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2026/02/27
JAPRSトークイベント ”「内沼映二からの伝言」〜音楽感動を伝える感性・技術への深堀〜” 開催のお知らせ
一般社団法人 日本音楽スタジオ協会より、トークイベントのお知らせです。
今回のトークイベントは、昭和・平成・令和の各時代において第一線で活躍を続けているエンジニア 内沼映二氏の迎え、元ビクタースタジオ長 高田英男氏の進行のもと、内沼氏の音楽制作への向き合い方やこれまでのご経験を深堀りする貴重な機会です。
若手レコーディングエンジニアの方や将来エンジニアを目指している学生の方はもちろんのこと、レコーディングに関わる多くの皆様にとっても、大変興味深い内容となっています。
この貴重な機会をお見逃しなく!
ご参加を希望の方は下記イベント概要内のリンクより、お申し込みフォームをご利用ください。
トークイベント「内沼映二からの伝言」〜音楽感動を伝える感性・技術への深堀〜
主催:一般社団法人 日本音楽スタジオ協会(JAPRS)
日時:2026年5月2日(土)14:00開場/14:30開演
会場:東京ウィメンズプラザホール
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5−53−67
東京ウィメンズプラザB1
入場料:2,000円 (※学生・未成年は無料)
申込方法:お申込みフォームよりお申込みください。
Media
2026/02/19
ファイルサーバーと汎用IT技術の融合 〜独 ELEMENTS社 ファイルベースワークフローの中心に〜
ドイツで誕生し、ファイルベースワークフローの歩みとともに成長を続けてきたELEMENTS。映像と音声の垣根を超えたファイルベース統合、トータルのワークフローソリューション、新しいアプローチの提案がELEMENTSが提供する製品群にはある。同社の持つコンセプト、先進性、そしてユーザーへもたらされるメリットを、その生い立ちから機能を一つ一つ紐解いていき、最深部へと迫っていこう。
サーバーを特殊なIT製品にしない
ELEMENTSはドイツの西部、デュッセルドルフに本社を構えるエンタープライズ向けのファイルサーバー専業メーカーだ。ELEMENTSのコンセプトの根幹をなすのは「IT技術との融合」。本来はファイルサーバー自体がIT技術による製品であるずなのだが、エンタープライズ向けのファイルサーバーは導入する現場の用途に合わせたカスタマイズがなされるため、IT技術の産物であるものの汎用的な技術とは相容れない関係に陥っていることも多々ある。
確かに、NLEやDAWといった広帯域かつシビアなリアルタイム性を求めるクライアントアプリケーションがうまく動作するには、よく検討されたシステムアップが必要となり、単純に汎用的な製品を用いていくわけにはいかない。IT技術の最先端ともいうべき分野が、却って一般的なIT技術と親和性が低い特殊な製品分野になってしまっているのが現実である。ELEMENTSがわざわざ「IT技術との融合」という一見なぜ?と疑問を生じさせるようなコンセプトを掲げなければならないような現状があったわけだ。そして、この現実を捉えたコンセプトはユーザーに受け入れられる。2010年ごろからの開発を経て2014年に製品リリースが始まると、ヨーロッパ、アメリカで一気にシェアを拡大した。
日進月歩で進化する汎用的なIT技術、それと足並みを揃えて進化することができるエンタープライズ向けのファイルサーバー。これが目指すべきELEMENTS製品の姿だという。特殊なITの知識を持たずとも、クライアントPCを操作するユーザーが迷いなく簡単に使用できるUIを提供し、汎用的なIT技術に対して恒常的なブラッシュアップを重ねていく。これがELEMENTSの根幹となる製品のポリシーとなっている。
ELEMENTS BLINK / BeeGFS
汎用的なIT技術では満足な性能を得られない、だからこそ特殊な技術を用いる、その結果、製品そのものの特殊性がさらに高まっていく。この流れはファイルサーバーの宿命のように見えるが、「汎用的なIT技術」と足並みを揃えて進化するとしたELEMENTSではどのようなアプローチを行っているのだろうか。その答えとなるが「ELEMENTS BLINK」と呼ばれるBeeGFSを基盤技術としたファイルシステムである。
ドイツで開発されたBeeGFSは、データストレージ内のファイルやデータを管理する根幹を担うファイルシステムの一種で、科学技術計算などのハイパフォーマンス・コンピューティングの分野で活躍する、高度な並列処理を可能とするオブジェクト指向の最新ブロックレベルストレージ・システムだ。その特徴は、実際にデータが格納されているストレージサーバーと、その場所を管理するメタデータサーバーが別にあるという点。一般的なストレージであれば、”ABCD.xxx”というデータがほしいというリクエストを受け取るのはストレージサーバー自体であり、リクエストを受けたサーバーがデータを引き出して転送を行う。そのため、この部分のスペックが高ければ高いほど高速なサーチ、データの引き出しが行えるということになる。
これが、BeeGFSのようなオブジェクト指向のサーバーになると、データのリクエストを受けるのはメタデータサーバーになる。クライアントはそこでデータのありかを教えてもらい、それを直接取りに行くという仕組みになる。1人の超優秀な受付係にリクエストをすると必要なデータを持ってきてくれる、というのが従来のファイルサーバーの動作イメージ。一方のBeeGFSは、複数の受付係が並んだカウンターでリクエストを伝えると、データの場所を教えてくれるのでそれを自分で取りに行くというイメージだろうか。
この超優秀な受付係も、さすがに1人でこなせる仕事量には限界がある。つまり、リクエストが集中するとパンクしてボトルネックになってしまうのが従来型のサーバーである。それを解消するのがオブジェクト指向の考え方だ。案内を受けた後は、それぞれのクライアントPCが直接データを取りに行くため、並行して受けるリクエストに対してのパフォーマンスが向上する。
📷NASと同一の筐体に「Media Library」と呼ばれる強力なMAMなどの機能を追加した、ELEMENTSの主力ともなる製品。その名の通り、ONE=1つですべてを行うことができるマシン。処理負荷の高い動作を行わせる場合には、外部にWorker Nodeと呼ばれるPCを増設することで処理分担を行うことも可能。
📷ELEMENTSのフラッグシップモデル。NVMe SSDの搭載により驚異的な速度を発揮。その速度は70GB/sを超え、一般的に入手可能なネットワークインフラの速度を凌駕する。4K作業も楽々こなす、まさにモンスターストレージ。容量は、300TBと600TBの2種類。とにかく速いストレージが欲しい、という方はぜひとも候補に加えていただきたい。
📷IBC 2025で発表された最新機種。BOLTと同様にNVMeを搭載した超高速ストレージ。従来のBeeGFSではなくCeFSを採用したスケールアウト型のストレージとして登場している。スモールサイズからスタートし、高速かつ大容量のリクエストにも応える製品。製品単体での速度はBOLTに譲るが、スケールアウト型の拡張性と冗長性にメリットを感じるならこの製品を選択となる。
📷ハンドキャリーもできるNASストレージ。16DriveのSSDもしくはNVMeを搭載することができ、撮影現場などで活躍するストレージとなっている。ONEと同様「Media Library」機能を持つため、現場で撮影したデータをすぐにプロキシ作成して、外部からプレビューできるようにするといった芸当が行えてしまう。
ELEMENTS BLINKが解決する課題
それでは、なぜ一般的なファイルサーバーでシステム的に優秀なオブジェクト指向の手法が取られていないのだろうか。それは、システムが複雑になってしまうことがひとつ。また、メタデータサーバとやり取りをするための専用のアプリケーションなどを介在させないと、クライアントPCからファイルのやり取りができないといった問題があったためである。
まず、システムに関してを見ていく。従来はデータを置くためのストレージエリア、それを管理するためのサーバーPC、この2つががあればファイルサーバーは成立するのだが、オブジェクト指向ではさらにメタデータサーバーが必要になる。これを、ELEMENTSでは1つのサーバー筐体内で同居させることに成功している。サーバーOSのディスクと別にメタデータサーバー用のディスクが用意され、例えば、ELEMENTS ONEではOS用のディスクが2台、メタデータ用ディスクが2台、そしてOS / メタ共用のホットスペアが1台という3重化されたシステムとなっている。十分な安全性を確保したうえで、1つの筐体でサーバーOSとメタデータサーバーの共存が実現されている。
もう一つの課題であるクライアントPCからのデータのやり取りだが、ここに用いられているのがELEMENTS BLINKと呼ばれる画期的な技術だ。ELEMENTSクライアントソフトをPCにインストールすれば、ELEMENTS内部のワークスペースは通常のネットワークドライブと同じようにマウントされ、Mac OSであればFinder、WindowsであればExplorerから直接やり取りすることができる。
実に当たり前に見える動作なのだが、この裏側で実はとてつもなくすごいことが行われていたりする。
FinderやExplorerで見ているデータは、PC内のものではなくELEMENTSのストレージ上に存在する。つまり、単にファイルへアクセスするだけでも、実際にはメタデータサーバへの問い合わせ、データの書き込み、読み込みといった動作が必要になる。この一連の動作をユーザーが違和感や遅れを感じることなく、ELEMENTSのクライアントアプリケーションではOS標準機能のようにやってのけるわけだ。使用しているユーザーからは見えないところで、BeeGFSで動作するファイルサーバーへの超低遅延かつ高速なアクセスを実現、メタデータサーバーを経由してのアクセスであることをユーザーが感じることは一切ない。しかし、その内部ではあたかも当たり前のように高度な処理を実施している、これがELEMENTS BLINKである。
そして、汎用のSMB、CIFSによるアクセスも可能だ。少ない台数であればSMBなどによるアクセスがボトルネックになることは無いが、接続台数が増える場合にはSMB GATEWAYサーバーを用意することが推奨されている。やはり、BeeGFSをSMBプロトコルに変換するためにはそれなりのパワーを必要とするようだ。なお、BeeGFSを採用するモデルは、ELEMENTS ONE / BOLT / CUBEの3機種。ELEMENTS NASはXFS、ELEMENTS GRIDはCeFSを採用している。
また、エンタープライズサーバーとして必須機能とも言えるAvid Nexisの互換モードとなるBIN Locking Modeも備えており、Avid Media Composerでの共有ワークフローも実現可能である。オープンエンドでのファイル書き込みモードあり、追いかけ編集にも対応できるなど、最後発のサーバーらしく、これまで市場で受け入れられてきた便利な機能はほとんどが実装されていると言っていいだろう。
ルーチンはWorkflow Automationで構築する
次に、汎用ITとの融合についての話をしたい。このポイントをわかりやすく表現してくれている機能が、Workflow Automationである。このWorkflow Automationは、ファイル操作だけではなくAPI call、Python,Shell Scriptに対応し、一つ一つのコマンドをJobというモジュール構造とした条件分岐によるオートメーションが組める。これを用いて外部のアプリケーション、クラウドサービスといった様々なサービスと柔軟に融合し、その機能をELEMENTSで一元管理することが可能となる。
