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2020/01/09
株式会社WOWOW様 / 現用の各3Dオーディオフォーマットに準拠した空間
2018年冬に完成したWOWOW様の試写室「オムニクロス」。当初よりDolby AtmosとAuro-3D®そして、DTS:Xの各フォーマットに完全対応した環境が構築されていたが、さらなる追加工事を行い22.2chサラウンド完全準拠のモニター環境を完成させた。当初からの構想にあった現在運用が行われている各3Dオーディオフォーマットに準拠したモニターシステムがついに完全な形として姿を現した。
最新のソリューションを携えた新たな空間
「新 4K8K 衛星放送」における4K放送開局に向け、同社辰巳放送センターのC館の建て替えが行われた。旧C館にあった試写室は、冒頭にも述べたように各種3D オーディオフォーマットへの対応、そして比較試聴が行える空間となり、4K完全対応の最新のソリューションを携えたまったく新しいものへと変革を遂げている。映画向けのフォーマットとして成長しているDolby AtmosとAuro-3D®の両方に対応した設備は、ハリウッドなどの映画制作向けダビングステージで見ることはできるが、ここではさらにDTS:Xそして22.2chの対応をしている設備へとリニューアルされている。
水平角度、仰角それぞれのスピーカ推奨位置に完全に準拠したモニター環境を備えたこの部屋は、世界でも非常に貴重な存在である。写真を見ていただければ分かる通り、天井のスピーカーに関しては移動させることが困難なため、それぞれのスピーカー推奨位置に合わせて固定されている。たとえば、Auro-3D® / 22.2chサラウンド用は、スイートスポットからの仰角30°、Dolby Atmos用は仰角45°に設置といった具合。水平方向に関してもしっかりと角度を測定し、理想的な位置へ設置が行われている。正三角形を理想とするステレオから、ITU-R BS.775-1準拠の5.1chサラウンド、それを拡張したDolby Atmos / Auro-3D®それぞれのスピーカー推奨位置にしっかりと準拠するように考えられたスピーカーの配置だ。最終的に設置されたスピーカは、サブウーファーも合わせるとなんと33本にもなる。水平位置には11本、天井に17本、ボトムにあたる床レベルに3本、サブウーファーは2本という配置となる。
そして、この部屋で制作作業も行えるようにAvid S6を中心とした音声のプロダクションシステムが導入されている。Dolby Atmos Renderer、Auro-3D® Authoring Tools、AURO-MATIC PRO、DTS:X Creater Suite、Flux Spat Revolutionをはじめとする現時点で最新のツールがインストールされているのもその特徴のひとつである。それらを駆使しての研究・制作の場として、また最高の環境での試写・視聴の場としても、様々な用途に対応できるように工夫が凝らされた。プロダクションレベルでの仕上がりの差異を確認できるというのは、作り手として制作ノウハウを獲得する上での重要なポイントだ。仕上がりの確認はもちろんではあるが、制作過程においてのワークフローも併せて学ぶことができる環境でもある。
ベストを見つける最高の比較環境
試写室「オムニクロス」・正面に設置されたスピーカー
それでは、なぜこのような環境を構築する必要があったのだろうか。現在メジャーなフォーマットであるDolby AtmosとAuro-3D®。それぞれに特徴があり、それぞれを相互に変換したらどのように聞こえるのか?コンテンツの種類によってベストな3Dオーディオフォーマットは?単純に比較をするといっても、できるだけイコールな環境で比較をしなければならない。それらを総合的に実現するのが、この試写室ということになる。ハリウッドのダビングステージはあくまでも映画向けの制作環境であり、ホーム・オーディオ向けの環境とはやはり差異がある。サラウンドが、ウォール・サラウンドなのか、ディスクリート・サラウンドなのかという根本的な違いも大きい。ホーム・オーディオ向けの環境として、フルディスクリートのスピーカーシステムで、ここまでの設備を備えた環境は、世界的に見ても貴重な存在である。
また、有料放送事業者にとってベストクオリティのエンターテインメント・メディアを作るということは非常に重要視されている。WOWOWでは「新鮮な驚きと感動を提供し続ける」ことを命題に掲げており、これを技術という側面から見れば「最新のソリューションに挑戦し、その中からベストを見つける」ということが必須になるわけだ。Audioの技術として何がベストなのか?ひとつのものを見るだけではなく、複数の視点からベストなものを探る、そのためには最高の環境で比較ができなければならない。さらには互換性の担保が重要で、Atmosのスピーカ推奨位置で作ったコンテンツが、Auro-3D®のスピーカ推奨位置で聴いたときに印象が大きく異なることは避けなければならない。同一の空間で比較を行える、さらには切り替えながら制作するということは、比較試聴してベストな方法を検討したり、どのフォーマットで聴いても制作意図が伝わる互換性を検討したりとするために重要なポイントである。つまり、この考えを実現するために、この試写室「オムニクロス」は非常に重要な設備となる。
試写室「オムニクロス」 左上方に設置されたスピーカー
その繊細な違いを、しっかりと確認するためにMaster ClockにはAntelope Audio Trinity、DAコンバーターにはAVID MTRX、SpeakerはMusik Electronic Gaithin(LCRはRL901K、それ以外はRL940、BotomとBCはRL906)と、高いクオリティーを持った製品がチョイスされている。192kHz、96kHzといったハイサンプリングレートにも対応し、各種3Dオーディオフォーマットを再生するためにMacProは12-Coreの最高スペックのモデルが導入された。Dolby Atmos Rendererや、Auro-3D® Encorder/Decorder、DTS:X Encorderなどを動作させても余裕をあるスペックとなっている。さらにインスタントに各種3Dオーディオフォーマットの変換を行うためにFlux Spat Revolutionも導入されている。フル・オブジェクトでのミキシングを実現するこのアプリケーション。Dolby Atmos 7.1.4chの出力をインスタントにAuro-3D® 13.1のスピーカー推奨位置で鳴らすということも実現可能である。もちろんその逆や、他の様々なオーディオフォーマットに対しての出力もできる。さらには、オーディオフォーマットの簡易的な変換ということだけではなく、このソフトウェアを使ってのミキシングを行うことで、各オーディオフォーマットでの視聴も行えるように設計されている。
今回のシステム構築にあたり、一番頭を悩ませたのが各オーディオフォーマットに対してのモニターコントローラーセクションの切り替えだ。この部分に関しては、AVID MTRXのモニターコントロール機能を活用してシステム構築を行っている。オープン当初に作成したモニターセクションは、ソース、スピーカーセット、FoldDown3個のボタンの組み合わせでそれらの切り替えを実現していた。今回の更新にあたっては、さらに操作をシンプルにできないか?というリクエストをいただき、Pro Toolsからの出力を整えるという前提に合わせて、いちから再設計を行った。やはり試写室という環境から、技術者が立ち会わずに作品を視聴するというケースもあるとのこと。この複雑なシステムをいかにシンプルにして営業系のスタッフが試写を行えるか?電源のON/OFFやシステムの自動的な切り替えはヒビノアークス様が担当し、AMXを活用してタブレットから用途に合わせたセッティングをGUIを使ったボタンより呼び出せるカスタマイズがなされた。その結果、できるだけ音声の切り替えも手数を減らしたシンプルな操作で間違いのないオペレーションが行えるようになっている。
導入された24FaderのAVID S6
株式会社WOWOW 技術ICT局技術企画部 シニアエキスパート 入交 英雄 氏
