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Pro Tools|HDX ~稼働し始めたイノベーションプロダクト~

Proceed Magazine 2012 Summer

Pro Tools|HDX

~稼働し始めたイノベーションプロダクト~

遂に登場した業務標準次世代プロダクト。それがPro Tools 10 & HDXである。Digidesign社とAVID社のブランド統合を含む10年の月日を経て行なわれた大改革の結果、AVID映像編集作業とのワークフロー共存性を高め、10年先を見越したエンタープライズな音声作業を担うプロダクトとして登場した点を高く評価したい。現場にいったいどのような変革をもたらすのか、その歴史から技術、機能、そしてワークフローまで追ってみたい。

STEP1

新しいHDXの登場

まずは機能的なポイントを探って行こう。オーディオワークフローにおいて、本質的クオリテイーを決定づけると言っても過言ではないPro Tools。業界標準として多くのユーザーの声を受け、様々な革新と機能改善が行なわれている。まず、基本になるサウンドエンジンが徹底して拡張された。32bit Floating Processにより、現実音のすべてを表現することが出来るほどのキャパシティーをもったMixingEngine。同じく32bit Floating Processが採用された次世代互換プラグインAAX、多様なストレージへの対応や、レスポンスの向上を目指したDiskAccessの更新など、多岐に渡る改良が加えられている。TI社製DSP18基を搭載、CPUパワーの利用効率化、FPGA(*1)によるパワーアップが、音質の向上とワークフロー効率化の最大化に大きく貢献している。

その特徴を機能をダイジェストで上げてみよう。

・1991年 Pro Tools Ⅰ(NuBus DSP)
・1994年 Pro Tools 3
(TDM Plug-inのオープン化)
・1997年 Pro Tools|24(24bit対応)
・1998年 Pro Tools|24MIX
(DSPの強化)
・1999年 Pro Tools LE
(RTASの登場)
・2002年 Pro Tools HD
(192kHzまでのHi-Sample対応)
・2003年 Pro Tools HD Accel
(DSPの強化)

Pro Toolsの歴史

◎強化されたHDX Card
・TI製DSP 18基搭載
・32bit Floating Processによる内部処理
・64bit Application対応
・AAX Plug-inへの対応
・2基のFPGA搭載
◎MIXING ENGINEの最大品質化
・64bit Floating Mixer
・最大ボイス数768track(カード3枚時)
◎Disk Access革命Ram Cash機能を搭載
・Disk Cashによる超高速レスポンス再生
・ネットワークストレージ・RAIDストレージ対応
◎Clip Gainによる新しいオートメーション
・波形表示もReal Timeに変化
・異なる解像度のファイルの共存
◎EuCon Phase 2
・Pro Toolsほぼ全てのコマンドを網羅。その数500個
・Channel Strip Plug-inでSystem5との完全な一体化
◎AAX(AVID AUDIO eXtension)の全て
・64bitアプリケーション化
・DSPとCPUのアルゴリズム統合
◎Pro Tools 10で追加された新機能
・5.1ch Down Mixerの搭載
・Satellite Linkの拡張
・24時間のセッションに対応

Pro Tools DSPエンジンの歴史

次に、Pro Tools|HDX CARDの系譜を記すと、すべてはTDMとCPU発展の歴史であることがわかるだろう。懐かしく思われる方も多いと思うが、これらの歴史を経て遂に次世代システム”HDX”への大変革が行なわれたわけだ。これは64bit Computingの有効性がPro Toolsに正式に導入されるファーストステップへと踏み出したと言えるだろう。TDMシステムをリリースし、DAWのメインストリームに上り詰めたPro Tools|HDシステムの優位性、利点、とは何か?広くユーザーに受け入れられクリティカルなエンタープライズ用途にまで浸透した理由は何故か?

