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丹治 信子

[ROCK ON PRO Product Specialist]ノンリニア編集とファイルベースワークフローを普及すべく、これまでAvidおよび、Autodeskでビデオセールスに従事。プリセールスからサポートまで、エディターに寄り添ったコミュニケーションがモットー。ROCK ON PROのメンバーとなってからは、新しい分野で互いに刺激を与え合いながら活躍している。

映像編集におけるカラースペースの重要性 〜簡単に正しい色を見る方法〜




唐突ですが、あなたは映像編集に使うモニタの色、気にしてますか?
今回は正しい色で映像編集を行う方法をご紹介します。

映像編集におけるモニターディスプレイの重要性

映像編集といえば、テレビや映画産業が全盛だった時代、テレビはビデオカメラで収録、そして映画はフィルムカメラで撮影し、その後はどちらもポストプロダクションにある編集室を使って編集をすることが当たり前でした。それ故、ほとんどのポストプロダクションには、マスターモニタと言われる「正確な色」を表示できるデバイスがあり、決められた放送基準に適合した映像を制作することができます。

現在は、YouTubeや、Netflixなどのオーバーザトップコンテンツ(OTT)、Web広告、デジタルサイネージなど、テレビ以外で動画コンテンツを目にする機会も大幅に増え、動画を制作する際、さまざまな事情から、必ずしもポストプロダクションで作業をするとは限らなくなってきています。つまり、色をきちんと管理する環境が整っていなかったり、専門のエンジニアが不在だったりする状況下で、映像制作せざるを得ないという場面が増えつつあるということです。そういった中、自分が制作する映像の色を正しく表示しながら編集し、確認するには一体どのようにしたらいいのでしょうか。いくつかのポイントを説明したいと思います。

コンピュータ単体で編集すると、何が問題なのか? 〜同じ色域でもガンマ値が異なる〜

最近の映像編集には、コンピュータを使用するため、必ずコンピュータモニタを使用します。ほとんどの人がお使いのコンピュータディスプレイのカラースペース(色域)はsRGBですが、一般的なビデオ編集ソフトでは、ビデオカラースペースで編集を行っており、画像をビデオ規格であるBT.709で表示しています。そうなると、BT.709のカラースペースのものをsRGBのモニタで確認することになるため、モニタリング時の色問題が発生します。もちろん、見た目はかなり近いですが、そのまま作業すると、編集時の色と仕上がった映像の色にどうしても違いが生じてしまいます。

この時実際にどのような違いが生じているのでしょうか。ビデオのカラースペースはITU-R BT.709(国際電気通信連合)なのに対し、コンピュータディスプレイはsRGBです。sRGBはBT.709をもとに1999年IEC(国際電気標準会議)で標準化された色空間です。図1にあるように、BT.709とsRGBの三角形は全く同じですが、同じ色域でもガンマが異なり、BT.709はガンマ2.4、sRGBはガンマ2.2です。コンピュータモニタ上で編集を行うということは、BT.709からsRGBへの変換が生じ、主に色の明るさとシャドウ部分のディティールに差が出てしまいます。これは編集アプリケーションの問題ということではなく、単にsRGBのモニタでは本来のBT.709を表示することはできないということです。

図1 各規格が表示できる色域(CIE1931色空間上)

この馬蹄形の図は人の視覚をモデル化したもので、内側の三角形はそれぞれの規格を配置し、その三角形の中にある色のみが各規格で表示できる色になっています。
DCI-P3とは、米国の映画制作会社で構成されるDigital Cinema Initiatives(DCI)で定められたデジタルシネマ規格で、映画撮影に使われるカラーフィルムの色域に対応し、広範囲の色域を表現できます。BT.2020は、2018年12月に放送開始となった4K放送で使用されている規格です。DCI-P3よりもさらに現実に近い色を再現できることができます。


また、最近のコンピュータディスプレイ(MacのRetinaディスプレイやHPの DreamColorディスプレイ)などは、sRGBやDisplay P3、その他の広色域をカバーしているものも多いため、問題ないと思いがちですが、さまざまな色域をカバーするようになったモニタには、ColorSync(Mac)Color Management (Windows)などのOSに組み込まれているモニタプロファイルが介在するため、正確なモニタリングができていると言い切ることはできません。
例えば、プレビュー画面としてセカンドモニタを用いて、PCからDisplayPortまたはHDMIを経由してモニタリングをさせることがあります。ケーブル1本でつなげて、コスト面でも魅力的ですが、以上の理由により、これも厳密には正しい色を表示することはできていないのです。

ポイント1 〜映像用のインターフェースを利用しよう!〜
図2 編集ソフトからビデオI/Oを経由して映像を出力することで的確な色を表示できる

こういった問題を解決するためには、Blackmagic Design Davinci ResolveやAVID Media Composerのようなビデオ編集ソフトのアウトプットをビデオインターフェースを介し、ビデオ信号にして表示することが一番確実なのです。

Avid Artist DNxID
Avid Artist DNxIP
Blackmagic Design UltraStudio Monitor 3G


そして、そのアウトプットを確認するには、BT.709や、必要であれば今どきの規格(BT2020やDCI―P3など)をカバーすることができるキャリブレーション可能なマスターモニタまたはリファレンスモニタが必要です。

EIZO ColorEdgeシリーズ
Blackmagic Design SmartView 4K


ポイント2 制作環境・視聴環境の明るさにも注意!
図3 人間の目は周囲の明るさに影響される

また、視聴する環境と制作する環境の明るさにも気を使いましょう。図2をご覧ください。左下の黒が一番暗く、右上の白が一番明るく見えていませんか。実は、この一番下の黒は全て同じ暗さであり、一番上の白も全て同じ明るさです。人間は明るさを周囲の状況に応じて判断するためにそのように見えてしまいます。周囲が暗いと、より明るく見え、周囲が明るいと、少し暗く見え、その見え方は対照的です。できるだけ、視聴する環境に近いライトの下で確認することも重要なポイントです。


コンピューターから高品質な音声を入出力するためにオーディオインターフェースが存在するのと同様に、映像の入出力用にもビデオインターフェースが存在します。加えて、編集する環境の明るさにも充分に気を使い、編集中の色と書き出し後の色に差異が出ない様に注意しましょう。


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*記事中に掲載されている情報は2022年06月27日時点のものです。