・マーティンのAIRスタジオ用に開発されたEQ回路「242」通称、Black Knobを切り替え可能。広いカット&ブーストレンジや18dB/OctのHPFとなるBlack knobモードではタイトなローエンドを得られる。また、ダイナミクスとDe-EssをEQの後段で処理するポストEQオプションも搭載する。 製品情報 Solid State Logic / Revival 4000 Analogue Signature Channel Strip 価格:¥297,000 (税抜 ¥270,000) 発売日:2025年9月8日 Rock oN Line eStoreでのご予約・ご注文はこちら    The Town Houseでのピーターガブリエル作品などから現代SSLの礎となったSL4000B、Electric Lady、The Hit Factoryをはじめ世界中のスタジオを支えた説明不要のSL4000E、時代を作った2つのサウンドを手に入れましょう。本製品をはじめとした機材導入・デモのご相談はROCK ON PROまで!
Media
2025/08/19

NTT IOWN / 世界初のリアルタイム3D空間伝送実験

取材協力:NTT人間情報研究所 NTTが2030年ごろの実用化を目指し推し進める、次世代情報通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network) 」。あらゆる情報をもとに個と全体の最適化を図り、多様性を受容する豊かな社会の実現を掲げる構想だ。光を中心とした革新的な技術を活用し、従来のインフラの限界を超える高速・大容量通信や膨大な計算リソースを、端末も含めたネットワークおよび情報処理基盤として提供することを目的としている。 そのNTTが今回、大阪・関西万博のNTTパビリオンで挑んだのが、IOWNを活用した世界初のリアルタイム3D空間伝送実験である。この試みでは、夢洲に設置されたNTTパビリオンと吹田の万博記念公園をIOWNで接続。NTT研究所が独自に開発・保有する「動的3D空間伝送再現技術」と「触覚振動音場提示技術」により、Perfumeのパフォーマンスを“空間ごと”リアルタイムに伝送・再現するという、かつてない挑戦が行われた。これは、2025年の万博と1970年の電気通信館、二つの時代の万博会場を時間と空間の両方で接続し、まるで隣にいるかのような存在感の共有を可能にする未来のコミュニケーションを体現したものである。さらにこのパフォーマンスは、万博会期中、NTTパビリオンのZone 2にて来場者が“時間を超えて追体験”できるという仕組みとなっている。今回は、この世界初の実証実験を支えたNTT人間情報研究所の松元 崇裕氏、草深 宇翔氏、鈴木 督史氏に話を伺った。 📷左よりNTT人間情報研究所 松元 崇裕氏、草深 宇翔氏、鈴木 督史氏 NTTが創出する未来のコミュニケーション 大阪・関西万博にて、NTTパビリオンが体験テーマとして掲げるのは「Parallel Travel」。これは時空を旅する体験を意味し、IOWN技術によって物理的距離を超えた空間共有を実現し、互いに存在を感じ合う未来のコミュニケーションを提示するというもの。まさに近代日本において伝達技術の基盤と革新を担ってきたNTTならではのアプローチである。この壮大なテーマは、Zone 1からZone 3までの3つの建屋によって構成されるNTTパビリオン全体を通じて物語られる。本稿ではその中でも、未来のコミュニケーションの姿を示すZone 2での取り組みに焦点をあて、掘り下げていこう。 Rock oN(以下、R):今回のテーマである「Parallel Travel」の中における、Zone 2の位置付けについて教えてください。 松元:Zone 1では、過去から現在に至るまでのコミュニケーションの変遷を扱っています。しかし、我々は現代においてもまだ “どこか繋がりきらない” 部分が残っていると感じています。だからこそZone 2では、その限界を越えていくような、「未来のコミュニケーションとは何か?」という問いが大きな鍵になっています。 1970年の大阪万博でNTTは、映像の多元中継などの展示を行なっています。ではそこから時代を経てこの2025年では何が見せられるのだろうといった議論から始まりました。その中で、空間まるごと伝送する、そこにある五感(今回でいうと振動による触覚)を含めて、低遅延で相互に繋がるというのが未来のコミュニケーションとして描けるのではと考えました。 IOWN構想の中では、デジタルツインコンピューティング(DTC)にもあたる取り組みです。これは現実空間の写鏡としての「デジタルツイン」をバーチャル空間に存在させるという話で、これまでも渋谷の街並みをバーチャルで再現するといったプロジェクトはありました。これまでは、動きのない3Dデータや、現地の一部センシング情報のみを反映させる事例が主流でした。そうした中、私たちは点群技術を活用し、「動きそのもの」をバーチャル空間に伝送することに挑戦しています。さらに、振動をはじめとするこれまで扱われてこなかった多感覚情報の再現にも取り組んでいます。 