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MADIの新しい境地を切り拓く RME HDSPe MADI FX


Proceed Magazine 2012 Summer

MADIの新しい境地を切り拓く RME HDSPe MADI FX

RMEから今秋の登場が予定されているHDSPe MADI FX。3つのMADI I/O(オプティカル×2、コアキシャル×1)、AES/EBU×1、アナログ・モニタリング出力×1の計390チャンネルの入出力を搭載した本製品は、その名の通りMADI(Multichannel Audio Digital Interface)を技術の根幹としたPCIeカードです。MADIは、その登場から20年以上も経つデジタル・オーディオ伝送の規格ですが、現在でも幅広い分野で使用されさらに成長を続けています。その間、AVB、Dante、Ravenna、Ethersound、Cobranetなど、さまざまな規格がMADIに代わるものとして提唱されてきましたが、現在においてもMADIは多チャンネルのオーディオ信号をコンバーターやインターフェイス間で同時に伝送するための標準規格として定着しています。それはなぜなのか。本稿ではまずMADIそのものについて製造メーカーの視点から解説した上で、MADIの未来を切り拓くRME HDSPe MADI FXについての詳細をご紹介します。

MADIの技術背景

極端な例ですが、CDプレーヤーとサラウンド・レシーバーをオプティカル(光)・ファイバー・ケーブル(TOSLINK)で接続すれば、それでほぼMADIを伝送する準備が完了したと言えます。CDから再生されたすべてのサンプルは、4bitのヘッダ情報と4bitのフッタ情報によりサブフレームを形成して送信されます。これらの付加情報により、レシーバー側は信号を正しく解釈することができ、チャンネルごとにトラック・マークやCDテキストなどのメタ情報を送受信することができるようになります。
CDプレーヤーなどの民生機器ではこのデジタル接続をS/PDIFと呼びますが、これはプロ用の規格であるAES/EBUのコンシューマー版で、1bit分の違いをのぞき基本的なデータ構造は同じものです。



BNC(同軸)ケーブル



オプティカル・ケーブル



オプティカル・ケーブル・ドラム

MADIは上記のシンプルな例から発展した規格です。前述のサブフレームを64個分並べて、通信のスピードを上げ、冗長性のための情報を持たせたものがMADI信号なのです。Audio Engineering Societyによって10番目­に発表された標準化白書のため、AES10とも呼ばれています。MADIは完全にオープンな規格なので、すべてのメーカーが無償で利用することができます。通信速度は125Mbit/sに達し、その1/5以上はエラー補正のために使用されます。当初は75Ωのコアキシャル・ケーブルが推奨されていましたが、後にオプティカル・ケーブルでも使用できるようになりました。いずれのケーブルでもまったく同じ情報が流れます。コアキシャル・ケーブルは、一般的にワードクロック信号をやり取りするのに使用されるBNCコネクターで接続します。
オプティカル・ケーブルは、コンピュータ・ネットワークの技術から生まれたもので、コネクターにはいくつかの種類があります。MADIを実装している多くのメーカーでは、SCコネクターを採用しています。
ケーブルの最大長は、コアキシャルでは100mまで対応しますが、それ以上になる場合はオプティカル・ケーブルが推奨されます。RME製品は、一般的なマルチモードのオプティカル・ケーブルで2kmまで問題なくMADI信号を送受信することができます。
2kmものケーブルが必要なのか?と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、例えばスポーツ中継だと、スタジアムから場外の駐車スペースの端に停めた中継車まで1km以上のケーブルを取り回す必要性が頻繁に生じますので、それほどの距離であっても確実に動作できるのは大きなアドバンテージなのです。
MADIが開発された当時はまだデジタル・テープの機器が広く使われており、それらの機器では可変のサンプリング・レート(バリピッチ)が使用されていたため、最初のリビジョンでMADIは56チャンネルのオーディオ信号と、48kHz +/- 12.5%のサンプリング・レートをサポートしました。さらに、2001年にはMADI-X(MADI-Extended)が正式に導入され、48kHzで64チャンネル(96kHzで32チャンネル)の伝送に対応しました。56チャンネル・モードは、現行のいくつかの製品でも引き続き使用されています。例えば、DiGiCoのデバイスではMADIのチャンネルをあえて56チャンネル・モードに制限して、残りの帯域をリモート・コントロール用に使用しています。
ここまで紹介した中で、MADIには、コアキシャルとオプティカルの2つの接続タイプ、56チャンネルと64チャンネルの2つのチャンネル・モードがあり、4通りの組み合わせがあることが解りました。このそれぞれの組み合わせは、その違いを吸収する機材を導入しない限り互換性がありませんでした。それを初めて実現したのが、2002年にアナウンスされたRME初のMADIデバイスであるADI-648(ADATとMADIを相互に変換するコンバーター)でした。また、MADIは本来の規格上はワードクロックを別途必要としており、実際にアクティブなジッター抑制機能を持っていない機器ではワードクロックなしではまともに機能できませんでした。しかし、RME製品は、MADIの実装にあたってSteadyClockという独自の技術を開発・搭載し、入力されたMADI信号から抽出したクロックのジッターを2ナノ秒以下まで抑え込むことができるため、RME製品ではワードクロックを別途必要としません。
このようにMADIはRME製品の登場によって初めて実用的な技術として定着し、普及が進みました。