TDMプラットフォームの躍進



1991年、Digidesign社(現AVID)はDAWのプロセスパワー、安定度、スループット・レイテンシーの向上のため、専用設計されたDSP Cardの採用を選択。そして登場したのがPro Tools Ⅰである。今も引き継がれる汎用CPUと専用設計DSPの組み合わせという特徴により、当時、専用機のみによって行なわれていた業務用PCMオーディオの世界に、圧倒的な低コストでその機能を実現するプロダクトとして登場。その低価格とOS上で稼働する汎用アプリであったことから、個人のハイエンド制作者から業界標準へと普及が進んでいったことも、Pro Tools TDMシステムの特徴と言えるだろう。革新的だったのは、TDM Plug-inフォーマットをオープンとし、様々なサードパーティーから高い品質のプラグインが登場したことだ。当時高負荷だったReverb等のプロセスにTDMが有効だったのは必然だ。この概念は、現在すべてのDAWオーディオプロセッシングに大きな影響を与え、WAVESやMcDSP、AutoTune等の誕生につながった。今回、AAXに進化したことで、この本流を更に発展させる注目のポイントになることは明らかだ。その後もPro Toolsは世代を更新するごとにパワーを強化し、クオリティと信頼性、業務ワークフロー改善への対応を進め、業界の中心的存在に育った。その歴史におけるシステム設計の先見性を見るにつけ、満を持して登場したProTools 10 & HDX、AAXに期待をせずにはいられない。

徹底解剖 HDXカードのハードウェアとは



DSPプロセスの向上に伴うパワーアップとともに、高い発熱が生じる。HDXは、その冷却のための空冷ファンが印象的な、重厚なカバーが付いた。その基盤表面にはなんと従来の2倍となる個数の18個のDSPが整然とレイアウトされ鎮座。従来のHD Accel CardのMotorola製DSPPresto(2ケ搭載)及び321(7ケ搭載)の合計9ケからTI(Texas Instruments)製TMS320C6727B-350の18ケに改められ動作周波数も220MHzから350MHzに。内部処理も24bitから32bitfloatに精度・能力が更新。また、1Chipあたりのメモリ容量も従来は、各DSPの1次キャッシュ16KB及び、搭載されたDSP 9ケ中4ケに外部の512KBのメモリを搭載。HDXでは18ケの各DSPに対しそれぞれ16MBの外部メモリを実装。都合、HDXでは1枚のカードあたり288MBのメモリ搭載を実現した。実は、更に進化している。2つのFPGA Chipを搭載しVOICEの管理、I/Oのマネージメントを行なうように設計変更。これにより、従来のDSP消費によってVoiceを確保するTDMシステムと異なり、1枚のカードで256ch分のVoiceを確保。従来2~6チップを占有されていたVoice用に割り振られたDSPの部分も全てPlug-inに活用し、夢の広大な作業領域が確保される。その広大なプロセスを低いレイテンシーで実現することは、現在のCPUだけでは業務向けに行なうことはやはり難しいと言えるだろう。

広大なHDXカード 有効に機能させるAAX Plug-inの登場

この新しいHDXカード上のDSPで動作するために開発されたAAX DSP Plugin。64bit Application化への変更となる。Pro Tools|HDXへの移行が行なわれたあかつきには、20年の歴史があるTDM、RTAS等々レガシーなフォーマットとの決別となる(特別なジョイントドライバへの期待もあるが)。次世代の64bit Computingへの最適化、CPU Nativeプロセスと独立HDXプロセスが同一プログラムという現実は、Process Depthの違い(TDM 48bit fix、RTAS 32bit Float)を取り払う大改革だ。Tipsだが、TDMとRTASは発表時期が違う。1994年TDMがOPEN化されPlug-inという世間の流れが定着。1999年にPro Tools LEと共にCPU ProcessのPlug-inであるRTASを登場。時期の違いもからも解るように、TDMとRTASは内部処理精度、プログラム自体も全く別のものとなっているのが現在までの流れだ。AVIDが今回行なう、アプリケーションプログラム自体の64bit 化とEffectProcessの32bit Floatへの統一は、未来を占う重要なロードマップだ。まさに、その統一規格がAAXと言うことになる。すべての環境で32bit Floatの処理が行なわれることを目指しているが、AVIDでは、エンタープライズ向けのシステムを、Hybrid Systemと呼ぶ。これは、CPU Native Power & HDX DSP Powerを持った、Pro Tools|HDXのソリューションのことである。



