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ROCK ON PRO

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モニタースピーカー導入計画!前編 理想のニアフィールドの見つけ方はこれだ!

Master Clock導入計画!あなたのスタジオと宇宙をつなぐWord Clockのノウハウ Q&A!」で好評とお問合せを多数いただいた対談コーナーの第二弾!今回は自宅のニアフィールドモニタースピーカーの買い替えを考えている私、IH富田にROCK ON PRO洋介がアドバイスをした時の模様を文章化しました。私の「洋介さーん、新しいスピーカーが欲しいんです。相談に乗ってくださーい」から始まったこのやりとり。きっとあなたのモニター探しのヒントになる情報があると思います。私と一緒に理想のスピーカーを探していきましょう!ではまず前編から。どうぞ!


●理想のリスニング環境

富:今、ヨーロッパ製の某スピーカーを使っているんですが不満があって。音が鳴っているのに聴こえにくいっていうか。
 
洋:どういう環境で使ってる?
 
富:マンションの4帖半。コンクリート壁と薄いボード壁の部屋です。コンクリート壁側からの反響がうるさいのと近隣への騒音配慮のために小さい音で鳴らしてます。スピーカースタンドは一応使ってます。(趣味として去年の夏休みに自作)
 
洋:その某スピーカーは非常に鳴りっぷりが良いスピーカーとして有名だよね。まず、ヨーロッパって石造りの部屋が多いじゃないですか。反射の多い素材で部屋ができてる。すると(建物の)躯体が頑丈で部屋の中に響きがあるわけですよ。それと比較して、日本のベコベコした薄い木の壁は、反射はするんだけど余韻が無いというかボワつくというか、一番悪影響があるのが共振しやすいってこと。だからヨーロッパもののスピーカーを使う時は注意が必要。特にその某スピーカーのように低域にパワーがある場合は、しっかりとした設置場所で共振を抑えてあげないと良い音で鳴らない。でも元々お店で聴いて自分で選んだ訳でしょ?だったらそれを鳴らしきってあげる環境を作るのが重要。
 
富:確かに試聴は大きな音で聴いてたなあ。
 
洋:それから、部屋が4帖半ということはスピーカーと耳の距離は1mくらい?
 
富:1mないかもしれません。スピーカーに手が届きますから。
 
洋:近いね。椅子の位置を後ろに下げて、スピーカー間をもうちょっと広げた方がいい。理想はスピーカー2点と頭の位置を頂点とした正三角形。耳とスピーカーが近いとステレオイメージが拡がらないんですよ。左右の幅が狭いから定位が全部ダンゴになっちゃう。逆に広すぎると「中抜け」って言ってセンターの音像が希薄になる。特に最近はPCのディスプレイがセンターにあるからただでさえ中抜けしやすい環境だしね。やっぱりスピーカーは正三角形に近い位置で設置してあげた方が正確にリスニングできる。

●作曲する人、ミックスする人

洋:…となると君が欲しいのは自宅で使うニアフィールドモニタースピーカーって訳か。小さいスピーカーにもいろいろあるど、低音がドンドンと出るのが良いスピーカーなのか、それとも高域の解像度が高い方のが良いのか。いろいろな説があると思うんだけど、これは作る人のスタイルによって決めてもいいのかな、っていうのが僕の意見。
ミュージシャンて自分の気持ちを盛り上げて良い音楽が生まれてくるじゃないですか。だとしたら、自分が聞いてて気持ち良い、楽しい、テンションが上がるスピーカーの方が良いと思う。解像度が高くて音の隅まで細かく一つ一つの音色を作り込むよりも、楽しい気分になって音楽を生み出すことにパワーを注いでほしいね。逆にエンジニアは一般的につまらないと言われる音であっても、解像度や音の繊細なヒダの部分まで聞き分けられるようなスピーカーを使って、ミュージシャンが出した音の最後の最後を仕上げてほしいな、って思う。一言でプロ用のモニタースピーカーって言ってもずいぶんと求められるファクターって違うんですよ。
 
富:曲を作る人(ミュージシャン)とミックス以降の作業をする人、それぞれ求めるスピーカーが違うということですね。
 
洋:君はどっちの人?
 
