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ROCK ON PRO
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導入レポート/名古屋テレビ放送株式会社様
名古屋テレビ様は局内のインフラを含めたファイルベース化を推進している。その流れの中で局内にあるMAシステムの更新が編集、報道などのシステムに先んじて行われた。最終的には、局内全てがファイルベース・ワークフロー化されるという前提での更新なのだが、編集など映像系のステーションの更新までは、従来通りのテープベースでの運用が行われるためにファイルベース、テープベース両者のワークフローを実現する必要がある。
自社制作番組のMAに関しては社内のファシリティーを利用しての作業を行っているため局内に6部屋のMA室が準備されている。その中でも特筆すべきは、1MAと呼ばれるサラウンド制作が可能な部屋が存在すること。月1レギュラーでのサラウンド音楽番組の制作、また、スポーツ中継などもサラウンド制作を進めているのでそれらの番組のタイトル制作など、積極的にサラウンドに取り組んでいる。
放送局という現場で求められる時間効率、そして確実性を求めるためのバックアップ体制も重要となる。これらを包括し実現するシステムの導入を2013年の6月〜7月のおおよそ1ヶ月をかけ全6部屋のMAのバックボーンを含めた更新を行った。導入から約1ヶ月後に実際の運用をしてみてのご感想を伺った。
ファイルベースワークフローへの計画
取材:今回の更新の計画自体はいつからスタートされていたのですか。
林氏:局の方針として2015年を目処に制作・報道編集システムのファイルベース化を推進するという課題があり、今回のMA更新もその一環という位置づけでもあります。しかし、他部署に先駆けての更新となるためご相談をする前には、決まっていないことも多々ありました。
将来に向けての命題もありますが、MAとしても更新をしたいポイントもありました。
取材:なるほどですね。では以前のスタジオのシステムから今回大きく更新されたと思うんですが、以前のスタジオでの問題点とか今回の更新にあたりよくしようと考えられた点はどこでしたか?
林氏:そうでうね、1番の命題というのが将来的にファイルベース化が見えているのでそれに対してどのような準備をするのか?全て同じPro Toolsシステムで、共有ストレージでファイルシェアすることによって部屋の使い回しが出来るようになる所ですね。以前は3部屋がフェアライト、残りがPro Toolsと2種類のシステムが混在、そしてもちろんローカル・ストレージでの作業でしたので、システムを共通にするということも目標の一つでした。
局内での作業だからということもあるかもしれませんが、一旦作業が終わった後でも直しの依頼がくることが有るんです。今までは、部屋が変えれなかったので、次の作業が入ってしまっていると、ちょっと変わってというのが難しかったんです。
OA時間によっては、無理矢理作業を止めてもらって直しをしたり、終わる迄待ち時間になったりと効率が悪かったんです。
取材:実際更新してからはいかがですか?
林氏:そうですね、部屋が空いていれば作業出来るので、直しとか飛び込みが入った時にすごく便利です。6部屋全て、どこかが空いていればすぐに対応できるようになりました。
取材:では実際ファイルベースというところがキーワードだったと思うのですが、現状はテープベースとファイルベースの移行期だと思います。その両方を用意しないといけないということが、今回のシステム更新で一番難しいところだったと思います。当初のビジョンはどのように更新を行なおうと考えてられていたのですか。
林氏:そうですね、ビジョンというかこちらが捜していたワークフローの問題点としては、局内の映像編集機がAVID,GrassValley,Quantelと多岐に渡ります。それらのシステムと現状運用の中心にあるHDCAM、そして今後使用が増えることが予想されるXDCAM。全てを統合し、シームレスに取り扱えるシステムが組めないのかを考えていました。
まずは、ファイルベース化のMAとしての受け入れ態勢を整えるという意味で、共有ストレージの選定を行いました。せっかくストレージ・サーバを導入するのであれば、ストリーミングで全てのMA室からファイルコピー無しで作業できる環境を作りたいと考え機種を選びました。今回はGB labsのSPACEという製品になったのですが、決めてはそのスピードですね。Pro Toolsで映像を再生しながらバックグランドで、ファイルのコピーなどが行われるようになっても余裕のあることが絶対条件として考えていたのですが、事前のデモで確認も行い決定しました。
取材:そうですね、当初よりファイルベース運用が始まった際の映像編集とMA双方がアクセスできる共有サーバーにしたい、それを軸にワークフローを作っていこうというプランでしたね。
テープベースワークフローとのハイブリッド設計
林氏:次に考えたのが、テープベースと今後のファイルベースをどのように共存したシステムにするかということでした。これに関しては、『テープを受け取った時点で、ファイルにしてしまえ!!』というシンプルな発想を実現できないかと相談をさせていただきました。
取材:そうでしたね。そこでご提案させていただいたのがTelestream社のPipelineという製品でした。ネットワーク上に接続するベースバンド・インジェストの機器ですね。こちらでVTRからサーバーへ映像を取り込みPro Toolsで再生するというシステムを導入させていただきました。実際の使い勝手などは現場の声としてはいかがでしょうか
林氏:操作的にもシンプルなので、みんな使いやすいとの意見があります。非常にいいですね。取り込みつつ追っかけ再生出来るので長尺ものには非常に有意義ですね。
取材:実際追っかけ再生は行なわれているのですか?
