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澤口 耕太

広範な知識で国内セールスから海外折衝、Web構築まで業務の垣根を軽々と超えるフットワークを発揮。ドラマーらしからぬ類まれなタイム感で毎朝のROCK ON PROを翻弄することもしばしば。実はもう40代。

Avidから音楽のための新I/O、Pro Tools | Carbon ~Built to capture brilliance ~<ProceedMagazine掲載記事>

Avid純正I/Oとしてはおよそ10年ぶりとなる新製品、Pro Tools | Carbonが発表された。Built to capture brilliance – 音楽の輝きを捉えるために生まれた – をキャッチコピーとする待望の新プロダクトだ。本記事ではHDX DSPチップ内蔵という驚愕の進化を遂げた仕様をはじめ、Avidのイノベーションと最新テクノロジーが盛り込まれた新時代のAvid I/Oの機能と実力をあらわにしていく。

●Pro Tools | Carbon 価格 ¥478,500(本体価格 ¥435,000)

<主な仕様> ・対応OS:Macのみ ・対応DAW:Pro Tools, Pro Tools | Ultimate ・同時最大入出力:25インプット x 34アウトプット ・Mic/Line 入力:8x プリアンプ・インプット (コンボジャック5-8と2系統のInst入力はVariable Z対応) ・Analog Line I/O:8 x 8 (DB25) ・ADAT I/O:2 x Optical (ADAT/SMUX) 16 x 16 ・モニター出力:2x 1/4″ ・ヘッドフォン出力:4 x 1/4″ (Stereo) ・コンピューターとの接続:Ethernet (AVB) ・同期:Word Clock (BNC) ・サンプリング周波数:44.1kHz-192kHz ・ビットレート:32bit ADDA

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HDXチップ内蔵オールインワンI/O

Built to capture brilliance – 音楽の輝きを捉えるために生まれた – Pro Tools | Carbonは、そのキャッチコピーの通りミュージック・クリエイターをメイン・ターゲットとしたプロダクトだ。Pro Tools | MTRX / Pro Tools | MTRX Studioが、主に膨大なトラックをハンドリングすることが想定されるポストプロダクションに歓迎される仕様だったことを考えると、久々の音楽制作向けハードウェアと言えそうだ。

同時最大25in/34outの豊富な入出力、新開発のマイクプリ、インストゥルメント入力のインピーダンス可変機能、そして大注目の内蔵HDXチップなど、機能面を見ただけでもソロからバンド編成のミュージシャン、音楽エンジニア/プロデューサーなど、音楽制作で使用するために必要十分な機能がふんだんに盛り込まれている。しかし、さらに注目に値するのは、AvidがこのPro Tools | Carbonのために多くの新技術を研究開発したという事実だろう。Pro Tools | Carbonは従来とはまったく異なる新しいコンセプトを持ち、I/Oそのものの使い方だけでなくPro Toolsやシステムセットアップ、ひいてはワークフローまで変革するほどのイノベーションを秘めたプロダクトと言っても過言ではない。まさにAvidのイノベーションが詰まったこのプロダクトの機能や使い方について、以下で詳細に見ていきたい。

Pro ToolsにHDXのパワーを与える

Pro Tools | Carbonの仕様で最も目を引くのは、なんといっても筐体内部に搭載されたDSPチップだろう。チップはAvid HDXカードに搭載されているものと同じものとなり、non-UltimateのPro ToolsでもHDXシステムと同様にオーディオをニアゼロ・レイテンシーで扱うことができるようになる。しかも、AAX DSPプラグインをPro Toolsで使用することまで可能になる。

HDX+Pro Tools | Ultimateというシステムのもっとも大きなアドバンテージであったDAWからのモニタリングやプラグインの掛け録りがPro Toolsにも開放された格好となるが、これはPro Tools | CarbonがHDXシステムの単なるエントリーモデルという立ち位置のプロダクトであることを意味するわけではない。HDXはシステムの構成上I/OとDSPカードが別々の筐体となるが、Pro Tools | Carbonは本体内部ですべてのオーディオプロセッシングを完結させることができる。そのため、一貫したアルゴリズムによる処理や介在するインターフェイスを減らすことが可能となっている点は、既存のHDXシステムに対するアドバンテージと言えるだろう。また、新テクノロジーであるHybrid Engineによって必要なトラックだけをDSPモードで処理することが可能となり、マシンパワーを効率的に運用できるようになっていることも見逃せない。