AAX Formatへの対応表明中のメーカー各社

STEP2

トータルソリューションの飛躍

飛躍#1:処理能力

現実に起きるTDMから飛躍 HDXの恩恵とは?

HDXのアドバンテージは膨大なパワーを、質、安定性、低レイテンシー、ワークフローのスピードアップへと導く。HD2 Accelシステムでタイトであったセッションが、HDXであれば1枚のカードで余裕を持って処理される。従来のMIXであれば、残りのPowerを気にすることなく効率的に作業が出来る力だ。これは今まで以上に多くのトラックが存在する、長尺の作品の仕上げに大きな恩恵をもたらす。もちろん従来非常に処理の重いPlug-ins等(Revibe、Reverb One)を、多用するシーンでも活躍は間違いない。体感上もHDXのDSPパワーは、従来のシステムと比較して4倍と言われている公称値と一致する。様々なブラッシュアップの結果さらなるパワーを感じるほどだ。例えば、標準で付属するEQ3-7Band。従来のシステムでは1DSPあたり27個(mono@48kHz)、HDXでは81個(mono@48kHz)が実行可能。この処理能力の向上は、クロック数の増加幅(220MHz>350MHz)を大幅に上回る。






これは、DSP自体のプロセスが24bitから32bit Floatに向上したことと、最適化により実現された。今後プログラムの最適化が進むことにより、どこまでのパワーの向上を得られるのか?AAX DSPプラグインにこれから生まれ変わる従来のTDM/RTASプログラムはどれほどのパワーを持つのか? 今後に、大きな期待の持てるポイントだ。同時に品質も32bit Float処理され広大なダイナミックレンジにより高められている。更に、VOICEの処理がDSPからFPGAに移り、DSPに余裕が生まれた。HDXでは1%もDSPを使用せずに256Voiceという今まで以上のVOICE数を獲得。タイムスロット数の増加等が同時に行なわれ大規模なセッションの物理的なハードルを押し下げ、新たなる境地へ導くことを可能としている。

飛躍#2:音質

1.Mixing Engineの進化!





Mixing Engine Processの全てを一新。もちろん、32bit Float Processが導入された。中枢の一新は全く新しいサウンドを生み出した様だ。従来の24bit fixであるTDM bus、最終サミングのみ48bit fix処理が、全てのProcessが32bit Floatとなり、最終Summingに於いては倍精度の64bit Floatを実現している。論理値とはいえ、24bitではS/N約144dBであった物が、32bit Floatでは1000dBを超える領域に突入しているインパクトは、信じがたい事実である。『内部プロセスでの歪みが発生しない』、『高解像度のデータ保持』と言った夢が実現している。そのサウンドは、透明感、立体感、解像度の向上。飽和感、ギャップ感、と言った、感覚を生み出した。この感覚は、まさに原音をそのまま心地よく聞いている耳の感覚に近づいたと言えるのではないか。同時に限りない自由なサウンド加工プロセスも可能にしている。

2.HD I/OやHD Omniと共に実現するそのサウンドの総合評価

今回AVIDが提唱する総合ソリューションは、多くのエンジニアの良い意味で予測を裏切る大変革となった。「今までのミックス手法が通用しないほどの大改革だ!」との意見も聞かれた。一新されたそのサウンドに戸惑いながらも、そのサウンドの向上に驚きと喜びが滲んでいる。過去に録音したサウンドでも、その違いが確認できる様だ。従来の固定された空間から解放されたことは、サウンドを押し込むべき箱を失ったとも言えるからだ。これは、様々な現場でのラウドネス管理、それに伴うダイナミクスレンジの拡張に対応した、サウンドメイクにも最適と言える。一昨年にデビューした、新しいHD I/Oのサウンドキャラクター(フラットかつ高解像度)とも合致し、新たなるソリューションを確立することが最適の様だ。将来を見据えた新しい業務ワークフローの確立も同時に求められている。是非皆さんが、いち早く体験いただくことに期待したい。

