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マスタークロックをみてみよう!!〜Chiba☆Labs 第4回!その2

2010年12月29日 掲載(記事本文・構成 : ROCK ON PRO)


連載第4回です。前回をwebにアップしてから実に一年以上経ってしまいましたが、番外編があったり、とあるものを開発したりと色々ありまし たので、そこら辺は勘弁して下さい。で、久々の本編はやはりアナログチックな話に戻ってマスタークロックジェネレータです。どこがアナログなのかは以下の 内容を読んでいただければ理解できると思います。では、いってみましょう。

文:ROCK ON PRO 千葉 高章

〜実測編まずは機材紹介〜

今までの連載で取り上げたのは全て自社取り扱い製品、及び備品(dScopeとかね)でしたが、今回は違います!まずは測定器からいってみましょう。今回は測定する内容が周波数のみです。いつものdScopeでも、もちろんWord ClockもAESキャリアも測定できますが、測定範囲が6桁までで、今回の測定対象には不十分です。やはり、周波数を計るには周波数カウンタでしょう。というわけで測定器は東陽テクニカ様取り扱いのPendulum社の周波数カウンタCNT-91です。
これは、声を大にして言いますがかなり革新的です。まず、桁数12桁/秒!(10桁とは違うんですよ!10桁とは!!)で、これも時代の進歩でしょうか、写真にあるように数字以外のヒストグラム、トレンド表示ができます。もちろんログれます。で、クロックジェネレータの揺らぎを計測するわけですから、カウンタ自体の揺らぎが大きくては話になりません。CNT-91はオプション装備時(クロックのランクを上げた状態)で温度特性@20~26℃で4×10-10以下です。前頁のOCXOの例と比べてさほど高い値に思われないかもしれませんが、前頁の数字はあくまでもモジュール単体の特性なので、製品として組み込まれた状態での最終的なWordClock等の出力安定度は数桁落ちます。それに対してCNT-91のスペックは製品として組み上がっているものの安定度ですので、一般的なOCXOを搭載したクロックジェネレータよりは遙かに高精度です。測定結果はUSB経由でPCに取り込めるのですが、今回は頑張ってる感じを出すために敢えて写真で撮影しました。
下はもう一つPendulum社の製品で、こちらはルビジウムのクロックマスターであると同時にGPSレシーバーでもあります。詳しくは後述しますが、安定度は@20~26℃でf=1sでも5×10-11と今まで挙げた例の中では最大の安定度を誇っています。ただし、一般的にスタジオで使用されているクロックジェネレータと違い、WordClockもAESキャリアも出力しません。出力は10MHzのサイン波です。この謎の出力が何の役に立つのかは後ほど述べますが、要は非常に安定度の高い10MHzのサイン波を出力できる装置です。

Audio & Design Syncro Genius HD-Pro+

そして、今回の生け贄一号はタイムロード様取り扱いのAudio & Design社Syncro Genius HD-Pro+です。スペックの表記は製品とメーカの方向性が出ていて結構面白いので、敢えてメーカサイトに掲載されているものをそのまま掲載します。
上からフロントパネル、リアパネル、スペック表です。入出力を見ると、サポートしていないフォーマットがない位の充実っぷりです。Syncro Ceniusは出力端子の多さも特徴で、しかもその全ての出力端子が常にパラ出しです。ビデオの出力であればHDとSDが3系統ずつ常に出ているわけです。まさに分配機いらず。さらに、これは数あるクロックジェネレータの中でもSyncro Geniusのみの特徴だと思いますが、6発あるWordClockの出力倍率を1端子ずつ独立して設定できます(注文時のみ無料)。×256に設定すれば 受け側にPLL無しのA/Dを繋げちゃったりもします。
さて、殆どの人にとって謎の入力であるGPS入力ですが、これはGPSアンテナを繋ぐわけではなくGPSにロックして10MHzを出力するGPS-12Rのような機器、もしくは単品で10MHzを出力するような機器の出力を繋ぎます。
ちなみにSyncroGeniusはシリーズでHD、HD-Pro、HD-Pro+の3ランクあり、HD-Proでシーンメモリオプションが、さらに上位のHD-Pro+ではOCXO採用で冗長化電源オプションがつきます(つまり、HD-Pro+以外はTCXO)。この内容で最上位のHD-Pro+でも税抜き62万円とかなりお得な価格設定になっています。また、設定はフロントパネルでするのですが、誤操作を防ぐためにステータスロック用のメカニカルスイッチも付いており、中継車等のシビアな現場の要求もカバーできるよう設計されています。