パンポットの上にある稲妻マークがDSPモード切替ボタン。ウィンドウでは、いくつかのプラグインがPro Tools|Carbonで処理されていることがわかる。

高品質を実現する数々のテクノロジー

Pro Tools | Carbonは音楽クリエイターをメイン・ターゲットとしているだけあり、サウンドクオリティにもこだわったデザインがなされている。背面に8機搭載されたマイクプリは本機のために新開発されたもの。Avidいわく「Avid史上最高のクオリティを誇る性能」とのことだ。マイク/ライン入力のうち、6系統にはインピーダンスを変化させることができるVariable Zを搭載。ギター/ベースのキャラクターを変化させたり、リボンマイクを使用する際に適切なインピーダンスに設定することが可能となっている。

こうしたアナログ部分だけでなく、デジタルオーディオのクオリティにとって極めて重要なアルゴリズムの部分にも新技術が使用されている。Pro Tools | CarbonはAvid I/Oとしては初の32bit Floating処理に対応。ソフトウェア部分ではPro Tools 11から採用されていたが、本機への実装によって入力から出力までを一貫して32bitで処理することが可能となり、信号経路の途中で不要な歪みが発生する心配から解放されることになった。クロックには特許取得の倍精度JetPLLジッター除去技術が用いられている。従来のJetPLLを基にしたクロックの2倍の速度で動作するこのテクノロジーにより、これまでよりもジッターの発生を抑制することに成功している。



non-Ultimateユーザー向けのI/Oとしては初となる8ch分のプリアンプを搭載。背面コネクタはコンボジャック仕様でLineレベルと兼用可能だ。2系統のADAT IN/OUTコネクタは96kHzまでのサンプリングレートで合計16ch分のデジタルI/Oを確保、フットスイッチにも対応し、これ1台で制作環境を完結させることが可能な仕様となっている。

Pro Tools | Carbon内部の様子。中央にDSPチップを積んだ基板が確認できる。内部はFPGAで動作しており、高速な処理が可能。すべてのオーディオ処理が内部で行えるため、スループット720nsという超高速処理を可能としている。静謐性を重視したファンは内部温度を検知し、フロント側からリア側へと空気の流れを作ることで効率的な排熱を行う。

ソロアーティストからバンドまで豊富な入出力

最大同時25in/34outという豊富な入出力は、ソロアーティストからバンドまで、ひとつの機体でレコーディングすることを可能としている。アナログ入力はMic/Line x8ch + トークバック(Mono)に限定されるが、これだけでもバンドの個別録りに十分対応できる。さらに2系統のADATを活用して、入出力を拡張することも可能(16ch @44.1-48kHz/8ch @88.2-96kHz/4ch @176.4-192kHz )。フルバンドやオーケストラのレコーディングにも対応できるだろう。

フロントパネルに4系統が備わるヘッドフォンアウト、2系統のインストゥルメント入力も特徴的だ。アコースティックなユニットを自宅スタジオで収録したり、ドラムがブースに入ってギターとベースはコントロールルームから同時録音、といった使い方ができる点は、インディペンデントな活動をするアーティストやエンジニアにはうれしい仕様と言える。さらに、背面にはメインアウト2系統に加えて8ch分のLine出力を備えているため、商業スタジオでも従来のI/Oと同様に使用することが可能だ。


Variable Z対応のInst入力を配置。

フロントパネルに備わる4機のヘッドフォン出力。

先進のAVB接続にも対応したセットアップ

リリース当初はMac専用機となるPro Tools | Carbon。HDXカードもDigiLinkケーブルも不要なこのI/OはMacとの接続は至ってシンプル。それでいて、外部機器との間には十分な拡張性を備えている。Pro Toolsの対応バージョンは、本機の発表に合わせてリリースされたPro Tools 2020.11以降、対応OSはCatalina 10.15.6以降となっている(macOS 11 Big Surには未対応)。