MADIのネットワーク

マイク・プリアンプやコンピュータ用のインターフェイスを含むほとんどのMADI機器は、MADIの入出力を1系統しか持っていませんので、これらのデバイスは基本的にデイジーチェーンで接続されます。よくあるケースとしては、ステージ上の8チャンネルのマイク・プリアンプを1本のデイジーチェーンでMADIを使用してレコーディング・ルームまで引き込むようなシーンが上げられます。この場合、最初のプリアンプがマスターとなって1チャンネルから8チャンネルまで、2台目が9チャンネルから16チャンネルまで・・・というように設定されます。RME製品では、MADIの入出力ごとに3サンプル分のレイテンシーが生じますが、ディレイ補正によりそれぞれのプリアンプの遅延分を合わせることができます。



シンプルな接続例

例えばRMEのMicstasyを使用した場合、MicstasyのA/D変換によるレイテンシーの12サンプルとそれぞれの機器間の3×7=21サンプルで、計33サンプルのレイテンシーとなります。言い換えると、48kHzで64チャンネルのマイク入力が、しかも2km離れた地点まで僅か33サンプル(約0.7ミリ秒)まで抑えることができるのです。このようにオプティカル・ケーブルを使用すれば物理的にも経済的にもコストを削減することができ、しかも高い音質が得られますが、一方で、例えば誰かがケーブルを誤って切断したりと、耐久面での不安を抱く方もいるかも知れません。そのため、RME製品にはMADI出力をつねにオプティカルとコアキシャルに分割して提供し、受信側がどちらか片方で信号の欠落を感知すると自動的にもう一方に切り換えて受信を続ける仕組みが導入されています。現在では他のメーカーもこの方式を採用し始めています。
このマイク・プリアンプの事例では「それぞれのプリアンプのゲインや他のセッティングをリモートで変更するにはどうするのか?」という課題も想定されます。前述のように、いくつかのメーカーはMADIの規格を一部改変して、独自にリモートコントロール用の情報を組み込んでいますが、実際にはそのような独自実装は必要ありません。MADI規格では標準で各チャンネルにユーザービットと呼ばれる各メーカーが使用できるデータ領域が定義されています。48kHzの場合、1チャンネルごとに48,000bpsの情報をやり取りすることができるため、31,520bpsしか必要としないMIDI情報を余裕で取り扱うことができるのです。RMEはこの機能を利用して1つのMADIチャンネルのユーザービットにMIDI信号を埋め込んでいます。これによりMADIのオプティカル・ケーブルをとてつもなく長いMIDIケーブルとして使用することも可能になりますし、コンピューターやミキサーとの間でリモートコントロール情報をやり取りすることもできます。RMEのMIDI Remoteというソフトウェアを利用すると、RME製のすべてのMADI機器をMADIケーブルを経由してリモートコントロールすることができます。RMEではこれを「MIDI over MADI」と呼んでいます。



より大規模なMADIシステム例

上記は非常にシンプルなMADIの使用事例ですが、実際には、64チャンネルをバスとして取り扱うようなより複雑なシステムを構築することも可能です。例えば、リング接続でデジタル・ミキサーから受けた64チャンネルの入力を、64チャンネル分のマイクまたはライン入力を足し込んでPAシステムへ送る、といったシステムの場合に、スプリットするためにミキサー・デスクへ戻したり、プリアンプのアナログ出力を使用する代わりに、ブリッジをインストールするだけで流れてきた信号をレイテンシーを増加させたり信号を改変することなしにスプリットしてステージ上へ流したり、MADIインターフェイスを搭載したコンピュータへ送ってバックアップ録音したり、レコーディング・コントロール・ルームや場外の中継車へ送ったり、といったさまざまな接続方法で使用できます。
MADIを使用すれば、ライブ・コンサート中にノートPCで64チャンネルをレコーディングして、すぐにサウンド・チェックのためにプレイバックさせることもできますし、MADI信号に他のソースからのストリーム(たとえ異なるサンプル・レートであっても)を混ぜ込むことも可能です。


