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ROCK ON PRO
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AKG Historyから紐解く、定番C414XLS / XLⅡ サウンドのルーツ
マイクの定番ブランドとして名高いAKG。レコーディングに携わる方のほとんどが一度は手にする銘機たちを開発してきたことはもちろん、ヘッドフォンの製造も含めて世界的な音響機器のトップブランドを築いてきた。今回は同社の礎を築いたC12から振り返り、なぜAKGが定番と呼ばれるブランドとなったのか、世界中のレコーディングスタジオやミュージシャン達になぜこれほどにも長く愛され続けるのか、歴史に裏付けされたその実力を紐解いていきたい。
AKGの創業は第2次世界大戦直後の1947年、オーストリアのウィーンにてそのスタートを切る。ヨーロッパを中心にレコーディングスタジオ、放送局に導入が続いていたAKGを一躍トップメーカーへ仲間入りさせたのが1953年に発売された『C12』である。このマイクは今でも人気の高いヴィンテージマイクであり、Neumann u47 tubeなどと並列に語られることも多い素晴らしい特性を持ったマイクである。
創業時社屋
その設計は、telefunken ELA M-250 が基礎となっている。実はELA M-250の基本設計はAKGが行っており、少数ではあるがAKGブランドからもリリースされた実績もある、現在では非常に希少価値が高い人気のヴィンテージマイクの一つ。C12はこのELA M-250をベースにしているダイヤフラムを共有し、高音圧にも耐えられる設計を施したモデルとして誕生した。真空管を増幅段に持ち、ふくよかさを持ちながらも切れの良い繊細なサウンドはC-12ならではのもの。今でもボーカル、ピアノ等の録音に使われることの多いモデルだ。現在もC-12 VRとして生産が続けられている。
そして、このC−12からC-12Aと呼ばれる現行のC414シリーズと同一形状のハウジングに収められたモデルが1962年にリリースされている。このモデルは真空管を内蔵しダイヤフラムなど設計はC-12と全く同様であったが、ケースの形状の変更によりここから馴染みのある414の筐体が受け継がれて行くことになる。このC-12AがC414シリーズの元祖であり、サウンドの礎となったことはビジュアルからも明確にイメージできる。
そして1971年に初のC414という形式名称を与えられたモデルが誕生することになる、それがC414 comboである。このC414 comboはSolid Stateデザインでありながら、直付された専用のケーブルがハウジングから伸びているという珍しい形状。専用のパワーサプライからの給電もしくはファンタム電源の両方が利用可能であったためcomboの名称が付けられていたようだ。
その5年後となる1976年には今でも高い人気を誇るC414EBが登場する。このモデルから通常のXLRコネクターとなり現モデルにも通じる見慣れた形状になっている。C414は同形状で機種も多数存在するがこのモデルの見分け方は非常に簡単、シルバーボディーのC414はこのC414 EBである。C-12の系譜を強く感じさせる繊細な高域が今でも多くのファンを持つ評価の高いモデル。
次に登場するのがボディーを初めてBlackにしたC414 EB-P48。1980年に誕生したこのモデルはセルフノイズレベルの低下により高いヘッドルームの獲得に成功している。それまでコンデンサーマイクを使いにくかった、ドラムや金管楽器などでよく使われていたのがこのC414 EB-P48である。
1986年には新しいテクノロジーであるULS(Ultra Linearity Signal)を搭載したC414 B-ULSが誕生。同時にトランスレスモデルであるC414 B-TLも登場し、この年からC414はサウンドキャラクターの異なる2機種が併売されることとなる。素直な特性を追い求めるULSのラインとキャラクターが付加されたTLのラインはその後も続いていく。1993年には、1950年代から70年代にかけて生産されたオリジナルのカプセルを強く意識し”プレゼンス”がしっかりと残るC414 TLⅡが登場。このモデルは従来のC414シリーズファンにも高い評価を持って受け入れられた。オリジナルを知るユーザーをも納得させることの出来たTLⅡは中古市場でも未だに高評価を得ている逸品、今でも探している方は多いのではないだろうか。