飛躍#3:AAXプラグインの先進性

1.内部処理32bit Floatによる恩恵(互換性)

AAXプラグインはDSP処理も、Native処理も同一のプラグイン・アプリケーションを使用するのが特徴だ。DSPかCPUかという違いはあるものの、理論的には同一の結果をもたらす。この結果、HDX環境とNative環境の高い互換性をもたらす。AAXの先進性は内部処理解像度の32bit Float化。内部での解像度は約1500dBとなる。この解像度の拡張はデータレベルで言えば飽和感の解消、そして内部処理でのデジタルクリップが解消される。その個別の広大は領域と処理は、最終出力(マスタートラック)がクリップしていなければ歪むことはないということだ。コンプレッサーやEQでのゲインの設定もクリップを意識することなく設定できる。なんと素晴らしいことだろう。また、ハードウェア機材のシュミレート・プラグインなどは、レベルを絞ると狙ったサウンドが得られないことが往々にしてあったが、AAXでの解像度とレンジはこれすらも解決した。

2.ワークフロー上の更新ポイント(レイテンシー、インサート時)

実際にAAXプラグインに使用してみると、まず驚かされるのがプラグイン・インサートを行った際のレスポンスの良さ。プラグインをインサートした際に音が途切れることからも解放される。例えば、100トラックにEQをインサートする場合、延々とタスクの進捗を示すバーを眺めていた時間が、わずか2~3秒というレベルにまで短縮された。この小さな積み上げが、Pro Toolsの作業時間を短縮させる大きな改善点につながっている。また、作品性にも影響がある。思いついたアイディアこと無くプラグインが立ち上がり、クリエイターの閃きに呼応したレスポンスを実現することが可能となった。また、注目のパラメータがある。AAXプラグインはRTAS、TDMでは当たり前に存在したプラグイン・ディレイがついに『0』となった。驚くべき進化である。公式には全てのプラグインのディレイが『0』にはならないようだが、サードパーティー含め現状でリリースされているプラグインで筆者が確認した限りでは全てが『0』となった。遅延によるグルーブの変化、位相の崩れといった問題。今までも遅延補正エンジンを使用したりとクリエイターはこの問題と戦ってきた。しかも、Pro Toolsの遅延補正エンジンは、先読み型ではなく純粋にディレイである。ディレイ量が増えれば増えるほど波形描画グラフィックと音の出力にずれが生じ違和感を生んでいたが、その問題もあっさりと解消している。これまでの固定概念からユーザーを解放する素晴らしく革新的な進化と言え、注目すべきポイントだ。

STEP3

ワークフロー改善の第一歩

快適、超高速レスポンスディスクキャッシュ機能



大規模化するPro Toolsセッションを扱う上で、レスポンスの向上は最も時間を節約できる項目である。行なった作業とその確認という、最もプリミティブかつ頻繁に行なわれる作業のストレスからユーザーを解放するのがディスクキャッシュ機能だ。これは、開いたセッションで使用されている全てのオーディオファイルをコンピュータのRAM上に展開、ディスク・アクセスを低減してストレージへの負担と互換性を改善し、真にレスポンスの向上を図るものだ。ディスクキャッシュは「作業したものを確認する」という制作上で最も頻繁に、しかも必ず行なわれる作業に対する時間を確実に削り取る。これは全てのワークフローに貢献する操作性向上の礎とも言えるだろう。創造的な作業において、ストレスのないレスポンスは新たなる閃きすら生むかも知れない。なお、この機能はスタンドアローンのPro Tools 10では動作せず、HDバージョンもしくはComplete Production Tool kitの追加が必要となる事を追記しておく。