つまり、実際に操作を行いたいデータを管理するファイルサーバー自身が、ファイルベースオートメーションの中核となる。言葉で整理してみれば至って当たり前の流れであり、これが効率的かつシンプルなシステムであることに異論は無いだろう。例えば、昨今話題になることが多いAI処理に関してもクラウド上でサービス提供されているものが多いが、それらのサービスが外部からのAPI call、Python,Shell Scriptに対応していれば、ELEMENTSで連携したワークフローを構築することが可能だということだ。
クローズドに独自開発されたAIエンジンを使うメーカーも多いが、ビッグデータに基いた学習速度という側面を考えると、Chat GPTやGoogle GeminiなどIT最大手が取り組む汎用AIの進化に追いつくことは不可能だろう。こうした汎用AIのような日進月歩のIT技術を適材適所に組み合わせる、むしろ用いてしまうことで、効率と精度をさらに最適化できるというのがELEMENTSの考え方となる。画像認識、QCなどファイルサーバーと連動させることにより作業効率を向上させられる可能性のあるものは多い。ユーザーのアイデア次第で、どのような用途においても最適解にたどり着くことができる柔軟性を確保しているということが、汎用IT技術と組み合わせて高められるこの機能のアドバンテージである。
実例を見ていこう。ファイルを移動する、Shellを実行するといった一つ一つのジョブはモジュールとして管理される。その各モジュールを条件分岐によりつなぎ合わせて、一つのタスクに取りまとめることができる。そのタスクの開始は、ウォッチフォルダーに新規ファイルが追加されたタイミングでも、スケジュールでの実行でも、ユーザーの操作によるトリガーでも設計が可能だ。さらに、メール発報などの通知機能やFTPによるデータ転送などもジョブモジュールとして作ることができる。もちろんELEMENTSアプリでログインすれば、Mac OS Finder、Windows Explorerの右クリックメニューにELEMENTSのロゴとともにタスクが追加され、ユーザーはここから事前に設計された様々なタスクを実行することも可能だ。これらを組み合わせてルーチンワークを構築してしまえば、確実で精度の高い成果がオートマチックで、かつ継続的に得られるようになる。
Media Library、当たり前が快適に動くMAM
ここまで管理者やシステム設計者にとって重要となる技術的な側面を述べてきたが、実際にサーバーでファイルを扱うユーザーにとって、ELEMENTSのメリットを最も感じられるのはMedia Libraryと呼ばれるMAM機能だろう。まずは、その基本的な一連のユーザビリティを振り返っていこう。
ELEMENTSはユーザーが用意するトランスコーダーとの連動も可能だが、標準機能としてFFmpegによるトランスコード機能を搭載している。MAM機能にとってのスタートポイントは、このトランスコーダーによるプロキシデータの生成であり、Media Libraryに登録されたメディアは即座にプロキシデータの生成が行われる。こうして生成されたプロキシは、なんとWebブラウザ上でプレビューできてしまう。しかも、クライアントPCを選ばずiOS、Androidなどからのプレビューも可能であり、ELEMENTSが持つ機能の大きな特長となっている。プロキシデータのストリーミングにより実現されるこの機能はWiFiなどでも快適に動作する。さすがに20台以上のクライアントが同時接続する場合はストリーミング用のサーバーを別途に要するが、5台程度のアクセスであれば全く問題ない。なお、プロキシ生成時にはウォーターマークや、タイムコードの焼き込みも行うこともできる。
プロキシデータのストリーミングでデータを共有された各ユーザー側は、コメントを書き加えたり、画像に対してマークアップを行うなど、特定の部分に対しての指示を出したり、特定のユーザーにメンションしてコメントを戻したりと、ワークを進めていくことができる。特にコメント入力はフレームに対して行うことができる仕様で、タイムコードの指定は必要ない。メンションされたユーザーには指示が届いたことが通知される。この通知をクリックすると、対象ファイルのコメントが打たれたフレームに直接飛ぶことができる。また、プレビューにより表示されているファイルをOS上に表示させることもワンボタンでできる機能もある。
これら一連の流れは、ブラウザベースのストリーミングによるプレビューのシェアであるため、VPNにより仮想的に同一ネットワーク上にする、もしくは外部接続用のDMZサーバーを加えることでインターネットを超えてのアクセスも可能である。さらに、サーバーアクセスの柔軟性を見ていくと、特定ファイルを見るためのリンク発行ということも簡単に行える。このリンクにより提供されるプレビューに対しては、かなり細かいアクセス制限をかけることができ、閲覧のみ、コメント許可といった操作権限から、パスワードによるロック、リンクの有効期限、視聴回数制限に至るまで厳重なコンテンツ管理が行える。
MAMということでメタデータによるアセット検索機能ももちろんある。外部AIとの連携による自動でアセットへのメタデータ追加、同様に文字起こし(Speach to Text)などと連動した事例もあり、今後登場するであろう様々なAIによる自動メタデータ付与により、さらに進化する可能性を秘めた部分だ。例えば、画像に表示された文字をテキストとして起こす、顔認識による演者情報などを得る、技術の進化によりこのようなことも実現できる可能性がある。
カット編ならば、NLEを使わずとも
Media Libraryが持つ、もう一つの特徴的な機能がRough Cut Editor、複数ビデオトラックを使用したカット編集がブラウザ上で行えるという強力な機能だ。その後のNLEへのファイル受け渡しにはAAF、XMLといった汎用フォーマットを用いるため、これらのファイルに記述できない編集は行わず、カット編集に特化した機能である。
ここでカット編集を行ったタイムラインも、単独のファイルと同様にプレビューをシェアして、コメントを書き込む事ができる。ここで書き込んだコメントは、NLE上ではタイムライン上のタグとして残り、それまでのやり取りを確認しながら編集作業を続けられる。コメントはテロップ指示、エフェクト指示といった編集向けのものだけでなく、SEの指示や選曲指示などもタイムラインに残してそれを共有する格好となるため、タイムコードをメモして都度メールで指示を出す、というようなこともない。編集点を保ったままのAAFなどでの書き出し以外にも、一本化しての書き出しも可能である。つまり、編集室に入る前にカット編を終わらせて尺を決めるところまでであれば、NLEを使わずともELEMENTSに接続可能なPC、iOS機器、Android機器から場所を選ばずに作業が行えてしまうということだ。
そして、これらのMedia Libraryのプレビュー機能は、Adobe Premiere、Blackmagic Design Davinci Resolve、Avid Media Composerであれば、それぞれのソフトウェアに統合することができるプラグインが提供されている。例えば、Premiereであれば、パネルのひとつとして完全に統合された環境、それ以外のDavinci、Media Composerであれば、フローティングウィンドウでMedia Libraryが統合されるといった具合だ。それらに用意されたアセットは、もちろんドラッグ&ドロップでタイムラインへ追加が可能である。これらの機能だが、MAMによくあるユーザー数の制限はない。ユーザー数によるライセンス発行ではなく、ELEMENTSの追加機能としてMedia Library機能を追加すれば無制限のユーザーがこの機能の恩恵を享受することができる。このMedia Libraryの機能は、ELEMENTS ONE / BOLT / GRIDへオプションライセンスの追加で実装可能だ。
オブジェクトストレージをOSにダイレクトマウントさせるという革新的なテクノロジーと、適材適所の考え方に則った汎用ITとの融合。これにより、独自性の強い製品として市場に認知されてきたELEMENTS。ファイルベースワークフローの中核を担い、新しい時代を作り上げる可能性を持つ。自由度の高いオートメーションはまさにその象徴。ユーザーが抱いている当たり前にできてほしい、ということを汎用ITと融合したテクノロジーで快適に実現できる製品と言えるだろう。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
NEWS
2026/02/04
【期間延長】MTRXシリーズにPro Tools Ultimate永続版が付属するプロモーションが開催!【3/31まで】
プロモーション期間延長となりました!2026年3月31日までとなります。
Avidより、2025年8月1日から2026年3月31日まで、MTRXまたはMTRX Studioをご購入/登録いただいたお客様全員に対し、Pro Tools Ultimate 永続ライセンスを提供するバンドル・プロモーションを実施中!
対象MTRXインターフェイスをご購入/アクティベートした方は、Avidアカウント内、「“Products Not Yet Downloaded”(まだダウンロードされていない製品)」セクションにPro Tools Ultimate永続ライセンスがデポジットされます。ライセンスは任意のタイミングで有効化することが可能です。
1台でシステムの中核となるMTRXインターフェースに、世界標準のProTools Ultimate(税込¥23万円相当)が付属するこの機会を是非ご活用ください!!
概要:対象インターフェイスのご購入/アクティベートでPro Tools Ultimate永続ライセンスを無償提供
実施期間:2025/8/1~2026/3/31
対象者:2025/7/1以降、プロモ期間中に対象インターフェイスを購入し、Avidアカウントへのアクティベートが完了された方
配布方法:対象Avidアカウントへのデポジット
※本プロモーションは世界各国で実施のため、対象製品は納品までに数か月お待ちいただく場合がございます。
対象製品
Pro Tools | MTRX II Base
内蔵SPQ、Dante 256 Ch内蔵、マトリクスルーティングは4096 x4096へ。従来のMTRX Optionカードと完全互換を持ち、TB3 Optionにも対応したことで、大規模なミキシングおよびモニタリング・キャパシティーを柔軟に実現する現代オーディオ・システムの中核。
価格:¥1,089,000(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools | MTRX Studio
2chマイク入力、16in、16out、64ch Dante、DigiLink、ADATなどを含む様々な入出力とSPQが標準搭載。1Uというコンパクトなサイズからは想像できないほどの機能を盛り込んだオールインワンインターフェース。
価格:¥771,100(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools | MTRX Base
Protoolsシステムのオーディオ入出力の核となるインターフェース。8基のカードスロットを備え、多様なI/Oフォーマットのカードを任意に装着可能。本体入出力は AES/EBUとMADIを装備。
市場流通分のみ(メーカー生産完了)
日々進化を遂げる、業界大定番のProTools Ultimateと、既存システムはもちろん今後のシステム拡張まで対応できるパワーを持つMTRXシリーズが一度に手に入るスーパープロモーション!まずはお早めに、ROCK ON PROへお問い合わせください!