MADIの未来 〜HDSPe MADI FX〜



HDSPe MADI FX

RMEはFrankfurt musikmesse 2012にて、HDSPe MADI FXを発表しました。これは、3つのMADIポートと、それぞれのポート間で自由にルーティング/ミキシングできるマトリクスを提供する、PCおよびMac用のPCIeカードです。RMEが描くシナリオでは、この製品により例えばコンピュータを中心にしたスター型ネットワークをMADIで構築するなど、MADIの可能性をさらに拡張します。それに加え、MADI FXカードはTotalMix FXをMADIのマルチチャンネル環境へ融合し、比類なきデジタル・ミキシング環境を実現します。64×3のMADI信号に含まれる各チャンネルは、個別にエフェクト(イコライザー、コンプレッサー、オートレベル、エクスパンダー)をかけることができ、他のソースからの信号もミックスしながら、カード上の194の出力チャンネルに自由にルーティングされます。このように、MADI FXは、単にチャンネル数が多いだけではなく、複雑かつレイテンシーの抑制や高いサンプリング・レートが要求される環境でも重用される製品となることを目指してデザインされています。さらに、MADI FXの内部ミキサーはiPadやiPhoneからもリモートコントロールすることが可能です。


Hammerfall Pro Audio Core

HDSPe MADI FXは、膨大なオーディオ・チャンネルであっても確実に低いレイテンシーを実現します。新しく開発されたオーディオ・コアであるHammerfall Pro Audio Coreを実装し、これにより、システム負荷を抑えながら従来のMADIフラッグシップ・モデルと比較して3倍のチャンネル数を処理します。
さらに、使用していないチャンネルは自動的に非アクティブにして、処理能力や帯域幅を無駄に消費しないように設計されています。例え400近いチャンネルを扱えるシステムであっても、2チャンネルしか再生しないのであれば、一般のステレオ・オーディオ・カード以上のシステム・リソースは消費しません。


新しいTotalMix FX

HDSPe MADI FXに付属するTotalMix FXは、膨大なチャンネルであっても淀みなく実用的に取り扱うことができます。4096チャンネルのミキサーであるMADI FXのTotalMix FXは、Fireface UFXのもの(1800チャンネル・ミキサー)とまったく同じレベルでスムーズに動作し、より新しく高速になったDSPによってさらに多くのEQやコンプレッサーが使用できます。



HDSPe MADI FXに付属するTotalMix FX画面

TotalMix FXのレイアウトも新しくなりました。 特に、不要なチャンネルを非表示にすることにより、膨大なチャンネルの環境でも効率よく操作できるようになりました。Hide Setup機能は、例えばドラム・ミックスとフル・バンドの設定をシンプルなマウス・クリックで瞬時に切り換えることができます。
EQ、コンプ、リバーブ、エコーといったエフェクトは192kHzのRMEエフェクト・エンジンで動作し、カード上でレンダリングされます。これにより、レイテンシー・フリーのモニタリングが可能で、使用中のDAWソフトウェアおよびCPUへ負荷を与えません。


さらに進化したMADIルーター

TotalMixの統合されたマトリックス機能により、HDSPe MADI FXをパワフルなMADIルーターとしても使用できます。他の一般的なルーティング・ソルーションとは異なり各チャンネルをばらばらにルーティングさせることが可能で、さらに各ルーティングのレベル設定も行えます。TotalMixの比類なき柔軟性はシステムの設計に伴う制約をことごとく払拭し、あらゆるニーズに対応します。




HDSPe MADI FXの入出力

■製品仕様
・194入力/196出力(390チャンネル)
・TotalMix FX(192kHzエフェクト・エンジン)
・MADI I/O 3系統(オプティカル2系統、コアキシャル1系統)
・AES/EBU(ブレイクアウト・ケーブル)
・ステレオ・アナログ出力(モニタリング用)
・ワード・クロック端子
・MIDI I/O(MADI経由) 3系統
・MIDI I/O(ブレイクアウト・ケーブル)



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*記事中に掲載されている情報は2012年07月09日時点のものです。