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前田 洋介

[ROCK ON PRO Product Specialist]レコーディングエンジニア、PAエンジニアの現場経験を活かしプロダクトスペシャリストとして様々な商品のデモンストレーションを行っている。映画音楽などの現場経験から、映像と音声を繋ぐワークフロー運用改善、現場で培った音の感性、実体験に基づく商品説明、技術解説、システム構築を行っている。

ファイルサーバーと汎用IT技術の融合 〜独 ELEMENTS社 ファイルベースワークフローの中心に〜

ドイツで誕生し、ファイルベースワークフローの歩みとともに成長を続けてきたELEMENTS。映像と音声の垣根を超えたファイルベース統合、トータルのワークフローソリューション、新しいアプローチの提案がELEMENTSが提供する製品群にはある。同社の持つコンセプト、先進性、そしてユーザーへもたらされるメリットを、その生い立ちから機能を一つ一つ紐解いていき、最深部へと迫っていこう。

サーバーを特殊なIT製品にしない

ELEMENTSはドイツの西部、デュッセルドルフに本社を構えるエンタープライズ向けのファイルサーバー専業メーカーだ。ELEMENTSのコンセプトの根幹をなすのは「IT技術との融合」。本来はファイルサーバー自体がIT技術による製品であるずなのだが、エンタープライズ向けのファイルサーバーは導入する現場の用途に合わせたカスタマイズがなされるため、IT技術の産物であるものの汎用的な技術とは相容れない関係に陥っていることも多々ある。

確かに、NLEやDAWといった広帯域かつシビアなリアルタイム性を求めるクライアントアプリケーションがうまく動作するには、よく検討されたシステムアップが必要となり、単純に汎用的な製品を用いていくわけにはいかない。IT技術の最先端ともいうべき分野が、却って一般的なIT技術と親和性が低い特殊な製品分野になってしまっているのが現実である。ELEMENTSがわざわざ「IT技術との融合」という一見なぜ?と疑問を生じさせるようなコンセプトを掲げなければならないような現状があったわけだ。そして、この現実を捉えたコンセプトはユーザーに受け入れられる。2010年ごろからの開発を経て2014年に製品リリースが始まると、ヨーロッパ、アメリカで一気にシェアを拡大した。

日進月歩で進化する汎用的なIT技術、それと足並みを揃えて進化することができるエンタープライズ向けのファイルサーバー。これが目指すべきELEMENTS製品の姿だという。特殊なITの知識を持たずとも、クライアントPCを操作するユーザーが迷いなく簡単に使用できるUIを提供し、汎用的なIT技術に対して恒常的なブラッシュアップを重ねていく。これがELEMENTSの根幹となる製品のポリシーとなっている。

ELEMENTS BLINK / BeeGFS

汎用的なIT技術では満足な性能を得られない、だからこそ特殊な技術を用いる、その結果、製品そのものの特殊性がさらに高まっていく。この流れはファイルサーバーの宿命のように見えるが、「汎用的なIT技術」と足並みを揃えて進化するとしたELEMENTSではどのようなアプローチを行っているのだろうか。その答えとなるが「ELEMENTS BLINK」と呼ばれるBeeGFSを基盤技術としたファイルシステムである。

ドイツで開発されたBeeGFSは、データストレージ内のファイルやデータを管理する根幹を担うファイルシステムの一種で、科学技術計算などのハイパフォーマンス・コンピューティングの分野で活躍する、高度な並列処理を可能とするオブジェクト指向の最新ブロックレベルストレージ・システムだ。その特徴は、実際にデータが格納されているストレージサーバーと、その場所を管理するメタデータサーバーが別にあるという点。一般的なストレージであれば、”ABCD.xxx”というデータがほしいというリクエストを受け取るのはストレージサーバー自体であり、リクエストを受けたサーバーがデータを引き出して転送を行う。そのため、この部分のスペックが高ければ高いほど高速なサーチ、データの引き出しが行えるということになる。

これが、BeeGFSのようなオブジェクト指向のサーバーになると、データのリクエストを受けるのはメタデータサーバーになる。クライアントはそこでデータのありかを教えてもらい、それを直接取りに行くという仕組みになる。1人の超優秀な受付係にリクエストをすると必要なデータを持ってきてくれる、というのが従来のファイルサーバーの動作イメージ。一方のBeeGFSは、複数の受付係が並んだカウンターでリクエストを伝えると、データの場所を教えてくれるのでそれを自分で取りに行くというイメージだろうか。

