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ROCK ON PRO
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Avid Pro Tools HDX
遂に登場した業務標準次世代プロダクト。それがPro Tools 10 & HDX!!Digidesign社とAVID社のブランド統合を含むここ10年で行なわれた大改革の成果がこれ!!AVID映像編集作業とのワークフロー共存性を高め、10年先を見越したエンタープライズな音声作業を担うプロダクトが遂に登場。
まずは機能的なポイントから。オーディオワークフロー、現代の制作環境の中心として本質的なクオリテイーを決定づけると言っても過言ではないPro Tools。業界標準として多くのユーザーの声を受け、様々な革新と機能改善が行なわれた。基本になるサウンドエンジンが徹底して拡張されている。32bit Floating Processにより、現実音のすべてを表現することが出来る位の解像度をもったMixing Engine。同じく32bit Floating Processが採用された次世代互換プラグインAAX。多様なストレージへの対応や、レスポンスの向上を目指したDisk Accessの更新など、多岐に渡る改良が加えられユーザーフレンドリーかつ、次世代のワークフローに対しての充実した回答が含まれている。。TI社製DSP18機を搭載、CPUパワーの利用効率化、FPGAによるパワーアップが、音質の向上とワークフロー効率化の最大化に大きく貢献。
これが、Pro Tools 10& HDXの新機能の全貌だ!!
Soundの持つ魔力を取り込める、それがHDXだ!
〜エンジニア杉山勇司氏〜
収録時の音がそのままプレイバックされる
Heavenstampというバンドのレコーディングで、初めて録りからミックスまでHDXを使いました。最初にHDXの音質差を感じたのは、ベーシック録音のプレイバックの時です。あたかもまだブースでバンドが演奏しているかの様な臨場感があり、コントロールルームでメンバーと一緒に聞いているのが不思議な気がするぐらい。今まで気付かないうちに、どれほど大切な音のニュアンスを失っていたのか、と少しショックでした。演奏したままの音はもちろん、ハードウェア機器にしか出せないニュアンスまでがそのまま残る。ダビングに入り、スタジオで何年も電源を入れていなかった機材を次々に立ち上げて、どんどんエフェクトも録っていきました。ラフミックスを作る際も、このままの感触を持ち帰ってもらいたいと思い、マキシマイザー系のエフェクトをかけずにプリントしました。ずっと以前からの方法に立ち戻れたことが、HDXでレコーディングしたことの一番の収穫でした。
HDXでのミックスは、恐怖すらを覚えた
ミックスは今回もPro Tools内部で行ないました。HDXになってもRTASを使えば、普段使っているほぼすべてのプラグインが使えたので、いつもの感じでミックスを開始しました。プラグインだけでなく、ハードウェアを再度掛け録りしたりしてトリートメントしていく。ところが、なぜか音が混じっていかないのです。一つ一つのトラックは意図したように変化していくのに、録り音の良さがどんどん逃げていく感じがして恐怖すら覚えました。締切もあるので、何度もHD Accelの環境に戻してミックスしようと考えたほどです。32bit floatバスは途方も無く広い空間でした。そして今までの24bitバスが、いかに限られた空間であったかも実感しました。気を配るべき範囲があまりに違いすぎたのです。
最終的にミックスを完成させるために、自分自身の意識を変える必要がありました。収録時のサウンドを大切に、最低限のトリートメントを施してバランスを取る。結局これが、HDXでのミックスダウンにおける最善の手法でした。ここでも、以前からの方法に戻れば良かったのです。
最新の機材が、これまでのレコーディングの手法やハードウェアを最大限に活かしてくれるのです。HDXは、レコーディングスタジオが持っている魔法をも取り込める、そんな気にさせてくれます。
<杉山勇司>
レコーディング・エンジニア/プロデューサー。
1964年生まれ、大阪出身。1988年、SRエンジニアからキャリアをスタート。その後レコーディング・エンジニア、サウンド・プロデューサーとして多数のアーティストを手がける。
主な担当アーティストは、Soft Ballet、ナーヴ・カッツェ、東京スカパラダイスオーケストラ、X JAPAN、L’Arc~en~Ciel、dropz、ニルギリスなど。また、1995年にはLogikFreaks名義で、アルバム『Temptations of Logik Freaks』(ビクター)をリリース。
INDEX
MIXING ENGINEの最大品質へのアプローチ
音質に直結の MIXING ENGINE の大幅改良!!
