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NEWS
2026/02/04
【期間延長】MTRXシリーズにPro Tools Ultimate永続版が付属するプロモーションが開催!【3/31まで】
プロモーション期間延長となりました!2026年3月31日までとなります。
Avidより、2025年8月1日から2026年3月31日まで、MTRXまたはMTRX Studioをご購入/登録いただいたお客様全員に対し、Pro Tools Ultimate 永続ライセンスを提供するバンドル・プロモーションを実施中!
対象MTRXインターフェイスをご購入/アクティベートした方は、Avidアカウント内、「“Products Not Yet Downloaded”(まだダウンロードされていない製品)」セクションにPro Tools Ultimate永続ライセンスがデポジットされます。ライセンスは任意のタイミングで有効化することが可能です。
1台でシステムの中核となるMTRXインターフェースに、世界標準のProTools Ultimate(税込¥23万円相当)が付属するこの機会を是非ご活用ください!!
概要:対象インターフェイスのご購入/アクティベートでPro Tools Ultimate永続ライセンスを無償提供
実施期間:2025/8/1~2026/3/31
対象者:2025/7/1以降、プロモ期間中に対象インターフェイスを購入し、Avidアカウントへのアクティベートが完了された方
配布方法:対象Avidアカウントへのデポジット
※本プロモーションは世界各国で実施のため、対象製品は納品までに数か月お待ちいただく場合がございます。
対象製品
Pro Tools | MTRX II Base
内蔵SPQ、Dante 256 Ch内蔵、マトリクスルーティングは4096 x4096へ。従来のMTRX Optionカードと完全互換を持ち、TB3 Optionにも対応したことで、大規模なミキシングおよびモニタリング・キャパシティーを柔軟に実現する現代オーディオ・システムの中核。
価格:¥1,089,000(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools | MTRX Studio
2chマイク入力、16in、16out、64ch Dante、DigiLink、ADATなどを含む様々な入出力とSPQが標準搭載。1Uというコンパクトなサイズからは想像できないほどの機能を盛り込んだオールインワンインターフェース。
価格:¥771,100(税込)
Rock oN Line eStoreで購入>>
Pro Tools | MTRX Base
Protoolsシステムのオーディオ入出力の核となるインターフェース。8基のカードスロットを備え、多様なI/Oフォーマットのカードを任意に装着可能。本体入出力は AES/EBUとMADIを装備。
市場流通分のみ(メーカー生産完了)
日々進化を遂げる、業界大定番のProTools Ultimateと、既存システムはもちろん今後のシステム拡張まで対応できるパワーを持つMTRXシリーズが一度に手に入るスーパープロモーション!まずはお早めに、ROCK ON PROへお問い合わせください!
NEWS
2026/02/02
ROCK ON PRO送料規定の改定について
平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
この度、お取引先様への納品時に発生する配送送料につきまして、下記の通り改定を行わせていただきます。
各お取引先様おかれましては、内容をご確認いただき、あらかじめのご承知おきをいただければ幸いです。
何卒、ご理解をいただきますようお願い申し上げます。
改定日:2026 年 2 月 2 日(月) 弊社出荷分より
改定内容:
ご発注金額合計 20,000 円(税抜)未満の場合
・送料 1,000 円(税抜)を別途頂きます。(沖縄、離島は別途お見積もりいたします)
Music
2026/01/30
3拠点を結んだリモートプロダクションが拓く、イマーシブライブ配信の可能性。
2025年7月Billboard Live TOKYOにて、アーティスト一十三十一(ひとみとい)による公演「new album release live ~Telepa Telepa~」が開催された。大盛況のライブが繰り広げられるその裏側で、ひとつの画期的な実証実験が行われていた。株式会社NHKテクノロジーズが中心となり行われたその試みとは、リモートプロダクションによるイマーシブオーディオのライブ配信実証実験である。公演会場、中継車、ミキシングスタジオの3拠点をIPで接続することで、これまで実現が困難だった場所でのイマーシブオーディオライブ配信を実現させる可能性を探るというものだ。国内でも類を見ないこの挑戦について、各拠点の詳細を追いながら掘り下げていこう。
リモートプロダクションによるイマーシブライブ制作の課題解消
今回拠点となったのは、映像・音声の収録を行うライブ会場となったBillboard Live TOKYO(六本木)、信号処理と配信を行うために設置されたNHKテクノロジーズのT-2音声中継車(渋谷区富ヶ谷)、制作・ミキシングを行う山麓丸スタジオ(南青山)の3拠点だ。
従来からリモートプロダクションの検証を重ねてきたNHKテクノロジーズでは、今回の実証において、イマーシブライブ制作の普及を阻む要因の一つである「物理的制約」の解消を目的のひとつに掲げている。公演会場によっては、膨大な回線数を必要とするイマーシブ制作への対応や、ライブ中継機能を持たせるための追加機材・人員の設置スペースの確保が難しいなど、さまざまな物理的制約が存在する。中には、中継車の進入や設置が困難な立地条件により、イマーシブライブ配信の導入を断念せざるを得ないケースも少なくない。今回の検証で使用した会場も、複合型商業施設の4階に位置する都市型の会場であり、音声中継車の横付けは困難な立地であった。
また、イマーシブ制作においては、マルチチャンネルのスピーカーモニタリング環境の重要性も見逃せない。会場で収録された信号は中継車を経由し、イマーシブオーディオ専用スタジオとして設立された山麓丸スタジオにてリアルタイムでミキシングが行われた。複雑な位相管理や繊細な音像設計が求められるイマーシブミックスにおいて、エンジニアが使い慣れた制作環境でライブミキシングを行うことができる意義は大きい。IP技術を活用したリモートプロダクションを制作の効率化のみに留めず、このような課題を解決するための有効な手段となり得るという可能性を探るべく、本実験は設計された。
拠点間を繋いだ放送品質のMoIP技術
📷ミハル通信が開発したELL Lite。12G-SDI、3G-SDI、HDMI2.0の4K映像と最大64chのDante/MADI音声をRTPに変換し伝送が可能となる。
今回の拠点間通信には、ミハル通信株式会社が開発した映像・音声用IP伝送リアルタイム・コーデック「ELL Lite」が採用された。映像は2Kまたは4K信号をHEVCで圧縮し、音声は入出力として搭載されたDanteおよびMADIポートから独自ストリームへ変換することで、超低遅延伝送を実現している。1台で送受信の同時動作が可能で、放送品質の映像とマルチチャンネル音声を、それぞれ独立した回線として伝送できるのも特徴だ。さらに、Dante出し / MADI受けといった柔軟な運用にも対応しており、今回の実証ではライブ会場と山麓丸スタジオ間をDanteで、音声中継車をDanteとMADIの併用構成で接続。各拠点間で信号同期を取りながら、リモートプロダクションの中核的な伝送経路として機能した。また、予備回線としてはMADIをIP伝送するResoNetz Linkも併用し、本線とは異なる光回線による冗長化構成を取っている。
ネットワーク面でのもう一つの特徴が、infal光の一般ネットワーク回線を使用したという点にある。輝日株式会社の協力のもと、NGN網内で広域閉域ネットワークを構築。1Gbpsの回線で会場からの2K映像とおおよそ50chの非圧縮音声をリアルタイムに安定して伝送することに成功した。これにはELL Liteが公衆回線での運用を想定した設計であることも大きく起因している。ELLシステムはあらゆる回線状況に合わせた運用を見越して最大1sまでバッファーサイズが設定できる。なお、今回の実証では片道約30~50msの中で運用された。
放送局が使用するような専用線ではなく、一般回線を1日単位でスポット利用することで大幅なコスト削減を実現した今回の事例は、イマーシブライブ配信がバジェット面で二の足を踏むことのない有効な事例となるだろう。
3拠点の機能を生かしたリモート・イマーシブ制作の現場
Billboard Live TOKYO(六本木)
各拠点のシステム構成を見ていこう。まずは会場となったBillboard Live TOKYO。会場PAからの信号に加え、Atmosミックスのために19本のオーディエンス / アンビエンス・マイクを客席やステージサイドに設置した。これらの信号はアナログケーブルで会場内に設けられた伝送基地に集約され、Dante / MADIへの変換、さらに長距離伝送用のIP変換までを中型ラックケース1台のスペースに収めたコンパクトな構成となっている。ここにコミュニケーション回線を加えた約40〜50チャンネルの音声が、渋谷の音声中継車へと送られた。また、ELL Liteには会場に設置されたカメラからの2K映像も入力されており、映像と音声を合わせた通信量は約85Mbpsで運用された。
T-2音声中継車(渋谷区富ヶ谷)
会場から送られた信号は渋谷の音声中継車へと届けられた。ここではミキシング・エンジンであるSSL Tempest Engine TE2を中核としたシステムに信号が入力され、中継信号の受信から信号処理、さらには配信エンコードまでシステムの要として機能した。
今回はSSL System Tのリモートコントロール機能を活用し、山麓丸スタジオに設置されたSSL Desktop Fader Tileからの制御信号を受けて、実際の信号処理は音声中継車側で完結。スタジオ側にはモニター出力のみを送っている。これにより信号経路の最短化が図られ、通信量および伝送遅延の抑制に成功している。音声中継車に搭載されたアウトボード類も、スタジオからの指示を受けて中継車スタッフがパッチングと操作を担当し活用された。また、T-2音声中継車は車体サイズの制約上5.1.4chの構成だが、制作拠点として山麓丸スタジオを使用することで、物理的な制約を超えた7.1.4chでの制作を実現している点も興味深い。各拠点のリソースを柔軟に最大限活用できる点こそ、リモートプロダクションの大きな利点である。