R:そこで今回、それら技術を掛け合わせたリアルタイム3D空間伝送実験が企画されたということですね。今回の実験の中でも特に革新的な要素というのはどこにあたるのでしょうか? 松元:これまでもボリメトリックな3D測量を用いた配信などは各地で取り組まれてきましたが、そこでは数秒レベルでの遅延が発生しています。そこを今回我々は約100 msまで縮めようと取り組みました。遅延を考える際に面白いのが、圧縮すればデータ量が減るので細い回線でも速く送れるのですが、その分圧縮の時間が発生してしまうところです。そこで今回はIOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)という大容量で安定した”最新の回線”を使用することによって、ほぼ非圧縮のデータをリアルタイムで伝送できました。遅延を100msまで抑えることで、配信では双方向の会話が成立しています。夢洲と吹田の距離でこの規模の3Dと振動情報をリアルタイム伝送するというのは初の試みと言っていいかと思います。 次世代コミュニケーション基盤、IOWN APN 今回、低遅延の長距離伝送を実現する基盤となったネットワーク技術が、IOWNを構成する主要技術の一つ、オールフォトニクス・ネットワーク(APN)である。ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクスベースの技術を導入し、現在のエレクトロニクスベース技術では困難な、低消費電力、高速・大容量、低遅延・ゆらぎゼロの高品質な伝送を実現する。今回の実験では吹田ー夢洲間、直線距離にしておよそ20kmをAPNにて接続。映像や音声の情報を圧倒的な低遅延で伝送した。APNは既にNTTが実際にサービスとして提供を開始している技術でもあり、リモートプロダクションやライブ中継の他、産業やまちづくりでも運用が始まっている。 松元:今回使用したAPNは吹田市、万博記念公園の電気通信館跡地と夢洲の万博会場をほぼPeer to Peerで繋ぐような構成になっています。万博会場全体では他にもIOWNを用いた試みが実施されているので、会場では一度その中枢のラックを経由して、Zone 2まで接続しました。 R:今回実際に使用したAPN回線のスペックはどれほどですか? 鈴木:容量は100Gbpsです。その中で実際に使用したのはおおよそ25Gbps程になりました。伝送量や障害についてもポート単位で監視をしています。準備期間で設計を詰めていき、本番では問題が発生することもありませんでした。 R:APNの特徴として揺らぎのなさがありますよね。今回、振動伝送で使用されたDanteのレイテンシーを見てもまったくパケットの遅延量が変わらず安定していたのが驚きでした。しかも吹田ー夢洲間で遅延が約700μs、1msを切っているという。 松元:映像伝送やDanteは遅延にシビアですからね。ローカルで接続しているのとほぼ変わりがなく、ネットワークを跨ぐことによる問題も発生しないというのがAPNを使用して一番影響が大きかった部分かもしれません。点群はむしろ伝送の揺らぎよりも高密度化やノイズ除去といった処理の揺らぎの方が大きくなりました。 鈴木:映像チームからもこんなに安定した遠隔回線は無いと言っていただけました。大容量メディアの伝送でAPNは特に使い勝手が良いと思います。 R:長距離の伝送となりましたが、同期はどのように取られたのでしょうか。 鈴木:夢洲、吹田の両拠点にGPSのPTPグランドマスターを設置しました。他ではまず行わないことなのですが、今回3種類のPTPを扱っています。映像用のPTPv2、振動伝送するDante用のPTPv1に加えて、点群センサーであるLiDAR(Light Detection and Ranging)用のgPTPです。gPTPは殆ど自動車系でしか使われていないPTPなのですが、LiDARも同じく自動車のセンサーとして使用されているものなので製品の仕様上扱うことになりました。3種のPTPがそれぞれ混ざらないようにネットワークを設計するのはパズルの様でしたね。VLANでもPTPが流れてしまうとPTPモードのスイッチが止まってしまったりするので、回避させたりといったことをしています。またLiDAR自体は本来1台で使用する想定のものなので、それを複数台組み合わせる際に想定外の挙動をするといった苦労もありました。 点群による「動的3D空間伝送再現技術」 今回の伝送実験では、1970年大阪万博「電気通信館」跡地に設置された特設ステージでのパフォーマンスを計測・撮影し、膨大な3次元点群データおよび画像データを生成。それらをリアルタイムで伝送し、StereoCamによる映像と組み合わせることで、空間全体をまるごとキャプチャし、遠隔地に再現するという試みが行われた。点群データの取得に用いられるLiDARは、レーザー光を用いて物体の形状や距離を高精度に計測する技術であり、取得した情報は「点群データ」として3次元的に構成される。3D映像として目の前に立ち現れるパフォーマンスは、映像再生の域を超え、まさに「空間伝送」といえる臨場感を生み出す。 松元:点群センサーは3台のLiDARと1台の光学カメラを1セットとして、パフォーマンスのステージを取り囲むように7セット配置しました。