#1-1 64Bit Floating Mixer
Mixing Engine Processの全てを一新。32bit Float Processが導入された。中枢の一新は、エンジニア杉山氏のコメントにあるように、全く新しいサウンドを生み出した様です。従来の24bit fixであるTDM bus、最終サミングのみ48bit fix処理が、全てのProcessが32bit Floatとなり、最終Summingに於いては倍精度の64bit Floatを実現している。論理値とはいえ、24bitではS/N約144dBであった物が、32bit Floatでは1000dBを超える領域に突入しているインパクトは信じがたい事実。『内部プロセスで歪みが発生しない』、『高解像度のデータ保持』を実現。そのサウンドは、透明感、立体感、解像度の向上。飽和感、ギャップ感、の解消を生み出す。この感覚は、まさに原音をそのまま心地よく聞いている聴感に近く。同時に限りない自由なサウンド加工プロセスも可能に。
#1-2 32bit Floating Audio File
32bit Float内部での録音はその深いResolutionが高い品質に直結。I/Fこそ32bit非対応ながらステム等内部でのサウンドファイルの生成時には今まで以上のクオリティーでの作業が可能となります。これは、他社のDAW(Nuendo,Samplitude等)でも採用されているものが幾つかあり、ユーザーの評価の高い機能の一つでした。Pro Toolsの高音質化に大きな役割を果たします。
#1-3 違うBit Depth解像度のファイルが同一セッションに共存
さらにBigな機能として、同一セッション内で解像度の違うファイルが共存できるようになりました!もちろん録音も可能です。これは、今まで一度セッションを作った際に、後から変更の出来なかったセッション設定内のBit depthがいつでも変更できるということ。素晴らしいですよね!ちなみに、マイクでの録音は24bitにシンセは16bitでなどというセッション内での使い分けが可能となります。この機能は、後述のReal Time Renderingにより実現しています。
#1-4 最大ボイス数768track!!
もう一つ、HDXとの組み合わせで最大768のボイス割り当て可能なオーディオ・トラックと512のAUXトラックへ対応。ここまで来れば、もう無制限と言っても過言ではないでしょう。786ボイスということは、786chの同時録音が出来るということなんですから!
従来のHDシステム4台分のパワーを持つ事のできるこの更新は、全てのPro Tools ユーザーに取ってメリットなること間違い有りません。HDX Crad1枚で256ボイス。2枚で512ボイス、3枚で768ボイスとなります。
#1-5 16,384sampleの自動遅延補正
ADC(自動補正機能)もパワーアップ。今までの4,096サンプルから16,384サンプルに!!どんなプラグインを挿入していてもタイムアライメントを保つことが可能となりました。これからは、Z-Noiseもインサートでいけるということです。48kでの作業の際は350ms程度まで遅延を押さえることが出来るのです。
32Bit Floating Process
32Bit Floating Process とは一体何なのでしょうか?日本語にすると 32bit 浮動小数点演算となります。まずは、このデータの中身を見てみましょう。 下記の図を参照下さい。
これを見て頂ければ解るように、実際に数値を表す仮数部は 23bit と 24bit Fix のデータと同じデータ幅しか有りません。しかし浮動小数点の肝所は指 数という値が存在する点です。24bit fix のデータでは 2n 乗の数値しか表現 することができません。本来は 0 から無限まで存在する(もちろん小数点 以下の値も)物を表現し切ることはできません。そのために考えられたのか浮動小数点演算という考え方。指数により桁数が変化します。特徴を整数演 算と比較すると・・・
- 整数演算
- 特定の区間の値を整数のみで表現
- 完全に等間隔のデータ表現
- 24bit における値の最大値は 16,777,215
- 浮動小数点演算
- 小数点以下の値を得る事の出来る表現方法
- 数値が小さくなるほど間隔の狭まる値の表現
- 32bit float における値の最大値は 3.4 * 1038
となります。私たちの扱う Digital Audio にとってはどうでしょうか?
- 整数演算
- 常に整数であるため取り扱いが容易
- 割り切れなかったときに誤差を生じる
- 対数表現中心のオーディオデータとしては無駄が多い
- 浮動小数点演算
- 非等間隔のデータであるため無駄が少ない
- 小数点以下の値を取る事が可能
- 指数が必要なためデータサイズに対して最大値が小さい
- 基本的に常に近似値での表現となる
上記の様な特徴を持ちます。通常の可聴範囲を Sampling するのであれば 24bit Fix の解像度で十分かもしれません。もしかしたら、32bit fix でよかっ たかもしれません。しかし、32bit Float が採用されたのでしょう?、古く から Computer の演算手法として採用されていた実績(IEEE の規格として 存在)、WAV,Aiff と言ったデータ形式の一種として認められている。(32bit は Float のみで Fix はありません)これらが、今回の採用理由と考えられます。 最後に、計算式をあげます。
指数が log 上にあることからも対数的な表現をすることがわかります。
Disk Access の革命 RAM Cache
共有 Storage に Full 対応 RAID も OK !!