配信はKORG Live Extremeにより、Dolby Atmosおよび HPL(バイノーラル)形式でクローズド配信として行われた。テスト・本番ともにパケットロスや映像・音声の乱れはなく、実用化に耐えうる品質を確保できた結果であった。
📷右)今回の技術統括を担当した、NHKテクノロジーズの寺田 淳 氏
📷KORG Live Extremeのソフトウェアライブエンコーダー。映像と音声のリップシンク処理もここで行われている。
山麓丸スタジオ(南青山)
制作拠点である南青山、山麓丸スタジオに運び込まれた機材は、自家用車1台で搬入できるほどのコンパクトな物量となった。System Tのモニター信号をDanteでスタジオ既設のシステムに入力し、音響特性の優れた空間での制作を実現。会場カメラの映像を確認しながら、Tempest Controlの画面でミキシングを行なった。軽量な制御信号のみ中継車へ送り返すことにより、ライブ制作に必要なリアルタイム性を確保。物理フェーダーを操作した際の遅延はほとんど感じられない程度であり、今回ミックスを担当したmurozo氏は、リモートでやっていることを意識せずに音に集中でき、スタジオ環境も相まって収録されたものをミックスしてるぐらいの感覚に近かったと語る。
また、ミキシングにおいては、リモートプロダクションであるからこそ現場の情報が極めて重要となった。マイキング時に得られる会場の雰囲気や、PAシステムの音響イメージは、ライブの臨場感を伝えるうえで欠かせない要素である。今回はイマーシブ・ミックスとして、フロア最前列で感じる迫力と中段で聴くボーカルの心地よさを融合させ、配信向けの音作りにもこだわったという。リハーサルを含め調整時間が限られるライブミックスにおいて、普段使用しているスタジオ環境で、日常的なモニター音量のまま確認できることは、音像の把握スピードを高める要因となる。それはすなわち、より高品質な制作を実現するための理想的な環境とも言えるだろう。
📷右)ミキシングを担当したオーディオエンジニアのmurozo氏、當麻 拓美氏(山麓丸スタジオ チーフエンジニア)、アドバイザーの清水 修平(ROCK ON PRO)
📷中継車に搭載されたWaves SuperRackに、リモートデスクトップ経由でアクセス。スタジオからタッチパネル操作で直接コントロール可能なシステム構成となっている。
不可能を可能にするリモートプロダクション
NHKテクノロジーズの寺田氏は今回の実証実験の将来的な意義について、次のように語ってくれた。「これまで設備的な制約から配信が難しかった会場でも、まだ世に出ていないような名演をイマーシブの高い臨場感で届けられることが一つのポイントです。家庭にもイマーシブ環境が広がれば、東京のライブに足を運ぶことが難しいお客さまでも楽しむことができますし、配信をきっかけに音楽ライブの素晴らしさを感じて、実際の会場に足を運ぶような流れにつながればうれしいですね。」
また、エンジニアのmurozo氏は、今回の検証を通じて「ミックス拠点を一定にすることで、各会場の持つ魅力を最大限に引き出す制作が可能になる」という新たな可能性を感じたという。コンテンツの視聴者のみならず、制作者自身も制作に没入できる環境を構築することが、イマーシブコンテンツ制作における重要な要素の一つだろう。
リモートプロダクションは、低コスト化や効率化の手段にとどまらず、各拠点のリソースを組み合わせてひとつの大きなプロダクションを構築できるワークフローであることが、今回の実証からお分かりいただけただろうか。この制作手法が普及すれば、日本各地のライブハウスやコンサート会場で行われる公演をどこにいても楽しめる時代が訪れるだろう。エンジニアも物理的な場所に縛られることなく、最もパフォーマンスを発揮できる環境で制作に臨むことができ、その結果として生まれるコンテンツは、より高品質でより多くの視聴者へと届けられるはずだ。コンテンツ制作のあり方を変革する可能性を秘めたリモートプロダクションの発展に今後も注目していきたい。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
NEWS
2026/01/22
SSL UMD192 発売!USB/MADI/Danteの双方向インターフェース
Solid State Logicより新製品、UMD192が発表されました。
UMD192は、USB、MADI、Danteの各フォーマットを双方向で変換するインターフェースユニット。
現代スタジオシステムのユーティリティ性を大きく向上させること間違いなしの注目製品です。
発売開始は2026年3月中旬、メーカー市場予想価格 ¥544,500(税込)を予定しています。
製品情報
スタジオ、ライブサウンド、放送といったプロオーディオ分野において、多チャンネル伝送の主流フォーマットであるMADIとDante、そしてUSB接続によるPC音声の3系統を柔軟にルーティングできるUMD192。ハーフラックサイズの筐体で96kHz/48kHzで192チャンネルまたは192kHzで128チャンネルのオーディオ出力が可能だ。USB、MADI、Danteのいずれか2フォーマット間を双方向、のこり1フォーマットを分割出力先として設定できる。
本体には6x MADI BNCペア(冗長モードで冗長化3系統での運用も可能)、Danteイーサポートはプライマリ、セカンダリ共に2口ずつとUSB3.0ポートが搭載。フロント、リアにポートが分散しているのは持ち出しでの運用でも便利なポイント。電源もAC電源、PoE、USB給電の3種に対応しており、冗長化設定もカスタムできるためライブや放送用途でも安心して使用できる。
フロントパネルからはUSB/MADI/Danteのうち2種の相互変換、1種の分割出力を選択するモードチェンジ、MADI/Danteのクロックソース切替、MADI冗長モードのオン/オフと機能ロックがスムーズに設定できる。
スタジオシステムのフォーマットコンバーターとしても、可搬システムの中核としても、コンパクトで簡潔明瞭な機能のUMD192は多くの場面で活躍するであろう期待の製品ではないでしょうか。お見積もり、デモ機のご相談はROCK ON PROまでご連絡ください。
Music
2026/01/16
Focal Professional – Utopia Main 112/212 / 125dbで紡ぎ出すカレントドライブ、ピュアアナログサウンド。
Focalが新たな一歩を踏み出した。サウンドエンジニアリングの世界ではニアフィールドのモニターを中心として、実績も歴史も積み上げてきた仏 Focal Professional社。実際のところは、カーオーディオやホームオーディオ、インウォールのスピーカーなどエントリーからハイエンドまで幅広いラインナップを誇る。そして、その中でも一切妥協のない、限界のないフラッグシップモデルに与えられる名称が「Utopia」だ。そのUtopiaの名前を冠した新たな製品が登場した、「Utopia Main 112 / 212」である。今回はビクタースタジオで行われた日本初上陸となるイベントにフランスよりFOCAL-JMLAB Pro部門セールス・マネージャーのVincent Moreuille 氏、プロダクト・マネージャーのSylvain Gondinet 氏が来日、Focalの新たなフェイズを切り拓くUtopia Main 112 / 212を国内のトップエンジニアに向けてプレゼンテーションした。
📷左)FOCAL-JMLAB / Pro部門セールス・マネージャー Vincent Moreuille 氏、右)同プロダクト・マネージャー Sylvain Gondinet 氏
ついにメインモニターに到達した。
「ついに」と言っても良いだろう。1979年の創業から45年余り、当初はカーオーディオやホームオーディオの製品開発からスタートしたFocalが、プロフェッショナルなサウンドエンジニアリングの分野に進出し、STシリーズなどのニアフィールドの製品を経て、メインモニターの世界に到達した。その最新形が今回持ち込まれたUtopia Main 112 / 212である。
元々、ゼロからトランスデューサー、ドライバーを開発する技術があり、プロフェッショナルの求める正確でフラットなサウンドを提供する技術的な素地を持っていたFocal社。効率的にエネルギーを空気の振動へ変換することが技術的に得意であり、それはDSPに頼らないピュアアナログな方法で実現されている。意外かもしれないが、これまでのFocal製品でDSPを搭載したモデルは存在しない。目の前で演奏されている楽器がそのままスピーカーで再現されるようにすること、これがFocalが貫いてきた目指すべきスピーカーのあり方、哲学だそうだ。Utopia Main 112 / 212の詳細を見る前に、各製品に共通するFocalの考える良いサウンドを実現する手法、技術的なトピックを振り返っていこう。
良いスピーカーの条件とは
正確な音を再生するために必要な素材の特性とはどのようなものだろうか。物理学の法則に依るものであるため、概ねは各社で共通してくるところだが、Focalでは「軽いこと」、「硬いこと」、「ダンピングに優れること」の3点を挙げている。
正確な空気振動の再現、つまり、空気振動を電気信号に変換したものをもう一度空気振動に変換するするために必要なこととして、入力信号に対し素早くユニットが動き、正確に再現するという要素がある。軽いということは物質を動かすために必要なエネルギーが少なく済み、正確な再現のためには必須な要素でありサウンドのダイナミクスに大きな影響を持つ。硬さについては素早さを再現するだけではなく、正確な動作を繰り返すことにつながる。素材が曲がって動いてしまってはディストーションの大きな要因となる。同様に、振動板表面に波紋が起こってしまうことを抑えるためにも重要な要素だ。これらの悪影響を排除するためにも硬さは重要なファクターとなる。また、FocalではTMD(Tuned Mass Dumper)という技術でユニットのエッジ、サスペンション部に重量を与えてディストーションを約50%も抑制することに成功。マスダンパーとは、オモリを使った振動抑制技術の総称でミニ四駆界隈以外ではあまり聞かないレガシーな技術だが、これをスピーカーエッジに採用し、その技術でさらなるアドバンテージを与えている。最後にダンピング、つまり動き出した振動板の動きを素早く減衰することが3つ目のポイント。素早く減衰して余計な動きを抑えることも原音に忠実で正確な音源再生には欠かせない。
