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ROCK ON PRO
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REACのコストパフォーマンスとMADIの親和性を兼ね備える、Roland M-480 & R-1000発表!
Rolandが誇る高速デジタル伝送規格、REACを使用したコンパクトでコストパフォーマンスの高い業務用SRミキシングシステムに、新たな新製品が登場!
設備や中規模のライヴでの導入を中心に、その利便性と高音質なサウンドが認知されてきているV-Mixerシリーズですが、今回発表された中でも注目なのは、フラッグシップ・ミキシング・コンソールとなるM-480と、待望のレコーディング・システムとなる、HDD/SSD Recorder R-1000でしょう!
発表会の会場で、時に辛辣な質問を担当の方に浴びせながら(笑)じっくりとお話を聴いてきましたので、レポートさせていただきます。
REACとは?
Rolandが提唱する、高速デジタル伝送システム「REAC」とは、Ethernetを利用した多チャンネル・デジタル信号を、1本のケーブルでシンプルに伝送するものなのは、皆さんご存知でしょうが、この規格はコストパフォーマンスが高い上に信頼性も確立されており、徐々に様々な現場で採用され始めている、注目の規格なのです。
さらに、今一番注目されている高速デジタル伝送システムである、MADIへの変換も簡単に行えるため、様々なシステムとの親和性が高いのも注目点になっています。
特にDigital Snakeシステムを採用したSRの現場では、ステージ上のラックからミキサー迄を、信号のロスのない状態で送れる大きなアドバンテージがあります。
しかし、同じようなシステム構成が可能なVENUEに比べて、圧倒的なコストパフォーマンスを誇るV-Mixerですが、システムに一体化したレコーディング・システムがなかったのが現状です。
それを補完するように登場したのが、HDD/SSD Recorder R-1000と言えるでしょう!
HDD/SSD Recorder R-1000
R-1000は、コンパクトな3Uラックマウントサイズに収まったレコーダーになっていますが、驚いたのはその割り切り方という事が出来るでしょう!
中央に鎮座するR-1000本体の左に、Digital Snakeがおかれているのがお分かりでしょうか?
R-1000はREACシステムを使用したレコーディングに特化した構成になっているのです。
44.1/48kHzで最大48tr、88.2/96kHzで最大24trのレコーディングが可能なR-1000のリアパネルを覗いてみると、GPI、Rs-232C、MIDI等のコントロール系統の他、Word Clock I/O、Video Sync I/O、SMPTE INの同期系統、モニター・アウトが見えますが、なんと!アナログI/Oはモニター・アウトのみ!
オーディオのI/Oは基本的にREACのみとなっているのです。
実際の接続や使用方法としては、V-Mixerに入力されたDigital Snakeからの信号をスプリット(スルー)させたものをレコーディングする、というのが多そうですが、それにしても思い切った構成にしたものです。
もちろん、Rolandもその辺に抜かりがある訳でもなく、S-MADIによってMADI信号をREACに変換しての使用も可能になっています。
コレならば、SSLやEuphonixなどのMADI出力を持つデジタル・ミキサーや、HD MADIのリリースで話題を呼んだPro Tools HDとの連携も容易に行えるでしょう。
実際にSRの現場では、単体のハードディスク・レコーダーを必要とするケースも多く、注目の製品と言えるのではないでしょうか?
気になるストレージですが、中央ディスプレイの下に、標準で500GBのリムーバブルHDDが装備されるようです。
見ていただくと分かりますが、なんと内部接続はUSBとなっています!現在のところは、HDDになっていますが、オプションでのSSD搭載もリリース時には用意されるかもしれません。
フロントパネルに用意されているUSB端子は、現在のところバックアップや、PC転送用に使用するためのものの様ですが、リリース後には外部HDDなどを接続してステージ毎のHDDを準備するなどが出来そうですね。
ここで気になる事が一つ。
Digital Snakeの規格としては、96kHz伝送が可能となっていますが、V-Mixerを経由する場合は48kHz迄に制限されてしまいます。
実はVENUEシステムでPro Toolsにレコーディングする際、サンプルレートが48kHzになってしまうため、R-1000での96kHzレコーディングは大きなアドバンテージになるのでは?と思ったからなのですが、実際にV-Mixerをスルーしたシグナルだと、R-1000も48kHzに制限されてしまうそうです。
96kHzでレコーディングを行うためには、アナログでスプリットを行っておいて、V-Mixer用/R-1000用にDigital Snakeを分けた上で、入力を行うしかなさそうです。
う〜〜ん、惜しいですねえ!この点は大きなアピール・ポイントになると思ったのですが。
しかし、レコーディング・シグナルをREACに限定しないのならば、MADI信号の変換によって、ダイナミクスの大きいライヴの空気感を、96kHzで余す事なく収録する事が出来るのではないでしょうか。
使い方次第で、様々な可能性を感じる事の出来るレコーダーの登場と言えるでしょう。
V-Mixer M-480
次に、従来のV-MixerのフラッグシップであるM-400をさらに処理速度を向上させ、ブラッシュアップした形で登場したV-480を見てみましょう。
まず、今迄も各チャンネルに用意されていたパラメトリックEQですが、Hi/Low Cutに2バンドのパラメトリックEQという構成だった従来機に比べて、フル4バンド・パラメトリックEQが装備されるようになりました。
このパラメトリックEQに象徴されるように、内部処理によるものだけでなく、現場の意見を細かく拾い上げて発展させてきたのが分かるようになっています。
それが如実に現れているのが、48/6Stereoリターンの入力と、LCRに拡張されたメインアウト、16AUX/8マトリクスの出力系統でしょう。
現在は2台迄となっている様ですが、カスケード接続に対応したのも大きな進化なのではないでしょうか?
より大規模なオペレートに対応しつつも、見たままの操作が可能なところもM-480の美点の一つですが、DSPの高速化によるエフェクトの充実も魅力溢れる内容になっています。
ご覧のように31バンドに拡張されたグラフィックEQも、6FXに拡大されたエフェクトバスにより、現場での操作感の向上に役立っていると言えるでしょう。
もちろんEQだけでなく、Rolandのお家芸とも言えるRE-201や、SRV-2000を始めとした、多彩なエフェクトも搭載されており、様々な要望に応える事の出来る内容となっているのではないでしょうか。
特に私も現物を今でも持ってますが(笑)RE-201などは、地方の設備系では根強い人気を保ってる、まさに必須のテープエコーです。
ユーザーインターフェイスもそれっぽくて、やる気をそそると思いませんか?
しかし、こちらでも気になる点があったので、それをいくつか。
まずPANですが、各チャンネルに独立して装備されている訳ではないので、チャンネル・セレクトを行ってからの操作になります。
そんな使い方は想定していないでしょうが、ソロ楽器をLRいっぱいに振り切った状態から交差させるような事は出来ません。
もちろん、マルチ・スピーカーのシステムを構築して、特殊な音場を再現する事も難しいでしょう。
様々な現場に、高いコストパフォーマンスで高音質のサウンドを提供出来るV-Mixerシステムだからこそ、少し尖った部分も欲しい気もしましたが、正常進化とも言える今回の新製品は、REACを中心としたV-Mixerシステムの成熟期の到来を予感させるものではないでしょうか? 価格/発売時期等はまだ未定ですが発売が楽しみな製品です。