#2-1 これからはどのストレージも記録メディア認識、録音可能
もう一つが、ストレージに対する制約からの解放・・・これは、様々なデータ管理にとって驚きの仕様です。Pro Toolsはストレージに対しての要求が大きことが知られていますが、これからは様々な制約から解放されます。極端な話USBメモリでもOK。セッションを開いたら、全てのオーディオデータをCPU内部のRAM(あるだけ?メモリ)にコピーしてしまうので、速度は関係ないのです。もちろん、今まで、様々なハードルのあったRAIDや共有、これらも全く問題無くなります。この恩恵は、再生側だけでなく録音時にも受けることができます。録音したデータはストレージの速度が間に合わない場合には メモリに蓄え順番に書きこむので、利用出来るストレージ条件は大幅に緩和されます。
#2-2 Disk Cacheによる超高速レスポンス
セッション内のオーディオデータをセッション・オープン時に全てCPU内部のRAMにCacheします。これにより、何がおこるのでしょうか?言葉で書くと一言なのですが、様々なところにメリットが生まれます。まずは、操作としてはレスポンスの向上。今までセッションが大きくなるとスペースバーを叩いても2~3秒待ってから動き出した、LOOP再生で止まってしまった、そんな経験はPro Tools Userならば誰もが経験していると思います。この事象から解放されます。これはデモムービーでもご覧いただけます。これによる作業スピードの向上は、全てのユーザーにとってメリットであり、作業効率のアップに直結します。しかし、Cashの搭載によるメリットはそれだけではありません。
このRAM Cacheの動作ですが、事前に設定したCacheの割り当て容量まで、どんどんセッションに並んだオーディオファイルを読み込みます。Cacheの割り当ては搭載したメモリー容量によって変化しますが10GB超の設定が可能とのことなので、余程のことがない限りRAM上のデータだけで作業が可能となります。このスピード感、レスポンス素晴らしいです。
#2-3 データのネットワーク共有、ストリーミングが手軽に
ストレージに対する要求が下がったため、Network Driveでの作業が行えます。最高の環境を提供するAVID ISISから低コストな家庭用LAN Diskまで、更にRAID diskでも作業が可能となるため、データ・セキュアな環境下でのPro Toolsの新しいワークフローが始まります。高速サーバを利用すれば、Cacheの充填までの時間も短縮され、さらなる高速レスポンスが期待できます。今までは、非常にハードルの高かった、ネットワーク共有による、効率的なワークフローが現実のものとなります。
標準搭載されたSound Cloud、DropBox などを利用したクラウド・サービスによる遠隔地とのデータ共有も手軽に行えることとなります。皆さんも今までの制約から解放された、新しいワークフローを考える時がやってきています。
強力な Real Time Rendering
ワークフローに直結、Clip Gain 登場 !
#3-1 Clip Gainによるオートメーションの効率化。
特にポスプロの方から多数のご要望をいただいていた、クリップ・ゲイン機能が遂に搭載されました!!これによりClip(ex.Region)単位でのゲイン設定が可能になります。これは単純にゲインの上げ下げということではなく、オートメションと同じようにClipに対してGainの曲線を描くことができるということです。もちろん、音楽ユーザーの方も!!ボーカルのレベルの微調整等応用範囲はいくらでも考えられます。このClip Gainはフェーダーオートメーションとは別物なのでFedarには一切影響がありません。今まで、仕込みでAudio Suiteなどで波形を書き換えていた作業がReal Time RenderingによりVirtualに実現されていると考えて頂ければ良いと思います。Pre Fader,Pre Insertでの処理となり、Plug-inの動作にも影響を与えることが可能です。
#3-2 波形表示もReal Timeに変化
上記のClip Gainでの調整時にもFadeの設定時にも瞬時に波形表示が変化します。今までは、別Fileで管理されていた物が、常にReal Timeでレンダリングされます。Fadeに関しても同様に今までのようなFade Fileと呼ばれるCacheを必要としなくなりました。Real Time Renderingにより、フェードトリムなどの操作をした瞬間にレンダーされCacheに蓄えられます。波形の表示も直感的に見やすくなっているのも改良点ですね。
このClip GainとReal Time Rendering機能は、RAM Cache機能とリンクして、高速なレスポンスでユーザビリティー、作業スピードの向上に直結します。一度使ったら、もう以前のバージョンへはもどれないでしょう。
EuCon Phase 2
タスクまでを含んだ 500 以上のコマンドを統合
#4-1 Pro Tools全てのコマンドを網羅
500のnewコマンドの追加で強固かつ柔軟な連携が可能になっています。ProToolsとの連携が新しいステップに入りました。MC pro、Artist Controlの2機種では、大幅なパラメータの増加により、さらなる多機能を手に入れることでしょう。
#4-2 System5から移植されたChannel Strio Plug-in
このPlug-inの使用により、System5のDSP EngineとPro Tools HDXのDSP Engineがイコールに。コンソール上で、EuConによりシームレスに統合されます。この恩恵はEQ3 plug-inも同様です。更に新しいChannel Strip Plug-in とEQ3はSystem5のEQパラメータウィンドウにEQカーブの表示が可能です。音質に関してもsystem5と同等のクオリティーが手に入れられます。
新しい Plug-in Format AAX
64Bit 対応をにらみ新しいフォーマットへ移行!
