『P.R.E』~Professional Recommend Equipment~ <第1回アクティブリボンマイクの実力>

音の入口から出口までをカテゴリに別け、今なおヴィンテージ機材が現役で活躍する制作現場へ、現行製品の素晴らしさをご提案していく本企画。
第一回の今回は音の入り口である『マイク』です。
音の入り口であるマイクはとても重要です。打ち込みで曲が完成する場合であってもヴォーカルを入れるとなると必ずマイクは必要となります。レコーディングではコンデンサーマイクが主流ですが、立体的で柔らかい音質のリボンマイクも注目されているマイクです。
リボンマイクとは?
リボンマイクとはダイナミックマイクの可動部として「ムービングコイル」の代わりにアルミ箔などを折ったもの(リボン)を使用したものです。その振動帯であるリボンがブラブラ吊るされていて制限なく自由に動くことから入力された音へのレスポンスがとてもよく音質的にとても優れています。
音の特徴は「耳で聞いているそのままの音色で録れる」とても自然で柔らかい音です。導体で使用されるリボンは空気粒子の変位に逆らうことなく振動しなければならないので、とても薄く作られています。厚さは0.5~2μm程度しかないので壊れやすく、デリケートです。リボンが伸びないように横置き厳禁だったりと、取り扱いが難しいマイクです。
リボンマイクの注意点
リボンマイクの弱点としてあげられるのは、下記のような事象があります。
- ・人の息など「吹かれ」と呼ばれるノイズや振動に弱い
- ・高い音圧に耐えられない
- ・感度が低く、ハム・ノイズや雑音を拾いやすい
- ・出力を大きくするためもあり、強力で大型のマグネットは必要不可欠
- ・取り扱いが大変
その取り扱いの難しさからレコーディング現場ではコンデンサーマイクが使用マイクの主流となっていきました。
コンデンサーマイクとの違い
コンデンサーマイクの振動板はピンと張られ可動範囲が制限されているため、瞬間的な音圧に対してコンプレッション感が音に出てしまいます。
リボンマイクは先ほども言ったように、振動帯であるリボンがブラブラ吊るされていて制限なく自由に動きます。それによりアタックのスピード感も綺麗にひろうことができますので、空気粒子の振動をそのまま電気信号として取り出しているリボンマイクのほうがより繊細で、より音のニュアンスを収音することができるのです。
アクティブリボンマイク
リボンマイクの振動帯(リボン帯) は極薄いアルミ箔ですが、振動板の素材に最先端のナノ素材であるカーボンナノチューブを採用し、強度を増しているものや、リボンの設置方法の改善により、マイクを横置きにしてもリボンが伸びきってしまわないよう工夫されているものなど、近年リボンマイクの弱点である扱いづらさを克服したものが多数登場しています。レコーディングの現場でもストリングスなどの弦楽器の録音の時にはその音質が好まれ、リボンマイクの使用頻度が増えています。
ただヴォーカルレコーディングではまだまだコンデンサーマイクのほうが選ばれているのが現状です。
みなさんは『アクティブリボンマイク』をご存知でしょうか?リボンマイクの弱点でもあるゲインの低さをバッファアンプを使用することで回避したタイプのリボンマイクです。音の特徴としては、リボンマイクの温かく柔らかい音質にコンデンサーマイクの持つソリッドさを足したような音質になります。立体的で繊細、程よい音の押し出し感のあるアクティブリボンマイクの音質はレコーディングにおいて重宝されるものになるでしょう。
今回はその『アクティブリボンマイク』を3メーカーに絞ってご紹介したいと思います。
現行のリボンマイクといえば
Royer Labs
Royer Labs/R-122 210,600円(税込み)
世界初のファンタム電源駆動アクティブ・リボンマイクです。スタジオの定番リボンマイクのR121のアクティブモデル。通常のリボンマイクに比べ出力が高く、リボンエレメントに適切なインピーダンス負荷をかけられ、あらゆるプリアンプとの組み合わせにおいて非常に良い相性で使用する事ができます。