NEWS
2026/02/02
ROCK ON PRO送料規定の改定について
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
この度、お取引先様への納品時に発生する配送送料につきまして、下記の通り改定を行わせていただきます。
各お取引先様おかれましては、内容をご確認いただき、あらかじめのご承知おきをいただければ幸いです。
何卒、ご理解をいただきますようお願い申し上げます。
改定日:2026 年 2 月 2 日(月) 弊社出荷分より
改定内容:
ご発注金額合計 20,000 円(税抜)未満の場合
・送料 1,000 円(税抜)を別途頂きます。(沖縄、離島は別途お見積もりいたします)
Music
2026/01/30
3拠点を結んだリモートプロダクションが拓く、イマーシブライブ配信の可能性。
2025年7月Billboard Live TOKYOにて、アーティスト一十三十一(ひとみとい)による公演「new album release live ~Telepa Telepa~」が開催された。大盛況のライブが繰り広げられるその裏側で、ひとつの画期的な実証実験が行われていた。株式会社NHKテクノロジーズが中心となり行われたその試みとは、リモートプロダクションによるイマーシブオーディオのライブ配信実証実験である。公演会場、中継車、ミキシングスタジオの3拠点をIPで接続することで、これまで実現が困難だった場所でのイマーシブオーディオライブ配信を実現させる可能性を探るというものだ。国内でも類を見ないこの挑戦について、各拠点の詳細を追いながら掘り下げていこう。
リモートプロダクションによるイマーシブライブ制作の課題解消
今回拠点となったのは、映像・音声の収録を行うライブ会場となったBillboard Live TOKYO(六本木)、信号処理と配信を行うために設置されたNHKテクノロジーズのT-2音声中継車(渋谷区富ヶ谷)、制作・ミキシングを行う山麓丸スタジオ(南青山)の3拠点だ。
従来からリモートプロダクションの検証を重ねてきたNHKテクノロジーズでは、今回の実証において、イマーシブライブ制作の普及を阻む要因の一つである「物理的制約」の解消を目的のひとつに掲げている。公演会場によっては、膨大な回線数を必要とするイマーシブ制作への対応や、ライブ中継機能を持たせるための追加機材・人員の設置スペースの確保が難しいなど、さまざまな物理的制約が存在する。中には、中継車の進入や設置が困難な立地条件により、イマーシブライブ配信の導入を断念せざるを得ないケースも少なくない。今回の検証で使用した会場も、複合型商業施設の4階に位置する都市型の会場であり、音声中継車の横付けは困難な立地であった。
また、イマーシブ制作においては、マルチチャンネルのスピーカーモニタリング環境の重要性も見逃せない。会場で収録された信号は中継車を経由し、イマーシブオーディオ専用スタジオとして設立された山麓丸スタジオにてリアルタイムでミキシングが行われた。複雑な位相管理や繊細な音像設計が求められるイマーシブミックスにおいて、エンジニアが使い慣れた制作環境でライブミキシングを行うことができる意義は大きい。IP技術を活用したリモートプロダクションを制作の効率化のみに留めず、このような課題を解決するための有効な手段となり得るという可能性を探るべく、本実験は設計された。
拠点間を繋いだ放送品質のMoIP技術
📷ミハル通信が開発したELL Lite。12G-SDI、3G-SDI、HDMI2.0の4K映像と最大64chのDante/MADI音声をRTPに変換し伝送が可能となる。
今回の拠点間通信には、ミハル通信株式会社が開発した映像・音声用IP伝送リアルタイム・コーデック「ELL Lite」が採用された。映像は2Kまたは4K信号をHEVCで圧縮し、音声は入出力として搭載されたDanteおよびMADIポートから独自ストリームへ変換することで、超低遅延伝送を実現している。1台で送受信の同時動作が可能で、放送品質の映像とマルチチャンネル音声を、それぞれ独立した回線として伝送できるのも特徴だ。さらに、Dante出し / MADI受けといった柔軟な運用にも対応しており、今回の実証ではライブ会場と山麓丸スタジオ間をDanteで、音声中継車をDanteとMADIの併用構成で接続。各拠点間で信号同期を取りながら、リモートプロダクションの中核的な伝送経路として機能した。また、予備回線としてはMADIをIP伝送するResoNetz Linkも併用し、本線とは異なる光回線による冗長化構成を取っている。
ネットワーク面でのもう一つの特徴が、infal光の一般ネットワーク回線を使用したという点にある。輝日株式会社の協力のもと、NGN網内で広域閉域ネットワークを構築。1Gbpsの回線で会場からの2K映像とおおよそ50chの非圧縮音声をリアルタイムに安定して伝送することに成功した。これにはELL Liteが公衆回線での運用を想定した設計であることも大きく起因している。ELLシステムはあらゆる回線状況に合わせた運用を見越して最大1sまでバッファーサイズが設定できる。なお、今回の実証では片道約30~50msの中で運用された。
放送局が使用するような専用線ではなく、一般回線を1日単位でスポット利用することで大幅なコスト削減を実現した今回の事例は、イマーシブライブ配信がバジェット面で二の足を踏むことのない有効な事例となるだろう。
3拠点の機能を生かしたリモート・イマーシブ制作の現場
Billboard Live TOKYO(六本木)
各拠点のシステム構成を見ていこう。まずは会場となったBillboard Live TOKYO。会場PAからの信号に加え、Atmosミックスのために19本のオーディエンス / アンビエンス・マイクを客席やステージサイドに設置した。これらの信号はアナログケーブルで会場内に設けられた伝送基地に集約され、Dante / MADIへの変換、さらに長距離伝送用のIP変換までを中型ラックケース1台のスペースに収めたコンパクトな構成となっている。ここにコミュニケーション回線を加えた約40〜50チャンネルの音声が、渋谷の音声中継車へと送られた。また、ELL Liteには会場に設置されたカメラからの2K映像も入力されており、映像と音声を合わせた通信量は約85Mbpsで運用された。
T-2音声中継車(渋谷区富ヶ谷)
会場から送られた信号は渋谷の音声中継車へと届けられた。ここではミキシング・エンジンであるSSL Tempest Engine TE2を中核としたシステムに信号が入力され、中継信号の受信から信号処理、さらには配信エンコードまでシステムの要として機能した。
今回はSSL System Tのリモートコントロール機能を活用し、山麓丸スタジオに設置されたSSL Desktop Fader Tileからの制御信号を受けて、実際の信号処理は音声中継車側で完結。スタジオ側にはモニター出力のみを送っている。これにより信号経路の最短化が図られ、通信量および伝送遅延の抑制に成功している。音声中継車に搭載されたアウトボード類も、スタジオからの指示を受けて中継車スタッフがパッチングと操作を担当し活用された。また、T-2音声中継車は車体サイズの制約上5.1.4chの構成だが、制作拠点として山麓丸スタジオを使用することで、物理的な制約を超えた7.1.4chでの制作を実現している点も興味深い。各拠点のリソースを柔軟に最大限活用できる点こそ、リモートプロダクションの大きな利点である。
配信はKORG Live Extremeにより、Dolby Atmosおよび HPL(バイノーラル)形式でクローズド配信として行われた。テスト・本番ともにパケットロスや映像・音声の乱れはなく、実用化に耐えうる品質を確保できた結果であった。
📷右)今回の技術統括を担当した、NHKテクノロジーズの寺田 淳 氏
📷KORG Live Extremeのソフトウェアライブエンコーダー。映像と音声のリップシンク処理もここで行われている。
山麓丸スタジオ(南青山)
制作拠点である南青山、山麓丸スタジオに運び込まれた機材は、自家用車1台で搬入できるほどのコンパクトな物量となった。System Tのモニター信号をDanteでスタジオ既設のシステムに入力し、音響特性の優れた空間での制作を実現。会場カメラの映像を確認しながら、Tempest Controlの画面でミキシングを行なった。軽量な制御信号のみ中継車へ送り返すことにより、ライブ制作に必要なリアルタイム性を確保。物理フェーダーを操作した際の遅延はほとんど感じられない程度であり、今回ミックスを担当したmurozo氏は、リモートでやっていることを意識せずに音に集中でき、スタジオ環境も相まって収録されたものをミックスしてるぐらいの感覚に近かったと語る。
また、ミキシングにおいては、リモートプロダクションであるからこそ現場の情報が極めて重要となった。マイキング時に得られる会場の雰囲気や、PAシステムの音響イメージは、ライブの臨場感を伝えるうえで欠かせない要素である。今回はイマーシブ・ミックスとして、フロア最前列で感じる迫力と中段で聴くボーカルの心地よさを融合させ、配信向けの音作りにもこだわったという。リハーサルを含め調整時間が限られるライブミックスにおいて、普段使用しているスタジオ環境で、日常的なモニター音量のまま確認できることは、音像の把握スピードを高める要因となる。それはすなわち、より高品質な制作を実現するための理想的な環境とも言えるだろう。
📷右)ミキシングを担当したオーディオエンジニアのmurozo氏、當麻 拓美氏(山麓丸スタジオ チーフエンジニア)、アドバイザーの清水 修平(ROCK ON PRO)
📷中継車に搭載されたWaves SuperRackに、リモートデスクトップ経由でアクセス。スタジオからタッチパネル操作で直接コントロール可能なシステム構成となっている。
不可能を可能にするリモートプロダクション
NHKテクノロジーズの寺田氏は今回の実証実験の将来的な意義について、次のように語ってくれた。「これまで設備的な制約から配信が難しかった会場でも、まだ世に出ていないような名演をイマーシブの高い臨場感で届けられることが一つのポイントです。家庭にもイマーシブ環境が広がれば、東京のライブに足を運ぶことが難しいお客さまでも楽しむことができますし、配信をきっかけに音楽ライブの素晴らしさを感じて、実際の会場に足を運ぶような流れにつながればうれしいですね。」
また、エンジニアのmurozo氏は、今回の検証を通じて「ミックス拠点を一定にすることで、各会場の持つ魅力を最大限に引き出す制作が可能になる」という新たな可能性を感じたという。コンテンツの視聴者のみならず、制作者自身も制作に没入できる環境を構築することが、イマーシブコンテンツ制作における重要な要素の一つだろう。
リモートプロダクションは、低コスト化や効率化の手段にとどまらず、各拠点のリソースを組み合わせてひとつの大きなプロダクションを構築できるワークフローであることが、今回の実証からお分かりいただけただろうか。この制作手法が普及すれば、日本各地のライブハウスやコンサート会場で行われる公演をどこにいても楽しめる時代が訪れるだろう。エンジニアも物理的な場所に縛られることなく、最もパフォーマンスを発揮できる環境で制作に臨むことができ、その結果として生まれるコンテンツは、より高品質でより多くの視聴者へと届けられるはずだ。コンテンツ制作のあり方を変革する可能性を秘めたリモートプロダクションの発展に今後も注目していきたい。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
NEWS
2026/01/22
SSL UMD192 発売!USB/MADI/Danteの双方向インターフェース
Solid State Logicより新製品、UMD192が発表されました。
UMD192は、USB、MADI、Danteの各フォーマットを双方向で変換するインターフェースユニット。
現代スタジオシステムのユーティリティ性を大きく向上させること間違いなしの注目製品です。
発売開始は2026年3月中旬、メーカー市場予想価格 ¥544,500(税込)を予定しています。
製品情報