Macとの接続はAvidライブコンソールであるS6Lと同じAVBが採用されており、LANケーブル1本でMacとの接続が完了する。LANポートのないMacBookの場合は、現状ではApple純正アダプタの使用が推奨されている。USB-Cポートしかないモデルの場合はアダプタを2重に使用しなければならないのが難点だが、今後、Avidから何かしらのソリューションが発表されることに期待したい。

Pro Tools | Carbonの開発にあたってAvidはAppleとも強力なコラボレーションを取ったようで、CoreAudioが認識するAVBストリームを、Pro Tools専用のエリアとOSと接続するエリアにわけるような動作を実現している。これにより、Pro Toolsからのアウトと同時に、同じMacにインストールされたその他のアプリケーションのアウトプットもPro Tools | Carbonから聴けるようになっている。また、AVB接続を採用したことで将来の拡張性にも期待が高まる。残念ながら現時点では明確なビジョンは示されていないが、Pro Tools | Carbon背面にはふたつのLANポートがあるため、何かしらの拡張性を見据えているのは確かだろう。ネットワークオーディオの利点を生かしたスケーラブルな機能の実装が待ち望まれるところだ。


Pro Toolsから本体の様々な設定が可能。ヘッドフォン出力へのソース切り替えやトークバックゲインなどもPro Toolsから変更できる。

AVBストリームがOS内部で二股に別れたような認識のされ方をしている。これにより、Pro Tools以外のアプリケーションの音もPro Tools | Carbonから再生が可能。

また、MTRX/MTRX Studioの場合、内部のルーティングマトリクスを操作するためには専用アプリであるDADManにウィンドウを切り替える必要があったが、Pro Tools | Carbonは完全なAvidの純正I/OであるためPro Toolsソフトウェアからコントロールする。特に4系統のヘッドフォンアウトのソースはStereo Mixを出力できることはもちろん、CUEとしても使用可能だ。CUEモードとして設定したヘッドフォンアウトはI/O設定でアウトプットとして認識するため、CUE Mixとして使用することもでき、さらに本体に内蔵されているTALKBACKを混ぜることも可能だ。そのほか、後述するHybrid EngineのコントロールもすべてPro Toolsソフトウェアから離れることなく行うことができる。

そして、パーソナルユースでも気になるのはその静粛性。Pro Tools | Carbonの開発にあたっては、サーマルデザインも一新されたそうだ。内部ファンは効率的な排熱のために回転速度を自動調整し、放熱量を低く抑えながらも静かな筐体を実現している。ミュージシャンが自宅スタジオでレコーディングする場合などでは、マシンのファンノイズはことのほか大きなノイズ源となる。さすが、音楽のために作られたI/Oを自称するだけのことはあるというものだ。

Hybrid Engine、Native-DSPパワーの統合

Pro Tools | Carbonに内蔵されたDSPを活用することで、Pro ToolsにHDXシステムのアドバンテージを追加することができる。前に掲載した稲妻マークが各トラックに用意されており、1クリックでDSPへの切り替えが可能だ。

多くの特徴と機能が詰め込まれたPro Tools | Carbon。ここからは、その機能をどのように活用していくことができるか考えてみよう。

Avidが考えるオーディオ処理の新しいコンセプトはHybrid Engineと名付けられた。Pro Tools | CarbonはDSPチップを内蔵しているが、すべてのオーディオ信号を自動的にDSPで処理するわけではない。DSP/CPUそれぞれの負荷や、作業に必要な機能に応じてDSPとCPUに処理を割り振ることができるようになっている。具体的には、Pro ToolsのトラックごとにDSPモードのON/OFFが切り替えられるようになっている。DSPモードがONになったトラックのオーディオストリームはPro Tools | Carbonの内蔵DSPによって処理されるようになるため、ニアゼロ・レイテンシーでのモニタリングやAAX DSPプラグインの使用が可能になるという仕組みだ。例えば、ボーカルをレコーディングする時やギターソロを差し替えたい場合などには、録音するトラックだけをDSP ONにしておき、残りのトラックのプレイバックにはCPUパワーを使用する、といった使い方が考えられる。トラックのDSPモードON/OFFは、Pro Tools上で1クリックで実行可能だ。