この超優秀な受付係も、さすがに1人でこなせる仕事量には限界がある。つまり、リクエストが集中するとパンクしてボトルネックになってしまうのが従来型のサーバーである。それを解消するのがオブジェクト指向の考え方だ。案内を受けた後は、それぞれのクライアントPCが直接データを取りに行くため、並行して受けるリクエストに対してのパフォーマンスが向上する。



📷NASと同一の筐体に「Media Library」と呼ばれる強力なMAMなどの機能を追加した、ELEMENTSの主力ともなる製品。その名の通り、ONE=1つですべてを行うことができるマシン。処理負荷の高い動作を行わせる場合には、外部にWorker Nodeと呼ばれるPCを増設することで処理分担を行うことも可能。

📷ELEMENTSのフラッグシップモデル。NVMe SSDの搭載により驚異的な速度を発揮。その速度は70GB/sを超え、一般的に入手可能なネットワークインフラの速度を凌駕する。4K作業も楽々こなす、まさにモンスターストレージ。容量は、300TBと600TBの2種類。とにかく速いストレージが欲しい、という方はぜひとも候補に加えていただきたい。


📷IBC 2025で発表された最新機種。BOLTと同様にNVMeを搭載した超高速ストレージ。従来のBeeGFSではなくCeFSを採用したスケールアウト型のストレージとして登場している。スモールサイズからスタートし、高速かつ大容量のリクエストにも応える製品。製品単体での速度はBOLTに譲るが、スケールアウト型の拡張性と冗長性にメリットを感じるならこの製品を選択となる。

📷ハンドキャリーもできるNASストレージ。16DriveのSSDもしくはNVMeを搭載することができ、撮影現場などで活躍するストレージとなっている。ONEと同様「Media Library」機能を持つため、現場で撮影したデータをすぐにプロキシ作成して、外部からプレビューできるようにするといった芸当が行えてしまう。

ELEMENTS BLINKが解決する課題

それでは、なぜ一般的なファイルサーバーでシステム的に優秀なオブジェクト指向の手法が取られていないのだろうか。それは、システムが複雑になってしまうことがひとつ。また、メタデータサーバとやり取りをするための専用のアプリケーションなどを介在させないと、クライアントPCからファイルのやり取りができないといった問題があったためである。

まず、システムに関してを見ていく。従来はデータを置くためのストレージエリア、それを管理するためのサーバーPC、この2つががあればファイルサーバーは成立するのだが、オブジェクト指向ではさらにメタデータサーバーが必要になる。これを、ELEMENTSでは1つのサーバー筐体内で同居させることに成功している。サーバーOSのディスクと別にメタデータサーバー用のディスクが用意され、例えば、ELEMENTS ONEではOS用のディスクが2台、メタデータ用ディスクが2台、そしてOS / メタ共用のホットスペアが1台という3重化されたシステムとなっている。十分な安全性を確保したうえで、1つの筐体でサーバーOSとメタデータサーバーの共存が実現されている。

もう一つの課題であるクライアントPCからのデータのやり取りだが、ここに用いられているのがELEMENTS BLINKと呼ばれる画期的な技術だ。ELEMENTSクライアントソフトをPCにインストールすれば、ELEMENTS内部のワークスペースは通常のネットワークドライブと同じようにマウントされ、Mac OSであればFinder、WindowsであればExplorerから直接やり取りすることができる。

実に当たり前に見える動作なのだが、この裏側で実はとてつもなくすごいことが行われていたりする。

FinderやExplorerで見ているデータは、PC内のものではなくELEMENTSのストレージ上に存在する。つまり、単にファイルへアクセスするだけでも、実際にはメタデータサーバへの問い合わせ、データの書き込み、読み込みといった動作が必要になる。この一連の動作をユーザーが違和感や遅れを感じることなく、ELEMENTSのクライアントアプリケーションではOS標準機能のようにやってのけるわけだ。使用しているユーザーからは見えないところで、BeeGFSで動作するファイルサーバーへの超低遅延かつ高速なアクセスを実現、メタデータサーバーを経由してのアクセスであることをユーザーが感じることは一切ない。しかし、その内部ではあたかも当たり前のように高度な処理を実施している、これがELEMENTS BLINKである。

そして、汎用のSMB、CIFSによるアクセスも可能だ。少ない台数であればSMBなどによるアクセスがボトルネックになることは無いが、接続台数が増える場合にはSMB GATEWAYサーバーを用意することが推奨されている。やはり、BeeGFSをSMBプロトコルに変換するためにはそれなりのパワーを必要とするようだ。なお、BeeGFSを採用するモデルは、ELEMENTS ONE / BOLT / CUBEの3機種。ELEMENTS NASはXFS、ELEMENTS GRIDはCeFSを採用している。