📷TMDの有無によるウーファーリングの動き、カウンターウェイトを設けることで不要なディストーションを打ち消していることがわかる。 グラフはその効果による周波数特性を表したもの、青がTMDありのケースとなっているが、2kHz付近が赤いラインと比べてフラットになっていることが見て取れる。
この軽く、硬く、共振しない素材をエントリーからハイエンドまで、コストとのバランスを考慮しながら複数開発できているのがFocalの強みとなる部分だ。それではウーファーに用いられた素材を見ていこう。
📷Wooferに用いられる各素材。左よりスレートファイバー、フラックス、Wサンドウィッチコンポジットコーン。
Focalではこの素材良否の判断に質量を剛性の値で割った数値を用いているそうだ。素材自体の厚みを増すことで合成は高まるが、重量は重くなる。どれくらい「軽くて硬い素材であるか」ということの目安がこの数値だ。まず、その「質量/剛性=3」とされたのが、最もエントリー向けとなるAlphaシリーズに採用されているスレートファイバーだ。これは自動車産業で生産時に排出されるカーボンを再利用、ポリマーと混ぜて加工することで硬度を保っている。良い素材の条件のひとつには、こうしたリサイクルや再利用を可能にするサスティナブルな素材であるという点がもう含まれていると言っていい。2つ目はmade in FranceのShapeシリーズに採用されているフラックス素材となる。これはリネン(亜麻繊維)をグラスファイバーでサンドイッチしたもので、「質量/剛性=7」となるそうだ。
そして最後に挙げられたのがW サンドウィッチ・コンポジット・コーン。軽さ、剛性、ダンピング、前述した要素を高い次元でバランスし応答させる素材で、ハイエンドとなるUtopia / Trio / ST等のシリーズに採用されている。W “はグラス/グラスの略で、中央の構造用発泡コアの両側に2枚以上のガラス板が貼り付けられた構造。グラス=ガラス素材は、鉄と冒頭以上の硬さを持ちつつ比重は約1/3、歪みにも強いがその特性ゆえに限界を超えると割れてしまう。これをを調整するために発泡ウレタンを両面に貼り合わせることで共振をコントロール。軽く、硬く、共振しない素材を形づくっている。こちらの数値はなんと「質量/剛性=90」。素材に対する妥協のなさを数値からも感じ取れるだろう。
一「聴」瞭然のベリリウム音叉
また、Focalといえばその代名詞となるのはベリリウム・ツイーターだろう。ツイーターも同じく、軽く、硬く、共振しない素材をセレクトし、ラインナップのコスト帯に合わせてアルミ、アルミマグネシウム合金、そしてベリリウムと使い分けがなされているそうだ。
ハイエンドラインに採用されるベリリウムだが、これは世界で2番目に硬い金属だとのこと。軽さも非常に際立っており、まさしくツイーターに求める素材として最適なのだが、難点がひとつだけある、価格だ。ベリリウムは非常に高価でなんと金の30〜35倍もの相場になるという。世界の全産業から見ても相当に希少な素材と言えるベリリウムは、ベリリウムをツイーターに採用したすべてのFocal製品の生産トータルで、年間に使用されるのはたったの2kgほどだという。1シートの厚みもわずか21ミクロンという極薄な素材がもたらす効能と効果。逆に言えば、これがサウンド面で実証されているからこそ、たとえ高価であっても、希少であっても迷いなく使う。そこに限界は設けない、ということだ。
そして、会場にはアルミ、アルミマグネシウム合金、ベリリウムで作られた音叉が持ち込まれた。それぞれを実際に鳴らしてみると、その特性やダンピング、ハーモナイズの少なさなど一「聴」瞭然である。ただし、このベリリウム音叉、前述に則って落ち着いて考えれば同サイズの金の延べ棒 x 30倍のお値段とも捉えられる。これをプレゼンテーションのために作ってしまうあたりにも、まったく発想の限界が設けられていない。良いサウンドを知ってもらうためならノーリミット、もはや清々しさすら感じてしまう。
このように理想の素材を開発し、ピュアアナログな回路、軽量なドライバーが高い能率と、大きなダイナミックレンジを生み出し、それが正確なサウンドとなる。良いスピーカーの条件とは、Focalにとって実に明快なことであるようだ。
専用フルアナログ、”Class-H”電流駆動アンプ
そして、「Utopia Main 112 / 212」である。解説にあたったシルヴァン氏から冒頭あったのは「この製品が将来数々の芸術作品を生み出す、そのことにプライドをもって製品開発を行っている。」ということだ。妥協のない、限界のないというUtopiaのコンセプトは、アンプ、ツイーター、ミッドドライバー、ウーファー、キャビネット、ポート、至る所に反映されており、Utopia Main 112 / 212に「最高の技術」 を余すところなく織り込んだそうだ。
📷Utopia Main 112と専用設計されたアンプ部。
さて、Utopia Mainは専用設計のアンプで駆動する。このアンプは初めて耳にする方も多いだろうClass-H / カレントモードが採用されているという。Class-Hという入力に対して、アンプ回路に掛ける電力量を変化させることで効率よく大出力を取り出す方式。この回路設計のアンプをカレントモードで動作させている。これはアンプを電圧(ボルテージ)ではなく電流(カレント)でコントロールするFocalの特許技術となる。出力されるエネルギーは磁力と、コイルの長さと、電流の掛け合わせで生まれている。つまり、出力される音にダイレクトに関わるのは電圧(ボルテージ)ではなく電流(カレント)だということだ。電圧はインピーダンスによって変化が生じるが、電流であればダイレクトで変化がないためよりピュアにサウンドを出力できる。抵抗値についてもコイルの温度、位置、周波数で変化する値なので、電圧ではなく電流をコントロールすることでよりサウンドをクリアにできるという。この専用アンプはFocalの無響室で測定した長年の結果の中で、最小のTHD値を出したそうだ。
特に自作アンプなどで電気の知識がある方は、古くからスピーカーの駆動における理想形は電流駆動(カレント・ドライブ)だ、という文献を目にしたことがあるのではないだろうか。ところが様々な理由があり、スピーカーを駆動するためのパワーアンプの設計は、電圧駆動(ボルテージ・ドライブ)方式が採用されている。トランジスタ1つで大出力を得ることができ構造がシンプルなこと、そもそも供給される電源が電圧を基準としたものであるため、といった具合だ。
「右ネジの法則」というものを覚えているだろうか、「コイルに対して電流を流した際にその内側に磁界が生じる」というものだ。このように磁界を生じさせ、固定させた磁石との反発によりスピーカーは動いている。この「右ネジの法則」に於いて磁界を生じさせているのは「電流」だということがポイント、生じさせる磁界の強弱にかかるパラメーターに「電圧」は出てこない。もちろん、電圧も全く関係がないわけではなくスピーカーユニットが持つインピーダンス(抵抗値)との間にオームの法則が成立している。しかし、スピーカーのインピーダンスは周波数により大きく変化する。そうなると一定の電圧を加えても周波数によって電流量が変化してしまうのだ。これを防ぐために考えられたのが「電流」駆動である。スピーカーが動作するためのパラメーターである電流量を変化させることで、前述のようにスピーカーユニットのインピーダンスの影響をゼロにすることができる。
📷上左図は本文中でも述べた「右ネジの法則」だが、図説の通りで電流が磁界を生じさせていることがわかる。この発生した磁界と据え付けられたマグネットとの反発力がスピーカーユニットを動作させる原動力となる。上右が周波数に対するインピーダンスの変化を見たグラフだが、電圧駆動の場合は、このインピーダンスの大きな変動が下左図のように出力に影響してしまう。これを「電流」でコントロールすることでインピーダンスの影響を取り除き、安定した出力を得ているのが「電流」駆動、Utopia Mainのアンプ部に採用されたカレントドライブとなる。
さらに、一歩踏み込んで電気回路的な解説を加えると、一般的な電圧駆動アンプ(Voltage Feedback Amp=電圧帰還増幅器)と電流駆動アンプ(Current Feedbak Amp=電流帰還増幅器)の基本的な増幅回路の設計は同一である。違いはフィードバック=帰還回路の接続先である。電圧帰還の場合には、帰還回路のインピーダンスが高い入力信号のマイナス側になるが、電流駆動の場合にはインピーダンスの低いバッファーの後段となる。このインピーダンスの違いにより、増幅回路の動作が電圧モード、電流モードの差異を生んでいる。
このように電流駆動は、スピーカー駆動にとって理想的な駆動方法である。ほかにも高域特性が良い、応答特性が良いなど電気的なメリットもある。それでも電流駆動が一般的にならないことには理由がある。2-way、3-wayといったマルチスピーカーの駆動が事実上できない、過大入力時にユニットを壊してしまうリスクが非常に大きい、共振を起こしやすい、など看過できないデメリットが多数あるためだ。この数々の問題点を、Utopia Mainシリーズではアンプをスピーカーユニットに対して「専用」の設計とすることで問題を解決している。
それだけではない。アンプの背面には設置時にファインチューニングが行えるように多くのパラメーターを調整できる仕様が設けられた。「125dbを持ちつつもピュアなサウンドを再現する」という目標が掲げられたそうだが、このアンプ部分だけでも限界なくテクノロジーが織り込まれていった様子がうかがえる。しかもそのすべてが電気的にもアナログ処理されており、DSPを使わないフルアナログ回路での調整となっている。
「音楽を創るための道具」をつくる
ツイーターはベリリウムが採用され、インバーテッドではなくMシェイプ、ミッドドライバーにもMシェイプが用いられている。Mシェイプは元々カーオーディオ向けの技術で、車に搭載するために浅い奥行きを求めて開発されたものだそうだ。その結果、ドーム形状のおよそ1/3の奥行きにできたそうなのだが、これがサウンド面でも相乗効果をもたらす。奥行きを浅くすることはショートストローク化と同義となるため、Utopiaの領域で求められるような完全なピストン運動を実現できた。こうして実現された最高精度のミッドレンジドライバーは生産ラインで+/- 0.2dB レベルでペアリングされているという。