ディスク・アクセスの革新がもたらす、データの冗長性とネットワークへの道



ディスク・アクセスにおいても大きな革新があった。ミッションクリティカルな現場で求められるデータの冗長性、ネットワークへの対応を果たすべく従来のストレージに対する制約が解放されたのだ。Pro Toolsが遂に対応したネットワーク・ドライブへの道である。PCの世界では常識であるネットワークを利用した、冗長性のあるドライブへの共有作業に対応することで、安全性の高い、より効率的なワークフロー構築への可能性は更に拡がる。シンプルなシステムとして、アーカイブ、データ共有という観点からNASでのシェアリングが可能。編集・ミックスデータの共有であれば、PC用の簡易的なNASでもデータの共有が行なえる。しかし、ミッションクリティカルな録音を行なうのであれば、リアルタイムに生成されたデータ全てを書き込めるだけの速度が必要となる。



この場合はAVID ISIS5000(1Gbit Ethernetポート接続)サーバー型ストレージ等の高性能なシステムが求められる。同時録音数、複数のクライアントからのアクセスがどれ程なのかシステムトータルでのアクセス解析を行ない、それに見合った商品を選択することが導入へのキーポイントとなる。また、映像編集ソフトや画像処理ソフトの共存を考慮した設計も必要とされる。ネットワーク・ドライブへの対応と共に、冗長性の確保されたRAIDドライブへの対応も果たした。従来は複数のHDDを用意して、作業が終わるたびにバックアップを取るのが常識で、長時間の作業後に更にデータコピーが必須な状況であった。これは現場において大きなタイムロス、人的負担となっていたが、ワークディスクに冗長化ドライブ(RAID1、5、6、60等)を使いデータの安全性を確保、更に自動で別ストレージに定期的にコピーすることで一貫したデータ管理が可能となる。まずはRAID1導入からでも、その安心感を体験してもらいたい。

ネットワーク利用による作業が新しいワークフローを生み出す

特定のサーバーによるネットワーク共有だが、一度でも共有ドライブでの作業経験があればその利便性を明白に感じていることと思う。Pro Toolsに限定すれば、セッションファイルを別にして全てのユーザーが同一のオーディオファイルを利用した共同作業が可能である。最終データの作成時には強力な「セッションインポート」機能によってプラグイン、オートメーションデータ等と共にセッションのマージを行なえる。例えば、アフレコで声優(キャラ)ごとに編集担当を付け、複数人数で1つのセッション作業に当たる等ネットワークならではの活用法が考えられる。更に「選択トラックを新規セッションとしてエクスポート」というコマンドが用意され、ステムを別セッションとして書き出すことが可能となった。ネットワーク共有でのワークフロー確立のための大きなポイントといえるだろう。このネットワークによるRAIDストレージ運用は、複数のスタジオとワークフロー別のスタッフを持つ企業にもっとも重要なソリューションとして検討されると思われる。

Pro Toolsの最新Solution

EuCon Phase 2



Pro Tools 9.0.6で正式対応をはたしたEuConプロトコル。Pro Tools 10では、さらなる連携強化が図られ、EuCon Phase 2へと進化を遂げた。Artistシリーズ、System5といったコントロール・サーフェースとの連携強化により、一段とスムースなフェーダーリモート、複雑なコマンドへの対応が図られた。System5-MC / MC pro / Artist Controlといった、Softkeyの活用可能な機種では拡張されたEuCon Phase2により500を超えるメニューコマンドを操作可能。もちろんマクロを組むことも可能なのでアイディアのままにありとあらゆる操作を自分だけのオリジナル・キーにアサインできる。ドライバ、ファームウェアの最適化により、従来のHUIの256stepとは比較にならない4096stepの解像度を持つフェーダー・リモートはまさに専用機といえる優れた操作性を提供。実際、Pro ToolsがEuConへの正式対応を果たしてから、System5へのHybridオプションの追加が目立つ。