演出面も考えて、前方に5台、後方に2台の構成をとっています。LiDARは回転式なので360度、光学カメラは水平70度ほどをカバーしているので、この配置でも全方向をキャプチャーすることができます。それでも他のカメラや振動用のトラッキングセンサーとの位置取りは難しく、シビアな調整の結果この配置となりました。取得するのが三次元の情報なので、現場合わせではまとまらないだろうと事前に3Dで配置図を起こして綿密に計画しています。 📷3台のLiDAR(Light Detection and Ranging)Camと1台の色彩用光学カメラを縦方向に組み合わせたシステム。カスタムのアルミフレームに装着されている。 鈴木:他のカメラやセンサーも基本は正面に置きたいものですから、映像カメラに映らない画角ギリギリまでセンサー位置を調整したりとせめぎ合いでしたね。 R:そこは通常のライブレコーディングの現場などでも頻発する問題ですね(笑)。点群センサーであるLiDARを3台1セットとしている理由はどこにあるのでしょうか? 松元:LiDARは1秒間に10回転しか回らないので1台だと10フレームしか情報がありません。それではダンスを撮影するには足りないので、縦に3台を連ねて時間的に回転を33ms、操作線でいうと120度ずつずらすことで1セットで1秒間30フレーム取得しています。ですのでPTP制御ができ、複数台でも干渉しない機種を選定しました。システム全体として、150万個の点を1秒間に30回取得しています。 鈴木:その分レンダリングは大変でした。1セットにつきゲーミングPCを1台用意して処理を行っています。 R:LiDARは台数を増やすほど高品質な点群が計測できるというものなのでしょうか? 松元:基本的にはそうなのですが、台数が増えるとノイズも増えるので単純に増やしたからといって見栄えの良いものになるわけではありません。なので各視点を合成する際にノイズ除去のアルゴリズムを入れ、ノイズを目立たなくしています。 R:ノイズの乗りやすさであったり、点群センサーにとって得意・不得意な対象があるのですか? 松元:暗い空間や急な明暗の変化にも対応ができる点は点群の強みだと思います。画像情報から処理するボリメトリックキャプチャーは、画像の特徴量が大きく変化するのに弱いので室内の固定された照明環境に使用がある程度制限されます。対してLiDARはレーザーによるデプス情報も加味するので、通常のカメラが撮れない暗い空間でも深さが取得できます。 またボリメトリックと比較すると、点群は密度が上がらない部分はあります。ボリメトリックに使用するカメラは高精細で台数も多いので、綺麗な3Dが取れます。画素数が2Kや4Kのカメラと比較するとLiDARはセンサーが128本しかありませんから、その分密度はどうしても落ちてしまいますね。ですがその分処理速度はLiDARの方が速いので、3Dと現実が双方向で繋がるリアルタイム性を求めている我々のプロジェクトではLiDARを採用しています。 R:伝送のための圧縮などは行なっていないのでしょうか? 松元:APNの伝送的には非圧縮伝送でも問題なかったのですが、受け側のI/Oの都合で軽い可逆圧縮をかけています。ここも専用ハードウェアを作成すれば将来的に非圧縮でも問題なくなる部分だと思いますね。 R:点群チームの皆さんは2024年にもチームPerfumeと協力しての空間伝送実験(2024年9月21日に実施された配信イベント「Perfume 25th & 20th Anniversary Live Performance “IMA IMA IMA” Powered by NTT」)を実施されています。今回の取り組みはその延長線上にあるものとお見受けしますが、前回の取り組みと比較して特に進歩した点についてお聞かせいただけますか。 松元:点群を使った研究開発自体は昨年より前、2022年から取り組んできました。初めたころはオフライン処理でもグニャグニャな3Dになるようなところから始まり、少しづつ精度を上げて今回の万博実証までたどり着いています。 鈴木:2024年春の時点でまだ第一弾システムが動いてなかったですからね。昨年のお盆ごろにGPUのパワーが足りないことに気づいて、松元さんと2人で全台交換したことをよく覚えています。 松元:そんな昨年の経験を踏まえて、センサー位置の修正や点群の密度、ノイズ除去処理などは今回でも向上しています。 鈴木:前回は点群センサーが5セットでしたね。視点数を増やしても成立するような工夫も施してより綺麗になりました。 松元:同期の部分も改善しています。前回はステレオ映像から点群に乗り換える際に2,3フレーム揺らぎが発生してしまっていたんですよ。Perfumeさんのダンスの時刻精度というのは凄いもので、そのズレもシビアに影響してくるので。遅延も9月時点で300ms弱あったところから1/3の100msまで縮められました。 R:約半年で1/3もの遅延量短縮は大きいですね!どのように実現されたのですか? 松元:合計200msの短縮となると、積み上がっていくものを一つずつですね。基本的にパラレルに処理しているので、一番ボトルネックになる箇所を突き止めてその処理を工夫したり並列化を増やしたりなどです。