4K60Pを稼働させるプロダクトを
AVID ProTools / Media Composer / NEXIS などが納まる映写室のラック
4K対応の試写室ということで、プロジェクターをはじめとする各機器は4K60P対応の製品がセレクトされている。Videoの再生装置としては、AVID Media Composerが導入されPro ToolsのシステムとはVideo Satelliteで接続が行われている。4K60Pの映像出力のため、AVID DNxIQが設置されプロジェクターとはHDMIにより接続が行われている。4K60Pの広帯域なデータ転送速度を必要とするデータストレージにはAVID NEXIS PROが選ばれている。帯域を確保するために、Pro Tools、Media Composerともに10GbEで接続され、400MB/sの速度が担保されている。これにより、非圧縮以外のほとんどの4K60Pのファイルコーデックへの対応を可能としている。
すべてAVIDのシステムを選択することで、安定した運用を目指しているのはもちろんだが、AVID NEXISの持つ帯域保証の機能もこのようなハイエンドの環境を支える助けとなっている。この帯域保証とは、クライアントに対して設定した帯域を保証するという機能。一般的なサーバーであれば、負荷が大きくなった際にはイーサネットのルールに従いベストエフォートでの帯域となるのが普通であるが、AVID NEXISは専用のクライアント・アプリケーションと通信を行わせることでその広帯域を保証するソリューションとなっている。
このMedia ComposerのインストールされたPCはFlux Spat Revolutionを使った作業時には、Flux Spat Revolutionの専用PCとしても動作できるようにシステムアップが行われている。Pro Toolsの接続されたMTRXから出力された2系統のMADI信号をRME MADIFace XTが受け取り、Flux Spat Revolutionが処理をして、再度MADIを経由してMTRXへと信号が戻り、そのモニターコントロールセクションによりコントロールが行われる。スピーカー数も多く、処理負荷も高くなることが予測されるFlux Spat Revolutionは、別PCでの信号処理を前提とした運用が可能なシステムとなる。もうひとつ、こちらのPCへはMAGIX SEQUOIAもインストールされている。ドイツ生まれのクラシック制作・録音ツールとして評価を受けるこちらのソフトウェア、ハイサンプルレート、各種3Dオーディオフォーマットにも対応しておりこちらもこだわりのひとつと言えるだろう。
各3Dオーディオフォーマット対応の核心、モニターセクション設計
それでは、このシステムを設計する上で核心となる、モニターセクションの設計に関して少し解説を行いたい。文字だけではどうしても伝え切れないので、各図版を御覧いただきながら読み進めていただきたいところだ。まずは、Pro Toolsからの出力を整理するところから話を始めよう。これは今回の更新までに入交氏がトライしてきた様々な制作のノウハウの結晶とも言えるものである。各3Dオーディオフォーマットの共通部分を抽出し、統一されたアウトプットフォーマットとして並べる。言葉ではたったの一言であるが、実際に制作を行ってきたからこその、実に理論整然としたチャンネルの並びである。
入力と対になるのが33本のスピーカーへの出力。さきほどのPro ToolsからMTRXへInputされたシグナルは、各オーディオフォーマットに合わせてルーティングが組まれ、MTRX出力から物理スピーカーへと接続される。こちらを行うためには、AVID MTRXにプリセットされているスピーカーセットでは対応することができず、Custom Groupと呼ばれるユーザー任意のスピーカーセットを使ってそのアサインを行った。
こちらの表でRoleとなっている列がCustom Groupである。Custom GroupはAVID MTRXの内部バスとして捉えていただければ理解が早いのではないだろうか。今回のセットアップでは、物理スピーカーアウトプットとCustom Groupのバスを1対1の関係として、固定をすることで設定をシンプルにすることに成功した。アウトプットを固定するのか?インプットを固定するのか?ここはどちらが良いのか両方のセットアップを作成してみたのだが、このあとの話に出るFoldDownの活用を考えると、アウトプットを固定するという方法を取らなければ設計が行えないということが分かり、このような設計となっている。
MTRXのモニターセクションは、インプットソースを選択する際に物理入力とCustom GroupのRoleの組み合わせを設定することができる。これにより、Custom Groupへ流れ込むチャンネルを同時に切り替えるが可能となる。この機能を利用して入力された信号を任意の出力へとルーティングの変更を行っているわけだ。
一般的にはダウンミックスを視聴するために活用されるFoldDownだが、AVID MTRXのこの機能はアップミックスを行うことも可能だ。それをフルに活用し、スイートスポットを広げるためにデフューズ接続を多用したPreviewモードを構築している。特にDolby Atmos時にスクリーン上下のスピーカーを均等に鳴らすことで、スクリーンバックのような効果を出すことに成功している。それ以外にも、Auro-3D®のプレビューモードでは頭上のVOGチャンネルをDolby Atmos配置の上空4本で均等に鳴らすことで、頭上からのサウンドのフォローエリアを広げている。このような自由なシグナルマトリクスを構成できるということは、AVID MTRXのモニターセクションの持つ美点。ほかにプロセッサーを用意せずにここまでのことが行えるのはやはり驚異的と言えるだろう。
このように、スピーカーを増やすことでさらに多様なオーディオフォーマットの確認ができるようにするとともに、操作性に関してはさらにシンプルにするという一見して相反する目的が達成された。追加更新前の状況でも世界的に見て稀有な視聴環境を有していたこの試写室が、さらに機能を向上させて当初の構想を完全な形として完成を見ている。ここでの成果は、WOWOWのコンテンツに間違いなくフィードバックされていくことであろう。さらに、昨今ICTへの取り組みも積極的な同社。様々な形、コンテンツで我々に「新鮮な驚きと感動」を届けてくれることであろう。
(中左)株式会社WOWOW 技術ICT局技術企画部 シニアエキスパート 入交 英雄 氏 / (中右)株式会社WOWOW 技術ICT局制作技術部 エンジニア 栗原 里実 氏
(右端)ROCK ON PRO 岡田 詞朗 / (左端)ROCK ON PRO 前田 洋介
*ProceedMagazine2019-2020号より転載
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2019/12/18
名古屋テレビ放送株式会社様 / ファイルベース、その波のすべてを受け入れられる懐の深いシステムを
局内のファイルベース化へ積極的な更新を行う名古屋テレビ。今年はMAシステムの更新にともない、これまで運用していたシステムの大幅な刷新が行われた。7年前の更新時にいち早く各部屋のシステム統一と作業の共有を実現するためにファイルサーバーを導入。それを活用してきた名古屋テレビの次のステップとなる今回の更新をご紹介したい。
7年間の変化の中にあっても陳腐化しなかった
まずは、これまでどのようなワークフローでの作業を行っていたかをご紹介したい。システムの中心となるファイルサーバーにはGBLabsのSPACE 32TBを採用し、6室あるMA室と、3つの仕込み室の端末それぞれからダイレクトにアクセスを行い、ローカルにファイルコピーを行うことなく作業を行っていた。VTRで持ち込まれたMA素材は、Telestream Pipelineによりインジェストし、ファイルとしてサーバへ取り込みワークビデオとするシステム。編集からファイルで投げ込まれた素材は、こちらもTelestream Episodeで自動的にワーク用のVideoFileへとTranscodeされるシステムを活用し運用を行っていた。