ウーファーは13インチ。前述の「質量/剛性=90」を誇るW-Sandwichコーンが採用され、TMD(Tuned Master Dumper)も搭載、より自由に豊かに動く設計が施されているそうなのだが、その分だけこれを収めるキャビネットの開発は、相当な量の研究上に成り立っているそうだ。まず、そもそもキャビネットは動いて欲しくない。そのためには動いているポイントを正確に把握して対策する必要がある。こうして286箇所にもおよぶキャビネットのポイントを計測し、その挙動がどのようなものかを明らかにすることとなった。その結果、採用されたのが合成確保のためのブレーシング機構、共振を防止して吸収するチューブレゾネーターを搭載、そしてフロントパネル50mm、横・後ろは30mmというかなりの厚みを持ったキャビネットそのものだ。さらに特徴的なのは、ポート部分。ラージモニターの大音量時でもポートノイズや歪みを発生させないよう、内部をフレア形状に整えている。これにより空気の流れを改善し、鋭いエッジからの回折効果を低減することでポートノイズを回避する。
📷キャビネット自体も非常に厚みを持った強固な仕様だが、計測結果をもとにブレーシング補強が施されている。さらに共振を防ぐレゾネーターも搭載された。右図からはポートのフレア形状を設けることで空気の流れが整えられていることがよく分かる。
こうしてフラッグシップとなるUtopia Main 112 / 212の機能上のトピックを振り返ってきたが、すべてに共通するポリシーである「最終的にこれを音楽を創るための道具として使う」ことに向けて、最後のひと仕上げがある。現場のフィードバックを反映していくことだ。最終調整となる現場テストは、11人のグラミー受賞エンジニアによって米・BlackBird Studio / Studio Cで行われたそうだ。なんと、このエンジニア11人によってグラミーにノミネートされた作品は70作品を数えるそうで、実績実力とも世界最高峰と言える陣容によるテストとなっている。これを製品最後の仕上げとし、いま私たちの前に現れたのが「Utopia Main 112 / 212」だ。
そして、繰り返しにはなるが、Focalはアナログでその理想を追求することを哲学としている。DSPという魔法のデバイスを使うのではなく、リアルワールドでの究極を目指す、その誇りをひしひしと感じさせるFocalのこだわりの結晶がUtopia Main、125dB SPLという音圧レベルを持ちながら、少しの緩みもないフォーカスのあった究極のモニタースピーカーとも言えるサウンドを実現している。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
NEWS
2026/01/14
Avid Media Composer ver.2025.12 リリース情報
日本時間 2025年12月24日、Avid Media Composer バージョン2025.12がリリースされました。有効なサブスクリプション・ライセンスおよび年間プラン付永続ライセンス・ユーザーは、AvidLinkまたはMyAvidよりダウンロードして使用することが可能です。
今回のこのリリースでサポートされているOSは次の通りです。
Windows11 64-bit 22H2以降 (Professional/Enterprise)
macOS 13.xから13.7.x (Ventura) 、14.xから14.7.x (Sonoma)、15.xから15.7 (Sequoia)、 26.x(Tahoe)
Media Composer2025.12の新機能
入力文字起こしされたテキストの修正
文字起こしツールで直接修正できるようになりました。単語レベルのタイミング、同期は編集後も維持されます。
次のいずれかで、起こされた文字を編集できます。
単語をダブルクリックして、その場で編集する
複数の単語をハイライト表示し、ダブルクリックして編集する
右クリックして「編集」を選択し、単語または選択したテキストを更新する
ピアツーピアでの文字起こし共有
プロジェクトの文字起こしデータベースをネットワーク全体で共有できるようになり、共有メディアやプロジェクトのワークフローと同じように機能するようになりました。(この機能はNEXISストレージ上にプロジェクトを作成する必要はあります。)
文字起こしの共有は、[設定]>[Project]>[Transcript]>[Manage Transcript Database]で有効化できます。
Hose Shared Transcript:現在のワークステーションのデータベースに他のワークステーションからアクセスできるようにします
Use Shared Transcript:ホストワークステーションのデータベースを利用します
ビデオと波形マップの同時表示
ソースモニターで、ビデオとオーディオ波形を並べて表示できるようになりました。これは2024.12で導入されたソースモニタへの波形表示に追加された機能です。
この表示を有効にするには、ソースモニターで右クリックし、[波形]>[Waveform Map with Video]を選択するか、または[Show Video/Waveform]コマンドボタンを使用します。
DNx 4.0 Codec
DNxHRおよびDNxHDコーデックには、統一された命名システムが導入されました。
解像度に基づいてDNxHDまたはDNxHRを選択する代わりに、Avid DNx LB、SQ、HQなどを選択するだけになり、色深度コントロールの柔軟性が向上しました。
DNxHRまたはDNxHDコーデックを使用している既存のメディアは、変更なく引き続き使用できます。詳しくは、こちらのサイトをご参照ください。
色深度のコントロール
DNxメディアをMOVまたはMP4形式でエクスポートする際に、色深度を柔軟に設定できるようになりました。エクスポートダイアログの「色深度」ドロップダウンから8ビット、10ビット、12ビットのオプションを選択できるため、配信やアーカイブにおいて画質をより細かく制御できます。
フル解像度のマルチカメラ出力
マルチカメラは、従来の1/4解像度の制限がなくなり、フル解像度で動作するようになりました。
これにより、NDIおよびSRTワークフローでフルクオリティのマルチカメラ出力が可能になり、リモート環境や仮想環境にある接続されたモニタリングデバイスにマルチカメラコンテンツをフル解像度でストリーミングできるようになります。
品質メニューには、接続されているすべての出力デバイスでサポートされているオプションだけが表示されます。
Avid Titler+ テンプレートによるワークフロー
Avid Titler+により、テンプレートの作成と共有が簡単になりました。
新しいテンプレートを作成するには、[ツール] > [Avid Titler +Template] を選択します。
テンプレートをビンに整理してプロジェクト間で使用したり、他のユーザーと共有できます。
マーカーの改善
マーカーはインポートやエクスポートをすることができます。このバージョンでは、マーカーはソース側にインポートできるようになりました。
Avidシステムを使用できない環境下で、マーカーテキストファイルを作成できます。マーカーテキストファイルはタブ区切りのファイルで、特定のパラメータを指定して作成します。
また、SVGマーカーのオーバーレイをサポートします。Avid Media Composer Extensionsによるこの機能は、視覚的な注釈付きのマーカーをオーバーレイとしてインポートできるようになります。そして、マーカーツールのファストメニューから有効/無効を切り替えることができます。
Extensions(拡張機能)
Panel SDKが「Media Composer Extensions」に名称変更され、この拡張機能をインストールすると、アプリケーションメニューに新しい「Extensions」メニューが表示されます。このメニューからインストール済みの拡張機能にアクセスでき、ワークスペース内でのツールの管理と起動が簡単に行えます。
Media Composer Extensionsは、Media Composerインターフェースに直接追加ツールを統合します。そして、これらのツールはパネルとして表示され、他のウィンドウと同様にドッキング、フローティング、またはタブ化することができ、さらに、レイアウトと管理に関しては標準パネルと同様に動作します。
Media Composerについてのご購入のご相談、ご質問などはcontactボタンからお気軽にお問い合わせください。
Event
2026/01/08
1/29(木) Avid Creative Summit 2026 Osaka 開催!
~クリエイティブ制作のためのリアルノウハウイベント。~
Avid Creative Summit 2026 Osaka、1/29(木)開催決定です! Avid Pro Tools / Media Composerから拡がるソリューションはもちろんのこと、その世界を拡大させるサードパーティーとのコラボレーションもご紹介。クリエイターが感じた実際の制作ノウハウから、大阪万博での先進的なコンテンツ表現の取組事例、ついにPro Toolsとも連携が始まった360 Reality Audio、そしてその技術を活かしたスタジオ仮想化技術SONY 360 VMEの体験会など、Avidを中心としたワークフローの進化、最新情報、業界最先端の技術情報についてを多彩なゲストによるスペシャルセッションで触れる充実の1日をお届けします!
■Avid Creative Summit 2026 Osaka
開催日時:2026年1月29日(木) 開場12:30 、セミナー13:00~19:00、懇親会19:00~20:00 終了予定
会場:Rock oN Umeda 大阪府大阪市北区芝田1-4-14 芝田町ビル 6F
参加費用:無料
参加申込方法:お申込フォームより事前登録をお願いいたします。
*長時間のイベントとなるため、お申し込みは第一部3セッション、第二部3セッションに分けて承っております。全セミナーご参加希望の際は、第一部・第二部ともにチェックを入れてお申し込みください。
定員:各回30名
本イベントは定員に達したため、お申し込みを締め切りました
◎タイムスケジュールのご案内
◎セミナーのご案内
◎Session1「What’s New Avid Pro Tools 〜Pro Tools 2025.12 新機能紹介〜 」
13:00〜13:50
昨年末、最新アップデートとなるPro Tools Ver 2025.12がリリースされました。新興イマーシブ・フォーマットであるAudio Vividミキシングに対応し、Dolby Atmos / 360 Reality Audioはもちろん、フォーマットを横断するイマーシブ制作フローを実現する最新機能から、SoundFlowによるワークフローの自動化や、制作を加速する新たなプラグイン連携まで、AvidのDaniel Lovell氏に徹底解説いただきます!