スタジオ、ライブサウンド、放送といったプロオーディオ分野において、多チャンネル伝送の主流フォーマットであるMADIとDante、そしてUSB接続によるPC音声の3系統を柔軟にルーティングできるUMD192。ハーフラックサイズの筐体で96kHz/48kHzで192チャンネルまたは192kHzで128チャンネルのオーディオ出力が可能だ。USB、MADI、Danteのいずれか2フォーマット間を双方向、のこり1フォーマットを分割出力先として設定できる。
本体には6x MADI BNCペア(冗長モードで冗長化3系統での運用も可能)、Danteイーサポートはプライマリ、セカンダリ共に2口ずつとUSB3.0ポートが搭載。フロント、リアにポートが分散しているのは持ち出しでの運用でも便利なポイント。電源もAC電源、PoE、USB給電の3種に対応しており、冗長化設定もカスタムできるためライブや放送用途でも安心して使用できる。
フロントパネルからはUSB/MADI/Danteのうち2種の相互変換、1種の分割出力を選択するモードチェンジ、MADI/Danteのクロックソース切替、MADI冗長モードのオン/オフと機能ロックがスムーズに設定できる。
スタジオシステムのフォーマットコンバーターとしても、可搬システムの中核としても、コンパクトで簡潔明瞭な機能のUMD192は多くの場面で活躍するであろう期待の製品ではないでしょうか。お見積もり、デモ機のご相談はROCK ON PROまでご連絡ください。
Music
2026/01/16
Focal Professional – Utopia Main 112/212 / 125dbで紡ぎ出すカレントドライブ、ピュアアナログサウンド。
Focalが新たな一歩を踏み出した。サウンドエンジニアリングの世界ではニアフィールドのモニターを中心として、実績も歴史も積み上げてきた仏 Focal Professional社。実際のところは、カーオーディオやホームオーディオ、インウォールのスピーカーなどエントリーからハイエンドまで幅広いラインナップを誇る。そして、その中でも一切妥協のない、限界のないフラッグシップモデルに与えられる名称が「Utopia」だ。そのUtopiaの名前を冠した新たな製品が登場した、「Utopia Main 112 / 212」である。今回はビクタースタジオで行われた日本初上陸となるイベントにフランスよりFOCAL-JMLAB Pro部門セールス・マネージャーのVincent Moreuille 氏、プロダクト・マネージャーのSylvain Gondinet 氏が来日、Focalの新たなフェイズを切り拓くUtopia Main 112 / 212を国内のトップエンジニアに向けてプレゼンテーションした。
📷左)FOCAL-JMLAB / Pro部門セールス・マネージャー Vincent Moreuille 氏、右)同プロダクト・マネージャー Sylvain Gondinet 氏
ついにメインモニターに到達した。
「ついに」と言っても良いだろう。1979年の創業から45年余り、当初はカーオーディオやホームオーディオの製品開発からスタートしたFocalが、プロフェッショナルなサウンドエンジニアリングの分野に進出し、STシリーズなどのニアフィールドの製品を経て、メインモニターの世界に到達した。その最新形が今回持ち込まれたUtopia Main 112 / 212である。
元々、ゼロからトランスデューサー、ドライバーを開発する技術があり、プロフェッショナルの求める正確でフラットなサウンドを提供する技術的な素地を持っていたFocal社。効率的にエネルギーを空気の振動へ変換することが技術的に得意であり、それはDSPに頼らないピュアアナログな方法で実現されている。意外かもしれないが、これまでのFocal製品でDSPを搭載したモデルは存在しない。目の前で演奏されている楽器がそのままスピーカーで再現されるようにすること、これがFocalが貫いてきた目指すべきスピーカーのあり方、哲学だそうだ。Utopia Main 112 / 212の詳細を見る前に、各製品に共通するFocalの考える良いサウンドを実現する手法、技術的なトピックを振り返っていこう。
良いスピーカーの条件とは
正確な音を再生するために必要な素材の特性とはどのようなものだろうか。物理学の法則に依るものであるため、概ねは各社で共通してくるところだが、Focalでは「軽いこと」、「硬いこと」、「ダンピングに優れること」の3点を挙げている。
正確な空気振動の再現、つまり、空気振動を電気信号に変換したものをもう一度空気振動に変換するするために必要なこととして、入力信号に対し素早くユニットが動き、正確に再現するという要素がある。軽いということは物質を動かすために必要なエネルギーが少なく済み、正確な再現のためには必須な要素でありサウンドのダイナミクスに大きな影響を持つ。硬さについては素早さを再現するだけではなく、正確な動作を繰り返すことにつながる。素材が曲がって動いてしまってはディストーションの大きな要因となる。同様に、振動板表面に波紋が起こってしまうことを抑えるためにも重要な要素だ。これらの悪影響を排除するためにも硬さは重要なファクターとなる。また、FocalではTMD(Tuned Mass Dumper)という技術でユニットのエッジ、サスペンション部に重量を与えてディストーションを約50%も抑制することに成功。マスダンパーとは、オモリを使った振動抑制技術の総称でミニ四駆界隈以外ではあまり聞かないレガシーな技術だが、これをスピーカーエッジに採用し、その技術でさらなるアドバンテージを与えている。最後にダンピング、つまり動き出した振動板の動きを素早く減衰することが3つ目のポイント。素早く減衰して余計な動きを抑えることも原音に忠実で正確な音源再生には欠かせない。
📷TMDの有無によるウーファーリングの動き、カウンターウェイトを設けることで不要なディストーションを打ち消していることがわかる。 グラフはその効果による周波数特性を表したもの、青がTMDありのケースとなっているが、2kHz付近が赤いラインと比べてフラットになっていることが見て取れる。
この軽く、硬く、共振しない素材をエントリーからハイエンドまで、コストとのバランスを考慮しながら複数開発できているのがFocalの強みとなる部分だ。それではウーファーに用いられた素材を見ていこう。
📷Wooferに用いられる各素材。左よりスレートファイバー、フラックス、Wサンドウィッチコンポジットコーン。
Focalではこの素材良否の判断に質量を剛性の値で割った数値を用いているそうだ。素材自体の厚みを増すことで合成は高まるが、重量は重くなる。どれくらい「軽くて硬い素材であるか」ということの目安がこの数値だ。まず、その「質量/剛性=3」とされたのが、最もエントリー向けとなるAlphaシリーズに採用されているスレートファイバーだ。これは自動車産業で生産時に排出されるカーボンを再利用、ポリマーと混ぜて加工することで硬度を保っている。良い素材の条件のひとつには、こうしたリサイクルや再利用を可能にするサスティナブルな素材であるという点がもう含まれていると言っていい。2つ目はmade in FranceのShapeシリーズに採用されているフラックス素材となる。これはリネン(亜麻繊維)をグラスファイバーでサンドイッチしたもので、「質量/剛性=7」となるそうだ。
そして最後に挙げられたのがW サンドウィッチ・コンポジット・コーン。軽さ、剛性、ダンピング、前述した要素を高い次元でバランスし応答させる素材で、ハイエンドとなるUtopia / Trio / ST等のシリーズに採用されている。W “はグラス/グラスの略で、中央の構造用発泡コアの両側に2枚以上のガラス板が貼り付けられた構造。グラス=ガラス素材は、鉄と冒頭以上の硬さを持ちつつ比重は約1/3、歪みにも強いがその特性ゆえに限界を超えると割れてしまう。これをを調整するために発泡ウレタンを両面に貼り合わせることで共振をコントロール。軽く、硬く、共振しない素材を形づくっている。こちらの数値はなんと「質量/剛性=90」。素材に対する妥協のなさを数値からも感じ取れるだろう。
一「聴」瞭然のベリリウム音叉
また、Focalといえばその代名詞となるのはベリリウム・ツイーターだろう。ツイーターも同じく、軽く、硬く、共振しない素材をセレクトし、ラインナップのコスト帯に合わせてアルミ、アルミマグネシウム合金、そしてベリリウムと使い分けがなされているそうだ。
ハイエンドラインに採用されるベリリウムだが、これは世界で2番目に硬い金属だとのこと。軽さも非常に際立っており、まさしくツイーターに求める素材として最適なのだが、難点がひとつだけある、価格だ。ベリリウムは非常に高価でなんと金の30〜35倍もの相場になるという。世界の全産業から見ても相当に希少な素材と言えるベリリウムは、ベリリウムをツイーターに採用したすべてのFocal製品の生産トータルで、年間に使用されるのはたったの2kgほどだという。1シートの厚みもわずか21ミクロンという極薄な素材がもたらす効能と効果。逆に言えば、これがサウンド面で実証されているからこそ、たとえ高価であっても、希少であっても迷いなく使う。そこに限界は設けない、ということだ。
そして、会場にはアルミ、アルミマグネシウム合金、ベリリウムで作られた音叉が持ち込まれた。それぞれを実際に鳴らしてみると、その特性やダンピング、ハーモナイズの少なさなど一「聴」瞭然である。ただし、このベリリウム音叉、前述に則って落ち着いて考えれば同サイズの金の延べ棒 x 30倍のお値段とも捉えられる。これをプレゼンテーションのために作ってしまうあたりにも、まったく発想の限界が設けられていない。良いサウンドを知ってもらうためならノーリミット、もはや清々しさすら感じてしまう。
このように理想の素材を開発し、ピュアアナログな回路、軽量なドライバーが高い能率と、大きなダイナミックレンジを生み出し、それが正確なサウンドとなる。良いスピーカーの条件とは、Focalにとって実に明快なことであるようだ。
専用フルアナログ、”Class-H”電流駆動アンプ
そして、「Utopia Main 112 / 212」である。解説にあたったシルヴァン氏から冒頭あったのは「この製品が将来数々の芸術作品を生み出す、そのことにプライドをもって製品開発を行っている。」ということだ。妥協のない、限界のないというUtopiaのコンセプトは、アンプ、ツイーター、ミッドドライバー、ウーファー、キャビネット、ポート、至る所に反映されており、Utopia Main 112 / 212に「最高の技術」 を余すところなく織り込んだそうだ。
📷Utopia Main 112と専用設計されたアンプ部。
さて、Utopia Mainは専用設計のアンプで駆動する。このアンプは初めて耳にする方も多いだろうClass-H / カレントモードが採用されているという。Class-Hという入力に対して、アンプ回路に掛ける電力量を変化させることで効率よく大出力を取り出す方式。この回路設計のアンプをカレントモードで動作させている。これはアンプを電圧(ボルテージ)ではなく電流(カレント)でコントロールするFocalの特許技術となる。出力されるエネルギーは磁力と、コイルの長さと、電流の掛け合わせで生まれている。つまり、出力される音にダイレクトに関わるのは電圧(ボルテージ)ではなく電流(カレント)だということだ。電圧はインピーダンスによって変化が生じるが、電流であればダイレクトで変化がないためよりピュアにサウンドを出力できる。抵抗値についてもコイルの温度、位置、周波数で変化する値なので、電圧ではなく電流をコントロールすることでよりサウンドをクリアにできるという。この専用アンプはFocalの無響室で測定した長年の結果の中で、最小のTHD値を出したそうだ。
特に自作アンプなどで電気の知識がある方は、古くからスピーカーの駆動における理想形は電流駆動(カレント・ドライブ)だ、という文献を目にしたことがあるのではないだろうか。ところが様々な理由があり、スピーカーを駆動するためのパワーアンプの設計は、電圧駆動(ボルテージ・ドライブ)方式が採用されている。トランジスタ1つで大出力を得ることができ構造がシンプルなこと、そもそも供給される電源が電圧を基準としたものであるため、といった具合だ。