今回の更新までの間でも、HDCAMでの運用からXDCAMとの並行運用となったほか、編集システムの更新にともなうファイルベースでのワークフローの加速と、様々な変化はあった。MAのシステムとしては、当初よりファイルの受け渡しを前提としてNASベースのシステムであるGBlabs SPACEを採用していた。NASベースであるため、編集のシステムから簡単にアクセスでき、ファイルのコピーなどもOSの機能で実現できるという柔軟性が、この7年間の変化の中にあってもシステムが陳腐化しなかったポイントだと言える。
各部屋のMAシステムは、Pro ToolsにYAMAHA DM1000を組み合わせたシステムを運用してきたが、今回の更新ではシステムのさらなるブラッシュアップを目指し、AVID MTRXをシステムの中心としたシステムを構築している。これにより長らく使用してきたDM1000はMAのシステムから外れて非常にシンプルなシステムとなった。モニターコントロールもDADmanを使い、MTRXの機能を活かしている。音質に関しても、定評のあるAVID MTRXのDAを用いて、引き続きの使用となるmusikelectoric Geithain のスピーカーへと接続される。ファイルベースでの作業がメインとなるということでPro ToolsとMTRXが中心となったこのようなシンプルなシステムが成立している。もちろん、すべてのMA室(サラウンド対応の1MAは除く)は、同一のシステムとなっている。 このようなシンプルなシステムとすることで最小限の機材量となり、ワイヤリング量も減らすことができイニシャルコストの削減にもつながった。
各メディアを用いた作業はファイルベース化移行に伴い減っているがいまだに残るHDCAMの作業、現状のメインであるXDCAMの作業となる。こちらに関しては、Vikinxのルーターを活用し、最低限の台数のVTRを各部屋で共有するシステムがこれまで通り活躍している。MA作業に回ってきたVTRはVikinxのルーターでTelestream Pipelineへと接続、インジェストされてファイルベースでの作業を実現する。戻しの際には、Pro Toolsから任意のVTRへとパッチが行えるように設計されている。この部分はメンテナンスを行ったものの、従来通りのシステムが残された。
完全ファイルベースでのXDCAMワークフロー
今回の更新では、サーバー経由でのファイルベースのやり取りに加え、XDCAM Discを前提としたファイルベース化の追加更新が行われた。2台のMac miniがXDCAM Discに対してのファイルベースワーク用に新規導入されている。このMac miniにはSONY PDW-U2が接続され、直接XDCAM Discの中のファイルをサーバーへとコピーできるようになっている。これまでは、Pipelineで実時間を使ってファイルへの起こしを行っていたが、このシステムでファイルコピーを行うことで1/3程度まで高速化が期待できる。このサーバーへのコピーには、SONY Catalyst Browseが活用されている。
このワークフローで問題となるのが、Timecode Characterがないということ。VTRからの出力であれば、TCキャラがついたOUTを選ぶことでTCキャラ付きのファイルを起こすことができた。今回のXDCAM Discからの直接の読み込みでは、TCキャラ付きの素材を得ることはできない。これを解決するために今回の更新ではVideo Slave 4 ProをすべてのPro Tools端末へインストールすることになった。
これまでにも本誌等で紹介しているVideo Slaveは、XDCAM MXFファイルのTImecode情報を読み、TC Overlayとして画面へ表示を行うことができる。さらに、Pro Toolsで読み込むことができないXDCAM MXFファイルのAudio Tracksをエクスポートすることもできる。具体的には、Video SlaveでXDCAM MXFファイルを読み込み、そこからAudio TracksをWAVファイルとして書き出し、それをPro Toolsへ読み込ませる。このようなワークフローとなる。XDCAM MXFを前提としたPro Toolsのワークフローで問題となる部分がこれにより解消されている。
そして、MA作業後のAudio Insertもファイルベースで行うべく、CineDeck社のCineXtoolsが導入された。このソフトウェアは、Video FileをあたかもVTRのように取り扱うことができるソフトウェア。ソフトウェアベースながら、あえて破壊編集を行うことでVTRライクな挙動をする。ファイル全体のAudio Insertも、IN/OUT点を設定しての部分差し替えも設定次第で自由に行うことができる高機能な製品だ。インサートする素材はWAVファイルとなるが、それ以外に任意のトラックを無音にしたり、1Kを挿入したりといったことも可能だ。
XDCAM Discから読み込んだファイルに対し、MA上がりのWAVファイルをInsert編集し、XDCAM DISCへとコピーする。名古屋テレビのシステムは基本的にすべてのデータをサーバー上に置いたままで、というのが前提である。サーバーに接続されたこちらの2台のMac miniはXDCAM Discからコピーしたファイルへも、MA終わりのWAVファイルへも、ダイレクトにアクセスができる状況にある。ファイルコピーを一切行わず、マウントされたサーバー内のデータを参照することですべての作業が行えるということだ。これが、今回の更新で追加された完全ファイルベースでのXDCAMワークフローとなる。ついに、一切ベースバンドを介さないXDCAM Discを使ったMAワークフローの登場である。
ファイルベース・インジェストとcineXtoolsがインストールされた2セットのMacminiシステム。
3段構えのサーバーシステムを構築
もう一つの更新点であるサーバー関連はどうだろう。これまでメリットの大きかったGBLabsのシステムはそのままに、その周りを固めるシステムが大幅に更新されている。今回はさらに一歩踏み込み、アーカイブまで考えたシステムの更新を実施している。中心となるGBLabs SPACE 32TBは、その後継に同社 FastNAS F16 Nitro 96TBへと容量をアップさせての更新となった。そして、長期保存を前提としたニアライン・サーバーとしてSynology社の12Bay + 12Bay拡張シャーシのシステムが導入された。こちらの各ベイには、14TB HDDが収まりトータルで336TBという容量を実現している。これにより、長期間に渡りMAデータをオンラインの状態のまま保管することができるようになる。毎日増分のバックアップがFastNASからSynologyへと行われ、FastNASでデータを消してもSynologyには残っているという状況が構築されている。
今回導入となったSynology、XenData、FastNASが収められたマシンルームのラック。
さらに、長期間のアーカイブ用途にSONY ODA(Optical Disc Archive)が導入されている。そしてこのデータ管理用にXenDataが新たに導入された。XenDataはODAに書き込んだデータのメタを保持し、検索をするということを可能にする。何も準備をせずにODAに書き込むと、どこに何が入っているのかすぐにわからなくなってしまう。このようなメタ管理を実現する製品を導入することでアーカイブを行ったが、いざ使おうと思った際に見つけるのに非常に苦労をするので、結局保存だけして使わなくなってしまった、などということはなくなるのではないだろうか。
さらに、ODAは書き込めるファイル数の上限がある。Pro Toolsのセッションデータのように膨大なファイル数を持つデータをアーカイブしようとすると、Disc自体の容量は空いているのに書き込めなくなるということが起こってしまう。XenDataはセッションデータをフォルダごとにZip圧縮してから書き込むことができるため、ODAの容量いっぱいまで使うことができるシステムとなっている。 また、以前はGBLabs SPACE 32TBから直接ODAにファイルの移動を行っていたため、サーバーの負荷が増しMA作業に影響を与えていた。ニアライン・サーバー構築したことでアーカイブがMA作業に影響を及ぼすこともなくなった。