講師:Daniel Lovell 氏
Avid Technology APAC オーディオプリセールス シニアマネージャー/グローバル・プリセールス
オーディオポストから経歴をスタートし、現在ではAvidのオーディオ・アプリケーション・スペシャリストであり、テレビのミキシングとサウンドデザインの仕事にも携わっています。20年に渡るキャリアであるサウンド、音楽、テクノロジーは、生涯におけるパッションとなっています。
◎Session2「ついにPro Toolsにビルドインされた360 Walkmix Creatorにより生まれる新しいワークフロー 」
14:00〜14:50
完全なる4π空間のミキシングを実現する、フルオブジェクト・フォーマットであるSONY 360 Reality Audio。音楽の表現のために、真の自由空間をクリエイターに提供するこのフォーマット。その制作ツールである360 Wlakmix CreatorがPro Toolsに組み込まれました。360 Reality Audioとは?どのような活用事例があるのか?具体的な話から、その制作方法までその開発元であるSONYの渡辺氏にお話しいただきます。360 Reality Audio制作現場の最前線でアーティストサポートなどもこなす同氏だからこその情報盛りだくさんでお届けいたします。
講師:渡辺 忠敏 氏
ソニー株式会社 360 Reality Audioコンテンツ制作スペシャリスト
AVアンプなどコンシューマーオーディオ製品の音質設計やSuper Audio CDコンテンツ制作フィールドサポートを経て、現在360 Reality Audioコンテンツ制作のフィールドサポートとして国内外の制作の技術的サポートを行っている。
◎Session3「Cosaqu流:時間を奪わないサンプル選び 〜Pro Tools 上で完結させるビートメイクの実践フロー〜」
15:00〜15:50
Pro Tools でのビートメイクに新たな可能性をもたらす。Spliceサンプル・ライブラリー統合機能をテーマに、梅田サイファーのCosaqu 氏を迎えて、実際の制作ワークフローを解説します。Pro Tools上のオーディオクリップをSpliceにドラッグするだけで、AIがビート、キー、テンポに自動同期したサンプルを即時に提示。これまでに要していたサンプル検索の時間を大きく短縮し、創作の初動をそのまま形にできるスピーディなビートメイクを実現します。本セミナーでは、Cosaqu 氏が現場で実践しているサンプル選びの流れ、組み立てのコツ、AI連携を活かした制作Tipsをデモを交えながらわかりやすく紹介。Pro Toolsでトラックメイクを行うクリエイターにとって、日々の制作をさらに加速させるヒントが詰まったセッションです。
講師:Cosaqu 氏
梅田サイファー
大阪の梅田駅にある歩道橋で行われていたサイファーの参加者から派生した集合体、 梅田 サイファーのメンバー。 プロデューサー/ビート・メイカー/ラッパー/エンジニアをこ なすマルチプレイヤー。 梅田サイファーの楽曲はもちろん、 『キングオブコント』 のオープニングの作曲を3年連続で手掛け、 アニメ「ザ◦ファブル」のオープニング「スイッチ」、 アニメ「炎炎の消防隊」 のエンディング「ウルサイレン」、アニメ「グノーシア」の「FLOOR KILLER」の楽曲プロデュースなどその活動は多岐に渡る。
◎Session4「Pro Toolsユーザーのためのライブサウンド・ワークフローセミナー」
16:00〜16:50
Pro ToolsとLV1ライブコンソール・シリーズの連携で実現する、ライブサウンドワークフローをハンズオンでご紹介。ライブ本番と同時に行うマルチトラックレコーディング、収録素材を即座に再生して行うバーチャルサウンドチェック、本番前・本番後の音作りをPro Tools上で完結させる実践的な手法を実際の操作を交えて解説します。Wavesプラグインを活用した実践的なライブミキシングをはじめ、ライブレコーディング / 再生ワークフロー、収録素材を用いたバーチャルサウンドチェックなど、現場ですぐに活用できる内容を中心にお届けします。
講師:出原 亮 氏
福山Cable
2010年、広島県福山市にライブハウス福山Cableを設立。ライブハウス運営を軸に、音響レンタル、スタジオ運営、音源制作など幅広い音楽事業を展開。DanteやWaves SoundGridなどのネットワークオーディオを導入し、各種HAやプロセッサーと連携。高音質でクリアなサウンド環境を実現し、アーティストと観客双方に聞き疲れしない音楽体験を提供。WAVES LV1やネイティブプラグインを活用したライブサウンドの構築にも積極的に取り組み、常に新しい手法を模索、音質向上を目指している。
2023年以降は、SPAT Revolutionやd&b Soundscapeなどのイマーシブオーディオシステムを導入。日本初のライブイマーシブ常設会場として福山Cableのリニューアルを行う。同年11月には日本で初めて野外フェスでのライブイマーシブ公演をプロデュースするなど、これまでに100本以上の公演をサポート。全国で行われるイマーシブPAのセミナーにも多数登壇し、日本のライブイマーシブ普及に努めている。近年では、各種音楽施設やスタジオのスピーカーインストール協力、測定調整などの案件も数多く請け負う。いづれもWAVES eMotion LV1が欠かせない道具となっている。
>>福山Cable HP
◎Session5「AIを用いた編集業務の効率化・番組クォリティの向上」
17:00〜17:50
昨今、「AIを用いた業務改善」という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、番組制作の現場では、AIをどのように具体的なワークフローへ取り入れるか悩む方も多いのではないでしょうか。番組制作のすべてをAIに任せることは容易ではありませんが、一方でAIは“非常に優秀なアシスタント”として大きな可能性を秘めています。準備作業や仕込みをAIに担わせ、最終的なクリエイティブ判断を人間が行うことで、新しい制作スタイルや表現を実現できる手応えが生まれています。本セミナーでは、生成AIと対話しながら海外賞(ABU賞)出品用の英語字幕を制作した実例をご紹介します。この字幕を用いた番組『前田穂南の走る道』は、2025年度 ABU賞 TV SPORTS部門で最優秀賞(ABU賞)を受賞しました。実際の制作プロセスを通して、AIを“業務改善のためのアシスタント”として活用するヒントをお伝えします。
講師:清水 慎恭 氏
関西テレビ放送株式会社 総合技術局 制作技術センター 兼 DX推進局 DX戦略部
2008年 関西テレビ放送入社。主にスポーツドキュメンタリーや特番のオフライン・オンライン編集を担当。2025年 前田穂南の走る道(英題 Honami Maeda :A Life of Running)で、アジア太平洋放送連合(ABU)が優れたテレビやラジオ番組などを表彰するABU賞で最優秀賞を受賞。
◎Session6「Expo2025 Monster Hunter Bridgeにおけるオーディオ制作事例」
18:00〜19:00
2025年4月より184日間にわたり開催された大阪・関西万博。その中で、日本国際博覧会大阪パビリオン推進委員会が出展したのが「大阪ヘルスケアパビリオン」。この一角に設けられたXD HALLでは「モンスターハンター ブリッジ」の世界を、360度映像と連動するARデバイス、全方位に配置された89本のスピーカーによるイマーシブサウンドで表現。この来場者を包み込む体験はどのような構想と制作プロセスを経て実現したのか。本セミナーでは、イマーシブサウンド設計、映像・演出とのリアルタイム連動、そして没入感を最大化するための思想と試行錯誤について、開発コンセプトから技術的アプローチまでを交えながらご紹介します。
講師:瀧本 和也 氏
株式会社カプコン オーディオプロダクションチーム リードゲームオーディオミキサー
バイオハザードシリーズ、モンスターハンターシリーズを中心にミキシングエンジニアとしてゲーム開発に参加し、ゲームオーディオ全体のクオリティを支える。近年は特にダイアログについて多くの試みでクオリティアップを担い、ゲーム内の空間演出も担当。多くのイマーシブオーディオミキシングを積極的に行い、ゲームにおけるインタラクティブなミキシングと演出的な表現としてのミキシングの融合を目指し、研究を重ねている。
SONY 360 VMEを体験しよう!
スタジオをヘッドホンに詰め込んでどこでもスタジオの音環境を再現できる、まさに未来のテクノロジーSONY 360 VME。その360 VMEをRock oN Umeda UNLIMITED STUDIOで本イベント中にご体験いただけます!SONYがプロフェッショナルユーザーのために作り上げたこの技術、一般的なバイノーラル技術と一線を画すクオリティで、米Sony Picturesをはじめとした国内外の現場ですでに実運用されています。
その実力は体験してみなければわかりません。イマーシブミキシングに興味のある方はもちろん、ヘッドホンでのモニタリングに疲れた方にもオススメしたい!「ヘッドホンなのに、まるでスピーカーで聴いているかのような」驚きの体験が待っています、ぜひご参加ください!
●360VME 測定体験会開催時間
・13:00-14:00
・15:00-17:00
・18:00-19:00
>>SONY 360 VME HP
【出展社展示】現場で“使える”ノウハウをより詳しくご紹介します!
>>>Blackmagic URSA Cine Immersive / HP
Apple Vision Pro向けに開発された180°のイマーシブ映像フォーマット「Apple Immersive Video」用に設計されたBlackmagic URSA Cine Immersiveカメラを展示します。制作者サイドには全方向に展開する表現の可能性を、そして視聴者サイドには空間を自由に探索できる没入体験を提供するこちらのソリューション、当日はApple Vision Proでのデモをご体験いただけます。
>>>フォーミュラ・オーディオ / HP
Audio Ease、Sound Particlesといったソフトウェアを取り扱うフォーミュラ・オーディオからは、Sound Particlesを中心に展示ご紹介をいただきます。Sound Particlesは、CGのパーティクル技術を音響制作に応用した革新的なサウンドデザイン・ソフトウェアメーカー。ごく少数から数百万もの仮想音源を3D空間に生成・制御し、従来手法では困難だった高密度で複雑なサウンドを直感的に制作することが可能です。9.1.6 chや最大6次のAmbisonicsなどあらゆるフォーマットに対応し、映画・ゲームをはじめ、世界中のプロフェッショナルな現場で採用されています。
募集要項
■Avid Creative Summit 2026 Osaka
開催日時:2026年1月29日(木) 開場12:30 、セミナー13:00~19:00、懇親会19:00~20:00 終了予定
会場:Rock oN Umeda 大阪府大阪市北区芝田1-4-14 芝田町ビル 6F
参加費用:無料
参加申込方法:お申込フォームより事前登録をお願いいたします。
*長時間のイベントとなるため、お申し込みは前半3セッション、後半3セッションに分けて承っております。全セミナーご参加希望の際は、前半・後半ともにチェックを入れてお申し込みください。
定員:各回30名
本イベントは定員に達したため、お申し込みを締め切りました
【ご注意事項】
※本イベントについて後日動画配信などはございませんので、あらかじめご了承ください。
※会場座席数には限りがございます。原則、当日先着順でのご案内とさせていただきます。誠に恐れ入りますが座席の確保はできませんのであらかじめご了承ください。
※セミナーの内容は予告なく変更となる場合がございます。
※著作権保護の為、写真撮影および録音は差し控えていただきますようお願いいたします。