そして2004年に次の世代となる現行のC414 B-XLSとC414 B-XLⅡがリリースされる。新しいテクノロジーを導入し、接点不良の原因であった指向性切替などのスイッチを信号が通らないものに変更したり、ハウジング内のショックマウントの形状を見直したりと、まさに次世代型のC414となってリリースされた。
今までに築きあげてきたC414のサウンド、キャラクターを継承し、新しいテクノロジーによりさらなる進化を求める。ULSの時点で非常にクリーンでクリア、フラットなサウンドを手に入れていたC414はXLSで更に向上の余地があることを示した。そして、XLⅡはTLⅡのキャラクターを受け継ぎ、S/N比向上などテクノロジーの進化によって得られた恩恵をそのサウンドキャラクターと共に提供してくれる。参考としてAKG本国公式の推奨ソースリストを掲載するが、XLSはそのフラットな特性から守備範囲が広く、一方のXLⅡは4kHz以上の高域に伸びを持たせた設定でサウンドの中心を担うパートにその強みを発揮する。さらに両者共通となる機能面では指向性の選択はもちろん、ローカットも4段階、パッドも4段階とレコーディングソースや環境に適応させる柔軟さを与えている。こういったユーザビリティへの配慮も定番となり得た理由であろう。
50年以上の歴史を振り返るとさすがに長くなってしまうが、まさにAKGのマイクロフォンの歴史こそがC414の歴史であると言っても過言ではない。AKG ELA M-250からスタートしてその血統は消えることなく受け継がれている伝統のサウンドである。そして、ハイファイな方向へ技術的進化とともに向かう分岐点ではトラディショナルなサウンドを守るためのULS→XLSラインとハイファイなTL→XLⅡラインにモデルを分けて、それぞれにキャラクターを受け継ぐモデルを製造。そのこだわりは、まさにAKG = C414 Historyである。
また、C414は歴代のどのモデルを取ってみても非常に魅力的なモデルが揃う。ビンテージだけが魅力を放つブランドも中にはあるが、AKGはそのようなことはない。現行のXLS、XLⅡにも十分すぎるほどの魅力がある。もちろん進化を続けているということはそのサウンドに変化はある、しかし根底にあるサウンドはEL M-250のそれであり、C-12が持っていたものであることは間違いない。
AKGの歴代モデルについて振り返ってみたが、各世代のマイクもヴィンテージモデルとして現代に通じる人気と実力を兼ね備えている。当然だがこれらのマイクも発売当初は新品、長年のメンテナンスを繰り返し、状態を保つ事によってそのサウンドはヴィンテージと称されるようになったわけだ。Rock oNではAKGの品質の証明とも言える3年保証がついたヒビノ株式会社による正規輸入品のみを取り扱っている。ヒビノ株式会社ではオーストリア本国での技術研修をフィードバックすることはもちろん、坂田商会によって日本で初めてAKGが輸入された際からのメンテナンス担当者が積み上げられたノウハウでサポート。ダイヤフラムの洗浄、交換などの必須メニューのほか豊富な修理パーツを保有し迅速な対応が期待できる。
是非ともこの機会に伝統のマイクロフォンであるAKG C414シリーズをあなたのマイクコレクションに加えてほしい。録音ソースを選ばずに自然にそこで鳴っているサウンドを捉えることの出来るC414 XLS、伝統のサウンドキャラクターを色濃く残しメインボーカルなどソロ楽器に向いたC414 XLⅡ。長い歴史があるC414はメンテナンスをすることでデシケーターの肥やしになることは決して無い、非常に長い期間使い続けることのできる一生モノの製品。いまあなたが手にする414が20年、30年後にヴィンテージとして活躍するのかもしれない。
◎AKGクオリティのエントリーモデル C3000
AKGマイクの特長でもある繊細な高域を受け継いだエントリーモデルとなるC3000。C414と同様に1インチのラージダイアフラムを搭載しそのニュアンスを再現し高いコストパフォーマンスを誇るモデルとなる。ダイナミクスも140dbと上位となるC414と同スペックとなり、ボーカルからアコギまで自宅環境でのレコーディングはもちろん、カーディオイドの指向性はライブでの使用もこなすオールマイティな性格。前モデルでのシルバー筐体からブラックに変更されイメージも一新された。
かつてはこの1本で仮歌からアコギまでデモ作成を完結していた方も多いのではないだろうか。多様なソースに対して迷ったらこの1本を選んでおけば外さない守備範囲の広さは大変重宝するもの。AKGクオリティをローコストで準備できる、使い勝手の良い1本はエントリーユーザーに是非検討していただきたい逸品だ。
※ 記事中に掲載されている価格・割引率・購入特典・ポイントや仕様等の情報は 2014年07月09日 記事更新時点のものです。