このように、サーバーシステムは、実運用のための高速な製品=GBLabs FastNAS、速度はほどほどで大容量のニアライン=Synology、長期保存用のアーカイブ=XenData & SONY ODAと3段構えのシステムが構築できた。こちらのワークフローはまさにいま始まったばかり。どれくらい番組の過去素材が必要となるのか?まさに変革のときである放送のあり方、そして各種メディア戦略、そういった部分に密接に関わる部分である。大前提として、消してしまうより保管できるのであればそのほうが良いのは間違いのないことである。今後このシステムがどう運用され、どれくらい活用されていくのかは非常に興味深い部分である。さらにアーカイブのワークフローを自動化することにより作業時間の短縮にもつなげている。
今回の更新では、MTRXの導入というサウンドクオリティーにも直結するブラッシュアップで順当なシステム自体の年次更新を行い、システムの中核となるサーバーに関しても後継のモデルへ更新された。そして、ファイルベース・ワークフローを加速するPDW-U2 & CineXtoolsの端末の導入で、あらゆるパターンのファイルベース運用に対応できるシステムの構築。さらにはニアライン、アーカイブという次の時代を見据えた、制作された後のデータ管理にまで踏み込んだ更新となっている。
VTR運用からファイルべースへ、その過渡期としてのXDCAM Discを介したワークフロー。未来に見える完全ファイルベースでのシステムへと将来性を担保しつつ、いま考えられる最大限の準備が行われ、まさにこれからのMAシステムのあり方を提示するかのようなシステムが完成した。間違いなくファイルベースの流れはとどまること無く様々なシステムを飲み込み、変化を続けるであろう。今回更新のシステムは、その波のすべてを受け入れられる懐の深いシステムといえる。だからこそ、このシステムが周りの状況に合わせてどのように変化するのか、どのような運用がこのシステムから生まれるのか。これからファイルベースワークフローの最新形をここで見ることができるはずだ。
名古屋テレビ放送、東海サウンドスタッフの皆さん
*ProceedMagazine2019-2020号より転載
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2019/01/16
株式会社毎日放送 様 / 入念な検討で実現した2日間でのコンソール更新
大阪駅北側に位置する茶屋町に社屋を構える株式会社毎日放送。その社屋の4階にあるMAコンソールの更新工事が行われた。長年に渡り活躍をしてきたAMS NEVE MMC から、次の時代を睨んだAVID S6 + MTRXという最新の機材へと更新が行われている。
1:AVID S6 の構成をどう考えたか
なぜ、コンソールであるAMS NEVE MMCからコントローラーであるAVID S6へと舵を切ったのか?この点からレポートを始めるが、更新が行われた同社屋の7Fにあるもう一つのMAルームでAVID ICON D-Controlを使っていたということが一つの理由。すでにDAWとしてPro Toolsをメインに作業を行っているということで、AVID D-Controlの持つ専用コントローラーとしての完成度の高さはすでに実感済み。その作業効率の良さは十分に理解していた中で、もう一部屋の更新に際しては、Pro Toolsと親和性の高いAVID S6、もしくはS3という候補しか残らなかったということ。そのS3についてはもともとのコンソールが24フェーダーだったということもありスペック的に選択肢から外れ、必然的にAVID S6の構成をどうするかという一点に検討は集中することとなった。なかでも事前のデモンストレーションの段階から、AVID S6の武器であるVisual Feedbackの中心とも言えるDisplayモジュールに注目。Pro Toolsのトラック上を流れる波形データを表示できるという機能は、まさにAVID D-Controlから大きくブラッシュアップされている優れた点だと認識いただいた。まさに、設計者の意図とユーザーのニーズが噛み合った素晴らしいポイントと言える。
Displayモジュール導入、そしてフェーダー数はそれまでのAMS NEVE MMCと同等の24フェーダーということが決まり、次の懸案事項はノブの数。AVID D-Controlではフェーダー操作が中心で、あまりエンコーダーを触っての作業を行ってこなかったということもあり、ここは5-Knobという構成に決まった。この5-Knobに決まったもう一つの理由としては、5-knobの一番奥のエンコーダーはやはり座って操作することを考えると遠い、小柄な女性スタッフでも十分に全ての操作を座ったまま行えるべきだ、という判断もあったということだ。エルゴノミクス・デザインをキーワードのひとつとして設計されたコンパクトなAVID S6だが、すべてを手の届く範囲にと考えるとやはり5-Knobのほうに軍配が上がるということになる。
2:設置の当日まで悩んだレイアウト
モジュールのレイアウトに関しては、設置の当日まで担当の田中氏を悩ませることとなる。Producer Deskと呼ばれるPC Display / Keyboardを設置するスペース、そしてセンターセクションをどこに配置をするのか?ミキシングの際にはフェーダーがセンターに欲しいが、一番時間のかかる編集時にはPC Keyboardがセンターがいい。これを両立することは物理的に難しいため試行錯誤の上、写真に見られるようなモジュールのレイアウトとなっている。
工期が短いということで驚かれた方もいるかもしれないが、AMS NEVE MMCの撤去からシステムのセットアップまで含め、実際に2日間で工事を行っている。もちろん、Pro ToolsのIO関連などの更新は最小限ではあるが、スタジオの中心機器とも言えるコンソールの更新がこの時間内で行えたのは、AVID S6がコントローラーであるということに尽きる。既存のケーブル類を撤去した後に配線をする分量が非常に少なく済むため、このような工事も行えるということだ。そして、配線関係がシンプルになった部分を補うAVID MTRX とS6によるモニターコントロールセクション。複雑な制御を行っているが、AVID MTRX単体でモニターの切替を柔軟に行っている。ソフトウェア上の設定で完結出来るため、効率の良い更新工事が行えたことにも直結している。
3:MTRX のモニターセクションと高い解像度
もう一つの更新ポイントであるAVID MTRXの導入。この部分に関してはAVID S6との連携により、従来のコンソールのマスターセクションを置き換えることができるEuConによるコントロール機能をフル活用いただいている。柔軟な構築が可能なMTRXのモニターセクション。従来このMAルームで行われていた5.1chのサラウンドから、写真にも見えているDOLBY ATMOSに対応した作業など、未来を見据えた実験的な作業を行えるように準備が進められている。もちろん、放送波にDOLBY ATMOSが乗るということは近い将来では考えられないが、これからの放送局のあり方として配信をベースにしたコンテンツの販売などを考えれば、電波だけを考えるのではなく、新しい技術にニーズがあるのであれば積極的にチャレンジしたいということ。それに対して機器の更新なしに対応のできるMTRXはまさにベストチョイスであったということだ。
そして、MTRX にAD/DAを更新したことで音質が向上したのがはっきりと分かるという。取材時点ではブースの更新前ということでADに関しては試されていない状況ではあったが、DAに関してはこれまで使用してきたAVID HD I/Oに比べて明らかな音質向上を実感しているということだ。音質の傾向はクリアで、解像度の高いサウンド。7階のスタジオにあるHD I/OとRL901のほうがスピーカーの性能を考えても上位であることは間違いないのだが、DAでこれまで音質が向上するのは驚きだということだ。特に解像度の高さは誰にでもわかるレベルで向上をしているというコメントをいただいている。
これから、DOLBY ATMOS をはじめとしたイマーシブ・サウンドにも挑戦したいという田中氏。今後、このスタジオからどのような作品が生み出されていくのだろうか、放送局という場から生み出されるイマーシブ・サウンドにもぜひ注目をしていきたい。