※当日は、ご来場者様向けの駐車場の用意はございません。公共交通機関でのご来場、もしくは周辺のコインパーキングをご利用下さい。
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2026/01/07
日活株式会社様 / 日活調布撮影所 MA 大空間を活かす、物理的な音響設計アプローチ
日本国内に現存する映画会社の中で最も歴史のある会社、それが日活株式会社である。その歴史は1912年に吉沢商店、横田商会など4社が合併し、日本初の本格的な映画会社「日本活動写真株式会社(日活)」が設立された時代まで遡ることができる。すでに110年を超える歴史を持つ日活、今回のMA室リニューアルが行われることとなった日活調布撮影所の着工は戦後間もない1953年である。撮影所としても70年以上の歴史がある日本の映画史そのものとも言える場所だ。その70年の節目に発表されたスタジオ全域に渡る大規模修繕事業。ポストプロダクションセンターも部屋の配置まですべてが見直され、本稿で取り上げるMA室以外にも新しいFoleyステージ、ADR室がリニューアルされている。
📷上左:7.1ch対応のダビングステージ、上右:撮影所内、別の建屋にある試写室、下左:広い空間が確保されたADRブース、下右:MA室と連携した運用システムが組まれたADRコントロールルーム
天井高6m、大空間を活かす。
本稿ではリニューアルされたMA室に関して話を進めていきたい。「リニューアル」とされてはいるが、躯体を一旦スケルトン状態に戻し、いちから部屋を作るという大規模な工事で、新設と言ってしまってもいい内容だ。今回の音響建築工事は日本音響エンジニアリング株式会社が担当し、Foley、ADR、MAと3部屋の改修を実施している。これはポストプロダクションセンター北側の半分にあたり、建屋内の大規模な部屋割りの変更も含まれる工事である。
かつては、2部屋目のダビングとして使われていた建屋北側の部屋をFoleyに、その隣をADRに、さらに隣をMAへと改修している。さすがは、歴史のある日活調布撮影所である。内装を剥がしてスケルトンにすると以前ダビングであった名残で映写窓が壁の中から出現したり、昔のフローリングが現れたりと、まるで史跡を発掘するかのような出来事が多数あり、当時を知る諸先輩方からは、昔はどのように使っていたかなど貴重なお話を聞くこともできた。
リニューアルされるスペースは、躯体天井まで6m以上の高さがあり、床面積も奥行き・幅ともに7m以上ある大空間。その内側に遮音壁を立てたとしても、5m以上の有効寸法は取れるだろうということで、当初はCinemaフォーマットのDolby Atmosに対応したダビングにしてはどうだろうかという意見や、CinemaとHomeの機能を兼ね備えたAtmosスタジオではどうか、という意見も出たそうだ。非常にチャレンジングなアイデアであり面白い計画ではあったが、細部まで検討をしようとすると、そのフォーマットの違いの大きさに気づくこととなる。
わかりやすいポイントとしては、フロントのスクリーンに関してと、サラウンドスピーカーの配置だろう。Cinemaの場合には、劇場と同様に音響透過型スクリーンの後ろにシネマスピーカーを設置する。Cinemaの音とはその音響透過特性も含めた「劇場」の音である。片やHomeフォーマットではスピーカーは露出での設置であり、ダイレクトにそのサウンドを視聴することとなる。サラウンドに関してもCInemaの場合には、壁面の少し高いところに設置を行う。これは、入口扉などと干渉しないよう少し高い位置に設置されるのが通例だ。また、デフューズサラウンドとも呼ばれる複数のスピーカーを使ったサラウンドアレイが組まれる。これは客席のどこに座ったとしても一定のサラウンド感を得るための工夫である。そして、HomeのサラウンドはどうかというとポイントソースのスピーカーによるITU規格に準拠した配置となっている。
これらのことを考えると、一式のスピーカーを共用してCinemaとHomeを両立させることは、望ましくない結果を生んでしまう可能性が高い。ひとつの部屋にCinema用、Home用それぞれのスピーカーシステムが導入できればその限りではないが、費用対効果などを考えても用途に応じて部屋を分けたほうが良いという結論になる。無理に共有しようとしたとしても、どちらつかずになり中途半端なものになってしまう。このような検討が行われた結果、この大空間を活かして国内のどのDolby Atmos Homeスタジオよりも優れた音響特性を持つスタジオを作ろうという、基本方針が決まった。
物理的に等距離のスピーカー配置
この基本方針をどのように実現するかという検討が始められ、まず着手したのが空間の容積を活かすスピーカーの選定だ。複数メーカーのミドルクラスのスピーカーが集められ比較試聴が行われ、そこで選定されたのがPMC 8-2である。十分なボトムエンドと解像度を兼ね備えたPMCの次世代を担うミッドレンジ・モデルである。さらにローエンドを増強したPMC 8-2 XBDの方が、より良いだろうということになりL,C,R chに採用が決まった。水平面をすべてPMC 8/2 XBDにするというプランまでは叶わなかったが、国内でも前例のない大型スピーカーによるDolby Atmos Homeのスタジオの基本プランが決まった。
スピーカのレイアウトは、天井高があるためできる限りサラウンドサークルを広げ、理想の等距離配置を目指すということで設計が進められた。電気的にディレイを駆使して、仮想的にスピーカーを等距離に見せかけるという手法がほとんどのDolby Atmosスタジオでは行われている。これはやはり天井高の不足からくる問題点である。日活撮影所のMA室は余裕ある天井高から、理想の位置へと配置が行える。それならば物理的な配置でしっかりと等距離を確保しようということとなった。
スピーカーを等距離に配置することで到達時間を一定にできるメリットはやはり大きい。距離が異なる場合には、電気的にディレイを使用してその補正を行うのだが、それが必要無くなるからだ。ディレイ処理はあくまでも仮想的に実際の設置距離をより遠ざけるということを行うので、多少ではあるが違和感が生じることがある。この原因としては、直接音はディレイで整えられていたとしても反射音などはその次第ではなく、完全なる補正とはならないことなど様々な事象が考えられる。しかし、こうした処理を行わないとパンニングの際などに位相干渉などの問題が生じてしまうため、補正の手段として必要であることに変わりない。
こうなると、やはり理想的で最善な手段は物理的に等距離にスピーカーを配置し、ディレイ無しでのスピーカー配置を実現すること、となる。今回の日活撮影所の設計に際し、サラウンドサークルをできるだけ大きく、そしてスピーカーは等距離配置に、という強いリクエストがあった。サラウンド環境におけるリスニングポイントからスピーカーの距離に関しては様々な意見があるところだが、等距離であるということにデメリットは基本的にはなく、スピーカー配置の理想形であると言える。
3.2mというサラウンドサークル
また、スピーカー距離に関してはできるだけ距離を確保したい。これもスピーカー配置において設計当初よりあったリクエストだ。リスニングポイントから各スピーカーまでの距離(モニター距離)に関しては、5.1chサラウンドの規格が記されているRec. ITU-R BS. 775-1の中では明記されていない。しかし、その参照 RecommendationであるRec. ITU-R BS. 1116-1において、2〜3mのモニター距離がマルチチャンネル再生環境用として推奨されているという記述がある。
これは、Dolby Atmosではなく、5.1ch等の平面サラウンドに関しての推奨ではあるが、マルチチャンネル・サラウンドに関してのスピーカー距離に明確に言及した唯一の資料でもある。そこから考えると、今回の部屋のサイズを使い切った3.2mというサラウンドサークルは、推奨よりも少し大きいサラウンドサークルということができる。この推奨の下限とされている2mの距離を確保するのことも難しい国内のスタジオ事情から考えると、十分な距離が保たれた環境と言えるだろう。
サラウンドサークルに関しては、狭いほど直接音が支配的となり定位感は向上する。広くなると間接音(反射音等)が相対的に増えるため定位感という視点では弱くはなるが、それが自然なサラウンド感の向上につながるとも言える。今回の設計では遮音壁からの距離を最低限確保しつつ、できうる限り広いサラウンドサークルが確保できるよう設計が行われている。サラウンドスピーカーが少し壁に埋まっているような設置となっているのは、このように考えられた工夫の結果である。
「凶暴」な低域を手懐ける物理的アプローチ
今回設置されたスピーカーだが、前述の通りでL,C,R chへPMC 8-2 XBDが採用された。このスピーカーは、PMC 8-2に8-2 SUBを追加し、4本のウーファーユニットにより低域を再生するという仕組みになっている。スコーカーとのクロスオーバーポイントは変えずに、ウーファーの出力をパラにして8-2 SUBに送っているということだ。つまり、PMCの特徴であるATL(バックロードホーンのような独自の低域増強の技術)による豊かな低域。これが倍のボリューム感を持って再生されるということである。その低域は、ラージモニターを彷彿させる十分すぎるボリューム感。それがフロントに3セットともなると、その迫力は想像を超えたものになる。「凶暴」とも感じるほどの迫力の低域。これこそがPMCの魅力であり、スピーカー選定の決め手のひとつであった。しかし、マルチチャンネル・スピーカーの一部として考えると、他のチャンネルとのつながり、全体のバランスなど考慮すべきポイントは多くある。
調整前と調整後、それぞれの音を聴く機会があったのだが、調整後にはその持ち味、キャラクターを保ったままタイトになった、というのが第一印象である。「凶暴」と感じてしまうほど暴れていた部分がうまくチューニングされ、素性はそのままにダイレクト感のあるサウンドへと変化した。この秘密を音響調整を行った日本音響へ質問したのだが、その答えは「物理的アプローチ」というものだった。超低域は振動である。それを止めるためには多少の吸音処理では全く追いつかない。振動に対しては質量を持ってチューニングをするという、物理学のセオリーに沿った対処が行われたということだ。どれほどの物量(質量)が投入されたのかはノウハウの部分となるが、ともかく質量を持って振動に対処を行ったということだ。不要な振動をするのであれば、重りを置いて振動を取り除こうということである。
もちろん吸音に関しても徹底した処理が行われている。スピーカー設置時には、裏側に回ってメンテナンスができる程度のスペースが確保されていたのだが、音響調整後にそのスペースはすでになかった。吸音処理のセオリーは、半波長の厚みの吸音材でその帯域に対して対処をするというものである。30Hzを吸音するならば半波長である5mの厚みの吸音材が必要、60Hzであれば2.5mというのが一般論である。どれほどの吸音材が投入されたか、いまやその全貌を見ることはできないが相当な量になっていることは創造に難くない。
自然な空気感を聴かせる基本設計
そして、部屋自体の設計もサウンドに対する意図を持って行われている。吸音処理などは音を実際に鳴らしてからの調整であるが、それ以前となる部屋の基本設計が重要であることは言うまでもない。事前の準備あってこそのトリートメントである。
今回、スタジオの壁面はすべて傾けて設計されている。これは天井に関しても同様で中央が一番低くなるように左右から傾斜がついた谷型の天井となっている。写真では分かりづらい部分ではあるが、一方向に傾けるのではなく、二方向に傾けることで定在波の発生を効果的に抑えている。さらに壁面はランダムな凹凸を設けた意匠を施し、極力音響的に有利な形状としている。これらの工夫はスピーカー距離が広いことにより生じる反射音の増加を効果的に抑え、自然な空気感として聴かせることに寄与している。