「右ネジの法則」というものを覚えているだろうか、「コイルに対して電流を流した際にその内側に磁界が生じる」というものだ。このように磁界を生じさせ、固定させた磁石との反発によりスピーカーは動いている。この「右ネジの法則」に於いて磁界を生じさせているのは「電流」だということがポイント、生じさせる磁界の強弱にかかるパラメーターに「電圧」は出てこない。もちろん、電圧も全く関係がないわけではなくスピーカーユニットが持つインピーダンス(抵抗値)との間にオームの法則が成立している。しかし、スピーカーのインピーダンスは周波数により大きく変化する。そうなると一定の電圧を加えても周波数によって電流量が変化してしまうのだ。これを防ぐために考えられたのが「電流」駆動である。スピーカーが動作するためのパラメーターである電流量を変化させることで、前述のようにスピーカーユニットのインピーダンスの影響をゼロにすることができる。
📷上左図は本文中でも述べた「右ネジの法則」だが、図説の通りで電流が磁界を生じさせていることがわかる。この発生した磁界と据え付けられたマグネットとの反発力がスピーカーユニットを動作させる原動力となる。上右が周波数に対するインピーダンスの変化を見たグラフだが、電圧駆動の場合は、このインピーダンスの大きな変動が下左図のように出力に影響してしまう。これを「電流」でコントロールすることでインピーダンスの影響を取り除き、安定した出力を得ているのが「電流」駆動、Utopia Mainのアンプ部に採用されたカレントドライブとなる。
さらに、一歩踏み込んで電気回路的な解説を加えると、一般的な電圧駆動アンプ(Voltage Feedback Amp=電圧帰還増幅器)と電流駆動アンプ(Current Feedbak Amp=電流帰還増幅器)の基本的な増幅回路の設計は同一である。違いはフィードバック=帰還回路の接続先である。電圧帰還の場合には、帰還回路のインピーダンスが高い入力信号のマイナス側になるが、電流駆動の場合にはインピーダンスの低いバッファーの後段となる。このインピーダンスの違いにより、増幅回路の動作が電圧モード、電流モードの差異を生んでいる。
このように電流駆動は、スピーカー駆動にとって理想的な駆動方法である。ほかにも高域特性が良い、応答特性が良いなど電気的なメリットもある。それでも電流駆動が一般的にならないことには理由がある。2-way、3-wayといったマルチスピーカーの駆動が事実上できない、過大入力時にユニットを壊してしまうリスクが非常に大きい、共振を起こしやすい、など看過できないデメリットが多数あるためだ。この数々の問題点を、Utopia Mainシリーズではアンプをスピーカーユニットに対して「専用」の設計とすることで問題を解決している。
それだけではない。アンプの背面には設置時にファインチューニングが行えるように多くのパラメーターを調整できる仕様が設けられた。「125dbを持ちつつもピュアなサウンドを再現する」という目標が掲げられたそうだが、このアンプ部分だけでも限界なくテクノロジーが織り込まれていった様子がうかがえる。しかもそのすべてが電気的にもアナログ処理されており、DSPを使わないフルアナログ回路での調整となっている。
「音楽を創るための道具」をつくる
ツイーターはベリリウムが採用され、インバーテッドではなくMシェイプ、ミッドドライバーにもMシェイプが用いられている。Mシェイプは元々カーオーディオ向けの技術で、車に搭載するために浅い奥行きを求めて開発されたものだそうだ。その結果、ドーム形状のおよそ1/3の奥行きにできたそうなのだが、これがサウンド面でも相乗効果をもたらす。奥行きを浅くすることはショートストローク化と同義となるため、Utopiaの領域で求められるような完全なピストン運動を実現できた。こうして実現された最高精度のミッドレンジドライバーは生産ラインで+/- 0.2dB レベルでペアリングされているという。
ウーファーは13インチ。前述の「質量/剛性=90」を誇るW-Sandwichコーンが採用され、TMD(Tuned Master Dumper)も搭載、より自由に豊かに動く設計が施されているそうなのだが、その分だけこれを収めるキャビネットの開発は、相当な量の研究上に成り立っているそうだ。まず、そもそもキャビネットは動いて欲しくない。そのためには動いているポイントを正確に把握して対策する必要がある。こうして286箇所にもおよぶキャビネットのポイントを計測し、その挙動がどのようなものかを明らかにすることとなった。その結果、採用されたのが合成確保のためのブレーシング機構、共振を防止して吸収するチューブレゾネーターを搭載、そしてフロントパネル50mm、横・後ろは30mmというかなりの厚みを持ったキャビネットそのものだ。さらに特徴的なのは、ポート部分。ラージモニターの大音量時でもポートノイズや歪みを発生させないよう、内部をフレア形状に整えている。これにより空気の流れを改善し、鋭いエッジからの回折効果を低減することでポートノイズを回避する。
📷キャビネット自体も非常に厚みを持った強固な仕様だが、計測結果をもとにブレーシング補強が施されている。さらに共振を防ぐレゾネーターも搭載された。右図からはポートのフレア形状を設けることで空気の流れが整えられていることがよく分かる。
こうしてフラッグシップとなるUtopia Main 112 / 212の機能上のトピックを振り返ってきたが、すべてに共通するポリシーである「最終的にこれを音楽を創るための道具として使う」ことに向けて、最後のひと仕上げがある。現場のフィードバックを反映していくことだ。最終調整となる現場テストは、11人のグラミー受賞エンジニアによって米・BlackBird Studio / Studio Cで行われたそうだ。なんと、このエンジニア11人によってグラミーにノミネートされた作品は70作品を数えるそうで、実績実力とも世界最高峰と言える陣容によるテストとなっている。これを製品最後の仕上げとし、いま私たちの前に現れたのが「Utopia Main 112 / 212」だ。
そして、繰り返しにはなるが、Focalはアナログでその理想を追求することを哲学としている。DSPという魔法のデバイスを使うのではなく、リアルワールドでの究極を目指す、その誇りをひしひしと感じさせるFocalのこだわりの結晶がUtopia Main、125dB SPLという音圧レベルを持ちながら、少しの緩みもないフォーカスのあった究極のモニタースピーカーとも言えるサウンドを実現している。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
NEWS
2026/01/14
Avid Media Composer ver.2025.12 リリース情報
日本時間 2025年12月24日、Avid Media Composer バージョン2025.12がリリースされました。有効なサブスクリプション・ライセンスおよび年間プラン付永続ライセンス・ユーザーは、AvidLinkまたはMyAvidよりダウンロードして使用することが可能です。
今回のこのリリースでサポートされているOSは次の通りです。
Windows11 64-bit 22H2以降 (Professional/Enterprise)
macOS 13.xから13.7.x (Ventura) 、14.xから14.7.x (Sonoma)、15.xから15.7 (Sequoia)、 26.x(Tahoe)
Media Composer2025.12の新機能
入力文字起こしされたテキストの修正
文字起こしツールで直接修正できるようになりました。単語レベルのタイミング、同期は編集後も維持されます。
次のいずれかで、起こされた文字を編集できます。
単語をダブルクリックして、その場で編集する
複数の単語をハイライト表示し、ダブルクリックして編集する
右クリックして「編集」を選択し、単語または選択したテキストを更新する
ピアツーピアでの文字起こし共有
プロジェクトの文字起こしデータベースをネットワーク全体で共有できるようになり、共有メディアやプロジェクトのワークフローと同じように機能するようになりました。(この機能はNEXISストレージ上にプロジェクトを作成する必要はあります。)
文字起こしの共有は、[設定]>[Project]>[Transcript]>[Manage Transcript Database]で有効化できます。
Hose Shared Transcript:現在のワークステーションのデータベースに他のワークステーションからアクセスできるようにします
Use Shared Transcript:ホストワークステーションのデータベースを利用します
ビデオと波形マップの同時表示
ソースモニターで、ビデオとオーディオ波形を並べて表示できるようになりました。これは2024.12で導入されたソースモニタへの波形表示に追加された機能です。
この表示を有効にするには、ソースモニターで右クリックし、[波形]>[Waveform Map with Video]を選択するか、または[Show Video/Waveform]コマンドボタンを使用します。
DNx 4.0 Codec
DNxHRおよびDNxHDコーデックには、統一された命名システムが導入されました。
解像度に基づいてDNxHDまたはDNxHRを選択する代わりに、Avid DNx LB、SQ、HQなどを選択するだけになり、色深度コントロールの柔軟性が向上しました。
DNxHRまたはDNxHDコーデックを使用している既存のメディアは、変更なく引き続き使用できます。詳しくは、こちらのサイトをご参照ください。
色深度のコントロール
DNxメディアをMOVまたはMP4形式でエクスポートする際に、色深度を柔軟に設定できるようになりました。エクスポートダイアログの「色深度」ドロップダウンから8ビット、10ビット、12ビットのオプションを選択できるため、配信やアーカイブにおいて画質をより細かく制御できます。
フル解像度のマルチカメラ出力
マルチカメラは、従来の1/4解像度の制限がなくなり、フル解像度で動作するようになりました。
これにより、NDIおよびSRTワークフローでフルクオリティのマルチカメラ出力が可能になり、リモート環境や仮想環境にある接続されたモニタリングデバイスにマルチカメラコンテンツをフル解像度でストリーミングできるようになります。
品質メニューには、接続されているすべての出力デバイスでサポートされているオプションだけが表示されます。
Avid Titler+ テンプレートによるワークフロー
Avid Titler+により、テンプレートの作成と共有が簡単になりました。
新しいテンプレートを作成するには、[ツール] > [Avid Titler +Template] を選択します。
テンプレートをビンに整理してプロジェクト間で使用したり、他のユーザーと共有できます。
マーカーの改善
マーカーはインポートやエクスポートをすることができます。このバージョンでは、マーカーはソース側にインポートできるようになりました。
Avidシステムを使用できない環境下で、マーカーテキストファイルを作成できます。マーカーテキストファイルはタブ区切りのファイルで、特定のパラメータを指定して作成します。
また、SVGマーカーのオーバーレイをサポートします。Avid Media Composer Extensionsによるこの機能は、視覚的な注釈付きのマーカーをオーバーレイとしてインポートできるようになります。そして、マーカーツールのファストメニューから有効/無効を切り替えることができます。
Extensions(拡張機能)
Panel SDKが「Media Composer Extensions」に名称変更され、この拡張機能をインストールすると、アプリケーションメニューに新しい「Extensions」メニューが表示されます。このメニューからインストール済みの拡張機能にアクセスでき、ワークスペース内でのツールの管理と起動が簡単に行えます。
Media Composer Extensionsは、Media Composerインターフェースに直接追加ツールを統合します。そして、これらのツールはパネルとして表示され、他のウィンドウと同様にドッキング、フローティング、またはタブ化することができ、さらに、レイアウトと管理に関しては標準パネルと同様に動作します。
Media Composerについてのご購入のご相談、ご質問などはcontactボタンからお気軽にお問い合わせください。
Event
2026/01/08
1/29(木) Avid Creative Summit 2026 Osaka 開催!
