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Master Clock導入計画!「第一弾:基礎 編」あなたのスタジオと宇宙をつなぐWord Clockのノウハウ Q&A!

2013年4月5日 掲載(記事本文・構成 : tomita)


自分のシステムの音を良くしたいと思った時、機材を上位グレードのものに買い替える事はもちろんの事ですが、例えばスピーカーの性能を発揮させるためのスピーカースタンドが存在するように、今ある機材をより良いコンディションで鳴らすための機材『Master Clock』を導入するという方法があります。

しかしMaster Clockはデジタルシステムの音質向上に絶大な効果があるわりにまだまだ「知る人ぞ知る」という機材なのではないでしょうか。今回はRock oNスタッフの私 IH 富田がROCK ON PRO洋介にMaster Clockについての疑問や導入のコツを訊いてみました。

Master Clockって何?というエントリーユーザーは私と共に一からお勉強しましょう。ベテランエンジニアの方も新しい発見があるかもしれませんよ。ぜひお楽しみください。

★ Master Clockって何ですか?

IH富田(以下 富):最近自宅スタジオの音質UPを考えてるんです。電源周りとかケーブル、ルームアコースティックもできる範囲で整えてモニタリング環境は満足に近い状態まで追い込めたんですけど、最終的にDAWから書き出したときの音も含めてもっと良くできないかな、と思っています。

洋介(以降 洋):そこでMaster Clockの導入、って話だったよね。

:はい。効果が絶大っていうのは聞いたんですが、実はまだ理解できていないのです。教えてもらえますか?

:まずは基礎のところをROCK ON PROに掲載されている記事を抜粋して教えるから、ちゃんと理解するようにね。

    ・Master Clockとは?

    デジタルオーディオで言うところのサンプリングレート(48kHzとか)の基準信号を供給する機器がMaster Clockです。この基準が揺れている(精度が低い)と高音域、低音域の波形に顕著な乱れが発生します。

    例えば、48kHzのサンプルレートであればみなさんご存知のとおり24kHzまで録音できます。ここに24kHzの正弦波を入力したとします。精度の高い基準信号を受けてい れば、各サンプルごとに「+、0、-、0、+、0…」と記録され正確に再現されると思いますが、基準が揺れるとそこに間違ったデータが混入してきます(本来は+であるはずのところがーになってしまうなど)。これでは入力された24kHzの正弦波は正しく再現されません。

    以上の例はあくまで一例ですがMaster Clockによって、音の全ての領域の再現性が決定づけられるということがイメージできるでしょうか。

    ・インターナルじゃだめなの?

    通常デジタル機器は本体に『インターナルクロック』と呼ばれるジェネレーター(発振器)を搭載していますが、よほど高級な機材であったりこだわりのあるメーカーのものでなければ精度があまり良くありません。ジェネレーターの精度を上げるにはかなりのコストがかかってしまうからです。

    「それならば最低限のジェネレーターを搭載しておくので、こだわる人はMaster Clockを導入して高精度のワードクロックを供給してください」ということで、ある水準以上のクオリティのものはワードクロックの入力端子を持っています。

:なるほど。Master Clockとはデジタル機器を規則正しく動かすための機械ってことですね。で、正しくそれらが動くと音の再現性が高くなるということ。

:間違いじゃないけどそれだけじゃない…Master Clockとは時の流れを正確に等間隔に刻む機械なわけです。例えば日本の標準時を決めている原子時計クラスもそうです。そういう物をダウンサイズして、僕らが普段使っている44.1kHzや48kHzっていう信号を出してくれるのがMaster Clock。簡単に言うと、48kHzで使用した場合に「いかに正確な1/48000秒という刻みを出すか」っていうのに命をかけている機械なんだ。

Master Clockはメーカーや製品によって音が違う。これはSteady Clock(RME独自のデジタルジッター抑制機能)とかが付いていない製品に顕著なんだけれども、Master Clock製品を変えると同じ機材でも「別の機械になったのか!?」というくらい音が変わる。特にその差が顕著なのは超高域と超低域だ。