物理的な追い込みとして面白いのが、天井のスピーカーに取り付けられた棒だ。一見して何のためか判然としないその棒だが、もちろん意図されたものである。これら天井のスピーカーは前方を向いて配置されている、つまり、巨大な反射面となっている100インチのTVに向いているのである。そして、このTVからの反射により定位が前に引っ張られるという現象が起こってしまう。これを解決するために行われた工夫がこの棒である。円柱はそこに当たった音波を拡散させる。スピーカーのツイーターとTVの軸線上に棒を配置することで高域がTV画面に当たり反射することを押さえ天井スピーカーの定位の向上につなげているわけだ。日本音響エンジニアリングは棒状の木材をランダムに配置した柱状拡散体「AGS」を製品化していることでも知られるが、この工夫もそのノウハウが活かされた格好となる。
このように、スタジオの音響設計においては物理的な部分での工夫が随所に行われている。物理的に追い込み、電気的な補正は最低限とすることで自然なサウンドを目指す。言葉にするとシンプルではあるが、それこそすべてコストと直結する項目であり、それを実現するのは本当に大変なことである。理想のDolby Atmos Home環境を作るという信念のもと、物理的な理想を求め、それを実践したのがこのスタジオである。
スタジオを熟知したシステム設計
この部屋のシステムは、Avid S6をフラットに埋め込んだ机を中心とし、4台のPro ToolsとDobly Atmos Rendererが動作するRMU、計5台のPCにより構成されている。映画スタジオらしくダビングのシステムをコンパクトにした設計で、プレイアウトとしてのPro Toolsが3台、ダバーが1台という構成である。すべてのPro Toolsは1台のAvid MTRX IIへDigiLinkで接続され、コンパクトな設計ながら柔軟性のあるシステムアップを実現している。RMUはDanteによる接続だ。出力は、MTRX IIからのMADI出力をRME ADI-6432でAESに変換。そのAES信号をRME ADI-8 QSでアナログ信号へ変換してスピーカーへ接続している。他の映画会社でも採用されているこのシステムだが、RMEのSteady Clockによるデジタル信号のジッタ抑制技術を組み込み音質に対しての最大限のトリートメントを行うためにこのような機器選定となっている。
メーターは正面に設置された100インチTVの左右の画面に表示させることができるようになっている。ここにはメーター用のWin PCが準備されDante Virtual Soundcardをインストール、Dante信号が接続されている。メーター用のソフトウェアとしては、YamakiのVUアプリケーションとAtmos用としてFluxのMIRAが導入された。VUもしくは、イマーシブ対応のマルチメーター。そのどちらかを32inchのTV画面に映し出すことができるという仕組みだ。特にAtmos用のメーターはスタンダードと呼べるものが無い、Flux MIRAのようなソフトウェアを選択することでより優れたアプリケーションが登場した際にも対応ができるということになる。今後スタンダードになる可能性のあるシステムアップだと言えるだろう。
DAWが動作するPCには、10GbEでSynology RS2423+というNASが接続されている。4TBのHDDが12台搭載され、48TBの容量を持つ仕様である。外部からデータを持ち込みする作業が多いこともあり、共有のデータストレージとしてこの製品が選択された。エンタープライズ向けの製品ではないため、Synology RS2432+上から直接のPro Tools作業は推奨されないが、10GbE接続ということもありコピーも高速に行うことができる設計が行われている。
このMA室にはナレーション収録用のブースは無いが、隣にあるADR室で収録を行う、もしくはそのブースをMA室から利用することができる設計が行われた。Danteにより両部屋は接続され、それぞれの信号をPro Toolsで受け取ることができる。さらにスタジオ内に設置されたVideo Cameraの映像は、Blackmagic Design VideoHubにより、それぞれの部屋で見ることができるように設計されている。これらの設計は以前日活スタジオに勤務されていた株式会社レスターの大場氏が行っている。日活退社後はトライテックでスタジオ工事の業務を行っていた大場氏。映画会社の現場を知っている、さらに言えば、このスタジオの使い方、システムを熟知しており、これに基づいた設計、調整を実施されている。大場氏なしに今回のスタジオ工事は成立しなかったとも言えるほど日活スタッフからの信頼も厚く、重要な仕事を行われた。
ROCK ON PROはこれまでの知見、ノウハウを大場氏と共有し、日活様からの要望に応える最適解を導くお手伝いをさせていただいている。これまでに積み上げてきたノウハウ、システムの事例から最適な製品の選択、そし何よりワークフローに即した提案を行った。そこに大場氏がひと工夫を加えることで日活らしいシステムが完成したと言えるだろう。
容積のある空間で十分に低域の確認が行えるスタジオはあまり多くない。ベースマネージメントを行ったりと対策しているスタジオはあるが、このスタジオは電気的な工夫なしにそれらを実現しているのが大きな魅力。位相感、定位感、低域の量感。エンジニアが聴きたい、確認したいサウンドがここにはある。Dolby Atmos Homeとしては、最大規模となるこのスタジオの誕生である。
📷左から、日本音響エンジニアリング株式会社 音空間事業本部 重冨 千佳子氏、崎山 安洋氏。日活株式会社 撮影所事業部 スタジオセンター 田中 修一氏、服部 俊氏、ROCK ON PRO 前田 洋介、沢口 耕太。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
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2025/12/29
TOHOスタジオ株式会社 様 / シネマサウンドの最進化形、東宝スタジオ ダビングステージ1
「七人の侍」「ゴジラ」シリーズなど、日本映画史に残る数々の作品を生み出してきた東宝スタジオ。同社のダビングステージ1が、待望のDolby Atmosへの対応を果たした。Dolby Atmos対応スタジオとしては国内最大、そして国内初のAMS NeveとPro Tools | S6のハイブリッド・コンソールなど、シネマサウンドを作り出すシステムの最進化形とも言えるその構成を紐解いていこう。
国内最大のDolby Atmosダビングステージ
1932年に現在の世田谷区砧に誕生した東宝スタジオ。今回、Dolby Atmos化を果たした「ダビングステージ1」(以下、DB1)は、2003年から8年の歳月を費やして進められた「東宝スタジオ改造計画」の中核施設として2010年9月に完成した、フルデジタル対応の「ポストプロダクションセンター1」の中にある。このDB1は、ワーナー・ブラザーズのダビングステージを手がけたSalter社によって音響設計がおこなわれており、モデルとなったワーナー・ブラザーズのスタジオ9、10に基づいた設計が実現されているという。
今回のDB1更新では、サラウンドチャンネルとしては天井2列と両サイドが9本ずつ、リアが6本の合計42本、サラウンド用サブウーファー4本という構成が採用されている(スクリーンバックLCR、LFEは既存)。文字にしてしまうと淡白に感じるかもしれないが、これだけの本数を要する環境にはそうそうお目に掛かれるものではない。合計42本という数のスピーカーが必要になるくらいDB1の容積が大きいということである。
躯体間で天井高10.5m、内装仕上げ後のスクリーン最上部までが7.2m、ミキサー席から天井までが3m超という大きさは、Dolby Atmos対応の制作スタジオとしては日本最大となり(容積だけで考えると同社「ダビングステージ2」が国内最大)、長きにわたってビッグタイトルを生み出してきたダビングステージとしての堂々たる風格を感じさせる。映画作品における音響制作の最終段階として使用されることを考えると、何よりも部屋自体が実際に上映されるシアターと同等のサイズを持っているということは代えがたい強みであると言えるだろう。
特に、天井高を十分に確保することが困難な日本国内の建築においては、ドルビーのレギュレーションに記される角度でスピーカーを設置した場合に、ミキサー席とハイト・スピーカーの距離を十分に取ることが難しくなってしまう。無論、部屋自体が小さければハイト・チャンネルに限らず、すべてのスピーカーがミキサーから近く、反射も劇場とはかなり異ったものになっているわけだ。こうした場合、スピーカーに対してディレイやEQなどの電気的な補正を加えることになるのだが、やはり、部屋自体の容積を十分に取ることができているダビングステージの方が自然な音響環境を実現できるていることに間違いはない。
このようにもともと非常に高品質な音響を備えていたDB1、そのDolby Atmos対応に伴う内装工事においては、スピーカーレイアウトの大幅な更新を行なったうえで、従来の音響特性を保持することが至上命題となった。その実現のために、ドルビー社・ワーナーブラザーズスタジオとの緊密な連携と、内装工事を担当した日本音響エンジニアリングの力は不可欠だったと言えるだろう。B-Chainの大幅な規模拡大や照明のLED化といったアップデートを施しながらも、従来の音質を保持するため、Salter社が設計した側壁や天井の傾斜などの内装は従来通りの仕様が再現されている。完成したスタジオのクオリティについて、30年以上東宝スタジオでエンジニアを務める竹島氏は「細かな部分のブラッシュアップも含め、予想以上のクオリティに大変満足している」と言う。
Avid x Neve ハイブリッド・コンソール
それではシステム構成に目を向けていこう。まず、ダビングステージで大きな存在感を放っているのが、Avid Pro Tools | S6とAMS Neve DFC GeMiNiのハイブリッド・コンソールだ。このハイブリッド構成はハリウッドなどでは多くの事例があるが、国内ではこれが初めての採用となる。メインとなるのはPro Tools | S6だが、これは2022年に同社ダビングステージ2(以下、DB2)に導入されたのと同じ、デュアルヘッド、72フェーダーの構成となっており、Pro Tools | S6モジュールに並んで、DB1に従来から設置されていたDFC GeMiNiのマスター部分と16フェーダー分のモジュールが設置されている。デュアルヘッド、72フェーダー構成のS6は同社DB2、松竹映像センター、角川大映スタジオ ダビングステージに次いで4例目となり、ダビングステージにおけるPro Tools | S6のスタンダードな構成として定着しつつあると言えるのではないだろうか。
現代の音響制作においてPro Toolsを抜きにした制作が考えられない以上、やはりPro Toolsとの親和性が高いS6の利便性は非常に高いようだ。仕込み方にもよるが、現状S6ではプレイアウトPro Toolsからのステム出力を触ることが多いとのこと。その上で、個別トラックの調整が必要な場合はS6のスピル・フェーダー機能を使用するといった、柔軟な運用が魅力のようだ。また、DB2へのS6導入の際にも言及されていたことだが、オートメーションのデータがPro Toolsセッションとともに保存できることもワークフローの柔軟性を高めている。
一方でハイブリッド・コンソールという案は、こうしたPro Toolsのアドバンテージをブーストしつつも、従来のシネマサウンド、古き良きAMS Neveのサウンドもチョイスできるという選択肢を残すという意図があったようだ。ミキサーとして使用するというよりは、従来のNeveサウンドを得るためのアウトボードのような使用を想定しているとのこと。この十数年で、コンテンツは映像・音声ともにハイ・レゾリューション、ハイ・ダイナミクスレンジという方向性が急速に進展しながらも、特に音楽分野ではアナログレコードやカセットテープの持つ”味”が見直されるといった現象も起こっている。