#5-1 AAX(AVID Audio eXtension)の全て
AAX(AVID Audio eXtension)はProToolsに搭載された全く新しいプラグインフォーマット。今までRTAS,TDMと別のフォーマットであったものを1つに統合、環境に応じてNative,DSP(HDX)に自動割り当て。今までのセッションもAAXで自動的に開くことが可能です。
これは、開発メーカーはSDK KITを使って一つの高等プラグラムで開発し、これをコンパイラで処理エンジンに合わせて自動でプログラム生成を行うことが可能となり格段に高い開発効率が得られます。今まであったようなRTASとTDMの音質差という問題も完全に同一のプログラムをコンパイルするため解決します。
#5-2 AAXによりPlug-inの64Bit化
AAXは64bit Nativeのプログラムとなるので、32bit Floatデータの32bit Float処理という、新しいProTools 10のミキシングエンジンにおいて非常に高い能力を発揮します。すべてが新しい、AAXは未来のコンピューティングにおいても高い可能性と発展性を持った次世代のフォーマットです。
#5-3 デベロッパーへの開発支援
すでにパートナーとなるメーカへのSDKの提供は終わり、コンパイルとバグチェックをすればAAX対応版が出荷できるようサポートをしているとのこと。すでに数社がAAXへの完全対応バージョンをリリース済み。今後も順調に各メーカ共にAAXの対応を発表されることが決まっています。半年程度のスパンで、すべてのメーカがAAX対応を果たすことでしょう。
さらなる注目の新機能
魅力的な新機能がさらに多数追加されています
#6-1 system5からの移植Channel Strip
AVIDのフラッグシップコンソールsystem 5のChannel EQとChannel Compがそのままプラグインとなりました。音質評価の高いこのEQ、MDWともEPUREとも違ったシャープな効きです。お気に入りは跡形もなく削ぎ落とされるFilterです。これほど、シャープで、位相の崩れないFilterを他には知りません。Compも非常にシェアな効き。ラージフォーマットコンソールらしい、大きく崩れることのない堅実な作りが魅力です。今までの定番EQ3とDyn3もあるので、標準添付のプラグインで、使い分けられるというのはなんとも贅沢な環境と思います。
#6-2 24時間超のセッションに対応
念願のタイムラインの拡張です。今までの制約が一切なくなりました。24Hをまたぐセッション、ポスプロ等での1Hずらしてのバリエーションの作成など、今までうまくいかなかった作業が可能となります。様々なシーンで、恩恵をうけることでしょう。
#6-3 サウンドライブラリーの追加
その他に高品位なサンプル/プラグインのダウンロード販売で知られるBig Fish Audio社から8GBものサウンドライブラリーが追加。Lodon Solo Stringsなどをはじめ高品位でピンポイントなサンプル音源が人気を博している同社のライブラリーとあって、従来搭載されていたプラグインとはひと味違ったサウンドカラーを追加出来るのは間違い有りません。Pro Tools10の完成度をより高く引き上げてくれますね。
Pro Tools 10 Q&A
このイノベーションはいつ導入すべきか!?
#7-1 32Bit Float対応。その魅力とは?
32Bit Floatは、将来入り口から出口までが期待されるほど、品質をあげサウンドに余力を与えます。まずは、内部のステムの記録にお試しください。Bus経由などで32Bit Floatのファイルの生成が可能。出来るだけ高解像度で途中ファイルを残すことに大きな意味があります。他のDAW(Nuendo等)のユーザーはすでにこのような手法で高音質化を図っています。
#7-2 Accel Cardでの制限は?