高密度化、ノイズ除去のフィルター処理にディープラーニングを活用しての高速化も図っています。 📷7セットの点群センサーそれぞれのデータを元に、一つの空間を形成する。それぞれの色は各センサーが担当している範囲を表している。実験段階のプレビューでは裸眼立体視モニターも使用された。 R:前回がYouTubeでの配信だったのに対し、今回はパビリオンの物理的な空間を使った空間伝送というのも大きな違いですよね。 松元:会場で点群を何に表示するかというのも試行錯誤したポイントです。今回最終的には偏光式の3D映像をLEDに出すという、3D映像の中でもプロジェクターよりはクッキリと見える方式となったのですが、そこまでに結構な紆余曲折がありまして。小型LEDを大量に吊り下げた特殊な装置で本当に三次元的に出すという案や、水を降らして水滴にプロジェクター投射する方法、バーサライタ(点滅するLEDを回転させることによる残像で図像を表示する装置)を多層に組み合わせる案から透過スクリーンなど色々と実験しました。デバイスとしては面白いのですが、コンテンツを流すとなると難しいものも多く、決まるまでが大変でしたね。今回採用したLED方式は、 一見すると一般的な3D方式ではあるのですが、LEDによる3Dは迫力が凄く、この方式を選んでよかったと思っています。 📷夢洲に設置された実際のディスプレイ。 振動「触覚振動音場提示技術」 点群による3Dデータと並行して伝送されたのが、触覚振動データである。演者の靴裏には加速度センサーが取り付けられ、ダンスの足踏みによって発生する振動を音声信号としてリアルタイムに検出。それと同時に、位置トラッキング用センサーによって取得された動きの情報も含め、夢洲側へと伝送された。音声信号の伝送にはDanteによる非圧縮伝送が採用されている。受信側の会場では、床下に埋め込まれた128個の振動子が、演者の動きに同期して振動を提示。視覚・聴覚・触覚が融合したマルチモーダルな空間伝送が達成された。 R:振動の伝送では、特製の加速度センサーモジュールを用いられたようですね。 草深:当初は舞台床にマイクを埋め込む方法で考えていたのですが、パフォーマンスの妨げになる可能性やメンテナンス性などの観点から、別案件で振動を取る際に使用していた加速度センサーモジュールを利用した経緯となります。片足につき1個のセンサーで、2個(1人分)を1chとしてモノラルミックスし、合計でモノラル3chの音声データを取得しました。センサーモジュールは足音としてよい振動データが取れるよう、取り付けの構造などの工夫がされています。 R:その振動データが、トラッキングによる位置情報を元に会場側で再生されるということですね。 草深:位置のトラッキングセンサーは2種類、ビジョンベースとマーカーベースのものを採用しました。マーカーは衣装の肩甲骨のあたりに一人あたり6個仕込んでいます。マーカーの方が精度やリアルタイム性は良いのですが、髪で隠れたりなどロストする可能性もあるので、骨格の動きを検出するビジョンベースと合わせて安定性を確保しています。 📷床裏に取り付けられた大小2種類の振動子。アンプから振動子までは128本のアナログケーブルで接続。振動子それぞれの特性、用途に合わせてバックヤードに設置されたYAMAHA QL5にてレベル、EQが調整され効果的な振動を提示する。ヒールの裏面には加速度センサーが取り付けられている。 R:夢洲へIOWNで送られてきた音声信号と位置情報はどのように展開するのでしょうか。 草深:吹田からは振動のモノラル3 系統を受け取り、そこに夢洲側でダンス以外の雷や花火といった映像のSE 音源に合わせた振動の1系統を加え、計4トラックとしています。それを128chの振動子にどうルーティングするか、トラッキング情報を元に会場側でどれだけの範囲を振動させるかを制御しています。全体振動や縦方向での推移など振動のパターンを切り替えて、大人数が一度に体験できるようコントロールしていました。位置情報を扱えるUnityにてルーティング処理自体を行うPythonを制御し、さらにMaxやAbleton LiveのOSCでUnityをコントロールするといったシステムです。 R:会場側の振動子は2種類使用されていますが、どういった使い分けなのでしょうか。 草深:広い空間の中でわかりやすさと質感をどう保たせるか、という観点から2種類の併用に行き着きました。大型の振動子では振動のインパクトが稼げるのですが、もこもことした振動になります。一方、小型の振動子ではヒールのカツカツとした感じなど振動のテクスチャ感が出せます。この2種類を異なる割合で組み合わせることで良い塩梅を探っていきました。振動子の機種自体は入手性やある程度の強さが出るものを加味して選んでいます。 R:計測した振動データはEQなどによって演出的に効果的になるよう調整がなされていますが、振動のミキシングというのはどういった観点から行なっていったのでしょうか。 草深:難しかったのは映像や音が流れている中でどう振動を作っていくかですね。単純に威力のある振動を出すだけでは映像 / コンテンツから受ける印象と合わないので、振動の質感の部分がコンテンツに合うように演出チーム含めて細かく調整を詰めていきました。 