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丹治 信子

[ROCK ON PRO Product Specialist]ノンリニア編集とファイルベースワークフローを普及すべく、これまでAvidおよび、Autodeskでビデオセールスに従事。プリセールスからサポートまで、エディターに寄り添ったコミュニケーションがモットー。ROCK ON PROのメンバーとなってからは、新しい分野で互いに刺激を与え合いながら活躍している。

Media Composerのリモート編集を考えてみよう


昨今の働き方のキーワードとなるテレワーク。
2020年からのコロナの影響で、多くの企業でテレワークの環境を整えつつあります。自宅にいながら、リモートでビデオ編集をしようとするとき、そのソリューションを選択するときに考慮しなければならないことは、いったい何なのか、次の3つのソリューションを見ながら考えていきたいと思います。

ここではネットワークに接続されたすべてのコンピュータと共有ストレージが存在する施設で編集し、それらを家に持ち帰ることができないことを前提とします。なぜならば、セキュリティの問題や、または大容量のデータへのアクセスが必要になるなどの懸念があるからです。

リモートデスクトップ

よくある一般的な方法は、リモートデスクトップソフトウェアを使い、オフィスのコンピュータの画面を、外部のコンピュータに転送して使用する方法です。この方法は外部のコンピュータにデータを保存することがないので、セキュリティの面でも問題がなく、また特に大きな費用をかける必要がないため、多くの企業で最初に採用された方法ではないでしょうか。
しかし、典型的なオフィスコンピュータにインストールされている画面共有のソフトウェアは、自宅からファイルやメールになどを主とするオフィスワーカーのために設計されているため、ポストプロダクションのニーズを満たしていません。そのためフルフレームレートでの再生の遅延やオーディオとビデオの同期、色の再現性、レスポンスの問題などに直面することになります。TeamviewerやMicrosoftリモートデスクトップ、VNC、またはその他のほとんどのWebベースのソリューションは実はビデオ編集には向いていないのです。

そこで大きな設備投資が必要なく、通常のインターネット回線を使いながら、もっとインタラクティブに、遅延の少ない操作を確立するために、TeradiciのPCoIPプロトコルを使ったリモートデスクトップ方法があります。
PCoIPとは「PC over IP」のことですが、リモートデスクトップの環境で、画面転送を行うためのプロトコルの1つです。特徴としては、仮想ディスプレイの出力をIP化して転送することにあります。Teradiciのテクノロジーは、ネットワーク帯域の状況を加味して画面表示され、出力のパターンを認識し、適切な圧縮方法を自動的に選択し転送するため、低帯域のネットワークでも表示が見やすく、また回線スピードが早ければ、高解像度のグラフィックスも表示できます。

Teradici PCoIPは素晴らしいプロトコルでが、クリエイティブに関してはいくつかの制限があります。 PCoIPは8ビット表示に制限されているため、ハイエンドのカラーグレーディングには向かないこともあります。Teradici PCoIP Ultraには10ビット機能があるので、カラーグレーディング等の操作には、こちらを採用するのもいいかもしれません。オーディオは通常、ステレオ再生に制限されており、モニターの出力はできません。コンピューターのGUIのみになりますが、ビデオを編集することが目的であれば、音に関してはそれほど深刻な問題にはならないかもしれません。

月々のライセンス費用が必要になりますが、Teradiciを使用してのリモートディスクトップは、簡単でより堅牢なソリューションの1つといえるのではないでしょうか。

クラウドでの仮想化

現在では、Dropboxのようなサービスを使って小さなファイルの保存から始まり、私達は何らかの形でクラウドサービスを使用し、少なくとも何かをクラウドに保存するほど、たいへん身近なものになりました。
そしてビデオ編集システムそのものをクラウド上で展開することが可能になり、それをサポートするすべてのソフトウェアツールとハードウェアストーレジが、データセンターのVM(仮想マシン)で実行できています。

クラウドの仮想化システムには多くの利点があります。時間や場所を問わず利用できることや容量の追加、削除が簡単に行うことができ、ハードウェアの投資がないため、イニシャルコストがほとんどありません。反面、長期的に分散された設備投資の費用がない分、月々または年間での運用コストが必要にはなり、作業時には、クラウドへのアップロードの時間やダウンロードのコストなどを意識して使用することが大切です。

Avidの「Edit on Demand」製品は、Azure上にあるクラウド編集システムです。Azure上でMedia ComposerやNEXISストレージ、編集に必要な様々なものを展開し、手元にあるローカルコンピュータ(ゼロクライアント)を介してアスセスします。機能面では、Azure上のMedia ComposerはNEXISストレージにアクセスでき、ビンロック機能とプロジェクトの共有機能を使うことができます。
クラウドシステムでは編集システムの台数も制限がなく、プロジェクトの共有も可能なことから、人数を増減しながら、複数人での並行作業などが必要なプロジェクトで使用するには、適したシステムではないでしょうか。