~クリエイティブ制作のためのリアルノウハウイベント。~
Avid Creative Summit 2026 Osaka、1/29(木)開催決定です! Avid Pro Tools / Media Composerから拡がるソリューションはもちろんのこと、その世界を拡大させるサードパーティーとのコラボレーションもご紹介。クリエイターが感じた実際の制作ノウハウから、大阪万博での先進的なコンテンツ表現の取組事例、ついにPro Toolsとも連携が始まった360 Reality Audio、そしてその技術を活かしたスタジオ仮想化技術SONY 360 VMEの体験会など、Avidを中心としたワークフローの進化、最新情報、業界最先端の技術情報についてを多彩なゲストによるスペシャルセッションで触れる充実の1日をお届けします!
■Avid Creative Summit 2026 Osaka
開催日時:2026年1月29日(木) 開場12:30 、セミナー13:00~19:00、懇親会19:00~20:00 終了予定
会場:Rock oN Umeda 大阪府大阪市北区芝田1-4-14 芝田町ビル 6F
参加費用:無料
参加申込方法:お申込フォームより事前登録をお願いいたします。
*長時間のイベントとなるため、お申し込みは第一部3セッション、第二部3セッションに分けて承っております。全セミナーご参加希望の際は、第一部・第二部ともにチェックを入れてお申し込みください。
定員:各回30名
本イベントは定員に達したため、お申し込みを締め切りました
◎タイムスケジュールのご案内
◎セミナーのご案内
◎Session1「What’s New Avid Pro Tools 〜Pro Tools 2025.12 新機能紹介〜 」
13:00〜13:50
昨年末、最新アップデートとなるPro Tools Ver 2025.12がリリースされました。新興イマーシブ・フォーマットであるAudio Vividミキシングに対応し、Dolby Atmos / 360 Reality Audioはもちろん、フォーマットを横断するイマーシブ制作フローを実現する最新機能から、SoundFlowによるワークフローの自動化や、制作を加速する新たなプラグイン連携まで、AvidのDaniel Lovell氏に徹底解説いただきます!
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
◎Session2「ついにPro Toolsにビルドインされた360 Walkmix Creatorにより生まれる新しいワークフロー 」
14:00〜14:50
完全なる4π空間のミキシングを実現する、フルオブジェクト・フォーマットであるSONY 360 Reality Audio。音楽の表現のために、真の自由空間をクリエイターに提供するこのフォーマット。その制作ツールである360 Wlakmix CreatorがPro Toolsに組み込まれました。360 Reality Audioとは?どのような活用事例があるのか?具体的な話から、その制作方法までその開発元であるSONYの渡辺氏にお話しいただきます。360 Reality Audio制作現場の最前線でアーティストサポートなどもこなす同氏だからこその情報盛りだくさんでお届けいたします。
講師:渡辺 忠敏 氏
ソニー株式会社 360 Reality Audioコンテンツ制作スペシャリスト
AVアンプなどコンシューマーオーディオ製品の音質設計やSuper Audio CDコンテンツ制作フィールドサポートを経て、現在360 Reality Audioコンテンツ制作のフィールドサポートとして国内外の制作の技術的サポートを行っている。
◎Session3「Cosaqu流:時間を奪わないサンプル選び 〜Pro Tools 上で完結させるビートメイクの実践フロー〜」
15:00〜15:50
Pro Tools でのビートメイクに新たな可能性をもたらす。Spliceサンプル・ライブラリー統合機能をテーマに、梅田サイファーのCosaqu 氏を迎えて、実際の制作ワークフローを解説します。Pro Tools上のオーディオクリップをSpliceにドラッグするだけで、AIがビート、キー、テンポに自動同期したサンプルを即時に提示。これまでに要していたサンプル検索の時間を大きく短縮し、創作の初動をそのまま形にできるスピーディなビートメイクを実現します。本セミナーでは、Cosaqu 氏が現場で実践しているサンプル選びの流れ、組み立てのコツ、AI連携を活かした制作Tipsをデモを交えながらわかりやすく紹介。Pro Toolsでトラックメイクを行うクリエイターにとって、日々の制作をさらに加速させるヒントが詰まったセッションです。
講師:Cosaqu 氏
梅田サイファー
大阪の梅田駅にある歩道橋で行われていたサイファーの参加者から派生した集合体、 梅田 サイファーのメンバー。 プロデューサー/ビート・メイカー/ラッパー/エンジニアをこ なすマルチプレイヤー。 梅田サイファーの楽曲はもちろん、 『キングオブコント』 のオープニングの作曲を3年連続で手掛け、 アニメ「ザ◦ファブル」のオープニング「スイッチ」、 アニメ「炎炎の消防隊」 のエンディング「ウルサイレン」、アニメ「グノーシア」の「FLOOR KILLER」の楽曲プロデュースなどその活動は多岐に渡る。
◎Session4「Pro Toolsユーザーのためのライブサウンド・ワークフローセミナー」
16:00〜16:50
Pro ToolsとLV1ライブコンソール・シリーズの連携で実現する、ライブサウンドワークフローをハンズオンでご紹介。ライブ本番と同時に行うマルチトラックレコーディング、収録素材を即座に再生して行うバーチャルサウンドチェック、本番前・本番後の音作りをPro Tools上で完結させる実践的な手法を実際の操作を交えて解説します。Wavesプラグインを活用した実践的なライブミキシングをはじめ、ライブレコーディング / 再生ワークフロー、収録素材を用いたバーチャルサウンドチェックなど、現場ですぐに活用できる内容を中心にお届けします。
講師:出原 亮 氏
福山Cable
2010年、広島県福山市にライブハウス福山Cableを設立。ライブハウス運営を軸に、音響レンタル、スタジオ運営、音源制作など幅広い音楽事業を展開。DanteやWaves SoundGridなどのネットワークオーディオを導入し、各種HAやプロセッサーと連携。高音質でクリアなサウンド環境を実現し、アーティストと観客双方に聞き疲れしない音楽体験を提供。WAVES LV1やネイティブプラグインを活用したライブサウンドの構築にも積極的に取り組み、常に新しい手法を模索、音質向上を目指している。
2023年以降は、SPAT Revolutionやd&b Soundscapeなどのイマーシブオーディオシステムを導入。日本初のライブイマーシブ常設会場として福山Cableのリニューアルを行う。同年11月には日本で初めて野外フェスでのライブイマーシブ公演をプロデュースするなど、これまでに100本以上の公演をサポート。全国で行われるイマーシブPAのセミナーにも多数登壇し、日本のライブイマーシブ普及に努めている。近年では、各種音楽施設やスタジオのスピーカーインストール協力、測定調整などの案件も数多く請け負う。いづれもWAVES eMotion LV1が欠かせない道具となっている。
>>福山Cable HP
◎Session5「AIを用いた編集業務の効率化・番組クォリティの向上」
17:00〜17:50
昨今、「AIを用いた業務改善」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、番組制作の現場では、AIをどのように具体的なワークフローへ取り入れるか悩む方も多いのではないでしょうか。番組制作のすべてをAIに任せることは容易ではありませんが、一方でAIは“非常に優秀なアシスタント”として大きな可能性を秘めています。準備作業や仕込みをAIに担わせ、最終的なクリエイティブ判断を人間が行うことで、新しい制作スタイルや表現を実現できる手応えが生まれています。本セミナーでは、生成AIと対話しながら海外賞(ABU賞)出品用の英語字幕を制作した実例をご紹介します。この字幕を用いた番組『前田穂南の走る道』は、2025年度 ABU賞 TV SPORTS部門で最優秀賞(ABU賞)を受賞しました。実際の制作プロセスを通して、AIを“業務改善のためのアシスタント”として活用するヒントをお伝えします。
講師:清水 慎恭 氏
関西テレビ放送株式会社 総合技術局 制作技術センター 兼 DX推進局 DX戦略部
2008年 関西テレビ放送入社。主にスポーツドキュメンタリーや特番のオフライン・オンライン編集を担当。2025年 前田穂南の走る道(英題 Honami Maeda :A Life of Running)で、アジア太平洋放送連合(ABU)が優れたテレビやラジオ番組などを表彰するABU賞で最優秀賞を受賞。
◎Session6「Expo2025 Monster Hunter Bridgeにおけるオーディオ制作事例」
18:00〜19:00
2025年4月より184日間にわたり開催された大阪・関西万博。その中で、日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会が出展したのが「大阪ヘルスケアパビリオン」。この一角に設けられたXD HALLでは「モンスターハンター ブリッジ」の世界を、360度映像と連動するARデバイス、全方位に配置された89本のスピーカーによるイマーシブサウンドで表現。この来場者を包み込む体験はどのような構想と制作プロセスを経て実現したのか。本セミナーでは、イマーシブサウンド設計、映像・演出とのリアルタイム連動、そして没入感を最大化するための思想と試行錯誤について、開発コンセプトから技術的アプローチまでを交えながらご紹介します。
講師:瀧本 和也 氏
株式会社カプコン オーディオプロダクションチーム リードゲームオーディオミキサー
バイオハザードシリーズ、モンスターハンターシリーズを中心にミキシングエンジニアとしてゲーム開発に参加し、ゲームオーディオ全体のクオリティを支える。近年は特にダイアログについて多くの試みでクオリティアップを担い、ゲーム内の空間演出も担当。多くのイマーシブオーディオミキシングを積極的に行い、ゲームにおけるインタラクティブなミキシングと演出的な表現としてのミキシングの融合を目指し、研究を重ねている。
SONY 360 VMEを体験しよう!