Pro Tools 10は、HD Accel Cardにも対応。ただし、HDX Cardならではの機能に関しては制限がつきます。Mixing Engineは従来のHDシステムと同様。最大Voice 192、Mixer Depth 48Bit Fixとなります。また、AAX DSPの使用は出来ません。自動遅延補正もDSPを使用しているため従来通りの4,096sampleが上限となります。
#7-3 過去のデータとの互換性は?
Pro Tools 10では新しいセッション・フォーマット .ptxを使用。以前のバージョンで使用するには「セッションの複製」コマンドでコンバートが必要。Clip Gainに関してはオーディオクリップにレンダリングすることにより下位互換性を確保。Pro Tools 7~9までの.pt7セッション、Pro Tools 5~6の.ptsはPro Tools 10でも問題なく開くことが可能です。
すべてが新しい Pro Tools HDX Card
史上最強、4 倍の Power 最大 768 ボイス
HDXカードのハードウェア解剖
DSPプロセスラインの細分化による効率の向上に伴うパワーアップとともに、高い発熱が生じるHDXは、その冷却のための空冷ファンが印象的な、重厚なカバーが付いた。その内面、基盤表面にはなんと従来の2倍の個数の18個のDSPが整然とレイアウトされ鎮座。従来のHD Accel CardのMotorola製DSPPresto(2ケ搭載)及び321(7ケ搭載)の合計9ケからTI(Texas Instruments)製TMS320C6727B-350の18ケに改められ動作周波数も220MHzから350MHzに。内部処理も24bitから32bit floatに精度・能力が更新。また、1Chipあたりのメモリ容量も従来は、各DSPの1次Cache160KB及び、搭載されたDSP 9ケ中4ケに外部の512KBのメモリから、HDXでは18ケの各DSPに対し16MBの外部メモリを実装。都合、HDXでは1枚のカードあたり288MBのメモリ搭載を可能とした。実は、更に進化している。2つのFPGA Chipを搭載しVOICEの管理、I/Oのマネージメントを行なうように設計変更。これにより、従来のDSP消費によってVoiceを確保するTDMシステムと異なり、1枚のカードで256ch分のVoiceを確保。従来2~6チップを占有されていたVoice用に割り振られたDSPの部分も全てをPlug-inに活用し、夢の広大な作業領域が確保される。その広大なプロセスを低いレイテンシーで実現することは、現在のCPUとPC構造では業務向けに行なうことはやはり難しいと言えるだろう。
#ボイス数の拡張、そして2portのDigilink
まず驚きなのが、ボイス数の拡張。たった1枚のHDXカードで、256chの処理を可能とします。今までのPro Tools HDの最大ボイスが192chであったことを考えるとHDX1の時点で以前のシステムの限界を超えます。2portのDigilink portの装備により、1枚のカードに最大4台、64ch分のIOが接続可能です。今までのPro Tools HDが弱点としていた部分が更新されています。実際に300Track超のSessionの作成も可能。HDXのカードが2枚あれば無尽蔵にTrackが使えるという安心感を持って作業が可能となります。HDXは発表中のBlack Face I/O群に対応します。192I/O等のレガシーI/Oも対応ではありますが、次期バージョンでのサポート打ち切りがアナウンスされています。(Pro Tools Softwareの完全64bit化による変更)将来のSystemを見越したアップデートの時期に来ています。
# HD I/OやOmniと共に実現するそのサウンドの総合評価
今回AVIDが提唱する総合ソリューションは、多くのエンジニアの良い意味で予測を裏切る大変革となった。「今までのミックス手法が通用しないほどの大改革だ!」との意見が聞かれた。一新されたそのサウンドに戸惑いながらも、そのサウンドの向上に驚きと喜びが滲んでいる。過去の録音したサウンドでも、その違いが確認できる様だ。従来の固定された空間から解放されたこは、サウンドを押し込むべき箱を失ったとも言えるからだ。これは、様々な現場でのラウドネス管理、それに伴うダイナミクスレンジの拡張に対応した、サウンドメイクにも最適と言える。
一昨年にデビューした、新しいHD I/Oのサウンドキャラクター(フラットかつ高解像度)とも合致し、新たなるソリューションを確立することが最適の様だ。将来を見据えた新しい業務ワークフローの確立も同時に求められている。是非皆さんが、いち早く体験いただくことに期待したい。