Pro Tools 10では新しく”Channel Strip”プラグインが追加となっている。これは、System5のChannel Stripで使用されているEQ / Dynアルゴリズムをそのままプラグイン化した高品位な物。「空気までも再現する」と絶賛されたsystem5のサウンドコア部分の完全移植となる。Pro Toolsで”Channel Strip”を使用してsystem5にEuCon接続を行うとsystem5のDSP-coreで処理を行っているのと同様に、EQ curveやDyn Curveがコンソールに表示される。Hybridエンジンで並べたPro ToolsのStripとsystem5のStripが全く同じGUIとノブのアサインで操作できる、ミキシングエンジンの違いを意識することなく、まさしくHybridな環境を提供。いままでのICONシリーズと同レベルと言っても過言ではない優れた操作性により、次のリファレンスシステムの最有力候補と言って良いであろう。この新しく生まれ変わったHybridシステムは、一度ハンズオンで実際に試してもらいたい機能だ。

System5

前述のEuCon Phase 2により脚光を浴びるAVIDフラッグシップ・コンソールsystem5。その優れたサウンドは、言葉を尽くしても伝えきれない透明感のある特徴的なサウンドを持つ。Pro ToolsのHDXシステムのサウンドの変革、その特徴である透明感と奥行きのあるのあるサウンド、そしてsystem5のサウンドの方向性は合致し、相乗効果により更なるクオリティーを獲得することは想像に難しくない。EuConによる先進のHybrid Systemを中心に、今後の高解像度がキーワードとなる世界で、その存在価値が高まることは間違いない。人間工学に基づいたコンパクトなレイアウト、フェーダーサイドに用意されたメーター等、一度使うとその操作性の魅力に気づくはず。ポストプロダクションスタジオだけでなく音楽スタジオでも導入の検討の始まるこのコンソール。Pro Tools 10とHDXの魅力を引き出す大きなツールとして、AVIDのソリューションの向かう方向性を明確に提示している。

Video Satellite

もう一つ、Pro Toolsを取り巻く環境で変化の顕著なソリューションがある。それがVideo Satelliteだ。更なる大規模システムに対応すべくクライアントの接続台数が5台から12台へと増加。双方向でのサンプル精度の同期とリニアなレスポンスというメリットをどの様な規模の現場でも享受することが出来る。Pro Toolsを並列して複数台使用する映画のダビングステージでもVideo SatelliteとSatellite Linkの組み合わせにより柔軟なシステムアップが可能。同期の双方向性はシステム規模が大きいほどメリットがある。マスターマシンがダウンした際にもサブのマシンで何もなかったかのように作業することが、サーバーを用意したファイルベースシェアの環境と共に構築することで実現可能。Video SatelliteシステムのクライアントとなるMedia Composerに搭載されたAMAにより、現存するほぼすべてといって良いほどの種類のVideo Fileの展開が可能となったことにより、運用の柔軟性を備え、死角のないシステムへ相互に成長を遂げている。実際の導入も加速度的に進むVideo Satelliteシステムはワークフローに大きな革新をもたらす、次世代のスタンダードとしての機能を手に入れ進化を果たした。



まとめ



AVIDより登場した、Pro Toolsの最新ソリューションであるPro Tools 10とHDXを、ディープに解説させていただいた。多くの機能更新が行われており、HDXソリューションがこれからの音声制作現場に新しい風を送り込む提案、未来を解放するプロダクトであることは間違いない。サウンドはもちろん、この操作性、レスポンス、そういった部分もプロフェッショナルな作業に対応するためアップデートがなされている。膨大な現代の制作ワークフローにおいて、ひとつひとつ更新が、日々使用する現場のスタッフにとっては作業時間の短縮につながるメリットとなる。信頼性、耐久性、冗長性、安定性、拡張性、様々な角度から見ても個人から大規模エンタープライズまでのワークフローを成立させる唯一のAUDIO WORKSTAIONとなった。そしてなにより、体力、ストレスからの解放につながり、真のマンパワーが高い作品性に向かうことは喜ばしい限りである。

