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特集:進化したAvid New HD I/O:杉山勇司氏インタビュー New HD I/OとPro Toolsの未来(後編)

Avid-Pro-Tools
エンジニアの杉山勇司氏に、業界標準とも言える192 I/Oのブラッシュアップとなる新製品HD I/Oについてお話を伺いました。さらに、Pro Toolsの今後、音楽制作の未来までもを含んだスペシャル・インタビューの後編です!

HD OMNIの評価は?

ROCK ON PRO:ところで、もう一つの新製品HD OMNIはいかがでしたか?
杉山:今回同時にHD OMNIもチェックしました。まず、最も気になる音質ですが、HD I/Oと比べて全く遜色ない音質と言えると思います。同じAD/DAを搭載しているのですから、当然と言えば当然かもしれませんね。今回もまた聴き込んでしまいました(笑)。HD I/Oで感じる解像度の高さは、HD OMNIの特徴でもあると言えるでしょう。
Avid-HD-OMNI
HD OMNIならではのポイントとしては、何と言ってもモニターセクションとヘッドフォンアウトが搭載されたことでしょう。こちらは、X-MONと同等の技術ということなので、HD OMNIに対する力の入れ具合が判ろうというものですね。僕は、特にヘッドフォンアウトの音質が気に入りました。ヘッドフォンアンプにこだわりのある人達にも、納得の音質だと思います。僕のDT-250も充分にドライブしていたので、ユーザーが音量不足に悩むこともないと思います。また、マルチチャンネルのモニターへの対応が充実しているのも、HD OMNIの特徴ですね。ポストプロダクションからの要望をたくさん取り入れているように感じます。
レコーディングにおいて、HD OMNIならではの使い方を考えてみると、ぜひライブ・ツアー先などで使ってみたいですね。その日収録した音源をホテルでミックスとか……。HD OMNIだけで、モニター環境までもばっちり整えられるのだから。でも、寝れなくなるだけかも知れないですね(笑)。
もちろん192 I/Oから乗り換えというのも考えられると思います。より少ない投資で音質向上を狙えるので。ただ、そのまま接続しても音は出ますが(笑)、基準レベル等の作法が少し違うので、求める作業をよく考えてからシステム構成した方が良いと思います。そこは、ぜひ ROCK ON PROに担当してもらって……(笑)。
あと、工場出荷時にはヘッドフォンレベルが0dB、つまり全開になっているので、注意した方が良いかも知れませんね。箱を開けて、いきなりヘッドフォンでモニターすることはないとは思いますが。

注目の新機能HEAT

Avid-Pro-Tools-HD-HEATROCK ON PRO:Ver 8.1の目玉の機能でもあるHEAT。先日のセミナーでもご説明いただきましたが、どのような使用法が効果的と思いますか?
杉山:僕自身も、ミックスのどの段階でHEATをActivateするかについて結構悩みました。どれぐらいドライブして始めるかも同様で、パラメータを振り切った状態でミックスを始めてもうまくいかないんです。この設定はキックにはいいけどスネアには合わないとか。
そこでHEATの調整をしていると、全然ミックスが進んでいかない。 そうすると、トラック毎に調節できれば、という考えにもなると。でもそれはHEATを捉え違えていると思うようになりました。ミックスの最後の最後に、全体の形を変えることなく音の輪郭を出せるエフェクト。EQやコンプをマスターにインサートして、というのは今までも使ってきた手法ですが、最後の段階に行うとどうしてもそれまでの形が変わってしまうものなんです。そういう意味で、HEATは今までにないエフェクトだと思う。そして、HEATが作り出す輪郭の細かな違いを聞けるのが、HD I/Oなんです。