松元:会場の準備段階では、今回使用させていただくのが未発表の楽曲であったというのもあり、本番音量でのテストがなかなかできなかったんですよね。限られたリハの回数で合わせていったのは凄いなと。 草深:リハで来ていただいた代役の方と本人とでも加速度の出方というのが全然違うので、そこも大変でした。またダンスによっては上手く加速度が出なかったりもします。例えば足を着くにしても普通に着くと踵とつま先で2発鳴ってしまう。そのあたりは振動として良いものになるよう演出家さんと相談させていただき、ダンスの微調整をしていただくとともに我々のEQ側でも修正を行いました。 振動は当初、コンテンツの中で邪魔にならないのが最低ラインとして、そこからもっと良いものを作るにはどうすればいいかと考えていました。それが最終的には、足音の振動によるリズムなど単純に楽曲のベースやキックを足元から出すのとは違う、新しい体験が作り出せたのでよかったです。 R:足音は音楽の拍子と必ずしも一致するものではないですが、音響・映像と合わせて一つのコンテンツとしてまとまりのあるものになっていると感じました。点群側でも演出面での工夫は何かありましたか。 松元:点群はカメラなので動き等の制約はありませんでした。以前は照明によってカメラが耐えられない箇所があったのですが、今回はカラーマトリクスの計算などかなりRAWレベルで調整できるようにしたので遜色なく撮れていると思います。 R:照明も吹田と夢洲がリンクした、二つの空間を繋ぐ効果的な演出になっていましたよね。 松元:照明スタッフは夢洲側の1人だったのですが、APNで高速に繋がっているのでリアルタイムに遠隔地を操作してそのフィードバックを映像で確認するというオペレートが実現できていました。 📷万博のパビリオン内では、ダイバーシティの取り組みとして車椅子振動共有体験デバイスも運用されている。デバイス土台のピエゾセンサーで床の振動を検知、ケーブルで接続された小型の振動子を手元や体の部位に当てることで振動を体感できる。右は振動をコントロールするQL5。 IOWNとリアルタイム3D空間伝送が描く未来 R:今回の取り組みを踏まえて、空間伝送技術で実現できる未来像についてどうお考えでしょうか。 松元:今回のようにイベントやライブで使っていただける部分もありますが、ベーシックには世の中に起きている変化をバーチャル化してデジタイズするというのがこの技術のポイントです。車の動き、交差点の歩行者の動きなどの情報を時刻情報と共に周囲のデバイスに共有することで、車のセンサーだけでは得られない情報で事故を回避するなど、実世界でアプリケーション、デバイスでこれまでできなかったことをするというのがデジタルツインの本来的な使い方です。今回はエンタメに寄った実証でしたが、3Dデータを”見る”だけでなくシミュレーション等に利用するなど、応用の方にシフトして広げていきたいなという思いがあります。 鈴木:最終的には今回の技術を家で使いたい、体験したいという要望が出てくると思うんです。今回使用したLiDARカメラはすごく大掛かりですが、それをどう家庭の環境に導入するかというところに興味があります。いきなり家に持ってくるのは厳しいので、まずは現状からセットアップを省力化する、デバイスを小型化する、実用化に必要なスペックを見極めるなどといった箇所から進めていきます。また、地球規模的に見ると世の中はやっぱりモバイルを求めているので、IOWNのような通信をどうモバイル化するかに取り組んでいきたいです。 草深:振動としては、足音振動がどこで発生しているのかを感じる方向定位知覚をより発展させていくことにも興味があります。どこから足音が鳴ってどこへ消えていくのか、ということを研究していくと「気配」のようなものを感じることがあり、今回もSNSなどで一部の観客の方からはそういった反応が見られました。そこに最近活発なイマーシブのような空間側でも、コンテンツを押し広げていくような動きと振動を組み合わせていけば、新しい体験を考えることができるのではないでしょうか。 今回の実証実験は、パフォーマンスコンテンツの未来を超えて、多様な情報によって人と人をつなぐコミュニケーションの未来の一端を体感する機会となった。また、IOWN APNが持つ大容量・高安定性・低遅延という特長は、AoIP化が進む音響業界において求められる通信インフラの要件を確実に満たしており、近い将来、音声制作のあり方を大きく変えると予測される。さらに、IOWNを活用した新たな時代の情報通信は、制作現場にとどまらず、交通、都市、家庭など私たちの実生活の中でも活用が現実味を帯びつつあることを、今回の取り組みを通じて感じていただけただろう。 1970年の大阪万博において、NTT(当時の日本電信電話公社)は、会場と日本各地を結ぶ多元生中継や、ワイヤレステレホンなど、当時の最先端電気通信技術を紹介した。今やスマートフォンひとつで世界中の人々とビデオ通話が可能な時代となったことを思えば、今回の万博で示される「未来のコミュニケーション」が現実のものとなる日も決して遠くはない。   *ProceedMagazine2025号より転載
Broadcast
2025/08/11