株式会社 毎日放送 制作技術局 制作技術部
音声担当 田中 聖二 氏
*ProceedMagazine2018-2019号より転載
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2017/11/14
株式会社テレビ静岡様
◎ファイルベースが導入された新システムがスタート
テレビ静岡は、フジテレビ系列の中部地区における基幹局。2017年の新局舎移転にあたり、2室あるMA室をお手伝いさせていただいた。旧局舎の隣に建てられた新局舎。2つのスタジオと、映像編集、MAと新規に設備の導入が行われた。
これまでは、Marging PyramixをメインDAWにYAMAHA DM2000とAV SmartのTANGOを使用していたテレビ静岡様。新局舎への移転を期に、Pro Toolsシステムへの変更を行なった。Pro Tools | HDをメインDAW、コントローラーにAvid S3とAvid Dockという組合せ。ステレオの作業がメインであるため、シンプルにまとまったシステムとなっている。Videoの再生にはVideo Slave 3 Proが導入されている。
これまでのMarging Pyramixでは同社のVQubeをVideo 再生として利用していたが、Video Slaveへと更新が行われた。これは、トータルのシステムアップの中で、編集との連携を考えた際に、Pro ToolsのもつVideo Trackでは実現できない幾つかの機能を持つことからこの選択となっている。特にタイムコード・キャラのオーバーレイ表示はVideo Slaveの特徴的な機能の一つだ。テレビ静岡の新局舎へ導入されたノンリニア編集機はEDIUSである。EDIUSでは従来コーデックであるCanopus HQXを利用しての運用が想定されている。その為、MAへファイルベースでデータを受け渡す際にも、そのままCanopus HQXでの運用ができないかということになった。Video Slaveではこのコーデックにも対応をしているということも、選択の一つの理由となった。
ファイルベースのシステムは、MAのシステム側に1台NASサーバーを設け、そのサーバーを介して編集とのデータの受け渡しを行っている。このNASサーバーはMAのDAWはもちろん、編集側のEDIUSからもマウントできるようになっている。これにより編集側からこのサーバーへ直接ファイルの書き出しが行えるように設定が行われている。MA側からも完パケのWAVデータをこのサーバー上に書き出すことで編集機から完パケ音声データを拾い上げることが出来るようになっている。テレビ静岡では、MA室にもEDIUSが用意されている。これは完パケデータ作成用の端末であり、映像編集済みのファイルを開き、MAで完成した音声を貼り込んで完パケデータを作成できるようになっている。ニュースなどリミットの厳しい作業時には、編集機の空きを待たずにMA室内で完パケデータが作成できるようにという仕掛けである。
本号の出版時には新局舎での運用が始まっているはずである。ファイルベースシステムが導入された新しいシステムの実稼働がまた一つスタートする。そのお手伝いをさせていただいたことをここに感謝し本レポートの締めくくりとさせていただく。
(左)株式会社テレビ静岡 技術局制作技術センター 佐野 亮 氏
(右) ROCK ON PRO Sales Engineer 廣井 敏孝
*ProceedMagazine2017-2018号より転載
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2017/11/14
静岡放送株式会社様
◎Pro Tools+Video Slaveの構成で実現した効率的な作業環境
1952年に民放のAMラジオ局として全国17番目にオンエアを開始、その6年後の1958年に民放のアナログテレビ局として全国12番目に本放送をスタートした静岡放送。そのMA室の改修工事を担当させていただいた。県下最大のシェアを持つ地元新聞、静岡新聞の系列で、報道をはじめドキュメンタリーや情報系など自社制作に力を入れている放送局である。
MA室は2年前に内装の更新を行なったが、機材はそのままという状況であった。今回、機材の一新とともにミキサーデスクなどの什器の刷新、ブースとのコミュニケーション関連の機器の更新を行っている。これまでのPro Tools + Video Satelliteというシステムから、1台のPCによるPro Tools + Video Slaveというシンプルな構成に入替えが行われた。やはり、Video Slave導入の最大のポイントはタイムコードキャラクターのオーバーレイ表示。MAエンジニアには馴染みの無いノンリニアの編集機を利用するVideo Satelliteは、多機能すぎて操作の煩雑さを感じていたということ。ファンクション自体はフル機能のノンリニア編集ソリューションであるMedia Composerを使うVideo Satelliteには劣るものの、MA作業として欲しい機能が網羅されているVideo Slaveは、まさに静岡放送様のワークフローにジャストフィットするものであった。
今回の更新では、これまで使用してきたAVID C24からAVID S3への更新も行われている。フェーダー数は減ったものの、ロータリーエンコーダーは増えており、EuConの持つレイアウト機能を活用すればフェーダー数の減少はフォローできる。さらに、エンコーダーが増えていることによってプラグインの操作などでメリットが生まれることになる。また、サイズがコンパクトになった事により、デスク上が広く使えるようになったという点も作業上ではメリットがある。
また、VTRラックとの音声のやり取りをこれまではAESで行なっていたが、今回の更新ではSDI-Embeddedへとシステムを更新している。これによりVTRラックにあるSDI Routerを活用しての柔軟な運用を実現している。ちょっとした工夫ではあるが、使い勝手の向上した部分だ。
改装からそれほど時間のたっていない、このMA室に新しい什器、機器が導入されたことでまるで新設の部屋のようにフレッシュな環境となっている。PCの台数も1台となり、シンプルで効率の良い作業環境が実現できている。常設ではないが、サラウンド用のスピーカーセットもあり様々なコンテンツに対応ができる静岡放送のMA室。その更新をお手伝いできたことに感謝を述べ、本レポートの終わりとしたい。
*ProceedMagazine2017-2018号より転載
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2017/08/07
ROCK ON PRO導入事例/中京テレビ 放送株式会社様~リニア・ノンリニアを融合し、更なる進化へのマージンをもったシステム~
東海3県(愛知、岐阜、三重)をエリアとする中京テレビ放送株式会社は新局舎への移転に伴い、その設備全てを一新する大規模な導入を行われた。放送局でよく見られる隣の敷地への新局舎への設備更新ではなく、これまでの名古屋市東部の八事に立地する旧局舎から名古屋駅前の笹島地区への完全移転となる。ROCK ON PROではその移転工事の制作音声に関わる工事、システムの導入をお手伝いさせていただいた。
◎大命題となったファイルベースワークフローの導入
旧局舎には2部屋のMA室と1部屋の簡易MA室、5部屋のレコード室と呼ばれる音声仕込み用の設備があった。MA室はコンソールにStuder Vista7、メインのDAWとしてMerging社のPyramix、サブDAWとしてAVID Pro Tools、レコード室にはAVID Pro Toolsがそれぞれ導入されていた。今回の更新に伴い、全てのシステム、ワークフローのファイルベース化が大命題としてあり、それに則ったソリューション、システムの導入を行っている。制作編集、報道編集それぞれとネットワークで接続され、ファイルでのやり取りを基本とし、さらに報道で起こりうるスピードに対応するVTRや、SONY XDCAM Station XDS-PD2000に対してのリニア作業まで、幅広いワークフローに対応することの出来るシステムが求められることとなった。
