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『AT5040 に見る未来のマイクロフォン史を築く技術的革新』 ~ AT5040 誕生から、オーディオテクニカ成瀬事業所視察まで~ Part-1

AT5040
株式会社オーディオテクニカ本社である、町田事業所のほど近くに位置する成瀬事業所。ここは各種マイクロフォンのユニット生産から40シリーズ以上の業務用マイクロフォン全数検査まで行う同社の『技術の心臓部』と言える。日本が誇るオーディオテクノロジーの中核に迫るとともに、革新的な長方形4面ダイヤフラムを採用した最新作AT5040開発担当沖田氏に同社のマイクロフォン開発におけるコンセプトを伺った。

AT5040のテクノロジーに迫る

●AT5040の四枚の長方形ダイアフラムはどのように誕生したのか

AT5040

コンデンサマイクのブレイクスルーとなる 4 枚ダイヤフラム

RockoN(以下R):今回のAT5040、昨年のAES2012で初めてみたときから、全く新しい構造とテクノロジーに強い期待を抱いていました。本日このような形でインタビュー出来て嬉しく思います。ではまず開発のきっかけから伺えますか?

沖田氏(以下沖):はい、ありがとうございます。これまでaudio-technicaのフラッグシップモデルだった40シリーズは、数値やスペックは他社のハイエンドモデルに限りなく近い製品でしたが、価格はミドルクラスでした。2006年頃、さらにこの上のクラスの製品の開発を海外の販売会社から要望され、このAT5040の開発に着手することになりました。限界までダイナミックレンジやS/N比を稼いだ高いスペックを実現するためには、これまでのダイアフラム(振動板)では望む性能のものを作ることができなかったので、試行錯誤を繰り返すことになりました。内部の開発に着手している間、先にデザインが決まったのですが、ちょうどその頃、AT5040とは違う別プロジェクトで長方形ダイアフラムの研究がされていました。さらにそれと時同じく、4つのダイヤフラムを組み合わせた研究成果の特許出願をしました。この同時期に開発された研究成果を組み合わせたことで、AT5040開発というミッションを達成することができました。

R:AT5040コンセプトとは別に長方形ダイアフラムの技術開発は行われていたんですね。テクノロジーの部分も伺いたいのですが、まず何故長方形ダイアフラムだったのでしょう?

沖田氏

技術部三課マネージャー 沖田 潮人 氏

沖:従来の丸形ダイアフラムで大きな面積を稼ごうとすると、マイク本体の胴回りが必然的に大きくなってしまいます。しかし長方形であれば、限られたスペースの中で、横幅は変えずに上に伸ばすことで面積を稼ぐことができます。もちろん、始めは1枚の長方形ダイアフラムで、丸形と比べて遜色ないものを作る研究が行われてはいたのですが「audio-technicaの新フラッグシップ」という品質に達するほどの結果は得られていませんでした。しかしそこから1年かけて開発を進め、今の形にすることができたんです。
左右片側上段のダイアフラムの出力がバッファーに入り、下段のダイアフラムに信号を入力(原理的には下のダイアフラムを駆動させる形)。もちろんその時、下ダイアフラムも同じ音を受けていて、受け取った信号が回路最終段のヘッドアンプを通り、マイクから出力されます。この方法によって「S/Nを稼ぎつつ、結果的に感度が倍」になるというわけです。
左縦1列、右縦1列の信号はそれぞれ位相がちがいます(片側【+】、もう片側は【-】)。これが2番と3番に出力され、マイクプリアンプ上でアースと組み合わされることで一つの音声信号となります。

R:なるほど、4面のダイアフラムはそんな回路設計になっていたんですね。でもそれだと位相差の問題は起きないのですか?