TBSラジオ ニューイヤー駅伝中継事例 / 前橋から赤坂へ、公衆回線で行うリモートプロダクション

2025年元旦。毎年恒例のスポーツイベントとして、TBSラジオが全国に向け放送を行っている「新春スポーツスペシャル ニューイヤー駅伝」。ここで世界初となるフレッツ光回線による長距離多チャンネルDante伝送の実証実験が行われた。この実験は株式会社TBSラジオ、株式会社メディアプラットフォームラボ、そして弊社メディア・インテグレーションにより準備が進められたのだが、駅伝の中継拠点となる前橋と赤坂を繋ぐにあたり、フレッツ光という公衆回線を用いている点に大きな可能性がある。全国からの中継を簡潔に行えるよう取り組みされた様子をお届けしたい。 前橋ー赤坂間でリモートプロダクション TBSラジオでは、毎年実施されるニューイヤー駅伝において、群馬県庁内に臨時のスタジオサブとアナウンスブースを設けてその中継を実施していた。ラジオの基本的な音声はテレビからのノイズマイクを含む10系統のステレオ音声。そこにラジオとして独自の実況、解説、リポートを加えて番組を制作していた格好だ。従来は仮設とはいえ、生放送に対応するラジオスタジオとサブコントロールを設営するために2tトラックで機材の搬入設置を行っていた。開催1週間前には設営が開始され、2名の技術スタッフが本番まで泊まりこみでその対応にあたるのが恒例であった。年末に技術スタッフが2名ホールドされること、ほかのスタッフをアサインすることも難しく、技術の継承がなかなかうまく行かないことなど課題は多かったという。そこで、前橋の現場機材は最低限に、赤坂のTBSラジオ本社スタジオを活用したリモートプロダクションが行えないか、ということからこの実証実験はスタートしている。 群馬県庁内ではテレビから分岐された音声を受け取りDanteへと変換、フレッツ光回線で赤坂のスタジオへと送るという構成が考案された。具体的には、群馬県庁内でテレビから提供される回線と、監督インタビューなどの回線が送られることとなる。もちろん、ダークファイバーを使うなど専用回線を使えば特段問題なく実現ができるということは想像に難くない。しかし今回の取組ではフレッツ光を活用するということに大きなチャレンジがある。地域IP網であるフレッツ網を活用することで、低コストにどこからでも中継を可能とするサービスにつなげることが狙いでもある。 今回の実験に参加している株式会社メディアプラットフォームラボ(MPL)はradikoにおける配信プラットフォームの提供、また次世代へ向けた開発を行っている会社である。radikoは全国99の民放ラジオ放送局とNHKラジオが聴けるインターネットサービスとして、月800万人を超えるユニークユーザーを誇る、まさに次世代のラジオサービスである。そのサービスを使ったことがある方ならご承知のとおり、画面上に出演者情報や放送されている楽曲の情報など、様々な付加情報サービスが提供されている。また、1週間以内の放送番組はタイムフリー視聴サービス(聴き逃し配信)もあり、それらのバックボーンとなる技術を開発提供しているのがMPL、言わばインターネット時代の放送基盤を作る会社だ。radikoとMPL では、放送基盤としての技術とともに、フレッツ網のサービスの一つであるNGN網を使って各ラジオ放送局間を結ぶ素材伝送ネットワークを運用している。従来は専用回線により接続されていた放送局間や放送局と中継拠点間のネットワークをNGN 網により構築されているということである。 公衆回線であっても低遅延で伝送を 地域IP網、フレッツ網、NGN網、聞き慣れない言葉が並んでしまったが、ここではこれらの解説をしておく。まずは、地域IP網。これは、IP電話により従来のアナログ回線による電話が置き換えられていった経緯を思い出していただきたい。アナログ回線による固定電話は電話番号を得るために当時で7万円程度の回線契約料金が必要であった。限られた資源である電話番号を占有して使用するための契約であったとも言えるだろう。これが徐々にIP化が進み、ISDN、ADSLといった技術のステップを経て、現在ではIP電話となっている。あまり大きなニュースにはなっていないが、日本国内でのアナログ回線による固定電話のサービスは2024年に終了しており、いま使われている固定電話はすべてIP電話によるサービスの提供となっている。 このIP電話の基幹となるネットワークが地域IP網である。登場した当初は、NTT内部の電話局間を結ぶクローズドなネットワークであったが、一般家庭との接続にも使われるようになり、さらにISP=Internet Service Providerとの接続を解放したことによって、一般家庭からのインターネット接続に使われるようになる。このインターネット接続が可能になった際に、サービス名称として「フレッツ」と名付けられた。フレッツ・ISDN、フレッツ・ADSLとは、まさに地域IP網がISDN、ADSLを介してインターネットへ接続されるサービスであったということだ。地域都道府県ごとのクローズドなネットワークだった地域IP網も、現在ではNTT東日本、NTT西日本それぞれの全エリアにわたるネットワークとなっている。 フレッツ網は、NTTが持つネットワーク網であり、それ自体は大規模ではあるがクローズドなネットワークである。インターネットへの接続はあくまでもISPを経由しての接続となる。以前は、都道府県間の接続はISP経由(インターネット経由であった)が、現在のフレッツ網はNTT東日本、NTT西日本、それぞれのエリア内の都道府県をまたいだ大規模なネットワークを構築している。このクローズドなネットワーク内で拠点間を接続しようというのが、今回活用したNGN網である。NGN自体はNext Generation Networkの頭文字であることからもわかるように、フレッツ網を活用した様々なサービスを想定している。今回はそのNGN内で折り返してインターネットへ出ることなく拠点間を接続し、公衆回線であっても低遅延で伝送を実現しようという取り組みである。 Raspberry PiでNTP-PTP v2 Master 実験はMPL社内から始まった。MPL社内に設置した2つのフレッツ光のルーター間でDanteの伝送が可能かどうかという実験である。Danteの伝送において、リアルタイム性は最優先される項目である。音声伝送というリアルタイム性が要求されるDanteの伝送において、遅延は即パケットロスを意味し、すなわち音の途切れとなる。それを回避するためにバッファータイムを設定するのだが、通常のDante機器においては最長5ms(機器によっては10ms)のバッファーの設定しかない。LAN=Local Area Networkを前提としたDanteであることを考えれば仕方のないことだが、NGN網を使用した実験ではそれ以上のレイテンシーが生じる可能性もあると考えDDM=Dante Domain Managerを準備した。