超高域でいうと、サンプリング周波数が48kHzだとしたら理論的には半分の24kHzまで音が録音できる。例えば24kHzの正弦波、それを記録したデジタルデータっていうのは本来01010…(符号部分)という並びになる。というのはさっき説明したね。このときクロックが少しでも乱れるとその01010…の並びが乱れる。これが俗に『ジッター』と言われるものだ。つまり”ジッターが少なければ高域の再現性が高い”ということになる。

続いて超低域に関しても、1波調が長い分だけ、クロックが揺れたときにDC(直流=直線波形)になる。非常に大きな波なだけあって波形的にはまっすぐな横棒になってしまう。そうなった時に全てのデジタル機器はこれをノイズだと判別して消してしまうんだ。例えば、Pro ToolsにDCリムーバブルというプラグインがある。これは波形に含まれているDC成分を取り除くものだよ。

:「超低域のジッターはDC成分に変化するため、デジタル機器がノイズと判別し再現されない」

:つまり、Master Clockを導入して限りなくジッターを減らすことによって、これまでできなかった微細な広域に渡る音の再現ができる!

:再生機器の話ばかりしちゃったけど、Master Clockの導入は取り込み側(A/D)の機器につかっても非常に効果が高いよ。Master Clockの精度が高ければ高いほど微細な音まで全て正確に記録される。もちろんそれは聴感として音の立ち上がりの良さ、濁りの無さ、位相の良さ、全てにつながる。まず高品質のMaster Clockで録った音、それを高い精度のMaster Clockで再現する。するとベストなコンディションのまま音を再生できる。

:なるほど、なんとなくMaster Clockがあった方がいいような気がしてきました。

:じゃあ次にMaster Clockの精度について。

:通常のオーディオI/O(全てのデジタル機器)には『クリスタルオシレーター』というClockが搭載されてるんだけれど…

:もともとインターナルクロックっていうクロックを持ってるんでしたよね。

:そうクリスタル、すなわち『水晶』でできたクロックの発振器が入っていて、この水晶に電圧をかけるとプルプルと振動するんだ。物質によって電圧をかけた時の共振周波数が決まっていて、例えばこの水晶なら12MHzだ。この振動の波を取り出すというのがクリスタル発信器の仕組なんだけど、このままじゃあまり良い精度を持っていないわけ。例えばこれとAntelope Audio Isochrone OCXの精度は1000倍も違う。

:そんなに!?

:水晶に電圧をかけると熱が発生する。「氷、水、水蒸気」の関係と同じように分子運動のしやすさが変わって共振数が変わってくる。だからIsochrone OCXに搭載されている『OCXO(Oven-Controlled Xtal oscillator=恒温槽付水晶発振器)』のように恒温槽(温度を一定に保ための容器)に入れるなどの工夫をして正確なClockを取り出すという作業が必要となって、それをしているのがMaster Clockだというわけ。

:水晶でデジタル機器を制御しているなんて、ますます不思議な話ですね。

:何故水晶なのかっていうと、純度の高いものが安価に入手できるからなんだよ。

:どのくらいの大きさのものなんですか?

:水晶が入った金属の箱は小指の爪くらい。

★上空2万kmにあるMaster Clock

:導入したWord Clockの精度をさらに高めるために「Atomic Clock(アトミック クロック)」というのがあるようですがこれ何ですか?

Antelope Audio 10M

:それはAntelope Audio社が独自に使っている呼び名。正体は”『ルビジウム』オシレーターを使って10MHzの矩形波を出す発振器”。他社からもそういった製品がリリースされているよ。

:今もっているWord Clockのさらに上の精度を狙うために買い足すもの、ということですか?

:そう。ルビジウムの出している10MHzというのは工業規格として一般的なものなんだ。工業用ロボットのように高い精度が求められるものは高周波の正確なClockが必要だ。

:?

:「モーターを何秒動かしたらこの位置に行く」とかの制御に使われるんだよ。

:この10MHzの信号を受ける端子を持っているのがAntelope Audio社を始め、AUDIO DESIGN社、Brainstorm Electronics社などの製品だ。

その端子にはAntelope Audio製品なら「Atomic」と書かれていて、それ以外のメーカーの製品のものには「GPS」と書いてある。

:GPSなら知ってます!カーナビ!スマホ!