また、エンタープライズサーバーとして必須機能とも言えるAvid Nexisの互換モードとなるBIN Locking Modeも備えており、Avid Media Composerでの共有ワークフローも実現可能である。オープンエンドでのファイル書き込みモードあり、追いかけ編集にも対応できるなど、最後発のサーバーらしく、これまで市場で受け入れられてきた便利な機能はほとんどが実装されていると言っていいだろう。

ルーチンはWorkflow Automationで構築する

次に、汎用ITとの融合についての話をしたい。このポイントをわかりやすく表現してくれている機能が、Workflow Automationである。このWorkflow Automationは、ファイル操作だけではなくAPI call、Python,Shell Scriptに対応し、一つ一つのコマンドをJobというモジュール構造とした条件分岐によるオートメーションが組める。これを用いて外部のアプリケーション、クラウドサービスといった様々なサービスと柔軟に融合し、その機能をELEMENTSで一元管理することが可能となる。

つまり、実際に操作を行いたいデータを管理するファイルサーバー自身が、ファイルベースオートメーションの中核となる。言葉で整理してみれば至って当たり前の流れであり、これが効率的かつシンプルなシステムであることに異論は無いだろう。例えば、昨今話題になることが多いAI処理に関してもクラウド上でサービス提供されているものが多いが、それらのサービスが外部からのAPI call、Python,Shell Scriptに対応していれば、ELEMENTSで連携したワークフローを構築することが可能だということだ。

クローズドに独自開発されたAIエンジンを使うメーカーも多いが、ビッグデータに基いた学習速度という側面を考えると、Chat GPTやGoogle GeminiなどIT最大手が取り組む汎用AIの進化に追いつくことは不可能だろう。こうした汎用AIのような日進月歩のIT技術を適材適所に組み合わせる、むしろ用いてしまうことで、効率と精度をさらに最適化できるというのがELEMENTSの考え方となる。画像認識、QCなどファイルサーバーと連動させることにより作業効率を向上させられる可能性のあるものは多い。ユーザーのアイデア次第で、どのような用途においても最適解にたどり着くことができる柔軟性を確保しているということが、汎用IT技術と組み合わせて高められるこの機能のアドバンテージである。

実例を見ていこう。ファイルを移動する、Shellを実行するといった一つ一つのジョブはモジュールとして管理される。その各モジュールを条件分岐によりつなぎ合わせて、一つのタスクに取りまとめることができる。そのタスクの開始は、ウォッチフォルダーに新規ファイルが追加されたタイミングでも、スケジュールでの実行でも、ユーザーの操作によるトリガーでも設計が可能だ。さらに、メール発報などの通知機能やFTPによるデータ転送などもジョブモジュールとして作ることができる。もちろんELEMENTSアプリでログインすれば、Mac OS Finder、Windows Explorerの右クリックメニューにELEMENTSのロゴとともにタスクが追加され、ユーザーはここから事前に設計された様々なタスクを実行することも可能だ。これらを組み合わせてルーチンワークを構築してしまえば、確実で精度の高い成果がオートマチックで、かつ継続的に得られるようになる。

Media Library、当たり前が快適に動くMAM

ここまで管理者やシステム設計者にとって重要となる技術的な側面を述べてきたが、実際にサーバーでファイルを扱うユーザーにとって、ELEMENTSのメリットを最も感じられるのはMedia Libraryと呼ばれるMAM機能だろう。まずは、その基本的な一連のユーザビリティを振り返っていこう。

ELEMENTSはユーザーが用意するトランスコーダーとの連動も可能だが、標準機能としてFFmpegによるトランスコード機能を搭載している。MAM機能にとってのスタートポイントは、このトランスコーダーによるプロキシデータの生成であり、Media Libraryに登録されたメディアは即座にプロキシデータの生成が行われる。こうして生成されたプロキシは、なんとWebブラウザ上でプレビューできてしまう。しかも、クライアントPCを選ばずiOS、Androidなどからのプレビューも可能であり、ELEMENTSが持つ機能の大きな特長となっている。プロキシデータのストリーミングにより実現されるこの機能はWiFiなどでも快適に動作する。さすがに20台以上のクライアントが同時接続する場合はストリーミング用のサーバーを別途に要するが、5台程度のアクセスであれば全く問題ない。なお、プロキシ生成時にはウォーターマークや、タイムコードの焼き込みも行うこともできる。

