«Headline
Author
澤口 耕太
広範な知識で国内セールスから海外折衝、Web構築まで業務の垣根を軽々と超えるフットワークを発揮。ドラマーらしからぬ類まれなタイム感で毎朝のROCK ON PROを翻弄することもしばしば。実はもう40代。
現役サウンドデザイナーによる実践レビュー!vol.2 ~Le Sound AudioWindでロケ映像を美しく仕上げる
既存のライブラリから音源を選び、尺を合わせて加工して、足りない音は収録…という従来のワークフローとはまったくことなるアプローチでサウンドデザインの世界を拡げるLe Soundプラグインは、効果音をシンセサイズするという、プロシージャルオーディオのコンセプトにもとづいたアプローチで自由自在なサウンドメイクを可能にします。
このLe Sound製品を、TV番組、CM、アニメーション、イベントなど幅広い分野で大活躍中のサウンドデザイナーである安江史男 氏(Tacit Knowledge Sound LLC)、荒川きよし氏(株式会社 Async)のおふた方に実際に使用していただき、実践的な使い方を教えてもおう!というこの企画。
全6回予定の第2弾は株式会社 Async 荒川 きよし 氏によるAudioWindの実践レビュー。NHKで20年にわたりあらゆるジャンルのテレビ番組でサウンドデザインを担当してきた同氏は本稿執筆に先立ち、5.1chサラウンドでのドキュメンタリー番組にAudioWindを使用。
記事後半では荒川氏謹製スペシャルムービーを使用して、カメラ内蔵マイク / ロケ音声のみ / ロケ音声 + AudioWindの比較動画もご用意しております!
荒川 きよし 氏 プロフィール
1996年、NHK入局。
1998年より音響効果業務を担当。ドキュメンタリー、子供番組、コントやドラマなどジャンルレスに対応。
2018年に独立し株式会社Asyncを設立。現在はアニメーション、バラエティ、ドラマ、CM、web、映画などで、選曲と効果音をトータルでデザインしている。
今回ドキュメンタリーのテレビ番組を制作する案件があり、これは絶好のタイミング!ということで、LE SOUNDのAudioWindプラグインを活用させていただきました。
今回の番組は5.1chサラウンドで作成するというとで、現地で録音されたサラウンドでの音ロケ素材もたくさんありました。
MAに入る前の効果音の仕込み段階では、実際の映像の同録音声とともにロケ音のサラウンド環境音をベースに、エディットしながら全体の環境音を作りんこんでいくのですが、もちろんそれだけでは成立しない部分も出てくるので、風音やフォーリーなどでも補強しながらサウンドデザインしていきます。
特に風音などはサラウンドで表現しようとするとステレオのライブラリー素材などをエディットして作り込んでいくのですが、ライブラリーも無限にはないのでだんだん似たような感じになってきてしまったり…
ということで今回の「AudioWind」。
最初はなんとなく人工的なサウンドをイメージして立ち上げたのですが…
適当なプリセットを選択すると、なんだか心地よい風音が…!ナチュラルで使いやすい感じの音色ですね。
しかも5.1バスに接続するとサラウンドで立ち上がりました。
これを映像に合わせてオートメーション使ってエディットできるとなるとこれは相当使えるのでは…!
最初に使い始めた人はプリセットのOutsideのなかのForest Lowなんかを聞いてみると、すごく使いやすい音色なのがわかるのではないでしょうか。
GLOBALのSPEEDのところのパラメータを動かすと風速が変化して、映像に合わせてそのつまみをいじるだけで簡単に抑揚のついた風を作ることができます。
LFEの送りのパラメータもあり、このへんをオートメーションで揺らすとLFEを使用した爆風の迫力も簡単に調整できます。
通常、既存の録音された音などで抑揚のついた風を作るとなると、風の盛り上がっているところを抜き出して繋いだり、EQやボリュームなどのオートメーションを書いていくのですが、このLE SOUNDのプラグインの強みは手間をかけずに映像に合わせて狙った抑揚を作り出せることですね。限られた時間の中で制作する現場においては非常に強力なツールになりそうです。
プリセットも非常に使いやすい音色が多く、森林のそよ風から切り立った山頂の爆風まで、イメージに近いものからエディットしていけば時間を圧縮しながらも思い通りのサウンドを作ることができました。
実際に制作した番組の映像素材はアップできないので、木々が風に揺らいでいる映像をテキトーに撮影して、AudioWindで仕上げてみました。
まず最初はiPhoneで撮影したオリジナルの映像です。マイクはiPhoneのマイクになります。
テーブルに置いて撮影したものですが、さすがに音のほうは吹かれていて使えませんね…
次の動画はZoom H2nで、近くの場所で鳥や虫などを別録音した素材で差し替えたものです。フロントのMSマイク素材をMIDSIDE MATRIXのプラグインで調整し、AUDIO EASE Altiverbで少しアンビエンスをつけています。
これだとやはりちょっと物足りないですね…
これにAudioWindで風音を足していきます。4トラック分のAudioWindを走らせてあちこちオートメーションをいじってみます。
NUENDO側のEQ、VOLUMEも書き込んでいます。
出来上がったものがこちらです。
AudioWindのオートメーションはこんな感じ(↓)です。割とテキトーです。
NUENDO側のEQやボリュームもオートメーション書きました。
コントローラブルな風音が手元にあるのというのは非常に心強いですね。もっと細かくいじっていくとさらに表情を作っていけそうです。
これからかなり出番が多くなりそうなプラグインでした!
Le Sound 実践レビュー第2弾、いかがでしたでしょうか!?最後のムービーでは、0:30付近からググっと風音が大きくなってくる時のニュアンスなどが、収録音声のみのムービーよりもかなりリアリティをもって迫ってくるのが印象的でした。
自然音というのは常に変化していて、そのバリエーションはまさに無限です。しかし、そもそも、風や雨といった素材はマイクという機材にとって非常に相性が悪いもので、ライブラリや生音収録だけではバリエーションに限界があります。
今回荒川氏にご紹介いただいたように、現場でロケ収録した素材とともにLe Soundプラグインを使用すれば、自然が生み出す絶え間ない変化に近いサウンドを制作できるのではないでしょうか。
今回登場したプロダクトはこちら
AudioWind V2 Pro
販売価格:¥44,000(本体価格:¥ 40,000)
ダイナミックに天候を操る、風のシンセサイザー。プロシージャル・オーディオ技術を用いた革新的なプラグインで、パーフェクトな風の音をたった数分で作成することを可能にします。わずかなコンピューター・リソースで動作し、Le SoundのD.O.S.E.テクノロジーによって、5.1chまでリアルタイムで動作します。全体を作り直すことなく、サウンドを微調整することが可能になります。
Rock oN Line eStoreで購入>>
*記事中に掲載されている情報は2021年07月02日時点のものです。現役サウンドデザイナーによる実践レビュー!vol.1 ~Le Sound AudioElecで電撃サウンドを自在にデザイン