スタジオをヘッドホンに詰め込んでどこでもスタジオの音環境を再現できる、まさに未来のテクノロジーSONY 360 VME。その360 VMEをRock oN Umeda UNLIMITED STUDIOで本イベント中にご体験いただけます!SONYがプロフェッショナルユーザーのために作り上げたこの技術、一般的なバイノーラル技術と一線を画すクオリティで、米Sony Picturesをはじめとした国内外の現場ですでに実運用されています。
その実力は体験してみなければわかりません。イマーシブミキシングに興味のある方はもちろん、ヘッドホンでのモニタリングに疲れた方にもオススメしたい!「ヘッドホンなのに、まるでスピーカーで聴いているかのような」驚きの体験が待っています、ぜひご参加ください!
●360VME 測定体験会開催時間
・13:00-14:00
・15:00-17:00
・18:00-19:00
>>SONY 360 VME HP
【出展社展示】現場で“使える”ノウハウをより詳しくご紹介します!
>>>Blackmagic URSA Cine Immersive / HP
Apple Vision Pro向けに開発された180°のイマーシブ映像フォーマット「Apple Immersive Video」用に設計されたBlackmagic URSA Cine Immersiveカメラを展示します。制作者サイドには全方向に展開する表現の可能性を、そして視聴者サイドには空間を自由に探索できる没入体験を提供するこちらのソリューション、当日はApple Vision Proでのデモをご体験いただけます。
>>>フォーミュラ・オーディオ / HP
Audio Ease、Sound Particlesといったソフトウェアを取り扱うフォーミュラ・オーディオからは、Sound Particlesを中心に展示ご紹介をいただきます。Sound Particlesは、CGのパーティクル技術を音響制作に応用した革新的なサウンドデザイン・ソフトウェアメーカー。ごく少数から数百万もの仮想音源を3D空間に生成・制御し、従来手法では困難だった高密度で複雑なサウンドを直感的に制作することが可能です。9.1.6 chや最大6次のAmbisonicsなどあらゆるフォーマットに対応し、映画・ゲームをはじめ、世界中のプロフェッショナルな現場で採用されています。
募集要項
■Avid Creative Summit 2026 Osaka
開催日時:2026年1月29日(木) 開場12:30 、セミナー13:00~19:00、懇親会19:00~20:00 終了予定
会場:Rock oN Umeda 大阪府大阪市北区芝田1-4-14 芝田町ビル 6F
参加費用:無料
参加申込方法:お申込フォームより事前登録をお願いいたします。
*長時間のイベントとなるため、お申し込みは前半3セッション、後半3セッションに分けて承っております。全セミナーご参加希望の際は、前半・後半ともにチェックを入れてお申し込みください。
定員:各回30名
本イベントは定員に達したため、お申し込みを締め切りました
【ご注意事項】
※本イベントについて後日動画配信などはございませんので、あらかじめご了承ください。
※会場座席数には限りがございます。原則、当日先着順でのご案内とさせていただきます。誠に恐れ入りますが座席の確保はできませんのであらかじめご了承ください。
※セミナーの内容は予告なく変更となる場合がございます。
※著作権保護の為、写真撮影および録音は差し控えていただきますようお願いいたします。
※当日は、ご来場者様向けの駐車場の用意はございません。公共交通機関でのご来場、もしくは周辺のコインパーキングをご利用下さい。
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2026/01/07
日活株式会社様 / 日活調布撮影所 MA 大空間を活かす、物理的な音響設計アプローチ
日本国内に現存する映画会社の中で最も歴史のある会社、それが日活株式会社である。その歴史は1912年に吉沢商店、横田商会など4社が合併し、日本初の本格的な映画会社「日本活動写真株式会社(日活)」が設立された時代まで遡ることができる。すでに110年を超える歴史を持つ日活、今回のMA室リニューアルが行われることとなった日活調布撮影所の着工は戦後間もない1953年である。撮影所としても70年以上の歴史がある日本の映画史そのものとも言える場所だ。その70年の節目に発表されたスタジオ全域に渡る大規模修繕事業。ポストプロダクションセンターも部屋の配置まですべてが見直され、本稿で取り上げるMA室以外にも新しいFoleyステージ、ADR室がリニューアルされている。
📷上左:7.1ch対応のダビングステージ、上右:撮影所内、別の建屋にある試写室、下左:広い空間が確保されたADRブース、下右:MA室と連携した運用システムが組まれたADRコントロールルーム
天井高6m、大空間を活かす。
本稿ではリニューアルされたMA室に関して話を進めていきたい。「リニューアル」とされてはいるが、躯体を一旦スケルトン状態に戻し、いちから部屋を作るという大規模な工事で、新設と言ってしまってもいい内容だ。今回の音響建築工事は日本音響エンジニアリング株式会社が担当し、Foley、ADR、MAと3部屋の改修を実施している。これはポストプロダクションセンター北側の半分にあたり、建屋内の大規模な部屋割りの変更も含まれる工事である。
かつては、2部屋目のダビングとして使われていた建屋北側の部屋をFoleyに、その隣をADRに、さらに隣をMAへと改修している。さすがは、歴史のある日活調布撮影所である。内装を剥がしてスケルトンにすると以前ダビングであった名残で映写窓が壁の中から出現したり、昔のフローリングが現れたりと、まるで史跡を発掘するかのような出来事が多数あり、当時を知る諸先輩方からは、昔はどのように使っていたかなど貴重なお話を聞くこともできた。
リニューアルされるスペースは、躯体天井まで6m以上の高さがあり、床面積も奥行き・幅ともに7m以上ある大空間。その内側に遮音壁を立てたとしても、5m以上の有効寸法は取れるだろうということで、当初はCinemaフォーマットのDolby Atmosに対応したダビングにしてはどうだろうかという意見や、CinemaとHomeの機能を兼ね備えたAtmosスタジオではどうか、という意見も出たそうだ。非常にチャレンジングなアイデアであり面白い計画ではあったが、細部まで検討をしようとすると、そのフォーマットの違いの大きさに気づくこととなる。
わかりやすいポイントとしては、フロントのスクリーンに関してと、サラウンドスピーカーの配置だろう。Cinemaの場合には、劇場と同様に音響透過型スクリーンの後ろにシネマスピーカーを設置する。Cinemaの音とはその音響透過特性も含めた「劇場」の音である。片やHomeフォーマットではスピーカーは露出での設置であり、ダイレクトにそのサウンドを視聴することとなる。サラウンドに関してもCInemaの場合には、壁面の少し高いところに設置を行う。これは、入口扉などと干渉しないよう少し高い位置に設置されるのが通例だ。また、デフューズサラウンドとも呼ばれる複数のスピーカーを使ったサラウンドアレイが組まれる。これは客席のどこに座ったとしても一定のサラウンド感を得るための工夫である。そして、HomeのサラウンドはどうかというとポイントソースのスピーカーによるITU規格に準拠した配置となっている。
これらのことを考えると、一式のスピーカーを共用してCinemaとHomeを両立させることは、望ましくない結果を生んでしまう可能性が高い。ひとつの部屋にCinema用、Home用それぞれのスピーカーシステムが導入できればその限りではないが、費用対効果などを考えても用途に応じて部屋を分けたほうが良いという結論になる。無理に共有しようとしたとしても、どちらつかずになり中途半端なものになってしまう。このような検討が行われた結果、この大空間を活かして国内のどのDolby Atmos Homeスタジオよりも優れた音響特性を持つスタジオを作ろうという、基本方針が決まった。
物理的に等距離のスピーカー配置
この基本方針をどのように実現するかという検討が始められ、まず着手したのが空間の容積を活かすスピーカーの選定だ。複数メーカーのミドルクラスのスピーカーが集められ比較試聴が行われ、そこで選定されたのがPMC 8-2である。十分なボトムエンドと解像度を兼ね備えたPMCの次世代を担うミッドレンジ・モデルである。さらにローエンドを増強したPMC 8-2 XBDの方が、より良いだろうということになりL,C,R chに採用が決まった。水平面をすべてPMC 8/2 XBDにするというプランまでは叶わなかったが、国内でも前例のない大型スピーカーによるDolby Atmos Homeのスタジオの基本プランが決まった。
スピーカのレイアウトは、天井高があるためできる限りサラウンドサークルを広げ、理想の等距離配置を目指すということで設計が進められた。電気的にディレイを駆使して、仮想的にスピーカーを等距離に見せかけるという手法がほとんどのDolby Atmosスタジオでは行われている。これはやはり天井高の不足からくる問題点である。日活撮影所のMA室は余裕ある天井高から、理想の位置へと配置が行える。それならば物理的な配置でしっかりと等距離を確保しようということとなった。
スピーカーを等距離に配置することで到達時間を一定にできるメリットはやはり大きい。距離が異なる場合には、電気的にディレイを使用してその補正を行うのだが、それが必要無くなるからだ。ディレイ処理はあくまでも仮想的に実際の設置距離をより遠ざけるということを行うので、多少ではあるが違和感が生じることがある。この原因としては、直接音はディレイで整えられていたとしても反射音などはその次第ではなく、完全なる補正とはならないことなど様々な事象が考えられる。しかし、こうした処理を行わないとパンニングの際などに位相干渉などの問題が生じてしまうため、補正の手段として必要であることに変わりない。
こうなると、やはり理想的で最善な手段は物理的に等距離にスピーカーを配置し、ディレイ無しでのスピーカー配置を実現すること、となる。今回の日活撮影所の設計に際し、サラウンドサークルをできるだけ大きく、そしてスピーカーは等距離配置に、という強いリクエストがあった。サラウンド環境におけるリスニングポイントからスピーカーの距離に関しては様々な意見があるところだが、等距離であるということにデメリットは基本的にはなく、スピーカー配置の理想形であると言える。
3.2mというサラウンドサークル