DDMは、多数のDante機器のドメイン管理、ドメイン間の接続管理といった機能が主要なところではあるが、大規模なネットワークになった際のレイテンシーの増加に対応するため40msまでのバッファーを許容することができるという機能が追加されている。この40msをセーフティーネットとして実験を進めることとした。 まず、直面した問題はレイテンシーのゆらぎである。LANでDanteを運用してみるとよくわかるのだが、基本的にDante Networkはクローズドで、外部の影響を受けないために機器間のパケット・レイテンシーは一定である。しかし、NGN網を介したDante機器間のレイテンシーは徐々に増加するという症状が見られた。最初は音が通っているが、レイテンシーが許容範囲を超えてくると音が途切れてしまう。さまざまな可能性を疑ったが、結論として原因はPTPの不整合によるものであった。 Dante機器間は、お互いの時刻同期のためにPTP(IEEE 1588 v1)を使用している。これにより各機器は同期を行い、定量のバッファーを持って受け取ったパケットを再生する。しかし、実験で使用したネットワークの構成では、途中のどこかでPTPが不通となり同期が行えない状況となってしまった。これを解決するためには、送受信を行う拠点ごとに同期の取れたPTPグランドマスターを設置する必要があるということになる。PTPグランドマスターはGPS、NTPなど外部からの時刻情報をもとにPTPを提供する機器である。GPS、NTPといった世界中どこにいても同一タイミングの信号を受け取ることができる信号からPTPを生成することで、遠隔地間でのPTP同期を実現するというのがその仕組みだ。 もちろん、この仕組みでのPTP同期を取るためには、信号のやり取りを行うすべての拠点にグランドマスターが必要になる。一般に販売されているグランドマスターの製品は数十万円クラスの価格であることがほとんどで、高価なものでは100万円を超える。そのため、数を揃えるのコスト面からもは難しいという声が大きい。常設の施設であれば、これまでのマスタークロックに置き換わるものとして導入も可能であろうが、中継箇所ごとに準備するとなるとハードルが高いのは事実だろう。今回は、MPLがRaspberry PiでNTP-PTP v2 Masterをソフトウェアベースで構築、それを動作させることとなった。ポケットPC上で最低限のソフトウェアで動作させることでその安定性を確保しようという作戦だ。 ここで、DanteはPTP v1を使用して機器間の同期を取っているのではないかとご指摘される方もいるだろう。AES67、ST-2110といったその他のMoIP規格はPTP v2を使う。一般的なPTPグランドマスターもPTP v2のみ対応しているものが多数である。この点についてもDDMが活躍をした。DDMはAES 67との相互接続を助ける機能も持つ。その中のひとつに、Dante機器にPTP v2での同期機能を付加するというものがある。今回の実験ではこの機能を活用してインターネット上に流れているNTPをもとにPTP v2を生成、LANに流すアプリケーションをPCにインストールし、それをグランドマスターとした。DDMの機能を用いてソフトウェアベースのNTP-PTP v2 グランドマスターを構築した形だ。たしかに、それ専用の機器ではないこと、またNTPというサーバーからのレイテンシーによる誤差をはらんだものを基準とするため精度に不安はあったが、事前に長時間のテストランを実施し、レイテンシーのゆらぎが解消されることを確認し本番へと望んだ。厳密には、ネットワークレイテンシーのゆらぎが完全になくなるということではなく、バッファー数値の許容範囲内に低減されるということになる。 本番でもDante回線を使用、安定した6時間 事前の実験テストでは、大阪にあるMPL社内から赤坂をつなぐ長距離伝送試験も行われた。この実験のレイテンシーに関するデータからは、多少のゆらぎは生じるものの、平均10ms、ピーク27.5msと、40msのバッファー設定で運用可能な数値が確認されている。前述の通り、フレッツ網はNTT東日本管内とNTT西日本管内で国内で2つの独立したネットワークとなっている。前橋〜赤坂間のNTT東日本管内だけではなく、将来を見据えたNTT東西をまたいだ接続においても有用であることが実証された。 本番では、従来から使われていた光電話の回線が3つ、それに加えて今回はNGN網でのDante回線からなる4つの伝送回線が群馬県庁に準備された。なお、Dante回線が不調となった際には実績ある光電話での回線接続へ即座に切り替えられるよう冗長性が取られている。テレビから送られてきた音声は、AES分配器で光電話での伝送のための回線と、Sonifex AVN-AESIO8RでDante変換された伝送回線に分割され赤坂へ送られた。ここでDanteに変換された信号は、前橋側のDante用Network Switchに接続され、そこにRaspberry Pi上で動作する前述のNTP-PTP v2グランドマスターが接続されている。この信号がフレッツ光ルーターに繋がれ、赤坂へと伝送された。 赤坂では、サブコントロールに置かれたYAMAHA DM3で前橋からのDante信号を受け取り、昨年までは前橋で行っていた実況、解説が赤坂のスタジオで行われた。もちろん、赤坂にもRaspberry PiによるPTP v2グランドマスターが設置され、遠隔地間でのPTP v2の同期が行われている。前橋〜東京間のネットワークレイテンシーの設定は、マージンを見越して最大の40msに設定。本番前から数日にわたり接続を確立させたままとし、状況的に安定していることが確認されたため、本番でも予定通りDante回線が本線として使われた。6時間にもおよぶ本番では、音の途切れなどのトラブルもなく、無事に運用を完了することができた。 📷従来と比べて群馬県庁に持ち込まれた機材量も大幅に削減、ハイエースの荷室部分だけで賄える量になったそうだ。 中継先などのエンドポイントにフレッツ光の回線さえあれば、Danteによる多チャンネルの音声送信が実現できるNGN網を活用したサービス。専用線の工事の必要がなく実現できるということが最大のメリット。フレッツ光のネットワーク網は、固定電話を置き換えるべく整備されているため、全国ほとんどの場所で活用が可能である。 今回の実証実験では8chのDante回線の伝送であったが、今後さらなる多チャンネル、そして映像の伝送と広帯域での実験を重ねていく。また、クラウドミキシングとの統合も実験を行っておりクラウド上のミキシングエンジンと回線をセットにしたサービス提供というアイデアもある。中継機会の限られる現場などにも有用なサービスとなっていくことにも期待がもたれる。少し考えただけでもこれだけの可能性が出てくるとなると、今回の実証実験が持つ意味合い、そしてこの手法が備えているポテンシャルを実感できるのではないだろうか。   *ProceedMagazine2025号より転載
NEWS
2025/08/01