Pro Toolsの未来像

ROCK ON PRO:AVIDに期待する未来…PRO TOOLSの進化だったり、期待はありますか?
杉山:作業をしている内容によって、要望はすごく変わるんですけど……。以前ターゲットモードを搭載してくれと要望を出したことがありましたし。
例えば、今搭載されているプレイリスト画面では、ボイスがひとつしか割り振られていないのでテイクを切り替えても瞬時に入れ替わらないですよね。それぞれにボイスを割り当てるようにしてくれたらきちんとセレクターとして使えるのに、と思っています。
ROCK ON PRO:利便性に対する要望はかなりあるということですよね。
Sugiyama-San杉山:と言っても、ミックスしてる時にはプレイリストなんかいらないな、となってしまうんですけどね(笑)。ミックスの時は、アウトアサインまでドラッグコピーして欲しいんだよな、とか考えるし。あと、グループもLogicで出来ているような、セレクトしたものが一時的にグループ化されるようにもして欲しい。それと、フェーダーの値も、等間隔の数値にならないものか……とか。ログカーブなのは分かるんだけど、Bカーブと等間隔の切り替えがあるといいなと。あとは、ボリュームをナッジできるとか……。
まとめると、もっとデジタルな会社になって欲しい。もうアナログのシュミレーションは終わったでしょ、と。HEATなんかは、やっとデジタルでしかできないことをやってくれたとさえ思っているんですよ。
HEATは真空管の音にしましたとか、テープの音にしましたとかの説明があるけど、例えば実際の現場で、この曲は絶対にNeveの8000シリーズが合うので、それを持ってるスタジオに行ってミックスしたいと言えましたかと(笑)。バジェットの関係もあるし、そのNeveのコンディションもあるし。そして別の曲ではEMIのコンソールが合うからといって、そこに行けたわけでもない。つまりHEATはそういう使い方をするためのものではない、と。コンソールやレコーダーを入れ替えるように、なんていう説明があったと思いますが、僕は賛成ではないですね。つまりNeveの倍音の加算のされ具合がいいと言ってNeveを使ったことはないですし。だから、HEATはコンソールのシュミレートではないと考えて使っています。シンプルに倍音を加える、輪郭を出すといった説明が一番ではないでしょうか。最初はアナログの機材をイメージしたのかもしれないけど、デジタルのミックスに影響を与えられるようになったツールの誕生というのは、デジタルが初めてアナログを超える第一歩なのかもしれないと思ったりもしました。
デジタル、つまりDAWを使うことによって時間軸を操作するということが簡単に出来るようになったんですが、それまでアナログでも出来ていたんですよね。ピッチの修正なんかも、すごい手間はかかりましたが普通にやっていたことであって、そう考えると、デジタルでしかできないことって、相当少ないんですよ。そういう意味で、今回のHEATでやっとデジタルならではのことが出来たんじゃないか、と思うんです。
ROCK ON PRO:チャンネルごとにパラメーターはいじれないけど、チャンネルごとに掛かっているからこそ意味があるのがHEATだという。マスタリングとも違う、そこが面白いですよね。
Avid-HEAT杉山:SoundToysのDecapitatorもあるし、Phoenixも持ってるから、HEATは要らないかなと言う人も、全く違うものだから安心して買っていいよと、言いたいですね(笑)。僕自身も両方持っていて、これを全チャンに入れろっていうこと?と思ったりもしたんですが、全く違うもので安心しました。やっと新しい物が出てきたと。
ROCK ON PRO:音響ハウスでのセミナーでも、プラグインとして捉えている方がほとんどでしたよ。
他に、製品開発への要望とかはありますか?