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2016/07/01
ABC 朝日放送株式会社様/次世代のワークフローを見越した現実回答
大阪・ABC/朝日放送株式会社様のPro Toolsの更新、またそれに伴うファイルベースワークフローへの移行をROCK ON PRO UMEDAが中心となりお手伝いをさせていただいた。長期の計画として取り組むファイルベース化の一環として音声編集システムの更新が行われたわけだが、そのコンセプトや、将来像について導入を担当された技術局 制作技術センターの和三様と神田にお話を伺った。
◎ファイルベース移行の一環という前提
今回の更新は、8年前の新社屋移転時に導入を行なったPro ToolsシステムのPC老朽化が現実的な課題点。またPro Toolsシステム更新を主体としながら、ファイルベースワークフローへの移行の一環という位置づけも与えられている。ファイルベースへの移行は、新社屋の移転前からワーキンググループが社内に発足し、その実現に向けた取り組みが始まっていたということ。時勢として、今回の更新ではHDCAMの終了を見越した更新を行わなければならないということで、ファイルベースへの取り組みが機材選定からも行われている。
具体的には、1.Pro Tools systemのHDXへの更新、2.テープベース以外のワークフローに対応するためのVideo Satelliteの整備、3.ファイルベースフローを見越したファイルサーバーの整備、4.受入ファイルのコンバート用のEpisodeの導入この4点が柱となっている。それでは、一箇所づつその詳細を見ていきたい。
◎Pro Tools HDXへの更新で得た効果とは
それまでのTDMシステムはバージョンアップを重ねVer.9で運用を行なっていたが、Mac Proの修理対応終了など不安を抱えての運用となっていた。この部分を最新のMac ProとHDXのシステムに更新を行ったことが第一のポイント。
Pro Toolsでの運用に関してはこれまでの実績からも不安はなく、更新により実現したOffline Bounde、Clip Gainといった新機能は非常に評価され活用が始まっている。そして、スペックには現れない部分だが、音質面の向上もこのMA室で仕上げの行われる音楽番組、コンサート収録の仕上げなどでは大きなメリットになっている。以前のバージョンに比べ音ヌケが良くなっているため、SSL Avantへマルチで立ち上げてのミキシングに匹敵する音質での仕上げが行えるようになったということだ。ちなみに、Audio InterfaceはフロントエンドにSSL Alphalink MADI SXをそれまでのシステムからの引継ぎで利用していただいた。Pro Toolsとの接続はSSL DeltalinkからAVID HD MADIへと更新が行われている。SSL Alphalinkの音質をキープしつつ、今後の安定運用を見越しての更新である。
プラグインも増強している。中でもAUDIOEASE Altiverbはすでに無くてはならない存在とのこと。スタジオ収録番組の仕上げの際に、効果音として拍手や歓声を足すことがある。それを馴染ませるためにスタジオの響きに似せたプリセットを用意しているということだ。これは非常に良い結果が得られているために多くの番組で活用が始まっているということ。また、音ヌケが良くなった分を馴染ませるため、McDSPのAnalog Channelを導入している。分離が良いサウンドが気に入っているので、あまり活躍の場はないということだが、狙ったサウンドのコンセプトによって使い分けていきたいということ。併せて、DiGiGrid DLSの導入もトピックとなるポイント。プラグインパワーも十分に拡張され、サラウンド制作、そして今後のフォーマットなどにも対応できるスペックを与えられたシステムとなっている。
DiGiGrid DLS
◎Video SatelliteによるVideo Playback
今後編集と行われるファイルでのやり取りを見据え、より多くのVideo Fileの再生を実現するVideo Satelliteを導入いただいた。この更新にはもう一つの狙いがあり、既にテストケースがスタートしている4Kへの対応というのも大きな目的となっている。これまで4Kのワークフローではダウンコンバートしたファイルを都度書き出していたが、そのままのファイルがまずは再生できる機種である、ということが選定の大きな理由となったということ。数年以内にテレビ周りの更新も計画しているということなので、次世代のマルチチャンネル再生環境とともに整備を行いたいということだ。このマルチチャンネルへの展望に関してはこの後更に詳しく掘り下げたい。ここは、4Kへの取り組みを積極的に進めている朝日放送様の取り組みが感じられる部分だ。
◎ファイルサーバーとしてTerraBlock Facilisの導入
この選定は、神田様の意向が大きく関わっている。前部署は映像編集関係であったとのことで、そこで使っていたAVID Unityが比較対象としてあったということ。UnityはAVID製品で利用する上では非常に優れたソリューションではあったが、他のNLEで使おうとすると素材のファイル一つを見つけるにも苦労するような仕様。今回の更新ではどのクライアントからでも使い易く、汎用性の高い製品にしたいというのがコンセプトとしてあった。
また、Unityでは特定の管理者がメディアの管理を行う必要があったが、このサーバーを利用するユーザーが簡単に素材の管理を行う事のできるシステムがターゲットとなった。さらに、導入されるクライアントがPro ToolsとMedia ComposerとAVID製品であるためにそれらとの親和性ももちろん重視した部分。
そうなると、特殊なシステムを利用した製品ではなく、NASベースが候補として挙がる。NASベースであれば接続したクライアントはフラットな権限を持たせることが可能だからだ。そのような経緯から、エンタープライズサーバーとしてNASをベースとしてAVIDの互換モードの定評が高いTerraBlock Facilisが最終的に選考に残った。ROCK ON PROでの事前のPro Toolsとの運用チェックによる安心感と、サーバーメンテナンスを行うことの出来るスタッフが大阪にいる、という2点が大きな決め手となったということだ。実際に導入をしてみると速度的にも不満はなく、稼働開始からサーバーダウンしてしまうような大きなトラブルも起きていないとのこと。想定していたよりも早く安定運用が行えているということだ。
◎トランスコーダーとしてEpisodeを導入
今後のファイルでの受け渡しを考え、Telestream Episodeも同時に導入していただいた。EpisodeはVideo Fileの変換ソフト。常にサーバーを監視し、Pro Toolsに最適な形式への変換をバックグラウンドで行なっている。エンジンとなるPCはMac Miniを4台準備し、分散処理が行われている。一つのファイルを4分割しての処理を行なっているために高速性が期待できるシステムアップだ。4台のPCによりVideo Fileの実時間の半分以下の処理を実現している。受け取れるファイルの種類も多いため、将来的にも活躍が期待できるシステムだ。
◎現時点での具体的なワークフロー
制作編集はFinal Cut Pro 7を使用。ここで書き出されたファイルの受入が現時点では行われている。ファイナルのメディアは現時点ではHDCAMとなっているので白完パケの段階でファイルを貰い、完パケはHDCAMでもらうというワークフローだ。音戻しは完パケのHDCAMに対してリニアで行われ搬入となる。従来は白完パケのデータはリムーバブルメディアを利用していたが、システム更新後はサーバーへの直接の投げ込みと、トータルでのファイルベースワークフローへと歩みを進めている。今後の制作編集システムの更新により更なる効率化が期待できる部分である。HDCAMに関しても局全体のコンセプトとしてファイル化が命題として挙がっているためにテープレス化への流れへの一部ともなっている。