Pro Toolsを使い尽くす
先進のサーバーソリューション



gb labs SPACE

・Max Performance : Up-1550MB/s /Down-1550MB/s
・内蔵Drive数 : 16Drive636
・内蔵ドライブの容量 : 16TB or 32TB or 48TB
・RAID LEVEL : RAID-6
・拡張性 : EXシャーシ最大5台まで拡張可能
・対応ファイルシステム : NTFS & HFS+ Journaled
・接続プロトコル : SMB,CIFS
・物理的な接続方式:1GbE or 10GbE
・無料クライアント数 : 無制限
・最大クライアント数:無制限
クライアントにドライバ・ソフトの必要ない優れた汎用性を持つ高速サーバー。smb / cifsといった汎用性の高いファイルシステムを使用することにより、柔軟且つトラブルの少ないワークフローの運用が可能です。スペックに関しても、16Driveで1550MB/Secと十分な速度を確保。1GbEでの接続時に測定値で90MB~100MBとなります。上位にSSDを使用したモデルもあり、こちらは、更に高速な3000MB/sec。LTOベース/HDDベースのバックアップ・システムそして、可搬性のあるコンパクトなシステムと、充実のラインナップを誇ります。


AVID ISIS5000

・Max Performance: 非公開
・内蔵Drive数 : 16Drive(内一台Hot Spare)
・内蔵ドライブの容量 : 16TB or 32TB
・RAID LEVEL : RAID-5
・拡張性 : ISIS5000システム内に最大8台まで
・対応ファイルシステム : 独自システム
・接続プロトコル : 独自システム
・物理的な接続方式:1GbE or 10GbE
・無料クライアント数 : 無制限
・最大クライアント数:最大90クライアント
トータルでのワークフローを提案し続けるAVIDのエントリー・サーバー。同社の推し進めるInterplay MAMにも対応した、非常に堅固なシステム。完全独自システムでチューニングされ、このクラスでは珍しいHot-Spareを用意するのもAVIDのこの製品に対する位置づけが伺えます。上位のISIS7000及び、二アライン・サーバーであるISIS2000と統一されたGUIでの管理、そして、Interplayとの真の協調性を持つAVIDでのInterplay Total Workflowに無くてはならないコアシステムとなります。もちろん、Pro Toolsにも正式対応。動作検証の行われている唯一のサーバーでもあります。


SNS EVO

・Max Performance: UP-800MB/s, Down-800MB/s
 @2x 8Disk Pools
・内蔵ドライブの容量: 1TB or 2TB
・RAID LEVEL: RAID-0/5/10
 DiskPoolingにより4/8/12/16個のHDDを任意で
 RAIDグループに指定できます。
・拡張性:EXシャーシ1台
・対応ファイルシステム:NTFS & HFS+ Journaled
・接続プロトコル: AFP, SMB, SFTP, and NFS
・物理的な接続方式: Fiber Channel / 10GbE / 1GbE
  – simultaneous iSCSI and Fiber
・無料クライアント数:4クライアント
・最大クライアント数:無制限
従来より、Pro Toolsで動作の確保されているNetwork Systemをリリースし続けるSNS(Studio Network Solutions)社のフラッグシップモデル。SANをベースにしたiSCSIを利用し、高速性を確保します。Fiber-Channel Baseの高速接続とEthernetでの接続が共存できるのも特徴の一つ。開発の歴史が長いだけに、多種多様なクライアントとの連携の実証、検証が済んでいるのも導入に際しては安心感につながることでしょう。10GbEにも対応し、次世代の広帯域ストリームにも対応可能な順応性を併せ持ちます。


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*記事中に掲載されている情報は2012年07月12日時点のものです。