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技術解説:注目されるラウドネスを知る

Loudness_top

今、放送業界注目のラウドネスを現場の声から読み解きます。番組間のレベル格差をなくす、更には、デジタル放送時代のダイナミックレンジを有効に活用するために規格化が進んでいます。サラウンドCM研究会の村越氏のテキストで、現場としてのラウドネスの必要性、有効性をご確認ください。
(こちらの記事は、ProceedMagazine 2010Summerより掲載しています。掲載当時の情報となります。)


◆◆◆ラウドネスとは?◆◆◆

LoudnessCurveラウドネス(Loudness)を辞書で調べると大声とか騒々しいと訳されています。

ラウドネスとは音の大きさのことを示します。人の感覚が感じる音の強さで物理量ではなく心理量です。少し音の勉強をされたことのある方なら「等ラウドネス曲線」なんて言葉も聴いたことがあるかもしれません。

フレッチャー&マンソンの等ラウドネス曲線は有名ですが、その後ロビンソン&ダッドソンによって精密な測定が行われISO 226として規格化されました。その後規格改訂がありISO 226:2003 になっています。等ラウドネス曲線とは、周波数を変化させたときにラウドネスが同じとなる音圧レベルのプロットが等ラウドネス曲線です。

又、エネルギーが2 倍になってもラウドネスは2 倍になりません。心理的な感覚量は、刺激の強度ではなく、その対数に比例して知覚されます。100 の刺激が100 増加して200 になる感覚と、200 の刺激が200 増加して400 になる感覚は等しいというウェーバー・フェヒナーの法則があります。気になる方は「ラウドネスやウェーバー・フェヒナー」でweb 検索してみてください。


◆◆◆TVCM うるさくないですか?◆◆◆

ところで皆さんTVCM うるさいと思いませんか?番組からCMになったとたんうるさく感じることありませんか。

私もポストプロダクションのエンジニアですからコマーシャルのMA作業を頂くことがあります。そうすると「大きく作ってね」とか「もっと大きくなる?」なんてプロデューサーや監督から言われることがあります。そんな時は「放送用の納品基準があって・・・・・なんです。」と説明しています、そうすると「局から帰ってこないぎりぎりのレベルでね」なんていわれます。最近は大きく作るのは当たり前になっているのでこんなやり取りは無くなってきています。テレビ放送が始まって約55年経ちますが、ずっと同じことをやっていると思います。後処理(ポスプロ)
作業を行って放送局に納品するようになってからは大きく放送して注意を引きたいと考えているのだと思います。

実はこのことは視聴者にとって見れば迷惑な事でリモコンの音量ボタンから手が離せません。

EBU の実験では3dB 音量が上がると50% の人が音量を下げたくなるという結果があります。ある調査ではCM は番組より約3.6dB 大きいと報告されています。このことは過半数の人がCM になると大きく感じるので音量を下げていると言うことになります。


◆◆◆ラウドネスによるレベル管理◆◆◆

このような放送の現状が良いはずがありません。これを解決するためには今までの基準では解決できないことは明白です。デジタル放送に切り替ろうとしている今、放送の音声の基準を変えられるチャンスだと思っている人々が多くいて、新しい基準を作ろうとしています。これはITU-R BS.1770「音声プログラムのラウドネス測定アルゴリズムとトゥルー・ピーク音声レベル」で規定されているアルゴリズムで測定したロングターム・ラウドネス値により基準が作られるようです。

音量のラウドネス管理は地上波デジタル放送開始及びアナログ放送停波に伴い大きく取り上げられているチャンネル間・コンテンツ間などの音量差問題を解決する手段として有望視されています。 劇場用のトレーラーやシネアドでは1994 年から、Leq(m) という等価騒音レベルでの音量測定方法採用し、85Leq(m) という規定値内に収めることが必須となっています。アナログ音声の場合にはサウンドトラックの物理的な振幅制限も加わります。又、ダブレポートという報告書を提出しなければなりません。この結果音量感のばらつきが減少しました、映画の詳細は日本映画テレビ技術協会の予告篇等音量適正化委員会(http://www.mpte.jp/html/trailer/)を参照して下さい。

今回作ろうとしている新しい基準は家庭でテレビ放送を見るときにCM になると音量が上がってうるさくなって音量を下げ、番組に戻ると今度は小さくて音量を上げるというようなことをしなくてすむ為に策定されようとしています。これを放送局毎ではなく、全ての放送局で運用出来れば、チャンネルを変えても音量差が少なくなります。ご存知の方もいらっしゃると思いますが、民放とNHKではデジタル規準レベルが2dB 違い、この差が民放とNHK の放送における音量差を生んでいます。今回新たに作られる基準では、ラウドネスで運用する方向ですのでデジタル基準レベル差の問題も解消され、国際共同制作や海外への番組販売の場合にも有効です。アナログ放送では送出段で過変調の抑制を目的としたリミッター/ コンプレッサーが必要でしたが、デジタル放送ではその必要はなくなります。このことは家庭での視聴環境で音量差が増大することを意味します。

実際に計測したデータでもデジタル放送のほうがより音量差が拡大しています。単にデジタルオーディオと言うと広い周波数レンジ、大きなダイナミックレンジ、高忠実再生と言うのを思い浮かべると思いますが、放送の場合その全てが有効に働くとは限りません。ダイナミックレンジが大きいと言うことは家庭での視聴時に基準音量を設定するのが難しくなります。

一般的にはニュースや天気予報などの一般的なアナウンスが音量調整の基準になると思いますが。映画やドラマのひそひそ声の会話は聞こえにくくなり、逆に爆発のシーンや音圧至上主義で作られたCM はとても大きくなり音量操作をしないといけなくなります。特に深夜放送の場合家族や隣人に迷惑が掛かる事が予想されます。ここでも重要なのは電気的に大きいと言うことよりもラウドネスが大きく影響します。最初に書きましたがラウドネスは心理値です。ラウドネスという放送界にとっては新しい評価方法で音声レベルの管理をすることがテレビ音声にとって良いことで、視聴者にとっても音量のばらつきから解放されるので価値のある事です。

又、私の所属する「サラウンドCM 研究会」もラウドネス問題に取り組んでいきたいと考えています。
研究会の詳細はhttp://www.1991.co.jp/surround_cm/ でご確認下さい。


Proceed Magazine 2010-2011に掲載のラウドネス解説記事はこちら>>>

ラウドネス関連資料ダウンロードサイト

JPPAのHP>>ポストプロダクション技術情報をクリック

EBUの技術書類はこちらからダウンロードできます。(英文)

ITUは登録制です。無償で3通の勧告書を入手可能。(英文)

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*記事中に掲載されている情報は2010年11月30日時点のものです。