ここで命題とした「ファイル化」という言葉だが、テープレスという意味とメディアレスという意味の二面性があるという話があった。テープレスとはHDCAMというテープメディアから次世代のメディアへの更新という意味を持つ、具体的にはXDCAMのようなファイルそのものを格納しているメディアがこれに当たる。メディアレスに関してはそのデータを格納しているメディア=媒体からの脱却。サーバー上に全てのデータがあり、そのデータをそのまま最終段階まで活用するという事になる。
安定運用が最も求められる放送局という環境下ではやはり目に見える物理メディアの信頼性は絶大なものがあり、目に見えない不安定要素をはらむPCベースであるサーバーではその代替とならないという考え方が多数である。サーバーベースでの運用を前提とするメディアレスと専用ハードウェアVTRベースのメディア運用を比較した際に、やはり専用ハードの安定性が優れているという判断がどのタイミングで下され、次のステップへと移行がなされるのか、今後しっかりと見極めていきたい重要なポイントだ。
◎先進的な取り組みへのビジョン
朝日放送様はこれまでも映画祭へ出展するための映画作品の仕上げ、様々なサラウンド作品の制作など、先進的な取り組みを多く行なっている。今後のビジョンをお聞きしたところ、立体音響、オブジェクトベースの音声制作に対する強い意欲をお話いただいた。DTSが提唱するインタラクティブなDTS:Xのオブジェクト音声から、DOLBY ATMOSの持つ高臨場立体音響など様々なフォーマットを次世代のテレビ音声として検討を進めているということだ。
今後、モニター(スピーカーだけではなく映像も含めた)更新時には是非ともそれらを見越したDOLBY ATMOS対応の環境を整備したいとのこと。各分野に対して非常に造詣の深い朝日放送様の見識、今後の市場の動向、配信サービスなど次世代メディア、コンテンツのあり方などを多角的に判断した上での選定になることと思うが、そのような先進的な取り組みをROCK ON PROも共に学びお手伝いが出来ればと強く感じるインタビューとなった。
・左より、朝日放送株式会社 技術局 制作技術センター 和三晃彰 氏 / 神田雅之 氏 / ROCK ON PRO 前田洋介
*ProeedMagazine2016Summer号より転載
Broadcast
2015/12/18
ROCK ON PRO導入事例/名古屋テレビ放送株式会社様 ファイルベース更新第2弾。~実際の編集室とのデータ交換で生じた問題とその解決~
全てのデータをサーバー上からストリーム再生する。全てのMA設備の共通化を図り、作業効率の最大化を図る。VikinXのルーターにより、全MA室からのナレーションブースの共有、VTRデッキの共有という更新を2013年に行なった名古屋テレビ放送株式会社。ファイルベースの恩恵を最大限に享受する為という、大きな目標に基づき更新を行なったのだが、さらに2014年度の更新として映像編集の設備がファイルベース対応となったことで編集・音声間のファイルベースでのやり取りがスタートしている。今回はそのワークフローにおける更新作業の内容をレポートしたい。
◎ファイル受け渡し方法の確立
編集の設備もファイルベースに移行をしたということで、編集・音声間でのファイルの移動が発生することとなった。当初は、音声サーバーを拡張し編集サーバーとの共有を行うというプランもあったが、編集機の得意とするサーバーを導入することでストレスのない制作環境を整えるということを優先し、編集サーバーと音声サーバーとの間でのファイルの受け渡しが発生することとなった。
MA側のサーバーとしては、2013年にGB labs SPACEを導入していた。このサーバーは、高速なNASという特徴を持った製品。基本的にNASであるため、WindowsもMacOSもOSレベルで機能を持つCIFS、SMB、AFPといった汎用のファイル共有プロトコルでのドライブマウントが可能だ。今回の編集側との接続に際しても、その特徴から編集機側に特定のドライバーソフトのインストール無しに、SPACEに接続できるということになる。編集側のサーバーとしてはISISが選択されたが、こちらはドライバーソフトのインストールが必要。今後のメンテナンス、クライアントアプリのバージョンアップを考えるとSPACEを双方から共有した方が、長期的にもトラブルの可能性が少ないということで、SPACE内に編集とのファイルのやり取りを行う領域を確保するという方法を選択した。
実際のワークフローとしては、CIFSマウントされたSPACEの領域へ書き出したファイルのコピーを行うという非常にシンプルなもの。編集機側のOSはWindowsの為、SPACEの共有アクセスポイントにドライブレターを振り当てることで、起動時に自動的にマウントを行えるようにしている。
◎タイムコードキャラクターの表示問題
ファイルベースソリューションで問題となることの多いタイムコードキャラクター表示。VTRを利用していた際には、デッキにキャラクター・アウトが備わっているため顕在化しなかったが、ファイルベースでは書き出されたファイルにキャラが焼き込まれていなければ、その後の表示に関して何かしらの手段を取らなければならないということになる。その手法として考えられるのは大きく下記の3種類となる。
1)キャラクターインサーターの場合(津幡技研:HD SUPER2)
津幡技研:HD SUPER2
3種の手段それぞれの、メリット・デメリットを確認していこう。先ずはハードウェアを使用したパターン。MAのシステムのVideo Playback機器からHD-SDIの出力とLTCの出力を与えることで、LTCを元にしたタイムコードキャラクターをHD-SDI入力に対してオーバーレイして出力をするという機器がある。シンプルな機能ながらリアルタイムでの処理が必要なため定価で30万円以上という比較的高価な機器となっている。メリットとしては、シンプルなためトラブルが少ないという点。ハードウェアのスイッチひとつでキャラの表示/非表示が切り替えられる点。HD-SDI/LTC という汎用性の高い信号を与えるだけなので、一般的なMAのシステムであれば特に機器の追加無く導入が可能。編集室から受け取ったファイルに対しては手を加えないので変換待ちなどのロスタイムが生じない。逆にデメリットとしては名古屋テレビ様のように複数のMAシステムをお持ちの場合には必要な台数が増加しコストに直接跳ね返ってきてしまう。6室への導入を考えると200万円近いコストになってしまうのが痛いところ。まさに、シンプル・イズ・ベストというソリューション。2室程度のMAであれば投資効果は問題ないレベルだと言えるだろう。
2)トランスコーダーソフトウェアによるファイルベースでのキャラの焼き込み
telestream Vantage
telestream Episode
まさにファイルベースと言えるシステムがこちら。サーバー内を常時監視し、編集から新しいファイルがやって来る度にキャラクターを焼きこんだファイルを生成して、特定のフォルダに出力をする。候補となるソフトウェアはtelestream Episode、telestream Vantage、Omneon Carbonといったところであろう。メリットは、トランスコーダーソフトが読み取れるファイル形式であれば、MA側のシステムが確実に読み込めるファイル形式に変換を行いつつ、キャラの焼き込みが行えるという点。前述のシステムであれば、大抵のファイル形式へ実時間以内での変換が可能な点。システムをバックグラウンドに集約することができるので、現場スタッフのストレスを軽減できるという点。逆にデメリットは、バックグラウンドでのシステムの為、不具合時の発見が遅れることがある点、Vantage以外は冗長化が難しいためシステムダウン時のダウンタイムが伸びてしまう可能性を秘めている点である。また実時間以内とはいえ変換に時間が必要なため、ゼロにすることは出来ないという部分もポイントである。
3)タイムコードオーバーレイ出力が可能なVideo Playbackシステム