富:僕は曲を作る人、かな。
 
洋:だとしたら気持ちよく聴けた方が良いんじゃないかな。
 
富:あ、たしかに。
 
洋:細かいところまで聞いて「この音もうちょっとハイがあった方がかっこいいかな…」とかそういうことばかりに気をとらわれていたら曲ができなくなってくるよ。
 
富:そうですね。最近そんな感じでスランプ中…(落)
 
洋:だとしたら「かっこいいじゃん、OK!」って言って前へ進んでいけるような気持ち良いスピーカーがいいんじゃないかな。多少ボケていてもパワー感や気持ち良さがあるスピーカーが君にとっての良いスピーカーかも。モニタースピーカーとしてRock oNで扱っているものは、最低限のクオリティーは確保されているから自由に選んでいいかな。

富:なるほど。まずは自分を知るところからですね。でも僕はこれからもっとミックスの質にこだわっていきたいんですよ。
 
洋:じゃあ、おとなしい印象だけど解像度が高いスピーカーの代表としてFocalとか。
 
富:エンジニア寄り?
 
洋:そう。Focalは非常に解像度が高い。低音も無理に出してないから迫力には欠けるんだけど、音の微細な部分については良く分かるよ。優秀。
 

●解像度の高さを知るは?

洋:ちなみに…解像度って言葉をさっきから使ってるけれども、解像度が高いスピーカーかどうか判断するにはどういった音を聴くといいと思う?
 
富:リバーブの奥行きやテールの切れ具合、あと生楽器にマイクを立てて録音したもの。それだけで空間が感じられる音源かな、と思いますけど。
 
洋:そうだね。リバーブのテールは非常に分かりやすい要素。音の余韻の消え際がしっかり聴こえるか。空間、部屋の広さみたいなものを聴く事ができるか、っていうのが大事なポイント。細かい部分まで再現できるスピーカーは音が立体的に、奥行き感を持って聞こえるよ。迫力を出そうとするスピーカーによくありがちなのは、スピーカー自体でコンプレッションがかかっていて、音が出たいのに出て来ない感じのもの。そういうスピーカーの音って平面的で立体感が無くなってくる。
 
富:リスニング用のミニコンポとかの音とかそんな感じですね。
 
洋:それから、音の立ち上がりっていう話もある。打楽器のアタックのエッジがちゃんと見えるか。音のピークが見えるようなスピーカーっていうのは「レスポンスが良い」って言う。「音の時間軸に対しての解像度が高い」わけだから、そういうのも「解像度が高いスピーカー」って言えるね。

●密閉型とバスレフ型

富:立ち上がり、レスポンスって言葉を聞くと僕はYAMAHA NS-10Mを思い出します。特に中域に良さがあると思います。
 
洋:あれは確かにレスポンスがすごく良いね。密閉型の良さが出てる。
 
富:なるほど、密閉型。
 
洋:最近のスピーカーはほとんどがバスレフ設計になってる。あれはバスレフポートっていう管の中ので音を共振させて、スピーカーユニットが出している音の1/2や1/4、低い方の倍音を出している。そのバスレフポートの弊害は音が抜けるところにある。
 
富:「音が抜ける」?
 
洋:スピーカーユニットが音を出す時に揺れるでしょ。バスレフ型はその逆相成分(箱の内部方向に出力される振動)を使って低域を鳴らしてるんだけど、密閉型はキャビネット内の空気の容積は変わらないわけでしょ。そうすると空気がダンパーの役目をしてユニットの動きを止めようと働いてくれるわけですよ。でもバスレフだと管があるからダンパー効果がなくてユニットがふわふわーと動いちゃう。しかも大きな波を作ろうとしているから、戻ってきた波で自分が動いちゃったりとか。だから設計は慎重にしないとボワボワブカブカの音になっちゃう。だから小さいユニットで低域を出そうとしているスピーカーは聴いていて気持ち良いかもしれないけど、解像度には悪影響がある。逆に小さいスピーカーで低音がバフバフ出ているようなのはそれだけで解像度が悪いと言い切ってもいいくらい。
 
富:イメージするだけでも分かりますね。

洋:最近はそういう派手な音のスピーカーが好まれているので、密閉型の製品が少ないのが寂しい。さてさて、現行の密閉型スピーカーと言えば?
 