オンプレ・プライベートクラウド

オンプレサーバーはある意味プライベートクラウドです。
Avidはリモート編集で使われるシステムのプロキシを提供するオンプレミスサーバーを長年にわたって開発してきました。オンプレミスサーバーは、リモートで接続されたAvid Media Composerシステム内でネイティブに使用するメディアのプロキを作成し、提供します。

Avidにはオンプレ・プライベートクラウドとそれに合わせたリモート編集ができる製品として、2つのラインナップがあります。一つはMedia CentralとNEXISストレージをベースとするMedia Compoer|Cloud Remoteと 、もう一つは2022年1月に発表されたNEXIS Edgeです。

この2製品に共通するすぐれた機能は、プロキシ編集ができること、そしてその際にアセットマネージメント機能が有効であるということです。
プロキシを使うメリットは、通常のインターネット回線でプライベートサーバーにアクセスすることができ、ローカルコンピュータのMedia Composerでプロキシメディアでの編集ができることです。ハイレゾリューションメディアから作成されたプロキシメディアとそのメタデータの紐付けが完全であるため、Media Composer内で表示するメディアを高画質にもプロキシにも、簡単に切り替えることができます。

プロキシメディアを作成してそれを編集することは、Avidシステム以外でもできるかもしれません。しかし、その編集したシーケンスに対し、ハイレゾリューションメディアへの切り替えが瞬時で行われることが望まれるとしたら、アセット機能がなければなりません。アセット機能があることで、プロキシとハイレゾリューションメディアの切り替えが、ボタン1つで行えるため、リモートでは仮編集、会社にある編集システムでは、高画質プレビューや調整をすることができ、プロキシ・ハイレゾのワークフローがスムーズに実行できます。
また、よくあるアセットマネージメントの機能として、webベースのビデオ編集をうたっている製品もあります。しかし、何かのチェックをするために再生したり、マークを付けたりするアシスタントやプロデューサーには十分かもしれませんが、熟練したエディタにはこのwebベースの編集では物足りないものがあります。Avidの統合されたシステムではその両方を使うことができ、エディタからプロデューサーまで、そのコンテンツに関わる人たちがすべてを共有することができます。

では、Avid Media Composer|Cloud RemoteとNEXIS Edgeの製品の違いはというと、
Media Composer| Cloud RemoteはMedia Centralをベースとし、それと連携するソフトウェアオプションです。施設外のMedia Composerユーザーは場所を問わず、リモートでMedia Centralが管理するメディアにアクセスすることができ、プロキシをリアルタイムでストリーミングすることができます。このオプション機能は、Media Centralが中心にある大規模なポストプロダクションで利用されます。

NEXIS Edgeは、2022年1月に発表された新製品です。もし、NEXISストレージをすでにお持ちであれば、NEXIS Edge用のサーバーを追加することで、リモート・プロキシ編集をすることができるようになります。また、この製品は、もう一つの特徴として、(メディアは持ち出さない前提とは言いましたが)ネットワークなしでのオフライン編集ができる機能があります。コピーメディアのワークフローを利用し、プロキシメディアやレンダリングメディア、ビンをローカルドライブに移すことで、再リンクが必要になるメディアを作成しなくてすみます。そして、不安定なネットワークの環境を心配することなく、編集をすることができ、完成したシーケンスを戻す際にも、再リンクに悩まされることがなくなります。

NEXIS Edgeはクライアント数などに制限がない、リモート接続可能で、プロキシワークもできるシステムになります。NEXISにアスセスするときには、リモートクライアントとして接続すれば、Wi-Fiや家庭のインターネットからも接続することができます。共同作業をするような場面でも、場所を選ばずに編集をすることができ、さらに会社の施設内では、高解像度でカラーグレーディングやプレビューができるシステムとのシームレスな連携が可能になり、中小規模のポストプロダクション向けのシステムといえるのではないでしょうか。

ここまで、3つのソリューションとしてMedia Composerでのリモート編集について見てきました。
リモートデスクトップでのアクセスやゼロクライアントでのアクセスは、Media Composerのアプリケーションが手元にないため、ステレオ以外のオーディオを確認することはできません。一方、NEXIS EDGE等のAvidシステムでの構築は、手元のPCにMedia Composerがあるため、ビデオインターフェースを追加することもでき、見たいモニタや聞きたいスピーカーで確認することも可能です。

リモートワークにはネットワークがかかせません。5Gのカバー率が上がったというニュースはよく耳にしますが、どれだけ恩恵を受けていると感じていますか?安全なリモート編集を考えるのであれば、Avidのソリューションは投資対効果に見合うシステムといえるのではないでしょうか。

ご不明な点がございましたら、Rock On Pro までお気軽にお問い合わせください。

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*記事中に掲載されている情報は2022年04月22日時点のものです。