Avid社のVideo Satelliteシステムが先ずは思いつくと思うが、受け取ったファイルに対してタイムコードオーバーレイが可能なシステムで再生を行うという手法もある。候補としてはAVID Video Satellite、Non Lethal Applications Video Slave等のソフトウェアベースの製品、SONY XDCAM Stationのようなハードウェアベースのシステムがある。メリットは、使用するシステムによって変わる。Video Satelliteであれば、編集側がMedia Composerを利用している際にそのメリットが最大化される。プロジェクト単位でのシェアを行うことで編集側からの書き出し作業もスキップすることが可能となる。Video Slaveは国内では実績のないソフトウェアだが、シンプルに再生が可能な多機能な同期再生ソフトだ。コストを度外視すればXDCAM Stationという選択肢もある。このVTRデッキはSSDストレージを搭載しているので、CIFSでファイルの投げ込みが可能である。それを9Pinで同期を取りキャラアウト出力を映すということでも実現する。デメリットは、それぞれではあるが、コストが高いということだろう。また、個別のシステムを同期するということになるので、トラブル時の同期ズレの問題からも逃れられない。それぞれに多機能な部分は あるのだが、その部分に明確なメリットを見つけられるシステムであれば導入検討を進める価値があるのではないだろうか。
◎名古屋テレビ様での選択
既存システムへの変更を最小限とし、現場スタッフの混乱を減らすということを念頭に置き、また、編集とのファイルの投げ込み方のワークフローから逆引き的な検討を行なった結果、先ずは3:Video Playbackシステムでのキャラ焼きは候補から外れた。今回の検討ではVideo Satelliteシステムが候補に挙がったが、編集に導入されるISISに接続をしプロジェクトと共有を行うには、その導入コストと、帯域的にISISの筐体を追加しなければならないというコスト両面から見送りとなった。
ハードウェアと、ソフトウェアどちらを選択するかというところで、メリットとデメリットの精査を進めた結果、2:ソフトウェアのパターンが最終的には採用された。コストという判断が大きかったというのもあるが、将来的に、送り込まれるファイル形式の多様化にも対応でき、且つ実時間の半分以下の速度での変換を実現するということが実証されたため、ソフトウェアベースでのシステムを導入となった。選んでいただいたのは、terestream Episodeである。
今回導入していただいた terestream Episodeは複数PCでのクラスタリング処理を実現する最上位のEpisode Engineをコアとして4台のMac Miniでシステムを構築した。この4台のクラスタリングシステムでh.264への変換が実時間のおおよそ40%で完了する。ファイルベース運用初期ということもあり、同時に編集からのファイルの投げ込みは無いという想定でEpisodeという選択となっている。ちなみに、同時に複数ファイルの処理をしたいという場合には、同社のVantageの出番となる。
◎実際のワークフロー
編集からの投げ込み用のアクセスポイントと、編集側への音声データを投げ返す為のアクセスポイントがSPACE内に新たに用意された。前述のファイルトランスコードエンジンであるEpisodeは投げ込み用のアクセスポイントを常時監視していて、変換作業後には音声側のMAスタンバイ素材のフォルダに送り込まれる。変換完了後には、投げ込み用のフォルダからファイルは自動的に削除待ちのフォルダへと移動され、変換が完了したことがわかると同時に、削除してもよいファイルということで自動的にフォルダ分けが行えるようにしている。万が一Episodeがエラーを返し、正常に終了しなかった場合には、"Failed"というフォルダーを作成してあり、そこにファイルが転送される仕組みだ。このフォルダに素材がある場合には書き出されたファイルの不具合、もしくはEpisode自体の不具合を疑うという具合だ。
そして、MAが終わった完パケWAVデータは、SPACEの投げ返し用のアクセスポイントに置くことで、編集側との共有が可能というシステムだ。編集側からは、最低限のSPACE内の領域しか見ることが出来ない仕組みをとっているためにトラブル時の切り分けもし易いよう工夫を行なっている。
◎今後の課題
編集側とのファイルの受け渡しが本格化すると、今まで十分であったSPACEの容量が逼迫する可能性が大いにある。そのために、SPACEの容量拡張とともに、過去素材のアーカイブを検討する必要が生じている。一般的には、放送局様での実績が高いアーカイブソリューションとしてはLTOということになるが、1つのデータ量が少ないMAのデータ保存にはあまり向いていないように感じている。これは、LTOの容量が大きいため、数カ月分のデータが1巻のテープに収まってしまうため。MA向けとしては、100TB程度の容量を重視したストレージサーバー上でホット・アーカイブを行うというのがベストソリューションではないだろうか。ビッグデータも、クラウドサービスなど、データ資源の一極集中が始まっている。そのような中、HDDストレージの容量単価の低下から1PB程度を境に、LTOのコストとHDDを使用したストレージサーバーのコストの逆転が見られるようになってきている。長期保存という点ではLTOに軍配が上がると思うが、アーカイブデータへのアクセス性を考えれば、HDDストレージでのホット・アーカイブの方に理があることは一目瞭然である。
◎telestream Episode
今回、名古屋テレビ放送様で導入いただいたtelestream Episodeは非常に多くの機能をもったVideo Transcoder Software。限られた紙面ではあるがその機能の幾つかを紹介したい。今回の導入に当たり、キーとなった機能がSplit-and Stitch。これは、複数のPC(Win / Mac問わず)をクラスターとして並列処理を行うことで高速なトランスコードを実現する機能。通常であればクラスターを管理するSQL serverのような存在が必要となるが、Episodeでは同一のサブネット上に存在するPCであれば、簡単にクラスター化することが出来る。動作の原理は非常にシンプル。
まずは、変換元のファイルをSplitする。クラスターの参加台数に応じて切り分け、それを各PCで変換することとなる。変換が終わったら、ばらばらになったファイルをStitchする。つなぎ合わされたファイルは変換後の完成品となるという仕組みだ。これにより、CPUのパワーをフルに利用し、PCの台数に応じた高効率なファイル変換を行うことが可能となる。Splitする、Stitchするという工程で多少の時間は必要となるが、単純に2台PCがあれば約1/2、3台では約1/3と劇的に短時間での変換が出来るようになる。高価なCPUを搭載するよりも、低価格なPCを束ねたほうが早いという面白い現象がこの機能により生まれる。実際に、1台のハイスペックなMacProよりも、4台の標準構成のMac miniの方が高速に変換が行える。今後の処理の増大に対しても、別スペックのPCを接続することでの高速化が望めるのもメリットの高いシステムである。それこそ、Episodeのライセンスは必要ではあるが、余剰のPCを使うことも可能だ。
また、本文にもあるがEpisodeはフレームレートの変換、画角の変換などVideo Fileの主要な要素のほぼ全てを変換することが出来る。どのようなファイルがやってきたとしてもその後の作業で確実に処理の行えるファイルに変換を行うことが可能だ。名古屋テレビ様では、ファイルサイズの小さいh.264への変換作業をEpisodeで行っている。編集側での作業では時間のかかってしまい敬遠されがちなh.264への変換を、4台のMac miniにより実尺の1/2以下の時間で変換の行うことに成功している。そして、その後の作業で利用していただいているPro Toolsで確実に読めるファイルになっているというところも大きなメリットとなっている。もちろん変換の主目的は、キャラの焼きこみであるが、それ以外に複数のメリットを享受できていることとなる。
今後もROCK ON PROとしてより良いワークフロー、作業環境を名古屋テレビ様に使っていただくためにご要望からアイディアを生み出していきたいと考えている。順次ブラッシュアップ、定期的なメンテナンスが、アナログのソリューション以上に重要となるファイルベースのシステム。今後の名古屋テレビ様のシステムの発展も順次レポートできればと考えている。