富:UNITY AUDIO THE ROCK MK2
 
洋:他にもTAD PRO TSM-2201FUJITSU TEN ECLIPSEシリーズとか。この辺はとにかく解像度優先。
 
洋:低域は無理をさせずにスピーカーユニットが持っている性能を発揮しようとすると、密閉型の方がメリットが大きいと思う設計者は多いんじゃないかな。
 
富:なるほどなあ。ってことはさっき言ってた曲作りの人、エンジニアの人って話で言うと密閉型はエンジニアさんが好みなのかな。
 
洋:NS-10Mがあれだけ普及したのはまさにそういうところもあるんじゃないかな。
 
富:じゃあちょっと視点を変えて質問。NS-10Mのあるスタジオに僕が曲を持って行ったとして、たとえエンジニアさんの腕がピカイチだったとしても僕の作った低域は聴こえるんでしょうか?
 
洋:NS-10Mは低域を「感じられる」スピーカーだったわけですよ。聴感で聴こえる部分て100Hz前後で無くなっている。カタログスペック的には60Hz~っと書いてあるけど、はっきり言って聞こえない(笑)。
 
富:え?100Hz前後で無くなってる?
 
洋:そう。100Hz以下はほぼ無い。
 
富:し、信じられない…
 
洋:生楽器で100Hz以下を出せる楽器ってどれくらいあると思う?
 
富:ベース、それからバスドラム…
 
洋:4弦ベースのLowEって約40Hzなんですよ。それからピアノのA4が440Hz、A3 220Hz、 A2で110Hz、A1が55Hz。100Hzって言うとG2あたり。そこからさらに下って、ほとんど弾かないでしょ。
 
富:そっか。
 
洋:だからベース(コントラバス)の最低音域とピアノやハープの最低オクターブの音域。音程のある楽器でいうとそこくらいしかないんですよ。基音が100Hz以下にあるのは。シンセサイザーのオシレーターの話だとまた違うけど。もちろんバスドラのシェル鳴りの部分とかはそのくらいいくけど、よっぽど口径が大きくてゆるく皮を張らない限りは100Hz前後。だとすると、100Hzくらいまでしか再生しないスピーカーでも分かるんですよ。
 
富:確かに分かるかもしれないけど、でも響きっていう意味では違うんじゃないかなあ。
 
洋:君の言う通り、響きっていう意味だと100Hz以下にもあるんですよ。そこから下が“全く”出ていない訳じゃなくてなんとなくは聴こえてる。でもそれをイメージできるんですよね。慣れてくれば下がだいたい100〜120Hzくらい出てれば自分の中で脳内補正できる。例えば60Hzまでフラットにでるスピーカーを持ってたとして、君の自宅で鳴らせるかって言ったら無理でしょ。
 
富:それは鳴らせないなあ。密閉型ってそういう使い方をすればいいんですね。あれ、だんだん密閉型のスピーカーに興味がでてきたぞ(笑)
 
洋:(笑)
 
富:密閉型っていうと低音が出ないおとなしいスピーカーだっていうくらいしか思ってませんでした。
 
洋:慣れてしまえばいい。
 
富:低音がゴウゴウ鳴ってなくて、上がきれいに出て、あとは自分の慣れでなんとでも調整できるんだったらいいなあ。今度は密閉型も試聴します。
 
洋:もちろんバスレフの良いところもあるんですよ。コンパクトだけれども低音が出せる。つまりパワーをかけなくても低音が出せる。だから大きな音を出さなくてもある程度の低域を聴かせることができる。日本の家庭環境を考えるとバスレフのスピーカーである程度小さな音量で作業するっていうのも一つの道。
 
富:小さくてもある程度低域が出るから気持ちよく作業ができる。
 
洋:やっぱり低いほうのボディソニックのような部分がある方が気持ち良いですよ。クラブ行ったときもサブウーファーで鳴らすあの低域が気持ち良いわけでしょ。
 
富:クラブ行ってウーファーが鳴ってなかったら「金返せ」ですよ(笑)

●スペックの正しい読み方

富:最近すごく気になっているのがハイリゾリューションなツイーターの流行。可聴領域を遥かに超えた製品がたくさん出てきてますよね。この間新発売になった某スピーカーも上が30kHzまで再生可能なんですよ。日々性能が上がって来てるんですね。
 
洋:あのねえ、カタログの数値は嘘がいっぱい書いてあるんで…
 
富:ちょっと、問題発言!ここはカットで…!
 