プロキシデータのストリーミングでデータを共有された各ユーザー側は、コメントを書き加えたり、画像に対してマークアップを行うなど、特定の部分に対しての指示を出したり、特定のユーザーにメンションしてコメントを戻したりと、ワークを進めていくことができる。特にコメント入力はフレームに対して行うことができる仕様で、タイムコードの指定は必要ない。メンションされたユーザーには指示が届いたことが通知される。この通知をクリックすると、対象ファイルのコメントが打たれたフレームに直接飛ぶことができる。また、プレビューにより表示されているファイルをOS上に表示させることもワンボタンでできる機能もある。

これら一連の流れは、ブラウザベースのストリーミングによるプレビューのシェアであるため、VPNにより仮想的に同一ネットワーク上にする、もしくは外部接続用のDMZサーバーを加えることでインターネットを超えてのアクセスも可能である。さらに、サーバーアクセスの柔軟性を見ていくと、特定ファイルを見るためのリンク発行ということも簡単に行える。このリンクにより提供されるプレビューに対しては、かなり細かいアクセス制限をかけることができ、閲覧のみ、コメント許可といった操作権限から、パスワードによるロック、リンクの有効期限、視聴回数制限に至るまで厳重なコンテンツ管理が行える。

MAMということでメタデータによるアセット検索機能ももちろんある。外部AIとの連携による自動でアセットへのメタデータ追加、同様に文字起こし(Speach to Text)などと連動した事例もあり、今後登場するであろう様々なAIによる自動メタデータ付与により、さらに進化する可能性を秘めた部分だ。例えば、画像に表示された文字をテキストとして起こす、顔認識による演者情報などを得る、技術の進化によりこのようなことも実現できる可能性がある。

カット編ならば、NLEを使わずとも

Media Libraryが持つ、もう一つの特徴的な機能がRough Cut Editor、複数ビデオトラックを使用したカット編集がブラウザ上で行えるという強力な機能だ。その後のNLEへのファイル受け渡しにはAAF、XMLといった汎用フォーマットを用いるため、これらのファイルに記述できない編集は行わず、カット編集に特化した機能である。

ここでカット編集を行ったタイムラインも、単独のファイルと同様にプレビューをシェアして、コメントを書き込む事ができる。ここで書き込んだコメントは、NLE上ではタイムライン上のタグとして残り、それまでのやり取りを確認しながら編集作業を続けられる。コメントはテロップ指示、エフェクト指示といった編集向けのものだけでなく、SEの指示や選曲指示などもタイムラインに残してそれを共有する格好となるため、タイムコードをメモして都度メールで指示を出す、というようなこともない。編集点を保ったままのAAFなどでの書き出し以外にも、一本化しての書き出しも可能である。つまり、編集室に入る前にカット編を終わらせて尺を決めるところまでであれば、NLEを使わずともELEMENTSに接続可能なPC、iOS機器、Android機器から場所を選ばずに作業が行えてしまうということだ。

そして、これらのMedia Libraryのプレビュー機能は、Adobe Premiere、Blackmagic Design Davinci Resolve、Avid Media Composerであれば、それぞれのソフトウェアに統合することができるプラグインが提供されている。例えば、Premiereであれば、パネルのひとつとして完全に統合された環境、それ以外のDavinci、Media Composerであれば、フローティングウィンドウでMedia Libraryが統合されるといった具合だ。それらに用意されたアセットは、もちろんドラッグ&ドロップでタイムラインへ追加が可能である。これらの機能だが、MAMによくあるユーザー数の制限はない。ユーザー数によるライセンス発行ではなく、ELEMENTSの追加機能としてMedia Library機能を追加すれば無制限のユーザーがこの機能の恩恵を享受することができる。このMedia Libraryの機能は、ELEMENTS ONE / BOLT / GRIDへオプションライセンスの追加で実装可能だ。


オブジェクトストレージをOSにダイレクトマウントさせるという革新的なテクノロジーと、適材適所の考え方に則った汎用ITとの融合。これにより、独自性の強い製品として市場に認知されてきたELEMENTS。ファイルベースワークフローの中核を担い、新しい時代を作り上げる可能性を持つ。自由度の高いオートメーションはまさにその象徴。ユーザーが抱いている当たり前にできてほしい、ということを汎用ITと融合したテクノロジーで快適に実現できる製品と言えるだろう。


 

*ProceedMagazine2025-2026号より転載

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*記事中に掲載されている情報は2026年02月19日時点のものです。