林氏:長時間の番組なんかは取り込みながら、仕込み始めていますね。追っかけ再生の機能を使い始めています。
取材:実際にご提案した機能を活用して頂けるとうれしいですね。
林氏:この機能は本当に、時間の短縮・効率化に有効ですね。今までだと2時間番組だったら、テープの起こしだけで2時間の待ち時間だったものが、直ぐに作業を始められる。これは革新的ですね。
複雑なシグナルルーティングを集約するVikinX
取材:実際今回のシステムの実現にあたって、非常に苦しんだのがシグナルルーティング。6室のMAに対してVTRが4台。2部屋共用でのVTRが有りました。それと、ベースバンド・インジェストに選定したPipelineの入力が2系統で、それを4台のVTRと接続する必要が有ります。
さらには運用上MAシステムからのリモートの系統が2つ。Pro Toolsからの9-Pinリモートと、ダイレクトにVTRに対してインサートでナレーションを入れていく為の9-pin remoteからの制御。部屋の中でさえもシステムスイッチャーを準備しなければならないと当初考えていたのですが、この複雑なマトリクスをシンプルに解決してくれたのがVikinXでした。
林氏:当初は手作りのカスタムスイッチを複数用意する?などといってましたものね。こちらとしても、パッチでなくスイッチで、シンプルに間違いの無い操作系を準備してほしいと要望していたのも有りました。この部分をVikinXのプログラムスイッチが完璧に応えてくれるシステムを組めました。
取材:当初、お話を始めた時点では『VTRを増設すればこんなに複雑にならずに済むのかな?』という発想に落ち着くんじゃないかと考えていました。
林氏:VTRを増やすのが一番シンプルですが、決して安くない買い物なので(笑)そこにお金かけられない(かけたくない)という事情も有り、現行の台数で以前と変わらない仕事が出来ればと考えていました。ここは、かなり難しい相談をしたと思っています。
取材:そうですね、ファイルベースを見据えての更新ということも有ったので、後何年現役か分からないVTRに何百万もかけられないですよね。今の移行期をうまく乗り切った後でも活用していただけるシステムに出来るようにご提案を詰めさせていただきました。今回増備したXDCAMでさえも、いまはProfessional Discという媒体が有りますが、一気にファイルに移行する可能性も秘めていると思います。後何年というとなるとクエスチョンマークですね。
林氏:そうですね。この悩みをVikinXがうまく解消してくれた感じですね。今後もXDCAMが増えたとしてもHDCAMと入れ替えることでシステムの組み替えも容易ですし、6部屋ほぼ全てのSDI、RS422がここ(レコード室内Rack)に集中しているのでVikinXのプログラムを書き換えるだけでどのようにでも変更が出来ます。
取材:もう一つVikinXの導入で映像もHDで見えるようなりました。
林氏:そうですね。ナレーターさんも「HDになったんですね」と好評いただいています。実は、MA室のHD化が一番遅れていたんですよ社内で….
取材:そうやって喜んで頂けるのが一番ですね。
サウンドクオリティーへのこだわり、全部屋にMusik Electronic Geithain製スピーカーを導入
取材:林さんにとって今回の更新で自慢のポイントは
林氏:それはやっぱりSPACEとPipelineとの組み合わせです。ファイルベースのワークフローの組み合わせで作れたってところですね。もう一点こだわったのが、使い勝手はもちろんですが、折角の設備投資なので音も良くしたいと考え、マイク・プリアンプとしてRupert Neve Design Portico 5015を各部屋に新規導入しました。
取材:そうですね、このマイクプリ機材選定にあたり多くの製品をお試し頂きましたね。
林氏:音としてよくなる部分では有るので、そこは外さずに更新を行いたいという思いが当初からのポリシーとしてありました。
取材:更にスピーカーも全部屋Musikにされましたね。
林氏:ここも以前から、是非とも実現したいと考えていたポイントです。以前から1&5&6MAで使用していて非常に好印象を持っていたMusik、そして音質に関しても全部屋同じ条件で聞ける様にとの考えも有り、導入に踏み切りました。
セッションファイルは常に共有サーバーであるSPACEに有るので、ファイルコピーなどの手間無く部屋を移動しても全部屋同じような条件で聞けるのが特長ですね。
取材:Musikの導入で使い勝手だけではなく音質という部分もシステムの整合性はとれましたものね。1MAはサラウンドで少し違ったシステムですが、基本2~6MAはほぼ同一のシステムになりました。
取材:梅村さんにとって今回の更新で自慢のポイントは
梅村氏:自慢出来るポイントですか、、、便利さが圧倒的に違いますね。やはり、飛び込みで直しが入った際にすぐに対応できるのは現場としてはとても助かっています。今はHDCAMが有って、インジェストのときも音戻しのときも結局はデッキの取り合いになるのですが、パイプラインで取り込んでしまいさえすればその後は、ファイルベースで共有サーバ環境という利便性、システムの効率の良さを感じています。今後VTRからファイルになったらさらに便利になるんだという期待が持てるシステムだと思っています。
取材:ありがとうございます。編集との密接な連携のとれたファイルベースワークフローを実現できるように今後ともご相談をさせていただければと考えています。本日はありがとうございました。
設立:昭和36年9月6日
開局:昭和37年4月1日
事業内容:テレビ放送事業
資本金:4億円
呼出符号:JOLX-DTV
代表者:代表取締役社長 荒木 高伸
社員数:253名(男性199名、女性54名)
住所:〒460-8311 名古屋市中区橘2-10-1
電話:052-331-8111(代表)
*記事中に掲載されている情報は2013年12月09日時点のものです。