Neveを通した時の唯一無二のあのサウンドは、やはり、ほかのシステムからは得難いものであると同時に、長きにわたってひとびとのイメージに染み込んだ「シネマサウンド」なのである。今回のハイブリッド・コンソールという構成には、そうした伝統的なサウンドを保存するという意味合いもあるのではないだろうか。
このハイブリッド・コンソールは既設DFC GeMiNiのフレームにS6モジュールを換装する形で設置されており、他のスタジオのS6とはまた違った存在感を放っている。これは、ハリウッドをはじめとしたシネマスタジオ向けにさまざまなスタジオ家具のソリューションを提供している、イギリスのHaddock Technical Furniture(旧 Flozen Fish Audio→Soundz Fishy)製のアタッチメントを使用することで、S6のバケットがDFC GeMiNiのフレームに収められている。Avid純正のシャーシの場合はバケット同士を直接連結することになるが、DB1の構成ではS6モジュール2列分をバケットごと取り出せるため、意外にもその部分を便利に感じているという。
伝統的な運用から最新のワークフローまで
今回のDB1の更新では、B-Chainに関連した部分以外のシステムは2022年に更新されたDB2のシステムを踏襲する形となった。これは、DB2におけるDFC2からS6への更新を中心としたA-Chainのシステム移行が大きな成功を収めたことに加え、運用面・音質面においてDB1とDB2で大きな違いが生じることを避けるという意図もあったという。DB1がDolby Atmos対応を果たしたからといって、5.1 / 7.1サラウンドの制作がなくなるわけではなく、そうした作品においてはDB1とDB2を行き来しながらの制作という状況も考え得る。その時に運用はもとより音質に大きな違いが出てしまっては、クライアントを混乱させてしまうことになるだろう。制作スタジオとして、どちらのダビングステージで完成させたミックスであっても、東宝スタジオで制作したことの安心感と安定したクオリティを提供するということだ。
DFC GeMiNiのようなデジタルミキサーからS6へコンソールをコンバートする場合、大きく分けてふたつの方針がある。ひとつは、Pro Toolsシステムとしての統合性をフル活用し、再生用のPro Toolsから直接レコーダー / ダバーPro Toolsに音声を入力するというもので、S6をPro Toolsのコントローラーと割り切り、ミックスはPro Tools内部でおこなう。もうひとつが、S6を従来同様の”ミキサー”として考え、再生用Pro Toolsと録音用Pro Toolsの間にミキシングエンジンとしてのPro Toolsを導入するという方針だ。東宝スタジオはDB1・DB2ともこの考え方でシステムを構築している。
一見、複雑にも見えるこのような構成を取ることのメリットは、やはり従来のシネマ・ワークフローを踏襲することができるという点だ。もちろん、Pro Toolsに慣れ親しんだ方であればミキサー用Pro Toolsをバイパスすることもできるし、ダイアログと音楽はダイレクトに、効果はミキサーを通して、などというハイブリッドなケースにも対応できる。さらに極端な例を挙げれば、再生用Pro Tools内部でオフラインバウンスしたステムを録音用Pro Toolsにペーストするようなワークフローも可能ということになる。先に更新されたDB2の運用を通して、この構成がどのような要望にも応えられる柔軟性を持ったシステムに仕上がっていることは実際の作業でも実証されているのだ。
再生用Pro Toolsはセリフ用(ダイアログ:D)、音楽用(ミュージック:M)、効果音用(エフェクト:E1/E2)の4台となり、すべてHDX2という仕様だ。先述のミキサー用Pro Toolsは大量のステムを受ける必要があるため、D+M Pro Tools用とE1+E2用にそれぞれHDX3構成のものが2台用意されている。そして、HDX2仕様の録音用(Dubber)Pro Toolsの合計7台のPro Toolsが稼働していることになる。
7台のPro ToolsシステムのI/Oには、すべてAvid Pro Tools | MTRX IIが導入されている。Pro Toolsは基本的にMADIで音声を後段へ出力しており、Dubber MTRXからのMADI出力は2台のRME M-32 DA Proでアナログ信号となりB-Chainへと送られる。メインの信号経路となるMADIは1系統ずつパッチ盤から取り出すこともでき、さらに、すべてのMTRX IIにはMADIに加えてAES/EBUモジュールが追加されておりこちらもパッチ盤に上がっている。個別の作品に応じて信号経路を変更したり、持ち込み機材を追加したりといった柔軟な運用が可能な構成になっている。
音楽用MTRX IIだけは32ch分のDAカードが追加されている。これは、音楽素材が96kHzで持ち込まれた場合を想定しての構成だ。96kHzの音声信号はMADIで伝送するとチャンネル数が半減してしまう上、どこかで映画マスターの48kHzに変換する必要がある。この場合に、MTRX IIでいったんDAした信号を M-32 DA Pro に入れ、そこで再度48kHzのMADI に変換してミキサー用 Pro Tools に信号を渡すという形になっている。96kHz→48kHzのコンバートをDD変換で済ませるのではなく、いったんアナログという連続数に戻してから信頼性の高いコンバータを使用して再度AD変換するという手順を踏むことで、デジタル領域での”縁切り”と音質の両立を意図した設計だ。
DanteとMADIを使い分ける
再生用Pro Toolsからパワーアンプの手前までのメインの音声信号経路はMADIが採用されているが、RMUやTrinnov PRC-2といったプロセッサーとの接続はDanteが活用されている。I/OがすべてMTRX IIなのであればPro Toolsシステム内部もDante接続で統一することも可能なはずだが、なぜDB1ではMADIをメインに採用しているのだろうか。もちろん、運用面・音質面でのDB2との連続性が考慮されているのは言うまでもないが、実はDB1でDanteが採用されている箇所は、一度設定したあと普段は触る必要のない系統に限定されている。それに対して、作品ごとに柔軟な経路変更が必要とされる可能性の高いPro Toolsシステム内はMADI接続、と用途に応じて明確に信号フォーマットが分けられているのである。
もし、信号経路をDanteで統一してしまうと、DB1のあらゆる信号をDante Controllerアプリケーションで管理しなければならなくなり、運用上のミスや混乱を招きかねない。複雑な経路変更が生じる可能性のある箇所を物理的なパッチでおこなうことにより、より迅速で正確な運用を可能にしているのである。とはいえ、Danteを活用したことでワイヤリングは想定していたよりもずっとスッキリと収まったという。今後、複雑なルーティングを物理的にコントロールできるソリューションのようなものが登場すれば、LANケーブル1本で128ch入出力できるという事実はより大きな恩恵を与えてくれるだろう。
東宝スタジオの個性でもあるElectro Voice
Dubber Pro ToolsからMADIで出力された信号はM-32 DA Proでアナログに変換され、B-Chainへと渡される。アンプはすべてCrownで統一されており、スクリーンバックがIT 5000HD、サラウンドがIT4x3500HD。すべて、Audio Architect対応のモデルとなっている。スピーカーはすべてElectro Voice。シネマ用スピーカーといえばJBLがスタンダードだが、東宝スタジオでは30年以上前からスピーカーにはElectro Voiceを採用している。何もしなくとも自然にXカーブを描くようなJBLと比べてきらびやかな音色が特徴で、そのサウンドは同スタジオの個性の一部となっている。スクリーンバックにはEV Variplex II EX+EV TL880Dという組み合わせが3組設置されており、サラウンドはEVF-1152D/99が42本(ハイト2列x9本、両サイド9本ずつ、リア6本)、側壁にはサラウンドサブウーファー4本が埋め込まれている。このサブウーファーはユニットのみをElectro Voiceから取り寄せ、キャビネットは楽器音響によるカスタム製作だ。
改修前のサラウンドチャンネルは両サイド4本+リア4本の計12本だったことを考えると、かなり大規模なスピーカーレイアウトの変更となった。実は、今回導入されたEVF-1152D/99は改修前に設置されていた機種と比べて、ユニットの大きさこそ変わらないが、キャビネットが大幅にサイズダウンしている。もちろん、Dolby社の意見を聞きながら設計している以上、理論的には問題はないはずなのだが、サウンドの量感の部分で物足りなさを感じるのではないかということは、DB1が完成するまでは気になっていたそうだが、結果的には杞憂だったということで従来通りの重厚な質感が得られているという。
Dolby Atmos対応ダビングステージとしては、国内ではこれまで、東映デジタルセンター、グロービジョン、角川大映スタジオが存在していたが、DB1がこのタイミングでDolby Atmos対応に踏み切ったのは、近年、『ゴジラ-1.0』や『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』等、複数の作品がDolby Atmosで制作・公開されはじめたことが大きかったようだ。「Dolby Atmosを一度触るとそれまでの5.1や7.1には戻れない、と言う音響監督さんは多いです」と、TOHOスタジオ下總氏が言うように、Dolby Atmosというフォーマットの可能性が国内にも浸透してきたことの証とも言えるだろう。「ゴジラ」のような巨大生物が登場する特撮や、「鬼滅の刃」のようなアクションものは(無限城はその構造上、特に)、高さ方向への音響表現が最大限に生きる作品だったと言える。TOHOスタジオ竹島氏は「まさに、ゴジラがアトモスを連れてきてくれた」と話す。
それに加えて、東宝グループの新たな配給レーベル「TOHO NEXT」が扱うコンテンツの中に音楽作品の劇場上映が含まれていることも大きいだろう。ご存知の通り、国内では映画作品に先駆けて音楽制作の分野でDolby Atmosが浸透してきた。DB1も実際に、ライブコンサートのドキュメンタリー的な作品で使用される機会は非常に多いということだ。ライブコンサートのドキュメンタリー、という言い方をあえてしたが、近年のライブコンサート映像というのはドキュメンタリーとしての側面よりも音楽体験に力を入れる傾向が強い、それが意味するのは以前よりも音響クオリティ面が重視されるようになってきているということだ。そう考えれば、音楽映像作品の制作においてDB1が人気となるのも頷ける。単純に機器更新のタイミングに合わせて新しいフォーマットに対応する、ということではなく、グループ全体としての大きな戦略の一部としてのDolby Atmos対応ということで、今後、同社から数多くのDolby Atmos作品が生み出されることに期待できそうだ。
📷今回取材対応にご協力をいただいたTOHOスタジオの皆様。
*ProceedMagazine2025-2026号より転載
NEWS
2025/12/22
ROCK ON PRO 年末年始休業期間のご案内
平素は格別のご高配を賜り誠にありがとうございます。
大変恐縮ではございますが、下記期間を年末年始の休業期間とさせていただきます。
お客様にはご不便をおかけしますが、何卒ご了承のほどお願い申し上げます。
◎ROCK ON PRO 渋谷・梅田事業所 年末年始休業期間
2025年12月30日(火)〜2026年1月4日(日)
なお、新年は1月5日(月)からの営業となります。
新年もより一層のお引き立てのほど、宜しくお願い申し上げます。