こんな収録にオススメ!
・ギターアンプのアンビ
・ヴォーカル
[主な仕様]
指向性:双指向性
エレメント:2.5ミクロン・アルミニウムリボン
磁石:希土類ネオジム
周波数特性:30~15kHz ±3dB
感度:-37dB(1V/pa ±1dB)
セルフノイズ:<20dB
出力インピーダンス:200Ω バランス
出力コネクター:XLR3-pin オス(2Hot)
ロードインピーダンス:>1KΩ
最大入力音圧:>135dB SPL
電源:48V ファンタムのみ
付属品:専用木製ケース
寸法:径 φ25mm 長さ 206mm
重さ:309g
Royer Labs/R-122L 210,600円(税込み)
Live用として発表されているR-122Liveはエレメントが4ミクロン・アルミニウムリボンと分厚くなりより高音圧に強いモデルです。R-122と比べると音の太い印象です。
こんな収録にオススメ!
・ギターアンプのオンマイク
・ヴォーカル
[主な仕様]
指向性:双指向性
エレメント:2.5ミクロン・アルミニウムリボン
磁石:希土類ネオジム
周波数特性:30~15kHz ±3dB
感度:-37dB(1V/pa ±1dB)
セルフノイズ:<20dB
出力インピーダンス:200Ω バランス
出力コネクター:XLR3-pin オス(2Hot)
ロードインピーダンス:>1KΩ
最大入力音圧:>135dB SPL
電源:48V ファンタムのみ
付属品:専用木製ケース
寸法:径 φ25mm 長さ 206mm
重さ:309g
RCA44の復刻版「AEA R44C」で有名な
AEA
AEA/N22 129,600円(税込み)
伝統のビッグ・リボン(4.7mmx59.7mm)を用いながら、極限までコンパクトなサイズとスタイリッシュなデザインに納めたファンタムパワーによるJFETアクティブタイプのビッグ・リボン・マイクです。
N22の特徴は音源に対して近接してマイキング出来るように、ポップフィルターが中に内蔵されていることです。このことにより録音される音は既に「完成された音」に近いです。是非Vo録音で試してみたいモデルです。
こんな収録にオススメ!
・ヴォーカル
・アコースティックギター
[主な仕様]
指向性:双指向性
周波数特性:20Hz〜20kHz
最大SPL:141 dB SPL (1% third harmonic > 1 kHz)
出力感度:6.2 mV/Pa (at 1 kHz, no load)
インピーダンス:92Ω broadband
ロードインピーダンス:1.0KΩ か それ以上
電源:ファンタム電源トランスデューサーエレメント
リボン厚さ:1.8ミクロン・アルミニウムリボン
リボンサイズ:幅4.7mm x 長さ59.7mm
付属品:専用ケース、サスペンション
寸法:長さ 32.4cm 奥行き4.1cm 幅 4.1cm
重さ:335g
AEA/N8 159,840円(税込み)
N22のフィルターがなく音質がよりクリアなモデルがN8になります。クリアさとソリットさが増し、原音の再現性に優れたマイクです。
ビッグリボンを用いながら、よりオープンで自然なサウンドはオーバーヘッド、ストリングス、アンサンブルやオーケストラに最適です。
こんな収録にオススメ!
・アコースティックギター
・ストリングス
・パーカッション
[主な仕様]
指向性:双指向性
周波数特性:20Hz〜20kHz
最大SPL:141 dB SPL (1% third harmonic > 1 kHz)
出力感度:6.2 mV/Pa (at 1 kHz, no load)
インピーダンス:92Ω broadband
ロードインピーダンス:1.0KΩ か それ以上
電源:ファンタム電源トランスデューサーエレメント
リボン厚さ:1.8ミクロン・アルミニウムリボン
リボンサイズ:幅4.7mm x 長さ59.7mm
付属品:専用ケース、サスペンション
寸法:長さ 32.4cm 奥行き4.1cm 幅 4.1cm
重さ:335g
世界に誇る日本メーカー
audio technica
audio technica/AT4080 97,509円(税込み)
リボンマイクの音の暖かみをaudio technicaらしいとてもフラットな音質で提供してくれるとても扱いやすいマイクです。
独自の立体ブロックパターンを施したMicroLinearリボンマイクユニットは秀逸な屈曲特性を持ち、高耐入力性能を発揮します。
こんな収録にオススメ!
・ヴォーカル
・パーカッション
・ブラス
[主な仕様]
型式:リボン型
指向特性:双指向性
周波数特性:20~18,000Hz
感度(0dB=1V/1Pa 1kHz):−39dB
最大入力音圧レベル(1kHz THD1%):150dB S.P.L.
SN比(1kHz 1Pa):72dB
出力インピーダンス:100Ω平衡
電源:ファントムDC48V
消費電流:3.0mA
仕上げ:シルバーサテン焼付塗装
質量:474g
audio technica/AT4081 66,651円(税込み)
4080よりクリアめな印象です。リボンマイクの柔らかい音をフューチャーし、なににでも使えそうな「優等生」的なマイクです。
独自の立体ブロックパターンを施したMicroLinearリボンマイクユニットは秀逸な屈曲特性を持ち、高耐入力性能を発揮します。スリムなスティック型スモールリボン設計はリニアな中高域レスポンスが得られます。
こんな収録にオススメ!
・ドラムトップ
・ピアノ
[主な仕様]
型式:リボン型
指向特性:双指向性
周波数特性:30~18,000Hz
感度(0dB=1V/1Pa 1kHz):−42dB
最大入力音圧レベル(1kHz THD1%):150dB S.P.L.
SN比(1kHz、1Pa):69dB以上
出力インピーダンス:100Ω平衡
電源:ファントムDC48V
消費電流:3.0mA
仕上げ:シルバーサテン焼付塗装
質量:152g

最後に、musekmesse 2014(詳細はこちら)にて展示されていたフィンランドのマイクメーカーSANDHILLのリボンマイクをご紹介したいと思います。まだ日本取り扱いのないブランドになりますが6011Aというマイクは注目です!
メタル素材のNCRT (Nano Composite Ribbon Technology)リボンを備え、アウトプット・トランスには、隣国スウェーデンのLindhalを採用とのことでその音が気になるところです。
ハイリゾの普及により、音のニュアンスをより伝えられるようになった現在のシーンにおいてその音の立体感、細かいニュアンスを余すことなく収音できることはとても重要なことです。
このアクティブリボンマイクの音質は、今の音楽シーンにマッチした音なのではないでしょうか。
今だからこそ、ヴォーカルやアコースティックギター等のレコーディングにおいて
『アクティブリボンマイク』というチョイスをされてみてはいかがでしょうか?
AT4080/AT4081は店頭デモが可能でございます!
AEA/Royerのデモ機も期間限定でご用意しております!
ROCK ON PRO
03-3477-1776
阪田・清水
にお気軽にお問い合わせください!
*記事中に掲載されている情報は2015年01月22日時点のものです。