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ROCK ON PRO

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特集:進化したAvid New HD I/O:杉山勇司氏インタビュー New HD I/OとPro Toolsの未来(前編)

Avid-Pro-Tools
エンジニアの杉山勇司氏に、業界標準とも言える192 I/Oのブラッシュアップとなる新製品HD I/Oについてお話を伺いました。さらに、Pro Toolsの今後、音楽制作の未来までもを含んだスペシャル・インタビュー!

HD I/Oの印象、評価

ROCK ON PRO:HD I/Oに初めて触れたときの印象はどうでしたか?
杉山勇司氏(以下、杉山):見た目シャープになった分、期待いっぱいで聴きました。銀色も新鮮でしたが、今となってはどうなのって感じになりますね(笑)。
ROCK ON PRO:ちょっとプラスチックな感じとか?今回は、鉄かな?メタルかな?と思わせるところがありますよね。
Avid-Pro-Tools-HD-at-Studio杉山:そうですね。いい音させますよって感じがして良いと思います。
最初にHD I/Oを使ったのは、9月10日にROCK ONでおこなったセミナーの準備のための1週間。その次が今回だったんですが、前回はセミナーで話す内容の準備や、せっかくの機会なのでといちからミックスをすることにしたり、さらにはHEATも使わなければならない…などとあわただしい感じのチェックでした。
もちろんHD I/Oに差し替えた瞬間は音の違いに「おっ!!」と思ったのですが、ミックスに集中してしまったということもあり、あまりじっくりと評価する時間が取れなかったのが実際のところだったんです。
今回は、すでに一度HD I/Oを聴いているというのもあるのでしょうか、最初に素材を単純に並べて再生したとき、思わず聴き入ってしまいました。急に、今まで聴いたことのない聴こえ方がしたように思います。「こんなに違うんだ」と実感したのは、ミックスが仕上がった時よりも、バラバラの素材の時の方でした。
ROCK ON PRO:率直に、音質評価に関してはどのようなコメントですか?
杉山;いろいろな音質の評価の仕方があると思うんですけど……。例えば、抜けが良くなったとか、低域が豊かになったとか。今回何が一番かというと、音像がすごくくっきりと結ぶようになった、というのをあげたいですね。立ち上げただけの素の音を、そんなに聴きこみたくなるっていうのはどういうことだと思って……。
ROCK ON PRO:そうなんですよね。一つ一つの音がすごくはっきりとしていると弊社スタッフの評価でもあります。
杉山:でも、そのはっきりっていうのが、低域を削ればそう聞こえるし、高域を上げれば輪郭がくっきりとするとかあるんですが、そういう変化ではないんです。他に影響を与えずにくっきりするというか、また歪んでくっきりするというのでもなく、単純に言うとこれが技術の進歩かと思いました。
ROCK ON PRO:192I/Oと比較して,どう感じられましたか?
杉山:元々192に対して不満があったわけではないんです。
ROCK ON PRO:全然なかったですか??
Avid-Pro-Tools-HD杉山: サードパーティーのインターフェースもほぼ全て試しているんですが、それでも192に対しての不満というのはないですね。反対に他社のものの方が、「低音を削った音づくりすれば、すっきりするよな。」といった感想を持ったものが多かったように思います。さらに192 I/Oの値段もふまえて考えると、これに誰が文句があるのだろうか?と思うわけです。
他にも、192 I/Oはトリムができるけど、他社のものは出来る商品が少ないとか、そういうことからも192 I/Oを使わない理由はないと思っています。中身に関してもこの値段で作れるものじゃないと思っていましたし、音を変えたいのだったら、僕だったら、ケーブル変える。例えば、電源ケーブルだったり、D-Subケーブルだったり。
ROCK ON PRO:ちなみにそのケーブルはどこの製品ですか?
杉山:自作です(笑)。ケーブルはAETです。それでずっと満足していたんですけど、HD I/Oを聴いて、「この満足を超えるものが出せるんだ」と感じました。しかも、さっき言ったようにわざとではなく、あくまでも自然に。
ROCK ON PRO:周波数特性とかに違いは感じませんでしたか?
杉山:それはありません。もちろん、チップセットが違うので、当然フィルターの違い等あるのでしょうけど。
ROCK ON PRO:ということは、位相、定位や、f特などの音質評価。それらは、無色で、正しく正常進化というか、ブラッシュアップしたという感想ですか?
杉山:そう思います。より音が見えるようになってきているのは、そういった進化のおかげだと感じます。
ROCK ON PRO:192I/Oとのキャラクターの違いは?
杉山:それはあまり感じていません。
ROCK ON PRO:素材は192 I/Oで作ったものをHD I/Oでミックスする場合を想定しての質問ですが、作業上192 I/Oから変更して生じる違いというか、危険は感じますか?
杉山:危険までは感じませんね。もちろん音の出方は違うのですが、キャラクターの違いとして感じてはいないので、違和感なく作業出来ると思っています。
Avid-New-HD-IO-with-ICON
ROCK ON PRO:ミキシングにおいてはいかがでしょうか?
杉山:ミックスしている最中は、出ている音に対して反応をしているので、やりやすいとか、やりにくいということはありませんでした。ただ出来上がったときに、音が思った位置に来ているというか、想像通りの仕上がりになっているというのはありますね。やはり位相感がいいというんでしょうか。僕は、位相という言葉はとてもオカルト的な要素があると思っていて……。部屋の反射などによっても変わってしまうものであって、それこそ、座っている位置を少し動いただけでも変わってしまうものなので。
サウンドがくっきりするというと、それぞれの楽器が裸になってしまって困るといった考え方があるかも知れないですが、HD I/Oはそういうことにもならない。音があるべき姿で再生されるということなんです。そう気付いてから、なぜHEATを作ったのかわかった気がします。なるほど、こうやって混ぜたくなるサウンドなんだなと。
ROCK ON PRO:相対的にいうと仕事の時間は早くなる可能性がありますね。スパッと判断できる。
杉山:そう思います。
ROCK ON PRO:迷いがなくなる。
杉山:そうです、いいことですよね。さらには、サウンドが見やすくなることで、あやふやにしてしまっていた部分が減るのはいいことでしょうね。また、これは「後でなんとかなる」かどうかの判断もしやすくなるでしょうね。
ROCK ON PRO:サウンド面に関しての総合評価というのは?
Sugiyama-San杉山:HD I/Oの音が、本当にいい音だと認識をして欲しいと思います。好みの問題ではなくて。レコーディングにおいていい音を求めるということは、常に第一義にあるべきだと再認識するいい機会だと思います。
ROCK ON PRO:そうですよね、今まで以上に良く聞こえますからね。
杉山:しっかりと聞こえるということが、どんな意味を持つか、もう一度わかるというか、そうしたら、全部がもう一度好循環するんじゃないかという夢まで見てしまっています。
安かったり、手軽さだったり、便利さを優先して、音が少しくらい悪くったって関係ないというか、むしろ悪いことじゃないくらいの考え方が普通になってきてしまっている。今まで僕らエンジニアは、すごい手間がかかるけど少しだけ音が良くなる、そんなことをずっとやってきているんだけど、それを思い出して欲しいというか。HD I/Oを使うと、これだけ違いが聞こえちゃうんだよ、と。
ROCK ON PRO:それは、お金に余裕さえあれば絶対に買い換えたほうがいい、ということでしょうか?
杉山:もう一度音楽が好きになる。それくらいの価値があると思います。
ROCK ON PRO:192 I/Oと並行運用、今日は192 I/O、明日はHD I/Oみたいなことをする必要はない?
杉山:僕はその必要を感じません。デファクトスタンダードと成っている企業が、言葉の通り「進化」させてきた製品だからというのもあります。他社の製品を置き換えるのではなく、自分自身を進化させるための製品なので、自分たち自身でしかできない「進化」をしっかりしたんだなと感じています。
ROCK ON PRO:メリットしかないと?
杉山:そうですね。
ROCK ON PRO:他に機能的な部分なんですけど、ワークフローを変えてしまう可能性があるような部分はありますか?
杉山:そうですね、少なくなったレーテンシーなどは、確実にミュージシャンはわかって変化が出ると思っています。でもこれは、しっかりとミュージシャンに聞かないとわからないですけどね。
ROCK ON PRO:もちろん、しっかりとした方に、ですよね(笑)。
杉山:でもね、みんな、反応してるんです。感じ取っていない人でも、絶対に体は反応してます。そんなもんだと思っている人か、違和感を感じている人かの違い。でも、みんな反応していると思ってます。
レイテンシーに関しては少なければ少ないに越したことはなく、少ないことによる悪影響なんてものはないので(笑)。すべてのレコーディングスタジオは、今すぐにでも買って欲しいですね。