杉山:すごい大きなところから言うと、Pro Toolsは今後50年間の音楽の責任を担っているという自覚はありますか、ということでしょうか。つまり50年間使えるものにしてもらいたい。今の時点でも、15年前のPro Toolsのデータ使えなくなってますよね、と。これだけ、レコーディング機材のシェアを取り、Pro Tools以外でレコーディングをすることがなくなったのだからこそ、全世界の音楽がそこに乗っかっているということを、自覚してもらいたい。50年後にもあなた達のデータは再生できなきゃならないんですよ、と。だから、僕はプラグインってあまり好きじゃなくなっているんですよ。
ROCK ON PRO:RAWデータは残るけど・・・
杉山:今までもそうだったから、 RAWデータでいいかも知れないですね。でも、SDⅡファイルがそのまま読めなくなっている現状というのはちょっと恐ろしいですよね。せっかくレコーダーとコンソールが一体化していることが売りなのだから、やはり全部リコールされてこそ価値があると思うので、15年前のセッションであろうが、何らかの形でそのまま再現されるべきだと思いますね。
その他だと、さっきも言ったんですが、アナログのシュミレーションは終わったでしょ、と言いたいですね。もっとデジタルでしか出来ないことをやってよ、と。そしてそれが、一番やりたいことに近づくと思っているんです。「もうフェーダーじゃなくていいから」とすら思っています(笑)。
ROCK ON PRO:一部の、それこそ新しい考えの人達なんかは、これからの未来像はコンソールスタイルじゃないんじゃないか、なんていう意見も出てしまうんですよ。そこでなんですが、世の中のニーズの中で今後予測される、AVIDの未来像はどうですか?こんな製品出てくるんじゃないの、とか。
杉山: 夢としてはですね、近い将来に音声認識して欲しい。言葉で指示して、反映される。「Vocal, Up 2dB」とか。もちろん、「それだと大きすぎますよ」とか、コンピューターに余計な文句まで言われたくはないんですが(笑)。リスニングポイントを動かずに最初から最後までミックスをしてみたい。今のシステムだと、どうしても動く状況があるじゃないですか。音声認識にすればそれが可能になるんじゃないかと思っています。
ROCK ON PRO:DAWの未来像はどう考えていますか?
Sugiyama-San-Snap杉山:今までは、どんどんすごいものが出てきて、追いつかなきゃ、という感じでしたよね。でもそれらは、決して想像を超えたものではなかった思うんです。さっきの夢の話じゃないですが、それだって、お金さえあればどうにかなりそうな程度じゃないですか。でも、これからは、コンピューターだ、どうのよりも、人間が大事になると思っています。そういうタイミングに来ている。これ以上の想像はもう出来ないぐらいに、今すごく前の方で空回りしている。だからこそ、余計な方に行きやすい。本来、音楽の進歩に技術の進歩はかかせないものだったんです。なのに、今は技術だけが勝手に進歩して、音楽がついていけていない。
今進歩すべきなのは、実はコンピューターじゃなく人間側だということです。ミュージシャン側や、エンジニア側、感性だったり、実技の部分、演奏能力とか、聞く能力とか、音楽を知ってるとか、そういったものじゃないかな。
言い換えると、現在出来ていることはすべて30年前からの夢が実現しているだけ、とも言えると思うんです。つまり現時点で進歩することがないように感じるとすれば、30年後の夢を考えられなくなっているからだと。DAWやコンピュータに何かしてもらっているのではなくて、人間がその先を示してやらなければならないのだと思います。
ROCK ON PRO:エンジニアとして、今後、こういった部分が重視され、こういった部分は要らなくなる、そういった展望はありますか?
杉山:そうですね、いつも思うのは、しっかりと役割分担しようよ、ということでしょうか。本当はしなくていい役割だった人がミックスをしている、さらに録りまでやっている。そしてそれに気づいていない。アレンジャーが録音までやっていることになるということが、DAWを使った作業で一番の問題かも知れない。DAWになる前は、シンセで作ってきたオケを録音していく、流しこみの日というのがあって、テープとかにシンクかけて取っていくんですが、その時にエンジニアが立ち会って、トリートメントし、初めてアレンジが完成していた。それらの作業をたった一人で全部まかなってしまっている。アレンジャーや作家の人達が、本当にレベルやボーカルまで含めた音質の管理までしたいのか、また他の人の意見や知識が入る余地がない状況というのが、どれほど危険であるかということなんです。
ROCK ON PRO:分業というキーワードですが、浅く広くというか、幅広く数多くのものが消費される様になって、いろんな分業体制がシームレスになり、潰されていっているとおもうんですが。それをもう一回スローな方向というか、分業体制に戻す。もどるというか、一つ一つの質に対してこだわれる環境がまたやってくるか、戻してゆくことが、理想だということですね?
杉山:全くその通りだと思います。

杉山勇司氏 Profile:1964 年生まれ、大阪出身。1988 年、SR エンジニアからキャリアをスタート。くじら、原マスミ、近田春夫&ビブラストーン、東京スカパラダイスオーケストラなどを担当。その後レコーディング・エンジニア、サウンド・プロデュー サーとして多数のアーティストを手がける。主な担当アーティストは、ソフト・バレエ、ナーヴ・カッツェ、東京スカパラダイスオーケストラ、Schaft、Raymond Watts、Pizzicato Five、藤原ヒロシ、UA、NIGO、Dub Master X、X JAPAN、L’Arc~en~Ciel、44 Magnum、LUNA SEA、Jungle Smile、Super Soul Sonics、 広 瀬 香美、Core of Soul、Cube Juice、櫻井敦司、School Girl ’69、dropz、睡蓮など。 また、 1995 年には Logik Freaks 名義で、アルバム『Temptations of Logik Freaks』(ビクター)をリリース。2004年にリットーミュージックより著書「レコーディング/ミキシングの全知識」を出版

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  1. 進化したAvid New HD I/O:杉山勇司氏インタビュー New HD I/OとPro Toolsの未来(前編)
  2. 進化したAvid New HD I/O:杉山勇司氏インタビュー New HD I/OとPro Toolsの未来(後編)
  3. 進化したAvid New HD I/O:Dave Hill HEAT共同開発者インタビュー
*記事中に掲載されている情報は2010年11月15日時点のものです。