Antelope Audio ISOCHRONE OCX-V

生け贄二号はフックアップ様取り扱いのAntelope Audio社ISOCHRONE OCX-Vです。以下、フロントパネル、リアパネル、スペックです。
筐体デザイン、カタログスペックの記載の仕方や、冗長化、誤操作対策がないところから、SyncroGeniusほどシビアではない、恐らくコンシューマレンジまで含めた製品であることが伺えます。しかし、クロックの安定度に対しては妥協していないようで、スペックの一行目「AtomicClock使用時の±0.002PPM以下の誤差に出荷時調整済み」という記載は、96kHz選択時で誤差0.00192Hz以下であることを示しています。
AtomicClockはSyncroGeniusのGPS入力端子と規格的には同じものです。従ってOCX-VもSyncroGeniusと同様、より確度、精度の高いクロックに追従して各種クロック出力が得られる仕様になっています。
ここまでの記述のみで判断するとSyncroGeniusの方が製品として勝っているように思われるかもしれませんが、OCX-Vは筆者の知る限り他の全てのOCXOを用いた製品に勝っている点があります。それはズバリ、価格です。お値段なんと税抜き23万円!!値段的には完璧にランクの低いTCXOを用いたクロックジェネレータの相場です。10MHz入力付きOCXOのクロックジェネレータが20万円台前半とは、凄い時代になったもんです。まさに価格破壊!しかも、見た目の高級感も業務器の中では明らかにトップクラスですし。また、OCX-VはISOCHRONEシリーズの中では上から2番目の機種で、上位機種のTRINITYは端子数もSyncroGeniusより多く、マニュアルに記載されたスペックを見る限り、OCXOのランクはSyncroGeniusHD-Pro+と同ランクのものを搭載しています。更に価格は38万円!!これまた価格破壊ですよ。
SyncroGeniusとの最大の違いは冗長化用のオプションがないことでしょうか。今回は製品の性能比較ではないためISOCHRONEシリーズの中から、敢えてSyncroGeniusHD-Pro+とは製品ランクの違うOCX-Vを選んでいます。

〜では実測です〜

機材紹介も終わったところで、いよいよ測定です。前置きが長かった割には図6にあるように測定自体は極めてシンプルです。周波数カウンタであるCNT-91は入力を2系統持っていますので、OCX-V、SyncroGeniusそれぞれのWordClock出力をCNT-91の入力に繋ぐだけです。
ですが、クロックの測定では測定器、被測定器ともに本来の性能を出すために温度変化のない環境に設置し、且つ恒温槽の温度が一定である条件が必要です。温度変化のない環境といえばマシンルーム、恒温槽の温度が一定にというのは、要は電源を入れてからある程度の時間(その機材ごとの熱容量に依存する。機種によってはスペックシートにウォームアップ時間という形で明記されている場合もあるが、記載時間の5倍は見ておくのが安全)が経過している必要があるのです。
と、いうわけで条件を満たすために測定環境は弊社サーバールーム。全ての機材の電源を入れ24時間放置した後で測定開始です。更に電源電圧の変動の影響を排除するために全ての機材に電圧補償回路の付いたUPS経由で電源供給しています。ちなみに実際の測定風景は図7です。(サーバルームなんで、うるさいやら狭いやら必要以上に涼しいやらで結構大変でした。)
図8がトレンド測定結果です。前述した通り、測定結果は敢えて写真です。トレンド測定は横軸である時間軸を50秒に設定し、0.5秒ごとに測定した周波数の測定値を縦軸に表示したものです。上がOCX-V、下がSyncroGeniusの測定結果です。(以下、3桁区切りの”,”と小数点の”.”が入り乱れますのでご注意下さい。)OCX-Vの結果から見ると縦軸の下が96,000.285Hzで上が96,000.289Hzですので偏差は0.004Hz以内に収まっていることがわかります。ppm表記だと0.417ppmで、偏差の中心値を0とした±表記であれば±0.208ppmです。
SyncroGeniusは縦軸の表記が95,999.956,5Hzから95,999.956,7Hzまでですから偏差は0.000,2Hzで0.00208ppmで、偏差の中心値を0とした表記は±0.00104ppmです。SyncroGeniusはスペックシートには出ていませんが温度特性が公表されていて@0~60度で±0.015ppmです。トレンド測定の結果はその値を十分満たしていることがわかります。2機種の偏差を比較するとSyncroGeniusがOCX-Vの1/20に収まっています。
図9が測定結果のヒストグラム表記で、上がOCX-V、下がSyncroGeniusです。xマークと縦線がセットになっている部分が平均値で、下に表示されている周波数が横軸の中央値です。OCX-Vを見ると横軸が100uHz/divで、18目盛りに渡って分布していますので分布範囲は1800uHzです。SyncroGeniusは横軸が9uHz/divで、16目盛りに渡って分布していますので分布範囲は144uHzです。
比較するとOCX-Vはヒストグラムの平均がグラフ中央より200uHz程下にずれているのに対し、SyncroGeniusはほぼ中央になっています。また、分布範囲もSyncroGeniusはOCX-Vの1/12.5に収まっています。
最後に周波数の測定としては最も一般的な数値表示を図10に示します。上がOCX-V、下がSyncroGeniusで測定は3時間程行いました。大きく表示されている数値が、今回の設定である100サンプルに対する周波数の平均値表示で、左下に測定開始時からのMinとMaxが表示されています。OCX-Vの結果から見るとMinとMaxの差は0.00124Hzでppm表記だと0.0129ppmです。SyncroGeniusはMinとMaxの差は0.000165Hzでppm表記だと0.00172ppmです。従って2機種の比較ではSyncroGeniusの周波数変動がOCX-Vの1/7.5です。

マスタークロックをみてみよう!!〜Chiba☆Labs 第4回!その3 <測定結果まとめはこちら>

記事本文・構成 : ROCK ON PRO

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