沖:それは製造技術によってクリアしています。極めて近い特性のもの4枚を組み合わせているので、位相差による問題はほとんどありません。
原理的に、正面から来る音は4枚のダイヤフラムに同時に到達しますが、横からの音は左右ダイアフラムの距離の関係で位相差が生まれます。しかしこの距離は17mm程度。20kHzの1波長くらいの距離なので、高い周波数の指向性にのみ影響が現れます。この特性から、AT5040は高域の指向特性がするどく切れています。高域の指向性が高いということでハウリングマージンをとても高くとることができているんですよ。

R:audio-technicaの高い技術力を感じさせてくれる話ですね。ユニット自体、ダイアフラムそのものの構造にも従来機種と何か違いがあるのでしょうか。

沖:はい、40シリーズのダイアフラムには「ウェーブ」という特許加工がほどこされています(ウェーブダイアフラム)。これはダイアフラムに立体の波を成形するもので、表面積が増えることによってダイアフラムが大きくなったのと同じ効果を生みます。その利点はS/Nが良くなりf0が低く取れる事です。AT5040ではその次世代版となる「ダブルウェーブ」加工(特許申請中)を採用しました。従来の小さいウェーブ成形の中に、大きなハニカム型の成形を2重に施すことで、さらに表面積を増やすことに成功しています。この「ウェーブ」加工は他にも利点があるんですよ。振動板は薄いプラスチックフィルムに金を蒸着してできているのですが、このプラスチックフィルムの素材がロール状であるため、微妙に縦方向と横方向で違うクセがついているんです。ウェーブ加工を施す際にこのクセを消せるため、縦横どの方向でも均一な機械特性になり、さらに精度の高いダイアフラムユニットを作ることができるんです。

●想像を絶するダイナミックレンジの実現

R:回路設計やユニット構造の面でもS/Nへのこだわりがポイントなんですね。

沖:はい、マイクというものは「変換効率」が性能の指標となります。変換効率が高いほど収音性能が高いということです。そして、この変換効率を上げるということはS/Nを上げるということになるんです。

R:なるほどaudio-technicaのマイクロフォンに対する考え方の指標でもあるということですね。先ほど開発の際にデザインが先行していたという話もありましたが、今回のデザインは従来機種とは違った美しさがありますよね。ショックマウントのデザインも特徴的です。

●ショックマウトも含めた総合的なチューニング

ショックマウント

円筒形となる特徴的なボディを支えるマウント。サウンドへの配慮もさることながら脱着の簡便性も群を抜いていた。

沖:AT5040の円筒ボディを保持するために8パターンほど試作品を作り、最終的にこのC型にしました。しかし単純なC型のままでは、ショックマウントが音叉のように働き、特定の共振が起きてしまうんです。それをこのスリットを入れることによって解消しています。

R:マイクを収めるだけでホールドしてくれる仕様も凄く魅力的です。デザインだけでなくAT5040開発において特に苦労された点はどこでしょうか?

沖:ほとんどが手作りですので、優れた生産設備を整えることが一番難しい点でした。生産体制を整えて、ようやく去年から量産することが可能になったんですよ。どんな製品でも同じ事が言えますが、高品質なものを量産しようとすると、目標品質ぎりぎりの非常にシビアな追い込みが必要になります。
audio-technicaは設計部署と工場が同じ建屋にあるため、設計担当が量産現場に立ち会って生産することができるんです。これはaudio-technicaの強みだと思っています。

R:やはり手作りなんですね!しかも国内(成瀬事業所)での生産。設計側と生産ラインが常に連動して動けばトラブルなどにも対応しやすいですからユーザーとしても心強いですね。では最後に今回AT5040の開発で培った経験と技術は今後、どう活用されていくのでしょうか?

沖:はい、今後はaudio-technicaのフラッグシップ「50シリーズ」としてシリーズ化して行く予定です。4枚の長方形ダイアフラムを使った可変指向性マイクや、可聴帯域を超えるようなハイディフィニションマイクにも興味があります。今後もaudio-technicaにぜひ期待していてください!

R:可聴域を超えたハイディフィニションマイクがaudio-technicaから!!想像しただけでもワクワクしますね!
私たちもAT5040の全く新しいテクノロジーとサウンドが日本の音楽制作市場の新時代を築く事を強く願っています!本日はありがとうございました。

AT5040

ハンドメイドで精度の高い量産体制を実現している、設計と生産の密接な連携の成せる技だ。

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Part-2

『AT5040に見る未来のマイクロフォン史を築く技術的革新』~AT5040誕生から、オーディオテクニカ成瀬事業所視察まで~ Part-2

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*記事中に掲載されている情報は2013年08月16日時点のものです。