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丹治 信子

[ROCK ON PRO Product Specialist]ノンリニア編集とファイルベースワークフローを普及すべく、これまでAvidおよび、Autodeskでビデオセールスに従事。プリセールスからサポートまで、エディターに寄り添ったコミュニケーションがモットー。ROCK ON PROのメンバーとなってからは、新しい分野で互いに刺激を与え合いながら活躍している。

Avid Media Central | Editorial Management ~ますます拡大するデータをどう扱う!? 4K時代のアセット管理法~

効率化のキーはメタデータに眠っている

デジタルメディアと呼ばれる画像や映像、音声ファイルには、メタデータと総称される様々なデータが格納されている。そのように設計されたデジタルファイルは検索を効率化し、その後の様々な作業も効率を良くしてくれる。

しかし、私達が日常使用しているパソコンにあるファイルで視認できるメタデータの要素はファイル名だけである。パソコンで開きた いファイルを探し出したいときは、ファイル名を覚えておいて検索するか、もしくは保存場所を記憶しておいたり、作成した日時を控えておいたりと自分の記憶頼りだ。

映像や音声ファイルを格納しているデジタルメディアには、ファイル名の他に、収録時のタイムコードやカメラロール、トラック名、 カラースペース、シーン、テイク等々、それに関連する様々なメタデータが含まれている。しかしこれらのデータは先に触れたように、サーバーやハードディスクに保存されている状態では、ディスクの中にあるただのデータでしかなくなってしまっている。そのため目的のファイルを見つけ出すためには、ファイル名で探すしか方法がないのだ。では収録された大量のデータを誰でも使いやすいように管理するにはどうすればいいのだろうか。

アセット管理でメタデータが本領発揮

Media Composer の操作画面。管理されているメディアのメタデータが表示されている。

 

ここで持ち上がるのが、アセットマネージメント(管理)である。 一言でいうと、音声や映像などのコンテンツやメタデータの管理を行うということ。管理をするというのは、コンテンツを検索することができ、再利用とプレビューが容易にできることである。そして検索をするときに条件項目としてメタデータを使用することになる。

Media Composer などの映像編集アプリケーションでは、映像・音声ファイルをアプリケーションのプロジェクト内にインポートすると、そのメディアが持つメタデータを細かく表示するビン表示機能がある。Pro Tools のワークスペースの考え方も同様で、ファイルが持つ波形を表示したり、チャンネル数を表示したりとオーディオファイルのメタデータを詳細に表示してくれる。つまり、デジタルメディアのメタデータを活用するには、そういったソフトウェアを介す必要があるとも言える。

撮影がテープやフィルムからディスクでの収録に時代が移り、デジタル時代の副産物として撮影量が増加したという話もよく耳にする。 携帯電話などのデバイスや以前に比べると安価なデジタルカメラで手軽に高画質な写真や動画を撮れることからも、容易に想像ができるのではないだろうか。さらに、4K や RAW での撮影ともなると、それは撮影された素材の長さの問題だけではなく、データ量も HD の何倍にもなってしまう。そうなると編集をする側は大きなディスクやサーバーを用意し、膨大なオリジナルの素材と編集用の素材、完パケフォーマットの素材など、元が同じ素材からできた複数のフォーマットを管理することも必要になってくるだろう。

こういったことからも、番組や映画を制作する上で、何十時間、何百時間と収録された素材を整理し、必要なものをすぐに検索し、編集をするといった工程を構築することこそが、作業の効率化を飛躍的に向上させるものだということが分かってくる。

さらに、編集後の作品の保存(アーカイブ)までを含めて考えると、アセット管理の必要性をもっと身近に考える必要があるだろう。

Editorial Management でここまでできる

映像・音声編集のアセットマネージメントシステムとして、Avid には Media Central(Interplay より名称変更)システムがある。このシステムは 2006 年にリリースされて以来、世界で 1000 サイト以上で使われている。優れた検索機能だけではなく、前述した素材クリップを一元化するための「ダイナミックリンク」機能や「バージョン コントロール」機能なども搭載し、Media Composer でのビデオ編集から Pro Tools へのデータの受け渡しもシーケンスデータからセッションデータへと自動変換するとともに、バージョン管理も自動で行ってくれるのである。

今年の NAB では、「Avid Media Central | Editorial Management」という新しいアセットマネージメントシステムを発表し、今年 6 月に製品として出荷を開始した。これは Media Central を小規模プロダクション向けに改良したもので、サーバーにある素材を一覧することで、チームとしての協調作業をスマートにできるようにするためのツールだ。

このシステムに接続された編集アプリケーション、Avid Media Composer にはサーバーの中のメディアをブラウズするためのメニューが追加され、アプリケーション内から別のアプリケーションを立ち上げることなくサーバーにアクセスでき、表示されたウィンドウにはサーバーにあるメディアが表示され、ウィンドウからドラッグ&ドロップするだけで、すぐに編集を開始することができる。また、作業しているプロジェクト以外のアセットも、サーバー内にある膨大な素材からすばやく素材を探し出すことができ、データを他のエディタと共有しながら作業するのにも適している。

さらにこのブラウザでは、「PhrazeFind」や「ScriptSync」のテクニックも利用でき、さらに音声検索(Phonetic Search)機能も追加されている。「PhrazeFind」や「ScriptSync」は、Media Composer | Ultimate に付属する機能だが、サブスクリプションの Media Composer にオプションでは別で購入もできる。「PhrazeFind」機能とはプロジェクト内のすべてのクリップを自動的に分析し、ダイアログについて音声のインデックスを作成してくれる。「ScriptSync」 は台本(スクリプト)を Media Composer 内にインポートし、プロジェクト内にあるそのテキストと音声ダイアログで自動的に音声インデックスを作成し、クリップを台本のセリフに同期する機能であ る。これらは実際の音声データからもデータを抽出し、アプリケーション内でインデックス用のメタデータを作成してくれる。

また、「Avid Media Central | Editorial Management」にはアシスタントやディレクターが編集前にプレビューをしたり、テイクに関してのコメントやマークを追加することができるツールがバンドルされており、するべき人が責任をもって共同作業を行うことができるように webプラウザベースでこの機能を提供している。

さらにアビッド以外の編集アプリケーションでもこの素材表示ができるように設計することができ、今現在は「Media Central | Panel for Adobe Premiere Pro CC」というオプションがリリースされており、Adobe Premiere Pro のアプリケーション内に素材管理のウィンドウを表示することができるため、Premiere ユーザーともクリップの共有も簡単に行える。このオプションは、SDK が用意されているため、Adobe 以外の他のノンリニア製品とのコラボレーションも大いに期待したい。



アセットマネージメントシステムの構築は、規模が大きすぎて設計の落とし込みが難しい印象を受けるかもしれないが、「Avid Media Central | Editorial Management」は編集作業に焦点を当て、プ ロジェクトに関わる人々がスムーズに素材共有をすることができるシステムである。NEXIS のストレージサーバーとアセット管理のサーバーだけでシンプルに構成されており、その先のワークフローへの足がかりになるシステムと言えるだろう。

*ProceedMagazine2018-2019号より転載

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*記事中に掲載されている情報は2019年03月14日時点のものです。