:最近はカメラにも入ってるね。GPSは『Global Positioning System』。日本語で言うと全地球測位システムのことを指している。

米国が運用している『衛星測位システム』のことだよね。これはアメリカが打ち上げた軍事衛星の民間利用なんだけど、そのGPS衛星から送られてくる信号というのが非常に正確なClockソースを含んでいるんだ。さてなぜだ?

:???

:現在約30個のGPS衛星が地上約20,000kmに浮かんでいる。これは約12時間で地球を一周してるんだけど、その約30個のGPS衛星全てが同期していて、地表に対して放射状に電波を飛ばしている。離れた場所に浮いている3つの衛星から届く電波の時間差(ディレイ)を測ってそれぞれの衛星までの距離を割り出し、3次元測位を行えば自分の位置が分かるという仕組み。そのためにはそれぞれの衛星が正確に同期している必要があるよね。

:!!!

:それから、GPSは衛星でしょ。気軽に補正しに行けないよ。

:簡単に狂ってしまうと大変なことになりますね。だから高精度なClockが求められるわけですね。

:そのためにGPSにはルビジウムより精度の高い『セシウム』がオシレーターとして使われている。最高精度のセシウムClockは「1億年に1秒程度の誤差」と言われる超高精度のClockなんだ。そして実はGPSのClock信号は10MHzで送られている。それを地上で受ける『GPSアンテナ』とその信号をMasterClockで受けられる10MHzの電気信号に変換する『GPSレシーバー』を手に入れれば非常に高精度なClock信号を手に入れることができる!一戸建てにお住まいの方はぜひ。

:話が衛星にまで行ってしまいました。ダイナミックですね。なんかかっこいい。


Master Clockの基本を知った私IH富田。俄然その機能や導入方法に興味が沸いてきました!続いて「第二弾:導入編」では実際にMaster Clockを導入する際の疑問や、製品による音の違いとその理由に迫ります!乞うご期待!

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  • 「第二弾:導入編」はこちら!>

  • Antelope Audio Isochroneシリーズ・ラインナップ
    OCX

    オーディオ用途に限定した非常にコストパフォーマンスの高いモデル。8系統のワードクロック出力とは別途に2系統のAES/EBU出力と2系統のS/PDIF出力を備えます。これにより、Word Clock Inを持たない機器にもクロックの供給が可能となり、OCXの持つ高い精度のクロックの恩恵を受けることが可能となります。Sample Rateも32~192kHzと幅広く対応。もちろん、OVENテクノロジー、Atomic Clock Inputも搭載しています。

    Antelope Audio OCX ¥154,560

    OCX-V

    OCXにVideo Refarenceの入出力を追加したモデル。HDTVの23.976~60i/pまで対応し、現存する全てのHDTVのフォーマットを網羅します。更には、1%,4% Pull Up / Pull Downを備えます。もちろん、Video ReffarenceのGenelateも可能です。これらの機能は、96kHzでのWord Clock運用時にも使用でき柔軟な運用を行うことが可能となっています。更には、7-8番のWord Clock Outは倍率設定が可能となっており、1-6番のOutと別のクロック供給が可能です。OCX-VもOVENテクノロジー、Atomic Clock Inputを搭載しています。
    Antelope Audio OCX-V ¥218,400

    Trinity

    さらなる柔軟性を手に入れたのが、こちらのTrinity。32kHz~382kHzまでの3系統の異なったクロックの供給と、+-200centの微調整が可能。Video Refarenceに関してはOCX-Vと同様にHDTV信号に対応。これらの機能により、ありとあらゆる環境、条件に対応可能です。どのような現場でもこれさえあれば安心と言える多機能だけではなく、OCXシリーズよりさらに高いクロック精度を誇るモンスターマシンです。
    Antelope Audio TRINITY ¥319,200

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    記事本文・構成 : tomita

    ※ 記事中に掲載されている価格・割引率・購入特典・ポイントや仕様等の情報は 2013年04月05日 記事更新時点のものです。

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