また、スピーカー距離に関してはできるだけ距離を確保したい。これもスピーカー配置において設計当初よりあったリクエストだ。リスニングポイントから各スピーカーまでの距離(モニター距離)に関しては、5.1chサラウンドの規格が記されているRec. ITU-R BS. 775-1の中では明記されていない。しかし、その参照 RecommendationであるRec. ITU-R BS. 1116-1において、2〜3mのモニター距離がマルチチャンネル再生環境用として推奨されているという記述がある。
これは、Dolby Atmosではなく、5.1ch等の平面サラウンドに関しての推奨ではあるが、マルチチャンネル・サラウンドに関してのスピーカー距離に明確に言及した唯一の資料でもある。そこから考えると、今回の部屋のサイズを使い切った3.2mというサラウンドサークルは、推奨よりも少し大きいサラウンドサークルということができる。この推奨の下限とされている2mの距離を確保するのことも難しい国内のスタジオ事情から考えると、十分な距離が保たれた環境と言えるだろう。
サラウンドサークルに関しては、狭いほど直接音が支配的となり定位感は向上する。広くなると間接音(反射音等)が相対的に増えるため定位感という視点では弱くはなるが、それが自然なサラウンド感の向上につながるとも言える。今回の設計では遮音壁からの距離を最低限確保しつつ、できうる限り広いサラウンドサークルが確保できるよう設計が行われている。サラウンドスピーカーが少し壁に埋まっているような設置となっているのは、このように考えられた工夫の結果である。
「凶暴」な低域を手懐ける物理的アプローチ
今回設置されたスピーカーだが、前述の通りでL,C,R chへPMC 8-2 XBDが採用された。このスピーカーは、PMC 8-2に8-2 SUBを追加し、4本のウーファーユニットにより低域を再生するという仕組みになっている。スコーカーとのクロスオーバーポイントは変えずに、ウーファーの出力をパラにして8-2 SUBに送っているということだ。つまり、PMCの特徴であるATL(バックロードホーンのような独自の低域増強の技術)による豊かな低域。これが倍のボリューム感を持って再生されるということである。その低域は、ラージモニターを彷彿させる十分すぎるボリューム感。それがフロントに3セットともなると、その迫力は想像を超えたものになる。「凶暴」とも感じるほどの迫力の低域。これこそがPMCの魅力であり、スピーカー選定の決め手のひとつであった。しかし、マルチチャンネル・スピーカーの一部として考えると、他のチャンネルとのつながり、全体のバランスなど考慮すべきポイントは多くある。
調整前と調整後、それぞれの音を聴く機会があったのだが、調整後にはその持ち味、キャラクターを保ったままタイトになった、というのが第一印象である。「凶暴」と感じてしまうほど暴れていた部分がうまくチューニングされ、素性はそのままにダイレクト感のあるサウンドへと変化した。この秘密を音響調整を行った日本音響へ質問したのだが、その答えは「物理的アプローチ」というものだった。超低域は振動である。それを止めるためには多少の吸音処理では全く追いつかない。振動に対しては質量を持ってチューニングをするという、物理学のセオリーに沿った対処が行われたということだ。どれほどの物量(質量)が投入されたのかはノウハウの部分となるが、ともかく質量を持って振動に対処を行ったということだ。不要な振動をするのであれば、重りを置いて振動を取り除こうということである。
もちろん吸音に関しても徹底した処理が行われている。スピーカー設置時には、裏側に回ってメンテナンスができる程度のスペースが確保されていたのだが、音響調整後にそのスペースはすでになかった。吸音処理のセオリーは、半波長の厚みの吸音材でその帯域に対して対処をするというものである。30Hzを吸音するならば半波長である5mの厚みの吸音材が必要、60Hzであれば2.5mというのが一般論である。どれほどの吸音材が投入されたか、いまやその全貌を見ることはできないが相当な量になっていることは創造に難くない。
自然な空気感を聴かせる基本設計
そして、部屋自体の設計もサウンドに対する意図を持って行われている。吸音処理などは音を実際に鳴らしてからの調整であるが、それ以前となる部屋の基本設計が重要であることは言うまでもない。事前の準備あってこそのトリートメントである。
今回、スタジオの壁面はすべて傾けて設計されている。これは天井に関しても同様で中央が一番低くなるように左右から傾斜がついた谷型の天井となっている。写真では分かりづらい部分ではあるが、一方向に傾けるのではなく、二方向に傾けることで定在波の発生を効果的に抑えている。さらに壁面はランダムな凹凸を設けた意匠を施し、極力音響的に有利な形状としている。これらの工夫はスピーカー距離が広いことにより生じる反射音の増加を効果的に抑え、自然な空気感として聴かせることに寄与している。
物理的な追い込みとして面白いのが、天井のスピーカーに取り付けられた棒だ。一見して何のためか判然としないその棒だが、もちろん意図されたものである。これら天井のスピーカーは前方を向いて配置されている、つまり、巨大な反射面となっている100インチのTVに向いているのである。そして、このTVからの反射により定位が前に引っ張られるという現象が起こってしまう。これを解決するために行われた工夫がこの棒である。円柱はそこに当たった音波を拡散させる。スピーカーのツイーターとTVの軸線上に棒を配置することで高域がTV画面に当たり反射することを押さえ天井スピーカーの定位の向上につなげているわけだ。日本音響エンジニアリングは棒状の木材をランダムに配置した柱状拡散体「AGS」を製品化していることでも知られるが、この工夫もそのノウハウが活かされた格好となる。
このように、スタジオの音響設計においては物理的な部分での工夫が随所に行われている。物理的に追い込み、電気的な補正は最低限とすることで自然なサウンドを目指す。言葉にするとシンプルではあるが、それこそすべてコストと直結する項目であり、それを実現するのは本当に大変なことである。理想のDolby Atmos Home環境を作るという信念のもと、物理的な理想を求め、それを実践したのがこのスタジオである。
スタジオを熟知したシステム設計
この部屋のシステムは、Avid S6をフラットに埋め込んだ机を中心とし、4台のPro ToolsとDobly Atmos Rendererが動作するRMU、計5台のPCにより構成されている。映画スタジオらしくダビングのシステムをコンパクトにした設計で、プレイアウトとしてのPro Toolsが3台、ダバーが1台という構成である。すべてのPro Toolsは1台のAvid MTRX IIへDigiLinkで接続され、コンパクトな設計ながら柔軟性のあるシステムアップを実現している。RMUはDanteによる接続だ。出力は、MTRX IIからのMADI出力をRME ADI-6432でAESに変換。そのAES信号をRME ADI-8 QSでアナログ信号へ変換してスピーカーへ接続している。他の映画会社でも採用されているこのシステムだが、RMEのSteady Clockによるデジタル信号のジッタ抑制技術を組み込み音質に対しての最大限のトリートメントを行うためにこのような機器選定となっている。
メーターは正面に設置された100インチTVの左右の画面に表示させることができるようになっている。ここにはメーター用のWin PCが準備されDante Virtual Soundcardをインストール、Dante信号が接続されている。メーター用のソフトウェアとしては、YamakiのVUアプリケーションとAtmos用としてFluxのMIRAが導入された。VUもしくは、イマーシブ対応のマルチメーター。そのどちらかを32inchのTV画面に映し出すことができるという仕組みだ。特にAtmos用のメーターはスタンダードと呼べるものが無い、Flux MIRAのようなソフトウェアを選択することでより優れたアプリケーションが登場した際にも対応ができるということになる。今後スタンダードになる可能性のあるシステムアップだと言えるだろう。
DAWが動作するPCには、10GbEでSynology RS2423+というNASが接続されている。4TBのHDDが12台搭載され、48TBの容量を持つ仕様である。外部からデータを持ち込みする作業が多いこともあり、共有のデータストレージとしてこの製品が選択された。エンタープライズ向けの製品ではないため、Synology RS2432+上から直接のPro Tools作業は推奨されないが、10GbE接続ということもありコピーも高速に行うことができる設計が行われている。
このMA室にはナレーション収録用のブースは無いが、隣にあるADR室で収録を行う、もしくはそのブースをMA室から利用することができる設計が行われた。Danteにより両部屋は接続され、それぞれの信号をPro Toolsで受け取ることができる。さらにスタジオ内に設置されたVideo Cameraの映像は、Blackmagic Design VideoHubにより、それぞれの部屋で見ることができるように設計されている。これらの設計は以前日活スタジオに勤務されていた株式会社レスターの大場氏が行っている。日活退社後はトライテックでスタジオ工事の業務を行っていた大場氏。映画会社の現場を知っている、さらに言えば、このスタジオの使い方、システムを熟知しており、これに基づいた設計、調整を実施されている。大場氏なしに今回のスタジオ工事は成立しなかったとも言えるほど日活スタッフからの信頼も厚く、重要な仕事を行われた。
ROCK ON PROはこれまでの知見、ノウハウを大場氏と共有し、日活様からの要望に応える最適解を導くお手伝いをさせていただいている。これまでに積み上げてきたノウハウ、システムの事例から最適な製品の選択、そし何よりワークフローに即した提案を行った。そこに大場氏がひと工夫を加えることで日活らしいシステムが完成したと言えるだろう。
容積のある空間で十分に低域の確認が行えるスタジオはあまり多くない。ベースマネージメントを行ったりと対策しているスタジオはあるが、このスタジオは電気的な工夫なしにそれらを実現しているのが大きな魅力。位相感、定位感、低域の量感。エンジニアが聴きたい、確認したいサウンドがここにはある。Dolby Atmos Homeとしては、最大規模となるこのスタジオの誕生である。
📷左から、日本音響エンジニアリング株式会社 音空間事業本部 重冨 千佳子氏、崎山 安洋氏。日活株式会社 撮影所事業部 スタジオセンター 田中 修一氏、服部 俊氏、ROCK ON PRO 前田 洋介、沢口 耕太。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載