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Prismsound dScopeIII~ガチンコ・ハードウエア・アナライズ!いろいろみてみよう!!=第二回=

dscope2.jpg

第二回目もいろいろみてみよう~ちょっと実践的かも~
文:技術担当 千葉

さて早くも第二回です!前回は 測定器と測定項目の解説、それと実際にMobile I/O ULN-2の特性の測定を行い、スペックシートとの比較を行いました。今回は前回の続きでULN-2のスペックシートと実際の特性比較をしつつ、前回は あっさりとしか触れませんでしたが今後重要になるFFTと波形について、もっとつっこんで見ていきましょう。
生贄は前回から引き続きMobile I/O ULN-2ですULN2DSP_full_web.jpg
今回は前回測定していない、スペックシートPreamp Headroomと記されている項目をみていきましょう。

ちょっとだけややこしいので前置き

スペックシートには20 dB above Digital Clipとのみ記載されています。この意味を説明する前にまずはULN-2のブロックダイアグラムを見てみましょう。
unn2blck_web.jpg
Preamp Headroomとはブロックダイアグラム上ではD.I.AmpとMic Ampの定格出力レベルで+24dBuになります。スペックシート上のDigital Clipとはダイアグラム上のA/D部分のクリッピングレベルの事でPreamp Headroomが20 dB above Digital Clipですから+4dBuになるわけです。
当然D.I.AmpとMic Ampから+24dBuの信号がA/D部分に入力されると20dBu分クリップしてしまいますがダイアグラムの流れではプリアンプ>Trim>A/Dとなっていて、間にトリムが挟まっています。このトリムの範囲が0~-20dBで、プリ部分の定格出力レベル+24dBuとA/D部分の定格入力レベルである+4dBuの差を吸収できるようになっています(プリ部分のアウトが+24dBuの時、トリムを-20dBに設定しておけばA/D部分に入力されるレベルは+4dBuになる)。
setuzoku.JPG
前置きが長くなりましたが要するにPreamp Headroomは+24dBuなので、それを確かめるにはダイアグラム上でのAnalog Input>Amp>To Sendの流れでOKという事になります。従って接続は前回と同じで図のようになります。 genout.jpg

測定方法はULN-2のマイクインに1kHzのサイン波を-41dBuで入力し、ゲインコントロールで66dB稼ぐ設定にしています。ですので測定結果のノイズフロアが高めになる事が予想されますがゲインが66dBであることを念頭に置いて下さい。

 

で、測定結果です。


uln2snd24dbout_web_1.jpg

まずはAnalyzerと波形

24dbout.jpg
センドアウトから出力された信号レベルが、それぞれ24.007dBuと24.042dBuでチャンネル間誤差が0.035dBuで収まっており、非常に優秀です。従って実際のゲインは約65dB(設定通りだと-41dBu+66dB=+25dBu)で、設定より1dB足りませんが、ULN-2はゲインコントロールにロータリースイッチを採用している都合上(固定抵抗の抵抗値は不連続のため)必然的に出る誤差であるといえます。チャンネル間位相は0.07度で実際のゲインが65dBであることを考えると、これもまた非常に優秀な値です。画面上波形が1本のように見えますがch1, ch2の出力が重なって1本に見えています。この波形の重なり具合からもチャンネル間誤差の少なさが伺えます。

FFT今回の主役

次にFFTをみてみましょう。前回の繰り返しになりますが測定画面上、赤と黄色のギザギザの線がそれぞれch1, ch2の出力のFFTになります。FFTとはスペクトラムアナライザの描画方式の一種でFast Fourier Transform(高速フーリエ変換)の略です。ですので描画された線の見方はスペクトラムアナライザと同様になります。
画面では赤い数字がFFTのグラフの値になっていて、例えば1kHzの周波数ではレベルが上述の24.007dBuと24.042dBuになっています(ch1とch2の線が重なっているのとFFTの縦軸のメモリが対数刻みになっているためグラフからそこまで細かく読み取るのはきついのですが)。さて、このFFTですが先程の例を挙げるまでもなく1kHzのサイン波とノイズフロアの大体のレベルは読み取っていただけると思います(ノイズフロ アは-95dBuの少し下で高めに思われる方もいるかと思いますが、ゲインを66dB稼ぐセッティングですので、むしろ低いです)が、注目して欲しいのは< 3kHzで-62dBuまで上がっている部分で す。これは1kHzの基本波に対して第三次の高調波歪がやや大きい事を意味します。

理由は後述しますが、これはULN-2のプリ部分で信号が飽和しかかっている兆候です。プリ部分の定格出力レベルは+24dBuで、その値を若干超えている状態ですから飽和が始まるのは当然です。 

さらに実験

さて、先程の測定結果のところで第三次の高調波歪がやや大きいので信号が飽和しかかっている状態です。と書きましたが更にレベルを上げるとどうなるでしょうか?試しにULN-2のセンドアウトから28.3dBu出力されるセッティングにしてみました。

測定結果です



uln2clip2_web.jpg

まず波形を

なにやらつっこみどころ満載な結果になっていますが、緑色の数字が波形のグラフになります。縦軸の-INFを中心にほぼ上下対称に波形が切れていてあからさまに飽和しているのがわかります。これはギターの世界で言うところのオーバードライブ状態で電源電圧による制限がかかっている事によるものです。具体的に言うとULN-2に限らず音響用の電気回路は正負2電源で動いている場合が多く(例えば+15V, -15V)かつ電圧の絶対値はそろっているのが普通です。ですので、制限がかかる値は波形の上下でそろっているのが普通で、この場合も波形の上下がほぼ対称に切れています。

更にFFT

次にFFTですが、こちらも基本波以外の高調波がたくさん出ています。波形が歪んでいる時のFFTは一般的にこの ような見え方になります。このFFTから、ULN-2が真空管回路ではない事がわかります。高調波の出方で奇数次(3k, 5k, 7k, 9k, 11k,,,,)と偶数次(2k, 4k, 6k, 8k,10k,,,,)を比べると隣り合った高調波、例えば2kと3k で は必ず奇数次の高調波が大きくなっています。これが、半導体回路の特徴で真空管回路では波形が同様の歪み方をした時には2k, 3k, 4k, 5k,,,と高調波の次数が増えるにつれてレベルが低くなっていくのが一般的です。これらの事から先に述べたようにULN-2が半導体回路で構成されてい ると判断できるわけです。真空管回路が温かい音、半導体回路が冷たい音、のように感じられる理由はこのような高調波の出方の違いによるものです。
さらに今回の結果では整数次の高調波しか出ていません(1kHzの基本波に対して1.3kとか2.5kの高調波が出ていない)が、これはアナログの回路全てに共通する挙動で非整数の高調波は特殊な回路(リングモジュレータとか)を通さない限り出ないのが普通です。

今回は

FFTの見方についてちょっと細かく解説してみましたがいかがだったでしょうか?測定結果の見方を理解できると、その機器の状態やスペックの意味をより深く理解できる 事はおわかりいただけたと思います。

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(技術担当:千葉)

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*記事中に掲載されている情報は2009年01月18日時点のものです。