杉山勇司氏 Profile:1964 年生まれ、大阪出身。1988 年、SR エンジニアからキャリアをスタート。くじら、原マスミ、近田春夫&ビブラストーン、東京スカパラダイスオーケストラなどを担当。その後レコーディング・エンジニア、サウンド・プロデュー サーとして多数のアーティストを手がける。主な担当アーティストは、ソフト・バレエ、ナーヴ・カッツェ、東京スカパラダイスオーケストラ、Schaft、Raymond Watts、Pizzicato Five、藤原ヒロシ、UA、NIGO、Dub Master X、X JAPAN、L’Arc~en~Ciel、44 Magnum、LUNA SEA、Jungle Smile、Super Soul Sonics、 広 瀬 香美、Core of Soul、Cube Juice、櫻井敦司、School Girl ’69、dropz、睡蓮など。 また、 1995 年には Logik Freaks 名義で、アルバム『Temptations of Logik Freaks』(ビクター)をリリース。2004年にリットーミュージックより著書「レコーディング/ミキシングの全知識」を出版

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  1. 進化したAvid New HD I/O:杉山勇司氏インタビュー New HD I/OとPro Toolsの未来(前編)
  2. 進化したAvid New HD I/O:杉山勇司氏インタビュー New HD I/OとPro Toolsの未来(後編)
  3. 進化したAvid New HD I/O:Dave Hill HEAT共同開発者インタビュー
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*記事中に掲載されている情報は2010年11月15日時点のものです。