AAXプラグインの柔軟性を最大限に活用

本体にDSPを内蔵したオーディオI/Fとしては、他社がAvidに先駆けて多くのモデルをリリースしている。しかし、その多くは本体がホストに接続されていない状態ではプラグインを使用することができないため、セッションを持ち出す際には必然的に筐体ごと持ち歩かなければならなかった。それに対して、すべてのAAX DSPプラグインはNative環境でも動作するため、外部スタジオにセッションデータだけを持ちこんだり、ほかのクリエイターとコラボレートすることが容易に可能だ。そもそも、AAX開発時には「DSP環境とNative環境でのサウンドテイストの違いをなくす」ということが大きな目的のひとつとして掲げられていた。Pro Tools | Carbonの登場によって、より広範なユーザーがこの恩恵に与ることができるということだ。

当然だが、Avid純正のプラグインだけでなく3rdパーティ製のAAX DSPプラグインを使用することもできる。ピュアなサウンドキャラクターから積極的な音作り、ギターエフェクトやアンプシュミレーターなど、使い尽くせないほどのバリエーションからイメージにぴったりのプラグインを探す時間が、実は一番楽しいひとときかもしれない。

8基のマイクプリに加え、フロントにもInst入力2系統(Variable Z対応)とヘッドフォン出力4系統を備えたPro Tools | Carbonがあれば、自宅スタジオでも本格的なレコーディングが可能となる。プリプロ制作はもとより、ライン入力とDSPプラグインを活用すれば本番Recやセッション録りまで自宅で実現することができる。ヘッドフォンアウトにはそれぞれ別々のモニターミックスを割り当てられるので、専用のキューシステムがなくてもミュージシャンごとに最適なモニターを返すことができる。もちろん、豊富な入出力を活用して業務用スタジオの既存システムに組み込むことも可能だ。

Pro Tools年間サブスクリプションが付属

Pro Tools | CarbonにはPro Tools年間サブスクリプションライセンス1年分が付属しているため、まったくの新規ユーザーでもすぐにPro Tools | Carbonを使用してクリエイティブな活動が行える。この付属する年間サブスクリプションにはPro Tools Perpetual Parachuteという特殊なオプションがついており、サブスクリプションが切れたあとも最後にダウンロードしたバージョンのままPro Toolsを使用し続けることができる(Avid Complete Plugin Bundleなどの特典プラグインにはアクセスできなくなる)。UPGなどを行いたくなったタイミングでサブスクリプションを更新して、ふたたびUPGや特典の権利を得ることも可能だ。では、すでにPro Toolsのライセンスを持っているユーザーはどうなるのか!?という部分については、下記の表にまとめたので参照していただきたい。

また、ご存知の方も多いと思うが、年間サポートプランまたは年間サブスクリプションが有効中のユーザーはAvid Complete Plugin BundleやHEATをはじめとする特典プラグインを使用することができる。Pro Tools | Carbonに付属する年間サブスクリプションでも、もちろんこの特典を得ることが可能だ。それらに加え、Pro Tools | Carbon購入者限定のプレミアムプラグインとして、3rdパーティ製のプラグイン9種が付属する。購入したその日から、Pro Tools | Carbonのアドバンテージをフル活用することが可能となっている。


Pro Tools | Carbonが、まさにミュージシャン/音楽クリエイターのためのI/Oであることがおわかりいただけただろうか。盛り込まれた機能とテクノロジーだけでなく、そこに込められた情熱も含めて知れば知るほど実機に触れてみたくなる1台だ。


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*ProceedMagazine2020-2021号より転載

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*記事中に掲載されている情報は2021年01月25日時点のものです。