洋:いやいや、いいよ、べつに。カタログのスペックはちゃんと読んでほしいんです!
 
富:「ちゃんと読む」?
 
洋:「再生周波数帯域:○Hz~○kHz」って書いてあるよね。その後ろに(-△dB)もしくは(+/-△dB)って表記がある。…正直なメーカーだったらね。
 
洋:これは何を示していると思いますか?
 
富:「そのくらいの誤差はあります」ってこと…かな?
 
洋:違う。「フラットから△dB落ちたところが○Hzですよ」っていうことが書いてあるんですよ。だから20kHzまでフラットに出ているのなら大体のスピーカーは平気で50kHzまで出てますよ。
 
富:え、そうなんですか!?
 
洋:計算してください。(下がっていくカーブが -6dB/オクターブと仮定した場合)1オクターブで-6dB下がるでしょ。20kHzから1オクターブ上は40kHzで、そこで6dB落ちてる。言い換えてみれば「そこでも6dBしか落ちていない」ということ。さらにその1オクターブ上の80kHzでも-12dB下がってるけど音は出てる。
 
富:あらまー。
 
洋:もちろん、そんなに細かい振動に耐えられない物理特性の限界などで、更に急峻に落込む場合もあります。
 
富:でも厳密に計った上で「可聴周波数帯域以上も音が出ているか」といえば「出ている」と言えることがほとんどなわけですね。
 
洋:そうです。
 
富:僕、今までスペックの見方を間違ってました(泣)
 
洋:だから、ちゃんとスペックは見ましょう。そして周波数帯域のデータの後ろの「(-○db)」っていうのが特に大事です。
 
富:これは低域の方でも言えること?
 
洋:もちろん。
 
富:低域では感じることがあったんですよ。スペックはいまいちなのに意外に下まで出てるなあ、と。
 
洋:真面目なメーカーの筆頭というとNEUMANN。(NEUMAN WebサイトでKH120AGのスペックを見ながら)ここは -3dBという表記ですね。(−3 dB free field frequency response)
 
富:ほうほう、-3dBの時に52 Hz … 21 kHzか。 ってことは実際はもっと広く出てますね!で、その後ろにある+=3dBってのは?
 
洋:52Hzから21kHzの間は+-3dBの振れ幅内に収まっていますよ、という意味。100%フラットなスピーカーはあり得ないからね。
 
洋:他には売れ線の☓☓☓☓を…
 
富:ここのスピーカーも良いですよね。僕好きです。あれ、でも(-○dB)って書いてない…
 
洋:こういうメーカーもありますよ。
 
富:書いてない場合って、業界標準的に(-3dB)だと思ってもいいですか?
 
洋:そうだね。だいたいは。もしかしたら、-6dBの値かもしれないけどね(笑)そんなこと言うメーカーはダメ出ししてやります!!
 
富:(またKH120AGのスペックを見ながら)各社各様ですけど特にNEUMANNは細かく書いてますねえ。
 
洋:真面目で正直だね。
 
富:自分に合うスピーカーかどうかっていうのは実際に聴かないとダメですね。でないと話にならない。
 
洋:もちろん実際に聴いて、体感して決めるっていうのが一番理想ですよ。

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自宅の情けないリスニング環境の告白から始まったスピーカー選びのノウハウ講習。スペックの中の重要なファクターの見落としに赤面しながらもまだまだ洋介からのオイシイ話は続きます。

「モニタースピーカー導入計画!後編 知っているようで知らない、試聴の時はココを聴こう!」はこちらに掲載中!

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*価格ほか情報については2013年5月時点のものとなります。

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*記事中に掲載されている情報は2013年04月26日時点のものです。