MTRXシリーズにPro Tools Ultimate永続版が付属するプロモーションが開催!

Avidより、2025年8月1日から12月31日まで、MTRXまたはMTRX Studioをご購入/登録いただいたお客様全員に対し、Pro Tools Ultimate 永続ライセンスを提供するバンドル・プロモーションを実施中! 対象MTRXインターフェイスをご購入/アクティベートした方は、Avidアカウント内、「“Products Not Yet Downloaded”(まだダウンロードされていない製品)」セクションにPro Tools Ultimate永続ライセンスがデポジットされます。 1台でシステムの中核となるMTRXインターフェースに、世界標準のProTools Ultimate(税込¥23万円相当)が付属するこの機会を是非ご活用ください!! 概要:対象インターフェイスのご購入/アクティベートでPro Tools Ultimate永続ライセンスを無償提供 実施期間:2025/8/1~12/31 対象者:2025/7/1以降、プロモ期間中に対象インターフェイスを購入し、Avidアカウントへのアクティベートが完了された方 配布方法:対象Avidアカウントへのデポジット ※本プロモーションは世界各国で実施のため、対象製品は納品までに数か月お待ちいただく場合がございます。 対象製品 Pro Tools | MTRX II Base 内蔵SPQ、Dante 256 Ch内蔵、マトリクスルーティングは4096 x4096へ。従来のMTRX Optionカードと完全互換を持ち、TB3 Optionにも対応したことで、大規模なミキシングおよびモニタリング・キャパシティーを柔軟に実現する現代オーディオ・システムの中核。 価格:¥1,089,000(税込) Rock oN Line eStoreで購入>> Pro Tools | MTRX Studio 2chマイク入力、16in、16out、64ch Dante、DigiLink、ADATなどを含む様々な入出力とSPQが標準搭載。1Uというコンパクトなサイズからは想像できないほどの機能を盛り込んだオールインワンインターフェース。 価格:¥771,100(税込) Rock oN Line eStoreで購入>> Pro Tools | MTRX Base Protoolsシステムのオーディオ入出力の核となるインターフェース。8基のカードスロットを備え、多様なI/Oフォーマットのカードを任意に装着可能。本体入出力は AES/EBUとMADIを装備。 市場流通分のみ(メーカー生産完了) 日々進化を遂げる、業界大定番のProTools Ultimateと、既存システムはもちろん今後のシステム拡張まで対応できるパワーを持つMTRXシリーズが一度に手に入るスーパープロモーション!まずはお早めに、ROCK ON PROへお問い合わせください!
NEWS
2025/07/25

SSL ORACLE 登場 ~新世代のアナログ・インライン・コンソール~

SSLが、新たなフラッグシップ・アナログ・インライン・コンソール「ORACLE」を発表しました。 アナログ・チャンネルラックの信号経路をそのままに、SSLの現行テクノロジーを搭載したデジタル・コントロールサーフェスから精緻に制御。リコール精度も向上し、アナログならではの音質とデジタルの迅速なセッション管理を融合したコンソールです。 ORACLE 概要 - 最大112入力のミックスダウンが可能な大容量インライン・コンソール。 - 4xステレオミックスバス,16トラックバス,10Auxバス,8ステレオFlexグループ. - チャンネルラックの拡張により、24ch or 48chインラインのアナログ信号処理 - THE BUS+とダイナミックEQプロセッサーを統合 - 瞬時にセッションリコールを実現するSSL独自技術 ”Active Analogue” - DAWコントロール SSL伝統のサウンドを即座に呼び起こす ”Active Analogue” コントロールサーフェイスに特化した設計により、独立した2種類のプロセッサーをデジタル制御。プロセッシング、ルーティング、ゲイン、パンを正確かつ瞬時にリコール可能。 PureDriveマイクプリ、E/Gカーブ対応EQ、THE BUS+といったSSL伝統のアナログ回路を、セッション単位で瞬時に切り替える現代のスピード感が実現した。 独立するオラクル・ラック ORACLEは、コントロールサーフェイスのほか、センターセクションラック、24chインラインチャンネルラックの3つのハードウェアで構成。24chインラインチャンネルラックは、最大2台まで拡張もできる。信号処理を担うこれらラックは、コンソール後部はもちろんのこと、マシンルームなど離れた場所の設置も可能であり、床置き、ラッキングも問わないためスペースに限りのあるスタジオ含め幅広い環境に設置できる。 センターセクション / DAWコントロール センターセクションではメイン、トラック、Auxバスのコントロール、フォールドバック情報とレベル表示に加えて、各チャンネルのインプットからLF/SFまでを画面表示も可能。DAWでのSSL系プラグインに慣れた方々にはむしろ馴染みあるUIで本物のSSLアナログチャンネルストリップを操作できるともいえる。 現代コンソールとしてDAWのコントロールにも対応。8chベイそれぞれのFOCUSキーでアナログ・プロセッシングとDAWコントロールを切り替えられ、アナログコントロールとDAWコントロールが同時に展開も可能というハイブリッドぶりだ。 横幅約1.4mのサイズに、現代SSLの技術を凝縮した「ORACLE」。今後のアップデートではDolby Atmosレンダラーとの連携も予定されています。詳細にご興味のある方は、ぜひROCK ON PROまでお問い合わせください。
2 / 1112345678...»

Solution

Solution
制作環境を飛躍させる

Works

Works
システムの実例を知る

Brand

Brand
そのワークフローを実現する

主要取扱ブランドホームページ

リストに掲載がない製品につきましてもお気軽にご相談ください。

»問い合わせフォーム